JP6262665B2 - 単純な糖型を有する組換えタンパク質の産生 - Google Patents

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Description

発明の分野
本発明は、単純な糖型を有する組換えタンパク質に関する。特に、本発明は、1つ以上の末端マンノース残基を有する組換え糖タンパク質を産生するための組成物および方法に関する。
発明の背景
N結合型グリコシル化は、多くの分泌型および膜結合型糖タンパク質上で見出される共通のタンパク質修飾である。複合糖型の合成は、真核生物細胞の小胞体およびゴルジ装置の中で段階的な様式で実行される一連の酵素反応を必要とする。大部分の組換え治療用タンパク質が、免疫原性を回避するため、およびタンパク質の半減期を改善するために、複合グリカンの存在を必要とする一方、単純なNグリカン構造を有する糖タンパク質についての応用もまた存在する。例えば、単純な糖型を有する組換えタンパク質は、X線結晶学研究のために有利である。加えて、末端マンノース残基のみを有する単純な糖型は、これらのタンパク質のためのマンノース受容体が媒介する取り込みを容易にすることによって、いくつかの治療剤の効力の増加をもたらすことができる。
しかし、治療用糖タンパク質の産生のために使用される多くの細胞株は、不均一または複雑なN結合糖型を有するタンパク質を産生する。従って、単純な糖型を有する組換え糖タンパク質を産生するよう操作されている細胞株についての必要性が存在している。さらに、これらの操作された細胞株は、化学的に規定された培養培地中で高いタンパク質の生産性および強固な増殖を維持しながら、末端マンノース残基を有するタンパク質を安定して産生することが所望されている。
概要
本開示の様々な態様の中に、マンノシル(α−1,3−)−糖タンパク質β−1,2−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(Mgat1)が欠損している細胞株の提供がある。1つの態様において、Mgat1が欠損している細胞株は、Mgat1タンパク質を産生しない。別の態様において、Mgat1が欠損している細胞株は、Mgat1が欠損していない親の細胞株と比較して、Mgat1タンパク質の量の減少を生じる。1つの実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1をコードしている不活化染色体配列を含む。Mgat1をコードする染色体配列は、標的エンドヌクレアーゼを用いて不活化できる。特定の実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、および部位特異的エンドヌクレアーゼから選択される。1つの実施形態において、標的エンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼである。ある実施形態において、Mgat1をコードする染色体配列は、少なくとも1つの塩基対の欠失、少なくとも1つの塩基対の挿入、少なくとも1つの塩基対の置換、またはこれらの組み合わせに起因して不活化される。特定の実施形態において、Mgat1をコードしている染色体配列は、2〜55塩基対の欠失に起因して不活化される。1つの実施形態において、Mgat1が欠損している細胞株はまた、グルタミンシンターゼ(GS)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、またはこれらの組み合わせもまた欠損している。別の実施形態において、Mgat1欠損細胞株はCHO細胞株である。1つの実施形態において、Mgat1が欠損している細胞株はCHO細胞株であり、そこでは、単一コピーのMgat1をコードする染色体配列が欠失によって不活化されており、この細胞株はMgat1を産生しない。別の実施形態において、Mgat1が欠損している細胞株はCHO GS−/−細胞株であり、ここでは、単一コピーのMgat1をコードする染色体配列が欠失によって不活化され、この細胞株はMgat1を産生しない。1つの実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、単純な糖型を有する少なくとも1つの糖タンパク質を発現し、ここで、単純な糖型は、1つ以上の末端マンノース残基を含む。1つの実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1が欠損していない細胞株に匹敵する増殖速度を有する。1つの実施形態において、Mgat1が欠損している細胞株は、Mgat1が欠損していない細胞株に匹敵するタンパク質のレベルを生じる。
本開示の別の態様は、Mgat1を欠損している細胞を産生するための方法を包含する。この方法は、Mgat1をコードする染色体配列中の特定の配列を標的とする標的エンドヌクレアーゼを用いて宿主細胞をトランスフェクトすることを含む。標的エンドヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、または部位特異的エンドヌクレアーゼであり得る。1つの実施形態において、標的エンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼである。1つの実施形態において、宿主細胞は哺乳動物細胞である。別の実施形態において、宿主細胞は、グルタミンシンターゼ(GS)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、またはこれらの組み合わせもまた欠損している。1つの実施形態において、宿主細胞はCHO細胞である。別の実施形態において、宿主細胞はGS−/−CHO細胞である。1つの実施形態において、トランスフェクトされた宿主細胞は、トウゴマ(Ricinus communis)アグルチニン−I(RCA−I)とともにインキュベートされる。
本開示のさらに別の態様は、1つ以上の末端マンノース残基を有する組換えタンパク質を産生するための方法である。この方法は、Mgat1をコードしているすべての染色体配列が不活化されており、その結果、細胞株がMgat1を産生しない細胞株に、組換えタンパク質をコードする核酸を導入すること、および組換えタンパク質を発現することを含む。1つの実施形態において、Mgat1をコードする染色体配列は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、および部位特異的エンドヌクレアーゼから選ばれる標的エンドヌクレアーゼによって不活化される。1つの実施形態において、標的エンドヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼである。1つの実施形態において、不活化されたMgat1をコードする染色体配列は2〜55塩基対の欠失を含む。1つの実施形態において、Mgat1を産生しない細胞株はCHO細胞株である。別の実施形態において、Mgat1を産生しない細胞株はGS−/−CHO細胞株である。1つの実施形態において、発現された組換えタンパク質は、1つ以上の末端マンノース残基を含む単純な糖型を有する。
本開示の他の態様および反復は以下により詳細に記載される。
図1は、N−グリカン合成におけるMgat1の役割を示す概略図である。Mgat1は、Man5GlcNAc2(Man5)糖型へのGlcNAc残基の転移を触媒する。
図2は、Mgat1を標的とするフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)の設計および検証を図示する。(A)ZFNがMgat1コード領域において結合および切断するよう設計されている位置の概略図を提示する。(B)Cel1ヌクレアーゼアッセイによるZFN活性の検証を示す。モックトランスフェクト細胞、DNAでトランスフェクトした細胞、およびRNAでトランスフェクトした細胞からのトランスフェクションの3日後および10日後のゲノムDNA消化を示す。2つのDNAフラグメント、220bpおよび197bpが、トランスフェクションの3日後および10日後の両方の消化物中に存在する。
図3は、RCA−I富化の前後のCel1分析を提示する。RCA−I富化前後でのDNAまたはRNAでトランスフェクトされた細胞、ならびにモックトランスフェクト細胞のゲノムDNA消化物が示される。デンシトメトリーによって決定されるような、修飾されたパーセンテージが各レーンの下に列挙される。
図4は、RCA−I富化あるなしでのMgat1 ZFNトランスフェクト細胞のIgG糖プロフィールを示す。(A)モックトランスフェクト細胞、ZFN DNAまたはRNAでトランスフェクトし、RCA−I選択を伴わない細胞、およびZFN DNAまたはRNAでトランスフェクトし、RCA−I選択を伴う細胞によって産生されたIgGにおける各糖型(Man5、G0、G0F、G1F、およびG2F)のパーセントを提示する。(B)アッセイされた各糖型の構造の略図。
図5は、Mgat1が破壊されたIgG産生クローンの遺伝子型を提示する。以下の細胞株:非トランスフェクト野生型(野生型);ZFNトランスフェクションおよびクローン単離を受けた2つの野生型クローン(#15、#46);RCA−Iなしで選択された2つのMgat1が破壊された細胞株(#73、#92)、およびRCA−Iの存在下で選択されたMgat1が破壊された4つの細胞株(#21、#25、#27、#37)の配列アラインメントが示される。影をつけた領域はZFN切断部位をマークしている。
図6は、RCA−Iに対するMgat1ノックアウトクローンの不感受性を図示する。RCA−Iの非存在下および存在下で増殖させたときの、野生型クローン(野生型、#15、#46)およびMgat1ノックアウトクローン(#73、#92、#21、#25、#27、#37)のバッチ培養におけるピークの生存細胞密度がプロットされている。
図7は、野生型およびMgat1ノックアウトIgG産生クローンのIgG糖プロフィールを示す。(A)トランスフェクトしていないクローン(野生型)および野生型クローン(#15、#46)からの5日目に収集されたIgGサンプルにおける様々な糖型のパーセンテージを示す。(B)6個のMgat1ノックアウトクローン(#73、#92、#21、#25、#27、#37)から5日目に収集されたIgGサンプルにおける様々な糖型のパーセンテージを提示する。(C)野生型クローンから8日目に収集されたIgGサンプルにおける様々な糖型のパーセンテージを示す。(D)6個のMgat1ノックアウトクローンから8日目に収集されたIgGサンプルにおける様々な糖型のパーセンテージを提示する。ND=検出されず。
図8は、時間の経過に対する、野生型クローンおよびMgat1ノックアウトクローンの増殖を図示する。(A)バッチ培養における13日間にわたる、野生型クローン(野生型、#15、#46)およびMgat1ノックアウトクローン(#73、#92、#21、#25、#27、#37)における生存細胞のパーセントを提示する。(B)13日間にわたる、野生型クローンおよび6つのMgat1ノックアウトクローンのバッチ培養における生存細胞密度を示す。
図9は、野生型クローンおよびMgat1ノックアウトクローンのIgG生産性を示す。野生型クローン(野生型、#15、#46)およびMgat1ノックアウトクローン(#73、#92、#21、#25、#27、#37)におけるピーク体積測定的生産性がプロットされている。
発明の詳細な説明
本開示は、単純な糖型を有する組換えタンパク質の産生の組成物および方法を提供し、ここで、単純な糖型は1つ以上の末端マンノース残基を含む。特に、本開示は、マンノシル(α−1,3−)−糖タンパク質β−1,2−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(Mgat1)が欠損している細胞株を提供する。ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、細胞株がMgat1を産生しないように、不活化されたかまたはノックアウトされた、Mgat1をコードする染色体配列を含む。結果として、この細胞株は、1つ以上の末端マンノース残基を有する糖タンパク質を産生する。末端マンノース残基を有する糖タンパク質は、マンノース受容体媒介性の取り込みを容易にするので、本明細書中に開示されたMgat1欠損細胞株はワクチン産生のために有用である。加えて、単純な糖型を有する糖タンパク質はX線結晶学研究のために有用である。さらに、本明細書に開示されるMgat1欠損細胞は、ランダム化学変異誘発に付随する潜在的な調節の懸念を回避し、親の細胞株に匹敵する増殖および生産性の特性を維持する。
本開示はまた、Mgat1欠損細胞を調製するための方法を提供する。例えば、Mgat1が欠損している細胞は、Mgat1をコードする染色体配列を不活化するために標的エンドヌクレアーゼを使用することによって調製できる。本明細書に開示されるMgat1欠損細胞を使用して単純な糖型を有する組換え糖タンパク質を産生するための方法もまた提供される。
(I)Mgat1欠損細胞株
(a)細胞株の特性
本開示の1つの態様は、Mgat1が欠損している細胞株を包含する。Mgat1は、N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(GlcAc−TIまたはGnTI)またはN−グリコシル−オリゴサッカリド−糖タンパク質N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIとしてもまた知られている。Mgat1は、成長しているN−グリカンのオリゴマンノースコア(すなわち、Man5GlcNAc2(Man5)部分)へのN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)の転移を触媒する(図1を参照のこと)。
ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、親の細胞株と比較して、Mgat1のレベルが減少している。例えば、Mgat1欠損細胞株におけるMgat1のレベルは、Mgat1が欠損していない親の細胞株と比較して、約5%〜約10%、約10%〜約20%、約20%〜約30%、約30%〜約40%、約40%〜約50%、約50%〜約60%、約60%〜約70%、約70%〜約80%、約80%〜約90%、または約90%〜約99.9%減少できる。他の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、本質的にMgat1を産生しない。本明細書で使用される場合、「Mgat1が本質的にない」という用語は、Mgat1欠損細胞株または当該分野において周知である手順を使用してそこから誘導された溶解物の中で、Mgat1 mRNAおよび/またはタンパク質が検出できないことを意味する。mRNAまたはタンパク質のレベルを決定するための適切な手順の非限定的な例には、PCR、qPCR、ウェスタンブロッティング、およびELISAアッセイが挙げられる。
Mgat1が欠損している細胞株は、単純な糖型を有する糖タンパク質を産生する。単純な糖型とは、1つ以上の末端マンノース残基を含む糖型をいう。一般的に、単純な糖型は、ガラクトースおよび/またはシアル酸残基を欠いている。例示的な単純な糖型はMan5GlcNac2またはMan5である。ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、末端マンノース残基のレベルが約1.1倍〜約3倍、約3倍〜約10倍、約10倍〜約30倍、約30倍〜約100倍、または約100倍より多く増加されている糖タンパク質を生成できる。他の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、末端ガラクトースおよび/またはシアル酸残基のレベルが、約1.1倍〜約3倍、約3倍〜約10倍、約10倍〜約30倍、約30倍〜約100倍、または約100倍より多く減少している糖タンパク質を産生できる。
Mgat1欠損細胞株は、Mgat1が欠損していない細胞株に匹敵する、レベルのタンパク質産生または生産性を有する。本明細書で使用される場合、「匹敵するタンパク質産生」とは、Mgat1欠損細胞株が、Mgat1が欠損していない細胞株よりも、ほぼ同じレベルかまたはそれ以上のタンパク質を産生することを意味する。タンパク質生産性は、単位体積あたりに産生されるタンパク質の量(すなわち、ピーク体積測定的生産性)を決定することによって定量化できる。ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株によって産生されるタンパク質の量は、Mgat1が欠損していない細胞株によって産生される量と比較して、±10%変動する可能性がある。他の実施形態において、Mgat1欠損細胞株によって産生されるタンパク質の量は、Mgat1が欠損していない細胞株によって産生される量と比較して、約10%〜約20%、約20%〜約30%、約30%〜約40%、または約40%〜約50%増加できる。
Mgat1欠損細胞株は、Mgat1が欠損していない細胞株の増殖速度に匹敵する増殖速度を有する。本明細書で使用される場合、「に匹敵する増殖速度」とは、Mgat1が欠損していない細胞株と比較して増加するか、またはMgat1が欠損していない細胞株と比較して約50%未満減少するかのいずれかである増殖速度をいう。培養中の特定の時間の期間後、増殖速度は、単位体積あたりの生存細胞のパーセンテージまたは生存細胞の数(すなわち、生存細胞密度)を決定することによって定量できる。ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1が欠損していない細胞株と比較して、増殖速度の増加を有した。例えば、Mgat1欠損細胞株における生存細胞のパーセンテージまたは生存細胞密度は、Mgat1が欠損していない細胞株と比較して、約1%〜約10%、約10%〜約30%、約30%〜約5%、約50%〜約100%、または100%より多く増加できる。他の実施形態において、Mgat1欠損細胞株における生存細胞のパーセンテージまたは生存細胞の密度は、Mgat1が欠損していない細胞株と比較して、約1%〜約10%、約10%〜約30%、約30%〜約50%減少できる。
本明細書に開示されるMgat1欠損細胞株は安定な表現系を有する。例えば、Mgat1欠損細胞株は、長期間の間、および/または数え切れないほどの細胞世代にわたって、単純な糖型を有する糖タンパク質を産生する。別の言い方をすれば、本明細書に開示される細胞株は、複合糖型を有する糖タンパク質を産生するように戻ることがない。加えて、Mgat1が欠損している細胞株は、長期間の間、および/または数え切れないほどの細胞世代にわたって、高いレベルのタンパク質の生産性および優秀な増殖速度を維持する。
(b)不活化された、Mgat1をコードする染色体配列
ある実施形態において、Mgat1が欠損している細胞株は、不活化された、Mgat1をコードする染色体配列を含む。例えば、この細胞株のゲノムは、Mgat1をコードする染色体配列を不活化するために編集できる。本明細書で使用される場合、「不活化された染色体配列」という用語は、タンパク質産物を生成することが不可能な染色体配列をいう。細胞株が正倍数体細胞を含む実施形態において、不活化された、Mgat1をコードする染色体配列は、細胞株が減少レベルのMgat1を産生するように、単一対立遺伝子性であり得る。細胞株が正倍数体細胞を含む他の実施形態において、不活化された、Mgat1をコードする染色体配列は、細胞株がMgat1を産生しないように二対立遺伝子性であり得る。細胞株が異数性である他の実施形態において、Mgat1をコードする染色体配列の1つ以上のコピーは、細胞が減少量のMgat1を産生するように、不活化できる。細胞株が異数性であるなお他の実施形態において、Mgat1をコードする染色体配列のすべてのコピーは、細胞株がMgat1を産生しないように、不活化できる。1つの例示的な実施形態において、細胞株は、Mgat1をコードする染色体配列について半数体であり、Mgat1をコードする染色体配列の不活化はMgat1発現の完全な喪失を生じる。
Mgat1をコードする染色体配列は、少なくとも1つの塩基対(bp)の欠失、少なくとも1bpの挿入、少なくとも1bpの置換、またはこれらの組み合わせによって不活化できる。欠失、挿入、および/または置換の結果として、Mgat1コード配列は、読み枠のシフトを受け、それによって、タンパク質産物の産生を妨害する。Mgat1をコードする染色体配列は、以下のセクション(II)において詳述されるように、標的エンドヌクレアーゼ媒介ゲノム編集技術を使用して不活化できる。様々な実施形態において、Mgat1をコードする染色体配列は、Mgat1の発現が無効にされるように、エキソンのコード領域のすべてもしくは一部の欠失、制御領域のすべてもしくは一部の欠失、および/またはスプライシング部位の欠失によって不活化できる。他の実施形態において、Mgat1をコードする染色体配列は、細胞株がMgat1を産生することが不可能であるように、早発性の停止コドン、新たなスプライシング部位、および/またはSNPを染色体配列に導入するための欠失、挿入、および/またはヌクレオチド置換を介して不活化できる。
1つの実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1をコードする染色体配列の約1bpから全体のコード領域までの範囲の欠失を含む。別の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1のコード領域の約2bp〜約55bp、約55bp〜約100bp、約100bp〜約300bp、約300bp〜約600bp、約600bp〜約1200bp、または約1200bpより多くの範囲の欠失を含む。例示的な実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1をコードする染色体配列の2bp、4bp、7bp、10、bp、18bp、24bp、28bp、または55bpの欠失を含む。別の例示的な実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、Mgat1をコードする104bpの染色体配列の挿入によって置き換えられる157bpの欠失を含む。
(c)任意のさらなる欠損
ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株はまた、グルタミンシンターゼ(GS)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、またはこれらの組み合わせにおける欠損も含む。GS、DHFR、および/またはHPRTにおける欠損は、天然に存在し得る。あるいは、GS、DHFR、および/またはHPRTにおける欠損は操作できる。細胞がGS、DHFR、またはHPRTをそれぞれコードしている不活化染色体配列を含むので、その細胞はGS、DHFR、またはHPRTを欠損していることがあり得る。ある実施形態において、GS、DHFR、またはHPRTをコードする染色体配列は、標的エンドヌクレアーゼ媒介ゲノム編集によって不活化できる。例示的な実施形態において、GS、DHFR、またはHPRTをコードする染色体配列のすべてのコピーは、細胞株がGS、DHFR、またはHPRTを、それぞれ産生しないように不活化される。例示的な実施形態において、Mgat1欠損細胞株はGS−/−である。
(d)細胞株の種類
Mgat1が欠損している細胞株の種類は変動できる。細胞株は、ヒト細胞株、非ヒト哺乳動物細胞株、非哺乳動物脊椎動物細胞株、脊椎動物細胞株、または酵母細胞株であり得る。
適切な哺乳動物細胞株の非限定的な例には以下が挙げられる:チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞;マウスミエローマNS0細胞、マウス胎児線維芽3T3細胞(NIH3T3)、マウスBリンパ腫A20細胞;マウスメラノーマB16細胞;マウス筋芽細胞C2C12細胞;マウスミエローマSP2/0細胞;マウス胎児間葉C3H−10T1/2細胞;マウス癌腫CT26細胞、マウス前立腺DuCuP細胞;マウス胸部EMT6細胞;マウス肝癌Hepa1c1c7細胞;マウスミエローマJ5582細胞;マウス上皮MTD−1A細胞;マウス心筋MyEnd細胞;マウス腎臓RenCa細胞;マウス膵臓RIN−5F細胞;マウスメラノーマX64細胞;マウスリンパ腫YAC−1細胞;ラットグリア芽腫9L細胞;ラットBリンパ腫RBL細胞;ラット神経芽細胞腫 B35細胞;ラット肝癌細胞(HTC);バッファローラット肝臓BRL 3A細胞;イヌ腎臓細胞(MDCK);イヌ乳房(CMT)細胞;ラット骨肉腫D17細胞;ラット単球/マクロファージDH82細胞;サル腎臓SV−40形質転換線維芽細胞(COS7)細胞;サル腎臓CVI−76細胞;アフリカミドリザル腎臓(VERO−76)細胞;ヒト胚腎臓細胞(HEK293、HEK293T);ヒト子宮頸部癌腫細胞(HELA);ヒト肺細胞(W138);ヒト肝臓細胞(Hep G2);ヒトU2−OS骨肉腫細胞、ヒトA549細胞、ヒトA−431細胞、およびヒトK562細胞。哺乳動物細胞株の広範なリストは、アメリカンタイプカルチャーコレクション(the American Type Culture Collection)カタログ(ATCC,Mamassas,VA)の中で見いだされてもよい。
適切な非哺乳動物細胞株の例には、Xenopus細胞株(例えば、S3、XTC、BB7、ff−2、15/0、および15/40);ゼブラフィッシュ細胞株(例えば、ZF4、PAC2など);昆虫細胞株(例えば、SF9、S2等);ならびにPichia細胞株およびSaccharomyces細胞株などの酵母細胞株が挙げられるがこれらに限定されない。
例示的な実施形態において、細胞株は、組換えタンパク質、例えば、抗体、糖タンパク質等の産生のために広範に使用される型である。例示的な実施形態において、細胞株はCHO細胞株である。多数のCHO細胞株がATCCから利用可能である。適切なCHO細胞株には、CHO−K1細胞およびその誘導体が挙げられるがこれらに限定されない。
(e)任意の核酸
ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、組換えタンパク質をコードする少なくとも1つの核酸をさらに含んでもよい。一般的に、組換えタンパク質は異種であり、そのタンパク質が細胞にとってネイティブではないことを意味する。組換えタンパク質は、非限定的に、抗体、抗体のフラグメント、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラ抗体、IgG分子、IgG重鎖、IgG軽鎖、IgA分子、IgD分子、IgE分子、IgM分子、ワクチン、成長因子、サイトカイン、インターフェロン、インターロイキン、ホルモン、凝血(または凝固)因子、血液成分、酵素、治療タンパク質、栄養補助タンパク質、前述のいずれかの機能的フラグメントまたは機能的改変体、または前述のタンパク質および/もしくはその機能的フラグメントもしくはその改変体のいずれかを含む融合タンパク質であってもよい。
ある実施形態において、組換えタンパク質をコードする核酸配列は、HPRT、DHFR、および/またはGSが増幅可能な選択可能なマーカーとして使用されてもよいように、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)、および/またはグルタミンシンターゼ(GS)をコードする核酸配列に連結されてもよい。

ある実施形態において、組換えタンパク質をコードする核酸配列は染色体外であってもよい。すなわち、組換えタンパク質をコードする核酸は、プラスミド、コスミド、人工染色体、ミニ染色体、または別の染色体外構築物から一過性に発現されてもよい。発現構築物は、さらなる発現制御配列(例えば、エンハンサー配列、Kozak配列、ポリアデニル化配列、転写終結配列など)、選択マーカー配列(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、複製起点などを含むことができる。さらなる情報は、「Current Protocols in Molecular Biology」Ausubel et al.,John Wiley & Sons,New York,2003 or 「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」Sambrook & Russell,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY,3rd edition,2001において見出すことができる。
他の実施形態において、組換えタンパク質をコードする核酸配列は、細胞のゲノムに染色体に組み込まれてもよい。従って、組換えタンパク質は安定して発現できる。この実施形態のいくつかの反復において、組換えタンパク質をコードする核酸配列は、適切な異種発現制御配列(すなわち、プロモーター)に作動可能に連結されてもよい。他の反復において、組換えタンパク質をコードする核酸配列は、内因性発現制御配列の制御下に配置されてもよい。核酸配列をコードする組換えタンパク質は、同種組換え、標的エンドヌクレアーゼ媒介ゲノム編集、ウイルスベクター、トランスポゾン、プラスミド、および他の周知の手段を使用して細胞株のゲノムに組み込むことができる。さらなるガイダンスが、Ausubel et al.2003、前出およびSambrook & Russell、2001、前出において見出すことができる。
(f)例示的な実施形態
1つの例示的な実施形態において、細胞株が、単一コピーのMgat1をコードする染色体配列が不活化されている(すなわち、細胞の遺伝子型がMgat1−/0である)CHO細胞株である。別の例示的な実施形態において、細胞株は、Mgat1をコードする染色体配列の単一コピーが不活化されている(すなわち、細胞の遺伝子型がGS−/−、Mgat1−/0である)、GS−/−CHO細胞株である。一般的に、Mgat1をコードする染色体配列は、コード配列一部の欠失によって不活化されている。
(II)Mgat1が欠損している細胞株を調製するための方法
Mgat1が欠損している細胞株は様々な方法によって調製できる。特定の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、標的エンドヌクレアーゼ媒介ゲノム編集プロセスによって調製できる。他の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、RNAi法、ランダム変異誘発、部位特異的組換えシステム、または当該分野において公知である他の方法によって調製できる。
Mgat1が欠損している細胞株は、1つ以上の末端マンノース残基を有する糖タンパク質を産生する。さらなる実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、トウゴマアグルチニン−I(RCA−I)とのインキュベーションによってさらに富化できる。RCA−Iは、末端マンノース残基を結合せず、それゆえに、Mgat1活性を欠いている細胞の選択を可能にする細胞毒性レクチンである。このような細胞は末端マンノース残基を有する糖タンパク質を産生するからである。
(a)標的エンドヌクレアーゼ媒介ゲノム編集
標的エンドヌクレアーゼは、特定の染色体配列を編集(すなわち、不活化または修飾)するために使用できる。特定の染色体配列は、特定の染色体配列を標的とするように操作されている、標的エンドヌクレアーゼまたは標的エンドヌクレアーゼをコードする核酸を細胞に導入することによって不活化できる。1つの実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、特定の染色体配列を認識および結合し、ならびに非相同末端結合(NHEJ)修復プロセスによって修復される二本鎖の切れ目を導入する。NHEJエラーを起こす傾向があるので、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、挿入、および/または置換が起こってもよく、それによって、染色体配列の読み枠を破壊し、その結果、タンパク質産物が産生されない。別の実施形態において、標的エンドヌクレアーゼはまた、標的とされた染色体配列の一部との実質的な配列同一性を有するポリヌクレオチドを同時導入することによって、同種組換え反応を介して染色体配列を編集するために使用できる。標的エンドヌクレアーゼによって導入される二本鎖の切れ目は、相同性指向性の修復プロセスによって修復され、その結果、染色体配列は、編集される染色体配列が生じる様式で、そのポリヌクレオチドと交換される。
(i)標的エンドヌクレアーゼ
様々な標的エンドヌクレアーゼが染色体配列を編集するために使用できる。標的エンドヌクレアーゼは、天然に存在するタンパク質または操作されたタンパク質であり得る。1つの実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、メガヌクレアーゼであり得る。メガヌクレアーゼは、長い認識配列によって特徴つけられるエンドデオキシリボヌクレアーゼであり、すなわち、認識配列は、一般的に、約12塩基対〜約40塩基対の範囲である。この要件の結果として、認識配列は、一般的には、任意の所定のゲノム中に1つのみ存在する。メガヌクレアーゼの中で、LAGLIDADGと名付けられたホーミングエンドヌクレアーゼのファミリーが、ゲノムの研究およびゲノム操作の価値あるツールとなった。メガヌクレアーゼは、その認識配列を当業者に周知である技術を使用して修飾することにより、特定の染色体配列に標的化できる。
別の実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、転写活性化因子様エフェクター(TALE)ヌクレアーゼであり得る。TALEは、新たなDNA標的に結合するように容易に操作できる植物病原菌Xanthomonasからの転写因子である。TALEまたはその短縮型バージョンは、TALEヌクレアーゼまたはTALENと呼ばれる標的エンドヌクレアーゼを作製するために、Foklなどのエンドヌクレアーゼの触媒ドメインに連結されてもよい(Sanjana et al.,2012,Nat Protoc,7(1):171−192)。
なお別の実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、部位特異的エンドヌクレアーゼであり得る。特に、部位特異的エンドヌクレアーゼは、「レア−カッター」エンドヌクレアーゼであり得、その認識配列は、ゲノム中にまれに存在する。一般的に、部位特異的エンドヌクレアーゼの認識配列はゲノム中に1つのみ存在する。代替的なさらなる実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、人工的な標的DNA二本鎖の切れ目誘導因子であり得る。
例示的な実施形態において、標的エンドヌクレアーゼは、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であり得る。典型的には、ZFNは、DNA結合ドメイン(すなわち、ジンクフィンガー)および切断ドメイン(すなわち、ヌクレアーゼ)を含み、その両方が以下に記載される。
ジンクフィンガー結合ドメイン。ジンクフィンガー結合ドメインは、選択した任意の核酸配列を認識し、それに結合するように操作できる。例えば、Beerli et al.(2002)Nat.Biotechnol.20:135−141;Pabo et al.(2001)Ann.Rev.Biochem.70:313−340;Isalan et al.(2001)Nat.Biotechnol.19:656−660;Segal et al.(2001)Curr.Opin.Biotechnol.12:632−637;Choo et al.(2000)Curr.Opin.Struct.Biol.10:411−416;Zhang et al.(2000)J.Biol.Chem.275(43):33850−33860;Doyon et al.(2008)Nat.Biotechnol.26:702−708;およびSantiago et al.(2008)Proc.Natl.Acad.Sci.USA105:5809−5814を参照のこと。操作されたジンクフィンガー結合ドメインは、天然に存在するジンクフィンガータンパク質と比較して、新規な結合特異性を有してもよい。操作方法には、合理的設計および様々な型の選択が挙げられるがこれらに限定されない。合理的設計は、例えば、2つ組、3つ組、および/または4つ組のヌクレオチド配列、ならびに個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースを使用することを含み、そこでは、各々の2組、3つ組、または4つ組のヌクレオチド配列は、特定の3つ組または4つ組の配列を結合するジンクフィンガーの1つ以上のアミノ酸配列と関連する。例えば、米国特許第6,453,242号および同第6,534,261号を参照のこと。これらの開示は、それらの全体が参照により組み込まれる。1つの例として、米国特許第6,453,242号に記載されているアルゴリズムが、ジンクフィンガー結合ドメインを設計してあらかじめ選択された配列を標的とするために使用できる。縮重していない認識コード表を使用する合理的設計などの代替方法もまた、ジンクフィンガー結合ドメインを設計して特定の配列を標的とするために使用されてもよい(Sera et al.(2002)Biochemistry41:7074−7081)。DNA配列における潜在的な標的部位を同定すること、ならびにジンクフィンガー結合ドメインを設計することのための、公的に利用可能なウェブに基づくツールは当該分野において公知である。例えば、DNA配列における潜在的な標的部位を同定するためのツールは、http://www.zincfingertools.org.において見出される。ジンクフィンガー結合ドメインを設計するためのツールは、http://zifit.partners.org/ZiFiT.において見出される。(Mandell et al.(2006)Nuc.Acid Res.34:W516−W523;Sander et al.(2007)Nuc.Acid Res.35:W599−W605.もまた参照のこと)
ジンクフィンガー結合ドメインは、約3ヌクレオチド長〜約21ヌクレオチド長までの範囲のDNA配列を認識およびそれに結合するように設計できる。1つの実施形態において、ジンクフィンガー結合ドメインは、約9〜約18ヌクレオチド長までの範囲のDNA配列を認識およびそれに結合するように設計できる。一般的に、本発明でジンクフィンガーヌクレアーゼのジンクフィンガー結合ドメインは、少なくとも3個のジンクフィンガー認識領域またはジンクフィンガーを含み、ここで、各ジンクフィンガーは3個のヌクレオチドを結合する。1つの実施形態において、ジンクフィンガー結合ドメインは4個のジンクフィンガー認識領域を含む。別の実施形態において、ジンクフィンガー結合ドメインは、5個のジンクフィンガー認識領域を含む。さらに別の実施形態において、ジンクフィンガー結合ドメインは、6個のジンクフィンガー認識領域を含む。ジンクフィンガー結合ドメインは、任意の適切な標的DNA配列に結合するように設計できる。例えば、米国特許第6,607,882号;同第6,534,261号および同第6,453,242号を参照のこと。これらの開示は、それらの全体が参照により組み込まれる。
ジンクフィンガー認識領域を選択する例示的な方法には、ファージディスプレイおよびツーハイブリッド系が挙げられ、これらは、米国特許第5,789,538号;同第5,925,523号;同第6,007,988号;同第6,013,453号;同第6,410,248号;同第6,140,466号;同第6,200,759号;および同第6,242,568号ならびにWO98/37186;WO98/53057;WO00/27878;WO01/88197およびGB2,338,237に記載されており、これらの開示は、それらの全体が参照により組み込まれる。加えて、ジンクフィンガー結合ドメインのための結合特異性の増強は、例えば、WO02/077227に記載されており、これらの全体の開示は参照により組み込まれる。
ジンクフィンガー結合ドメインおよび融合タンパク質(およびこれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は当業者に公知であり、例えば、米国特許第7,888,121号に詳細に記載されており、これは、その全体が参照により組み込まれる。ジンクフィンガー認識領域および/またはマルチフィンガージンクフィンガータンパク質は、例えば、5アミノ酸長以上のリンカーを含む、適切なリンカー配列を使用して、一緒に連結できる。6アミノ酸長以上のリンカー配列の非限定的な例については、米国特許第6,479,626号;同第6,903,185号;および同第7,153,949号を参照のこと。これらの開示は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書に記載されるジンクフィンガー結合ドメインは、タンパク質の個別のジンクフィンガー間に適切なリンカーの組み合わせを含んでもよい。
ある実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、核局在化シグナルまたは配列(NLS)をさらに含む。NLSは、染色体中の標的配列における二本鎖の切れ目を導入するために、核へのジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質の標的化を容易にするアミノ酸配列である。核局在化シグナルは当該分野において公知である。例えば、Makkerh et al.(1996)Current Biology6:1025−1027を参照のこと。
切断ドメイン。ジンクフィンガーヌクレアーゼは切断ドメインもまた含む。ジンクフィンガーヌクレアーゼの切断ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得ることができる。切断ドメインが得られるエンドヌクレアーゼの非限定的な例には、
制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるがこれらに限定されない。例えば、New England Biolabs Catalog or Belfort et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3379−3388を参照のこと。DNAを切断するさらなる酵素が知られている(例えば、S1ヌクレアーゼ;mung beanヌクレアーゼ;膵臓DNase I;ミクロコッカスヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ)。Linn et al.(編)Nucleases、Cold Spring Harbor Laboratory Press、1993もまた参照のこと。1つ以上のこれらの酵素(またはこれらの機能的フラグメント)は、切断ドメインの供給源として使用できる。
切断ドメインはまた、切断活性のためにダイマー化を必要とする、上記のような酵素またはその一部から誘導できる。各ヌクレアーゼが活性酵素ダイマーのモノマーを含むので、2つのジンクフィンガーヌクレアーゼは切断が必要であり得る。あるいは、単一のジンクフィンガーヌクレアーゼは、活性酵素ダイマーを作製するために、両方のモノマーを含むことができる。本明細書で使用される場合、「活性酵素ダイマー」は、核酸分子を切断することが可能である酵素ダイマーである。2つの切断モノマーは同じエンドヌクレアーゼ(またはその機能的フラグメント)から誘導でき、または各モノマーは異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的フラグメント)から誘導できる。
2つの切断モノマーは活性酵素ダイマーを形成するために使用され、2つのジンクフィンガーヌクレアーゼのための認識部位は、好ましくは、2つのジンクフィンガーヌクレアーゼのそれぞれの認識部位への結合が、切断モノマーを、互いに対して、例えば、ダイマー化によって切断モノマーが活性酵素ダイマーを形成することを可能にする空間的配向に置くように配置される。結果として、認識部位の近傍の端が約5〜約18ヌクレオチド離れることができる。例えば、近傍の端は、約5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18ヌクレオチド離れることができる。しかし、任意の整数のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの認識部位の間に介在できることが理解される(例えば、約2〜約50ヌクレオチド対以上)。例えば、本明細書に詳細に記載されたものなどのジンクフィンガーヌクレアーゼの認識部位の近傍の端は6ヌクレオチド分離することができる。一般的に、切断部位は、認識部位の間に位置する。
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多くの種に存在し、DNAに配列特異的に結合すること(認識部位において)、および結合の部位またはその近傍でDNAを切断することが可能である。特定の制限酵素(例えば、IIS型)は、認識部位から除外された部位においてDNAを切断し、分離可能な結合ドメインおよび切断ドメインを有する。例えば、IIS型酵素Foklは、DNAの二本鎖切断を、一方の鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド、および他方のその認識部位から13ヌクレオチドで触媒する。例えば、米国特許第5,356,802号;同第5,436,150号;および同第5,487,994号;ならびにLi et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA89:4275−4279;Li et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:2764−2768;Kim et al.(1994a)Proc.Natl.Acad.Sci.USA91:883−887;Kim et al.(1994b)J.Biol.Chem.269:31978−31982を参照のこと。このように、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、少なくとも1つのIIS型制限酵素からの切断ドメインおよび1つ以上のジンクフィンガー結合ドメインを含むことができ、これは、操作されていてもよいし、操作されていなくてもよい。例示的なIIS型制限酵素は、例えば、国際公開WO07/014,275に記載されており、この開示は、その全体が参照により組み込まれる。さらなる制限酵素もまた、別々の結合ドメインおよび切断ドメインを含有し、これらもまた、本開示によって意図される。例えば、Roberts et al.(2003)Nucleic Acids Res.31:418−420を参照のこと。
切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的なIIS型制限酵素はFoklである。この特定の酵素はダイマーとして活性である(Bitinaite et al.(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA95:10,570−10,575)。従って、本開示の目的のために、ジンクフィンガーヌクレアーゼにおいて使用されるFokl酵素の一部は切断可能なモノマーと見なされる。このように、Fokl切断ドメインを使用する標的二本鎖切断のために、各々がFokl切断モノマーを含む2つのジンクフィンガーヌクレアーゼは、活性酵素ダイマーを再構築するために使用できる。あるいは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFokl切断モノマーを含有する単一ポリペプチド分子もまた使用できる。
特定の実施形態において、切断ドメインは、ホモダイマー化を最小化または防止する1つ以上の操作された切断モノマーを含む。非限定的な例として、Foklの446位、447位、479位、483位、484位、486位、487位、490位、491位、496位、498位、499位、500位、531位、534位、537位、および538位のアミノ酸残基はすべて、Fokl切断ハーフドメインのダイマー化に影響を与えるための標的である。必須のヘテロダイマーを形成するFoklの例示的な操作された切断モノマーは、第1の切断モノマーがFoklの490位および538位のアミノ酸残基に変異を含み、第2の切断モノマーが486位および499位のアミノ酸残基に変異を含む、対を含む。
このように、操作された切断モノマーの1つの実施形態において、490位のアミノ酸の変異はGlu(E)をLys(K)に置き換え;538位のアミノ酸の変異はIso(I)をLys(K)に置き換え;486位のアミノ酸の変異はGin(Q)をGlu(E)に置き換え;
そして499位のアミノ酸の変異はIso(I)をLys(K)に置き換える。詳細には、操作された切断モノマーは490位をEからKに、および538位をIからKに変異させて、「E490K:I538K」と名付けられた操作された切断モノマーを産生すること、ならびに、別の切断モノマー中で、486位をQからEに、および499位をIからKに変異させて、「Q486E:I499K」と名付けられた操作された切断モノマーを産生することによって調製できる。上記に記載された操作された切断モノマーは、異常な切断が最小化または無効にされている必須のヘテロダイマー変異体である。操作された切断モノマーは、適切な方法を使用して、例えば、その全体が参照により組み込まれる米国特許第7,888,121号に記載されるような野生型切断モノマー(Fokl)の部位特異的変異誘発によって調製できる。
(ii)任意のポリヌクレオチド
ある実施形態において、標的ゲノム編集のための方法は、標的切断部位の少なくとも一方の配列に対して実質的な配列同一性を有する配列を含む少なくとも1つのポリヌクレオチドを細胞に導入することをさらに含む。例えば、ポリヌクレオチドは、標的切断部位の一方の配列に対して実質的な配列同一性を有する第1の配列、および標的切断部位の他方の配列に対して実質的な配列同一性を有する第2の配列を含んでもよい。あるいは、ポリヌクレオチドは、標的切断部位の一方の配列に対して実質的な配列同一性を有する第1の配列、および標的切断部位から離れて位置する配列に対して実質的な配列同一性を有する第2の配列を含んでもよい。標的切断部位から離れて位置する配列は、標的切断部位の数十ヌクレオチド、数百ヌクレオチド、または数千ヌクレオチド上流または下流であってもよい。
染色体配列の配列に対して実質的な配列同一性を有するポリヌクレオチドにおける第1の配列および第2の配列の長さは、変動でき、変動するであろう。一般的に、ポリヌクレオチドにおける第1の配列および第2の配列は、少なくとも約10ヌクレオチド長である。様々な実施形態において、染色体配列との実質的な配列同一性を有するポリヌクレオチド配列は、約10〜30ヌクレオチド、約30〜約100ヌクレオチド、約100〜約300ヌクレオチド、約300〜約1000ヌクレオチド、約1000〜約3000ヌクレオチド、または3000より上の長さの範囲であり得る。
「実質的な配列同一性」という語句は、ポリヌクレオチドの配列が、関心対象の染色体配列と少なくとも約75%の配列同一性を有することを意味する。例えば、ポリヌクレオチドが少なくとも1ヌクレオチドの欠失、挿入、および/または置換を含有し、その結果、相同組み換えの際に、変化した配列が染色体配列に導入される以外は、ポリヌクレオチドの少なくとも1つの配列が、標的とされる染色体配列に対して同一であり得る。様々な実施形態において、ポリヌクレオチドの配列は、関心対象の染色体配列と、約75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有することができる。
代替の実施形態において、ポリヌクレオチドは、染色体配列と実質的な配列同一性を有する配列によって隣接されるさらなる配列を含むことができる。相同組換えの際に、さらなる配列は、染色体配列統合することができ、それによって、染色体配列を不活化し、および/または染色体配列を修飾する。
ポリヌクレオチドの長さは、変動でき、変動するであろう。例えば、ポリヌクレオチドは、約20ヌクレオチド長から、約200,000ヌクレオチド長までの範囲であり得る。様々な実施形態において、ポリヌクレオチドは、約20ヌクレオチド〜約100ヌクレオチド長、約100ヌクレオチド〜約1000ヌクレオチド長、約1000ヌクレオチド〜約10,000ヌクレオチド長、約10,000ヌクレオチド〜約100,000ヌクレオチド長、または約100,000ヌクレオチド〜約200,000ヌクレオチド長の範囲である。
典型的には、ポリヌクレオチドはDNAである。DNAは一本鎖または二本鎖であり得る。ドナーポリヌクレオチドは、DNAプラスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、ウイルスベクター、DNAの直鎖状部分、PCRフラグメント、裸の核酸、またはリポソームまたはポロキサマーなどの送達ビヒクルと複合体化された核酸であり得る。
ある実施形態において、ポリヌクレオチドは、さらにマーカーを含むことができる。適切なマーカーの非限定的な例には、制限部位、蛍光タンパク質、または選択マーカーが挙げられる。このようなマーカーは、標的化組み込みのためのスクリーニングを可能にする。
(iii)細胞への導入
標的エンドヌクレアーゼは、標的エンドヌクレアーゼをコードするタンパク質として、または核酸として、細胞に導入できる。標的エンドヌクレアーゼをコードする核酸は、DNAまたはRNA(すなわち、mRNA)であってもよい。コードする核酸がmRNAである実施形態において、mRNAは5‘キャップされ、および/または3’ポリアデニル化されてもよい。コードする核酸がDNAである実施形態において、DNAは直鎖状または環状であり得る。DNAはベクターの一部であり得、ここで、コードするDNAは、任意に、適切なプロモーターに作動可能に連結されている。適切なベクター、プロモーター、他の制御エレメント、およびベクターを細胞に導入する手段は、例えば、Ausubel et al,2003,前出および/またはSambrook & Russell,2001,前出において見出すことができる。
標的エンドヌクレアーゼまたは標的エンドヌクレアーゼをコードする核酸、および上記の任意のポリヌクレオチドは、様々な手段によって細胞に導入できる。適切な送達手段には、マイクロインジェクション、エレクトロポレーション、ソノポレーション、微粒子銃、リン酸カルシウム媒介トランスフェクション、カチオントランスフェクション、リポソームトランスフェクション、デンドリマートランスフェクション、熱ショックトランスフェクション、ヌクレオフェクショントランスフェクション、マグネットフェクション、リポフェクション、インパレフェクション、光学的トランスフェクション、独自の剤で増強される核酸の取り込み、およびリポソーム、イムノリポソーム、または人工ビリオンを介した送達が挙げられる。特定の実施形態において、標的エンドヌクレアーゼ分子および任意のポリヌクレオチドは、ヌクレオフェクションまたはエレクトロポレーションによって細胞に導入される。
1つより多くの標的エンドヌクレアーゼ分子および1つより多くのポリヌクレオチドが細胞に導入される実施形態において、分子は同時または逐次的に導入できる。例えば、各々が標的とされる切断部位に特異的である標的エンドヌクレアーゼ分子(および任意にポリヌクレオチド)は、同時に導入できる。あるいは、各標的エンドヌクレアーゼ分子、ならびに任意のポリヌクレオチドは、逐次的に導入できる。
標的エンドヌクレアーゼ(または核酸をコードする)分子対任意のポリヌクレオチドの比率は、変動でき、変動するであろう。一般的に、標的エンドヌクレアーゼ分子対ポリヌクレオチドの比率は、約1:10〜約10:1の範囲であり得る。様々な実施形態において、標的エンドヌクレアーゼ分子対ポリヌクレオチドの比率は、約1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4、1:3、1:2、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1である。1つの実施形態において、この比率は約1:1である。
(iv)例示的な実施形態
ある実施形態において、Mgat1が欠損している細胞株は、Mgat1遺伝子における特定の配列を切断するためにジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を操作することによって調製される。親の細胞株へのZFNまたはZFNをコードする核酸の導入の際に、ZFNは、Mgat1遺伝子における特定の配列に結合し、これを切断する。誤りがちなNHEJプロセスはMgat1遺伝子における二本鎖の切れ目を修復し、それによって少なくとも1bpの欠失、挿入、および/または置換を導入し、その結果、Mgat1遺伝子が不活化される。一般的に、読み枠が破壊され、かつMgat1タンパク質が、Mgat1が欠損している細胞株によって産生されないように、Mgat1コード配列の領域は欠失している。ある実施形態において、ZFN媒介ゲノム編集を介して生成されたMgat1欠損細胞株遺伝子は、RCA−Iの存在下での選択によってさらに富化される。ある実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、CHO細胞株をMgat1に標的化されたZFNと接触させることによって調製される。ある場合において、CHO細胞株はGS−/−である。
(b)RNA干渉
別の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、標的mRNAまたは転写物の発現を阻害するRNA干渉(RNAi)因子を使用して調製できる。RNAi因子は、標的mRNAまたは転写物の切断を導くことができる。あるいは、RNAi因子は、標的mRNAのタンパク質への翻訳を妨害または破壊できる。
ある実施形態において、RNAi因子は、低分子干渉RNA(siRNA)であり得る。一般的に、siRNAは、約15〜約29ヌクレオチド長の範囲である二本鎖RNA分子を含む。siRNAは、約16〜18、17〜19、21〜23、24〜27、または27〜29ヌクレオチド長であり得る。特定の実施形態において、siRNAは約21ヌクレオチド長である。siRNAは、任意に、1つまたは2つの一本鎖突出、例えば、一方または両方の末端に3’突出をさらに含むことができる。siRNAは、一緒にハイブリダイズする2つのRNA分子から形成でき、または、代替的には、ショートヘアピンRNA(shRNA)から生成できる(以下を参照のこと)。ある実施形態において、siRNAの2つの鎖は、完全に相補性であり、その結果、ミスマッチまたはバルジが2つの配列間に形成された二重鎖に存在しない。他の実施形態において、siRNAの2つの鎖は実質的に相補性であり、その結果、1つ以上のミスマッチおよび/またはバルジが2つの配列間に形成された二重鎖に存在してもよい。特定の実施形態において、siRNAの一方または両方の5’末端はリン酸基を有するのに対して、他の実施形態において、一方または両方の5’末端はリン酸基を欠いている。他の実施形態において、siRNAの一方または両方の3’末端はヒドロキシル基を有するのに対して、他の実施形態において、一方または両方の5’末端はヒドロキシル基を欠いている。
「アンチセンス鎖」または「ガイド鎖」といわれるsiRNAの1つの鎖は、標的転写物とハイブリダイズする部分を含む。特定の実施形態において、siRNAのアンチセンス鎖は、標的転写物の領域と完全に相補性であり、すなわち、これは、約15から約29ヌクレオチド長の間、好ましくは少なくとも16ヌクレオチド長、より好ましくは約18〜20ヌクレオチド長の標的領域にわたって、単一のミスマッチまたはバルジなしで、標的転写物にハイブリダイズする。他の実施形態において、アンチセンス鎖は、標的転写物の領域と実質的に相補性であり、すなわち、1つ以上のミスマッチおよび/またはバルジが、アンチセンス鎖および標的転写物によって形成される二重鎖に存在してもよい。典型的には、siRNAは、標的転写物のエキソン配列に標的化される。当業者は、標的転写物のためにsiRNAを設計するプログラム、アルゴリズム、および/または商業的なサービスに精通している。例示的な例は、Rosetta siRNA Design Algorithm(Rosetta Inpharmatics,North Seattle,WA)およびMISSION(登録商標)siRNA(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)である。あるいは、siRNAは、当該分野において周知であるオリゴヌクレオチド合成技術を使用して、化学的に合成できる。
他の実施形態において、RNAi因子は、ショートヘアピンRNA(shRNA)であり得る。一般的に、shRNAは、ハイブリダイズされておりまたはハイブリダイズしてRNA干渉(上記のような)を媒介することが可能な少なくとも2つの相補的部分、および、二重鎖を形成するshRNAの領域を接続するループを形成する少なくとも1つの一本鎖部分を含むRNA分子である。この構造はステム−ループ構造とも呼ばれており、ステムが二重鎖部分である。ある実施形態において、この構造の二重鎖部分は完全に相補性であり、その結果、ミスマッチまたはバルジはshRNAの二重鎖領域には存在しない。他の実施形態において、この構造の二重鎖部分は実質的に相補性であり、その結果、1つ以上のミスマッチまたはバルジがshRNAの二重鎖領域には存在する。この構造のループは、約1〜約20ヌクレオチド長、好ましくは、約4〜約10ヌクレオチド長、より好ましくは、約6〜約9ヌクレオチド長であり得る。ループは、標的転写物に相補性である領域の5’末端または3’末端のいずれかに位置することができる(すなわち、shRNAのアンチセンス部分)。
shRNAは、5’末端または3’末端に突出をさらに含むことができる。任意の突出は、約1〜約20ヌクレオチド長、より好ましくは約2〜約15ヌクレオチド長であり得る。ある実施形態において、突出は1つ以上のU残基、例えば、約1から約5個の間のU残基を含む。ある実施形態においては、shRNAの5’末端はリン酸基を有するのに対して、他の実施形態においては、これはリン酸基を有しない。他の実施形態においては、shRNAの3’末端はヒドロキシル基を有するのに対して、他の実施形態においては、これはヒドロキシル基を有しない。一般的に、shRNAは、保存された細胞RNAi機構によってsiRNAにプロセシングされる。このように、shRNAはsiRNAの前駆体であり、shRNAの一部(すなわち、shRNAのアンチセンス部分)に相補性である標的転写物の発現を阻害することが同様に可能である。当業者は、shRNAの設計および合成のために利用可能な資源(上記に詳述されたようなもの)に精通している。例示的な例はMISSION(登録商標)shRNAs(Sigma−Aldrich)である。
なお他の実施形態において、RNAi因子はRNAi発現ベクターであり得る。典型的には、RNAi発現ベクターは、siRNAまたはshRNAなどのRNAi因子の細胞内(インビボ)合成のために使用される。1つの実施形態において、2つの別々の相補性siRNA鎖は、2つのプロモーターを含有する単一のベクターを使用して転写され、これらの各々は、単一のsiRNAの転写を指向する(すなわち、各プロモーターは、転写が起こってもよいようにsiRNAの鋳型に作動可能に連結されている)。2つのプロモーターは、同じ方向にあることができ、その場合、各々が、相補siRNA鎖のうちの1つについての鋳型に作動可能に連結されている。あるいは、2つのプロモーターは反対の方向であり得、単一の鋳型に隣接し、その結果、プロモーターの転写は2つの相補性siRNA鎖の合成を生じる。別の実施形態において、RNAi発現ベクターは、転写物がshRNAを形成するように、2つの相補性領域を含む単一のRNA分子の転写を推進するプロモーターを含有することができる。
当業者は、1つより多くの転写物単位の転写を介してインビボで産生されることがsiRNAおよびshRNA因子にとって好ましいことを認めている。一般的に言えば、1つ以上のsiRNAまたはshRNA転写単位のインビボ発現を指向するために利用されるプロモーターは、RNAポリメラーゼIII(Pol III)についてのプロモーターであってもよい。U6またはH1プロモーターなどの特定のPol IIIプロモーターは、転写領域の中で、シス作用性エレメントを必要とせず、従って、特定の実施形態にいて好ましい。他の実施形態において、Pol IIのプロモーターは、1つ以上のsiRNAまたはshRNA転写単位の発現を推進するために使用できる。ある実施形態において、組織特異的、細胞特異的、または誘導性Pol IIプロモーターが使用できる。
siRNAまたはshRNAの合成のための鋳型を提供する構築物は、標準的な組換えDNA法を使用して産生でき、真核生物細胞中での発現のために適切である広範な種々の異なるベクターのいずれかに挿入できる。組換えDNA技術は、Ausubel et al,2003,前出およびSambrook & Russell,2001,前出において記載されている。当業者はまた、ベクターが、選択マーカー配列と同様に、さらなる制御配列(例えば、ターミネーター配列、翻訳制御配列など)を含むことができることを認めている。DNAプラスミドは当該分野で公知であり、これには、pBR322、PUCなどに基づくものが挙げられる。多くの発現ベクターがすでにプロモーターを含有しているので、プロモーターに関して適切な位置に関心対象のRNAi因子をコードする核酸配列を挿入することが必要であるかもしれない。ウイルスベクターもまた、RNAi因子の細胞内発現を提供するために使用できる。適切なウイルスベクターには、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクターなどが挙げられる。特定の実施形態において、RNAi発現ベクターは、MISSION(登録商標)TRC shRNA製品(Sigma−Aldrich)において提供されるようなものなどの、shRNAレンチウイルスベースのベクターまたはレンチウイルス粒子である。
RNAi因子またはRNAi発現ベクターは、当業者に周知である方法を使用して細胞に導入できる。このような技術は、例えば、Ausubel et al.,2003、前出またはSambrook & Russell,2001、前出に記載されている。特定の実施形態において、RNAi発現ベクター、例えば、ウイルスベクターは、細胞のゲノムに安定に組み込まれ、その結果、引き続く細胞世代にわたって、Mgat1発現が破壊される。
(c)部位特異的組換え
代替の実施形態において、Mgat1欠損細胞株は、部位特異的組換え技術を使用して調製できる。例えば、部位特異的組換え技術は、関心対象の染色体配列のすべてまたは一部を欠失させるために、または関心対象の染色体配列に一塩基変異多型(SNP)を導入するために使用できる。1つの実施形態において、関心対象の染色体配列は、Cre−loxP部位特異的組換え系、Flp−FRT部位特異的組換え系、またはこれらの改良型を使用して標的化される。このような組換え系は商業的に利用可能であり、これらの技術についてのさらなる教示は、例えば、Ausubel et al.,2003,前出において見出される。
(III)単純な糖型を有する組換えタンパク質を産生するための方法
単純な糖型を有する組換えタンパク質を産生するためにMgat1欠損細胞を使用するための方法もまた提供される。単純な糖型とは、1つ以上の末端マンノース残基を含む糖型をいう。一般的に、単純な糖型は、ガラクトースおよび/またはシアル酸残基を欠いている。例示的な単純な糖型はMan5GlcNac2またはMan5である。上記に言及したように、単純な糖型を有する糖タンパク質は、X線結晶学研究のために有用である。例えば、Mgat1欠損細胞は、ワクチン産生のために使用できる。Mgat1欠損細胞は、末端マンノース残基を含有する糖タンパク質を産生する。抗原上の末端マンノース残基は、抗原提示細胞上でマンノース受容体によるその取り込みを可能にする。次いで、抗原提示細胞(すなわち、マクロファージまたは樹状細胞)は、T細胞による認識のための抗原を提示し、それによって、免疫応答を仕掛ける。末端マンノース残基を含む抗原の使用は、T細胞に対する抗原提示の効力を増強できる。加えて、末端マンノース残基のみを有する糖タンパク質は、マンノース受容体によるこれらのタンパク質の取り込みを容易にすることによって、他の治療目的のために有用であるかもしれない。
単純な糖型を有する糖タンパク質が調製できる。本開示のさらなる態様は、単純な糖型を有する組換えタンパク質を産生するための方法を包含する。この方法は、Mgat1が欠損している細胞株に、組換えタンパク質をコードする核酸を導入すること、および、1つ以上の末端マンノース残基を含む組換えタンパク質を発現させることを含む。Mgat1欠損細胞株は、セクション(I)において上記に記載されている。
Mgat1欠損細胞株において産生された組換え糖タンパク質は、任意の適切な糖タンパク質であり得、これには、治療タンパク質およびタンパク質生物製剤が挙げられる。例えば、組換えタンパク質は、非限定的に、抗体、抗体のフラグメント、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト化モノクローナル抗体、キメラ抗体、IgG分子、IgG重鎖、IgG軽鎖、IgA分子、IgD分子、IgE分子、IgM分子、ワクチン、成長因子、サイトカイン、インターフェロン、インターロイキン、ホルモン、凝血(または凝固)因子、血液成分、酵素、栄養補助タンパク質、前述のいずれかの機能的フラグメントまたは機能的改変体、または前述のタンパク質および/もしくはその機能的フラグメントもしくはその改変体のいずれかを含む融合タンパク質であり得る。例示的な実施形態において、組換え糖タンパク質はヒトタンパク質である。
組換えタンパク質を産生するための方法は当該分野で公知であり、さらなる教示はAusubel et al.,2003 前出によって提供される。一般的に、組換えタンパク質は、外因的に導入される核酸から発現される。セクション(I)(e)において上記に詳述されたように、組換えタンパク質をコードする核酸は、染色体外性であってもよく、または組換えタンパク質をコードする核酸は、ゲノムに組み込まれてもよい。
組換えタンパク質が発現されるように細胞株を培養するための方法は当該分野で公知である。適切な培地および培養系は当該分野で公知であり、商業的に利用可能である。1つの実施形態において、組換えタンパク質は、無血清懸濁培養を介して、本明細書に開示される細胞株によって産生される。
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって共通して理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明において使用される用語の多くの一般的定義を当業者に提供する:Singleton et al.,Dictionary of MicrobiologyおよびMolecular Biology(2nd ed.1994);Cambridge Dictionary of ScienceおよびTechnology(Walker編、1988);Glossary of genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(編)、Springer Verlag(1991);and Hale & Marham,Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、他に特定されない限り、以下の用語はこれらに基づく意味を有する。
本開示またはその好ましい実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「その(the)」および「前記(said)」は、1つ以上の要素が存在することを意味する。「含む(comprising)」、「含む(including)」および「有する」という用語は、包括的であることが意図され、列挙された要素以外のさらなる要素があってもよいことを意味する。
本明細書で使用される場合、「内因性配列」という用語は、細胞にとってネイティブである染色体配列をいう。
「外因性配列」という用語は、細胞にとってネイティブではない染色体配列、またはそのネイティブな位置が染色体中の異なる位置にある染色体配列をいう。
「編集」、「ゲノム編集」または「染色体編集」という用語は、それによって特定の染色体配列が変化されるプロセスをいう。編集された染色体配列は、少なくとも1つのヌクレオチドの挿入、少なくとも1つのヌクレオチドの欠失、および/または少なくとも1つのヌクレオチドの置換を含んでもよい。
「遺伝子」とは、本明細書で使用される場合、遺伝子産物をコードするDNA領域(エキソンおよびイントロンを含む)、ならびに遺伝子産物の産生を調節するDNA領域をいい、このような調節配列は、コード配列および/または転写された配列に隣接しているか否かに関わらない。従って、遺伝子には、プロモーター配列、ターミネーター、リボソーム結合部位および内部リボソーム侵入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インシュレーター、バウンダリーエレメント、複製起点、マトリックス結合部位、および遺伝子座制御領域が挙げられるがこれらに限定されない。
「異種」という用語は、関心対象の細胞または種に対してネイティブではない実体をいう。
「核酸」および「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖状または環状の立体構造であり、一本鎖型または二本鎖型のいずれかである、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーをいう。本開示の目的のために、これらの用語は、ポリマーの長さに関して限定するとは解釈されない。これらの用語は、天然のヌクレオチドの公知のアナログ、ならびに塩基、糖、および/またはリン酸の部分が修飾されているヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエートバックボーン)を包含できる。一般的に、特定のヌクレオチドのアナログは、同じ塩基対特異性を有し;すなわち、AのアナログはTと塩基対を形成する。
「ヌクレオチド」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドをいう。ヌクレオチドは、標準的なヌクレオチド(すなわち、アデノシン、グアノシン、シチジン、チミジン、およびウリジン)またはヌクレオチドアナログであってもよい。ヌクレオチドアナログとは、修飾されたプリンもしくはピリミジン塩基、または修飾されたリボース部分を有するヌクレオチドをいう。ヌクレオチドアナログは、天然に存在するヌクレオチド(例えば、イノシン)または天然に存在しないヌクレオチドであってもよい。ヌクレオチドの糖または塩基部分の修飾の非限定的な例には、アセチル基、アミノ基、カルボキシル基、カルボキシメチル基、ヒドロキシル基、メチル基、ホスホリル基、およびチオール基の付加(または除去)、ならびに、塩基の炭素原子および窒素原子の他の原子による置換(例えば、7−デアザプリン)が挙げられる。ヌクレオチドアナログにはまた、ジデオキシヌクレオチド、2’−O−メチルヌクレオチド、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)、およびモルホリノも挙げられる。
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーをいうために交換可能に使用される。
「組換え」という用語は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換のプロセスをいう。本開示の目的のために、「相同組換え」とは、例えば、細胞の中で二本鎖の切れ目の修復の間に起こるこのような交換の、特別な型をいう。このプロセスは、2つのポリヌクレオチド間の配列類似性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖の切れ目を受けたもの)の鋳型修復のための「ドナー」または「交換」分子を使用し、そして「非交差遺伝子変換」または「ショートトラクト遺伝子変換」として多様に知られている。なぜなら、ドナーから標的までの遺伝情報の移動に導くからである。任意の特定の理論によって束縛されるわけではないが、このような移動は、破壊された標的とドナーの間で形成されるヘテロ二重鎖のミスマッチ訂正、および/または標的の一部になる遺伝情報を再合成するためにドナーが使用される「合成依存性鎖アニーリング」を含むことができる。このような特定の相同組換えは、しばしば、標的分子の配列の変化を生じ、その結果、ドナーポリヌクレオチドの一部またはすべてが標的ポリヌクレオチドに組み込まれる。
本明細書で使用される場合、「標的部位」または「標的配列」という用語は、編集される染色体配列の一部を規定し、標的エンドヌクレアーゼが認識、結合、および切断する核酸配列をいう。
「上流」または「下流」という用語は、固定された位置に対する核酸配列中の位置をいう。上流とは、その位置に対して5’(すなわち、鎖の5’末端近傍)である領域、下流とはその位置に対して3’(すなわち、鎖の3’末端近傍)である領域をいう。
核酸およびアミノ酸の配列同一性を決定するための技術は当該分野で公知である。典型的には、このような技術には、遺伝子のmRNAのヌクレオチド配列を決定すること、および/またはコードされるアミノ酸配列を決定すること、ならびに、それによって、これらの配列を、第2のヌクレオチドまたはアミノ酸の配列に対して比較することが挙げられる。ゲノム配列もまた、この様式で決定および比較できる。一般的に、同一性とは、それぞれ、2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチドの配列の、ヌクレオチド対ヌクレオチド、またはアミノ酸対アミノ酸の正確な一致をいう。2つ以上の配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性パーセントを決定することによって比較できる。核酸配列であるか、アミノ酸配列であるかに関わらず、2つの配列の同一性パーセントは、より短い配列の長さによって除算し、100を乗算した、2つの整列された配列間の正確な一致の数である。核酸配列のおよその整列は、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482−489(1981)の局所的相同性アルゴリズムによって提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,Atlas of Protein Sequences and Structure、M.O.Dayhoff ed.,5 suppl.3:353−358、National Biomedical Research Foundation,Washington,D.C.,USAによって開発されたスコアリングマトリックスを使用することによってアミノ酸配列に適用でき、Gribskov,Nucl.Acids Res.14(6):6745−6763(1986)によって標準化される。配列の同一性パーセントを決定するためのこのアルゴリズムの例示的な実行は、「BestFit」ユーティリティーアプリケーションにおいて、Genetics Computer Group(Madison,Wis.)によって提供される。配列間の同一性パーセントまたは類似性パーセントを計算するための他の適切なプログラムは、一般的に当該分野で公知であり、例えば、別の整列プログラムはBLASTであり、デフォルトパラメーターとともに使用される。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて使用できる:genetic code=standard;filter=none;strand=both;cutoff=60;expect=10;Matrix=BLOSUM62;Descriptions=50 sequences;sort by=HIGH SCORE;Databases=non−redundant,GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS translations+Swiss protein+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、GenBankウェブサイト上で見出すことができる。本明細書に記載される配列に関して、所望の程度の配列の同一性の範囲は、およそ80%〜100%、およびその間の任意の値である。典型的には、配列間の同一性パーセントは、少なくとも70〜75%、好ましくは80〜82%、より好ましくは85〜90%、さらにより好ましくは92%、なおより好ましくは95%、および最も好ましくは98%の配列同一性である。
本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が上記の細胞および方法において行うことができるので、上記の記載および以下に与えられる実施例に含有されるすべての事項は、例示として解釈されるべきであり、限定的な意味に解釈されるべきではないことが意図される。
実施例
以下の実施例は本発明の特定の態様を例証する。
実施例1:ZFNを使用する、CHO細胞中のMgat1の破壊
A.ZFN発現ベクターおよびMgat1に標的化されたZFN mRNAの調製
ZFN媒介ノックアウト技術は、CHO細胞中のMgat1遺伝子をノックアウトまたは不活化するために利用され、それによって、末端Man5部分を含有する均一な単純N−グリカンプロフィールを有するタンパク質を産生する細胞を生成した。Mgat1遺伝子座を含有するMgat1ゲノムコンティグ(Xu et al.,2011,Nat Biotechnol,29:735−741)は、マウス相同性を使用して注釈を付けた。CHO Mgat1コード領域の中の特定の部位を標的とするZFNは、独自のアルゴリズムを使用して設計した。図2Aは、Mgat1における標的部位の位置を図示する。Mgat1における標的配列は、5’−AACAAGTTCAAGTTCccagcaGCTGTGGTAGTGGAGGAC−3’(配列番号:1;大文字のZFN結合部位および小文字の切断部位)であった。Mgat1 ZFN発現構築物は標準的な手順を使用して調製し、Mgat1 ZFN mRNAは、COMPOZR(登録商標)Knockout Zinc Finger Nuclease(ZFN)(Sigma−Aldrich)製品情報に記載されたように、インビトロ転写、mRNAポリアデニル化、およびキャッピング方法を使用して、ZFNプラスミドDNAから産生された。手短に述べると、プラスミドZFN DNAは、フェノール/クロロホルムDNA抽出を使用して、線状化および精製された。MessageMax(商標)T7 ARCA−Capped Message Transcription Kit(Cell Script Inc.)が使用されて、線状化DNAにキャップを付した。Poly(A)Polymerase Tailing Kit(EpiCentre)が使用されて、ポリ(A)テールを付加した。ZFN mRNAは、MEGAclear(商標)キット(Ambion)を使用して精製された。
B.IgG産生CHO細胞株におけるMgat1を標的とするZFNのトランスフェクション
組換え抗狂犬病ヒトIgGを発現するCHOZN(商標)(GS−/−)細胞(Sigma Aldrich)は、25μM メチオニンスルホキシミン(MSX)を補充したEX−CELL(登録商標)CHO CD融合培地(Sigma−Aldrich)中の懸濁培養として維持された。トランスフェクションの1日前に、細胞は、バイオリアクターチューブ中に0.5×10細胞/mLで播種された。150μL増殖培地中1×10細胞および5μg Mgat1 ZFN DNAまたはmRNAが各トランスフェクションのために使用された。トランスフェクションは、0.2cmキュベット中、140Vおよび950μFでのエレクトロポレーションによって行われた。エレクトロポレーションを行った細胞は、6ウェルプレート静置培養中の2mL増殖培地中に配置した。トランスフェクションの3日後および10日後に、細胞は培養から取り出され、ゲノムDNAはGeneElute(商標)Mammalian Genomic DNA Miniprep Kit(Sigma−Aldrich)を使用して単離された。COMPOZR(登録商標)ノックアウトZFN製品情報に記載されているようなCel−Iヌクレアーゼアッセイが、ZFN媒介遺伝子切断の効力を決定するために実行された。
図2Bは、ZFNトランスフェクトされた(ZFNプラスミドDNAまたはmRNAトランスフェクション)細胞プールにおけるCel−Iアッセイの結果を示すゲルを描写する。2つの切断フラグメント、220および197bpは、トランスフェクションの3日後と10日後の両方において、ゲノムDNA消化物中に存在し、両方の時点でのポジティブなZFN活性を示した。3日目と10日目のZFN活性は、それぞれ、8.8%および9.6%であった。両方の時点において、RNAでトランスフェクトされた細胞は、わずかにより強いバンドを有した。時間の経過に伴う安定なZFN活性は、Mgat1破壊に関連する見かけの細胞毒性または増殖阻害がないことを暗示する。換言すれば、ZFN修飾細胞を超えた野生型の増殖の利点は、ZFNトランスフェクト集団においては観察されなかった。
実施例2:単一細胞クローンのレクチン選択および単離
Mgat1 ZFNトランスフェクト細胞は、破壊されたMgat1を有する細胞について富化するために、ガラクトースを結合するがマンノースを結合しない細胞毒性レクチンであるトウゴマアグルチニン−I(RCA−I)で一晩処理された。トランスフェクションの14日後に、細胞のアリコートが、生存細胞について、FACSを使用して、単一細胞クローニングのためにプレートされた。細胞は、FACSAria(商標)IIIセルソーター(Becton−Dickinson)を使用して、96ウェル組織培養処理プレート(Corning)において、10%ウシ胎仔血清(FBS)および4mM L−グルタミンを補充したHam’s−F12栄養ミックス中で、ウェルあたり1細胞でプレートされた。残りの細胞は18日まで拡大され、次いで、T懸濁培養フラスコ(Coring)中で1×10細胞/mLで播種した。細胞は、増殖培地中、10μg/mL最終濃度のRCA−Iとともに一晩インキュベートされ、次いでPBSで洗浄され、増殖培地に戻された。細胞はTフラスコまで拡大し、10日間培養し、次いで、上記のように単一細胞クローニングのためにプレートされた、RCA−I処理の10日後、細胞はZFN活性についてアッセイされた。
図3は、RCA−1富化の前後のZFNトランスフェクト細胞プールにおけるCel−Iアッセイの結果を示すゲルを描写する。RCA−Iで選択された細胞は、約33〜36%のZFN活性を示し、これは非選択細胞についての3.8〜5.5%と比較され、Mgat1破壊細胞についての富化の成功を示した。
実施例3:分泌された組換え抗狂犬病ヒトIgGの糖プロフィール
比較的高スループットのSEC−MS(Waters Acquity UPLC(登録商標)/Q−Tof Premier(商標))ワークフローが糖分析のために使用された。このワークフローは、細胞培養上清からのIgGのプロテインA精製を利用し、続いて、インタクトなIgG重鎖構成要素の正確な質量分析を利用した。プロテインA精製は、96ウェルフィルタープレートを使用し、ウェルあたり50μlプロテインA樹脂および750μlクローン上清を用いて実施した。IgGは100μlの25mM クエン酸、pH3.0で溶出された。質量データ分析は、BiopharmaLynx(商標)ソフトウェア(Waters)を使用して、自動化様式で実施されるデコンボリューションおよびデータ処理により実施された。糖ペプチド型は、選択されたサンプルのトリプシン消化によって確認され、ならびに、MALDI−TOFにより糖ペプチドレベルで、グリカン同定および相対的分布(総グリカンの%として報告される)の検証により確認された。
分泌された組換え抗狂犬病ヒトIgGの糖プロフィールは、各細胞のプールについて評価された(ZFNトランスフェクトまたはモックトランスフェクト、RCA−I選択を伴うかまたは伴わない)。RCA−I富化プールは、RCA−Iに曝露しなかった細胞と比較して、Man5糖型のレベルの増加を示した(図4)。モックトランスフェクト細胞は、Mgat1 ZFNトランスフェクト細胞についての13.7%、およびRCA−I選択を介して富化されたZFNトランスフェクト細胞についての92.8%と比較して、0.3%Man5を実証した。G0FおよびG1F糖型は、モックトランスフェクト細胞およびRCA−Iに供されなかったZFNトランスフェクト細胞において最も豊富であった。
実施例4:Mgat1修飾単一細胞クローンの遺伝子型特徴付け
ゲノムDNAは、単一細胞クローンの培養から単離された(IgG産生または宿主GS(−/−)細胞株のいずれか)。Mgat1遺伝子の一部がPCRによって増幅され、PCR産物はTOPOシステム(Life Technologies,カールスバッド,カリフォルニア州)を使用してクローニングされた。サンプルはDNAシークエンシングのために調製された。最小限10TOPOクローンが遺伝子型特徴付けのためにシークエンシングされた。
RCA−I富化の存在下または非存在下でのMgat1修飾クローンの頻度を比較するために、RCA−Iを伴って、または伴わずに培養されたZFNトランスフェクト細胞は、上記のように、FACSによって単一細胞クローニングされた。非富化プールのために、76クローンのうちの2クローン(2.63%)がMgat1遺伝子における短い欠失を有した(図5および表1を参照のこと;クローン#73および#92)。QuickExtract(商標)DNA Extraction Solution(Epicentre)を使用して得られた細胞溶解物からのネスト化PCR産物の初期シークエンシングは、RCA−I富化集団からのすべてのクローン(52/52)が、破壊されたMgat1遺伝子配列を含有したことを示した。これらのクローンのシークエンシングは、2bp欠失から55bp欠失までのMgat1の欠失を明らかにした(図5および表1を参照のこと、クローン#21、#25、#27、および#37)。各クローンは、1つの破壊された対立遺伝子を含有し、野生型配列は検出されなかった。従って、これらの細胞の遺伝子型はMGAT−1(−/0)およびGS(−/−)である。
Figure 0006262665
以下のIgG産生Mgat1ノックアウトクローンがさらなる特徴付けのために選択された:RCA−I選択なしで単離された2クローン(クローン#73および#92);野生型配列を保持したZFNトランスフェクションプロセスを経由した2クローン(#15および#46);および一定の欠失の長さの範囲を伴う4つのRCA−I選択クローン(#21、#25、#27、および#37)。これらのノックアウトクローンのいずれもRCA−Iに対する感受性を示さず(図6)、IgG生産性または増殖の分布の有意な変化も観察されなかった。
実施例5:Mgat1ノックアウトIgG産生細胞クローンの特徴付け
分泌型組換え抗狂犬病ヒトIgGの糖プロフィールは、上記に言及された単一細胞クローンの各々について評価された(本質的に、実施例3において上記に詳述されるように)。図7A−Bは、5日目のバッチ培養における、野生型およびノックアウトクローンの糖プロフィールをそれぞれ提示し、図7C−Dは、8日目のバッチ培養における、野生型およびノックアウトクローンの糖プロフィールをそれぞれ示す。最も豊富なグリカン種は、Mgat1ノックアウトクローンにおいてMan5であったのに対して、野生型クローンは最高のG0Fピークを表示した。Man5%は、Mgat1 ノックアウトクローンにおいて有意に高かった(p<0.0001、対応のないt検定、Welch’s補正付き)。
Mgat1ノックアウトクローンの増殖および生産性を分析するために、細胞は、2連で、TPPバイオリアクターチューブ中の30mLの増殖培地中、0.3×10細胞/mlで播種した。細胞の密度および生存度は、ViCell Cell Viability Analyzer(Beckmann Coulter)を使用して決定された。図8A−Bに示されるように、Mgat1ノックアウト細胞クローンは、野生型Mgat1を有する細胞と比較して、時間の経過とともに、細胞の生存度および細胞密度によって測定されるような同じまたは改善された増殖を示した。
体積測定的なIgG生産性は、ForteBio OCTET(登録商標)分析装置(Pall Life Sciences)を使用する干渉分光法によって決定された。図9に示されるように、Mgat1ノックアウト細胞クローンは、野生型細胞と同じか、または改善されたピーク体積測定的生産性を示した。
実施例6:CHO宿主細胞株におけるMgat1ノックアウトクローンの単離
生物薬剤適用のために本方法をさらに評価するために、ZFNトランスフェクションおよびクローン単離が、CHO K1 GS(−/−)宿主細胞株を使用して反復された。GS(−/−)を有する宿主細胞株(CHOZN(登録商標)Sigma−Aldrich)は、本質的に実施例1において上記に記載されるように、Mgat1 ZFN mRNAを用いてトランスフェクトされた。Cel−1アッセイを使用するZFN活性の確認の際に、トランスフェクト細胞は、本質的に実施例2に記載されるように、0.5細胞/ウェルで限界希釈を使用して単一細胞クローニングされた。クローン性および増殖が、プレーティングの7日後と14日後にそれぞれ顕微鏡的に確認された。これらの細胞は、さらなる選択のために、RCA−Iで処理されなかった。
CHOZN(登録商標)GS(−/−)宿主細胞株から生成した90クローンのうちの5クローン(5.6%)がMgat1破壊を含有していた。RCA−I富化なしで生成した、これらのクローン中で同定された欠失は7〜28bpであった(表2を参照のこと)。IgG産生クローンを用いて観察されるように、これらの親のクローンは、1つのみの破壊された対立遺伝子を有し、野生型配列が同定された。レクチン細胞毒性アッセイはRCA−Iを使用して実施され、IgG産生クローンと同様に、いずれのMgat1ノックアウトクローンについても細胞毒性は観察されなかった。
Figure 0006262665
実施例7:Mgat1ノックアウト宿主細胞株の安定なIgG発現およびIgG糖プロファイリング
5つのMgat1ノックアウト宿主細胞株クローン(表2に列挙)は、ヒト抗狂犬病ヒトIgGコード配列および組換えハムスターGS発現カセットを含有する発現ベクターでトランスフェクトされた。トランスフェクションの48時間前に、細胞は5×10細胞/mLで播種された。トランスフェクションは、30μg プラスミドDNAを使用して、実施例1に記載されるように、エレクトロポレーションによって行われた。エレクトロポレーションした細胞は、5mL増殖培地中、25cm細胞培養フラスコの懸濁液に配置された。細胞は、トランスフェクションの48時間後にL−グルタミンが欠損した培地に移され、選択が完了し(12〜14日間)、安定にトランスフェクトされた培養が樹立されるまで、5% CO中、37℃で培養された。別個のトランスフェクションにおいて、細胞は、マイナスグルタミン選択のために200μL中で96ウェルプレートにおいて5000細胞/セルでプレートされ、選択の完了の際に、培養を「ミニプール」するために、24ウェル(1mL)、25cmフラスコ(5mL)、およびTPPチューブ(30mL)までスケールアップした。これらの安定な系統から、TPP培養が、以前に記載されたのと同様に設定され、培養は、化学的に定義された栄養とともに、4日目および7日目に2g/L グルコースを供給された。培養は8日目に収集され、上清は3400rpmの遠心分離によって清澄化され、続いて、Spectra/Pore 4メンブレン透析チューブ(MWCO 12kDa,Spectrum Labs,Rancho Dominguez,CA)を使用して、1×PBSに対して、4℃で24時間透析され、1ml HiTrap Protein A Fast Flowカラム(GE Healthcare)を使用して、AKTA FPLCシステム(GE healthcare,Pittsburgh,PA)上で精製された。IgGは0.1 M クエン酸 pH 3.0で溶出し、画分は、1/10体積1.0M Tris HCI pH9.0の添加によってすぐに中和された。糖プロファイリングは、本質的に実施例3に記載されるように実施された。
5つすべてのMgat1ノックアウト宿主細胞株において産生された抗狂犬病ヒトIgGは、極めて類似した糖プロフィールを実証し、Man5が優勢種であり、複合グリカンは検出されなかった。MS分析は、Mgat1ノックアウト細胞株における優性なグリカンピーク(すなわち、50168−50172)の、野生型細胞(すなわち、50400)と比較した分子量シフトを実証した。BC9およびBH1「ミニプール」において産生されたIgGは、それらの「バルク」選択された安定なプールに匹敵する糖プロフィールを実証した。

Claims (11)

  1. マンノシル(α−1,3−)−糖タンパク質β−1,2−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼI(Mgat1)およびグルタミン酸シンテターゼ(GS)が欠損している、遺伝的に改変された哺乳動物細胞株であって、Mgat1における欠損が、Mgat1をコードする染色体配列のコード領域における2bpから200bpの欠失、欠失に加えて任意の挿入を含み、その結果、Mgat1をコードする染色体配列が不活化されている、遺伝的に改変された哺乳動物細胞株。
  2. コード領域における欠失が
    (a)2bp〜55bpまでの範囲である、または
    (b)104bpの挿入によって置き換えられる157bpの欠失を含む、
    のいずれかである、請求項1に記載の哺乳動物細胞株。
  3. 染色体配列が標的エンドヌクレアーゼで不活化されている、請求項1または2に記載の哺乳動物細胞株。
  4. 標的エンドヌクレアーゼがジンクフィンガーヌクレアーゼである、請求項3に記載の哺乳動物細胞株。
  5. 細胞株がMgat1を産生しない、請求項1〜4のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞株。
  6. 細胞株がチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株である、請求項1〜のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞株。
  7. CHO細胞株がGS−/−細胞株である、請求項に記載の哺乳動物細胞株。
  8. 細胞株が1つ以上の末端マンノース残基を含む少なくとも1つの糖タンパク質を発現する、請求項1〜のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞株。
  9. 細胞株が、Mgat1が欠損していない細胞株の増殖速度に匹敵する増殖速度を有する、請求項1〜のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞株。
  10. 細胞株が、Mgat1が欠損していない細胞株のタンパク質のレベルに匹敵するタンパク質のレベルを産生する、請求項1〜のいずれか一項に記載の哺乳動物細胞株。
  11. 1つ以上の末端マンノース残基を有する組換えタンパク質を産生するための方法であって:
    a)組換えタンパク質をコードする核酸を請求項1に記載の細胞に導入すること;および
    b)組換えタンパク質を発現すること
    を含む、方法。
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