以下、添付図面を参照して、本願の開示する電力変換装置、発電システムおよび発電制御方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
図1Aは、実施形態に係る発電システムの構成の一例を示す図である。図1Aに示す発電システム1は、水車2と電力系統3との間に設けられ、水車2の回転力を電力に変換して電力系統3へ出力する。かかる発電システム1は、例えば、小水力発電システムであるが、小水力発電システム以外の発電システムに対しても適用することができる。
水車2は、開放型上掛水車や開放型下掛水車などの開放周流形水車(開放流水型水車とも呼ばれる)であるが、例えば、ペルトン水車、クロスフロー水車、フランシス水車などの他の種類の水車であってもよい。
発電システム1は、発電機10と、電力変換装置20とを備える。発電機10は、回転電機であり、例えば、永久磁石同期機などの3相交流発電機である。かかる発電機10は、水車2に接続される。例えば、発電機10の回転軸は水車2の回転軸に直接またはギア等を介して連動連結される。なお、水車2の回転力を電力に変換することができれば、発電機10は、3相交流発電機以外の発電機であってもよい。
電力変換装置20は、電力変換部21と制御部22とを備える。電力変換部21は、AC/DC変換部23とDC/AC変換部24とを備える。AC/DC変換部23は、制御部22によって制御され、発電機10から出力される交流電力を直流電力へ変換する。また、DC/AC変換部24は、制御部22によって制御され、AC/DC変換部23から出力される直流電力を交流電力へ変換し、電力系統3へ出力する。
制御部22は、例えば、水量検出装置4によって検出された水車2への流入水量の値(以下、流入水量Qwと記載する)の情報を取得し、かかる流入水量Qwに応じて発電機10の回転速度ωiを制御して発電機10の発電電力Piを制御する。
図1Bは、発電機10の回転速度ωiと発電電力Piとの関係の一例を示す図である。図1Bに示すように、同じ流入水量でも発電機10の回転速度ωiに応じて発電機10の発電電力Piが変わる。
制御部22は、現在の流入水量Qwで発電機10の発電電力Piが最大になるように、流入水量Qwに応じて発電機10の回転速度ωiを最適な回転速度に制御する。これにより、電力系統3への出力電力Poを可及的に大きくすることができる。以下、任意の流入水量Qwで得ることができる最大の電力を最大電力Pimaxと記載する。
制御部22は、流入水量Qwが定格流入水量Qwxである場合、図1Bに示すように、発電機10の回転速度ωiを定格回転速度ωixに制御することで、発電電力Piを定格発電電力Pixにすることができる。定格発電電力Pixは、定格流入水量Qwxにおける最大電力Pimaxであり、電力系統3への出力電力Poが設定電力Pox(以下、設定出力電力Poxと記載する)になる場合の発電電力Piである。
設定出力電力Pox(設定電力の一例)は、例えば、電力系統3を運営する電力会社との契約などによって設定される出力電力Poであり、発電システム1から電力系統3への出力電力Poは、設定出力電力Pox以下に制限される。設定出力電力Poxが10[kW]で、電力変換部21の電力変換効率ηcが90[%]である場合、Pix=10÷0.9=11.1[kW]である。
ところで、流入水量Qwが定格流入水量Qwxを超えて過剰水量になった場合、電力系統3への出力電力Poが最大になるように回転速度ωiを制御すると、電力系統3への出力電力Poが設定出力電力Poxを超えてしまう。
このように流入水量Qwが過剰水量の場合、最大電力Pimaxが得られる回転速度ωizよりも低い回転速度ωiz2(図1B参照)になるように回転速度ωiを制御することで、発電電力Piを定格発電電力Pixに抑制することができる。しかし、回転速度ωizよりも低い回転速度ωiz2で発電機10が制御されるため、発電機10の軸トルクが大きくなり、発電機10と電力変換装置20との間に流れる電流が大きくなる。そのため、例えば、発電機10や電力変換部21で流せる電流の上限値を超えてしまう過電流になるおそれがある。
そこで、制御部22は、流入水量Qwが過剰水量の場合、最大電力Pimaxが得られる回転速度ωizよりも速い回転速度ωiz1(図1B参照)になるように回転速度ωiを制御することで、発電電力Piを定格発電電力Pix以下にし、出力電力Poを設定出力電力Pox以下に制限する。これにより、発電機10の軸トルクを抑えることができ、発電機10と電力変換装置20との間に流れる電流を抑えることができるため、発電機10や電力変換部21を過電流から保護することができる。以下、電力変換装置20の構成についてさらに説明する。
なお、最大電力Pimaxが得られる回転速度ωizよりも速い回転速度ωiz1になるように回転速度ωiを制御した場合、回転速度ωiが定格回転速度ωixの場合よりも発電機10や電力変換部21に加わる電圧がさらに大きくなる。
したがって、例えば、定格流入水量Qwx且つ無拘束状態(Pi=0の場合)の場合において発電機10に加わる電圧以上の定格電圧を有する発電機10を選定することが望ましい。また、電力変換部21の耐圧についても同様であり、定格流入水量Qwx且つ無拘束状態において発電機10に加わる電圧以上の耐圧を有する電力変換部21とすることが望ましい。
また、発電機10に生じる電圧が発電機10の定格電圧や電力変換部21の耐圧よりも大きくなるような場合、発電機10の発電電力の一部を抵抗などによって消費させることによって、発電機10に生じる電圧を抑えることもできる。
例えば、電力変換部21において、AC/DC変換部23とDC/AC変換部24とを接続する直流母線間にスイッチと抵抗との直列接続回路を設ける。そして、発電機10に生じる電圧が発電機10の定格電圧や電力変換部21の耐圧よりも大きくなるような場合、制御部22は、スイッチをオン/オフ制御して抵抗に電力を消費させ、発電機10に生じる電圧を抑える。
このように、抵抗などのような電力消費部材を設けた場合であっても、回転速度ωizよりも速い回転速度ωiz1になるように回転速度ωiを制御することから、回転速度ωiを回転速度ωizとする場合に比べ、電力消費部材のサイズを抑えることができる。そのため、電力消費部材の配置やコストの問題を低減できる。
図2は、実施形態に係る電力変換装置20の構成の一例を示す図である。図2に示すように、電力変換装置20は、電力変換部21と、制御部22とを備える。電力変換部21は、AC/DC変換部23と、DC/AC変換部24と、電流検出部25、27と、電圧検出部26、28とを備える。
AC/DC変換部23は、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続されたブリッジ回路やコンデンサを備え、DC/AC変換部24は、複数のスイッチング素子が3相ブリッジ接続されたブリッジ回路やコンデンサを備える。なお、スイッチング素子は、例えば、MOS−FETやIGBTであり、また、AC/DC変換部23やDC/AC変換部24は、図2に示す構成に限定されない。
電流検出部25は、発電機10のU相、V相およびW相から電力変換部21へそれぞれ流れる電流の瞬時値Iu、Iv、Iw(以下、電流Iidと記載する)を検出する。また、電流検出部27は、電力変換部21から電力系統3のR相、S相およびT相へ流れる電流の瞬時値Ir、Is、It(以下、電流Iodと記載する)を検出する。
電圧検出部26は、AC/DC変換部23から出力される直流電圧の瞬時値Vpn(以下、直流電圧Vpnと記載する)を検出する。電圧検出部28は、電力系統3のR相、S相およびT相の電圧瞬時値Vr、Vs、Vt(以下、電圧Vodと記載する)を検出する。
制御部22は、AC/DC変換制御部30と、DC/AC変換制御部31と、遮断制御部32とを備える。AC/DC変換制御部30は、水量検出装置4によって検出された流入水量Qwに基づいて、駆動信号S1〜S6を生成し、AC/DC変換部23へ出力する。駆動信号S1〜S6によってAC/DC変換部23を構成する複数のスイッチング素子のそれぞれがオン/オフ制御される。流入水量Qwは、例えば、単位時間当たりに水車2へ流入する水量である。
DC/AC変換制御部31は、直流電圧Vpnが所定の一定電圧になるように、駆動信号S7〜S12を生成し、DC/AC変換部24へ出力する。かかる駆動信号S7〜S12によってDC/AC変換部24を構成する複数のスイッチング素子のそれぞれがオン/オフ制御され、AC/DC変換部23から出力される直流電力が交流電力へ変換されDC/AC変換部24から電力系統3へ出力される。
DC/AC変換制御部31は、例えば、電圧検出部28によって検出した電圧Vodに同期し、かつ、直流電圧Vpnが所定の直流電圧指令Vpnrと一致するように指令を生成し、かかる指令に応じた駆動信号S7〜S12を生成する。これにより、発電機10の発電電力Piに応じた出力電力Poが電力変換装置20から電力系統3へ出力される。
遮断制御部32は、直流電圧Vpnが上限電圧Vmaxを超えると、連結遮断機5へ遮断要求SHを出力し、かかる遮断要求SHに基づき、連結遮断機5は、水車2と発電機10との連結を遮断して水車2と発電機10とを切り離す。これにより、発電電力Piが定格発電電力Pixを超える状態が継続した場合、水車2と発電機10との接続が開放されることから、発電機10から電力変換装置20へ過剰な電力供給が行われることを抑制することができる。
AC/DC変換制御部30は、指令生成部41と、減算部42と、速度制御部43と、電流制御部44と、スイッチ駆動部45とを備える。指令生成部41は、水量検出装置4によって検出された流入水量Qwに基づき、速度指令ωirを生成する。速度指令ωirは、発電機10の回転速度ωiを規定する指令である。
減算部42は、指令生成部41により生成された速度指令ωirから発電機10の回転速度ωiの値(以下、回転速度ωidと記載する)を減算する。回転速度ωodは、例えば、発電機10に取り付けられたエンコーダ6によって検出され、減算部42は、エンコーダ6から回転速度ωodを取得する。
速度制御部43は、例えば、速度指令ωirと回転速度ωodとの偏差がゼロになるように、速度指令ωirと回転速度ωodとの差をPI(比例積分)制御して電流指令Iirを生成する。電流指令Iirは、例えば、U相、V相およびW相の電流指令Iur、Ivr、Iwrを含む。
電流制御部44は、例えば、電流Iidが電流指令Iirと一致するように、電流Iidと電流指令Iirとの偏差をPI制御して電圧指令Virを生成する。電圧指令Virは、例えば、U相、V相およびW相の電圧指令Vur、Vvr、Vwrを含む。
スイッチ駆動部45は、U相、V相およびW相の電圧が電圧指令Vur、Vvr、Vwrに応じた電圧になるように駆動信号S1〜S6を生成する。これにより、発電機10の回転速度ωiを速度指令ωirに応じた回転速度にすることができる。
指令生成部41は、電力変換部21から電力系統3へ出力可能な最大電力(以下、最大出力電力Pomaxと記載する)が設定出力電力Pox以下の場合、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度ωiで発電機10が回転するように、速度指令ωirを生成する。
一方、指令生成部41は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、電力系統3への出力電力Poを設定出力電力Pox以下に制限する。この場合、指令生成部41は、出力電力Poを設定出力電力Pox以下に制限する回転速度ωiであって、かつ、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度よりも速い回転速度ωiで発電機10が回転するように、速度指令ωirを生成する。
ここで、水車2の特性について説明する。図3は、水車2の軸トルクTrq−回転速度ωiの特性の一例を示す図である。図3に示す例では、流入水量Qwが異なる3つの流入水量Qw1、Qw2、Qw3での軸トルクTrqと回転速度ωiとの関係の概略を示す図である。
図3に示すように、軸トルクTrqと回転速度ωiとは、概ね一次関数の関係であり、オフセットを有する負の比例の関係を有する。ここで、回転速度ωiが0である場合における軸トルクTrqをTIであるとし、軸トルクTrqが0である場合における回転速度ωiをωinであるとすると、軸トルクTrqと回転速度ωiとの関係を示す演算式は、例えば、下記式(1)のように表すことができる。
Trq=TI−TI×(ωi/ωin) ・・・(1)
発電機10の損失が小さく無視できると仮定すると、流入水量Qwで得ることができる最大電力Pimaxは、軸トルクTrqと回転速度ωiとを乗算した値のうち最も大きな値である。軸トルクTrqと回転速度ωiとの乗算結果が最も大きくなるのは、軸トルクTrqと回転速度ωiとが図3に示す関係にある場合、ωi=ωin/2のときである。
したがって、最大電力Pimaxは、下記式(2)によって求めることができる。
Pimax=Trq×ωin/2=TI×ωin/4 ・・・(2)
小水力発電では、ダム、堰および水路によって落差等が決まり、越流水位の変動程度では有効落差に大きな変化はなく、水力はほぼ水量によって決定される。そして、水力が水量のみで決定されると考えた場合、定格発電電力を1とし、ωi/ωix=1とすると、発電電力Piと回転速度ωiとの関係は、図4に示すように表すことができる。図4は、発電電力Piと回転速度ωiとの関係の一例を示す図である。
したがって、この場合、発電電力Pi、出力電力Po、流入水量Qwおよび回転速度ωiの関係は、以下の式(3)のように一般化して表すことができる。指令生成部41は、下記式(3)の関係に基づいて速度指令ωirを演算することができる。なお、α=Qwx/Qwであり、n=ωi/ωixである。
Pi=Po/ηc=−αn2+2n ・・・(3)
指令生成部41は、水量情報取得部51と、記憶部52と、速度指令生成部54とを備える。水量情報取得部51は、水量検出装置4から流入水量Qwを取得する。記憶部52は、流入水量Qw毎の発電電力Piを記憶している。また、記憶部52は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxになる流入水量Qw、回転速度ωiおよび発電電力Piを定格流入水量Qwx、定格回転速度ωixおよび定格発電電力Pixとして記憶している。
速度指令生成部54は、電力系統3へ出力可能な最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下であるか否かを判定する。かかる速度指令生成部54は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下であるか否かを、水量情報取得部51で取得された流入水量Qwが定格流入水量Qwx以下であるか否かによって判定する。
次に、速度指令生成部54は、水量情報取得部51で取得された流入水量Qwと、記憶部52に記憶された情報とに基づいて、速度指令ωirを求める。例えば、速度指令生成部54は、下記式(4)を演算することによって速度指令ωirを求める。
Pi/Pix=−(Qwx/Qw)×(ωir/ωix)2+2(ωir/ωix)
・・・(4)
速度指令生成部54は、流入水量Qwが定格流入水量Qwx以下である場合、すなわち、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下である場合、Pi=Pimaxとして、上記式(4)の演算を行う。これにより、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下である場合、電力系統3へ最大出力電力Pomaxを出力することができる。
一方、速度指令生成部54は、流入水量Qwが定格流入水量Qwxを超える場合、すなわち、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、Pi/Pix=1として、上記式(4)の演算を行う。これにより、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、電力系統3へ設定出力電力Poxを出力することができる。
例えば、Qw/Qwx=1.3である場合、ωi/ωix=1.92であり、速度指令生成部54は、ωir=ωix×1.92として、速度指令ωirを出力する。なお、速度指令生成部54は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、電力系統3へ設定出力電力Poxよりも低い電力を出力することもできる。
なお、上述においては、速度指令生成部54は、上記式(4)に基づいて速度指令ωirを生成する例を説明したが、上記式(4)は、水車2の特性、発電機10の損失特性や電力変換部21の電力変換効率ηcの特性に基づいて適宜変更することができる。これにより、より精度よく速度指令ωirを決定することができる。
また、流入水量Qwが定格流入水量Qwxを超える場合に、最大電力Pimaxが得られる回転速度よりも速い回転速度になるように回転速度ωiを制御することができればよく、速度指令生成部54は、適宜変更可能である。
例えば、速度指令生成部54は、定格流入水量Qwxと流入水量Qwとの比率γ(=Qw/Qwx)と速度指令ωirとを関連付けたテーブルを内部の記憶部に記憶し、かかるテーブルに基づいて、水量情報取得部51によって取得された流入水量Qwに基づく比率γから速度指令ωirを選択して出力する構成であってもよい。
また、速度指令生成部54は、流入水量Qwと速度指令ωirとを関連付けたテーブルを内部の記憶部に記憶し、かかるテーブルに基づいて、水量情報取得部51によって取得された流入水量Qwから速度指令ωirを選択して出力する構成であってもよい。
指令生成部41は、図2に示す構成に限定されるものではなく、例えば、図5〜図7に示す構成であってもよい。以下、指令生成部41の構成例についてさらに説明する。図5は、指令生成部41の他の構成の一例を示す図である。図5において、図2に示す指令生成部41と同一の構成については同一符号を付し、また、電力変換部21や制御部22における構成を一部省略している。
図5に示す指令生成部41は、水量情報取得部51と、記憶部52と、速度指令生成部54Aと、電力検出部55とを備える。電力検出部55は、例えば、電流Iodと電圧Vodとに基づき、出力電力Poを検出する。
速度指令生成部54Aは、出力電力Poに基づき、水流比α(=Qwx/Qw)を補正して上記式(4)の演算を行うことができる。例えば、Po/Pox=βとすると、β<1の場合、速度指令生成部54Aは、α’=α/βとし、補正後の流水比α’を用いて上記式(4)の演算を行う。これにより、電力変換装置20は、速度指令ωirを最適に調整することができる。なお、出力電力Poに基づいて速度指令ωirを調整することができればよく、上述した処理に限定されるものではない。
このように、図5に示す指令生成部41は、出力電力Poに基づいた補正を行って速度指令ωirを求めることから、速度指令ωirをより最適に生成することができ、発電システム1における発電効率をより向上させることができる。
図6は、指令生成部41のさらに他の構成の一例を示す図である。図6において、図2に示す指令生成部41と同一の構成については同一符号を付し、また、電力変換部21における構成を一部省略している。
図6に示す指令生成部41は、記憶部52と、速度指令生成部54と、水量推定部56とを備える。記憶部52および速度指令生成部54は、図2に示す指令生成部41と同様の構成および動作である。
水量推定部56は、発電機10のU相、V相およびW相の電圧の瞬時値(以下、電圧Vu、Vv、Vwと記載する)と電流Iu、Iv、Iwとを取得し、かかる電圧Vu、Vv、Vwおよび電流Iu、Iv、Iwに基づき、発電電力Piを検出(または推定)する。電圧Vu、Vv、Vwは、電力変換部21の電圧検出部29によって検出される。
水量推定部56は、電流Iu、Iv、Iwと電圧Vu、Vv、Vwとに基づいて検出した発電電力Piに基づいて流入水量Qwを推定することができる。例えば、水量推定部56は、速度指令生成部54へ通知する流入水量Qwを増減したときに検出される発電電力Piのうち最も大きな発電電力Piを最大電力Pimaxとして判定し、かかる最大電力Pimaxに対応する流入水量Qwが現在の流入水量Qwであると推定する。
また、水量推定部56が速度指令生成部54へ通知する流入水量Qwは、定格流入水量Qwx以下に制限される。水量推定部56は、流入水量Qwの増減によって検出される発電電力Piのうち、流入水量Qwが定格流入水量Qwxである場合に検出される発電電力Piが最大であれば、流入水量Qwの増減率に対する発電電力Piの増減率との関係に基づいて、現在の流入水量Qwを推定する。
速度指令生成部54は、上述したように、例えば、上記式(4)に基づき、水量推定部56で推定された流入水量Qwと記憶部52に記憶された情報とをパラメータとして、速度指令ωirを求める。なお、発電電力Piと出力電力Poとは、上記式(3)に示す関係にあることから、水量推定部56は、発電電力Piに代えて出力電力Poを用いることができ、また、出力電力Poから発電電力Piを求めることもできる。例えば、水量推定部56は、発電電力Piの場合と同様の処理によって、流入水量Qwの増減によって発電機10の回転速度ωiを増減させた場合の出力電力Poに基づいて、流入水量Qwや最大電力Pimaxを推定することもできる。この場合、水量推定部56は、電流Iodと電圧Vodとに基づき、出力電力Poを検出することができる。
このように、図6に示す指令生成部41は、図2に示す水量検出装置4を用いることなく、流入水量Qwを推定できることから、システム全体のコストを抑えることができる。なお、図5に示す指令生成部41において、水量情報取得部51を水量推定部56に置き換える構成であってもよい。
図7は、指令生成部41のさらに別の構成の一例を示す図である。図7において、図2に示す指令生成部41と同一の構成については同一符号を付している。
図7に示す指令生成部41は、水量情報取得部51と、記憶部52Bと、最大電力演算部53と、速度指令生成部54Bとを備える。記憶部52Bは、水車2の特性を記憶する。例えば、記憶部52Bは、流入水量Qw毎に、軸トルクTrqと回転速度ωiとを対応付けたテーブルや演算式または演算式のパラメータ(例えば、TIやωin)を記憶している。
軸トルクTrqと回転速度ωiとの関係を示す演算式は、例えば、上記式(1)に示すように表すことができる。なお、上記式(1)は、一例であり、水車2における軸トルクTrqと回転速度ωiとの関係に応じた演算式にすることで精度を向上させることができる。
最大電力演算部53は、水量情報取得部51で取得された流入水量Qwと記憶部52Bに記憶された水車2の特性とに基づき、現在の流入水量Qwによって発電機10から取り出し可能な最大電力Pimaxを演算する。最大電力演算部53は、例えば、記憶部52Bからパラメータ(例えば、TIやωix)を取得し、上記(2)により最大電力Pimaxを演算する。
速度指令生成部54Bは、電力系統3へ出力可能な最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下であるか否かを判定する。例えば、速度指令生成部54Bは、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下であるか否かを、最大電力Pimaxに電力変換部21の電力変換効率ηcを乗算することによって、最大出力電力Pomaxを演算する。
速度指令生成部54Bは、最大出力電力Pomaxと設定出力電力Poxとを比較し、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下の場合、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度ωi(例えば、ωi=ωix/2)で発電機10が回転するように、速度指令ωirを生成する。これにより、発電機10の回転速度ωiが速度指令ωirと一致するように発電機10が制御され、電力系統3への出力電力Poが最大出力電力Pomaxになる。
一方、速度指令生成部54Bは、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度よりも速い回転速度ωiで発電機10が回転するように、速度指令ωirを生成する。これにより、発電機10の回転速度ωiが速度指令ωirと一致するように発電機10が制御され、電力系統3への出力電力Poが設定出力電力Pox以下に制限される。
ここで、設定出力電力Poxは、上記式(1)が成り立つ場合、下記式(5)のように表すことができる。
Pox=Pi×ηc
=(Trq×ωir)/ηc
={TI−TI×(ωir/ωin)}×ωir×ηc ・・・(5)
したがって、この場合、速度指令生成部54Bは、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、下記式(6)が成立する速度指令ωirを演算することで、速度指令ωirを生成することができる。
ωir2/ωin−ωir+Pox/(TI×ηc)=0 ・・・(6)
なお、上記式(6)は、水車2における軸トルクTrqと回転速度ωiとの関係に応じた演算式にすることで、速度指令生成部54Bは、速度指令ωirの精度を向上させることができる。
また、上述した指令生成部41は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度よりも速い回転速度ωiで発電機10が回転するように速度指令ωirを生成するが、かかる処理に限定されない。
例えば、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超える場合であっても、指令生成部41は、例えば、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxのn(例えば、1.2)倍までであれば、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度よりも遅い回転速度ωiで発電機10が回転するように速度指令ωirを生成する。なお、このように生成される速度指令ωirに応じた回転速度ωiで発電機10が回転した場合でも、設定出力電力Poxのn倍までであれば、過電流にならないものとする。
そして、指令生成部41は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxのn倍を超える場合に、最大出力電力Pomaxが得られる回転速度よりも速い回転速度ωiで発電機10が回転するように速度指令ωirを生成する。このようにすることによっても、出力電力Poを抑制することができ、また、出力電力Poを抑制しつつも発電機10と電力変換装置20との間に流れる電流を抑えることができ、発電機10や電力変換部21を過電流から保護することができる。
図8は、電力変換装置20による発電制御処理の一例を示す図である。制御部22は、図8に示す発電制御処理を繰り返し実行する。図8に示すように、制御部22は、水車2への流入水量Qwを取得し(ステップS10)、流入水量Qwに応じた最大出力電力Pomaxと設定出力電力Poxとを比較する(ステップS11)。
なお、Pomax/Pox=Qw/Qwx=Pimax/Poxが成り立つことから、制御部22は、出力電力Poに代えて、発電電力Piと定格発電電力Pixとの比較や、流入水量Qwと定格流入水量Qwxとの比較に基づいてステップS11の比較を行うこともできる。
制御部22は、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超えるか否かを判定する(ステップS12)。最大出力電力Pomaxが設定出力電力Poxを超えると判定すると(ステップS12;Yes)、制御部22は、設定出力電力Poxを出力するための発電電力Piに対応する回転速度ωiであって、かつ、発電電力Piが最大電力Pimaxの場合の回転速度よりも速い回転速度ωiで発電機10を回転させるための速度指令ωirを生成する(ステップS13)。
一方、最大出力電力Pomaxが設定出力電力Pox以下であると判定すると(ステップS12;No)、制御部22は、発電電力Piが最大電力Pimaxの場合の回転速度ωiで発電機10を回転させるための速度指令ωirを生成する(ステップS14)。
ステップS13、S14の処理を終了すると、制御部22は、生成した速度指令ωirに応じた駆動信号S1〜S6を生成し、電力変換部21へ出力する(ステップS15)。これにより、出力電力Poを抑制することができ、また、出力電力Poを抑制しつつも過電流を抑制することができる。
上述したように、小水力発電では、ダム、堰および水路によって落差等が決まり、越流水位の変動程度では有効落差に大きな変化はなく、水力はほぼ水量によって決定される。そのため、上述の実施形態では、流入水量Qwに応じて最大電力Pimaxを推定したが、例えば、落差や水路などが変わるなど、水量以外に水力への影響がある場合、指令生成部41は、水量に加え落差や水路などの変化を補正値として最大電力Pimaxを推定することもできる。
また、制御部22は、U相、V相およびW相の固定座標系を発電機10の回転に同期するdq軸座標系の成分へ変換して各指令を処理することもできる。なお、d軸は、発電機10の磁束に平行な軸であり、q軸は、d軸に直交する軸である。
制御部22は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現される。なお、制御部22は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力ポートなどを有するマイクロコンピュータや各種の回路を含むこともできる。この場合、マイクロコンピュータのCPUは、ROMに記憶されているプログラムを読み出して実行することにより、上述した制御を実現することができる。
なお、上述した実施形態では、電力変換装置20が速度制御によって発電機10を制御する例を説明したが、電力変換装置20は、トルク制御によって発電機10を制御することもできる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。