JP6273088B2 - 認知症の治療及び予防用の医薬組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、認知症、特にアルツハイマー病の治療及び予防に有用な医薬組成物及び食品組成物に関する。
認知症は、大脳の障害によって一度正常に発達した知的機能が低下し、社会生活や日常生活に障害をきたす状態で意識障害がない疾患を言う。初老期から老年期に起こることが多く、進行性の認知症を特徴とする。現在、我が国には、300万人以上の認知症患者が存在するが、今後人口の高齢化に伴いその数は確実に増加すると予想される。認知症患者の約半数がアルツハイマー病を原因疾患としており、現在、国内の患者数は150万人以上と言われている。
アルツハイマー病の臨床症状は、記憶障害、高次脳機能障害(失語、失行、失認、構成失行)等である。一方、アルツハイマー病の特徴的な病理組織所見としては、老人斑と神経原線維変化がある。前者の主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβタンパク質(以下、Aβと略記することもある)であり、後者のそれは過剰リン酸化されたタウ蛋白である。分子遺伝学的研究や神経病理学的研究によって、最初にアミロイドβが凝集してオリゴマーを形成し、さらにβシート構造をとったアミロイドβタンパク質となって沈着して老人斑を形成する。ついで過剰リン酸化されたタウ蛋白が凝集した神経原線維変化ができて、神経細胞死がおこり、認知症を発症するというアミロイド仮説(アミロイドカスケード仮説とも言う)が有力である(非特許文献1)。アルツハイマー病においては臨床症状が発症するかなり前から、脳内では凝集したアミロイドβタンパク質の蓄積等の上記病理的組織変化が始まっていることが知られている。
アルツハイマー病の治療法としては、2012年4月1日現在で、我が国で認可及び販売されている薬剤は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬であるドネペジル、ガランタミン、リバスチグミン、及びグルタミン酸のNMDA受容体拮抗薬であるメマンチンの4種類である(非特許文献2)。これらはいずれも、神経伝達物質やその受容体を標的にした治療薬で、アミロイドβタンパク質凝集体やタウ蛋白凝集体等の病理変化を治療する治療薬ではないので、認知症状の改善効果や進行を遅らせる効果はあるものの、根本的な治療薬ではない(非特許文献2)。したがって、アミロイド仮説に基づく新たな認知症治療薬の開発が臨まれている。
現在、研究が進められているアルツハイマー病の治療薬としては、アミロイドワクチン療法、ガンマセクレターゼ阻害薬、ガンマセクレターゼ修飾薬、ベータセクレターゼ阻害薬、アミロイドβタンパク質などの異常蛋白の凝集抑制剤などがある(非特許文献3、4、5)。このうち、アミロイドβタンパク質などの異常蛋白の凝集抑制剤としてIn vitro実験系で効果が報告されているものとして、ワイン関連ポリフェノール、エピガロカテキンガレート(EGCG)、クルクミン、ロスマリン酸、ニコチン、リファンピシン、メラトニン、ポリ硫酸化合物、クリオキノールなどが挙げられる(非特許文献5)。こうした化合物の中で、これまでに臨床試験が行われている化合物としては、EGCG、ポリ硫酸化合物、クリオキノール、そしてクルクミンが挙げられる(非特許文献5)。
クルクミンは、アルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスで治療効果が報告されており(非特許文献6、7)、アルツハイマー患者を対象にした臨床試験も行われている(非特許文献8)。しかしながら、臨床試験の結果は、認知機能の有意な改善効果は認められず(非特許文献8)、クルクミンよりもより効果のある化合物の開発が望まれている。
また、特許文献1には、クルクミン誘導体及びケト・エノール互変異性を有するある種の化合物をアルツハイマー病の画像診断薬として使用することが開示されている。しかしながら、画像診断薬、対外診断薬及び染色薬以外の用途については記載されていない。
国際公開第2010/098502号
Hardy J, Selkoe DJ: The amyloid hypothesis of Alzheimer’s disease: progress and problems on the road to therapeutics. Science 297:353-356, 2002. 山本泰司 アルツハイマー病治療薬の現状と新薬開発の経緯 認知症の最新医療 54頁−59頁 Vol. 1. No. 2, 2011年. 柴田展人 アルツハイマー病治療薬の今後の展望 - 開発中の新薬について 認知症の最新医療 82頁−87頁 Vol. 1. No. 2, 2011年. 岩井晃彦 Aβを標的にした治療薬の開発現状 Dementia Japan 26: 73-81,2012. 小野賢二郎、山田正仁 Aβ凝集機構解明から予防・治療薬開発へ Dementia Japan 26: 1-6, 2012. Lim et al.: The curry spice curcumin reduces oxidative damages and amyloid pathology in an Alzheimer transgenic mouse. J Neurosci 21: 8370-8377. Hamaguchi T, Ono K, Murase A, Yamada M: Phenolic compounds prevent Alzheimer’s pathology thourgh different effects on the amyloid-β aggregation pathway. Am J Pathol 175: 2557-2565. Baum et al.: Six-month randomized, placebo-controlled, double blind, pilot clinical trial of curcumin in patients with Alzheimer disease. J Clin Psychopharmacol 28: 110-113, 2008.
アルツハイマー病をはじめとする認知症の治療薬としては、前記のようにいくつかの化合物が実用化あるいは提案されている。しかしながら、いずれも根本的な治療薬ではなく、治療効果のある化合物の開発が求められている。
そこで、本発明は、認知症の根本的な治療を可能とする医薬組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、認知症を効果的に予防できる食品組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、アルツハイマー病診断のための磁気共鳴造影剤として開発した化合物(特許文献1)をアルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスに投与して、その効果を調べたところ、驚くべきことに、従来から知られていたクルクミンに比し、より治療効果が高いことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、これら知見に基づき、完成されたものであり、次の医薬組成物及び食品組成物を提供するものである。
項1.ケト型とエノール型が存在する1,3-ジカルボニル構造を有する化合物を含有する認知症の治療及び/又は予防用の医薬組成物であって、該化合物は脳内に移行可能であり且つケト型とエノール型でアミロイドβタンパク質の凝集体に対する親和性が異なり、1,3-ジカルボニル構造の2位が置換基を有する1つのアルキル基で置換されている、医薬組成物。
項2.前記化合物はケト型に比べてエノール型の方がアミロイドβペプチドの凝集体に対する親和性が高い、項1に記載の医薬組成物。
項3.前記化合物が式(I):
(式中、R1a及びR1bはそれぞれ独立に置換されていてもよいアリール基又はヘテロアリール基であり、Aはアルコキシ置換アルキル、アルコキシカルボニル置換アルキル又はジメチルアミノカルボニル置換アルキルである)で表される化合物又はその塩である、項1又は2に記載の医薬組成物。
項4.前記化合物が式(II):
(式中、R2a及びR2bはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アセチル又はメトキシカルボニルであり、R3a及びR3bはそれぞれ独立にフッ素原子、CHF2-、CF3-、CHF2O-又はCF3O-であり、R4a及びR4bはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A1はR5-(CH2)m-であり、R5はアルコキシ、アルコキシカルボニル又はジメチルアミノカルボニルであり、mは1〜5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はその塩である、項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
項5.前記認知症がアルツハイマー病である、項1〜4のいずれかに記載の医薬組成物。
項6.ケト型とエノール型が存在する1,3-ジカルボニル構造を有する化合物を含有する食品組成物であって、該化合物は脳内に移行可能であり且つケト型とエノール型でアミロイドβタンパク質の凝集体に対する親和性が異なり、1,3-ジカルボニル構造の2位が置換基を有する1つのアルキル基で置換されている、食品組成物。
項7.前記化合物はケト型に比べてエノール型の方がアミロイドβペプチドの凝集体に対する親和性が高い、項6に記載の食品組成物。
項8.前記化合物が式(I):
(式中、R1a及びR1bはそれぞれ独立に置換されていてもよいアリール基又はヘテロアリール基であり、Aはアルコキシ置換アルキル、アルコキシカルボニル置換アルキル又はジメチルアミノカルボニル置換アルキルである)で表される化合物又はその塩である、項6又は7に記載の食品組成物。
項9.前記化合物が式(II):
(式中、R2a及びR2bはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アセチル又はメトキシカルボニルであり、R3a及びR3bはそれぞれ独立にフッ素原子、CHF2-、CF3-、CHF2O-又はCF3O-であり、R4a及びR4bはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A1はR5-(CH2)m-であり、R5はアルコキシ、アルコキシカルボニル又はジメチルアミノカルボニルであり、mは1〜5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はその塩である、項6〜8のいずれかに記載の食品組成物。
項10.前記認知症がアルツハイマー病である、項6〜9のいずれかに記載の食品組成物。
本発明の医薬組成物は、アミロイドβタンパク質に対する高い親和性と高い血液脳関門透過性を有している上に、アミロイドβタンパク質凝集体の脳内濃度を減少させることが可能であり、認知症の進行を予防及び治療することができる。また、本発明の食品組成物を接種することにより、認知症の進行の予防の効果が期待される。
アルツハイマー病患者の死後脳側頭葉皮質切片における化合物1−4の蛍光染色像を示す。A: 化合物1, B: 化合物2, C: 化合物3, D: 化合物4 アルツハイマー病患者の死後脳側頭葉皮質切片における化合物1−2の蛍光染色像と抗アミロイドβ抗体による老人斑の二重染色像を示す。A: 化合物1, B: アミロイドβ免疫染色, C: 化合物2, D: アミロイドβ免疫染色 化合物1の投与5分後と30分後の血清中濃度及び脳内濃度を示すグラフである。 化合物2の投与5分後と30分後の血清中濃度及び脳内濃度を示すグラフである。 化合物3の投与5分後と30分後の血清中濃度及び脳内濃度を示すグラフである。 化合物4の投与5分後と30分後の血清中濃度及び脳内濃度を示すグラフである。 化合物5の投与5分後と30分後の血清中濃度及び脳内濃度を示すグラフである。 クルクミン、化合物1又は化合物2を混入させた飼料及びこれらを添加していない飼料を6ヶ月間与えたアルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスと野生型マウス(WT)におけるモーリス水迷路試験の結果を示すグラフである。A:1日目から6日目にかけての訓練試行の結果、*と#は1日目の試験と比べて有意差があることを示す。また記号の数は、2つはp < 0.01、3つはp < 0.001を示す。B:7日目のプローブ試験の結果、*及び#はコントロールと比べて有意差があること(p < 0.05)を示す。 アルツハイマー病のモデルマウスに通常食、クルクミン含有食、化合物1含有食又は化合物2含有食を6ヶ月間食べさせた後のAβ40凝集体とAβ42凝集体の脳内濃度を示すグラフである。上:トリス緩衝生理食塩水可溶性画分、下:ギ酸抽出画分、*はコントロールと比べて有意差があること(p < 0.01)を示す。
以下、本発明の医薬組成物、食品組成物等について詳細に説明する。
本発明の認知症の治療及び/又は予防用の医薬組成物、並びに本発明の食品組成物は、ケト型とエノール型が存在する1,3-ジカルボニル構造を有する化合物を含有し、該化合物は脳内に移行可能であり且つケト型とエノール型でアミロイドβタンパク質の凝集体に対する親和性が異なり、1,3-ジカルボニル構造の2位が置換基を有する1つのアルキル基で置換されていることを特徴とする。
本発明において、アミロイドβタンパク質とは38〜43個のアミノ酸からなるタンパク質で、アミロイド前駆体タンパク質からプロテアーゼの作用により産生されるタンパク質を意味し、アミロイドβタンパク質凝集体とは4量体以上を意味する。
本発明で使用する化合物は、ケト型とエノール型が存在する1,3-ジカルボニル構造を有する化合物であり、ここで、1,3-ジカルボニル構造を有する化合物とは以下の構造を有する化合物である。
本発明の化合物において、ケト型とは1位と3位において両方ケトンとなっているものを示し、エノール型とは1位と3位のどちらか一方がエノール化しているものを示す。本発明の化合物は、エノール型の化合物であっても、1,3-ジカルボニル構造を取り得る化合物を包含する。
本発明の化合物は、ケト・エノール互変異性を有し、水溶液中でエノール型が0.01〜50%、好ましくは0.01〜10%、より好ましくは0.01〜5%含まれる。このエノール型の比率の測定には、リン酸緩衝液に本発明の1,3-ジカルボニル構造を有する化合物を0.01〜5 mMの濃度で溶解した水溶液(pH:7.5、温度:20℃)を使用する。エノール型の比率は、NMRにより、当該水溶液中でのケト型及びエノール型それぞれの1H、19F又は13C、好ましくは19Fのピークの面積強度を測定することにより求めることができる。
本発明の化合物は、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパク質凝集体に対してケト型とエノール型で親和性が異なるという性質を有し、好ましくはケト型に比べてエノール型の方がアミロイドβタンパク質の凝集体に対する親和性が高いという性質を有する。本発明の化合物のエノール型とケト型のアミロイドβタンパク質凝集体に対する親和性の差は、蛍光阻害試験のIC50値で10倍以上であることが望ましい(特許文献1参照)。
本発明の化合物は、1,3-ジカルボニル構造の2位が置換基を有する1つのアルキル基で置換されている。このような置換基を有することにより、本発明の化合物は、極性の高い水中では主としてケト型で存在し、極性の低い有機溶媒中ではエノール型で存在するようになる。本発明の化合物が不斉炭素を含む場合は、常法に従い分離した光学異性体、及びラセミ体の両方が本発明の化合物に含まれる。
本発明の化合物は脳内に移行可能であり、このような特性を有するためには1,3-ジカルボニル構造の2位が、アルコキシ置換アルキル、アルコキシカルボニル置換アルキル、ジメチルアミノカルボニル置換アルキルなどにより置換されていることが好ましい。中でもアルコキシカルボニル置換アルキルにより置換されていることが特に好ましい。
本発明の化合物は塩であってもよく、そのような塩としては、医薬上許容される塩であればよく、例えば、カリウム塩、ナトリウム塩のようなアルカリ金属塩;カルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩;トリエタノールアミン塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機アミン塩などが挙げられる。また、これらの塩の中で結晶水を持つものもある。
本発明の好ましい化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
式(I):
式中、R1a及びR1bはそれぞれ独立に置換されていてもよいアリール基又はヘテロアリール基であり、Aはアルコキシ置換アルキル、アルコキシカルボニル置換アルキル又はジメチルアミノカルボニル置換アルキル、好ましくはアルコキシカルボニル置換アルキルである。
式(I)の化合物における用語について以下説明する。
「アリール基」とは、5又は6員の芳香族炭化水素環からなる単環又は多環系の基を意味し、具体例としては、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アントリル、ビフェニリル、テトラヒドロナフチル、クロマニル、2,3−ジヒドロ−1,4−ジオキサナフタレニル、インダニル及びフェナントリルが挙げられる。
「ヘテロアリール基」とは、N、O及びSから選択される1〜3個のヘテロ原子を含む、5又は6員の芳香環からなる単環又は多環系の基を意味し、多環系の場合には少なくとも1つの環が芳香環であればよく、具体例としては、フリル、チエニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、インドリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾ[b]チエニル及びベンズイミダゾリルが挙げられる。
Aの置換基を有している「アルキル基」は、直鎖状のC1-5アルキル基が好ましく、その具体例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル及びn−ペンチルが挙げられ、直鎖状のC1-3アルキル基が特に好ましい。
「置換されていてもよいアリール基及びヘテロアリール基」は、好ましくは、ヒドロキシ、C1-6アルキル、C1-6アルコキシ、アセトキシ、メトキシカルボニルオキシ、フッ素、CHF2-、CF3-、CHF2O-、CF3O-、メチルアミノ、CH3OOCCH2O-、及びHOOCCH2O-から選択される1〜4個の原子又は基で置換されていてもよいアリール基及びヘテロアリール基である。
「アルコキシ」及び「アルコキシカルボニル」中のアルキル基は、直鎖又は分枝状のいずれでもよく、好ましくはC1-6アルキルである。
本発明のより好ましい化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
式(II):
式中、R2a及びR2bはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アセチル又はメトキシカルボニルであり、R3a及びR3bはそれぞれ独立にフッ素原子、CHF2-、CF3-、CHF2O-又はCF3O-であり、R4a及びR4bはそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A1はR5-(CH2)m-であり、R5はアルコキシ、アルコキシカルボニル又はジメチルアミノカルボニル、好ましくはアルコキシカルボニルであり、mは1〜5、好ましくは1〜3の整数である。
R2a及びR2bのアルキル基、並びにR5のアルコキシ及びアルコキシカルボニル中のアルキル基は、直鎖又は分枝状のいずれでもよく、好ましくはC1-6アルキルである。
C1-6アルキルの具体例としてはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n−ペンチル、イソペンチル、及びヘキシルが挙げられる。
本発明の化合物は、公知の方法(例えば、国際公開公報2010/098502号など)に従い製造することができる。
本発明の化合物の具体例を以下の第1表に示す。
本発明の化合物は、アミロイドβタンパク質に対する高い親和性と高い血液脳関門透過性を有している。現状のアルツハイマー治療薬は、Aβ凝集体を減少させるものではなく、根本的な治療効果は期待できない。それに対して、本発明の化合物は、現状の治療薬とはメカニズムが異なるものであり、Aβ凝集体の脳内濃度を減少させることが可能である。そのため、本発明の化合物により、認知症の根本治療が可能となることが期待される。また、本発明の化合物は、進行が進んだタイプの認知症に対しても効果が期待される。
本発明の化合物は、試験例で示されているように経口接種でも効果があるため、サプリメントとしても有用である。
認知症としては、アルツハイマー病に加え、異常蛋白が脳に蓄積する前頭側頭葉型認知症、ピック病、レビー小体病、プリオン病等が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、ヒトを含む哺乳動物に対して投与される。本発明の医薬組成物の投与は、局所的であってもよく、全身的であってもよい。投与方法には特に制限はなく、経口的又は非経口的に投与される。非経口的投与経路としては、皮下、腹腔内、静脈、動脈又は脊髄液への注射又は点滴、経皮的投与等が挙げられる。
本発明の医薬組成物は、ヒトへの投与に適した医薬上許容される形態であって、生理学的に許容し得る添加剤を含む。かかる組成物は、適宜、医薬として許容し得る希釈剤、緩衝剤、可溶化剤(例えば、シクロデキストリン、ポリエチレングリコール、あるいはTween、プルロニック、クレモフォール、リン脂質などの界面活性剤)、無痛化剤等を添加してもよく、更に必要に応じて、医薬として許容し得る溶剤、安定化剤又は酸化防止剤(例えばアスコルビン酸等)のような成分を含んでもよい。本発明の医薬組成物の投与量は、用法、患者の年齢、性別その他の条件、及び疾患の程度により適宜選択される。
本発明の医薬組成物における上記化合物の含量は、0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜100重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
本発明の医薬組成物は認知症の進行の予防及び治療に有用である。
本発明の食品組成物には、動物(ヒトを含む)が摂取できるあらゆる食品組成物が含まれる。本発明の食品組成物には、必要に応じて、アミノ酸、核酸、ミネラル類、ビタミン類、フラボノイド類、キノン類、ポリフェノール類、結合剤、清涼剤、甘味料、必須脂肪酸、崩壊剤、滑沢剤、香料、安定化剤、着色料、防腐剤、界面活性剤、徐放調整剤、溶解剤、湿潤剤等を配合することができる。
本発明の食品組成物の種類は、特に限定されず、例えば、飲料類(コーヒー、ジュース、茶飲料のような清涼飲料、乳飲料、炭酸飲料、日本酒、洋酒、果実酒のような酒等);スプレッド類(カスタードクリーム等);ペースト類(フルーツペースト等);洋菓子類(チョコレート、ドーナツ、パイ、シュークリーム、ガム、ゼリー、キャンデー、クッキー、ケーキ、プリン等);和菓子類(大福、餅、饅頭、カステラ、あんみつ、羊羹等);氷菓類(アイスクリーム、アイスキャンデー、シャーベット等);食品類(カレー、牛丼、雑炊、味噌汁、スープ、ミートソース、パスタ、漬物、ジャム、ローヤルゼリー等);乳製品;発酵食品(ヨーグルト、ローヤルゼリー等);調味料類(ドレッシング、ふりかけ、旨味調味料、スープの素等)などが挙げられる。
また、本発明の食品組成物は、健康食品、機能性食品、栄養補助食品、サプリメント、又は特定保健用食品としても使用できる。サプリメントとして使用する際の投与単位形態については特に限定されず適宜選択できるが、例えば錠剤、顆粒剤、液剤、カプセル剤、散剤等が挙げられる。
本発明の食品組成物における上記化合物の含量は、食品組成物全量中0.01〜100重量%、好ましくは0.1〜100重量%の範囲から適宜選択することが可能である。
本発明の食品組成物の摂取量は、摂取者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜設定することができる。
本発明の食品組成物の接種により、認知症の進行の予防の効果が期待される。
次に本発明に係わる合成例及び試験例を記載するが、本発明はこれらに限定されるわけではない。
合成例1:1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−メトキカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン(化合物1)の合成
4−アセチル−5−オキソヘキサン酸メチル0.93 g (5 mmol)と三酸化二ホウ素0.28 g (4 mmol)の酢酸エチル(10 mL)溶液を40℃に30分間加熱した後、4−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンズアルデヒド2.06 g (10 mmol)とホウ酸トリ−n−ブチル2.7 mL (10 mmol)を加え、同じ温度でさらに30分間加熱を続けた。ついで、n−ブチルアミン0.5 mL (5 mmol)の酢酸エチル(1 mL)溶液を加えて、40℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した後、1M−塩酸(15 mL)を加え、10分間激しく攪拌した。反応液に酢酸エチル(100 mL)を加え、有機層を0.5M−塩酸で洗い、ついで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)により精製して得られた物質に少量のジクロロメタンを加えて室温に放置すると、融点142−143℃の1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−メトキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン1.51 gが得られた。
1HNMR (d6DMSO) : δ2.0〜3.2 (4H), δ3.60 (s, 1.4H), δ3.64 (s, 1.6H), δ4.65 (t, J=7.0Hz, 0.55H), δ7.03 (d, J=16.2Hz, 1.1H), δ7.10 (d, J=8.6Hz, 1.1H), δ7.12 (d, J=8.6Hz, 0.9H), δ7.25 (d, J=16.2Hz, 0.9H), δ7.6〜7.75 (arom.H, 4H), δ7.81 (d, J=16.2Hz, 2H), δ10.90 (br.s, 2H), δ17.90 (s, 0.45H)
19FNMR (d6DMSO) : δ−58.09 (s), δ−57.96 (s)
合成例2:1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−エトキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン(化合物3)の合成
4−アセチル−5−オキソヘキサン酸エチル200 mg (1 mmol)と三酸化二ホウ素56 mg (0.8 mmol)の酢酸エチル(2 mL)溶液を40℃に30分間加熱した後、4−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンズアルデヒド412 mg (2 mmol)とホウ酸トリ−n−ブチル0.54 mL (2 mmol)を加え、同じ温度でさらに30分間加熱を続けた。ついで、n−ブチルアミン0.1 mL (1 mmol)の酢酸エチル(0.2 mL)溶液を加えて、40℃で3時間加熱した。反応液を室温に冷却した後、1M−塩酸(3 mL)を加え、10分間激しく攪拌した。反応液に酢酸エチル(20 mL)を加え、有機層を0.5M−塩酸で洗い、ついで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:2)により精製して得られた物質に少量のジクロロメタンを加えて室温に放置すると、融点155−156℃の1,7−(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−エトキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン246 mgが得られた。
1HNMR (d6DMSO) : δ1.13 (t, J=7Hz), δ1.15 (t, J=7Hz) 両者合わせて3H
δ2.03 (m), δ2.30 (m), δ2.46 (m), δ2.98 (m) 合わせて4H
δ4.00 (q, J=7Hz), δ4.05 (q, 7Hz) 両者合わせて2H, δ4.60 (t, J=7Hz, 0.6H)
δ6.98 (d, J=16Hz), δ7.05 (d, J=8Hz), δ7.07 (d, J=8Hz), δ7.21 (d, J=16Hz) 合わせて4H
δ7.55〜7.70 (4H), δ7.76 (d, J=16Hz, 2H), δ10.87 (br.s, 2H), δ17.84 (s, 0.4H)
19FNMR (d6DMSO):δ−57.84 (s), δ−57.71 (s)
合成例3:1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−イソプロポキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン(化合物4)の合成
4−アセチル−5−オキソヘキサン酸イソプロピル214 mg (1 mmol)と三酸化二ホウ素56 mg (0.8 mmol)の酢酸エチル(2 mL)溶液を40℃に30分間加熱した後、4−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンズアルデヒド412 mg (2 mmol)とホウ酸トリ−n−ブチル0.54 mL (2 mmol)を加え、同じ温度でさらに30分間加熱を続けた。ついで、n−ブチルアミン0.1 mL (1 mmol)の酢酸エチル(0.2 mL)溶液を加えて、40℃に3.5時間加熱した。反応液を室温に冷却した後、1M−塩酸(3 mL)を加え、5分間激しく攪拌した。反応液に酢酸エチル(20 mL)を加え、有機層を0.5M−塩酸で洗い、ついで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:3)により精製して得られた物質に少量のジクロロメタンを加えて室温に放置すると、融点191℃の1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−イソプロポキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン310 mgが得られた。
1HNMR (d6DMSO): δ1.13 (d, J=6.2Hz, 0.45H), δ1.19 (d, J=6.2Hz, 0.55H), δ2.07 (m, 1.2H), δ2.26 (m, 1.2H), δ2.43 (m, 0.8H), δ2.98 (m, 0.8H), δ4.59 (t, J=6.7Hz, 0.6H), δ4.86 (septet, J=6.2Hz, 1H), δ6.98 (d, J=15.9Hz, 1.2H), δ7.0〜7.1 (2H), δ7.21 (d, J=15.9Hz, 0.8H), δ7.55〜7.7 ( 4H), δ7.76 (d, J=15.9Hz, 2H), δ17.83 (s, 0.4H)
19FNMR (d6DMSO): δ−58.34 (s), δ−58.21 (s)
合成例4:1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−tert−ブトキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン(化合物5)の合成
4−アセチル−5−オキソヘキサン酸ブチル(tert)228 mg (1 mmol)と三酸化二ホウ素56 mg (0.8 mmol)の酢酸エチル(2 mL)溶液を40℃に30分間加熱した後、4−ヒドロキシ−3−(トリフルオロメトキシ)ベンズアルデヒド412 mg (2 mmol)とホウ酸トリ−n−ブチル0.54 mL (2 mmol)を加え、同じ温度でさらに30分間加熱を続けた。ついで、n−ブチルアミン0.1 mL (1 mmol)の酢酸エチル(0.2 mL)溶液を加えて、40℃に3.5時間加熱した。反応液を室温に冷却した後、1M−塩酸(3 mL)を加え、5分間激しく攪拌した。反応液に酢酸エチル(20 mL)を加え、有機層を0.5M−塩酸で洗い、ついで飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した後、硫酸マグネシウムで乾燥し、ロータリーエバポレーターにて溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液:酢酸エチル:n−ヘキサン=1:3)により精製して得られた物質に少量のジクロロメタンを加えて室温に放置すると、融点175℃の1,7−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−トリフルオロメトキシフェニル)−4−tert−ブトキシカルボニルエチル−1,6−ヘプタジエン−3,5−ジオン264 mgが得られた。
1HNMR (d6DMSO):δ1.35 (s), δ1.38 (s) 両者合わせて9H
δ2.03 (m), δ2.19 (m), δ2.39 (m), δ2.95 (m) 合わせて4H, δ4.57 (t, J=7Hz,0.5H), δ6.98 (d, J=16Hz), δ7.05 (d, J=8Hz), δ7.07 (d, J=8Hz), δ7.21 (d, J=16Hz) 合わせて4H,
δ7.55〜7.70 (4H), δ7.76 (d, J=16Hz, 2H), δ10.87 (br.s, 2H), δ17.79 (s, 0.5H)
19FNMR (d6DMSO): δ−58.31 (s), δ−58.18 (s)
試験例1.化合物のヒト老人斑(アミロイドβタンパク質凝集体)への結合能の検証
化合物1−4の各2 mg/mlのDMSO溶液を調製した後、各々200μlを量りとり、0.3%-Triton X100含有0.1 Mリン酸緩衝液(pH7.4)(以下、PBS-T)を加えて4 mlの試験溶液とした(薬液濃度:200μg/ml)。
アルツハイマー症例のヒト脳組織固定標本(20μm厚)を2%スキムミルク入りPBS-T液中に室温で1時間浸漬した後、マウス抗ヒトアミロイドβモノクローナル抗体(4G8, Signet社、3,000倍希釈)と4℃で一晩反応させた。ついで本検体をPBS-Tで10分間3回洗浄した後、遮光のうえAlexa647抗マウスIgG抗体(Molecular Probes社)と室温で4時間反応させた。4時間後、切片を取り出し上記試験試薬中に移し、遮光下に室温で1時間浸漬した後、PBS-Tで5分間3回洗浄した。更に50 mMトリス塩酸バッファー(pH7.5)で5分間洗浄後、グリセロール封入を行なったものを検体とし倒立型蛍光顕微鏡(IX70、オリンパス)にて老人斑への化合物の結合能を観察した。なお、化合物像はWBフィルターで、アミロイドβタンパク質像はCy5フィルターで測定した。また、陰性対照試験として0.1%-DMSO含有PBS-T溶液を用いて同染色処理をおこなった。
図1にアルツハイマー病患者の死後脳側頭葉皮質切片における化合物1−4の蛍光染色像を、図2に化合物1−2の蛍光染色像と抗アミロイドβ抗体による老人斑の二重染色像を示す。左列は化合物(WB)の染色像、右列はアミロイドβ抗体の染色像を示す。化合物1−2は老人斑を形成するアミロイドβタンパク質と親和性を有し、同一位置に染色を認めた。なお、陰性対照では老人斑特異的な蛍光染色像は認められなかった。
試験例2.化合物が血液脳関門を通過することの検証
無麻酔下のマウスに尾静脈から化合物1−5について25 mg/kg又は50 mg/kgをワンショットで投与し、5分後、30分後に血液及び脳を採取した。高速液体クロマトグラフィーにて、各化合物及びその代謝産物である化合物2の濃度を測定した。血清及び脳内の濃度変化をグラフ化し、それぞれ折れ線内の面積値(Area Under the Curve; 以下AUC)を求めた(図3)。化合物の脳内移行率は、脳内AUC/血清AUC x 100 (%)として計算した。各化合物の投与5分後と30分後の血清及び脳内濃度(主な代謝産物を含めた総量で表示)の測定結果を図3に示す。各化合物の構造式と脳内移行率を第2表に示す。
第2表の結果は、中央の側鎖をカルボン酸にした化合物2以外の化合物は脳内に移行することを示している。逆に言えば、中央の側鎖をカルボン酸にすると脳に移行しなくなることが分かる。
試験例3.アルツハイマー病遺伝子改変モデルマウスの学習及び記憶能力に対する化合物の治療効果の検証
脳血液関門を通過する化合物1と通過しない化合物2をアルツハイマー病遺伝子改変モデルマウスに投与し治療効果を検証した。アルツハイマー病遺伝子改変モデルマウスは、ジャクソン研究所で開発されたヒト変異型アミロイド前駆タンパク(APP)遺伝子とヒト変異型プレセニリン1 (PS1)遺伝子のダブルトランスジェニックマウス(APP/PS1マウス)を用いた。9月齢のAPP/PS1マウスに、クルクミン、化合物1又は化合物2を0.05%混合したAIM-93M飼料を6月間与え、投与終了前の7日間にモーリス水迷路試験を実施した。
まずプール内に放したマウスが水面下1 cmに設置したプラットフォームへ到達するまでの時間を測定した。測定は最大90秒間記録し、その間に到達しなかった場合は90秒と記録した。この試行を1日5回繰り返し6日間実施した。7日目にプローブ試行を実施した。プラットフォームを取り除いたプールにマウスを放ち100秒間泳がせた。そして100秒間の遊泳時間の内、それまでプラットフォームが設置されていた区画における滞留時間を測定した。図4にモーリス水迷路試験の結果を示す。
図4A:正常な野生型マウス(○+破線)では、学習と共に水中のプラットフォームを発見する時間が短くなり、3日目以降では1日目と比べて統計的に有意に短い時間で発見できている(**p < 0.01, ***p < 0.001)。一方、アルツハイマー病モデルマウスは、何日たっても発見するまでの時間に変化はない(○+実線)。クルクミン(▲+実線)、血液脳関門を通らない化合物2(◆+実線)を食べたアルツハイマー病モデルマウスでも、発見するまでの時間に変化はなかった。しかし、化合物1を食べさせたアルツハイマー病モデルマウス(■+実線)は学習効果が認められ、5日目、6日目では1日目と比べて統計的に有意に短い時間で発見できている(##p < 0.01)。
図4B:7日目に水中のプラットフォームを外してマウスを100秒間泳がせたところ、正常な野生型マウスでは、アルツハイマー病モデルマウスに比べて、プラットフォームのあった場所にマウスが長い時間留まって泳いでいた(*p < 0.05)。クルクミンや化合物2を食べたアルツハイマー病モデルマウスでは、時間の変化は認められなかった。しかし、化合物1を食べさせたアルツハイマー病モデルマウスでは、正常マウスのようにプラットフォームのあった場所に長い時間留まっていた(#p < 0.05)。
さらに、本発明者は、化合物1については毒性が低く、変異原性がないことを確認している。
試験例4.アルツハイマー病遺伝子改変モデルマウスの脳内に蓄積するアミロイドβタンパク質凝集体に対する化合物の効果の検証
アルツハイマー病の遺伝子改変モデルマウスとしてヒト変異型アミロイド前駆タンパク質(APP)遺伝子とヒト変異型プレセニリン1 (PS1)遺伝子のダブルトランスジェニックマウス(APP/PS1マウス)を用いた。9月齢のAPP/PS1マウスに、クルクミン、化合物1又は化合物2を0.05%混合したAIM-93M飼料を6月間与えた。その後、マウスを安楽死させた後、脳を摘出した。
摘出した脳組織湿重量150 mgあたり1 mLのトリス緩衝生理食塩水(TBS)を加え、ホモジナイズした後、遠心した。上清をTBS可溶性画分として分離し、沈渣には上記と同量の70%ギ酸(Formic acid, FA)を加え、ホモジナイズした後、遠心した。上清を1 Mトリス溶液にて20倍希釈したものをギ酸(FA)抽出画分とした。
それぞれの画分に含まれるAβ量はヒト/ラットβアミロイド(1-40) ELISAキットワコーII (294-64701, 和光純薬)及びヒト/ラットβアミロイド(1-42) ELISAキットワコー (290-62601, 和光純薬)を用いて測定した。なお、TBS可溶性画分は可溶性Aβを、ギ酸(FA)抽出画分は不溶性のAβ凝集体を含むと考えられている。結果を図5に示す。
トリス緩衝生理食塩水(TBS)で回収した分画では、可溶性Aβ40、可溶性Aβ42ともにいずれの群においても統計的な差は見られなかった(図4上)。一方、ギ酸で抽出した分画では、Aβ40凝集体の脳内濃度は、化合物1含有食を食べたマウスで低い傾向にあったが、統計的に有意な差ではなかった。一方、Aβ42凝集体の脳内濃度は、化合物1含有食を食べたマウスで統計的に有意に減少した(図4下)。
本発明は、アルツハイマー病をはじめとする認知症の治療に利用される。

Claims (7)

  1. ケト型とエノール型が存在する1,3-ジカルボニル構造を有する化合物を含有する認知症の治療及び/又は予防用の医薬組成物であって、該化合物は脳内に移行可能であり且つケト型とエノール型でアミロイドβタンパク質の凝集体に対する親和性が異なり、1,3-ジカルボニル構造の2位が置換基を有する1つのアルキル基で置換されており、
    該化合物が式(II)
    (式中、R 2a 及びR 2b はそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アセチル又はメトキシカルボニルであり、R 3a 及びR 3b はそれぞれ独立にフッ素原子、CHF 2 -、CF 3 -、CHF 2 O-又はCF 3 O-であり、R 4a 及びR 4b はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A 1 はR 5 -(CH 2 ) m -であり、R 5 はアルコキシ、アルコキシカルボニル又はジメチルアミノカルボニルであり、mは1〜5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はその塩である、
    医薬組成物。
  2. 前記化合物はケト型に比べてエノール型の方がアミロイドβペプチドの凝集体に対する親和性が高い、請求項1に記載の医薬組成物。
  3. 前記認知症がアルツハイマー病である、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
  4. ケト型とエノール型が存在する1,3-ジカルボニル構造を有する化合物を含有する食品組成物であって、該化合物は脳内に移行可能であり且つケト型とエノール型でアミロイドβタンパク質の凝集体に対する親和性が異なり、1,3-ジカルボニル構造の2位が置換基を有する1つのアルキル基で置換されており、
    該化合物が式(II)
    (式中、R 2a 及びR 2b はそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アセチル又はメトキシカルボニルであり、R 3a 及びR 3b はそれぞれ独立にフッ素原子、CHF 2 -、CF 3 -、CHF 2 O-又はCF 3 O-であり、R 4a 及びR 4b はそれぞれ独立に水素原子又はフッ素原子であり、A 1 はR 5 -(CH 2 ) m -であり、R 5 はアルコキシ、アルコキシカルボニル又はジメチルアミノカルボニルであり、mは1〜5の整数である)で表されるクルクミン誘導体又はその塩である、
    食品組成物。
  5. 前記化合物はケト型に比べてエノール型の方がアミロイドβペプチドの凝集体に対する親和性が高い、請求項に記載の食品組成物。
  6. 認知症の進行予防又は改善用である、請求項4又は5に記載の食品組成物。
  7. 前記認知症がアルツハイマー病である、請求項に記載の食品組成物。
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