JP7030447B2 - 偏光フィルムの製造方法及び製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する方法及び製造装置に関する。
偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置における偏光素子などとして広く用いられている。偏光板としては、偏光フィルムの片面又は両面に接着剤等を用いて透明樹脂フィルム(保護フィルム等)を貼合した構成のものが一般的である。
偏光フィルムは主に、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルムに対して、ヨウ素等の二色性色素を含有する染色浴に浸漬させる処理、次いでホウ酸等の架橋剤を含有する架橋浴に浸漬させる処理などを施すとともに、いずれかの段階でフィルムを一軸延伸することによって製造されている。一軸延伸には、空中で延伸を行う乾式延伸と、上記染色浴及び架橋浴等の液中で延伸を行う湿式延伸とがある。
従来、偏光フィルムの製造方法において、偏光フィルムの特性を向上させるために種々の工夫がなされている。特開2013-148806号公報(特許文献1)では、ホウ酸処理工程と水洗工程の間にポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥する一次乾燥工程を設けることにより、透過光を良好な色相にすることができる、すなわちニュートラルグレーに近づけることができることが記載されている。
特開昭59-094706号公報(特許文献2)では、波長が1μm以上である遠赤外線を照射して固定化処理を行うことにより、収縮率が小さく、良好な平板性を有する偏光フィルムが得られることが記載されている。
特開2013-148806号公報 特開昭59-094706号公報
偏光フィルムに求められる特性として、上記した色相、収縮率、平板性以外にも種々の特性があり、重要な特性として単体透過率及び偏光度を指標とする光学特性がある。ヨウ素等の二色性色素を固定させるためにホウ酸等の架橋剤を用いて架橋処理も、耐水化を向上させて光学特性を向上させることができる方法の一つである。
特許文献1に記載されている方法では、架橋処理は行われているものの、一次乾燥工程を行うことにより偏光フィルムの光学特性をさらに向上させることができるのかは明らかではない。特許文献2に記載されている方法では、架橋処理は行われておらず、また遠赤外線を照射する工程を行うことにより偏光度が低下する結果が示されている(特許文献2の表1に示される固定化処理法が「処理前」と「遠赤外線」の実施例の偏光度を比較)。
本発明は、架橋処理を行う偏光フィルムの製造方法において、偏光フィルムの収縮力を抑制しつつ光学特性を向上させることが可能な偏光フィルムの製造方法、及びその製造装置を提供することを目的とする。
本発明は、以下に示す偏光フィルムの製造方法及び製造装置を提供する。
〔1〕 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色処理する染色工程と、
前記染色工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤で架橋処理する架橋工程と、
前記架橋工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射する電磁波照射工程と、を含む、偏光フィルムの製造方法。
〔2〕 前記架橋工程の後であって、前記電磁波照射工程の前及び後の少なくともいずれかにおいて、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに乾燥処理を行なう、乾燥工程をさらに含む、〔1〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔3〕 前記架橋剤は、ホウ素化合物を含む、〔1〕又は〔2〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔4〕 前記架橋工程は、前記架橋剤の水溶液からなる架橋浴に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる工程である、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔5〕 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する製造装置であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する染色部と、
前記染色処理後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤で架橋処理する架橋部と、
前記架橋処理後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射する電磁波照射部と、を備える、偏光フィルムの製造装置。
本発明によれば、偏光フィルムの収縮力を抑制しつつ光学特性を向上させることできる偏光フィルムの製造方法及び製造装置を提供することができる。
本発明に係る偏光フィルムの製造方法及びそれに用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。 電磁波照射器の種類毎の放射エネルギースペクトルを示す図である。
<偏光フィルムの製造方法>
本発明において偏光フィルムは、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素や二色性染料)が吸着配向しているものである。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂は通常、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得られる。そのケン化度は、通常約85モル%以上、好ましくは約90モル%以上、より好ましくは約99モル%以上である。ポリ酢酸ビニル系樹脂は、例えば、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等であることができる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類等を挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000~10000、好ましくは約1500~5000程度である。
これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール等も使用し得る。
本発明では、偏光フィルム製造の開始材料として、厚みが65μm以下(例えば60μm以下)、好ましくは50μm以下、より好ましくは35μm以下、さらに好ましくは30μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を用いる。
これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光フィルムを得ることができる。原反フィルムの幅は特に制限されず、例えば400~6000mm程度であることができる。原反フィルムは、例えば長尺の未延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意される。
また本発明で用いられるポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、これを支持する基材フィルムに積層されたものであってもよく、すなわち、当該ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、基材フィルムとその上に積層されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとの積層フィルムとして用意されてもよい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、乾燥させることによって製造することができる。
基材フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体例としては、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであり、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
偏光フィルムは、上記の長尺の原反フィルムを原反ロールから巻出しつつ、偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路に沿って連続的に搬送させて、処理槽に収容された処理液(以下、「処理浴」ともいう)に浸漬させた後に引き出す所定の処理工程を実施した後に乾燥工程を実施することにより長尺の偏光フィルムとして連続製造することができる。なお、処理工程は、フィルムに処理液を接触させて処理する方法であればフィルムを処理浴に浸漬させる方法に限定されることはなく、噴霧、流下、滴下等により処理液をフィルム表面に付着させてフィルムを処理する方法であってもよい。処理工程が、フィルムを処理浴に浸漬させる方法によってなされる場合、一つの処理工程を行う処理浴は一つに限定されることはなく、二つ以上の処理浴にフィルムを順次浸漬させて一つの処理工程を完成させてもよい。
上記処理液としては、膨潤液、染色液、架橋液、洗浄液等が例示される。そして、上記処理工程としては、原反フィルムに膨潤液を接触させて膨潤処理を行う膨潤工程と、膨潤処理後のフィルムに染色液を接触させて染色処理を行う染色工程と、染色処理後のフィルムに架橋液を接触させて架橋処理を行う架橋工程と、架橋処理後のフィルムに洗浄液を接触させて洗浄処理を行う洗浄工程とが例示される。また、これら一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理を施す。必要に応じて他の処理工程を付加してもよい。
本発明においては、架橋処理の後に、フィルムに電磁波を照射する後述する電磁波照射工程を行う。電磁波照射工程を行うことにより、得られる偏光フィルムの収縮力を抑制しつつ光学特性を向上させることができる。
以下、図1を参照しながら、本発明に係る偏光フィルムの製造方法の一例を詳細に説明する。図1は、本発明に係る偏光フィルムの製造方法及びそれに用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。図1に示される偏光フィルム製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反(未延伸)フィルム10を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送させることにより、フィルム搬送経路上に設けられる膨潤浴(膨潤槽内に収容された膨潤液)13、染色浴(染色槽内に収容された染色液)15、第1架橋浴(架橋槽内に収容された第1架橋液)17a、第2架橋浴(架橋槽内に収容された第2架橋液)17b、及び洗浄浴(洗浄槽内に収容された洗浄液)19を順次通過させ、最後に乾燥炉21を通過させるように構成されている。得られた偏光フィルム23は、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光フィルム23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。図1における矢印は、フィルムの搬送方向を示している。
図1の説明において、「処理槽」は、膨潤槽、染色槽、架橋槽及び洗浄槽を含む総称であり、「処理液」は、膨潤液、染色液、架橋液及び洗浄液を含む総称であり、「処理浴」は、膨潤浴、染色浴、架橋浴及び洗浄浴を含む総称である。膨潤浴、染色浴、架橋浴及び洗浄浴は、それぞれ、本発明の製造装置における膨潤部、染色部、架橋部及び洗浄部を構成する。
偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路は、上記処理浴の他、搬送されるフィルムを支持する、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるガイドロール30~48,60,61や、搬送されるフィルムを押圧・挟持し、その回転による駆動力をフィルムに与えることができる、あるいはさらにフィルム搬送方向を変更することができるニップロール50~55を適宜の位置に配置することによって構築することができる。ガイドロールやニップロールは、各処理浴の前後や処理浴中に配置することができ、これにより処理浴へのフィルムの導入・浸漬及び処理浴からの引き出しを行うことができる〔図1参照〕。例えば、各処理浴中に1以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送させることにより、各処理浴にフィルムを浸漬させることができる。
図1に示される偏光フィルム製造装置は、各処理浴の前後にニップロールが配置されており(ニップロール50~54)、これにより、いずれか1以上の処理浴中で、その前後に配置されるニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸を実施することが可能になっている。
図1に示される偏光フィルム製造装置においては、第2架橋浴17bの下流であって、洗浄浴19の上流の搬送経路上に電磁波照射部71が配置されており、電磁波照射工程が行われる。以下、各工程について説明する。
(膨潤工程)
膨潤工程は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつ原反フィルム10の極端な溶解や失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
図1を参照して、膨潤工程は、原反フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送させ、原反フィルム10を膨潤浴13に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。図1の例において、原反フィルム10を巻き出してから膨潤浴13に浸漬させるまでの間、原反フィルム10は、ガイドロール60,61及びニップロール50によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。膨潤処理においては、ガイドロール30~32及びニップロール51によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送される。
膨潤浴13の膨潤液としては、純水のほか、ホウ酸(特開平10-153709号公報)、塩化物(特開平06-281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01~10重量%の範囲で添加した水溶液を使用することも可能である。
膨潤浴13の温度は、例えば10~50℃程度、好ましくは10~40℃程度、より好ましくは15~30℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは10~300秒程度、より好ましくは20~200秒程度である。また、原反フィルム10が予め気体中で延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムである場合、膨潤浴13の温度は、例えば20~70℃程度、好ましくは30~60℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは30~300秒程度、より好ましくは60~240秒程度である。
膨潤処理では、原反フィルム10が幅方向に膨潤してフィルムにシワが入るといった問題が生じやすい。このシワを取りつつフィルムを搬送するための1つの手段として、ガイドロール30,31及び/又は32にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることが挙げられる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は延伸処理を施すことである。例えば、ニップロール50とニップロール51との周速差を利用して膨潤浴13中で一軸延伸処理を施すことができる。
膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、フィルムに積極的な延伸を行わない場合は、搬送方向のフィルムのたるみを無くすために、例えば、膨潤浴13の前後に配置するニップロール50,51の速度をコントロールする等の手段を講ずることが好ましい。また、膨潤浴13中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴13中での水流を水中シャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
図1に示される例において、膨潤浴13から引き出されたフィルムは、ガイドロール32、ニップロール51、ガイドロール33を順に通過して染色浴15へ導入される。
(染色工程)
染色工程は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着、配向させる等の目的で行われる。処理条件は、当該目的が達成できる範囲で、かつフィルムの極端な溶解や失透等の不具合が生じない範囲で決定される。図1を参照して、染色工程は、ニップロール51、ガイドロール33~36及びニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、膨潤処理後のフィルムを染色浴15(染色槽に収容された処理液)に所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色工程に供されるフィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、又は染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
二色性色素としてヨウ素を用いる場合、染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003~0.3/約0.1~10/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物を併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合は、ヨウ素を含む点で後述する架橋処理と区別され、水溶液が水100重量部に対し、ヨウ素を約0.003重量部以上含んでいるものであれば、染色浴15とみなすことができる。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、通常10~45℃程度、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは20~35℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒である。
二色性色素として水溶性二色性染料を用いる場合、染色浴15の染色液には、例えば、濃度が重量比で二色性染料/水=約0.001~0.1/100である水溶液を用いることができる。この染色浴15には、染色助剤等を共存させてもよく、例えば、硫酸ナトリウム等の無機塩や界面活性剤などを含有していてもよい。二色性染料は1種のみを単独で用いてもよいし、2種類以上の二色性染料を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの染色浴15の温度は、例えば20~80℃程度、好ましくは30~70℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常30~600秒程度、好ましくは60~300秒程度である。
上述のように染色工程では、染色浴15でフィルムの一軸延伸を行うことができる。フィルムの一軸延伸は、染色浴15の前後に配置したニップロール51とニップロール52との間に周速差をつけるなどの方法によって行うことができる。
染色処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール33,34,35及び/又は36にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
図1に示される例において、染色浴15から引き出されたフィルムは、ガイドロール36、ニップロール52、及びガイドロール37を順に通過して架橋浴17へ導入される。
(架橋工程)
架橋工程は、架橋による耐水化や色相調整(フィルムが青味がかるのを防止する等)などの目的で行う処理である。図1に示す例においては、架橋工程を行う架橋浴として二つの架橋浴が配置され、耐水化を目的として行う第1架橋工程を第1架橋浴17aで行い、色相調整を目的として行う第2架橋工程を第2架橋浴17bで行う。図1を参照して、第1架橋工程は、ニップロール52,ガイドロール37~40及びニップロール53aによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第1架橋浴17a(架橋槽に収容された第1架橋液)に染色処理後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。第2架橋工程は、ニップロール53a,ガイドロール41~44及びニップロール53bによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送させ、第2架橋浴17b(架橋槽に収容された第2架橋液)に第1架橋工程後のフィルムを所定時間浸漬し、次いで引き出すことによって実施することができる。以下、架橋浴という場合には第1架橋浴17a及び第2架橋浴17bいずれをも含み、架橋液という場合には第1架橋液及び第2架橋液いずれをも含む。
架橋液としては、架橋剤を溶媒に溶解した溶液を使用できる。架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物や、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類でも良いし、二種類以上を併用しても良い。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでも良い。架橋溶液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、1~20重量%の範囲にあることが好ましく、6~15重量%であることがより好ましい。
架橋液としては、水100重量部に対してホウ酸を例えば約1~10重量部含有する水溶液であることができる。架橋液は、染色処理で使用した二色性色素がヨウ素の場合、ホウ酸に加えてヨウ化物を含有することが好ましく、その量は、水100重量部に対して、例えば1~30重量部とすることができる。ヨウ化物としては、ヨウ化カリウム、ヨウ化亜鉛等が挙げられる。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、塩化亜鉛、塩化コバルト、塩化ジルコニウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、硫酸ナトリウム等を共存させてもよい。
架橋処理においては、その目的によって、ホウ酸及びヨウ化物の濃度、並びに架橋浴17の温度を適宜変更することができる。例えば、架橋処理の目的が架橋による耐水化である第1架橋液の場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=3~10/1~20/100の水溶液であることができる。必要に応じ、ホウ酸に代えて他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤を併用してもよい。フィルムを浸漬するときの第1架橋浴17aの温度は、通常50~70℃程度、好ましくは53~65℃であり、フィルムの浸漬時間は、通常10~600秒程度、好ましくは20~300秒、より好ましくは20~200秒である。また、膨潤処理前に予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して染色処理及び第1架橋処理をこの順に施す場合、第1架橋浴17aの温度は、通常50~85℃程度、好ましくは55~80℃である。
色相調整を目的とする第2架橋液においては、例えば、二色性色素としてヨウ素を用いた場合、濃度が重量比でホウ酸/ヨウ化物/水=1~5/3~30/100を使用することができる。フィルムを浸漬するときの第2架橋浴17bの温度は、通常10~45℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常1~300秒程度、好ましくは2~100秒である。
架橋処理は複数回行ってもよく、通常2~5回行われる。この場合、使用する各架橋浴の組成及び温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。架橋による耐水化のための架橋処理及び色相調整のための架橋処理は、それぞれ複数の工程で行ってもよい。
ニップロール52とニップロール53aとの周速差を利用して第1架橋浴17a中で一軸延伸処理を施すこともできる。また、ニップロール53aとニップロール53bとの周速差を利用して第2架橋浴17b中で一軸延伸処理を施すこともできる。
架橋処理においても、膨潤処理と同様にフィルムのシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール38,39,40,41,42,43及び/又は44にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
図1に示される例において、第2架橋浴17bから引き出されたフィルムは、ガイドロール44、ニップロール53bを順に通過して洗浄浴19へ導入される。
(洗浄工程)
図1に示される例においては、架橋工程後の洗浄工程を含む。洗浄処理は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した余分なホウ酸やヨウ素等の薬剤を除去する目的で行われる。洗浄工程は、例えば、架橋処理したポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬することによって行われる。なお、洗浄工程は、洗浄浴19にフィルムを浸漬させる工程に代えて、フィルムに対して洗浄液をシャワーとして噴霧することにより、若しくは洗浄浴19への浸漬と洗浄液の噴霧とを併用することによって行うこともできる。
図1には、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄浴19に浸漬して洗浄処理を行う場合の例を示している。洗浄処理における洗浄浴19の温度は、通常2~40℃程度であり、フィルムの浸漬時間は、通常2~120秒程度である。
なお、洗浄処理においても、シワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送する目的で、ガイドロール45,46,47及び/又は48にエキスパンダーロール、スパイラルロール、クラウンロールのような拡幅機能を有するロールを用いたり、クロスガイダー、ベンドバー、テンタークリップのような他の拡幅装置を用いたりすることができる。また、フィルム洗浄処理において、シワの発生を抑制するために延伸処理を施してもよい。
(延伸工程)
上述のように原反フィルム10は、上記一連の処理工程の間(すなわち、いずれか1以上の処理工程の前後及び/又はいずれか1以上の処理工程中)に、湿式又は乾式にて一軸延伸処理される。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸工程は、原反フィルム10から偏光フィルム23を得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。上述のように延伸処理は、フィルムのシワの発生の抑制にも有利である。
原反フィルム10を基準とする、偏光フィルム23の最終的な累積延伸倍率は通常、4.5~7倍程度であり、好ましくは5~6.5倍である。延伸工程はいずれの処理工程で行ってもよく、2以上の処理工程で延伸処理を行う場合においても延伸処理はいずれの処理工程で行ってもよい。
(乾燥工程)
洗浄工程の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行うことが好ましい。フィルムの乾燥は特に制限されないが、図1に示される例のように乾燥炉21を用いて行うことができる。乾燥炉21は、例えば熱風乾燥機を備えるものとすることができる。熱風乾燥機による乾燥温度は、例えば30~100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30~600秒程度である。後述する電磁波照射工程における電磁波照射によりフィルムの水分量が低減(乾燥)される場合には、電磁波照射工程がフィルムの乾燥を兼ねるようにし、これとは別の乾燥工程を行わなくてもよいし、または電磁波照射工程による乾燥を補うための乾燥工程を行うようにしてもよい。
(電磁波照射工程)
図1に示される装置では、乾燥炉21内に配置された、電磁波照射部71により電磁波の照射がなされる。電磁波照射部71は、乾燥炉21内に配置されることに限定されることはなく、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの搬送路において、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムへの照射が可能なように配置されているものであればよい。本発明の電磁波照射工程で用いられる電磁波は、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上であり、好ましくは28%以上であり、さらに好ましくは35%以上である。このような電磁波をフィルムに照射することにより、得られる偏光フィルムの光学特性を向上させることができ、電磁波照射によりフィルムが劣化し光学特性が低下することを抑制することができる。本発明で用いられる電磁波について、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合の上限値は特に限定されないが例えば80%以下である。通常、波長0.75μm~1000μmの電磁波を赤外線と言う。
電磁波照射工程において、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射することにより、偏光フィルムの光学特性を向上させることができるメカニズムは明らかではないが、2μm超4μm以下の波長の赤外線により励起されるフィルム内の分子運動により、架橋処理されたフィルム中のヨウ素等の二色性色素の固定化を促進させ、偏光フィルムの光学特性を向上させることができるものと推測される。
図2は、電磁波照射器の種類毎の放射エネルギースペクトルを示す。また、表1は、電磁波照射器の種類毎の、各波長域(波長xμmの範囲で表す)の電磁波の放射エネルギーの全放射エネルギーに占める割合を示す。図2及び表1に示す電磁波照射器は、ハロゲンヒーター(熱源温度2600℃)、短波長赤外線ヒーター(熱源温度2200℃)、高速応答中波長赤外線ヒーター(熱源温度1600℃)、カーボンヒーター(熱源温度1200℃)、カーボンヒーター(熱源温度950℃)、中波長赤外線ヒーター(熱源温度900℃)である。
Figure 0007030447000001
表1に示すように、短波長赤外線ヒーター(熱源温度2200℃)、高速応答中波長赤外線ヒーター(熱源温度1600℃)、カーボンヒーター(熱源温度1200℃)、カーボンヒーター(熱源温度950℃)、中波長赤外線ヒーター(熱源温度900℃)は、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上であるので、電磁波照射部71を構成する電磁波照射器として好適に用いることができる。電磁波照射部71は、1台の電磁波照射器により構成されていてもよいし、複数台の電磁波照射器により構成されていてもよい。複数台の電磁波照射器により構成されている場合には、複数台の電磁波照射器から放射される2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーが、複数台の電磁波照射器から放射される電磁波の全放射エネルギーの25%以上となるように複数台の電磁波照射器を選択する。また、図1においては、フィルムの一方の面のみに電磁波が照射されるように電磁波照射部71が構成されているが、フィルムの両面から電磁波が照射されるように複数の電磁波照射器を配置してもよい。電磁波照射部71は、照射対象のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの幅方向全域に電磁波が照射されように構成されていることが好ましい。
電磁波照射工程において、電磁波はフィルム表面に対して垂直方向上側から照射されることが好ましい。また、電磁波照射部71における電磁波照射器の電磁波放射口とフィルムとの間の距離は、2~40cmであることが好ましく、5~20cmであることがさらに好ましい。ただし、この距離は、電磁波照射器から放射される電磁波の放射エネルギー量や、フィルム表面の温度などを考慮して適宜選択しながら行うことが好ましい。電磁波照射時のフィルム表面の温度は、30~100℃に維持されていることが好ましく、40~90℃に維持されていることがより好ましい。
電磁波照射工程において、フィルムの単位体積当たりの電磁波の照射熱量は、偏光フィルムの光学特性を向上させる観点から、またフィルムの乾燥を促進させる観点から、0.5kJ/cm以上であることが好ましく、1kJ/cm以上であることがさらに好ましい。また、フィルムの単位体積当たりの電磁波の照射熱量は、フィルムの劣化を抑える観点から、100kJ/cm以下であることが好ましく、90kJ/cm以下であることがさらに好ましい。電磁波照射工程がフィルムの乾燥を兼ねるようにし、これとは別の乾燥工程を行わない場合(図1に示す装置においては、乾燥炉21内の熱風乾燥機等、電磁波照射器以外の乾燥手段を作動させない場合)は、電磁波照射工程での電磁波の照射熱量は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの単位体積当たり0.5kJ/cm以上100kJ/cm以下であることが好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの最終的な水分率は、0.06g/cm~0.21g/cmであることが好ましい。本発明の電磁波照射工程によりフィルムを乾燥させた場合は、他の方法、例えば熱風乾燥機によりフィルムを乾燥させた場合と比較して、フィルムの収縮力を抑制することができるので、この点からも電磁波照射工程によりフィルムを乾燥させることが好ましい。
本発明においては、架橋工程の後に電磁波照射工程を行うことにより、得られる偏光フィルムの光学特性を向上させることができる。電磁波照射工程は、少なくとも一つの架橋浴へ浸漬させた後のフィルムに対して行うものであればよく、図1に示すように、全ての架橋浴へ浸漬させた後のフィルムに対して行うことに限定されない。すなわち、図1に示す例においては、第1架橋浴に浸漬させた後であって第2架橋浴に浸漬される前のフィルムに対して電磁波照射工程を行ってもよいし、第2架橋浴に浸漬させた後のフィルムに対して電磁波照射工程を行ってもよい。ただし、電磁波照射工程により、架橋浴へ浸漬することによりフィルム内に取り込まれたホウ酸の架橋を進行させることができるので、全ての架橋浴への浸漬が完了したフィルムに対して電磁波照射工程を行うことが、ホウ酸の架橋をより効果的に進行させることができるので好ましい。
電磁波照射工程は、フィルムを乾燥させる目的を兼ねることができることから、好ましくは洗浄工程の後に実施される。電磁波照射工程において、フィルムの表面に付着している水分子は少ないことが好ましい。フィルムの表面に水分子が存在すると、フィルム表面の水分子が赤外線を吸収することにより、電磁波照射によるフィルム内の分子運動の励起効果が低下するからである。洗浄浴から引き出された直後は、フィルムの表面に洗浄液が付着しているため、電磁波照射工程前にこれを除去する除液手段が設けられていることが好ましい。図1においては、ニップロール54が、フィルムの表面に付着している洗浄液を除去する除液手段としても機能する。除液手段としては、ニップロール以外にも、フィルムにエアーを吹き付けて除液を行う手段、フィルムに接触して除液を行うスクレイパー等を用いてもよい。
経済性の観点からフィルム加工速度を高速とすると、具体的には、加工速度を10~100m/minと速い加工速度とした場合、電磁波照射時間が短時間となり、照射熱量が不足する事がある。この対応として電磁波照射器を複数台並列に設置することで、十分な照射熱量を得ることができる。
以上のようにして得られる偏光フィルム23の厚みは、例えば約5~30μm程度である。得られる偏光フィルムの視感度補正単体透過率Tyは、視感度補正偏光度Pyとのバランスを考慮して、40~47%であることが好ましく、41~45%であることがより好ましい。視感度補正偏光度Pyは、99.9%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましく、値が大きいほど好ましい。本発明によると、例えば、Tyが41%以上であってかつPyが99.996%以上であって、フィルムの収縮力が4.0N/2mmの偏光フィルムを得ることができる。Ty、Py及び収縮力は、後述する実施例の項の記載に従って測定される。
得られた偏光フィルムは、巻取ロールに順次巻き取ってロール形態としてもよいし、巻き取ることなくそのまま偏光板作製工程(偏光フィルムの片面又は両面に保護フィルム等を積層する工程)に供することもできる。
(ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対するその他の処理工程)
上記した処理以外の処理を付加することもできる。追加されうる処理の例は、架橋工程の後に行われる、ホウ酸を含まないヨウ化物水溶液への浸漬処理(補色処理)、ホウ酸を含まず塩化亜鉛等を含有する水溶液への浸漬処理(亜鉛処理)を含む。
<偏光板>
以上のようにして製造される偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して保護フィルムを貼合することにより偏光板を得ることができる。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースやジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート及びポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を向上させるために、偏光フィルム及び/又は保護フィルムの貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理を施してもよい。偏光フィルムと保護フィルムとの貼合に用いる接着剤としては、紫外線硬化性接着剤のような活性エネルギー線硬化性接着剤や、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、又はこれに架橋剤が配合された水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤のような水系接着剤を挙げることができる。紫外線硬化型接着剤は、アクリル系化合物と光ラジカル重合開始剤の混合物や、エポキシ化合物と光カチオン重合開始剤の混合物等であることができる。また、カチオン重合性のエポキシ化合物とラジカル重合性のアクリル系化合物とを併用し、開始剤として光カチオン重合開始剤と光ラジカル重合開始剤を併用することもできる。
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。
<実施例1>
図1に示す製造装置を用いて、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから実施例1の偏光フィルムを製造した。具体的には、厚み60μmの長尺のポリビニルアルコール(PVA)原反フィルム〔(株)クラレ製の商品名「クラレビニロンVF-PE#6000」、平均重合度2400、ケン化度99.9モル%以上〕をロールから巻き出しながら連続的に搬送し、30℃の純水からなる膨潤浴に滞留時間79秒で浸漬させた(膨潤工程)。その後、膨潤浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が1/0.3/100(重量比)であるヨウ素を含む30℃の染色浴に滞留時間123秒で浸漬させた(染色工程)。次いで、染色浴から引き出したフィルムを、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が11/3.8/100(重量比)である53℃の第1架橋浴に滞留時間44秒で浸漬させ、続いて、ヨウ化カリウム/ホウ酸/水が11/3.8/100(重量比)である40℃の第2架橋浴に滞留時間6秒で浸漬させた(架橋工程)。染色工程及び架橋工程において、浴中でのロール間延伸により縦一軸延伸を行った。原反フィルムを基準とする総延伸倍率は5.65倍とした。
次に、第2架橋浴17bから引き出したフィルムを5℃の純水からなる洗浄浴19に滞留時間3秒で浸漬させた(洗浄工程)。その後、乾燥炉21内で、電磁波照射器(中波長赤外線ヒーター(MWヒーター)、製品名:Golden 8 Medium-wave twin tube emitter、Heraeus社製、熱源温度900℃、最大エネルギー密度60kW/m)を用いて、フィルムの表面から5cm離れた位置に電磁波放射口を配置し、電磁波照射器の最大照射出力に対し出力80%にて電磁波を照射してフィルムを乾燥させた。フィルム単位体積当たりの電磁波の照射熱量は4.3kJ/cmであった。なお、フィルム単位体積当たりの電磁波の照射熱量は、以下の式により計算した。
(フィルム単位体積当たりの電磁波の照射熱量)={(最大エネルギー密度)×(ヒーター加熱部表面積)×出力(%)/(電磁波照射面積)}×(電磁波照射時間)÷(フィルム厚み)
出力(%)とは、電磁波照射器の最大照射出力に対し、実際に照射した出力の割合(%)を示す。
乾燥炉21内の熱風乾燥機は作動させなかった。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。
<実施例2~4、比較例1,2>
電磁波照射工程において、電磁波照射器の種類、出力(%)およびフィルム単位体積当たりの電磁波の照射熱量、乾燥炉21内で熱風乾燥機を作動させた場合は乾燥炉21内の温度を表2に示す通りとした点以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの厚みは、いずれも23μmであった。電磁波照射器としては、ハロゲンヒーター(製品名:直管形ハロゲンヒータランプQIR、ウシオライティング(株)社製、熱源温度2600℃、最大エネルギー密度300kW/m)、高速応答中波長赤外線ヒーター(FRMWヒーター)(製品名:Golden 8 Medium-wave fast response twin tubu emitter、Heraeus社製、熱源温度1600℃、最大エネルギー密度150kW/m)、中波長赤外線ヒーター(MWヒーター)(製品名:Golden 8 Medium-wave twin tube emitter、Heraeus社製、熱源温度900℃、最大エネルギー密度60kW/m)のいずれかを用いた。
<比較例3>
電磁波照射工程を行わなかった点、及び乾燥炉21内で熱風乾燥機を作動させて乾燥炉21内の温度を表2に示す通りとした点以外は、実施例1と同様にして偏光フィルムを得た。得られた偏光フィルムの厚みは23μmであった。
〔偏光フィルムの評価〕
(a)単体透過率及び偏光度の測定
各実施例及び各比較例で得られた偏光フィルムについて、積分球付き分光光度計〔日本分光(株)製の「V7100」〕を用いて波長380~780nmの範囲におけるMD透過率とTD透過率を測定し、下記式:
単体透過率(%)=(MD+TD)/2
偏光度(%)={(MD-TD)/(MD+TD)}×100
に基づいて各波長における単体透過率及び偏光度を算出した。
「MD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光フィルム試料の透過軸とを平行にしたときの透過率であり、上記式においては「MD」と表す。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光フィルム試料の透過軸とを直交にしたときの透過率であり、上記式においては「TD」と表す。得られた単体透過率及び偏光度について、JIS Z 8701:1999「色の表示方法-XYZ表色系及びX101010表色系」の2度視野(C光源)により視感度補正を行い、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)を求めた。表2に、視感度補正単体透過率(Ty)及び視感度補正偏光度(Py)と、波長480nm及び波長600nmでの偏光度の算出結果を示す。
(b)収縮力の測定
各実施例及び各比較例で得られた偏光フィルムから、吸収軸方向(MD、延伸方向)を長辺とする幅2mm、長さ10mmの測定用試料を切り出した。この試料をエスアイアイ・ナノテクノロジー(株)製の熱機械分析装置(TMA)「EXSTAR-6000」にセットし、寸法を一定に保持したまま、80℃で4時間保持したときに発生する長辺方向(吸収軸方向、MD)の収縮力(MD収縮力)を測定した。このように測定する収縮力は、小さいほど耐久性に優れるので好ましく、例えば、4.0N/2mm以下であることが好ましい。
Figure 0007030447000002
表2に示されるように、実施例1~4の偏光フィルムは、収縮力を抑制しつつ優れた偏光度を有するものであった。
10 ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム、11 原反ロール、13 膨潤浴、15 染色浴、17a 第1架橋浴、17b 第2架橋浴、19 洗浄浴、21 乾燥炉、23 偏光フィルム、30~48,60,61 ガイドロール、50~52,53a,53b,54,55 ニップロール、71 電磁波照射部。

Claims (7)

  1. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する方法であって、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色処理する染色工程と、
    前記染色工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤で架橋処理する架橋工程と、
    前記架橋工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄する洗浄工程と、
    前記洗浄工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射する電磁波照射工程と、を含み、
    前記架橋工程の後であって、かつ前記洗浄工程前に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射する工程を有さず、
    前記電磁波照射工程における、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの単位面積の電磁波の照射熱量が、0.5kJ/cm以上100kJ/cm以下である、偏光フィルムの製造方法。
  2. 前記架橋工程は、
    温度50~70℃の第1架橋浴に浸漬させる第1架橋工程と、
    前記第1架橋工程後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを温度10~45℃の第2架橋浴に浸漬させる第2架橋工程と、を含む、請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
  3. 前記架橋工程の後であって、前記電磁波照射工程の前及び後の少なくともいずれかにおいて、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに乾燥処理を行なう、乾燥工程をさらに含む、請求項1又は2に記載の偏光フィルムの製造方法。
  4. 前記架橋剤は、ホウ素化合物を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
  5. 前記架橋工程は、前記架橋剤の水溶液からなる架橋浴に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる工程である、請求項1~のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
  6. ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを製造する製造装置であって、
    前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する染色部と、
    前記染色後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを架橋剤で架橋処理する架橋部と、
    前記架橋処理後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを洗浄する洗浄部と、
    前記洗浄後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに、2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射する電磁波照射部と、を備え、
    前記架橋処理後であって、かつ前記洗浄前に、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに2μm超4μm以下の波長の赤外線の放射エネルギーの割合が全放射エネルギーの25%以上である電磁波を照射する電磁波照射部を有さず、
    前記電磁波照射部における、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムの単位面積の電磁波の照射熱量が、0.5kJ/cm以上100kJ/cm以下である、偏光フィルムの製造装置。
  7. 前記架橋部は、
    前記染色後の前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる温度50~70℃の第1架橋浴と、
    前記第1架橋浴から引き出された前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを浸漬させる温度10~45℃の第2架橋浴と、を有する、請求項6に記載の製造装置。
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