JP6259190B2 - 車輪用軸受装置の製造方法 - Google Patents

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本発明は、車両の車輪等を支持するための車輪用軸受装置であって、特にインホイールモータに用いられる車輪用軸受装置の製造方法に関する。
自動車等の車両には、車輪を支持するための車輪用軸受装置が用いられている。この車輪用軸受装置は、図6に示すように、車両のブレーキロータや車輪が取り付けられるフランジ100を有する内軸101と、車両側に固定され内軸101に同心に配置された外輪102と、内軸101と外輪102との間にそれぞれ転動自在に複列に配置された複数の玉103と、複数の玉103を周方向所定間隔に保持する保持器104と、を備えているものがある。
内軸101の外周面には、玉103が転走する内輪軌道101aが形成されている。また、内軸の外周面には、内輪部材105が外嵌されている小径部106が形成されている。内輪軌道101aにおいては、玉103の転走によって摩耗が生じ、また、小径部6においては、玉103を介して繰り返し荷重が作用する。このため、内輪軌道101aや小径部106には、耐摩耗性や疲労強度を高めるべく、高周波焼入れによって硬化層が形成されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2005−214229号公報
ところで近年、電動モータを駆動源とする電動車両の普及が拡大している。このような電動車両には、ホイール(車輪)を直接駆動するインホイールモータが用いられることがある。
インホイールモータは、ホイールの内側、又はホイールの近傍に電動モータを配置し、この電動モータによってホイールを直接駆動するものである。インホイールモータが駆動する車輪についても、上記車輪用軸受装置が適用される。
インホイールモータには、減速機構を介さずに電動モータの回転力をホイールに伝達するダイレクトドライブ方式と、減速機構を介して電動モータの回転力をホイールに伝達するギヤリダクション方式とがある。
これらの内、上記ギヤリダクション方式では、電動モータとホイールとの間といった限られた狭い空間に減速機構を配置する必要がある。このため、電動モータの出力軸に接続された太陽歯車を含んだ遊星歯車機構を車輪用軸受装置の内軸の内周側に設けることがある。
この場合、内軸の内周面には、当該内軸の内周側空間に配置される遊星歯車と噛み合う内歯車が形成される。内歯車は、その強度を確保するために高周波焼入れする必要がある。
しかし、内軸は、外周側に外輪が配置されたり、その外周面に内輪軌道が形成されるので外径寸法が制限される。よって、内周面に内歯車を形成すると、内軸の径方向の厚み寸法を薄肉に設定せざるを得ない等、内軸の径方向の厚み寸法を自由に設定することが困難となる。
内軸の径方向の厚み寸法を比較的薄肉に設定した場合、高周波焼入れによって、外周面側の焼入れと、内周面側の内歯車の焼入れとを同時に行えば、加えられた熱の拡散経路が制限されてしまい、加熱部分に熱が留まってしまう。このため、内軸が厚み方向の全域に亘って焼入れされ、硬化してしまうおそれがある。厚み方向の全域に亘って硬化してしまうと、内軸全体としての靭性が低下し、耐衝撃性を低下させてしまう。
一方、外周面の焼入れと、内周面の内歯車の焼入れとを別々に行えば、熱の留まりは改善されるが、先に焼入れを行うことで得られた硬化層が後の焼入れ時の加熱によって焼き戻され、先に焼入れを行った部分の硬化層の硬さを低下させてしまうおそれがある。この場合、焼き戻された硬化層については、必要な硬さが得られない場合がある。
上記のように、内軸の靭性が低下すると、軸受装置全体としての強度低下を招く。また、硬化層について必要な硬さが得られ無ければ、軸受装置の装置寿命の低下を招く。
つまり、内周面に歯車が形成されている内軸は、適切に熱処理を行うことが困難であり、適切に熱処理が行われないと、装置全体の強度低下及び寿命低下の原因となる。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、内周面に歯車が形成されている内軸の熱処理を適切に行うことができ、装置全体としての強度低下及び寿命低下を抑制できる車輪用軸受装置の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、軸方向一端部に車輪が取り付けられる円筒状の内軸と、複列の転動体を介在した状態で前記内軸の外周外方に同心配置された外輪と、前記複列の転動体の内、軸方向他端側に位置する列の転動体の軌道が外周に形成されているとともに前記内軸の他端部外周面に外嵌された内輪部材と、を備えた車輪用軸受装置において、前記内軸の内周面には、内歯車が形成され、前記内輪部材が外嵌されている前記内軸の他端部外周面の半径と、前記内軸の内周面に形成されている内歯車の歯底の最外半径との差が2.5mm以上に設定され、前記内輪部材が外嵌されている前記内軸の他端部外周面、及び前記内軸の内周面に形成されている内歯車には高周波焼入れによって焼入れ前の素材の硬さよりも硬さが上昇している硬化層が形成され、前記内軸の他端部外周面に形成された硬化層と、前記内歯車の歯底に形成された硬化層との間には、前記内軸の靭性を確保するための未硬化層が設けられ、前記内輪部材が外嵌されている前記他端部外周面よりも軸方向他端側に位置する前記他端部の先端が、硬化されていない未硬化部分とされ、
、前記未硬化部部分は、前記未硬化層に繋がっていることを特徴としている。
上記構成の車輪用軸受装置では、内軸の他端部外周面に形成された硬化層と、内歯車の歯底に形成された硬化層との間に、内軸の靭性を確保するための未硬化層が設けられている。このため、内軸の靭性の低下を抑制することができる。
また、上記車輪用軸受装置では、内軸の他端部外周面の硬化層と、内歯車の歯底の硬化層との間に、未硬化層が存在するように焼入れが行われている。よって、一方周面側の硬化層を形成する際の焼入れによる加熱の影響が、他方周面側の硬化層に及ぶのが抑制される。この結果、両硬化層において必要な表面硬さを確保することができる。
以上のように、本発明によれば、内軸の熱処理を適切に行うことができる。これによって、内軸の靭性の低下を抑制しかつ必要な表面硬さを確保することができ、装置全体の強度低下及び寿命低下を抑制できる。
本発明の車輪用軸受装置の製造方法によれば、内周面に歯車が形成されている内軸の熱処理を適切に行うことができ、装置全体としての強度低下及び寿命低下を抑制できる。
本発明の一実施形態に係る車輪用軸受装置の断面図である。 内軸の製造工程の一部を示したフローチャートである。 外周面側及び内周面側から高周波焼入れが行われた内軸の断面図であり、内軸に形成された硬化層のプロファイルを示している。 図3中、IV−IV線上の断面硬さ分布を測定した結果の一例を示すグラフである。 小径部における外周面の表面硬さに対して、寸法Tが及ぼす影響を示したグラフである。 従来の車輪用軸受装置の断面図である。
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る車輪用軸受装置1の断面図である。この車輪用軸受装置1は、電気自動車などの電動車両に用いられるインホイールモータ(図示せず)が駆動する駆動輪(車輪、図示せず)を車体に対して回転自在に支持する軸受装置として用いられるものである。
この車輪用軸受装置1は、円筒状の内軸2と、内軸2の外周側に同心に配置された外輪3と、複列に配置され内軸2と外輪3との間に転動自在に介在している複数の転動体としての玉4と、複列の玉4をそれぞれ周方向に保持する一対の保持器5とを備えており、複列のアンギュラ玉軸受を構成している。
外輪3は、例えば、S50Cや、SCM440等の炭素含有量が0.4wt%以上の機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼を用いて形成された円筒状の部材である。
外輪3の外周面には、駆動輪を一体回転可能に固定するための固定部材3cが突設されている。つまり、外輪3は、前記駆動輪が取り付けられる車軸であるとともに、車輪用軸受装置1の回転輪を構成している。
外輪3の内周面には、複列の玉4が転動する第1および第2外輪軌道3a,3bが形成されている。
内軸2も、外輪3と同様、例えば、S50Cや、SCM440等の炭素含有量が0.4wt%以上の機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼を用いて形成された軸方向に沿う円筒状の部材である。
内軸2の軸方向一端部には、車輪用軸受装置1を車両側のナックル等に固定するためのフランジ2cが形成されている。つまり、内軸2は、車体側に固定される固定輪を構成している。
内軸2の外周面には、第1外輪軌道3aに対向する第1内輪軌道2aが形成されている。内軸2の他端部には、第1内輪軌道2aよりも小径の小径部6が形成されている。この小径部6には、第2外輪軌道3bに対向する第2内輪軌道2bが外周面に形成された円環状の内輪部材7が外嵌されている。
内輪部材7は、その端面7aが、内軸2の外周面と小径部6とをつなぐ段差面8に当接した状態で圧入、固定されている。
第1内輪軌道2aと、第1外輪軌道3aとの間、及び、第1内輪軌道2aよりも軸方向他端側に位置する第2内輪軌道2bと、第2外輪軌道3bとの間には、それぞれ上述の複数の玉4が転動自在に配置されている。
上記内軸2の外周面側に形成されている第1内輪軌道2aでは、玉4の転走によって摩耗が生じ、また、小径部6においては、玉4を介して繰り返し荷重が作用する。よって、第1内輪軌道2aの外周表面、及び小径部6の外周表面には、耐摩耗性や疲労強度を高めることを目的として高周波焼入れによる硬化層が形成されている。
以上の構成によって、車輪用軸受装置1は、内軸2が車体側に固定されることで、外輪3に固定される前記駆動輪を車体に対して回転自在に支持する。
また、内軸2の内周面には、歯車10が形成されている。歯車10は、前記インホイールモータの回転力を駆動輪に伝達するためのものである。内軸2の内周側には、インホイールモータが備えている電動モータが出力する回転力によって駆動される太陽歯車(図示せず)と、この太陽歯車及び歯車10の両方に噛み合う複数の遊星歯車(図示せず)とが配置される。つまり、内軸2の内周側には、電動モータの回転力を減速するための遊星歯車機構が設けられる。歯車10は、この遊星歯車機構の内歯車を構成している。
電動モータが出力する回転力は、前記遊星歯車機構によって減速され、内軸2の軸方向他端側から外側に突出して駆動輪と一体回転可能に結合された伝達シャフトに伝達される。これによって、駆動輪は、電動モータの回転力によって駆動される。
また、内軸2の内周面側に形成されている歯車10についても、耐摩耗性や疲労強度を高めるため、歯部表面に高周波焼入れによる硬化層が形成されている。
つまり、内軸2は、外周面側及び内周面側から高周波焼入れが行われる。
ここで、内軸2は、外周側に外輪3が配置されたり、外周面に第1内輪軌道2aが形成されたりするので、その外径寸法が制限される。さらに、内軸2は、内周側にも遊星歯車機構を構成する歯車10が形成されている。このため、内軸2の径方向の厚み寸法は、外輪3の寸法や、遊星歯車機構の寸法によって制限され、自由に設定することが困難である。このため、内軸の径方向の厚み寸法は、比較的薄肉に設定されている。
上記のように径方向の厚み寸法が比較的薄肉の内軸2に対して、外周面及び内周面の両方から同時に高周波焼入れを行えば、熱は逃げ場がなく留まってしまうため、内軸2が厚み方向の全域に亘って硬化してしまうおそれがある。
このため、本実施形態では、内軸2を製造する際、外周面側の焼入れと、内周面側の焼入れとを別々に行う。
図2は、内軸2の製造工程の一部を示したフローチャートである。
内軸2を製造するには、まず、素材から円筒状とされた内軸2の粗形品の形成を行う(ステップS1)。
次いで、粗形品に対して機械加工を行い、第1内輪軌道2a、及び小径部6を形成する(ステップS2)。
そして、ステップS2にて形成した第1内輪軌道2a、及び小径部6に対して外周側から加熱コイルを接近させて高周波焼入れを行い、内軸2の外周面側の必要な部分に硬化層を形成する(ステップS3)。
その後、内周面側の歯車10を形成するための歯切加工を行い(ステップS4)、内周側から加熱コイルを接近させて高周波焼入れを行い、歯車10の表面部に硬化層を形成する(ステップS5)。
本実施形態では、外周面側の高周波焼入れを行った後に(ステップS3)、内周面側の歯切加工を行うので、ステップS4において形成される歯車10には、少なくとも外周面側の高周波焼入れの加熱で生じる歪が生じることはない。これによって、歯車10の歪量をできるだけ小さく抑えることができる。
図3は、外周面側及び内周面側から高周波焼入れが行われた内軸2の断面図であり、内軸2に形成された硬化層のプロファイルを示している。
図3に示すように、内軸2の外周面側には、第1硬化層L1と、第2硬化層L2とが形成されている。第1硬化層L1は、フランジ2cの基端部から第1内輪軌道2aに亘って形成されている。第1硬化層L1は、フランジ2cの基端部の疲労強度向上、及び第1内輪軌道2aの耐摩耗性向上のために形成されている。
第2硬化層L2は、段差面8から小径部6の外周面に亘って形成されている。第2硬化層L2は、小径部6の疲労強度向上のために形成されている。
また、内軸2の内周面側には、歯車10の歯面に沿って第3硬化層L3が形成されている。第3硬化層L3は、歯車10の耐摩耗性、及び疲労強度向上のために形成されている。
なお、図3において示す各硬化層は、焼入れによって、内軸2を形成している素材の生地に対して物理的又は化学的性質の差異が区別可能な範囲を示している。より具体的には、素材の生地の断面硬さに対して、焼入れによる断面硬さが上昇していると判断される範囲を硬化層として示している。
図3に示すように、小径部6は、軸方向において、歯車10が形成されている部分と重複している。従って、小径部6の外周面6aと、歯車10の歯底10aとの間の寸法Tは、他の部分における径方向の厚み寸法と比較して最も小さくなっている。
なお、この寸法Tは、内軸2における小径部6の外周面6a(他端部外周面)の半径と、内軸2の内周面に形成されている歯車10の歯底10aの最外半径との差である。
ここで、本実施形態の車輪用軸受装置1では、寸法Tが2.5mmに設定されている。
また、内軸2における小径部6の外周面6aに形成された第2硬化層L2、及び歯車10に形成された第3硬化層L3の歯底10aの部分は、それぞれ個別に高周波焼入れを行ったときの互いの全硬化層深さを合計したときの合計値が2.5mmより所定量小さい値となるように形成されている。このため、内軸2における小径部6の外周面6aの第2硬化層L2と、歯車10の第3硬化層L3との間には、両硬化層L2,L3が及ばない範囲が存在している。つまり、両硬化層L2,L3の間には、熱処理前の素材の硬さを維持している未硬化層Sが内軸2の径方向断面に設けられている。これによって、内軸2の径方向全域が硬化されるのが防止され、内軸2の靭性の低下が抑制される。
このように、内軸2の径方向断面において、両硬化層L2,L3の間には、内軸2の靭性を確保するための未硬化層Sが形成されている。
なお、全硬化層深さとは、硬化層の表面から、硬化層と、内軸2を形成している素材の生地との物理的又は化学的性質の差異が区別できない位置までの距離をいう。
本実施形態の内軸2は、図2で説明したように、まず外周面側の硬化層(第1硬化層L1、及び第2硬化層L2)を高周波焼入れによって形成した後に、内周面側の硬化層(第3硬化層L3)を高周波焼入れによって形成する。
本実施形態の内軸2は、外周側に外輪3が配置されるとともに、内周側に前記遊星歯車機構が配置されるので、径方向の厚み寸法の設定が制限される。このため、内軸2の厚み寸法は、比較的薄肉に設定せざるを得ない。
比較的薄肉に設定された内軸2に対して、例えば、外周面側の高周波焼入れと、内周面側の高周波焼入れとを同時に行えば、加えられた熱の拡散経路が制限されてしまい、加熱部分に熱が留まってしまう。このため、内軸2が厚み方向全域に亘って焼入れされ、硬化してしまうおそれが生じる。厚み方向の全域に亘って硬化してしまうと、内軸2全体としての靭性が低下し、耐衝撃性を低下させてしまう。
この点、本実施形態では、上述のように、外周面側の硬化層(第1硬化層L1、及び第2硬化層L2)を形成した後に、内周面側の硬化層(第3硬化層L3)を形成するといったように、外周面側の焼入れと、内周面側の焼入れとを別工程として行うので、加熱時の熱の拡散経路を確保でき、加熱部分に熱が留まってしまうのを抑制することができる。この結果、内軸2が厚み方向全域に亘って焼入れ、硬化してしまうのを抑制できる。
さらに、内軸2が厚み方向全域に亘って焼入れ、硬化してしまうのを抑制できることで、上述のように、両硬化層L2,L3を形成する際に未硬化層Sを内軸2の径方向断面に設けることができ、内軸2全体としての靭性、及び耐衝撃性の低下を抑制することができる。
一方、先に焼入れを行うことで得られた硬化層(第1硬化層L1、及び第2硬化層L2)が後の焼入れ時の加熱によって焼き戻され、先に焼入れを行った硬化層の硬さを低下させてしまうおそれがある。この場合、焼き戻された硬化層については、必要な硬さが得られない場合がある。
これに対して、本実施形態の車輪用軸受装置1では、第2硬化層L2、及び第3硬化層L3は、それぞれ個別に高周波焼入れを行ったときの互いの全硬化層深さを合計したときの合計値が2.5mmより所定量小さい値となるように、高周波焼入れを行う。これによって、内軸2における小径部6の外周面6aの第2硬化層L2と、歯車10の第3硬化層L3との間に、両硬化層が及ばない範囲である未硬化層Sが存在するように焼入れが行われる。よって、一方周面側の硬化層を形成する際の焼入れによる加熱の影響が、他方周面側の硬化層に及ぶのが抑制される。この結果、両硬化層L2,L3において、必要な表面硬さを確保することができる。
なお、第2硬化層L2を形成するための高周波焼入れの焼入れ条件、及び第3硬化層L3を形成するために高周波焼入れの焼入れ条件は、各硬化層として必要な表面硬さを得つつ、上述の全硬化層深さが得られるように設定されている。
図4は、図3中、IV−IV線上の断面硬さ分布を測定した結果の一例を示すグラフである。なお、IV−IV線は、内軸2の歯底10aの径方向最外部分を通過している。図中、縦軸は、内軸2の断面硬さ、横軸は、小径部6の外周面6aからの径方向深さ寸法(mm)を示している。
図中、内軸2を形成している素材の生地の硬さとみなすことができる硬さH1以下の部分は、小径部6の外周面6aからの径方向深さ寸法が約1mm〜1.8mm程度の範囲である。この範囲は、図3にて示した未硬化層Sに相当する。未硬化層Sの範囲外は、第2硬化層L2及び第3硬化層L3に相当する。
また、小径部6の外周面6aの表面近傍の断面硬さ、及び歯車10の歯底10a表面近傍の断面硬さは、それぞれの表面において必要な断面硬さとして予め定められている値H2,H3よりも大きい値となっている。
このように、本実施形態の内軸2は、未硬化層Sを内軸2の径方向断面に設けることで、内軸2全体としての靭性、及び耐衝撃性の低下が抑制されるとともに、内軸2における必要な表面硬さが確保される。
以上のように、本発明の車輪用軸受装置1によれば、内軸2の熱処理が適切に行われる。これによって、内軸2の靭性の低下を抑制しかつ必要な表面硬さを確保することができ、装置1全体の強度低下及び寿命低下を抑制できる。
なお、本実施形態では、小径部6の外周面6aと、歯車10の歯底10aとの間の寸法Tを2.5mmと設定したが、2.5mm以上であれば、未硬化層Sを内軸2の径方向断面に設けることが可能である。よって、前記寸法Tは2.5mm以上の範囲で設定することができる。
ただし、内軸2の厚み寸法は、上述のように、外輪3や遊星歯車機構の存在によって、設定可能な値が制限され、比較的薄肉に設定せざるを得ない。さらに、内軸2は、できるだけ軽量であることが望ましい。このため、前記寸法Tは、5mm以下に設定することが好ましく、これによって、内軸2を無駄に厚肉にすることなく、軽量なものとすることができる。
また、上記実施形態では、複列のアンギュラ玉軸受を構成する車輪用軸受装置1を示したが、例えば、複列の円すいころ軸受を構成する車輪用軸受装置にも適用できる。
次に、内軸2における小径部6の外周面6aの表面硬さに対して、小径部6の外周面6aと、歯車10の歯底10aとの間の寸法Tが及ぼす影響について検証した試験結果について説明する。
試験方法としては、上記実施形態にて説明した車輪用軸受装置1の内軸2について、前記寸法Tを1.5mm〜5.5mmの範囲で0.5mmごとに設定したものを、図2に示した工程にしたがって形成した。
なお、内軸2の形成に用いた材料としては、S55Cを用いた。また、内軸2の外周面側に第2硬化層L2を形成する際の高周波焼入れの条件、及び内周面側に第3硬化層L3を形成する際の高周波焼入れの条件は、下記表1の通りである。冷却剤としては、水を用いた。
Figure 0006259190
上記のようにして得た各内軸2における小径部の6外周面6aの表面硬さ(ロックウェル硬さ)を測定し、それぞれ比較した。
図5は、小径部6の外周面6aの表面硬さに対して、前記寸法Tが及ぼす影響を示したグラフである。図中、縦軸は、小径部6の外周面6aの表面硬さ、横軸は、小径部6の外周面6aから歯底10aまでの寸法Tを示している。
図中、寸法Tが2.5mm以上の場合、外周面6aの表面硬さは、外周面6aとして必要な硬さの値を上回っている。また、寸法Tが、2.5mm以上の場合、その硬さの値がほぼ一定となっている。これは、高周波焼入れの条件が、外周面6aとして必要な硬さが得られるように設定されており、寸法Tが2.5mm以上では、高周波焼入れの設定によって定まる目標硬さが得られている。
一方、寸法Tが1.5mm、及び2mmの場合、外周面6aの表面硬さは、外周面6aとして必要な表面硬さの値を下回っている。これは、外周面側の第2硬化層L2の形成後、内周面側の第3硬化層L3を高周波焼入れによって形成する際に、高周波焼入れによる熱が外周面側に伝わり、第2硬化層L2が焼き戻されている。
第2硬化層L2は、第3硬化層L3を形成するための高周波焼入れによる加熱によって焼き戻され、必要な表面硬さの値を下回る値にまで表面硬さが低下している。
つまり、寸法Tが1.5mm、及び2mmの場合、内軸2の径方向の厚みが少ないために、内周側からの加熱が外周面にまで伝導し、第2硬化層L2の表面硬さを低下させている。
この結果から、寸法Tを2.5mm以上に設定することで、一方周面側の硬化層を形成する際の高周波焼入れによる加熱の影響が、他方周面側の硬化層に及ぶのが抑制でき、両硬化層において、必要な表面硬さを確保することができることが明らかとなった。
1:車輪用軸受装置 2:内軸 3:外輪 4:玉(転動体)
6:小径部 6a:外周面(他端部外周面) 7:内輪部材
10:歯車(内歯車) 10a:歯底
L2:第2硬化層 L3:第3硬化層 S:未硬化層

Claims (2)

  1. 軸方向一端部に車輪が取り付けられる円筒状の内軸と、
    複列の転動体を介在した状態で前記内軸の外周外方に同心配置された外輪と、
    前記複列の転動体の内、軸方向他端側に位置する列の転動体の軌道が外周に形成されているとともに前記内軸の他端部外周面に外嵌された内輪部材と、を備え、
    前記内軸の内周面に内歯車が形成されている車輪用軸受装置の製造方法において、
    前記内軸の粗形品の外周面に対して、前記内輪部材が外嵌される前記内軸の他端部外周面を形成する第1工程と、
    前記他端部外周面に高周波焼入れを行うことで焼入れ前の素材の硬さよりも硬さが上昇している硬化層を形成する第2工程と、
    前記内軸の粗形品の内周面に対して、前記内歯車を形成する第3工程と、
    前記内歯車に対して高周波焼入れを行うことで焼入れ前の素材の硬さよりも硬さが上昇している硬化層を形成する第4工程と、を含み、
    前記第1工程によって形成される前記内軸の他端部外周面の半径と、前記第3工程によって形成される内歯車の歯底の最外半径との差が2.5mm以上に設定され、
    前記第2工程によって前記内軸の他端部外周面に形成された硬化層と、前記第4工程によって前記内歯車の歯底に形成された硬化層との間には、前記内軸の靭性を確保するための未硬化層が設けられ、
    前記内輪部材が外嵌されている前記他端部外周面よりも軸方向他端側に位置する前記他端部の先端が、硬化されていない未硬化部分とされ、
    前記未硬化部部分は、前記未硬化層に繋がっており、
    前記第3工程が前記第2工程の後に行われることで、前記第2工程と前記第4工程との間に前記第3工程が行われる
    ことを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。
  2. 軸方向一端部に車輪が取り付けられる円筒状の内軸と、
    複列の転動体を介在した状態で前記内軸の外周外方に同心配置された外輪と、
    前記複列の転動体の内、軸方向他端側に位置する列の転動体の軌道が外周に形成されているとともに前記内軸の他端部外周面に外嵌された内輪部材と、を備え、
    前記内軸の内周面に内歯車が形成されている車輪用軸受装置の製造方法において、
    前記内軸の粗形品の外周面に対して、前記内輪部材が外嵌される前記内軸の他端部外周面を形成する第1工程と、
    前記他端部外周面に高周波焼入れを行うことで焼入れ前の素材の硬さよりも硬さが上昇している第1の硬化層を形成する第2工程と、
    前記内軸の粗形品の内周面に対して、前記内歯車を形成する第3工程と、
    前記内歯車に対して高周波焼入れを行うことで焼入れ前の素材の硬さよりも硬さが上昇している第2の硬化層を形成する第4工程と、を含み、
    前記第1工程によって形成される前記内軸の他端部外周面の半径と、前記第3工程によって形成される内歯車の歯底の最外半径との差が2.5mm以上に設定され、
    前記第1の硬化層は、前記他端部外周面からの径方向深さ寸法が0mmから1.0mmの範囲とされ、
    前記第2の硬化層は、前記内歯車の歯底からの径方向深さ寸法が0mmから0.7mmの範囲とされ、
    前記第2工程によって前記内軸の他端部外周面に形成された硬化層と、前記第4工程によって前記内歯車の歯底に形成された硬化層との間には、前記内軸の靭性を確保するための未硬化層が設けられ、
    前記内輪部材が外嵌されている前記他端部外周面よりも軸方向他端側に位置する前記他端部の先端が、硬化されていない未硬化部分とされ、
    前記未硬化部部分は、前記未硬化層に繋がっており、
    前記第3工程が前記第2工程の後に行われることで、前記第2工程と前記第4工程との間に前記第3工程が行われる
    ことを特徴とする車輪用軸受装置の製造方法。
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