JP6252179B2 - 軸受外輪の製造方法 - Google Patents

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Description

この発明は、自動車、工作機械、産業機械等、各種機械装置の回転支持部に組み込む複列アンギュラ型の転がり軸受を構成する軸受外輪の製造方法の改良に関する。
各種機械装置の回転支持部分を構成する為に、図7に示す様な、背面組み合わせ型の複列アンギュラ型玉軸受1が、広く使用されている。この複列アンギュラ型玉軸受1は、内周面に複列の外輪軌道2、2を備えた外輪3と、それぞれの外周面に内輪軌道4、4を形成した1対の内輪5、5と、これら両外輪軌道2、2とこれら両内輪5、5の内輪軌道4、4との間にそれぞれ複数個ずつ転動自在に設けられた玉6、6と、これら各玉6、6を保持する為の1対の保持器7、7とを備える。この様な複列アンギュラ型玉軸受1は、例えば、前記外輪3をハウジング8に内嵌固定すると共に、前記両内輪5、5を回転軸9に外嵌固定する。そして、このハウジング8の内側にこの回転軸9を、回転自在に支持する。
この様な複列アンギュラ型玉軸受1を構成する、前記外輪3及び前記両内輪5、5は、例えば特許文献1〜5等に記載されて周知の様に、鍛造加工、ローリング加工、切削乃至研削加工を施す事により、所定の形状及び寸法に加工している。例えば、前記外輪3に関しては、従来から、図8に示す様な工程で造っていた。先ず、この従来の軸受外輪の製造方法に就いて説明する。
この図8に示した、従来から知られている軸受外輪の製造方法では、先ず、(A)に示した様な円柱状の原素材10を、長尺な原材料を所定長さに切断する事により得る。
次いで、この原素材10に、1対の金型の互いに対向する押圧面同士の間で軸方向に押し潰す、据え込み加工を施す事により、(B)に示す様な、母線形状が略円弧形である第一中間素材11とする。
次いで、この第一中間素材11に、(C)→(D)に示した後方押出加工を施す事により、(D)に示した第二中間素材12とする。
前記後方押出加工は、ダイス13とパンチ14との間で前記第一中間素材11の径方向中央部分を軸方向に押し潰すと共に、径方向外寄り部分を前記パンチ14の押し込み方向後方に塑性変形させる事により行う。前記ダイス13は有底円筒状で、円形の底板部15と、この底板部15の外周縁部から上方に立上った周壁部16とを備える。このうちの底板部15の外径寄り部分には環状凹溝17を、全周に亙って形成している。又、前記周壁部16の内周面は、開口部寄り(中間部乃至上端部)の内周面側大径部18と、前記底板部15寄り(下端部)の内周面側小径部19とを、軸方向中間部の内周面側傾斜部20により連続させた、段付形状としている。このうちの内周面側小径部19は、前記環状凹溝17の外径寄り内周面と単一円筒面上に位置している。又、前記パンチ14は、外周面を、先端寄り(下半部)の外周面側小径部21と、基端寄り(上半部)の外周面側大径部22とを、軸方向中間部の外周面側傾斜部23により連続させた、段付形状としている。それぞれが上述の様に構成される前記ダイス13とパンチ14とは、プレス加工機のテーブルとラムとに、互いに同心に支持固定する。即ち、前記ダイス13をこのテーブルの上面に、前記パンチ14を前記ラムの下端面に、それぞれ支持固定する。
前記後方押出加工を行う際には、前記ラムと共に前記パンチ14を上昇させた状態で、前記第一中間素材11を前記ダイス13内にセットする。従来の製造方法の場合、この第一中間素材11の外径は、少なくとも下端寄り部分で前記内周面側小径部19内に入り込む部分で、この内周面側小径部19の内径よりも小さくしている。従って、前記第一中間素材11を前記ダイス13内にセットした状態では、(C)に示す様に、この第一中間素材11の下面が前記底板部15の上面で前記環状凹溝17の内側部分に当接する。そこで、この状態から前記ラムにより前記パンチ14を下降させて、(D)に示す様に、このパンチ14の先端面と前記ダイス13の底板部15の上面との間で、前記第一中間素材11の中央部を軸方向に押し潰す。
この押し潰しにより、前記底板部15の上面と前記パンチ14の先端面との間から径方向外方に押し出された金属材料は、前記第一中間素材11の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、前記パンチ14の押し込み方向後方(上方)に移動する。この様にしてこのパンチ14の押し込み方向後方に移動した金属材料は、このパンチ14の外周面と前記周壁部16の内周面との形状に倣って、内外両周面が段付円筒面である、段付円筒状となる。又、前記金属材料の一部は、前記環状凹溝17内に入り込んで、当該部分の形状を糸底状とする。この様にして行う前記後方押出加工により、(D)に示す様な、内外両周面が段付円筒面で全体が有底円筒状の、前記第二中間素材12を得られる。
次いで、この様な第二中間素材12に、この第二中間素材12の底部24を打ち抜き除去する打ち抜き加工を施す事により、(E)に示す様な、段付円筒状の第三中間素材25とする。この打ち抜き加工は、プラス加工機により打ち抜きパンチを、前記第二中間素材12に突き通す事により行う。
この様にして、前記第三中間素材25を造った後、この第三中間素材25に冷間でローリング加工(CRF)を施して、(F)に示す様な第四中間素材26とする。この冷間ローリング加工では、例えば前記第三中間素材25を、この第三中間素材25の(大径側の)外径と一致する内径を有し、内周面を円筒面とした外径側ローラに内嵌する。そして、前記第三中間素材25の内径よりも十分に小さな外径を有し、外周面の母線形状を前記第四中間素材26の内周面の母線形状に見合う(凹凸が逆になった)形状とした内径側ローラを、前記第三中間素材25の内周面に押し付ける。そして、この内径側ローラを回転させつつ、この第三中間素材25の内周面に押し付ける。前記外径側ローラは、回転のみ自在に(径方向の変位を阻止された状態で)支持されているので、前記内径側ローラの回転に伴って前記第三中間素材25が、前記外径側ローラと共に回転する。この為、この第三中間素材25の内周面に前記内径側ローラの外周面の母線形状が全周に亙って転写されると共に、この第三中間素材25の外周面が円筒面に加工される。
尚、前記ローリング加工は、互いに反対方向に回転する1対のローラ同士の間に前記第三中間素材25の周方向の一部を挟持し、これら両ローラを互いに近付く方向に押圧しつつ、これら両ローラの外周面の形状を前記第三中間素材25の内外両周面に転写する状態で行う場合もある。何れにしても、前記(F)に示す様な第四中間素材26を得られる。この第四中間素材26は、外周面が軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である。
この様にして得られた、前記第四中間素材26には、必要な仕上加工を施す事により、前述の図7に示した様な、複列アンギュラ型玉軸受1を構成する外輪3として完成する。即ち、前記第四中間素材26のうちの余肉部を削り取る事で、図8の(F)及び図9に鎖線で示した形状の外輪3とする。又、この外輪3の内周面に形成した1対の外輪軌道2、2部分に、研削加工や超仕上加工等、これら両外輪軌道2、2の表面の性状を整える加工を施す。
ところで、前記外輪3を造る為の、前記原素材10は、鉄鋼メーカーで押し出し成形された、断面円形の長尺材を所定長さに切断する事で造られた、円柱状のものを使用する。この様にして得られる円柱状の原素材10の組成(清浄度)は均一でないこと、即ち、前記原素材10の中央部40%の範囲(中心から半径の40%までの中央寄り円柱状部分)は、非金属介在物が存在し易い事が、前記特許文献6の記載等により、従来から知られている。又、前記原素材10の外径寄り20%の範囲(中心から半径の80%よりも外周面側に存在する円筒状部分)に関しても、酸化物や非金属介在物が存在し易い等により、清浄度が低い事が知られている。そして、中心寄り、外周面寄り、何れの部分に存在する金属材料にしても、清浄度が低い金属材料が、前記外輪3の内周面に設けた1対の外輪軌道2、2のうちで、特に玉6、6(図7)の転動面が転がり接触する部分に露出すると、この部分の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。
これらの事を考慮し、且つ、素材中の酸化物や非金属介在物の分布のばらつきや、製造作業時に発生する(押圧力等の)各種ばらつきを考慮した場合、前記原素材10の中央部50%の範囲、及び、前記原素材10の外径寄り30%の範囲に存在する金属材料が、前記両外輪軌道2、2のうちで、少なくとも転動面が転がり接触する部分に露出しない様にする事が好ましい。言い換えれば、前記両外輪軌道2、2のうちの少なくとも転動面が転がり接触する部分には、前記原素材10のうちで、中心からの半径が50〜70%の範囲である、中間円筒状部分27{図8の(A)に斜格子を付した部分。他の、図1、図2、図5、図6、図8の(B)〜(F)、及び図9に関しても、斜格子を付した部分は、前記中間円筒状部分27に存在した金属材料(中間部金属材料29)により構成されている事を表している。}に存在する金属材料を露出させる事が好ましい。
ところが、本発明の製造方法の対象となる様な、軸方向中間部の内径が小さく、内周面の軸方向2箇所位置でこの内径が小さくなった部分の両側に複列の外輪軌道2、2を備えた外輪3を鍛造加工により造る場合、前記中間円筒状部分27に存在する金属材料を前記両軌道面に露出させる事が難しい。例えば、前述の図8に示した様な方法で、前記図9に鎖線で示した外輪3を造ると、前記原素材10中の各部の金属材料、即ち、中心から半径の50%までの中央寄り円柱状部分に存在する中心側金属材料28と、中心からの半径が50〜70%の範囲である、前記中間円筒状部分27に存在する中間部金属材料29と、外径寄り30%の範囲の外径寄り円筒状部分に存在する外径側金属材料30とは、前記図9に示す様に、前記外輪3中に分布する。この外輪3は、前述の様に、鍛造加工により図9に実線で示した第四中間素材26を造った後、切削加工及び研削加工により、この図9に鎖線で示す状態にまで前記第四中間素材26を削り取り、前記外輪3として完成する。
この様な第四中間素材26と外輪3とを示した図9中、斜格子で示した、前記中間円筒状部分27に存在する中間部金属材料29が、1対の外輪軌道2、2のうちで、少なくとも玉の転動面が転がり接触する部分に露出すれば、これら両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を確保し、前記外輪3を含む、前記複列アンギュラ型玉軸受1の耐久性確保を図り易くなる。ところが、前記図9から明らかな通り、従来の製造方法により前記外輪3を造ると、前記中央寄り円柱状部分の中心側金属材料28が、前記両外輪軌道2、2のうちの一方(図9の下方)の外輪軌道2の表面全体に露出する。例えば、図9の矢印αは、各玉6(図7参照)の接触角を40度(接触角の余角である中心軸に対する角度=50度)とした場合に、前記各玉6、6から前記両外輪軌道2、2に加わる荷重の作用方向を示している。前記外輪3の断面形状を表す前記図9の鎖線上で、前記各矢印αが指している部分に前記中間部金属材料29が存在すれば、前記両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を確保し易いが、図9の下方の内輪軌道2に関しては、前記図9の鎖線上で前記各矢印αが指している部分に、中心側金属材料28が存在する。この為、従来から知られている軸受外輪の製造方法では、前記複列アンギュラ型玉軸受1の耐久性確保を図る為の設計の自由度が限られる。
特開平9−176740号公報 特開平9−280255号公報 特開平11−140543号公報 特開2002−79347号公報 特開2003−230927号公報 特開2006−250317号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑みて、内周面の軸方向中間部の内径が両側部分の内径よりも小さく、且つ、この内径が小さくなった部分を挟む軸方向2箇所位置に複列の外輪軌道を備えた軸受外輪を、円柱状の素材を塑性変形させる事により造る場合に、前記両外輪軌道となる部分全体に、素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられる軸受外輪の製造方法を実現すべく発明したものである。
本発明の製造方法の対象となる軸受外輪は、内周面の軸方向2箇所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備える。
この様な軸受外輪を製造する為に、本発明の製造方法のうち、請求項1に記載した軸受外輪の製造方法の場合、金属製で円柱状の原素材に、据え込み加工と、前後方同時押出加工と、打ち抜き加工と、ローリング加工と、仕上加工とを順次施す。
このうちの据え込み加工では、前記原素材を軸方向に押し潰して、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材とする。
又、前記前後方同時押出加工では、フローティングダイスと押圧パンチとの間で、前記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。このうちのフローティングダイスは、弾性部材により上方に向いた弾力を付与された周壁部と、この周壁部の底部に配置され、上面中央部に円形凸部を設けた底板部とから構成している。そして、この円形凸部の外周面と前記周壁部の内周面との間を円筒状成形空間としている。又、前記押圧パンチは、先端部の外径をこの周壁部の内径よりも小さくしている。そして、前記押し潰しに伴い径方向外方に押し出された金属材料及び前記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料を、前記押圧パンチの押し込み方向前方に存在する前記円筒状成形空間と、この押圧パンチの押し込み方向後方でこの押圧パンチの先端部外周面と前記周壁部の内周面との間に存在する円筒状の空間とに、それぞれ移動させる。これと共に、前記第一中間素材の外周面と前記周壁部の内周面との間に作用する摩擦に基づきこの周壁部を前記弾性部材の弾力に抗して下降させ、円筒部の軸方向中間部の内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とする。
又、前記打ち抜き加工では、前記第二中間素材の隔壁部を打ち抜き除去する事で、全体が円筒状の第三中間素材とする。
又、前記ローリング加工では、この第三中間素材の内外両周面を塑性変形させて、外周面が軸方向に関し外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である第四中間素材とする。尚、軸方向に関して外径が実質的に変化しない円筒面とは、軸方向両端縁部に設けた面取り部を除き、外径が変化しない形状を言う(本明細書全体及び特許請求の範囲で同じ)。
又、前記仕上加工では、前記第四中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に前記両外輪軌道を形成する。
一方、請求項2に記載した軸受外輪の製造方法の場合、金属製で円柱状の原素材に、据え込み加工と、前方押出加工と、後方押出加工と、打ち抜き加工と、ローリング加工と、仕上加工とを順次施す事により、前記軸受外輪とする。即ち、上述の請求項1に記載した軸受外輪の製造方法のうち、前後方同時押出加工に代えて、前方押出加工及び後方押出加工を採用する。前記請求項2に記載した軸受外輪の製造方法は、これら前方押出加工及び後方押出加工を採用している点以外に就いては、前記請求項1に記載した軸受外輪の製造方法と同様である。
前記前方押出加工では、フローティングダイスと第一押圧パンチとの間で、第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。このうちのフローティングダイスは、弾性部材により上方に向いた弾力を付与された周壁部と、この周壁部の底部に配置され、上面中央部に円形凸部を設けた底板部とから構成している。そして、この円形凸部の外周面と前記周壁部の内周面との間を円筒状成形空間としている。又、前記第一押圧パンチは、外径をこの周壁部の内径と実質的に同じにしている(この周壁部の内径側を軸方向に変位可能とする為の円環状の微小隙間を設けるべく、この周壁部の内径よりも僅かに小さくしている)。前記押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料及び前記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料を、前記第一押圧パンチの押し込み方向前方に存在する前記円筒状成形空間に移動させる。これと共に、前記第一中間素材の外周面と前記周壁部の内周面との間に作用する摩擦に基づきこの周壁部を前記弾性部材の弾力に抗して下降させ、円柱部の軸方向片端面に開口する円形凹部を設けた予備中間素材とする。
又、前記後方押出加工では、有底円筒状で、底部内面の形状を前記予備中間素材の軸方向片端部に見合う形状としたダイスと、先端部の外径がこのダイスの内径よりも小さい第二押圧パンチとの間で前記予備中間素材の中央部を軸方向に押し潰す。そして、この押し潰しに伴い径方向外方に押し出された金属材料及び前記予備中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料を、前記第二押圧パンチの押し込み方向後方でこの第二押圧パンチの先端部外周面と前記ダイスの内周面との間に存在する円筒状の空間に移動させて、円筒部の軸方向中間部の内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とする。
上述の様な本発明の軸受外輪の製造方法を実施する場合に好ましくは、請求項3に記載した発明の様に、前記第一中間素材の軸方向長さを、前記原素材の軸方向長さの70%以下にする。
又、好ましくは請求項4に記載した発明の様に、前記第二中間素材の隔壁部の軸方向に関する厚さを、前記第一中間素材の軸方向長さの30%以下にする。
上述の様に構成する本発明の軸受外輪の製造方法によれば、内周面のうち、内径が最も小さくなった部分を挟んだ、軸方向に離隔した2箇所位置に形成した1対の外輪軌道となる部分全体に、原素材のうちで清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を露出させられる。この為、前記両外輪軌道の転がり疲れ寿命を確保し、これら両外輪軌道を備えた軸受外輪を含む、複列転がり軸受の耐久性確保の為の設計の自由度向上を図れる。
即ち、本発明の場合、第一中間素材の中央部を押し潰し、この押し潰しに伴ってこの第一中間素材を構成する金属材料を、押圧パンチの押し込み方向前方に存在する円筒状成形空間に移動させる際に、フローティングダイスを構成する周壁部を下降させる。この為、前記第一中間素材を塑性変形させ、円筒部の軸方向中間部の内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とする過程で、前記金属材料を軸方向に関しほぼ均等に移動させ、この第二中間素材を軸方向に関しほぼ対称にできる。この結果、前記両外輪軌道となる部分全体に、前記清浄度の高い中間円筒状部分の金属材料を確実に露出させられる。
本発明の実施の形態の第1例を、工程順に、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況が変化する状況と共に示す、原素材乃至第四中間素材、並びに、フローティングダイス及び押圧パンチの断面図。 第四中間素材の段階での、中央寄り円柱状部分の金属材料と、中間円筒状部分の金属材料と、外径寄り円筒状部分の金属材料との分布状況を示す断面図。 図1の(C)の拡大図(A)と、同図の(D)の拡大図(B)。 固定式のダイスを用いた場合の問題点を説明する為の、図1の(C)に相当する図(A)と、同図の(D)に相当する図(B)。 パンチの先端面の直径を規制する事の効果を説明する為の、図1の(C)に相当する図(A)と、同図の(D)に相当する図(B)と、同図の(F)に相当する図(C)。 本発明の実施の形態の第2例を示す、図1と同様の図。 本発明の製造方法の対象となる軸受外輪を備えたアンギュラ型の複列玉軸受を備えた回転支持部の1例を示す断面図。 従来から知られている軸受外輪の製造方法を示す、図1と同様の図。 同じく図2と同様の図。
[実施の形態の第1例]
図1〜3は、請求項1、3、4に対応する、本発明の実施の形態の第1例を示している。本例の製造方法は、図1の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で円柱状の原素材10に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一中間素材11a、(D)に示した第二中間素材12a、(E)に示した第三中間素材25aを経て、(F)に示した第四中間素材26aを得る。更に、この第四中間素材26aに、必要とする切削加工及び研削加工を施して、前述の図7に示した様な複列アンギュラ型玉軸受1を構成する外輪3とする。以下、前記原素材10を前記第四中間素材26aに加工する工程に就いて、順番に説明する。尚、以下の加工のうち、(A)→(E)に示した、据え込み加工と、後方押出加工と、打ち抜き加工とは、基本的には総て熱間若しくは温間で行い、(E)→(F)に示したローリング加工は冷間で行うが、小型の外輪3を形成し、しかも金属材料として優れた延性を有するものを使用する場合等、可能であれば、全工程を冷間で行っても良い。
先ず、図1の(A)→(B)に示す様に、前記原素材10に据え込み加工を施して、この原素材10を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、この原素材10を、軸方向中間部が膨らんだ、前記第一中間素材11aとする。この様な据え込み加工の基本的な実施状況に関しては、前述の図8に示した、従来の製造方法での据え込み工程と同様である。即ち、前記原素材10を、1対の金型の押圧面同士の間で押し潰す、据え込み加工を施す事により、母線形状が略円弧形でビヤ樽型の前記第一中間素材11aとする。この据え込み加工での前記原素材10の加工量(押し潰し量)は、この第一中間素材11aの軸方向長さL11が、この原素材10の軸方向長さL10の70%以下(L11≦0.7L10)となる様に規制する。前記第一中間素材11aの軸方向長さL11を、前記原素材10の軸方向長さL10の70%よりも長くした場合、次の前後方同時押出工程で前記第一中間素材11aを構成する金属材料の動きを適切に規制できなくなる可能性がある。この結果、前記原素材10のうち、中心からの半径が50〜70%の範囲である中間円筒状部分27に存在する、清浄度の高い中間部金属材料29を、複列の外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させ難くなる。但し、前記押し潰し量が過度に大きくすると(前記第一中間素材11aの軸方向長さL11が過度に短いと)、次の前後方同時押出加工に於いて押圧パンチ33の押し込みに伴い、前記第一中間素材11aを構成する金属材料を径方向外方に移動させつつ、前記押圧パンチ33の押し込み方向両側にほぼ均等に移動させられなくなる可能性がある。従って、前記押し潰し量は、上述の条件(L11≦0.7L10)を満たし、且つ、前記前後方同時押出加工で前記第一中間素材11aを構成する金属材料の移動を適切に行える範囲で設計的に定める。
尚、前記据え込み加工の際、前記原素材10の軸方向両端面と、前記両金型の押圧面との間には摩擦力が作用する為、この原素材10の軸方向両端部に於いてはこの原素材10を構成する金属材料、延いてはこの原素材10のうち、前記中間部金属材料29の移動量を小さく抑えられる。従って、この中間円筒状部分27の、据え込み加工後の外径d11は、据え込み加工前の外径d10とほぼ等しくなる(d10≒d11)。
上述の様な第一中間素材11aに、次に図1の(C)→(D)に示す様な、前後方同時押出加工を施して、第二中間素材12aとする。この様な前後方同時押出加工では、この第二中間素材12aの表面形状に合致する内面形状を有する、フローティングダイス31及び外面形状を有する押圧パンチ33を使用して、前記第一中間素材11aの径方向中央寄り部分を軸方向に押し潰しこの第一中間素材11aを構成する金属材料を、径方向外方に移動させつつ、前記押圧パンチ33の押し込み方向両側(前方及び後方)にほぼ均等に移動させる。前記フローティングダイス31は、円筒状の周壁部32と、この周壁部32の底部に配置された底板部35とから構成される。このうちの周壁部32は、下方に向いた大きな力が加わった場合に下降する様に、例えばばね、油圧シリンダ等の弾性部材45、45により上方に向いた弾力を付与している。又、前記底板部35は上面の中央部に、前記周壁部32の高さの1/2未満の高さを有するダイス側円形凸部34を設けている。このダイス側円形凸部34は、外径D34を前記周壁部32の内径R32よりも小さくし(D34<R32)、先端面の直径d34を前記中間円筒状部分27の据え込み加工後の外径d11以上(d34≧d11)、好ましくはこの外径d11よりも大きく(d34>d11)している。この理由は、前記ダイス側円形凸部34の先端面と前記第一中間素材11aの端面との間に作用する摩擦により、この第一中間素材11aを構成する金属材料の移動量を規制して、前記中間部金属材料29を前記両外輪軌道2、2となる部分全体に露出させる為である。前記外径d34を過度に大きくした場合、前記中間部金属材料29の、前記第二中間素材12aの円筒部38への移動量が(過度に)少なくなり、この中間部金属材料29を前記両外輪軌道2、2となる部分全体に露出させられなくなる可能性がある。従って、前記外径d34は、上述の条件(d34≧d11)を満たした上で、前記中間部金属材料29を前記両外輪軌道2、2となる部分全体に露出させる様に設計的に定める。又、前記ダイス側円形凸部34は、先端面と外周面とを断面形状が部分円弧形の凸曲面により連続している。そして、このダイス側円形凸部34の外周面と、前記周壁部32の内周面との間を、円筒状成形空間36としている。又、前記押圧パンチ33は先端部に、前記ダイス側円形凸部34を上下方向に反転させた形状を有するパンチ側円形凸部37を備える。
即ち、本例の場合、前記前後方同時押出加工では、先ず、図1の(C)に示す様に、前記第一中間素材11aを前記ダイス側円形凸部34の上面に載置する。そして、この状態から、前記押圧パンチ33を下降させ、この押圧パンチ33のパンチ側円形凸部37の先端面{図1の(C)、(D)の下面}により、前記第一中間素材11aを前記フローティングダイス31の底板部35の上面に向けて押し込む。この押し込みの初期段階では、前記第一中間素材11aが拡径しつつ、それぞれが断面形状が部分円弧形である、前記ダイス側円形凸部34の先端面と外周面との連続部及び前記パンチ側円形凸部37の先端面と外周面との連続部に沿って、前記押圧パンチ33の押し込み方向両側に向かって塑性変形する。
そして、前記第一中間素材11aの外周面が前記周壁部32の内周面に当接した後、更に前記押圧パンチ33を下降させる事で、前記第一中間素材11aの中央部を軸方向(上下方向)両側から押し潰すと共に、この第一中間素材11aの外周面と、前記周壁部32の内周面との間に作用する摩擦に基づき、前記弾性部材45、45の弾力に抗してこの周壁部32を下方に変位させる。そして、押し潰しに伴い径方向外方に押し出された金属材料を、前記第一中間素材11aの径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、前記押圧パンチ33の押し込み方向前方(下方)に存在する前記円筒状成形空間36、及びこの押し込み方向後方(上方)で、前記パンチ側円形凸部37の外周面と前記周壁部32の内周面との間に存在する円筒状の成形用空間46にほぼ均等に移動させる。そこで、前記弾性部材45、45の弾力は、前記押圧パンチ33の押し込みに伴って、前記第一中間素材11aを構成する金属材料をこの押圧パンチ33の押し込み方向両側にほぼ均等に移動させられる大きさに設定する。前記押圧パンチ33の押し込み方向両側に移動した金属材料の内外両周面は、この押圧パンチ33の外周面と前記フローティングダイス31の内面(底面及び内周面)とに見合った形状となる。この結果、前記前後方同時押出加工により、図1の(C)に示した前記第一中間素材11aが、同図の(D)に示す様な、円筒部38の軸方向中間部の内径側に隔壁部39を設けた、前記第二中間素材12aとなる。本例の場合、この隔壁部39の軸方向厚さT39を、前記第一中間素材11aの軸方向長さL11の30%以下(T39≦0.3L11)にしている。前記軸方向厚さT39がこの軸方向長さL11の30%よりも厚いと、前記第一中間素材11aを構成する金属材料の移動量を適切に規制できず、清浄度の高い中間部金属材料29を、前記両外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられなくなったり、次の打ち抜き工程で、前記隔壁部39を打ち抜く為に要する力が徒に大きくなる可能性がある。但し、この隔壁部39の軸方向厚さT39を過度に薄くした場合、前記第一中間素材11aの中心から半径50%までの中央寄り円柱状部分に存在する中心側金属材料28の、径方向外方への移動量が多くなる事に伴い、前記中間部金属材料29の径方向外方への移動量が多くなり、この中間部金属材料29を前記両外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられなくなる可能性がある。従って、前記隔壁部39の軸方向厚さT39は、上述の条件(T39≦0.3L11)を満たした上で、前記中心側金属材料28の移動量を適切な量に抑えられる範囲で設計的に定める。
この様な第二中間素材12aは、図示しないカウンターパンチにより前記隔壁部39を上方に押圧する等により、前記フローティングダイス31から取り出した後、前述した従来の製造方法の場合と同様の打ち抜き加工とローリング加工とを施す事により、図1の(F)及び図2に示す様な、第四中間素材26aとする。このうちの打ち抜き加工では、前記第二中間素材12aを図示しない受型の内周面に保持した状態で、この第二中間素材12aの内径側に図示しない打ち抜きパンチを押し込み、前記隔壁部39を打ち抜き除去する。この様な打ち抜き工程により、図1の(E)に示す様な、略円筒状の、前記第三中間素材25aとする。次いで、前記ローリング加工では、図示しない1対のローラによりこの第三中間素材25aの内外両周面をこれら両ローラの周面に見合う形状に塑性変形させて、前記第四中間素材26aとする。
この第四中間素材26aは、完成後の外輪3{図1の(F)及び図2の鎖線参照}よりも厚肉である。そこで、この第四中間素材26aに、所定の切削(旋削)加工、熱処理及び研削加工を施し、前記外輪3として完成する。図1及び図3に、加工の進行に伴う、中心側、中間部、外径側各金属材料28〜30の分布状態の変化状況を、図1の(F)及び図2に、前記第四中間素材26aの段階での、前記各金属材料28〜30の分布状態と完成後の外輪3の断面形状とを示している。
これら各図から明らかな通り、本例の外輪3の製造方法によれば、この外輪3の内周面の軸方向に離隔した2箇所位置に形成した1対の外輪軌道2、2のうち、少なくとも転動体荷重が作用する部分に、各図に斜格子で示した、前記原素材10のうちで清浄度の高い中間円筒状部分27の中間部金属材料29を露出させられる。特に本例の場合、前記第一中間素材11aから前記第二中間素材12aへの加工を、前記フローティングダイス31を使用し、前記前後方同時押出加工により行う為、前記第二中間素材12aを軸方向に関してほぼ対称な形状とする事ができる。この理由に就いて、図1及び図3に加え、図4を参照しつつ、説明する。即ち、前後方同時押出加工を、図4に示す様な、円形で、上面にダイス側円形凸部34aを設けた底板部15aと、この底板部15aの外周縁部から上方に立上った(下端部内周縁をこの底板部15aの外周縁部に支持固定した)周壁部16aとから成るダイス13aを使用して行った場合、前記第一中間素材11aを構成する金属材料の移動を、押圧パンチ33の押し込み方向両側に均等に行い難い。即ち、この金属材料の移動量は、前記第一中間素材11aの外周面と、前記周壁部16aの内周面との間に作用する摩擦の影響により、図4の(B)に示す様に、前記押圧パンチ33の押し込み方向前方でこの押し込み方向後方よりも小さくなる。これに対し、本例の場合、図1の(C)、(D)に示す様な、前記フローティングダイス31を使用し、前記押圧パンチ33の押し込みに伴ってこのフローティングダイス31を構成する周壁部32を、前記弾性部材45、45の弾力に抗して下方(前記押圧パンチ33の押し込み方向前方)に変位させる為、前記金属材料をこの押圧パンチ33の押し込み方向両側にほぼ均等に移動させる事ができる。この結果、前記第二中間素材12aを軸方向に関してほぼ対称な形状とする事ができる。
又、本例の場合、上述の様に、前記第一中間素材11aから前記第二中間素材12aへの加工を、前記前後方同時押出加工により、これら両素材11a、12aの軸方向に関してほぼ対称な状態で行うと共に、前記第一中間素材11aの両端面を軸方向両側から押圧する、前記ダイス側円形凸部34及びパンチ側円形凸部37の先端面の直径を、前記第一中間素材11aを構成する中間円筒状部分27の据え込み加工後の外径以上としている。この為、図1の(C)〜(E)及び図2に示す様に、清浄度の高い中間部金属材料29を、複列の外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられる。即ち、本例の場合、前記ダイス側円形凸部34及びパンチ側円形凸部37の先端面と、前記第一中間素材11aの両端面との間に摩擦が作用する為、この第一中間素材11aの両端面でこの第一中間素材11aを構成する金属材料が殆ど移動せず、中間部金属材料29の移動量を適切な大きさに規制できる。これに対し、図5に示す様に、前記前後方同時押出加工に使用するフローティングダイス31a及び押圧パンチ33aとして、ダイス側円形凸部34b及びパンチ側円形凸部37aの先端面の直径d34b、d37aが、中間円筒状部分27の据え込み加工後の外径d11よりも小さいものを使用した場合、中間部金属材料29の移動量を適切に規制できず、図5の(B)に示す様に、この中間部金属材料29が径方向外方に向け大きく(過度に)移動してしまう。この結果、清浄度の高い中間部金属材料29を、複列の外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられなくなったり、仕上加工での切削量が増大して、前記外輪3の製造コストが増大する。
以上の様に、本例の軸受外輪の製造方法によれば、清浄度の高い中間部金属材料29を、複列の外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられて、これら両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を十分に確保できる。そして、例えばこれら両外輪軌道2、2を備えた外輪3を含む、車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度を、より向上させられる。
[実施の形態の第2例]
図6は、請求項2〜4に対応する、本発明の実施の形態の第2例を示している。本例の場合には、前述の図1〜3に記載した実施の形態の第1例で、図1の(C)→(D)で行う、前後方同時押出加工に代え、図6の(C)→(D)に示した前方押出加工、及び同図の(E)→(F)に示した後方押出加工を行う。本例の場合、これら前方押出加工及び後方押出加工を採用した点以外は、前記実施の形態の第1例の製造方法と同様である。
前記実施の形態の第1例の場合、ビヤ樽型の第一中間素材11aに前後方同時押出加工を施し、この第一中間素材11aを構成する金属材料を、押圧パンチ33の押し込み方向両側にほぼ均等に移動させる事で、第二中間素材12aとする。但し、前記実施の形態の第1例の場合には、前記第一中間素材11aの外周面と、フローティングダイス31の周壁部32の内周面との間の摩擦が過度に大きくなると、前記金属材料の移動を均等に行い難くなる。即ち、前記第一中間素材11aの外周面と、前記周壁部32の内周面との間に作用する摩擦が大きくなった場合、前記金属材料の移動量は、前記押圧パンチ33の押し込み方向前方でこの押し込み方向後方よりも小さくなる。この押圧パンチ33を大きな力で押し込めば、前記金属材料を、この押し込み方向前方に存在する円筒状成形空間36内全体に進入させる(行き渡らせる)事ができるが、プレス加工機が大型化したり、前記押圧パンチ33の外周面と前記周壁部32の内周面との微小隙間に前記金属材料の一部が入り込んで、当該部分にバリが形成される可能性がある。尚、前記摩擦の大きさは、前記中間素材11aを構成する金属材料の材質、前記フローティングダイス31の周壁部32の内周面の性状等により異なる。
これに対し、本例の場合、図6の(B)に示した第一中間素材11aに、前記前方押出加工を施して、図6の(D)に示した予備中間素材40に加工する。この様な前方押出加工では、フローティングダイス31と第一押圧パンチ41とを使用して、前記第一中間素材11aの径方向中央寄り部分を軸方向に押し潰し、金属材料を径方向外方に移動させつつ、前記第一押圧パンチ41の押し込み方向前方(下方)に移動させる。前記フローティングダイス31は、前記実施の形態の第1例の製造方法で使用するもの{図1の(C)、(D)参照}と同様に、円筒状で、下方に向いた大きな力が加わった場合に下降する様に、弾性部材45、45により上方に向いた弾力を付与された周壁部32と、この周壁部32の底部に配置され、上面中央部にこの周壁部32の高さ寸法の1/2未満の高さ寸法を有するダイス側円形凸部34とを設けた底板部35とを備える。一方、前記第一押圧パンチ41は、先端面を平坦面とし、外径を前記周壁部32の内径と実質的に同じとしている。
前記前方押出加工では、先ず、図6の(C)に示す様に、前記第一中間素材11aを前記ダイス側円形凸部34の上面に載置する。そして、この状態から、前記第一押圧パンチ41を下降させ、この第一押圧パンチ41の先端面{図1の(C)、(D)の下端面}により、前記第一中間素材11aを前記フローティングダイス31の底板部35の上面に向けて押し込む。この押し込みの初期段階では、前記第一中間素材11aが拡径しつつ、前記ダイス側円形凸部34の先端面と外周面との連続部に沿って、前記第一押圧パンチ41の押し込み方向前方(下方)に向かって塑性変形する。
そして、前記第一中間素材11aの外周面が前記周壁部32の内周面に当接した後、更に前記第一押圧パンチ41を下降させる事で、前記第一中間素材11aの中央部を下方から押し潰すと共に、この第一中間素材11aの外周面と、前記周壁部32の内周面との間に作用する摩擦に基づき、前記弾性部材45、45の弾力に抗してこの周壁部32を下方に変位させる。そして、押し潰しに伴い径方向外方に押し出された金属材料を、前記第一中間素材11aの径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、前記第一押圧パンチ41の押し込み方向前方(下方)に存在する円筒状成形空間36に移動させる。この様に、この第一押圧パンチ41の押し込み方向前方に移動した金属材料の内外両周面は、前記周壁部32の内周面と前記ダイス側円形凸部34の外周面とで画成される前記円筒状成形空間36に見合った形状となる。この結果、前記前方押出加工により、図6の(B)に示した前記第一中間素材11aが、同図の(D)に示す様な、円柱部42の軸方向片端面(下面)に円形凹部43を設けた、前記予備中間素材40となる。この予備中間素材40は、図示しないカウンターパンチにより前記円形凹部43の底面を上方に押圧する等により、前記フローティングダイス31から取り出す。
次に、前記予備中間素材40に、図6の(E)→(F)に示す様に、後方押出加工を施す事で、第二中間素材12bとする。この様な後方押出加工では、ダイス13bと第二押圧パンチ44とを使用して、前記予備中間素材40の径方向中央寄り部分を軸方向に押し潰し、金属材料を径方向外方に移動させつつ、前記第二押圧パンチ44の押し込み方向後方(上方)に移動させる。前記ダイス13bは有底円筒状で、円形の底板部15bと、この底板部15bの外周縁部から上方に立上った周壁部16bとを備える。このうちの底板部15bの上面中央部には、前記フローティングダイス31の底板部35に設けたダイス側円形凸部34と同様の形状を有する、ダイス側円形凸部34bを設けている。又、前記第二押圧パンチ44は、前記実施の形態の第1例の製造方法で使用する押圧パンチ33{図1の(C)、(D)参照}と同様の形状を有するものであり、先端部に前記ダイス側円形凸部34bを上下方向に反転させた形状を有するパンチ側円形凸部37bを備える。
前記後方押出加工では、先ず、図6の(E)に示す様に、前記予備中間素材40を、前記円形凹部43を下側にして前記ダイス13b内にセットする。そして、この状態から、前記第二押圧パンチ44を下降させ、この第二押圧パンチ44のパンチ側円形凸部37bの先端面{図6の(E)、(F)の下面}により、前記予備中間素材40を前記ダイス13bの底板部15bの上面に向けて押し込む。この押し込みに伴いこの予備中間素材40の中央部を軸方向に押し潰すと共に、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料を、前記予備中間素材40の径方向外寄り部分に存在する金属材料と共に、前記第二押圧パンチ44の押し込み方向後方(上方)に移動させる。この様に、この第二押圧パンチ44の押し込み方向後方に移動した金属材料の内外両周面は、この第二押圧パンチ44の外周面と前記ダイス13bの周壁部16bの内周面とに見合った形状となる。この様な前記後方押出加工により、図6の(D)に示した予備中間素材40が、同図の(G)に示した、円筒部38の軸方向中間部内径側に隔壁部39を設けた、前記第二中間素材12bとなる。そして、この第二中間素材12bに、前記実施の形態の第1例の場合と同様、図6の(G)→(H)に示す打ち抜き加工、同じく(H)→(I)に示したローリング加工を施した後、更に仕上加工を施す事により、図6の(I)に鎖線で示す形状を削り出して、複列玉軸受用の外輪3に加工する。
本例の場合、前記第一中間素材11aを構成する金属材料と、前記フローティングダイス31の内周面との間に作用する摩擦抵抗に拘らず、前記第一中間素材11aを、軸方向に関してほぼ対称な形状を有する、前記第二中間素材12bとする事ができる。又、図6の(G)〜(I)から明らかな通り、清浄度の高い中間部金属材料29を、複列の外輪軌道2、2となる部分全体に亙り露出させられる。従って、上述した実施の形態の第1例の場合と同様に、前記両外輪軌道2、2の転がり疲れ寿命を十分に確保でき、例えばこれら両外輪軌道2、2を備えた外輪3を含む、車輪支持用転がり軸受ユニットの耐久性確保の為の設計の自由度を向上させられる。又、本例の場合、前記前方押出加工及び前記後方押出加工を、製造工程中で前記予備中間素材40の上下方向を反転させる事なく行う事ができる為、前記外輪3の製造コストが徒に増大するのを抑えられる。
上述した実施の形態の各例は、本発明の製造方法により、複列アンギュラ型玉軸受を構成する外輪を造る場合に就いて説明した。これに対して本発明の軸受外輪の製造方法は、複列アンギュラ型円すいころ軸受を構成する外輪を造る場合に利用する事もできる。この場合、外輪の内周面に形成する複列の外輪軌道の幅、仕上加工による削り代等を考慮して、ダイス(フローティングダイス)及び押圧パンチの形状を工夫する。
1 複列アンギュラ型玉軸受
2 外輪軌道
3 外輪
4 内輪軌道
5 内輪
6 玉
7 保持器
8 ハウジング
9 回転軸
10 原素材
11、11a 第一中間素材
12、12a、12b 第二中間素材
13、13a、13b ダイス
14 パンチ
15、15a、15b 底板部
16、16a、16b 周壁部
17 環状凹溝
18 内周面側大径部
19 内周面側小径部
20 内周面側傾斜部
21 外周面側小径部
22 外周面側大径部
23 外周面側傾斜部
24 底部
25、25a、25b 第三中間素材
26、26a、26b 第四中間素材
27 中間円筒状部分
28 中心側金属材料
29 中間部金属材料
30 外径側金属材料
31、31a フローティングダイス
32 周壁部
33、33a 押圧パンチ
34、34a、34b ダイス側円形凸部
35 底板部
36 円筒状成形空間
37、37a、3b パンチ側円形凸部
38 円筒部
39 隔壁部
40 予備中間素材
41 第一押圧パンチ
42 円柱部
43 円形凹部
44 第二押圧パンチ
45 弾性部材
46 成形用空間

Claims (4)

  1. 内周面の軸方向2箇所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備える軸受外輪の製造方法であって、
    金属製で円柱状の原素材を軸方向に押し潰して、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材とする据え込み加工と、
    弾性部材により上方に向いた弾力を付与された周壁部と、この周壁部の底部に配置され、上面中央部に円形凸部を設けた底板部とから構成され、この円形凸部の外周面と前記周壁部の内周面との間を円筒状成形空間としたフローティングダイスと、先端部の外径がこの周壁部の内径よりも小さい押圧パンチとの間で、前記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰し、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料及び前記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料を、前記押圧パンチの押し込み方向前方に存在する前記円筒状成形空間と、この押圧パンチの押し込み方向後方でこの押圧パンチの先端部外周面と前記周壁部の内周面との間に存在する円筒状の空間とに、それぞれ移動させると共に、前記第一中間素材の外周面と前記周壁部の内周面との間に作用する摩擦に基づきこの周壁部を前記弾性部材の弾力に抗して下降させ、円筒部の軸方向中間部の内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とする前後方同時押出加工と、
    前記第二中間素材の隔壁部を打ち抜き除去する事で、全体が円筒状の第三中間素材とする打ち抜き加工と、
    前記第三中間素材の内外両周面を塑性変形させて、外周面が軸方向に関し外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である第四中間素材とするローリング加工と、
    この第四中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に前記両外輪軌道を形成する仕上加工とを
    順次施す軸受外輪の製造方法。
  2. 内周面の軸方向2箇所位置に複列の背面組み合わせ型の外輪軌道を備える軸受外輪の製造方法であって、
    金属製で円柱状の原素材を軸方向に押し潰して、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材とする据え込み加工と、
    弾性部材により上方に向いた弾力を付与された周壁部と、この周壁部の底部に配置され、上面中央部に円形凸部を設けた底板部とから構成され、この円形凸部の外周面と前記周壁部の内周面との間を円筒状成形空間としたフローティングダイスと、外径がこの周壁部の内径と実質的に同じである第一押圧パンチとの間で、前記第一中間素材の中央部を軸方向に押し潰し、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料及び前記第一中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料を、前記第一押圧パンチの押し込み方向前方に存在する前記円筒状成形空間に移動させると共に、前記第一中間素材の外周面と前記周壁部の内周面との間に作用する摩擦に基づきこの周壁部を前記弾性部材の弾力に抗して下降させ、円柱部の軸方向片端面に開口する円形凹部を設けた予備中間素材とする前方押出加工と、
    有底円筒状で、底部内面の形状を前記予備中間素材の軸方向片端部に見合う形状としたダイスと、先端部の外径がこのダイスの内径よりも小さい第二押圧パンチとの間で前記予備中間素材の中央部を軸方向に押し潰し、この押し潰しに伴って径方向外方に押し出された金属材料及び前記予備中間素材の径方向外寄り部分に存在する金属材料を、前記第二押圧パンチの押し込み方向後方でこの第二押圧パンチの先端部外周面と前記ダイスの内周面との間に存在する円筒状の空間に移動させて、円筒部の軸方向中間部の内径側に隔壁部を設けた第二中間素材とする後方押出加工と、
    この第二中間素材の隔壁部を打ち抜き除去する事で、全体が円筒状の第三中間素材とする打ち抜き加工と、
    前記第三中間素材の内外両周面を塑性変形させて、外周面が軸方向に関し外径が実質的に変化しない円筒面であり、内周面が、軸方向中間部の内径が最も小さく、この軸方向中間部の両側部分が軸方向両端部に向かうに従って内径が漸次大きくなる方向に傾斜した形状である第四中間素材とするローリング加工と、
    この第四中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に前記両外輪軌道を形成する仕上加工とを
    順次施す軸受外輪の製造方法。
  3. 前記第一中間素材の軸方向長さを、前記原素材の軸方向長さの70%以下にする、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した軸受外輪の製造方法。
  4. 前記第二中間素材の隔壁部の軸方向に関する厚さを、前記第一中間素材の軸方向長さの30%以下にする、請求項1〜3のうちの何れか1項に記載した軸受外輪の製造方法。
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