以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る被写体距離表示装置を備えるレンズ装置が撮像装置に取り付いた状態を示す縦断面図である。以降の各図において同一部材は同一符号が付されている。
このレンズ装置1として、撮像装置27に対して脱着可能な交換式レンズを例示する。ただし、被写体距離表示装置を備えるレンズ装置であればよく、使用用途や装着先の撮像装置の種類は問わない。また、レンズ装置1は交換式であることは必須でなく、撮像装置に固定されたものであってもよい。
レンズ装置1における第1レンズL1、第2レンズであるフォーカスレンズL2、及び第3レンズL3の光軸は一致しており、これらの光軸をC0と記す。以降、方向の呼称において、光軸方向をX方向と定義する。また、水平方向をY方向、垂直方向をZ方向と定義する。X方向について、入射面側と射出面側とを区別せずに軸方向の意味で用いる場合は、単に「X方向」と記すが、区別する場合は、入射面側を「−X方向」、射出面側を「+X方向」と記す。
Y方向、Z方向についても同様に用いる。すなわち、Y方向について、入射面側からレンズ装置1を見て右方向(紙面上の手前方向)を−Y方向、左方向(紙面上の奥方向)を+Y方向と記す。Z方向について、入射面側からレンズ装置1を見て上方向(図の上方)を+Z方向、下方向を−Z方向と記す。
レンズ装置1において、レンズ外筒11の−X方向の端部には第1レンズL1を保持する保持枠12が取り付けられている。また、レンズ外筒11の+X方向の端部には、第3レンズL3が保持されている。レンズ外筒11の内部には、フォーカスレンズL2を保持する保持部材13が、X方向(光軸C0方向)に移動可能に配置されている。保持部材13の下部にはX方向に貫通する丸穴13aが形成される。保持部材13の上部には、X方向に、−Z側に開口したU字穴13bがX方向に延設形成されている。
また、保持部材13の下部には、−Z方向に開口する切り欠き部13cが形成されている。切り欠き部13cは、YZ平面に対して±45°傾いた2つの斜面からなり、後述する球面部105dと当接係合するように構成されている。
保持軸14は、保持部材13に形成された丸穴13aを貫通しており、保持部材13をX方向に移動可能に保持している。また保持軸14は、レンズ外筒11の+X方向端部近傍の垂直部分と保持枠12とに光軸C0方向において挟まれて固定保持されている。また、保持部材13の光軸C0周りの回転を防止するための回転止め軸15が設けられる。回転止め軸15は、保持部材13に形成されたU字穴13bに係合しており、保持軸14と回転止め軸15のピッチ誤差を吸収しながら、保持部材13の光軸C0周りの位相を決めている。
レンズ外筒11内の下部には、フォーカス駆動部100が配置される。フォーカス駆動部100には振動子保持部材105及び固定台110等が含まれる。固定台110は、フォーカス駆動部100における固定側の部材であり、レンズ外筒11に固定されている。振動子保持部材105は、フォーカス駆動部100における可動側の部材であり、球面部105dを備える。
後述する駆動原理により、フォーカス駆動部100は、振動子保持部材105のX方向の駆動力を球面部105dと切り欠き部13cとの当接係合を介して保持部材13に伝えることで、保持部材13を固定台110に対して相対的にX方向に駆動する。これにより、フォーカスレンズL2がX方向に移動する。
その際、球面部105dは+Z方向に付勢されて切り欠き部13cに当接することにより、切り欠き部13cと球面部105dとはX方向にガタなく当接することが可能となっている。このような構成とすることで、振動子保持部材105及び保持部材13はX方向に一体的に動くことができる。これによりフォーカスレンズL2をフォーカス駆動部100でオーバーシュートなく高精度に駆動制御することができる。
レンズ外筒11内にはまた、フォーカスレンズ位置検出部16が配置される。フォーカスレンズ位置検出部16に対向するように、スケール17が保持部材13に貼り付けられている。スケール17は低反射部と高反射部が所定ピッチでX方向に交互に並んだパターンでなる。
フォーカスレンズ位置検出部16は、スケール17に赤外光16aを投光し、その反射光を受光し、反射光の強度変化の回数をカウントすることで、フォーカスレンズ位置検出部16とスケール17との相対位置関係を検出する。スケール17は保持部材13に貼り付けられていることから、フォーカスレンズ位置検出部16による検出結果から、保持部材13及び保持部材13に保持されたフォーカスレンズL2の位置を検出することができる。ここで検出されるフォーカスレンズL2の位置は、撮像装置27の撮像素子23に対するフォーカスレンズL2の相対的な位置でもある。なお、フォーカスレンズL2の位置を検出する機構は例示に限定されない。
撮像装置27において、カメラ外装22の−X方向の面にレンズ取付部21が設けられ、レンズ取付部21の内側に、フォーカスレンズL2を透過した撮影光束を取り込むための円形の開口が形成されている。カメラ外装22の+X方向の面には外部表示部26が配置されている。
レンズ外筒11の+X方向の端部に、撮像装置27に取り付くための撮像装置取付部18が設けられる。撮像装置取付部18とレンズ取付部21との間のX軸周りのバヨネット連結によってレンズ装置1と撮像装置27とが脱着可能となる構成となっている。
レンズ装置1は、演算処理部20を備える。演算処理部20は、レンズ装置1における全ての演算、制御、記憶の処理を担っている。レンズ外筒11の上部には、被写体距離表示部19が設けられる。被写体距離表示部19は、レンズ外筒11の+Z方向の面に取り付けられ、演算処理部20で算出・特定された被写体距離を表示する。
演算処理部20の記憶領域にはレンズ情報が保存されており、このレンズ情報は被写体距離の算出時に用いられる。このレンズ情報には、フォーカスレンズ位置検出部16の検出結果と被写体距離とを対応させるテーブル情報も含まれる。演算処理部20は、レンズ情報と、フォーカスレンズ位置検出部16の検出結果とに基づいて、被写体距離を算出する。
演算処理部20は、フォーカスレンズ位置検出部16の検出結果に基づいて、目標フォーカスレンズ位置を設定し、フォーカスレンズL2を目標位置へ駆動するようフォーカス駆動部100を制御する機能も果たしている。演算処理部20はさらに、焦点状態検出のためにフォーカスレンズL2の位置を周期的に変動させるいわゆるウォブリング動作を行うようにフォーカス駆動部100を制御する。その際、フォーカスレンズL2をウォブリング駆動する機能はフォーカス駆動部100が担っている。ウォブリング動作は、フォーカスレンズL2を光軸C0方向に往復移動させて合焦位置へ追従するための動作である。
詳細は後述するが、本実施の形態では、演算処理部20は、被写体距離表示部19への被写体距離の表示を、フォーカス駆動部100によるウォブリング駆動と同期して更新する機能を果たす。
カメラ外装22内において、フォーカスレンズL2を透過した撮影光束の結像面近傍に、撮像素子23が配設される。撮像素子23は、結像した被写体像を映像信号に変換する。撮像装置27はまた、カメラ演算処理部24、記憶部25を備える。カメラ演算処理部24は撮像装置27における全ての演算、制御、記憶の処理を担っている。記憶部25は、カメラ演算処理部24からの指令信号に基づいて、撮像素子23で得られた映像信号を記憶する。外部表示部26は、カメラ演算処理部24からの指令信号に基づいて、撮像素子23で得られた映像信号を表示する。
撮像装置27において、選択的に設定可能な撮影モードとしては少なくとも2つのモードがある。そのうち第1の撮影モードは、撮像素子23で得られた映像信号を外部表示部26に表示するモードであり、撮影者が外部表示部26に表示されたリアルタイム画像を見ながら静止画撮影の準備を行うためのモードである。もう1つの第2の撮影モードは、撮像素子23で得られた映像信号を記憶部25に保存するモードであり、撮影者が外部表示部26に表示されたリアルタイム画像を見ながら動画を撮影するためのモードでもある。
これら2つの撮影モードの切り替えについては、カメラ外装22に設けられた不図示の入力部に対する入力結果に基づいて、カメラ演算処理部24が判断してモード切り替えを行う。
撮像装置27にレンズ装置1が取り付いている状態では、レンズ装置1の演算処理部20と撮像装置27のカメラ演算処理部24とは、通信線により接続されて通信可能となるように構成されている。これにより、演算処理部20とカメラ演算処理部24とは、互いの状態を常に把握している。そのため、レンズ装置1の演算処理部20は、撮像装置27で設定されている撮影モードに応じて、被写体距離表示部19に表示する被写体距離を更新する周期を切り替えることが可能となる。
図2(a)、(b)は、フォーカス駆動部100の上面図、縦断面図である。
フォーカス駆動部100は、交流電圧を印加した圧電素子の超音波振動を利用して駆動力を得る超音波モータで構成されている。図2(a)ではフォーカス駆動部100を+Z方向から見ており、図2(b)は−Y方向から見ている。
スライダ101が、2本の固定ビス111で固定台110に固定されている。本実施の形態で採用される超音波モータでは、振動板102と圧電素子103とで振動子109が構成される。スライダ101の上面である接触面101aに、振動子109が加圧接触する。振動板102は、接触面101aに押圧を伴う加圧接触状態で接触する。振動板102に接着剤などにより圧電素子103が圧着されている。圧電素子103に電圧を印加することにより超音波振動を発生させ、振動板102に楕円運動を発生させることができる。
振動子保持部材105は、振動子109及びその周辺の部品を保持している。加圧部材106は、加圧受け部材108の貫通穴に嵌合し、スライダ101の接触面101aに対して概ね垂直な方向にのみ移動可能に保持される。加圧部材106は、振動子保持部材105の中に取り付けられた不図示のバネ部材からの押圧力を振動子109に伝え、振動子109をスライダ101の接触面101aに加圧接触させる。
天板117は、4本の固定ビス118で固定台110に固定されている。天板117の中央には長方形の開口117aが空いており、振動子保持部材105の突出部105cが開口117aから上方突出している。
振動子109を保持した振動子保持部材105は、スライダ101と天板117との間で挟み込まれることで保持される。その際、転動ボール116が、振動子保持部材105に形成された溝と天板117に形成された溝との間に介在することで、天板117に対して振動子保持部材105を変位可能にしている。
振動子109に発生した楕円運動により、振動子109とスライダ101との間にX方向の相対的な移動が発生する。この観点で、固定台110、スライダ101、固定ビス111、天板117及び固定ビス118が固定部となる。一方、振動子109を含めた、加圧部材106、バネ部材、それらを保持する振動子保持部材105が可動部となる。つまりこの超音波モータは、駆動源である振動子109自身が可動する自走式のモータユニットとなっている。
振動子保持部材105に設けられた球面部105d(図1に図示、図2には不図示)が、切り欠き部13c(図1)に当接することにより、振動子保持部材105はフォーカスレンズL2を保持する保持部材13と動作的に連結される。これによりフォーカス駆動部100がフォーカスレンズL2をX方向に駆動することが可能となる。
図3(a)、(b)は、被写体距離表示部19における被写体距離の表示例を示す図である。
被写体距離表示部19は、多画素からなる液晶表示装置で構成されることで、様々な表示を行える。図3(a)では、被写体距離をデジタル表示する例を示しており、図3(b)では、被写体距離をアナログ的なバー表示で表示する例を示している。
すなわち、図3(a)のデジタル表示では、7セグメントスタイルの数字で被写体距離を表示している(例えば、10.5)。明確な数字として被写体距離が表示されるため、数値データとして活用しやすいというメリットがある。一方で従来のフォーカス環に連結したアナログ的な距離表示から大きく異なるため、慣れにくいというデメリットがある。
一方、図3(b)のアナログ表示では、至近端から無限端までの範囲を示した固定目盛19aに対して、被写体距離を示す指標19bが動いていく表示方式としている。このような表示方式とすることで、従来のフォーカス環に連結したアナログ的な距離表示に慣れ親しんだ撮影者に分かりやすい表示態様となっている。その反面、正確な距離を数値として読みとることは容易でない。
そこで撮影者の好みや用途に応じて、デジタル表示とアナログ表示を切り替えることが可能となっている。これらの表示態様の切り替えは、カメラ外装22に設けられた不図示の入力部に対する入力結果に基づいてカメラ演算処理部24及び演算処理部20が制御する。
以下に、演算処理部20による被写体距離の算出・特定及び表示の制御処理について説明する。
図4(a)は、ウォブリング動作によるフォーカスレンズL2の位置の時間的変化を示す図である。図4(b)は、本発明を適用した場合の被写体距離表示部19における被写体距離の表示の時間的変化を示す図である。図4(c)は、従来(本発明を適用しない場合)の被写体距離表示部19における被写体距離の表示の時間的変化を示す図である。
図4(a)において、横軸は経過時間、縦軸はフォーカスレンズL2の位置(以下、「レンズ位置」と略記することもある)を表している。図4(a)では、撮影モードが第2の撮影モード(動画撮影時)で、焦点状態検出の結果が合焦近傍である場合を示している。合焦近傍の場合とは、ウォブリング動作による振幅の範囲(往復範囲)内に合焦位置がある場合である。
ここで、ウォブリング動作においてはフォーカスレンズL2が光軸C0方向に往復するが、ウォブリング動作の1周期は、撮影モードに応じて決まっている。また、ウォブリング動作の振幅は予め決まっており、各撮影モードで共通とする。
ウォブリング動作における往復動作の振幅中心は、ウォブリング動作の往復範囲(振幅における+X側の端位置から−X側の端位置までの範囲)と合焦位置との関係の判定結果から決められる。往復範囲と合焦位置との関係の判定手法は限定されないが、例えば、撮像素子23の出力から得られるコントラスト情報に基づいて、撮像装置27のカメラ演算処理部24が判定する。カメラ演算処理部24は、各時刻tにおいて、撮像素子23からの映像信号を取得する。撮像素子23からの映像信号の取得は1/60秒の周期で行われ、往復動作は1/15秒の周期で行われる。カメラ演算処理部24の判定結果から、演算処理部20は、次の1周期における振幅中心を決定する。
具体例として、カメラ演算処理部24は、フォーカスレンズL2が、今回の周期における+X側の端位置、−X側の端位置にあるときに撮像素子23からそれぞれ得られる映像信号のコントラスト値を比較する。その比較の結果、ウォブリング動作の往復範囲内に合焦位置が存在しないと判定された場合は、演算処理部20は、次の1周期における振幅中心を、合焦方向に1段階変化させる。変化の1段階の量は予め定められている。合焦方向は、+X側の端位置、−X側の端位置にあるときのコントラスト値の大小比較からわかる。一方、比較の結果、ウォブリング動作の往復範囲内に合焦位置があると判定された場合は、演算処理部20は、振幅中心を今回の周期における値のまま維持して、次の1周期に移行する。
なお、初期段階等において、往復範囲と合焦位置との関係を判定できないような場合は、デフォルトで決められた位置が振幅中心とされる。
図4(a)について説明すると、例えば、時刻t0〜t4間が1周期の長さである。まず、時刻t0〜t3では、ウォブリング動作により、フォーカスレンズL2は、レンズ位置f0を振幅中心としてレンズ位置f1からレンズ位置f21の間を往復動作する。すなわち、時刻t0でレンズ位置f0、時刻t1でレンズ位置f1、時刻t2でレンズ位置f0、時刻t3でレンズ位置f21へと、レンズ位置が遷移する。
図4(a)の例においては、例えば時刻t1と時刻t3とで撮像素子23から得られる映像信号のコントラスト値が比較され、次の周期である時刻t4から時刻t7までのフォーカスレンズL2の動き方が決定される。すなわち、最初の周期において、往復運動端である+X側の端位置(時刻t1におけるレンズ位置f1)、−X側の端位置(時刻t3におけるレンズ位置f21)に対応する撮像素子23の映像信号のコントラスト値が比較される。カメラ演算処理部24は、両者のコントラスト値の差が所定量以下であれば合焦近傍、すなわち、合焦位置が今回の往復範囲内にあると判定し、両者のコントラスト値の差が所定量より大きければ、合焦位置が今回の往復範囲外にあると判定する。
図4(a)の例では、当初から合焦位置が往復範囲にあるとしたので、次の1周期における時刻t4〜t7でも、レンズ位置f0を振幅中心として往復動作する。その後の周期においても同様の判定となり、振幅中心を同じくする往復動作が繰り返されることになる。
ところで従来の被写体距離の表示手法では、フォーカスレンズL2の位置を随時検出し、被写体距離を表示していた。例えば、図4(c)に示すように、フォーカスレンズL2の動きに対応して時刻t毎に被写体距離表示が更新される。レンズ位置f0に基づき算出された被写体距離を10.0mm、フォーカスレンズ位置f1に基づく被写体距離を11.0mm、フォーカスレンズ位置f21に基づく被写体距離を9.0mmとする。すると、時刻t0、t1、t2、t3、t4でそれぞれ10.0mm、11.0mm、10.0m、9.0m、10.0mmと、表示する被写体距離が周期的に変動してしまう。
このように、時刻t毎のレンズ位置に基づいて算出した被写体距離をそのまま表示してしまうと、表示する被写体距離が小刻みに変動しすぎ、ユーザにとって煩わしく、被写体距離が認識しにくい。
そこで本実施の形態では、演算処理部20は、検出されたレンズ位置に基づき、ウォブリング動作の周期に同期して、表示用の被写体距離を特定する。具体的には、演算処理部20は、今回の周期において、カメラ演算処理部24により、合焦位置がウォブリング動作の往復範囲内にあると判定された場合は、次の周期に関する表示については、ウォブリング動作の振幅中心に基づいて表示用の被写体距離を特定する。従って、次の周期における被写体距離の表示は、今回の周期と同じく振幅中心に基づく値となる。
一方、今回の周期において、カメラ演算処理部24により、合焦位置がウォブリング動作の往復範囲内にないと判定された場合は、演算処理部20は次のように処理する。すなわち演算処理部20は、次の周期におけるウォブリング動作の往復範囲内であって且つ、振幅中心よりも合焦方向から遠い側の位置に基づいて表示用の被写体距離を特定する。従って、次の周期における被写体距離の表示は、その周期における振幅中心よりも合焦方向から遠い側の位置に基づく値となる。
ここで、本実施の形態では、「振幅中心よりも合焦方向から遠い側の位置」の一例として、往復範囲における、合焦方向から遠い側の端位置を採用している。被写体距離表示の更新タイミングは、各周期の最初の時刻(t0、t4、t8、t12・・・)である。表示用の特定は、表示の更新タイミングの前に完了している。
図4(a)の例において、本実施の形態による被写体距離の表示例を図4(b)で説明する。図4(b)に示すように、最初の周期の開始時点では合焦位置が不明である。そこで、演算処理部20は、往復運動の中心位置であるレンズ位置f0に基づいて算出された被写体距離10.0mmを、時刻t0〜t3までの1周期の間(実際には時刻t4の直前まで)、表示させる。
時刻t0〜t3において、合焦位置が往復範囲内にあることがわかったので、次の周期(時刻t4〜t7)の振幅中心であるレンズ位置f0を、演算処理部20は、表示用の被写体距離として特定し、時刻t4で表示を更新する。この例では振幅中心が変化しないとしたため、いずれの周期においても表示は変わらず、時刻t0〜t16において「10.0mm」の表示が維持される(図4(b))。
このように、演算処理部20は、被写体距離表示部19に表示させる被写体距離を更新する周期を、第2の撮影モードに対応するウォブリング動作の周期と同期するよう制御する。これにより、表示される被写体距離は、ウォブリングによる小刻みな往復振動の影響を受けずに、周期の間、一定の値を表示するため、煩わしさが抑制される。
図5(a)〜(c)は、第2の撮影モードにおいて合焦位置へ追従するべく振幅中心が変化する場合における、図4(a)〜(c)に対応する図である。図面の見方は図4と同様であり、図5(a)、(b)、(c)がそれぞれ、レンズ位置の時間的変化、本発明を適用した場合の被写体距離の表示の時間的変化、従来(本発明を適用しない場合)の被写体距離の表示の時間的変化を示す。
ウォブリングの往復範囲(振幅範囲)に合焦位置が含まれるまで、フォーカスレンズL2は往復運動しながら、その振幅中心を合焦位置の方向に向けて移動させていくようなウォブリング動作をする。
まず、図5(a)に示すように、最初の周期では、レンズ位置f0を振幅中心として往復動作する。最初の周期において、カメラ演算処理部24は、時刻t1におけるレンズ位置f1と時刻t3におけるレンズ位置f21とに対応する撮像素子23の映像信号のコントラスト値を比較する。カメラ演算処理部24は、両者のコントラスト値の差が所定量より大きいため、合焦位置が今回の往復範囲外にあると判定し、しかも両者の大小比較から、合焦位置は、今回の往復範囲よりもf4値の側(例えば、無限遠側)にあると判定する。
すると、演算処理部20は、次の1周期における振幅中心を、合焦方向に1段階変化させる。従って、時刻t4〜t7までは、レンズ位置f1が振幅中心に設定される。次に、時刻t5におけるレンズ位置f2と時刻t7におけるレンズ位置f0とに対応する撮像素子23の映像信号のコントラスト値の比較から、カメラ演算処理部24は、合焦位置は、今回の往復範囲よりもf4値の側(無限遠側)にあると判定する。すると、演算処理部20は、次の1周期における振幅中心を、合焦方向に1段階変化させる。従って、時刻t8〜t11までは、レンズ位置f2が振幅中心に設定される。
同様に、時刻t9、t11におけるレンズ位置f3、f1の比較に基づき、合焦位置が今回の往復範囲よりも無限遠側にあると判定されると、時刻t12〜t15までは、レンズ位置f3が振幅中心に設定される。
しかし、時刻t13、t15におけるレンズ位置f4、f2の比較に基づき、合焦位置が今回の往復範囲内にあると判定されると、次の周期の振幅中心はレンズ位置f3に維持される。
従来の被写体距離の表示手法によると、図5(c)に示すように、フォーカスレンズL2の動きに対応して時刻t毎に被写体距離表示が更新される。例えば、時刻t0、t1、t2、t3、t4、t5でそれぞれ10.0mm、11.0mm、10.0m、9.0m、11.0mm、12.0mmと、表示する被写体距離が周期的に変動してしまう。
しかし本実施の形態では、図5(b)に示すように、被写体距離表示の更新タイミング(時刻t0、t4、t8、t12・・・)において表示が更新されるよう処理される。
まず、最初の周期の開始時点では合焦位置が不明であるので、演算処理部20は、往復運動の中心位置であるレンズ位置f0に基づいて算出された被写体距離10.0mmを、時刻t0〜t3までの1周期の間(実際には時刻t4の直前まで)、表示させる。
次に、時刻t1、t3における映像信号のコントラスト値の比較によって、カメラ演算処理部24により、合焦位置が、今回の往復範囲よりもf4値の側(例えば、無限遠側)にあると判定される。すると、演算処理部20は、次の周期(時刻t4〜t7)における往復範囲のうち、合焦方向から遠い側の端位置(レンズ位置f0)に基づいて、次の周期の表示用の被写体距離を特定する。ここで特定された被写体距離は、時刻t4で反映され、時刻t7まで(実際には時刻t8の直前まで)維持される(10.0mm)。
次に、時刻t5、t7における映像信号のコントラスト値の比較によって、合焦位置が、今回の往復範囲よりもf4値の側(無限遠側)にあると判定される。すると、演算処理部20は、次の周期(時刻t8〜t11)における往復範囲のうち、合焦方向から遠い側の端位置(レンズ位置f1)に基づいて、次の周期の表示用の被写体距離を特定する。ここで特定された被写体距離は、時刻t8で反映され、時刻t11まで(実際には時刻t12の直前まで)維持される(11.0mm)。
同様に、時刻t9、t11における映像信号のコントラスト値の比較によって、合焦位置が、今回の往復範囲よりもf4値の側(無限遠側)にあると判定される。すると、次の周期(時刻t12〜t15)における往復範囲のうち、合焦方向から遠い側の端位置(レンズ位置f2)に基づいて、次の周期の表示用の被写体距離を特定する。ここで特定された被写体距離は、時刻t12で反映され、時刻t15まで(実際には時刻t16の直前まで)維持される(12.0mm)。
時刻t12〜t15の周期において、時刻t13、t15におけるレンズ位置f4、f2の比較に基づき、合焦位置が今回の往復範囲内にあると判定される。従って、次の周期(時刻t16〜t19)については、振幅中心に設定されるレンズ位置f3に基づく値が、表示用の被写体距離として特定される(13.0mm)。
このように、振幅中心が周期によって変化していく場合であっても、ウォブリングによる小刻みな往復振動の影響を受けずに、周期の間、一定の値が表示される。すなわち、ウォブリングにおいて、合焦位置に向かって振幅中心を移動させている動きから、合焦近傍で往復運動の振幅中心を止める動きに切り替わった際でも、表示する被写体距離が行き過ぎてから戻るようなこと(オーバーシュート)がない。
また、仮に、合焦位置への追従の過程で、往復範囲が合焦位置を一旦行き過ぎて戻るような場合も考えられる。しかし、その場合であっても、往復範囲のうち、合焦方向から遠い側の値に基づいて、次の周期の表示用の被写体距離が特定されるので、被写体距離の表示のオーバーシュートが回避されやすい。
図4、図5では、第2の撮影モード(動画撮影時)での表示制御を説明したが、図6では、第1の撮影モード(静止画撮影準備時)での表示制御を説明する。
図6(a)〜(c)は、第1の撮影モードにおいて合焦位置へ追従するべく振幅中心が変化する場合における、図4(a)〜(c)に対応する図である。図面の見方は図4と同様であり、図6(a)、(b)、(c)がそれぞれ、レンズ位置の時間的変化、本発明を適用した場合の被写体距離の表示の時間的変化、従来(本発明を適用しない場合)の被写体距離の表示の時間的変化を示す。
上記した第2の撮影モードでは、撮像素子23で得られた映像信号は記憶部25に記録されるため、記録動画の画質を保つためにフレームレートを落とすわけにはいかない。一方、第1の撮影モードでは、撮像素子23で得られた映像信号は外部表示部26に表示されるだけである。そこで第1の撮影モードでは、フレームレートを1/2に下げ、フォーカスレンズL2の移動速度も落とすことで、カメラ演算処理部24の演算処理軽減と、消費電力低減を実現している。
そのため、ウォブリング駆動の周期は、第2の撮影モードに比べて2倍になっている。1周期の長さは、第2の撮影モードでは時刻t0〜t4間の長さであったが、第1の撮影モードでは時刻t0〜t8間の長さとなっている。すなわち、図6(a)に示すように、第1の撮影モードでは、第2の撮影モード(図4(a)、図5(a))に対して、ウォブリング動作の周期の長さが2倍になっている。周期が2倍になったことに応じて、ウォブリング動作の往復範囲と合焦位置との関係の判定は次のようになる。
まず、最初の周期において、往復運動端である+X側の端位置(時刻t2におけるレンズ位置f1)、−X側の端位置(時刻t6におけるレンズ位置f21)に対応する撮像素子23の映像信号のコントラスト値が比較される。カメラ演算処理部24は、両者のコントラスト値の差が所定量以下であれば、合焦位置が今回の往復範囲内にあると判定し、両者のコントラスト値の差が所定量より大きければ、合焦位置が今回の往復範囲外にあると判定する。
図6(a)の例では、最初の周期(時刻t0〜t7)では合焦位置が往復範囲にあるので、次の1周期における時刻t8〜t15でも、レンズ位置f0を振幅中心として往復動作する。その後の周期においても同様の判定となり、振幅中心を同じくする往復動作が繰り返されることになる。
従来の被写体距離の表示手法によると、図6(c)に示すように、フォーカスレンズL2の動きに対応して時刻t毎に被写体距離表示が更新される。例えば、時刻t0、t1、t2、t3、t4、t5、t6でそれぞれ10.0mm、10.0mm、11.0mm、11.0mm、10.0mm、10.0mm、9.0mmと、表示する被写体距離が周期的に変動してしまう。
しかし本実施の形態では、図6(b)に示すように、被写体距離表示の更新タイミング(時刻t0、t8、t16・・・)において表示が更新されるよう処理される。
まず、最初の周期の開始時点では合焦位置が不明であるので、演算処理部20は、往復運動の中心位置であるレンズ位置f0に基づいて算出された被写体距離10.0mmを、時刻t0〜t7までの1周期の間(実際には時刻t8の直前まで)、表示させる。
時刻t0〜t7において、合焦位置が往復範囲内にあることがわかったので、次の周期(時刻t8〜t15)の振幅中心であるレンズ位置f0を、演算処理部20は、表示用の被写体距離として特定し、時刻t8で表示を更新する。この例では振幅中心が変化しないとしたため、いずれの周期においても表示は変わらず、時刻t0〜t16において「10.0mm」の表示が維持される(図6(b)に時刻t6までを示す)。
なお、振幅中心が徐々に変化していく場合においても、図5の例に対して周期を2倍にして、同様に考えることができる。
このように、演算処理部20は、被写体距離表示部19に表示させる被写体距離を更新する周期を、第1の撮影モードに対応するウォブリング動作の周期と同期するよう制御する。これにより、表示される被写体距離は、ウォブリングによる小刻みな往復振動の影響を受けずに、周期の間、一定の値を表示するため、煩わしさが抑制される。
このように、演算処理部20は、撮影モードのフレームレートに同期した更新周期で被写体距離表示部19に被写体距離を表示させるよう制御する。これにより記録動画の画質を保つとともに、演算処理部20の演算負荷が軽減される。
なお、ウォブリング動作の往復範囲と合焦位置との関係の判定手法や次の周期の振幅中心の決定手法は例示したものに限定されず、コントラスト値の比較も、+X側の端位置と−X側の端位置との間での比較に限定されるものではない。また、必ずしも、ウォブリング動作における周期の最初のレンズ値は、振幅中心から始まらなくてもよい。
本実施の形態によれば、検出されるレンズ位置に基づき、ウォブリング動作の周期に同期して、表示用の被写体距離が特定され、被写体距離表示部19に表示されるので、被写体距離の表示が小刻みに変化しすぎないようにすることができる。従って、ユーザにとって煩わしさが緩和され、被写体距離が認識しやすくなって、被写体距離の表示品位が向上する。
また、合焦位置がウォブリング動作の往復範囲内にない場合は、ウォブリング動作の往復範囲内であって且つ、振幅中心よりも合焦方向から遠い側の端位置に基づいて被写体距離が特定される。これにより、被写体距離表示の値が一旦行き過ぎて戻るようなオーバーシュートが回避される。
なお、本実施の形態では、合焦位置がウォブリング動作の往復範囲内にない場合、振幅中心ではなく合焦方向から遠い側の端位置に基づいて被写体距離が特定されるとした。しかしこれに限定されるものでなく、いずれの周期においても、振幅中心に基づいて被写体距離が特定されるようにしてもよい。これによると、被写体距離表示のオーバーシュートが回避されにくくなるが、表示の小刻みな変動を抑制する効果は得られる。
なお、被写体距離の特定の周期、乃至、被写体距離の更新周期は、ウォブリング動作の周期と一致させたが、同期させればよい。従って、ウォブリング動作の複数周期に1回、被写体距離を更新してもよい。
なお、演算処理部20において、表示用の被写体距離を特定する周期をウォブリング動作の周期に同期させればよく、フォーカスレンズ位置検出部16によるレンズ位置の検出結果に基づく被写体距離の算出自体は随時行ってもよい。
なお、ウォブリング動作の往復範囲と合焦位置との関係を判定する機能は撮像装置27のカメラ演算処理部24が果たすとしたが、この機能をレンズ装置1の演算処理部20が担うようにしてもよい。その場合、撮像素子23の出力から得られるコントラスト情報は、通信により演算処理部20が取得すればよい。
ところで、サーチ時のように、ウォブリング動作がゆっくりで周期がかなり長い場合は、従来のように時刻t毎に被写体距離の表示を更新したとしても、それほど小刻みな変化とはならない。そこで、ウォブリング動作の周期が所定長より長い場合、被写体距離の特定、乃至、被写体距離の更新を、ウォブリング動作の周期と同期させることを中止し、従来と同様に、随時、例えば、時刻t毎に行うようにしてもよい。
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて詳述してきたが、本発明はこれら特定の実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の様々な形態も本発明に含まれる。