JP6261075B2 - 磁気力顕微鏡用探針の製造方法 - Google Patents

磁気力顕微鏡用探針の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、磁気力顕微鏡用探針の製造方法に関するものである。
磁気情報に対応した磁化パターン等を測定するものとして、磁気力顕微鏡(MFM)が用いられている。磁気力顕微鏡は、磁性探針を備えており、その磁性探針の先端を被測定媒体である磁性体試料に近づけ、磁性探針の磁気モーメントと磁性体試料の磁気モーメントとの間に働く磁気的作用を直接検出することにより、磁化パターン等の測定が行われる。
この磁気力顕微鏡の磁性探針としては、特許文献1に示されるように、非磁性材料Siからなる探針素材上に、順に、SiO2層、磁性薄膜層(鉄(Fe)−白金(Pt)規則合金層)が形成されたものが提案されており、その磁性探針の製造においては、Siからなる探針素材上に、順に、酸化珪素(SiO2)層、磁性薄膜層を形成し、その後、その磁性薄膜層を規則合金膜に規則変態させるべく(Al型不規則相のFePt合金膜をL10型FePt規則合金膜に規則変態させる)、熱処理を行う工程が必要である。このため、この磁性探針においては、製造段階において、磁性薄膜層の形成に先立ち、探針素材上にSiO2層が形成されることから、熱処理を行っても、Siからなる探針素材と磁性薄膜層とが反応、合金化して磁性薄膜層の磁気特性が劣化することを防止でき、その磁性薄膜層に基づき大きな保磁力と大きな飽和磁束密度とを得て探針先端の磁極密度を高めることができる。この結果、空間分解能を向上させることができる。
特開2008−209276号公報
ところで、最近では、磁気力顕微鏡の測定対象となる磁気記録ヘッドや永久磁石等において極めて強い磁場を発生させるものが多くなっている。このため、探針として保磁力を小さいものを用いると、得られた画像にゆがみが生じたり、空間分解能が低下する等の問題が生じることになり、磁気力顕微鏡用探針の保磁力を十分に大きくすることが望まれている。
しかしながら、従来の磁気力顕微鏡用探針の長手方向での保磁力は、最大で14〜15kOe程度であり、それ以上大きな保磁力を得ることが困難であった。
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、保磁力を十分に高めることのできるようにした磁気力顕微鏡用探針の製造方法を提供することにある。
記目的を達成するため、本発明における製造方法にあっては、次のような解決原理を採択してある。すなわち、第1の手法として、探針に形成される磁性薄膜層を、非磁性物質を含むものとして形成することにより、磁性結晶粒子が非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在させるようにしてある。つまり、大きなひとかたまりとしての磁石ではなく、孤立した磁性結晶粒子による微細な多数の磁石の集合体として形成するようにしてある。第2の手法として、上記不純物を含む磁性薄膜層を、低速昇温加熱によってゆっくりと所定温度にまで上昇させて、磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化されやすいようにしてある(磁性結晶粒子の結晶方向がランダムとなるように維持しつつ規則変態化を促進して、探針の磁化が探針の長手方向にほぼ沿う方向となる膜面内方向へ磁化されやすくする)。第3の手法として、非磁性物質を含む磁性薄膜層を形成する際に、プラズマ照射によってエネルギ付与して、薄膜を構成する原子の規則構造化を促進させるようにしてある(L10規則化の促進)。上記第1〜第3の手法は、任意の1つあるいは任意の複数の組み合わせを適宜選択することができる。任意の2つの手法を組み合わせることによる相乗効果によって保磁力をより高めることができ、特に3つの手法全てを用いることによる相乗効果によって極めて高い保磁力を得ることができる。
具体的には、本発明における磁気力顕微鏡用探針の製造方法にあっては、次のような第1の解決手法を採択してある。すなわち、請求項1に記載のように、
珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
前記拡散防止層上に、非磁性物質を含む磁性薄膜層を形成するステップと、
前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
を備え、
前記磁性薄膜層が、薄膜を構成する原子の規則構造化が促進されるようにプラズマ照射されつつ形成される、
ようにしてある。上記解決手法によれば、磁性結晶粒子が非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在されることとなって、ひとかたまりの大きな磁石に比して大きな保磁力を得やすい微細な多数の磁石の集合体として形成することができ、この結果大きな保磁力を得ることが可能となる。また、プラズマ照射によるエネルギ付与によって、成膜中の原子にイオン衝撃によるマイグレーションを起こして、薄膜を構成する原子の規則構造化(L10規則化)を促進させることができ、保磁力(特に要求される探針の長手方向の保磁力)を一層高めることが可能となる。
上記第1の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項2に記載のとおりである。すなわち、
前記熱処理が、前記磁性薄膜層を磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように低速昇温で所定温度にまで加熱した後、前記所定温度でもって所定時間保持することにより行われ、
前記低速昇温が、0.01℃/秒〜3℃/秒とされている、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、膜面垂直方向よりも、探針の磁化が探針の長手方向にほぼ沿う方向となる膜面内方向へ磁化されやすくなって、保磁力(特に要求される探針の長手方向の保磁力)を一層大きくすることが可能となる(20kOe以上という極めて大きい保磁力を得ることも可能となる)。
本発明における磁気力顕微鏡用探針の製造方法にあっては、次のような第2の解決手法を採択してある。すなわち、請求項3に記載のように、
珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
前記拡散防止層上に、非磁性物質を含む磁性薄膜層を形成するステップと、
前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
を備え、
前記熱処理が、前記磁性薄膜層を磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように低速昇温で所定温度にまで加熱した後、前記所定温度でもって所定時間保持することにより行われ、
前記低速昇温が、0.1℃/秒〜1.0℃/秒とされ、
前記所定温度が750±20℃とされ、
前記所定時間が60分〜300分とされている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、膜面垂直方向よりも、探針の磁化が探針の長手方向にほぼ沿う方向となる膜面内方向へ磁化されやすくなって、保磁力(特に要求される探針の長手方向の保磁力)を一層大きくすることが可能となる。
本発明における磁気力顕微鏡用探針の製造方法にあっては、次のような第3の解決手法を採択してある。すなわち、請求項4に記載のように、
珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
前記拡散防止層上に、磁性薄膜層を形成するステップと、
前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
を備え、
前記磁性薄膜層が、薄膜を構成する原子の規則構造化が促進されるようにプラズマ照射されつつ形成される、
ようにしてある。上記解決手法によれば、請求項1に対応した効果と同様の効果を得ることができる。
上記第3の解決手法を前提とした好ましい態様は、特許請求の範囲における請求項5に記載のとおりである。すなわち、
前記熱処理が、前記磁性薄膜層を磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように低速昇温で所定温度にまで加熱した後、前記所定温度でもって所定時間保持することにより行われ、
前記低速昇温が、0.01℃/秒〜3℃/秒とされている、
ようにしてある。上記解決手法によれば、請求項2に対応した効果を同様の効果を得ることができる。
本発明における磁気力顕微鏡用探針の製造方法にあっては、次のような第4の解決手法を採択してある。すなわち、請求項6に記載のように、
珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
前記拡散防止層上に、磁性薄膜層を形成するステップと、
前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
を備え、
前記低速昇温が、0.1℃/秒〜1.0℃/秒とされ、
前記所定温度が750±20℃とされ、
前記所定時間が60分〜300分とされている、
ようにしてある.上記解決手法によれば、請求項3に対応した効果と同様の効果を得ることができる。
請求項1〜請求項3を前提として、次のような好ましい態様を採択することができる。すなわち、請求項7に記載のように、
前記磁性薄膜層の材質が、Fe−Pt、Co−Pt、Fe−Pd、Co−Cr−Ptから選択される1種以上とされ、
前記非磁性物質の材質が、Si酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、Mg酸化物、Ce酸化物、Y酸化物、Ni酸化物、Al酸化物、Ru酸化物、カーボンから選択される1種以上とされている、
ようにしてある。この場合、磁性薄膜層および非磁性物質の具体的なものが提供される。
請求項4〜請求項6を前提として、次のような好ましい態様を採択することができる。すなわち、請求項8に記載のように、
前記磁性薄膜層の材質が、Fe−Pt、Co−Pt、Fe−Pd、Co−Cr−Ptから選択される1種以上とされている、ようにしてある。この場合、磁性薄膜層の具体的なものが提供される。
本発明によれば、保磁力が十分に大きくされた探針を提供することができ、磁気力顕微鏡を用いて得られた画像の鮮明化や空間分解能の向上を図ることができる。
本発明による探針の一例を示す側面断面図。 図1の探針をその先端側から見た図。 探針の製造工程を示す図。 非磁性物質を含む磁性薄膜層の成膜とプラズマ照射とを行う装置例を簡略的に示す図。 実験データを示す図。 実験データを示す図。
図1において、1は、磁気力顕微鏡用の探針である。探針1は、例えば珪素(Si)からなるカンチレバー2の先端部に、その延び方向に直交するように突設されている。探針1の形状は、先端に向うに従って尖るように設定されており、実施形態では3角錐形状として形成されている。なお、探針の形状は、4角錐等の他の角錐形状であってもよく、また円錐形状であってもよい。
探針1は、図3に示す工程に従って製造される。この製造工程に用いる装置のうち、拡散防止層21と非磁性物質を含む磁性薄膜層31とを形成する装置例について、図4を参照しつつ説明しておくこととする。図4中、41は、密閉されたチャンバである(マグネトロンスパッタ装置用のチャンバ)。このチャンバ41内に、探針素材10を保持する回転保持台42が装備されている。また、チャンバ41内には、Fe−Pt合金ターゲット43とMgOターゲット44とが配設される。そして、チャンバ41には、探針素材10に対してスパッタリングおよびプラズマ照射できるように、真空引きされた状態でアルゴンガスが供給されるようになっている。各ターゲット43、44と探針素材10との間隔は約120mmとされている。
Fe−Pt合金ターゲット43は、スパッタリング用のDC電源に接続されている。MgOターゲット44は、スパッタリング用の高周波(例えばRF)電源に接続されている。さらに、回転保持台42(つまり探針素材10)には、プラズマ照射用の高周波(例えばVHF)電源が接続されている。
MgOターゲット44用の高周波電源の周波数は、例えば13.56MHzとされ、探針素材10用の高周波電源の周波数は、例えば40.68MHzとされている。スパッタリング用に高速のアルゴンイオンが各ターゲット43、44に向かうように、各ターゲット42、44への印加電力は大きいものとされている(例えば100W)。これに対して、プラズマ照射用に低速のアルゴンイオンが探針素材10に向かうように、探針素材10への印加電力は小さいものとされている(例えば15〜20W)。
上述のように、各ターゲット43、44への印加電力が大きくされる一方、探針素材10への印加電力が小さいものとされる。また、MgOターゲット44用の周波数と探針素材10用の周波数とが大きく相違されている。そして、各ターゲット43、44と探針素材10との距離もさほど短くないものとされている。これにより、各ターゲット43、44の表面と探針素材10の表面とに全く別のプラズマが発生されて、各ターゲット43、44においては高速アルゴンイオンの衝突によるスパッタリング現象が発生される一方、探針素材10においては低速アルゴンイオンの衝突によるプラズマ照射が行われることになる。
以上のことを前提として、まずステップS1において、Siからなる探針素材10が用意される。この探針素材10は、本実施形態においては、予めカンチレバー2の先端部に取付けられており、以後、探針素材10及びカンチレバー2は、後の工程において、一体的に扱われる。このSiからなる探針素材10は、具体的には、Si単結晶ウェハーから異方性エッチングにより製造されるが、材料としては、Siを用いるだけでなく、導電性を確保するため、Si中に不純物が含まれるもの(不純物半導体)を用いてもよい。そして、図4に示す回転保持台41に、探針素材10(とカンチレバー2との一体化物)が保持される。回転保持台42は、後述する成膜中は例えば10rpmの速度で回転される。
次に、ステップS2において、ターゲットとしてMgOターゲット44のみが選択されて(Fe−Ptターゲット43への印加電力なし)、前記探針素材10に対して、室温下でもってスパッタリング(実施形態ではArを使用)が行われる。これにより、MgO層からなる拡散防止層21が形成される。拡散防止層21は、例えば5nmの厚さに形成される。なお、ステップS2は、探針素材10に対するプラズマ照射用の電力が印加されない状態で行われる。
ステップS3では、室温下でもって、拡散防止層21(MgO層)の上に、非磁性材からなる不純物を含む磁性薄膜層31が形成される。すなわち、ターゲットとして、Fe−Ptターゲット43とMgOターゲット44との両方を用いて、2元同時にスパッタリング成膜する。この成膜の際に、非磁性物質となるMgOがFe−Ptに固溶することなく、Fe−Ptの磁性結晶粒子がMgOの非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在されることとなる。つまり、後の着磁が行われたときに、大きな保磁力を得やすい微細な多数の磁石の集合体として形成されるための構造が形成される(グラニュラー構造化あるいはその類似構造化)。非磁性物質を含む磁性薄膜層31は、例えば20nmの厚さに形成される(この厚さの成膜に要する時間は2〜3分)。なお、MgOのスパッタリング(成膜)とFe−Ptのスパッタリング(成膜)とを交互に行って、最終的に非磁性物質を含む磁性薄膜層31を形成するようにしてもよい。ただし、Fe−Ptの磁性結晶粒子がMgOの非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在される状態を確実に形成する上では、同時成膜が好ましいものである。
上記MgOからなる不純物を含む磁性薄膜層31の成膜中に、探針素材10に対してプラズマ照射用の電力が印加されて、低速アルゴンイオンの衝突によるプラズマ照射が行われる。このプラズマ照射によるエネルギ付与によって、成膜中の原子にイオン衝撃によるマイグレーションを起こして、薄膜を構成する原子の規則構造化(L10規則化)を促進させることができ、着磁が行われた後の保磁力を一層高めることが可能となる。なお、プラズマ照射を低電力(低エネルギ)で行うのは、薄膜を破壊しないようにするためである。
ステップS4では、探針素材10とカンチレバー2との一体化物がチャンバ41から取り出されて、既知の加熱装置により熱処理が行われる。この熱処理は、低速でゆっくりと所定温度(例えば750℃)まで上昇させ、所定温度に達した後は、当該所定温度でもって所定時間(例えば120分)保持される。低速でのゆっくりとした温度上昇は、磁性薄膜の膜面垂直方向よりも探針1の長手方向にほぼ沿う方向となる、磁性薄膜の膜面内方向へ磁化されやすくするための処理である(結晶方向がランダムな配向状態を維持しつつ規則変態化を促進)。昇温速度は、0.1℃/秒〜1.0℃/秒とすることができるが、0.01℃/秒〜3℃/秒の範囲で適宜設定できる。この昇温速度は、あくまで一例であり、昇温速度を遅く(低速に)するほど、着磁後の保磁力を大きくする上で好ましいが、あまり遅くしても保磁力増大に限度があることと、生産性低下を生じるため、最低の昇温速度としては0.01℃/秒〜0.1℃/秒以上とするのが好ましい。また最高の昇温速度としては、確実に磁性薄膜の膜面内方向へ磁化されやすくするために、3.0℃/秒以下、好ましくは1.0℃/秒以下とするのが好ましい。
ステップS5では、探針1がその長手方向に着磁される。この着磁は、既知の適宜の手法によりなし得るが、探針1の保磁力(特に長手方向保磁力)が20kOe以上となることをも見越して、十分に大きな磁場でもって着磁を行うことになる。前述のような工程を経た後の探針1は、次のようになっている。すなわち、
珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層が形成されており、
前記拡散防止層上に、非磁性物質を含む磁性薄膜層が形成されており、
前記磁性薄膜層が、磁性結晶粒子が非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在するようにされており、
前記磁性結晶粒子が、膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように規則変態および配向制御されていて、
着磁後は極めて大きな保磁力を有するものとなっている。
図5、図6は、本発明を適用した実験例の結果を示すものである。H列に示す「Hc面内」が、要求される磁性薄膜の膜面内方向の保磁力を示すものである。また、I列に示す「Hc垂直」が、磁性薄膜の膜面垂直方向の保磁力である。そして、本発明では、H列に示す「Hc面内」の保磁力を大きくすることが重要となる。この図5、図6に示す実験結果において、拡散防止層21の厚さは全て5nmであり、非磁性物質を含む磁性薄膜層31の厚さは全て20nmである。また、図中、C列の「MgO」は、磁性薄膜層31に非磁性物質として含まれる割合(体積割合)であり、D列の「VHF」は、磁性薄膜層31の成膜中におけるプラズマ照射のエネルギの大きさW(ワット)である。
H列−5行に示す「Hc面内」の数値「14.4」が、従来の探針の保磁力に相当する。すなわち、H列−5行の実験例は、磁性薄膜の膜面内方向よりも膜面垂直方向に磁化されやすくなる急速加熱であり(25℃/秒)、磁性薄膜層が非磁性物質を含まないものであり(磁性結晶の孤立化なし)、磁性薄膜層の形成中にプラズマ照射によるエネルギ付与を行わないものとなっている。
H列の数値に着目して、5行〜16行における非磁性物質添加量の依存性について考察する。急速昇温加熱、低速昇温加熱、プラズマ照射有りのいずれの場合も、不純物の割合が多くなるほど、H例の数値が増大される。非磁性物質を添加して、磁性結晶粒子の孤立化を行うことが、保磁力増大の上で効果的であることが示される。保磁力の増大度合いは、低速昇温加熱を行うことがより効果的であり、これに加えて成膜中でのプラズマ照射によるエネルギ付与を行うことによりさらに効果的である、ということが理解される。ちなみに、H例−16行の「22.3」という数値は、従来からは想定できないほど飛躍的な保磁力増大結果となっている。なお、非磁性物質の含有割合(体積割合)は、50%未満の範囲で多いほど好ましいが、少なくとも10%以上あれば十分であり、好ましくは35%±10%の範囲で選択するのが好ましい。
18行〜26行に示す昇温速度の依存性については、昇温速度が遅いほどH列の数値が増大するということが理解される。昇温速度は遅いほど好ましいものの、生産性を考慮して、0.01℃/秒以上、好ましくは0.03℃/秒以上、より好ましくは0.1℃/秒以上とするのがよい。なお、昇温速度の上限値は、3.0℃/秒以下であればよく、好ましくは1.0℃/秒以下とするのがよい。このような低速での昇温は、磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化されやすくするためである。
ここで、低速昇温加熱の場合は、規則構造化する一方で結晶配向は変化しないものとなる(ランダムなまま)。これにより、磁性膜は面内磁化膜になる。これに対して、急速昇温加熱の場合は、規則構造化する一方で結晶配向が変化してしまうので(磁性薄膜の垂直方向に変化)、大きな磁気異方性を垂直方向にもつために、垂直磁化膜になってしまうことになる。
27行〜38行に示す所定時間保持される所定温度は、750℃に向けての温度が高くなるにつれてH列の数値が増大されるが、800℃になるとH列の数値が低下する。これは、用いた磁性薄膜層31を構成する材質によって相違するが、Fe−Ptを用いたときは、750度前後でJ列の数値がピーク値になることから、例えば750±20℃の範囲に設定するのが好ましい。
39行〜47行に示す上記所定温度に保持しておく時間については、長いほどH列の数値が増大される、ということが理解される。生産性を考慮して、60分〜分300分の範囲で適宜選択するのが好ましいものとなる。
49行〜63行に示すプラズマ照射する際の電力(付与エネルギ)依存性については、ある電力値までの増大においてH列の数値が増大されるものの、それ以上の電力値ではH列の数値が減少する(プラズマ照射を高電力(高エネルギ)で行うと、薄膜を破壊してしまう)ことから、最適電力値を選択するのが好ましい。なお、H列−16行と、H列−63行の実験条件は同じである。
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能であり、例えば次のような場合をも含むものである。拡散防止層21を構成する材質としては、従来用いられている適宜のものを選択でき、例えば探針素材10を構成するSiを例えばプラズマ酸化処理してSiOとして構成する等のこともできる。非磁性物質を含む磁性薄膜層31の形成に際しては、ターゲットとしてFeとPtとMgOとの3つ設けて、3元同時成膜を行うようにしてもよい。ステップSS4での熱処理を、非磁性物質を含む磁性薄膜層31の形成途中から行うようにしてもよい(非磁性物質を含む磁性薄膜層31の成膜中に低速昇温加熱を開始させる)。
磁性薄膜層31を構成する磁性材としては、適宜のものを選択でき、例えばFe−Pt、Co−Pt、Fe−Pd、Co−Cr−Ptの少なくとも1種を用いることができる。また、非磁性物質としては、Mg酸化物、Si酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、Mg酸化物、Ce酸化物、Y酸化物、Ni酸化物、Al酸化物、Ru酸化物、カーボンの少なくとも1種を用いることができる。なお、MgOを用いた場合は、Mgの高い酸素親和性とMg−Fe、Mg−Ptの非固溶性の上で好ましいものとなる。また、カーボン(C)を用いた場合は、金属と相分離しやすいこと、MgOより成膜速度が速いという点で好ましいものとなる。
前述した第1の手法(探針に形成される磁性薄膜層を、非磁性物質を含むものとして形成することにより、磁性結晶粒子が非磁性粒界領域中に分散して孤立した状態で存在させること)、第2の手法(磁性薄膜層を、成膜中からあるいは成膜後に低速昇温加熱によってゆっくりと所定温度にまで上昇させて、磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化されやすいようにすること)、第3の手法(磁性薄膜層を形成する際に、プラズマ照射によってエネルギ付与して、薄膜を構成する原子の規則構造化を促進させること)の3つの手法のうち、任意の1つあるいは任意の複数の組み合わせを採択することもできる。この場合、特に、3つの手法を全て採択することが、最終的に、20kOeを超える大きな保磁力を得ることも可能となる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
磁気力顕微鏡により得られる画像の鮮明化や空間分解能向上を図ることができる。
1:探針
2:カンチレバー
10:探針素材
21:拡散防止層
31:磁性薄膜層
41:チャンバ
42:回転保持台
43:Fe−Ptターゲット
44:MgOターゲット

Claims (8)

  1. 珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
    前記拡散防止層上に、非磁性物質を含む磁性薄膜層を形成するステップと、
    前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
    を備え、
    前記磁性薄膜層が、薄膜を構成する原子の規則構造化が促進されるようにプラズマ照射されつつ形成される、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記熱処理が、前記磁性薄膜層を磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように低速昇温で所定温度にまで加熱した後、前記所定温度でもって所定時間保持することにより行われ、
    前記低速昇温が、0.01℃/秒〜3℃/秒とされている、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  3. 珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
    前記拡散防止層上に、非磁性物質を含む磁性薄膜層を形成するステップと、
    前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
    を備え、
    前記熱処理が、前記磁性薄膜層を磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように低速昇温で所定温度にまで加熱した後、前記所定温度でもって所定時間保持することにより行われ、
    前記低速昇温が、0.1℃/秒〜1.0℃/秒とされ、
    前記所定温度が750±20℃とされ、
    前記所定時間が60分〜300分とされている、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  4. 珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
    前記拡散防止層上に、磁性薄膜層を形成するステップと、
    前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
    を備え、
    前記磁性薄膜層が、薄膜を構成する原子の規則構造化が促進されるようにプラズマ照射されつつ形成される、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  5. 請求項4において、
    前記熱処理が、前記磁性薄膜層を磁性薄膜の膜面垂直方向よりも膜面内方向に磁化しやすいように低速昇温で所定温度にまで加熱した後、前記所定温度でもって所定時間保持することにより行われ、
    前記低速昇温が、0.01℃/秒〜3℃/秒とされている、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  6. 珪素(Si)からなる探針素材上に、拡散防止層を形成するステップと、
    前記拡散防止層上に、磁性薄膜層を形成するステップと、
    前記磁性薄膜層の熱処理を行うステップと、
    を備え、
    前記低速昇温が、0.1℃/秒〜1.0℃/秒とされ、
    前記所定温度が750±20℃とされ、
    前記所定時間が60分〜300分とされている、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  7. 請求項1ないし請求項3のいずれか1項において、
    前記磁性薄膜層の材質が、Fe−Pt、Co−Pt、Fe−Pd、Co−Cr−Ptから選択される1種以上とされ、
    前記非磁性物質の材質が、Si酸化物、Ti酸化物、W酸化物、Cr酸化物、Co酸化物、Ta酸化物、B酸化物、Mg酸化物、Ce酸化物、Y酸化物、Ni酸化物、Al酸化物、Ru酸化物、カーボンから選択される1種以上とされている、
    ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
  8. 請求項4ないし請求項6のいずれか1項において、
    前記磁性薄膜層の材質が、Fe−Pt、Co−Pt、Fe−Pd、Co−Cr−Ptから選択される1種以上とされている、ことを特徴とする磁気力顕微鏡用探針の製造方法。
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