JP6269281B2 - 筒状ケースの製造方法 - Google Patents

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本発明は、内筒部材と外筒部材とからなる筒状ケースの製造方法に関し、特に水冷方式のモータケースとして用いるのに好適な筒状ケースの製造方法に関する。
水冷方式の電動モータのモータケース(ハウジング)として、冷却媒体の通路となるウォータージャケットを円周方向に沿って形成したものが例えば特許文献1にて知られている。そして、この種のモータケースではウォータージャケットを有する構造上の特殊性から鋳物製のものが主流を占めていて、外径寸法および重量の大型化が余儀なくされるほか、製造コストが高いという問題がある。
そこで、ウォータージャケットを有するモータケースを板金製のものとしてその小型軽量化と低コスト化を図るべく、薄板プレス部品からなる内外筒部材同士を圧入して、両者の間にウォータージャケットとして機能することになる密閉空間を確保するようにした構造のものが一部で試みられている。
特許第4935839号公報
しかしながら、ウォータージャケットを有する板金製のモータケースの安定した製造法が未だ確立されておらず、内外筒部材同士を圧入する際に内筒部材または外筒部材が座屈等によって変形して圧入不良が発生することがあるほか、内筒部材と外筒部材との圧接部での気密性を確保する上でなおも課題を残している。
本発明はこのような課題に着目してなされたものであり、板金製のモータケースに代表されるような内外筒部材からなる筒状ケースの製造に際して、特に内外筒部材同士の圧入不良の発生を未然に防止して品質の向上を図った製造方法を提供するものである。
本発明は、内筒部材と当該内筒部材よりも長さの小さな外筒部材とを備えるとともに両者の間に密閉空間が形成される筒状ケースを製造する方法として、上記外筒部材の軸心方向の両端部を内筒部材に対する圧接部として当該内筒部材に外筒部材を圧入するにあたり、上記外筒部材を当該外筒部材の断面形状に合致する形状の内周面を有する圧入治具に予め固定支持させておき、上記圧入治具を内筒部材にかぶせるようにして当該圧入治具に固定支持されている外筒部材を内筒部材に圧入するようにしたものである。
本発明によれば、外筒部材の断面形状に合致する形状の内周面を有するいわゆる総形の圧入治具に外筒部材を予め固定支持させた上で、この圧入治具を外筒部材にかぶせるようにして、当該圧入治具に固定支持されている外筒部材を内筒部材に圧入するようにしているので、少なくとも外筒部材の変形やそれに伴う圧接部での気密性不良の発生を未然に防止することができる。
本発明に係る製造方法で製造される筒状ケースの一例としてモータケースの概略構造を示す斜視図。 図1に示したモータケースの全断面図。 図2の要部拡大図。 図2に示したモータケースのための圧入工程の概略を示す説明図。 図4に示したアウタケースと圧入治具および押さえ板との相互関係を示す分解斜視図。 図4の要部拡大図。 図2に示したモータケースのための圧入工程の概略を示す図で、図4の状態から圧入治具が下降した状態を示す説明図。 図7の状態のままで行われるリークテスト時の外観説明図。
図1〜8は本発明に係る筒状ケースの製造方法を実施するためのより具体的な形態を示し、特に図1〜3に示す水冷方式の比較的偏平なモータケース1の製造方法に適用した場合の例を示している。
図1,2に示すように、筒状ケースとしての電動モータのモータケース1は、内筒部材としての段付き円筒状のインナケース2と、このインナケース2に外挿された外筒部材としての同じく円筒状のアウタケース3とから構成されている。これらのインナケース2およびアウタケース3は、鋼板等の板金を用いて所定の三次元形状にプレス成形したものである。アウタケース3の全長はインナケース2のそれよりも短く、インナケース2の外周面においてその軸心方向の中央部にアウタケース3の軸心方向の両端部がそれぞれ圧接していることで、インナケース2とアウタケース3との間には密閉空間としてのウォータージャケット4が隔離形成されている。そして、周知のように、このウォータージャケット4には冷却媒体である冷却液が通流することになり、アウタケース3にはウォータージャケット4の出入口として供給口5と排出口6とがそれぞれ開口形成されている。
より詳しくは、図1,2のほか図3に示すように、インナケース2は大径部2aと中径部2bおよび小径部2cとにより段付き円筒状に形成されているものであり、大径部2aの端部に外フランジ部2dが折り曲げ形成されている。他方、アウタケース3は本体部でもある円筒状の胴部3aの一端に外フランジ部3bを折り曲げ形成するとともに、胴部3aの他端に内フランジ部3cを折り曲げ形成した上で、その内フランジ部3cの先端部をさらに胴部3aと平行に折り返すことで小径部でもあるエクステンションフランジ部3dが折り曲げ形成されているものである。そして、胴部3aのうち外フランジ部3b側の端部内周面とエクステンションフランジ部3dの内周面とがそれぞれ円筒面接触をもってインナケース2に対する圧接部13a,13bとなっていて、インナケース2とアウタケース3との間の気密性が確保されている。なお、図1〜3では、インナケース2およびアウタケース3共にその板厚を誇張して描いてある。
このようなモータケース1を製造するにあたっては、図4に示すような剛性が十分な圧入治具7を押さえ板8とともに用意し、圧入治具7の内周側にアウタケース3を予め固定支持させた上で、そのアウタケース3を圧入治具7ごとインナケース2にかぶせるようにしてインナケース2に圧入するものとする。
圧入治具7は、図4のほか図5に示すように、アウタケース3の断面形状に忠実に合致する形状の段付きの内周面を有していわゆる総形をなす有底円筒状のものであり、下端部には第1ショルダー部として機能するフランジ部7aが形成されているとともに、奥部には第2ショルダー部として機能する段状部7bが形成されている。そして、図4に示すように、圧入治具7のフランジ部7aに対してリング状の押さえ板8が締結手段としての複数のボルト9にて着脱可能に装着される。
この場合において、押さえ板8が未装着の状態で圧入治具7の内側にアウタケース3を挿入し、アウタケース3側の外フランジ部3bを圧入治具7のフランジ部7aに当接させた上で押さえ板8を外フランジ部3bに突き当てて、複数のボルト9にて締付固定する。これにより、アウタケース3は、外フランジ部3bが圧入治具7のフランジ部7aと押さえ板8との間に挟み込まれるようにして位置決め固定されることになる。
なお、圧入治具7の内周面とそれに挿入されるアウタケース3との間の隙間は圧入治具7のそのものの機能よりして極力小さいことが望ましく、例えばアウタケース3をインナケース2に圧入した後にアウタケース3から圧入治具7を抜き取ることを考慮すると、図6に示すように、圧入治具7の内径寸法はそれに挿入されることになるアウタケース3の外径寸法よりも極小寸法α(例えば0.2mm程度)だけ大きいことが望ましい。また、圧入治具7のフランジ部7aに押さえ板8を固定する手段として、複数のボルト9に代えてクランパー等を用いても良く、いずれの手段を用いる場合でもアウタケース3の外フランジ部3bを圧入治具7のフランジ部7aとの間に挟み込んで固定できる機能があれば良い。
図4に示すように、所定の作業台10の上に外フランジ部2dを着座面としてインナケース2を位置決め固定する一方、そのインナケース2に対してその上方からアウタケース3が予め固定支持されている圧入治具7を正対させる。そして、インナケース2と圧入治具7との芯出しを行いながらその圧入治具7をゆっくりと下降させて、図7に示すように、インナケース2に圧入治具7をかぶぜるようにして所定の下降限位置まで圧入する。なお、この圧入動作は図示外の簡易プレス機等を用いて行うものとする。
このようなインナケース2に対する圧入治具7の圧入はインナケース2に対するアウタケース3の圧入にほかならず、図2,3および図7に示すように、インナケース2の大径部2aに対してアウタケース3の胴部3aのうち外フランジ部3b側の端部内周面が円筒面接触もって圧入され、同時にインナケース2の中径部2bに対してアウタケース3側のエクステンションフランジ部3dの内周面が円筒面接触をもって圧入されることになる。
これにより、インナケース2とアウタケース3とからなるモータケース1が組み立てられ、両者の間に密閉空間としてウォータージャケット4が隔離形成されるとともに、上記のようにアウタケース3の外フランジ部3b側の端部内周面とエクステンションフランジ部3dの内周面とが円筒面接触をもってそれぞれインナケース2に圧入されることにより、その気密性が確保されることになる。
このようなインナケース2に対するアウタケース3の圧入過程において、図7に示したように、アウタケース3の外フランジ部3bは圧入治具7のフランジ部7aと押さえ板8との間に挟み込まれていて、インナケース2への圧入方向に対していわゆる引っ掛かりの関係となっている。そのため、アウタケース3は圧入治具7のフランジ部7aに引っ張られるようにしてインナケース2に圧入されることになり、アウタケース3のうち外フランジ部3bや胴部3aが伸びの形態をもって変形してしまうことがない。
また、図7に示したように、アウタケース3の内フランジ部3cは圧入治具7の内周面の段状部7b(図5参照)にてバックアップされていて、インナケース2への圧入方向に対していわゆる引っ掛かりの関係となっている。そのため、アウタケース3は圧入治具7のフランジ部7aに引っ張られるようにしてインナケース2に圧入されることになるものの、アウタケース3のうち内フランジ部3cやエクステンションフランジ部3dが伸びの形態をもって変形してしまうことがない。しかも、アウタケース3の胴部3aは圧入治具7のフランジ部7aと段状部7bとによって拘束されているので、胴部3aが座屈により変形してしまうこともない。
こうして、インナケース2にアウタケース3が圧入されると圧入治具7はその本来の機能を失うことになるが、圧入治具7を抜き取る前に、圧入治具7をかぶせたままの状態でウォータージャケット4の気密性検査としてリークテストを行うものとする。
図1に示すように、アウタケース3にはウォータージャケット4の出入口として供給口5と排出口6とが付帯していることは先に述べた通りであって、これらの供給口5と排出口6との干渉を回避するために、図8に示すすように圧入治具7には切欠部11が形成されていて、圧入治具7をかぶせたままの状態でも、アウタケース3に付帯する供給口5と排出口6は外部に開口していることになる。
そこで、図1のほか図8に示すように、供給口5と排出口6のための閉塞治具として例えばゴム等の可撓性部材からなる蓋体治具12を用意しておき、この蓋体治具12の蓋部12aをを圧入治具7の上から供給口5と排出口6のそれぞれに装着して、供給口5と排出口6を一時的に閉塞することでウォータージャケット4を完全密閉状態とする。
その上で、図示しない連通穴からウォータージャケット4に対して圧縮空気その他の所定の圧力流体を導入して、インナケース2とアウタケース3との圧接部からの漏れがないかどうかリークテストを行って、その適否判定までも行うものとする。この場合において、先に述べたように圧入治具7の内周面とアウタケース3との間には極小の隙間を設定してあるので、インナケース2とアウタケース3との間の圧接部を圧入治具7にて過剰なまでに加圧拘束してしまうことがなく、リークテストの適否判定を的確に行うことができる。
この後、リークテストの終了を待って、圧入治具7から押さえ板8を取り外した上で、圧入治具7を圧入組立完了後のモータケース1から抜き取るものとする。これにより、図1〜3に示したモータケース1が得られることになる。この場合においても、インナケース2とアウタケース3との間の圧接力(圧入力)を考慮して、上記のように圧入治具7の内周面とアウタケース3との間に極小の隙間α(図6参照)を設定してあるので、圧入組立完了後のモータケース1から圧入治具7をスムーズに抜き取ることができ、インナケース2とアウタケース3との圧接部において両者の相対位置関係にずれが生ずることもない。
このように本実施の形態によれば、圧入治具7を用いてアウタケース3をインナケース2に圧入するようにしているので、圧入過程においてアウタケース3やインナケース2の変形による圧入不良を招くこともなければ、変形によるインナケース2とアウタケース3との間の気密性不良を招くことがなく、モータケース1の品質の向上に貢献できる。
また、インナケース2に対してアウタケース3の外フランジ部3b側の端部内周面が円筒面接触もって圧入され、同時にインナケース2に対してアウタケース3側のエクステンションフランジ部3dの内周面が円筒面接触をもって圧入されることになるので、機械的な圧入のみによってインナケース2とアウタケース3との間での必要十分な気密性を確保することができる。
その上、圧入組立完了後のモータケース1に圧入治具7をかぶせたままの状態でウォータージャケット4の気密性検査としてリークテストまで行うことで、工程数を削減することができ、生産性の向上とともに製造コストの低減を図ることができる。
ここで、本実施の形態では、板金製のインナケース2とアウタケース3とからなるモータケース1を例にとって筒状ケースの製造方法を説明したが、モータケース1以外でも同種の構造物であれば本発明を適用することができることは言うまでもない。
1…モータケース(筒状ケース)
2…インナケース(内筒部材)
3…アウタケース(外筒部材)
3a…胴部
3b…外フランジ部
3c…内フランジ部
3d…エクステンションフランジ部
4…ウォータージャケット(密閉空間)
7…圧入治具
7b…段状部(第2ショルダー部)
7a…フランジ部(第1ショルダー部)
8…押さえ板(押さえ部材)
9…ボルト(締結手段)
12…蓋体治具(閉塞治具)
13a…圧接部
13b…圧接部

Claims (10)

  1. 内筒部材と当該内筒部材よりも長さの小さな外筒部材とを備えるとともに両者の間に密閉空間が形成される筒状ケースを製造する方法であって、
    上記外筒部材の軸心方向の両端部を内筒部材に対する圧接部として当該内筒部材に外筒部材を圧入するにあたり、
    上記外筒部材を当該外筒部材の断面形状に合致する形状の内周面を有する圧入治具に予め固定支持させておき、
    上記圧入治具を内筒部材にかぶせるようにして当該圧入治具に固定支持されている外筒部材を内筒部材に圧入することを特徴とする筒状ケースの製造方法。
  2. 少なくとも上記内筒部材に対する圧接部となる外筒部材の圧入始端部側には予め外フランジ部が形成されていて、
    上記圧入治具には、内筒部材への外筒部材の圧入に際して、上記外フランジ部と引っ掛かりの関係となる第1ショルダー部を形成してあることを特徴とする請求項1に記載の筒状ケースの製造方法。
  3. 上記内筒部材に対する圧接部となる外筒部材の圧入終端部側には予め内フランジ部が形成されていて、
    圧入治具には、内筒部材への外筒部材の圧入に際して、上記内フランジ部と引っ掛かりの関係となる第2ショルダー部を形成してあることを特徴とする請求項2に記載の筒状ケースの製造方法。
  4. 上記内筒部材と外筒部材は共に板金製のものであることを特徴とする請求項3に記載の筒状ケースの製造方法。
  5. 上記外筒部材は、胴部の一端部に外フランジ部が、他端部に内フランジ部がそれぞれ形成されているとともに、
    上記内フランジ部の先端側に胴部と平行にエクステンションフランジ部が形成されていて、
    上記外フランジ部が形成された胴部の一端部内周面とエクステンションフランジ部の内周面とが内筒部材に対する圧接部となっていることを特徴とする請求項4に記載の筒状ケースの製造方法。
  6. 上記圧入治具の第1ショルダー部には押さえ部材が装着されるようになっていて、
    上記第1ショルダー部と押さえ部材との間に外フランジ部を挟み込んだ状態で、圧入治具に固定支持されている外筒部材を内筒部材に圧入することを特徴とする請求項5に記載の筒状ケースの製造方法。
  7. 上記押さえ部材は第1ショルダー部に対し締結部材にて着脱可能に装着されるようになっていることを特徴とする請求項6に記載の筒状ケースの製造方法。
  8. 上記圧入治具を内筒部材にかぶせるようにして当該圧入治具に固定支持されている外筒部材を内筒部材に圧入し、
    上記圧入後の外筒部材から圧入治具を取り外す前に、圧入治具を外筒部材にかぶせたままで、内筒部材と外筒部材との間に形成された密閉空間の気密性検査を行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の筒状ケースの製造方法。
  9. 上記外筒部材には密閉空間の出入口が予め形成されていて、
    上記出入口を閉塞治具にて閉塞した状態で密閉空間の気密性検査を行うことを特徴とする請求項8に記載の筒状ケースの製造方法。
  10. 上記内筒部材と外筒部材とで形成される筒状ケースがモータケースであって、
    上記内筒部材と外筒部材との間に形成される密閉空間が冷却媒体のためのウォータージャケットであることを特徴とする請求項9に記載の筒状ケースの製造方法。
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