JP6254891B2 - 偏光板の製造方法 - Google Patents

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本発明は、ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一方の面に、偏光子保護フィルムとして環状ポリオレフィン系フィルムが貼合積層された偏光板の製造方法に関する。
液晶表示装置や有機EL表示装置には、偏光板が用いられている。一般に、偏光板は、偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して偏光子保護フィルムが貼り合わせられた構成を有する。偏光子としては、高透過率と高偏光度を兼ね備えていることから、ヨウ素等の二色性材料により染色処理されたポリビニルアルコール系フィルムが用いられる。偏光子保護フィルムとしては、トリアセチルセルロース等のセルロース系樹脂フィルムが用いられ、水系接着剤を介してポリビニルアルコール系偏光子に貼り合わせる構成が一般的である。セルロース系樹脂は水酸基等の親水性基を有するため、ポリビニルアルコール系偏光子との接着性に優れている。
一方、高温高湿環境における耐久性の向上や、偏光子保護フィルムに位相差フィルムの機能を兼用させる等の目的で、環状ポリオレフィン系フィルムを偏光子保護フィルムとして用いることが提案されている。しかしながら、環状ポリオレフィン樹脂は疎水性であるため、ポリビニルアルコール系偏光子との接着性が必ずしも十分ではなく、偏光板のリワークの際に、偏光子と保護フィルムとの界面剥離が生じやすい等、接着性に関わる問題がある。
そのため、偏光子と環状ポリオレフィン系フィルムとの接着性を向上させる試みがなされている。例えば、特許文献1では、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に易接着処理を施した後、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いて、偏光子と環状ポリオレフィン系フィルムとを積層貼合する方法が開示されている。また、特許文献2には、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に良溶媒(例えばシクロヘキサン等の脂環式炭化水素)と貧溶媒(例えば酢酸エチル等の有機酸のアルキルエステル)との混合溶媒を接触させて、表面処理を行う方法が開示されている。特許文献2では、当該表面処理後の環状ポリオレフィン系フィルムを、水系接着剤を介して偏光子と貼り合わせることにより、偏光板としての性能を維持したまま、偏光子と環状ポリオレフィン系フィルムとの接着性が向上した偏光板を製造できることが報告されている。
特開2013−228726号公報 特開2012−177890号公報
上記のように、環状ポリオレフィン系フィルムに表面処理を施すことにより、ポリビニルアルコール系偏光子との接着性を高めることができる。しかしながら、特許文献1や特許文献2に開示されているような表面処理では、ポリビニルアルコール系偏光子と環状ポリオレフィン系フィルムとの界面における接着性(ピール力)は十分とはいえず、さらなる接着性の向上が求められている。
上記に鑑みて、本発明者らが鋭意検討の結果、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、特定の重合性モノマーを含有する溶液を接触させて表面処理を行うことにより、ポリビニルアルコール系偏光子との接着性が向上することを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は、表面処理により接着性が改善された環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム、およびポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して当該偏光子保護フィルムが貼合された偏光板、ならびにその製造方法に関する。
本発明の偏光板の製造方法は、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に重合性モノマー含有溶液を接触させ、環状ポリオレフィン系フィルムを表面処理する工程;およびポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一方の面と、環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理が施された面とを、接着剤を介して積層する工程、を有する。環状ポリオレフィン系フィルムは、少なくとも一方向に延伸または収縮された延伸フィルム(位相差フィルム)でもよい。
上記重合性モノマー含有溶液は、環状ポリオレフィン系フィルムに対する良溶媒と貧溶媒との混合溶媒、および重合性モノマーを含有する。重合性モノマーは、一分子中に、水酸基、アミド基、および重合性官能基を有する。重合性モノマー含有溶液中の重合性モノマーの含有量は、0.02重量%以上が好ましい。
重合性モノマー含有溶液に用いられる良溶媒は、脂環式エーテルおよび脂環式アルコールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。混合溶媒は、良溶媒と貧溶媒の比が、重量比で、10:90〜60:40であることが好ましい。
上記表面処理では、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、重合性モノマーが浸透した表面改質層が形成される。表面改質層の厚みは、例えば50nm〜600nm程度である。表面処理は、環状ポリオレフィン系フィルムのヘイズが0.5%を超えないように行われることが好ましい。
本発明によれば、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、水酸基、アミド基、および重合性官能基を有する重合性モノマーを含有する溶液を接触させることにより、表面処理が行われ、偏光子保護フィルムが得られる。上記表面処理により、フィルムの表層部に重合性モノマーが浸透し、表面改質層が形成されるため、偏光子保護フィルムは、ポリビニルアルコール系偏光子との接着性に優れる。
この偏光子保護フィルムとポリビニルアルコール系偏光子とが、接着剤を介して貼り合わせられた偏光板は、偏光子と保護フィルムとの界面での接着性に優れる。そのため、本発明の偏光板は、高温高湿環境等における界面での剥がれが抑制され、耐久性に優れるとともに、リワークの際にも、偏光子と保護フィルムとの界面での剥離が生じ難い。
一実施形態に係る偏光板の模式的断面図である。 実施例および比較例の環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルムにおける、モノマー濃度の深さ方向プロファイルを表すグラフである。 実施例の環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルムにおける、モノマー濃度の深さ方向プロファイルを表すグラフである。
図1は、一実施形態にかかる偏光板50の構成を模式的に表す断面図である。図1に示す実施形態では、偏光子10の一方の面に、接着剤層31を介して、環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム21が貼合されている。偏光子10の他方の面には、接着剤層36を介して偏光子保護フィルム26が貼合されている。
[偏光子]
本発明の偏光板には、ポリビニルアルコールや、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて所定方向に配向させたポリビニルアルコール(PVA)系偏光子が用いられる。例えば、ポリビニルアルコール系フィルムに、ヨウ素染色および延伸を施すことにより、PVA系偏光子が得られる。
偏光子の製造工程においては、必要に応じて、水洗、膨潤、架橋等の処理が行われてもよい。延伸は、ヨウ素染色の前後いずれに行われてもよく、染色しながら延伸が行われてもよい。延伸は、空中での延伸(乾式延伸)、あるいは、水中や、ホウ酸、ヨウ化カリウム等を含む水溶液中での延伸(湿式延伸)のいずれでもよく、これらを併用してもよい。PVA系偏光子の膜厚は特に制限されないが、一般的に、1〜80μm程度である。
PVA系偏光子として、厚みが10μm以下の薄型の偏光子を用いることもできる。薄型の偏光子としては、例えば、特開昭51−069644号公報、特開2000−338329号公報、WO2010/100917号パンフレット、特許第4691205号明細書、特許第4751481号明細書等に記載されている薄型偏光子を挙げることができる。これらの薄型偏光子は、PVA系樹脂層と延伸用樹脂基材とを積層体の状態で延伸する工程と、ヨウ素染色する工程とを含む製法により得られる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されているため、延伸による破断等の不具合なく延伸することが可能となる。
[環状ポリオレフィン系フィルム]
偏光子上には、偏光子の傷付き防止や耐久性向上等の目的で、偏光子保護フィルムが貼り合わせられる。本発明の製造方法では、PVA系偏光子10の少なくとも一方の面に、偏光子保護フィルム21として、環状ポリオレフィン系フィルムが、接着剤層31を介して貼り合わせられる。環状ポリオレフィン系フィルムは、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、光学的な均一性(光学等方性あるいは位相差や光学軸の均一性)等に優れる。
環状ポリオレフィン系フィルムは、環状ポリオレフィン樹脂を主成分とするフィルムである。環状ポリオレフィン樹脂は、環状オレフィンを重合単位として重合される樹脂の総称である。環状オレフィンの具体例としては、ノルボルネン系モノマーが挙げられる。環状ポリオレフィン樹脂としては、例えば、特開平1−240517号公報、特開平3−14882号公報、特開平3−122137号公報等に記載されている樹脂が挙げられる。具体例としては、環状オレフィンの開環(共)重合体、環状オレフィンの付加重合体、環状オレフィンとエチレン、プロピレン等のα‐オレフィンとの共重合体(代表的にはランダム共重合体)、および、これらを不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト重合体や水素化物等が挙げられる。
環状ポリオレフィン樹脂としては、種々の製品が市販されている。具体例としては、日本ゼオン製の商品名「ゼオネックス」、「ゼオノア」、JSR製の商品名「アートン」、TICONA製の商品名「トーパス」、三井化学製の商品名「APEL」等が挙げられる。環状ポリオレフィン系フィルム中には、紫外線吸収剤、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、耐衝撃助剤、位相差低減剤、艶消し剤、抗菌剤、防カビ等が含まれていてもよい。
環状ポリオレフィン系フィルムの厚みは、特に制限されないが、強度や取扱性等の作業性の観点や、偏光子に対する保護性付与の観点から、1μm〜500μm程度が好ましく、2μm〜200μmがより好ましく、5μm〜150μmがさらに好ましい。
環状ポリオレフィン系フィルムは、反射防止のための1/4波長板としての利用や、液晶表示装置の光学補償等の目的で、位相差フィルムとしての機能を兼ね備えるものでもよい。偏光子保護フィルムとしての環状ポリオレフィン系フィルムが位相差フィルムとしての機能を兼ね備えることで、液晶表示装置等のデバイスの部材点数を削減し、薄型化およびコストダウンを図ることができる。
環状ポリオレフィン系フィルムを、少なくとも一方向に延伸または収縮させることにより、位相差フィルムを作製できる。延伸(または収縮)の温度、延伸倍率、レターデーション等の特性は、液晶セルの種類や光学補償の方式等に応じて決定される。位相差フィルムとしては、例えば、正面レターデーションが40nm〜200nm程度のものや、厚み方向レターデーションが80nm〜300nm程度のものを用いることができる。
[重合性モノマー含有溶液]
本発明の製造方法においては、偏光子との貼り合わせの前に、環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理が行われる。表面処理は、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、重合性モノマー含有溶液を接触させることにより行われる。重合性モノマー含有溶液は、環状ポリオレフィン系フィルムに対する良溶媒、および重合性モノマーを含有する。重合性モノマー含有溶液の溶媒は、環状ポリオレフィン系フィルムに対する良溶媒に加えて、環状ポリオレフィン系フィルムに対する貧溶媒を含む混合溶媒であることが好ましい。
この重合性モノマー含有溶液を、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に接触させることにより、フィルム中に重合性モノマーが浸透する。これにより、環状ポリオレフィン系フィルムの表面にモノマー浸透領域(改質層)が形成され、PVA系偏光子との接着性が高められる。
<重合性モノマー>
表面処理に用いられる重合性モノマーは、一分子中に、水酸基、アミド基、および重合性官能基を有する。重合性モノマーは、一分子中に2個以上の水酸基、アミド基、および重合性官能基を有していてもよい。重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。すなわち、重合性モノマーは、水酸基とアミド基を有する(メタ)アクリル系モノマーであることが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
水酸基とアミド基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド;セリン、トレオニン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の側鎖に水酸基を有するアミノ酸のN‐(メタ)アクリロイル;グルコサミン‐N‐(メタ)アクリロイル;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。重合性モノマーは、下記一般式(I)で表される(メタ)アクリルアミドが好ましい。
Figure 0006254891
上記一般式(I)において、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子またはアルキル基であり、Rはアルキレン基またはオキシアルキレン基である。RおよびRは、直鎖状であってもよく、分岐を有していてもよい。
上記一般式(I)で表される水酸基含有(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、3‐フェノキシ‐2‐ヒドロキシ‐2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリルアミド、N‐ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N‐1‐エチル‐2‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐ヒドロキシエトキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐メチル‐N‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N‐エチル‐N‐ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N‐ジヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、1‐(メタ)アクリロイル‐4‐ヒドロキシピペリジン等が挙げられる。
重合性モノマーは、上記一般式(I)において、Rが水素原子であり、Rが炭素数2〜4のアルキレン基である、N‐ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミドが好ましい。中でも、2‐ヒドロキシエチルメタクリルアミド、および2‐ヒドロキシエチルアクリルアミドが好ましく、2‐ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)が特に好ましい。
重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、重合性モノマー含有溶液中には、一分子中に、水酸基、アミド基、および重合性官能基を有するモノマー以外の重合性モノマーが含まれていてもよい。本発明の好ましい形態では、重合性モノマー含有溶液中に含まれる重合性モノマー全量のうち、50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90%以上がHEAAである。
<溶媒>
本発明に用いられる重合性モノマー含有溶液は、上記の重合性モノマーを、溶媒中に溶解(または分散)させたものである。環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、良溶媒ともに重合性モノマーを接触させることにより、フィルムの表層に重合性モノマーを浸透させることができる。また、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒を用いることにより、環状ポリオレフィン系フィルム表面の過度の浸食を抑制できる。そのため、ヘイズやレターデーション等の光学特性を大きく変化させることなく、重合性モノマーが浸透した表面改質層を形成し、PVA系偏光子との接着性を高めることができる。
ここで、良溶媒とは、環状ポリオレフィン系フィルムに溶解または膨潤等の影響を及ぼす溶媒である。例えば、環状ポリオレフィン系フィルムに溶媒を1滴程度滴下し、1分間常温(23℃)で放置した後、当該溶媒をふき取り後にフィルムの変形(目視確認)やヘイズを生じさせるものをいう。また、溶媒に対して約1重量%の環状ポリオレフィン系フィルムを浸漬し、常温で60分静置した後に、フィルムのヘイズを5%以上にするもの、あるいはフィルムの1重量%以上を溶解する溶媒(1%以上重量減少する場合)をいう。
また、貧溶媒とは、環状ポリオレフィン系フィルムを溶解も膨潤もさせない溶媒である。例えば、環状ポリオレフィン系フィルムに溶媒を1滴程度滴下し、1分間常温(23℃)で放置した後、当該溶媒をふき取り後にフィルムの変形(目視確認)やヘイズを生じさせないものをいう。また、溶媒に対して1重量%の環状ポリオレフィン系フィルムを浸漬し、常温で60分静置した後に、フィルムのヘイズが5%未満であり、かつフィルムの重量減少が1重量%未満である溶媒をいう。
なお、重量減少は、環状ポリオレフィン系フィルムを常温で60分浸漬後の上澄液の固形分濃度から算出できる。具体的には、浸漬前の環状ポリオレフィン系フィルムの質量A(g)、溶媒の質量B(g)、および上澄液の固形分濃度S(%)から、重量減少Lは、下記式:
L(%)=S×(A+B)/A
で求められる。なお、上澄液の固形分濃度は、秤量後の上澄液から有機溶剤を乾燥除去し、残った固形分の質量から算出できる。
(良溶媒)
良溶媒を含む重合性モノマー含有溶液を用いることにより、環状ポリオレフィン系フィルムの表面を膨潤させ、フィルムの表層に重合性モノマーを浸透させることができる。
良溶媒の種類は、環状ポリオレフィン系フィルムを構成するポリマーの構造によっても異なるが、例えば後述の実施例で用いたゼオノアフィルムのように極性基を含まない環状ポリオレフィンの良溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン等のハロゲン化炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の炭素数5以上の鎖状炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;テトラヒドロフラン、1,2‐ジオキソラン、1,3‐ジオキソラン、1,2‐ジオキサン、1,3‐ジオキサン、1,4‐ジオキサン、1,3,5‐トリオキサン等の環状エーテル;シクロペンチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、ブチルシクロヘキシルエーテル、ジシクロペンチルエーテル、ジシクロヘキシルエーテル等の脂環式エーテル(少なくとも1つの脂環式基を含むエーテル);シクロペンタノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等の脂環式アルコール(脂環式基に水酸基が結合した化合物)、等が挙げられる。なお、良溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
上記良溶媒の中でも、環状ポリオレフィンを適度に膨潤(または溶解)可能であることから、脂環式エーテルおよび脂環式アルコールが好ましい。中でも、脂環式エーテルが好ましく、シクロヘキシルメチルエーテルが特に好ましい。脂環式エーテルおよび脂環式アルコールは、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素や、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素よりも、蒸発エネルギーが小さいことから、重合性モノマー含有溶液による表面処理後の溶媒の乾燥時間を短縮することができる点においても好ましい。上記脂環式エーテルおよび脂環式アルコールの中でも、蒸発エネルギーが320kJ/kg以下であるものが好ましく用いられる。例えば、トルエンの蒸発エネルギーは363kJ/kg、キシレンの蒸発エネルギーは392kJ/kg、シクロヘキサンの蒸発エネルギーは394kJ/kgであるのに対して、シクロペンチルメチルエーテルの蒸発エネルギーは289kJ/kgである。
(貧溶媒)
混合溶媒が貧溶媒を含むことにより、良溶媒による環状ポリオレフィン系フィルムの溶解や、光学特性変化(ヘイズの上昇やレターデーションの低下)を抑制できる。また、揮発性の高い貧溶媒を用いることにより、表面処理後の溶媒の乾燥時間を短縮することもできる。
貧溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル‐n‐アミルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;水;エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等の低級アルコール類;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチルセロソルブ、メチルカルビトール等の鎖状エーテル類;酢酸、氷酢酸等の酸類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、安息香酸エチル、アセト酢酸メチル等のエステル類;メチルセロソルブアセテート、セロソルブアセテート等の多価アルコールエステル類;ニトロメタン、ニトロエタン、ピリジン、ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン等の窒素化合物、ジメチルスルホキサイド等のスルホン酸類等が挙げられる。なお、貧溶媒は1種のみを用いてもよく、2種以上を混合して用いることもできる。
(混合溶媒)
良溶媒と貧溶媒の混合溶媒が用いられる場合、貧溶媒の種類や量は、良溶媒の種類等に応じて適宜に決定される。例えば、良溶媒として脂環式エーテルや脂環式アルコールが用いられる場合、貧溶媒としてはケトン類が用いられることが好ましい。ケトン類の中でも、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンが好ましく、アセトンおよびメチルエチルケトンが特に好ましい。
良溶媒と貧溶媒の割合は、各溶媒の種類に応じて、環状ポリオレフィン系フィルムの表面を膨潤可能であり、かつヘイズの上昇やレターデーションの大幅な変化を生じさせないように決定される。一般には、良溶媒と貧溶媒は、重量比で、10:90〜60:40程度の範囲とされる。良溶媒としてシクロヘキシルメチルエーテル等の脂環式エーテルが用いられ、貧溶媒としてケトン類が用いられる場合、良溶媒と貧溶媒の比は、10:90〜60:40が好ましく、10:90〜50:50がより好ましく、15:85〜40:60がさらに好ましい。なお、良溶媒として、環状ポリオレフィン系フィルムの表面を膨潤可能であり、かつ表面を白化させないものが用いられる場合は、貧溶媒を用いずに、良溶媒のみを用いてもよい。
<組成>
重合性モノマー含有溶液中の重合性モノマーの含有量は、0.02重量%以上が好ましい。重合性モノマーの含有量が0.02重量%程度であれば、環状ポリオレフィン系フィルムの表面から50nm程度の深さまで、モノマーを浸透させることができ、偏光子との接着性を高めることができる。より短時間の処理で、環状ポリオレフィン系フィルムに重合性モノマーを浸透させるためには、重合性モノマーの含有量が0.05重量%以上であることが好ましく、0.1重量%以上であることがより好ましく、0.2重量%以上であることがさらに好ましい。
重合性モノマーの含有量の上限は特に制限されないが、重合性モノマー含有溶液中の良溶媒の含有量よりも重合性モノマーの含有量の方が小さいことが好ましい。重合性モノマーの含有量(重量)は、良質溶媒の1/2以下が好ましく、1/5以下がより好ましく、1/10以下がさらに好ましい。重合性モノマーの含有量を過度に大きくしても、接着性向上の効果は認められず、フィルム内に浸透せずに残存したモノマーが表面に析出し、工程汚染の原因となる場合がある。そのため、重合性モノマー含有溶液中の重合性モノマーの含有量は、2重量以下が好ましく、1.5重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。
重合性モノマー含有溶液中には、上記の重合性モノマー以外の溶質成分を含んでいてもよい。例えば、PVA系偏光子とのさらなる密着性向上等を目的として、プライマー成分等を添加することもできる。プライマー成分としては、例えばシランカップリング剤、チタンカップリング剤、ジルコニウムカップリング剤等のカップリング剤が挙げられる。その他、プライマー成分として、上記以外の重合性モノマーを添加してもよい。また、重合性モノマー含有溶液中には、重合性モノマーの酸化防止剤、重合禁止剤や、安定剤、滑剤、加工助剤、可塑剤、界面活性剤、レベリング剤、紫外線吸収剤等が含まれていてもよい。重合性モノマー含有溶液中の、重合性モノマー以外の溶質成分の含有量は、本発明の目的を損なわない範囲で決定できるが、1重量%以下が好ましく、0.3重量%以下がより好ましく、0.1重量%以下がさらに好ましい。
[環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理]
環状ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の面に、上記の重合性モノマー含有溶液を接触させることにより、表面処理が行われる。重合性モノマー含有溶液の濡れ性を高めるため、重合性モノマー含有溶液との接触による表面処理の前に、環状ポリオレフィン系フィルム表面に、コロナ処理やプラズマ処理等の活性化処理が行われることが好ましい。
環状ポリオレフィン系フィルムと重合性モノマー含有溶液との接触は、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコート法、ドクターブレード法、ダイコート法、スプレー法等の塗布や、ディップコート法等の浸漬により行われる。塗布による接触において、重合性モノマー含有溶液の塗布量は、モノマーの種類や濃度、溶媒の種類等に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で任意の適切な量を採用し得る。溶液の塗布量(塗布厚み)は、環状ポリオレフィン系フィルムの表面1cmに対するモノマー量が、好ましくは1×10−6g〜5×10−4g、より好ましくは:5×10−6g〜1×10−4g、さらに好ましくは、1×10−5g〜5×10−5gとなるように調整される。
重合性モノマー含有溶液の接触後、溶媒の乾燥が行われることが好ましい。乾燥は、自然乾燥でもよく、加熱乾燥でもよい。加熱乾燥が行われる場合、乾燥温度は特に限定されず、溶媒の種類等に応じて決定されるが、フィルムの変形を防ぐ観点から、フィルムのガラス転移点以下の温度で乾燥することが好ましい。
表面処理後の環状ポリオレフィン系フィルムは、ヘイズが0.5%以下であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましい。ヘイズの上昇は、フィルム表面の侵食と関連しており、ヘイズが過度に上昇すると、光散乱による視認性の低下が生じる。また、環状ポリオレフィン系フィルムが延伸フィルム(位相差フィルム)である場合、フィルムの深くまで浸食が進むと、レターデーションが低下し、光学補償特性等の設計値からのズレを生じる。
このような表面処理に伴う変化を抑制するため、本発明においては、環状ポリオレフィン系フィルムのヘイズが0.5%を超えないように表面処理が行われることが好ましい。また、環状ポリオレフィン系フィルムが位相差フィルムである場合、正面レターデーションの変化(低下)が3nmを超えないように表面処理が行われることが好ましい。このような光学特性の変化を抑制する観点から、前述のように、重合性モノマー含有溶液の溶媒として、良溶媒と貧溶媒との混合溶媒を用いることが好ましい。
環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、重合性モノマー含有溶液を接触させることにより、フィルムの表面に重合性モノマーが浸透し、表面改質層が形成される。表面改質層(重合性モノマー浸透領域)が形成されていることは、二次イオン質量分析(SIMS)により、重合性モノマー由来のフラグメントイオンの深さ方向のプロファイルを測定することにより確認できる。例えば、重合性モノマーとして、2‐ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)を用いた場合、SIMSにより、HEAAのプロトン付加体(m/z=116のC10NO イオン)、およびモノマーのアクリロイル基に由来するm/z=55のCイオンが検出される(詳細は、後の実施例参照)。
重合性モノマーが浸透した表面改質層は、厚み(表面からの深さ)が50nm以上であることが好ましく、80nm以上であることがより好ましく、100nm以上であることがさらに好ましい。改質層の厚みが50nm以上であれば、接着剤を介してPVA系偏光子を貼り合わせた際の接着性の向上が顕著となる傾向がある。改質層の厚みが大きいほど接着性が向上する傾向があるが、600nmを超えると、改質層の厚みが増大しても、接着性はほとんど向上しない。一方、改質層の厚みが大きくなると、ヘイズの上昇やレターデーションの低下等の光学特性の変化が無視できないようになる。そのため、改質層の厚みは、600nm以下が好ましく、550nm以下がより好ましく、500nm以下がさらに好ましい。
改質層の厚みは、重合性のモノマーの含有量や、溶媒の組成、溶液の塗布量等により調整できる。重合性モノマー含有溶液中の重合性モノマーの含有量や、溶液の塗布量の増加に伴って、改質層の厚みが大きくなる傾向がある。また、良溶媒の割合を増加させたり、環状ポリオレフィン系フィルムに対する溶解性の高い良溶媒を用いた場合も、改質層の厚みが大きくなる傾向がある。
環状ポリオレフィン系フィルムの少なくとも一方の面に、上記の表面処理を行うことにより、本発明の偏光子保護フィルムが得られる。なお、表面処理は、環状ポリオレフィン系フィルムの両面に行うこともできる。
上記のように、環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、水酸基、アミド基、および重合性官能基を有する重合性モノマーを含有する溶液を接触させることにより、フィルム内にモノマー成分が浸透し、偏光子との接着性に優れる環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルムが得られる。後に、実施例と比較例の対比により示されるように、良溶媒とともに重合性モノマー成分を接触させた場合にのみ、重合性モノマーが環状ポリオレフィン系フィルムの内部に浸透し、接着性が高められる。これは、良溶媒によりフィルム表面が膨潤され、ポリマー鎖が解けた状態となり、その隙間からモノマー成分がフィルムの内部に浸透して、改質層が形成されるためと推定される。
また、重合性モノマーとして、水酸基およびアミド基の両方を有する重合性モノマーを用いた場合にのみ、フィルム内部の深く(例えば、表面からの深さ100nm以上の領域)まで、モノマーが浸透し、接着性が向上する傾向が確認されている。これは、水酸基およびアミド基を有する重合性モノマーが、良溶媒の分子と水素結合を形成し易く、良溶媒のフィルム内部への到達に伴って、重合性モノマーもフィルム内部に到達し易くなること等に由来すると推定される。また、重合性モノマーが水酸基を有するため、偏光子保護フィルムの表面への接着剤の濡れ性が向上することも、接着力の向上に寄与していると推定される。さらには、フィルム内部に浸透した重合性モノマーと接着剤中のモノマーとが重合可能であるために、偏光子保護フィルムの内部にまで接着剤の重合ネットワークが形成されることも、接着力を向上させる要因であると考えられる。
[環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルムと偏光子の積層貼合]
PVA系偏光子10の少なくとも一方の面に、上記表面処理が施された環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム21が、接着剤層31を介して貼り合わせられることにより、偏光板50が得られる。偏光子保護フィルム21は、処理面(改質層24形成面)側が、偏光子10と貼り合わせられる。
偏光子の両面に偏光子保護フィルムが設けられる場合、偏光子10の他方の面の偏光子保護フィルム26は、偏光子保護フィルム21と同様に、表面処理が施された環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルムでもよく、他の偏光子保護フィルムが用いられてもよい。偏光子保護フィルム26に代えて、(メタ)アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化性樹脂または紫外線硬化型樹脂等からなる樹脂層が形成されてもよい。
<接着剤>
偏光子10と環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム21との貼り合わせに用いられる接着剤層31は、光学的に透明であれば、その材料特に制限されず、水系接着剤、溶剤系接着剤、ホットメルト接着剤系、ラジカル重合硬化型接着剤等の各種形態のものが用いられる。これらの中でも、本発明においては、水系接着剤またはラジカル重合硬化型接着剤が好ましく用いられる。特に、接着剤層31の厚みを小さくできることや、乾燥工程を必要とせず生産性を高められることから、ラジカル重合硬化型接着剤が好ましい。
(ラジカル重合硬化型接着剤)
ラジカル重合硬化型接着剤は、加熱により硬化を開始させる熱硬化型のものと、電子線や紫外線等の活性エネルギー線の照射により硬化を開始させる活性エネルギー線硬化型のものがある。短時間で硬化可能であることから、活性エネルギー線硬化型が好ましく、中でも、低エネルギーで硬化可能な紫外線硬化型接着剤が好ましい。
紫外線硬化型接着剤の硬化性成分(ラジカル重合性モノマー)としては、(メタ)アクリロイル基を有する化合物や、ビニル基を有する化合物が挙げられる。中でも、(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。これらの硬化性成分は、単官能または二官能以上のいずれも用いることができる。またこれら硬化性成分は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n‐プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2‐メチル‐2‐ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s‐ブチル(メタ)アクリレート、t‐ブチル(メタ)アクリレート、n‐ペンチル(メタ)アクリレート、t‐ペンチル(メタ)アクリレート、3‐ペンチル(メタ)アクリレート、2,2‐ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n‐ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n‐オクチル(メタ)アクリレート、2‐エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4‐メチル‐2‐プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n‐オクタデシル(メタ)アクリレート等、(メタ)アクリル酸のC1−20アルキルエステルが挙げられる。
また、上記以外の(メタ)アクリロイル基を有する化合物として、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート等のアラルキル(メタ)アクリレート;2‐イソボルニル(メタ)アクリレート、2‐ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5‐ノルボルネン‐2‐イル‐メチル(メタ)アクリレート、3‐メチル‐2‐ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート等の多環式(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2‐ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3‐ジヒドロキシプロピルメチル‐ブチル(メタ)メタクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;2‐メトキシエチル(メタ)アクリレート、2‐エトキシエチル(メタ)アクリレート、2‐メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3‐メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル;2,2,2‐トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2‐トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、等を用いることもできる。
さらには、紫外線硬化型接着剤のラジカル重合性モノマーとして、ヒドロキシエチルアクリルアミド、N‐メチロールアクリルアミド、N‐メトキシメチルアクリルアミド、N‐エトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等の窒素含有モノマーを用いることもできる。
また、複数の重合性官能基を有するモノマー成分を、架橋成分として接着剤成分に混合することもできる。このような多官能モノマーとしては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート、1,9‐ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート、ジオキサングリコールジアクリレート、EO変性ジグリセリンテトラアクリレート、アロニックスM−220(東亞合成製)、ライトアクリレート1,9ND−A(共栄社化学製)、ライトアクリレートDGE−4A(共栄社化学製)、ライトアクリレートDCP−A(共栄社化学製)、SR−531(Sartomer製)、CD−536(Sartomer製)等が挙げられる。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーを添加してもよい。
特に、本発明においては、環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理に用いた重合性モノマーと同一または類似の構造を有するモノマー成分を含有する接着剤を用いることにより、PVA系偏光子10と環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム21との接着性が高められる傾向がある。そのため、接着剤層31を構成する接着剤は、一分子中に、水酸基およびアミド基を有する(メタ)アクリル系モノマーを含有することが好ましい。水酸基およびアミド基を有する、(メタ)アクリル系モノマーの含有量は、接着剤組成物中モノマー成分全量に対して、10重量%以上が好ましく、15重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。
ラジカル重合硬化型接着剤を電子線硬化型として用いる場合には、重合開始剤は特に必要ないが、紫外線硬化型、熱硬化型として用いる場合には、接着剤組成物中にラジカル重合開始剤が含まれることが好ましい。ラジカル重合開始剤の含有量は、モノマー成分100重量部に対して、通常0.1〜10重量部程度、好ましくは、0.5〜3重量部である。また、ラジカル重合硬化型接着剤には、必要に応じて、カルボニル化合物等で代表される光増感剤を添加することもできる。光増感剤は、電子線による硬化速度や感度を上昇させるために用いられる。光増感剤の使用量はモノマー成分100重量部に対して、通常0.001〜10重量部程度、好ましくは、0.01〜3重量部である。
(水系接着剤)
水系接着剤としては、例えば、ビニルポリマー系、ゼラチン系、ビニル系ラテックス系、ポリウレタン系、イソシアネート系、ポリエステル系、エポキシ系等を例示できる。このような水系接着剤からなる接着剤層は、フィルム上に水溶液を塗布し、乾燥させることにより形成される。水溶液の調製に際しては、必要に応じて、架橋剤や他の添加剤、酸等の触媒を配合することもできる。
水系接着剤としては、ビニルポリマーを含有する接着剤等を用いることが好ましい。ビニルポリマーとしては、ポリビニルアルコール系樹脂が好ましく、耐久性を向上させる点から、アセトアセチル基を有するポリビニルアルコール系樹脂を含む接着剤が特に好ましい。
水系接着剤には、ポリビニルアルコール系樹脂と反応性を有する官能基を少なくとも2つ有する化合物を、架橋剤として配合することもできる。このような架橋剤としては、ホウ酸やホウ砂;カルボン酸化合物;アルキルジアミン類;イソシアネート類;エポキシ類;モノアルデヒド類;ジアルデヒド類;アミノ−ホルムアルデヒド樹脂;二価金属または三価金属の塩およびその酸化物等が挙げられる。
(添加剤)
接着剤組成物は、必要に応じて適宜の添加剤を含むものであってもよい。添加剤の例としては、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤、エチレンオキシド等の接着促進剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、染料、加工助剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、粘着付与剤、充填剤、可塑剤、レベリング剤、発泡抑制剤、帯電防止剤、耐熱安定剤、耐加水分解安定剤等が挙げられる。
<貼り合わせ>
環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム21の処理面(改質層24側の面)に、上記接着剤を用いてPVA系偏光子10を貼り合わせることにより、偏光板が得られる。接着剤組成物は、偏光子および保護フィルムの少なくとも一方に塗布される。接着剤組成物を塗布する前に、偏光子および保護フィルムの表面に、コロナ処理、プラズマ処理、ケン化処理等の表面改質処理が行われてもよい。特に、環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム上に接着剤組成物が塗布される場合、事前にコロナ処理やプラズマ処理を行うことにより、改質層24中の重合性モノマーの水酸基等の極性基が活性化され、接着剤組成物に対する濡れ性や密着性が高められる傾向がある。
接着剤組成物の塗布は、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜に選択される。例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーター等を用いたコーティング法により、接着剤組成物の塗布が行われる。また、デイッピング法等により、接着剤組成物の塗布を行うこともできる。
接着剤層の厚みは、特に制限されないが、硬化後の厚みが10〜3000nm程度であることが好ましい。面内厚みの均一性と十分な接着性とを両立するとの観点から、接着剤層の厚みは、10〜2000nmがより好ましく、20〜1500nmがさらに好ましい。このようにして形成された接着剤組成物の塗布層を介して、偏光子と保護フィルムとが貼り合わせられる。貼り合わせは、ロールラミネーター等を用いて行うことができる。
偏光子と保護フィルムとを貼り合わせた後に、接着剤の種類に応じて、接着剤の硬化が行われ、接着剤層31が形成される。例えば、活性エネルギー線硬化型接着剤を用いた場合には、偏光子と保護フィルムとの積層物に、紫外線や電子線等活性エネルギー線の照射が行われる。水系接着剤を用いた場合には乾燥が行われる。
[偏光板の用途]
上記各工程により得られる本発明の偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置、有機EL照明等の各種光学デバイスの形成等に好ましく用いることができる。本発明の偏光板は、実用に際して、反射板や半透過板、位相差板、視角補償フィルム等の他の光学層と積層した積層光学フィルムとして用いることができる。偏光板とこれらの光学層の積層には、粘着層等の適宜の接着手段が用いられる。
上記の偏光板や、偏光板を備える積層光学フィルムには、液晶セル等の他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系等のポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性、凝集性、接着性を有し、耐候性や耐熱性等に優れるものが好ましく用いられる。
偏光板や積層光学フィルムの片面または両面への粘着層の付設は、適宜な方式で行いうる。その例としては、例えばトルエンや酢酸エチル等の適宜な溶剤の単独物または混合物からなる溶媒にベースポリマーまたはその組成物を溶解または分散させた10〜40重量%程度の粘着剤溶液を調製し、それを流延方式や塗工方式等の適宜な展開方式で偏光板上または光学フィルム上に直接付設する方式、あるいは上記に準じセパレータ上に粘着層を形成して、それを偏光板上または光学フィルム上に移着する方式等が挙げられる。粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止等を目的にセパレータが仮着されることが好ましい。これにより、通例の取扱状態での粘着層への接触を防止できる。セパレータとしては、例えば、プラスチックフィルムの表面(粘着剤との接触面)に、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等からなる離型処理層が付設されたもの等が用いられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
[測定方法]
<ヘイズ>
表面処理後の環状ポリオレフィン系フィルムのヘイズは、JIS K 7136に従い、ヘイズメーター(スガ試験機製,型番:HGM-20P)により測定した。
<重合性モノマーの浸透深さ>
二次イオン質量分析(SIMS)のダイナミックモードにより、表面処理後の環状ポリオレフィン系フィルムの表面からの深さ方向のプロファイルを測定し、各深さにおける、環状ポリオレフィン由来のC フラグメントイオン(m/z=67)の量に対する重合性モノマー由来のフラグメントイオンの量の相対値求めた。この相対値を、深さに対してプロットし、傾きが略0となった深さを浸透深さ(表面改質層の厚み)とした。
<ピール力>
偏光板を、偏光子の延伸方向(吸収軸方向)に対して45°の角度で、幅15mm、長さ200mmの大きさに、レーザーカッティングにより切り出した。偏光子と環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルムとの界面にカッターナイフで切り込みを入れた後、偏光板の保護フィルム側の面をガラス板に貼り合わせた。テンシロンを用いて、剥離速度:300mm/分、試験距離100mmの条件で、偏光子の90°ピール試験を行った。ピール試験は、N=3で行い、その平均値をピール強度(N/15mm)とした。
[実施例1]
<偏光子の作製>
重合度2400、ケン化度99.9%、厚み30μmのポリビニルアルコールフィルムを、30℃の温水中に浸漬し、膨潤させながら、ポリビニルアルコールフィルムの長さが元長の2.0倍となるように一軸延伸を行った。ついで、ヨウ素とヨウ化カリウムの混合物(重量比0.5:8)の濃度が0.3重量%の水溶液(染色浴)に浸漬し、ポリビニルアルコールフィルム長さがの元長の3.0倍となるように一軸延伸しながらフィルムを染色した。その後、ホウ酸5重量%、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(架橋浴1)中に浸漬しながら、ポリビニルアルコールフィルムの長さが元長の3.7倍となるように延伸した後、60℃のホウ酸4重量%、ヨウ化カリウム5重量%の水溶液(架橋浴2)中で、ポリビニルアルコールフィルムの長さが元長の6倍となるように延伸した。その後、ヨウ化カリウム3重量%の水溶液(ヨウ素含浸浴)でヨウ素イオン含浸処理を行った後、60℃のオーブンで4分間乾燥し、偏光子を得た。得られた偏光子の厚みは12μmであった。
<環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理>
(重合性モノマー含有溶液の調製)
良溶媒としてのシクロペンチルメチルエーテル(CPME)と、貧溶媒としてのメチルエチルケトン(MEK)を、30:70の重量比で混合した溶媒中に、2‐ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA;興人製)を、濃度が0.1重量%となるように添加して、重合性モノマー含有溶液を調製した。
(表面処理)
日本ゼオン製の製品名「ゼオノアフィルム」(厚み17μm、波長550nmにおける正面レターデーション116nm、厚み方向レターデーション137nm)の表面をコロナ処理した後、ワイヤーバー(#10、塗布厚み約25μm)を用いて上記の重合性モノマー含有溶液を塗布し、30℃で2分間乾燥させた。表面処理後のヘイズは、0.3%以下であった。後述する実施例2〜9および比較例1〜9においても、表面処理後のヘイズは0.3%以下であった。なお、実施例8,9では、処理後のフィルム表面にモノマーの析出がみられたため、表面を不織布で払拭後にヘイズを測定した。
<偏光板の作製>
(紫外線硬化型接着剤組成物の調製)
ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA;興人製):35重量部、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA;東亞合成製、製品名「アロニックス M−220」):25重量部、およびアクリロイルモルホリン(ACMO;興人製):40重量部を、常温で1時間撹拌した。その後、光重合開始剤として、2‐メチル‐1‐[4‐(メチルチオ)フェニル]‐2‐モルホリノプロパン‐1‐オン(BASF製、製品名「イルガキュア907」):3重量部、および2,4‐ジエチルチオキサントン(日本化薬製、製品名「DETX−S」):1.5重量部を添加して、紫外線硬化型接着剤組成物を調製した。
(偏光子と保護フィルムの貼合)
環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理実施面にコロナ処理を施した後、ワイヤーバー(#0)を用いて、上記の紫外線硬化型接着剤組成物を塗布し、ロール貼合機を用いて、23℃の温度条件下で、偏光子の延伸方向と環状ポリオレフィン系フィルムの延伸方向とが平行となるように貼り合わせた。その後、コンベア式UV照射装置を用いて紫外線を照射して、接着剤組成物を硬化させ、偏光子の片面に環状ポリオレフィン系フィルムが貼合積層された偏光板を得た。
[実施例2〜9]
重合性モノマー含有溶液の調製において、良溶媒として、MEKに代えてアセトンを用い、HEAAの含有量を、表1に示すように変更した。それ以外は、上記実施例1と同様にして偏光板を作製した。
[比較例1,2]
重合性モノマー含有溶液に代えて、表1に示すように溶質を含まない混合溶媒を用いて、環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理を行った。それ以外は、上記実施例1と同様にして偏光板を作製した。
[比較例3]
重合性モノマー含有溶液の調製において、CPMEを用いずに、貧溶媒であるMEKを単独で用い、0.5重量%のHEAA溶液を調製した。それ以外は、上記実施例1と同様にして偏光板を作製した。
[比較例4]
重合性モノマー含有溶液の調製において、HEAAに代えて、アクリロイルモルホリン(ACMO;興人製)を用い、0.5重量%の溶液を調製した。それ以外は、上記実施例1と同様にして偏光板を作製した。
[比較例5]
重合性モノマー含有溶液の調製において、CPMEを用いずに、貧溶媒であるMEKを単独で用い、0.5重量%のACMO溶液を調製した。それ以外は、上記比較例4と同様にして偏光板を作製した。
[比較例6]
重合性モノマー含有溶液の調製において、HEAAに代えて、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA;東亞合成製、製品名「アロニックス M220」)を用い、0.5重量%の溶液を調製した。それ以外は、上記実施例1と同様にして偏光板を作製した。
[比較例7]
重合性モノマー含有溶液の調製において、CPMEを用いずに、貧溶媒であるMEKを単独で用い、0.5重量%のTPGDA溶液を調製した。それ以外は、上記比較例6と同様にして偏光板を作製した。
[比較例8]
重合性モノマー含有溶液に代えて、MEK単独で、環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理を行った。それ以外は、上記実施例1と同様にして偏光板を作製した。
[比較例9]
表面処理を行わずに、環状ポリオレフィン系フィルムにコロナ処理を施した後、紫外線硬化型接着剤組成物を塗布し、偏光子と貼り合わせ、接着剤組成物を硬化させて偏光板を作製した。
[評価結果]
上記各実施例および比較例の表面処理溶液の組成、SIMSにより求めた保護フィルム表面のモノマー浸透深さ、および偏光板のピール力を、表1に示す。
(A)実施例1,(B)比較例3,(C)比較例4,(D)比較例5,(E)比較例6,および(F)比較例7の環状ポリオレフィン系フィルムのSIMSによる分析結果(m/z=67のイオン検出量に対する重合性モノマー由来のフラグメントイオン検出量の相対値の深さプロファイル)を、図2に示す。なお、図2(A)〜(F)において、m/z=55のイオンは、重合性モノマーのアクリロイル基に由来するCイオンであり、m/z=219のイオンは、モノマーに酸化防止剤として添加されているジブチルヒドロキシトルエン(BHT)に由来するC1523イオンである。
モノマーとしてHEAAを用いた(A)実施例1および(B)比較例3では、重合性モノマー由来のイオンとして、Cイオン以外に、m/z=116のC10NO イオン(HEAAのプロトン付加体)が検出された。ACMOを用いた(C)比較例4および(D)比較例5では、重合性モノマー由来のイオンとして、m/z=142のC12NO イオンが検出された。TPGDAを用いた(E)比較例6および(F)比較例7では、重合性モノマー由来のイオンとして、m/z=113のC イオンが検出された。なお、m/z=142のフラグメントには、環状ポリオレフィン由来のイオン(x)も含まれるため、図2(C)および図2(D)では、深さ250nm以上の領域までm/z=142のイオンが検出されている。図2(C)では、m/z=142のイオン検出量の深さプロファイルの傾き、およびm/z=55のCイオンの深さプロファイルから、モノマー浸透深さは70nmと判断できる。
Figure 0006254891
比較例1および比較例2と比較例8および比較例9との対比から、良溶媒を含む混合溶媒により、シクロオレフィン系保護フィルムを表面処理することにより、偏光子との接着性が高められていることが分かる。一方、実施例1と比較例1の対比、および実施例2〜9と比較例2との対比によれば、混合溶媒中に重合性モノマーとしてHEAAを含有する溶液で表面処理することにより、接着力がさらに高められることが分かる。また、実施例1(図2(A))と比較例3(図2(B))との対比から、良溶媒を含む溶媒と重合性モノマーを含有する溶液とを接触させることにより、フィルム表面から数百nmの深さまでモノマーを浸透させることができ、これにより接着力が高められていることが分かる。
重合性モノマーとしてアミド基を有するが水酸基を有さないACMOを用い、良溶媒と貧溶媒の混合溶媒の溶液で表面処理を行った比較例4では、良溶媒を含まず貧溶媒とACMOを含有する溶液を用いた比較例5に比べると、モノマーの浸透深さが大きく、接着性の向上がみられた。しかしながら、比較例4は、溶質を含まない比較例1,2よりもピール力が小さいことから、モノマーの浸透による接着力向上効果が発揮されていないと考えられる。また、重合性モノマーとして、アミド基および水酸基のいずれも有さないTPGDAを用いた比較例6,7でも、同様の傾向がみられた。
これらの結果から、重合性モノマー含有溶液による表面処理では、アミド基および水酸基を有する重合性モノマーと環状ポリオレフィン系フィルムの良溶媒とを含む溶液を用いた場合に特有の効果として、接着力が向上することが分かる。
図3は、実施例3(HEAA含有量:0.1重量%)、実施例4(HEAA含有量:0.3重量%)、および実施例7(HEAA含有量:1重量%)の表面処理後の環状ポリオレフィン系フィルムのSIMSによる分析結果(m/z=67のイオン検出量に対するHEAA由来のm/z=116のC10NO イオン検出量の相対値の深さプロファイル)である。図3によれば、重合性モノマー含有溶液中の重合性モノマーの含有量を増加させることにより、モノマーの浸透深さが大きくなることが分かる。一方、実施例2〜9の結果の対比から、重合性モノマーの含有量が0.3重量%を超えると、接着力の向上効果が飽和することが分かる。また、実施例8,9では、フィルム表面へのモノマーの析出がみられたことから、工程汚染防止等の観点からは、モノマーの含有量は1重量%あるいはそれ以下が好ましいといえる。
50 偏光板
10 偏光子
21 環状ポリオレフィン系偏光子保護フィルム
24 表面改質層(モノマー浸透領域)
26 偏光子保護フィルム
31,36 接着剤層

Claims (7)

  1. ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一方の面に、接着剤を介して環状ポリオレフィン系フィルムが貼合された偏光板の製造方法であって、
    環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、重合性モノマー含有溶液を接触させ、前記環状ポリオレフィン系フィルムを表面処理する工程;および
    ポリビニルアルコール系偏光子の少なくとも一方の面と、前記環状ポリオレフィン系フィルムの前記表面処理が施された面とを、接着剤を介して積層する工程、を有し、
    前記重合性モノマー含有溶液は、前記環状ポリオレフィン系フィルムに対する良溶媒と貧溶媒との混合溶媒、および重合性モノマーを含有し、
    前記重合性モノマーは、一分子中に、水酸基、アミド基、および重合性官能基を有し、
    前記重合性モノマー含有溶液中の前記重合性モノマーの含有量が、0.02重量%以上である、偏光板の製造方法。
  2. 前記良溶媒が、脂環式エーテルおよび脂環式アルコールから選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の偏光板の製造方法。
  3. 前記混合溶媒は、前記良溶媒と前記貧溶媒の比が、重量比で、10:90〜60:40である、請求項1または2に記載の偏光板の製造方法。
  4. 前記表面処理において、前記環状ポリオレフィン系フィルムの表面に、前記重合性モノマーが浸透した表面改質層が50nm〜600nmの厚みで形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
  5. 前記表面処理において、前記環状ポリオレフィン系フィルムのヘイズが0.5%を超えないように処理が行われる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
  6. 前記環状ポリオレフィン系フィルムが、少なくとも一方向に延伸または収縮された位相差フィルムである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
  7. 前記接着剤が、ラジカル重合性モノマーおよびラジカル重合開始剤を含有するラジカル重合硬化型接着剤である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の偏光板の製造方法。
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