JP6255919B2 - 偏光フィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、液晶表示装置に使用する偏光フィルムを製造する方法に関するものである。
偏光フィルムには、従来から、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させたものが用いられている。すなわち、ヨウ素を二色性色素とするヨウ素系偏光フィルムや、二色性染料を二色性色素とする染料系偏光フィルムなどが知られている。これらの偏光フィルムは通常、その少なくとも片面、好ましくは両面にポリビニルアルコール系樹脂の水溶液からなる接着剤を介してトリアセチルセルロース等の保護フィルムを貼合して偏光板とされ、液晶テレビ、パーソナルコンピュータ用モニター及び携帯電話等の液晶表示装置に用いられる。
偏光フィルムは通常、ポリビニルアルコール系樹脂の未延伸フィルム(原反フィルム)に、膨潤処理、染色処理、延伸処理、ホウ酸処理(架橋処理)及び洗浄処理が施され、最後に乾燥されて製造される。そして、これらの処理が順次施されるような構成の製造装置を用いることにより、偏光フィルムは連続生産されている。
このような製造装置により偏光フィルムを連続生産する場合は、通常、ロール状の原反フィルム(原反ロール)を用い、その原反ロールを使い切った後で新しい原反ロールに切り替えられる。このとき、ロールを切り替える度に新しい原反ロールの先端を手作業により製造装置に通す方法では、作業効率及び生産効率が低下するため、フィルムの末端と新しい原反ロールの先端とを粘着テープなどで繋ぎ合わせて連続的に製造装置に搬送する製造方法などが採用されている。
例えば、特開2006-350224 号公報(特許文献1)には、フィルムの繋ぎ目が各処理工程を通過する際、その搬送経路を直線状にすることで、繋ぎ目を曲折又は処理液に浸漬させることなく連続的に搬送できる光学フィルムの製造方法が記載されており、光学フィルムの例として偏光フィルムが挙げられている。この製造方法によれば、フィルムの曲折に起因する繋ぎ目の破断や、処理液への浸漬で生じる粘着テープの溶解に起因する処理液及び装置内の汚染を防止することができるため、生産効率及び歩留まりが改善される。
また偏光フィルムは、偏光板として多様な環境で使用されうる液晶表示装置に適用されるため、優れた耐久性が求められている。例えば、特許第5073589 号公報(特許文献2)には、偏光フィルムを製造する際、乾燥工程の前後におけるフィルムの水分率を所定の範囲に調整し、かつ乾燥工程の一部に所定の急激乾燥段階を有する偏光フィルムの製造方法について記載されている。この製造方法によると、乾燥工程での急激な乾燥により、偏光フィルム中の架橋が充分に進行するため、加熱、加湿条件下においても光学特性の変化を抑えることができる耐久性に優れる偏光フィルムを得ることができる。
特開2006−350224号公報 特許第5073589号公報(特開2009−163202号公報)
一方で、偏光フィルムの生産を開始するに際し、最初の原反ロールの先端を製造装置に通す必要があり、この作業は通常、手作業により行われる。なかでも、偏光フィルムの光学特性などを調整する目的で、高温に設定された乾燥炉を採用し、その内部にフィルムの先端を通す場合は、高温雰囲気下で長時間の手作業が必要となるだけでなく、その作業中にフィルムが破断するという問題があった。また、近年の偏光板の薄型化に伴う原反フィルムの薄肉化により、従来よりもフィルムが破断しやすくなり、乾燥炉にフィルムを通す作業はさらに困難となっていた。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、作業安全性に優れ、かつ原反フィルムが薄い場合であっても生産効率に優れる偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
すなわち本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに、染色処理、ホウ酸処理及び乾燥処理をこの順に施して偏光フィルムを製造する方法であって、乾燥処理は、乾燥炉に導入されるときの水分率が15〜60重量%とされたフィルムを乾燥炉に通すことによって行われ、最初に乾燥炉に導入されたフィルム先端が乾燥炉を通ってそこから出てくるまで乾燥処理を施す初期乾燥工程と、フィルムの先端が乾燥炉から出た後、乾燥炉から出てくるフィルムの水分率が5〜15重量%の範囲内となるように乾燥処理を施す標準乾燥工程とを備え、初期乾燥工程は、乾燥炉に入る前のフィルムの水分率とフィルム先端が乾燥炉から出るときの水分率との差である水分率減少量が、標準乾燥工程における乾燥炉に入る前のフィルムの水分率と乾燥炉から出るときのフィルムの水分率との差である水分率減少量に対して55〜85%となるように行われることを特徴とする偏光フィルムの製造方法を提供する。
上記の方法の一つとして、標準乾燥工程が、フィルムが通る乾燥炉の少なくとも一部において、初期乾燥工程よりも高い温度に設定されたゾーンをフィルムが通るように行われる形態を挙げることができる。この実施形態では、上記の乾燥炉が少なくとも2段に分かれており、フィルム入口側から2段目以降に、標準乾燥工程の温度が初期乾燥工程よりも高く設定されたゾーンを有することが好ましく、初期乾燥工程及び標準乾燥工程における温度の差が、10℃以上であることがより好ましい。
また、上記とは別の方法の一つとして、初期乾燥工程が、フィルムが通る乾燥炉の少なくとも一部において、フィルム搬送方向の上流から下流に向かって配置された複数の昇降可能なガイドロールのうち、少なくとも1本の上側を通り、別の少なくとも1本の下側を通るように行われ、標準乾燥工程は、フィルムの先端が乾燥炉を通って出た後、フィルムの搬送路が延長されるように昇降可能なガイドロールを上昇させて又は下降させて行われる形態を挙げることができる。この実施形態では、上記の乾燥炉が少なくとも2段に分かれており、フィルム入口側から2段目以降に、昇降可能な複数のガイドロールが配置されたゾーンを有することが好ましい。
本発明によれば、偏光フィルムを製造するに際し、初期乾燥工程における水分率減少量が、標準乾燥工程における水分率減少量に対して所定の割合となるように行うことによって、原反フィルムが薄い場合であっても、高温の乾燥炉内での作業中に発生するフィルムの破断を抑制することができ、高い生産効率で偏光フィルムを製造することができる。また本発明によれば、乾燥炉内での作業時間の短縮が可能となるなど、作業安全性にも優れる。
偏光フィルムの製造方法における装置の好適な配置例を示す断面模式図である。 本発明の実施形態における乾燥炉の一つの好ましい構造を示す断面模式図である。 本発明の実施形態における乾燥炉のもう一つの好ましい構造を示す断面模式図である。
以下、本発明について、適宜図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下に説明する部材や配置などによって限定されるものでなく、本発明を実施できる範囲で適宜変更することができる。
[偏光フィルムの製造方法]
偏光フィルムは、具体的にはポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものである。原料となるポリビニルアルコール系樹脂は、通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。このケン化度は、通常85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体などを挙げることができる。酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体としては、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、不飽和スルホン酸類、ビニルエーテル類などを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常1000〜10000程度、好ましくは1500〜5000程度である。
上記のポリビニルアルコール系樹脂は、変性されていれもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなども使用しうる。
偏光フィルム製造の開始材料としては、厚さが75μm 以下、好ましくは60μm 以下のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの未延伸フィルム(原反フィルム)を用いる。工業的には、フィルムの幅が1500〜6000mmであるものが実用的である。
偏光フィルムは、上記のようなポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対し、膨潤処理、染色処理、ホウ酸処理及び洗浄処理の順に溶液処理を施して製造される。図1には、本発明の偏光フィルムの製造方法における装置の好適な配置例を断面模式図で示した。この図を参照して、この製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム10が繰出しロール11から巻き出され、膨潤処理槽13、染色処理槽15、ホウ酸処理槽17及び洗浄処理槽19を順次通過し、最後に乾燥炉21を通るように構成されている。
図1には、膨潤処理槽13、染色処理槽15、ホウ酸処理槽17及び洗浄処理槽19をそれぞれ一槽ずつ設けた例を示したが、必要に応じ、ある一つの処理に対して複数の槽を設けてもよい。また、図1には示されていないが、ホウ酸処理中及び必要に応じてホウ酸処理の前でフィルムの一軸延伸が行われる。この一軸延伸は、湿式延伸でも乾式延伸でもよく、ホウ酸処理中及びホウ酸処理の前の膨潤処理中や染色処理中に行われる場合は湿式延伸となり、膨潤処理の前に行われる場合は乾式となる。この一軸延伸は、一つの工程で行ってもよいし、二つ以上の工程で行ってもよいが、複数の工程で行うのが好ましい。なお、本発明の一軸延伸には、公知の延伸方法を採用することができる。その延伸方法としては、フィルムを搬送する二つのニップロール間に周速差をつけて延伸を行うロール間延伸、特許第2731813 号公報に記載のような熱ロール延伸、テンター延伸などがある。
(膨潤処理)
膨潤処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム表面の異物除去、フィルム中の可塑剤の除去、続く染色処理での易染色性の付与、フィルムの可塑化などの目的で、水に接触させることにより行われる。膨潤処理の条件は、これらの目的が達成できる範囲で、かつフィルムの失透や極端な溶解等の不具合が生じない範囲で決定される。
ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対し、最初に膨潤処理を施す場合は、例えば、温度10〜50℃程度、好ましくは20〜40℃程度の処理浴にフィルムを浸漬することにより行われる。フィルムの浸漬時間は、好ましくは30〜300秒程度、より好ましくは60〜240秒程度である。予め大気中で延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、膨潤処理を施す場合は、例えば、温度20〜70℃程度、好ましくは30〜60℃程度の処理浴にフィルムを浸漬することにより行われる。フィルムの浸漬時間は、好ましくは30〜300秒程度、より好ましくは60〜240秒程度である。
膨潤処理では、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが幅方向に膨潤し、フィルムにシワが入る等の問題が生じやすいので、拡幅ロール(エキスパンダーロール)、スパイラルロール、クラウンロール、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップなど、公知の拡幅装置を用いてフィルムのシワを取りつつフィルムを搬送することが好ましい。また、浴中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤処理槽13中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control 装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)などを併用したりすることも有用である。
膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、フィルムに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムのたるみをなくすため、例えば、膨潤処理槽13の前後にある搬送ロールの周速度をコントロールするなどの手段を講ずることが好ましい。また、原反フィルムに対し、膨潤処理、染色処理及びホウ酸処理の順に施す場合は、膨潤処理において一軸延伸を行ってもよく、その場合の延伸倍率は、通常 1.2〜3倍、好ましくは1.3〜2.5倍である。
膨潤処理で使用する処理浴には、純水のほか、ホウ酸(特開平10-153709 号公報)、塩化物(特開平06-281816 号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類などが約 0.01〜10重量%の範囲で添加された水溶液を用いることもできる。
(染色処理)
染色処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着させる目的で、例えば、ヨウ素及び水溶性二色性染料等の二色性色素を含有する処理浴にフィルムを浸漬させることによって行われる。染色処理の条件は、これらの目的が達成できる範囲で、かつポリビニルアルコール系樹脂フィルムの極端な溶解や失透などの不具合が生じない範囲で決定される。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、処理浴(染色浴)には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003〜0.2/約0.1 〜10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。またヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルトなどを共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述するホウ酸処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003 重量部以上含んでいるものであれば、染色浴と見なすことができる。フィルムを浸漬するときの染色浴の温度は、10〜45℃程度、好ましくは20〜35℃であり、フィルムの浸漬時間は、30〜600秒程度、好ましくは60〜300秒である。
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、処理浴には、濃度が重量比で二色性染料/水=約0.001〜0.1/100である水溶液を用いることができる。この処理浴には、染色助剤などを共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。また、二色性染料は、単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色浴の温度は、20〜80℃程度、好ましくは30〜70℃であり、フィルムの浸漬時間は、30〜600秒程度、好ましくは60〜300秒である。
また、染色処理でフィルムの延伸を行ってもよく、染色処理槽15の前後に設置したニップロールに周速差を持たせるなどの方法で行われる。染色処理までの積算の延伸倍率(染色処理までに延伸工程がない場合は染色処理での延伸倍率)は、通常、1.6〜4.5倍であり、好ましくは1.8〜4倍である。延伸倍率が1.6倍未満であるとフィルムの破断の頻度が多くなり、歩留りを悪化させる傾向がある。
また、染色処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するため、拡幅ロール(エキスパンダーロール)、スパイラルロール、クラウンロール、クロスガイダー、ベンドバーなどを染色処理槽15の内部及び/又はその出入り口に設置することができる。
(ホウ酸処理)
ホウ酸処理は、架橋による耐水化や色相調整(フィルム色の青味や赤味を防止する)などの目的で施される。処理浴には、水100重量部に対してホウ酸を約1〜10重量部含有する水溶液を用い、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を水100重量部に対して1〜30重量部含有させることが好ましい。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化亜鉛などが挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウムなどを共存させてもよい。なお、耐水化のためのホウ酸処理を、架橋処理、耐水化処理、固定化処理などの名称で呼称することがあり、色相調整のためのホウ酸処理を、補色処理、調色処理などの名称で呼称することがある。
このホウ酸処理は、その目的に応じ、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに処理浴の温度を適宜調整して施される。耐水化のためのホウ酸処理及び色相調整のためのホウ酸処理は特に区別されるものではないが、以下のような条件で実施される。
ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対し、膨潤処理、染色処理、及びホウ酸処理をこの順に施す場合であって、ホウ酸処理の目的が架橋による耐水化である場合、その処理浴は、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3〜10/1〜20/100の水溶液であることができる。必要に応じて、ホウ酸に代えてグリオキザール及びグルタルアルデヒド等の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と架橋剤を併用してもよい。処理浴の温度は、通常50〜70℃程度、好ましくは55〜65℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常10〜600秒程度、好ましくは20〜300秒、より好ましくは20〜200秒である。また、予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、染色処理及びホウ酸処理をこの順に施す場合、ホウ酸処理浴の温度は、通常、50〜85℃程度、好ましくは55〜80℃である。
この耐水化のためのホウ酸処理の後に、色相調整のためのホウ酸処理を行ってもよい。例えば、二色性色素がヨウ素の場合、その処理浴は、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1〜5/3〜30/100の水溶液であることができる。処理浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常10〜300秒程度、好ましくは10〜100秒である。
これらのホウ酸処理は、耐水化のためのホウ酸処理と色相調整のためのホウ酸処理という具合に複数回行なってもよい。この場合、使用する各ホウ酸処理槽17の水溶液組成及び温度は、上記の範囲内で同じであっても、異なっていてもよい。また、耐水化のためのホウ酸処理及び色相調整のためのホウ酸処理を、それぞれ複数の工程で行なってもよい。
(洗浄処理)
洗浄処理は、ホウ酸処理の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。この洗浄処理は、例えば、耐水化及び/又は色調調整のためにホウ酸処理を施した偏光フィルムを水に浸漬したり、水をシャワーなどによって噴霧したり、あるいはその両方を併用したりすることにより行われる。洗浄処理における水の温度は、通常約2〜40℃であり、処理時間は約5〜120秒であることが好ましい。
(乾燥処理)
本発明の乾燥処理は、上記した洗浄処理の後に所定の水分率とされたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、70℃以上の温度に設定されたゾーンを有する乾燥炉で施され、初期乾燥工程及び標準乾燥工程を備えるものである。
上記の乾燥炉は、本発明で規定する乾燥処理を達成できるものであればよく、一つの乾燥炉のみを用いてもよいし、複数の乾燥炉を用いてもよい。通常、乾燥炉を複数用いる場合は、2〜6台程度用いられる。この場合、各乾燥炉を直列状に隙間なく並べて設置すると乾燥ムラができにくいことから好ましい。また、乾燥炉は、その内部が一つの乾燥室を構成するものであってもよいし、複数の乾燥室に仕切られているものであってもよい。内部が複数の乾燥室に仕切られている場合は、各乾燥室がそれぞれ独立して温度調整できるものを用いることが好ましい。なお、本明細書では、フィルムが通過する乾燥炉全体において、独立して温度調節ができる乾燥炉又は乾燥室のことをゾーンということがある。したがって、「70℃以上の温度に設定されたゾーンを有する乾燥炉」とは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが通過する乾燥炉又は乾燥室の少なくとも一つが70℃以上の温度に設定されており、フィルムが通過する乾燥炉全体において70℃以上の温度に設定された領域(ゾーン)が存在することを意味する。
本発明では、乾燥炉が70℃以上に設定されたゾーンを有することで、後述する水分率減少量の割合及び偏光フィルムの水分率を所定の範囲に調整することが容易となることから好ましい。乾燥処理において、乾燥炉が70℃以上に設定されたゾーンを有さないと、得られる偏光フィルムの光学特性が不十分なものとなる傾向がある。また、偏光フィルムを加熱した際にフィルムにかかる収縮応力は、その製造時の乾燥条件によって異なる傾向があり、この収縮応力は、製造時に高温で処理することによって低減する傾向にある。したがって、収縮応力を低減する観点から、乾燥炉は80℃以上に設定されたゾーンを有するのがより好ましく、90℃以上に設定されたゾーンを有するのがさらに好ましい。またこの乾燥温度は、フィルムの過度な乾燥を防止するため、105℃以下であるのが好ましい。
本発明における乾燥処理は、フィルムを複数の乾燥炉又は乾燥室を通過させて多段階的に行ってもよい。このとき、フィルムが最初に通るゾーンの温度は70℃未満に設定されることが好ましい。この温度は、70℃未満であれば特に制限はなく室温でもよいが、乾燥時間に要する時間の観点から30℃以上に設定されるのが好ましい。このようにフィルムの乾燥を多段階的に行うことにより、乾燥炉内においてフィルムの表面から水分が急激に蒸発するのを抑制することができるため、フィルム内部で水分が偏在することで生じるシワやこれに起因するフィルムの破断などを抑制することができる。
本発明では、上記の乾燥炉に、洗浄処理後の水分率が15〜60重量%とされたポリビニルアルコール系樹脂フィルムが導入される。この水分率が15重量%未満であると、乾燥炉にフィルムの先端を通す際にフィルムが過度に乾燥されることがあり、フィルムが破断しやすくなる。一方で、乾燥炉に導入されるときのポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率が60重量%を超えると、光学特性が十分に発現しにくい傾向や、乾燥前後の工程中における急激な水分率の変化などによってフィルムにシワが発生しやすい傾向にある。したがって、乾燥炉に導入されるときのポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率を15〜60重量%に調整することによって、乾燥処理の前後におけるハンドリング性に優れ、また光学特性を満足する偏光フィルムを得ることができる。乾燥炉に導入されるときのポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率は、好ましくは20〜50重量%であり、より好ましくは25〜45重量%である。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの水分率は、延伸条件、各処理に用いる薬液の濃度条件、洗浄処理後のフィルムの水切りなどによって調整することができる。フィルムの水切りによって水分率を調整する場合は、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムをニップロール、ガイドロールなどに通すことによって行われる。
本発明では、上記の水分率に調整されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、初期乾燥工程及び標準乾燥工程を備える乾燥処理を施して偏光フィルムを製造する。
上記の初期乾燥工程とは、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの先端を乾燥炉に通すときに施される乾燥処理のことである。具体的には、洗浄処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムにおける最初に乾燥炉に導入される先端が、乾燥炉に導入されてから乾燥炉の内部を通過し、乾燥炉から出てくるまでの間に施される乾燥処理のことである。初期乾燥工程において、乾燥炉が70℃以上のゾーンを有するとき、乾燥炉内での70℃以上のゾーンにおけるフィルム滞留時間を30秒以下とすると、フィルムの過度な乾燥を防ぐことができ、作業中にフィルムが破断するのを抑制することができることから好ましい。本発明では、初期乾燥工程でフィルムを乾燥しすぎないように調整するのが重要であり、以下のように調整される。
初期乾燥工程では、本工程で減少するフィルムの水分率の量が、後述する標準乾燥工程
で減少するフィルムの水分率の量に対して55〜85%の割合となるようにフィルムを乾燥させる。この初期乾燥工程で減少するフィルムの水分率の量は、初期乾燥工程の前後における水分率の減少量として求めることができ、乾燥炉に導入されるときのフィルムの水分率から初期乾燥工程を行った後の水分率を差し引いた値となる。同様に、標準乾燥工程で減少するフィルムの水分率の量とは、標準乾燥工程の前後における水分率の減少量として求めることができ、乾燥炉に導入されるときのフィルムの水分率から初期乾燥工程及び標準乾燥工程をこの順に行った後の水分率、すなわち得られる偏光フィルムにおける水分率を差し引いた値となる。以下、本明細書において、水分率の減少量のことを、単に「水分率減少量」ということがある。
上記の標準乾燥工程における水分率減少量に対する初期乾燥工程における水分率減少量の割合が、85%より大きくなると、乾燥炉の内部での作業中にフィルムにかかる応力よってフィルムが破断しやすい傾向にある。一方で、この水分率減少量の割合が、55%より小さくなると、優れた光学特性を発現し、品質の安定した偏光フィルムが得られるまでにかかる時間が長くなる傾向にある。本発明では、この水分率減少量の割合が55〜85%となるようにフィルムを乾燥させることが重要であり、このような乾燥工程によって乾燥炉の内部にフィルム先端を通す際に生じるフィルムの破断が抑制されるという知見に基づいて完成されたものである。
ここで、フィルムの水分率について説明する。本発明におけるフィルムの水分率とは、乾燥重量法で求められるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの重量に対する水分量の割合を百分率で表したものであり、水分率を測定するポリビニルアルコール系樹脂フィルムの断片を105℃で120分間熱処理し、その熱処理の前後における水分量変化から次式によって求められる。
水分率(重量%)=(熱処理前の重量−熱処理後の重量)/熱処理前の重量×100
本発明では、以上に説明した初期乾燥工程の後に標準乾燥工程を行う。標準乾燥工程では、初期乾燥工程及び標準乾燥工程が順次施されて乾燥炉から出てくる偏光フィルムの水分率が、乾燥炉に導入されるときの水分率より小さくて5〜15重量%、好ましくは7〜13重量%となるように乾燥処理が施される。得られる偏光フィルムの水分率が5重量%未満であると、偏光フィルムにカールが生じやすい傾向にあるため、これを適用した偏光板にもカールが生じることがある。一方で、偏光フィルムの水分率が15重量%を超えると、その水分率自体に変動が生じやすい傾向にあるため、偏光フィルム、延いては偏光板の光学性能にも変動を生じることがある。また偏光フィルムの水分率が大きいと、その水分率の変動が原因となり、それを適用した偏光板にもカールを生じることがある。このように、偏光フィルムの水分率を5〜15%に調整することによって、得られる偏光フィルムは、光学特性を満足でき、またカールの発生を抑制することができるものとなる。
この標準乾燥工程は、70℃以上のゾーンを有する乾燥炉で行われることが好ましい。また標準乾燥工程における乾燥温度の最高温度は、70〜105℃程度であり、好ましくは80〜102℃である。また標準乾燥工程での最高温度における処理時間は、5〜60秒程度であり、好ましくは10〜40秒である。
以上に説明した本発明の乾燥処理を施すことができる実施形態の一つとして、フィルムが通る乾燥炉の少なくとも一部において、標準乾燥工程が初期乾燥工程よりも高い温度に設定されたゾーンを通るように行われる形態を挙げることができる。この実施形態の具体例として、フィルムの先端が乾燥炉を通って出た後(初期乾燥工程後)、一部のゾーンを昇温させて標準乾燥工程を行う形態が挙げられる。
この実施形態で使用する乾燥炉は、少なくとも2段に分かれているのが好ましく、フィルム入口側から2段目以降に、標準乾燥工程を施すときの温度が初期乾燥工程を施すときの温度よりも高く設定されたゾーンを有することが好ましい。このような乾燥炉を用いると、フィルム入り口側においてフィルムが急激に乾燥するのを抑制することができ、また多段階的なフィルムの乾燥によりフィルムの表面から水分が急激に蒸発するのを抑制することができる。ここで、乾燥炉が少なくとも2段に分かれているとは、乾燥炉が少なくとも二つの乾燥炉又は乾燥室から構成されている状態をさし、フィルムが二つ以上のゾーンを通過して乾燥処理が施されることを意味する。各乾燥炉又は乾燥室は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが通過する位置以外は仕切られており、それぞれ独立して温度設定をすることができる。
初期乾燥工程後に昇温されるゾーンは、昇温前後における温度の差が10℃以上であることが好ましく、またその温度差が30℃以下であることが好ましい。この温度差が30℃を超えて大きくなると、昇温後の温度に安定するまでにかかる時間が長くなる傾向にあるため、製造効率の観点から、温度差が30℃以下であることが好ましい。
この実施形態に用いられる乾燥炉の一つの好ましい構造を断面模式図で図2に示した。図2を参照して、乾燥炉21が、第一の乾燥炉21a及び第二の乾燥炉21bの二つの乾燥炉から構成されている場合、初期乾燥工程は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの先端が第一の乾燥炉21aに導入されてから、第一の乾燥炉21a及び第二の乾燥炉21bを通って第二の乾燥炉21bから出てくるまでの工程となる。初期乾燥工程の後、乾燥炉21の一部を昇温させ、所定の水分率になるまでフィルムを乾燥させて標準乾燥工程を行う。
この実施形態における初期乾燥工程について説明する。初期乾燥工程は、上記のとおりフィルムの先端を第一の乾燥炉21a及び第二の乾燥炉21bに通すのであるが、第一の乾燥炉21a及び第二の乾燥炉21bの内部には、図2に示すようにフィルム搬送方向の上流から下流に向かって複数のガイドロールが設置されている。第一の乾燥炉21aに導入されたフィルムの先端は、例えば手作業によって、これらの上側と下側とを交互に順次通されて第二の乾燥炉21bへと搬送され、第二の乾燥炉21bにおいても第一の乾燥炉21aと同様にフィルムが通され、第二の乾燥炉21bを通過して搬出される。
このとき、第一の乾燥炉21aは、70℃未満の温度に設定されるのが好ましい。また第二の乾燥炉21bは、初期乾燥工程における設定温度が好ましくは60℃以上、より好ましくは70℃以上であり、好ましくは85℃以下である。初期乾燥工程の温度が低すぎると、上記した水分率減少量の割合を満たすまでに要する時間が長くなり、偏光フィルムの生産効率が低くなる傾向にある。初期乾燥工程における第二の乾燥炉21bの処理時間は、5〜60秒程度、好ましくは10〜40秒である。処理温度及び処理時間は、上述した水分率減少量の割合が満たされるように適宜調整すればよい。
初期乾燥工程の後、上記した標準乾燥工程が行われる。この実施形態における標準乾燥工程は、第二の乾燥炉21bからフィルムの先端が出た後、第二の乾燥炉21bの温度を10〜30℃昇温させて行われる。
なお、図2には、乾燥炉21が第一の乾燥炉21a及び第二の乾燥炉21bの2段に分かれている例を示したが、これに限られるものではなく、本発明で規定する乾燥処理を満たす範囲であれば必要に応じて3段以上に分かれていてもよい。また、乾燥炉内部に設置されるガイドロールとしては、固定ガイドロールのほかに昇降可能なガイドロールを用いることもでき、その設置数及び設置位置は、上記した水分率及び水分率減少量の割合が満たされるように適宜調整すればよい。
本発明の乾燥処理を施すことができるもう一つの実施形態として、乾燥炉の内部に設置されるガイドロールに、昇降可能なガイドロールを用いる形態を挙げることができる。この実施形態の具体例として、初期乾燥工程が、フィルムが通る乾燥炉の少なくとも一部において、フィルム搬送方向の上流から下流に向かって配置された複数の昇降可能なガイドロールのうち、少なくとも1本の上側を通り、別の少なくとも1本の下側を通るように行われ、標準乾燥工程が、フィルムの先端が乾燥炉を通って出た後、フィルムの搬送路が延長されるように昇降可能なガイドロールを上昇させて又は下降させて行われる形態が挙げられる。
この実施形態において、乾燥炉は、少なくとも2段に分かれているのが好ましい。また乾燥炉は、フィルム入口側から2段目以降、好ましくは出口側に昇降可能な複数のガイドロールが配置されたゾーンを有することが好ましい。
この実施形態に用いられる乾燥炉の一つの好ましい構造を断面模式図で図3に示した。図3の乾燥炉21は、図2と同様に第一の乾燥炉21c及び第二の乾燥炉21dの二つの乾燥炉から構成されているが、これに限られるものではなく、必要に応じて3段以上に分かれていてもよい。図3の第二の乾燥炉21dには、その内部に昇降可能なガイドロールが設置されており、図3(A)に初期乾燥工程における乾燥炉の構造を、図3(B)に標準乾燥工程における乾燥炉の構造をそれぞれ示した。なお、図3の第一の乾燥炉21cは図2の第一の乾燥炉21aに相当する乾燥炉であり、その乾燥温度及び乾燥時間などは、上記した図2の第一の乾燥炉21aと同様になる。
乾燥処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが乾燥炉21を通過することで施される。図3に示すように、乾燥炉21が第一の乾燥炉21c及び第二の乾燥炉21dの二つの乾燥炉から構成されている場合、初期乾燥工程は、第一の乾燥炉21c及び第二の乾燥炉21dを通って第二の乾燥炉21dから出てくるまでの工程となる。
初期乾燥工程は、予め図3(A)に示すように、昇降可能な複数のガイドロールを上流から下流に向かって、かつ、同程度の高さで配置しておき、フィルムはそれらの少なくとも1本の上側を通され、別の少なくとも1本の下側を通され、第二の乾燥炉21dから出てくるように行われる。図3には、その一例として、フィルムが複数のガイドロールの上側と下側とを交互に順次通される実施形態を示したが、これに限られるものではない。
図3(A)には、第二の乾燥炉21dの高さ方向において中程度の高さに、かつフィルムが直線的に通過するように昇降可能なガイドロールを設置した例を示したが、これに限られるものではなく、昇降可能なガイドロールを直線状に配置することもできる。また、図3(A)には、第二の乾燥炉21dにのみ昇降可能なガイドロールを配置した例を示したが、これに限られるものではない。昇降可能なガイドロールは、乾燥炉の少なくとも一部に配置されていればよく、必要に応じ、第一の乾燥炉21c及び/又はその他の乾燥炉(3段以上に分かれている場合)に配置することも可能である。第一の乾燥炉21cの内部にも昇降可能なガイドロールを配置するのが好ましい。昇降可能なガイドロールの設置数及び配置位置は、上記した水分率及び水分率減少量の割合が満たされるように適宜調整して行えばよい。
初期乾燥工程において、第一の乾燥炉21cは、第一の乾燥炉21aと同様に70℃未満の温度に設定されるのが好ましい。また、第二の乾燥炉21dは、初期乾燥工程における設定温度が好ましくは70〜105℃、より好ましくは80〜102℃である。この実施形態では、標準乾燥工程における第二の乾燥炉21dの温度が、初期乾燥工程における第二の乾燥炉の温度と同一の温度に設定されるのが好ましい。初期乾燥工程における処理時間は、30秒以下、好ましくは12秒以下である。処理温度及び処理時間は、上述した水分率減少量の割合が満たされるように適宜調整すればよい。
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの先端が第二の乾燥炉21dから出た後、標準乾燥工程が行われる。標準乾燥工程では、図3(B)に示すように第二の乾燥炉21d内の昇降可能なガイドロールを、フィルムの搬送路が延長されるように上昇させて又は下降させて行われる。図3には、フィルムの搬送路が上下に延長されるように昇降させた例を示したが、これに限られるものではなく、フィルムの搬送路が延長されるように上昇のみ又は下降のみさせてもよい。
(その他の処理)
また、上記以外の処理を別の目的で追加することもできる。追加されうる処理の例として、ホウ酸処理後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(ヨウ化物処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛などを含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)などが挙げられる。
このようにして製造される偏光フィルムの最終的な積算延伸倍率は、通常、約 4.5〜7倍、好ましくは約5〜6.5 倍であり、フィルムの厚さは、例えば約5〜35μmである。
[偏光板の製造方法]
このようにして製造された偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を用いて保護フィルムを貼合することにより、偏光フィルム及び保護フィルムの積層体である偏光板が形成される。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム、シクロオレフィン系共重合樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂フィルム、ポリカーボネート系樹脂フィルム、ポリメチルメタクリレートのようなアクリル系樹脂フィルム、ポリプロピレン、ポリエチレンのような非環状オレフィン系樹脂フィルムなどが挙げられる。
接着剤と上記の偏光フィルム及び/又は上記の保護フィルムとの接着性を向上させるため、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面にコロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線処理、プライマー処理、ケン化処理、溶剤の塗布及び乾燥による溶剤処理等の表面処理を施すことも可能である。
なお、これら保護フィルムに代えて、熱可塑性樹脂の延伸フィルムや熱可塑性樹脂に液晶化合物を配向した光学補償フィルムを、接着剤を介して偏光フィルムに貼合することもできる。これらの熱可塑性樹脂の延伸フィルムや、熱可塑性樹脂に液晶化合物を配向した光学補償フィルムは、公知のものを適宜使用することができる。
偏光フィルムと保護フィルムなどの貼合に用いられる接着剤は、偏光フィルムと保護フィルムなどを接合できるものであれば特に限られないが、充分な接着力や透明性を満たすものが選択される。これらの点から、偏光フィルム及び保護フィルムなどの貼合には、紫外線硬化型接着剤が好ましく用いられる。また、偏光フィルム及びアセチルセルロース系樹脂フィルムの貼合には、上記の紫外線硬化型樹脂のほか、水系の接着剤、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液及びこれに架橋剤を配合した水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤などを用いることができる。
紫外線硬化型接着剤は、アクリル系化合物及び光ラジカル重合開始剤の混合物や、エポキシ化合物及び光カチオン重合開始剤の混合物などであることができる。また、カチオン重合性のエポキシ化合物及びラジカル重合性のアクリル系化合物を併用し、開始剤として光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤を併用することもできる。
紫外線硬化型接着剤を用いた場合は、フィルムを積層した後、紫外線を照射してその接着剤を硬化させる。紫外線の光源は特に限定されないが、波長400nm以下に発光分布を有するものが好ましく、具体的には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが好ましく用いられる。
紫外線硬化型接着剤を硬化させるための光照射強度は、接着剤の組成によって適宜決定され、特に限定されないが、重合開始剤の活性化に有効な波長領域の照射強度が 0.1〜6000mW/cm2 となるようにすることが好ましい。照射強度をこの範囲から適宜選択することにより、反応時間が長くなりすぎず、光源から輻射される熱及び接着剤の硬化時の発熱による接着剤の黄変や、偏光フィルムの劣化を抑制することができる。光照射時間もまた、硬化させる接着剤に応じて選択されるものであって特に限定されないが、上記の照射強度と照射時間との積として表される積算光量が10〜10000mJ/cm2 となるように設定されることが好ましい。
積算光量をこの範囲から適宜選択することにより、重合開始剤由来の活性種を十分量発生させて硬化反応を確実に進行させ、また照射時間を短くすることができるため、良好な生産性を維持できる。そして、偏光フィルムや保護フィルムなどを含む積層フィルムで、紫外線の照射によって紫外線硬化型接着剤を硬化させる場合、偏光フィルムの偏光度、透過率及び色相、並びに保護フィルムの透明性など、偏光板の諸機能が低下しない条件で硬化を行うことが好ましい。
また、水系接着剤を用いる場合は、例えば、フィルムの表面に接着剤を均一に塗布し又は2枚のフィルム間に流し込み、その塗布層を介して2枚のフィルムを重ね、ロールなどにより貼合して乾燥する方法が採用できる。乾燥後はさらに、室温又はそれよりやや高い温度、例えば、20〜45℃程度の温度で養生してもよい。
以上の接着剤層の厚さは、0.001〜5μm程度の範囲から、接着剤の種類や接着される2枚のフィルムの組合せによって適宜選択される。その厚さは、好ましくは0.01μm以上であり、また好ましくは2μm 以下である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により制限させるものではない。また、以下の例中におけるポリビニルアルコールフィルムの水分率は、次の方法で測定した。
〔実施例1〕
厚さ50μm の長尺のポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名“クラレポバールフィルムVF−PE#5000”、重合度2400、ケン化度99.9 モル%以上〕を用意し、30℃の純水に、フィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま浸漬してフィルムを十分に膨潤させた。次に、ヨウ素とヨウ化カリウムを含む30℃の水溶液が入った染色処理槽に60秒間浸漬しながら一軸延伸を行った後、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が重量比で12/4.4/100 の55℃水溶液に浸漬して耐水化処理をしつつ、原反からの積算延伸倍率が5.5 倍になるまで一軸延伸を行った。続いて、40℃のホウ酸水溶液に浸漬して補色処理を行った後、12℃の純水に浸漬して洗浄処理を行った。以上の各処理を終えたポリビニルアルコールフィルムを一旦仮巻装置で巻き取った後、次のように乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた。
まず、図2のようなフィルムの搬送経路となるように、50℃に設定された第一の乾燥炉内の固定ガイドロール7本にフィルムを通した後、70℃に設定された第二の乾燥炉内の固定ガイドロール7本にフィルムを通した。第一の乾燥炉に入る前のフィルムからフィルム断片を切り出してその水分率を測定したところ29.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムから断片を切り出してその水分率を測定したところ13.0%であった。次に、第二の乾燥炉を80℃に昇温し、水分率9.0%の偏光フィルムを得た。偏光フィルムの水分率は、得られた偏光フィルムからフィルム断片を切り出して測定した。フィルム先端の水分率減少量の割合は80%であり、80℃に設定された第二の乾燥炉における偏光フィルムの乾燥時間は20秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。また、第二の乾燥炉内の温度が80℃で安定し、水分率が9.0 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は15分であった。
〔実施例2〕
第二の乾燥炉内の固定ガイドロール13本とし、65℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を80℃に昇温した以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は29.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は12.5%であった。その後、第二の乾燥炉を80℃に昇温し、水分率8.0%の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は79%であり、80℃に設定された第二の乾燥炉における偏光フィルムの乾燥時間は40秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。また、第二の乾燥炉内の温度が80℃で安定し、水分率が8.0 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は30分であった。
〔実施例3〕
初期乾燥工程の後、第二の乾燥炉を90℃に昇温した以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は29.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は13.0 %であった。その後、第二の乾燥炉を80℃に昇温し、水分率7.5 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は75%であり、90℃に設定された第二の乾燥炉における偏光フィルムの乾燥時間は20秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際にフィルムの破断は発生しなかった。また、第二の乾燥炉内の温度が90℃で安定し、水分率が7.5 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は30分であった。
〔実施例4〕
厚さ60μm のポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名“クラレポバールフィルムVF−PE#6000”、重合度2400、ケン化度99.9 モル%以上〕を用い、75℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を90℃に昇温した以外は実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は36.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は17%であった。その後、第二の乾燥炉を90℃に昇温し、水分率9.5 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は72%であり、90℃に設定された第二の乾燥炉における偏光フィルムの乾燥時間は20秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。また、第二の乾燥炉内の温度が90℃で安定し、水分率が9.5 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は25分であった。
〔実施例5〕
厚さ75μm のポリビニルアルコールフィルム〔(株)クラレ製の商品名“クラレポバールフィルムVF−PS#7500”、重合度2400、ケン化度99.9 モル%以上〕を用い、80℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を95℃に昇温した以外は実施例2と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は45.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は17.5 %であった。その後、第二の乾燥炉を95℃に昇温し、水分率8.5 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は76%であり、95℃に設定された第二の乾燥炉における偏光フィルムの乾燥時間は40秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。また、第二の乾燥炉内の温度が95℃で安定し、水分率が8.5 %の偏光フィルムが得られるまでに要した時間は30分であった。
〔実施例6〕
耐水化処理を60℃で実施し、65℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を80℃に昇温した以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は35.0 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は16.0 %であった。その後、第二の乾燥炉を80℃に昇温し、水分率9.5 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は75%であり、80℃に設定された第二の乾燥炉における偏光フィルムの乾燥時間は20秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。また、第二の乾燥炉内の温度が80℃で安定し、水分率が9.5 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は25分であった。
〔実施例7〕
第二の乾燥炉のガイドロールを全て昇降ロールとし、第二の乾燥炉を80℃に昇温した状態で第二の乾燥炉内において図3(A)のようにフィルムが直線的に通過するように設置された昇降ロールの間にフィルムの先端を通した後、実施例1と同様のパスラインとなるように昇降ロールを調整した以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は29.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は16.5 %であった。初期乾燥工程における80℃に設定された第二の乾燥炉での偏光フィルムの乾燥時間は4秒だった。その後、搬送路が上下に延長するように昇降ロールを調整し、水分率9.0 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は63%であり、昇降ロールを調整した後の乾燥時間は20秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。昇降ロールの位置を調整してから安定して水分率が9.0 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は10分であった。
〔実施例8〕
初期乾燥工程における第二の乾燥炉での偏光フィルムの乾燥時間を10秒とした以外は実施例6と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は29.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は13.5 %であった。その後、搬送路が上下に延長するように昇降ロールを調整して水分率9.0 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は78%であり、昇降ロールを調整した後の乾燥時間は20秒だった。フィルムの先端を手作業で乾燥炉に通過させる際、フィルムの破断は発生しなかった。昇降ロールの位置を調整してから安定して水分率が9.0 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は10分であった。
〔比較例1〕
80℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を昇温せずに80℃で維持してフィルムの乾燥を行った以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを作製した。このとき、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は10.0 %であり、フィルム先端の水分率減少量の割合は95%であった。乾燥炉を通過させる際にフィルムの破断が多発した結果、偏光フィルムを作製することができなかった。
〔比較例2〕
90℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を昇温せずに90℃で維持してフィルムの乾燥を行った以外は、実施例2と同様にして偏光フィルムを作製した。このとき、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は11.5 %であり、フィルム先端の水分率減少量の割合は93%であった。水分率が9.5 %の偏光フィルムを得られるまでに要した時間は10分であったが乾燥炉を通過させる際にフィルムの破断が多発した結果、原料と時間をロスし、欠陥が増加した。
〔比較例3〕
95℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を昇温せず95℃に維持してフィルムの乾燥を行った以外は、実施例3と同様にして偏光フィルムを作製した。このとき、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は10.8 %であり、フィルム先端の水分率減少量の割合は95%であった。水分率が9.0 %の偏光フィルムが得られるまでに要した時間は10分であったが、乾燥炉を通過させる際に、6回に1回の頻度でフィルムの破断が発生した結果、原料と時間をロスし、欠陥が増加した。
〔比較例4〕
50℃に設定された第二の乾燥炉内にフィルムの先端を手作業で通過させた後、第二の乾燥炉を95℃に昇温して乾燥を行った以外は実施例3と同様にして偏光フィルムを作製した。このとき、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は29%であった。その後、第二の乾燥炉を95℃に昇温し、水分率9.0 %の偏光フィルムを得た。フィルム先端の水分率減少量の割合は45%であった。乾燥炉を通過させる際に、フィルムの破断の発生は無かったが、水分率が9.0 %の偏光フィルムが得られるまでに要した時間は80分であった。
〔比較例5〕
初期乾燥工程における第二の乾燥炉での偏光フィルムの乾燥時間を15秒とした以外は実施例4と同様にして偏光フィルムを作製した。第一の乾燥炉に入る前の偏光フィルムの水分率は29.5 %であり、第二の乾燥炉からフィルムの先端が出たときのフィルムの水分率は11.0 %であった。このときのフィルム先端の水分率減少量の割合は90%であった。水分率が9.0 %の偏光フィルムが得られるまでに要した時間は10分であったが乾燥炉を通過させる際に、3回に一回の頻度でフィルムの破断が発生した結果、原料と時間をロスし、欠陥が増加した。
標準乾燥工程の温度を初期乾燥工程の温度よりも高くする本発明の製造方法により偏光フィルムを製造した実施例1〜4、及びこれらの実施例と同じポリビニルアルコールフィルム(原反フィルム)を用い、本発明の規定を満たさない方法で偏光フィルムを製造した比較例1を比較すると、比較例1では、水分率減少量の割合が大きくなりフィルムに破断が生じている。同様に、実施例5と比較例2、及び実施例6と比較例3とを比較すると、比較例の方法ではフィルムに破断が見られるのに対し、本発明の製造方法ではフィルムが破断することなく偏光フィルムを製造できることがわかる。また、実施例6及び比較例4の比較から、昇温前後の温度差が30℃を越えて大きくなると、偏光フィルムを得られるまでに要する時間が非常に長くなることから、本発明の製造方法は製造効率に優れることがわかる。
また、乾燥炉に昇降ロールを設置して本発明の製造方法により偏光フィルムを製造した実施例7及び8と、これら実施例と同じポリビニルアルコールフィルム(原反フィルム)を用い、本発明の規定を満たさない方法で偏光フィルムを製造した比較例5とを比較すると、水分率減少量の割合が55〜85%となるように乾燥処理を施すことが、偏光フィルムの破断を防ぐために重要であることがわかる。
以上のことからも、本発明の製造方法によれば、原反フィルムが薄い場合であっても、乾燥炉にフィルムを通す際に生じるフィルムの破断が効果的に抑制され、作業性に優れること、またフィルムを乾燥させるのに必要な時間が短く、生産効率に優れていることがわかる。
10……ポリビニルアルコール系樹脂の原反フィルム、
11……繰出しロール、
13……膨潤処理槽、
15……染色処理槽、
17……ホウ酸処理槽、
19……洗浄処理槽、
21……乾燥炉、
21a,21c……第一の乾燥炉、
21b,21d……第二の乾燥炉、
25……偏光フィルム。

Claims (6)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに、染色処理、ホウ酸処理及び乾燥
    処理をこの順に施して偏光フィルムを製造する方法であって、
    前記乾燥処理は、乾燥炉に導入されるときの水分率が15〜60重量%とされたフィル
    ムを乾燥炉に通すことによって行われ、
    最初に前記乾燥炉に導入されたフィルム先端が前記乾燥炉を通って前記乾燥炉から出てくるまで乾燥処理を施す初期乾燥工程と、
    前記フィルムの先端が乾燥炉から出た後に、乾燥炉から出てくるフィルムの水分率が5
    〜15重量%の範囲内となるように乾燥処理を施す標準乾燥工程とを備え、
    前記初期乾燥工程は、乾燥炉に入る前のフィルムの水分率とフィルム先端が乾燥炉から
    出るときの水分率との差である水分率減少量が、前記標準乾燥工程における乾燥炉に入る
    前のフィルムの水分率と乾燥炉から出るときのフィルムの水分率との差である水分率減少
    量に対して55〜85%となるように行われ
    前記フィルム先端は、乾燥重量法による水分率測定のために必要な断片を切り出せる領域を含むことを特徴とする偏光フィルムの製造方法。


  2. 前記標準乾燥工程は、前記フィルムが通る乾燥炉の少なくとも一部において、前記初期乾燥工程よりも高い温度に設定されたゾーンを前記フィルムが通るように行われる請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  3. 前記乾燥炉が少なくとも2段に分かれており、フィルム入口側から2段目以降に、前記標準乾燥工程の温度が前記初期乾燥工程よりも高く設定されたゾーンを有する請求項2に記載の偏光フィルムの製造方法。
  4. 前記初期乾燥工程及び前記標準乾燥工程における温度の差が、10℃以上である請求項2又は3に記載の偏光フィルムの製造方法。
  5. 前記初期乾燥工程は、前記フィルムが通る乾燥炉の少なくとも一部において、フィルム搬送方向の上流から下流に向かって配置された複数の昇降可能なガイドロールのうち、少なくとも1本の上側を通り、別の少なくとも1本の下側を通るように行われ、前記標準乾燥工程は、前記フィルムの先端が乾燥炉を通って出た後、前記フィルムの搬送路が延長されるように前記昇降可能なガイドロールを上昇させて又は下降させて行われる請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  6. 前記乾燥炉が少なくとも2段に分かれており、フィルム入口側から2段目以降に、前記昇降可能な複数のガイドロールが配置されたゾーンを有する請求項5に記載の偏光フィルムの製造方法。
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