以下、本発明の一例である実施の形態について説明する。なお、実施の形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分または相当部分を表わすものとする。
<実施の形態1>
≪窒化物半導体発光素子の構成≫
図1に、実施の形態1の窒化物半導体発光素子の模式的な断面図を示す。図1に示す実施の形態の窒化物半導体発光素子は、支持基板9と、支持基板9上に設けられた接合材料8と、接合材料8上に設けられたp側電極7と、p側電極7上に設けられたp型窒化物半導体層5と、p型窒化物半導体層5上に設けられた発光層4と、発光層4上に設けられたn型窒化物半導体層3と、n型窒化物半導体層3上に設けられたAlを含有する窒化物半導体層であるバッファ層2とを備えている。
p型窒化物半導体層5、発光層4およびn型窒化物半導体層3が支持基板9側からこの順序で積層されることによって多層窒化物半導体層6が構成されており、多層窒化物半導体層6は、n型窒化物半導体層3とp型窒化物半導体層5との間に発光層4を備えた構成を有している。
また、実施の形態1の窒化物半導体発光素子においては、バッファ層2が、発光層4で発生した光を取り出すための主な光取り出し層となっており、バッファ層2の表面が、発光層4で発生した光を外部に取り出すための主な光取り出し面2aとなっている。
さらに、実施の形態1の窒化物半導体発光素子においては、バッファ層2およびn型窒化物半導体層3に複数の溝21が形成されている。複数の溝21は、底面21aと、底面21aの幅W1方向の両端のそれぞれからn型窒化物半導体層3およびバッファ層2の厚さ方向に延在する側壁21bとを有している。
溝21の底面21aは、バッファ層2およびn型窒化物半導体層3の厚さ方向の除去によって露出したn型窒化物半導体層3の厚さ方向と直交する方向の表面である。溝21の底面21aは、バッファ層2の光取り出し面2aよりも発光層4に近い位置に配置されている。
また、溝21の側壁21bは、バッファ層2およびn型窒化物半導体層3の厚さ方向の除去によって露出したn型窒化物半導体層3の厚さ方向の表面の一部およびバッファ層2の厚さ方向の表面のすべてから構成されている。
溝21の底面21a上にはn側電極19が設けられており、n側電極19は溝21の側壁21bに接するようにして設けられている。なお、溝21の側壁21b上には、n型窒化物半導体層3の保護膜として、たとえば、SiO2(酸化珪素)、SiN(窒化珪素)またはAlN(窒化アルミニウム)などの保護膜が形成されていてもよい。
図2に、実施の形態1の窒化物半導体発光素子を光取り出し面2a側から見たときの模式的な平面図を示す。図2に示すように、溝21は格子状に形成されており、溝21を埋めるようにn側電極19が形成されている。なお、実施の形態1の窒化物半導体発光素子の光取り出し面2a内に、たとえば図22の模式的平面図に示すように、他の溝21よりも大きな底面21aを設けて、たとえばこの領域にも、n側電極19を形成し、その上にパッド電極を形成するためのパッド領域とすること等の変更が可能である。
溝21の幅(溝21の長手方向に直交する方向の長さ)W1は、2μm以上200μm以下であることが好ましい。溝21の幅W1が2μm以上200μm以下である場合には光取り出し面2aを十分に確保しつつ、円滑に電流を注入できる傾向にある。すなわち、溝21の幅W1が2μm以上である場合には、n側電極19の面積が小さくなることによる電圧の上昇を抑えることができるとともに、製造歩留まりを上昇させることができる。また、溝21の幅W1が200μm以下である場合には、光取り出し面2aにおけるn側電極19の形成割合を小さく抑えることができるため、より効率的に光を取り出すことができる。また、溝21の幅W1が10μm以上100μm以下である場合には、さらに効果が顕著となるため、より好ましい。
溝21のピッチ(隣り合う溝21の幅の中点間の距離)W2は、10μm以上1000μm以下であることが好ましく、溝21のピッチW2は、10μm以上1000μm以下の範囲内にあり、かつ溝21の幅W1よりも広いことがより好ましい。溝21のピッチW2が10μm以上1000μm以下である場合には、取り出し面2a内に均一に電流が注入されて、均一に発光する傾向にあり、溝21のピッチW2が溝21の幅W1よりも狭い場合には、光取り出し面2aが相対的に大きくなるため、より効率的に光を取り出すことができる傾向にある。このような溝21を形成することによって、支持基板9に接合された半導体が、成長用基板1を剥離することによって生じる半導体の反りによる悪影響を抑制することができ、支持基板9への半導体の接合不良の防止および長期信頼性の向上の効果も生じるため好ましい。また、溝21のピッチW2が100μm以上500μm以下である場合には、さらに効果が顕著となるため、より好ましい。
≪窒化物半導体発光素子の製造方法≫
以下、図面を参照して、実施の形態1の窒化物半導体発光素子の製造方法の一例について説明する。
[バッファ層の形成工程]
まず、図3の模式的断面図に示すように、成長用基板1の第1の表面1a上にAlを含有する窒化物半導体層であるバッファ層2を形成する。
成長用基板1としては、成長用基板1の第1の表面1a上にAlを含有するバッファ層2を形成することができるものであれば特に限定されないが、サファイア(Al2O3)基板を用いることが好ましい。サファイア(Al2O3)は、たとえば150nm〜1000nmにわたる広い波長領域の光に対して高い透過率を有していることから、成長用基板1の材料として好適である。
バッファ層2としては、たとえばAlx1Iny1Gaz1N(0<x1≦1、0≦y1≦1、0≦z1≦1)の式で表わされる窒化物半導体を用いることができる。
バッファ層2の形成方法は、特に限定されず、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法などの結晶成長法が用いられてもよく、スパッタリング法などの物理的気相成長法が用いられてもよい。バッファ層2は結晶質であってもよく、非晶質であってもよい。
[多層窒化物半導体層の形成工程]
次に、図4の模式的断面図に示すように、バッファ層2上に、n型窒化物半導体層3と、発光層4と、p型窒化物半導体層5とをこの順序で含む多層窒化物半導体層6を形成する。
n型窒化物半導体層3としては、たとえばAlx2Iny2Gaz2N(0≦x2≦1、0≦y2≦1、0≦z2≦1、x2+y2+z2≠0)の式で表わされる窒化物半導体にn型不純物をドープしたものを用いることができる。n型不純物としては、たとえばシリコンなどを用いることができる。
発光層4としては、たとえばAlx3Iny3Gaz3N(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる量子井戸層を1つのみ含む単一量子井戸発光層(SQW)を用いることができる。また、発光層4としては、たとえばAlx3Iny3Gaz3N(0≦x3≦1、0≦y3≦1、0≦z3≦1、x3+y3+z3≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる量子井戸層の複数と、当該量子井戸層の間に当該量子井戸層よりもバンドギャップの大きい、たとえばAlx4Iny4Gaz4N(0≦x4≦1、0≦y4≦1、0≦z4≦1、x4+y4+z4≠0)の式で表わされる窒化物半導体からなる量子障壁層と、を含む多重量子井戸発光層(MQW)を用いることもできる。なお、発光層4には、n型不純物および/またはp型不純物がドープされていてもよい。発光層4にドープされるn型不純物としては、たとえばシリコンなどを用いることができ、p型不純物としては、たとえばマグネシウムなどを用いることができる。
p型窒化物半導体層5としては、たとえばAlx5Iny5Gaz5N(0≦x5≦1、0≦y5≦1、0≦z5≦1、x5+y5+z5≠0)の式で表わされる窒化物半導体にp型不純物をドープしたものを用いることができる。p型不純物としては、たとえばマグネシウムなどを用いることができる。
n型窒化物半導体層3、発光層4およびp型窒化物半導体層5の形成方法としては、たとえば、MOCVD法などの結晶成長法を用いることができる。
多層窒化物半導体層6とバッファ層2との合計の厚さT1は3μm以上であることが好ましく、4μm以上であることがより好ましい。多層窒化物半導体層6とバッファ層2との合計の厚さT1が3μm以上である場合、特に4μm以上である場合には、後述する成長用基板1の剥離工程において、光の照射によりバッファ層2が熱分解して成長用基板1と全部またはその一部が分解されたバッファ層2とが剥離される時に発生すると考えられる衝撃波の発光層4への悪影響を抑制することできる。
多層窒化物半導体層6とバッファ層2との合計の厚さT1が3μm以上である場合には成長用基板1と発光層4との間の距離T2は、T1>T2の関係を維持しつつ、3μm以上であることがさらに好ましい。この場合には、後述する成長用基板1の剥離工程において、光の照射によりバッファ層2が熱分解する箇所と発光層4との間の距離T2を、バッファ層2に光を照射する際に発生する熱の発光層4に対する影響を抑制することができる程度に大きくすることができる。
また、n型窒化物半導体層3の厚さT3は、1μm以上であることが好ましく、2μm以上であることがより好ましい。n型窒化物半導体層3の厚さT3が1μm以上である場合、特に2μm以上である場合には、後述する溝21の形成工程において、n型窒化物半導体層3のエッチングの制御性を向上させることができる。また、横方向への電流を拡げられるため、より均一な発光を得ることができる傾向にある。
また、多層窒化物半導体層6とバッファ層2との合計の厚さT1は10μm以下であることが好ましい。多層窒化物半導体層6とバッファ層2との合計の厚さT1が10μm以下である場合には、バッファ層2および多層窒化物半導体層6の形成時間および原料コストの増大を抑えることができる。
[p型化工程]
その後、多層窒化物半導体層6の形成後のウエハ(実施の形態1では、成長用基板1とバッファ層2と多層窒化物半導体層6との積層体)の熱処理を行なうことができる。これにより、p型窒化物半導体層5中のMgなどのp型ドーパントを活性化させることができるため、p型窒化物半導体層5にp型半導体としての機能を発現させることができる。
多層窒化物半導体層6の形成後のウエハの熱処理条件は、特に限定されないが、たとえば、多層窒化物半導体層6の形成後のウエハを800℃の酸素雰囲気下で10分程度熱処理する条件などを挙げることができる。
[チップ化工程]
次に、多層窒化物半導体層6の形成後の成長用基板1を分割することによって、チップ化工程を行なう。本実施の形態1による光取り出し効率向上の効果は、大面積チップほどより顕著に現れる。1チップの表面の形状が矩形である場合には、短辺が500μm以上であることが好ましく、1000μm以上であることがより好ましい。また、1チップの表面の形状が楕円である場合には、短径が500μm以上であることが好ましく、1000μm以上であることがより好ましい。1チップの表面の面積が、このように比較的大面積である場合には、1チップの表面の大きさおよび形状は、特に限定されず、たとえば、一辺が4mmの正方形、一辺が5mmの正方形、一辺が10mmの正方形、または、矩形などを挙げることができる。チップの表面を大面積化することによって、実施の形態1の窒化物半導体発光素子の出力を高くすることができる。
なお、チップ化工程は、この段階で行なう必要がなく、ウエハの状態で加工を進め、最終段階でチップ化工程を行なってもよい。この場合には、最終段階まで、複数チップを有するウエハを1枚として取り扱うことができ、スループットを上げることができる傾向にある。
[多層窒化物半導体層の接合工程]
次に、図5の模式的断面図に示すように、多層窒化物半導体層6を支持基板9の表面上に接合する。
多層窒化物半導体層6を支持基板9の表面上に接合する方法は特に限定されないが、たとえば多層窒化物半導体層6上に積層されたp側電極7と、支持基板9の表面上に設置された接合材料8とを接合することにより行なうことができる。
p側電極7としては、p型窒化物半導体層5と接触抵抗が低い材料を好適に用いることができ、たとえば、Pd層とAu層との積層体、Ni層とAu層との積層体、Al層、Ni層またはPt層などを用いることができる。なかでも、n側から光を取り出す構造において、発光層4からの発光をp側電極7でより高い反射率で反射させる観点からは、p側電極7としてAl層を用いることが好ましい。また、発光層4からの発光に対して比較的高い反射率を有しており、p型窒化物半導体層5との接触抵抗を低くする観点からは、Ni層およびPt層の少なくとも一方を用いることが好ましい。
p側電極7の形成方法は特に限定されないが、たとえばEB(Electron Beam)蒸着法などを用いることができる。
p側電極7が形成されるp型窒化物半導体層5の表面は、p側電極7の形成に先立って酸処理が行なわれていてもよい。p型窒化物半導体層5の表面の酸処理は、たとえば、p型窒化物半導体層5の表面をフッ酸に3分間浸漬した後に、水洗し、乾燥することにより行なうことができる。
p側電極7の形成後には、p側電極7の熱処理が行なわれてもよい。p側電極7の熱処理は、たとえば、酸素雰囲気、窒素雰囲気または乾燥空気の雰囲気下で、約800℃で約10分間、p側電極7を加熱することにより行なうことができる。
支持基板9としては、たとえば、Si、SiC若しくはGaAs等の半導体からなる半導体基板、または金属単体基板若しくは2種以上の金属の複合体から成る金属基板を用いることができる。金属基板としては、たとえば、Ag、Cu、AuおよびPt等の高導電性金属から選択された1種以上の金属と、W、Mo、CrおよびNi等の高硬度の金属から選択された1種以上の金属とからなるものを用いることができる。また、金属基板としては、たとえば、Cu−WまたはCu−Moなどの複合体を用いることもできる。また、支持基板9としては、放熱性に優れたセラミックなどを用いることもできる。
接合材料8としては、Au、Sn、Pd、In、Ti、Ni、W、Mo、Au−Sn、Sn−Pd、In−Pd、Ti−Pt−AuまたはTi−Pt−Sn等を用いることが好ましい。接合材料8としてこれらの材料を用いた場合には、共晶反応により、p側電極7と接合することが可能となる。なお、共晶反応により形成された共晶形成層は、p側電極7との接合時に互いに拡散して共晶を形成する層である。
共晶形成層の組み合わせとしては、たとえば、Au−Sn、Sn−Pd、またはIn−Pdの組み合わせなどが可能である。また、接合材料8を共晶反応によりp側電極7と接合する場合には、その接合温度は、たとえば150℃〜400℃程度の範囲とすることができる。
接合材料8としては、Agなどを含有する熱硬化型の導電性接着剤を使用することもできる。この場合の接合条件としては、たとえば、数百N〜数kN程度の加圧を行い、150℃〜400℃程度に加熱し、真空若しくは窒素雰囲気、または大気雰囲気下で、15分程度保持する条件などを挙げることができる。無加圧状態で接合する場合の接合条件としては、たとえば、真空若しくは窒素雰囲気、大気雰囲気下で、200℃程度加熱し、60分程度保持する条件などを挙げることができる。なお、接合材料8の特性に合わせて、接合条件を選定することができる。
なお、上記においては、成長用基板1側から、バッファ層2、n型窒化物半導体層3、発光層4、p型窒化物半導体層5とし、p型窒化物半導体層5上にp側電極7を形成し、支持基板9の表面上に設置された接合材料8とを接合する実施形態を示したが、上下反転する構成とする事も可能である。具体的には、成長用基板1側から、バッファ層2、p型窒化物半導体層5、発光層4、n型窒化物半導体層3の順に積層し、n型窒化物半導体層3上にn側電極19を形成し、成長用基板1およびバッファ層2を除去して露出したp型窒化物半導体層5の表面上にp側電極7を形成した後に、支持基板9の表面上に設置された接合材料8とp側電極7とを接合することも可能である。
[成長用基板の薄型化工程]
次に、図6の模式的断面図に示すように、成長用基板1の第1の表面1aとは反対側の第2の表面側から成長用基板1を薄型化する。成長用基板1を薄型化する方法は特に限定されないが、たとえば成長用基板1の第2の表面を研削および/または研磨することにより行なうことができる。
成長用基板1の薄型化により、成長用基板1の厚さt1は、100μm以下とされることが好ましく、80μm以下とされることがより好ましく、60μm以下とされることが特に好ましい。
成長用基板1の厚さt1が100μm以下である場合、より好ましくは80μm以下である場合、特に60μm以下である場合には、成長用基板1の剥離をより円滑に行なうことができる傾向にもある。
成長用基板1の薄型化により、成長用基板1の厚さt1は、20μm以上とされることが好ましい。成長用基板1の薄型化により、成長用基板1の厚さt1が20μm以上とされた場合には、成長用基板1の厚さが十分に担保されていることから、多層窒化物半導体層6に悪影響が及ぶ可能性が低くなる。
成長用基板1を薄型化した後には、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bを鏡面研磨することが好ましい。成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bを鏡面とすることによって、後述する成長用基板1の剥離工程において照射された光が、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bで散乱されないため、バッファ層2に均一に光を照射することが可能となるため、成長用基板1の均一な剥離が可能となる。
本明細書において、「鏡面」とは、従来から公知の鏡面研磨プロセスで実施可能な鏡面を意味する。
以下に、成長用基板1の薄型化工程の好ましい一例について説明する。まず、成長用基板1の第2の表面を研削することによって、成長用基板1の厚さを、たとえば150μm〜200μm程度とする。次に、研削によって生じたスクラッチ傷を除去し、研削後の成長用基板1の第2の表面の鏡面性を向上させるため、たとえば40μm〜100μm程度の厚さになるまで研磨により薄くする。その後、CMP(化学機械研磨)によって成長用基板1の厚さを、たとえば40μm〜100μm程度の厚さまで薄くする。CMPにより成長用基板1の第2の表面のスクラッチ傷を除去することができるため、後述する成長用基板1の剥離工程において成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bに光が照射された場合にも、光が散乱されず、バッファ層2に均一に照射することが可能となる。また、CMPによって成長用基板1に形成されたスクラッチ傷が、その一部が熱分解したバッファ層2、または、多層窒化物半導体層6に転写されるのを防ぐことができる。
また、バッファ層2に照射される光の均一性が低下した場合でも、成長用基板1を剥離することができる場合には、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bを粗面としてもよい。なお、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bが粗面であるとは、CMPを行なわずに、成長用基板1の第2の表面を研削および/または研磨した後の表面状態よりも粗い面を意味する。なお、成長用基板1の薄型化工程は、省略することも可能である。また、溝21の形成が可能な厚さであれば、上記の厚さに限定されるものではない。
[溝形成工程]
次に、図7の模式的断面図に示すように、成長用基板1およびバッファ層2のそれぞれの一部を除去することによって、複数の溝21を形成する。溝21は、たとえば、レーザスクライブ、ポイントスクライブ、ダイシングまたはドライエッチングなどにより形成することができる。なかでも、溝21の底面21aおよび側壁21bの表面を滑らかに形成する観点からは、レーザスクライブまたはドライエッチングを用いて溝21を形成することが好ましい。後述する成長用基板1の剥離工程前に溝21を形成した場合には、成長用基板1を剥離する際のレーザ光の照射による衝撃波の悪影響およびレーザ光の照射により生じた生成物によるエッチング阻害を抑制することができる観点からより好ましい。ただし、成長用基板1の剥離工程後に溝21を形成することも可能である。
[成長用基板の剥離工程]
(レーザ光の照射領域)
次に、図8の模式的断面図に示すように、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1b側からレーザ光10を照射することによって、レーザ光10の少なくとも一部をバッファ層2に吸収させ、成長用基板1を剥離する。ここで、図9の模式的平面図に示すように、レーザ光10の照射領域12は、1区画に対応した領域とすることができる。なお、1区画に対応した領域とは、隣り合う2本の溝21と、当該隣り合う2本の溝21の長手方向に直交する方向に延在する隣り合う2本の溝21とによって取り囲まれた領域を意味する。
成長用基板1の剥離工程においては、レーザ光10の少なくとも一部をAlを含有する窒化物半導体からなるバッファ層2が吸収し、バッファ層2の少なくとも一部が熱分解して窒素ガスが生成する。この窒素ガスにより、衝撃波が発生する。溝21を形成することによって、バッファ層2の熱分解によって生成した物質を効果的に放出することができるため、当該物質がn型窒化物半導体層3の表面に付着するのを効果的に抑制することができる。また、溝21の形成によって、衝撃波によってn型窒化物半導体層3に悪影響が生じるのも抑制することができる。
(レーザ光の照射領域の別の実施形態)
また、図10の模式的断面図および図11の模式的平面図に示すように、レーザ光10の照射領域12を多区画に対応した領域とすることもできる。なお、多区画に対応した領域とは、隣り合う2本の溝21と、当該隣り合う2本の溝21の長手方向に直交する方向に延在する隣り合う2本の溝21とによって取り囲まれた領域(1区画に対応した領域)を複数含む領域を意味する。いずれにしても、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の境界が、溝21の底面21a内に納まるようにレーザ光10の照射を行なえばよい。
(レーザ光の照射領域の移動方法)
図12に、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bに対するレーザ光10の照射領域12の移動方法の一例を図解する模式的な平面図を示す。図12に示すように、レーザ光10は、たとえば、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bにおいて、レーザ光10の照射領域12を矢印13の方向に移動させながら照射される。
図12に示されるように、レーザ光10は、レーザ光10の照射領域12が互いに重複することなく、レーザ光10の照射領域12が隣接するようにレーザ光10を照射することが好ましい。
ここで、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状は、少なくとも一辺の長さが100μm以上の矩形であることが好ましく、一辺の長さが100μm以上の正方形であることがより好ましい。レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状がすべての辺の長さが100μm以上の矩形である場合、特に一辺の長さが100μm以上の正方形である場合には、大面積の成長用基板1を剥離するためのレーザ光10の照射回数を少なくすることができるため、窒化物半導体発光素子の製造効率を向上することができる。
また、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状は、少なくとも一辺の長さが2000μm以下の矩形であることが好ましく、一辺の長さが2000μm以下の正方形であることが好ましい。レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状が、一辺の長さが2000μm以下の正方形である場合には成長用基板1の剥離に必要なレーザ光10のエネルギー密度を容易に得ることができる。
また、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状を六角形とする場合には、六角形の一辺の長さが50μm以上であることが好ましく、100μm以上であることがより好ましい。レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状が、一辺の長さが50μm以上の六角形である場合、特に一辺の長さが100μm以上の六角形である場合には、大面積の成長用基板1を剥離するためのレーザ光10の照射回数を少なくすることができるため、窒化物半導体発光素子の製造効率を向上することができる。
また、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状を六角形とする場合には、六角形の一辺の長さが2000μm以下であることが好ましい。レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状が、一辺の長さが2000μm以下の六角形である場合には成長用基板1の剥離に必要なレーザ光10のエネルギー密度を容易に得ることができる。
具体的には、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の好ましい形状としては、たとえば、一辺の長さが500μm程度の正方形、または一辺の長さ300μm程度の六角形を挙げることができるが、これに特に限定されるものではない。
なお、レーザ光10は、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bの全面を隙間無く埋め尽くすように照射されてもよい。また、レーザ光10の照射領域12の少なくとも一部を重複させながら照射されてもよい。レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状をたとえば矩形または正方形とした場合には、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状を有効に利用することができる。
また、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状をたとえば円形とすることもできる。この場合に、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bの全面を隙間無く埋め尽くすようにレーザ光10を照射するためには、レーザ光10の照射領域12の少なくとも一部を重複させる必要がある。
レーザ光10の照射領域12を重複させず、一定の間隔をあけて照射することもできる。この場合には、レーザ光10の照射領域12の間隔は100μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。
なお、本明細書において、「矩形」、「正方形」および「六角形」は、厳密に、「矩形」、「正方形」および「六角形」であることを意味しておらず、たとえばメタルマスクまたはフォトマスクなどによって整形可能な程度に変更されていてもよい。たとえば、「矩形」および「正方形」には、光の干渉などにより、4角の少なくとも1つの角が正確に直角ではなく、丸みを帯びているものも含まれる。また、「正方形」には、フォトマスクやメタルマスクが正方形であっても、光学系の調整により、一辺の長さが完全に同一にならないものなども含まれる。
図12に示す実施形態においては、レーザ光10の正方形状の照射領域12が、行方向および列方向のいずれにも揃い、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bにレーザ光10の照射を4回受ける箇所(4点集中箇所51)が存在する。レーザ光10の照射エネルギーが過剰な場合やレーザ光10の照射エネルギーの揺らぎなどによる悪影響を受けて、歩留まりが低下するのを避ける観点からは、レーザ光10の照射が重複する箇所においては、その重複回数が少ないことが好ましい。
(レーザ光の照射領域の移動方法の別の実施形態)
図13に、レーザ光10の照射領域12の移動方法の別の実施形態を図解する模式的な平面図を示す。図13に示す実施形態においては、レーザ光10の照射領域12が、行方向に揃っている場合には列方向にずれ、列方向に揃っている場合には行方向にずれて、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bの全面を隙間無く埋め尽くすようにして、レーザ光10が照射される。
(レーザ光の照射領域の移動方法のさらに別の実施形態)
図14に、レーザ光10の照射領域12の移動方法のさらに別の実施形態を図解する模式的な平面図を示す。図14に示す実施形態においては、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bにレーザ光10の照射を3回受ける箇所(3点集中箇所52)を存在させることができる。
図13および図14に示す実施形態においては、3点集中箇所52におけるレーザ光10の照射の重複回数が最大となるため、図12に示す実施形態における4点集中箇所51と比べて、レーザ光10の照射の重複回数を少なくすることができ、レーザ光10の照射ダメージに起因する悪影響を抑制できることから、大面積の窒化物半導体発光素子を歩留まり良く製造することができる。また、図14に示す実施形態においては、レーザ光10の照射領域12の配置形状が対称となり、レーザ光10の照射による窒化物半導体への影響を均等に抑制することができることから、大面積の窒化物半導体発光素子を歩留まり良く製造することができる。
図13および図14に示す実施形態においても、レーザ光10の照射領域12の境界が溝21の底面21b内に含まれるように溝21を形成していることがより好ましい。
(レーザ光の照射条件)
レーザ光10の照射条件の一実施形態としては、レーザ光10の光源としてArFエキシマレーザ装置を用い、レーザ光10(波長193nm)の照射エネルギー密度は500〜8000mJ/cm2程度を挙げることができる。レーザ光10の照射エネルギーは、レーザ光10の照射形状および光学系などの装置により様々な可能性が考えられるが、たとえば、レーザ光10の照射形状および光学系などの装置を変更する毎に、レーザ光10の照射実験を行ない、バッファ層2と成長用基板1との剥離を確認することにより決定することができる。
(成長用基板の剥離後の後処理工程)
成長用基板1として、たとえばサファイア基板などの酸素を含有する基板を用いた場合には、成長用基板1の熱分解により発生した酸素と、バッファ層2の熱分解により発生したAlおよび窒素などの物質とが反応することにより生成された生成物が、窒化物半導体表面および溝21の底面21bに残存する可能性がある。窒化物半導体表面および溝21の底面21bに残存した生成物を除去するために、たとえば、フッ酸、塩酸またはリン酸などの酸系のエッチャントで除去することが可能である。また、水酸化カリウムなどのアルカリ系エッチャントを用いた処理により、当該生成物を除去することも可能である。なお、成長用基板1の剥離後の後処理工程は、後述するエッチング工程を行なう前に実施することができる。
なお、上記の実施形態においては、成長用基板1の薄型化工程を行ない、溝21形成工程を行なった後に成長用基板1の剥離工程を行なっているが、成長用基板1の薄型化工程を行なうことなく、成長用基板1の剥離工程後に溝21形成工程を行なうことも可能である。特に、バッファ層2がGaNからなる場合は、成長用基板1の薄型化工程なく、成長用基板1の剥離工程後に溝21形成工程を行なうことも可能である。
バッファ層2がAlNからなる場合には、成長用基板1を有した状態で溝21形成工程を行なうことが好ましく、成長用基板1の薄型化工程を溝21形成工程の前に行なうことがより好ましい。この場合には、レーザ光10の照射によって発生した生成物を溝21を通じて有効に外部に放出することができる。バッファ層2がAlを含有する場合、特にAlNである場合には、レーザ光10の照射によって、Alを含有する酸化物、窒化物または酸窒化物などの生成物が発生する。これらの生成物が、成長用基板1の剥離工程後のバッファ層2の表面に付着した場合には、後述するエッチング工程において、当該生成物がエッチングマスクとして働き、エッチング面内においてエッチング処理が不均一となるおそれがある。溝21を形成することによって、これらの生成物が成長用基板1の剥離工程後のバッファ層2の表面に付着する前に、これらの生成物を空間に放出することができるため、その後の後述するエッチング工程などによってエッチング阻害層などの悪影響をより効果的に抑制することができる。また、レーザ光10の照射によるバッファ層2の熱分解により衝撃波が発生するが、この衝撃波の影響も抑制することができる。
[バッファ層および溝のエッチング工程]
次に、図15の模式的断面図に示すように、成長用基板1の剥離工程後のバッファ層2の一部をその厚さ方向にエッチングすることによってバッファ層2を薄型化するとともに溝21を深く掘り下げることによって溝21の底面21aにn型窒化物半導体層3を露出させる。このとき、溝21の側壁21bには、バッファ層2の厚さ方向の表面およびn型窒化物半導体層3の厚さ方向の表面の一部が露出している。また、バッファ層2は、成長用基板1から発光層4に近づくにつれて品質が向上する。バッファ層2をエッチングすることによって、発光層4付近に比べて品質の悪い層を除去することができるため、不要吸収などの悪影響を抑えることができる。たとえば、エッチングによって残されるバッファ層2の厚さは、50nmよりも大きく1000nmよりも小さいことが好ましく、50nmよりも大きく500nmよりも小さいことがより好ましい。バッファ層2の厚さをこの範囲内とすることによって、光を効果的に取り出すことができる。なお、バッファ層2のエッチングおよび溝21の掘り下げは、たとえばウエットエッチングまたはドライエッチングにより行なうことができる。
[n側電極の形成工程]
その後、図1および図2に示すように、溝21を埋めるように、溝21の底面21a上に溝21の側壁21bに接するようにn側電極19を形成する。n側電極19としては、たとえば、Al、Ti、MoおよびAuからなる群から選択された少なくとも1種の金属を蒸着法などによって積層したものなどを用いることができる。以上により、実施の形態1の窒化物半導体発光素子を作製することができる。ここで、図示はしていないが、n側電極19に被覆されていない溝21の側壁21bを保護する保護膜を形成してもよい。この場合には、溝21の底面21a上に形成したn電極19上と側壁21bとを同時に被覆する保護膜を形成することもできる。
≪窒化物半導体発光素子の好ましい発光波長≫
上述のようにして作製された実施の形態1の窒化物半導体発光素子のp側電極7とn側電極19との間に電流を流すことによって発光層4から発光する光の波長(発光波長)は320nm未満であることが好ましく、300nm以下であることがより好ましい。実施の形態1の窒化物半導体発光素子の発光波長が320nm未満である場合、特に300nm以下である場合には、窒化物半導体発光素子のn型窒化物半導体層3のAl組成比を25原子%以上と高いものとすることができる。これにより、AlNからなるバッファ層2と比較的近い格子定数の窒化物半導体からn型窒化物半導体層3を形成することができるため、n型窒化物半導体層3の結晶性を高くすることができる。
実施の形態1の窒化物半導体発光素子の発光波長が320nm未満である場合、特に300nm以下である場合には、実施の形態1の窒化物半導体発光素子は、深紫外領域の波長域の光を発光する発光ダイオード素子となる。このとき、実施の形態1の窒化物半導体発光素子を封止する樹脂は光を取り出す機能を兼ね備えているが、すでに実用化されている青色発光ダイオードにおいて、青色発光ダイオード素子を封止する従来の樹脂は、実施の形態1の窒化物半導体発光素子から発光された深紫外領域の波長域の光の吸収量が大きく、また光の吸収により樹脂も劣化することになるため、当該樹脂をそのまま実施の形態1の窒化物半導体発光素子の封止に転用することはできない。実施の形態1の窒化物半導体発光素子の構成によれば、n型窒化物半導体層3、バッファ層2および成長用基板1(たとえばサファイア基板がバッファ層2上に残っている場合)のように、発光層4から発光した光が通過する層が段階的な屈折率変化を有する構成とすることができるため、樹脂を用いない構成においても、効率的に光を取り出すことができる。すなわち、実施の形態1の窒化物半導体発光素子の構成を、発光層4がAlを有する窒化物半導体層からなり、n型窒化物半導体層3がAl組成比が25原子%以上のAlInGaNからなり、バッファ層2がAl組成比が25原子%以上のAlInGaNからなる構成のときに、より効果を発揮する。さらに、チップ面積が、好ましくは1辺が500μmの正方形の面積よりも大きいとき、より好ましくは1辺が1000μmの正方形の面積よりも大きいとき、光取り出し効果が顕著になる。また、この波長域に適応可能な樹脂を用いた場合には、さらに光取り出しを向上させることが可能となる点からより好ましい。
<作用効果>
図1に示すように、実施の形態1の窒化物半導体発光素子においては、n側電極19が形成されている溝21の底面21aを光取り出し面2aよりも発光層4側に設置し、発光層4から光取り出し面2aまでに異なる材料からなる複数の層(バッファ層2およびn型窒化物半導体層3)の積層構造が存在している。そのため、実施の形態1の窒化物半導体発光素子においては、発光層4から光取り出し面2aに至るまでの領域に屈折率が異なる複数の領域が存在しており、素子内に留まる光の量を抑えることができることから、光取り出し効率を向上させることができる。また、光取り出し面2aが、n側電極19よりも突出するように形成され、n側電極19で取り囲まれた構成とすることによって、光取り出し層(バッファ層2)に効率的に光を導くことができるため、光取り出し面2aから効率的に光を取り出すことができる。
以上の理由により、実施の形態1の窒化物半導体発光素子においては、光取り出し効率に優れた縦型構造の窒化物半導体発光素子を提供することができる。
実施の形態1の窒化物半導体発光素子においては、発光層4から光取り出し面2aに至るまでの領域における異なる材料からなる複数の層の積層構造は、AlN、AlGaNおよびAl2O3からなる群から選択された少なくとも2種を含んでいることが好ましく、発光層4側から屈折率の高い順に複数の層が積層されている構造であることが好ましい。このような構成とすることによって、窒化物半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。発光層4側から屈折率の高い順に複数の層が積層されている構造の例としては、n型窒化物半導体層3がAlInGaNからなり、バッファ層2がAlNからなり、バッファ層2上に成長用基板1を残す場合には成長用基板1がAl2O3からなる構造である。
また、バッファ層2上に、AlNよりも低い屈折率の単層の誘電体膜、若しくは複数層の誘電体膜を設置した構成とすることによって、屈折率変化がより小さくなり、光を効率的に取り出すことができるため好ましい。上記のAlNよりも低い屈折率の単層の誘電体膜、若しくは複数層の誘電体膜としては、たとえば、酸化物(たとえば、酸化アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化ハフニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニオブ、酸化タンタルおよび酸化イットリウムなど)または窒化物(たとえば、窒化アルミニウムおよび窒化シリコンなど)などから選択できる。
<実施の形態2>
図16に、実施の形態2の窒化物半導体発光素子の模式的な断面図を示す。実施の形態2の窒化物半導体発光素子は、p型窒化物半導体層5の表面上に部分的に電流導通抑制層100が設けられていることを特徴としている。電流導通抑制層100は、それぞれ、電流導通抑制層100の表面100aが溝21の底面21aと向かい合うようにして配置されている。
電流導通抑制層100は、電流導通抑制層100に隣接する電流導通抑制層100以外のp側電極7の部分よりもp型窒化物半導体層5とのコンタクト抵抗が高い層であり、電流導通抑制層100としては、たとえば、SiO2、AlNおよびAlからなる群から選択された少なくとも1種を含む層を用いることができる。
なお、Al自体は導通があるが、p型窒化物半導体層5とAl膜とでは、仕事関数の関係から、p側電極7を構成するNiなどの金属よりも、p型窒化物半導体層5とのコンタクト抵抗が高くなるため、Alを含む電流導通抑制層100は、p側電極7とp型窒化物半導体層5との間の電流の導通を抑制することができる。Alを含む電流導通抑制層100を用いた場合には、発光層4から発光した光をAlを含む電流導通抑制層100によって光取り出し面2a側に戻すことができる。また、電流導通抑制層100が、p側電極7よりも仕事関数が小さい材料から構成されている場合には、電流導通抑制層100以外のp側電極7の部分よりもコンタクト抵抗が高くなるため、電流導通抑制層100としてAlを用いた場合と同様の効果がある。
実施の形態2の窒化物半導体発光素子は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、実施の形態1と同様にして、図17の模式的断面図に示すように、成長用基板1上に、バッファ層2、n型窒化物半導体層3、発光層4およびp型窒化物半導体層5をこの順序で積層する。その後、図17に示すように、p型窒化物半導体層5の表面上に電流導通抑制層100を部分的に形成する。
その後、図18の模式的断面図に示すように、電流導通抑制層100が部分的に形成されたp型窒化物半導体層5の表面上にp側電極7を形成する。その後、実施の形態1と同様にして、図18に示すように、支持基板9の表面上に設置された接合材料8とp側電極7とを接合する。これにより、実施の形態2の窒化物半導体発光素子が完成する。
実施の形態2の窒化物半導体発光素子も、実施の形態1と同様に、n型窒化物半導体層3の一部が除去されて溝21が形成されている。したがって、溝21の形成箇所におけるn型窒化物半導体層3の部分は局所的に層厚が薄くなっているため、当該部分においては溝21を形成しない場合と比べて横方向(n型窒化物半導体層3の厚さ方向と直交する方向)への電流の拡がりが抑制されるおそれがある。
しかしながら、実施の形態2の窒化物半導体発光素子においては、溝21の底面21aと向かい合うp型窒化物半導体層5の表面部分に電流導通抑制層100が設けられているため、電流導通抑制層100を設けない場合と比べて、p側電極7とn側電極19との間の最短距離を長くすることができる。そのため、実施の形態2の窒化物半導体発光素子においては、電流導通抑制層100を設けない場合と比べて、発光層4の面内にキャリアをより均一に注入することができる。発光層4の面内にキャリアを均一に注入することの効果は、n型窒化物半導体層3のAl組成比が高いほど高い効果が得られ、好ましくはn型窒化物半導体層3をAl組成比が25原子%以上90原子%以下のAlInGaNとしたとき、より好ましくはn型窒化物半導体層3をAl組成比が40原子%以上90原子%以下のAlInGaNとしたときに発光層4の面内にキャリアをより均一に注入することができる。
これにより、実施の形態2の窒化物半導体発光素子が溝21の形成箇所におけるn型窒化物半導体層3の局所的に層厚の薄い部分を有している場合であっても、n型窒化物半導体層3の局所的に層厚の薄い部分に電流が集中することなく、n型窒化物半導体層3において電流を横方向により広げることができる。
以上の理由により、実施の形態2の窒化物半導体発光素子においては、実施の形態1の窒化物半導体発光素子と比べて、光取り出し面2aからより均一に光を取り出すことができるため、より光取り出しに優れた、縦型構造の窒化物半導体発光素子を提供することができる。
なお、電流導通抑制層100には、発光層4から放出された光に対して高い反射率を有する材料を用いることが好ましい。実施の形態2の窒化物半導体発光素子においては、n型窒化物半導体層3側から光を取り出すため、電流導通抑制層100に発光層4から放出された光に対して高い反射率を有する材料を用いた場合には、発光層4からp型窒化物半導体層5側に導波してきた光を、光取り出し面2aへ戻すことができるため、実施の形態2の窒化物半導体発光素子の光取り出し効率の向上に貢献する。
また、図16に示す電流導通抑制層100の幅W3は、溝21の幅W1よりも広いことが好ましい。この場合には、実施の形態2の窒化物半導体発光素子の光取り出し面2aからさらに均一に光を取り出すことができる。また、光取り出し面2aから均一に光を取り出す観点からは、電流導通抑制層100の幅W3は、溝21の幅W1の10倍以下であることが好ましく、溝21の幅W1の1.5倍以上4倍以下であることがより好ましい。
実施の形態2における上記以外の説明は、実施の形態1と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施の形態3>
図19に、実施の形態3の窒化物半導体発光素子の模式的な断面図を示す。実施の形態3の窒化物半導体発光素子は、p型窒化物半導体層5が、異なる材料からなる第1のp型窒化物半導体層5aと第2のp型窒化物半導体層5bとの2層の積層構造から形成されており、p側電極7の表面下に部分的に電流導通抑制層100が設けられていることを特徴としている。なお、電流導通抑制層100は、それぞれ、電流導通抑制層100の表面100aが溝21の底面21aと向かい合うようにして配置されている。
実施の形態3の窒化物半導体発光素子は、たとえば以下のようにして製造することができる。まず、実施の形態1と同様にして、図2〜図4に示すように、成長用基板1上に、バッファ層2、n型窒化物半導体層3、発光層4およびp型窒化物半導体層5をこの順序で積層する。次に、図19の模式的断面図に示すように、p型窒化物半導体層5の表面の一部を除去することによって複数の第2の溝22を形成する。次に、p型窒化物半導体層5の表面の溝22を埋めるように電流導通抑制層100を形成する。その後、実施の形態1と同様にして、図19に示すように、電流導通抑制層100の形成後のp型窒化物半導体層5の表面上にp側電極7を形成し、支持基板9の表面上に設置された接合材料8とp側電極7とを接合する。その後は、実施の形態1と同様にして、成長用基板1を剥離した後に、バッファ層2および溝21のエッチングを行なうことによって、実施の形態3の窒化物半導体発光素子が完成する。
実施の形態3の窒化物半導体発光素子も、溝21の底面21aと向かい合うp型窒化物半導体層5の内部の部分に電流導通抑制層100が設けられているため、実施の形態2と同様に、電流導通抑制層100を設けない場合と比べて、発光層4の面内にキャリアをより均一に注入することができる。
これにより、実施の形態3の窒化物半導体発光素子においても、n型窒化物半導体層3の局所的に層厚の薄い部分に電流が集中することなく、n型窒化物半導体層3において電流を横方向により広げることができる。
以上の理由により、実施の形態3の窒化物半導体発光素子においても、実施の形態1の窒化物半導体発光素子と比べて、光取り出し面2aからより均一に光を取り出すことができるため、より光取り出し効率に優れた、縦型構造の窒化物半導体発光素子を提供することができる。
なお、実施の形態3の窒化物半導体発光素子においては、p側電極7と第1のp型窒化物半導体層5aとのコンタクト抵抗と、電流導通抑制層100と第2のp型窒化物半導体層5bとのコンタクト抵抗の違いを利用することによって、電流導通抑制層100とp側電極7との金属の種類を同一にした場合でも、電流導通抑制層100による電流導通抑制効果を得ることができる。たとえば、図19において、p側電極7および電流導通抑制層100を同一の金属材料から形成した場合には、第1のp型窒化物半導体層5aにAl組成比が低い窒化物半導体層を用い、第2のp型窒化物半導体層5bにAl組成比が高い窒化物半導体層を用いることによって、p側電極7と第1のp型窒化物半導体層5aとのコンタクト抵抗を電流導通抑制層100と第2のp型窒化物半導体層5bとのコンタクト抵抗よりも低くすることができる。これにより、p側電極7、電流導通抑制層100および第2のp型窒化物半導体層5bの経路が電流阻止の経路となる。
図19の変形例としての図23に示すように、p側電極7で溝22を埋めない構成とすれば、p型窒化物半導体層5の表面に溝22を形成することによって、実施の形態2の窒化物半導体発光素子と比べてp側電極7と接合材料8との接触面積を大きくすることができ、p側電極7と接合材料8との接合強度を強固なものとすることができることから、p側電極7と接合材料8との接合不良などの問題の発生を抑制することができる。
また、実施の形態3の窒化物半導体発光素子においては、電流導通抑制層100を第2の溝22の内部に形成することができるため、実施の形態2と比べて、電流導通抑制層100の設置不良を低減することができ、窒化物半導体発光素子の製造歩留まりを向上することができる。
実施の形態3における上記以外の説明は、実施の形態1および実施の形態2と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施の形態4>
図20に、実施の形態4の窒化物半導体発光素子の模式的な断面図を示す。実施の形態4の窒化物半導体発光素子においては、光取り出し面2aに凹凸構造41を形成することを特徴としている。
実施の形態4の窒化物半導体発光素子の光取り出し面2aの凹凸構造41は、たとえば実施の形態3の窒化物半導体発光素子の光取り出し面2aにドライエッチング等を行なうにより形成することができる。この場合には、光取り出し面2aでの屈折率変化の急峻生を緩和できることから、実施の形態4の窒化物半導体発光素子の光取り出し効率を、実施の形態3よりも向上させることができる。
たとえば凹凸構造41の凸部が円錐形状からなる場合には、当該凸部の底面の径を100nm〜1000nm程度とし、高さを100nm〜1000nm程度とし、周期を100nm〜500nm程度とすることができる。凹凸構造41の凸部が円錐形状からなる場合の凸部の周期は300nmよりも短いことが好ましく、発光波長よりも短いことがより好ましい。屈折率変化の急峻性をより抑制することができるためである。
本実施の形態では、バッファ層2に凹凸構造41を形成したが、バッファ層2上に、バッファ層2よりも屈折率の低い膜を形成した場合は、最表面に、凹凸構造41を形成することで、同様の効果を得ることができる。
実施の形態4における上記以外の説明は、実施の形態1〜実施の形態3と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施の形態5>
図21に、実施の形態5の窒化物半導体発光素子の模式的な断面図を示す。実施の形態5の窒化物半導体発光素子は、成長用基板1の薄型化後の第2の表面1bを光取り出し面として、発光層4から光取り出し面に至るまでの領域に、n型窒化物半導体層3、バッファ層2および薄型化後の成長用基板1の異なる材料からなる3層の積層構造が存在している。そのため、実施の形態5の窒化物半導体発光素子においては、発光層4から光取り出し面に至るまでの領域に異なる材料からなる層の積層数を増大させることができるため、光取り出し効率を向上させることができる。
実施の形態5の窒化物半導体発光素子においては、n型窒化物半導体層3から成長用基板1(たとえばサファイア基板)に急激に変化するのではなく、n型窒化物半導体層3からバッファ層2(たとえばAlN)を介して成長用基板1に変化することで、急激な屈折率の変化を抑制することができるため、光取出し効率を向上させることができる。
また、実施の形態5の窒化物半導体発光素子は、成長用基板1の剥離工程を行なわずに作製することができるため、製造プロセスを簡略化することができる利点も有している。
実施の形態5における上記以外の説明は、実施の形態1〜実施の形態4と同様であるため、その説明については繰り返さない。
<実施例1>
まず、図3および図4に示すように、市販されている厚さ350μmの両面研磨を施したサファイア基板からなる成長用基板1上に、厚さ約5μmのノンドープAlNからなるバッファ層2、厚さ約2μmのSiドープn型Al0.6Ga0.4Nからなるn型窒化物半導体層3、ノンドープAl0.4Ga0.6N量子井戸層とノンドープAl0.6Ga0.4N障壁層とが交互に5ペア積層されてなる発光層4、および厚さ約15nmのMgドープp型Al0.7Ga0.3Nキャリアバリア層と厚さ約10nmのMgドープp型Al0.6Ga0.4N層と厚さ約20nmのMgドープp型GaNコンタクト層とがこの順序で積層されたp型窒化物半導体層5をMOCVD法により結晶成長させた。ここで、n型窒化物半導体層3、発光層4およびp型窒化物半導体層5の積層体から多層窒化物半導体層6は構成された。
次に、p型GaNコンタクト層の積層後のウエハを酸素雰囲気下で800℃で10分程度熱処理した。これにより、p型窒化物半導体層(p型Al0.7Ga0.3Nキャリアバリア層、p型Al0.6Ga0.4N層およびp型GaNコンタクト層)中のp型ドーパントであるMgを活性化させて、p型の半導体としての機能を発現させた。
次に、レーザスクライブ法を用いて、ウエハから、一辺が8mmの正方形状にチップを切り出した。また、一辺が15mmの正方形状の表面を有し、厚さ1.0mmのタングステン板を用意し、有機洗浄を行なった。
次に、上記のようにして作製したチップおよびタングステン板を窒素雰囲気中に120℃程度の温度で保持して、10分程度のベーキングを行なった。
次に、EB蒸着装置により、上記のベーキング後のチップのp型GaNコンタクト層の表面上に、Niを厚さ20nmで、Auを厚さ50nmで蒸着することによって、p側電極7を形成した。その後、p側電極7の形成後のチップを500℃の窒素雰囲気で、10分程度放置し、電極アロイを実施した。
次に、図5に示すように、厚さ100μm程度の熱硬化型の導電性接着剤からなる接合材料8を用いて、チップの多層窒化物半導体層6上に形成したp側電極7とタングステン基板からなる支持基板9とを接合した。p側電極7と支持基板9とを接合する際、導電性接着剤からなる接合材料8のはみ出しの無いように貼り付けを行なった。p側電極7と支持基板9との貼り付けは、加熱・加圧条件下で行なわれたため、p側電極7と支持基板9との貼り付け後の導電性接着剤からなる接合材料8の厚さは、10〜20μm程度となった。
次に、図6に示すように、成長用基板1の多層窒化物半導体層6の積層側の第1の表面1aとは反対側の第2の表面1bを研削することによって、成長用基板1を50μm程度の厚さまで薄くした。その後、成長用基板1の第2の表面1bに研削により生じたスクラッチ傷を除去し、研磨することによって、研削後の荒れた第2の表面1bの鏡面性を向上させた。
次に、図7に示すように、レーザスクライブ法により、幅W1が10μmであって、ピッチW2が60μmの溝21を形成した。
次に、ステップアンドリピート法で、図12の矢印13の方向にレーザ光10の照射領域12を移動させていくことによって、成長用基板1の第2の表面1bの全面にレーザ光10を照射した。このとき、レーザ光10の1回の照射当たりの照射領域12の形状は、メタルマスクを用いて、一辺の長さW1が600μmの正方形に整形した形状であった。レーザ光10の1回の照射当たりの照射エネルギー密度が1500mJ/cm2以上5000mJ/cm2以下の範囲である場合に、サファイア基板からなる成長用基板1の剥離が確認された。
次に、成長用基板1の剥離後のチップを、10分程度フッ酸に浸漬させることによって、レーザ光10の照射によって生成された物質の除去を行なった。
次に、図15に示すように、既存のRIE(Reactive Ion Etching)法により、n型窒化物半導体層3の頭出しを行なった。すなわち、溝21をn型窒化物半導体層3まで掘り込むことによって、溝21の底面21aをn型窒化物半導体層3とし、溝21の側壁21bをn型窒化物半導体層3およびバッファ層2の積層構造とした。その後、溝21の底面21a上にn側電極19を形成した。これにより、実施例1の窒化物半導体発光素子を作製した。
また、比較として、溝21を形成せず、n型窒化物半導体層3の表面上にn側電極19を形成したこと以外は実施例1と同様にして、比較例の窒化物半導体発光素子を作製した。
実施例1の窒化物半導体発光素子と比較例の窒化物半導体発光素子との電流光出力特性を比較した結果、同一の電流注入条件において、実施例1の窒化物半導体発光素子は、比較例の窒化物半導体発光素子と比べて、光出力が1.2倍高くなる結果となった。
<実施例2>
図16に示すように、p型窒化物半導体層5の表面上に、部分的にAlNからなる厚さ100nmの電流導通抑制層100をスパッタリング法により形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例2の窒化物半導体発光素子を作製した。
実施例2の窒化物半導体発光素子においては、実施例1の窒化物半導体発光素子よりも均一な発光が確認されたため、n型窒化物半導体層3の内部で電流が横方向により広がっていることが確認された。
<実施例3>
図19に示すように、p型窒化物半導体層5の表面下に第2の溝22を形成して、第2の溝22を埋めるようにAlNからなる厚さ100nmの電流導通抑制層100をスパッタリング法により形成したこと以外は実施例1と同様にして、実施例3の窒化物半導体発光素子を作製した。
実施例3の窒化物半導体発光素子においては、実施例1の窒化物半導体発光素子よりも均一な発光が確認されたため、n型窒化物半導体層3の内部で電流が横方向により広がっていることが確認された。
<実施例4>
図19に示すp型窒化物半導体層5を、発光層4上のp型AlGaN層と、p型AlGaN層上のp型(Al)GaN層とから構成したこと以外は実施例3と同様にして、実施例4の窒化物半導体発光素子を作製した。なお、p型(Al)GaN層は、p型AlGaN層よりもAl組成が低い層である。
この場合には、p側電極7とp型(Al)GaN5a層とのコンタクト抵抗と、電流導通抑制層100とp型AlGaN5b層とのコンタクト抵抗の違いを利用することによって、第2の溝22の内部の電流導通抑制層100とp側電極7との金属の種類を同一にした場合でも、電流導通抑制層100による電流導通抑制効果を得ることができる。
[付記]
(1)本発明の一実施態様によれば、第1導電型窒化物半導体層と、第2導電型窒化物半導体層と、第1導電型窒化物半導体層と第2導電型窒化物半導体層との間の発光層と、第1導電型窒化物半導体層上に設けられた1層または2層以上の光取り出し層と、少なくとも光取り出し層に側壁を有するとともに第1導電型窒化物半導体層または光取り出し層に底面を有する溝と、溝の底面上に設けられた電極とを備え、光取り出し層は光取り出し面を有しており、溝の底面は光取り出し面よりも発光層の近くに位置しており、発光層から光取り出し面に至るまでの領域に異なる材料からなる複数の層の積層構造が存在している窒化物半導体発光素子を提供することができる。このような構成とすることにより、発光層から光取り出し面に至るまでの領域において屈折率を段階的に変化させることができ素子内に留まる光の量を抑えることができることから、光取り出し効率を向上させることができる。
(2)本発明の一実施態様においては、第2導電型窒化物半導体層の表面上または表面下に部分的に設けられた電流導通抑制層をさらに備え、電流導通抑制層は、電流導通抑制層に隣接する電流導通抑制層以外の層よりも電流の導通が抑制される層であり、電流導通抑制層は、電流導通抑制層の表面が溝の底面と向かい合うようにして配置されていてもよい。このような構成とすることにより、溝の形成箇所における第1導電型窒化物半導体層の局所的に層厚の薄い部分を有している場合であっても、当該部分と向かい合う部分からより多くの電流を注入することができることから、第1導電型窒化物半導体層において電流を横方向により広げることができ、光取り出し面からより均一に光を取り出すことができる。
(3)本発明の一実施態様においては、第2導電型窒化物半導体層の表面に設けられた第2の溝をさらに備え、第2の溝の底面は溝の底面と向かい合うようにして配置されており、電流導通抑制層は第2の溝の底面上に設けられていてもよい。このような構成とすることにより、溝の形成箇所における第1導電型窒化物半導体層の局所的に層厚の薄い部分を有している場合であっても、当該部分と向かい合う部分からより多くの電流を注入することができることから、第1導電型窒化物半導体層において電流を横方向により広げることができ、光取り出し面からより均一に光を取り出すことができる。また、電流導通抑制層の設置不良を抑制することができるため、窒化物半導体発光素子の歩留まりを向上させることができる。
(4)本発明の一実施態様においては、電流導通抑制層の幅が溝の幅よりも広いことが好ましい。このような構成とすることにより、実施の形態2の窒化物半導体発光素子の光取り出し面からさらに均一に光を取り出すことができる。
(5)本発明の一実施態様においては、光取り出し面に凹凸構造をさらに有することが好ましい。このような構成とすることにより、光取り出し面の表面積が大きくなることから、光取り出し効率をより向上させることができる。
(6)本発明の一実施態様においては、電流導通抑制層がAl(アルミニウム)からなることが好ましい。このような構成とすることにより、電流導通抑制層により発光層からの光を反射することができるため、窒化物半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
(7)本発明の一実施態様においては、発光層から光取り出し面に至るまでの領域における異なる材料からなる複数の層の積層構造は、Al、AlGaN(窒化アルミニウムガリウム)およびAl2O3(酸化アルミニウム)からなる群から選択された少なくとも2種を含んでいてもよい。このような構成とすることによっても、窒化物半導体発光素子の光取り出し効率を向上させることができる。
以上のように本発明の実施の形態および実施例について説明を行なったが、上述の各実施の形態および各実施例の構成を適宜組み合わせることも当初から予定している。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。