以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
一般に、蛍光灯を光源とした場合、蛍光灯は非常に短い周期で明滅するため、蛍光灯から発せられる光の量(光量)には揺らぎ(以下「フリッカー」とも称する)が生じる。例えば、日本国では、電源の周波数として50Hz及び60Hzが採用されているため、フリッカーの周波数(以下「フリッカー周波数」とも称する)が50Hzである場合と、60Hzである場合とがある。
そして、コントラスト方式のオートフォーカス制御(以下「コントラストAF制御」と称する)を行う際に一定のタイミングで被写体の合焦状態を評価する値(以下、適宜「AF評価値」又は「合焦評価値」と称する)を算出すると、フリッカーに起因して、AF評価値のピーク形状が崩れてしまい、AF制御の精度が低下する。
このような問題を解決するために、本発明の実施形態に係る撮像装置1では、フリッカー周波数が検出された場合には、当該フリッカー周波数に応じたタイミングで画像データのサンプリングを行うとともに、サンプリング間隔に応じたAF評価値の算出方法を採用している。
<撮像装置の概要>
図1は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の概略構成を示す断面模式図である。
図1に示すように、撮像装置1は、いわゆる一眼レフ方式のデジタルカメラとして構成され、被写体からの光を撮影レンズユニット2を介して撮像装置本体300に導くことで、被写体に係る撮影画像データ(撮影画像)を得ることができる。撮像装置本体300には、撮像装置1においてオートフォーカス(AF)制御を行うためのユニット(以下「AF制御ユニット」とも「合焦制御装置」とも称する)100が搭載されている。また、撮影レンズユニット2には、撮影レンズユニット2の光軸L上において、AF制御を実現するためのレンズ(フォーカスレンズ)を含む複数の撮影レンズからなるレンズ群が配設される。
図2は、撮像装置1の構成うちのAF制御ユニット100に係る構成に着目した模式図である。
AF制御ユニット100は、主に、主ミラー10、サブミラー20、シャッター機構4、撮像素子であるC−MOSセンサ(以下「C−MOS」と略する)5、及び位相差AFモジュール3を備えて構成される。
主ミラー10は、ハーフミラーにより構成され、被写体からの光の一部を撮像装置本体300の上部に向けて反射することで反射光(以下「第1反射光」とも称する)をファインダー光学系に導く。具体的には、主ミラー10は、被写体からの光を反射することで、ファインダー焦点板6に被写体像を投影する。この被写体像はペンタプリズム7によって正立像化され、接眼レンズ8を介してユーザーが被写体像の状況を確認することができる。また、主ミラー10は、サブミラー20に向けて被写体からの光の一部を透過させる。
サブミラー20は、ハーフミラーにより構成され、被写体からの光のうち、主ミラー10を透過した光(以下「第1透過光」とも称する)を撮像装置本体300の下部に向けて反射することで、位相差AFモジュール3に導く。その一方で、サブミラー20は、C−MOS5に向けて第1透過光の一部を透過させる。つまり、サブミラー20は、被写体からの光を位相差AFモジュール3とC−MOS5とにそれぞれ導く2つの光路に分割する(分岐させる)。
位相差AFモジュール3は、位相差方式を用いた合焦検出を行うユニットである。位相差AFモジュール3は、コンデンサーレンズ3a、ミラー3b、セパレータレンズ3c、及び位相差検出用素子3dを備える。
コンデンサーレンズ3aは、サブミラー20によって反射された光(以下「第2反射光」とも称する)を位相差AFモジュール3内部に導く。ミラー3bは、第2反射光をセパレータレンズ3c側に向けて屈曲させる。セパレータレンズ3cは、位相差の検出を行う為の瞳分割用のレンズであり、第2反射光を瞳分割して、位相差検出用素子3dに投影させる。
図3から図5は、位相差方式の合焦制御の原理を説明するための図である。位相差方式の合焦制御では、図3から図5に示すように、合焦させたい被写体の表面(被写体面)PPから発せられた光FFを、撮影レンズユニット2、コンデンサーレンズ3a、及びセパレータレンズ3cを介して、位相差検出用素子3dに導く。このとき位相差検出用素子3dで検出される2つの被写体像の位相差、すなわち像間隔の変位量を測定してデフォーカス量を求める。ここでは、後述する撮像ホーム位置に設定されたC−MOS5の撮像面と等価な面(以下「撮像等価面」とも称する)FPで合焦するようにデフォーカス量が求められる。つまり、撮像等価面FPは、位相差方式のAF制御(以下「位相差AF制御」と称する)によって合焦状態の被写体像が結像される面(以下「第1合焦面」とも称する)として構成される。
なお、例えば、図3に示すように被写体に対して合焦している場合には、像間隔が位相差AFモジュール3の設計時に決められた所定値となるが、図4に示すように前ピンなら像間隔が狭くなり、図5に示すように後ピンであれば像間隔が広くなる。
シャッター機構4は、サブミラー20を透過した光(以下「第2透過光」とも称する)の光路を開放/遮断することが可能であり、光路を開放することで、第2透過光をC−MOS5上に照射させ、被写体像をC−MOS5上に投影させる。
C−MOS5は、被写体からの光のうちの第2透過光を受け付けることで画像信号を得る。C−MOS5によって得られる画像信号は、記録用の撮影画像データを生成するために使用される一方、記録用の撮影画像データを取得する動作(本撮影動作)前に、いわゆるコントラスト方式のAF制御(コントラストAF制御)を行うためにも使用される。C−MOS5の受光面(撮像面)は、コントラストAF制御によって合焦状態の被写体像が結像される面(以下「第2合焦面」とも称する)として構成される。
また、C−MOS5は、撮像装置本体300に対して移動可能に保持されているため、第2透過光の光軸Lに沿って前後に移動可能である。このC−MOS5の前後移動により、第1合焦面の光学的な位置に対して第2合焦面の光学的な位置が相互に異なる位置へと設定される。
なお、ここで言う「光学的な位置が相互に異なる」とは、第1合焦面において被写体像が合焦状態となるときに、第2合焦面において被写体像が合焦状態にはならないことを示しており、更に、第2合焦面において被写体像が合焦状態となるときに、第1合焦面において被写体像が合焦状態にはならないことを示している。
<撮像装置の機能構成>
図6は、本発明の第1実施形態に係る撮像装置1の機能構成を例示するブロック図である。
図6に示すように、撮像装置1は、撮影レンズユニット2、位相差AFモジュール3、C−MOS5、ミラー機構10a、サブミラー機構20a、制御部101、レンズ位置検出部201、操作部OP、C−MOS移動制御部150、フォーカス制御部130、信号処理回路500、及びAF回路600等を備える。
撮影レンズユニット2は、C−MOS5で取得される画像信号において被写体が鮮鋭な状態となるような合焦状態を実現するための光学レンズ(フォーカスレンズ)2a等を備える。フォーカスレンズ2aは、レンズの光軸に沿って前後に移動可能であり、フォーカス制御部130からの制御信号に応答してモータM1が駆動することで、フォーカスレンズ2aのレンズ位置が移動される。フォーカス制御部130は、制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成する。また、フォーカスレンズ2aの位置は、レンズ位置検出部201によって検出され、フォーカスレンズ2aの位置を示すデータが制御部101に送られる。
ミラー機構10aは、被写体からの光の経路(光路)から退避可能な主ミラー10を含む機構であり、ミラー制御部110からの制御信号に応答してモータM2が駆動することで、主ミラー10が光路から退避した状態(ミラーアップ状態)または光路を遮断した状態(ミラーダウン状態)に設定される。ミラー制御部110は、制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成する。
サブミラー機構20aは、被写体からの光の経路から退避可能なサブミラー20を含む機構であり、サブミラー制御部120からの制御信号に応答してモータM5が駆動することで、サブミラー20が光路から退避した状態(ミラーアップ状態)または光路を遮断した状態(ミラーダウン状態)に設定される。サブミラー制御部120は、制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成する。
シャッター機構4は、被写体からの光の経路を遮断/開放可能な機構であり、シャッタ制御部140からの制御信号に応答してモータM3が駆動することで、シャッター機構4が開閉する。シャッタ制御部140は、制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成する。
C−MOS5は、撮像(光電変換)を行い、撮像画像に係る画像信号を生成する。C−MOS5は、タイミング制御回路170から入力される駆動制御信号(蓄積開始信号・蓄積終了信号)に応答して、受光面に結像された被写体像の露光(光電変換による電荷蓄積)を行い、当該被写体像に係る画像信号を生成する。
更に、C−MOS5は、タイミング制御回路170から入力される読出制御信号に応答して、当該画像信号を信号処理部51へ出力する。
タイミング制御回路170は、制御部101から入力される信号に基づいて各種制御信号を生成する。後述するコントラストAF制御部105によって光源が光量(光源光量)に揺らぎ(フリッカー)を生じていない光源(非フリッカー光源)であると認識された場合、及びフリッカー周波数が50Hzであると認識された場合には、C−MOS5から第1の所定周期(ここでは、200fps)で画像信号が出力されるように、タイミング制御回路170からC−MOS5に対して制御信号が出力される。
一方、コントラストAF制御部105によって、光源がフリッカーを生じている光源(フリッカー光源)であり、かつフリッカー周波数が60Hzであると認識された場合には、C−MOS5から第2の所定周期(ここでは、240fps)で画像信号が出力されるように、タイミング制御回路170からC−MOS5に対して制御信号が出力される。
また、タイミング制御回路170からのタイミング信号(同期信号)は、信号処理部51及びA/D変換回路52に入力される。
また、C−MOS5は、C−MOS駆動機構5aによって被写体からの光の光軸に沿って前後に移動する。C−MOS駆動機構5aは、C−MOS移動制御部150からの制御信号に応答してモータM4が駆動することで、C−MOS5を、被写体からの光の光軸に沿って前後に移動する。C−MOS移動制御部150は、制御部101から入力される信号に基づいて制御信号を生成する。
信号処理部51は、C−MOS5から与えられる画像信号に所定のアナログ信号処理を行い、処理後の画像信号はA/D変換回路52によってデジタル画像データ(画像データ)に変換される。この画像データは、信号処理回路500に入力されるとともに、コントラストAF制御のためにAF回路600に対しても適時与えられる。
信号処理回路500は、A/D変換回路52から入力される画像データに対してデジタル信号処理を行い、撮像画像に係る画像データを生成する。信号処理回路500における信号処理は、画像信号を構成する画素信号ごとに行われる。信号処理回路500は、黒レベル補正回路53、ホワイトバランス(WB)回路54、γ補正回路55及び画像メモリ56を備える。これらの構成のうち、黒レベル補正回路53、ホワイトバランス(WB)回路54およびγ補正回路55は、デジタル信号処理を行う。
黒レベル補正回路53は、A/D変換回路52が出力した画像データを構成する各画素データの黒レベルを基準の黒レベルに補正する。WB回路54は、画像のホワイトバランス調整を行う。γ補正回路55は、撮像画像の階調変換を行う。画像メモリ56は、生成された画像データを一時的に記憶するための、高速アクセス可能な画像メモリであり、複数フレーム分の画像データを記憶可能な容量を有する。
AF回路600は、コントラストAF制御を行う際に、A/D変換回路52から、画像データの一部の領域(AFエリア)に係る画像データを取得し、被写体の合焦状態を評価する値(AF評価値)を算出する。
後述するコントラストAF制御部105によって光源が光量に揺らぎ(フリッカー)を生じていない光源(非フリッカー光源)であると検出された場合、AF回路600では、AFエリアに係る画像データについて隣接画素間の画素値の差分の総和をAF評価値として算出する。
一方、コントラストAF制御部105によってフリッカー周波数が検出された場合、AFエリアに係る画像データについて隣接画素間の画素値の差分の総和(以下「予備評価値」とも称する)を算出し、時間的に連続して算出される2つの予備評価値の平均値をAF評価値として算出する。
なお、AF回路600におけるAF評価値の算出方法の切り替えは、コントラストAF制御部105の制御に基づいて行われる。AF回路600で算出されたAF評価値は、コントラストAF制御部105に出力される。
制御部101は、主にCPU、メモリ、及びROM等を備えて構成され、ROM内に格納されるプログラムを読み出してCPUで実行することで、各種機能や制御が実現される。具体的には、制御部101は、コントラストAF制御を実行するための機能として、コントラストAF制御部105を有し、位相差AF制御を実行するための機能として、位相差AF制御部106を有し、AF制御全体を統括制御する機能として、AF全体制御部107を有している。
コントラストAF制御部105は、コントラストAF制御を行う際に、光源の状態を認識する。すなわち、光源が非フリッカー光源であるか否か、光源がフリッカー光源であれば、フリッカー周波数を認識する。そして、光源の状態に応じて、C−MOS5における画像信号(画像データ)の取得タイミング(フレームレート)を変更するとともに、AF評価値の算出方法を変更する。
また、コントラストAF制御部105は、AF回路600から入力される複数のAF評価値について、AF評価値が最大となるフォーカスレンズ2aのレンズ位置を被写体の合焦状態が実現される位置(レンズ合焦位置)として求める。更に、コントラストAF制御部105は、求められたレンズ合焦位置に応じた制御信号をフォーカス制御部130に対して出力し、フォーカスレンズ2aをレンズ合焦位置へ移動させる。
位相差AF制御部106は、位相差AF制御を行う際に、位相差AFモジュール3における検出結果に基づいて、フォーカスレンズ2aのレンズ合焦位置を検出する。そして、位相差AF制御部106は、適宜求められたレンズ合焦位置に応じた制御信号をフォーカス制御部130に対して出力し、フォーカスレンズ2aをレンズ合焦位置へ移動させる。
AF全体制御部107は、コントラストAF制御及び位相差AF制御を適宜実行させる。
操作部OPは、シャッタースタートボタン(シャッターボタン)や各種ボタンやスイッチ等を備えて構成され、操作部OPに対するユーザーの入力操作に応答して、制御部101が各種動作を実現する。なお、シャッターボタンは、半押し状態(S1状態)と全押し状態(S2状態)の2つの状態を検出可能な2段階検出ボタンである。なお、撮像装置1では、S1状態となると、AF制御を含む本撮影動作のための準備動作が行われ、更にS2状態となると、本撮影動作が行われる。
画像メモリ56に一時記憶される画像データは、制御部101によって適宜VRAM102に転送されることで、撮像装置本体300の背面に配置される液晶表示部(LCD)103に画像データに基づく画像が表示される。
また、本撮影時には、画像メモリ56に一時記憶される画像データは、制御部101において適宜画像処理が施され、カードI/F104を介してメモリカードMCに記憶される。
<コントラストAF制御の概要>
図7は、コントラストAF制御におけるAF評価値の算出方法の変更によってAF評価値のピーク形状が変化する様子を例示する図である。図7では、光源のフリッカー周波数が50Hzである蛍光灯である場合に、200フレーム/秒(fps)のフレームレートで取得される複数の画像データからそれぞれ算出されたAF評価値を例示している。なお、縦軸がAF評価値、横軸がフォーカスレンズ2aの位置を示している。
具体的には、黒丸印が、仮に光源が非フリッカー光源である場合に単にC−MOS5によって得られる各画像データから各AF評価値を算出する動作(以下「通常評価値算出動作」とも称する)が行われた場合に算出される複数のAF評価値を示している。また、×印が、光源がフリッカー光源である場合にAF評価値を算出する動作(「フリッカー対策評価値算出動作」とも称する)が行われた場合に算出される複数のAF評価値を示している。
通常評価値算出動作を行うと、光源のフリッカーに起因して、時間的に連続して取得される画像データの輝度が大きく変動してしまう。そして、その輝度の変動に応じて、AF評価値が大きく波打ってしまう。その結果、図7の黒丸印で示す複数のAF評価値についてピークを検出し、レンズ合焦位置を精度良く検出することができない。
これに対して、図7の×印で示すように、フォーカスレンズ2aを光軸方向に移動させつつ200fpsのフレームレートで得られる各画像データについて隣接画素間の画素値の差分の総和を評価値(以下「予備評価値」とも称する)としてそれぞれ算出するとともに、時間的に連続して算出される2つの予備評価値の平均値を1つのAF評価値としてそれぞれ算出するフリッカー対策評価値算出動作を実行すると、AF評価値が大きく波打つ事もなくなり、AF評価値のピーク形状が明瞭となる(図7の破線)。その結果、レンズ合焦位置を精度良く検出することが可能となる。
このように、フリッカー対策評価値算出動作を採用すると、複数のAF評価値のピーク形状が明瞭となる原理を、以下説明する。
<フリッカー対策評価値算出動作が利用する原理>
図8及び図9は、フリッカー対策評価値算出動作の原理を示すタイミングチャートである。図8及び図9では、それぞれ上から順に、C−MOS5における露光タイミング(図8では200fpsの露光タイミング、図9では240fpsの露光タイミング)と、フリッカー周波数が50Hzの場合の光源光量の変動と、フリッカー周波数が60Hzの場合の光源光量の変動とが示されている。
図8に示すように、フリッカー周波数が50Hzである場合には、各露光の間隔(フレーム取得間隔)が光源光量の変動周期の1/2となるため、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングにおける露光量の和が常に一定となる。その結果、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングにおいて取得される画像データに基づいてそれぞれ算出される予備評価値(すなわち2つの予備評価値)の平均値をAF評価値とすれば、フリッカーの影響に拘わらず、複数のAF評価値のピーク形状が明確となる。
しかしながら、図8に示すように、フリッカー周波数が60Hzである場合には、光源光量の変動周期がフレーム取得間隔の2倍となっておらず、各露光タイミングにおいて、露光量が大きくばらついてしまう。よって、フリッカー周波数が60Hzである場合に、フレームレートが200fpsであると、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングにおいて取得される画像データに基づいてそれぞれ算出される予備評価値の平均値をAF評価値としても、AF評価値が大きく波打ってしまい、AF評価値の明瞭なピーク形状を得ることができない。
そこで、フリッカー周波数が60Hzの場合も、上記フリッカー周波数が50Hzである場合と同様に、フレーム取得間隔が光源光量の変動周期の1/2となるようにフレームレートを240fpsとすると、図9に示すように、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングにおける露光量の和が常に一定となる。その結果、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングにおいて取得される画像データに基づいてそれぞれ算出される予備評価値(すなわち2つの予備評価値)の平均値をAF評価値とすれば、フリッカーの影響に拘わらず、複数のAF評価値のピーク形状が明確となる。
但し、図9に示すように、フリッカー周波数が50Hzである場合には、光源光量の変動周期がフレーム取得間隔の2倍となっておらず、各露光タイミングにおいて露光量が大きくばらついてしまう。よって、フリッカー周波数が50Hzである場合に、フレームレートが240fpsであると、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングにおいて取得される画像データに基づいてそれぞれ算出される予備評価値の平均値をAF評価値としても、AF評価値が大きく波打ってしまい、AF評価値の明瞭なピーク形状を得ることができない。
そこで、撮像装置1では、後述する手法によって光源の状態(フリッカーの有無、フリッカー周波数)を検出し、上記図8及び図9で示した原理を利用して、光源の状態に応じたフレームレートでAF評価値を算出するための画像データを取得するとともに、時間的に連続(隣接)した2回の露光タイミングに係る予備評価値の平均値をAF評価値として算出するように制御する。
<フリッカー周波数の識別方法>
図10及び図11は、フリッカー周波数の識別方法を説明するためのタイミングチャートであり、図12から図15は、フリッカー周波数の識別方法を説明するための図である。
図10及び図11では、それぞれ上から順に、C−MOS5における露光タイミング(図10では100fpsの露光タイミング、図11では120fpsの露光タイミング)と、フリッカー周波数が50Hzの場合の光源光量の変動と、フリッカー周波数が60Hzの場合の光源光量の変動とが示されている。
図10に示すように、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が50Hzである場合には、フレーム取得間隔と光源光量の変動周期とが一致するため、C−MOS5で取得される各画像データ間で画素値(すなわち輝度)の変動が生じない。これに対して、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合には、フレーム取得間隔と光源光量の変動周期とが一致しないため、C−MOS5で取得される各画像データ間で画素値(すなわち輝度)の変動が生じる。
一方、図11に示すように、フレームレートが120fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合には、フレーム取得間隔と光源光量の変動周期とが一致するため、C−MOS5で取得される各画像データ間で画素値(すなわち輝度)の変動が生じない。これに対して、フレームレートが120fpsであり、かつフリッカー周波数が50Hzである場合には、フレーム取得間隔と光源光量の変動周期とが一致しないため、C−MOS5で取得される各画像データ間で画素値(すなわち輝度)の変動が生じる。
図12では、フレームレートが120fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合においてC−MOS5で取得される各画像データ(各フレーム)における画素値の平均値(すなわち輝度の平均値)の具体例が示されている。そして、図13では、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合においてC−MOS5で取得される各画像データ(各フレーム)における画素値の平均値(すなわち輝度の平均値)の具体例が示されている。
図12に示すように、フレームレートが120fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合には、各フレーム間において、輝度の平均値(輝度平均値)の変動がほとんど見られない。
これに対して、図13に示すように、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合には、各フレーム間において、輝度平均値の変動がみられ、5フレーム周期で輝度平均値が増減を繰り返している。
図14では、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合における画像データの輝度平均値の変動周期の具体例を示しており、図15では、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が50Hzである場合における画像データの輝度平均値の変動周期の具体例を示している。図14及び図15では、縦軸が、5フレームを1周期とした場合における各周期の極大値間のフレーム数、及び極小値間のフレーム数、すなわち輝度平均値の変動周期を示しており、横軸が、各周期に含まれるフレームNoを示している。そして、菱形印が極大値間のフレーム数を示しており、四角印が極小値間のフレーム数を示している。
図14に示すように、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合には、ほぼ5フレーム周期で輝度平均値が変動する。よって、例えば、フレームレートを100fpsに設定して、50フレームすなわち10周期(5フレームを1周期とする)のうちの8周期以上について、5フレーム周期で輝度平均値が変動している状況(状況1)では、フリッカー周波数が60Hzであると判定できる。
また、図15に示すように、フレームレートが100fpsであり、かつフリッカー周波数が50Hzである場合には、輝度平均値の変動が生じない。よって、例えば、フレームレートを100fpsに設定して、50フレームすなわち10周期(5フレームを1周期とする)において、5フレーム周期で輝度平均値が変動していない状況(状況2)では、フリッカー周波数が50Hzであると判定できる。
また、上記手法と同様に、フレームレートを120fpsとして、フリッカー周波数を検出することができる。
具体的には、フレームレートが120fpsであり、かつフリッカー周波数が50Hzである場合には、ほぼ6フレーム周期で輝度平均値が変動する。よって、例えば、フレームレートを120fpsに設定して、60フレームすなわち10周期(6フレームを1周期とする)のうちの8周期以上について、6フレーム周期で輝度平均値が変動している状況(状況3)では、フリッカー周波数が50Hzであると判定できる。
また、フレームレートが120fpsであり、かつフリッカー周波数が60Hzである場合には、ほとんどの画像データについて輝度平均値の変動が生じず、6フレーム周期の輝度平均値の変動は見られない。よって、例えば、フレームレートを120fpsに設定して、60フレームすなわち10周期(6フレームを1周期とする)において、6フレーム周期で輝度平均値が変動していない状況(状況4)では、フリッカー周波数が60Hzであると判定できる。
以上の原理を利用して、撮像装置1のコントラストAF制御部105では、i)フレームレートが100fpsで取得された50フレームにおいて状況1が成立し、かつフレームレートが120fpsで取得された60フレームにおいて状況4が成立する場合には、フリッカー周波数が60Hzであると判定する。一方、ii)フレームレートが100fpsで取得された50フレームにおいて状況2が成立し、かつフレームレートが120fpsで取得された60フレームにおいて状況3が成立する場合には、フリッカー周波数が50Hzであると判定する。また、上記i),ii)以外の場合には、光源がフリッカー光源ではないと判定する。
<撮影動作>
図16から図19は、撮像装置1における撮影動作フローを例示するフローチャートである。本動作フローは、制御部101の制御によって実現される。また、図20及び図21は、撮像装置1におけるAF制御のタイミングチャートを例示する図である。
図20及び図21では、横軸が状態S1となってからの時間経過を示している。そして、図20では、上から順に、モータM1のモータ回転数、モータM1に入力されるパルス数(PI数)、フォーカスレンズ2aの移動速度に対応する像面移動速度、AFマイコンの起動、位相差AFの測距、及びC−MOS5の駆動のタイミングが示されている。更に、図20の下方には、コントラストAF制御においてAF評価値を求めるためのC−MOS5における露光タイミング、及びフォーカスレンズ2aの位置とAF評価値との関係の一例が示されている。
また、図21では、フォーカスレンズ2aの位置(すなわち移動)を示す折れ線LL、及びC−MOS5の撮像面(すなわち第2合焦面)の位置(すなわち移動)を示す折れ線LSが示されている。なお、図21の縦軸方向については、折れ線LLの位置に対応した数値は省略されているが、折れ線LSの位置に対応した数値(500μm等)が付されている。更に、図21では、折れ線LLに対して、AF評価値を求めるための露光タイミングに対応するレンズ位置を示すマーク(短い縦長の線分)が付されているとともに、図18の処理ステップに対応する部分にステップ番号(例えば、ステップS34等)が付されている。
以下、図20及び図21を適宜参照しつつ、撮影動作フローについて説明する。なお、この撮影動作フローが開始される際には、C−MOS5が実際に本撮影動作を行う所定の基準位置(「撮像ホーム位置」とも称する)に設定され、第1及び第2合焦面の光学的な位置が同一に設定されている。
ここでは、まず、操作部OPに含まれる各種ボタンを適宜操作することで、撮像装置1が静止画を撮影するモード(静止画撮影モード)に設定されると、図16のステップS1に進む。
ステップS1では、C−MOS5に通電されて、C−MOS5が起動するとともに、シャッター機構4が開放される。なお、静止画撮影モードに設定される前では、シャッター機構4が閉じられた状態にある。
ステップS2では、C−MOS5で画像信号を取得するフレームレートを100fpsに設定する。具体的には、制御部101からの信号に応じてタイミング制御回路170が制御信号を出力することで、C−MOS5が100fpsの電荷信号の読み出しを開始する。
ステップS3では、100fpsで50フレーム分の画像データを読み出しつつ、当該50フレーム分の画像データについての輝度平均値(100fpsの輝度平均値)をそれぞれ算出する。なお、この50個の輝度平均値は、制御部101内のメモリに一時的に記憶される。
ステップS4では、C−MOS5で画像信号を取得するフレームレートを120fpsに設定する。具体的には、制御部101からの信号に応じてタイミング制御回路170が制御信号を出力することで、C−MOS5が120fpsの電荷信号の読み出しを開始する。
ステップS5では、120fpsで60フレーム分の画像データを読み出しつつ、当該60フレーム分の画像データについての輝度平均値(120fpsの輝度平均値)をそれぞれ算出する。なお、この60個の輝度平均値は、制御部101内のメモリに一時的に記憶される。
ステップS6では、ステップS3で算出された100fpsの輝度平均値に周期変動が有るか否か判定する。具体的には、50フレームすなわち10周期(5フレームを1周期とする)のうちの8周期以上について5フレーム周期で輝度平均値が変動している状況(状況1)が認識されれば、100fpsの輝度平均値に周期変動が有ると判定する。そして、ステップS6において、周期変動があると判定されれば、ステップS7に進み、周期変動がないと判定されれば、ステップS12に進む。
ステップS7では、ステップS5で算出された120fpsの輝度平均値に周期変動が無いか否か判定する。具体的には、60フレームすなわち10周期(6フレームを1周期とする)のうちの8周期以上について6フレーム周期で輝度平均値が変動している状況(状況3)が認識されれば、120fpsの輝度平均値に周期変動があると判定される。そして、ステップS7において、周期変動があると判定されれば、ステップS8に進み、周期変動がないと判定されれば、ステップS10に進む。
ステップS8では、光源が非フリッカー光源であると認識する。ここでは、100fps及び120fpsに係る輝度平均値の双方において周期変動が見られたため、光源のフリッカー周波数が50Hzとも60Hzとも断定することができないため、光源が非フリッカー光源であると認識する。
ステップS9では、ステップS8で認識された非フリッカー光源に合わせて、フレームレートをデフォルト値である200fpsに設定し、図17のステップS21に進む。
ステップS10では、光源が、フリッカー周波数が60Hzの蛍光灯であると認識する。
ステップS11では、ステップS10で認識されたフリッカー周波数(60Hz)に合わせてフレームレートを240fpsに設定し、図17のステップS21に進む。
ステップS12では、ステップS5で算出された120fpsの輝度平均値に周期変動が有るか否か判定する。具体的には、60フレームすなわち10周期(6フレームを1周期とする)のうちの8周期以上について6フレーム周期で輝度平均値が変動している状況(状況3)が認識されれば、120fpsの輝度平均値に周期変動があると判定される。そして、ステップS12において、周期変動があると判定されれば、ステップS13に進み、周期変動がないと判定されれば、ステップS15に進む。
ステップS13では、光源が、フリッカー周波数が50Hzの蛍光灯であると認識する。
ステップS14では、ステップS13で認識されたフリッカー周波数(50Hz)に合わせてフレームレートを200fpsに設定し、図17のステップS21に進む。
ステップS15では、光源が非フリッカー光源であると認識する。ここでは、100fps及び120fpsに係る輝度平均値の双方において周期変動が見られなかったため、光源が非フリッカー光源であると認識する。
ステップS16では、ステップS15で認識された非フリッカー光源に合わせて、フレームレートをデフォルト値である200fpsに設定し、図17のステップS21に進む。
ステップS21では、シャッターボタンが半押しされたS1状態となったか否か判定する。ここでは、S1状態となるまでステップS21の判定が繰り返され、S1状態となるとステップS22に進む。このとき、AFマイコンすなわち制御部101の機能としてのコントラストAF制御部105、位相差AF制御部106、及びAF全体制御部107の全てのAFに係る機能が起動する(図20の0〜50ms)。
ステップS22では、位相差AFモジュール3及び位相差AF制御部106によって位相差AF制御による測距を行う(図20の50〜100ms)。
ステップS23では、AF全体制御部107により、ステップS3における測距の結果に基づいて、現在のフォーカスレンズ2aの位置とレンズ合焦位置とのズレ量を判定する。ここで、ズレ量の絶対値が第1の所定値(例えば、30μm)未満である場合には、既に被写体の合焦状態が実現されていると判断し、図18のステップS41に進む。つまり、AF制御を実施することなく、本撮影動作に移行する。また、ズレ量の絶対値が第2の所定値(例えば、1000μm)以上の場合には、ズレ量が十分であるとして、そのまま図18のステップS31に進む。更に、ズレ量の絶対値が第1の所定値以上、第2の所定値未満である場合には、ズレ量が不十分であるとして、ステップS24に進む。
ステップS24では、AF全体制御部107の制御下で、フォーカス制御部130からの制御信号に基づいてモータM1が駆動することで、フォーカスレンズ2aが退避駆動を行う。ここでは、ズレ量が不十分であると、後述する第2合焦面の移動によってコントラストAF制御におけるAF評価値のピークを過ぎてしまう、といった不具合を防ぐために、十分なズレ量を確保するようにフォーカスレンズ2aのレンズ位置を移動させる退避駆動を行う。なお、この退避駆動では、例えば、フォーカスレンズ2aの移動可能な範囲の一端までフォーカスレンズ2aを移動させる。
ステップS31では、ステップS22における測距の結果に基づいて、C−MOS5を遠側(繰り出し側)又は近側(繰り入れ側)に移動させる動作を開始する(図20の90ms)。ここでは、位相差AFモジュール3による検出結果である測距値に応じて、撮像装置1を基準として、現在のフォーカス位置(ピントが合っている場所)よりも被写体が遠側にあれば、C−MOS5を被写体から遠ざかる方向に移動させる。一方、現在のフォーカス位置(ピントが合っている場所)よりも被写体が近側にあれば、C−MOS5を被写体に近づける方向に移動させる。なお、C−MOS5の移動は、例えば、20〜30mm/sec程度の速度で行われる。
ステップS32では、ステップS31において開始されたC−MOS5の移動が終了したか否か判定する。ここでは、所定距離(例えば、500μm)だけC−MOS5が移動するまでステップS32の判定を繰り返し、所定距離だけC−MOS5が移動するとC−MOS5の移動を終了させる(図20及び図21の90〜100ms)。
なお、所定距離は、撮像装置1の光学的な設計によって適宜設定される。また、撮影レンズユニット2のレンズ焦点距離(レンズ焦点距離が長い方が所定距離は長い)や、フォーカスレンズ2aの移動比(フォーカスモーターM1の回転数に対してフォーカスレンズ2aの移動量が長い場合は、所定距離は長い)によって適宜設定される。
このように、ステップS31〜S32においては、第1合焦面に対して第2合焦面の光学的な位置が相対的に異なる位置に移動される。具体的には、位相差AFモジュール3による検出結果に応じて、第1及び第2合焦面の光学的な位置が同一に設定されている状態から、フォーカスレンズ2aの位置を移動させつつAF制御を行う際に第1合焦面よりも早期に第2合焦面において被写体の合焦状態が実現される状態に変更される。つまり、位相差AF制御による合焦点到達よりも先にコントラストAF制御によって被写体の合焦状態が検出されるように設定される。
ステップS33では、モータM1を立ち上げ、フォーカスレンズ2aの移動を開始する(図20の100〜130ms)。このフォーカスレンズ2aの移動は、位相差AF制御に従ったものである。
ステップS34では、AF全体制御部107の制御下で、コントラストAF制御を開始し、フレームレートの設定(200fps又は240fps)に応じたタイミングでAF評価値を取得する動作を開始する(図20及び図21の145ms)。ここでは、像面移動速度が110μm/10msとある程度遅くなった時点で、AF評価値を取得する動作を行う。
また、このステップS34では、光源が非フリッカー光源である場合には、C−MOS5によって取得された各画像データからそれぞれ各AF評価値を算出する。また、光源がフリッカー光源である場合には、C−MOS5によって時間的に連続して取得された2つの画像データからそれぞれ2つの予備評価値を算出するとともに、当該2つの予備評価値の平均値を1つのAF評価値として算出する。なお、このコントラストAF制御は、例えば、絞りを開放状態として実行される。
ステップS35では、コントラストAF制御部105においてAF評価値のピークが見つかったか否か判定する。ここでは、AF評価値のピークが見つかればステップS36に進み、AF評価値のピークが見つかっていなければステップS39に進む(図20及び図21の145〜200ms)。なお、図20及び図21では、一例としてAF評価値のピークが見つかる場合について示している。
ステップS36では、フォーカスレンズ2aのレンズ合焦位置を求める(図20の200ms)。
ここでは、まず、図20に示すように、AF評価値が増加後、減少し始めたら、AF評価値の最大値Ynとその前後のAF評価値Yn−1、Yn+1の3点のデータを用いて、下式(1)に示す2次補間近似計算によりAF評価値がピークとなるフォーカスレンズ2aのレンズ合焦位置Pを算出する。
なお、このような計算によってレンズ合焦位置Pが算出されるタイミングとしては、C−MOS5からの電荷信号の読み出し、AF評価値の算出、及び上式(1)に沿った計算にある程度時間を要するため、例えば、図20に示すように、AF評価値の最大値Ynに係る露光タイミングを過ぎて、AF評価値が連続して数回減少する電荷信号が得られる露光タイミングとなる。
上記のようにして求められたレンズ合焦位置Pは、C−MOS5を所定距離だけずらした、すなわち所定距離だけずれた撮像面に対するレンズ合焦位置である。このため、レンズ合焦位置Pに所定距離(例えば500μm)の像面差を考慮した値を、実際に本撮影動作を行う撮像ホーム位置に対するレンズ合焦位置Qとして求める。
このようにして、位相差AF制御によるフォーカスレンズ2aの移動が終了する前に、レンズ合焦位置Qを求めることができる。
ステップS37では、C−MOS5が撮像ホーム位置へ戻るように移動する(図20及び図21の210〜220ms)。
ステップS38では、レンズ合焦位置Qでフォーカスレンズ2aの移動を停止する(図20及び図21の235ms)。
ステップS39では、位相差AF制御が終了したか否かを判定する。ここで、位相差AF制御が終了していなければ、ステップS35に戻り、位相差AF制御が終了していれば、ステップS40に進む。なお、ステップS39からステップS40に進む場合には、位相差AF制御の終了とともに、フォーカスレンズ2aの移動も停止する。
ステップS40では、C−MOS5が撮像ホーム位置へ戻るように移動する。
ステップS41では、シャッター機構4を閉じる。
ステップS42では、C−MOS5に蓄積された電荷を排出することでリセットする。
ステップS43では、S1状態が解除されたか否か判定する。ここでは、例えば、ユーザーが操作部OPを操作することでS1状態が解除されると、本動作フローを終了し、S1状態が解除されなければ、図19のステップS51に進む。
ステップS51では、S2状態になったか否かを判定する。ここでは、S2状態となるまで、ステップS43及びステップS51の判定を繰り返しつつ、待機する。そして、S
2状態となると、本撮影動作の指示がなされたものとして、ステップS52に進む。
ステップS52では、主ミラー10及びサブミラー20がミラーアップ状態となるとともに、シャッター機構4が開かれた状態となる。
ステップS53では、C−MOS5において、撮像すなわち本撮影動作の露光が行われる。
ステップS54では、シャッター機構4が閉じられた状態となる。
ステップS55では、主ミラー10及びサブミラー20がミラーダウン状態となるとともに、C−MOS5から電荷信号が読み出されて、画像データがメモリカードMCに記憶されるチャージ駆動を行い、本動作フローを終了する。
以上のように、本発明の実施形態に係る撮像装置1では、AF制御を行う前に、フリッカー周波数(50Hz又は60Hz)が検出されると、フレームレートをフリッカー周波数の4倍(200fps又は240fps)に設定する。その後、時間的に連続して取得された2つの画像データを用いて1つのAF評価値を算出することで、複数のAF評価値を算出する。そして、当該複数のAF評価値に基づいてフォーカスレンズ2aのレンズ合焦位置を検出する。このような構成を採用することで、フリッカーの周期よりも短い周期でコントラストAF制御のサンプリングを行うことができるため、フリッカーが生じている照明下でも高速かつ高精度の合焦制御を行うことができる。
特に、時間的に連続して取得された2フレーム分の画像データを用いて1つのAF評価値を算出するため、光源である照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動の影響を低減して、高精度の合焦制御を実現することができる。具体的には、時間的に連続して取得された2フレーム分の予備評価値の平均値を1つのAF評価値として算出することで、複数のAF評価値を算出し、当該複数のAF評価値に基づいてフォーカスレンズ2aのレンズ合焦位置を検出する。このため、光源である照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動に起因したAF評価値の変動を抑制することができる。
また、位相差AF制御による合焦位置の検出前に、光源のフリッカー周波数を検出し、位相差AF制御とコントラストAF制御とを並行して実施する。このような構成を採用することで、フリッカー周波数に対応しつつ、例えば、位相差AF制御によってフォーカスレンズ2aをレンズ合焦位置近傍まで短時間で駆動させるとともに、コントラストAF制御によって合焦精度を確保することができる。このため、フリッカー周波数に応じた高速かつ高精度の合焦制御を実現することができる。
また、被写体からの光を2つの光路に分割して、分割された各光を用いて位相差AF制御とコントラストAF制御とを並行して実施する。このような構成を採用することで、高速かつ高精度の合焦制御が可能となる。
また、位相差AF制御及びコントラストAF制御の合焦検出に係る合焦面の光学的な位置を相互に異ならせ、位相差AF制御の開始後に、コントラストAF制御が開始される。このような構成により、同時に2つの合焦制御が行われ、位相差AF制御による合焦状態の実現前に、コントラストAF制御によってフォーカスレンズ2aのレンズ合焦位置を検出することができる。このため、高速かつ高精度の合焦制御を実現することができる。また、例えば、フォーカスレンズ2aを逆向きに移動させることなく合焦制御を行うことができるため、バックラッシュの問題の発生を防止することができる。更に、例えば、ファインダ等を介して視認される被写体が、ぼけた状態から合焦状態へとスムーズに変化するような合焦制御を行うことができるため、合焦フィーリングを向上させることができる。
なお、撮像装置1において、位相差AF制御を開始する前に、光源のフリッカー周波数を検出するのは、位相差AF制御が開始されると、フォーカスレンズ2aの高速移動に起因して、時間的に連続して取得される画像データの輝度平均値が変動してしまい、結果として、フリッカー周波数の検出精度が低下してしまうためである。
<変形例>
以上、この発明の実施形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
◎例えば、上記実施形態では、コントラストAF制御において、フレームレートをフリッカー周波数の4倍に設定し、時間的に連続して取得された2つの画像データを用いて1つのAF評価値を算出したが、これに限られない。例えば、フレームレートをフリッカー周波数の6倍に設定した場合には、光源の光量が変動する周期が、フレーム取得間隔の3倍となるため、C−MOS5によって時間的に連続して取得された3つの画像データから1つのAF評価値を算出するようにしても良い。
更に、フレームレートをフリッカー周波数のn倍(nは2の倍数の自然数)に設定した場合には、光源の光量が変動する周期と、フレーム取得間隔のn/2倍とが一致するため、例えば、C−MOS5によって時間的に連続して取得された、n/2の自然数(1,2,3,・・・)倍にあたる複数の画像データを用いて1つのAF評価値を算出するようにしても良い。このような構成を採用しても、フリッカーの周期よりも短い周期でコントラストAF制御のサンプリングを行うことができるため、フリッカーが生じている照明下でも高速かつ高精度の合焦制御を行うことができる。
また、具体的には、フレームレートをフリッカー周波数のn倍(nは2の倍数の自然数)に設定した場合には、光源の光量が変動する周期と、フレームレートのn/2倍とが一致するため、C−MOS5によって時間的に連続して取得されたn/2フレーム分の画像データを用いて1つのAF評価値を算出するようにしても良い。このような構成を採用すると、照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動の影響を低減して、高精度の合焦制御を実現することができる。
また、フリッカー周波数Lが検出された場合に、フレームレートをフリッカー周波数Lのn倍(nは2の倍数の自然数)に設定し、時間的に連続して取得されたn/2フレーム分の画像データ間で対応する各画素の画素値をそれぞれ加算することで1つの画像データを生成して、当該1つの画像データに基づいて1つのAF評価値を算出するような構成を採用するようにしても良い。このような構成を採用しても、照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動に起因したAF評価値の変動を抑制することができる。
また、フリッカー周波数Lが検出された場合に、フレームレートをフリッカー周波数Lのn倍(nは2の倍数の自然数)に設定し、時間的に連続して取得されたn/2フレーム分の画像データについて対応する各画素の平均画素値を算出することで1つの画像データを生成し、当該1つの画像データに基づいて1つのAF評価値を算出するようにしても良い。このような構成を採用しても、照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動に起因したAF評価値の変動を抑制することができる。
◎また、上記実施形態では、光源がフリッカー光源である場合には、時間的に連続して取得された2フレーム分の画像データに基づいて、2フレーム分の画像データに対応する2つの予備評価値をそれぞれ算出した後に、当該2つの予備評価値の平均値を1つのAF評価値として算出したが、これに限られず、例えば、時間的に連続して取得された2フレーム分の画像データに基づいて、2フレーム分の画像データに対応する2つの予備評価値を算出し、単に、2つの予備評価値を加算することで1つのAF評価値として算出しても良い。
更に一般的には、光源がフリッカー光源である場合、フレームレートをフリッカー周波数Lのn倍(nは2の倍数の自然数)に設定するとともに、時間的に連続して取得されたn/2フレーム分の画像データに基づいて、n/2フレーム分の画像データにそれぞれ対応するn/2フレーム分の予備評価値を算出した後に、当該n/2フレーム分の予備評価値を加算することで1つのAF評価値を算出するようにしても良い。このような構成を採用しても、光源である照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動に起因したAF評価値の変動を抑制することができる。
◎また、上記実施形態では、光源がフリッカー光源である場合には、例えば、時間的に連続して取得された2つの画像データに基づいて、1つのAF評価値を算出することで、複数のAF評価値を算出したが、これに限られない。例えば、フレームレートをフリッカー周波数の4倍に設定した場合に、時間的に連続して取得された3以上の画像データを用いた補間処理によって、当該3以上の画像データに対してそれぞれ対応する3以上のAF評価値を算出することで、複数のAF評価値を算出するようにしても良い。
以下、3以上の画像データを用いた補間処理について説明する。
図22は、3つの画像データを用いた補間処理について説明する図である。図22では、横軸がフォーカスレンズ2aのレンズ位置、縦軸がAF評価値を示しており、黒丸印が、AF制御を行う前に、フレームレートをフリッカー周波数の4倍に設定した場合に、各画像データから算出される評価値(予備評価値)を示している。
図22に示すように、フリッカー光源による光量のゆらぎにより、相対的に高い予備評価値(高予備評価値)と低い予備評価値(低予備評価値)とが交互に算出される。
このとき、時間的に連続して取得される3つの画像データからそれぞれ算出される3つの連続する高予備評価値と低予備評価値と高予備評価値とについて、補間処理により、低予備評価値に代えて黒三角印で示される高予備評価値に整合する値を求める。
例えば、図22に示すように、高予備評価値V1と低予備評価値V2と高予備評価値V3とについて、補間処理により、低予備評価値V2に代えて黒三角印で示される高予備評価値に整合する値(補間評価値)Vmを求める。
具体的な補間処理の手法としては、例えば、高予備評価値V1と低予備評価値V2との間の値の変化率と、低予備評価値V2と高予備評価値V3との間の値の変化率との平均値(平均変化率)を用いて、高予備評価値(V1又はV3)を基準とした外挿によって補間評価値Vmを算出する手法がある。
このような補間処理によって求められた補間評価値と高予備評価値とをAF評価値として採用すると、図22の破線で示すように、AF評価値のピーク形状が明瞭となる。その結果、上記実施形態と同様な手法を用いて、レンズ合焦位置を精度良く検出することができる。
換言すれば、フレームレートをフリッカー周波数の4倍に設定するとともに、時間的に連続して取得された第1から第3の画像データのうちの第2の画像データの輝度が最小である場合に、第1から第3の画像データについて第1から第3の予備評価値をそれぞれ算出し、当該第1から第3の予備評価値に基づく補間処理、すなわち、第1から第3の画像データを用いた補間処理によって、第2の画像データに対するAF評価値を算出するような構成を採用することができる。
このような構成を採用することで、照明のフリッカーに起因して生じる評価値の低下を考慮した評価値を算出することができるため、高精度の合焦制御を実現することができる。
また、ここでは、3つの予備評価値を用いて補間評価値を算出して単にAF評価値として採用したが、これに限られず、例えば、補間処理に用いる3つの予備評価値を含む時間的に連続して得られる5以上の予備評価値について、一般的なスムージング処理を施すことで、複数のAF評価値を求めるようにすれば、更にAF評価値のピーク形状が明瞭なものとなる。このような構成を採用しても、照明のフリッカーに起因した被写体からの光の光量の変動の影響を低減して、高精度の合焦制御を実現することができる。
なお、ここで、補間処理によって低予備評価値に代えて、高予備評価値と整合する補間評価値を算出したが、逆に補間処理によって高予備評価値に代えて、低予備評価値と整合する補間評価値を算出することも考えられるが、このような手法ではAF評価値のピークが低く、不明瞭なものとなり、結果として、合焦精度の低下を招くため、上記のように、補間処理によって低予備評価値に代えて、高予備評価値と整合する補間評価値を算出する方が好ましい。
◎また、上記実施形態では、C−MOS5によってコントラストAF制御用の画像データを取得したが、これに限られず、例えば、コントラストAF制御用の画像データを取得する専用の撮像素子を備えるようにしても良い。
◎また、上記実施形態では、位相差AF制御と、コントラストAF制御とを並行して実行することで、AF制御に要する時間を短縮化したが、これに限られず、例えば、位相差AF制御が終了した後に、コントラストAF制御を行うようにしても、従来技術よりも、コントラストAF制御におけるサンプリング間隔を短く設定することができるため、高速かつ高精度の合焦制御を実現することができる。
◎また、上記実施形態では、図2に示すようなAF制御ユニット100を採用したが、これに限られず、他のAF制御ユニットの構成を採用しても良い。以下に、他のAF制御ユニットの構成の一例としてAF制御ユニット100Aを挙げて説明する。
図23は、変形例に係る撮像装置1Aに含まれたAF制御ユニット100Aに関する構成を模式的に例示する図である。
上記実施形態に係る撮像装置1では、主ミラー10がハーフミラーを備えて構成されたが、図23に示すように、変形例に係る撮像装置1Aでは、当該ハーフミラーとしてペリクルミラーを採用した主ミラー10Aを用いている。
ペリクルミラーは、厚みが一般的なハーフミラーと比べて非常に薄い(例えば100μm程度)ことが特徴である。このペリクルミラーは、極薄であるため、ミラーアップ駆動に適さない。よって、撮像装置1Aでは、本撮影時に、主ミラー10Aはミラーアップせず、サブミラー20Aが被写体からの光の光路上から下方に退避するように構成されている。
なお、その他の構成は、上記実施形態に係る撮像装置1と同様であり、機能及び動作等については、主ミラー10及びサブミラー20の双方が光路に対して退避状態/遮断状態となる代わりに、サブミラー20Aのみが光路に対して退避状態/遮断状態となる点が異なるだけで、その他の機能及び動作等についてはほぼ同様であるため、説明を省略する。
以下、主ミラー10Aのハーフミラーにペリクルミラーを採用する利点について説明する。
上記実施形態に係る撮像装置1では、一般的なハーフミラーの屈折率Ndが約1.5であり、主ミラー10とサブミラー20の厚みをそれぞれa、bとすると、ミラーアップ状態とミラーダウン状態とで約0.5(a+b)だけ焦点位置がユーザー側(図2では右側)にずれてしまう。
そして、位相差AF制御とコントラストAF制御とを併用する場合には、フォーカスレンズ2aの位置を移動させつつ被写体の合焦状態を実現する際に第1合焦面よりも早期に第2合焦面において被写体の合焦状態が実現されるように、第1及び第2合焦面の光学的な位置を相互に異ならせる必要がある。よって、このとき、ハーフミラーによる焦点位置のずれ(約0.5(a+b))を見込んで、C−MOS5を撮像ホーム位置から光軸Lに沿って余計に移動させなければならない。
このような問題点に対して、極薄のペリクルミラーを用いることで、ハーフミラーによる焦点位置のずれを約0.5bまで抑制することができる。つまり、主ミラー10によって生じる焦点位置のズレ量を抑制することができる。その結果、当該ズレ量を補正するためのC−MOS5の移動量が少なくて済むため、C−MOS5を移動させるための構成を簡素化することができる。
◎なお、上記実施形態では、蛍光灯の明滅に起因する光源から発せられる光の量(光量)の揺らぎを「フリッカー」と称し、その揺らぎの周波数を「フリッカー周波数」と称したが、これに限られず、例えば、蛍光灯以外の光源から発せられる光の量(光量)の揺らぎ一般を「フリッカー」を称し、その揺らぎの周波数を「フリッカー周波数」と称するようにしても良い。