特許文献1に記載の画像形成装置では、記録用紙を壁に突き当てて、壁と直交する方向に記録用紙を揃えることはできるが、壁と平行な方向に揃えることはできない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、記録媒体を、壁と直交する方向および平行な方向に揃えることができる画像形成装置を提供することである。
第1の発明の画像形成装置は、記録媒体に画像を形成する画像形成部と、前記画像形成部で画像が形成された前記記録媒体を排出する排出部と、第1方向に延びる第1の縁、及び、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2の縁を有する矩形状の第1領域と、前記第2方向において前記第1領域を挟んで前記第1の縁と反対側の第2領域と、前記第1方向において前記第1領域を挟んで前記第2の縁と反対側の第3領域とを有し、前記排出部から排出された前記記録媒体を受ける受け面を有するトレイと、前記第1の縁に沿って延び、前記第1の縁から前記第1領域外に向かう前記記録媒体の動きを制する第1規制部と、前記第2の縁に沿って延び、前記第2の縁から前記第1領域外に向かう前記記録媒体の動きを規制する第2規制部と、前記受け面の、前記第2領域に前記第1方向に配列、又は/及び、前記第3領域に前記第2方向に配列される複数のエアの吹き出し穴と、前記複数の吹き出し穴にエアを供給してエアを外方へ吹き出させる送風部と、を備え、前記複数の吹き出し穴は、前記第1規制部、又は、前記第2規制部から離れて配置されているものほどエアの吹き出し量が多く、前記吹き出し穴から吹き出されるエアは、前記記録媒体を前記第1規制部及び前記第2規制部に当てつけるように吹き出すことを特徴とするものである。
本発明では、複数の吹き出し穴は、第2領域に第1方向に配列、又は/及び、第3領域に第2方向に配列されている。従って、吹き出し穴が第1領域を挟んで第1規制部と反対側の第2領域にある場合、複数の吹き出し穴から吹き出されるエアの圧力が記録媒体の縁部に作用し、記録媒体は、第1規制部に向けて移動される。また、複数の吹き出し穴が第1領域を挟んで第2規制部と反対側の第3領域にある場合、記録媒体は、エアによって第2規制部に向けて移動される。
また、各吹き出し穴から吹き出されるエアの吹き出し量は、第2規制部、又は/及び、第1規制部から離れたものほど多い。従って、複数の吹き出し穴が第2領域にある場合、記録媒体には、第1規制部だけでなく、第2規制部に向かう力が作用する。なお、複数の吹き出し穴が第3領域にある場合も同様である。これにより、記録媒体が第1領域に対して第1方向と第2方向の両方にずれている場合であっても、第1規制部と第2規制部の両方に向けて移動させ、記録媒体を第1領域内に配置させることがきる。
第2の発明の画像形成装置は、前記第1の発明において、前記複数の吹き出し穴は、前記第2領域において前記第1方向に複数配列、又は/及び、前記第3領域において前記第2方向に複数配列されていることを特徴とするものである。
本発明では、複数の吹き出し穴は、第2領域において第1方向に複数配列、又は/及び、第3領域において第2方向に複数配列されている。従って、記録媒体の第1領域からのはみ出し量に関わらず、記録媒体の縁部にエア圧を作用させることができる。これにより、記録媒体を確実に第1領域へ移動させることができる。
第3の発明の画像形成装置は、前記第1又は2の発明において、前記受け面は、前記複数の吹き出し穴の配列方向において、前記第1規制部又は/及び前記第2規制部に近いほど、高さが低くなるように傾斜していることを特徴とするものである。
本発明では、受け面は、複数の吹き出し穴の配列方向において、第1規制部又は/及び第2規制部に近いほど、高さが低くなるように傾斜している。従って、記録媒体は、吹き出し量の異なる複数の吹き出し穴から吹き出されるエア及び自重によって、第2規制部、又は、第1規制部に向かって移動する。つまり、移動の際、記録媒体には、エアによるエア圧に加えて、記録媒体の自重が作用する。これにより、記録媒体をより確実に第2規制部又は/及び第1規制部に向かって移動させることができる。
第4の発明の画像形成装置は、前記第1〜3の何れかの発明において、前記複数の吹き出し穴の少なくとも一部を塞ぐことが可能なシャッターを有することを特徴とするものである。
本発明では、複数の吹き出し穴の少なくとも一部を塞ぐことが可能なシャッターを有する。従って、シャッターによって吹き出し穴を塞ぐことにより、その吹き出し穴からのエアの吹き出しを遮断することができる。これにより、エアを吹き出す位置や、各吹き出し穴からの吹き出し量を自由に変更させることができる。
第5の発明の画像形成装置は、前記第4の発明において、前記排出部は、前記トレイに、前記第1領域よりも大きい記録媒体を排出可能であり、前記記録媒体が排出されるときには、前記シャッターが前記記録媒体によって覆われる前記吹き出し穴を塞ぐことを特徴とするものである。
本発明では、排出部は、トレイに、第1領域よりも大きい記録媒体を排出可能であり、記録媒体が排出されるときには、シャッターが記録媒体によって覆われる吹き出し穴を塞ぐ。従って、この記録媒体で覆われる領域からのエアの吹き出しを遮断することができる。これにより、第1領域よりも大きい記録媒体が排出された際、第1領域に載置された記録媒体が、吹き出し穴から吹き出すエアによって乱れることを防止できる。
第6の発明の画像形成装置は、前記第4の発明において、前記排出部は、前記トレイに、第1の記録媒体と前記第1の記録媒体より大きさが大きい第2の記録媒体とを排出可能であり、前記第1領域は、少なくとも前記第2の記録媒体よりも小さく、前記複数の吹き出し穴は、前記第2の記録媒体を前記受け面が受けるとき、受け面が前記第1の記録媒体を受けるときに塞がれる数よりも前記第2の記録媒体によって多く塞がれるように配置され、前記第1の記録媒体が前記受け面に排出されるときには、前記シャッターは、前記第2領域又は前記第3領域にある前記複数の吹き出し穴のうち、前記第1の記録媒体によって覆われていない一部の前記吹き出し穴を塞ぐことを特徴とするものである。
ここで、第2の記録媒体は第1の記録媒体より大きく、第2の記録媒体は、第1の記録媒体よりも多くの吹き出し穴を塞ぐ。従って、複数の吹き出し穴から排出されるエアの総量が同じであれば、第2の記録媒体が載置されている状態では、第1の記録媒体が載置されている状態と比べて、各吹き出し穴からエアの吹き出す量が多くなる。
本発明では、第1の記録媒体が排出されるとき、シャッターによって複数の吹き出し穴のうちの一部を覆うことにより、各吹き出し穴から吹き出されるエアの吹き出し量を多くすることができる。これにより、第1の記録媒体の場合と、第1の記録媒体より大きさの大きい第2の記録媒体の場合とで、各吹き出し穴から吹き出されるエアの吹き出し量の差を小さくすることができる。
第7の発明の画像形成装置は、前記第1〜6の何れかの発明において、前記第1規制部と前記第2規制部は、前記受け面を画定する壁面であって、前記吹き出し穴から吹き出されるエアは、前記記録媒体を前記壁面に当てつけるように吹き出すことを特徴とするものである。
本発明では、第1規制部と第2規制部は、受け面を画定する壁面であって、吹き出し穴から吹き出されるエアは、記録媒体を壁面に当てつけるように吹き出す。
第8の発明の画像形成装置は、前記第1〜7の何れかの発明において、前記送風部を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記記録媒体の種類に応じて前記送風部から供給するエアの量を変化させることを特徴とするものである。
本発明では、送風部を制御する制御部をさらに有し、制御部は、記録媒体の種類に応じて送風部から供給するエアの量を変化させる。従って、送風部から供給されるエアの量を調節することによって、記録媒体の種類、例えば、大きさや重量に関わらず、記録媒体を第1領域に向かって移動させることができる。
第9の発明の画像形成装置は、前記第8の発明において、前記制御部は、前記記録媒体の質量が大きいほど前記送風部から供給するエアの量を多くすることを特徴とするものである。
本発明では、制御部は、記録媒体の質量が大きいほど送風部から供給するエアの量を多くする。送風部から吹き出させるエアの量を多くすることによって、質量が大きい場合であっても、記録媒体を第1領域に向かって移動させることができる。
第10の発明の画像形成装置は、前記第8の発明において、前記制御部は、前記記録媒体のサイズが大きいほど、前記送風部から供給するエアの量を少なくすることを特徴とするものである。
ここで、サイズの大きい記録媒体では、サイズが小さい記録媒体と比べて多くの吹き出し穴を塞ぐことになる。従って、記録媒体の大きさが大きいほど、各吹き出し穴から吹き出されるエアの吹き出し量は多くなる。
本発明では、記録媒体の大きさが大きいほど、送風部から供給するエアの量を少なくすることによって、記録媒体の大きさが異なる場合であっても、各吹き出し穴から吹き出されるエアの吹き出し量の差を小さくすることができる。
第11の発明の画像形成装置は、前記第1〜10の何れかの発明において、前記送風部を制御する制御部をさらに有し、前記制御部は、前記画像形成部に画像を印刷させる印刷処理として、低速印刷処理と、前記低速印刷処理よりも前記画像形成部における印刷速度が速い高速印刷処理とを実行可能であり、前記制御部は、前記高速印刷処理の実行によって画像形成された前記記録媒体が排出される時には、前記送風部から前記複数の吹き出し穴に、前記低速印刷処理時よりも多量のエアを供給して、前記複数の吹き出し穴からエアを吹き出させることを特徴とするものである。
高速印刷処理時は、排出部からの記録媒体の排出速度が速い。そのため、排出部から排出された記録媒体が、排紙トレイの第1領域からずれて配置されやすくなる。本発明では、排出時に記録媒体が乱れて移動が必要な場合(高速印刷処理時)には、送風部からエアを供給し、複数の吹き出し穴からエアを吹き出させる。なお、低速印刷処理の実行時には、送風部を停止させることによって複数の吹き出し穴へのエアの供給を遮断、または、送風部を停止させることなく、シャッターによって複数の吹き出し穴をすべて閉じることにより、複数の吹き出し穴へのエアの供給を遮断しても構わない。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、記録用紙Pにインクの液滴を吐出することによって画像などを印刷するインクジェットプリンタ100に、本発明を適用した一例である。なお、以下では、図1に示す上下、左右、前後の各方向を、上下方向、左右方向(本発明の第1方向)、及び、前後方向(本発明の第2方向)と定義し、以下、これらの方向語を適宜使用して説明する。
インクジェットプリンタ100(本発明の画像形成装置)は、図1、図2に示すように、略直方体形状のプリンタ本体100aを有する。このプリンタ本体100a内には、記録用紙Pを給紙するための給紙ユニット17と、記録用紙Pを搬送するための搬送機構16と、記録用紙Pに画像を形成するインクジェットヘッド1(本発明の画像形成部)と、画像が形成された記録用紙Pを排出する排紙部25(本発明の排出部)と、インクジェットプリンタ100全体の動作を司る制御部70などが設けられている。
給紙ユニット17は、図2に示すように、プリンタ本体100aに対して着脱可能に配置されており、複数の記録用紙Pを収納する給紙トレイ17aと、給紙モータ34(図3参照)によって回転駆動され、給紙トレイ17aの最も上方にある記録用紙Pを送り出す給紙ローラ17bとを有している。給紙トレイ17aから送り出された記録用紙Pは、ガイド13a,13bに沿って送りローラ対14により、搬送機構16へと送られる。
搬送機構16は、2つのベルトローラ6,7と、搬送ベルト8と、テンションローラ9と、プラテン19とを有している。搬送ベルト8は、2つのベルトローラ6,7の間に巻回されたエンドレスのベルトであり、テンションローラ9によってテンションが付加されている。プラテン19は、搬送ベルト8の内側領域に配置され、4つのインクジェットヘッド1と対向する位置において搬送ベルト8を支持している。ベルトローラ6,7は、搬送モータ32によって回転駆動される駆動ローラである。これにより、搬送機構16は、ベルトローラ6,7を駆動して搬送ベルト8を走行させ、搬送ベルト8の搬送面8a上に載置された記録用紙Pを搬送する。
4つのインクジェットヘッド1は、搬送ベルト8によって搬送される記録用紙Pに対して、4色のインクをそれぞれ吐出させて画像を形成する。この4つのインクジェットヘッド1は、記録用紙Pの搬送方向に並んで配置された、ライン型インクジェットヘッドである。
次に、インクジェットプリンタ100の内部における記録用紙Pの搬送について説明する。
インクジェットプリンタ100の内部には、図2に示すように、黒矢印に沿う搬送経路が形成されている。下方の給紙ユニット17から搬送機構16へと送られた記録用紙Pは、押えローラ4によって搬送面8aに押えつけられる。そして、記録用紙Pが各インクジェットヘッド1の吐出面2aと対向する対向領域を通過する際に、複数のノズル(不図示)から4色(ブラック、イエロー、シアン、マゼンタ)のインクがそれぞれ吐出されることにより、記録用紙Pの上面には所望のカラー画像が形成される。画像が形成された記録用紙Pは、搬送機構16のすぐ下流側に配置された剥離部材37によって搬送面8aから剥離され、送りローラ対24によってガイド23aに沿って上方に搬送される。さらに、送りローラ対24によって水平方向に送り出され、ガイド23bによって下面が支持された状態で、排紙部25に搬送される。
排紙部25は、排紙口18aと、排紙ローラ25aと、排紙モータ33(図3参照)とを有する。排紙部25は、プリンタ本体100aの上部に設けられている。排紙部25に搬送された記録用紙Pは、排紙モータ33で駆動される2つの排紙ローラ25aによって、排紙口18aから後述する排紙トレイ10(本発明のトレイ)に排出され、排紙トレイ10の受け面12に載置される。なお、排紙トレイ10の詳細な説明については、後述する。
次に、インクジェットプリンタ100の電気的構成について説明する。
制御部70は、図3に示すように、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)70aと、ASIC70aと接続されたROM(Read Only Memory)70bおよびRAM(Random Access Memory)70cなどを備える。また、制御部70は、プリンタ本体100aの天板100cに設けられた操作パネル36と接続されている。さらに、制御部70は、外部装置であるPC31とデータ通信可能に接続されている。制御部70は、ROM70cに格納されたプログラムに従い、ASIC70aによってインクジェットヘッド1や搬送モータ32等をそれぞれ制御し、記録用紙Pへの印刷などの各種処理を実行する。例えば、印刷処理においては、制御部70は、操作パネル36およびPC31から入力された印刷指令に基づいて、インクジェットヘッド1や、搬送モータ32などを制御して、記録用紙100に画像を印刷させる。
次に、前述した排紙部25から排出された記録用紙Pが載置される排紙トレイ10について説明する。
排紙トレイ10は、図1に示すように、プリンタ本体100aの天板100c上面における凹部100bとして形成されている。この凹部100bは、第1規制部15と、第2規制部18と、第3規制部20と、受け面12とからなる。
第1規制部15、第2規制部18および第3規制部20は、凹部100bの側壁面をなす。第2規制部18は、その上部に、前述した記録用紙Pの排紙口18a設けられた壁面であって、左右方向に延在している。第1規制部15は、第2規制部18の左右方向一端部から前方向に延在する壁面である。第3規制部20は、第2規制部18の左右方向他端部から前方向に延在する壁面である。第1規制部15、第2規制部18および第3規制部20によって、排紙口18aから排出された記録用紙Pが、後述する受け面12から後方向および左右方向に移動するのを規制している。
受け面12は、凹部100bの底面をなす。この受け面12には、図2に示すように、排紙口18aから排出された記録用紙Pが載置されていく。受け面12は、水平面に対して、第2規制部18に近いほど、その高さが低くなるように傾斜している。受け面12の前方向端部には、ストッパ3が設けられている。ストッパ3は、排紙口18aが設けられた第2規制部18に対向するように配置されている。ストッパ3は、矩形状の平板部材である。ストッパ3の一端は、プリンタ本体100aの天板100cに回動自在に設けられている。
排紙口25aから排出された記録用紙Pは、排紙口18aに対向するように配置されたストッパ3に、その先端が衝突する。この結果、記録用紙Pは、ストッパ3によって跳ね返され、受け面12に落下して載置される。
図4(a)に示すように、受け面12の右後方の第1規制部15と第2規制部18との角部を含む領域を、第1領域26と称する。この第1領域26は、排紙口18aから排出された記録用紙Pが載置される領域である。第1領域26の大きさは、記録用紙Pのサイズと略等しい。なお、以下の説明において、第1領域26における、第1規制部15と接する縁を第1の縁21、第2規制部18と接する縁を第2の縁22とする。第1領域26は、第1の縁21が長辺、第2の縁22が短辺をなす。また、第1領域26を挟んで第1規制部15と反対側の領域を第2領域27と称し、第1領域26を挟んで第2規制部18と反対側の領域を第3領域29と称する。
記録用紙Pは、排紙口18aから前方に向かって排出されてストッパ3に衝突し、後方に跳ね返される。第1領域26は、記録用紙Pが通過する領域10aに対して、右側にずれた位置に配置されている。また、第2領域27における右側の領域と記録用Pが通過する領域10aとは重なっている。
排紙部25から排出された記録用紙Pは、ストッパ3によって跳ね返され、図4(a)に示すように、排紙トレイ10の受け面12の第1領域26からずれた場所(図中の受け面12中央部)に載置される。そこで、受け面12の右後方の第1規制部15と第2規制部18との角部を含む第1領域26上に記録用紙Pを揃えて載置するために、排紙トレイ10には、図4(b)に示すように、第1領域26からずれて配置された記録用紙Pを、第1領域26へ移動させる用紙シフト装置30が設けられている。用紙シフト装置30は、複数の吹き出し穴5と、エア供給室11と、送風装置9とを有する。
複数の吹き出し穴5は、図4(a),(b)に示すように、受け面12を貫通する孔である。複数の吹き出し穴5は、受け面12の第2領域27に形成されている。複数の吹き出し穴5は、前後方向に7つずつ配列されている。複数の吹き出し穴5は、左右方向に2列配列されている。複数の吹き出し穴5は、第2規制部18から離れるほど、その孔径が大きくなるように形成されている。
送風装置9は、例えば送風ファンなどのブロワによって構成されるものであって、図4(b)に示すように、天板100cの下側に設けられたエア供給室11にエアを供給する。送風装置9は、エア供給室11を介して複数の吹き出し穴5と接続されている。送風装置9は、上述した制御部70によって制御される(図3参照)。なお、送風装置9により発生するエアの強さは限定しないが、エアの強さは、例えば、排出口18aから排出された記録用紙Pに当たらないか、当たってもその向きが変わらない強さ、若しくは、ストッパ3に当たって落下する記録用紙Pに作用する強さである。
次に、排紙口18aから排出された記録用紙Pが第1領域26からはみ出して載置されたときの、用紙シフト装置30の作用について説明する。なお、図4(a)において、記録用紙Pによって塞がれた吹き出し穴5からそれぞれ伸びた矢印の向きおよび大きさ、各吹き出し穴5から吹き出されるエアによって記録用紙Pの移動に作用するエア圧の向きおよび大きさを示している。
制御部70は、排紙ローラ25aによって排紙口18aから排紙トレイ10へ記録用紙Pが排出されている間、送風装置9を作動させ、複数の吹き出し穴5からエアを吹き出させる。本実施形態では、図4(a)に示すように、ある記録用紙Pが第1領域26から左方および前方にそれぞれはみ出して、第2領域27と第3領域29まで跨って配置されたとする。
このとき、第1領域26から第2領域27および第3領域29にはみ出た記録用紙Pのはみ出し部P1には、その下に位置する吹き出し穴5から吹き出されたエアが上方へ向けて吹き付けられる。これにより、はみ出し部P1の縁が持ち上がるとともに、記録用紙Pと受け面12との間に空気の層が作られる。この空気の層によって、記録用紙Pと受け面12との間の摩擦力が低減される。これにより、記録用紙Pは、はみ出し部P1の縁に吹き付けられるエアによって、排出口18aから排出された時の排出位置よりも右方向に向かって移動し、その縁が第1規制部15に突き当てられる。そして、エアによって縁が第1規制部15に突き当てられた記録用紙Pは、エアによってさらに右方向に移動する力が作用しても、第1規制部15によって第1領域26の外へ向かう移動が規制される。従って、第1領域26に移動された複数の記録用紙Pは、その縁(本実施例では記録用紙Pの長辺)が第1規制部15によって揃う。
また、複数の吹き出し穴5は、第2規制部18から離れたものほど、その孔径が大きい。従って、複数の吹き出し穴5から吹き出されるエアが記録用紙Pに対して及ぼす力は、全体として後方向に向かって働くことになる。このとき、受け面12は、水平面に対して、第2規制部18に近いほど、その高さが低くなるように傾斜している。従って、記録用紙Pは、吹き出し量の異なる複数の吹き出し穴5から吹き出されるエアおよび自重によって、第2規制部18に向かって移動する。これにより、記録用紙Pは、その縁が第2規制部18に突き当てられる。そして、エアによって縁が第2規制部18に突き当てられた記録用紙Pは、エア、もしくは重力によってさらに後方向に移動する力が作用しても、第2規制部18によって第1領域26の外へ向かう移動が規制される。従って、第1領域26に移動された複数の記録用紙Pは、その縁(本実施例では記録用紙Pの短辺)が第2規制部18によって揃う。
また、第2規制部18付近では吹き出し穴5の孔径が小さく、第2規制部18から離れた場所に比べて、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量が少ないため、記録用紙Pは、図4(a)の矢印で示すように、大きなエア圧を受けない。それに対して、第2規制部18から離れた位置では吹き出し穴5の孔径が大きく、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量が多くなるため、記録用紙Pには、大きなエア圧が作用する。従って、記録用紙Pは、複数の吹き出し穴5から吹き出されるエアによって、第2規制部18だけでなく、第1規制部15にも向かうように、右斜め後方への力が作用する。以上より、記録用紙Pが、第1領域26に対して前方向と左方向にずれていても、記録用紙Pを第1領域26に向かって移動させることができる。
また、複数の吹き出し穴5は、左右方向に2列配列されている。従って、記録用紙Pのはみ出しが大きい場合、記録用紙Pは、左右方向に2列配列された複数の吹き出し穴5のうち、第1領域26から遠い左側の列に配列された吹き出し穴5から吹き出されるエアによって、その縁にエア圧を受けることで移動される。また、記録用紙Pのはみ出しが小さい場合、記録用紙Pは、第1領域26に近い右側の列に配列された吹き出し穴5から吹き出されるエアによって、その縁にエア圧を受けることで移動される。以上により、記録用紙Pのはみ出し量に関わらず、その縁に対してエア圧を作用させることができるため、記録用紙Pを確実に第1領域26に向かって移動させることができる。
また、受け面12は、水平面に対して、第2規制部18に近いほど、その高さが低くなるように傾斜している。従って、移動の際、記録用紙Pには、複数の吹き出し穴5から吹き出されるエアによるエア圧に加えて、その自重によって移動させる力が作用する。これにより、受け面12が水平面に対して平行に形成されている場合に比べて、記録用紙Pの移動が促進される。従って、記録用紙Pを、より確実に第2規制部18に向かって移動させることができる。
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態や実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、以下の[1]〜[5]に示すように、様々な設計変更が可能なものである。
[1]シャッターを有する構成
用紙シフト装置30は、図5、図6に示すように、吹き出し穴5を塞ぐシャッター28をさらに備えていても構わない。シャッター28により、複数の吹き出し穴5のうちの一部を塞ぐことによって、エアの吹き出し位置を変更することができる。シャッター28は、プリンタ本体100aの天板100cの下側に、天板100cに対してスライド移動可能にされている。このシャッター28は、制御部70によってON/OFF制御されるシャッター駆動モータ35(図3参照)によって駆動される。なお、シャッター28の構成は、この限りではない。例えば、シャッター28に取っ手を設け、インクジェットプリンタ100の外部からユーザが操作することによって、エアの吹き出し位置を変更しても構わない。以下、このシャッター28を備えた形態について、具体例を挙げて説明する。また、図中では、シャッター28によって塞がれた吹き出し穴5を黒色で示している。
(a)第1領域26よりもサイズの大きい記録用紙Pのみが使用されるインクジェットプリンタ100の場合、記録用紙Pを第1領域26に載置させた際、この記録用紙Pによって塞がれる第2領域27の吹き出し穴5を、シャッター28によって予め塞ぐ。ここで、シャッター28は、用紙搬送方向(前後方向)に配置された複数の吹き出し穴5を一度に塞ぐことができるように前後方向に延びている板状の部材である。シャッター28は、前後方向に配置される吹き出し穴5の列ごとに設けられていてもよいし、複数の列に跨るように設けられ、吹き出し穴5を開閉できるような構成でも構わない。これにより、第1領域26よりもサイズの大きい記録用紙Pを第1領域26に載置させた際に、この記録用紙Pによって覆われる領域からのエアの吹き出しを遮断することができる。これにより、排紙口18aから排出された記録用紙Pに対してエアを吹き付けて第1領域26よりもサイズの大きい記録用紙Pを第1領域26に移動させた後、吹き出し穴5から吹き出されるエアが、その記録用紙Pにあたらない。従って、記録用紙Pを受け面12上にて安定した状態で載置させることができる。
(b)サイズの異なる2種類の記録用紙Pを使用可能なインクジェットプリンタ100の場合、これら2種類の記録用紙Pでは、それぞれ排紙トレイ10の受け面12における載置領域が異なる。図5(a)は、サイズの異なる2種類の記録用紙Pのうち、小さいサイズの記録用紙Pを、第1領域に載置したときの図であって、図5(b)は、大きいサイズの記録用紙Pを、第1領域に載置したときの図である。図5(a),(b)に示すように、サイズの大きい記録用紙Pでは、サイズの小さい記録用紙Pよりも、多くの吹き出し穴5を塞ぐことになる。
図5(b)に示すように、大きいサイズの記録用紙Pを第1領域26に載置させた際、この記録用紙Pによって塞がれる第2領域27の吹き出し穴5を、シャッター28によって予め塞ぐ。これにより、大きいサイズの記録用紙Pを第1領域26に載置させた際に、この記録用紙Pによって覆われる領域からのエアの吹き出しを遮断することができる。これにより、大きいサイズの記録用紙Pを第1領域26に移動させた後、吹き出し穴5から吹き出されるエアによって乱れることなく、記録用紙Pを安定した状態で載置させることができる。なお、シャッター28によって吹き出し穴5を予め塞ぐには、例えば、搬送機構16など、図2に示した記録用紙Pの搬送経路上に用紙サイズ検知センサを設けることによって用紙サイズを検知する、若しくは、大きいサイズの記録用紙Pに印刷するモードであるという情報を制御部70に送ることによって、制御部70がシャッター28を動作させるように制御し、吹き出し穴5を塞ぐようにすればよい。
(c)図6(a)に示すように、大きいサイズの記録用紙Pが排紙トレイ10に載置された際、記録用紙Pは、吹き出し穴5が設けられた第2領域27にはみ出してしまう。従って、図6(b)に示すように、小さいサイズの記録用紙Pを使用する場合に比べて、塞がれる吹き出し穴5の数が多くなる。これにより、小さいサイズの記録用紙Pを使用する場合と、大きいサイズの記録用紙Pを使用する場合とで、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量がばらついてしまう。
ここで、吹き出し穴5からのエアの吹き出し量が特に多い場合、エアによって記録用紙Pが乱れてしまう。また、吹き出し穴5からのエアの吹き出し量が特に少ない場合、記録用紙Pを移動させることができない。従って、吹き出し穴5からのエアの吹き出すは、記録用紙Pのサイズによらず、適当な値を維持させることが望ましい。
図6(b)に示すように、小さい記録用紙Pを使用するとき、開放されている吹き出し穴5の一部をシャッター28によって塞ぐ。これにより、大きいサイズの記録用紙Pが使用される場合と、小さいサイズの記録用紙Pが使用される場合とで、塞がれた吹き出し穴5の数の差を小さくすることができる。具体的には、図6(a),(b)に示すように、シャッター28によって吹き出し穴5を塞ぐ前は、大きいサイズの記録用紙Pによって塞がれた吹き出し穴5の数が12つであるのに対して、小さいサイズの記録用紙Pによって塞がれた吹き出し穴5の数は6つである。従って、その差は6つとなっている。それに対して、シャッター28で塞いだ後、小さいサイズの記録用紙Pおよびシャッター28によって塞がれた吹き出し穴5の数は13つとなっている。従って、その差が1つとなる。以上により、シャッター28によって、小さいサイズの記録用紙Pが使用される場合と、大きいサイズの記録用紙Pが使用される場合とで、塞がれた吹き出し穴5の数の差を小さくすることができるため、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量の差を小さくすることができる。
(d)シャッター28によって各吹き出し穴5の全域を塞ぐのではなく、各吹き出し穴5の一部の領域を塞ぐようにすることによって、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量を変化させることも可能である。特に、各吹き出し穴5に対して、個別にシャッター28が設けられている構成を採用すれば、上述したようなエアの吹き出し量の調整が容易である。
(e)シャッター28によって、記録用紙Pから離れた場所に形成された、記録用紙Pの移動に関与しない吹き出し穴5を塞ぐことにより、不必要な場所からのエアの吹き出しを遮断させることができる。
(f)シャッター28により全ての吹き出し穴5を塞ぐことによって、送風装置9を停止させることなく、複数の吹き出し穴5からのエアの吹き出し量をゼロにすることができる。
(g)シャッター28は、制御装置70によってシャッター駆動モータ35がON/OFF制御されることによって動作していると記載したが、シャッター28は、例えば、手動で動作させても構わない。
[2]送風装置がブロワ調節可能である構成
用紙シフト装置30は、制御部70が、ブロワの強さを制御することによって、各吹き出し穴5からのエアの吹き出し量を変更する構成であっても構わない。ここでは、送風装置のブロアの強さは、「強」と「弱」とで切り替え可能であるとする。以下、ブロワの強さを調節可能な送風装置9を備えた形態について、具体例を挙げて説明する。なお、図7(a)は、通常の記録用紙Pが使用された場合であって、図7(b)は、光沢紙に印字するモードが選択され、通常の記録用紙Pより質量の大きい光沢紙が使用された場合を示している。また、図7(a),(b)において、記録用紙Pによって塞がれた吹き出し穴5からそれぞれ伸びた矢印の向きおよび大きさは、各吹き出し穴5から吹き出されるエアによって記録用紙Pの移動に作用するエア圧の向きおよび大きさを示している。
(a)質量の異なる2種類の記録用紙Pを使用する場合、図7(a)に示すように、通常の記録用紙Pを使用するときに送風装置9のブロアの強さが「弱」であるのに対して、図7(b)に示すように、質量の大きい記録用紙Pである光沢紙を使用するときに、制御部70は、送風装置のブロアの強さを「強」にする。これにより、光沢紙のように、通常の記録用紙Pより質量の大きい記録用紙Pであっても、第1領域26に向かって移動させることができる。
(b)サイズの異なる2種類の記録用紙Pを使用する場合、図8(a)に示すように、大きいサイズの記録用紙Pが使用されるときには、図8(b)に示すように、サイズの小さい記録用紙Pが使用されるときに比べて、塞がれる吹き出し穴5の数が多くなるため、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量が多くなる。
図8(a)に示すように、大きいサイズの記録用紙Pが使用される場合に、制御部70は、送風装置9のブロアの強さを「弱」にすることにより、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量を少なくすることができる。また、図8(b)に示すように、小さいサイズの記録用紙Pが使用される場合に、制御部70は、送風装置9のブロアの強さを「強」にすることにより、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量を多くすることができる。これにより、大きいサイズの記録用紙Pが使用される場合と、小さいサイズの記録用紙Pが使用される場合とで、各吹き出し穴5から吹き出されるエアの吹き出し量の差を小さくすることができる。
(c)サイズの異なる2種類の記録用紙Pを使用する場合、制御部70は、サイズの大きい記録用紙Pが使用されるときに送風装置9のブロワの強さを「強」、サイズの小さい記録用紙Pが使用されるときに送風装置9のブロワの強さを「弱」とすることによって、サイズの大きい記録用紙Pであっても、記録用紙Pを確実に第1領域26に移動させることができる。
[3]吹き出し穴の孔径を変化させない構成
用紙シフト装置30は、吹き出し穴5の大きさを変えることなく、エアの吹き出し量を変化させる構成であっても構わない。例えば、上方にブロワの強い送風装置9、下方にブロワの弱い送風装置9を設置し、それぞれ別々のエア供給室を介すことによって、上方に配置された吹き出し穴5と、下方に配置された吹き出し穴とで、吹き出されるエアの風量を変化させても構わない。
[4] モードによって画像印刷速度が異なる構成
インクジェットプリンタ100が、印刷速度の異なる2種類の処理(低速印刷処理と高速印刷処理)を行う場合を考える。例えば、ブラックインクのみを使用するモノクロ印刷では、上述したようなカラーインクも使用するカラー印刷よりも、一般には印刷速度が速くなる。また、同じ画像を印刷する場合でも、印刷解像度を低く設定すると、その設定変更前と比べて、印刷速度は速くなる。インクジェットプリンタ100が、低速印刷処理を行うのか高速印刷処理を行うのかは、例えば、図3に示すように、PC31から送られてきた画像印刷指令(モノクロ印刷とカラー印刷、あるいは、低解像度印刷と高解像度印刷など)に基づいて、制御部70が判断できる。
印刷速度が速くなると、排紙口25aからの記録用紙Pの排出速度も速くなる。従って、印刷速度が速い処理では、排紙トレイ10上での記録用紙Pの位置ずれが生じやすいと言える。そこで、印刷速度が速い処理が選択されたときに、制御部70が、用紙シフト装置30を動作させる構成であってもよい。
[5]その他の構成
本実施形態では、複数の吹き出し穴5は、第2領域27に形成されていると記載したが、複数の吹き出し穴5は、図9に示すように、第3領域29に形成されていても構わない。
また、第1規制部15および第2規制部18は、受け面12を画定する壁面でなくても構わない。例えば、受け面12に可動式のリブを設けて規制部とし、記録用紙Pを所望の位置で規制できるようにしてもよい。
また、複数の吹き出し穴5は、図10に示すように、第2領域27および第3領域29に形成されていても構わない。
また、本実施形態では、ストッパ3が設けられているが、排紙トレイ10は、ストッパ3が設けられていない構成であっても構わない。つまり、排紙口18aから排出された記録用紙Pが、そのまま落下する構成であっても構わない。
また、本実施形態では、受け面12には、傾斜を有しているが、受け面12は、傾斜を有していなくても構わない。つまり、受け面12は、水平面に対して、平行に形成されていても構わない。
また、本実施形態では、シフト手段30による記録用紙Pの移動は、高速印刷処理時に行われると記載したが、記録用紙Pの乱れが小さい低速印刷処理の実行時にも行っても構わない。
また、本実施形態では、ライン型インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタ100に対して適用されると記載したが、インクジェットヘッド1が移動することによって画像が形成される、いわゆる、シリアル型インクジェットヘッドを有するインクジェットプリンタ100に対して適用しても構わない。このように、インクジェットプリンタ100に本発明を適用することで、排出された記録用紙Pの揃いを良好にすることができる。加えて、排出された記録用紙P上のインクを、エアによって乾燥させることもできる。
また、本実施形態では、インクジェットプリンタ100に対して本発明を適用した場合について記載したが、レーザープリンタに対して適用しても構わない。レーザープリンタに適用する場合、レーザープリンタの熱定着部を通過して排出された記録用紙Pを、エアによって冷ますことができる。