JP6262310B2 - 氷製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、水の過冷却状態を利用してシャーベット状の氷を安定して製造する方法に関するものである。
従来から、水を0℃以下の過冷却状態にした過冷却水を生成し、当該過冷却水に振動、衝撃を付与して過冷却状態を解除することで相変化させ、シャーベット状の氷を製造することが行なわれてきている(特許文献1)。
前記過冷却水を生成する場合、過冷却水を製造する熱交換器(過冷却器)としては、通常、低温ブラインと熱交換する熱交換器が使用されており、この種の熱交換器としては、シェルアンドチューブ式熱交換器、ガスケットタイプのプレート式熱交換器等が挙げられるが、スペース、効率の点から、プレート式熱交換器が用いられることがある。ガスケットタイプのプレート式熱交換器では、二流体(水とブライン)間の混合と外部への漏洩を防止するために、プレートの外周部と二流体間の仕切りにガスケットが使用されており、両端に位置するエンドプレートを締め付けることによってガスケットを潰し、所定のシール能を得ている。
特開2009−204162号公報
しかしながら、発明者が調べた結果、ガスケットタイプのプレート式熱交換器を用いた場合、プレート式熱交換器の外表面の仕上げ方法によってはプレート式熱交換器の内部流路で凍結が頻発し、製氷運転が不安定になることがあることがわかった。従来、過冷却現象を利用した密閉型の製氷機で起こる凍結の原因は、全て配管や機器内部に存在すると考えられていたが、発明者の研究によれば、配管の外表面からの影響で凍結が発生することが知見できた。この凍結は屋内よりも屋外設置型の熱交換器によく見られた。
すなわち、プレート式熱交換器は一般の熱交換器と同様に、水漏れがなければ外部と内部とは全く遮断されていると考えられ、そのため外表面の相変化が内部に侵入することはなく、格別それを防止するための特別な対策は講じられていないのが実情である。
ところが、配管や過冷却器の外表面が濡れていたり結露したりすると、外表面は霜あるいは氷で覆われ、このとき、外表面が氷で覆われた区間で凍結が発生する。発明者らが調べたところ、プレート式熱交換器(過冷却器)の凍結を引き起こす原因の1つに、機器や配管の外部での相変化、すなわち水から氷への変化が内部に伝播するという現象があることが分かった。
これは、機器や配管の内部が過冷却状態になる部位では、特に加熱等をしない限り外表面温度は0℃以下になるため、配管外表面が濡れていたり結露したりすると、外表面は霜あるいは氷で覆われることになる。このとき、外表面が氷で覆われた区間に機械的接合部があると、接合面に存在する水分(起動時にガスケットに保持されていた管内冷水や周囲雰囲気が結露して凝縮した水)が配管内部の過冷却水によって過冷却状態となり、さらに外表面で氷に接触することになるので、接合面に存在する過冷却水は過冷却状態が解除されるためである。このようにして配管外表面の相変化が内部に伝播し、内部に凍結が発生する。なお、接合面を介して相変化が伝播するかどうかは、水漏れの有無では判別できない。
ここで、屋外に設置された機器や管の接合部の内部流路で凍結することが多い現象について発明者は次のように考えている。屋外設置機器は断熱被覆のうえステンレス板等の外装材でラッキングされることが一般的であるが、この外装材は風雨を遮断するが外気の侵入は防げない。また外装材内部の断熱材は熱を遮断するが外気に同伴した水分の侵入は防げない。したがって前記凍結の原因は夏季に侵入した水分が管の外表面の氷点下の温度で凍結したものと推察できる。これに対し機械室等の屋内に設置された機器では、コストダウンのため断熱されないことも多く、屋内の空気温度が0℃を超えていて加熱側に働くことが多く、凍結に至ることが少ない。
本発明の目的は、このような機器や配管の外表面の相変化によって、配管や機器内部に凍結が発生するのを防止して、安定して氷を製造させることにある。
前記目的を達成するため、本発明は、過冷却水からシャーベット状の氷を製造する方法であって、前記過冷却水が流れる区間にある機械的接合部全体をカバーで覆い、その後前記機械的接合部とカバーの間に、前記過冷却水の温度よりも凝固点が低い液体もしくはスラリーからなる充填材を装填するか、またはスラリーからなる充填材を前記過冷却水が流れる区間にある機械的接合部に沿って覆い、その後これをカバーで覆い、前記カバー内に前記充填材を貯留した状態で、前記機械的接合部全体に前記充填材を接触させることで、前記機械的接合部またはその周辺の配管表面の相変化が内部に伝播することを防止するようにして、配管系統で過冷却水の過冷却状態を解除してシャーベット状の氷を製造することを特徴としている。
本発明においては、機械的接合部全体をカバーで覆った後前記機械的接合部とカバーの間に、前記過冷却水の過冷却状態を解除しない液体またはスラリーからなる充填材を装填してもよく、充填材を機械的接合部に沿って装填した後これをカバーで覆ってもよい。
以上の構成により、機械的接合部には過冷却水の過冷却解除を引き起こす氷核は生じない。すなわち前記過冷却水の温度よりも凝固点が低く過冷却状態を解除しない充填物が介在することにより、外部からの水分の侵入が遮断される。また密閉配管系統で解除するとは、たとえば蓄熱槽水面より上に過冷却器を設置し過冷却水を水面に向けて吐出して解除する、いわゆる開放型の解除方式と対置される、大気に開放していない空間内で解除することをいう。この方式では過冷却水が管や装置内部から離脱せず、機械室等の空気と接触しない為熱ロスが少ない。さらにまた過冷却水が流れる区間にある機械的接合部とは、溶接、接着剤を使用することなく、機械的要素などで配管同士や、フランジ、プレート、ガスケットが接合されている部分をいう。
既述したように、配管外表面の相変化が内部に伝播して内部が凍結する原因は、接合面に存在する水分が機器内部や配管内部の過冷却水によって過冷却状態となり、それが外表面で氷に接触することで、接合面に存在する過冷却状態となった水分の過冷却状態が解除されることであるから、本発明のように、機械的接合部、および必要に応じそこから続く外表面全体を、充填物で覆い気密に遮断することで、トラブルの原因となる水分はトラブルの生じ得る箇所に持ち込まれない。例えばカバー外配管表面の相変化が生じたり、カバーと充填物との間の隙間で水分が氷結したとしても、機器内部や配管内部に伝播することを防止することが可能である。すなわち、相変化が内部に伝播しようとしても、カバーや充填物がいわばバリアとなって機能し、その結果、当該伝播は防止され、接合面に水分が存在しても過冷却状態が解除されることはない。したがって、機械的接合部から配管内や機器内部に凍結が頻発することを防止できる。
本発明によれば、機械的接合部での凍結原因を排除し、仮に周辺の配管外表面等で相変化があっても、配管や機器内部に凍結が発生するのを防止して、製氷の安定性を向上させることができる。
実施の形態にかかる製氷安定方法が実施される氷蓄熱システムの概要を模式的に示した説明図である。 図1の氷蓄熱システムに使用した過冷却器の構成を模式的に示した説明図であり、左側の図は正面、右側の図は右側面を各々示している。 接続フランジ部の外表面全体を、充填材で覆った例を模式的に示した説明図である。 カバーの設置の仕方の例を示した説明図である。 凍結の有無を調べた実験の結果を示すグラフである。
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、実施の形態にかかる製氷安定方法が実施される氷蓄熱システムの全体の概要を示しており、氷蓄熱槽1から取水した水は、取水配管2を通じ、予熱装置3によって氷核を融解して、以降の流路内の氷核を完全に無くした後に、ポンプ4によって、過冷却器入口側接続部5を経由して、プレート式熱交換器で構成された過冷却器6に送られる。氷蓄熱槽1から取水されて過冷却器6に送られた水は、冷凍機7からポンプ8によって送られた低温のブラインと熱交換されることで、0℃以下の過冷却水となる。
過冷却器6によって生成された過冷却水は、過冷却器出口側接続部9から、配管10を通じて伝播防止装置11を経て、例えば密閉系の過冷却解除装置12によってスラリー状の氷水に変換され、再び氷蓄熱槽1に戻される。シャーベット状の氷は、氷蓄熱槽1内で水の比重差から分離、浮上し、氷蓄熱槽1内に蓄えられる。このようなサイクルを繰り返すことで、氷蓄熱槽1内の水が氷に変換されて、冷熱が蓄熱される。なおブライン流路13に、配管14を介して設けられているタンクは、ブライン膨張タンク15である。
過冷却器6は、図2に示すようなプレート式熱交換器が用いられている。この過冷却器6は、多数のプレート21を、ガスケット22を挟んで両端のエンドプレート23、24間に積層した構造を有し、プレート21、ガスケット22を貫通したシャフト25の端部をエンドプレート24の外側からナット26で締め付けることによって一体化されている。そして各プレート21を貫通する水流路27からの水と、各プレート21を貫通するブライン流路28からのブラインは、各プレート21とガスケット22とによって形成された空間内に交互に流れており、プレート21を介して両者が熱交換されるようになっている。なお図示の都合上、各プレート21とガスケット22との間の空隙は、誇張して描図している。なお、機械的接合は、上記のようなボルト、シャフト(あるいはナット等)による固定に限られない。すなわち本発明でいう機械的接合は、嵌め込みやねじ込み、かしめなど接合に供される母材同士に隙間を許容する接合をいい、接着剤で接合したり、溶接したりする固定方法を除くという意味である。少なくとも保守のために分離可能な接合法は本発明でいう機械的接合である。
次に、外部表面の相変化によって内部凍結が発生しやすい部位の一つである、過冷却器(熱交換器)6の出口側接続部9と伝播防止装置11との間の配管10における接続フランジ部16についての、本発明の適用例について説明する。
図3は、接続フランジ部16の断面を拡大して模式的に示しており、配管10を構成する管10a、10bの接続端部には、各々に対応してフランジ10c、10dが形成されている。これらフランジ10c、10dは、リング状のガスケット31を挟んで、固定部材、たとえばボルト、ナット等(図示せず)によって接続固定(機械的接合)されている。機械的接合は、そのようなボルト、ナットによる固定に限られない。なおガスケット31とフランジ10c、10dとの間は、実際には密着しているが、構造をわかりやすく説明する都合上、空隙を描図している。なお、機械的接合は、上記のようなボルト、シャフト(あるいはナット等)による固定に限られない。
そして図3に示した例では、接続フランジ部16の周囲を囲むようにしてカバー32を設けた例を示している。カバー32は、内部に貯留された充填材35が機械的接合部全体を完全に覆う(後述する、液体であれば浸漬、スラリーの固化体であれば全面に直接接しまたはシート等を介して全面を覆う)ことができるような大きさに形成されている。また、配管10はカバー32の側壁を貫通しており、当該貫通部分は不図示のシール材を貼り付けることにより閉止して、外部から水分が侵入することを防止している。またカバー32内に貯留した充填材35が貫通部分から漏出しないようにしている。なお、機械的接合部としての接続フランジ部16に替えてプレート式熱交換器の機器全体にこの態様を適用できることは勿論であるが、そうするとカバー32が大型になるため、配管貫通部と天面を開口した金属タンクに収容し天面を蓋で塞ぐこと等も提案できる。またカバーの外側に断熱材を被覆するか、内側に断熱層を形成していると、屋外等設置環境の温度が内部流体に影響することを抑止できる。
このカバー32に液体を充填材35として満たす態様について説明する。カバー32は液体を貯留する容器である。そしてカバー32に導入される液体は、過冷却水の温度よりも凝固点が低い液体、プレート式熱交換器を凍結防止対象とする場合には望ましくはそこに流入するブラインの温度よりも凝固点が低い液体である。具体的には、油やシリコンシーラントのように水分を含まない液体や、エチレングリコールを主成分とする不凍液などである。前二者は非揮発性で保守点検の労力が軽減する。それらにより機械的接合部は完全に浸漬される。こうして機械的接合部内の水分は、氷製造装置の通常の運転では相変化しない液体によって、流路内凍結のトリガーを排除し、カバーによって霜34等と接触することはない。したがって配管10外部の相変化が配管10内部に伝播することを防止することができる。なお、充填する液体によっては、機械的接合部に含まれる水分が残存していた場合、これが充填液より比重が重い場合等、残存水分が氷核となる可能性もある。この対策として液の充填前に水分を除去することを提案できる。例えば、次の方法である。
すなわち、氷製造装置が既設の場合には、一旦過冷却水の流通を停止するか、0℃以上となった水を配管内に循環させる。そして接合面等を、たとえば薄板状の吸水材などで拭く。新設の場合には、接合前にフランジ10c、10dやガスケット31をファン等によって十分乾燥させて、表面の水分を除去しておく。その後に充填液を注入する。
次に充填液の注入は、例えば次の要領で行う。カバー32の外周に開口32aを形成する。その後に前記液体を注入し、その後に開口32aを封止する。特に水分を含まず揮発しない液体を充填する場合には、このような手順でも容易に実施できる。なお、この開口32aを通じて注気することで前記した処方によらずともカバー内の機械的接合部やその周辺の水分を除去できる。
カバー32の設置の仕方は次のように例示できる。図4に示したように、FRP板あるいは断熱層を形成した金属板にナット穴をあけたもの、図4の例では、カバー板体32bを辺ごとに用意したうえ、嵌め合わせしシールし、あるいはかしめや溶接などで水密・気密に形成する。このカバー板体32bの配管10の貫通が予定される部位には図4のように開口32cを形成しておく。そして配管10に開口寸法より径の大きい鍔10eを溶接しておく。そして、カバー板体32bを配管10側に寄せて不図示のガスケットを介して突き合わせる。最後にボルト36、ナット37により締結しシールする。こうして液漏れを防ぎ水密に仕上げることができる。
プレート式熱交換器を内部に収容する場合は次の方法も提案できる。天面を残し、前記カバー板体32bを缶体(筐体)のように加工しておき、その内部にプレート式熱交換器自体を据え付ける。配管貫通部は前記のように処理し、次いで天面を缶体の上面開口を塞ぐべく上端辺と接合する。この場合、天面のカバー板体32bに液の注入口と弁付きの注入管を設けておけば、後日液位が低下した時等に新たに液を補充できる。
またプレート式熱交換器は液の中に没していれば外から埃等が侵入せず保守の必要性が少なくなるが、多年を経ての状態確認やシステム全体に異常が見られたときの点検等のため、カバーには弁付きの液抜き管を底部近傍に設けておくとよい。
一方、充填材が揮発性の液体の場合、蓋の気密性の程度にもよるが、液面計を備えておくことも提案できる。
外部からカバー内に水分が侵入すると、この水分が凝固した状態となって充填材内を移動して接合面の過冷却水と接し、過冷却水の過冷却状態を解除することも可能性としてはある。そこで充填液はカバー内に満液状態としてカバーを気密に保つことも提案できる。
次に、カバー32に収容する充填物35が固体である形態について説明する。カバー天面が蓋で閉じられその蓋に注入口(開口)を設けたもの、カバー天面自体を開放しているもの、いずれも使用できる。それらの開口から、発泡材等のスラリーを供給し機械的接合部、例えばガスケットを介したプレート間の多数列を覆う。あるいはカバー32の側方を開放しておくとプレート式熱交換器の側方が自由空間となりそこから発泡材等を充填してもよい。発泡材等を充填したら、乾燥・固化を待ちカバー32を気密に閉止する。それに先立ち、機械的接合部の保守の対策を施すことが便宜である。すなわち機械的接合部に固化物を直接接するよう充填すると、分解清掃等の前に固化物除去作業が生じこのときプレート等の構成部材を損傷する。また崩れた固化物が残り再組立、接合の際に内部混入を防止する作業が生じる。このための対策について以下説明する。
まず、液不透過性で変形可能なシートまたはフィルムを用意する。そのシート等は1枚であってもよく複数枚を隙間なく接合したものでもよい。ただし後述する剥がし作業の際に保護される機械的接合部よりも面積が広いことが便宜である。そしてこれを機械的接合部に沿って這わせ、空気圧等により圧接し、端部を保護される機械的接合部の外で止める。そののちシート等に向けてスラリーを供給する。こうして機械的接合部はシート等を介して充填材で保護される。スラリーとしては発泡材のほか粘土や樹脂材であってもよい。シート等は、固化前に水分が機械的接合部に浸透しないよう液不透過性である必要があり、また機械的接合部に圧接等して隙間の生成を防ぐべく変形可能なものを採用する必要がある。また望ましくは剥がす際に破損しない強度を持ったものを採用することが便宜である。
また機械的接合部をスラリーで覆う作業は必ずしもカバー内で行わなくともよく、例えば固化後に吸気管付きのカバーを取り付け、吸気管から真空ポンプで排気した後気密に密閉したり、不活性ガスでカバー内を満たし気密を維持する等して、カバー内に水分が存在しないようにすればよい。すなわち固化体がカバー内を満たすようであるとカバーそのものの気密は求められないが、カバーと固化体との間に空間があると、当該空間への水分侵入による不意のトラブルを排除するため、気密に構成していることが望ましい。
また充填物の充填前(またはシート等のセット前)には機械的接合部から水分を除去した方がよく、その除去方法については液体を充填する態様で説明した処方と変わりない。
参考までに、図1に示した氷蓄熱システムにおいて使用した配管系のうち、接続フランジ部16において、凍結の発生有無を調べた実験について説明する。
本実験は、図5に示したように、まず2時間以上の連続運転を行い、安定運転を確認(装置の健全性を確認)した後、過冷却器6〜伝播防止器11の接続フランジ部16外周部に氷を接触させたまま保持し、凍結の有無を確認する。ついで接続フランジ部16外周部の水分を拭き取り、フランジ外表面を乾燥剤と共に気密にした状態で凍結の有無を確認した。
図のグラフ中、水入口温度は、過冷却器6に導入される水の温度、過冷却水温度は、過冷却器6を出て配管10内を流れる過冷却水の温度、Br入口温度は、過冷却器6に導入される冷凍ブラインの温度、Br出口温度は、熱交換後に過冷却器6を出る冷凍ブラインの温度を意味し、各々グラフの左側の目盛は温度を表示している。またBr流量は、過冷却器6を流れる冷凍ブラインの流量、水流量は、過冷却器6に導入される水の流量である。
なお図中の下向き矢印は凍結が見られた時期を示す。この凍結の検知は、出願人の発明である特許第4451073号により行った。
この結果によれば、図5のグラフに示したように、接続フランジ部16外周部に氷を接触させたまま運転を続けると、接続フランジ部16外周部に氷を接触させた直後から連続凍結(数十分間隔の周期的凍結)が起こった。しかしながら、接続フランジ部16外周部の水分を拭取り、フランジ外表面を乾燥剤と共に気密すると連続凍結が止まり、正常な製氷状態に復帰した。なおこのとき、気密にした接続フランジ部16外表面以外の配管10の表面では着霜が起こっていた。
以上の結果から、過冷却水が流れる配管に機械的接続部があると、その種類(フランジ接続、ねじ込み、プレート圧着部)に関係なく、配管外部に氷を接触させることで凍結を再現できることを確認するとともに、機械的接続部が無い直管部で氷を接触させてもこのような凍結は起こらないことを確認した。以上のことから、本実験での凍結原因は、配管外表面に与える熱的なショックが熱伝導によって配管内部に伝わることではなく、機械的接合面に沿って相変化が内部に伝播することが凍結原因であると結論付けることができる。
そして前記実験では、フランジ外表面を乾燥剤と共に気密に封止したものであったが、本発明のように、機械的接合部から続く外表面全体を、過冷却水の温度よりも凝固点が低い液に浸漬させたりスラリーの固化体で覆っても、そのような配管表面の相変化が配管内部に伝播することを防止することができることが十分に推認できる。
なお以上は、接続フランジ部16の外表面に本発明を実施した例について説明したが、過冷却器6として用いた、プレート式熱交換器におけるプレートとガスケットの接合部分、すなわち機械的接合部分の外表面についても適用できるものである。
前記した氷製造装置では、充填材として前記過冷却水の温度よりも凝固点が低い液体を採用し、前記カバーには注入口が備えられていてもよい。なおここで採用する液体としては、たとえば油やシリコンシーラント、エチレングリコール等の不凍液などを例示できる。このように構成すれば、機械的接合部は液で覆われて過冷却水と接してもその液は過冷却水の温度よりも凝固点が低いため、氷結等の凝固をせず過冷却水に過冷却解除物質(トリガー)を付与しない。また注入口をカバーに設けるため作業が容易であり、揮発性の液体を用いて長期のうちに液位が低下しても、液の補充ができ保守に役立つ。
またそのような氷製造装置は、前記充填材としてスラリーが固化した固体を採用し、前記機械的接合部と前記充填材の間には液不透過性で変形可能なシートまたはフィルムが介在してもよい。スラリーとしては発泡材や粘土を例示できる。機械的接合部は分解等の保守をすることがある。ここに直接スラリーを供給して固化させると分解のたび固化物を剥すことになるが、埃が生じ内部流体に混入したり、剥がし方によっては接合部材を損傷することになる。そこで、シートやフィルムを介在させておくと、分解等の保守時にはシートやフィルムを剥すことで固化物の飛散を排除し、またはシート等の外側で固化物を崩し、機械的接合部の外表面に付着することを避けることができる。
本発明は、過冷却水の過冷却状態を、配管系統で解除してシャーベット状の氷を製造する際に有用である。
1 氷蓄熱槽
2 取水配管
3 予熱装置
4、8 ポンプ
5 過冷却器入口側接続部
6 過冷却器
7 冷凍機
9 過冷却器出口側接続部
10 配管
10a、10b 管
10c、10d フランジ
11 伝播防止装置
12 過冷却解除装置
13 ブライン流路
16 接続フランジ部
31 ガスケット
32 カバー
34 霜
35 充填材

Claims (1)

  1. 過冷却水からシャーベット状の氷を製造する方法であって、
    前記過冷却水が流れる区間にある機械的接合部全体をカバーで覆い、
    その後前記機械的接合部とカバーの間に、前記過冷却水の温度よりも凝固点が低い液体もしくはスラリーからなる充填材を装填するか、
    またはスラリーからなる充填材を前記過冷却水が流れる区間にある機械的接合部に沿って覆い、その後これをカバーで覆い、
    前記カバー内に前記充填材を貯留した状態で、前記機械的接合部全体に前記充填材を接触させることで、前記機械的接合部またはその周辺の配管表面の相変化が内部に伝播することを防止するようにして、
    配管系統で過冷却水の過冷却状態を解除してシャーベット状の氷を製造することを特徴とする、氷製造方法。
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