JP6254397B2 - 産業機械及びシフト量算出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ワークを測定又は加工するための産業機械及びシフト量算出方法に関する。
従来、ベース面に対して直交する方向に保持されたラムをZ軸方向に移動させる産業機械が知られている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に記載の産業機械は、三次元測定機である。この三次元測定機は、ベース面に対して直交し、Y軸方向に移動可能なコラムおよびサポータと、これらのコラムおよびサポータの端部間に設けられるビームと、ビーム上でX軸方向に移動可能なスライダと、スライダにZ軸方向に移動可能に設けられ、先端にプローブが設けられるラムとを備えている。
この三次元測定機は、XYZ軸の各軸に沿ってスケールが配置され、このスケールの読み取り値を基準とした測定座標系を設定している。そして、この三次元測定機では、温度環境を監視し、温度変化が観測されたときに、測定座標系を再構築する。
上記特許文献1では、スケールが熱膨張のために寸法変化した場合でも、精度の高い測定を実施することができる。しかしながら、構造部材であるコラムやサポータやラムが熱膨張した場合には対応しておらず、この場合、特に、Z軸方向での測定精度が低下するという問題があり、測定環境を正確に制御する必要があるという問題がある。例えば、三次元測定機の電源をON状態にした後、測定座標系の原点位置を示すマスタボールを、プローブを用いて連続測定した場合、プローブを駆動させるための駆動モータの温度上昇により、コラムやサポータ、ラムでの熱膨張による寸法変化量がそれぞれ異なるため、電源ON直後のスタート時に対して、主にZ軸の値がシフトし、Z軸測定精度が低下してしまう。
そこで、特許文献2は、構造部材の熱膨張によるラムのZ軸シフト量を高精度に算出可能な産業機械を開示している。特許文献2に開示された産業機械は、Z軸に沿うコラムおよびサポータと、これらの間に設けられたビーム上で移動可能なスライダと、スライダにZ軸方向に移動可能に保持されたラムと、コラム、サポータ、及びラムのそれぞれの温度を検出する温度センサおよび温度検出部と、これらのコラム、サポータ、及びラムの各温度、基準温度におけるこれらの位置関係を示す基準位置データ、及びこれらの線膨張係数に基づいて、Z軸シフト量を算出するシフト量算出部と、を備える。
特開2001−21303号公報 特開2012−53033号公報
特許文献2に開示された産業機械によれば構造部材の熱膨脹によるラムのZ軸シフト量をある程度高精度に算出できるが、更に高精度に算出できる余地がある。また、特許文献2には、門型の三次元測定機において構造部材の熱膨張によるシフト量を算出することが開示されているが、横型の三次元測定機において構造部材の熱膨張によるシフト量を算出することは開示されていない。
本発明は、上記問題の少なくとも一つを解決するため、構造部材の熱膨張によるシフト量を算出可能な産業機械及びシフト量算出方法を提供することを目的とする。
本発明の第1の観点による産業機械は、ベース面に対して直交するZ軸に沿って立設されたコラムおよびサポータと、前記コラムおよび前記サポータの間に設けられたビーム上を移動可能なスライダと、前記スライダに、Z軸方向に移動可能に保持されたラムと、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、および前記ラムのそれぞれの熱膨張対応物理量を検出する物理量検出手段と、前記熱膨張対応物理量に基づいて、前記ラムのZ軸方向に沿ったZ軸シフト量を算出するシフト量算出手段とを具備する。
上記産業機械は、前記ラムに設けられ、前記ラムのZ軸方向への移動量を測定するための目盛が設けられたZ軸スケールと、前記スライダに設けられ、前記Z軸スケールの目盛を検出するZ検出部とを更に具備することが好ましい。前記ビームは、前記スライダを支持する支持面を備えることが好ましい。前記物理量検出手段は、前記スライダの温度TSLを検出することが好ましい。前記シフト量算出手段は、前記温度TSL、所定の基準温度における前記支持面から前記Z検出部までの距離SL、及び前記スライダの線膨張係数αSLに基づいて、前記Z軸シフト量を算出することが好ましい。
前記ビームは、前記スライダを支持する支持面を備えることが好ましい。前記物理量検出手段は、前記コラムの下部の温度TC1、前記コラムの中間部の温度TC2、及び前記コラムの上部の温度TC3をそれぞれ検出することが好ましい。前記シフト量算出手段は、前記温度TC1、前記温度TC2、前記温度TC3、所定の基準温度における前記ベース面から前記下部と前記中間部の境界までの距離C1、前記基準温度における前記下部と前記中間部の境界から前記中間部と前記上部の境界までの距離C2、前記基準温度における前記中間部と前記上部の境界から前記支持面までの距離C3、及び前記コラムの線膨張係数αに基づいて、前記Z軸シフト量を算出することが好ましい。
前記物理量検出手段は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度を検出することが好ましい。前記シフト量算出手段は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度、および前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの線膨張係数に基づいて、前記Z軸シフト量を算出することが好ましい。前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの線膨張係数は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの材質に対応した値が設定されることが好ましい。
上記産業機械は、前記ラムに設けられ、前記ラムのZ軸方向への移動量を測定するための目盛が設けられたZ軸スケールと、前記スライダに設けられ、前記Z軸スケールの目盛を検出するZ検出部とを更に具備することが好ましい。前記ビームは、前記スライダを支持する支持面を備えることが好ましい。前記物理量検出手段は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度を検出することが好ましい。前記シフト量算出手段は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度と、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムの位置関係を示す基準位置データと、温度変化による前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのZ軸方向への寸法変動量を算出するための補正係数と、前記スライダの位置座標xと、に基づいて、前記Z軸シフト量を算出することが好ましい。前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度は、前記コラムの下部の温度TC1、前記コラムの中間部の温度TC2、前記コラムの上部の温度TC3、前記サポータの温度T、前記ラムの温度T、及び前記スライダの温度TSLを含む。
前記基準位置データは、所定の基準温度T0における前記ベース面から前記下部と前記中間部の境界までの距離C1、前記基準温度T0における前記下部と前記中間部の境界から前記中間部と前記上部の境界までの距離C2、前記基準温度T0における前記中間部と前記上部の境界から前記支持面までの距離C3、前記基準温度T0における前記ベース面から前記支持面までの距離S2、前記基準温度T0における前記支持面から前記Z検出部までの距離SL、前記基準温度T0における前記ラムの前記ベース面に対向する先端部から前記ラムの前記Z軸スケールの固定位置までの距離R、前記スライダを前記コラムに最も近接させた際の前記コラムの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離X0、前記スライダを前記サポータに最も近接させた際の前記サポータの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離X1、及び前記スライダが前記ビームに沿って移動可能な距離Xsを含む。
前記位置座標xは、前記スライダの中心軸の前記ビームに沿う位置を表す。前記コラムの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離がX0のときに前記位置座標xの値は0である。前記サポータの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離がX1のときに前記位置座標xの値はXsである。前記補正係数は、前記コラムの線膨張係数α、前記サポータの線膨張係数α、前記スライダの線膨張係数αSL、及び前記ラムの線膨張係数αを含む。前記シフト量算出手段は、下記式により前記Z軸シフト量を算出することが好ましい。
(Z軸シフト量)=(ΔS−ΔC)×((X0+x)/(X0+Xs+X1))+ΔC+ΔSL−ΔR
ここで、
ΔC=ΔC1+ΔC2+ΔC3
ΔC1=C1×α×(TC1−T0)
ΔC2=C2×α×(TC2−T0)
ΔC3=C3×α×(TC3−T0)
ΔS=S2×α×(T−T0)
ΔR=R×α×(T−T0)
ΔSL=SL×αSL×(TSL−T0)
である。
上記産業機械は、前記ラムの先端に設けられたプローブを用いて、前記ベース面に載置された被測定物を測定する測定機であることが好ましい。上記産業機械は、前記シフト量算出手段により算出された前記Z軸シフト量に基づいて、前記プローブで測定された前記被測定物のZ軸測定値を補正する補正手段を更に具備することが好ましい。
本発明の第2の観点によるシフト量算出方法は、ベース面に対して直交するZ軸に沿って立設されたコラム、Z軸に沿って立設されたサポータ、前記コラムおよび前記サポータの間に設けられたビーム上を移動可能なスライダ、前記スライダにZ軸方向に移動可能に保持されたラムのそれぞれの熱膨張対応物理量を検出し、前記熱膨張対応物理量に基づいて、前記ラムのZ軸方向に沿ったZ軸シフト量を算出する。
本発明によれば、構造部材の熱膨張によるシフト量を算出可能な産業機械が提供される。
実施の形態1に係る三次元測定機(産業機械)の概略構成を示す図である。 実施の形態1に係る三次元測定機における各部の寸法及び温度センサの位置を示す図である。 実施の形態1に係るZ軸シフト量の算出方法を説明する概念図である。 実施の形態1に係るZ測定値の補正方法を示すフローチャートである。 比較例に係る三次元測定機における各部の寸法及び温度センサの位置を示す図である。 比較例に係るZ軸シフト量の算出方法を説明する概念図である。 三次元測定機が配置された測定室の室温を変化させた場合におけるマスタボールの温度及びZ軸方向の原点ズレ量の変化を示すグラフである。 実施の形態2に係る三次元測定機(産業機械)の概略構成を示す側面図である。 実施の形態2に係る三次元測定機の概略構成を示す正面図である。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。各図面においては、同一要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略される。
(実施の形態1)
〔三次元測定機の構成〕
図1は、実施の形態1に係る産業機械である三次元測定機の概略構成を示す図である。
図1において、三次元測定機1(産業機械)は、本体2と、本体2の駆動制御を実行する制御部3とを備えている。三次元測定機1は、門型の三次元測定機である。
本体2は、ベース21と、ベース21に設けられるスライド機構22とを備える。
ベース21は、被測定物(図示略)を載置させるベース面211を有する矩形板状に形成されている。また、ベース21の−X軸方向側には、+Z軸方向側に向かって突出するとともに、Y軸方向に沿って直線状に形成され、スライド機構22をY軸方向に沿ってガイドするガイド部212が設けられている。さらに、ベース面211には、半径既知の真球に加工されたマスタボール213が固定されている。
なお、以下の説明においては、「Z軸方向」を「Z方向」、「Z軸」(例えば、「Z軸側」)、または「Z」(例えば、「Z側」)等と略して記載することがある。同様に「X軸方向」および「Y軸方向」をそれぞれ「X」、「Y」(例えば、「X側」、「Y側」)等と略して記載することがある。
スライド機構22は、ガイド部212に取り付けられ、ガイド部212上をY軸方向に沿って移動可能に設けられるコラム221と、コラム221にて支持され、X軸方向に沿って延出するビーム222と、ビーム222上をX軸方向に沿って移動可能に設けられるスライダ223と、スライダ223に支持され、スライダ223に対してZ軸方向に沿って移動可能に設けられるラム224とを備える。ラム224は、スピンドルと称される場合がある。また、ビーム222における+X軸方向側の端部には、Z軸方向に沿って延出するサポータ225が形成されている。つまり、ベース21の−Y軸方向側の端部に設けられたコラム221と、ベース21の+Y軸方向側の端部に設けられたサポータ225と、コラム221とサポータ225に支持されたビーム222が、一体となってY軸方向に沿って移動可能とされている。
さらに、ラム224における−Z軸方向側の端部には、被測定物を測定するためのプローブ227が取り付けられている。プローブ227は接触式及び非接触式のどちらでもよい。
そして、スライド機構22は、コラム221、スライダ223、及びラム224を駆動する駆動モータ228を備え、制御部3による制御の下でプローブ227をX,Y,Z軸方向に沿って移動させる。なお、図1において、コラム221をY軸方向に沿って移動させる駆動モータ228のみを図示する。また、コラム221、ビーム222、スライダ223、及びサポータ225はカバーで覆われるが、カバーは図示省略されている。
また、本体2は、コラム221、スライダ223、及びラム224の各軸方向の位置を検出するための測定手段が設けられている。具体的には、ガイド部212には、Y軸方向に沿ったY軸スケール212Aが設けられており、コラム221には、このY軸スケール212Aの値を読み取るY軸スケールセンサ(図示略)が設けられている。また、ビーム222には、X軸方向に沿ったX軸スケール222Aが設けられており、スライダ223には、このX軸スケール222Aの値を読み取るX軸スケールセンサ(図示略)が設けられている。さらに、ラム224には、Z軸方向に沿ったZ軸スケール224Aが固定されており、ラム224をZ軸方向に移動可能に保持するスライダ223に、Z軸スケール224Aの値を読み取るZ軸スケールセンサ223Aが設けられている。
さらに、コラム221、スライダ223、ラム224、およびサポータ225には、それぞれ温度を検知する温度センサ226(226A〜226G)が設けられている。これらの温度センサ226は、温度検出手段を構成する。
温度センサ226Aは、コラム221の下部(ベース21側の部分)に設けられ、温度センサ226Bは、コラム221の中間部に設けられ、温度センサ226Cは、コラム221の上部(ビーム222側の部分)に設けられる。中間部は、上部及び下部の間に配置される。温度センサ226A〜226Cは、それぞれZ方向に沿って互いに離間している。
また、温度センサ226Dは、サポータ225のZ方向における中心点に設けられている。
さらに、温度センサ226Eは、ラム224の−Z側端部に設けられ、温度センサ226Fは、ラム224のZ軸スケールセンサ223Aに設けられ、温度センサ226E及び226FはZ軸方向に沿って互いに離間している。尚、Z軸スケールセンサ223Aの温度補正用の温度センサを温度センサ226Fとして用いてもよい。
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリなどを備えて構成され、記憶部31と、各温度センサ226で検出された温度を取得する温度検出部32と、各スケールセンサで検出されたプローブ227の座標位置、および温度センサ226で検出された温度に基づいて、ラム224のZシフト量を算出するシフト量算出部33(シフト量算出手段)と、算出されたZシフト量から、Z軸の測定値を補正する補正部34とを備える。なお、本実施形態では、温度検出部32および各温度センサ226により、温度検出手段が構成されている。
記憶部31は、制御部3で用いられる情報を記憶するものであり、三次元測定機1の製造時に予め測定した、基準温度(例えば20℃)における基準位置データや、コラム221、スライダ223、ラム224、及びサポータ225の線膨張係数(補正係数)などのパラメータを記憶している。
また、記憶部31には、制御部3が熱膨張によるラム224のZ軸方向のシフトを補正するためのZシフト補正プログラムが記憶されている。
図2を参照して、記憶部31に記憶された基準位置データは、距離C1、C2、C3、SL、S2、R、X0、X1、及びXsを含む。距離C1は、所定の基準温度T0におけるベース面211からコラム221の下部と中間部の境界までのZ軸方向の距離である。換言すると、距離C1は、温度T0におけるコラム221の下部のZ軸方向の長さである。距離C2は、基準温度T0におけるコラム221の下部と中間部の境界から中間部と上部の境界までのZ軸方向の距離である。換言すると、距離C2は、温度T0におけるコラム221の中間部のZ軸方向の長さである。距離C3は、基準温度T0におけるコラム221の中間部と上部の境界からビーム222の上面までのZ軸方向の距離である。ここで、ビーム222の上面は、スライダ223を支持する支持面である。距離SLは、基準温度T0におけるビーム222の上面からZ軸スケールセンサ223AまでのZ軸方向の距離である。距離Rは、基準温度T0におけるラム224のプローブ227が固定される端部からZ軸スケール224の固定位置までのZ軸方向の距離である。尚、ラム224のプローブ227が固定される端部は、ベース面211に対向する。距離S2は、基準温度T0におけるベース面211からビーム222の上面までのZ軸方向の距離である。
距離X0は、スライダ223を最もコラム221側に移動させた(x=0に設定した)際のコラム221の中心軸とスライダ223の中心軸とのX軸方向の距離である。ここで、xは、スライダ223のX軸方向の位置座標である。距離X1は、スライダ223を最もサポータ225側に移動させた(x=xmaxに設定した)際のサポータ225の中心軸とスライダ223の中心軸とのX軸方向の距離である。距離Xsは、スライダ223の移動可能距離(=xmax)である。距離Xsは、X軸方向の距離である。
温度検出部32は、各温度センサ226の温度を検出するとともに、これらの温度のうちのいくつかを用いて、ラム224における平均温度を算出する。ここで、温度センサ226Aの温度をT1、温度センサ226Bの温度をT2、温度センサ226Cの温度をT3、温度センサ226Dの温度をT4、温度センサ226Eの温度をT5、温度センサ226Fの温度をT6、温度センサ226Gの温度をT7とする。温度T1はコラム221の下部の温度TC1と、温度T2はコラム221の中間部の温度TC2と、温度T3はコラム221の上部の温度TC3と、温度T4はサポータ225の温度Tと、温度T5はラム224の−Z側端部の温度と、温度T6はZ軸スケールセンサ223Aの温度と、温度T7はスライダの温度TSLと、それぞれ称される場合がある。温度検出部32は、下記式によりラム224の平均温度Tを算出する。
=(T5+T6)/2 …(1)
平均温度Tは、ラム224の温度と称される場合がある。
シフト量算出部33は、測定環境の変化によりコラム221、スライダ223、ラム224、及びサポータ225が熱膨張した際に発生するラム224(プローブ227)のZシフト量を算出する。ここで、コラム221の熱膨張により距離C1、C2、及びC3がそれぞれ熱変形量ΔC1、ΔC2、及びΔC3だけ変化し、サポータ225の熱膨張により距離S2が熱変形量ΔSだけ変化し、スライダ223の熱膨張により距離SLが熱変形量ΔSLだけ変化し、ラム224の熱膨張により距離Rが熱変形量ΔRだけ変化する。熱変形量ΔC1、ΔC2、及びΔC3は、コラム221の線膨張係数をαとすると、それぞれ下記式により表される。
ΔC1=C1×α×(T1−T0) …(2)
ΔC2=C2×α×(T2−T0) …(3)
ΔC3=C3×α×(T3−T0) …(4)
コラム221の熱変形量ΔCは、下記式により表される。
ΔC=ΔC1+ΔC2+ΔC3 …(5)
サポータ225の熱変形量ΔSは、サポータ225の線膨張係数をαとすると、下記式により表される。
ΔS=S2×α×(T4−T0) …(6)
ラム224の熱変形量ΔRは、ラム224の線膨張係数をαとすると、下記式により表される。
ΔR=R×α×(T−T0) …(7)
スライダ223の熱変形量ΔSLは、スライダ223の線膨張係数をαSLとすると、下記式により表される。
ΔSL=SL×αSL×(T7−T0) …(8)
図3は、シフト量算出部33によるZシフト量の算出方法を説明する概念図である。
スライド機構22が熱膨張により寸法変動を起こす場合、コラム221を駆動するための駆動モータ228がコラム221の−Z側に位置しているため、コラム221への熱影響とサポータ225への熱影響が異なり、コラム221の熱変形量ΔCとサポータ225の熱変形量ΔSが異なる。したがって、熱変形量ΔC及びΔSがラム224の(プローブ227)のZ軸シフト量に及ぼす影響は、スライダ223のX軸方向の位置、すなわち座標xによって異なる。更に、サポータ225のベース面211側の端部は自由端となっているため、スライド機構22が熱膨張により変形すると、サポータ225の自由端はX軸方向に変位する。上述した理由等により、ラム224(プローブ227)のZシフト量は、スライダ223の位置、すなわち座標xの3次関数に従って、下記式で表される。
(Z軸シフト量)=(ΔS−ΔC)×((X0+x)/(X0+Xs+X1))+ΔC+ΔSL−ΔR …(9)
このため、シフト量算出部33は、上記式に基づいて、ラム224(プローブ227)のZ軸シフト量を算出することで、正確な値を算出することが可能となる。
補正部34は、シフト量算出部33にて算出されたZシフト量に基づいて、Z軸スケール224AおよびZ軸スケールセンサ223Aにより測定されたZ測定値を補正する。
〔Z測定値の補正方法〕
次に、実施の形態1にかかるZ測定値の補正方法について説明する。
図4は、Z測定値の補正方法を示すフローチャートである。
制御部3は、記憶部31に記憶されたZシフト補正プログラムが実行されると、図4に示すように、以下のステップS1〜S3を実行する。
Zシフト補正プログラムが実行されると、温度検出部32は、各温度センサ226の温度を検出し、上述した式(1)に基づいてラム224の平均温度Tを算出する(S1:温度検出ステップ)。
次に、シフト量算出部33は、記憶部31から、基準位置データ(C1〜C3、S2、SL、R、X0、X1、Xs)及び線膨張係数(α、α、α、αSL)を取得し、ステップS1の温度検出ステップにより得られた温度T1〜T4、T、及びT7、およびスライダ223の位置である座標xを用い、上述した式(2)〜(9)に基づいて、Zシフト量を算出する(S2:Zシフト量算出ステップ)。
Zシフト量算出ステップS2でZシフト量が算出されると、補正部34は、Z軸スケール224A及びZ軸スケールセンサ223Aにより測定されたZ測定値を、Zシフト量で補正する(S3:補正ステップ)。補正部34は、Z軸スケール224A、Z軸スケールセンサ223A、及びプローブ227により測定されたZ測定値を、Zシフト量で補正してもよい。
以上のステップS1〜S3を実行することによって、制御部3は、Z測定値から、Zシフト量を加減算することで、正確なZ測定値を測定することができる。
(比較例)
次に、実施の形態1にかかる三次元測定機1及びZ測定値の補正方法の理解を助けるために比較例にかかる三次元測定機及びZ軸測定値の補正方法を説明する。比較例にかかる三次元測定機及びZ軸測定値の補正方法は、基本的に実施の形態1にかかる三次元測定機1及びZ測定値の補正方法と同様であるが、以下の点が異なっている。
図5を参照して、比較例に係る三次元測定機においては、温度センサ226B及び226Gは使用されない。更に、比較例に係る基準位置データは、距離C、S、R、X0、X1、及びXsを含む。距離Cは、コラム211側における基準温度T0のベース面211からZ軸スケールセンサ223AまでのZ軸方向の距離である。距離Sは、サポータ255側における基準温度T0のベース面211からZ軸スケールセンサ223AまでのZ軸方向の距離である。距離R、X0、X1、及びXsは実施の形態1の場合と同様である。
比較例に係る温度検出部32は、温度センサ226A、226C〜226Fのそれぞれの温度T1、T3〜T6を検出するとともに、式(1)で表されるラム224の平均温度Tを算出し、下記式で表されるコラム221の平均温度Tを算出する。
=(T1+T3)/2 …(10)
比較例に係るシフト量算出部33は、測定環境の変化によりコラム221、ラム224、及びサポータ225が熱膨張した際に発生するラム224(プローブ227)のZシフト量を算出する。ここで、コラム221の熱変形量ΔC’、サポータ225の熱変形量ΔS’、及びラム224の熱変形量ΔR’は、コラム221、サポータ225、及びラム224の線膨張係数をαとすると、それぞれ下記式により表される。
ΔC’=C×α×(T−T0) …(11)
ΔS’=S×α×(T4−T0) …(12)
ΔR’=R×α×(T−T0) …(13)
図6は、比較例に係るシフト量算出部33によるZシフト量の算出方法を説明する概念図である。比較例においては、ラム224(プローブ227)のZシフト量は、スライダ223の位置、すなわち座標xの3次関数に従って、下記式で表される。
(Z軸シフト量)=(ΔS’−ΔC’)×((X0+x)/(X0+Xs+X1))+ΔC’−ΔR’ …(14)
比較例に係る補正部34は、シフト量算出部33が上記式に基づいて算出したZシフト量に基づいて、Z軸スケール224AおよびZ軸スケールセンサ223Aにより測定されたZ測定値を補正する。
〔実施の形態1の作用効果〕
図7を参照して、実施の形態1の効果を比較例の効果と比較して説明する。図7は、三次元測定機1が配置される測定室の室温を18℃から22℃の間でステップ状に変化させた場合におけるマスタボール213の温度80、及びZ軸方向の原点ズレ量90、91、100の変化を示すグラフである。横軸は経過時間(h)である。第1の縦軸は、Z軸方向の原点ズレ量(任意単位)である。第2の縦軸は測定温度(℃)である。Z軸方向の原点ズレ量90は、プローブ227を用いて測定したマスタボール213の中心のZ座標である。マスタボール213の温度80が基準温度T0である20℃になった時(65h)におけるZ軸方向の原点ズレ量90の値を0に設定した。Z軸方向の原点ズレ量91は、Z軸方向の原点ズレ量90を比較例に係る補正方法で補正して求めた。Z軸方向の原点ズレ量100は、Z軸方向の原点ズレ量90を実施の形態1に係る補正方法で補正して求めた。実施の形態1に係る補正方法によりZ軸方向の原点ズレ量90がZ軸方向の原点ズレ量100に低減された。実施の形態1に係る補正方法による低減効果は、比較例に係る補正方法による低減効果よりも大きかった。
上述したように、実施の形態1では、コラム221、スライダ223、ラム224、及びサポータ225にそれぞれ温度センサ226が設けられ、温度検出部32は、これらの温度センサ226から、コラム221、スライダ223、ラム224、及びサポータ225のそれぞれの温度を検出する。そして、シフト量算出部33は、検出された温度に基づいて、コラム221、スライダ223、ラム224、及びサポータ225の温度変化によるラム224(プローブ227)のZ軸に沿うZシフト量を算出する。
このため、コラム221、スライダ223、ラム224、およびサポータ225が、例えば駆動モータ228の熱によりそれぞれ異なる温度に変動し、それに伴う熱膨張による寸法変動が生じた場合であっても、これらのコラム221、スライダ223、ラム224、およびサポータ225の線膨張係数からそれぞれの寸法変動量を算出することができ、この寸法変動量に基づいてZシフト量を容易に算出することができる。また、このようなZシフト量に基づいて、補正部34でZ測定値を補正することで、適切に測定値を補正することができ、精度の高い測定を実現することができる。
また、実施の形態1では、スライダ223の温度TSLを検出し、基準温度T0におけるビーム222の上面からZスケールセンサ223Aまでの距離SL及びスライダ223の線膨張係数αSLに基づいてラム224のZ軸シフト量を算出している。そのため、スライダ223をX軸に沿って移動させる駆動モータ(不図示)及びラム224をZ軸に沿って移動させる駆動モータ(不図示)の発熱の影響をZ軸シフト量に反映することができる。
また、実施の形態1では、コラム221を下部、中間部、及び上部に三分割してそれぞれの温度TC1〜TC3を検出し、これらの温度TC1〜TC3、基準温度T0におけるベース面211から下部と中間部の境界までの距離C1、基準温度T0における下部と中間部の境界から中間部と上部の境界までの距離C2、及び基準温度T0における中間部と上部の境界からビーム222の上面までの距離C3、及びコラム211の線膨張係数αに基づいて、ラム224のZ軸シフト量を算出している。そのため、コラム221の平均温度Tを用いる場合に比べて、コラム221をY軸方向に沿って移動させる駆動モータ228の発熱の影響をZ軸シフト量に反映することができる。
また、実施の形態1では、コラム221、サポータ225、スライダ223、及びラム224のそれぞれの線膨張係数α、α、αSL、及びαは、コラム221、サポータ225、スライダ223、及びラム224のそれぞれの材質に対応した値が設定される。そのため、Z軸シフト量を高精度に算出することができる。例えば、コラム221及びスライダ223の材質がアルミ鋳物、サポータ225及びラム224の材質がアルミ押出し材の場合、コラム221及びスライダ223の線膨張係数α及びαSLがアルミ鋳物に対応した第1の値に設定され、サポータ225及びラム224の線膨張係数α及びαがアルミ押出し材に対応した第2の値に設定される。
更に、実施の形態1では、スライダ223の座標xを用い、上述した式(9)に基づいて、ラム224(プローブ227)のZシフト量を算出する。この式(9)は、コラム221の熱膨張により、−Z側端部が自由端であるサポータ225がベース面211に対して傾斜し、ラム224のZシフト量がスライダ223の座標xの3次関数で表されることを示すものである。式(9)に基づいてZシフト量を算出することで、Z軸シフト量を高精度に算出することができる。
(実施の形態1の変形例)
次に、実施の形態1の変形例を説明する。
例えば、実施の形態1において、産業機械として、三次元測定機1を例示したが、これに限定されない。すなわち、産業機械としては、ベース面に対して立設されるコラムおよびサポータと、これらのコラムおよびサポータ間のビーム上で移動可能なスライダと、このスライダにZ軸方向に移動可能なラムが設けられる装置であれば、いかなるものに対しても適用することができ、例えば、ラムの先端にワークを加工するための加工具などが取り付けられた作業ロボット等の産業機械などであってもよい。このような産業機械では、温度変化に伴うZシフト量を算出し、この算出されたZシフト量に基づいて、ラムの位置を調整することで、ワーク上の適切な位置を加工することが可能となる。
また、実施の形態1において、シフト量算出部33は、式(9)に基づいて、Zシフト量を算出する構成としたが、これに限定されず、例えば下記式に示すようなxの1次関数、xの2次関数に基づいて、Zシフト量を算出するものであってもよい。
(Z軸シフト量)=(ΔS−ΔC)×((X0+x)/(X0+Xs+X1))+ΔC+ΔSL−ΔR …(15)
(Z軸シフト量)=(ΔS−ΔC)×(X0+x)/(X0+Xs+X1)+ΔC+ΔSL−ΔR …(16)
また、ラム224には、2つの温度センサ226が設けられ、温度検出部32は、これらの温度センサ226により、ラム224の平均温度を算出するとしたが、これに限定されない。例えば、ラム224に1つの温度センサ226又は3つ以上の温度センサ226を設ける構成としてもよい。また、サポータ225に複数の温度センサ226が設けられる構成としてもよい。また、コラム221が3分割される場合を説明したが、コラム221は2分割又は4つ以上に分割されてもよい。
また、コラム221、サポータ225、スライダ223、及びラム224のそれぞれの温度を検出し、検出した温度に基づいてコラム221、サポータ225、スライダ223、及びラム224の熱変形量を算出し、算出した熱変形量に基づいてラム224のZ軸シフト量を算出するかわりに、歪みゲージやレーザ測距センサを用いてコラム221、サポータ225、スライダ223、及びラム224の熱変形量を検出し、検出した熱変形量に基づいてラム224のZ軸シフト量を算出してもよい。
(実施の形態2)
〔三次元測定機の構成〕
図8は、実施の形態2に係る三次元測定機(産業機械)の概略構成を示す側面図である。図9は、実施の形態2に係る三次元測定機の概略構成を示す正面図である。
図8において、三次元測定機10(産業機械)は、本体4と、本体4の駆動制御を実行する制御部5とを備えている。本体4に対して互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸が定義されている。Y軸方向は鉛直方向である。三次元測定機10は、横型の三次元測定機であり、軸物ワークの測定に好適である。
本体4は、ベース41、X軸スライダ42、コラム43、Y軸スライダ44、Z軸スピンドル45、プローブ46、インデックステーブル47、治具70を備える。ベース41は、インデックステーブル47を支持するテーブル支持面41aと、X軸スライダ42を支持するスライダ支持面41bと、X軸ガイド(不図示)とを備える。インデックステーブル47は、X軸ガイドの−Z軸方向側に配置される。インデックステーブル47は、インデックステーブル47の中心軸Sまわりに回転する回転テーブル471を備える。中心軸Sは、Y軸に平行である。回転テーブル471に治具70が設置され、治具70に被測定物が設置される。例えば、被測定物としてのマスタボール75が治具70に設置される。尚、X軸スライダ42、コラム43、Y軸スライダ44、及びZ軸スピンドル45は防塵ケースに収容されるが、防塵ケースは図示省略されている。
コラム43は、X軸スライダ42に立設されている。X軸スライダ42及びコラム43は、ベース41が備えるX軸ガイドに案内されてX軸に平行に移動可能である。Y軸スライダ44は、コラム43に対してY軸に平行に移動可能なようにコラム43に支持される。Z軸スピンドル45は、Y軸スライダ44に対してZ軸に平行に移動可能なようにY軸スライダ44に支持される。Z軸スピンドル45の−Z軸方向側の端部には、被測定物を測定するためのプローブ46が取り付けられている。本体4は、更に、X軸スライダ42、Y軸スライダ44、及びZ軸スピンドル45をそれぞれX軸、Y軸、及びZ軸に平行に駆動する駆動モータ(不図示)を備える。駆動モータは、制御部5の制御の下でプローブ46をX軸、Y軸、及びZ軸に平行に移動させる。
プローブ46は、基部461、回転機構462、支持機構463、スタイラス464、及びチップ465を備える。基部461は、Z軸スピンドル45に固定され、回転機構462を支持する。回転機構462は、支持機構463を回転可能に支持する。支持機構463は、スタイラス464の基端側を支持する。チップ465はスタイラス464の先端側に設けられる。支持機構463は、スタイラス464を直交三軸の各軸方向に付勢することで所定位置に位置決めするように支持するとともに、チップ465が被測定物に接触してスタイラス464に外力が加わった場合には、スタイラス464を一定の範囲内で直交三軸の各軸方向に移動可能としている。支持機構463は、スタイラス464の各軸方向の位置を検出して制御部5に出力するセンサ(不図示)を備える。回転機構462は、制御部5の制御の下で、回転中心Rを通りX軸、Y軸にそれぞれ平行な軸を中心として支持機構463を回転する。これにより、プローブ46の姿勢(すなわち、スタイラス464及びチップ465の姿勢)が変更される。
また、本体4は、X軸スライダ42、Y軸スライダ44、及びZ軸スピンドル45の各軸方向の位置を検出するための測定手段が設けられている。具体的には、Y軸スライダ44にはZ軸スケール441が設けられ、Z軸スピンドル45にはZ軸スケールセンサ452が設けられる。Z軸スケール441は、Z軸スピンドル45のY軸スライダ44に対するZ軸方向の変位を検出するための目盛を有し、固定点441aにおいてY軸スライダ44に固定されている。更に、Z軸スケール441には、温度センサ63が設けられている。温度センサ63は、Z軸スケール441の温度を検出して検出結果を制御部5に出力する。Z軸スケールセンサ452は、Z軸スケール441の目盛を検出して検出結果を制御部5に出力する。
図9を参照して、ベース41にはX軸スケール411が設けられ、X軸スライダ42にはX軸スケールセンサ422が設けられる。X軸スケール411は、X軸スライダ42のベース41に対するX軸方向の変位を検出するための目盛を有し、固定点411aにおいてベース41に固定されている。更に、X軸スケール411には、温度センサ61が設けられている。温度センサ61は、X軸スケール411の温度を検出して検出結果を制御部5に出力する。X軸スケールセンサ422は、X軸スケール411の目盛を検出して検出結果を制御部5に出力する。
また、コラム43にはY軸スケール431が設けられ、Y軸スライダ44にはY軸スケールセンサ442が設けられる。Y軸スケール431は、Y軸スライダ44のコラム443及びX軸スライダ42に対するY軸方向の変位を検出するための目盛を有し、固定点431aにおいてコラム43に固定されている。更に、Y軸スケール431には、温度センサ62が設けられている。温度センサ62は、Y軸スケール431の温度を検出して検出結果を制御部5に出力する。Y軸スケールセンサ442は、Y軸スケール431の目盛を検出して検出結果を制御部5に出力する。尚、図9においては、説明の都合上、インデックステーブル47を破線で示し、制御部5、治具70、及びマスタボール75を省略している。
図8を参照して、制御部5は、CPU(Central Processing Unit)や、メモリなどを備えて構成され、記憶部51と、温度センサ61〜63で検出された温度を取得する温度検出部52と、温度センサ61〜63で検出された温度に基づいて、Z軸スピンドル45の各軸方向のシフト量を算出するシフト量算出部53(シフト量算出手段)と、算出されたシフト量から、各軸の測定値を補正する補正部54とを備える。なお、本実施形態では、温度検出部52および温度センサ61〜63により、温度検出手段が構成されている。
記憶部51は、制御部5で用いられる情報を記憶するものであり、三次元測定機10の製造時に予め測定した、基準温度(例えば20℃)における基準位置データや、三次元測定機10の構造部材の線膨張係数(補正係数)などのパラメータを記憶している。
また、記憶部51には、制御部5にて熱膨張によるZ軸スピンドル45の各軸方向のシフトを補正するためのシフト補正プログラムが記憶されている。
記憶部51に記憶された基準位置データは、距離Y1、Y2、Y3、Yj、Z1、Z2、Z3、及びZpを含む。距離Y1は、所定の基準温度T0におけるインデックステーブル47の高さであり、基準温度T0におけるテーブル支持面41aからインデックステーブル47の上面(すなわち回転テーブル471の上面)までのY軸方向の距離である。ここで、インデックステーブル47の上面は、治具70を支持する支持面である。距離Yjは、基準温度T0における治具70の高さであり、基準温度T0におけるインデックステーブル47の上面から治具70上面までのY軸方向の距離である。ここで、治具70の上面は、被測定物(例えば、マスタボール75)を支持する支持面である。距離Y2は、基準温度T0におけるテーブル支持面41aからスライダ支持面41bまでのY軸方向の距離である。距離Y3は、基準温度T0におけるスライダ支持面41bからY軸スケール431の固定点431aまでのY軸方向の距離である。
距離Z1は、基準温度T0におけるインデックステーブル47の中心軸Sからベース41が備えるX軸ガイドの中心までのZ軸方向の距離である。距離Z2は、基準温度T0におけるベース41が備えるX軸ガイドの中心からZ軸スケール441の固定点441aまでのZ軸方向の距離である。距離Z3は、基準温度T0におけるZ軸スケールセンサ452からZ軸スピンドル45の−Z軸方向側の端部(すなわち、プローブ46が取り付けられる端部)までのZ軸方向の距離である。距離Zpは、基準温度T0におけるZ軸スピンドル45の−Z軸方向側の端部からプローブ46の回転中心RまでのZ軸方向の距離である。
図9を参照して、記憶部51に記憶された基準位置データは、距離X1及びX2を含む。距離X1は、基準温度T0におけるインデックステーブル47の中心軸SからX軸スケール411の固定点411aまでのX軸方向の距離である。距離X2は、基準温度T0におけるX軸スケールセンサ422からプローブ46の回転中心RまでのX軸方向の距離である。
尚、ベース41、インデックステーブル47、及び治具70は鉄系材料で形成され、X軸スライダ42、コラム43、Y軸スライダ44、Z軸スピンドル45、及びプローブ46はアルミ系材料で形成されている。したがって、記憶部51に記憶された線膨張係数は、鉄系材料の線膨張係数αFeと、アルミ系材料の線膨張係数αAlとを含む。
温度検出部52は、温度センサ61〜63の温度を検出することで、X軸スケールセンサ411の温度Tx、Y軸スケールセンサ431の温度Ty、及びZ軸スケールセンサ441の温度Tzを検出する。シフト量算出部53は、測定環境の変化により本体4の構造部材等(例えば、ベース41、X軸スライダ42、コラム43、Y軸スライダ44、Z軸スピンドル45、プローブ46、インデックステーブル47、及び治具70)が熱膨脹した際に発生するZ軸スピンドル45(プローブ46)の各軸方向のシフト量を算出する。
シフト量算出部53は、下記式により、Z軸スピンドル45のX軸シフト量ΔXを算出する。
ΔX=X1×αFe×(Tx−T0)−X2×αAl×(Tz−T0) …(17)
ここで、X軸スケール411の温度Txをベース41の温度として用い、Z軸スケール441の温度TzをY軸スライダ44及びZ軸スピンドル45の温度として用いている。
シフト量算出部53は、下記式により、Z軸スピンドル45のY軸シフト量ΔYを算出する。
ΔY=(Y2−Y1−Yj)×αFe×(Tx−T0)+Y3×αAl×(Ty−T0) …(18)
ここで、X軸スケール411の温度Txをベース41、インデックステーブル47、及び治具70の温度として用い、Y軸スケール431の温度をX軸スライダ42及びコラム43の温度として用いた。
シフト量算出部53は、下記式により、Z軸スピンドル45のZ軸シフト量ΔZを算出する。
ΔZ=Z1×αFe×(Tx−T0)+Z2×αAl×(Ty−T0)−(Z3+Zp)×αAl×(Tz−T0) …(19)
ここで、X軸スケール411の温度Txをベース41の温度として用い、Y軸スケール431の温度TyをX軸スライダ42及びコラム43の温度として用い、Z軸スケール441の温度TzをZ軸スピンドル45及びプローブ46の温度として用いた。
[測定値の補正方法]
次に、実施の形態2にかかる測定値の補正方法について説明する。
制御部5は、記憶部51に記憶されたシフト補正プログラムが実行されると、以下のステップS11〜S13を実行する。
シフト補正プログラムが実行されると、温度検出部52は、温度センサ61〜63の温度Tx〜Tzを検出する(S11:温度検出ステップ)。
次に、シフト量算出部53は、記憶部51から、基準位置データ(X1、X2、Y1〜Y3、Yj、Z1〜Z3、Zj)及び線膨張係数(αFe、αAl)を取得し、ステップS11の温度検出ステップにより得られた温度Tx〜Tzを用い、上述した式(17)〜(19)に基づいて、シフト量ΔX〜ΔZを算出する(S12:シフト量算出ステップ)。
シフト量算出ステップS12でシフト量ΔX〜ΔZが算出されると、補正部54は、X軸スケール411及びX軸スケールセンサ422により測定されたX測定値をX軸シフト量ΔXで補正し、Y軸スケール431及びY軸スケールセンサ442で測定されたY測定値をY軸シフト量ΔYで補正し、Z軸スケール441及びZ軸スケールセンサ452で測定されたZ測定値をZ軸シフト量ΔZで補正する(S13:補正ステップ)。補正部54は、X軸スケール411、X軸スケールセンサ422、及びプローブ46により測定されたX測定値をX軸シフト量ΔXで補正し、Y軸スケール431、Y軸スケールセンサ442、及びプローブ46で測定されたY測定値をY軸シフト量ΔYで補正し、Z軸スケール441、Z軸スケールセンサ452、及びプローブ46で測定されたZ測定値をZ軸シフト量ΔZで補正してもよい。
以上のステップS11〜S13を実行することによって、制御部5は、X〜Z測定値から、それぞれシフト量ΔX〜ΔZを加減算することで、正確なX〜Z測定値を測定することができる。
〔実施の形態2の作用効果〕
実施の形態2によれば、横型の三次元測定機においても構造部材の熱膨張によるZ軸スピンドル45のシフト量ΔX〜ΔZを算出することができる。また、スケールの温度補正用の温度センサ61〜63を用いてシフト量ΔX〜ΔZを算出することができるため、シフト量ΔX〜ΔZを算出するための追加の温度センサが不要である。更に、ベース41、X軸スライダ42、コラム43、Y軸スライダ44、Z軸スピンドル45、プローブ46、インデックステーブル47、及び治具70の線膨張係数として、これらの材質に対応した線膨張係数αFe及びαAlが設定される。そのため、シフト量ΔX〜ΔZを高精度に算出することができる。
(実施の形態2の変形例)
次に、実施の形態2の変形例を説明する。例えば、プローブ46は接触式及び非接触式のどちらでもよい。また、治具70を用いずに、被測定物(例えば、マスタボール75)が直接インデックステーブル46に載置されてもよい。この場合、式(18)の右辺からYjが削除される。
また、距離Y3に対応する部分をX軸スライダ42とコラム43の固定点431aより下の部分とに二分割してそれぞれの温度を検出し、これらの温度、基準温度T0におけるスライダ支持面41bからX軸スライダ42とコラム43の境界までのY軸方向の距離、X軸スライダ42とコラム43の境界から固定点4431aまでのY軸方向の距離、及びX軸スライダ42及びコラム43の線膨張係数αAlに基づいて、Y軸シフト量ΔYを算出してもよい。このようにすることで、X軸スライダ42をX軸方向に沿って移動させる駆動モータの発熱の影響をY軸シフト量に反映することができる。距離Y3に対応する部分を3つ以上の部分に分割してもよい。
実施の形態2において、産業機械として、三次元測定機10を例示したが、これに限定されない。例えば、Z軸スピンドル45の−Z軸方向側の端部にワークを加工するための加工具などが取り付けられた作業ロボット等の産業機械などであってもよい。このような産業機械では、温度変化に伴うシフト量ΔX〜ΔZを算出し、この算出されたシフト量ΔX〜ΔZに基づいて、Z軸スピンドル45の位置を調整することで、ワーク上の適切な位置を加工することが可能となる。
その他、本発明の実施の際の具体的な構造および手順は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non−transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD−ROM(Read Only Memory)、CD−R、CD−R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
1…三次元測定機(産業機械)
211…ベース面
221…コラム
222…ビーム
223…スライダ
223A…Z検出部であるZ軸スケールセンサ
224…ラム
224A…Z軸スケール
225…サポータ
226(226A〜226G)…物理量検出手段(温度検出手段)を構成する温度センサ
227…プローブ
32…物理量検出手段(温度検出手段)を構成する温度検出部、
33…シフト量算出手段であるシフト量算出部、
34…補正手段である補正部、

Claims (4)

  1. ベース面に対して直交するZ軸に沿って立設されたコラムおよびサポータと、
    前記コラムおよび前記サポータに支持されたビーム上を移動可能なスライダと、
    前記スライダに、Z軸方向に移動可能に保持されたラムと、
    前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、および前記ラムのそれぞれの熱膨張対応物理量を検出する物理量検出手段と、
    前記熱膨張対応物理量に基づいて、前記ラムのZ軸方向に沿ったZ軸シフト量を算出するシフト量算出手段と
    を具備し、
    前記ラムに設けられ、前記ラムのZ軸方向への移動量を測定するための目盛が設けられたZ軸スケールと、
    前記スライダに設けられ、前記Z軸スケールの目盛を検出するZ検出部と
    を更に具備し、
    前記ビームは、前記スライダを支持する支持面を備え、
    前記物理量検出手段は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度を検出し、
    前記シフト量算出手段は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度と、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムの位置関係を示す基準位置データと、温度変化による前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのZ軸方向への寸法変動量を算出するための補正係数と、前記スライダの位置座標xと、に基づいて、前記Z軸シフト量を算出し、
    前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度は、前記コラムの下部の温度T C1 、前記コラムの中間部の温度T C2 、前記コラムの上部の温度T C3 、前記サポータの温度T 、前記ラムの温度T 、及び前記スライダの温度T SL を含み、
    前記基準位置データは、所定の基準温度T0における前記ベース面から前記下部と前記中間部の境界までの距離C1、前記基準温度T0における前記下部と前記中間部の境界から前記中間部と前記上部の境界までの距離C2、前記基準温度T0における前記中間部と前記上部の境界から前記支持面までの距離C3、前記基準温度T0における前記ベース面から前記支持面までの距離S2、前記基準温度T0における前記支持面から前記Z検出部までの距離SL、前記基準温度T0における前記ラムの前記ベース面に対向する先端部から前記ラムの前記Z軸スケールの固定位置までの距離R、前記スライダを前記コラムに最も近接させた際の前記コラムの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離X0、前記スライダを前記サポータに最も近接させた際の前記サポータの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離X1、及び前記スライダが前記ビームに沿って移動可能な距離Xsを含み、
    前記位置座標xは、前記スライダの中心軸の前記ビームに沿う位置を表し、
    前記コラムの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離がX0のときに前記位置座標xの値は0であり、
    前記サポータの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離がX1のときに前記位置座標xの値はXsであり、
    前記補正係数は、前記コラムの線膨張係数α 、前記サポータの線膨張係数α 、前記スライダの線膨張係数α SL 、及び前記ラムの線膨張係数α を含み、
    前記シフト量算出手段は、下記式により前記Z軸シフト量を算出し、
    (Z軸シフト量)=(ΔS−ΔC)×((X0+x)/(X0+Xs+X1)) +ΔC+ΔSL−ΔR
    ここで、
    ΔC=ΔC1+ΔC2+ΔC3
    ΔC1=C1×α ×(T C1 −T0)
    ΔC2=C2×α ×(T C2 −T0)
    ΔC3=C3×α ×(T C3 −T0)
    ΔS=S2×α ×(T −T0)
    ΔR=R×α ×(T −T0)
    ΔSL=SL×α SL ×(T SL −T0)
    である
    産業機械。
  2. 請求項1に記載の産業機械において、
    前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの線膨張係数は、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの材質に対応した値が設定される
    産業機械。
  3. 請求項1又は2に記載の産業機械において、
    前記産業機械は、前記ラムの先端に設けられたプローブを用いて、前記ベース面に載置された被測定物を測定する測定機であり、
    前記シフト量算出手段により算出された前記Z軸シフト量に基づいて、前記プローブで測定された前記被測定物のZ軸測定値を補正する補正手段を更に具備する
    産業機械。
  4. ベース面に対して直交するZ軸に沿って立設されたコラム、Z軸に沿って立設されたサポータ、前記コラムおよび前記サポータの間に設けられたビーム上を移動可能なスライダ、前記スライダにZ軸方向に移動可能に保持されたラムのそれぞれの熱膨張対応物理量を検出する熱膨張対応物理量検出ステップと
    前記熱膨張対応物理量に基づいて、前記ラムのZ軸方向に沿ったZ軸シフト量を算出するZシフト量算出ステップと、
    を備え、
    前記ラムには、前記ラムのZ軸方向への移動量を測定するための目盛が設けられたZ軸スケールが設けられ、
    前記スライダには、前記Z軸スケールの目盛を検出するZ検出部が設けられており、
    前記ビームは、前記スライダを支持する支持面を備え、
    前記熱膨張対応物理量検出ステップにおいて、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度を検出し、
    前記Zシフト量算出ステップにおいて、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度と、前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムの位置関係を示す基準位置データと、温度変化による前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのZ軸方向への寸法変動量を算出するための補正係数と、前記スライダの位置座標xと、に基づいて、前記Z軸シフト量を算出し、
    前記コラム、前記サポータ、前記スライダ、及び前記ラムのそれぞれの温度は、前記コラムの下部の温度T C1 、前記コラムの中間部の温度T C2 、前記コラムの上部の温度T C3 、前記サポータの温度T 、前記ラムの温度T 、及び前記スライダの温度T SL を含み、
    前記基準位置データは、所定の基準温度T0における前記ベース面から前記下部と前記中間部の境界までの距離C1、前記基準温度T0における前記下部と前記中間部の境界から前記中間部と前記上部の境界までの距離C2、前記基準温度T0における前記中間部と前記上部の境界から前記支持面までの距離C3、前記基準温度T0における前記ベース面から前記支持面までの距離S2、前記基準温度T0における前記支持面から前記Z検出部までの距離SL、前記基準温度T0における前記ラムの前記ベース面に対向する先端部から前記ラムの前記Z軸スケールの固定位置までの距離R、前記スライダを前記コラムに最も近接させた際の前記コラムの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離X0、前記スライダを前記サポータに最も近接させた際の前記サポータの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離X1、及び前記スライダが前記ビームに沿って移動可能な距離Xsを含み、
    前記位置座標xは、前記スライダの中心軸の前記ビームに沿う位置を表し、
    前記コラムの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離がX0のときに前記位置座標xの値は0であり、
    前記サポータの中心軸から前記スライダの中心軸までの距離がX1のときに前記位置座標xの値はXsであり、
    前記補正係数は、前記コラムの線膨張係数α 、前記サポータの線膨張係数α 、前記スライダの線膨張係数α SL 、及び前記ラムの線膨張係数α を含み、
    前記Zシフト量算出ステップにおいて、下記式により前記Z軸シフト量を算出し、
    (Z軸シフト量)=(ΔS−ΔC)×((X0+x)/(X0+Xs+X1)) +ΔC+ΔSL−ΔR
    ここで、
    ΔC=ΔC1+ΔC2+ΔC3
    ΔC1=C1×α ×(T C1 −T0)
    ΔC2=C2×α ×(T C2 −T0)
    ΔC3=C3×α ×(T C3 −T0)
    ΔS=S2×α ×(T −T0)
    ΔR=R×α ×(T −T0)
    ΔSL=SL×α SL ×(T SL −T0)
    である
    シフト量算出方法。
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