JP6273441B2 - 樹脂の接合体 - Google Patents
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光照射手段を用いて、少なくとも一方が光の透過性を備えた樹脂製部材からなり、もう一方の樹脂とからなる被接合材連結体の当接部に、光吸収剤を配置させた接合体であって、光吸収剤がアルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の発光の量子収率が0.2以下であるものを使用した樹脂の接合体である。
前記光吸収剤が励起状態において光異性化反応を生じることの如何に関わらず、分子量300以上870以下である発明1に記載の接合体である。分子量の上限870については、既にあげた光吸収剤は化学構造が明白なために分子量も明白で、各光吸収剤の各分子量はインドシアニングリーンが775で、下記の化1及び/又は図3で示される構造を有し、物質名が2-[2-[2-クロロ-3-[(1,3-ジヒドロ-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-2H-ベンゾ[e]インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロヘキセン-1-イル]-エテニル]-1,1-ジメチル-3-(4-スルホブチル)-1H-ベンゾ[e]インドリウムヒドロキシド分子内塩,ナトリウム塩である化合物が849.5で、下記の化2及び/又は図8で示される構造を有し、物質名が2-[2-[2-クロロ-3-[2-[1,3-ジヒドロ-3,3-ジメチル-1-(4-スルホブチル)-2H-インドール-2-イリデン]-エチリデン]-1-シクロペンテン-1-イル]-エテニル]-3,3-ジメチル-1-(4-スルホブチル)-3H-インドリウムヒドロキシド分子内塩,ナトリウム塩である化合物が734.7で、Cypateが624で、3,3−diethylthiatricarbocyanine(DTTCI)が544.5である。そのため、発明に適する光吸収剤の分子量は最も大きな値の化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物が分子量862.5についての効果を考慮した数値とした。
前記光吸収剤が少なくとも波長600ナノメートル以上の光を吸収する下位概念の発明1乃至2のいずれか1項に記載の接合体である。
前記光吸収剤は、インドシアニングリーン、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物、化2及び/又は図8で示す構造を有する化合物、Cypate、3,3−diethylthiatricarbocyanine(DTTCIと略することもある。)及びこれら化合物の誘導体である発明1乃至下位概念の発明3のいずれか1項に記載の接合体である。
光照射手段から照射された光の出力を光の出力の対数目盛(X軸)とし、この光の出力によって接合された接合体の接合強度を接合強度の対数目盛(Y軸)としたとき、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きが0.1以上1.3以下であり、分子量が300以上870以下であり、波長600ナノメートル以上の光を吸収し、アルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の蛍光の量子収率が0.2以下であれること以外は特に限定されない。これらの条件を満たす光吸収剤は、例えば、インドシアニングリーンやその誘導体、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物やその誘導体、化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物やその誘導体、DTTCIやその誘導体などがある。具体的な誘導体としては、化1及び/又は図3で示す構造を有する化合物の塩素が水素やメチル基やエチル基などのアルキル基に置換した誘導体、インドシアニングリーン、化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物、化2及び/又は図8で示す構造を有する化合物、DTTCIにメチル基やエチル基が結合している誘導体である。
第1の被接合材として、ポリエチレン(プライムポリマー社製ポリエチレン1300J)を図4に示す形状に成形した。また、第2の被接合材として、第1の接合材と同じポリエチレンをやはり図4に示す形状に成形した。この第1と第2の被接合材の当接部にエタノールに溶解したインドシアニングリーンを筆により施し、乾燥することにより溶媒であるエタノールを除去した。このときのインドシアニングリーンの波長808ナノメートルにおける光の吸光度は2にした。照射する光の波長でのインドシアニングリーンの吸光度は、0.3以上3以下で接合体の接合強度が高くなるため、この間で任意に設定することができる。照射する光の波長でのインドシアニングリーンの吸光度が1以下であると、接合体の接合強度が10%程度低下するので、この接合強度が設定値より小さい場合には光吸収剤の塗布量を好適にする必要がある。照射する光の波長でのインドシアニングリーンの吸光度が3以上の場合においても接合体の接合強度が10%程度低下するため、この接合強度が設定値より小さい場合には光吸収剤の塗布量を好適にすることが望ましい。インドシアニングリーンのアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.79ナノ秒であった。この第1の被接合材と第2の被接合材を当接することにより前記第1と第2の被接合材の当接部にインドシアニングリーンを光吸収剤とする連結体を作成した。連結体の第1の被接合材表面から光照射手段として、レーザー発振器(エーエルティー社:半導体レーザー、波長808ナノメートル、連続発振)を用い、レーザービームを照射した。照射した光の出力は、レーザーパワーメータ(ニューポート社製Model 1918−c)により測定した。前記レーザーパワーメータにより照射する光の出力を計測し、前記第1の被接合材と第2の被接合材を当接した連結体の当接部に第一の被接合材表面から前記レーザー発振器より発振された光を照射・接合し、接合体を作製した。光の出力は任意の出力に設定した。レーザービームを接合体の接合強度を測定するための引張方向と垂直方向に150mm/minの速度で走査して接合を行った。接合体の接合強度の測定には、複合材料試験装置(インストロン社製5865)を用い、引張速度5mm/minで実施した。これらの実験で得られた照射した光の出力ごとの接合体の接合強度を図5に示す。また、このときの光の出力の対数値に対する接合強度の対数値を図6に示す。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、167Nの接合強度が得られ、目標値より4%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、309Nの接合強度が得られ、目標値より2%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.87であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の光異性化反応による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、そして、被接合材である樹脂と光吸収剤の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の高い光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などを見つけることはできなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標どおりの接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標どおりの接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
従来法として、光吸収剤がカーボンブラックであること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合した場合の光の出力に対する接合体の接合強度を図5に示す。また、このときの光の出力の対数値に対する接合強度の対数値を図6に示す。図5から光の出力が25W以下の低い条件では、実施例1で接合した接合体より低い接合強度となった。図6に示したこの比較例1の実験では、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは2.7であり、接合に2個以上の光子が必要であることが確認された。更にまた、従来法で得られた接合体の接合強度は、10.7Wの光の出力において、目標値である160Nの25%程度である41Nにとどまった。また、光の出力が25Wより高い条件においては、この比較例1では接合強度が目標値である300Nの70%以下である200Nまで低下した。25W以上の光の出力で接合した場合の接合体の接合部の断面観察から、余分なエネルギーの入射によると推測される、被接合材の劣化とガス化による空隙が観測された。更に、レーザーの焦点位置を縦方向に0.5ミリメートルずらしたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合、接合体の接合強度は目標値の10%から80%程度しか得られず、接合条件の自由度がほとんどないことがわかった。品質については、基準となる寸法精度からのずれが±20%以下となることから低い品質であることが確認された。
本発明に利用されうる光吸収剤を検討するため、光吸収剤として光異性化反応が確認されているスチルベン(分子量180)、アゾベンゼン(分子量182)、レチナール(分子量286)、インドシアニングリーン(分子量775)を光吸収剤としてそれぞれ用い、光の出力を10.7Wとしたほかは実施例1と同じ条件で接合実験を行った。スチルベン、アゾベンゼンでは波長600ナノメートル以上の光を吸収しないことから接合のためにカーボンブラックを光吸収剤として併用した。レチナールは波長600ナノメートル以上の光を吸収するが、分子量が300以下のため、比較例として用いた。この接合実験によって得られた接合体の接合強度は、トランス体スチルベンが23N、トランス体アゾベンゼンが23N、そして、シス体アゾベンゼンで24Nであり、光吸収剤として用いたカーボンブラックのみの41Nよりも低い値となった。この接合における接合体の接合強度の目標値は160Nであるため、これらの光吸収剤においては、目標値の25%以下の接合強度しか得られていないことが確認された。レチナールを光吸収剤として用いた場合には26Nの接合体の接合強度が得られたが、やはり目標値の25%以下の強度しか得られなかった。インドシアニングリーンにおいては、目標値である160Nに対し、167Nの接合体の接合強度が確認され、目標値を上回った。
被接合材の材料として、樹脂の流動性の指標であるメルトフローレイト値が0.4、4.3、7.7、そして、11.4g/10minの材料を図4の形状に成形し接合実験を行った。このとき、光吸収剤として、インドシアニングリーンを用いた。これらのメルトフローレイト値を示す材料としては、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレン、実施例1と同じポリエチレンを用いた。メルトフローレイト値の測定には、メルトフローレータ測定装置(東洋精機社製)を用いた。いずれの被接合材の場合でも、光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きは、0.9から1.3であり、且つ、接合体の接合強度は目標値を100%とし、最低合格値を90%とした場合、95%以上の接合強度が得られた。
光吸収剤として、従来法であるカーボンブラックを用いた以外は、実施例2と同じ被接合材、接合条件において接合を行った。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾きは、2.0から3.0であり、接合のために複数の光子が必要であることが確認された。接合体の接合強度は目標値を100%とし、最低合格値を90%とした場合、25%以下の接合強度しか得られなかった。
被接合材として、厚さ100マイクロメートルと1ミリメートルの第1の被接合材と同じ厚さの第2の被接合材を用い、実施例1と同一の条件において接合を行った。厚さ100マイクロメートルのフィルム同士の接合においても、厚さ1ミリメートルの被接合材同士の接合においても接合された接合体は、接合体の接合強度の目標値を100%として最低合格値を90%とした場合、95%以上の接合強度が得られた。また、寸法精度±2%以下の品質目標値を達成する接合が行えることが確認された。
被接合材として、厚さ200マイクロメートルのフィルムを4枚重ねそれぞれの当接部に光吸収剤としてインドシアニングリーンを配置し、そのほかは実施例4と同一の条件で接合を行った。4枚の被接合材が接合していることが確認され、接合体の接合強度は、接合体の接合強度は目標値を100%とし、最低合格値を90%とした場合、95%以上の接合強度であることが確認された。また、品質の目標値である寸法精度±3%を達成する品質であることが確認された。また、フィルムの密閉性を調べるため一片が20ミリメートルの正方形に光を照射して作製した接合体について、前記正方形内への水漏れ試験を行ったところ、接合部のいずれの箇所からも水漏れがないことが確認された。
光吸収剤が化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物であること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。化1及び/又は図3で示される構造を有する化合物のアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.49ナノ秒であった。この実施例5で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より高い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、180Nの接合強度が得られ、目標値より13%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、360Nの接合強度が得られ、目標値より20%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.50であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料との高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
光吸収剤が化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物であること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。化2及び/又は図8で示される構造を有する化合物のアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.61ナノ秒であった。この実施例6で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より高い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、175Nの接合強度が得られ、目標値より9%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、340Nの接合強度が得られ、目標値より13%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.48であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
光吸収剤がCypateであること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。Cypateのアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、0.62ナノ秒であった。この実施例7で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より高い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、170Nの接合強度が得られ、目標値より6%程度高い接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、325Nの接合強度が得られ、目標値より8%程度高い接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.47であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
光吸収剤がDTTCIであること以外はすべて実施例1と同様の条件で接合実験を行った。DTTCIのアルブミンが存在している水溶液中での蛍光寿命は、1.14ナノ秒であった。この実施例8で実施した実験では、光吸収剤としてインドシアニングリーンを用いた実施例1で接合した接合体より僅かに低い接合強度となった。このときの接合体の接合強度は目標値に対し100%以上であった。具体的には、10.7Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である160Nに対し、160Nの接合強度が得られ、目標値程度の接合強度が得られた。また、42.3Wの光の出力で接合した場合の接合強度の目標値である300Nに対し、300Nの接合強度が得られ、目標値程度の接合強度が得られた。光の出力の対数値に対する接合強度の対数値の最小二乗法による直線の傾き、すなわち接合強度の対数値=(傾き)×光の出力の対数値+(切片)のときの直線の傾きは0.48であり、接合に必要とされる光子数が1以下であることが確認された。接合に必要とされる光子数が1以下であることについては、光吸収剤の分散による樹脂の流動性の増加と光吸収剤の被接合材内への分散、さらには、光吸収剤と被接合材として用いられる樹脂材料の高い相互作用が接合強度に寄与しているためと考えている。また、25W以上の光の出力においても、接合強度の低下などは観測されなかった。光の出力10W以上50W以下の条件において接合体の接合部の断面を観察したところ、余剰なエネルギーを原因とする被接合材の劣化やガス化による空隙などは認められなかった。これらの結果により、本発明の接合体では、目標を満足する接合体の接合強度が得られ、且つ被接合材の劣化などが生じない接合が行えることが確認された。更に、レーザービームの縦方向の焦点位置が1ミリメートルずれたり、レーザーの走査速度を50mm/min〜300mm/minにした場合も目標を満足する接合体の接合強度が得られたことから、自由度の高い接合条件の設定が可能であることが確認された。品質も基準となる寸法精度からのずれが±2%以下となることから高い品質であることが確認された。なお、このときのレーザービームの焦点位置における径は2ミリメートルとした。
2 第2の被接合材
3 光吸収剤
4 レーザービーム
100 連結体
Claims (4)
- 光透過性の第1の樹脂体と、
第2の樹脂体と、
の接合部分に光吸収剤のみを介して光照射手段により接合された接合体において、
光吸収剤はアルブミンを含んだ水溶液中の蛍光寿命が0.01ナノ秒以上1.5ナノ秒以下であり、アルブミンを含んだ水溶液中の発光の量子収率が0.2以下であるものを使用した樹脂の接合体。 - 前記光吸収剤が分子量300以上850以下である請求項1に記載の樹脂の接合体。
- 前記光吸収剤が少なくとも波長600ナノメートル以上の光を吸収する請求項1乃至2のいずれか1項に記載の樹脂の接合体。
- 前記光吸収剤は、インドシアニングリーン、化1で示される構造を有する化合物、化2で示される構造を有する化合物、 Cypate、3,3-diethylthiatricarbocyanine(DTTCIと略すこともある。)及びこれら化合物の誘導体、及び又はこれら化合物及びこれら化合物の誘導体の混合物である請求項1乃至3のいずれか1項に記載の樹脂の接合体。
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