以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
図1は、本発明が適用されるダイシング装置10の主要構成部である加工部の構成を示した平面図であり、図2は、図1の加工部の構成を示した側面図である。また、図3は、図1、図2の加工部の制御に関連する構成を示したブロック図である。なお、図3についての詳細は後述する。
これらの図に示すダイシング装置10(加工部)は、ワークWを保持するワークテーブル12と、ワークテーブル12に保持されたワークW(加工対象物)を切削する一対の切削ユニット14A、14Bと、ワークWを撮像する撮像ユニット(撮像手段)16と、ダイシング装置10を構成する駆動系、及び制御系を統括制御する制御装置(制御手段)18とから構成される。
ワークテーブル12は、例えば図1の如く円盤状に構成され、XY平面に対して平行するテーブル面を有している。そのテーブル面においてワークWの裏面を真空吸着してワークWを保持する。
このワークテーブル12は、図1、図2では不図示の図3に示したX軸駆動機構60に含まれるモータを駆動することによって、そのX軸駆動機構60により図1中X軸方向に沿って往復移動するようになっている。
また、ワークテーブル12は、図1、図2では不図示の図3に示したθ軸駆動機構62に含まれるモータを駆動することによって、そのθ軸駆動機構62により中心軸(θ軸)周りに回転するようになっている。
なお、ワークWは、例えば不図示のダイシングフレームにマウントされた状態、即ち、ダイシングフレームに貼られたワークシートの粘着面に片面が貼り付けられた状態でワークテーブル12に保持される。
また、本実施の形態のダイシング装置10により切削するワークWの種類としては特定のものに限定されない。例えば、半導体ウェーハ、CSP基板、QFN基板などの任意の種類の板状のワークを加工対象物のワークWとすることができるし、円形状や長方形などの任意の形状のものを加工対象物のワークWとすることができる。
切削ユニット14A、14Bは、それぞれワークWを切削する回転刃であるブレード20A、20Bと、図3では回転駆動機構22として示したスピンドル22A、22B等を備えている。なお、2つの切削ユニット14A、14Bに関しては同様に構成されているため、図3ではそれらに関連する構成部を省略して1つのブロックで示すとともに、両方の構成部を示す(切削ユニット14A、14Bのうちの任意の切削ユニットの構成部を示す)符号を別途付している。
各ブレード20A、20Bは、それぞれスピンドル22A、22BのY軸に対して平行する方向に延びるスピンドルシャフト22a、22bに連結されて支持されている。
スピンドル22A、22Bは、スピンドルシャフト22a、22bを回転させる不図示の駆動手段を内蔵しており、それらのスピンドルシャフト22a、22bを駆動手段によって回転駆動することで、ブレード20A、20Bが回転軸21A、21B周りに高速回転するようになっている。回転軸21A、21Bは、各々、ブレード20A、20B(及びスピンドルシャフト22a、22b)の中心軸であり、Y軸に対して平行している。
また、これらの切削ユニット14A、14Bは、スピンドル移動機構によって、図1中Y軸方向及び図2中Z軸方向に個別に移動するようになっている。
スピンドル移動機構は、図3に示したY軸駆動機構64として、図2に示すように一対のYキャリッジ24A、24B、ガイドレール26、26、不図示のモータ等を備えている。
一対のYキャリッジ24A、24Bは、ともにY軸に対して平行する方向に沿って配設されたガイドレール26、26にスライド自在に支持されている。そして、不図示のモータを駆動することによって、図1、2中Y軸方向に沿って個別にスライドされるようになっている。
なお、ガイドレール26、26は、例えば加工部においてY軸方向に跨がる門型の支持部材23に設置されている。
また、スピンドル移動機構は、図3に示したZ軸駆動機構66として、図2に示すように駆動部本体28A、28Bと、Zキャリッジ30A、30B等を備えている。
駆動部本体28A、28Bは、図1、図2にYキャリッジ24A、24Bに設置されており、不図示のリニアガイドとモータを備え、モータを駆動することによって、Zキャリッジ30A、30Bが図2中Z軸方向に沿って移動するようになっている。
Zキャリッジ30A、30Bの先端部には、ブラケット32A、32Bが取り付けられ、ブラケット32A、32Bにスピンドル22A、22Bが取り付けられている。
以上のごとく構成されたスピンドル移動機構によれば、Y軸駆動機構64により、切削ユニット14A、14BがY軸方向に沿って移動して、ブレード20A、20BがY軸方向に沿って移動する。
また、Z軸駆動機構66により切削ユニット14A、14BがZ軸方向に沿って移動(上下動)して、ブレード20A、20BがZ軸方向に沿って移動する。
したがって、Y軸駆動機構64のモータを駆動することによってブレード20A、20BのY軸方向へのインデックス送り(及び後述のY軸補正送り)等を行うことができ、Z軸駆動機構66のモータを駆動するとによってブレード20A、20BのZ軸方向への切込み送り等を行うことができるようになっている。
撮像ユニット16は、カメラ(ITVカメラ)34を備えている。カメラ34は、カメラホルダ36に保持され、カメラホルダ36は支持部材23に支持されている。
この撮像ユニット16のカメラ34は、ワークテーブル12に保持されたワークWの上面に対向する向きに設置されており、ワークWの上面を撮影し、その撮影画像の画像信号を画像処理装置(画像処理手段)38に出力する。
なお、カメラ34は、ワークWの上面全体を分割して撮影するために、カメラ34をY軸方向に沿って移動させる支持機構などに支持されていてもよく、カメラ34の支持機構についての詳細は省略している。カメラ34は1台ではなく複数台であってもよく、1又は複数のカメラによってワークWの表面の所望の部分の画像を撮影することができるように設置されている。
図1、図3に示す画像処理装置38は、カメラ34から得られた撮影画像の画像信号を画像処理して、切削予定ライン(ストリート)に関する情報、例えば、ワークWが有するアライメントターゲットを検出し、検出した情報を切削予定ラインに関する情報として制御装置18に与える。
また、画像処理装置38は、撮影画像の画像信号をモニタ40に出力することにより、モニタ40の画面にカメラ34で撮影した撮影画像を表示させる。
制御装置18は、後述のようにワークテーブル12のX軸方向への移動(位置)及びθ軸周りの回転(回転角度)を制御すると共に、ブレード20A、20BのY軸方向及びZ軸方向への移動(位置)を制御する。
また、画像処理装置38から切削予定ラインに関する情報を取得し、その情報に基づいてワークWの切削予定ラインを割り出し、ワークWの位置決め(アライメント)、切削時のブレード20A、20Bの制御等を行う。
なお、以上説明したダイシング装置10の加工部の構成は一例であって、ブレード20A、20Bの各々がワークW(ワークテーブル12)に対してX軸、Y軸、及びZ軸に沿った方向に相対的に移動可能であり、θ軸周りに回転可能な構成を有し、カメラ34によってワークWの切削予定ライン(ストリート)を検出可能に撮影できる構成を有したものであればよい。また、ブレード20A、20Bの各々のXY平面(ワークテーブル12のテーブル面)に対して平行する方向への移動方向は、テーブル面に平行する第1の方向と、テーブル面に平行する方向であって、第1の方向に直交しない第2の方向の各々に沿うものであってもよい。
次に、図3を用いて制御装置18の構成、作用について説明する。
図3に示すように、制御装置18は、主として、切削予定ライン割出部50、アライメント制御部52、切削制御部54を備えている。
切削予定ライン割出部50は、画像処理装置38から所要の情報を取得できるようになっており、画像処理装置38から得られる切削予定ラインに関する情報に基づいてワークテーブル12上に保持されたワークWの切削予定ラインの位置を割り出す。
ここで、詳細は省略するが、ワークテーブル12上には、加工対象物であるワークWが不図示の搬送装置により搬送されて保持されるようになっている。ただし、ワークテーブル12へのワークWの搬送は、手動によるものであってもよい。
また、本実施の形態におけるワークWは、例えば図4に示すように矩形状のQFN基板であり、一列に並べられた2つのブロック80、82(第1ブロック80及び第2ブロック82)を有し、各ブロック80、82に複数のチップT(同図の例では4×4の16個)が格子状に配列されているものとする。そして、2つのブロック80、82が並ぶ方向に沿って各ブロック80、82の両側にアライメントターゲット84A〜84Dが設けられているものとする。
このようなワークWにおいて、各ブロック80、82の切削予定ラインは、個々のチップに区画する複数の第1方向の切削予定ライン(図中の切削予定ライン86A〜86Eの各々のブロック80、82に対応する範囲のライン)と第1方向に直交する複数の第2方向の切削予定ライン(図中の切削予定ライン88A〜88Jの各々のブロック80、82に対応する範囲のライン)とからなる。そして、例えば、第1ブロック80における第1方向の切削予定ラインの各々は、両側のアライメントターゲット84A、84Bの位置(中心)を結ぶ方向に対して平行する方向に沿って延在し、かつ、第2方向に対してチップサイズに対応した所定間隔おきに形成されている。
第1ブロック80における第2方向の切削予定ラインの各々は、両側のアライメントターゲット84A、84Bの位置を結ぶ方向に対して直交する方向に沿って延在し、かつ、第1方向に対してチップサイズに対応した所定間隔おきに複数形成されている。第2ブロック82における第1方向及び第2方向の切削予定ラインについても同様である。
したがって、本実施の形態のワークWに対しては、各ブロック80、82の両側に形成されたアライメントターゲット84A〜84Dの位置を基準にして切削予定ラインの位置を割り出すことが可能である。
そこで、画像処理装置38は、図4のワークWに対して、カメラ34により撮影されたワークWの上面の撮影画像を取り込み、その撮影画像を画像処理してワークWの各ブロック80、82の両側のアライメントターゲット84A〜84Dの位置を検出する。
そして、切削予定ライン割出部50は、画像処理装置38により検出されたアライメントターゲット84A〜84Dの位置に基づいて各ブロック80、82の第1方向の切削予定ラインの位置と第2方向の切削予定ラインの位置を割り出す。そして、それらの各ブロックの切削予定ラインの位置に基づいてワークW全体としての切削予定ライン(ワークWの切削予定ライン)の位置を割り出す。
ワークWの切削予定ラインも第1方向の切削予定ライン86A〜86Eと第2方向の切削予定ライン88A〜88Jとからなり、ワークWの第1方向の切削予定ライン86A〜86Eは、2つのブロック80、82の各々の第1方向の切削予定ラインのうち、第2方向に関して対応する位置の2つの切削予定ラインの両端をワークWの端まで延長した場合に、それらを交差する点で繋いで一本としたラインに決定される。
ワークWの第2方向の切削予定ライン88A〜88Jは、各ブロック80、82の各々の第2方向の切削予定ラインをワークWの両端まで延長したラインに決定される。
ここで、図4に示したワークWは、ワークWに歪みが生じていない場合の理想的なワークであり、2つのブロック80、82の各々の第1方向の切削予定ラインは、対応する切削予定ライン同士が一直線上で繋がるため、ワークWの第1方向の切削予定ライン86A〜86Eは一直線となる。
一方、ワークWに歪みが生じている場合には、図5に示すように、2つのブロック80、82の各々の第1方向の切削予定ラインは、対応する切削予定ライン同士が一直線上で繋がらないため、ワークWの第1方向の切削予定ライン86A〜86Eは方向の異なる2本の線分からなる折れ線となる。
また、図5に示すように第2方向の切削予定ライン88A〜88Jの各々は一直線であるが、第1ブロック80を通過する第2方向の切削予定ライン88A〜88Eと、第2ブロック82を通過する第2方向の切削予定ライン88F〜88Jとは平行しない直線となる。
なお、ワークWは本実施の形態のものに限らず、切削予定ラインの割り出しも、上述の方法に限らない。例えば、アライメント用に形成されたアライメントターゲットに基づいて割り出すのではなく、ワークWに存在する回路の特定形状の検出に基づくものであってもよいし、カメラ34により撮影したワークWの上面の撮影画像から切削予定ライン(ストリート)を直接検出してもよい。
また、切削予定ラインは、チップT単位で割り出すことが可能であり、その場合に、ワークWに歪みが生じているときには、第1方向の切削予定ライン86A〜86Eは、図5よりも短い線分からなる折れ線となり、第2方向の切削予定ライン88F〜88Jは複数の線分からなる折れ線となる可能性がある。
更に、ワークWの切削予定ラインの割り出しは、ワークW上の全ての切削予定ラインの割り出しをまとめて行うことによって、新たな加工対象のワークWがワークテーブル12に搬送されて保持された後、ワークWの切削を開始する前において、最初に一度だけ行う態様であっても良いし、各切削予定ラインの切削開始前において、次に切削する切削予定ラインのみの割り出しを行う態様であっても良く、切削予定ラインの位置を切削前に把握できる態様であればどのようなものでもよい。
図3に示すアライメント制御部52は、切削予定ライン割出部50により割り出された切削予定ラインの位置の情報を取得し、その情報に基づいてワークWの位置決め(アライメント)を実施する。
そのアライメントとして、θ軸駆動機構62のモータを制御してワークテーブル12のθ軸周りの回転角度を調整する。これによって、各切削予定ラインの切削を行う際の位置(方向)がX軸方向の切削送りに対して適切となるようにワークWの回転角度調整を行う。
なお、以下において、2本のスピンドル22(22A、22B)のうちのいずれか一方のスピンドルのみを使用してワークWの切削を行う場合(シングルスピンドルの場合)の制御について説明する。そのシングルスピンドルの場合の制御を、スピンドル22A、22Bの両方に対して適用すれば、2本のスピンドル22A、22Bを併用して切削を行う場合(ツインスピンドルの場合)の制御に拡張することができる。また、シングルスピンドルの場合の制御に関しては、1本のスピンドルのみを備えたダイシング装置にも適用できる。
ワークWの回転角度調整について説明すると、ワークWには歪みが生じている場合があり、図5に示したワークWの第1方向の切削予定ライン86A〜86Eのように、切削予定ラインが一直線とならない場合がある。
そこで、アライメント制御部52は、例えば、次に切削する切削予定ラインに対して、誤差が最小となる基準直線を最小自乗近似等により求める。そして、その基準直線がX軸方向に対して平行となるようにワークテーブル12を回転させてワークWの回転角度調整を行う。
もし、ワークWに歪みが生じていない場合には、図4に示したワークWのように第1方向の全ての切削予定ライン86A〜86E、及び、第2方向の全ての切削予定ライン88A〜88Jは一直線であるため、上述のようにして求めた基準直線は切削予定ラインそのものとなる。したがって、この場合のワークWの回転角度調整は、切削予定ラインがX軸に対して平行となるように調整することに相当する。
一方、ワークWに歪みが生じている場合には、図6のように一直線でない切削予定ライン90に対して、誤差が最小となる一直線の基準直線92が求められ、その基準直線92がX軸に対して平行となるようにワークWの回転角度調整が行われる。
アライメント制御部52は、このようなワークWの回転角度調整を、例えば、各切削予定ラインの切削開始前において、次に切削する切削予定ラインの基準直線とX軸とのなす角が所定角度(0度の場合も含む)よりも大きいという条件を満たす場合など、ワークWの回転角度調整が必要と判断する所定の条件を満たすときに実施する。
なお、ワークWの回転角度調整は、上記のような条件に関係なく全ての切削予定ラインの各々の切削開始前に実施してもよいし、特定の切削予定ラインの切削開始前にのみ実施してもよい。
たとえば、図4に示したワークWの切削予定ラインの切削順序として、第1方向の切削予定ライン86A〜86Eを端から(例えば切削予定ライン86Aから)順に切削して第1方向の全ての切削予定ライン86A〜86Eの切削が終了すると、第2方向の切削予定ライン88A〜88Jを端から(例えば切削予定ライン88Aから)順に切削するものとする。
このとき、ワークWの回転角度調整は、第1方向の最初に切削する切削予定ライン86Aの切削開始前と、第2方向の最初に切削する切削予定ライン88Aの切削開始前にのみ実施してもよい。
このようにワークWの回転角度調整を特定の切削予定ラインの切削開始前にのみ実施する場合には、次のワークWの回転角度調整を実施するまでに切削する各切削予定ラインの基準直線を平均化した直線を基準直線としてワークWの回転角度調整を実施してもよいし、いずれかの切削予定ラインの基準直線に基づいてワークWの回転角度調整を実施してもよい。
また、ツインスピンドルの場合のワークWの回転角度調整は、各々のスピンドル22A、22Bのブレード20A、20Bに対して上述のようにしてワークWの回転角度調整を行う際の基準直線を平均化し、その平均化した直線を基準直線として行うものとすることができる。
更に、本実施の形態では、ワークWの回転角度調整を切削予定ラインに基づいて行うものとしたが、必ずしも切削予定ラインに基づくものでなくてもよく、仮に各々の切削予定ラインに対して基準直線を求めたとして、各々の切削予定ラインを切削する際にその基準直線がX軸に対してほぼ平行となるようにワークWの回転角度を調整するものであればよい。
また、アライメント制御部52は、ワークWのアライメントとして、各切削予定ラインの切削開始前において、ワークWの回転角度調整を適宜実施した後に、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12をX軸方向に移動させ、次に切削する切削予定ライン、例えば、図6の切削予定ライン90において、切削開始端90SのX軸方向の位置(X座標)を、ブレード20により切削が行われる加工点のX軸方向の位置(X座標)に一致させる。
即ち、ブレード20により切削が行われる加工点は、ブレード20の刃先(ブレード20の最下点(周縁端の最下点))とワークWとが接触する点であるものとすると、ブレード20の最下点の位置はX軸方向に対しては固定されており、そのブレード20の最下点のX軸方向の位置に次に切削する切削予定ライン90の切削開始端90SのX軸方向の位置を一致させる。
以上の切削予定ライン割出部50及びアライメント制御部52により行われる処理や制御は、従来と全く同様の内容とすることができ、上述の内容に限らない。
図3に示す切削制御部54は、切削予定ライン割出部50から各切削予定ラインの位置の情報を取得すると共に、アライメント制御部52からワークテーブル12(ワークW)の回転角度の情報を取得し、それらの情報に基づいて各切削予定ラインを切削する際のワークテーブル12のX軸方向への切削送りと、ブレード20の位置の制御とを実施する。
切削制御部54において、ワークWの切削予定ラインの各々を切削する際の切削制御は、全て同様に行われる。そこで、ワークWに歪みが生じている場合の一直線でない1つの切削予定ラインを着目切削予定ラインとし、その着目切削予定ラインを切削する際の加工手順に従って切削制御部54の切削制御の内容について説明する。図8には、その着目切削予定ラインの例として、図6の切削予定ライン90と同じ形態のものが同一符号により示されている。
図7は、着目切削予定ライン90を切削する際の切削制御部54により加工手順を示したフローチャートである。
なお、切削制御部54は、図3における回転駆動機構(スピンドル)22を制御することによって、少なくともブレード20がワークWに接触する際にはブレード20を高速回転させているものとする。
また、着目切削予定ライン90に対するアライメント制御部52によるワークWのアライメントは終了しているものとする。
まず、図8の着目切削予定ライン90の切削開始前において、切削制御部54は、ステップS10の処理として、スピンドル移動機構のY軸駆動機構64のモータを制御してブレード20をY軸方向に移動させ、ブレード20の最下点のY軸方向の位置(Y座標)を着目切削予定ライン90の切削開始端90SのY軸方向の位置(Y座標)に一致させる。
図4、及び、図5に示したワークWにおいて、着目切削予定ライン90が、第1方向の最初に切削する切削予定ライン86Aでなく、かつ、第2方向の最初に切削する切削予定ライン88Aでもない場合には、本ステップS10の処理は、着目切削予定ライン90の前に切削した切削予定ラインの切削終了後におけるブレード20のインデックス送りに相当する。
次に切削制御部54は、ステップS12の処理として、スピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレード20を下降(切込み送り)させ、ブレード20の最下点のZ軸方向の位置(Z座標)を、ワークWに対して所定の切込み深さとなる高さまで移動させる。
このブレード20のZ軸方向への切込み送りによって、図8のP1位置を拡大した図9に示すように、ブレード20の最下点100が着目切削予定ライン90の切削開始端90Sに接触し、その切削開始端90Sを加工点102として着目切削予定ライン90の切削が開始される。
なお、ブレード20(スピンドルシャフト)の回転中心となる回転軸を符号21の直線で示しており、その回転軸21はY軸に対して平行している。
また、本実施の形態における切削制御において、切削予定ラインを完全に切断する切断加工や溝入れを行う溝入れ加工などの加工の種類は特に限定されない。
次に切削制御部54は、ステップS14の処理として、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12をX軸方向に移動させてワークWをX軸方向に所定の速度で切削送りする。これによって、ワークWがブレード20に対してX軸方向に移動し、加工点102がワークWに対してX軸方向に移動する。
なお、この切削送りは、着目切削予定ライン90の切削が終了するまで継続して行われる。
また、図8において、X軸及びY軸はワークWに固定され、ワークWのX軸方向への移動によって、ブレード20がワークWに対してX軸方向に移動するものとすると、従来のようにブレード20のY軸方向の位置を切削が終了するまで固定した場合には、X軸に対して平行する直線96上をブレード20の最下点100及び加工点102が移動する。
次に切削制御部54は、ステップS16の処理として、現在のブレード20の最下点100(加工点102)の位置に対して、X軸方向の位置が一致する着目切削予定ライン90上の点(加工対応点という)のY軸方向の位置を算出する。
例えば、図8において、ブレード20がP2位置にあるとして、そのP2位置を拡大した図10に示すように、ブレード20の最下点100、即ち、加工点102を通り、かつ、Y軸に対して平行する直線106を描くと、その直線106と着目切削予定ライン90との交点が加工対応点104となる。
この加工対応点104のY軸方向の位置は、切削予定ライン割出部50から取得した着目切削予定ライン90の位置に関する情報と、アライメント制御部52から取得したワークテーブル12の現在の回転角度の情報とに基づいて算出することができる。
次に切削制御部54は、ステップS18の処理として、現在のブレード20の最下点100(加工点102)のY軸方向の位置と、ステップS16により求めた着目切削予定ライン90上の加工対応点104のY軸方向の位置との差、即ち、最下点100(加工点102)と加工対応点104との間の距離d(図10参照)が、所定の閾値ds以上か否かを判定する。
この所定の閾値dsは、切削予定ラインと、実際にブレードによって切削された加工ラインとのずれ量(誤差)として許容される最大許容誤差よりも小さい値であることが好ましい。
切削制御部54は、このステップS18においてNOと判定している間はステップS16の処理及びステップS18の判定を繰り返す。即ち、上述の距離dが閾値dsよりも小さい間は、ブレード20Aの最下点100(加工点102)はワークWに対してX軸方向に移動する。
一方、ステップS18においてYESと判定した場合には、切削制御部54は、ステップS20の処理として、図3におけるスピンドル移動機構のY軸駆動機構64のモータを制御してブレード20をY軸方向に移動させ、ブレード20の最下点100(加工点102)が着目切削予定ライン90(加工対応点104)に近づく方向に上述の距離dだけ移動させる。
このブレード20のY軸方向への移動を、本明細書では、“Y軸補正送り”というものとする。
また、このブレード20のY軸補正送りは、ブレード20に対してY軸方向(回転軸21方向)への過大な負荷が生じない程度の速度で行われる。
このステップS20のブレード20のY軸補正送りによって、図8のP3位置を拡大した図11に示すように、ブレード20の最下点100(加工点102)が、着目切削予定ライン90にほぼ一致する位置に移動する。
次に、切削制御部54は、ステップS22の処理として、着目切削予定ライン90の切削終了端90Eまでの切削が完了したか否かを判定する。即ち、ブレード20の最下点100(加工点102)のX軸方向の位置が、着目切削予定ライン90の切削終了端90EのX軸方向の位置に一致したか否かを判定する。
このステップS22においてNOと判定している間は、切削制御部54は、ステップS16からステップS22までの処理を繰り返す。
これによって、ブレード20の最下点100(加工点102)の位置は、その着目切削予定ライン90上の加工対応点104の位置に対して閾値ds未満の距離を保ちながらワークW上を移動し、図8の例えばP4位置、P5位置、P6位置のように着目切削予定ライン90に沿ってワークWを切削していく。
そして、ステップS22においてYESと判定した場合には、切削制御部54は、ステップS24の処理として、図3のX軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12のX軸方向への移動(切削送り)を停止させてワークWの切削送りを停止する。
また、図3のスピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレード20をZ軸方向に上昇させ、着目切削予定ライン90の切削開始前の高さまで移動させる。
以上のような切削制御によれば、切削予定ラインの切削中におけるブレード20のY軸補正送りによって、ワークWの歪みによって切削予定ラインが一直線ではなくX軸方向に対して平行でない部分が存在する場合や、切削予定ラインが一直線でもX軸方向に対して平行でない場合においても、切削予定ラインに沿って精度良く切削することができるようになる。
また、ツインスピンドルの場合に、従来の切削制御では、同時に切削する2つの切削予定ラインの方向の差異が大きいために、許容される加工精度の範囲内で同時に切削することが困難となる場合がある。そのような場合であっても、本実施の形態の切削制御によれば、ブレード20A、20BのY軸補正送りによって、2つの切削予定ラインを同時に、かつ、高精度に切削することができる。
次に、上述の切削制御における加工精度についての検証結果を示す。
図12は、ワークWの切削中のブレード20の最下点100(加工点102)のワークWに対する位置に関して、横軸にX軸方向の位置(X座標)を示し、縦軸にY軸方向の位置(Y座標)を示す。そして、グラフ線X1で結ばれた各X座標でのY座標の値は、ブレード20の最下点100(加工点102)が各X座標の値の位置を通過する際に、Y軸補正送りにより、ブレード20の最下点100(加工点102)を移動させるべき目標としたY軸方向の位置を示す。なお、Y軸補正送りの最大の送り幅を正負の各々の方向に2.5μmとしている。
一方、同図においてグラフ線X2で結ばれた各X座標でのY座標の値は、グラフ線X1に従ってY軸補正送りを実施した際に、ブレード20の最下点100(加工点102)が各X座標の値の位置において実際に通過したY軸方向の位置を示す。
また、同図においてグラフ線X3で結ばれた各X座標でのY座標の値は、Y軸補正送りを行わない場合においてブレード20Aの最下点100(加工点102)が各X座標の値の位置において実際に通過したY軸方向の位置を示す。
同図によれば、Y軸補正送りの制御により、切削中であってもブレード20の最下点100(加工点102)の位置をY軸方向に変位させることができ、かつ、目標としたY軸方向の位置にほぼ意図通りに変位させることができるという結論が得られる。このことから、Y軸補正送りによって、X軸方向に対して平行でない部分を含む切削予定ラインに対して精度良く切削できることが確認された。
また、図13(A)、(B)は、図12の検証において切削された溝の幅(カーフ幅)をX軸方向の各位置において実測した結果を示し、図13(A)は、カーフ幅の最大値、図13(B)は、カーフ幅の最小値を示す。また、これらの図においてグラフ線X2で結ばれたグラフが示す結果は、Y軸補正送りを行った場合を示し、グラフ線X3で結ばれたグラフが示す結果は、Y軸補正送りを行わない場合を示している。
これらの図によれば、Y軸補正送りを行った場合と行わなかった場合とで、カーフ幅に大きな差異はなく、今回検証したY軸補正送りの送り幅程度であれば加工品質に影響しないことが確認された。
なお、切削中におけるY軸補正送りによりブレード20にY軸方向(ブレード20の回転軸21方向)への負荷がかかり、ブレード20が損傷する可能性がある。そこで、図14のブレード20の断面図に示すようにブレード20の両側面にブレード20とは材質の異なる板状部材110、110を固着して、その板状部材110、110でブレード20を挟むようにしてもよい。または、ブレード20の両側面にコーティングの膜を形成してもよい。これによって、ブレード20に側面方向(回転軸方向)から加わる負荷に対してブレード20の剛性を高めることができる。
以上、上記実施の形態では、スピンドル22(22A、22B)全体をスピンドル移動機構のY軸駆動機構64によりY軸方向に移動させることにより、ブレード20のY軸補正送りを行うものとしたが、これに限らない。
例えば、スピンドル22において、スピンドルシャフト(22a、22b)を、スピンドル22の本体(スピンドルシャフトを回転可能に軸支する本体)に対して、軸方向(回転軸21方向)に進退移動可能に支持すると共にモータによってスピンドルシャフトをその軸方向に進退移動させる駆動機構を設けるものとする。そして、その駆動機構によりスピンドルシャフトを軸方向に移動させてブレード20のY軸補正送りを行うこともできる。
また、ワークテーブル12をモータによってY軸方向に移動させる駆動機構を設け、シングルスピンドルの場合には、ブレード20をY軸方向に移動させる代わりに、その駆動機構によりワークテーブル12をY軸方向に移動させることによって、ワークWに対してブレード20を相対的にY軸方向に移動させてY軸補正送りを行うこともできる。ツインスピンドルを採用する場合には、ブレード20A、20Bのうちのいずれか一方をY軸方向に移動させる代わりに、ワークテーブル12をY軸方向に移動させることによって、ブレード20A、20Bの両方に関してY軸補正送りを行うようにしてもよい。
また、上記実施の形態において、スピンドル22によるブレード20の回転に起因するブレード20の最下点100(加工点102)での回転方向、即ち、XY平面に平行し、かつ、ブレード20の回転軸21に直交する方向(以下、ブレード20の切削方向という)は、常にX軸に対して平行する。
したがって、切削予定ラインがX軸に対して平行でない場合には、加工点102における切削予定ラインの方向とブレード20の切削方向とが平行ではない。そこで、それらが平行となるように、ブレード20をZ軸に対して平行する軸(旋回軸)の周りに回転可能(旋回可能)にすると共にモータによりその旋回軸の周りにブレード20を旋回させる旋回駆動機構を設けてもよい。
例えば、旋回駆動機構を加工部に設けた場合の構成を図15の側面図に示す。なお、図15は、図2に示した加工部の構成を応用したものであり、図2に示した構成部と同一又は類似の構成部には同一符号を付し、その説明を省略する。図15において、旋回駆動機構120A、120Bは、各々、Zキャリッジ30A、30Bの先端部に取り付けられている。
旋回駆動機構120A、120Bは、各々、Z軸に対して平行する不図示の軸部材を有し、それらが不図示のモータにより旋回軸121A、121Bを中心にして回転するようになっている。
その軸部材にスピンドル22A、22Bを取り付けるブラケット32A、32Bが固定されている。
これによって、ブレード20A、20Bは、旋回軸121A、121Bの周りを旋回し、ブレード20A、20Bの切削方向をXY平面内の所望の方向に変更することができるようになっている。
これに対して、切削制御部54は、図8と同様の図16に示す着目切削予定ライン90の切削中において、上記実施の形態と同様にY軸補正送りを行うとともに、旋回駆動機構120(120A、120B)のモータを制御してブレード20を旋回させ、ブレード20の最下点100(加工点102)に対応する加工対応点104での着目切削予定ライン90の方向とブレード20の切削方向とを一致させる。即ち、ブレード20の回転軸21の方向を加工対応点104での着目切削予定ライン90の方向に直交させる。
これによって、着目切削予定ライン90のうちの線分90Aの範囲では、ブレード20の切削方向が線分90Aの方向と一致した状態で切削が行われ、着目切削予定ライン90のうちの線分90Bの範囲では、ブレード20が旋回してブレード20の切削方向が線分90Bの方向と一致する方向に変更されて切削が行われる。
なお、シングルスピンドルの場合には、ブレード20を旋回させる代わりに、ワークテーブル12をθ軸周りに回転させてもよい。ツインスピンドルの場合には、ブレード20A、20Bのうちの一方のブレードを旋回させる代わりに、ワークテーブル12をθ軸周りに回転させてもよい。
次に、上記ダイシング装置10におけるブレード20(20A、20B)のツルーイングについて説明する。
ブレード20は、例えば50〜600μmの厚みで、適宜の結合剤(ボンド)によって結合されたダイヤモンド粒子等の砥粒を含有する。このようなブレード20は、加工している間にボンドが消耗して砥粒が脱落し、新しい砥粒が表面に露呈すること(自生発刃)で良好な切削が遂行されるようになっている。また、ブレード20は、使用開始当初は、先端面(外周端面)がフラットな形状に維持された状態で加工が遂行され、分割後のチップは表面から裏面にかけて垂直に切断される。
ところが、ブレード20は、先端面の両側縁角部から消耗していくため、ワークWの切削を重ねていくと、図17の符号1000に示すようにブレード20のフラットであった先端面が図17の符号1002に示すように徐々に略半円形状に変化する。その先端形状の変化が過大になると、分割後のチップにブレード20の先端形状が転写してしまい、チップ裏面側に好ましくない突出部が形成されるおそれがある。
そこで、定期的にブレード20の先端部(外周端)の整形(ツルーイング)を行って図17の符号1004に示すようにブレード20の先端面をフラットにすることが望ましい。
上記ダイシング装置10においてブレード20(20A、20B)のツルーイングを行う場合、次のような制御を実施する。なお、通常のワークWを切削する場合における上述の説明と同様に、以下において2本のスピンドル22A、22Bのうちのいずれか一方のスピンドル22のみのブレード20のツルーイングを行う場合について説明する。
まず、上述のように分断を目的とする通常のワークWに替えて、ブレード20のツルーイングを目的とする特殊なワークWとしてドレッサーボード200を図18に示すように吸着保持させる。
ドレッサーボード200は、例えば、ブレード20のボンドよりも硬質のボンドと、ブレード20の砥粒よりも大きい砥粒とから形成されている。
なお、同図におけるドレッサーボード200は円板状(円形状)の外形を有しているが、四角形状など、他の形状の外形を有したものであってもよい。また、通常のワークWと同様に環状のフレームに貼られたワークシートの粘着面に片面が貼り付けられた状態でワークテーブル12に保持されるものであってもよいし、単体でワークテーブル12に保持されるものであってもよい。
また、同図に示すダイシング装置10の加工部は、図1に示したものと同じであるから説明を省略する。
ドレッサーボード200をワークテーブル12に吸着保持させると、続いて、ドレッサーボード200の上面をカメラ34により撮影し、その撮影画像に基づいてドレッサーボード200の外形データを画像処理装置38により検出する。
制御装置18は、画像処理装置38からドレッサーボード200の外形データを取得し、その外形データに基づいて、ドレッサーボード200の上面の範囲内に仮想的に切削予定ラインを設定する。
図19は、ワークテーブル12に吸着保持されたドレッサーボード200の上面図であり、ドレッサーボード200の上面に対して設定される切削予定ライン210の位置を例示している。なお、ワークテーブル12のテーブル面の中心を原点としてX軸及びY軸を表し、X軸及びY軸の原点は必ずしもドレッサーボード200の中心と一致しない。
同図に示すように切削予定ライン210は、X軸及びY軸のいずれにも平行ではなく、例えば、X軸とのなす角が45度となる直線として設定される。この場合、Y軸とのなす角も45度となる。
また、切削予定ライン210は、ドレッサーボード200の略中心を通るように設定され、切削開始端210Sと、切削終了端210Eがドレッサーボード200の上面の範囲となるように設定される。
なお、切削予定ライン210は、ドレッサーボード200の略中心を通るものでなくもよい。また、切削開始端210S及び切削終了端210Eは、ドレッサーボード200の上面の範囲内として、ドレッサーボード200の周縁端の位置としてもよい。また、切削予定ライン210の設定は、通常のワークWを切削する際の切削予定ライン割出部50による切削予定ラインの割り出しに相当する。
このようにX軸と平行でない斜めの切削予定ライン210を設定すると、制御装置18は、θ軸駆動機構62によりワークテーブル12をθ軸周りに回転させることなく、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12をX軸方向に移動させ、切削予定ライン210の切削開始端210SのX軸方向の位置(X座標値)を、ブレード20の最下点のX軸方向の位置(X座標)、即ち、ブレード20の回転軸21のX軸方向の位置に一致させる。
また、スピンドル移動機構のY軸駆動機構64のモータを制御して、ブレード20をY軸方向に移動させ、ブレード20の最下点のY軸方向の位置(Y座標)を切削予定ライン210の切削開始端210SのY軸方向の位置(Y座標)に一致させる。
これによって、ブレード20の最下点と切削予定ライン210の切削開始端210SとのX軸方向及びY軸方向の位置を一致させる。
続いて、制御装置18は、ワークWを切削予定ラインに沿って切削する切削制御部54の制御と同様に、X軸に対して斜めの切削予定ライン210の位置を切削開始端210Sから切削終了端210Eまで切削する。
即ち、回転駆動機構(スピンドル)22を制御することによってブレード20を高速回転させた状態にする。そして、スピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレードを下降(切込み送り)させ、ブレード20の最下点のZ軸方向の位置(Z座標)を、ドレッサーボード200に対して所定の切込み深さとなる高さまで移動させる。このときの切込み深さは、通常のワークWを分断する場合と比較して浅く、ブレード20のツルーイングに必要な量、例えば、数μm〜数十μm程度とすることが望ましい。
このブレード20のZ軸方向への切込み送りによって、図20に示すようにブレード20の最下点100が切削予定ライン210の切削開始端210Sに接触し、切削開始端210Sを加工点102として切削予定ライン210の切削が開始される。
なお、ブレード20(スピンドルシャフト)の回転中心となる回転軸を符号21の直線で示しており、その回転軸21はY軸に対して平行している。
そして、制御装置18は、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12をX軸方向に移動させてドレッサーボード200をX軸方向に所定速度で切削送りする。これによって、ブレード20(加工点102)がドレッサーボード200に対してX軸方向に切削送りされる。
また、制御装置18は、ブレード20のX軸方向の切削送りと同時に、Y軸駆動機構64のモータを制御してブレード20をY軸方向に移動させ(上述のY軸補正送りに相当する動作)、加工点102が切削予定ライン210に近づくようにブレード20をY軸方向に移動させる。
このとき、上記図7のフローチャートで説明した手順に倣うとすると、ステップS18において、加工点102と加工点102に対応する切削予定ライン210上の加工対応点104との間の距離dが、閾値ds以上となった場合に、ブレード20が切削予定ライン210に近づくようにY軸方向に移動する。これによって、ブレード20の最下点100(加工点102)が切削予定ライン210の位置に沿って移動し、ドレッサーボード200を切削する。
ただし、必ずしも図7のフローチャートで説明した手順に倣う必要はなく、たとえば、ブレード20のY軸方向への移動を、X軸方向の切削送りの速度に対して所定倍となる速度で行うようにしてもよい。
上述のように切削予定ライン210をX軸及びY軸に対して45度となる角度の直線とした場合には、ブレード20のY軸方向への移動を、X軸方向の切削送りの速度に対して1倍となる速度で行えばよい。また、切削予定ライン210のX軸とのなす角は45度以外であっても良く、その角度をθとすると、X軸方向の切削送りの速度に対して(sinθ/cosθ)倍となる速度でブレード20をY軸方向に移動させれば良い。
以上のようにして、ブレード20の最下点100(加工点102)を切削予定ライン210の位置に沿って移動させ、ブレード20の最下点100(加工点102)のX軸方向の位置が、切削予定ライン210の切削終了端210EのX軸方向の位置に一致すると、制御装置18は、X軸駆動機構60のモータを制御してワークテーブル12のX軸方向への移動(ブレード20の切削送り)を停止させる。そして、スピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレード20をZ軸方向に上昇させて、切削開始前の高さまで移動させる。これにより、ブレード20のツルーイングを終了する。
なお、切削予定ライン210の位置を上述のように切削開始端210Sから切削終了端210Eまで切削した後、続けて、切削終了端210Eから切削開始端210Sまで切削するなど、切削予定ライン210の位置を所定回分切削してツルーイングを終了してもよい。
また、複数の切削予定ライン、例えば、上記切削予定ライン210と平行で、かつ、略等間隔に配列された複数の切削予定ラインを設定し、それらの切削予定ラインの位置を順次切削してツルーイングを終了してもよい。
さらに、ドレッサーボード200に対するブレード20の切込み深さは、ツルーイングの開始から終了するまでの間に、段階的又は連続的に深くするようにしてもよい。即ち、スピンドル移動機構のZ軸駆動機構66のモータを制御してブレード20を段階的(例えば1〜2μm程度ずつ)又は連続的に下降させるようにしてもよい。
以上のブレード20のツルーイング時における制御によれば、ドレッサーボード200に対してブレード20の先端部が接触しながらブレード20の回転軸(スピンドルシャフトの回転軸21)の方向に相対的に移動するため、ブレード20の先端面が図17の符号1004に示すようにフラットの形状に効果的に整形される。
即ち、X軸に平行な切削予定ラインに沿ってドレッサーボード200を切削した場合には、ブレード20の先端部が非常に細いことから、ブレード20の先端面のみにドレッサーボード200の砥粒を作用させることが難しい。そのため、ブレード20の側面部などにも同様にドレッサーボード200の砥粒が作用してしまい、ブレード20の先端面をフラットの形状に効果的に整形することが難しい。
一方、Y軸に平行な切削予定ラインに沿ってドレッサーボード200を切削した場合には、ブレード20の先端面のみにドレッサーボード200の砥粒を作用させることができるため、ブレード20の先端部が撓まない場合には、ブレード20の先端面をフラットの形状に効果的に整形することができる。
しかしながら、Y軸に平行な切削予定ラインに沿ってドレッサーボード200を切削した場合、ブレード20の先端部が極めて細いためにドレッサーボード200から回転軸21の方向(Y軸方向)の強い摩擦力を受けてブレード20の先端部が図21のように回転軸21の方向に撓む。その状態で切削を継続すると、図22のようにブレード20の先端面が斜めに整形されてしまうという問題がある。また、このようなブレード20の撓みの大きさは、ブレード20がドレッサーボード200から受ける摩擦の大きさの変動に伴って変動するため、安定しない。
さらに、ブレード20を低速で回転させた場合、ブレード20の撓み角が、そのままブレード先端の傾斜角となり、ブレード20をフラットに整形することができなくなる。
反対に、ブレード20を高速で回転させた場合、ドレッサーボード200との接触により、あるときは摩擦が大きくなりブレード20の撓みが大きくなるが、その後、接触状態の変化で摩擦が小さくなってブレード20の撓みが緩和し、元の状態に復元される。これが断続的に繰り返し起こりスティックスリップ状態になる。こうしたスティックスリップ状態で切削を継続すると、ブレード20の先端部が波打つようになり、それがブレード20の回転と同期し共振した場合には、ブレード20が破損することも生じ得る。
そこで、上記ダイシング装置10が、ブレード20のX軸方向の切削送り中にY軸補正送りを行うことによって、X軸とY軸のいずれにも非平行な斜めの切削予定ラインの位置を切削することができることを利用し、ツルーイングでは、そのような斜めの切削予定ライン210を設定して、切削予定ライン210に沿ってドレッサーボード200を切削するようにしている。
これによって、ブレード20の先端部とドレッサーボード200との間に発生する応力(摩擦力)が、ブレード20の回転軸21の方向以外に分散する。そして、応力の分散によって、ブレード20の先端部が回転軸21の方向(Y軸方向)に撓まず、かつ、スティックスリップ現象によるブレード20の破損も生じることなく、ブレード20の先端部には、回転軸21の方向(Y軸方向)にドレッサーボード200の砥粒が作用して、ブレード20の先端面がフラットの形状に効果的に整形される。
続いて、上記ダイシング装置10においてブレード20のツルーイングを行う場合において、ドレッサーボード200の上面に設定する切削予定ライン等の他の形態について説明する。
図19に示した切削予定ライン210は、ドレッサーボード200の上面の範囲内において、X軸とY軸とに非平行な斜めの直線を切削予定ライン210として設定したが、切削予定ラインの形態はこれに限らない。
上記ダイシング装置10においては、上述のように切削中においても、ドレッサーボード200(ワークテーブル12のテーブル面)に対してブレード20をX軸方向とY軸方向の両方向に移動させることができるため、それらの移動を制御することによって、様々な形状の切削予定ラインを切削することができる。
一方、ツルーイング時においては、ツルーイングの間の大部分の時間が、ブレード20のY軸方向のみの移動、又は、X軸方向のみの移動とならないように切削予定ラインを設定すれば適切にブレード20のツルーイングを行うことができるため、切削予定ラインの形態は特定のものに限定されない。
例えば、切削予定ラインの形態として、図23、図24、及び図25に示すような形態とすることができる。
図23に示す切削予定ライン250は、ドレッサーボード200の上面の範囲内において、切削開始端250Sから切削終了端250EまでのX軸方向に関する向きを変えずにY軸方向に関する向きを1回又は複数回反転させて描かれるジグザグ形状の切削予定ラインであって、X軸とY軸のいずれにも非平行な斜めの直線(線分)からなる。
図24に示す切削予定ライン260は、ドレッサーボード200の上面の範囲内において、切削開始端260Sから切削終了端260Eまで円形状(円弧状)に描かれた曲線の切削予定ラインである。
図25に示す切削予定ライン270は、ツルーイング時においてワークテーブル12をθ軸周り(X軸及びY軸の原点周り)に回転させてドレッサーボード200を回転させながら切削を行う場合の形態であり、θ軸に対してX軸方向に異なる位置において切削開始端270Sから切削終了端270EまでY軸方向に平行な直線として描かれた切削予定ラインである。ただし、この場合の切削予定ライン270は、静止している(回転していない)ドレッサーボード200の上面に対して設定される切削予定ラインの形状を表したものでない。
更に、図15に示したようにダイシング装置10がブレード20をZ軸に平行する旋回軸の周りに旋回させる旋回駆動機構を有する場合に、所定の切削予定ラインに沿ってドレッサーボード200を切削する場合に、ドレッサーボード200に対するブレード20の移動方向が回転軸21の方向に対して好適となるように(例えば45度となるように)ブレード20を旋回軸周りに旋回させるようにしてもよい。