JP6269499B2 - 化合物のラセミ体の製造方法 - Google Patents
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Description
非特許文献1には、2−フェニルブタンの光学活性体と塩化アルミニウムとを接触させて、2−フェニルブタンの光学活性体をラセミ化する方法が記載されている。
しかしながら、(3R)−1,1,3−トリメチル−4−アミノインダン等の光学活性体をラセミ化する方法は知られていない。
[1] 遷移金属触媒と、式(1)で表される化合物の光学活性体とを接触させることを特徴とする、式(1)で表される化合物のラセミ体の製造方法。
[式(1)中、
環X1は芳香環を表す。
R1は、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表す。
R2は、R1と異なる基であって、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表すか、あるいは、R2は、環X1と互いに結合して環を形成する。
環X1が有する水素原子は、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C1−6アルコキシ基またはハロゲン原子で置き換わっていてもよい。
*は不斉炭素原子を表す。]
[2] 式(1)で表される化合物が、式(1a)で表される化合物である[1]記載の製造方法。
[式(1a)中、
A1、A2、A3及びA4は、それぞれ独立に、−N=または−C(Ra)=を表し、Raは水素原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C1−6アルコキシ基、またはハロゲン原子を表す。
R3は、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表す。
R4は、R3と異なる基であって、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表す。あるいはA1が−C(Ra)=を表す場合に、R4とRaとは互いに結合して2価の炭化水素基を形成してもよく、該炭化水素基が有する水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、該炭化水素基が有する−CH2−は−O−で置き換わっていてもよい。
隣り合う−C(Ra)=に含まれる2つのRaは、互いに結合して、それぞれが結合している炭素原子とともにベンゼン環を形成していてもよく、該ベンゼン環が有している水素原子はC1−6アルキル基またはハロゲン原子で置換されていてもよい。
*は不斉炭素原子を表す。]
[3] A1、A2、A3及びA4が−C(Ra)=である[2]記載の製造方法。
[4] A1が−C(Ra)=であり、RaとR2とが互いに結合して2価の炭化水素基を形成する[2]または[3]記載の製造方法。
[5] 式(1a)で表される化合物が、式(2)で表される化合物である[2]〜[4]のいずれかの項に記載の製造方法。
[式(2)中の、
A2、A3及びA4は、それぞれ独立に−N=または−C(Ra)=を表し、Raは水素原子、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基またはハロゲン原子を表す。R3は、C1−6アルキル基を表す。
Rdは、C1−6アルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表し、rは0〜4の整数を表す。rが2以上の整数である場合、複数のRdは同じであっても異なっていてもよい。
は不斉炭素原子を表す。]
[6] R3が、C1−6アルキル基である[2]〜[5]のいずれかの項に記載の製造方法。
[7] 式(1)で表される化合物が、式(3)で表される化合物である[1]〜[6]のいずれかの項に記載の製造方法。
[8] 遷移金属触媒が、水素を吸収させた遷移金属触媒である[1]〜[7]のいずれかの項に記載の製造方法。
[9] 遷移金属触媒が、パラジウム触媒である[1]〜[8]のいずれかの項に記載の製造方法。
[10] パラジウム触媒が、パラジウム−炭素触媒である[9]の項に記載の製造方法。
[11] 遷移金属触媒と、式(1)で表される化合物の光学活性体とを接触させることを特徴とする、式(1)で表される化合物の異性化方法。
[式(1)中、
環X1は芳香環を表す。
R1は、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表す。
R2は、R1と異なる基であって、C1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基またはC1−6ハロアルキル基を表すか、あるいは、R2は、環X1と互いに結合して環を形成する。
環X1が有する水素原子は、C1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、C1−6アルコキシ基またはハロゲン原子で置き換わっていてもよい。
*は不斉炭素原子を表す。]
C1−6アルキル基とは、炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、直鎖状のアルキル基及び分枝鎖状のアルキル基を含む。C1−6アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、sec−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基である。
C3−8シクロアルキル基とは、炭素原子数3〜8の環状アルキル基を表し、C3−8シクロアルキル基としては、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。好ましくは、シクロプロピル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基である。
C1−6ハロアルキル基とは、少なくとも一つの水素原子がハロゲン原子に置換されている炭素原子数1〜6のアルキル基を表し、C1−6ハロアルキル基としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、ジブロモメチル基、トリブロモメチル基、ヨードメチル基、ジヨードメチル基、トリヨードメチル基、クロロフルオロメチル基、ジクロロフルオロメチル基、フルオロエチル基、クロロエチル基、1−クロロ−1−フルオロエチル基、1−クロロ−2−フルオロエチル基等が挙げられる。好ましくは、トリフルオロメチル基及びジフルオロメチル基である。
C1−6アルコキシ基とは、炭素数原子数1〜6のアルコキシ基を表し、C1−6アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基等が挙げられる。好ましくは、メトキシ基である。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。芳香環とは、同素環及び複素環を含み、下記の環等が挙げられ、好ましくは5員環及び6員環である。
R2と環X1とが互いに結合して形成する環としては、下記の環等が挙げられ、好ましくは5員環及び6員環である。
まず、式(1a)について説明する。
式(1a)で表される化合物におけるC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基、ハロゲン原子としては、それぞれ式(1)で表される化合物におけるものと同じ基が挙げられる。
R4とRaとが互いに結合して形成する2価の炭化水素基としては、エチレン基、プロパンジイル基、2−メチル−プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,2−ジイル基、ブタンジイル基、ヘキサンジイル基、ヘプタンジイル基、オクタンジイル基、ノナンジイル基等の炭素原子数2〜9のアルカンジイル基が挙げられる。
R4とRaとが互いに結合して形成する2価の炭化水素基であって、該炭化水素基が有する−CH2−は−O−で置き換わっている基としては、−CH2−O−CH2−、−CH2−CH2−O−等が挙げられる。
式(2)で表される化合物におけるC1−6アルキル基、C1−6ハロアルキル基またはハロゲン原子としては、式(1)で表される化合物及び式(1a)で表される化合物におけるものと同じ基が挙げられる。
式(1b)で表される化合物におけるC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C1−6ハロアルキル基、C1−6アルコキシ基及びハロゲン原子は、式(1)で表される化合物におけるものと同じ基が挙げられる。
式(1b)で表される化合物における、R6とRbまたはRcとが互いに結合して形成する2価の炭化水素基としては、式(1a)で表される化合物におけるものと同じ基が挙げられる。
式(2−1)で表される化合物〜式(2〜23)で表される化合物であって、式(B−1)で表される化合物〜式(B−44)で表される化合物が好ましい。
式(6−1)で表される化合物〜式(6〜23)で表される化合物であって、式(F−1)で表される化合物〜式(F−24)で表される化合物が好ましい。
式(6−1)で表される化合物〜式(6〜23)で表される化合物であって、式(F−3)、式(F−9)、式(F−15)、式(F−21)で表される化合物がさらに好ましい。
式(1)で表される化合物のうち、特に好ましくは、式(3)で表される化合物である。
遷移金属触媒は、担体に担持してもよい。担体としては、活性炭、シリカ、ゼオライト、セライト(登録商標)等が挙げられる。
遷移金属触媒は、あらかじめ、遷移金属触媒と水素とを共存させることにより、遷移金属触媒に水素を吸収させて使用してもよく、水素を吸収させた遷移金属触媒が好ましい。
遷移金属触媒の使用量は、式(1)で表される化合物の光学活性体1重量部に対して、通常は0.001〜1重量部であり、好ましくは0.005〜0.5重量部である。
溶媒としては、ベンゼン、クロロベンゼン、トルエン、キシレン、ピリジン等の芳香族溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン等の含ハロゲン炭化水素溶媒;酢酸エチル等のエステル溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;1,2−ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル溶媒;アセトニトリル、プロピルニトリル等のニトリル溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド溶媒;メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール溶媒;水、水酸化ナトリウム水溶液、アンモニア水等の水溶媒;及びこれらの混合溶媒等が挙げられる。好ましくはアルコール溶媒であり、より好ましくは2−プロパノールである。
溶媒の使用量は、式(1)で表される化合物の光学活性体1重量部に対して、通常100重量部以下であり、好ましくは5重量部以下である。
添加剤としては、蟻酸;蟻酸アンモニウム、蟻酸ナトリウムなどの蟻酸塩;シクロヘキセン;3−メチル−1−シクロヘキセン、4−メチル−1−シクロヘキセン等のシクロヘキセン化合物;1,3−シクロヘキサジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1,2,3,4,4aα,5,8,8aβ−オクタヒドロナフタレン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン、1−メチルオクタリン、トランス−2−メチルオクタリン等のオクタリン化合物;テトラリン;1,6−ジメチルテトラリン;6−メチルテトラリン;リモネン;ピネン;3−カレン;フェランドレン;テルピノレン;1−p−メンテン;カダレン;プレゴン;セリネン;メタノール、エタノール、2−プロパノール、シクロヘキサノール等のアルコール化合物;またはこれらの混合物等が挙げられ、好ましくはシクロヘキセン化合物が挙げられ、より好ましくはシクロヘキセンが挙げられる。
添加剤の使用量は、式(1)で表される化合物の光学活性体1重量部に対して、通常10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下であり、より好ましくは2重量部以下である。
水素発生源となる添加剤と溶媒とを兼ねる化合物を用いてもよい。水素発生源となる添加剤と溶媒とを兼ねる化合物としては、アルコール化合物が好ましく、2−プロパノールが更に好ましい。
遷移金属触媒と式(1)で表される化合物の光学活性体との接触は、オートクレーブ等の密封容器中で行ってもよいし、フラスコ等の開放容器中で行ってもよい。遷移金属触媒と式(1)で示される化合物の光学活性体との接触は、空気下、窒素雰囲気下または水素雰囲気下で行うことができ、好ましくは窒素または水素雰囲気下で行われる。
遷移金属触媒と式(1)で表される化合物の光学活性体との接触は、水素雰囲気下で、50〜80℃で混合し、100〜200℃、好ましくは150〜200℃まで加熱することにより行うことが好ましく、水素雰囲気下で、50〜80℃で混合し、水素を窒素に置換した後、100〜200℃、好ましくは150〜200℃まで加熱することにより行うことがより好ましい。
遷移金属触媒と式(1)で表される化合物の光学活性体との接触により、式(1)で表される化合物のラセミ体を含む混合物を得られる。例えば、該混合物から、触媒を濾過等により除去することにより、式(1)で表される化合物のラセミ体を取り出すことができる。得られた式(1)で表される化合物のラセミ体は、濃縮、抽出、転溶、再結晶化、クロマトグラフィー等の公知の方法によって、精製することもできる。
濾過等により除去した触媒は、回収して、再び式(1)で表される化合物のラセミ体の製造に使用することができる。回収方法としては、触媒を担体に担持させる方法等が挙げられる。
回収した触媒は、溶媒で洗浄することが好ましい。溶媒としては、メタノール等のアルコール化合物:水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ水溶液:水またはこれらの混合溶液等が挙げられる。
カラム:ダイセルCHIRALCEL OD−H(4.6mmφ×250mm)
溶離液:ヘキサン/2−プロパノール=99/1(v/v)
流速:0.5mL/分
温度:40℃
検出器:UV254nm
回収率は、以下の条件で高速液体クロマトグラフィー分析することにより求めた。
カラム:化学物質評価研究機構L−Column ODS(4.6mmφ×150mm)
溶離液:アセトニトリル/0.1%リン酸水溶液=30/70(v/v)〜90/10(v/v)
流速:1.0mL/分
温度:40℃
検出器:UV254nm
この回収したパラジウム−炭素2.88重量部と新たに5%パラジウム−炭素(N.E.ケムキャット社製E−type)0.64重量部をオートクレーブ反応容器に仕込み、(3R)−1,1,3−トリメチル−4−アミノインダン(光学純度67.0%ee)104.0重量部、トルエン1.5重量部を加え、混合物を得た。反応容器を密閉し、反応容器内の気体を窒素に置換した。混合物を撹拌しながら、反応容器中の水素の内圧が0.5MPaになるまで反応容器に水素を封入し、内温60℃で撹拌した。1時間後、反応容器内の気体を窒素で置換し、内温150℃、内圧0.1MPaで14時間混合物を攪拌して反応混合物を得た。得られた反応混合物を冷却し、セライトを使用して濾過した。得られた固体を、トルエン150重量部で洗浄した。洗浄後に回収した洗浄液と、濾過によって得られた濾液とを混合し、244.6重量部の1,1,3−トリメチル−4−アミノインダンのトルエン溶液を得た。得られた1,1,3−トリメチル−4−アミノインダンは、光学純度0.11%ee、回収率は98.5%となった。
Claims (7)
- A 2 、A 3 及びA 4 のうち、1つが−C(R a )=であり、残余が−CH=であり、
R a が、水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、トリフルオロメチル基、エチル基またはメチル基であり、
R 3 が、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基であり、
R d が、メチル基である請求項1に記載の製造方法。 - A 2 が−C(R a )=であり、A 3 及びA 4 が−CH=であり、
R a が、水素原子またはフッ素原子であり、
R 3 が、メチル基である請求項3に記載の製造方法。 - パラジウム触媒が、パラジウム−炭素触媒である請求項1〜5のいずれかの請求項に記載の製造方法。
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