JP6273441B2 - 樹脂の接合体 - Google Patents

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Description

本発明は少なくとも一方が光透過性を有する樹脂よりなる2つ以上の部材同士の接合技術に係わるものであり、光照射手段を用いて、部材の当接面に対し、光透過性を有する樹脂表面からレーザー光を照射することにより、各部材を接合する技術に関する。
少なくとも一方が光透過性を有する樹脂材料からなる一対の被接合材同士を接合する方法として、レーザービームを吸収するカーボンブラックなどの光吸収剤を前記一対の被接合材の当接面に配置し、光透過性を有する樹脂材料の表面からレーザービーム等を照射することにより、被接合材同士を溶着して接合体を作製するレーザー溶着法が提案されている(特許文献1)。また、接合体の接合強度を増すために、レーザービームを吸収するカーボンブラックなどの光吸収剤を被接合材の当接面に配し、且つ、さらに樹脂の流動性を高める樹脂流動手段として押圧部材を用いる接合装置が提案されている(特許文献2)。
一方、生体細胞や体液中に含まれる高分子量のタンパク質としてアルブミンがあるが、このアルブミンと相互作用を示す物質として、インドシアニングリーンなどの有機化合物が確認されている(非特許文献1)。
特許第4113752号 特開2010-162832号
Journal of Photochemistry and Photobiology C: Photochemistry Reviews, 13(2012)55-90。
しかしながら前述した特許文献に記載の接合方法においては、光吸収剤が複数個の光子を吸収し接合に必要なエネルギーを得ていることから、結果として、複数個の光子を吸収するいわゆる多光子吸収過程を生じさせるための余分なエネルギーを照射する必要があり、多くの光エネルギーが損失されていた。また、接合体の接合強度が光の出力に対し2次以上で比例するため、接合が達成されるエネルギーを得るためには高い出力を持つ高価な光源が必要であった。さらに、複数の光子により接合が達成されるため、当接部は高いエネルギー状態となり樹脂の分解反応の活性化エネルギーを超えるため、接合体の当接面に樹脂の分解やガス化により空隙が発生し、空気や液体の漏れや接合体の接合強度低下の原因となり問題となっていた。更にまた、上記のように光の照射条件のみならず、被接合材の面精度などが高く求められるため、接合条件の設定が難しく、結果として低い接合精度のみならず繰り返し精度の低い接合となり、使用される分野が限られていた。
さらに、前述した特許文献に記載の接合方法においては、接合に複数の光子を必要とするので、低い光の出力の場合には光子の密度が低くなるために複数光子の吸収過程が生じづらくなり、被接合材同士の接合の条件設定が非常に難しいといった問題のみならず、接合体の十分な接合強度が得られないといった問題があった。接合条件が設定できたとしても、複数の光子を吸収した励起状態からの緩和過程において当該樹脂の分解の活性化エネルギーを超えているため、分解過程をなくす手段がないことから、樹脂の分解を容認せざるを得なくなり、結果として、接合工程自体が接合部の空隙や破損などの欠陥の原因となるなど問題があった。
本発明は、従来の接合方法が抱えていた上記問題点を鑑みなされたものであり、複数の光子を用いることなく、接合に適切な光子のみを利用して接合体の高い接合強度と高い接合精度を両立することを可能とするものである。さらに本発明においては、光吸収剤の機能として、光を吸収した後、その励起状態からのエネルギー放出過程において、前記光吸収剤が構造を変化するいわゆる光異性化反応を生じうる機能を持たせ、樹脂製部材の当接面において、この光吸収剤の構造の変化が、熱により軟化した樹脂の流動性を増すことによりさらに接合体の接合強度を増すことを特徴としている。更にまた本発明においては、光吸収剤のアルブミン中での一光子吸収過程により生じる蛍光状態の寿命、いわゆる蛍光寿命が接合強度と密接に関係することを見いだし、一光子吸収過程により生じる光吸収剤の励起状態が光異性化反応を起こさないとしてもレーザー溶着による高い接合強度を実現したことを特徴としている。本発明におけるこれらの特徴は、従来法において接合体の十分な接合強度が得られなかった低い光の出力において設定値とおりの接合体の接合強度を得ることを達成し、一方、高い出力の光を照射した場合には、多光子吸収過程による樹脂の分解を生じることなく、すなわち、接合のために用いた光のエネルギーを原因とする樹脂の分解やガス化を生じることなく接合体の十分な接合強度を達成することも目的としている。これらの結果として、本発明を利用した接合体においては、接合を原因とする空隙等のない高い接合強度を持ち、且つ設定値の接合強度が得られるため、高い接合精度と繰り返し精度を達成することが成される。本発明では、従来法に比べ接合方法の条件設定が容易となり高い汎用性を達成することを目的としている。
上記の目的を達成するため、本願の発明に係わる発明1は、
光照射手段を用いて、少なくとも一方が光の透過性を備えた樹脂製部材からなり、もう一方の樹脂とからなる被接合材連結体の当接部に、光吸収剤を配置させた接合体であって、光吸収剤がアルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の発光の量子収率が0.2以下であるものを使用した樹脂の接合体である。
本願の発明に係わる下位概念の発明2は、
前記光吸収剤が励起状態において光異性化反応を生じることの如何に関わらず、分子量300以上870以下である発明1に記載の接合体である。分子量の上限870については、既にあげた光吸収剤は化学構造が明白なために分子量も明白で、各光吸収剤の各分子量はインドシアニングリーンが775で、下記の化1及び/又は図3で示される構造を有し、物質名が2-[2-[2-クロロ-3-[(1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-2H-ベンゾ[e]インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-1H-ベンゾ[e]インドリウムヒドロキシド分子内塩,ナトリウム塩である化合物が849.5で、下記の化2及び/又は図8で示される構造を有し、物質名が2-[2-[2-クロロ-3-[2-[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-(4-スルホブチル)-2H-インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロペンテン-1-イル]-エテニル]-3,3-ジメチル-1-(4-スルホブチル)-3H-インドリウムヒドロキシド分子内塩,ナトリウム塩である化合物が734.7で、Cypateが624で、3,3−diethylthiatricarbocyanine(DTTCI)が544.5である。そのため、発明に適する光吸収剤の分子量は最も大きな値の化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物が分子量862.5についての効果を考慮した数値とした。

本願の発明に係わる下位概念の発明3は、
前記光吸収剤が少なくとも波長600ナノメートル以上の光を吸収する下位概念の発明1乃至2のいずれか1項に記載の接合体である。
本願の発明に係わる下位概念の発明4で、
前記光吸収剤は、インドシアニングリーン、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物化2及び/又は図8で示す構造を有する化合物、Cypate、3,3−diethylthiatricarbocyanine(DTTCIと略することもある。)及びこれら化合物の誘導体である発明1乃至下位概念の発明3のいずれか1項に記載の接合体である。
本願の発明に係わる光吸収剤として用いられる化合物としては、接合のために用いられる光照射手段から前記被接合材連結体の当接部に照射される光の出力とこれにより接合された接合体の接合強度を比例式で表すことができ、
光照射手段から照射された光の出力を光の出力の対数目盛(X軸)とし、この光の出力によって接合された接合体の接合強度を接合強度の対数目盛(Y軸)としたとき、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きが0.1以上1.3以下であり、分子量が300以上870以下であり、波長600ナノメートル以上の光を吸収し、アルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の蛍光の量子収率が0.2以下であれること以外は特に限定されない。これらの条件を満たす光吸収剤は、例えば、インドシアニングリーンやその誘導体、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物やその誘導体、化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物やその誘導体、DTTCIやその誘導体などがある。具体的な誘導体としては、化1及び/又は図3で示す構造を有する化合物の塩素が水素やメチル基やエチル基などのアルキル基に置換した誘導体、インドシアニングリーン、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物化2及び/又は図8で示す構造を有する化合物、DTTCIにメチル基やエチル基が結合している誘導体である。
このようにして、本発明に係わる発明1によれば、接合に寄与する光の出力が接合体の接合強度と比例する光吸収剤を用いることにより、当接部に余分なエネルギーが蓄えられることなく樹脂の溶融と接合が行われるため、当接部に余分なエネルギーが蓄えられることにより生じる空隙や寸法の変化などの不具合のない、適切で高強度、且つ高精度の接合体を作ることが可能となる。
さらに適切な接合が行える本発明の接合体においては、入力するエネルギーが1光子吸収過程により適切に接合に利用されることのみならず、2光子目の吸収が生じなかったり、2光子目の吸収が起こったとしても接合に影響を与えず、接合体の接合強度の低下が生じないため、入力するエネルギーの設定値の自由度や溶着時の位置決めなどの自由度が増し、従来法に比べ接合時の接合強度や寸法に対する不具合が解消され、適用の範囲が広がる。
本発明に係わる下位概念の発明2では、上記の効果に加えてさらに接合に用いられる光吸収剤が光を吸収することにより光異性化反応を生じる機能を持つといった特徴があるため、光吸収剤が光を吸収し励起された状態からの緩和過程において、熱を放出して周囲の樹脂を溶融するのみならず、光異性化反応による光吸収剤の構造変化が前記溶融した樹脂に対し流動性を増すことにつながる。さらに、光異性化反応を生じなかったとしても分子の持つエネルギーの再分配時に生じる十分な熱エネルギーが樹脂の流動性を高めるため接合強度を増すことにつながる。
さらにまた溶融され流動性を増した被接合材の当接部の樹脂内における前記光吸収剤は、前記樹脂の流動性を高める効果があると共に、樹脂の流動性を増した樹脂が冷却・接合が完了する際、エントロピーの増大と共に樹脂の中に分散することにより、より強固な接合が行える。
上記の効果に加えて、本願の発明に係わる下位概念の発明3では、樹脂の劣化が生じる紫外光など短波長の光を接合に用いないため、樹脂による光の吸収が少なく、光吸収剤に対し接合に十分な光が照射されるとともに、光による樹脂の劣化を生じることのない、強固な接合となる。
上記に加えて、本願の発明に係わる発明1の接合体では、光吸収剤が平均分子量60000程度の高分子であるアルブミンが近接する場合の一光子吸収過程からの緩和過程として、蛍光状態の寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下と短いことから、光吸収剤に吸収されたエネルギーが光を放出することにより失われることなく接合が行える。本発明で用いる光異性化反応を生じる光吸収剤においては、光を吸収し熱を発する状態の寿命すなわち蛍光寿命が1.5ナノ秒以下と短く、光を吸収した後、速やかに熱の放出が行われるため、接合される被接合材に短時間で熱が伝導して樹脂の溶融と接合に十分な熱量が得られ、これによりエネルギー損失の少ない接合となる。さらに平均分子量が60000程度の高分子であるアルブミンが近接する場合の前記光異性化反応を生じる光吸収剤の蛍光の量子収率が0.2以下であるため、同様に接合に用いられる樹脂材料に近接する光吸収剤に吸収された光のエネルギーが蛍光の放出により失われることなく接合が行える。また、光吸収剤が光異性化反応を起こさないとしても、平均分子量が60000程度の高分子であるアルブミンが近接する場合の前記光吸収剤の蛍光の量子収率が0.2以下であるため、同様に接合に用いられる樹脂材料に近接する光吸収剤に吸収された光のエネルギーが蛍光の放出により失われることなく接合が行える。
上記の効果に加えて、本願の発明に係わる下位概念の発明4では、前記光吸収剤は、インドシアニングリーン、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物、Cypate、3,3−diethylthiatricarbocyanine(DTTCIと略することもある。)及びこれら化合物の誘導体、及び又は、これら化合物もしくは化合物の誘導体の混合体である発明1乃至下位概念の発明3のいずれか1項に記載の接合体である。
本願の発明に係わる光吸収剤を用いた接合では、一光子吸収過程により被接合材の接合が行われるため、強固でエネルギーの損失が少なく、接合された接合体の形状が安定することにより高精度で、さらに接合のための条件の設定が容易な自由度の高い接合となる。ここでいう強固でエネルギー損失が少ない接合とは、上述した接合のために用いられた光の出力(光の照射量と言い換えても良い)と接合された接合体の強度から、前記接合が一光子吸収過程で接合されていると確認され、樹脂の持つ熱容量が比較的小さいポリメチルメタアクリレート(1.47J/K)や比較的高いポリエチレン(2.3J/K)においても接合強度の目安である接合強度を達成できたり、接合強度を調べるために接合体の引張試験を行った際に接合面積と略同じ断面積を持つ母材で破断がおきたりする接合が行えることを示している。また、光吸収剤の分子量が300以上であると、接合される樹脂との相互作用が大きくなる傾向にあり、高い接合強度が得られる。更に、本発明の光吸収剤は、少なくとも波長600ナノメートル以上の光を吸収することを特徴とする光吸収剤である。波長600ナノメートル以上の光を照射した場合、被接合材として用いられる樹脂材料に前記光が吸収される確率が低くなるため、光吸収剤に光が適切に照射されて被接合体に十分な接合強度が得られるため好ましい。波長600ナノメートル以上の光を吸収することについては、被接合材により照射された光が吸収される波長でなければ特に問題とはならない。当該光吸収剤のアルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の発光の量子収率が0.2以下であることを特徴とする光吸収剤であることを特徴としているが、アルブミンは生体細胞や体液中に存在するタンパク質であり数万の分子量を持つことが知られており、アルブミン存在下における光吸収剤の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であると被接合材として用いられる樹脂を強く接合することが明らかとなった。このような条件を満たす光吸収剤としては、インドシアニングリーン、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物、Cypate、3,3−diethylthiatricarbocyanine(DTTCIと略することもある。)及びこれら化合物の誘導体、及び又は、これら化合物もしくは化合物の誘導体の混合体であることを特徴とする光吸収剤である。
本発明によれば、接合に寄与する光の出力が接合体の接合強度と比例する光吸収剤を用いることにより、当接部に余分なエネルギーが蓄えられることなく樹脂の溶融と接合が行われるため、当接部に余分なエネルギーが蓄えられることにより生じる空隙や寸法の変化などの不具合のない、適切で高強度、且つ高精度の接合体を作ることが可能となる。
光透過性を有する第1の被接合材と第2の被接合材との連結体の一部断面図である。連結体の当接部には光吸収剤を配置している。 光吸収剤として用いた光異性化反応を示す分子の分子構造式の一例である。 光吸収剤として用いた分子の分子構造式の一例である。 接合実験に用いた樹脂成形品の概略構成図と寸法である。 本願発明の方法又は従来法により接合したポリエチレンの照射した光の出力に対する接合体の接合強度の図である。 本願発明の方法又は従来法により接合したポリエチレンの照射した光の出力に対する接合体の接合強度の図である。光の出力の対数目盛(X軸)に対する接合強度の対数目盛(Y軸)で表し、図中の直線は本願発明の接合体に係る接合方法により接合した場合の光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小自乗法による直線である。図中の破断線は、従来法により接合した場合の光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による線である。 アルブミン中の蛍光寿命に対するポリスチレン接合体の接合強度の図である。 光吸収剤として用いた分子の分子構造式の他の例である。
以下、本発明に係わる被接合材の接合方法及び接合体の作製方法を図面に沿って説明する。図1は第1の被接合材1と第2の被接合材2との連結体100の一部断面図である。連結体100の当接部には光吸収剤3を配置している。この第1の被接合材1と第2の被接合材2の少なくとも片方の被接合材は樹脂製であり、且つ、照射する光としてレーザービーム4を利用した場合にレーザービーム4に対して透過性を備えている。ただし、光透過性を有する被接合材は、本発明の特徴でもある比較的低いレーザービームの出力でも接合に必要なエネルギーを得られるため、完全な透明体である必要はない。
上記第1の被接合材1及び第2の被接合材2の少なくとも一方は、それぞれポリエチレンやナイロン等の合成樹脂などの熱可塑性樹脂であれば特に限定されない。また、被接合材2は、ポリエチレンやナイロンなどの合成樹脂材料であってよい。被接合材1と被接合材2の当接する箇所に図2や図3に示されている光吸収剤3が所定量施される。この光吸収剤3は、光異性化反応を生じる場合でも、光異性化反応を生じない場合においても分子量が300以上あることが好ましい。光吸収剤3が光異性化反応を示すと光異性化反応による分子の構造変化が溶融した樹脂に対し流動性を増す効果が望め、さらにまた溶融され流動性を増した被接合材1と被接合材2の当接部の樹脂内における光吸収剤3により、前述したように樹脂の流動性を高める効果があると共に、樹脂の流動性が増加した樹脂が冷却し接合が完了する際、光吸収剤3が樹脂の中に分散することになり、より強固な接合が成される。光吸収剤3が光異性化反応を生じない場合においても、光を吸収した光吸収剤より放出された熱により流動性が増加した樹脂が冷却し接合が完了する際、光吸収剤3が樹脂の中に分散することにより、より強固な接合が成される。光吸収剤の分子量が低い場合、光の吸収波長が短くなり、光吸収剤を励起するために波長の短い光源を利用しなければならず、このような短い波長の光は光を透過する樹脂に吸収され易いため、十分な接合強度が得られなくなると共に、被接合材が光により劣化するため製品の管理が難しくなる。さらに、光吸収剤3の分子量が低い場合には、光吸収剤3が光異性化反応を生じたとしても接合強度を高める効果が認められないため接合強度が弱くなる傾向が認められる。光吸収剤3の分子量の上限については特に限定されないが、接合される被接合材の少なくとも一方が樹脂であるため、この樹脂の分子量以下であることが、好ましい。樹脂の分子量と樹脂の流動性については図示しないが負の相関があるため、光吸収剤3が被接合材の樹脂よりも高い分子量であると樹脂の流動を妨げる原因となり得るため、接合強度の増加が認められ難くなる。光吸収剤3は、図示されない光照射手段より発振されたレーザービーム4の波長に吸収を示し、且つ、レーザービーム4の出力を光の出力の対数値とし、このレーザービーム4によって接合された接合体の接合強度を接合強度の対数値としたとき、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きが0.1以上1.3以下を示す光吸収剤、好ましくは0.1以上1.2以下、より好ましくは0.1以上1.0以下の光吸収剤であればよい。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きが1.3より大きい値を示す場合、接合に係わる光子数が複数個である割合が高くなり、接合体の接合部の劣化が生じたり、十分な接合強度が得られなかったり、接合のための条件設定が困難になるなどの傾向が見られる。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きが0.1より小さい値を示す場合、接合に係わる光による影響が少なく、本願発明の接合体に係る接合方法では、制御が難しくなる傾向にある。
前記第1の被接合材1と前記第2の被接合材2の当接する箇所に所定量施される光吸収剤3のアルブミンを含んだ水溶液中での蛍光寿命は1.5ナノ秒以下が好ましく、より好ましくは、1.2ナノ秒以下、さらには、1.1ナノ秒以下が好ましい。蛍光寿命が長いと、1つの光子により励起された分子(光吸収剤)が更に光子を吸収することにより高いエネルギー状態まで励起され、この高いエネルギーにより被接合材の酸化反応を含む分解反応などが生じやすくなるため接合強度が低くなる傾向にある。また、光吸収剤3の蛍光寿命が長いと、被接合材への熱伝導が前記蛍光寿命で生じるために樹脂の溶融に必要な熱量が拡散してしまい、樹脂が十分に溶融せず、目標とする接合体の接合強度が得られなくなる傾向にある。
被接合材1と被接合材2の当接する箇所に所定量施される光吸収剤3の蛍光の量子収率は、アルブミンが存在する水溶液中において0.2以下が好ましく、より好ましくは、0.1以下、さらに好ましくは、0.05以下がよい。光吸収剤3の蛍光の量子収率が高いと、熱放出による励起状態からの緩和過程の量子収率が相対的に低下し、接合を目的とした光のエネルギーが無駄になるだけでなく、十分な接合強度を得るための熱量を確保するために照射する光の出力を高める必要があり、結果として、多光子吸収過程が生じやすくなり、被接合材を損傷する可能性が高まるなどの問題が生じる可能性が高まる。
光吸収剤3の設置方法は特に限定されないが、印刷、ブラシや筆による塗布、エアブラシによる塗布、被接合材への含有などにより設置される。また、光吸収剤3を含有する樹脂フィルムを第1の被接合材1と第2の被接合材2の間に配置することにより設置することもできる。図2は、本発明の接合体の条件を満たす光吸収剤3の一例であるインドシアニングリーンである。また、図3は、本発明の接合体の条件を満たす光吸収剤3の一例である、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物である。以上の各部材を連結させた結果、第1の被接合材1と第2の被接合材2との間には、光吸収剤3を含んだ光吸収層が存在し、連結体100を構成することになる。
被接合材1及び被接合材2の形状は、図1においては板状の形状をしているが、フィルム状でも、管のような湾曲した形状でも良い。光を透過する被接合材1の厚さは特に限定するものではないが、被接合材1と被接合材2よりなる接合体の接合強度が必要な強度以上となる光量が光吸収剤3に入射できればよい。前述したように被接合材1の厚さについては特に限定されないが、被接合材2の厚さについても特に限定されない。
第1の被接合材1と第2の被接合材2及び前記第1の被接合材1と前記第2の被接合材2の当接部に配した光吸収剤3を透過した光が、前記第2の被接合材2の外部に施された図示しない光吸収剤3を介し当接されるやはり図示しない第3の被接合材を接合するのに十分な出力を有する場合には、前記第1の被接合材1と前記第2の被接合材2を透過した光により図示しない第3の被接合材と前記第2の被接合材2とを接合することができる。この複数の被接合材を同時に接合する場合、それぞれの被接合材の当接部に設置される光吸収剤3に接合するために十分な光が照射されれば良いため、同時に接合する被接合材の枚数については特に限定されない。
この連結体100の第1の被接合材1の表面から図示しない光照射手段によりレーザービーム4を光吸収剤3に照射する。このレーザービーム4により生じた光吸収剤3の励起状態より生じる熱と光吸収剤3の光異性化反応もしくは、光吸収剤3の励起状態より生じる熱により第1の被接合材1と第2の被接合材2とが強固に接合され、接合体となる。また、光吸収剤3が光異性化反応を生じなかったとしても、分子の持つエネルギーの再配列時に生じる十分な熱エネルギーが樹脂の流動性を高めるため接合強度を増す効果が望める。
以下に実施例により本発明の樹脂の接合体をより詳細に開示する。しかしながら、実施例等は本発明の本質を説明するためのものであり、これらによって本発明の範囲を限定的に解釈してはならない。
(実施例1)
第1の被接合材として、ポリエチレン(プライムポリマー社製ポリエチレン1300J)を図4に示す形状に成形した。また、第2の被接合材として、第1の接合材と同じポリエチレンをやはり図4に示す形状に成形した。この第1と第2の被接合材の当接部にエタノールに溶解したインドシアニングリーンを筆により施し、乾燥することにより溶媒であるエタノールを除去した。このときのインドシアニングリーンの波長808ナノメートルにおける光の吸光度は2にした。照射する光の波長でのインドシアニングリーンの吸光度は、0.3以上3以下で接合体の接合強度が高くなるため、この間で任意に設定することができる。照射する光の波長でのインドシアニングリーンの吸光度が1以下であると、接合体の接合強度が10%程度低下するので、この接合強度が設定値より小さい場合には光吸収剤の塗布量を好適にする必要がある。照射する光の波長でのインドシアニングリーンの吸光度が3以上の場合においても接合体の接合強度が10%程度低下するため、この接合強度が設定値より小さい場合には光吸収剤の塗布量を好適にすることが望ましい。インドシアニングリーンのアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.79ナノ秒であった。この第1の被接合材と第2の被接合材を当接することにより前記第1と第2の被接合材の当接部にインドシアニングリーンを光吸収剤とする連結体を作成した。連結体の第1の被接合材表面から光照射手段として、レーザー発振器(エーエルティー社:半導体レーザー、波長808ナノメートル、連続発振)を用い、レーザービームを照射した。照射した光の出力は、レーザーパワーメータ(ニューポート社製Model 1918−c)により測定した。前記レーザーパワーメータにより照射する光の出力を計測し、前記第1の被接合材と第2の被接合材を当接した連結体の当接部に第一の被接合材表面から前記レーザー発振器より発振された光を照射・接合し、接合体を作製した。光の出力は任意の出力に設定した。レーザービームを接合体の接合強度を測定するための引張方向と垂直方向に150mm/minの速度で走査して接合を行った。接合体の接合強度の測定には、複合材料試験装置(インストロン社製5865)を用い、引張速度5mm/minで実施した。これらの実験で得られた照射した光の出力ごとの接合体の接合強度を図5に示す。また、このときの光の出力の対数値に対する接合強度の対数値を図6に示す。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、167Nの接合強度が得られ、目標値より4%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、309Nの接合強度が得られ、目標値より2%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.87であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の光異性化反応による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、そして、被接合材である樹脂と光吸収剤の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の高い光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などを見つけることはできなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標どおりの接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標どおりの接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
(比較例1)
従来法として、光吸収剤がカーボンブラックであること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合した場合の光の出力に対する接合体の接合強度を図5に示す。また、このときの光の出力の対数値に対する接合強度の対数値を図6に示す。図5から光の出力が25W以下の低い条件では、実施例1で接合した接合体より低い接合強度となった。図6に示したこの比較例1の実験では、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは2.7であり、接合に2個以上の光子が必要であることが確認された。更にまた、従来法で得られた接合体の接合強度は、10.7Wの光の出力において、目標値である160Nの25%程度である41Nにとどまった。また、光の出力が25Wより高い条件においては、この比較例1では接合強度が目標値である300Nの70%以下である200Nまで低下した。25W以上の光の出力で接合した場合の接合体の接合部の断面観察から、余分なエネルギーの入射によると推測される、被接合材の劣化とガス化による空隙が観測された。更に、レーザーの焦点位置を縦方向に0.5ミリメートルずらしたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合、接合体の接合強度は目標値の10%から80%程度しか得られず、接合条件の自由度がほとんどないことがわかった。品質については、基準となる寸法精度からのずれが±20%以下となることから低い品質であることが確認された。
(比較例2)
本発明に利用されうる光吸収剤を検討するため、光吸収剤として光異性化反応が確認されているスチルベン(分子量180)、アゾベンゼン(分子量182)、レチナール(分子量286)、インドシアニングリーン(分子量775)を光吸収剤としてそれぞれ用い、光の出力を10.7Wとしたほかは実施例1と同じ条件で接合実験を行った。スチルベン、アゾベンゼンでは波長600ナノメートル以上の光を吸収しないことから接合のためにカーボンブラックを光吸収剤として併用した。レチナールは波長600ナノメートル以上の光を吸収するが、分子量が300以下のため、比較例として用いた。この接合実験によって得られた接合体の接合強度は、トランス体スチルベンが23N、トランス体アゾベンゼンが23N、そして、シス体アゾベンゼンで24Nであり、光吸収剤として用いたカーボンブラックのみの41Nよりも低い値となった。この接合における接合体の接合強度の目標値は160Nであるため、これらの光吸収剤においては、目標値の25%以下の接合強度しか得られていないことが確認された。レチナールを光吸収剤として用いた場合には26Nの接合体の接合強度が得られたが、やはり目標値の25%以下の強度しか得られなかった。インドシアニングリーンにおいては、目標値である160Nに対し、167Nの接合体の接合強度が確認され、目標値を上回った。
(実施例2)
被接合材の材料として、樹脂の流動性の指標であるメルトフローレイト値が0.4、4.3、7.7、そして、11.4g/10minの材料を図4の形状に成形し接合実験を行った。このとき、光吸収剤として、インドシアニングリーンを用いた。これらのメルトフローレイト値を示す材料としては、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレン、実施例1と同じポリエチレンを用いた。メルトフローレイト値の測定には、メルトフローレータ測定装置(東洋精機社製)を用いた。いずれの被接合材の場合でも、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きは、0.9から1.3であり、且つ、接合体の接合強度は目標値を100%とし、最低合格値を90%とした場合、95%以上の接合強度が得られた。
(比較例3)
光吸収剤として、従来法であるカーボンブラックを用いた以外は、実施例2と同じ被接合材、接合条件において接合を行った。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きは、2.0から3.0であり、接合のために複数の光子が必要であることが確認された。接合体の接合強度は目標値を100%とし、最低合格値を90%とした場合、25%以下の接合強度しか得られなかった。
(実施例3)
被接合材として、厚さ100マイクロメートルと1ミリメートルの第1の被接合材と同じ厚さの第2の被接合材を用い、実施例1と同一の条件において接合を行った。厚さ100マイクロメートルのフィルム同士の接合においても、厚さ1ミリメートルの被接合材同士の接合においても接合された接合体は、接合体の接合強度の目標値を100%として最低合格値を90%とした場合、95%以上の接合強度が得られた。また、寸法精度±2%以下の品質目標値を達成する接合が行えることが確認された。
(実施例4)
被接合材として、厚さ200マイクロメートルのフィルムを4枚重ねそれぞれの当接部に光吸収剤としてインドシアニングリーンを配置し、そのほかは実施例4と同一の条件で接合を行った。4枚の被接合材が接合していることが確認され、接合体の接合強度は、接合体の接合強度は目標値を100%とし、最低合格値を90%とした場合、95%以上の接合強度であることが確認された。また、品質の目標値である寸法精度±3%を達成する品質であることが確認された。また、フィルムの密閉性を調べるため一片が20ミリメートルの正方形に光を照射して作製した接合体について、前記正方形内への水漏れ試験を行ったところ、接合部のいずれの箇所からも水漏れがないことが確認された。
(実施例5)
光吸収剤が化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物であること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物のアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.49ナノ秒であった。この実施例5で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より高い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、180Nの接合強度が得られ、目標値より13%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、360Nの接合強度が得られ、目標値より20%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.50であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料との高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
(実施例6)
光吸収剤が化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物であること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物のアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.61ナノ秒であった。この実施例6で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より高い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、175Nの接合強度が得られ、目標値より9%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、340Nの接合強度が得られ、目標値より13%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.48であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
(実施例7)
光吸収剤がCypateであること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。Cypateのアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.62ナノ秒であった。この実施例7で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より高い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、170Nの接合強度が得られ、目標値より6%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、325Nの接合強度が得られ、目標値より8%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.47であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
(実施例8)
光吸収剤がDTTCIであること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。DTTCIのアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、1.14ナノ秒であった。この実施例8で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より僅かに低い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、160Nの接合強度が得られ、目標値程度の接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、300Nの接合強度が得られ、目標値程度の接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.48であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
表1に実施例1、実施例2、比較例1、そして、比較例2についてまとめて表記する。
表2に実施例1の一部及び、実施例5、実施例6、実施例7、そして、実施例8についてまとめて表記する。
表2に示した実施例1の一部及び、実施例5、実施例6、実施例7、そして、実施例8について、アルブミン中の蛍光寿命に対するポリエチレン接合体の接合強度をプロットした図を図7に示す。図7に示されたプロットを最小二乗法によりフィッティングした直線は、傾きが−28.5であり、切片が191.2であり、アルブミン中の蛍光寿命とポリエチレン接合体の接合強度の相関係数は、0.88と見積もられた。被接合体の接合強度の目標値を160Nとした場合、当該接合強度の目標値に対し90%以上の接合強度を合格値と設定し見積もられた光吸収剤のアルブミン中の蛍光寿命は、1.5ナノ秒であった。これらの結果より、本願発明の樹脂の接合体及び光吸収剤においては、アルブミン存在下における蛍光状態の寿命とポリエチレン接合体の接合強度に強い相関があることが確認された。
2つ以上の部材を接合することに係わる技術である。
1 第1の被接合材
2 第2の被接合材
3 光吸収剤
4 レーザービーム
100 連結体

Claims (4)

  1. 光透過性の第1の樹脂体と、
    第2の樹脂体と、
    の接合部分に光吸収剤のみを介して光照射手段により接合された接合体において、
    光吸収剤はアルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の発光の量子収率が0.2以下であるものを使用した樹脂の接合体。
  2. 前記光吸収剤が分子量300以上850以下である請求項1に記載の樹脂の接合体。
  3. 前記光吸収剤が少なくとも波長600ナノメートル以上の光を吸収する請求項1乃至2のいずれか1項に記載の樹脂の接合体。
  4. 前記光吸収剤は、インドシアニングリーン、化1で示される構造を有する化合物、化2で示される構造を有する化合物、 Cypate、3,3-diethylthiatricarbocyanine(DTTCIと略すこともある。)及びこれら化合物の誘導体、及び又はこれら化合物及びこれら化合物の誘導体の混合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂の接合体。
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