以下、図面を参照して本発明の車両制御装置の実施形態について説明する。尚、以下では、本発明の車両制御装置の実施形態が適用されたハイブリッド車両10を用いて説明を進める。
(1)ハイブリッド車両の構成
はじめに、図1を参照して、本実施形態のハイブリッド車両10の構成について説明する。ここに、図1は、本実施形態のハイブリッド車両10の構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、ハイブリッド車両10は、車軸11と、車輪12と、「車両制御装置」の一具体例であるECU(Electronic Control Unit)100と、「内燃機関」の一具体例であるエンジンENGと、「回転電機」の一具体例であるモータジェネレータMG1と、モータジェネレータMG2と、動力分割機構300と、インバータ400と、「蓄電池」の一具体例であるバッテリ500とを備える。
車軸11は、エンジンENG及びモータジェネレータMG2から出力された動力を車輪に伝達するための伝達軸である。車輪12は、車軸11を介して伝達される動力を路面に伝達する手段である。
ECU100は、ハイブリッド車両10の動作全体を制御することが可能に構成された電子制御ユニットである。本実施形態では特に、ECU100は、その内部に実現される論理的な又は物理的な処理ブロックとして、「制御手段」の一具体例である走行モード制御部101と、「判定手段」の一具体例である燃費率算出部102及び燃費率比較部103と、「補正手段」の一具体例である燃費率補正部104とを備えている。
走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードを制御する。具体的には、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが所望の走行モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する。例えば、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが、エンジンENGの動力を用いて走行するHV(Hybrid Vehicle)モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御してもよい。例えば、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが、エンジンENGを運転することなくモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2の少なくとも一方の動力を用いて走行するEV(Electric Vehicle)モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御してもよい。
尚、EVモードでは、エンジンENGが運転していない(言い換えれば、エンジンENGが駆動していない、更に言い換えれば、エンジンENGが燃料を消費していない)。このため、EVモードでの走行頻度が多くなるほど、ハイブリッド車両10の燃費が向上する。
本実施形態では特に、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードが燃費率比較部103の比較結果に基づいて決定される走行モードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する。尚、燃費率比較部103の比較結果に基づいて決定される走行モードについては、後に詳述する(図2等参照)。
燃費率算出部102は、ハイブリッド車両10の走行モードが決定される際に、燃費率比較部103による比較対象となる燃費率(具体的には、後述するバッテリ燃費率F及び走行時エンジン燃費率H)を算出する。尚、燃費率算出部102によるバッテリ燃費率F及び走行時エンジン燃費率Hの算出方法の詳細については、後に詳述する(図2等参照)。
燃費率比較部103は、燃費率算出部102が算出したバッテリ燃費率Fと走行時エンジン燃費率Hとを比較する。具体的には、燃費率比較部103は、バッテリ燃費率Fと走行時エンジン燃費率Hとの大小関係を判定する。燃費率比較部103は、比較結果(つまり、大小関係の判定結果)を走行モード制御部101に伝える。
燃費率補正部104は、バッテリ500のSOC(State Of Charge)及びSOCの変化率(即ち、単位時間あたりの変化量)に基づいて、バッテリ燃費率Fを補正する。尚、燃費率補正部104による具体的な補正方法については、後に詳述する(図6等参照)。
エンジンENGは、ガソリンや軽油等の燃料を燃焼することで駆動する。エンジンENGは、ハイブリッド車両10の主たる動力源として機能する。加えて、エンジンENGは、後述するモータジェネレータMG1の回転軸を回転させる(言いかえれば、駆動する)ための動力源として機能する。
モータジェネレータMG1は、バッテリ500を充電するための発電機として機能する。モータジェネレータMG1が発電機として機能する場合には、モータジェネレータMG1の回転軸は、エンジンENGの動力によって回転する。但し、モータジェネレータMG1は、バッテリ500に蓄積された電力を用いて駆動することで、ハイブリッド車両10の動力を供給する電動機として機能してもよい。
モータジェネレータMG2は、バッテリ500に蓄積された電力を用いて駆動することで、ハイブリッド車両10の動力を供給する電動機として機能する。加えて、モータジェネレータMG2は、バッテリ500を充電するための発電機として機能してもよい。モータジェネレータMG2が発電機として機能する場合には、モータジェネレータMG2の回転軸は、車軸11からモータジェネレータMG2に伝達される動力によって回転する。
動力分割機構300は、図示せぬサンギア、プラネタリキャリア、ピニオンギア、及びリングギアを備えた遊星歯車機構である。サンギアの回転軸はモータジェネレータMG1の回転軸に連結されている。リングギアの回転軸は、モータジェネレータMG2の回転軸に連結されている。サンギアとリングギアの中間にあるプラネタリキャリアの回転軸はエンジンENGの回転軸(つまり、クランクシャフト)に連結されている。エンジンENGの回転は、プラネタリキャリア及びピニオンギアによって、サンギア及びリングギアに伝達される。つまり、エンジンENGの動力は、2系統に分割される。ハイブリッド車両10において、リングギアの回転軸は、ハイブリッド車両10における車軸11に連結されており、この車軸11を介して車輪12に駆動力が伝達される。
インバータ400は、バッテリ500から取り出した直流電力を交流電力に変換してモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する。更に、インバータ400は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ500に供給する。尚、インバータ400は、所謂PCU(Power Control Unit)の一部として構成されていてもよい。
バッテリ500はモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2が駆動するための電力をモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給する電力供給源である。バッテリ500は、充電可能な蓄電池である。
尚、バッテリ500は、ハイブリッド車両10の外部の電源から電力の供給を受けることで充電されてもよい。つまり、ハイブリッド車両10は、いわゆるプラグインハイブリッド車両であってもよい。
(2)ハイブリッド車両10の動作
続いて、図2を参照しながら、ハイブリッド車両10の動作(特に、ハイブリッド車両10の走行モードを制御する動作)について説明する。図2は、ハイブリッド車両10の動作(特に、ハイブリッド車両10の走行モードを制御する動作)の流れの一例を示すフローチャートである。
図2に示すように、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jの夫々の初期値を設定する(ステップS11)。以下、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jについて順に説明を進める。尚、バッテリ燃費率Fは、「充電コスト」の一具体例に相当する。
バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力(全電力)を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す指標値である。言い換えれば、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力のうち単位電力量の電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。更に言い換えれば、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力を蓄積する際に、単位電力量の電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。例えば、バッテリ500に「X4(但し、Xは0以上)」という量の電力が蓄積されており且つこの「X4」という量の電力を蓄積するために「Y4」という量の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、バッテリ燃費率Fは、「Y4/X3」という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、例えば、バッテリ500に「2kWh」の電力が蓄積されており且つ当該2kWhの電力を蓄積するために「560g」の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、バッテリ燃費率Fは、560÷2=280g/kWhとなる。以下では、説明の便宜上、バッテリ燃費率Fの単位が「g/kWh」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、ハイブリッド車両10の車種又は仕様毎に予め定められた任意の固定値を、バッテリ燃費率Fの初期値に設定してもよい。この場合、固定値として、ハイブリッド車両10が特定の走行経路を走行したと仮定した場合のシミュレーションから算出されるバッテリ燃費率(例えば、280g/kWh)が採用されてもよい。或いは、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ燃費率Fを、バッテリ燃費率Fの初期値に設定してもよい。この場合、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ燃費率Fを内部パラメータとして記憶しておくことが好ましい。
バッテリ電力積算量aは、バッテリ500に蓄積されている電力の総量を表す。例えば、バッテリ電力積算量aは、SOCが100%となる場合にバッテリ500に蓄積可能な電力の総量に対して、実際のSOCを掛け合わせることで算出される値に相当していてもよい。以下では、説明の便宜上、バッテリ電力積算量aの単位が「kWh」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、SOCが一定値となる場合にバッテリ500に蓄積されている電力量に相当する固定値を、バッテリ電力積算量aの初期値に設定してもよい。というのも、バッテリ500の劣化を抑制するために、バッテリ500に対する電力の入力(つまり、充電)及び出力(つまり、放電)は、SOCが一定値(例えば、65%)を維持するように制御されることが多い。このため、バッテリ500のSOCが一定値となっている可能性が高い(つまり、バッテリ電力積算量aも固定値となっている可能性が高い)からである。或いは、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ電力積算量aを、バッテリ電力積算量aの初期値に設定してもよい。この場合、燃費率算出部102は、図2に示す動作が前回終了した時点でのバッテリ電力積算量aを内部パラメータとして記憶しておくことが好ましい。或いは、燃費率算出部102は、不図示のSOCセンサから出力されるSOCを参照することでバッテリ500に蓄積されている電力の総量を算出又は推測すると共に、当該算出又は推測した電力の総量を、バッテリ電力積算量aの初期値に設定してもよい。
バッテリ燃料消費量Jは、バッテリ500に蓄積されている電力(全電力)を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量(いわば、総量)を表す指標値である。バッテリ燃料所費量Jは、バッテリ燃費率F×バッテリ電力積算量aという数式から算出される。従って、燃費率算出部102は、上述した態様で設定されたバッテリ燃費率Fの初期値に対して上述した態様で設定されたバッテリ電力積算量aの初期値を掛け合わせることで算出される値を、バッテリ燃料消費量Jの初期値に設定してもよい。以下では、説明の便宜上、バッテリ燃料消費量Jの単位が「g」であるものとして説明を進める。
その後、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに充電されたか否か(つまり、バッテリ500に新たに電力が入力されたか否か)を判定する(ステップS22)。例えば、燃費率算出部102は、不図示のSOCセンサから出力されるSOCを監視することで、バッテリ500が新たに充電されたか否かを判定してもよい。或いは、例えば、燃費率算出部102は、不図示の電流センサから出力されるバッテリ電流を監視することで、バッテリ500が新たに充電されたか否かを判定してもよい。
ステップS22の判定の結果、バッテリ500が新たに充電された(つまり、バッテリ500に新たに電力が入力された)と判定される場合には(ステップS22:Yes)、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに充電された後のバッテリ燃費率F’を算出する(ステップS23)。
具体的には、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに充電された後のバッテリ電力積算量a’を算出する(ステップS23)。バッテリ500が新たに充電された場合には、バッテリ電力積算量a’は、バッテリ500が新たに充電される前のバッテリ電力積算量aよりも、バッテリ500に新たに充電された電力の総量d(以降、“バッテリ入力電力量d”と称する)だけ増加しているはずである。従って、燃費率算出部102は、バッテリ電力積算量aに対してバッテリ入力電力量dを加算することで、バッテリ電力積算量a’を算出する。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ電力積算量a’=バッテリ電力積算量a+バッテリ入力電力量dという数式を用いて、バッテリ電力積算量a’を算出する。
加えて、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに充電された後のバッテリ燃料消費量J’を算出する(ステップS23)。バッテリ500が新たに充電された場合には、バッテリ燃料消費量J’は、バッテリ500が新たに充電される前のバッテリ燃料消費量Jよりも、バッテリ入力電力量dの電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量J(以降、“バッテリ入力燃料消費量j1”と称する)だけ増加しているはずである。そこで、燃費率算出部102は、バッテリ入力燃料消費量j1を算出すると共に、当該算出したバッテリ入力燃料消費量j1をバッテリ燃料消費量Jに加算することで、バッテリ燃料消費量J’を算出する。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ燃料消費量J’=バッテリ燃料消費量J+バッテリ入力燃料消費量j1という数式を用いて、バッテリ燃料消費量J’を算出する。
燃費率算出部102は、バッテリ入力燃料消費量j1=発電時エンジン燃費率G×補正係数α×バッテリ入力電力量dという数式を用いて、バッテリ入力燃料消費量j1を算出してもよい。
発電時エンジン燃費率Gは、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す指標値である。言い換えれば、発電時エンジン燃費率Gは、バッテリ入力電力量dの電力のうち単位電力量の電力をバッテリ500に蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。更に言い換えれば、発電時エンジン燃費率Gは、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際に、単位電力量の電力をバッテリ500に蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量を表す。例えば、バッテリ入力電力量dの電力を蓄積するために「Y5」という量の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、発電時エンジン燃費率Gは、「Y5/d」という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、バッテリ入力電力量dが「0.5kWh」であり且つ当該0.5kWhの電力をバッテリ500に新たに蓄積するために「100g」の燃料がエンジンENGによって消費された場合には、発電時エンジン燃費率Gは、100÷0.5=200g/kWhとなる。以下では、説明の便宜上、発電時エンジン燃費率Gの単位が「g/kWh」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、エンジンENGの動作点(例えば、エンジンENGのトルク及びエンジンENGの回転数によって特定される動作点)とエンジン燃費率との対応関係を表すマップを参照することで、発電時エンジン燃費率Gを算出することが好ましい。
ここで、図3を参照しながら、エンジンENGの動作点とエンジン燃費率との対応関係を表すマップについて説明する。図3は、エンジンENGの動作点とエンジン燃費率との対応関係を表すマップを示すグラフである。
図3に示すように、エンジンENGの動作点とエンジン燃費率との対応関係を表すマップが規定されているとする。この場合、燃費率算出部102は、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際のエンジンENGの動作点のマップ上での位置を参照することで、発電時エンジン燃費率Gを算出する。例えば、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際のエンジンENGの動作点がK1である場合には、燃費率算出部102は、k4[g/kWh]という発電時エンジン燃費率Gを算出する。例えば、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際のエンジンENGの動作点がK2である場合には、燃費率算出部102は、k5[g/kWh]という発電時エンジン燃費率Gを算出する。
このようなマップを参照することで発電時エンジン燃費率Gを算出するがゆえに、燃費率算出部102は、エンジンENGの動作点を特定するための情報(例えば、動作点を指示するECU100の制御信号や、エンジンENGの回転数を表す情報や、エンジンENGのトルクを表す情報)を取得することが好ましい。
但し、燃費率算出部102は、エンジンENGの動作点とエンジン燃費率との対応関係を表すマップを参照する方法とは異なる方法を用いて、発電時エンジン燃費率Gを算出してもよい。
尚、バッテリ500は、典型的には、モータジェネレータMG1が発電機として機能することで新たに充電される。この場合、エンジンENGは、モータジェネレータMG1の回転軸を回転させる(言いかえれば、駆動する)ための動力源として機能している。このため、エンジンENGの動作点は、図3に示すマップ上にプロットされる。従って、モータジェネレータMG1が発電機として機能する場合には、燃費率算出部102は、図3に示すマップを参照することで、発電時エンジン燃費率Gを算出することが好ましい。
一方で、バッテリ500は、モータジェネレータMG2が発電機として機能することで新たに充電されることがある。つまり、バッテリ500は、いわゆる回生発電によって新たに充電されることがある。この場合、エンジンENGは、モータジェネレータMG2の回転軸を回転させる(言いかえれば、駆動する)ための動力源として機能しない。このため、モータジェネレータMG2が発電機として機能する場合には、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量はゼロとなる。従って、モータジェネレータMG2が発電機として機能する場合には、燃費率算出部102は、発電時エンジン燃費率Gを0[g/kWh]に設定することが好ましい。
再び図2において、補正係数αは、モータジェネレータMG1の発電効率P(以降、“MG1発電効率P”と称する)の逆数とバッテリ500の充電効率Q(以降、“バッテリ充電効率Q”と称する)の逆数とを掛け合わせることで算出される指標値である。
MG1発電効率Pが常に100%であり(つまり、エンジンENGからモータジェネレータMG1に入力されるエネルギーの全てが常にモータジェネレータMG1によって電力に変換され)且つバッテリ充電効率Qが常に100%である(つまり、モータジェネレータMG1が発電した電力の全てが常にバッテリ500に蓄積される)理想的なハイブリッド車両では、燃費率算出部102は、補正係数αを考慮することなく、上述した発電時エンジン燃費率Gに対してバッテリ入力電力量dを掛け合わせることで、バッテリ入力燃料消費量j1を算出することができる。しかしながら、実際のハイブリッド車両10では、MG1発電効率Pが100%未満であり(つまり、エンジンENGからモータジェネレータMG1に入力されるエネルギーの一部のみが電力に変換され)且つバッテリ充電効率Qが100%未満である(つまり、モータジェネレータMG1が発電した電力の一部のみがバッテリ500に蓄積される)ことが多い。つまり、実際のハイブリッド車両10では、エンジンENGからモータジェネレータMG1に入力されるエネルギーの一部が損失となり且つモータジェネレータMG1が発電した電力の一部が損失となることが多い。このような実際のハイブリッド車両10における損失の発生を考慮して、燃費率算出部102は、補正係数αを算出する。
MG1発電効率Pは、エンジンENGからモータジェネレータMG1に対して入力されるエネルギーの総量に対する、当該エンジンENGから入力されるエネルギーを用いてモータジェネレータMG1が発電した電力のエネルギーの総量の比を表す指標値である。言い換えれば、MG1発電効率Pは、発電のためにモータジェネレータMG1に入力されるエネルギーの総量に対する、発電の結果モータジェネレータMG1が出力する電力のエネルギーの総量の比を表す指標値である。例えば、発電のためにモータジェネレータMG1に入力されるエネルギーの総量が「E1」であり且つ発電の結果モータジェネレータMG1が出力する電力のエネルギーの総量が「E2」である場合には、MG1発電効率Pは、E2/E1という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、発電のためにモータジェネレータMG1に入力されるエネルギーの総量が「1.0kWh」であり且つ発電の結果モータジェネレータMG1が出力する電力のエネルギーの総量が「0.9kWh」である場合には、MG1発電効率Pは、0.9/1.0=90%となる。以下では、説明の便宜上、MG1発電効率Pの単位が「%」であるものとして説明を進める。
燃費率算出部102は、モータジェネレータMG1の動作点(例えば、モージェネレータMG1のトルク及びモータジェネレータMG1の回転数によって特定される動作点)とMG1発電効率Pとの対応関係を表すマップを参照することで、MG1発電効率Pを算出することが好ましい。
ここで、図4を参照しながら、モータジェネレータMG1の動作点とMG1発電効率Pとの対応関係を表すマップについて説明する。図4は、モータジェネレータMG1の動作点とMG1発電効率Pとの対応関係との対応関係を表すマップを示すグラフである。
図4に示すように、モータジェネレータMG1の動作点とMG1発電効率Pとの対応関係との対応関係を表すマップが規定されているとする。この場合、燃費率算出部102は、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際のモータジェネレータMG1の動作点のマップ上での位置を参照することで、MG1発電効率Pを算出する。例えば、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際のモータジェネレータMG1の動作点がP1である場合には、燃費率算出部102は、p4[%]というMG1発電効率Pを算出する。例えば、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に新たに蓄積する際のモータジェネレータMG1の動作点がP2である場合には、燃費率算出部102は、p3[%]というMG1発電効率Pを算出する。
このようなマップを参照することでMG1発電効率Pを算出するがゆえに、燃費率算出部102は、モータジェネレータMG1の動作点を特定するための情報(例えば、動作点を指示するECU100の制御信号や、モータジェネレータMG1の回転数を表す情報や、モータジェネレータMG1のトルクを表す情報)を取得することが好ましい。
但し、燃費率算出部102は、モータジェネレータMG1の動作点とMG1発電効率Pとの対応関係を表すマップを参照する方法とは異なる方法を用いて、MG1発電効率Pを算出してもよい。
再び図2において、バッテリ充電効率Qは、モータジェネレータMG1が発電した電力のエネルギーの総量に対する、当該モータジェネレータMG1が発電したエネルギーをバッテリ500に入力した時のバッテリ500に実際に蓄積された電力のエネルギーの総量の比を表す指標値である。言い換えれば、バッテリ充電効率Qは、充電のためにバッテリ500に入力されるエネルギーの総量に対する、充電の結果バッテリ500に蓄積された電力のエネルギーの総量の比を表す指標値である。例えば、充電のためにバッテリ500に入力されるエネルギーの総量が「E3」であり且つ充電の結果バッテリ500に蓄積された電力のエネルギーの総量が「E4」である場合には、MG1発電効率Pは、E4/E3という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、充電のためにバッテリ500に入力されるエネルギーの総量が「1.0kWh」であり且つ充電の結果バッテリ500に蓄積された電力のエネルギーの総量が「0.9kWh」である場合には、バッテリ充電効率Qは、0.9/1.0=90%となる。以下では、説明の便宜上、バッテリ充電効率Qの単位が「%」であるものとして説明を進める。
バッテリ充電効率Qは、バッテリ500の内部抵抗等に依存して変動する。バッテリ500の内部抵抗等は、主として、バッテリ500の仕様によって定まる。従って、燃費率算出部102は、バッテリ500の仕様によって定まる固定値を、バッテリ充電効率Qに設定してもよい。或いは、バッテリ500の内部抵抗等が温度依存性等を有していることを考慮すれば、燃費率算出部102は、温度等のパラメータとバッテリ充電効率Qとの対応関係を表すマップを参照することで、バッテリ充電効率Qを算出してもよい。或いは、燃費率算出部102は、マップを参照する方法とは異なる方法を用いて、バッテリ充電効率を算出してもよい。
このように、燃費率算出部102は、発電時エンジン燃費率G及び補正係数αを算出することができる。その結果、燃費率算出部102は、バッテリ入力燃料消費量j1=発電時エンジン燃費率G×補正係数α×バッテリ入力電力量dという数式を用いて、バッテリ入力電力量dの電力をバッテリ500に蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量であるバッテリ入力燃料消費量j1を算出することができる。その結果、燃費率算出部102は、バッテリ燃料消費量J’=バッテリ燃料消費量J+バッテリ入力燃料消費量j1(=バッテリ燃料消費量J+発電時エンジン燃費率G×補正係数α×バッテリ入力電力量d)という数式を用いて、バッテリ燃料消費量J’を算出することができる。
尚、燃費率算出部102は、エンジンENGが備えているインジェクタの燃料噴射量を監視することで、バッテリ入力電力量dの電力を充電するために要したエンジンENGの燃料消費量であるバッテリ入力燃料消費量j1を算出することができるとも考えられる。しかしながら、インジェクタが噴射した燃料の全てが、バッテリ入力電力量dの電力を充電するためにエンジンENGによって消費されるとは限らない。例えば、インジェクタが噴射した燃料の一部が、バッテリ入力電力量dの電力を充電するためにエンジンENGによって消費される一方で、インジェクタが噴射した燃料の他の一部が、ハイブリッド車両10の力行のためにエンジンENGによって消費される場合も想定される。或いは、例えば、インジェクタが噴射した燃料の一部が、バッテリ入力電力量dの電力を充電するためにエンジンENGによって消費される一方で、インジェクタが噴射した燃料の他の一部が、損失(例えば、熱損失等)となる場合も想定される。従って、燃費率算出部102は、インジェクタの燃料噴射量を監視するだけでは、バッテリ入力燃料消費量j1を正確に算出することができない場合がある。そこで、本実施形態では、燃費率算出部102は、バッテリ入力燃料消費量j1=発電時エンジン燃費率G×補正係数α×バッテリ入力電力量dという数式を用いて、バッテリ入力燃料消費量j1を相対的に正確に算出している。
その後、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに充電された後のバッテリ燃料消費量J’を、バッテリ500が新たに充電された後のバッテリ電力積算量a’で除算することで、バッテリ500が新たに充電された後のバッテリ燃費率F’を算出する(ステップS23)。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F’=バッテリ燃料消費量J’/バッテリ電力積算量a’という数式を用いて、バッテリ燃費率F’を算出する。
その後、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jを更新する(ステップS26)。具体的には、燃費率算出部102は、ステップS23で算出したバッテリ燃費率F’を、新たなバッテリ燃費率Fに設定する。燃費率算出部102は、ステップS23で算出したバッテリ電力積算量a’を、新たなバッテリ電力積算量aに設定する。燃費率算出部102は、ステップS23で算出したバッテリ燃料消費量J’を、新たなバッテリ燃料消費量Jに設定する。
他方で、ステップS22の判定の結果、バッテリ500が新たに充電されていない(つまり、バッテリ500に新たに電力が入力されていない)と判定される場合には(ステップS22:No)、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに放電したか否か(つまり、バッテリ500から新たに電力が出力されたか否か)を判定する(ステップS24)。尚、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに充電されたか否かを判定する場合と同様の態様で、バッテリ500が新たに放電したか否かを判定してもよい。
ステップS24の判定の結果、バッテリ500が新たに放電した(つまり、バッテリ500から新たに電力が出力された)と判定される場合には(ステップS24:Yes)、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに放電した後のバッテリ燃費率F’を算出する(ステップS25)。
具体的には、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに放電した後のバッテリ電力積算量a’を算出する(ステップS25)。バッテリ500が新たに放電した場合には、バッテリ電力積算量a’は、バッテリ500が新たに放電する前のバッテリ電力積算量aよりも、バッテリ500が新たに放電した電力の総量c(以降、“バッテリ出力電力量c”と称する)だけ減少しているはずである。従って、燃費率算出部102は、バッテリ電力積算量aからバッテリ出力電力量cを減算することで、バッテリ電力積算量a’を算出する。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ電力積算量a’=バッテリ電力積算量a−バッテリ出力電力量cという数式を用いて、バッテリ電力積算量a’を算出する。
加えて、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに放電した後のバッテリ燃料消費量J’を算出する(ステップS25)。バッテリ500が新たに放電した場合には、バッテリ電力積算量a’がバッテリ電力積算量aよりも減少しているがゆえに、バッテリ燃料消費量J’は、バッテリ500が新たに放電する前のバッテリ燃料消費量Jよりも、バッテリ出力電力量cの電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量J(以降、“バッテリ出力燃料消費量j2”と称する)だけ減少しているはずである。そこで、燃費率算出部102は、バッテリ出力燃料消費量j2を算出すると共に、当該算出したバッテリ出力燃料消費量j2をバッテリ燃料消費量Jから減算することで、バッテリ燃料消費量J’を算出する。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ燃料消費量J’=バッテリ燃料消費量J−バッテリ出力燃料消費量j2という数式を用いて、バッテリ燃料消費量J’を算出する。
燃費率算出部102は、バッテリ出力燃料消費量j2=バッテリ燃費率F×バッテリ出力電力量cという数式を用いて、バッテリ出力燃料消費量jを算出してもよい。というのも、バッテリ500が新たに放電したバッテリ出力電力量cの電力は、バッテリ500に蓄積されているバッテリ電力積算量aの電力の一部である。従って、バッテリ電力積算量cの電力を蓄積した際のバッテリ燃費率Fは、当然に、バッテリ電力積算量aの電力を蓄積した際のバッテリ燃費率Fと同じはずである。従って、バッテリ電力積算量aの一部であるバッテリ出力電力量cの電力を蓄積するために要したエンジンENGの燃料消費量であるバッテリ出力燃料消費量j2は、バッテリ燃費率F×バッテリ出力電力量cという数式から算出される。
その後、燃費率算出部102は、バッテリ500が新たに放電した後のバッテリ燃料消費量J’を、バッテリ500が新たに放電した後のバッテリ電力積算量a’で除算することで、バッテリ500が新たに放電した後のバッテリ燃費率F’を算出する(ステップS25)。つまり、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F’=バッテリ燃料消費量J’/バッテリ電力積算量a’という数式を用いて、バッテリ燃費率F’を算出する。その後、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jを更新する(ステップS26)。
他方で、ステップS24の判定の結果、バッテリ500が新たに放電していない(つまり、バッテリ500から新たに電力が出力されていない)と判定される場合には(ステップS24:Yes)、バッテリ500に蓄積されている電力の総量が変化していないと推定される。つまり、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jが実質的には変化していないと推定される。従って、この場合には、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F’を算出しなくてもよい。言い換えれば、燃費率算出部102は、バッテリ燃費率F、バッテリ電力積算量a及びバッテリ燃料消費量Jを更新しなくてもよい。
その後、燃費率補正部104は、バッテリ燃費率Fに対する補正処理を実行する(ステップS27)。ただし、燃費率補正部104は、バッテリ燃費率Fを常に補正する訳ではなく、所定の条件に応じてバッテリ燃費率Fを補正する。燃費率補正部104が実行するバッテリ燃費率Fの補正処理については後に詳述する(図6等参照)。
補正処理の後、燃費率比較部103は、バッテリ燃費率Fが、燃費率算出部102によって算出される走行時エンジン燃費率Hよりも大きいか否かを判定する(ステップS31)。尚、走行時エンジン燃費率Hは、「機関コスト」の一具体例である。
走行時エンジン燃費率Hは、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行するために要するであろうと推測される単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す指標値である。言い換えれば、走行時エンジン燃費率Hは、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が単位電力量(言い換えれば、バッテリ燃費率Fを規定する単位電力量)に相当する単位走行出力を出力するために要するであろうと推測されるエンジンENGの燃料消費量を表す。例えば、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行する際の走行出力が「X6」であり且つ当該「X6」という走行出力を出力するために「Y6」という量の燃料がエンジンENGによって消費されるであろうと推測される場合には、走行時エンジン燃費率Hは、「Y6/X6」という数式によって特定される数値を表す指標値であってもよい。一例として、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行する際の走行出力が「0.5kWh」であり且つ当該0.5kWhの走行出力を出力するために「100g」の燃料がエンジンENGによって消費されるであろうと推測される場合には、走行時エンジン燃費率Hは、100÷0.5=200g/kWhとなる。以下では、説明の便宜上、走行時エンジン燃費率Hの単位が「g/kWh」であるものとして説明を進める。但し、走行時エンジン燃費率Hの単位は、バッテリ燃費率Fの単位と同一であることが好ましい。
燃費率算出部102は、発電時エンジン燃費率Gと同様に、エンジンENGの動作点とエンジン燃費率との対応関係を表すマップを参照することで、走行時エンジン燃費率Hを算出することが好ましい。例えば、燃費率算出部102は、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行する際のエンジンENGの動作点のマップ上での位置を参照することで、走行時エンジン燃費率Hを算出する。
ステップS31の判定の結果、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きいと判定される場合には(ステップS31:Yes)、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードがHVモードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する(ステップS11)。
一方で、ステップS31の判定の結果、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きいと判定される場合には(ステップS31:No)、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードがEVモードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する(ステップS13)。
但し、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きいと判定される場合であっても、バッテリ500のSOCが過度に低下している(例えば、閾値M1よりも小さい)場合には(ステップS12:Yes)、走行モード制御部101は、ハイブリッド車両10の走行モードがHVモードとなるように、ハイブリッド車両10を制御する(ステップS13)。その結果、エンジンENGの動力を用いてモータジェネレータMG1が発電機として機能することで、バッテリ500のSOCが回復する(つまり、増加する)。
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド車両10では、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きいか否かの判定結果に基づいてハイブリッド車両10の走行モードが決定される。その結果、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを選択しながら走行することができる。以下、図5を参照しながら、その理由について説明する。図5は、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きいか否かの判定結果に基づいて決定される走行モードを示すタイミングチャートである。
まず、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表している。従って、バッテリ燃費率Gは、実質的には、バッテリ500に蓄積されている電力を用いてEVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量を表しているとも言える。言い換えれば、バッテリ燃費率Gは、実質的には、EVモードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両10の燃料消費量を表しているとも言える。一方で、走行時エンジン燃費率Hは、まさに、エンジンENGの動力を用いてHVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量を表している。言い換えれば、走行時エンジン燃費率Hは、HVモードで単位走行出力を出力するハイブリッド車両10の燃料消費量を表しているとも言える。
従って、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きい場合には、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)は、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)よりも大きいと想定される。ここで、単位走行出力当たりの燃料消費量が大きくなることは、即ち、ハイブリッド車両10の燃費(特に、ハイブリッド車両10の走行全体で見た場合の燃費)の悪化に繋がる。従って、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きい場合には、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費は、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費よりも悪化していると想定される。
一方で、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きい場合には、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)は、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃料消費量(具体的には、単位走行出力当たりの燃料消費量)よりも大きいと想定される。従って、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きい場合には、HVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費は、EVモードで走行するハイブリッド車両10の燃費よりも悪化していると想定される。
そこで、本実施形態では、図5に示すように、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きい場合には、ハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなるHVモードで走行する。一方で、図5に示すように、走行時エンジン燃費率Hがバッテリ燃費率Fよりも大きい場合には、ハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなるEVモードで走行する。その結果、本実施形態では、ハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなる走行モードを適宜決定しながら走行することができる。ここで、単位走行出力当たりの燃料消費量が小さくなることは、即ち、ハイブリッド車両10の燃費(特に、ハイブリッド車両10の走行全体で見た場合の燃費)の向上に繋がる。従って、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
特に、本実施形態では、バッテリ燃費率Fは、単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表しているがゆえに、バッテリ燃費率Fには、バッテリ500に電力を蓄積するために駆動したエンジンENGの駆動効率(例えば、熱効率であり、以下“エンジン効率”と称する)が反映されている。
例えば、エンジン効率が相対的に悪い状態でエンジンENGが駆動することで所定量の電力がバッテリ500に蓄積された場合には、燃料消費量の総量が相対的に多くなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に大きくなる。一方で、エンジン効率が相対的に良好な状態でエンジンENGが駆動することで同一の所定量の電力がバッテリ500に蓄積された場合には、燃料消費量の総量が相対的に少なくなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に小さくなる。このように、同じ量の電力がバッテリ500に蓄積されている場合であっても、その電力を蓄積するために要した燃料消費量は同一であるとは限らない。つまり、同じ量の電力がバッテリ500に蓄積されている場合であっても、バッテリ500に蓄積されている電力の価値が同一であるとは限らない。このように、バッテリ燃費率Fは、同じ量の電力がバッテリ500に蓄積されている場合であっても、その電力を蓄積するために要した燃料消費量(言い換えれば、電力を蓄積した際のエンジンENGのエンジン効率)に応じて変動するがゆえに、電力の価値を適切に表していると言える。
同様に、例えば、バッテリ500に電力を蓄積するためにエンジン効率が相対的に悪い状態でエンジンENGが所定量の燃料を消費する場合には、バッテリ500に蓄積される電力の総量が相対的に少なくなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に大きくなる。一方で、バッテリ500に電力を蓄積するためにエンジン効率が相対的に良好な状態でエンジンENGが同一の所定量の燃料を消費する場合には、バッテリ500に蓄積される電力の総量が相対的に多くなるがゆえに、バッテリ燃費率Fが相対的に小さくなる。このように、エンジンENGが同じ量の燃料を消費することで電力がバッテリ500に蓄積される場合であっても、蓄積される電力の総量が同一であるとは限らない。つまり、エンジンENGが同じ量の燃料を消費することで電力がバッテリ500に蓄積される場合であっても、バッテリ500に蓄積されている電力の価値が同一であるとは限らない。このように、バッテリ燃費率Fは、エンジンENGが同じ量の燃料を消費することで電力がバッテリ500に蓄積される場合であっても、バッテリ500に蓄積される電力の総量(言い換えれば、電力を蓄積した際のエンジンENGのエンジン効率)に応じて変動するがゆえに、電力の価値を適切に表していると言える。
このため、本実施形態は、ハイブリッド車両10は、このようなバッテリ500に蓄積されている電力の価値を考慮した上で、燃費が相対的に良好になる(或いは、最適となる)走行モードを適宜決定しながら走行することができる。従って、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
加えて、本実施形態では、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に蓄積されている全電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表している。つまり、バッテリ燃費率Fは、バッテリ500に新たに蓄積された電力のみ(言い換えれば、バッテリ500に蓄積されている全電力のうちの一部のみ)を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表していない。従って、ハイブリッド車両10は、バッテリ500に新たに蓄積された電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量のみならず、バッテリ500に既に蓄積されていた電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量をも考慮した上で、燃費が相対的に良好になる(或いは、最適となる)走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
ここで、比較例として、例えば、バッテリ500に新たに蓄積された電力のみを蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表す比較例のバッテリ燃費率が走行時エンジン燃費率Hよりも小さい場合にEVモードで走行する比較例のハイブリッド車両を想定する。比較例のハイブリッド車両は、バッテリ500に既に蓄積されていた電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量の大小に依存することなく、比較例のバッテリ燃費率が走行時エンジン燃費率Hよりも小さい場合にEVモードで走行する。しかしながら、比較例のバッテリ燃費率が走行時エンジン燃費率Hよりも小さい場合であっても、バッテリ500に既に蓄積されていた電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量が相対的に大きい可能性がある。つまり、比較例のバッテリ燃費率が走行時エンジン燃費率Hよりも小さい一方で、バッテリ500に蓄積されている全電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表すバッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きくなる可能性がある。このような場合に、比較例のハイブリッド車両は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなるとは限らない(つまり、燃費が良好になるとは限らない)走行モード(この場合、EVモード)で走行する可能性がある。しかるに、本実施形態のハイブリッド車両10は、バッテリ500に新たに蓄積された電力のみを蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量に代えて、バッテリ500に蓄積されている全電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を表すバッテリ燃費率Fに基づいて走行モードを決定する。従って、比較例のハイブリッド車両と比較して、本実施形態のハイブリッド車両10は、単位走行出力当たりの燃料消費量が相対的に小さくなる(つまり、燃費が相対的に良好になる又は最適となる)走行モードを適宜決定しながら走行することができる。従って、比較例のハイブリッド車両と比較して、本実施形態のハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを適宜決定しながら走行することができる。
尚、上述の説明では、ハイブリッド車両10は、単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を直接的に表すバッテリ燃費率Fと、単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量を直接的に表す走行時エンジン燃費率Hとの比較結果に基づいて、走行モードを決定している。しかしながら、ハイブリッド車両10は、バッテリ500に蓄積されている電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を間接的に表すパラメータと、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行するために要するであろうと推測される単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量を間接的に表すパラメータとの比較結果に基づいて、走行モードを決定してもよい。例えば、単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を間接的に表すパラメータ及び単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量を間接的に表すパラメータが、バッテリ燃費率Fが走行時エンジン燃費率Hよりも大きくなる状況を示している場合には、ハイブリッド車両10は、HVモードで走行してもよい。例えば、単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量を間接的に表すパラメータ及び単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量を間接的に表すパラメータが、走行時エンジン燃費率がバッテリ燃費率Fよりも大きくなる状況を示している場合には、ハイブリッド車両10は、EVモードで走行してもよい。
一例として、バッテリ500に蓄積されている電力を蓄積するために要した単位電力量当たりのエンジンENGの燃料消費量が増加するほど小さくなる充電パラメータ(例えば、効率の如きパラメータ)は、バッテリ燃費率Fと反比例する関係にある。同様に、モータジェネレータMG1及びMG2の動力を用いない一方でエンジンENGの動力を用いてハイブリッド車両10が走行するために要するであろうと推測される単位走行出力当たりのエンジンENGの燃料消費量が増加するほど小さくなるエンジンパラメータ(例えば、効率の如きパラメータ)は、走行時エンジン燃費率Hと反比例する関係にある。この場合、ハイブリッド車両10は、充電パラメータがエンジンパラメータよりも大きい場合にEVモードで走行してもよい。一方で、ハイブリッド車両10は、エンジンパラメータが充電パラメータよりも大きい場合にHVモードで走行してもよい。
最後に、図6を参照しながら、燃費率補正部104が実行するバッテリ燃費率Fの補正処理について詳細に説明する。図6は、バッテリ燃費率の補正処理の一例を示すフローチャートである。
図6に示すように、燃費率補正部104は、先ずバッテリ500のSOCが閾値M2未満であるか否かを判定する(ステップS41)。ここで、閾値M2は、バッテリ500のSOCの低下により強制充電が実行される可能性が高い状態であるか否かを判定するための閾値として設定されている。具体的には、閾値M2は、上述したステップ12において用いられる閾値M1(図2参照)に近い値として設定される。但し、閾値M2は、閾値M1よりも大きい値として設定される。
バッテリ500のSOCが閾値M2未満であると判定された場合(ステップS41:YES)、バッテリ補正部104は更に、バッテリ500のSOCの変化率が閾値N未満であるか否かを判定する(ステップS42)。ここで、閾値Nは、バッテリ500のSOCの変化率が強制充電を回避できる程度に大きいか否かを判定するための閾値として設定されている。具体的には、閾値Nは、バッテリ500のSOCが現在の変化率のままで変化(増加)した場合に、強制充電を回避可能な値にまで回復するか否かを判定するための閾値である。閾値Nは、例えばHVモードでの走行中における通常のSOC変化率等に基づいて決定できる。
バッテリ500のSOC変化率が閾値N未満であると判定された場合(ステップS42:YES)、バッテリ補正部104は、バッテリ燃費率Fを大きくするように補正する(ステップS43)。具体的には、燃費率補正部104は、バッテリ燃費率Fに対して所定の補正係数γを加算することで補正する。即ち、燃費率補正部104は、燃費率算出部102において算出されたバッテリ燃費率Fを、補正係数γだけ増加させる。このような補正を行えば、バッテリ燃費率Fが増加した分だけEVモードが選択され難くなる(逆に言えば、HVモードが選択され易くなる)。この結果、EVモードでのSOCの低下が抑制され、HVモードでのSOCの増加が促進される。よって、SOCの低下に起因する強制充電の実行を低減することができる。
尚、バッテリ500のSOCが閾値M2未満でないと判定された場合(ステップS41:NO)、又はバッテリ500のSOC変化率が閾値N未満でないと判定された場合(ステップS42:NO)、燃費率補正部104はバッテリ燃費率Fを補正しない。即ち、燃費率補正部104は、強制充電の可能性が低い場合には、バッテリ燃費率Fを補正しない。これにより、不適切な補正が実行されてしまい、かえってハイブリッド車両10の燃費が悪化するのを防止できる。
以下では、図7及び図8を参照しながら、上述したバッテリ燃費率Fの補正処理による効果について具体的に説明する。図7は、バッテリ燃費率を補正しない比較例に係るハイブリッド車両の動作を示すタイミングチャートである。また図8は、バッテリ燃費率を補正する本実施形態のハイブリッド車両の動作を示すタイミングチャートである。
図7に示すように、比較例に係るハイブリッド車両では、走行モード制御部101により時刻T1までHVモードが選択されており、時刻T1以降はEVモードが選択されている(言い換えれば、時刻T1において、バッテリ燃費率Fとエンジン燃費率Hの大小関係が逆転している)。このため、時刻T1まではエンジンENGの駆動力を利用した発電によりSOCが徐々に増加し、時刻T1からはバッテリ500に蓄電された電力による走行のためSOCが低下している。そして、時刻T2になると、SOCが強制充電判定ラインに達する。このため、時刻T2以降では強制充電フラグがONとされ、エンジンENGの駆動力を利用した強制充電が開始される。即ち、比較例に係るハイブリッド車両では、走行モード制御部101においてEVモードで走行すべきと判定されているにもかかわらず、強制的にHVモードでの走行が開始されてしまう。この結果、時刻T2以降は、SOCの回復は図れるものの、エンジンENGを駆動した分だけ燃費は悪化してしまう。
一方、図8に示すように、本実施形態のハイブリッド車両10では、時刻T1以降も(即ち、比較例に係るハイブリッド車両ではEVモードが選択される期間においても)時刻T3に至るまで、走行モード制御部101によりHVモードが選択されている。これは、上述した補正処理によってバッテリ燃費率Fが大きくなるように補正され、その結果としてEVモードが選択され難くなったからである。このため、本実施形態のハイブリッド車両10では、時刻T1以降も時刻T3に至るまでSOCが増加し続ける。よって、SOCは十分な値にまで回復され、時刻T3以降のEVモードでの走行中においても、強制充電判定ラインを下回らない。従って、比較例に係るハイブリッド車両のように強制充電は行われず、燃費の悪化を防止することができる。
以上説明したように、本実施形態のハイブリッド車両10では、SOC及びSOCの変化率に基づいて補正されたバッテリ燃費率Fとエンジン燃費率Hとの大小関係の判定結果に基づいてハイブリッド車両10の走行モードが決定される。その結果、ハイブリッド車両10は、好適に燃費を向上させることが可能な走行モードを選択しながら走行することができる。
また、上述の説明では、ハイブリッド車両10が、いわゆるスプリット(動力分割)方式のハイブリッドシステム(例えば、THS:Toyota Hybrid System)を採用する例について説明している。しかしながら、ハイブリッド車両10がパラレル方式のハイブリッドシステムを採用する場合であっても、上述した態様で走行モードが制御されてもよい。その結果、ハイブリッド車両10がパラレル方式のハイブリッドシステムを採用する場合であっても、上述した各種効果が好適に享受される。
尚、本発明は、請求の範囲及び明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨又は思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う車両制御装置もまた本発明の技術思想に含まれる。