JP2015107495A - 転がり軸受ユニット用外輪の製造方法及び転がり軸受ユニット用外輪 - Google Patents

転がり軸受ユニット用外輪の製造方法及び転がり軸受ユニット用外輪 Download PDF

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Abstract

【課題】内周面に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向中間部に外向フランジを、それぞれ有する転がり軸受ユニット用外輪に関し、低コストで実施でき、しかも、前記両外輪軌道の転がり疲れ寿命を十分に確保できる構造及びその製造方法を提供する。【解決手段】第二中間素材26の軸方向外半部の外周面を、軸方向外側から順番に、第一急傾斜面部17と緩傾斜面部18と第二急傾斜面部19とを組み合わせた複合傾斜面部16とする。(C)→(D)に示す仕上成形工程では、前記第二中間素材26の軸方向外半部の表面形状を変化させず、外周面の軸方向内寄り部分に前記静止側フランジ6aを形成して第三中間素材27とする。【選択図】図2

Description

この発明は、例えば自動車の車輪及びブレーキディスク等の制動用回転部材を懸架装置に対して回転自在に支持する為に利用する転がり軸受ユニットを構成する、転がり軸受ユニット用外輪及びその製造方法の改良に関する。
自動車の車輪は、転がり軸受ユニットにより懸架装置に対して回転自在に支持する。図4に示した転がり軸受ユニット1は、従動輪(FR車及びMR車の前輪、FF車の後輪)を車体の懸架装置に対し回転自在に支持する為のもので、外輪2と、ハブ3と、複数個の転動体4、4とを備える。このうちの外輪2は、内周面の軸方向2箇所位置に複列の外輪軌道5a、5bを、外周面の軸方向内端寄り部分(軸方向に関して「内」とは、自動車への組み付け状態で車両の幅方向中央側を言い、図1、図4及び図5の右側、並びに、図2及び図3の上側。反対に、自動車への組み付け状態で車両の幅方向外側となる図1、図4及び図5の左側、並びに、図2及び図3の下側を、軸方向に関して「外」と言う。本明細書全体で同じ。)に静止側フランジ6を、それぞれ有する。又、前記ハブ3は、外周面の軸方向外端寄り部分に回転側フランジ7を、同じく軸方向中間部乃至内端寄り部分の軸方向2箇所位置に複列の内輪軌道8a、8bを、それぞれ有する。そして、これら両内輪軌道8a、8bと前記両外輪軌道5a、5bとの間に前記各転動体4、4を、両列毎に複数個ずつ配置して、前記外輪2の内径側での前記ハブ3の回転を可能としている。使用状態では、前記外輪2の静止側フランジ6を、懸架装置を構成するナックルに支持固定すると共に、前記ハブ3の回転側フランジ7に、車輪及び制動用回転部材を結合固定する。
上述の様な転がり軸受ユニット1を構成する外輪2は、円柱状の金属素材(原素材)に鍛造加工を施して得た最終中間素材に、切削加工及び熱処理、並びに研削加工等の仕上加工を施す事によって造られる。前記円柱状の原素材は、鉄鋼メーカーで押し出し成形された、軸方向に直角な断面形状が円形である長尺材を所定長さに切断する事によって造られる。この様な原素材の組成(清浄度)が均一でない事は、特許文献1等に記載されて、従来から知られている。即ち、前記原素材のうちで、径方向に関して中心側40%の範囲(中心からの半径が40%までの範囲)、及び、径方向に関して外側20%の範囲(中心からの半径が80%よりも外側の範囲)には、それぞれ酸化物系非金属介在物等が多く存在する事により、清浄度が低い事が知られている。そして、この様な清浄度が低い金属材料が、前記外輪2の内周面に設けた複列の外輪軌道5a、5bのうち、特に前記各転動体4、4の転動面が転がり接触する部分に露出すると、当該部分の転がり疲れ寿命の確保が難しくなる。
これらの事を考慮し、且つ、前記原素材中の酸化物系非金属介在物等の分布のばらつきや、製造作業時に発生する押圧力等の各種ばらつきを考慮すると、前記原素材のうちで、径方向に関して中心側50%の範囲(中心からの半径が50%までの範囲)、及び、径方向に関して外側30%の範囲(中心からの半径が70%よりも外側の範囲)に存在する金属材料が、前記両外輪軌道5a、5bのうちで、少なくとも前記各転動面が転がり接触する部分に露出しない様にする事が好ましい。逆に言えば、前記両外輪軌道5a、5bのうちで、少なくとも前記各転動面が転がり接触する部分には、前記原素材のうちで、中心からの半径が50%〜70%の範囲に存在する、清浄度の高い金属素材を露出させる事が好ましい。
この様な事情に鑑みて、前記特許文献1には、前記原素材を前記最終中間素材(第五中間素材25)に加工する過程で、外周面に外向フランジを持たない中間素材(第二中間素材22)を形成する方法が記載されている。この様な特許文献1に記載された転がり軸受ユニットの外輪の製造方法によれば、静止側フランジ6の内径側に存在する外輪軌道5a、及び、この静止側フランジ6から離れた部分に存在する外輪軌道5bの何れに就いても、それぞれの表面に、前記原材料を構成する金属材料のうち、清浄度が高い部分を露出させられる。この為、前記両外輪軌道5a、5bの何れに就いても、転がり疲れ寿命を確保し易い。
図5に示した転がり軸受ユニット1aは、特許文献2に記載された、駆動輪(FF車の前輪、FR車及びRR車の後輪、4WD車の全車輪)用のもの(駆動輪支持用転がり軸受ユニット)である。この図5に示した転がり軸受ユニット1aの場合には、軸方向内側の列(内側列)の転動体4a、4aのピッチ円直径を、軸方向外側の列(外側列)の転動体4b、4bのピッチ円直径よりも大きくしている。この為に、外輪2aの内周面に設けた複列の外輪軌道5c、5dのうち、軸方向内側の外輪軌道5cの直径を、軸方向外側の外輪軌道5dの直径よりも大きくしている。そして、前記外輪2aの内径側に、ハブ3aを配置している。
又、このハブ3aは、第一、第二の内輪部材9、10を結合して成る。このうちの第一の内輪部材9は、外周面の軸方向中間部で前記軸方向内側の外輪軌道5cと対向する部分に軸方向内側の内輪軌道8cを、軸方向内端部に等速ジョイント11の外輪となるハウジング部12を、軸方向外端部にスプライン軸13を、それぞれ有する。又、前記第二の内輪部材10は、前記外輪2aの軸方向外方に突出した部分の外周面に回転側フランジ7を設け、前記軸方向外側の外輪軌道5dと対向する部分の外周面に軸方向外側の内輪軌道8dを、中心部に前記スプライン軸13とスプライン係合するスプライン孔14を、それぞれ設けている。又、前記両内輪軌道8c、8dのうち、軸方向内側の内輪軌道8cの直径を、軸方向外側の内輪軌道8dの直径よりも大きくしている。そして、前記両外輪軌道5c、5dとこれら両内輪軌道8c、8dとの間にそれぞれ複数個ずつの転動体4a、4bを設けている。
上述の様な両列の転動体4a、4bのピッチ円直径(PCD)を異ならせた構造(異径PCD構造)の駆動輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、前記内側列の各転動体4a、4aのピッチ円の直径を前記外側列の各転動体4b、4bのピッチ円の直径よりも大きくしている為、前記外輪2aの軸方向内端部に設けたナックルパイロット部15の内径が、この外輪2aの外周面のうち、静止側フランジ6よりも軸方向外寄り部分の外径よりも大きくなっている。
又、外側列の転動体のピッチ円直径と、内側列の転動体のピッチ円直径とが互いに等しい転がり軸受ユニットの場合にも、例えば異なる車種同士の間で懸架装置のナックルを共通化する等を目的として、外輪の軸方向内端部に設けたナックルパイロット部の内径を、この外輪の外周面のうち、静止側フランジを設けた部分よりも軸方向外寄り部分の外径よりも大きくする事がある。
何れにしても、外輪の外周面のうちの軸方向外半部には、この外輪を鍛造により加工する際に、この外輪から金型を抜き取り易くする為に抜き勾配を設けている。従って、この外輪の軸方向内端部に設けたナックルパイロット部の内径が、この外輪の外周面の軸方向外寄り部分の外径よりも大きい場合、軸方向内側の外輪軌道と、この外輪の外周面と前記静止側フランジの軸方向内側面との連続部との間部分の肉厚が小さくなる。この間部分の肉厚が小さくなると、前記特許文献1に記載の製造方法により、前記外輪を、外周面に外向フランジを備えない中間素材に鍛造加工を施して、外向フランジを備える最終中間素材を造る際に、この中間素材の軸方向外寄り部分の中心部乃至径方向中間部に存在する金属材料の前記外向フランジに向けて移動する移動量が少なくなる。この結果、この金属材料のうち、清浄度の高い部分を複列の外輪軌道(特に、軸方向内側の外輪軌道)に露出させる事が難しくなる。
特開2008−126286号公報 特開2009−292217号公報
本発明は、上述の様な事情に鑑み、内周面に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向中間部に外向フランジを、それぞれ有する転がり軸受ユニット用外輪に関し、低コストで実施でき、しかも、前記両外輪軌道の転がり疲れ寿命を十分に確保できる構造及びその製造方法を実現すべく発明したものである。
本発明の対象となる転がり軸受ユニット用外輪は、内周面に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向中間部に外向フランジを、それぞれ有する。
特に、請求項1に記載した転がり軸受ユニット用外輪の製造方法に於いては、据え込み工程と、荒成形工程と、仕上成形工程とを備える。このうちの据え込み工程は、金属製で円柱状の原素材を軸方向に押し潰す事により、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材を得る。
又、前記荒成形工程は、前記第一中間素材を塑性変形させる事により、軸方向両端面に開口して間部分を隔壁部により仕切られた1対の凹部を有し、軸方向片半部の外周面を、軸方向片側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜する複合傾斜面部とした第二中間素材を得る。このうちの複合傾斜面部は、軸方向片側から順番に、前記外輪の中心軸に対する傾斜角度が大きな第一急傾斜面部と、同じく小さな緩傾斜面部と、同じく大きな第二急傾斜面部とを組み合わせたものである。そして、このうちの緩傾斜面部と前記隔壁部の軸方向片側面とを、径方向に重畳させる。
又、前記仕上成形工程は、前記第二中間素材を塑性変形させる事により、前記隔壁部を、厚さ寸法を縮める方向に押し潰すと共に、この隔壁部よりも軸方向他端寄り部分の外周面に前記外向フランジを形成して第三中間素材を得る。
上述の様な本発明の転がり軸受ユニット用外輪の製造方法を実施する場合に好ましくは、請求項2に記載した発明の様に、打ち抜き工程と軌道仕上工程とを備えるものとする。このうちの打ち抜き工程は、前記第三中間素材の隔壁部を打ち抜き除去して、外周面に前記外向フランジを備えた円筒状の最終中間素材を得る。
又、前記軌道仕上工程は、この最終中間素材の内周面に切削加工や研削加工等を施してこの内周面を削り取る事により、この内周面に前記両外輪軌道を形成する。
そして、前記両外輪軌道のうち、軸方向片側に存在する外輪軌道の肩部と前記緩傾斜面部とを、径方向に重畳させる。
又、好ましくは請求項3に記載した発明の様に、前記第三中間素材の軸方向他端側の開口の内径を、軸方向片半部の外径よりも大きくする。
又、請求項4に記載した、転がり軸受ユニット用外輪は、外周面のうちの軸方向片半部を、軸方向片側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した複合傾斜面部としている。この傾斜面部を、軸方向片側から順番に、前記外輪の中心軸に対する傾斜角度が大きな第一急傾斜面部と、同じく小さな緩傾斜面部と、同じく大きな第二急傾斜面部とを組み合わせたものとしている。
この様な請求項4に記載した転がり軸受ユニット用外輪を実施する場合に好ましくは、請求項5に記載した発明の様に、前記両外輪軌道のうち、軸方向片側の外輪軌道の肩部と、前記緩傾斜面部とを径方向に重畳させる。
又、好ましくは請求項6に記載した発明の様に、軸方向他側開口の内径を、軸方向片半部の外径よりも大きくする。
上述の様に構成する本発明の転がり軸受ユニット用外輪及びその製造方法によれば、複列の外輪軌道の転がり疲れ寿命を十分に確保できる。
即ち、本発明の場合、円柱状の原素材を、外周面に外向フランジを備える第三中間素材に加工する過程で、外周面に外向フランジを持たない第二中間素材の軸方向片半部の外周面に、軸方向片側から順番に、第一急傾斜面部と緩傾斜面部と第二急傾斜面部とを組み合わせた複合傾斜面部を形成し、このうちの緩傾斜面部と、隔壁部の軸方向片側面とを径方向に重畳させている。この為、例えば、請求項3若しくは請求項6に記載した発明の様に、軸方向他側開口の内径を、軸方向片半部の外径よりも大きくした場合にも、前記原素材のうちで清浄度の高い径方向中間部(中間円筒状部分)の金属材料を、前記両外輪軌道部分に露出させられる。この結果、これら両外輪軌道の転がり疲れ寿命を十分に確保できる。
本発明の実施の形態の1例に係る転がり軸受ユニット用外輪を組み込んだ、転がり軸受ユニットを示す断面図。 前記転がり軸受ユニット用外輪の製造方法を工程順に示す、原素材乃至第五中間素材の断面図。 荒成形工程の実施状況を工程順に示す断面図。 転がり軸受ユニットの従来構造の第1例を示す断面図。 同第2例を示す断面図。
図1〜3は、本発明の実施の形態の1例を示している。このうちの図1は、本発明の対象となる外輪2bを備えた転がり軸受ユニット1bを示している。尚、本例の特徴は、この外輪2bの内周面に設けた複列の外輪軌道5a、5bの表面に清浄度の高い金属材料を露出させ、当該部分の転がり疲れ寿命を確保する為の構造及びその製造方法にある。その他の部分の構造及び作用は、前述の図4〜5に示した従来構造の第1〜2例と同様であるから、重複する説明は省略若しくは簡略にし、以下、本例の特徴部分を中心に説明する。
前記外輪2bは、内周面の軸方向2箇所位置に複列の外輪軌道5a、5bを、外周面のうち、軸方向に関する位置がこれら両外輪軌道5a、5bのうちの軸方向内側の外輪軌道5aと一致する部分に、特許請求の範囲に記載した外向フランジである静止側フランジ6aを、それぞれ有する。又、前記外輪2bの軸方向内端部には、懸架装置を構成するナックルの支持孔に内嵌し、この懸架装置に対する前記転がり軸受ユニット1bの位置決めを図る為のナックルパイロット部15aを設けている。本例の場合、このナックルパイロット部15aの内径を、前記外輪2bの軸方向外半部(前記静止側フランジ6aを設けた部分よりも軸方向外寄り部分)の最大外径よりも大きくしている。又、前記外輪2bの外周面のうち、前記静止側フランジ6aを設けた部分よりも軸方向外寄り部分(軸方向外半部)を、軸方向外側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した複合傾斜面部16とし、この複合傾斜面部16を、軸方向外側から順番に、第一急傾斜面部17と、緩傾斜面部18と、第二急傾斜面部19とを組み合わせた複合傾斜面としている。本例の場合、このうちの第一、第二両急傾斜面部17、19の前記外輪2bの中心軸に対する傾斜角度を1.72度以上2.29度以下に、前記緩傾斜面部18の前記外輪2bの中心軸に対する傾斜角度を0.29度以上0.57度以下に、それぞれ設定し、前記複合傾斜面部16全体の傾斜角度の平均値を1.15度以上1.72度以下に設定している。そして、前記両外輪軌道5a、5bのうちの軸方向外側の外輪軌道5bの溝肩部(軸方向内端縁)20を、前記緩傾斜面部18と径方向に重畳させている。
尚、図示の例の場合、ハブ3bの軸方向内端部にエンコーダ21を外嵌固定すると共に、樹脂製のカバー22を前記ナックルパイロット部15aに内嵌している。そして、このカバー22の保持部23に、図示しないセンサを包埋したセンサユニットを組み付け、このセンサユニットの検出部を、前記エンコーダ21の被検出面に近接対向させる事で、前記ハブ3bの回転速度等、前記車輪支持用転がり軸受ユニット1bの状態量を測定可能としている。この様な状態量測定装置の構造に就いては、本発明の要旨と関係しない為、詳しい説明は省略する。
上述の様な外輪2bは、図2に示す手順で造られる。本例の製造方法の場合、図2の(A)に示した、中炭素鋼、軸受鋼、浸炭鋼の如き鉄系合金等の、塑性加工後に焼き入れ硬化可能な、金属製で断面円形の長尺材を所定長さに切断する事で造られた円柱状の原素材24に、順次、塑性加工或いは打ち抜き加工を施す。そして、(B)に示した第一中間素材25、(C)に示した第二中間素材26、(D)に示した第三中間素材27、(E)に示した第四中間素材28を経て、(F)に示した、特許請求の範囲に記載した最終中間素材である、第五中間素材29を得る。更に、この第五中間素材29に、必要とする切削加工及び熱処理、並びに研削加工を施して前記外輪2bとする。尚、以下の加工は、基本的には総て熱鍛造間若しくは温間鍛造で行うが、この外輪2bが小型で加工荷重が小さくて済む場合等、可能であれば、後処理の手間が少なく、寸法精度も確保し易い冷間鍛造で行っても良い。
先ず、据え込み工程で、図2の(A)→(B)に示す様に、前記原素材24を軸方向に押し潰しつつ外径を拡げ、この原素材24を、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きい(母線形状が略部分円弧形である)ビヤ樽型の、前記第一中間素材25とする。
次の荒成形工程で、図2の(B)→(C)に示す様に、前記第一中間素材25を前記第二中間素材26に塑性加工する。この様な荒成形工程では、この第一中間素材25の径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮して、金属材料を径方向外方に移動させつつ、軸方向両側(前後両方向)に移動させる。
前記第一中間素材25の径方向中央寄り部分を軸方向に圧縮する加工は、この第一中間素材25を、前記第二中間素材26の外周面形状に対応する(凹凸が逆になった)内周面形状を有する荒成形用ダイス内にセットした状態で、互いに同心に配置した1対の荒成形用押圧パンチ同士の間で前記第一中間素材25の軸方向両端面中央部を押圧する事により行う。そして、前記荒成形用ダイスの内周面と、前記両荒成形用押圧パンチの外面(外周面及び先端面)とにより囲まれたキャビティ内に充満させ、前記第二中間素材26とする。この第二中間素材26は、軸方向両端面に開口する1対の凹部30a、30bと、これら両凹部30a、30b同士の間に存在する隔壁部31とを備え、軸方向外半部(図2の下半部)の外周面を、軸方向外側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した複合傾斜面部16としている。この複合傾斜面部16は、軸方向外側から順番に、第一急傾斜面部17と、緩傾斜面部18と、第二急傾斜面部19とを組み合わせた複合傾斜面である。そして、前記隔壁部31の軸方向外側面の軸方向位置を、前記緩傾斜面部18の軸方向中間部としている(これら隔壁部31の軸方向外側面と、緩傾斜面部18とを、径方向に重畳させている)。又、本例の場合、前記両凹部30a、30bの形状をそれぞれ、奥半部に設けた内径が小さい小径部32a、32bと、開口側半部に設けた内径が大きい大径部33a、33bとを連続させた段付形状としている。この為に、前記両荒成形用押圧パンチとして、先半部の外径が小さく、基半部の外径が大きい、段付のものを使用している。
上述の様にして行う据え込み工程で、前記第一中間素材25を前記第二中間素材26に塑性加工する事に伴い、前記原素材24のうち、径方向に関して、中心から50%未満の範囲に存在していた、清浄度の低い中心部金属材料35と、中心からの半径が50%〜70%の範囲に存在していた、清浄度の高い中間部金属材料36と、中心から70%よりも外側の範囲に存在していた、清浄度の低い外側部金属材料37との分布状況が、図2の(B)→(C)に示す様に変化する。即ち、本例の場合には、前記両荒成形用押圧パンチとして、先半部の外径が、前記原素材24の外径の50%よりも大きく、70%未満のものを使用し、前記第二中間素材26の段階で、前記両凹部30a、30bのうちの、前記両外輪軌道5a、5bを形成すべき部分に、清浄度が高い前記中間部金属材料36が露出する様にしている。
上述の様にして造った、前記第二中間素材26は、続く仕上成形工程で、前記第三中間素材27とする。この仕上成形工程は、図3に示した加工装置を使用して行う。この加工装置は、押圧パンチ38と、カウンターパンチ39と、上側ダイス40と、下側ダイス41と、押し出しパンチ42を備える。これら各構成部材38〜42のうち、押圧パンチ38と上側ダイス40とは、プレス加工機のラムの下面に固定されており、このラムと共に昇降する。
一方、前記カウンターパンチ39と前記下側ダイス41とは、前記プレス加工機の支持台の上面に、互いに同心に固定されており、互いの間に、前記第二中間素材26の軸方向外半部の外面形状に見合う(凹凸が逆である)内面形状を有する下側キャビティ43を設けている。即ち、前記カウンターパンチ39を、先半部の外径が小さく、基半部の外径が大きい段付のものとすると共に、前記下側ダイス41の内周面を、前記複合傾斜面部16に見合う(凹凸が逆である)複合傾斜面としている。前記カウンターパンチ39とこの下側ダイス41とは、前記仕上成形工程の進行に伴って相対変位する事はない。更に、円柱状の前記押し出しパンチ42を、前記カウンターパンチ39の中央部に配置している。この様な前記押し出しパンチ42は、前記プレス加工機の支持台に対し、昇降可能に支持されている。そして、この押し出しパンチ42が下降し切った状態で、この押し出しパンチ42と前記カウンターパンチ39の上端面同士の軸方向位置を互いに一致(同一平面上に位置)させ、前記下側キャビティ43の内面形状が、前記第二中間素材26の軸方向外半部の外面形状に見合う形状になる様にしている。
上述の様な構成を有する、前記加工装置を使用して、前記第二中間素材26に前記仕上成形工程を施す場合には、先ず、前記両凹部30a、30bのうちの軸方向外側(下側)の凹部30aに、前記カウンターパンチ39を、この下側の凹部30aの変形に結び付く様な隙間を介在させない状態で密に内嵌すると共に、前記第二中間素材26の軸方向外側を、前記下側ダイス41に内嵌する。その後、図3の(A)→(B)に示す様に、前記押圧パンチ38と前記上側ダイス40とを下降させる。この下降に伴って前記押圧パンチ38が、軸方向内側(上側)の凹部30bの開口部の内径を押し拡げると共に、前記隔壁部31の軸方向内側面を凹ませ、この隔壁部31の軸方向寸法を縮める。これと同時に、前記上側ダイス40が、前記第二中間素材26の一部、即ち、軸方向内端部の外径寄り部分を押圧して、径方向外方に塑性変形させる。そして、前記上側ダイス40の下面と前記下側ダイス41の上面との間に存在する成形用空間44に金属材料を移動させて静止側フランジ6aを形成し、図2の(D)に示す様な、前記第三中間素材27とする。尚、本例の場合、前記仕上成形工程では、前記複合傾斜面部16を含む前記第二中間素材26の軸方向外半部の表面形状は変化させない。
この様にして行う前記仕上成形工程に伴って、前記各金属材料35〜37の分布状況が、図2の(C)→(D)に示す様に変化する。本例の場合、前記第二中間素材26の軸方向外半部の外周面を、複合傾斜面部16としている為、この第二中間素材26内での前記各金属材料35〜37の流れを整えられ、図2の(D)に示す様に、前記第三中間素材27のうち、後から外輪軌道5a、5bを形成すべき部分に、前記中間部金属材料36を存在させられる。この理由に就いて、次に説明する。
先ず、前記複合傾斜面部16のうち、傾斜角度が小さい緩傾斜面部18と、前記隔壁部31の軸方向外側面とを径方向に重畳させている。これにより、前記下側ダイス41の内周面と前記第二中間素材26の外周面との間の摩擦抵抗を、前記隔壁部31の軸方向外側面の外径側部分で大きくしている。この為、前記仕上成形工程に伴い、この隔壁部31から軸方向外側に向かって移動する、前記第二中間素材26を構成する金属材料の移動量を少なく抑えられる。又、この第二中間素材26の外周面のうちの軸方向外端部を、傾斜角度が大きい第一急傾斜面部17とし、前記摩擦抵抗をこの軸方向外端部で小さくしている。従って、この軸方向外端部に存在する前記外側部金属材料37が、前記仕上成形工程に伴い軸方向外側に向かって移動し易い。この結果、前記第三中間素材27のうち、後から軸方向外側の外輪軌道5bを形成すべき部分に、前記中間部金属材料36を残留させられる。
これに対し、前記複合傾斜面部16のうち、前記緩傾斜面部18と軸方向内側に隣接する部分を、傾斜角度が大きい第二急傾斜面部19としている。これにより、前記摩擦抵抗を前記第二中間素材26の軸方向中間部(この第二中間素材26の隔壁部31の軸方向内半部の外径側部分)で小さくして、前記仕上成形工程の際に、前記隔壁部31から前記静止側フランジ6に向かって移動する、前記第二中間素材26を構成する金属材料の移動量を多くできる。特に本例の場合には、前記緩傾斜面部18と前記隔壁部31の軸方向外側面とを径方向に重畳させ、前記摩擦抵抗をこの隔壁部31の軸方向外半部の外径側部分で大きくし、前記金属材料の軸方向外方への移動を抑えている。この為、この隔壁部31から前記静止側フランジ6に向かって移動する金属材料は、前記上側の凹部30bの外径寄り部分を移動する。この結果、前記第三中間素材27のうち、後から軸方向内側の外輪軌道5aを形成すべき部分に、前記中間部金属材料36を残留させられる。
尚、本例の場合には、前記第三中間素材27の加工完了状態で、前記上側ダイス40の下面と前記下側ダイス41の上面とが互いに当接せず、これら両面同士の間に隙間45が介在する様にしている。この隙間45には、金属材料の余肉が入り込んで、バリ46を形成する。この様にして造られた、前記静止側フランジ6の外周面からバリ46を突出させた、前記第三中間素材27は、前記押圧パンチ38及び前記上側ダイス40を上昇させてから、前記押し出しパンチ42を上昇させることで、前記加工装置から取り出す。
本例の場合、前記第三中間素材27の軸方向外半部の外周面を、軸方向外側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した複合傾斜面部16としている。従って、前記第三中間素材27を前記下側ダイス41から取り出す際に、この複合傾斜面部16が抜き勾配として機能し、この第三中間素材27をこの下側ダイス41から取り出し易くできる。特に本例の場合、前記複合傾斜面部16を、軸方向外側から順番に、第一急傾斜面部17と緩傾斜面部18と第二急傾斜面部19とを組み合わせた複合傾斜面としている為、前記外輪2bの製造コストの増大を抑えつつ、前記下側ダイス41の耐久性を確保できる。即ち、前記第三中間素材27の軸方向外半部の外周面を軸方向に亙り、傾斜角度が小さい緩傾斜面とした場合、この軸方向外半部の外周面と前記下側ダイス41の内周面との間の摩擦抵抗が大きくなり、前記仕上成形工程の際に、この下側ダイス41に加わる力が大きくなると共に、前記第三中間素材27をこの下側ダイス41から抜き取る際に、この下側ダイス41に加わる力が大きくなる。この為、この下側ダイス41の耐久性の確保が難しくなる。これに対し、前記第三中間素材27の軸方向外半部の外周面を軸方向に亙り、傾斜角度が大きい急傾斜面とした場合、前記下側ダイス41に加わる荷重を小さく抑える事ができる。但し、この場合、前記第三中間素材27の軸方向外半部の肉厚が過度に厚くなって、前記外輪2bが重量が徒に増大したり、仕上工程での切削量が増大して、この外輪2bの製造コストが増大する。これに対し、本例の場合、前記複合傾斜面部16を複合面としている為、前記第三中間素材27の軸方向外半部の肉厚が過度に厚くなるのを防止しつつ、前記下側ダイス41に加わる力を小さく抑えられる。
上述の様な第三中間素材27は、図2の(D)→(E)に示す様に、前記バリ46を打ち抜き除去して、前記第四中間素材28とする。そして、最後に、図2の(E)→(F)に示す様に、前記両凹部30a、30b同士の間に存在する前記隔壁部31を、プレス加工等により打ち抜き除去する事で、内周面に前記軸方向外側の外輪軌道5bの溝肩部20及び前記軸方向内側の溝肩部20a(図1参照)を形成すべき部分である小径部を備える前記第五中間素材29となる。この第五中間素材29は、完成後の外輪2b{図2の(F)の鎖線参照}よりも厚肉である。そこで、この第五中間素材29に、所定の切削(旋削)加工及び熱処理を施した後、研削加工を施して、前記外輪2bとして完成する。本例の場合、この仕上加工に伴って、前記下側の凹部30aの内周面と底面との連続部の径方向外側に、軸方向外側の外輪軌道5bの溝肩部20が形成される。従って、前記複合傾斜面部16のうちの緩傾斜面部17と、この溝肩部20とが径方向に重畳する。前記図2の(E)及び(F)に示した、前記各金属材料35〜37の分布状態から明らかな通り、本例の外輪2bの製造方法によれば、この外輪2bの内周面のうちの軸方向に離隔した2箇所位置に形成した1対の外輪軌道5a、5bのうちの少なくとも転動体からの荷重が作用する部分に、前記原素材24のうちで清浄度が高い金属材料36を露出させられる。この為、前記両外輪軌道5a、5bの転がり疲れ寿命を確保できる。
本発明の転がり軸受ユニット用外輪の製造方法及び転がり軸受ユニット用外輪は、軸方向片半部の外径よりも、軸方向他端部に設けたナックルパイロット部の内径が大きい外輪に限らず、ナックルパイロット部の内径が軸方向片半部の外径と同じ乃至小さいものに適用する事もできる。又、本発明に係る転がり軸受ユニット用外輪を組み込んだ転がり軸受ユニットは、自動車の車輪および制動用回転部材を懸架装置に対して回転自在に支持する為以外にも、例えば回転機械装置の回転支持部等に適用する事もできる。
1、1a、1b 転がり軸受ユニット
2、2a、2b 外輪
3、3a、3b ハブ
4、4a、4b 転動体
5a〜5d 外輪軌道
6、6a 静止側フランジ
7 回転側フランジ
8a〜8d 内輪軌道
9 第一の内輪部材
10 第二の内輪部材
11 等速ジョイント
12 ハウジング部
13 スプライン軸
14 雌スプライン孔
15、15a ナックルパイロット部
16 傾斜面部
17 第一急傾斜面部
18 緩傾斜面部
19 第二急傾斜面部
20、20a 溝肩部
21 エンコーダ
22 カバー
23 保持部
24 原素材
25 第一中間素材
26 第二中間素材
27 第三中間素材
28 第四中間素材
29 第五中間素材
30a、30b 凹部
31 隔壁部
32a、32b 小径部
33a、33b 大径部
35 中心部金属材料
36 中間部金属材料
37 外側部金属材料
38 押圧パンチ
39 カウンターパンチ
40 上側ダイス
41 下側ダイス
42 押し出しパンチ
43 下側キャビティ
44 成形用空間
45 隙間
46 バリ

Claims (6)

  1. 内周面に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向中間部に外向フランジを、それぞれ有する転がり軸受ユニット用外輪の製造方法であって、
    金属製で円柱状の原素材を軸方向に押し潰す事により、軸方向中間部の外径が軸方向両端部の外径よりも大きくなった第一中間素材を得る据え込み工程と、
    この第一中間素材を塑性変形させる事により、軸方向両端面に開口して間部分を隔壁部により仕切られた1対の凹部を有し、軸方向片半部の外周面を、軸方向片側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した複合傾斜面部とし、この複合傾斜面部が、軸方向片側から順番に、第一急傾斜面部と緩傾斜面部と第二急傾斜面部とを組み合わせたものであり、このうちの緩傾斜面部と、前記隔壁部の軸方向片側面とを径方向に重畳させた第二中間素材を得る荒成形工程と、
    前記第二中間素材を塑性変形させる事により、前記隔壁部を、厚さ寸法を縮める方向に押し潰すと共に、この隔壁部よりも軸方向他端寄り部分の外周面に前記外向フランジを形成して第三中間素材を得る仕上成形工程とを
    備える転がり軸受ユニット用外輪の製造方法。
  2. 前記第三中間素材の隔壁部を打ち抜き除去して、外周面に前記外向フランジを備えた円筒状の最終中間素材を得る打ち抜き工程と、
    この最終中間素材の内周面を削り取る事により、この内周面に前記両外輪軌道を形成する軌道仕上工程とを備え、
    前記両外輪軌道のうち、軸方向片側の外輪軌道の肩部と、前記緩傾斜面部とを径方向に重畳させる、請求項1に記載した転がり軸受ユニット用外輪の製造方法。
  3. 前記第三中間素材の軸方向他側開口の内径を、軸方向片半部の外径よりも大きくしている、請求項1〜2のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット用外輪の製造方法。
  4. 内周面に複列の外輪軌道を、外周面の軸方向中間部に外向フランジを、それぞれ有する転がり軸受ユニット用外輪に於いて、
    外周面のうちの軸方向片半部を、軸方向片側に向かう程外径が小さくなる方向に傾斜した複合傾斜面部としており、この複合傾斜面部が、軸方向片側から順番に、第一急傾斜面部と緩傾斜面部と第二急傾斜面部とを組み合わせたものである事を特徴とする転がり軸受ユニット用外輪。
  5. 前記両外輪軌道のうち、軸方向片側の外輪軌道の肩部と、前記緩傾斜面部とが径方向に重畳している、請求項4に記載した転がり軸受ユニット用外輪。
  6. 軸方向他側開口の内径が、軸方向片半部の外径よりも大きい、請求項4〜5のうちの何れか1項に記載した転がり軸受ユニット用外輪。
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