以下、本発明を実施するための形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。なお本明細書を通じ、一般式において同一符号で表されている構造は、分子中に複数存在する場合に、互いに同一であるか、又は異なっていることができる。
<感光性樹脂組成物>
本発明の一態様が提供する感光性樹脂組成物は、
(A)フェノール樹脂、
(B)カルボキシ基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物、並びにカルボキシル基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物の酸無水物からなる群から選択される少なくとも一つの化合物(本開示で、「(B)化合物」ともいう。)、並びに
(C)光酸発生剤、
を含有する。以下各成分を順に説明する。なお本開示では、(B)化合物以外の成分として記載される各種化合物のうち(B)化合物の定義にも含まれるものについては、(B)化合物としても作用するものとして取り扱い、その配合量は(B)化合物の配合量にも含めるものとする。
[(A)フェノール樹脂]
本実施形態におけるフェノール樹脂とは、フェノール性水酸基を有する繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して50%以上有する樹脂を意味する。(A)フェノール樹脂は、熱硬化時にポリイミド前駆体が環化(イミド化)するような構造変化がおこらないため、低温(例えば250℃以下、好ましくは200℃以下)での硬化が可能であるという利点を有する。
本実施形態では、(A)フェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは700〜100,000であり、より好ましくは1,500〜80,000であり、更に好ましくは2,000〜50,000である。重量平均分子量は、硬化膜の耐熱性(ガラス転移温度、5%重量減少温度等)の観点から、700以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性の観点から、100,000以下であることが好ましい。
本開示における重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により行い、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により算出することができる。
(A)フェノール樹脂は、アルカリ水溶液への溶解性、レジストパターンを形成する際の感度と解像性、及び硬化膜の残留応力の観点から、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、下記一般式(6):
{式中、aは、1〜3の整数であり、bは、0〜3の整数であり、1≦(a+b)≦4であり、R
1は、炭素数1〜20の1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基であり、bが2又は3である場合には、複数のR
1は、互いに同一でも又は異なっていてもよく、そしてXは、不飽和結合を有していてもよい炭素数2〜10の2価の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、下記一般式(7):
(式中、pは、1〜10の整数である。)で表される2価のアルキレンオキシド基、及び炭素数6〜12の芳香族環を有する2価の有機基からなる群から選択される2価の有機基である。}
で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂、及び炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂を含むことが好ましい。(A)フェノール樹脂は、より好ましくは、ノボラック、ポリヒドロキシスチレン、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂、及び炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂からなる。
(ノボラック)
本開示で、ノボラックとは、フェノール類とホルムアルデヒドとを触媒の存在下で縮合させることにより得られるポリマー全般を意味する。一般に、ノボラックは、フェノール類1モルに対し、ホルムアルデヒド1モル未満を縮合させて得ることができる。本開示で、フェノール類とは、フェノール性水酸基を有する化合物及びその誘導体を意味する。上記フェノール類としては、例えば、フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール、o−ブチルフェノール、m−ブチルフェノール、p−ブチルフェノール、2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール、2,3,5−トリメチルフェノール、3,4,5−トリメチルフェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール、α−ナフトール、β−ナフトール等が挙げられる。具体的なノボラックとしては、例えば、フェノール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂、フェノール−ナフトール/ホルムアルデヒド縮合ノボラック樹脂等が挙げられる。
ノボラックの重量平均分子量は、好ましくは700〜100,000であり、より好ましくは1,500〜80,000であり、更に好ましくは2,000〜50,000である。重量平均分子量は、硬化膜の耐熱性の観点から、700以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性の観点から、100,000以下であることが好ましい。
(ポリヒドロキシスチレン)
本開示で、ポリヒドロキシスチレンとは、ヒドロキシスチレンを重合単位として含有するポリマー全般を意味する。ポリヒドロキシスチレンの好ましい例としては、ポリパラビニルフェノールが挙げられる。ポリパラビニルフェノールは、パラビニルフェノールを重合単位として含有するポリマー全般を意味する。従って、本発明の目的に反しない限りは、ポリヒドロキシスチレン(例えばポリパラビニルフェノール)を構成するために、ヒドロキシスチレン(例えばパラビニルフェノール)以外の重合単位を使用することができる。ポリヒドロキシスチレンにおいて、全重合単位のモル数基準でのヒドロキシスチレン単位のモル数の割合は、好ましくは10モル%〜99モル%、より好ましくは20〜97モル%、更に好ましくは30〜95モル%である。上記割合が10モル%以上である場合、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性の観点で有利であり、99モル%以下である場合、後述の共重合成分を含有する組成物を硬化した硬化膜の耐熱性の観点から有利である。ヒドロキシスチレン(例えばパラビニルフェノール)以外の重合単位は、ヒドロキシスチレン(例えばパラビニルフェノール)と共重合可能な任意の重合単位であることができる。ヒドロキシスチレン(例えばパラビニルフェノール)以外の重合単位を与える共重合成分としては、限定されるものではないが、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ブチルメタクリレート、オクチルアクリレート、2−エトキシエチルメタアクリレート、t−ブチルアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、1,3−プロパンジオールジアクリレート、デカメチレングリコールジアクリレート、デカメチレングリコールジメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジアクリレート、グリセロールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリセロールトリアクリレート、2,2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリオキシエチル−2−2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)−プロパンジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジメタクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、1−フェニルエチレン−1,2−ジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,5−ペンタンジオールジメタクリレート及び1,4−ベンゼンジオールジメタクリレートのようなアクリル酸のエステル;スチレン並びに、例えば、2−メチルスチレン及びビニルトルエンのような置換スチレン;例えば、ビニルアクリレート及びビニルメタクリレートのようなビニルエステルモノマー;並びにo−ビニルフェノール、m−ビニルフェノール等が挙げられる。
また、上記で説明されたノボラック及びポリヒドロキシスチレンとしては、それぞれ、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用されることができる。
ポリヒドロキシスチレンの重量平均分子量は、好ましくは700〜100,000であり、より好ましくは1,500〜80,000であり、更に好ましくは2,000〜50,000である。重量平均分子量は、硬化膜の耐熱性の観点から、700以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性の観点から、100,000以下であることが好ましい。
(一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂)
本実施形態では、(A)フェノール樹脂が、下記一般式(6):
{式中、aは、1〜3の整数であり、bは、0〜3の整数であり、1≦(a+b)≦4であり、R
1は、炭素数1〜20の1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基であり、bが2又は3である場合には、複数のR
1は、互いに同一でも又は異なっていてよく、そしてXは、不飽和結合を有していてもよい炭素数2〜10の2価の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、下記一般式(7):
(式中、pは、1〜10の整数である。)で表される2価のアルキレンオキシド基、及び炭素数6〜12の芳香族環を有する2価の有機基からなる群から選択される2価の有機基である。}で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂を含むこともまた好ましい。上記の繰り返し単位を有するフェノール樹脂は、例えば従来使用されてきたポリイミド樹脂及びポリベンゾオキサゾール樹脂と比べて低温での硬化が可能であり、かつ良好な伸度を有する硬化膜の形成を可能にする点で特に有利である。フェノール樹脂分子中に存在する上記繰り返し単位は、1種又は2種以上の組合せであることができる。
上記一般式(6)において、R
1は、一般式(6)にかかる樹脂を合成する際の反応性の観点から、炭素数1〜20の1価の有機基、ハロゲン原子、ニトロ基及びシアノ基からなる群から選択される1価の置換基である。R
1は、アルカリ溶解性の観点から、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、及び下記一般式(15):
{式中、R
14、R
15及びR
16は、各々独立に、水素原子、不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基であり、そしてR
17は、不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の2価の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6〜20の2価の芳香族炭化水素基である。}で表される4つの基からなる群から選択される1価の置換基であることが好ましい。
本実施形態では、上記一般式(6)において、aは、1〜3の整数であるが、アルカリ溶解性及び硬化膜の伸度の観点から2が好ましい。また、aが2である場合には、水酸基同士の置換位置は、オルト、メタ及びパラ位のいずれであってもよい。そしてaが3である場合には、水酸基同士の置換位置は、1,2,3−位、1,2,4−位及び1,3,5−位等、いずれであってもよい。
本実施形態では、上記一般式(6)において、aが1の場合は、アルカリ溶解性を向上するために、一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂(以下、(a1)樹脂ともいう)にさらにノボラック及びポリヒドロキシスチレンから選択されるフェノール樹脂(以下(a2)樹脂ともいう)を混合することができる。
(a1)樹脂と(a2)樹脂との混合比は、質量比で(a1)/(a2)=10/90〜90/10の範囲であることが好ましい。この混合比は、アルカリ水溶液中での溶解性、及び硬化膜の伸度の観点から、(a1)/(a2)=10/90〜90/10が好ましく、(a1)/(a2)=20/80〜80/20であることがより好ましく、(a1)/(a2)=30/70〜70/30であることがさらに好ましい。
上記(a2)樹脂としてのノボラック及びポリヒドロキシスチレンとしては、上記(ノボラック)及び(ポリヒドロキシスチレン)の項に示したものと同様の樹脂を使用できる。
本実施形態では、上記一般式(6)において、bは、0〜3の整数であるが、アルカリ溶解性及び硬化膜の伸度の観点から、0又は1であることが好ましい。また、bが2又は3である場合には、複数のR1は、互いに同一でも又は異なっていてもよい。
さらに、本実施形態では、上記一般式(6)において、a及びbは、1≦(a+b)≦4の関係を満たす。
本実施形態では、上記一般式(6)において、Xは、硬化レリーフパターン形状及び、硬化膜の伸度の観点から、不飽和結合を有していてもよい炭素数2〜10の2価の鎖状脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の2価の脂環式炭化水素基、上記一般式(7)で表されるアルキレンオキシド基、及び炭素数6〜12の芳香族環を有する2価の有機基からなる群から選択される2価の有機基である。これらの2価の有機基の中で、硬化後の膜の強靭性の観点から、Xは、下記一般式(8):
{式中、R
2、R
3、R
4及びR
5は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の1価の脂肪族炭化水素基、又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されてなる炭素数1〜10の1価の脂肪族炭化水素基であり、n
1は0〜4の整数であって、n
1が1〜4の整数である場合のR
6は、ハロゲン原子、水酸基、又は炭素数1〜12の1価の有機基であり、少なくとも1つのR
6は水酸基であり、n
1が2〜4の整数である場合の複数のR
6は互いに同一でも又は異なっていてもよい。}で表される2価の基、及び下記一般式(9):
{式中、R
7、R
8、R
9及びR
10は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜10の1価の脂肪族炭化水素基、又は水素原子の一部若しくは全部がフッ素原子で置換されてなる炭素数1〜10の1価の脂肪族炭化水素基であり、Wは、単結合、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数1〜10の鎖状脂肪族炭化水素基、フッ素原子で置換されていてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、下記一般式(7):
(式中、pは、1〜10の整数である。)で表される2価のアルキレンオキシド基、及び下記式(10):
で表される2価の基からなる群から選択される2価の有機基である。}で表される2価の基からなる群から選択される2価の有機基を含むことが好ましく、該2価の有機基からなることがより好ましい。上記炭素数6〜12の芳香族環を有する2価の有機基の炭素数は、好ましくは8〜75、より好ましくは8〜40である。なお上記炭素数6〜12の芳香族環を有する2価の有機基の構造は、一般的には、上記一般式(6)中、OH基及び任意のR
1基が芳香環に結合している構造とは異なる。
更に、上記一般式(9)で表される2価の有機基は、樹脂組成物のパターン形成性、及び硬化後の硬化膜の伸度が良好である観点から、下記式(11):
で表される2価の有機基を含むことがより好ましく、さらに下記式(12):
で表される2価の有機基を含むことが特に好ましい。
一般式(6)で表される構造中、Xは、前記式(11)又は(12)で表される構造が特に好ましく、Xにおける式(11)又は(12)で表される構造で表される部位の割合は、伸度の観点から、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがより好ましい。上記割合は、100質量%であってもよいが、組成物のアルカリ溶解性の観点から、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
また、上記一般式(6)で表される構造を有するフェノール樹脂の中で、下記一般式(13)で表される構造及び下記一般式(14)で表される構造の両方を同一樹脂骨格内に有する構造は、組成物のアルカリ溶解性及び、硬化膜の伸度の観点から特に好ましい。
{式中、R
11は炭化水素基及びアルコキシ基からなる群から選択される炭素数1〜10の1価の基であり、n
2は1〜3であり、n
3は0〜2の整数であり、m
1は1〜500の整数であり、2≦(n
2+n
3)≦4であり、n
3が2の場合には、複数のR
11は互いに同一でも又は異なっていてもよい。}
{式中、R
12及びR
13は各々独立に炭化水素基及びアルコキシ基からなる群から選択される炭素数1〜10の1価の基であり、n
4は1〜3の整数であり、n
5は0〜2の整数であり、n
6は0〜3の整数であり、m
2は1〜500の整数であり、2≦(n
4+n
5)≦4であり、n
5が2の場合には、複数のR
12は互いに同一でも又は異なっていてもよく、n
6が2又は3の場合には、複数のR
13は互いに同一でも又は異なっていてもよい。}
上記一般式(13)のm1及び上記一般式(14)のm2は、フェノール樹脂の主鎖におけるそれぞれの繰り返し単位の総数を表す。すなわち、(A)フェノール樹脂において、例えば、上記一般式(13)で表される構造における括弧内の繰り返し単位と上記一般式(14)で表される構造における括弧内の繰り返し単位とは、ランダム、ブロック又はこれらの組合せで配列されていることができる。m1及びm2は各々独立に1〜500の整数であり、下限値は、好ましくは2、より好ましくは3であり、上限値は、好ましくは450、より好ましくは400、さらに好ましくは350である。m1及びm2は、各々独立に、硬化後の膜の強靭性の観点から、2以上であることが好ましく、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、450以下であることが好ましい。m1及びm2の合計は、硬化後の膜の強靭性の観点から、好ましくは2以上、より好ましくは4以上、更に好ましくは6以上であり、アルカリ水溶液に対する溶解性の観点から、好ましくは200以下、より好ましくは175以下、更に好ましくは150以下である。
上記一般式(13)で表される構造及び上記一般式(14)で表される構造の両方を同一樹脂骨格内に有する(A)フェノール樹脂において、上記一般式(13)で表される構造のモル比率が高いほど、硬化後の膜物性が良好であり、耐熱性にも優れ、一方、上記一般式(14)で表される構造のモル比率が高いほど、アルカリ溶解性が良好であり、硬化後のパターン形状に優れる。従って、上記一般式(13)で表される構造の上記一般式(14)で表される構造に対する比率m1/m2は、硬化後の膜物性の観点から、好ましくは20/80以上、より好ましくは40/60以上、特に好ましくは50/50以上であり、アルカリ溶解性及び硬化レリーフパターン形状の観点から、好ましくは90/10以下、より好ましくは80/20以下、さらに好ましくは70/30以下である。
一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂は、典型的には、フェノール類と、共重合成分(具体的には、アルデヒド基を有する化合物(トリオキサンのように分解してアルデヒド化合物を生成する化合物も含む)、ケトン基を有する化合物、メチロール基を分子内に2個有する化合物、アルコキシメチル基を分子内に2個有する化合物、及びハロアルキル基を分子内に2個有する化合物からなる群から選択される1種類以上の化合物)とを含み、より典型的にはこれらからなるモノマー成分を、重合反応させることによって合成できる。例えば、下記に示すようなフェノール類に対し、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール化合物、アルコキシメチル化合物、ジエン化合物、又はハロアルキル化合物等の共重合成分を重合させて(A)フェノール樹脂を得ることができる。この場合、上記一般式(6)中、OH基及び任意のR1基が芳香環に結合している構造で表される部分は上記フェノール類に由来し、Xで表される部分は上記共重合成分に由来することになる。反応制御、並びに得られた(A)フェノール樹脂及び感光性樹脂組成物の安定性の観点から、フェノール類と上記共重合成分との仕込みモル比(フェノール類):(共重合成分)は、5:1〜1.01:1であることが好ましく、2.5:1〜1.1:1であることがより好ましい。
一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂の重量平均分子量は、好ましくは700〜100,000であり、より好ましくは1,500〜80,000であり、更に好ましくは2,000〜50,000である。重量平均分子量は、硬化膜の耐熱性の観点から、700以上であることが好ましく、一方で、感光性樹脂組成物のアルカリ溶解性の観点から、100,000以下であることが好ましい。
一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂を得るために使用できるフェノール類としては、例えば、クレゾール、エチルフェノール、プロピルフェノール、ブチルフェノール、アミルフェノール、シクロヘキシルフェノール、ヒドロキシビフェニル、ベンジルフェノール、ニトロベンジルフェノール、シアノベンジルフェノール、アダマンタンフェノール、ニトロフェノール、フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、トリフルオロメチルフェノール、N−(ヒドロキシフェニル)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ヒドロキシフェニル)−5−メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、トリフルオロメチルフェノール、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸エチル、ヒドロキシ安息香酸ベンジル、ヒドロキシベンズアミド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ヒドロキシアセトフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾニトリル、レゾルシノール、キシレノール、カテコール、メチルカテコール、エチルカテコール、ヘキシルカテコール、ベンジルカテコール、ニトロベンジルカテコール、メチルレゾルシノール、エチルレゾルシノール、ヘキシルレゾルシノール、ベンジルレゾルシノール、ニトロベンジルレゾルシノール、ハイドロキノン、カフェイン酸、ジヒドロキシ安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸メチル、ジヒドロキシ安息香酸エチル、ジヒドロキシ安息香酸ブチル、ジヒドロキシ安息香酸プロピル、ジヒドロキシ安息香酸ベンジル、ジヒドロキシベンズアミド、ジヒドロキシベンズアルデヒド、ジヒドロキシアセトフェノン、ジヒドロキシベンゾフェノン、ジヒドロキシベンゾニトリル、N−(ジヒドロキシフェニル)−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(ジヒドロキシフェニル)−5−メチル−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド、ニトロカテコール、フルオロカテコール、クロロカテコール、ブロモカテコール、トリフルオロメチルカテコール、ニトロレゾルシノール、フルオロレゾルシノール、クロロレゾルシノール、ブロモレゾルシノール、トリフルオロメチルレゾルシノール、ピロガロール、フロログルシノール、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、トリヒドロキシ安息香酸、トリヒドロキシ安息香酸メチル、トリヒドロキシ安息香酸エチル、トリヒドロキシ安息香酸ブチル、トリヒドロキシ安息香酸プロピル、トリヒドロキシ安息香酸ベンジル、トリヒドロキシベンズアミド、トリヒドロキシベンズアルデヒド、トリヒドロキシアセトフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾニトリル等が挙げられる。
上記アルデヒド化合物としては、例えば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ピバルアルデヒド、ブチルアルデヒド、ペンタナール、ヘキサナール、トリオキサン、グリオキザール、シクロヘキシルアルデヒド、ジフェニルアセトアルデヒド、エチルブチルアルデヒド、ベンズアルデヒド、グリオキシル酸、5−ノルボルネン−2−カルボキシアルデヒド、マロンジアルデヒド、スクシンジアルデヒド、グルタルアルデヒド、サリチルアルデヒド、ナフトアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。
上記ケトン化合物としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジシクロヘキシルケトン、ジベンジルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、ビシクロヘキサノン、シクロヘキサンジオン、3−ブチン−2−オン、2−ノルボルナノン、アダマンタノン、2,2−ビス(4−オキソシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
上記メチロール化合物としては、例えば、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−エチルフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−プロピルフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−n−ブチルフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−メトキシフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−エトキシフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−プロポキシフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−n−ブトキシフェノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−4−t−ブトキシフェノール、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、リビトール、アラビトール、アリトール、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2−ベンジルオキシ−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、モノアセチン、2−メチル−2−ニトロ−1,3−プロパンジオール、5−ノルボルネン−2,2−ジメタノール、5−ノルボルネン−2,3−ジメタノール、ペンタエリスリトール、2−フェニル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、3,6−ビス(ヒドロキシメチル)デュレン、2−ニトロ−p−キシリレングリコール、1,10−ジヒドロキシデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキセン、1,6−ビス(ヒドロキシメチル)アダマンタン、1,4−ベンゼンジメタノール、1,3−ベンゼンジメタノール、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジメトキシベンゼン、2,3−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、2,6−ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,8−ビス(ヒドロキシメチル)アントラセン、2,2’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルチオエーテル、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、4−ヒドロキシメチル安息香酸−4’−ヒドロキシメチルフェニル、4−ヒドロキシメチル安息香酸−4’−ヒドロキシメチルアニリド、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)フェニルウレア、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)フェニルウレタン、1,8−ビス(ヒドロキシメチル)アントラセン、4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、2,2−ビス(4−ヒドロキシメチルフェニル)プロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
上記アルコキシメチル化合物としては、例えば、2,6−ビス(メトキシメチル)−p−クレゾール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−エチルフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−プロピルフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−n−ブチルフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブチルフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−メトキシフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−エトキシフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−プロポキシフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−n−ブトキシフェノール、2,6−ビス(メトキシメチル)−4−t−ブトキシフェノール、1,3−ビス(メトキシメチル)尿素、2,2−ビス(メトキシメチル)酪酸、2,2−ビス(メトキシメチル)―5−ノルボルネン、2,3−ビス(メトキシメチル)―5−ノルボルネン、1,4−ビス(メトキシメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(メトキシメチル)シクロヘキセン、1,6−ビス(メトキシメチル)アダマンタン、1,4−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メトキシメチル)ベンゼン、2,6−ビス(メトキシメチル)−1,4−ジメトキシベンゼン、2,3−ビス(メトキシメチル)ナフタレン、2,6−ビス(メトキシメチル)ナフタレン、1,8−ビス(メトキシメチル)アントラセン、2,2’−ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、4,4’−ビス(メトキシメチル)ジフェニルチオエーテル、4,4’−ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、4−メトキシメチル安息香酸−4’−メトキシメチルフェニル、4−メトキシメチル安息香酸−4’−メトキシメチルアニリド、4,4’−ビス(メトキシメチル)フェニルウレア、4,4’−ビス(メトキシメチル)フェニルウレタン、1,8−ビス(メトキシメチル)アントラセン、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,2’−ジメチル−4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル、2,2−ビス(4−メトキシメチルフェニル)プロパン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
上記ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、ヘプタジエン、オクタジエン、3−メチル−1,3−ブタジエン、1,3−ブタンジオール−ジメタクリラート、2,4−ヘキサジエン−1−オール、メチルシクロヘキサジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン、ジシクロペンタジエン、1−ヒドロキシジシクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、メチルジシクロペンタジエン、ジアリルエーテル、ジアリルスルフィド、アジピン酸ジアリル、2,5−ノルボルナジエン、テトラヒドロインデン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリル、イソシアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸ジアリルプロピル等が挙げられる。
上記ハロアルキル化合物としては、例えば、キシレンジクロライド、ビスクロロメチルジメトキシベンゼン、ビスクロロメチルデュレン、ビスクロロメチルビフェニル、ビスクロロメチル−ビフェニルカルボン酸、ビスクロロメチル−ビフェニルジカルボン酸、ビスクロロメチル−メチルビフェニル、ビスクロロメチル−ジメチルビフェニル、ビスクロロメチルアントラセン、エチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル、ジエチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(クロロエチル)エーテル等が挙げられる。
上述のフェノール類と共重合成分とを、脱水、脱ハロゲン化水素、若しくは脱アルコールにより縮合させるか、又は不飽和結合を開裂させながら重合させることにより、(A)フェノール樹脂を得ることができるが、重合時に触媒を用いてもよい。酸性の触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、亜リン酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、酢酸、シュウ酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1’−ジホスホン酸、酢酸亜鉛、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素・フェノール錯体、三フッ化ホウ素・エーテル錯体等が挙げられる。一方で、アルカリ性の触媒としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン、ピペリジン、ピペラジン、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]−5−ノネン、アンモニア、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。
一般式(6)で表される繰り返し構造を有するフェノール樹脂を得るために使用される触媒の量は、共重合成分(すなわちフェノール類以外の成分)の合計モル数、好ましくは、アルデヒド化合物、ケトン化合物、メチロール化合物、アルコキシメチル化合物、ジエン化合物及びハロアルキル化合物の合計モル数100モル%に対して、0.01モル%〜100モル%の範囲であることが好ましい。
一般式(6)で表される繰り返し構造を有するフェノール樹脂の合成反応を行う際には、必要に応じて有機溶剤を使用することができる。使用できる有機溶剤の具体例としては、ビス(2−メトキシエチル)エーテル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、トルエン、キシレン、γ―ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらの有機溶剤の使用量としては、仕込み原料の総質量を100質量部としたときに、通常10質量部〜1000質量部であり、好ましくは20質量部〜500質量部である。また、(A)フェノール樹脂の合成反応において、反応温度は、通常40℃〜250℃であることが好ましく、100℃〜200℃の範囲であることがより好ましく、そして反応時間は、概ね1時間〜10時間であることが好ましい。
なお、一般式(6)で表される繰り返し構造を有するフェノール樹脂は、上記一般式(6)の構造の原料とはならないフェノール類を、本発明の効果を損なわない範囲でさらに重合させたものであってもよい。本発明の効果を損なわない範囲とは、例えば(A)フェノール樹脂の原料となるフェノール類全モル数の30%以下である。
(炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂)
炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂は、フェノール類と炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物(以下場合により単に「不飽和炭化水素基含有化合物」という。)との反応生成物(以下「不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体」ともいう。)と、アルデヒド類との縮重合生成物、又は、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応生成物である。
フェノール類としては、一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂の原料として上述したものと同様のものを用いることができる。
不飽和炭化水素基含有化合物の不飽和炭化水素基は、硬化膜の耐熱性の観点から、2以上の不飽和基を含むことが好ましい。また、樹脂組成物としたときの相溶性及び硬化膜の残留応力の観点からは、不飽和炭化水素基は好ましくは炭素数4〜100、より好ましくは炭素数8〜80、さらに好ましくは炭素数10〜60である。
不飽和炭化水素基含有化合物としては、例えば、炭素数4〜100の不飽和炭化水素、カルボキシル基を有するポリブタジエン、不飽和脂肪酸及び不飽和脂肪酸エステルが挙げられる。硬化膜の可撓性の観点から好適な不飽和脂肪酸としては、クロトン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、ガドレイン酸、エルカ酸、ネルボン酸、リノール酸、α−リノレン酸、エレオステアリン酸、ステアリドン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、イワシ酸及びドコサヘキサエン酸が挙げられる。これらの中でも特に、不飽和脂肪酸エステルである植物油が、硬化膜の伸度及び、硬化膜の可撓性の観点から特に好ましい。
植物油は、通常、グリセリンと不飽和脂肪酸とのエステルを含み、ヨウ素価が100以下の不乾性油、100を超えて130未満の半乾性油又は130以上の乾性油である。不乾性油として、例えば、オリーブ油、あさがお種子油、カシュウ実油、さざんか油、つばき油、ひまし油及び落花生油が挙げられる。半乾性油として、例えば、コーン油、綿実油及びごま油が挙げられる。乾性油としては、例えば、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油、サフラワー油、ひまわり油、荏の油及び芥子油が挙げられる。また、これらの植物油を加工して得られる加工植物油を用いてもよい。
上記植物油の中で、フェノール類又はフェノール樹脂と植物油との反応において、過度の反応の進行に伴うゲル化を防ぎ、歩留まりが向上する観点から、不乾性油を用いることが好ましい。一方、レジストパターンの密着性、機械特性及び耐熱衝撃性が向上する観点では乾性油を用いることが好ましい。乾性油の中でも、本発明による効果をより有効かつ確実に発揮できることから、桐油、亜麻仁油、大豆油、胡桃油及びサフラワー油が好ましく、桐油及び亜麻仁油がより好ましい。これら植物油は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
フェノール類と不飽和炭化水素基含有化合物との反応は、50〜130℃で行うことが好ましい。フェノール類と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜の残留応力を低下させる観点から、フェノール類100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1〜100質量部であることが好ましく、5〜50質量部であることがより好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向があり、100質量部を超えると、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。上記反応においては、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。
上記反応により生成する不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体と、アルデヒド類とを重縮合させることにより、不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が生成する。アルデヒド類は、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、アセトン、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2−ホルミルプロピオン酸、2−ホルミルプロピオン酸メチル、ピルビン酸、レプリン酸、4−アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸及び3,3’−4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸から選ばれる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体を用いてもよい。これらのアルデヒド類は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
上記アルデヒド類と、上記不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体との反応は、重縮合反応であり、従来公知のフェノール樹脂の合成条件を用いることができる。反応は酸又は塩基等の触媒の存在下で行うことが好ましく、樹脂の重合度(分子量)の観点から酸触媒を用いることがより好ましい。酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、ぎ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸及びシュウ酸が挙げられる。これらの酸触媒は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記反応は、通常反応温度100〜120℃で行うことが好ましい。また、反応時間は使用する触媒の種類や量により異なるが、通常1〜50時間である。反応終了後、反応生成物を200℃以下の温度で減圧脱水することで不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂が得られる。なお、反応には、トルエン、キシレン、メタノール等の溶媒を用いることができる。
不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂は、上述の不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体を、m−キシレンのようなフェノール類以外の化合物とともにアルデヒド類と重縮合することにより得ることもできる。この場合、フェノール類と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得られる化合物に対するフェノール類以外の化合物の仕込みモル比は、0.5未満であると好ましい。
不飽和炭化水素基含有化合物で変性されたフェノール樹脂は、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物とを反応させて得ることもできる。この場合に用いるフェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類の重縮合生成物である。この場合、フェノール類及びアルデヒド類としては、上述したフェノール類及びアルデヒド類と同様のものを用いることができ、上述したような従来公知の条件でフェノール樹脂を合成することができる。
不飽和炭化水素基含有化合物で変性されたフェノール樹脂を形成するために用いるのに好適な、フェノール類とアルデヒド類とから得られるフェノール樹脂の具体例としては、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシリレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂及びフェノール−ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂が挙げられる。
フェノール樹脂と反応させる不飽和炭化水素基含有化合物は、アルデヒド類と反応させる不飽和炭化水素基変性フェノール誘導体の製造に関して上述した不飽和炭化水素基含有化合物と同様のものを使用することができる。
フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応は、通常50〜130℃で行うことが好ましい。また、フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応割合は、硬化膜(レジストパターン)の可とう性を向上させる観点から、フェノール樹脂100質量部に対し、不飽和炭化水素基含有化合物1〜100質量部であることが好ましく、2〜70質量部であることがより好ましく、5〜50質量部であることが更に好ましい。不飽和炭化水素基含有化合物が1質量部未満では、硬化膜の可とう性が低下する傾向にあり、100質量部を超えると、反応中にゲル化する可能性が高くなる傾向、及び、硬化膜の耐熱性が低下する傾向がある。フェノール樹脂と不飽和炭化水素基含有化合物との反応の際、必要に応じて、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等を触媒として用いてもよい。なお、反応にはトルエン、キシレン、メタノール、テトラヒドロフラン等の溶媒を用いることができる。
以上のような方法により生成する不飽和炭化水素基含有化合物によって変性されたフェノール樹脂のフェノール性水酸基に、更に多塩基酸無水物を反応させることにより酸変性したフェノール樹脂を用いることもできる。多塩基酸無水物で酸変性することにより、カルボキシ基が導入され、アルカリ水溶液(現像液として使用するもの)に対する溶解性がより一層向上する。
多塩基酸無水物は、複数のカルボキシ基を有する多塩基酸のカルボキシ基が脱水縮合して形成された酸無水物基を有していれば、特に限定されない。多塩基酸無水物としては、例えば無水フタル酸、無水コハク酸、オクテニル無水コハク酸、ペンタドデセニル無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ナジック酸、3,6−エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸及び無水トリメリット酸等の二塩基酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸及びベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物等の芳香族四塩基酸二無水物が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、多塩基酸無水物は二塩基酸無水物であることが好ましく、テトラヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸及びヘキサヒドロ無水フタル酸からなる群より選ばれる1種以上であることがより好ましい。この場合、さらに良好な形状を有するレジストパターンを形成できるという利点がある。
フェノール性水酸基と多塩基酸無水物との反応は、50〜130℃で行うことができる。この反応において、フェノール性水酸基1モルに対して、0.10〜0.80モルの多塩基酸無水物を反応させることが好ましく、0.15〜0.60モル反応させることがより好ましく、0.20〜0.40モル反応させることが更に好ましい。多塩基酸無水物が0.10モル未満では、現像性が低下する傾向にあり、0.80モルを超えると、未露光部の耐アルカリ性が低下する傾向にある。
なお、上記反応には、反応を迅速に行う観点から、必要に応じて、触媒を含有させてもよい。触媒としては、トリエチルアミン等の3級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物が挙げられる。
多塩基酸無水物で更に変性したフェノール樹脂の酸価は、30〜200mgKOH/gであることが好ましく、40〜170mgKOH/gであることがより好ましく、50〜150mgKOH/gであることが更に好ましい。酸価が30mgKOH/g未満であると、酸価が上記範囲にある場合と比較して、アルカリ現像に長時間を要する傾向にあり、200mgKOH/gを超えると、酸価が上記範囲にある場合と比較して、未露光部の耐現像液性が低下する傾向にある。
不飽和炭化水素基含有化合物で変性されたフェノール樹脂の分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性や、感光特性と硬化膜物性とのバランスを考慮すると、重量平均分子量で1,000〜100,000が好ましく、2,000〜100,000がより好ましい。
(A)フェノール樹脂の中でも、硬化膜の伸度の観点から、一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂(特にビフェニル構造を有するもの)、及び炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂(特に不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸エステルに由来するカルボキシル基又はエステル結合を有するもの)が好ましい。本発明者らの検討で、具体的には200℃で硬化した場合、硬化膜の伸度(平均値)が、一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂であってビフェニル構造を有するもの、及び炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂であって不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸エステルに由来するカルボキシル基又はエステル結合を有するものは、それぞれ平均値で20〜50%程度であるのに対し、ノボラック及びポリヒドロキシスチレンは、それぞれ平均値で5〜10%程度であることが見出された。このように一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂、及び炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂が高伸度を発現するメカニズムについては定かではないが、ポリマー内/間に働く分子間相互作用が大きいためと推定される。すなわち、一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂は、分子内にビフェニル構造を有することができ、この場合ポリマー分子内/間にππスタッキングが生じると考えられる。一方、炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂は、フェノール性水酸基と、不飽和脂肪酸又は不飽和脂肪酸エステルに由来するカルボキシル基又はエステル結合が水素結合を形成することができ、この場合ポリマー分子内/間が疑似的に架橋した状態となると考えられる。これらの現象が、硬化膜の高伸度の発現に寄与すると推定される。
本実施形態の(A)フェノール樹脂としては、上記一般式(6)で表される繰り返し単位を有するフェノール樹脂、及び上記炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物で変性されたフェノール樹脂から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂(以下、(a3)樹脂ともいう)と、ノボラック及びポリヒドロキシスチレンから選択されるフェノール樹脂(以下、(a4)樹脂ともいう)との混合物も好ましい。(a3)樹脂と(a4)樹脂との混合比は、質量比で(a3)/(a4)=5/95〜95/5の範囲である。この混合比は、アルカリ水溶液への溶解性、レジストパターンを形成する際の感度と解像性、及び硬化膜の耐熱性、残留応力の観点から、(a3)/(a4)=5/95〜95/5が好ましく、(a3)/(a4)=10/90〜90/10であることがより好ましく、(a3)/(a4)=15/85〜85/15であることがさらに好ましい。上記(a4)樹脂としてのノボラック及びポリヒドロキシスチレンとしては、上記(ノボラック)及び(ポリヒドロキシスチレン)の項に示したものと同様の樹脂を使用できる。
[(B)化合物]
本実施形態では、(B)カルボキシ基、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合及びウレア結合からなる群から選択される少なくとも一つの官能基(本開示で、「水素結合形成性基」ともいう。)を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物、並びに、カルボキシ基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物の酸無水物、から選択される少なくとも一つの化合物を含む。(B)化合物の分子内に存在する水素結合形成性基は、1種でも2種以上でもよい。
感光性樹脂組成物が(B)化合物を含むことにより、(B)化合物を用いない場合と比較して、硬化レリーフパターンの断面角度を大きくすることが出来る。硬化レリーフパターンの断面角度が大きくなる化学メカニズムは定かではないが、次の様に考えられる。
半導体の表面保護膜用途にフェノール樹脂を用いた場合、フェノール樹脂は、当該用途に一般的に用いられているポリイミド及びポリベンゾオキサゾールに比べると、熱硬化時のパターンダレが発生しやすく、硬化レリーフパターンの断面角度が小さくなる傾向がある。これは、フェノール樹脂の場合、熱硬化時に、ポリイミド前駆体からポリイミドへの閉環化の様な構造変化が起こらないためであると考えられる。
また添加剤として、熱架橋剤を用いた場合でも、硬化を開始し、加熱するに従い、架橋剤の架橋が開始するまでに揮発する添加剤が可塑剤として働き、パターンダレが発生し、断面角度が小さくなると考えられる。
一方、(B)化合物を用いた場合は、架橋剤の架橋が進行する前の低温領域であっても、当該化合物が分子内に有している2〜4の水素結合形成性基がフェノール樹脂の水酸基と水素結合を形成し、フェノール樹脂の分子内/分子間を疑似的に橋かけした状態になっている。このため、感光性樹脂組成物の溶融粘度の低下が防止され、パターンダレが抑制され、断面角度が大きくなると考えられる。
(B)化合物は、分子内にカルボキシ基及び/又はエステル結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物を含むことができる。このような化合物としては、硬化パターンの断面角度の観点から、下記一般式(1):
{式中、P
1は、単結合であるか、又は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜30のk1価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のk1価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環を有するk1価の有機基、からなる群から選択されるk1価の有機基であり、
P
2は、水素原子であるか、又は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の1価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族環を有する1価の有機基、からなる群から選択される1価の有機基であり、複数のP
2は、同一でも異なっていてもよく、そして
k1は2〜4の整数である}
で表される化合物が好ましく、これらの中でも、組成物のアルカリ溶解性の観点から、下記一般式(2):
{P
1及びk1の定義は一般式(1)と同じである。}
で表される化合物が好ましい。
分子内に2〜4のエステル結合を有する化合物の具体例としては、
(イ) コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル、コハク酸ジブチル、メチルコハク酸ジメチル、メチルコハク酸ジエチル、α−メチルグルタル酸ジイソブチル、メチルマロン酸ジブチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、エチルマロン酸ジメチル、エチルマロン酸ジエチル、イソプロピルマロン酸ジメチル、イソプロピルマロン酸ジエチル、ブチルマロン酸ジメチル、ブチルマロン酸ジエチル、フェニルマロン酸ジメチル、フェニルマロン酸ジエチル、ジエチルマロン酸ジメチル、ジエチルマロン酸ジエチル、アリルマロン酸ジメチル、アリルマロン酸ジエチル、ジイソブチルマロン酸ジメチル、ジイソブチルマロン酸ジエチル、ジノルマルブチルマロン酸ジメチル、ジノルマルブチルマロン酸ジエチル、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸ジオクチル、マレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジブチル、ブチルマレイン酸ジメチル、ブチルマレイン酸ジエチル、β−メチルグルタル酸ジイソプロピル、エチルコハク酸ジアルリル、フマル酸ジ−2−エチルヘキシル、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル、シトラコン酸ジオクチル、シトラコン酸ジメチル等の脂肪族ポリカルボン酸エステル、
(ロ) 1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジメチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジエチル、1,2−シクロヘキサンカルボン酸ジイソブチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、テトラヒドロフタル酸ジエチル、ナジック酸ジメチル、ナジック酸ジエチルのような脂肪族ポリカルボン酸エステル、
(ハ) (o−,m−,p−)フタル酸モノメチル、(o−,m−,p−)フタル酸モノエチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジメチル、(o−,m−,p−)フタル酸メチルエチル、(o−,m−,p−)フタル酸モノイソブチル、(o−,m−,p−)フタル酸モノノルマルブチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジメチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジエチル、(o−,m−,p−)フタル酸エチルイソブチル、(o−,m−,p−)フタル酸エチルノルマルブチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジn−プロピル、(o−,m−,p−)フタル酸ジイソプロピル、(o−,m−,p−)フタル酸ジn−ブチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジイソブチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジn−ヘプチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジ2−エチルヘキシル、(o−,m−,p−)フタル酸ジn−オクチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジネオペンチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジデシル、(o−,m−,p−)フタル酸ベンジルブチル、(o−,m−,p−)フタル酸ジフェニル、ナフタリンジカルボン酸ジメチル、ナフタリンジカルボン酸ジエチル、ナフタリンジカルボン酸ジブチル、トリメリット酸トリエチル、トリメリット酸ジブチル等の芳香族ポリカルボン酸エステル、
(ニ) 3,4−フランジカルボン酸等の異炭素ポリカルボン酸エステル、等が挙げられる。
これらの中でも硬化パターンの断面角度の観点から、コハク酸、フタル酸、マレイン酸、及びマロン酸から選択される1種又は2種以上とアルコールとのエステルが好ましい。これら化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお本開示で、当該分子内にエステル結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物とは、重合体ではないこと、すなわちエステル結合によって複数のモノマーが結合してできたポリマーであるポリエステルは除くことを意図する。
分子内に2〜4のカルボキシ基を有する化合物の具体例としては、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、1,3−ジカルボキシメチルシクロヘキサン、(o−,m−,p−)フタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウム、アゼライン酸、メチルコハク酸、オクチルコハク酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、マロン酸、メチルマロン酸、ジメチルマロン酸、グルタル酸、α−ケトグルタル酸、3−メチルグルタル酸、ピメリン酸、シトラコン酸、メサコン酸、オキサロ酢酸、酒石酸、テトラヒドロキシブタン二酸、アスパラギン酸、1,1−シクロプロパンジカルボン酸、グルタミン酸、1−カルボキシグルタミン酸、アコニット酸、クエン酸、イソクエン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、キノリン酸、スベリン酸、ホモシステイン、グルタチオン、1,2,4−トリメット酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,5−ナフタレントリカルボン酸、1,4,5−ナフタレントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、2,6,7−ナフタレントリカルボン酸、3,3’,4−ジフェニルトリカルボン酸、ベンゾフェノン−3,3’,4−トリカルボン酸、ジフェニルスルホン−3,3’,4−トリカルボン酸、ジフェニルエーテル−3,3’,4−トリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、ベンゾフェノン−2,4,5−トリカルボン酸、3,3,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸、3,4,4’−ベンゾフェノントリカルボン酸、2,3,4’−ジフェニルトリカルボン酸、2,3,6−ピリジントリカルボン酸、3,4,4’−ベンツアニリドトリカルボン酸、1,4,5−ナフタリントリカルボン酸、2’−メトキシ−3,4,4’−ジフェニルエーテルトリカルボン酸、2’−クロロベンズアニリド−3,4,4’−トリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸、トルエントリカルボン酸、4−ネオペンチリゾニル−1,2,6,7−ヘプタンテトラカルボン酸、3−メチル−4−ヘプテニル−1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、3−メチル−3−ヘプチル−5−メチル−1,2,6,7−ヘプテン(4)−テトラカルボン酸、3−ノニル−4−メチリゾニル−1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、3−デシリゾニル−1.2,5.6−ヘキサンテトラカルボン酸、3−ノニル−1,2,6,7−ヘプテン(4)−テトラカルボン酸、3−デシニル−1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、3−ブチル−3−エチレニル−1,2,5,6−ヘキサンテトラカルボン酸、3−メチル−4−ブチリゾニル−1,2,6,7−へブタンテトラカルボン酸、3−メチル−4−ブチル−1,2,6,7−ヘプテン(4)−テトラカルボン酸、3−メチル−5−オクチル−1,2,6,7−ヘプテン(4)−テトラカルボン酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ブタンテトラカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、テトラヒドロフタル酸、テトラクロルフタル酸、1,20−アイコサンジカルボン酸、1,24−テトラアイコサンジカルボン酸、グルタコン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、等が挙げられる。これらの中でも硬化パターンの断面角度の観点及びコストの面から、コハク酸、マロン酸、フマル酸、リンゴ酸、フタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸トリメリット酸、ピロメリット酸、及びトリメシン酸が好ましい。これら化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
カルボキシ基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物の酸無水物としては、硬化パターンの断面角度の観点から、下記一般式(3):
{式中、P
3は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜30の(k2×2)価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の(k2×2)価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環を有する(k2×2)価の有機基からなる群から選択される(k2×2)価の有機基であり、
P
4は、酸素原子であるか、又は、下記一般式(4):
(P
5は、水素原子であるか、又は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の1価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族環を有する1価の有機基、からなる群から選択される1価の有機基である。)
で表される2価の有機基であり、複数存在する場合のP
4は、同一でも異なっていてもよく、そして
k2は1〜2の整数である}
で表される化合物が好ましい。
(B)化合物は、分子内に2〜4のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物を含むことができる。分子内に2〜4のカルボキシ基を有する化合物の酸無水物の具体例としては、上記の分子内に2〜4のカルボキシ基を有する化合物の具体例の酸無水物が挙げられる。さらに具体的には、イタコン酸無水物、コハク酸無水物、シトラコン酸無水物、ドデセニルコハク酸無水物、ペンタドデセニルコハク酸無水物、オクテニルコハク酸無水物、トリカルバニル酸無水物、マレイン酸無水物、ハイミック酸無水物、ナジン酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、ノルボルネン無水物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、フタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ナジック酸無水物、3,6−エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、テトラブロモフタル酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、等が挙げられる。これらの中でも硬化パターンの断面角度の観点及びコストの面から、マレイン酸無水物、コハク酸無水物、フタル酸無水物、cis−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、トリメリット酸無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物が好ましい。これら化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。
(B)化合物は、分子内にアミド結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物を含むことができる。分子内にアミド結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物は、硬化パターンの断面角度の観点から、下記一般式(5):
{式中、P
1は、単結合であるか、又は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜30のk3価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜30のk3価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環を有するk3価の有機基、からなる群から選択されるk3価の有機基であり、
P
6及びP
7はそれぞれ独立に、水素原子であるか、又は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の1価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜10の芳香族環を有する1価の有機基、からなる群から選択される1価の有機基であり、複数のP
6及びP
7は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、そして
k3は2〜4の整数である}
で表される化合物、及び/又は、
下記一般式(3):
{式中、P
3は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜30の(k2×2)価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の(k2×2)価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜30の芳香族環を有する(k2×2)価の有機基からなる群から選択される(k2×2)価の有機基であり、
P
4は、酸素原子であるか、又は、下記一般式(4):
(P
5は、水素原子であるか、又は、置換基を有していてもよく不飽和結合を有していてもよい炭素数1〜10の1価の鎖状脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数3〜10の1価の脂環式炭化水素基、及び置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族環を有する1価の有機基、からなる群から選択される1価の有機基である。)
で表される2価の有機基であり、複数存在する場合のP
4は、同一でも異なっていてもよく、そして
k2は1〜2の整数である。}
において、P
4が上記一般式(4)で表される基である化合物であることが好ましい。
分子内にアミド結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物の具体例としては、分子内に2〜4のカルボキシ基を有する化合物の具体例として上記で挙げたカルボン酸と、アミンとの脱水縮合反応により生成された化合物が挙げられる。アミンは、アンモニア、脂肪族アミン(飽和及び/又は不飽和であり、枝分かれ構造を有していてもよい)、及び芳香族アミン、から選択される少なくとも一つのアミンであることができる。具体的には、(o−,m−,p−)フタル酸ジアミド、(o−,m−,p−)フタル酸ジアニリド、トリメリット酸トリアミド、トリメリット酸トリアニリド、ピロメリット酸テトラアミド、ピロメリット酸テトラアニリド、ナフタレンジカルボン酸アミド、ナフタレンジカルボン酸アニリド、シュウ酸ジアミド、シュウ酸ジアニリド、マレイン酸ジアミド、マレイン酸ジアニリド、マロン酸ジアミド、マロン酸ジアニリド、フマル酸ジアミド、フマル酸ジアニリド、コハク酸ジアミド、コハク酸ジアニリド、イタコン酸ジアニリド、グルタル酸ジアミド、グルタル酸ジアニリド、アジピン酸ジアミド、アジピン酸ジアニリド、トリメシン酸トリアミド、トリメシン酸トリアニリド、クエン酸トリアミド、クエン酸トリアニリド、アジビン酸ジアミド、アジビン酸ジアニリド、スベリン酸ジアミド、スベリン酸ジアニリド、セバチン酸ジアミド、セバチン酸ジアニリド、テトラデカンジカルボン酸ジアミド、テトラデカンジカルボン酸ジアニリド、オクタデカンジカルボン酸ジアミド、オクタデカンジカルボン酸ジアニリド、6−エチルヘキサデカンジカルボン酸ジアミド、6−エチルヘキサデカンジカルボン酸ジアニリド、トルエンジカルボン酸ジアミド、トルエンジカルボン酸ジアニリド、4,4’−ジフェニルメタンジアミド、4,4’−ジフェニルメタンジアニリド、ベンゼントリカルボン酸トリアミド、ベンゼントリカルボン酸トリアニリド、2,5−チオフェンジカルボン酸ジアミド、2,5−チオフェンジカルボン酸ジアニリド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸アニリド、等が挙げられる。
これらの中でも硬化パターンの断面角度及びコストの観点から、コハク酸ジアミド、コハク酸ジアニリド、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸アミド、p−フタル酸アミド、p−フタル酸アニリド、トリメリット酸トリアミド、及びピロメリット酸テトラアミドが好ましい。これら化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお本開示で、当該分子内にアミド結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物とは、重合体ではないこと、すなわちアミド結合によって複数のモノマーが結合してできたポリマーであるポリアミドは除くことを意図する。
(B)化合物は、分子内にウレタン結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物を含むことができる。分子内に2〜4のウレタン結合を有する化合物の具体例としては、ジウレタン化合物、トリウレタン化合物、及びテトラウレタン化合物が挙げられる。ウレタン化合物は、アルコールとイソシアネートとを反応させて合成する。
ジウタン化合物としては、モノアルコールとジソシアネートとの反応生成物が挙げられる。モノアルコールは、鎖状脂肪族アルコール、脂環式アルコール及び/又は芳香族アルコールであることができる。用いられるモノアルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等が挙げられる。また用いられるジソシアネート化合物としては、脂肪族ジソシアネート、脂環式ジソシアネート、芳香族ジソシアネート等が挙げられ、例えば、4,4’−ジフェニルメタンジソシアネート(MDI)、トリレンジソシアネート(TDI)、ナフタレンジソシアネート、p−フェニレンジソシアネート、トランス−1,4−シクロヘキサンジソシアネート(CHDI)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル−ベンゼン)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジソシアネート(H12MDI)、1,3−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン(H6XDI)、ヘキサメチレンジソシアネート(HDI)、3−イソシアナトメチル−3,3,5’−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、フェニレンジソシアネート、m−テトラメチルキシレンジソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシレンジソシアネート(p−TMXDI)等が挙げられ、特に4,4’−ジフェニルメタンジソシアネート(MDI)、トリレンジソシアネート(TDI)、トランス−1,4−シクロヘキサンジソシアネート(CHDI)、及び4,4’−ジシクロヘキシルメタンジソシアネート(H12MDI)が好ましい。
これらの中でも硬化パターンの断面角度の観点から、ジウレタン化合物が好ましい。これら化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお本開示で、当該分子内にウレタン結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物とは、重合体ではないこと、すなわちウレタン結合によって複数のモノマーが結合してできたポリマーであるポリウレタンは除くことを意図する。
(B)化合物は、分子内にウレア結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物を含むことができる。分子内にウレア結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、及びテトラウレア化合物が挙げられる。
ジウレア化合物としては、モノアミンとジソシアネートとの反応生成物が挙げられる。モノアミンは、脂肪族アミン、脂環式アミン及び/又は芳香族アミンであることができる。用いられるモノアミンとしてはオクチルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、オレイルアミン、アニリン、p−トルイジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。また、用いられるジソシアネート化合物及びその好ましい例は、ジウレタン化合物の合成に用いるジソシアネート化合物として前述したものと同様である。
トリウレア化合物は、鎖状脂肪族、脂環式又は芳香族のジソシアネート2モルと、鎖状脂肪族、脂環式又は芳香族のジアミン1モルと、鎖状脂肪族、脂環式又は芳香族のアミン1モルと、鎖状脂肪族、脂環式又は芳香族のアルコール1モルとの反応生成物であり、通常基油中において、上記化合物をそれぞれ上記割合となるように混合し、反応せしめることにより得られる。
これらの中でも硬化パターンの断面角度の観点から、ジウレア化合物が好ましい。これら化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。なお本開示で、当該分子内にウレア結合を2〜4有する炭素数2〜150の化合物とは、重合体ではないこと、すなわちウレア結合によって複数のモノマーが結合してできたポリマーであるポリウレアは除くことを意図する。
(B)化合物の中でも、硬化パターンの断面角度の観点から、カルボキシ基、エステル結合及びアミド結合からなる群から選択される少なくとも一つの官能基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物、並びにカルボキシ基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物の酸無水物から選択される少なくとも一つの化合物が好ましく、組成物のアルカリ溶解性の観点から、カルボキシ基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物及び、カルボキシ基を分子内に2〜4有する炭素数2〜150の化合物の酸無水物から選択される少なくとも一つの化合物がより好ましい。
(B)化合物の配合量は、(A)フェノール樹脂100質量部に対し、好ましくは0.01〜20質量部であり、より好ましくは0.05〜10質量部であり、さらに好ましくは0.1〜5質量部、最も好ましくは0.5〜3質量部である。上記配合量が0.01質量部以上である場合、硬化パターンの断面角度を大きくする効果が良好であり、一方、20質量部以下である場合、組成物の保存安定性に優れる(すなわち保存中の経時的な粘度変化率が小さい)。特に、(B)化合物の配合量が多い場合は、(B)化合物が触媒となり、組成物中に残存しているフェノール樹脂の原料モノマー又はそのオリゴマーが重合し、増粘すると考えられる。この重合を良好に回避する観点から、(B)化合物の配合量は、特に、5質量部以下が好ましく、4質量部以下がより好ましく、3質量部以下がさらに好ましい。(B)化合物の配合量が3質量部以下である場合には、上記保存安定性の点で特に有利な効果が得られる。
[(C)光酸発生剤]
本実施形態で、感光性樹脂組成物は、紫外線、電子線、X線等に代表される活性光線(すなわち放射線)に感応して樹脂パターンを形成できる組成物である。感光性樹脂組成物は、ネガ型(すなわち未照射部が現像により溶出するもの)又はポジ型(すなわち照射部が現像により溶出するもの)のいずれであってもよい。
本実施形態では、感光性樹脂組成物がネガ型の感光性樹脂組成物として使用される場合、(C)光酸発生剤が放射線照射を受けて酸を発生し、発生した酸が上記フェノール樹脂(A)と架橋剤との架橋反応を引き起こすことで、放射線照射部が現像液に不溶となる。ネガ型に使用できる(C)光酸発生剤としては、例えば、以下の化合物が挙げられる:
(i)トリクロロメチル−s−トリアジン類
トリス(2,4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオフェニル)ビス(4,6−トリクロロメチル−s−トリアジン、2−(2−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4,5−トリメトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオ−β―スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3−メチルチオ−β―スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2−メチルチオ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン等;
(ii)ジアリールヨードニウム塩類
ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロホスフェート、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロアルセネート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウム−p−トルエンスルホナート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフルオロボレート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロアルセネート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウムトリフルオロアセテート、ビス(4−ter−ブチルフェニル)ヨードニウム−p−トルエンスルホナート等;
(iii)トリアリールスルホニウム塩類
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、トリフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボレート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスホネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアルセネート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウム−p−トルエンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルテトラフルオロボレート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロホスホネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルヘキサフルオロアルセネート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルーp−トルエンスルホナート等。
これらの化合物の内、トリクロロメチル−s−トリアジン類としては、2−(3−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−β−スチリル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−ビス(4,6−トリクロロメチル)−s−トリアジン等を、ジアリールヨードニウム塩類としては、ジフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート、ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホナート、4−メトキシフェニルフェニルヨードニウムトリフルオロアセテート等を、そしてトリアリールスルホニウム塩類としては、トリフェニルスルホニウムメタンスルホナート、トリフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムメタンスルホナート、4−メトキシフェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロアセテート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロメタンスルホナート、4−フェニルチオフェニルジフェニルトリフルオロアセテート等を、好適なものとして挙げることができる。
この他にも、(C)光酸発生剤として、以下に示す化合物を用いることもできる。
(1)ジアゾケトン化合物
ジアゾケトン化合物として、例えば、1,3−ジケト−2−ジアゾ化合物、ジアゾベンゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物等を挙げることができ、具体例としてはフェノール類の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル化合物を挙げることができる。
(2)スルホン化合物
スルホン化合物として、例えば、β−ケトスルホン化合物、β−スルホニルスルホン化合物及びこれらの化合物のα−ジアゾ化合物を挙げることができ、具体例として、4−トリスフェナシルスルホン、メシチルフェナシルスルホン、ビス(フェナシルスルホニル)メタン等を挙げることができる。
(3)スルホン酸化合物
スルホン酸化合物として、例えば、アルキルスルホン酸エステル類、ハロアルキルスルホン酸エステル類、アリールスルホン酸エステル類、イミノスルホネート類等を挙げることができる。好ましい具体例としては、ベンゾイントシレート、ピロガロールトリストリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジルトリフルオロメタンスルホネート、o−ニトロベンジル−p−トルエンスルホネート等を挙げることができる。
(4)スルホンイミド化合物
スルホンイミド化合物として、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ナフチルイミド等を挙げることができる。
(5)オキシムエステル化合物
オキシムエステル化合物として、具体的には、2−[2−(4−メチルフェニルスルホニルオキシイミノ)]−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン]−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(チバスペシャルティケミカルズ社商品名「イルガキュアPAG121」)、[2−(プロピルスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン]−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(チバスペシャルティケミカルズ社商品名「イルガキュアPAG103」)、[2−(n−オクタンスルホニルオキシイミノ)−2,3−ジヒドロチオフェン−3−イリデン]−2−(2−メチルフェニル)アセトニトリル(チバスペシャルティケミカルズ社商品名「イルガキュアPAG108」)、α−(n−オクタンスルフォニルオキシイミノ)−4−メトキシベンジルシアニド(チバスペシャルティケミカルズ社商品名「CGI725」)等を挙げることができる。
(6)ジアゾメタン化合物
ジアゾメタン化合物として、具体的には、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(シクロヘキシルスルホニル)ジアゾメタン、ビス(フェニルスルホニル)ジアゾメタン等を挙げることができる。
感度の観点から、とりわけ、上記(5)オキシムエステル化合物が特に好ましい。
本実施形態では、感光性樹脂組成物がネガ型である場合の、(A)フェノール樹脂100質量部に対する(C)光酸発生剤の配合量は、0.1〜70質量部であることが好ましく、1〜40質量部であることがより好ましい。該配合量が0.1質量部以上であれば感度の向上効果を良好に得ることができ、該配合量が70質量部以下であれば硬化膜の機械物性が良好である。
本実施形態では、感光性樹脂組成物はポジ型の感光性樹脂組成物として使用することも可能である。この場合、上記(i)〜(iii)、及び(1)〜(6)で示される光酸発生剤及び/又はキノンジアジド化合物が好適に用いられる。その中でも硬化後の物性の観点からキノンジアジド化合物、例えばo−キノンジアジド化合物を含むことが好ましい。これはキノンジアジド化合物が硬化時に熱分解し、硬化後の膜中に残存する量が極めて低いためである。
ポジ型用の(C)光酸発生剤として好ましいキノンジアジド化合物としては、1,2−ベンゾキノンジアジド構造又は1,2−ナフトキノンジアジド構造(後者の構造を有する化合物を、以下、「NQD化合物」ともいう。)を有する化合物が挙げられ、これらの化合物は、例えば、米国特許第2,772,972号明細書、米国特許第2,797,213号明細書、米国特許第3,669,658号明細書等により公知である。該NQD化合物は、以下詳述する複数のフェノール性水酸基を有する化合物(以下「ポリヒドロキシ化合物」ともいう。)の1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホン酸エステル、及び該ポリヒドロキシ化合物の1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホン酸エステルから成る群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
該NQD化合物は、常法に従って、ナフトキノンジアジドスルホン酸を、クロルスルホン酸又は塩化チオニル等でスルホニルクロライドとし、得られたナフトキノンジアジドスルホニルクロライドと、ポリヒドロキシ化合物とを縮合反応させることにより得られる。例えば、ポリヒドロキシ化合物と、1,2−ナフトキノンジアジド−5−スルホニルクロライド又は1,2−ナフトキノンジアジド−4−スルホニルクロライドの所定量とを、ジオキサン、アセトン、又はテトラヒドロフラン等の溶媒中、トリエチルアミン等の塩基性触媒の存在下で反応させてエステル化を行い、得られた生成物を水洗、乾燥することにより得ることができる。
感度及び伸度等の硬化膜物性の観点から好ましいNQD化合物の例としては、例えば、下記一般式群で表されるものが挙げられる。
{式中、Qは、水素原子、又は下記式群:
のいずれかで表されるナフトキノンジアジドスルホン酸エステル基であるが、全てのQが同時に水素原子であることはない。}。
また、NQD化合物として、同一分子中に4−ナフトキノンジアジドスルホニル基及び5−ナフトキノンジアジドスルホニル基を有するナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物を用いることもできるし、4−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物と5−ナフトキノンジアジドスルホニルエステル化合物とを混合して使用することもできる。
上記NQD化合物は、単独で使用しても2種類以上混合して使用してもよい。
本実施形態では、感光性樹脂組成物がポジ型である場合の(C)光酸発生剤の使用量は、本組成物の(A)フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1〜70質量部であり、より好ましくは1〜40質量部、さらに好ましくは5〜30質量部である。この使用量が0.1質量部以上であれば良好な感度が得られ、70質量部以下であれば硬化膜の機械物性が良好である。
[溶剤]
本実施形態における感光性樹脂組成物は、必要に応じて溶剤を含むことができる。
溶剤としては、アミド類、スルホキシド類、ウレア類、ケトン類、エステル類、ラクトン類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、炭化水素類等が挙げられ、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、シュウ酸ジエチル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、モルフォリン、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、アニソール、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン等を使用することができる。中でも、樹脂の溶解性、樹脂組成物の安定性、及び基板への接着性の観点から、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、酢酸ブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ベンジルアルコール、フェニルグリコール、及びテトラヒドロフルフリルアルコールが好ましい。
本発明の感光性樹脂組成物において、溶剤の使用量は、(A)フェノール樹脂100質量部に対して、好ましくは100〜1000質量部であり、より好ましくは120〜700質量部であり、さらに好ましくは125〜500質量部の範囲である。
[添加剤]
本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて、架橋剤、熱酸発生剤、シランカップリング剤、染料、溶解促進剤等の各種添加剤を含有させることが可能である。
架橋剤は、本発明の感光性樹脂組成物を用いて形成されたレリーフパターンを加熱硬化する際に、(A)フェノール樹脂と架橋しうるか、又は架橋剤自身が架橋ネットワークを形成することが出来る化合物をいう。架橋剤は分子内に架橋基を2個以上有する構造を有し、感光性樹脂組成物から形成された硬化膜の熱特性及び機械特性をさらに向上することが出来る。
架橋剤としては、例えば、メチロール基及び/又はアルコキシメチル基を含有する化合物である、サイメル(登録商標)300、301、303、370、325、327、701、266、267、238、1141、272、202、1156、1158、1123、1170、1174;UFR65、300;マイコート102、105(以上、三井サイテック社製);ニカラック(登録商標)MX−270、−280、−290;ニカラックMS―11;ニカラックMW―30、−100、−300、−390、−750(以上、三和ケミカル社製)、DML−OCHP、DML−MBPC、DML−BPC、DML−PEP、DML−34X、DML−PSBP、DML−PTBP、DML−PCHP、DML−POP、DML−PFP、DML−MBOC、BisCMP−F、DML−BisOC−Z、DML−BisOCHP−Z、DML−BisOC−P、DMOM−PTBT、TMOM−BP、TMOM−BPA、TML−BPAF−MF(以上、本州化学工業社製)、ベンゼンジメタノール、ビス(ヒドロキシメチル)クレゾール、ビス(ヒドロキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(ヒドロキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(ヒドロキシメチル)ベンゾフェノン、ヒドロキシメチル安息香酸ヒドロキシメチルフェニル、ビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(ヒドロキシメチル)ビフェニル、ビス(メトキシメチル)ベンゼン、ビス(メトキシメチル)クレゾール、ビス(メトキシメチル)ジメトキシベンゼン、ビス(メトキシメチル)ジフェニルエーテル、ビス(メトキシメチル)ベンゾフェノン、メトキシメチル安息香酸メトキシメチルフェニル、ビス(メトキシメチル)ビフェニル、ジメチルビス(メトキシメチル)ビフェニル等が挙げられる。
また、オキシラン化合物であるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、テトラフェノール型エポキシ樹脂、フェノール−キシリレン型エポキシ樹脂、ナフトール−キシリレン型エポキシ樹脂、フェノール−ナフトール型エポキシ樹脂、フェノール−ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、鎖状脂肪族エポキシ樹脂、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグルシジルエーテル、1,1,2,2−テトラ(p−ヒドロキシフェニル)エタンテトラグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、オルソセカンダリーブチルフェニルグリシジルエーテル、1,6−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ナフタレン、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル、YDB−340、YDB−412、YDF−2001、YDF−2004(以上商品名、新日鐵化学(株)製)、NC−3000−H、EPPN−501H、EOCN−1020、NC−7000L、EPPN−201L 、XD−1000、EOCN−4600(以上商品名、日本化薬(株)製)、エピコート(登録商標)1001、エピコート1007、エピコート1009、エピコート5050、エピコート5051、エピコート1031S 、エピコート180S65、エピコート157H70、YX−315−75(以上商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製)、EHPE3150 、プラクセルG402、PUE101、PUE105(以上商品名、ダイセル化学工業(株)製)、エピクロン(登録商標)830、850、1050、N−680、N−690、N−695、N−770、HP−7200、HP−820、EXA−4850−1000(以上商品名、DIC社製)、デナコール(登録商標)EX−201、EX−251、EX−203、EX−313、EX−314、EX−321、EX−411、EX−511、EX−512、EX−612、EX−614、EX−614B、EX−711、EX−731、EX−810、EX−911、EM−150(以上商品名、ナガセケムテックス社製)、エポライト(登録商標)70P、エポライト100MF(以上商品名、共栄社化学製)等が挙げられる。
また、イソシアネート基含有化合物である、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアナート、1,3−フェニレンビスメチレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン―4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、タケネート(登録商標)500、600、コスモネート(登録商標)NBDI、ND(以上商品名、三井化学社製)、デュラネート(登録商標)17B−60PX、TPA−B80E、MF−B60X、MF−K60X、E402−B80T(以上商品名、旭化成ケミカルズ社製)等が挙げられる。
また、ビスマレイミド化合物である、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、フェニルメタンマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3’−ジメチル−5,5’−ジエチル−4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6’−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン、4,4’−ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’−ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3−ビス(3−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−マレイミドフェノキシ)ベンゼン、BMI−1000、BMI−1100、BMI−2000、BMI−2300、BMI−3000、BMI−4000、BMI−5100、BMI−7000、BMI−TMH、BMI−6000、BMI−8000(以上商品名、大和化成工業(株)製)等が挙げられるが、上述した様に熱架橋する化合物であれば、これらに限定されない。
架橋剤を使用する場合の配合量としては、(A)フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜40質量部が好ましく、1〜30質量部がより好ましい。該配合量が0.1質量部以上であれば熱硬化膜の熱物性及び機械強度が良好であり、40質量部以下であれば組成物のワニス状態での安定性及び熱硬化膜の引っ張り伸度が良好である。
一方、別の好ましい態様において、感光性樹脂組成物は架橋剤を含まないことができる。本実施形態では、(B)化合物の使用により、例えば架橋剤を用いない場合にも良好な硬化レリーフパターン断面角度を得ることが可能である。
熱酸発生剤は、硬化温度を下げた場合でも、良好な硬化物の熱物性及び機械的物性を発現させるという観点から、配合することが好ましい。
熱酸発生剤としては、熱により酸を生成する機能を有するオニウム塩等の強酸と塩基とから形成される塩や、イミドスルホナートが挙げられる。
オニウム塩としては、例えば、アリールジアゾニウム塩、ジフェニルヨードニウム塩等のジアリールヨードニウム塩;ジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩等のジ(アルキルアリール)ヨードニウム塩;トリメチルスルホニウム塩のようなトリアルキルスルホニウム塩;ジメチルフェニルスルホニウム塩等のジアルキルモノアリールスルホニウム塩;ジフェニルメチルスルホニウム塩等のジアリールモノアルキルヨードニウム塩;トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
これらの中で、パラトルエンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のトリメチルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トリフルオロメタンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩、ノナフルオロブタンスルホン酸のジ(t−ブチルフェニル)ヨードニウム塩、カンファースルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、エタンスルホン酸のジフェニルヨードニウム塩、ベンゼンスルホン酸のジメチルフェニルスルホニウム塩、トルエンスルホン酸のジフェニルメチルスルホニウム塩等が好ましい。
また、強酸と塩基とから形成される塩としては、上述のオニウム塩の他、次のような強酸と塩基とから形成される塩、例えば、ピリジニウム塩を用いることもできる。強酸としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸のようなアリールスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸のようなパーフルオロアルキルスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸のようなアルキルスルホン酸等が挙げられる。塩基としては、ピリジン、2,4,6−トリメチルピリジンのようなアルキルピリジン、2−クロロ−N−メチルピリジンのようなN−アルキルピリジン、ハロゲン化−N−アルキルピリジン等が挙げられる。
イミドスルホナートとしては、例えば、ナフトイルイミドスルホナート、フタルイミドスルホナート等を用いることができるが、熱により酸が発生する化合物であれば限定されない。
熱酸発生剤を使用する場合の配合量としては、(A)フェノール樹脂100質量部に対し、0.1〜30質量部が好ましく、0.5〜10質量部がより好ましく、1〜5質量部であることがさらに好ましい。
シランカップリング剤としては、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 KBM803、チッソ株式会社製:商品名 サイラエースS810)、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6475.0)、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン(信越化学工業株式会社製:商品名 LS1375、アズマックス株式会社製:商品名 SIM6474.0)、メルカプトメチルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6473.5C)、メルカプトメチルメチルジメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SIM6473.0)、3−メルカプトプロピルジエトキシメトキシシラン、3−メルカプトプロピルエトキシジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルジエトキシプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルエトキシジプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルジメトキシプロポキシシラン、3−メルカプトプロピルメトキシジプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシラン、2−メルカプトエチルジエトキシメトキシシラン、2−メルカプトエチルエトキシジメトキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルトリプロポキシシラン、2−メルカプトエチルエトキシジプロポキシシラン、2−メルカプトエチルジメトキシプロポキシシラン、2−メルカプトエチルメトキシジプロポキシシラン、4−メルカプトブチルトリメトキシシラン、4−メルカプトブチルトリエトキシシラン、4−メルカプトブチルトリプロポキシシラン、N−(3−トリエトキシシリルプロピル)ウレア(信越化学工業株式会社製:商品名 LS3610、アズマックス株式会社製:商品名 SIU9055.0)、N−(3−トリメトキシシリルプロピル)ウレア(アズマックス株式会社製:商品名 SIU9058.0)、N−(3−ジエトキシメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−エトキシジメトキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−ジエトキシプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−エトキシジプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−ジメトキシプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−メトキシジプロポキシシリルプロピル)ウレア、N−(3−トリメトキシシリルエチル)ウレア、N−(3−エトキシジメトキシシリルエチル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−エトキシジプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−ジメトキシプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−メトキシジプロポキシシリルエチル)ウレア、N−(3−トリメトキシシリルブチル)ウレア、N−(3−トリエトキシシリルブチル)ウレア、N−(3−トリプロポキシシリルブチル)ウレア、3−(m−アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0598.0)、m−アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.0)、p−アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.1)アミノフェニルトリメトキシシラン(アズマックス株式会社製:商品名 SLA0599.2)、2−(トリメトキシシリルエチル)ピリジン(アズマックス株式会社製:商品名 SIT8396.0)、2−(トリエトキシシリルエチル)ピリジン、2−(ジメトキシシリルメチルエチル)ピリジン、2−(ジエトキシシリルメチルエチル)ピリジン、(3−トリエトキシシリルプロピル)−t−ブチルカルバメート、(3−グリシドキシプロピル)トリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−i−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン、テトラキス(メトキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシ−n−プロポキシシラン)、テトラキス(エトキシエトキシシラン)、テトラキス(メトキシエトキシエトキシシラン)、ビス(トリメトキシシリル)エタン、ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ビス(トリエトキシシリル)メタン、ビス(トリエトキシシリル)エタン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)オクタン、ビス(トリエトキシシリル)オクタジエン、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]ジスルフィド、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル]テトラスルフィド、ジ−t−ブトキシジアセトキシシラン、ジ−i−ブトキシアルミノキシトリエトキシシラン、ビス(ペンタジオネート)チタン−O,O’−ビス(オキシエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルシラントリオール、メチルフェニルシランジオール、エチルフェニルシランジオール、n−プロピルフェニルシランジオール、イソプロピルフェニルシランジオール、n−ブチルシフェニルシランジオール、イソブチルフェニルシランジオール、tert−ブチルフェニルシランジオール、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、エチルメチルフェニルシラノール、n−プロピルメチルフェニルシラノール、イソプロピルメチルフェニルシラノール、n−ブチルメチルフェニルシラノール、イソブチルメチルフェニルシラノール、tert−ブチルメチルフェニルシラノール、エチルn−プロピルフェニルシラノール、エチルイソプロピルフェニルシラノール、n−ブチルエチルフェニルシラノール、イソブチルエチルフェニルシラノール、tert−ブチルエチルフェニルシラノール、メチルジフェニルシラノール、エチルジフェニルシラノール、n−プロピルジフェニルシラノール、イソプロピルジフェニルシラノール、n−ブチルジフェニルシラノール、イソブチルジフェニルシラノール、tert−ブチルジフェニルシラノール、トリフェニルシラノール等が挙げられるが、これらに限定されない。これらは単独でも複数組み合わせて用いてもよい。
シランカップリング剤としては、前記したシランカップリング剤の中でも、保存安定性の観点から、フェニルシラントリオール、トリメトキシフェニルシラン、トリメトキシ(p−トリル)シラン、ジフェニルシランジオール、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジフェニルシラン、ジメトキシジ−p−トリルシラン、トリフェニルシラノール、及び下記構造で表されるシランカップリング剤であることが好ましい。
シランカップリング剤を使用する場合の配合量としては、(A)フェノール樹脂100質量部に対して、0.01〜20質量部が好ましい。
染料としては、例えば、メチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン等が挙げられる。染料の配合量としては、(A)フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
溶解促進剤としては、水酸基又はカルボキシル基を有する化合物が好ましい。水酸基を有する化合物の例としては、前述のナフトキノンジアジド化合物に使用しているバラスト剤、並びにパラクミルフェノール、ビスフェノール類、レゾルシノール類、及びMtrisPC、MtetraPC等の直鎖状フェノール類、TrisP−HAP、TrisP−PHBA、TrisP−PA等の非直鎖状フェノール類(全て本州化学工業社製)、ジフェニルメタンの2〜5個のフェノール置換体、3,3−ジフェニルプロパンの1〜5個のフェノール置換体、2,2−ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物とをモル比1対2で反応させて得られる化合物、ビス−(3−アミノ−4−ヒドロキシフェニル)スルホンと1,2−シクロヘキシルジカルボン酸無水物とをモル比1対2で反応させて得られる化合物、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシ5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸イミド等が挙げられる。カルボキシル基を有する化合物の例としては、3−フェニル乳酸、4−ヒドロキシフェニル乳酸、4−ヒドロキシマンデル酸、3,4−ジヒドロキシマンデル酸、4−ヒドロキシ−3−メトキシマンデル酸、2−メトキシ−2−(1−ナフチル)プロピオン酸、マンデル酸、アトロラクチン酸、α−メトキシフェニル酢酸、O−アセチルマンデル酸、イタコン酸等を挙げることができる。
溶解促進剤を使用する場合の配合量としては、(A)フェノール樹脂100質量部に対して、0.1〜30質量部が好ましい。
<感光性樹脂組成物の製造>
本実施形態の感光性樹脂組成物は、例えば、上記の(A)フェノール樹脂、(B)化合物、及び(C)光酸発生剤、更に任意に前述の添加剤の1種以上を、上記溶媒に添加して溶解させることを含む方法によって製造できる。ここで、各成分の好ましい配合量は上記のとおりである。
<硬化レリーフパターンの製造方法>
本実施形態の別の態様は、(1)上述した本発明の感光性樹脂組成物を含む感光性樹脂層を基板上に形成する工程、(2)該感光性樹脂層を露光する工程、(3)現像液により露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)を除去して、レリーフパターンを得る工程、及び(4)該レリーフパターンを加熱処理する工程を含む、硬化レリーフパターンの製造方法を提供する。硬化レリーフパターンの製造方法の一例を以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
まず、本実施形態の感光性樹脂組成物を適当な支持体又は基板、例えばシリコンウエハー、セラミック基板、アルミ基板等に塗布する。ここでいう基板には、未加工の基板以外に、例えば半導体素子又は表示体素子が表面に形成された基板も含む。この時、形成するパターンと支持体との耐水接着性を確保するため、あらかじめ支持体又は基板にシランカップリング剤等の接着助剤を塗布しておいてもよい。感光性樹脂組成物の塗布はスピンナーを用いた回転塗布、スプレーコーターを用いた噴霧塗布、浸漬、印刷、ロールコーティング等で行う。
次に、80〜140℃でプリベークして感光性樹脂組成物の塗膜を乾燥させる。乾燥後の感光性樹脂層の厚さとしては、1〜500μmが好ましい。
次に、感光性樹脂層を露光する。露光用の化学線としては、X線、電子線、紫外線、可視光線等が使用できるが、200〜500nmの波長のものが好ましい。パターンの解像度及び取り扱い性の点で、光源波長は水銀ランプのg線、h線又はi線の領域であることが好ましく、単独でも2つ以上の化学線を混合していてもよい。露光装置としてはコンタクトアライナー、ミラープロジェクション、及びステッパーが特に好ましい。露光後、必要に応じて再度80〜140℃で塗膜を加熱しても良い。
次に現像を、現像液を用い、浸漬法、パドル法、回転スプレー法等の方法から選択して行うことができる。現像により、塗布された感光性樹脂層から、露光部(ポジ型の場合)又は未露光部(ネガ型の場合)を溶出除去し、レリーフパターンを得ることができる。
現像液としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩類等の水溶液、及び必要に応じて、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒、又は界面活性剤を適当量添加した水溶液を使用することができる。これらの中で、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましく、該テトラメチルアンモニウムヒドロキシドの濃度は、好ましくは、0.5〜10質量%であり、さらに好ましくは、1〜5質量%である。
現像後、リンス液により洗浄を行い、現像液を除去することにより、レリーフパターンが形成された基板を得ることができる。リンス液としては、蒸留水、メタノール、エタノール、イソプロパノール等を単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
最後に、このようにして得られたレリーフパターンを加熱することで硬化レリーフパターンを得ることができる。加熱温度は150℃以上300℃未満が好ましく、250℃以下がより好ましく、更に好ましくは170℃以上220℃以下である。本発明が提供する感光性樹脂組成物は、例えば上記温度のような低温での硬化でも十分な膜物性(例えば硬化膜の耐熱性)を実現できるという利点を有する。
半導体装置の永久膜用途に一般的に使われているポリイミド又はポリベンゾオキサゾールの前駆体の組成物を用いた硬化レリーフパターンの形成方法においては、前駆体を300℃以上に加熱して脱水環化反応を進行させることにより、ポリイミド又はポリベンゾオキサゾール等に変換する必要がある。しかし本発明の硬化レリーフパターンの製造方法においてはより低温の加熱でも感光性樹脂組成物を硬化させることができるので、熱に弱い半導体装置及び表示体装置にも好適に使用することが出来る。一例を挙げるならば、本発明に係る感光性樹脂組成物は、プロセス温度に制約のある高誘電体材料又は強誘電体材料、例えばチタン、タンタル、又はハフニウム等の高融点金属の酸化物から成る絶縁層を有する半導体装置に好適に用いられる。
半導体装置がこのような耐熱性上の制約を持たない場合であれば、もちろん、本方法においても300〜400℃に加熱処理をしてもよい。このような加熱処理は、ホットプレート、オーブン、又は温度プログラムを設定できる昇温式オーブンを用いることにより行うことが出来る。加熱処理を行う際の雰囲気気体としては空気を用いてもよく、窒素、アルゴン等の不活性ガスを用いることもできる。また、より低温にて熱処理を行う必要が有る際には、真空ポンプ等を利用して減圧下にて加熱を行ってもよい。
<半導体装置>
また、本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて上述の方法で製造された硬化レリーフパターンを有して成る半導体装置も本実施形態の一態様である。本実施形態の半導体装置は、半導体素子と該半導体素子の上部に設けられた硬化膜とを備え、該硬化膜は上述の硬化レリーフパターンである。ここで当該硬化レリーフパターンは、当該半導体素子に直接接して積層されていてもよく、別の層を間に挟んで積層されていてもよい。例えば、該硬化膜として、表面保護膜、層間絶縁膜、再配線用絶縁膜、フリップチップ装置用保護膜、及びバンプ構造を有する半導体装置の保護膜が挙げられる。本実施形態の半導体装置は、公知の半導体装置の製造方法と上述した本発明の硬化レリーフパターンの製造方法とを組み合わせることで製造することができる。
<表示体装置>
本実施形態の表示体装置は、表示体素子と該表示体素子の上部に設けられた硬化膜とを備え、該硬化膜は上述の硬化レリーフパターンである。ここで当該硬化レリーフパターンは、当該表示体素子に直接接して積層されていてもよく、別の層を間に挟んで積層されていてもよい。例えば、該硬化膜として、TFT液晶表示素子及びカラーフィルター素子の表面保護膜、絶縁膜、及び平坦化膜、MVA型液晶表示装置用の突起、並びに有機EL素子陰極用の隔壁を挙げることができる。
本実施形態の表示体装置は、本実施形態の半導体装置と同様に、公知の表示体装置の製造方法と上述した本実施形態の硬化レリーフパターンの製造方法とを組み合わせることで製造することができる。
以下、合成例、実施例及び比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、各評価項目の測定条件は以下に示すとおりである。
<硬化レリーフパターン断面角度測定>
感光性樹脂組成物をシリコンウエハー上にスピンコートし、ホットプレート上において該シリコンウエハー及びスピンコート膜を120℃で180秒間ホットプレートにてプリベークを行い、10μmの膜厚の塗膜を形成した。この塗膜に、テストパターン付きレチクルを通して、i線(365nm)の露光波長を有するステッパーNSR2005i8A(ニコン社製)を用いて露光量500mJ/cm2のi線を照射することにより露光した。露光後、後述する実施例39,40、比較例9,10については、120℃で180秒間ホットプレートにて再加熱した。次に、現像機(D−SPIN)にて23℃で2.38%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液AZ−300MIF(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)を用いて、100秒間現像し、純水でリンスし、縦型キュア炉VF200B(光洋サーモシステム社製)にて窒素雰囲気下、200℃で1時間硬化を行い、硬化レリーフパターンを得た。その後、100μmのスペース部位と、100μmのライン部位の断面形状をSEM(日立ハイテクノロジーズ社製、型式名S−4800)を用いて観察した。硬化膜の高さ(すなわち厚さ)の半分の位置にてパターン側壁に対する接線L1を引いた。基材と硬化膜との界面に対応する画像上の線分L2と接線L1とがなす角度(すなわち硬化レリーフパターン内角)を硬化レリーフパターン断面角度として測定した。
<室温4週間粘度変化率>
上記実施例1〜44、及び比較例1〜13の感光性樹脂組成物を室温で3日間放置したサンプルを調製後のサンプルとし、その後更に室温で4週間放置したサンプルを4週間後のサンプルとし、温調機付粘度計(東機産業械社製TV−22を用いて、23℃における粘度測定を行った。
室温4週間粘度変化率は、[(4週間後のサンプルの粘度)−(調整後のサンプルの粘度)]/(調整後のサンプルの粘度)×100により求めた。結果を以下の表2に示す。
[合成例1]
<フェノール樹脂(A−1)の合成>
容量0.5リットルのディーン・スターク装置付きセパラブルフラスラスコ中で、フロログルシノール100.9g(0.8mol)、4,4’−ビス(メトキシメチル)ビフェニル(以下「BMMB」ともいう。)121.2g(0.5mol)、ジエチル硫酸3.9g(0.025mol)、ジエチレングリコールジメチルエーテル140gを70℃で混合攪拌し、固形物を溶解させた。
混合溶液をオイルバスにより140℃に加温し、反応液よりメタノールの発生を確認した。そのまま140℃で反応液を2時間攪拌した。
次に反応容器を大気中で冷却し、これに別途100gのテトラヒドロフランを加えて攪拌した。上記反応希釈液を4Lの水に高速攪拌下で滴下し樹脂を分散析出させ、これを回収し、適宜水洗、脱水の後に真空乾燥を施し、フロログルシノール/BMMBからなる共重合体(フェノール樹脂(A−1))を収率70%で得た。このA−1のGPC法の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は15,000であった。
なお各合成例で得られた樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用い、以下の条件で測定し、標準ポリスチレン換算での重量平均分子量を求めた。
ポンプ:JASCO PU−980
検出器:JASCO RI−930
カラムオーブン:JASCO CO−965 40℃
カラム:Shodex KD−806M 直列に2本
移動相:0.1mol/l LiBr/NMP
流速:1ml/min.
[合成例2]
<フェノール樹脂(A−2)の合成>
合成例1のフロログルシノールの代わりに、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル128.3g(0.76mol)を用いて、合成例1と同様に合成を行い、3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル/BMMBからなる共重合体(フェノール樹脂(A−2))を収率65%で得た。このA−2のGPC法の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は21,000であった。
[合成例3]
<フェノール樹脂(A−3)の合成>
容量1.0Lのディーン・スターク装置付きセパラブルフラスコを窒素置換し、その後、該セパラブルフラスコ中で、レゾルシノール81.3g(0.738mol)、BMMB84.8g(0.35mol)、p−トルエンスルホン酸3.81g(0.02mol)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMEとも言う)116gを50℃で混合攪拌し、固形物を溶解させた。
混合溶液をオイルバスにより120℃に加温し、反応液よりメタノールの発生を確認した。そのまま120℃で反応液を3時間攪拌した。
次に、別の容器で2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾール24.9(0.150mol)g、PGME249gを混合撹拌し、均一溶解させた溶液を、滴下漏斗を用いて、該セパラブルフラスコに1時間で滴下し、滴下後更に2時間撹拌した。
反応終了後は合成例1と同様の処理を行い、レゾルシノール/BMMB/2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールからなる共重合体(フェノール樹脂(A−3))を収率77%で得た。このA−3のGPC法の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は9,900であった。
[合成例4]
<フェノール樹脂(A−5)の合成>
フェノール100質量部、亜麻仁油43質量部及びトリフロオロメタンスルホン酸0.1質量部を混合し、120℃で2時間撹拌し、乾性油変性フェノール誘導体を得た。次いで、上記乾性油変性フェノール誘導体130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌し反応を行った。次に、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌後、反応液を大気圧下で室温まで冷却し、反応生成物である乾性油変性フェノール樹脂(A−5)を得た。このA−5のGPC法の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は25,000であった。
[合成例5]
<フェノール樹脂(A−6)の合成>
上記乾性油変性フェノール誘導体130g、パラホルムアルデヒド16.3g及びシュウ酸1.0gを混合し、90℃で3時間撹拌し反応を行った。次いで、120℃に昇温して減圧下で3時間撹拌した後、反応液に無水コハク酸29g及びトリエチルアミン0.3gを加え、大気圧下、100℃で1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、反応生成物である乾性油変性フェノール樹脂(A−6)を得た。このA−6のGPC法の標準ポリスチレン換算により求めた重量平均分子量は28,000であった。
[実施例1]
表1に示すとおり、フェノール樹脂(A−1)100質量部、カルボキシ基を分子内に2個有する化合物(B−1)3質量部、及び光酸発生剤(C−1)12質量部を、溶剤(D−1)214質量部に溶解させ、0.1μmのフィルターで濾過してポジ型感光性樹脂組成物を調製した。この組成物及びその硬化膜の特性を前記の評価方法に従って測定した。得られた結果を表2に示す。
[実施例2〜38,41〜44、比較例1〜8,11〜13]
表1に示した成分からなる組成物を実施例1と同様に調製し、ポジ型感光性樹脂組成物を得た。この組成物の特性を実施例1と同様に測定した。得られた結果を表2に示す。
[実施例39,40、比較例9,10]
表1に示した成分からなる組成物を実施例1と同様に調製し、ネガ型感光性樹脂組成物を得た。この組成物の特性を前記の評価方法に従って測定した。得られた結果を表2に示す。
表1に記載の組成は、以下のとおりである。
<(A)フェノール樹脂>
A−1:フロログルシノール/BMMBからなる共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=15,000
A−2:3,5−ジヒドロキシ安息香酸メチル/BMMBからなる共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=21,000
A−3:レゾルシノール/BMMB/2,6−ビス(ヒドロキシメチル)−p−クレゾールからなる共重合体、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=9,900
A−4:フェノール/ビフェニレン樹脂、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=2,400(明和化成社製、製品名MEH−7851M)
A−5:炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物(乾性油)変性フェノール樹脂、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=25,000
A−6:炭素数4〜100の不飽和炭化水素基を有する化合物(乾性油)変性フェノール樹脂、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=28,000
A−7:ノボラック樹脂、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=10,600(旭有機材社製、製品名EP−4080G)
A−8:ポリパラビニルフェノール、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)=10,000(丸善石油化学社製、製品名:マルカリンカーM、S−4)
<(B)化合物(水素結合形成性基を分子内に2〜4有する化合物)>
B−1:マロン酸(ジカルボン酸)(東京化成製)
B−2:o−フタル酸(ジカルボン酸)(東京化成製)
B−3:トリメリット酸(トリカルボン酸)(東京化成製)
B−4:無水コハク酸(ジカルボン酸無水物)(東京化成製)
B−5:p−フタル酸ジアミド(カルボン酸アミド)(東京化成製)
B−6:p−フタル酸ジメチル(カルボン酸エステル)(東京化成製)
B−7:安息香酸(モノカルボン酸)(東京化成製)
<(C)光酸発生剤>
C−1:下記式で表される光酸発生剤:
(式中、Qの内83%が以下の:
で表される構造であり、残余が水素原子である。)
C−2:イルガキュア PAG121(商品名、BASFジャパン社製)
<(D)溶剤>
D−1:γ―ブチロラクトン(GBL)
<(E)添加剤>
E−1:1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル(三和ケミカル製、商品名;ニカラックMX−270)
表2に示した結果から分かるように、各実施例においては、低温硬化(200℃)が可能であり、硬化レリーフパターン形状に優れた(すなわち硬化レリーフパターン断面角度が大きい)、硬化膜を形成することができた。また、(B)化合物の配合量が(A)フェノール樹脂100質量部に対して3質量部以下である実施例は、硬化後パターン断面角度と保存安定性との両立において特に優れていた。したがって、本発明によれば、これらの諸特性に優れた半導体素子用の層間絶縁膜、表面保護膜等を提供することができる。