癌患者治療で継続している問題のうちの1つは、治療応答における個人差である。成功裏に癌治療開発が発展する一方で、一部の患者のみが、任意の特定の療法に対し応答する。治療係数が低く、多くの利用可能な癌治療には潜在的な毒性があるため、そのような個人差により、患者に、不必要で効果の無い、あまつさえ有害である可能性のある治療レジメンを受けさせている可能性がある。個々人の患者を治療するためにデザイン療法を最適化することができれば、そのような状況は減少され、または無くすことができる可能性がある。さらに、標的を定めて設計された療法により、より焦点を当てた、全体として思い通りの患者の治療を提供しうる。ゆえに、特定の癌療法を投与された際に好ましい結果を得られると期待される特定の癌患者、ならびに、より積極的な癌療法および/または代替的な癌療法(たとえば、その患者に投与されていた従前の癌療法に代わるもの)により好ましい結果を得る可能性のある特定のがん患者を特定する必要性がある。それゆえ、特定の癌阻害療法で利益を得る、ならびに、より積極的な癌阻害療法および/または代替的な癌阻害療法(たとえば、その患者が受けていた癌療法または治療に代わるもの)により利益を得る癌患者(たとえば、血液のがん患者(多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)、固形腫瘍癌(たとえば、メラノーマ、食道癌または膀胱癌))の診断、病期分類、予後診断およびモニターを提供することは有益であり、適切な予防手段をもたらすこととなる。
本発明は、部分的には、変異遺伝子を含有する細胞のNAE阻害物質(たとえば、1−置換メチルスルファミン酸塩))に対する感受性と、マーカー遺伝子の変異が関連しうるという認識に基づいている。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子はカリンリングリガーゼ(CRL)経路に関与しており、たとえば、それがコードしているタンパク質は、CRLもしくはCRL関連タンパク質と相互作用するか、CRLの基質である。マーカー遺伝子にコードされるタンパク質は、腫瘍抑制物質としての野生型の機能を有しうる。マーカー遺伝子の例としては、NF2、SMAD4および/またはKDM6Aが挙げられる。他のマーカー遺伝子の例としては、TP53、APC、CDKN2Aおよび/またはCDKN2A_p14が挙げられる。マーカー遺伝子は、体細胞変異等の変異を示し、その存在によりコードされる遺伝子産物の発現または活性が影響され得る。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子中に2つ以上の変異、または腫瘍細胞もしくは腫瘍に変異を有する2つ以上のマーカー遺伝子があっても良い。さらなる実施形態において、腫瘍形成をもたらすことができる変異を含む、追加の遺伝子変異を有する細胞に、マーカーの遺伝子変異があっても良いが、追加の変異遺伝子は、本明細書においてマーカー遺伝子とみなされるものではなくとも良い。いくつかの実施形態において、変異は、不活性化変異である。他の実施形態において、変異は、マーカー遺伝子の発現に影響を及ぼす。他の実施形態において、変異は、コード遺伝子産物と細胞での結合パートナーの相互作用の変化をもたらしうる。マーカー遺伝子中の変異の特定および/または測定を用いて、腫瘍の治療(たとえば、1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質での治療)により好ましい結果が期待できるかどうか、または、代替的な治療および/もしくはより積極的な治療(たとえば、1−置換メチルスルファミン酸塩阻害物質等のNAE阻害物質での治療)により、予測生存期間の延長が期待されるかどうかを、決定することができる。たとえば、本明細書に提供される組成物および方法を用いて、たとえば1−置換メチルスルファミン酸塩療法剤等のNAE阻害物質、または1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質の投薬もしくは投与レジメン等で、好ましい結果が得られると期待される患者であるかどうかを、決定することができる。概して、本明細書に記述される腫瘍抑制マーカー遺伝子中の変異は、NAE阻害物質での治療に対する感度、またはその好ましい結果と関連している。カリンリングリガーゼに関連した経路で腫瘍抑制物質として機能し、その変異がNAE阻害物質に対する感度と関連しているマーカー遺伝子の例としては、NF2、SMAD4、KDM6A、FBXW7、CDKN2Aおよび/またはCDKN2A_p14が挙げられる。しかしながら、TP53およびAPCもまた、腫瘍抑制マーカー遺伝子である。特に、TP53経路の遺伝子は、NAE阻害物質の効果と関連している。本明細書に記述されるように、多くの腫瘍型に対するいくつかの実施形態において、TP53の変異、およびいくつかの例においてはAPCの変異は、NAE阻害物質に対する抵抗性をもたらす。ゆえに、TP53およびAPCからなる群由来の野生型マーカー遺伝子は、NAEの感度と関連し得る。いくつかの実施形態において、TP53およびAPCからなる群から選択されるマーカー遺伝子の変異は、NAE阻害物質に対する抵抗性と関連する。
これらの特定事項に基づき、本発明は、1)たとえば1−置換メチルスルファミン酸治療レジメン等のNAE阻害物質により好ましい結果が得られるような効果があるかどうか、および/または癌を管理できるほどの効果があるかどうかを決定するための方法および組成物、2)たとえば1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質療法(単剤または併剤)、およびその腫瘍治療のために用いられる投薬および投与の有効性をモニターするための方法および組成物、3)たとえば1−置換メチルスルファミン酸塩阻害療法レジメン等のNAE阻害物質を含有する、腫瘍の治療のための方法および組成物、4)特定の治療剤および治療剤の組み合わせを特定するための方法および組成物、ならびに、特定の患者における腫瘍の治療に効果的な投薬および投与レジメン、ならびに、5)疾患管理戦略を特定するための方法および組成物、を提供するが、これらに限定されない。
ユビキチンおよび他のユビキチン様分子(Ubl)は、ublのC末端グリシンとのアシル−アデニレート中間体の形成を触媒する特定の酵素(E1酵素)により活性化される。活性化されたublは、次いで、チオエステル結合中間体の形成を介して、E1酵素内の触媒システイン残基へと移送される。E1−ubl中間体およびE2が会合し、チオエステル交換がもたらされ、ublがE2の活性化システイン部位に移送される。次いで、ublは、直接、またはE3リガーゼと連動して、標的タンパク質中のリジン側鎖のアミノ基とのイソペプチド結合形成を介し、標的タンパク質に結合される。Neural precursor cell−Expressed Developmentally Downregulated 8(NEDD8)と名付けられたublは、ヘテロ二量体NEDD8活性化酵素(NAE、APPBP1−UBA3、UBE1C(ユビキチン活性化酵素E1C)としてもまた知られる)により活性化され、2つのE2結合酵素(ubiquitin carrier protein 12(UBC12)およびUBC17)のうちの1つに移送され、最終的に、ユビキチンリガーゼのカリン−リングサブタイプにより、カリンタンパク質へのNEDD8のライゲーションがもたらされる(図2を参照のこと)。NEDD化の機能は、多くの細胞周期および細胞シグナル伝達タンパク質(p27およびI−κBを含む)の代謝に関与するカリンベースのユビキチンリガーゼの活性化である。Pan et al., Oncogene 23:1985−97 (2004)を参照のこと。NAEの阻害により、カリン−リングリガーゼが介在するタンパク質の代謝が撹乱され、細胞(たとえば、腫瘍細胞または寄生体等の病原体の細胞)にアポトーシス死をもたらすことができる。Soucy et al. (2010) Genes & Cancer 1:708-716を参照のこと。
本明細書において、「E1」、「E1酵素」または「E1活性化酵素」という用語は、標的分子へのユビキチンまたはユビキチン様(集合的に、「ubl」)の結合の活性化または促進に関与する関連ATP依存性活性化酵素のファミリーの任意の1つを指す。E1活性化酵素は、トランスチオレート化反応を介して各E2結合酵素へと適切なublを移送するアデニル化/チオエステル中間体形成を介して、機能する。得られた活性化ubl−E2により、標的タンパク質へのublの最終的な結合が促進される。細胞シグナル伝達、細胞周期、およびタンパク質代謝において機能する様々な細胞タンパク質は、E1活性化酵素(たとえば、NAE、UAE、SAE)を介して制御されるubl結合の基質である。文脈で別様に示されない限り、「E1酵素」という用語は、任意のE1活性化酵素タンパク質(NEDD8活性化酵素(NAE(APPBP1/Uba3))、ユビキチン活性化酵素(UAE(Uba1))、sumo活性化酵素(SAE(Aos1/Uba2))、UBA4、UBA5、UBA6、ATG7またはISG15活性化酵素(Ube1L)を含むがこれらに限定されない)を指すものと意図される。
「E1酵素阻害物質」または「E1酵素の阻害物質」という用語は、E1酵素と相互作用し、その酵素活性を阻害することができる、本明細書に定義される構造を有する化合物を示すために用いられる。E1酵素活性の阻害とは、基質ペプチドまたはタンパク質へのユビキチン様(ubl)結合を活性化するE1酵素の能力(たとえば、ユビキチン化、NEDD化、SUMO化)を減少させることを意味する。いくつかの実施形態において、E1酵素阻害物質は、2つ以上のE1酵素を阻害することができる。他の実施形態においては、E1酵素阻害物質は、特定のE1酵素に特異的である。様々な実施形態において、そのようなE1酵素活性の減少は、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%である。様々な実施形態において、E1酵素活性を減少させるために必要なE1酵素阻害物質の濃度は、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満、約50nM未満、または約10nM未満である。
本明細書において、「NAE阻害物質」という用語は、NAEヘテロ二量体の阻害物質を指す。NAE阻害物質の例としては、MLN4924を含む1−置換メチルスルファミン酸塩(図1を参照のこと)が挙げられる。Langston S.らによる米国特許出願第11/700,614号(その国際出願は、WO07/092213、WO06084281およびWO2008/019124として公開され、前述の公開特許出願のそれぞれの内容全体が、参照により本明細書に援用される)に、E1活性化酵素(たとえば、NAE)の効果的な阻害物質である化合物が公開されている。いくつかの実施形態において、NAE阻害物質は、他の(NAEではない)E1酵素を阻害しないか、またはほとんど阻害しない。当該化合物は、E1活性をin vitroおよびin vivoで阻害するのに有用であり、細胞増殖性疾患(たとえば、癌)およびE1活性に関連した他の疾患(たとえば、病原性感染症および神経変性疾患)の治療に有用である。Langstonらに開示された化合物の1種は、4−置換((1S,2S,4R)−2−ヒドロキシ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}シクロペンチル)メチルスルファミン酸塩類である。
MLN4924(((1S,2S,4R)−4−{4−[(1S)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イルアミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}−2−ヒドロキシシクロペンチル)メチルスルファミン酸塩)は、NAE特異的E1阻害物質であり、細胞タンパク質のホメオスタシスを摂動することにより、ヒト腫瘍細胞でアポトーシス死を誘導するカリン−リングリガーゼ介在性タンパク質代謝を撹乱する(Soucy et al. (2009) Nature 458:732-736)。細胞および腫瘍異種移植片研究におけるMLN4924の評価により、2つの明確に異なる機序が明らかとなっている。1つ目は、MLN4924介在性CRL1SKP2およびCRL4DDB1基質Cdt−1の異常調節を介したDNA再複製、DNA損傷および細胞死の誘導である(Milhollen et al. (2011) Cancer Res. 71:3042-3051)。p53の状態は、DNA再複製の誘導に影響を与えないが、適切な遺伝的背景に基づき、細胞をよりアポトーシスまたは老化に陥りやすくさせ得る(Milhollen et al. (2011) supra, Lin et al. (2010) Nature 464:374-379および、Lin et al. (2010) Cancer Res.70:10310-20)。2つ目の機序は、主にリン酸化IκBαのCRL1βTRCP介在性代謝の異常調節を介したNF−κB依存性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるNF−κB経路活性化の阻害である(Milhollen et al. (2010) Blood 116:1515-1523)。さらに、急性骨髄性白血病(AML)の前臨床モデルは、細胞株および患者の一次芽球の両方で、Cdt−1異常調節、NF−κB阻害および活性酸素種の誘導に関連した機序を介し、MLN4924阻害に対して感受性である(Swords et al. (2010) Blood 115:3796-3800)。
たとえばNF2(Ahronowitz et al. (2007) Human Mutation 28:1-2に概略がある)、KDM6A(van Haaften et al. (2009) Nat. Genet. 41:521-523に概略がある)、FBXW7、TP53、CDKN2AおよびCDKN2A_p14等の遺伝子は、多くの癌種で変異している。SMAD4は、多くの癌で変異しているが、SMAD4変異の多くは、腸管、膵臓(Miyaki and Kuroki (2003) Biochem. Biophys. Res. Commun. 306:799-804に概略がある)または甲状腺の癌で見いだされている。
本明細書において、「NF2」は、GenPeptアクセッション番号NP_000259(配列番号3)をコードしているGenBankアクセッション番号NM_000268(配列番号1、オープンリーディングフレームは、配列番号2、配列番号1の444〜2231ヌクレオチド)に関連した遺伝子のより長いアイソフォームを指す。NF2に対する他の名称としては、ACN、BANF、SCHおよびmerlin(moesin−ezrin−radixin様タンパク質)が挙げられる。NF2は、腫瘍抑制遺伝子として機能し、第22染色体上で見いだされる。NF2は、細胞骨格、細胞表面タンパク質と相互作用し、細胞骨格の動力学およびイオン輸送の調節に関与している可能性がある。NAE阻害(たとえば、MLN4924)に対する感受性に関与するNF2の機能には、E3ユビキチンリガーゼCRL4DCAFIを阻害する能力が挙げられる(Li et al. (2010) Cell 140:477-490)。NF2における変異は、その阻害活性を撹乱し、CRL4DCAF1基質の制御不能なユビキチン化およびその変異遺伝子を有する細胞の増殖をもたらす。
本明細書において、「SMAD4」は、GenPeptアクセッション番号NP_005350(配列番号6)をコードしている、GenBankアクセッション番号NM_005359(配列番号4、オープンリーディングフレームは配列番号5、配列番号4の539〜2197ヌクレオチド)に関連した遺伝子を指す。SMAD4に対する他の名称としては、deleted in pancreatic carcinoma locus 4(DPC4)、JIPまたは、mothers against decapentaplegic,Drosophila, homolog of, 4(MAD4)が挙げられる。SMAD4は、芽球分化成長因子(TGF)βシグナル伝達に関与しているシグナル伝達タンパク質である。SMAD4は、腫瘍抑制物質として振る舞うことができ、Skp−Cullin−F−boxタンパク質(SCF)複合体によるユビキチン化での分解の標的となりうる。
本明細書において、「KDM6A」は、GenPeptアクセッション番号NP_066963(配列番号10または配列番号11(173位でLの代わりにV、584位でLの代わりにR、601位でSの代わりにN、および/または629位でEの代わりにKとなっている配列番号10である。))をコードしているGenBankアクセッション番号NM_021140(配列番号7、オープンリーディングフレームは配列番号8、配列番号7の376〜4581ヌクレオチド、または配列番号9)に関連した遺伝子を指す。KDM6Aに対する他の名称としては、ubiquitously−transcribed tetratricopeptide repeat protein X−linkedもしくはubiquitously−transcribed TPR gene on the X chromosome (UTX)またはbA286N14.2が挙げられる。KDM6Aは、ヒストンデメチラーゼであり、腫瘍抑制物質として機能することができる。
本明細書いおいて、「FBXW7」は、GenPeptアクセッション番号NP_361014(配列番号14)をコードしている、GenBankアクセッション番号NM_033632(配列番号12、オープンリーディングフレームは配列番号13、配列番号12の150〜2273ヌクレオチド)に関連した遺伝子を指す。FBXW7に対する他の名称としては、homolog of C elegans sel−10(SEL10)、archipelago homolog(AGO)、F−box protein FBX30 (FBXO30)、またはcell division control protein 4(CDC4)が挙げられる。FBXW7は、ユビキチンタンパク質リガーゼ複合体に加わり、細胞周期および細胞の生存に関与するタンパク質を含む、タンパク質のリン酸化依存性ユビキチン化に関与することができる。FBXW7は、腫瘍抑制物質として振る舞うことができる。マーカー遺伝子としてのFBXW7の使用は、組織特異的であり得、すなわち、一部の組織に生じる腫瘍に感受性のあるマーカーであるが、他の組織に生じた腫瘍には感受性が無いということがありうる。たとえば、FBXW7は、子宮、子宮頸管、または肝臓の腫瘍に感受性のあるマーカーであり得るが、消化管の腫瘍には感受性の無いマーカーであり、そこでは他の遺伝子の変異が優位であり得、これらの腫瘍由来の細胞のMLN4924に対する非感受性または抵抗性をもたらす。
本明細書において、「TP53」は、GenPeptアクセッション番号NP_000537(配列番号17、または、72位のアミノ酸残基がプロリン、Pの代わりにアルギニン、Rである、変異体)をコードしているGenBankアクセッション番号NM_000546(配列番号15、オープンリーディングフレームは配列番号16、配列番号15の203〜1384ヌクレオチド、または417位のヌクレオチドがシトシンの代わりにグアニンである、変異体)に関連した遺伝子を指す。TP53に対する他の名称としては、BCC7、LFS1およびp53が挙げられる。TP53はDNAに結合し、転写因子を活性化させ、腫瘍抑制物質として機能することができる。
本明細書において、「CDKN2A」は、GenPeptアクセッション番号NP_000068(配列番号20)をコードしているGenBankアクセッション番号NM_000077(配列番号18、オープンリーディングフレームは配列番号19、配列番号18の307〜777ヌクレオチド)に関連する遺伝子を指す。CDKN2Aに対する他の名称としては、alternate open reading frame(ARF)、p16、p16ARF、inhibitor of cyclin−dependent kinase 4(INK4)およびmultiple tumor suppressor gene−1(MTS1)が挙げられる。CDKN2Aの変異体は、最初のエクソンが異なる。変異体の1つは、「CDKN2A_p14」または「CDKN2A.p14」であり、p14ARFとしてもまた知られ、GenPeptアクセッション番号NP_478102(配列番号23、または配列番号23のアミノ酸残基42で始まる変異体)、GenBankアクセッション番号NM_058195(配列番号21、オープンリーディングフレームは配列番号配列番号22、配列番号21の38〜559ヌクレオチド)に関連している。CDKN2A_p14は、p16ARF(p16INK4a、CDKN2A)とは異なるリーディングフレームの翻訳から得られる。CDKN2AおよびCDKN2A_p14は、サイクリン依存性キナーゼ4を阻害し、p53を安定化させ、細胞周期G1の進行を制御することができる。CDKN2AおよびCDKN2A_p14は、腫瘍抑制物質として振る舞うことができる。
本明細書において、「APC」は、GenPeptアクセッション番号NP_000029(配列番号26)をコードしているGenBankアクセッション番号NM_000038(配列番号24、オープンリーディングフレームは配列番号25、または1458ヌクレオチドでシトシンの代わりにチミンである変異体)に関連した遺伝子である、adenomatous polyposis coliを指す。APCに対する他の名称としては、BTSP2およびDP2が挙げられる。APCは微小管に結合し、Wntシグナル伝達経路を阻害し、腫瘍抑制物質として機能することができる。
癌に関連した公共的な変異分類作製に注目が集まっている。癌に関連した変異に関する情報を含む公共的なデータベースの例としては、National Center for Biotechnology Information(Bethesda, MD)により維持されているDatabase of Genotypes and Phenotypes(dbGaP)および、Wellcome Trust Sanger Institute(Cambridge, UK)に維持されているCatalogue of Somatic Mutations in Cancer(COSMIC)データベースがある。
変異状態を測定するための方法および組成物、たとえば、血液系腫瘍(たとえば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍(たとえば、メラノーマ、食道がん、肺癌、または膀胱癌)のマーカー遺伝子の変異を特定し、治療に対する応答性、無増悪期間、および治療での生存率を予測するための方法および組成物が開示される。また、本明細書に開示される方法および組成物により、たとえば大腸癌、乳癌、頭頸部癌または中枢神経系の癌等の固形腫瘍におけるマーカー遺伝子中の変異を特定することもできる。
マーカーは、MLN4924に対する治療に感受性を示す腫瘍細胞の遺伝子プロファイルに基づき特定された。TP53マーカーはまた、TP53遺伝子の欠損において異なっている同系細胞株の振る舞いに基づき同定された。2つ以上の方法により検証された腫瘍細胞の間で、感受性の結果は一致している。
他で定義されない限り、本明細書に使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に一般的に理解される意味を有する。本明細書に記述される細胞および組織培養、分子生物学ならびにタンパク質およびオリゴ化学またはポリヌクレオチド化学ならびにハイブリダイゼーションの技術、ならびにそれらに関連して用いられる専門用語は概して、当分野で公知であるものである。GenBankアクセッション番号またはGenPeptアクセッション番号および、有用な核酸配列およびペプチド配列は、National Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD)により維持されるウェブサイトで見出すことができる。本出願を全体で引用されているすべてのデータベースアクセッション記録(たとえば、Affymetrix HG133アノテーションファイル、Entrez、GenBank、RefSeq、COSMIC由来のもの)の内容(表を含む)は、参照により、本明細書に援用される。組換えDNA、オリゴヌクレオチド合成、タンパク質精製、組織培養ならびに形質転換およびトランスフェクション(たとえば、エレクトロポレーション、リポフェクション等)には、標準的な技法が用いられる。酵素反応は、メーカーの仕様書に従い実施されるか、または当分野で一般に行われているように実施されるか、または本明細書に記述されるように実施される。前述の技法および手順は通常、たとえば、本明細書全体で引用および論じられる様々な総説および、より具体的な参照文献に記述されるように、当分野に公知の方法に従い、実施される。たとえば、Sambrook et al.(2000)Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed., Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, NY)またはHarlow,E.and Lane, D.(1988)Antibodies: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照のこと。本明細書に記述される分析化学、有機合成化学ならびに、医化学および薬化学の技術ならびに実験手順、ならびにそれらに関連して用いられる専門用語は、当分野に公知である。化学合成、化学分析、医薬品、処方および送達、ならびに患者の治療に対し、標準的な技術が用いられる。さらに、文脈上、他で要求されない限り、単数形は、複数形を含み、複数形は、単数形を含むものとする。矛盾がある場合、本明細書が、定義を含んで、優先される。
「1つ(a、an)」および「少なくとも1つ」という冠詞は、本明細書において、文法上の冠詞の対象の1つ以上を指すために用いられる。例として、「1つの要素(an element)」は、少なくとも1つの要素である、1つ以上の要素を意味する。矛盾がある場合には、本明細書が、定義を含み、優先される。
本明細書において、「好ましい」結果または予後とは、長期の生存期間、長期の無増悪期間(TTP)、および/または良好な応答を指す。逆に、「好ましくない」予後とは、短期の生存期間、短期の無増悪期間(TTP)、および/または良好ではない応答を指す。
本明細書において「マーカー」とは、患者の腫瘍細胞で変異を有するとして同定されているマーカー遺伝子と関連のある物質を含み、さらに、その変異は、たとえば1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質による治療などで好ましい結果または好ましくない結果となる患者の指標となる。マーカーの例としては、たとえば染色体遺伝子座、遺伝子に対するDNA、遺伝子に対するRNAまたは遺伝子に対するタンパク質等の物質が挙げられる。たとえば、マーカーとしては、たとえばサイズ、配列、組成または量等の患者の短期間生存の指標となる特性を示す、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれ、あるいは、マーカーとしては、たとえばサイズ、配列、組成または量等の患者の長期間生存の指標となる特性または変異を示す、染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれる。他の例において、マーカーとしては、治療に対して良好な応答を示さない患者の指標である、サイズ、配列、組成もしくは量等の特性または変異を有する染色体の遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれ、あるいは、マーカーとしては、良い応答性を示す患者の指標である、サイズ、配列、組成もしくは量等の特性または変異を有する染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれる。さらなる例において、マーカーとしては、治療により短期無増悪期間(TTP)となる疾患を有する患者の指標である、サイズ、配列、組成もしくは量等の特性または変異を有する染色体遺伝座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれ、あるいは、長期TTPとなる疾患を有する患者の指標である、サイズ、配列、組成もしくは量等の特性または変異を有する染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれる。よりさらなる例において、マーカーとしては、治療により短期間生存となる疾患を有する患者の指標である、サイズ、配列、組成もしくは量等の特性または変異を有する染色体遺伝子座、DNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれる。あるいは、マーカーとしては、長期間生存となる疾患を有する患者の指標である、サイズ、配列、組成もしくは量等の特性または変異を有する染色体遺伝子座、DNA、RNA、またはタンパク質等のマーカー遺伝子物質が含まれる。ゆえに、本明細書において、マーカーとは、これらの可能性のそれぞれおよびすべてを含むことが意図され、さらに、個々のマーカーとして各々単一であるマーカーを含むことができ、あるいは、「マーカー(複数)」または「マーカーセット」と集合的に参照された場合には、すべての特性または1つ以上の特性を含むことができる。
予後診断または治療または疾患管理戦略の決定のための測定に有益な染色体遺伝子座マーカーは、たとえば、染色体22q12.2の塩基対29999545〜30094589(NF2)、たとえば、染色体18q21.1−21.2の塩基対48556583〜48611412(SMAD4)、たとえば、染色体Xp11.2の塩基対44732423〜44971847(KDM6A)、たとえば、染色体4q31.3の塩基対153242410〜153456172(FBXW7)、たとえば染色体17p13.1の塩基対7571720〜7590868(TP53)、および、たとえば、9p21の塩基対21967751〜21994490(CDKN2AおよびCDKN2A_p14)からなる群から選択される。染色体遺伝子座の番号は、NCBIGeneデータベースのヒトゲノムBuild37.3(2011年10月5日現在で最新)の参照に基づいている。マーカーDNA、マーカーRNA、またはマーカータンパク質は、染色体遺伝子座マーカー上の塩基対と対応することができる。たとえば、マーカーDNAは、染色体遺伝子座マーカー由来のゲノムDNAを含むことができ、マーカーRNAは遺伝子座マーカーから転写されたポリヌクレオチドを含むことができ、および、マーカータンパク質は、試料(たとえば、腫瘍細胞を含む)中の染色体遺伝子座マーカーでの発現からもたらされたポリペプチドを含むことができる。
「マーカー核酸」は、本発明のマーカー遺伝子によりコードされる、または本発明のマーカー遺伝子に対応する核酸(たとえば、ゲノムDNA、mRNA、cDNA)である。そのようなマーカー核酸としては、DNA(たとえば、ゲノムDNAのセンス鎖およびアンチセンス鎖(その中に生じる任意のイントロンを含む))が挙げられ、たとえば、任意のマーカー遺伝子またはそのような配列の相補体のオープンリーディングフレームまで、およびそれを含む、ゲノムDNAのエクソンの1つ以上等の全体配列または部分配列をその中に含む。マーカー核酸はまた、任意のマーカーの完全配列もしくは部分配列、またはそのような配列の相補鎖を含有するRNAを含み、ここで、すべてのチミジン残基はウリジン残基と置き換えられ、ならびに、ゲノムDNAの転写により生成されたRNA(すなわち、スプライシング前)、ゲノムDNAから転写されたRNAのスプライシングにより生成されたRNA、およびスプライシングされたRNAの翻訳により生成されたタンパク質(すなわち、たとえば膜貫通シグナル配列等の通常の開裂部位の開裂前および開裂後の両方のタンパク質を含む)も含む。本明細書において、「マーカー核酸」はまた、ゲノムDNA(スプライシングされたRNAを含む)の転写により生成されたRNAの逆転写により作製されたcDNAを含んでもよい。マーカー核酸には、遺伝子コードの縮重により、本発明のマーカー(たとえば、変異マーカー)に対応するタンパク質をコードしている核酸のヌクレオチド配列とは異なり、ゆえに、同じタンパク質ではあるが、たとえば変異タンパク質をコードしている配列もまた含まれる。本明細書において、「対立遺伝子多型」という表現は、所与の遺伝子座で、またはヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドに対して発生するヌクレオチド配列を指す。そのような天然に発生する対立遺伝子多型は、通常、所与の遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の変異をもたらす。代替的な対立遺伝子は、別の多くの個体(たとえば癌を有していない個体の細胞(たとえば、生殖細胞系細胞))にある対象の遺伝子の配列解析を行うことにより特定することができる。これは、様々な個体の同じ遺伝子座を特定するためのハイブリダイゼーションプローブを用いて、容易に実施することができる。そのようなヌクレオチド変異のすべてまたは一部、および、野生型のマーカー遺伝子の機能活性を変化させず、天然発生の対立遺伝子多型の結果であるアミノ酸多形または変異を検出することは、本明細書に記述されるマーカーの野生型バージョンの範囲内にあると解される。「マーカータンパク質」は、本発明のマーカー(たとえば、変異核酸)によりコードされる、または本発明のマーカーに対応するタンパク質である。「タンパク質」または「ポリペプチド」という用語は、互換可能に用いられる。マーカーのタンパク質は、その名称またはアミノ酸配列により具体的に参照されるが、当業者であれば、変異、欠損および/または翻訳後修飾により、タンパク質構造、出現、細胞局在および/または振る舞いが影響を受けることが理解される。他で示唆されない限り、そのような差異は、本明細書において区別されず、本明細書に記述されるマーカーはそのような変異のすべてまたは一部を含むものと解される。
本明細書において、「マーカー遺伝子」とは、そのDNA、RNAおよび/またはタンパク質が、治療による予後に関する情報を提供する(すなわち、「有益」である)、サイズ、配列、組成または量(複数含む)等の特性を有するような変異を有することができる遺伝子を指す。たとえば1−置換メチルスルファミン酸(たとえば、MLN4924)等のNAE阻害物質治療の後の結果に結び付けられるような、本明細書に記述されるマーカー遺伝子のは、上述の染色体遺伝子座マーカー内の遺伝子の例であり、表1に記述される。マーカー遺伝子に対応するmRNA、オープンリーディングフレーム、およびタンパク質の配列もまた、表1に列挙される。表1に列挙されるマーカー遺伝子は、いたるところで発現されているか、または発現が制限されているアイソフォームを有することができる。CDKN2A_p14アイソフォームの別個の列挙を除き、表1のDNA配列番号は、主要で最も長いアイソフォームをコードするmRNAを指し、タンパク質配列番号は、そのようなアイソフォームの少なくとも前駆体を表し、必ずしも成熟タンパク質を表してはいない。これらの配列は、そのアイソフォームまたは前駆体に、マーカー遺伝子の実体を制限するとはみなされない。さらなるアイソフォームおよび成熟タンパク質は、表1に列挙されているIDにより特定されるEntrezGene(National Center for Biotechnology Information, Bethesda,MDにより維持されるデータベース)で提供される情報を考察することにより、当業者が容易に取り出し、理解することができる。
本明細書において、「有益(informative)」な特性(たとえば、マーカーのサイズ、配列、組成または量)とは、その値または差異が、予後または結果に相関しているサイズ、配列、組成または量等の特性を指す。たとえばマーカーのサイズ、配列、組成または量等の有益な特性とは、核酸(たとえば、DNAまたはRNA)またはマーカー遺伝子に対応するタンパク質のいずれかを分析することにより得ることができる。たとえば、マーカー(たとえば、染色体遺伝子座マーカーまたは患者由来の試料中のマーカー)の特性、例えばサイズ(長さまたは分子量等)、配列(たとえば、核酸配列またはタンパク質配列等)、組成(たとえば、塩基組成またはアミノ酸組成またはペプチド消化または遺伝子断片パターン)、または量(たとえば、コピー数および/または発現レベル)等は、もし、それが分析材料の野生型または対立遺伝子多型とは異なるものであった場合、「有益」でありうる。いくつかの実施形態において、マーカーの特性は、もしそれが、マーカー遺伝子が野生型であることを示唆する場合、有益である。マーカーの量が測定される実施形態において、量は、それが、発現を評価するために用いられた分析の標準誤差を超えるほどに、基準量よりも大きいか、または小さい場合、「有益」である。マーカーの有益な発現レベルは、測定された発現レベルおよびその結果(たとえば、良好な応答、不良な応答、長期の無増悪期間、短期の無増悪期間、短期の生存期間または長期の生存期間等)の統計的相関で決定することができる。統計分析の結果により、本明細書に記述される方法において用いるためのマーカーを選択するための閾値を設定することができる。あるいは、マーカー(たとえば、染色体遺伝子座マーカー)またはマーカー遺伝子(サイズ、配列、組成または量等の異なる特性を有するマーカー遺伝子)は、通常、結果を予測する量の範囲を有する。たとえばサイズ、配列、組成または量等の有益な特性は、結果に対して決められたサイズ、配列、組成または量等の特性の範囲内に収まる特徴(たとえば、サイズ、配列、組成または量等)がある。さらに、マーカーのセットは、それらの特性(たとえば、サイズ、配列、組成または量等)の組み合わせが、本明細書に提供される方法により決定されたものとして設定されたマーカー(たとえば、染色体遺伝子座マーカーまたはマーカー遺伝子)に対し、事前に決定されたスコアと合致、または上回るかもしくは下回るかのいずれかであれば、共に「有益」でありうる。マーカーの配列または組成を変えることができる点変異に加えて、遺伝子転座、転写スプライス変異、欠損および切断は、マーカーのサイズ、配列または組成を変化させることが出来る事象の例である。たった1つの特性(たとえば、マーカー、マーカー遺伝子(すなわち、DNA、RNAまたはタンパク質)の特性)を測定することにより、予後予測(すなわち、示唆される結果)を提供することができる。2つ以上の特性(たとえば、マーカー、マーカー遺伝子の特性)を測定し、2つの特性の有益な量が互いに一致する(すなわち、結果の生物特性が矛盾しない)場合、予後予測を提供することができる。マーカー遺伝子の複合的な特性の測定から得られる結果が一致する例としては、DNAもしくはRNAにおけるナンセンス変異または欠損、および低量もしくは低分子量のコードされたタンパク質、または、タンパク質の結合ポケットもしくは活性部位をコードする領域における変異、およびコードされたタンパク質の低活性の特定がある。その活性レベルに基づき合成を制御するフィードバックループを伴う経路にタンパク質がある場合には、異なる例が発生する。この場合においては、タンパク質の低量または低活性は、マーカー遺伝子変異により、組織として変異したmRNAが大量にあることと関連しており、ゆえに、タンパク質活性が枯渇し、タンパク質産生のシグナルが繰り返して出される。
本明細書において、「遺伝子欠損」とは、2未満のDNAコピー数の量を指し、「増幅」とは、2より多いDNAコピー数の量を指す。「二倍体」の量とは、2と等しいコピー数を指す。「2倍体、または増幅」という用語は、遺伝子コピーが「欠損していない」こととして解釈することができる。選択的な有益の量が遺伝子欠損であるマーカーにおいて、増幅は通常見られない。逆に「二倍体または欠損」という用語は、コピー数が「増幅しない」こととして解釈することができる。選択的な有益の量が増幅であるマーカーにおいて、遺伝子欠損は通常みられない。明確に述べると、配列欠損は、マーカー遺伝子の変異の結果として遺伝子内に発生することができ、転写されたタンパク質の欠損をもたらすか、または短縮化されたmRNAもしくはタンパク質をもたらす。そのような欠損は、コピー数に影響を与えなくとも良い。
「長期の生存期間」および「短期の生存期間」という用語は、治療の最初の投与を受けた後の、癌患者が生存すると予測される期間の長さを指す。「長期間生存者」とは、短期間生存者として特定された患者よりも、腫瘍による死が遅くなるか、または進行の程度が遅くなると予測される患者を指す。「生存上昇」または「死亡率の低下」は、たとえば、群の70%、80%、90%またはそれ以上が治療の最初の投与を受けた後に、十分な期間生存するような参照標準と比較し、特性(たとえば、本明細書に記述される1つ以上のマーカーのサイズ、配列、組成または量)に基づき推定された生存期間の決定である。「死亡率の早期化」または「生存期間の短期化」は、たとえば、群の50%、40%、30%、20%、10%またはそれ未満が、治療の最初の投与を受けた後に、十分な期間生存しないような参照標準と比較し、本明細書に記述される1つ以上のマーカーの特性(たとえば、サイズ、配列、組成または量)に基づき推定された生存期間の決定を指す。いくつかの実施形態において、十分な期間は、癌治療を受けた最初の日から数えて少なくとも6、12、18、24または30か月である。
癌は、治療剤と接触しない場合のその増殖と比較して、治療剤と接触した結果、その増殖率が阻害される場合、治療剤に対し「応答性」があるか、または治療に対し「良好な応答」がある。癌の増殖は、様々な方法で測定することができ、たとえば、腫瘍のサイズ、腫瘍型に適した腫瘍マーカーの発現等の特性を測定してもよい。たとえば、骨髄腫に関連したマーカーの特定、およびたとえば1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質療法へのその応答性を支援するために用いられる応答の定義である、Blade et al. (1998) Br J Haematol. 102:1115-23に記述されるSouthwestern Oncology Group (SWOG)の基準を用いることができる。これらの基準は、骨髄腫で測定される応答の型を定義し、または、治療剤に対する腫瘍の感受性のもう1つの重要な評価基準である疾患進行に対する時間の特徴付けを定義している。固形腫瘍に対しては、Response Evaluation Criteria in Solid Tumors (RECIST) ガイドライン (Eisenhauer et al. (2009) E. J. Canc. 45:228-247)を用いて、固形腫瘍に関連するマーカー、およびNAE阻害物質に対する固形腫瘍の応答の特定を支援することができる。International Working Groupsが定期的に開催され、様々なタイプの癌に対する応答の基準が設定、更新、そして公開されている。そのような公開レポートに従い、対象腫瘍のマーカーおよびそれらのNAE阻害物質に対する応答の特定をサポートすることができる。例は、急性骨髄性白血病(AML、Cheson et al. (2003) J.Clin. Oncol. 21:4642-4649)およびリンパ腫(たとえば非ホジキンリンパ腫およびホジキンリンパ腫(Cheson et al. (2007) J.Clin. Oncol. 25:579-596))に対する基準である。基準は、たとえば測定可能な変化した代謝活性を伴う部位(たとえば、腫瘍部位)の特定もしくはin vivoでの腫瘍内への特定のマーカーのトレースのためにたとえば陽電子放出コンピューター断層撮影(PET)等の分析法を、特定の腫瘍マーカーに対する抗体の結合を検出することによる腫瘍細胞の特定のためにたとえば免疫組織化学法を、ならびに、異なるマーカーおよび蛍光染色による細胞型の特徴付けの等ためにフローサイトメトリー法を、さらに、細胞組成(たとえば、血液スメアもしくは骨髄生検中の芽球カウント、有糸分裂像の存在および数等)または組織構造(たとえば不規則な組織構造または細胞の基底膜浸潤)を特定するために組織学的な従来法を、考慮に入れている。たとえば1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質療法に対し応答性であることの質は変化するものであり得、異なる癌は、異なる条件下で、与えられた治療剤に対する異なるレベルの「応答性」を示す。さらに、応答性の評価基準は、患者の生活の質、転移の程度等を含む、腫瘍サイズの増加を超えた追加の基準を用いて分析することができる。さらに、臨床的な予後マーカーおよび変量(たとえば、骨髄腫のMタンパク質、前立腺癌のPSAレベル等)を、適用可能な状況で分析することができる。
治療剤との接触が無い場合の増殖と比較して、治療剤と接触した結果としてのその増殖率が阻害されない、またはごくわずかしか阻害されない場合、治療に対して、癌は、治療剤に対して「不応性」であるか、もしくは「不良な応答性」を有するか、または不良な応答性となる。上述のように、癌の増殖は様々な方法で測定することができ、たとえば、腫瘍サイズまたは腫瘍型に適した腫瘍マーカーの発現が測定されてもよい。たとえば、治療剤に対して不応性の腫瘍に関連したマーカーの特定を支援するために用いられる応答の定義として、たとえば上述のガイドラインを用いることができる。治療剤に対して不応性であることの質は、とても変わりやすいものであり、異なる癌は、異なる条件下で、与えられた治療剤に対して異なるレベルの「不応性」を示す。さらに、不応性の評価基準は、患者の生活の質、転移の程度等の腫瘍サイズの増加を超えた追加の基準を用いて分析することができる。くわえて、臨床的な予後診断マーカーおよび変量(たとえば、骨髄腫のMプロテイン、前立腺癌のPSAレベル)を、適切な状況下で分析することもできる。
本明細書において、「長期の無増悪期間」、「長期TTP」および「短期の無増悪期間」、「短期TTP」とは、治療により安定した疾患が活性化疾患の状態に変化するまでの時間の長さを指す。時折、治療は、良好な応答でも不良な応答でもない安定した疾患状態をもたらすことがあり、たとえば、ただ単に悪くならない疾患であるMRが、一時期、進行性の疾患となる。この期間は、少なくとも4〜8週間、少なくとも3〜6か月、または6か月超であってもよい。
「治療」は、さらなる腫瘍増殖を阻害または防ぐため、ならびに、腫瘍の縮小をもたらすため、および長期生存をもたらすために治療を用いることを意味する。治療はまた、腫瘍の転移を防ぐことを含むこともまた意図される。もし癌または腫瘍の少なくとも1つの臨床症状(応答性/不応性、無増悪期間、または当分野に公知の指標および本明細書に記述の指標により決定される)が軽減、終了、遅延、最小化、または防止された場合、腫瘍は、「阻害される」または「治療される」。本明細書にさらに記述されるように、治療レジメン(たとえば、1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害物質レジメン)を用いた治療に従う腫瘍の任意の症状(物理的なもの、またはその他のもの)の任意の軽減は、本発明の範囲内である。
本明細書において、「剤」という用語は、腫瘍細胞を含む癌細胞が治療プロトコールで曝されうる任意のものとして広く定義される。本発明との関連で、そのような剤として、たとえば1−置換メチルスルファミン酸塩剤等のNAE阻害物質、ならびに当分野に公知および本明細書に詳述される化学療法剤が挙げられるが、これに限定されない。
「プローブ」という用語は、たとえば本発明のマーカー等の特定の目的標的分子に選択的に結合することができる、単離分子等の任意の分子を指す。プローブは、当業者により合成されるか、または適切な生物学的材料から由来してもよい。標的分子検出の目的のために、プローブは本明細書に記述されるように標識されるよう具体的に設計されても良い。プローブとして用いることができる分子の例としては、RNA、DNA、タンパク質、抗体および有機モノマーが挙げられるが、これらに限定されない。
マーカーのたとえばサイズ、配列、組成または量等の「正常な」特性とは、「基準試料」中の、たとえばサイズ、配列、組成または量等の特性を指しても良い。基準試料は、たとえば体細胞変異等を伴う腫瘍が生じている同じ患者由来の正常な、たとえば胚細胞系の適合試料であってもよい。基準試料は、マーカー関連疾患を有していない健常な対象由来の試料であってもよく、またはたとえば平均特性等の基準特性(たとえば、数人の健常な対象中の野生型マーカーのサイズ、配列、組成または量)であってもよい。基準試料特性(たとえば、サイズ、配列、組成または量)は、参照データベース由来の1つ以上のマーカーのサイズ、配列、組成または量等の特性から構成されてもよい。あるいは、マーカーのサイズ、配列、組成または発現レベル等の「正常な」特性は、腫瘍が生じた同じ患者から同様の環境または応答状況での非腫瘍細胞中のマーカー遺伝子等のマーカーのサイズ、配列、組成または量等の特性である。正常なDNAコピー数は2または2倍体であり、例外は、男性のX関連遺伝子であり、そこでは正常なDNAコピー数は1である。
マーカー遺伝子の「過剰発現」および「低発現」とは、患者のマーカー遺伝子の発現が、それぞれマーカー遺伝子の正常発現レベルよりも、高いレベルまたは低いレベルにある(たとえば、2分の3倍超、少なくとも2倍、少なくとも3倍より高いレベルかより低いレベル等)ことを指し、たとえば、検証試料中のmRNAまたはタンパク質で測定して、発現を分析するために行った分析の標準誤差よりも大きいことを指す。「有意な」発現レベルとは、本明細書に提供される方法により決定されたように設定されたマーカー遺伝子に対して前もって決定されたスコアと合致するか、上回るか、または下回るレベルを指してもよい。
「相補的」とは、2つの核酸鎖の領域間、または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広い概念を指す。1番目の核酸領域のアデニン残基は、その1番目の領域と逆行する2番目の核酸領域の残基と、もしその残基がチミンまたはウラシルである場合には、特異的な水素結合(塩基対)を形成することが出来ることが知られている。同様に、1番目の核酸鎖のシトシン残基は、その1番目の鎖と逆行する2番目の核酸鎖の残基と、もしその残基がグアニンである場合には、塩基対を形成できることが知られている。核酸の1番目の領域は、同じ、または異なる核酸の2番目の領域に対して、もし、その2つの領域が逆行する様式で配置される際、1番目の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基と2番目の領域の残基が塩基対を形成できる場合には、相補的である。ひとつの実施形態において、1番目の領域は、1番目の部分を含有し、2番目の領域は2番目の部分を含有し、ここで、1番目と2番目の部分が逆行する様式で配置される際、1番目の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%またはすべてが、2番目の部分のヌクレオチド残基と塩基対を形成することができる。
本明細書において「相同」とは、同じ核酸鎖の2つの領域の間の、または2つの異なる核酸鎖の領域の間のヌクレオチド配列の類似性を指す。両領域のヌクレオチド残基配置が同じヌクレオチド残基で占められる場合、その領域はその位置で相同である。もし各領域の少なくとも1つの位置のヌクレオチド残基が同じ残基で占められる場合、1番目の領域は2番目の領域に対して相同である。2つの領域間の相同性は、同じヌクレオチド残基で占められている2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合で表される(すなわち、同一性パーセントにより)。例として、ヌクレオチド配列5´−ATTGCC−3´を有する領域と、ヌクレオチド配列5´−TATGGC−3´を有する領域は、50%同一の相同性を共有する。1つの実施形態において、1番目の領域は1番目の部分を含有し、2番目の領域は2番目の部分を含有し、ここで、各部分のヌクレオチド残基配置の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%は、同じヌクレオチド残基に占められる。100%同一の1つの実施形態においては、各部分のすべて位置のヌクレオチド残基は、同じヌクレオチド残基で占められる。
本明細書中に他で特定されない限り、「抗体」(複数含む)という用語は、自然発生する抗体の形態(たとえば、ポリクローナル抗体(たとえば、IgG、IgA、IgM、IgE)およびモノクローナル抗体および組換え抗体(たとえば、単鎖抗体、二鎖タンパク質および複鎖タンパク質、キメラ抗体、CDR移植抗体、ヒト抗体およびヒト化抗体および多特異的抗体ならびに前述すべての断片および誘導体であり、当該断片(たとえば、dAbs、scFv、Fab、F(ab)´2、Fab´)および当該誘導体は、少なくとも抗原結合部位を有する))を広く含有する。抗体誘導体は、抗体に連結されたタンパク質またはキメラ部分を含有しても良い。「抗体」という用語はまた、合成変異体および遺伝子操作変異体を含む。
「キット」は、本発明のマーカーまたはマーカーセットを特異的に検出するための試薬(たとえば、プローブ)を少なくとも1つ含有する任意の製造品(たとえば、パッケージまたは容器)である。当該製造品は、たとえばin vitroで、本発明の方法を実施する(たとえば、患者から得られた試料での実施)ためのユニットとして販売するために、販売促進、流通、販売または売り出されてもよい。そのようなキットに含まれる試薬は、少なくとも1つの核酸プローブと、任意選択的に、マーカー特性(たとえば、サイズ、配列、組成または(たとえば発現の)量等)を検出するために用いるための1つ以上のプライマーおよび/または抗体を含んでも良い。さらに、本発明のキットは、適切な検出アッセイを記述している説明書を含有してもよい。そのようなキットは、癌の症状を示している患者、特に、NAE阻害療法で治療することができる癌(たとえば、血液のがん、(たとえば、多発性骨髄腫等の骨髄腫、非ホジキンリンパ腫等のリンパ腫、急性骨髄性白血病等の白血病)および固形腫瘍(たとえば、皮膚腫瘍、肺腫瘍、乳房腫瘍、卵巣腫瘍等))である可能性を示している患者の診断、評価または治療を可能にするために、記録、保存、転送または受信される情報(たとえば1つ以上のマーカーの発現レベル、特性(たとえば、サイズ、配列、組成))を作り出すために、臨床で、または罹患検査セットで、簡便に用いることができる。
本発明の方法および組成物は、癌に罹患している患者に対する診断および治療に用いることを目的とする。癌または腫瘍は、本発明の方法に従い、治療または診断される。「癌」または「腫瘍」は、患者内での任意の腫瘍性増殖を含むことが意図され、原発腫瘍および任意の転移腫瘍が含まれる。癌は、血液系腫瘍型または固形腫瘍型であっても良い。血液系腫瘍には、血液が原発である腫瘍が含まれ、たとえば、骨髄腫(たとえば、多発性骨髄腫)、白血病(ワルデンシュトローム症候群、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、他の白血病)、リンパ腫(たとえば、B細胞性リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)および骨髄異形成症候群が含まれる。固形腫瘍は、器官に起源があってもよく、たとえば皮膚、肺、脳、乳房、前立腺、卵巣、大腸、腎臓、膵臓、肝臓、食道、胃、小腸、膀胱、子宮、子宮頚、頭頚、中枢神経系、骨、精巣、副腎等における癌を含んでも良い。癌は、マーカー遺伝子が変異している細胞を含有しても良い。本明細書において、癌細胞(腫瘍細胞を含む)は、異常な(増加した)速度で分裂する細胞を指すか、またはその増殖および生存の制御が、癌細胞が発生または生存している同じ組織の細胞に対するものとは異なっている細胞を指す。癌細胞としては、たとえば、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、皮脂腺癌、腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支癌、メラノーマ、腎細胞癌、ヘパトーマ−肝細胞癌、胆管癌、胆管癌、乳頭癌、移行上皮癌、絨毛癌、精上皮腫、胚性癌、乳癌、胃腸癌、大腸癌、膀胱癌、前立腺癌および頭頸部の扁平上皮癌等の癌;たとえば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、腱肉腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫および中皮肉腫等の肉腫;骨髄腫、白血病(たとえば、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ球性白血病)、およびリンパ腫(たとえば、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫、またはホジキン疾患)等の血液の癌;および、グリオーマ、髄膜腫、髄芽腫、神経鞘腫または上衣腫を含む神経系の腫瘍を含むが、これらに限定されない。
本明細書において、「非侵襲」という用語は、対象に最小限の損傷を与える手順を指す。臨床応用のケースにおいて、非侵襲の試料採取手順は、通常、麻酔および/または外科的器具または縫合を行うことなく、たとえば予約なしの飛び入りで、素早く行われることができる。非侵襲の試料採取の例としては、血液、血清、唾液、尿、頬スワブ、咽頭培養、糞便試料および頸部スメアが挙げられる。非侵襲診断分析としては、X線、磁気共鳴画像、陽電子放出コンピューター断層撮影等が挙げられる。
本明細書において、ファーマコゲノミクスマーカーの量の測定を介した、腫瘍の治療予後評価が示される。また、非侵襲、簡便または低コストな方法(たとえば、血液試料由来)による予後評価が示される。血液系腫瘍(たとえばリンパ腫、白血病(たとえば急性骨髄性白血病)、骨髄腫(たとえば多発性骨髄腫))の癌の程度または予後を決定するための典型的な方法として、骨髄生検を実施し、遺伝子型または表現型(たとえば組織学的分析)のための組織を採取することができる。本発明は、患者の腫瘍治療または疾患管理のための適切な治療レジメンを決定、評価、アドバイスまたは提供するための方法を提供する。本明細書に提供されるキットおよび方法を用いた治療のモニタリングは、好ましくない予後の可能性を特定、およびそれらを防止することができ、ゆえに、罹患率、死亡率をおさえ、治療レジメンの調節、治療中断、または代替療法の使用を介して、治療コストを抑えることができる。
「生物学的試料」という用語は、たとえば組織、細胞、生物学的液体およびそれらから単離されたもの、対象から単離されたもの、ならびに、対象内に存在する組織、細胞および液体等の患者試料を含むことが意図され、患者または健常な対象から得ることができる。骨髄の血液系腫瘍(たとえば、骨髄腫瘍)において、腫瘍の一次解析は、骨髄試料で実施することができる。しかしながら、いくつか種類の腫瘍細胞(たとえば、クローン形質の腫瘍細胞、循環内皮細胞等)は、全血の細胞群に一定の割合でいる。これらの細胞はまた、たとえば白血病、リンパ腫および骨髄腫等の血液腫瘍に対する標準療法である骨髄移植の準備段階で、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)で患者を処置する間に、血液中に動員することができる。多発性骨髄腫の循環腫瘍細胞の例は、たとえば、Pilarski et al. (2000) Blood 95:1056-65、および、Rigolin et al. (2006) Blood 107:2531-5により研究されている。ゆえに、たとえば、治療結果を決定するためのマーカーのin vitro測定のための非侵襲試料は、末梢血試料を含むことができる。従って、末梢血中の細胞を、マーカー量のために試験することができる。血液系腫瘍を有する患者に対し、正常な特性(たとえばサイズ、配列、組成または量)の対照である、基準試料は、患者の皮膚または頬スワブから得ることができる。固形腫瘍に対しては、典型的な腫瘍試料は腫瘍生検であり、固形腫瘍細胞が含有されている。あるいは、たとえば血液、唾、乳頭吸引液、尿、糞便、頸スメア等中で、脱落腫瘍細胞または腫瘍部位から擦り取った腫瘍細胞を非侵襲的に試料採取することができる。固形腫瘍に対しては、正常特性(たとえば、サイズ、配列、組成または量)に対する対照である、基準試料は、患者の血液から得ることができる。
血液採取容器に、血液の完全性を保つための添加剤(たとえばデキストロースまたはアルブミンまたはリン酸塩等の緩衝剤)とともに、抗凝固剤(たとえばヘパリンまたはエチレン−ジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウムまたはクエン酸溶液)を含有することができる。マーカーの量が、試料中のそのDNAレベルを測定することにより測定されるものである場合、DNA安定化剤、たとえばDNAseを阻害する剤を、試料に添加することができる。マーカーの量が、試料中のそのRNAレベルを測定することにより測定されるものである場合、RNA安定化剤、たとえばRNAseを阻害する剤を試料に添加することができる。マーカーの量が、試料中のそのタンパク質レベルを測定することにより測定されるものである場合、タンパク質安定化剤、たとえばプロテアーゼを阻害する剤を試料に添加することができる。血液採取容器の例は、血液採取の際のRNA安定化に有用なPAXGENE(登録商標)チューブ(PREANALYTIX、Valencia、CA)がある。末梢血は、たとえば分画化、ソート、または濃縮(たとえば、腫瘍を富化させた試料、またはたとえば基準試料のために腫瘍が無い試料を得るため)等の改変をすることができる。改変試料の例としては、たとえば負の選択(たとえば赤血球からの白血球分離(たとえば、高密度糖またはポリマー溶液(たとえば、FICOLL(登録商標)溶液(Amersham Biosciences division of GE healthcare, Piscataway, NJ)またはHISTOPAQUE(登録商標)−1077溶液(Sigma−Aldrich Biotechnology LP and Sigma−Aldrich Co., St. Louis, MO))を介した分画遠心分離))、および/または、直接単離を目的とした選択剤(たとえば、CD34、CD38、CD138またはCD133等の腫瘍細胞マーカーまたは骨髄前駆体マーカーへ結合する試薬)へのB細胞の結合による正の選択(たとえば、B細胞マーカーへ結合する磁気ビーズ(たとえば、Miltenyi Biotec, Auburn, CAより入手)を含有する細胞の溶液への磁場の適用)、または蛍光活性化細胞ソーティングにより採取することができるクローン形質の骨髄腫細胞が含まれる。
あるいは、腫瘍細胞株(たとえば、OCI−Ly3、OCI−Ly10細胞(Alizadeh et al. (2000) Nature 403:503-511)、RPMI 6666細胞、SUP−B15細胞、KG−1細胞、CCRF−SB細胞、8ES細胞、Kasumi−1細胞、Kasumi−3細胞、BDCM細胞、HL−60細胞、Mo−B細胞、JM1細胞、GA−10細胞、またはB細胞リンパ腫(たとえば、BC−3))または細胞株もしくは腫瘍細胞株のコレクション(たとえば、McDermott et al. (2007) PNAS 104:19936-19941または、ONCOPANEL(商標)抗癌腫瘍細胞プロファイリングスクリーン(Ricerca Biosciences, Bothell, WA)を参照のこと)を分析することができる。当業者であれば、本発明の方法に用いられる適切な細胞を、たとえば、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))(Manassas、VA)より、容易に選択および得ることができる。もし当該組成物または方法が、治療プロトコールの有効性をモニターするため、または患者の治療予後を予測するために用いられるものである場合、治療される患者から得られた組織試料または血液試料が、分析のために用いることができる細胞源、またはマーカー遺伝子源、または遺伝子産物源となる。
たとえば、生検もしくは骨髄、血液もしくは改変血液(たとえば、腫瘍細胞を含有するもの)および/または基準(たとえば合致対照(たとえば、胚細胞系))試料を、当該試料中のマーカーの量を分析する前に、様々な公知の採取後調製技術および保存技術(たとえば、核酸および/またはタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外ろ過、濃縮、蒸発、遠心等)に供することができる。
1つの実施形態において、マーカー遺伝子の変異状態(たとえば、マーカー中の変異)を、DNA、RNA、cDNA等の核酸または、マーカー遺伝子に関連するタンパク質の配列解析を行うことにより特定することができる。核酸を配列解析するための方法は、当分野にいくつか知られている。核酸プライマーは、変異の可能性がある部位を含有する領域に結合するように設計することができ、または、野生型配列よりも変異配列に相補的であるように設計することができる。プライマー対は、マーカー遺伝子中の潜在的な変異を含有する領域を囲むように設計することがえきる。プライマーまたはプライマー対は、マーカー遺伝子に対応するDNAの1つの鎖または両鎖を配列解析するために用いることができる。プライマーは、プローブ(たとえばハイブリダイゼーションプローブ等の核酸プローブ)と併せて用いて、配列解析の前に対象の領域を増幅させ、マーカー遺伝子中の変異の検出のための配列量を引き上げることができる。配列解析することができる領域の例としては、遺伝子全体、遺伝子の転写物、および遺伝子の断片または転写物(たとえば、1つ以上のエクソンまたは非翻訳領域)が挙げられる。プライマー選択の標的となる変異の例、および配列解析または組成分析の標的となる変異の例は、変異情報を収集している公共のデータベース(たとえば、COSMICおよびdbGaP等)中に見出すことができる。たとえばNF2、SMAD、KDM6AまたはFBXW7等のマーカー遺伝子の一部の変異を、たとえば1−メチルスルファミン酸塩(たとえばMLN4924)の阻害によるNAE阻害に対する感受性と関連しうる変異の例示として、実施例の表8〜11に列挙する。
配列解析法は、当業者に公知である。方法の例としては、サンガー法、SEQUENOM(商標)法、および次世代配列解析(NGS)法が挙げられる。プライマー伸長標識DNA断片を分離するための、たとえばキャピラリー電気泳動等の電気泳動法の使用を含むサンガー法は、ハイスループットアプリケーションで自動化することができる。プライマー伸長配列解析は、対象領域のPCR増幅の後で行うことができる。配列ベース呼び出しおよび変異特定には、ソフトウエアを役立てることができる。SEQUENOM(商標)MASSARRAY(登録商標)配列分析(San Diego,CA)は、変異を特定するために、対象の特定断片の予測質量と実際の質量とを比較する質量分光分析法である。NGS技術(または、「超並列配列解析」および「第二世代配列解析」とも呼ばれる)は、概して、従前の技術よりもより多くのスループットを提供し、様々なアプローチ(Zhang et al. (2011) J. Genet. Genomics 38:95-109 および、Shendure and Hanlee (2008) Nature Biotech. 26:1135-1145に概略がある)を用いる。NGS法は、試料のマーカー中の低頻度変異を特定することができる。いくつかのNGS法(たとえば、GS−FLX Genome Sequencer(Roche Applied Science,Branford,CT)、Genome分析器(Illumina,Inc.San Diego,CA)SOLID(商標)分析器(Applied Biosystems,Carlsbad,CA)、Polonator G.007 (Dover Systems,Salem,NH)、HELISCOPE(商標)(Helicos Biosciences Corp.,Cambridge,MA))は、フローセル中で空間的に分離されたPCR産物のクローン増幅の有無にかかわらず、サイクリックアレイ配列解析および様々なスキームを用いて、配列解析酵素(たとえば、ポリメラーゼまたはリガーゼ)により組み込まれた標識改変ヌクレオチドを検出する。1つのNGS法において、プライマー対を、PCR反応に用いて、対象の領域を増幅することができる。増幅された領域は、連結された産物内へライゲーションすることができる。クローンライブラリーを、PCR産物またはライゲーション産物からフローセル中で作製し、標識塩基の同一性に基づき、4つのチャンネルのうちの1つで画像化される、標識された、可逆終端塩基をポリメラーゼが付加しながら、シングルエンドの配列解析のためにさらに増幅(「ブリッジ」または「クラスター」PCR)され、次いで、次のサイクルのために除去される。変異特定のために、ゲノム配列との比較において、ソフトウエアを役立てることができる。
タンパク質および核酸の組成は、当分野に公知の多くの方法により測定することができ、たとえば、開裂、分解または消化する方法でそれらを処理し、次いで、成分を分析する方法などがある。質量分光分析、電気泳動およびクロマトグラフィーにより分離し、比較のための成分を明らかにすることができる。欠損または挿入をもたらす変異は、これらの方法で、サイズまたは電荷の差異により特定することができる。タンパク質消化、または制限酵素核酸消化により、いくつかのの変異の後の、異なる断片パターンを明らかにすることができる。その構造的環境中の特定の変異アミノ酸を認識する抗体により、試料中のこれらの変異を検出および特定することができる(以下を参照のこと)。
1つの実施形態において、野生型または変異マーカーに対応する、たとえばゲノムDNA等のDNAは、当分野公知の方法を用いて、生物学的試料中で、in situおよびin vitroの両方の形式で分析することができる。DNAは、試料から直接、単離することができるか、または他の細胞成分(たとえばRNAまたはタンパク質)の単離後、単離することができる。DNA単離に対しては、キットが利用可能であり、たとえば、QIAAMP(登録商標)DNA Micro Kit(Qiagen、Valencia、CA)がある。DNAは、そのようなキットを用いても増幅することができる。
他の実施形態において、マーカーに対応するmRNAは、当分野に公知の方法を用いて、生物学的試料中でin situおよびin vitroの両方の形式で分析することができる。発現レベルを測定するための方法の例を、実施例に含める。たとえば、核酸プローブを用いて、マーカーにハイブリダイズさせ、プローブがハイブリダイズした量を測定することができる。多くの発現検出法で、単離RNAが用いられる。in vitro法においては、mRNAの単離に対して選択しない任意のRNA単離技術を、腫瘍細胞からのRNA精製に用いることができる(たとえば、Ausubel et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York 1987-1999を参照のこと)。さらに、多くの組織試料が、当業者に公知の方法を用いて容易に処理することができ、たとえば、Chomczynski(1989, U.S. Patent No. 4,843,155)の、シングルステップRNA単離法がある。RNAは、標準法(たとえば、Chomczynski and Sacchi (1987) Anal. Biochem.162:156-159を参照のこと)、標準溶液(たとえば、trizol、TRI REAGENT(登録商標)(Molecular Research Center,Inc.,Cincinnati,OH;米国特許第5,346,994号を参照のこと)、または標準キット(たとえば、QIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia,CA)または、LEUKOLOCK(商標)Total RNA Isolation System、Ambion division of Applied Biosystems、Austin、TX)を用いて単離することができる。
RNA試料からDNAを除去するために、さらなるステップを行っても良い。細胞溶解は、非イオン洗剤で行うことができ、次いで、微量遠心により核(つまりは、細胞DNAの大部分)を除去することができる。次いで、DNAを、DNA分析のために核から単離することができる。1つの実施形態において、RNAは、チオシアン酸グアニジウム溶解、次いで、CsCl遠心を行ってDNAからRNAを分離することにより、対象の様々なタイプの細胞から単離される(Chirgwin et al. (1979) Biochemistry 18:5294-99)。poly(A)+RNAは、oligo−dTセルロースでの選択により、選別される(Sambrook et al. (1989) Molecular Cloning--A Laboratory Manual (2nd ed.), Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照のこと)。あるいは、DNAからのRNAの分離は、有機抽出により行うことができ、たとえば、熱したフェノール、またはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールで行うことができる。もし所望であれば、RNAse阻害剤を、溶解緩衝液に加えても良い。同様に、ある細胞タイプに対しては、タンパク質変性/消化ステップをプロトコールに加えることが望ましい。多くのアプリケーションにとって、たとえばトランスファーRNA(tRNA)およびリボゾーマルRNA(rRNA)等の他の細胞RNAに対して、mRNAを富化させることが望ましい。ほとんどのmRNAは、その3´末端にポリ(A)テールを有している。これにより、たとえばセルロースやSEPHADEX.R(商標)メディウム等の固形支持体に連結させたオリゴ(dT)またはポリ(U)を用いたアフィニティクロマトグラフィーにより、mRNAを富化させることができる(Ausubel et al. (1994) Current Protocols In Molecular Biology, vol. 2, Current Protocols Publishing, New Yorkを参照のこと)。結合した時点で、ポリ(A)+mRNAは、2mMのEDTA/0.1%SDSを用いて、アフィニティカラムから溶出される。
たとえば検証対象から生物学的試料(たとえば、骨髄試料、腫瘍生検または基準試料)を得た後の、生物学的試料中の本発明のマーカーの特性は、たとえば核酸(たとえば、RNA、mRNA、ゲノムDNAまたはcDNA等)の特性および/または翻訳されたタンパク質の特性を、広く公知の任意の測定法または検出法により評価されてもよい。そのような方法の非限定的な例としては、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質または核タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製法、タンパク質機能分析または活性分析、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、および核酸増幅法が挙げられる。これらの方法としては、遺伝子アレイ/チップ技術、RT−PCR、TAQMAN(登録商標)遺伝子発現分析(Applied Biosystems、Foster City、CA)、たとえばGLP認証実験条件下でのin situハイブリダイゼーション、免疫組織化学法、免疫ブロッティング、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)、FACS分析、ノーザンブロット、サザンブロット、INFINIUM(登録商標)DNA分析BeadChips(Illumina、Inc.、San Diego、CA)、定量的PCR、細菌人工染色体アレイ、一塩基変異多型(SNP)アレイ(Affymetrix、Santa Clara、CA)または細胞遺伝学的解析が挙げられる。本発明の検出法は、ゆえに、たとえばin vitroならびにin vivoの生物学的試料中のRNA、mRNA、タンパク質、cDNAまたはゲノムDNAを検出するために用いることができる。さらに、本発明のマーカーに対応する核酸またはポリペプチドの検出のためのin vivo技術には、バイオマーカー(たとえば、バイオマーカーの転写物に相補的な核酸、または標識抗体、Fc受容体もしくはポリペプチド(たとえば、野生型または変異マーカー)に結合する抗原)を検出するための標識プローブを対象に導入することが含まれる。たとえば、抗体は、放射性同位体で標識することができ、その対象内の存在および位置を標準的な画像技術で検出することができる。これらの分析法は、様々な方法で実施することができる。当業者であれば、マーカー(複数含む)、組織試料および問題となっている変異の性状に基づき、これらの中から、または他の適切で利用可能な方法の中から選択することができる。いくつかのの方法を後述の項にてより詳細に記述する。異なるケース、または、たとえば腫瘍の異なる型もしくは異なる型の患者群においては、異なる方法または方法の組み合わせが適切な場合もある。
本発明のマーカーに対応するポリペプチドを検出するためのin vitroの技術としては、酵素免疫吸着測定法(ELISA)、ウェスタンブロット、タンパク質アレイ、免疫沈降および免疫蛍光法が挙げられる。そのような例において、マーカーの発現は抗体(たとえば、放射線標識、クロモフォア標識、フルオロフォア標識または酵素標識抗体)、抗体誘導体(たとえば、基質が結合した抗体、またはタンパク質−リガンド対(たとえば、ビオチン−ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンドが結合した抗体)または、抗体断片(たとえば、単鎖抗体、単離抗体超可変ドメイン等。マーカータンパク質またはその断片(その構造関係の中で変異した、または変異した配列もしくは変異した残基を含有する部分である領域を含有する断片またはタンパク質であり、その正常な翻訳後修飾のすべて、または一部を受けているマーカータンパク質を含む)と特異的に結合する)を用いて分析される。抗体は、配列番号3、6、10、11、14、17、20および23からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質を検出することができる。あるいは、抗体は、配列番号3、6、10、11、14、17、20および23の変異からなる群から選択される変異アミノ酸配列を有する変異タンパク質を検出することができる。たとえばdbGaPのCOSMIC等の公共データベースで変異として列挙されている残基は、その変異残基を特異的に認識および結合する抗体の作製のための免疫原性の組成物で調製することができる。他の方法で抗体の対を使用することもでき、ここで、その対のうちの1つは、マーカータンパク質の上流、すなわち、変異予測領域(たとえば、ナンセンスまたは欠損)のN末端に結合し、対の他方は、タンパク質の下流に結合する。野生型タンパク質は、対の両方の抗体に結合するが、ナンセンスまたは欠損変異があるタンパク質は、対のうちN末端抗体のみしか結合しない。たとえばサンドイッチELISA分析法等の分析法により、腫瘍試料中の野生型タンパク質の失われた量を、たとえば基準試料との比較で検出してもよい。または標準的なELISA法により、抗体の結合レベルを比較し、腫瘍試料中に変異が存在するかを推測してもよいだろう。
タンパク質マーカーの量または機能性を検出するための間接的な方法としては、タンパク質の活性測定が挙げられる。たとえば、試料、または試料から単離されたタンパク質、または試料から単離、クローニング、増幅された核酸から発現されたタンパク質で、マーカータンパク質の活性を分析することができる。NF2活性を、結合パートナーに結びつくその能力により測定することができ、たとえば、セルフリーアッセイまたはセルベースのアッセイで測定することができる。1つの例においては、NF2の赤血球膜またはp55/MPP1に結合する能力を測定することができる(Seo et al. (2009) Exp. Biol. Med. 234:255-262)。他の例においては、SMAD4活性を、シグナル伝達におけるその活性により測定することができ、たとえば、セルフリーアッセイまたはセルベースのアッセイで測定することができる。1つの例において、SMAD4のリン酸化状態を測定することができ、SMAD4のSmad−結合エレメントでのDNAへの結合は、たとえば、ゲルシフトアッセイまたはレポーターアッセイで測定することができ(see, e.g., Kuang and Chen (2004) Oncogene 23:1021-1029)、または核と細胞質の間のSMAD4の移動は、細胞画像上で可視化し、定量化することができる。他の例においては、KDM6A活性を、たとえばヒストン等、タンパク質を脱メチル化するその活性により測定することができる。たとえば、アッセイにより、ヒストン3のリジン27の脱メチル化レベルを測定することができる(Hong et al. (2007) PNAS 104:18439-18444)。他の例においては、FBXW7活性を、サイクリンEに結合する活性、またはSkp−cullin−F−boxユビキチンリガーゼ複合体の中に組み込まれる活性により測定することができる。他の例においては、TP53の活性を、DNAに結合する活性または、四量体を形成する活性により測定することができる。
1つの実施形態において、マーカーの発現は、患者試料中の細胞からmRNA/cDNA(すなわち、転写されたポリヌクレオチド)を調製し、そしてmRNA/cDNAと、マーカー核酸と相補的かまたはその断片である参照ポリヌクレオチド(たとえば、ハイブリダイゼーションプローブ等の単離核酸プローブ)とをハイブリダイズすることにより、分析される。cDNAは、任意選択的に、参照ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に、任意の様々なポリメラーゼ鎖反応法を用いて増幅されてもよい。同様に、1つ以上のマーカーの発現を、定量的PCRを用いて検出し、マーカー(複数含む)の発現レベルを評価してもよい。mRNAレベル測定の使用例は、マーカー遺伝子中の不活性変異によって細胞中のmRNAレベルの変化をもたらしうることである。そのレベルは、機能性ではない、またはタンパク質が無いことでタンパク質産生のシグナル伝達のフィードバックが働き上方調節され、または、変化したmRNA配列の不安定さにより下方調節される。あるいは、本発明のマーカーの変異または変異体(たとえば、上述の一塩基変異多型、欠損等)を検出するための多くの公知の方法のうち任意のものを用いて、患者のマーカー遺伝子中の変異発生を検出してもよい。
直接測定の例としては、転写物の定量がある。本明細書において、発現レベルまたは発現量とは、マーカーによりコードされるmRNA発現の絶対量または、マーカーによりコードされるタンパク質発現の絶対量を指す。選択マーカーの絶対発現量に基づく測定実施に代わり、正規化された発現量に基づいて測定が行われても良い。発現量は、マーカーの絶対発現レベルを、マーカーではない対照マーカー(たとえば、恒常的に発現されているハウスキーピングの役割にあるもの)の発現量と比較することで補正することにより正規化されてもよい。正規化のための適切なマーカーとしてはまた、ハウスキーピング遺伝子(たとえば、アクチン遺伝子またはβ2マイクログロブリン等)が挙げられる。データ正規化の目的のための参照マーカーとしては、偏在的に発現されているマーカー、および/またはその発現が癌遺伝子により制御されていないマーカーが挙げられる。恒常的に発現されている遺伝子は当分野に公知であり、適切な組織および/または患者の状況、ならびに分析法に応じて、特定および選択することができる。そのような正規化により、1つの試料中の発現レベルと、他の試料中の発現レベルとを比較する(たとえば、異なる時間または異なる対象から得られた試料間で比較する)ことができる。さらに、発現レベルは、相対発現レベルとして提供されてもよい。ゲノムDNA試料のベースライン(たとえば、2倍体コピー数)は、腫瘍を有していない対象由来の細胞中の量、または患者の非腫瘍細胞中の量を測定することにより決定することができる。マーカーまたはマーカーセットの相対量測定については、問題となっている試料の発現レベル測定の前に、ベースラインを確立するために、少なくとも1、または2、3、4、5またはそれ以上の数の試料(たとえば、7、10、15、20または50以上の試料)に対して、マーカーまたはマーカーセットの量が測定される。ベースライン測定を確立するために、多量の試料で分析された各マーカーまたはマーカーセットの平均量または平均レベルを決定し、これを、問題となっているバイオマーカーまたはバイオマーカーセットに対するベースライン発現レベルとして用いる。検証試料に対して測定されたマーカーまたはマーカーセットの量(たとえば、発現の絶対レベル)は、次いで、そのマーカーまたはマーカーセットに対して得られたベースライン値により割られる。これにより相対値が得られ、マーカータンパク質活性の異常レベルの特定に役立たせることができる。
本発明の核酸分子配列に基づくプローブを用いて、本発明のマーカーの1つ以上に対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。プローブは、プローブに付着する標識群(たとえば、放射性同位元素、蛍光化合物、酵素または酵素補因子等)を含有することができる。そのようなプローブを、当該タンパク質を発現している細胞または組織を特定するための診断テストキットの一部として用いて、たとえば患者由来の細胞試料中の当該タンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定することにより、たとえばmRNAレベルを測定、または当該タンパク質をコードする遺伝子が変異または欠損しているかどうかを判定することができる。
本明細書に記述されるデータベースの記録中に記述される核酸配列に加え、当業者であれば、群(たとえば、ヒトの群)の中に、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列の多形が存在していることを、理解することができる。そのような遺伝子的多形は、対立遺伝子変異が自然発生することにより、群の中で、個々の間に存在しうる。対立遺伝子は、所与の遺伝子座で代替的に発生する遺伝子群のうちの1つである。さらに、RNAの発現レベルに影響を与えるDNA多形は、その遺伝子の全体の発現レベルに影響を与えうる(たとえば、制御または分解に影響を与えることにより)ものとしてもまた存在することができることが理解される。
プライマーおよび核酸プローブは、特定のマーカーまたはその変異領域に相補的なヌクレオチド配列を含有し、マーカー遺伝子またはマーカー遺伝子に関連した核酸に選択的にハイブリダイズするのに十分な長さであり、たとえば、塩基配列特異的に核酸に結合することができ、そして洗浄の後も結合したままでいられる。プライマーとプローブは、マーカー核酸の単離および配列解析に役立つように用いることができる。1つの実施形態において、プライマーまたは核酸プローブ、たとえば、実質的に精製されたオリゴヌクレオチド、単離核酸は、たとえばストリンジェントな条件下で、約6、8、10、12、15、20、25、30、40、50、60、75、100、200、350、500もしくはそれ以上の連続したヌクレオチドのマーカー遺伝子、または、マーカー遺伝子もしくはその転写物もしくは相補物の変異を含有する領域へとハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する領域を含有する。他の実施形態において、プライマーまたは核酸プローブは、配列番号1、2、4、5、7、8、9、12、13、15、16、18、19、21、22、24、25、または、染色体22qの塩基対29999545〜30094589、染色体18qの塩基対48556583〜48611412、染色体Xpの塩基対44732423〜44971847、染色体4qの塩基対153242410〜153456172、染色体17pの塩基対7571720〜7590868、染色体9pの塩基対21967751〜21994490上の配列、または、任意の前述の相補物のうちの任意のものに規定される任意の配列のヌクレオチド配列を含有するマーカー核酸にハイブリダイズすることができる。たとえば、少なくとも約10の連続的なヌクレオチド、少なくとも約15の連続的なヌクレオチド、少なくとも約25の連続的なヌクレオチド、少なくとも約35の連続的なヌクレオチド、少なくとも約50の連続的なヌクレオチドのヌクレオチド配列を含有するプライマーまたは核酸プローブが本発明により提供され、または、配列番号1、2、4、5、7、8、9、12、13、15、16、18、19、21、22、24、25、または、染色体22qの塩基対29999545〜30094589、染色体18qの塩基対48556583〜48611412、染色体Xpの塩基対44732423〜44971847、染色体4qの塩基対153242410〜153456172、染色体17pの塩基対7571720〜7590868、染色体9pの塩基対21967751〜21994490上の配列、または、任意の前述の相補物の任意のものに規定される約15〜約20ヌクレオチドを有するプライマーまたは核酸プローブが、本発明により提供される。約25、40または50ヌクレオチドを超える配列を有するプライマーまたは核酸プローブもまた本発明の範囲内にある。他の実施形態において、プライマーまたは核酸プローブは、配列番号1、2、4、5、7、8、9、12、13、15、16、18、19、21、22、24、25、または、染色体22qの塩基対29999545〜30094589、染色体18qの塩基対48556583〜48611412、染色体Xpの塩基対44732423〜44971847、染色体4qの塩基対153242410〜153456172、染色体17pの塩基対7571720〜7590868、染色体9pの塩基対21967751〜21994490上の配列、または任意の前述の相補物のうちの任意のものに規定される任意の配列のヌクレオチド配列と、少なくとも70%、少なくとも75%、80%もしくは85%、または少なくとも90%、95%もしくは97%の同一性の配列を有することができる。核酸類似体を、ハイブリダイゼーションの結合部位として用いることができる。適切な核酸類似体の例としては、ペプチド核酸(たとえば、Egholm et al., Nature 363:566 568 (1993);米国特許第5,539,083号を参照のこと)がある。
いくつかの実施形態において、核酸プローブは、野生型配列に結合するように設計することができ、その領域中に変異が存在すると、そのプローブによる結合またはハイブリダイゼーションの減少(たとえば測定可能な減少)がもたらされる。他の実施形態において、核酸プローブは、変異配列に結合するように設計することができ、その領域に変異が存在すると、そのプローブによる結合またはハイブリダイゼーションの増加がもたらされる。他の実施形態において、プローブおよびプライマーセットまたはプライマー対は、変異を有するマーカー中の領域を囲むように設計することができ、そのセットまたは対に基づく増幅により、変異を特定するための配列解析を行うことができる核酸を得ることができる。
プライマーまたは核酸プローブは、結合エネルギー、塩基組成、配列複雑性、交差−ハイブリダイゼーション結合エネルギーおよび二次構造を考慮したアルゴリズムを用いて選択することができる(Friend et alらの国際特許出願公開WO01/05935(2001年1月25日公開);Hughes et al., Nat. Biotech. 19:342-7 (2001)を参照のこと)。本発明の有用なプライマーまたは核酸プローブは、各転写物にユニークな配列(たとえば、標的変異領域)に結合し、その特定の核酸(たとえば、転写物または変異転写物)のみを増幅、検出および配列解析するためのPCRに用いることができる。マーカー遺伝子(たとえば、NF2、SMAD4、KDM6AおよびFBXW7)のいくつかの変異の例が、実施例の表に見出される(表8〜11)。他の変異は、本明細書に引用される参照文献および本明細書に記述される公共データベースに記載されている。当業者であれば、当分野公知の技術(たとえば、標準配列、変異または対立遺伝子変異に結合するプライマーまたは核酸プローブの可能性を、そのプライマーおよび核酸プローブ中のGC含有量および縮重を操作することにより、調節すること)を用いて、本明細書に記述されるマーカーおよび同様の特性を有する関連マーカー(たとえば、染色体遺伝子座上のマーカー、または本明細書に記述されるものと同じマーカー遺伝子の異なる領域の変異)に対するプライマーおよび核酸プローブを設計することができる。当分野に公知のコンピュータープログラム(たとえば、Oligo version 5.0 (National Biosciences、Plymouth、MN))を用いて、要求される特異性および最適な増幅特性を有するプライマーを設計することができる。完全に相補的な核酸プローブおよびプライマーを、本明細書に記述されるマーカーおよび変異、多形またはその対立遺伝子の検出に用いることが出来るが、完全相補性からの逸脱も企図する範囲内であり、そのような逸脱により、その分子が標的領域に特異的にハイブリダイズすることが妨げられることはない。たとえば、オリゴヌクレオチドプライマーは、その5´末端に非相補的な断片を有しても良く、そのプライマーの残りの部分は標的領域に相補的であってもよい。あるいは、得られたプライマーまたはプローブが標的領域に特異的にハイブリダイズすることが出来る限りは、非相補的なヌクレオチドがその核酸プローブまたはプライマー内に散在しても良い。
たとえば癌の体細胞変異により不活性化されうる腫瘍抑制物質である、カリンリング(cullin ring)リガーゼ経路に関与または相互作用するマーカー遺伝子等の、1マーカー、2マーカー、3マーカーもしくは4マーカーまたはそれ以上(たとえば、5、6、7、8、9、10、15、20または25マーカー)、またはその変異部分の量を調べることにより、治療結果の指標を分析することができる。マーカーは、他の治療結果評価基準と組み合わせて調べることができ、たとえば、生化学マーカー(たとえば、骨髄腫のMタンパク質、蛋白尿等の腎臓の健康状態マーカー、NSCLCに対するC応答性タンパク質、またはサイトケラチン19、サイトケラチン断片21−1(CYFRA21−1)の血清レベル、膀胱癌に対するフィブリノーゲン/フィブリノーゲン分解産物の尿レベル、神経芽細胞腫に対するカテコールアミンの尿レベルもしくは血中レベル、膵臓がんに対する炭水化物抗原19−9(CA19−9)の血清レベルもしくは代謝プロファイリング、中皮腫での可溶性メソテリン−関連ペプチド(SMRP))または組織学的評価(たとえば、芽球カウント、単位領域あたりの有糸分裂像の数、メラノーマ腫瘍、食道腫瘍または膀胱腫瘍の浸潤深度の測定)がある。
統計的手法により、たとえばDNA、RNAまたはタンパク質等のマーカー量の測定による治療予後の決定を支援することができる。1つのマーカーの量を、多様な時点で測定することができ、たとえば、剤(たとえばNAE阻害剤)での治療前、治療中、治療後で計測することができる。たとえば時間と共にベースラインからマーカー発現の変化が進行していることを決定するために、発現結果を、反復測定線形回帰モデル(Littell, Miliken, Stroup, Wolfinger, Schabenberger (2006) SAS for Mixed Models, 2nd edition. SAS Institute, Inc., Cary, NC))により分析することができる:
ここで、Yijkは、i番目の治療を受けたJ番目の動物の、K日目でのlog2変換された発現(ハウスキーピング遺伝子に対して正規化された)であり、Yij0は、i番目の治療を受けたJ番目の動物の、規定ベースラインlog2転換発現(ハウスキーピング遺伝子に対して正規化された)であり、daykは、カテゴリー変数として扱われ、そしてεijkは、残余誤差項である。共分散行列(たとえば、1次自己回帰、化合物シンメトリー、空間パワー法則(spatial power law))は、時間とともに各動物で繰り返し測定されたモデルに対し指定することができる。さらに、各処置時点は、処置値がビヒクルとは有意に異なるかどうかを検証するために、ビヒクル群の同時点と戻り比較することができる。
データを分析するために、他の多くの方法を用いることができる。たとえば、相対発現値を、サイクル数の代わりに分析することができる。これらの値を、倍数変化、またはベースラインからの絶対差のいずれかとして検証してもよい。さらに、もし分散が全ての群および時点にわたり等しい場合には、反復測定分散分析(ANOVA)を用いてもよい。最終(または他の)時点で観察されたベースラインからの変化は、小さなサンプルサイズのデータの有意差検定に対しては、対応t検定、フィッシャー直接検定(p値=ΣP(X=x)、x=1から、NAE阻害に感受性を示すと検証された状態(たとえば変異)の数値まで)を用いて分析してもよく、または、データが正規分布していない場合には、腫瘍患者が、正常な対象から有意差があるかどうかを比較するためにウィルコクソン符号順位検定を用いて、分析されてもよい。
1つの時点から次の時点までの量の差異、または腫瘍試料と正常試料の間の量の差異は、治療結果の予測を示しうる。ベースラインレベルは、治療の前(たとえば、ゼロ時点、治療の1日前、3日前、1週前および/または2週前かそれ以上)に、1、2、3、4またはそれ以上の回数、発現を測定することにより決定することができる。あるいは、ベースラインレベルを、多くの対象(たとえば同じ健康状態もしくは疾患状態にある正常対象または患者で、上述の治療をまだ受けていない、または受けない対象)から、決定することができる。あるいは、National Center for Biotechnology Information (NCBI, Bethesda, MD)のGene Expression Omnibus(GEO)プログラムに預託された発現値を用いることができる。たとえば、プロテアソーム阻害療法の前に試料採取された骨髄腫のmRNA発現量のデータベースとしては、GEOアクセッション番号GSE9782(Mulligan, et al. (2006) Blood 109:3177-88においてもまた分析されている)、およびGSE6477(Chng et al. (2007) Cancer Res. 67:292-9でも分析されている)が挙げられる。腫瘍に対する治療効果を検証するために、マーカーの発現を、何らかの治療後の任意の時点または複数の時点(たとえば、治療の1日後、2日後、3日後、5日後、1週後、2週後、3週後、4週後、1か月後、2か月後、3か月後および/または6か月後かそれ以上)で測定してもよい。たとえば、マーカーの量は、何らかの治療後に一度、測定してもよく、または複数の間隔(たとえば、治療の間の、1週間隔、2週間隔、4週間隔または2か月間隔、3か月間隔、またはそれ以上)で測定しても良い。いくつかの実施形態において、治療の間のマーカー測定と、ベースライン時点での同一マーカー測定とを比較してもよい。他の実施形態において、治療の間のマーカー測定と、それより前の時点での同一マーカー測定とを比較してもよい。逆に、治療レジメン投与の中止後、進行性疾患の発症を測定するために、マーカーの量を任意の時点または複数の時点(たとえば、最後の治療の1日後、2日後、3日後、5日後、1週後、2週後、3週後、4週後、1か月後、2か月後、3か月後および/もしくは6か月後またはそれ以上)で測定してもよい。治療後のマーカー測定を、治療の終了時点での同一マーカー測定と比較してもよい。当業者であれば、様々な要因(たとえば、治療法の薬物動態学、治療継続期間、治療法の薬物力学、患者の年齢、疾患の性質または治療法の活性メカニズム等)に応じて、マーカーの量を分析する時点(複数含む)を決定するであろう。ベースラインもしくは予備測定されたNAE阻害療法に対する感度マーカーの標準発現に対して、負の傾向または相対量の減少(たとえば、表3に特定される感度マーカーの減少)は、たとえば抵抗性の増加等の、治療に対し腫瘍の応答性が減少していることを示唆する可能性がある。ベースラインまたは予備測定された治療結果マーカーの発現標準に対して、好ましい結果に向かう傾向にある場合、その治療レジメンの有効性または治療が継続して奏功していることを示唆する。抵抗性マーカーが増加する傾向にある場合(たとえば、表3に特定される抵抗性マーカーの増加等)、好ましくない結果を示唆する可能性がある。
任意のマーカー(たとえば、本発明のマーカー遺伝子等のマーカー遺伝子またはマーカーの組み合わせ、またはそれらの変異体、ならびに、たとえば本発明のマーカー遺伝子等のマーカーと組み合わせた任意の公知のマーカー)を、本発明の組成物、キットおよび方法に用いても良い。通常、可能な限りマーカー遺伝子の変異状態を評価する能力が良いマーカーを選択し、NAE阻害物質での治療結果を予測する。たとえば、マーカー選択は、たとえば腫瘍細胞を含有する試料中のマーカーのサイズ、配列、組成または量等の特性と、対照細胞中の同一マーカーのサイズ、配列、組成または量等の特性の間の差異を、可能な限り最大化するものを選択する。この差異は、そのマーカーの量を分析する方法の検出限界と同じくらい小さいものであり得るが、他の実施形態においては、その差異は、少なくとも分析法の標準誤差より大きくあり得る。RNAまたはタンパク質の量の場合、差異は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、100、500、1000倍かそれ以上であっても良い。「低い」RNAまたはタンパク質の量は、腫瘍試料(たとえば、骨髄腫等の血液系腫瘍)全体の平均に対する発現が低いという可能性がある。たとえばコピー数等のDNAの量の場合、量は、0、1、2、3、4、5、6かそれ以上のコピー数である。欠損により、コピー数が0または1となり、増幅により、コピー数が2より大きくなる。たとえば、p<0.05、p<0.02、P<0.01またはそれ以下のp値の信頼水準により、その差異が認定されてもよい。
2つ以上のマーカー(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、もしくは25またはそれ以上のマーカーのセット)の測定により、発現プロファイルまたは、治療結果を暗示する傾向が提供されうる。いくつかの実施形態において、マーカーセットは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、または25を超えないのマーカーを含有する。いくつかの実施形態において、マーカーセットには、複数の染色体遺伝子座、複数のマーカー遺伝子、または1つ以上のマーカー遺伝子(たとえば、核酸およびタンパク質、ゲノムDNAおよびmRNA、または本明細書に記述されるマーカーの様々な組み合わせ)の複数のマーカーを含む。セット中のマーカーの量の分析を介した治療結果の分析は、セット中のマーカー量の治療結果の分類または傾向への貢献に影響を与えうる変数(たとえば、各マーカーのハイブリダイゼーション効率または測定の信号対ノイズ比)を説明する重み付き投票分析等の統計的手法に付随して行うことができる。マーカーセット(たとえば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、もしくは25またはそれ以上のマーカーのセット)は、本明細書に記述されるマーカーDNAまたはRNA(たとえば、染色体22qの塩基対29999545〜30094589、染色体18qの塩基対48556583〜48611412、染色体Xpの塩基対44732423〜44971847、染色体4qの塩基対153242410〜153456172、染色体17pの塩基対7571720〜7590868、染色体9pの塩基対21967751〜21994490、NF2、SMAD4、KDM6A、FBXW7、TP53、CDKN2A、CDKN2A_p14、または、前述の任意のものの相補物)の少なくとも1つを分析するためのプライマー(複数含む)またはプローブを含有しても良い。マーカーセット(たとえば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、もしくは25またはそれ以上のマーカーのセット)は、少なくとも1つ、もしくは少なくとも2つかそれ以上のマーカー、または、たとえばNF2、SMAD4、KDM6A、TP53、CDKN2A、CDKN2A_p14および/またはFBXW7等のマーカー上の少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、もしくは25またはそれ以上の変異を検出するためのプライマー(複数含む)またはプローブを含有してもよい。他の実施形態において、マーカーセットは、NF2、SMAD4および/またはKDM6Aの特性を分析するためのマーカーを含有してもよい。1つの実施形態において、子宮または子宮頚の癌に対するマーカーセットは、FBXW7の少なくとも1つの特性を分析するためのマーカーを少なくとも1つ含有する。1つの実施形態において、腸管、胸部、肺、頭頚、子宮頚または皮膚の癌に対するマーカーセットは、TP53の少なくとも1つの特性を分析するためのマーカーを少なくとも1つ含有する。1つの実施形態において、腸管の癌に対するマーカーセットは、TP53およびAPCのそれぞれの少なくとも1つの特性を分析するためのマーカーを含有する。1つの実施形態において、皮膚または中枢神経系の癌に対するマーカーセットは、CDKN2A_p14の少なくとも1つの特性を分析するためのマーカーを少なくとも1つ含有する。1つの実施形態において、頭頸部または皮膚の癌に対するマーカーセットは、CDKN2Aの少なくとも1つの特性を分析するためのマーカーを少なくとも1つ含有する。1つの実施形態において、頭頸部の癌に対するマーカーセットは、SMAD4の少なくとも1つの特性を分析するためのマーカーを少なくとも1つ含有する。選択されたマーカーセットは、本明細書に提供されるマーカーから作られるか、または本明細書に提供される方法および当分野に公知の類似方法を用いたマーカーの間から選択されてもよい。本発明のアッセイに用いるための新しいマーカーを適格と認定するための方法は、マーカー(たとえば、マーカー遺伝子等)の発現の差異(たとえば、ベースラインからの倍数変化等)を有する腫瘍細胞を含有する試料中のDNAコピー数の相互関係を示すことである。その関係性を評価する有用な方法は、ピアソンの積率相関係数である、rの値を求めた後、決定係数r2を算出すること、および/または、標準的な統計法を用いて最小二乗プロットを作成することである。相関により、DNAコピー数対マーカー(たとえばマーカー遺伝子)の発現レベルを分析することができる。遺伝子産物は、相関(r2、たとえば、本分析におけるデータの線形勾配)の結果が少なくとも0.1〜0.2、少なくとも0.3〜0.5、または少なくとも0.6〜0.8かそれ以上である場合、マーカーとして選択することができる。マーカーは、応答性、TTPまたは生存率に対する正の相関で変化することができる(すなわち、コピー数が減少する場合に減少する等、コピー数と同じ様式で発現レベルが変化する)。コピー数に対して負の相関で変化するマーカー(すなわち、コピー数が減少する場合に増加する等、コピー数と反対の様式で発現レベルが変化する)は、一貫しない結果決定を提供する。
アッセイに用いるための新しいマーカーを適格と認定する他の方法は、多くの対象における多くのマーカーの、検証剤での治療前後の発現を分析することである。発現結果から、治療前の試料と比較して、治療後に一定方向で大きな変化を示すマーカーを特定することができる。反復測定線形回帰モデルを確立し、統計的に有意な変化または差異を示す遺伝子を特定することができる。次いで、これらの有意な遺伝子をランク付けるために、たとえばベースライン対時間曲線等の変化の下の領域を算出することができる。これにより、統計的に最も大きな有意の変化を示す遺伝子のリストが作られる。次いで、いくつかのマーカーは、主成分分析、クラスタリング法(たとえば、階層的なk−means法)、多変量分散分析(MANOVA)または線形回帰法等の方法を用いて、セット中に共に組み合わせることができる。マーカーとしてそのような遺伝子(または遺伝子群)を用いるために、ベースラインから2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、7、10倍かそれ以上の発現差異を示す遺伝子を、マーカーセット中に含めることとなる。発現プロファイル(たとえば、ベースラインまたは総マーカーセットの基準からの発現レベル差異の合成物)は、たとえば、マーカーの大部分(たとえば、60%、70%、80%、90%、95%かそれ以上のマーカー)が特定の結果(たとえば、ベースラインまたは基準からの有意差)を示す場合;または、たとえば10%超、20%超、30%超、40%超のより多いマーカーが、他の方向ではなく1つの方向で有意な結果を示す場合、ある傾向にあることを示す。
本発明の組成物、キットおよび方法が、患者の治療結果の特性化のために用いられる実施形態の場合において、本発明のマーカーまたはマーカーのセットは、検証剤で治療を受けた患者の少なくとも約20%、少なくとも約40%、60%もしくは80%、または実質的にすべてにおいて、有意な結果が得られるように選択される。本発明のマーカーまたはマーカーセットは、母集団の約10%超に正の予測値(PPV)が得られるように選択されてもよく、および、PPVが80%超のアッセイ特異度と関連づけられた場合には、マーカーへのさらなる信頼度が推測される。
治療剤
本発明のマーカーおよびマーカーセットは、患者(たとえば癌患者(たとえば、血液のがん(たとえば多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫)または固形腫瘍癌(たとえば、メラノーマ等の皮膚癌、食道がん等の頭頸部癌、膀胱癌、小細胞肺癌(NSCLC)等の肺癌、肺の腺癌、たとえば脳内への肺癌転移や神経芽細胞腫等の中枢神経系の癌、膵臓がん、乳癌、中皮腫、子宮頸癌、たとえば大腸癌もしくは直腸の腺癌等の腸管の癌)を有する患者))における治療の好ましい結果の尤度(たとえば、治療剤に対する感受性)を、本発明のマーカー(複数含む)の組成または量等の特性に影響を与えるその能力に基づき、分析する。この予測を用いて、癌治療を評価し、各カテゴリーにおいて患者に対して最も適した治療レジメンを設計することができる。
特に、本方法を用いて、上述の項で記述されたように、NAE阻害物質に対する患者の感受性を予測することができる。本発明の方法で検証される剤は、単剤または剤の組み合わせであってもよい。本発明の方法は、NAE阻害療法と、プロテアソーム阻害療法および/または他の剤もしくは追加の剤(たとえば、化学療法剤からなる群から選択される)との組み合わせを含んでも良い。たとえば、本発明を用いて、化学療法剤の単剤(たとえば、MLN4924等のNAE阻害物質)を用いて癌を治療できるかどうか、または1つ以上の剤をNAE阻害物質(MLN4924等)と組み合わせて用いるべきかどうかを決定することができる。有用な組み合わせとしては、異なる作用メカニズムを有する剤が挙げられる(たとえば、NAE阻害物質とアルキル化剤を組み合わせた抗有糸分裂剤の使用)。
本明細書において、「プロテアソーム阻害物質」とは、in vitroまたはin vivoで、20Sまたは26Sプロテアソームの酵素活性を直接阻害する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害物質は、ボロン酸ペプチジルである。本発明の方法における使用に適したボロン酸ペプチジルプロテアソーム阻害物質の例は、Adamsらの米国特許第5,780,454号(1998)、第6,066,730号(2000)、第6,083,903号(2000)、第6,297,217号(2001)、第6,465,433号(2002)、第6,548,668号(2003)、第6,617,317号(2003)、および第6,747,150号(2004)に記載され、それらは各々、参照により、その中に記述される全ての化合物および処方を含む、その全体が本明細書に援用される。いくつかの実施形態において、ボロン酸ペプチジルプロテアソーム阻害物質は、N(4モルホリン)カルボニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸;N(8キノリン)スルホニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸;N(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、およびN(4モルホリン)−カルボニル−[O−(2−ピリジルメチル)]−L−チロシン−L−ロイシンボロン酸からなる群から選択される。特定の実施形態において、プロテアソーム阻害物質は、N(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸(ボルテゾミブ;VELCADE(登録商標);以前はMLN341またはPS−341として知られていた)である。公表文献において、開示されたボロンエステルおよびボロン酸化合物の使用により筋タンパク質の分解率が減少すること、細胞のNF−κB活性が減少すること、細胞のp53タンパク質の分解率が減少すること、細胞のサイクリン分解を阻害すること、癌細胞の増殖を阻害すること、およびNF−κB依存性細胞接着が阻害されることが記述されている。ボルテゾミブは、酵素の活性部位の1つにしっかりと結合する(Ki=0.6nM)ことにより、プロテアソームを特異的に、および選択的に阻害する。ボルテゾミブは選択性の細胞毒性があり、National Cancer Institute(NCI)のin vitroおよびin vivoアッセイにおいて、新規の細胞毒性パターンを有することが明らかになっている。Adams J, et al. Cancer Res 59:2615-22.(1999)。
さらに、プロテアソーム阻害物質として、ペプチドアルデヒドプロテアソーム阻害物質(Steinらの米国特許第5,693,617号 (1997);Simanらの国際特許公開WO91/13904;Iqbal et al., J. Med. Chem. 38:2276-2277 (1995);およびIinumaらの国際特許公開WO05/105826(それら各々は、その全体で参照により本明細書に援用される))、ペプチジルエポキシケトンプロテアソーム阻害物質(Crewsらの米国特許第6,831,099号;Smythらの国際特許公開WO05/111008;Bennettらの国際特許公開WO06/045066;Spaltenstein et al. Tetrahedron Lett. 37:1343 (1996); Meng, Proc. Natl. Acad. Sci. 96: 10403 (1999);および、Meng, Cancer Res. 59: 2798 (1999))、α−ケトアミドプロテアソーム阻害物質(Chatterjee and Mallamoの米国特許第6,310,057号(2001)および第6,096,778号(2000);ならびに、Wangらの米国特許第6,075,150号(2000)および第6,781,000号(2004))、ペプチジルビニルエステルプロテアソーム阻害物質(Marastoni et al., J. Med. Chem. 48:5038 (2005)、ならびに、たとえばRydzewski et al., J. Med. Chem. 49:2953 (2006)および、Bogyo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 94:6629 (1997)に開示されるペプチジルビニルスルホンおよび2−ケト−1,3,4−オキサジアゾールプロテアソーム阻害物質、アザペプトイド(Bouget et al., Bioorg. Med. Chem. 11:4881 (2003);Baudy-Floc’hらの国際特許公開WO05/030707;およびBonnemainsらの国際特許公開WO03/018557)、および、エフラペプチンオリゴペプチド(Papathanassiuの国際特許公開WO05/115431)、ラクタシスチンおよびサリノスポラミドならびにそれらのアナログ(Fenteanyらの米国特許第5,756,764号(1998)、第6,147,223号(2000)、第6,335,358号(2002)、および第6,645,999号(2003);Fenteany et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA (1994) 91:3358;Fenicalらの国際特許公開WO05/003137; Palladinoらの国際特許公開WO05/002572;Stadlerらの国際特許公開WO04/071382;Xiao and Patelの米国特許公開第2005/023162号;およびCoreyの国際特許公開WO05/099687)が挙げられる。
本発明の方法でNAE阻害物質(たとえば、MLN4924)と組み合わせて用いるための追加の治療剤には、グルココルチコイドステロイドを含有する治療剤の既知の種類を含有することができる。グルココルチコイド療法は、通常、少なくとも1つのグルココルチコイド剤(たとえば、デキサメタゾン)を含有する。本発明のある応用形態において、本発明の方法で用いられる剤は、グルココルチコイド剤である。多発性骨髄腫患者の治療ならびに他の癌治療に利用されるグルココルチコイドの1つの例は、デキサメタゾンである。血液系腫瘍の治療および固形腫瘍の併用療法で利用される追加のグルココルチコイドとしては、ヒドロコルチゾン、プレジゾロン、プレドニゾンおよびトリアムシノロンが挙げられる。
NAE阻害療法と組み合わせて用いるための他の治療剤としては、化学療法剤が挙げられる。「化学療法剤」には、増殖細胞または組織の増殖(そのような細胞または組織の増殖は望ましいものではない)を阻害する化学試薬を含有することが意図される。たとえば抗代謝剤(たとえば、AraAC、5−FUおよびメトトレキサート)、抗有糸分裂剤(タキサン、ビンブラスチンおよびビンクリスチン)、アルキル化剤(たとえばメルファンラン、カルムスチン(BCNU)およびナイトロジェンマスタード)、トポイソメラーゼII阻害剤(たとえば、VW−26、トポテカンおよびブレオマイシン)、鎖切断剤(たとえば、ドキソルビシンおよびミトキサントロン(DHAD))、架橋剤(たとえば、シスプラチンおよびカルボプラチン(CBDCA))等の化学療法剤、放射線および紫外線が当分野で公知であり(Gilman A.G.,
et al.,
The Pharmacological Basis of Therapeutics, 8th Ed.,
Sec 12:1202-1263 (1990))、腫瘍性疾患の治療に一般に用いられている。化学療法に一般に用いられる化学療法剤の例を、以下の表2に列挙する。
本発明の方法で検証される剤は、単剤または併用剤であってもよい。たとえば、本発明の方法を用いて、単剤の化学療法剤(たとえばメトトレキサート)を癌の治療に用いることができるかどうか、または2つ以上の剤の併剤をNAE阻害物質(たとえばMLN4924)との組み合わせで用いることができるかどうかを、決定することができる。有用な組み合わせとしては、異なる作用メカニズムを有する剤を挙げることができる(たとえば、アルキル化剤およびNAE阻害物質と組み合わせた抗有糸分裂剤の使用等)。
本明細書に開示される剤は、任意の経路で投与してもよく、皮内、皮下、経口、動脈内、または静脈内の経路が含まれる。1つの実施形態において、投与は、静脈内投与によるものである。非経口投与は、ボーラス投与または点滴で提供することができる。
薬学的に受容可能な混合物中の開示化合物の濃度は、いくつかの要因(投与される化合物の投与量、用いる化合物(複数含む)の薬物動態特性、および投与経路を含む)に応じて変化する。剤は、単回投与または反復投与で投与されてもよい。治療は、多くの要因(患者の全体的な健康状態、ならびに処方および選択された化合物(複数含む)の投与経路を含む)に応じて、毎日、またはより頻繁に行われても良い。
NAE阻害物質のスクリーニング
本発明により、調節剤を特定する方法(または、本明細書において「スクリーニングアッセイ」とも呼称される)が提供され、すなわち、NAEまたは他のE1酵素変異タンパク質に結合する候補物または検証化合物または剤(たとえば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣物質、ペプトイド、小分子または他の薬物)は、たとえばNAEもしくは他のE1酵素の発現または酵素活性を刺激または阻害する効果を有し、または、たとえばNAEもしくは他のE1酵素基質もしくはE1酵素経路(たとえば、NAE経路)のタンパク質の発現または活性を、たとえばカリンリングリガーゼの活性との関連で、刺激または阻害する効果を有する。ゆえに、特定される化合物を用いて、治療プロトコールにおいて標的遺伝子産物(たとえば、NAEまたは他のE1酵素遺伝子)の活性を調節し、または、標的遺伝子産物の生物学的機能を変化させ、または、NAEまたは他のE1酵素経路の相互作用を阻害する化合物を特定することができる。
1つの実施形態において、本発明により、NAE阻害物質としての化合物を特定する方法が提供され、たとえば、マーカー遺伝子の少なくとも1つに変異を少なくとも1つ含有する細胞と検証化合物とを最初に接触させ、次いで、細胞の生存率または細胞の増殖阻害を測定することにより、細胞の薬物抵抗性を調節する剤として化合物を特定する方法が提供される。いくつかの実施形態において、細胞は、表3に特定される抵抗性遺伝子を含有する。他の実施形態において、細胞は、表3に特定される感受性遺伝子を含有する。NAE阻害物質の効果を、当該化合物に曝されていない対照細胞と比較することができる。いくつかの実施形態において、感受性マーカー遺伝子を含有する細胞への剤の効果を、抵抗性マーカー遺伝子を含有する細胞への剤の効果と比較することができる(たとえば、表3を参照のこと)。当該化合物は、細胞の生存率または細胞増殖が減少する場合には、NAE阻害物質または薬物抵抗性調節物質として特定される。たとえば抵抗性を調節するNAE阻害物質として、前述の方法で特定された化合物もまた、本発明の範囲内に含まれる。
検出方法
予後予測アッセイの原理には、試料または反応混合物(マーカーを含んでも良い)、およびプローブを、適切な条件下で、当該マーカーとプローブが相互作用し結合するのに十分な時間をかけ、調製し、反応混合物中で除去および/または検出することができる複合体を形成することが含まれる。これらのアッセイは、様々な方法で実行することができる。
たとえば、そのようなアッセイを実行するための1つの方法には、マーカーまたはプローブを固相支持体(基質もまた呼ばれる)上にしっかりと固定すること、固相上に固定された標的マーカー/プローブ複合体を反応の最後に検出することが含まれる。そのような方法の1つの実施形態において、マーカーの存在および/または濃度を分析される対象からの試料を、担体または固相支持体上に固定することができる。他の実施形態において、逆の状況が可能であり、その場合には、プローブが固相上に固定され、対象からの試料はアッセイの非固定成分として反応を行うことができる。そのような実施形態の1つの例として、試料の発現分析のための、固定された予測マーカーもしくはマーカーセットを含有するアレイまたはチップの使用が挙げられる。
アッセイ成分を固相に固定する方法は多く確立されている。限定されないが、ビオチンおよびストレプトアビジンの結合を介して固定されたマーカーまたはプローブ分子が挙げられる。そのようなビオチニル化アッセイ成分は、当分野に公知の技術(たとえば、ビオチン化キット、Pierce Chemicals、Rockford、IL)を用いて、ビオチン−NHS(N−ヒドロキシ−スクシンイミド)から調製し、およびストレプトアビジンでコートした96ウェルプレート(Pierce Chemical)に固定することができる。ある実施形態においては、固定化アッセイ成分を有する面を、前もって調製および保存することができる。
そのようなアッセイに適した他の担体または固相支持体としては、マーカーまたはプローブが属する分子類に結合することができる任意の物質が挙げられる。良く知られている支持体または担体としては、限定されないが、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然セルロースおよび改変セルロース、ポリアクリルアミド、はんれい岩および磁鉄鉱が挙げられる。当業者であれば、抗体または抗原の結合に適した多くの他の担体を知っており、本発明での使用のために、そのような支持体を適合させることができるであろう。たとえば、細胞から単離されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で泳動し、たとえばニトロセルロース等の固相支持体上に固定することができる。次いで、支持体を適切な緩衝液で洗浄し、検出可能な標識抗体で処理することができる。固相支持体を、次いで、再度緩衝液で洗浄し、非結合抗体を除去することができる。固相支持体上の結合標識の量を、次いで、標準的な手段で検出することができる。
上述の方法でアッセイを実行するために、非固定化成分を固相に添加し、2番目の成分をその上に固定する。反応が完了した後、形成された任意の複合体が固相上に固定されたままでいられるような条件下で、複合体化されなかった成分を(たとえば、洗浄により)除去してもよい。固相に固定されたマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書に説明される多くの方法で行うことができる。
1つの実施形態において、プローブは、未固定アッセイ成分である場合、当該プローブを、アッセイの検出および読み出しの目的のために、本明細書において論じられる検出可能な標識で、間接的または直接的のいずれかで標識することができ、このことは当業者に非常によく知られている。プローブ(たとえば核酸または抗体等)に関して、「標識された」という用語は、検出可能な物質をプローブに連結させる(すなわち、物理的に結び付ける)ことによるプローブの直接標識、ならびに、直接標識された他の試薬との反応性によるプローブの間接標識を包含することが意図される。間接標識の例としては、蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出が挙げられる。また、成分(マーカーまたはプローブ)のいずれかもさらに操作または標識することなく、マーカー/プローブの複合体形成を直接検出することが可能であり、たとえば、蛍光エネルギー転移(FET、たとえば、Lakowiczらの米国特許第5,631,169号;Stavrianopoulosらの米国特許第4,868,103号を参照のこと)の技術を使用することにより直接検出することが可能である。第一の「ドナー」分子上の蛍光体標識は、適切な波長の入射光での励起で、その発光蛍光エネルギーが第二の「アクセプター」分子上の蛍光標識により吸収され、次に、その吸収されたエネルギーにより第二のアクセプターが蛍光を発することができるように、選択される。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は単純に、トリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用しても良い。「アクセプター」分子標識が、「ドナー」のそれとは異なるように、異なる波長を放出する標識が選択される。標識間のエネルギー転移効率は分子を隔てる距離と関連するため、分子間の空間的な関係を分析することができる。分子間で結合が発生する状況において、アッセイ中の「アクセプター」分子標識の蛍光放出が最大となるはずである。FET結合事象は、当分野に公知の標準的な蛍光分析検出法(たとえば、蛍光光度計を用いる)を介して簡便に測定することができる。
他の実施形態において、マーカーを認識するプローブの能力測定は、アッセイ成分(プローブまたはマーカー)のいずれをも標識することなく、たとえばリアルタイムBiomolecular Interaction Analysis (BIA)等の技術を用いて実行することができる(たとえば、Sjolander, S. and Urbaniczky, C. (1991) Anal. Chem. 63:2338-2345および、Szabo et al. (1995) Curr. Opin. Struct. Biol. 5:699-705を参照のこと)。本明細書において、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、いかなる反応体をも標識することなく、リアルタイムで生物特異的相互作用を研究するための技術である(たとえば、BIACORE(商標))。結合表面での質量変化(結合事象の指標)により、対光近見表面の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学的現象)がもたらされ、これにより、生物分子間のリアルタイムな反応の指標として使用できる検出可能なシグナルが得られる。
あるいは、他の実施形態において、類似した診断アッセイおよび予後予測アッセイを、液相中の溶質としてマーカーおよびプローブを使用して実施することができる。そのようなアッセイにおいては、複合体化されたマーカーとプローブは、標準的な多くの技術(限定されないが、分画遠心法、クロマトグラフィー、電気泳動および免疫沈降等)のうち任意のものを用いて、複合体化されなかった成分から分離させる。分画遠心法において、マーカー/プローブ複合体は、一連の遠心ステップを介して、異なるサイズおよび密度に基づく複合体の異なる沈降平衡により、複合体化されなかったアッセイ成分から分離されてもよい(たとえば、Rivas, G., and Minton, A.P. (1993) Trends Biochem Sci. 18:284-7を参照のこと)。また、標準的なクロマトグラフィー技術を用いて、複合体化された分子を、複合体化されなかった分子から分離させることができる。たとえば、ゲルろ過クロマトグラフィーは、カラムフォーマット中の適切なゲルろ過樹脂の利用を介して、サイズに基づき分子を分離し、たとえば、相対的に大きな複合体が、相対的に小さな非複合体化成分から分離されうる。同様に、非複合体化成分と比較して、マーカー/プローブ複合体は、相対的に異なる電荷特性を有しており、これにより複合体を、複合体化されなかった成分から、たとえばイオン交換クロマトグラフィー樹脂を利用して、分別する。そのような樹脂およびクロマトグラフィー技術は、当業者に公知である(Heegaard, N.H. (1998) J. Mol. Recognit. 11:141-8;Hage, D.S., and Tweed, S.A. (1997) J. Chromatogr. B. Biomed. Sci. Appl. 699:499-525を参照のこと)。また、非結合成分から複合体化された成分を分離するために、ゲル電気泳動も行うことができる(たとえば、Ausubel et al., ed., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, 1987-1999を参照のこと)。この技術において、たとえばタンパク質または核酸の複合体は、サイズまたは電荷に基づき分離される。いくつかの実施形態において、電気泳動プロセス中の結合相互作用を維持するために、還元剤を用いない条件下、非変性ゲルマトリックス材料を用いる。特定のアッセイおよびその成分に対する適切な条件は、当業者に公知である。
単離されたmRNAは、限定されないが、サザン分析またはノーザン分析、ポリメラーゼ鎖反応およびTAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems, Foster City, CA)およびプローブアッセイを含むハイブリダイゼーションアッセイまたは増幅アッセイにおいて用いることができる。mRNAレベルを検出する、ある診断法には、単離されたmRNAと、検出される変異またはその遺伝子によりコードされるmRNAにハイブリダイズすることができる核酸分子(たとえばハイブリダイゼーションプローブ等のプローブ)とを接触させることが含まれる。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子の変異を含有する核酸を、プローブまたはプライマーとして用いることができる。本発明の核酸プローブまたはプライマーは、一本鎖DNA(たとえば、オリゴヌクレオチド)、二本鎖DNA(たとえば、二本鎖オリゴヌクレオチド)またはRNAであっても良い。本発明のプライマーは、対象の領域に隣接している核酸配列にハイブリダイズする核酸を指し、たとえば、プライマー伸長もしくは増幅反応において対象の領域全体にわたり伸長することができ、または、対象の領域(たとえば、マーカー遺伝子またはその変異を含有する核酸領域)をカバーする核酸配列にハイブリダイズする核酸を指す。核酸プローブは、たとえば、全長cDNAまたはその一部であっても良く、たとえば、マーカー核酸配列またはその相補物の少なくとも7、15、20、25、30、50、75、100、125、150、175、200、250または500かそれ以上の連続したヌクレオチドであるオリゴヌクレオチドであり、ストリンジェントな条件下、本発明のマーカーまたはその相補物をコードするmRNAまたはゲノムDNAに十分に特異性でハイブリダイズするものであってもよい。核酸プローブの正確な長さは、当業者により日常的に考慮され、実行される多くの要素に依る。本発明の核酸プローブは、当分野に公知の任意の適切な技法を用いた化学合成により調製されてもよく、組換え技術により製造されてもよく、またはたとえば制限酵素消化等により、生物学的試料から得ても良い。本発明の診断アッセイに用いるための他の適切なプローブが、本明細書に記述される。プローブは、それに付着される標識群(たとえば、放射性同位体、蛍光性化合物、酵素、酵素補因子、ハプテン、シークエンスタグ、タンパク質または抗体等)を含有してもよい。核酸は、塩基部分、糖部分、またはリン酸主鎖で、改変することができる。核酸標識の例では、SUPER(商標) Modified Base Technology(Nanogen、Bothell、WA、米国特許第7,045,610号を参照のこと)を用いて組み込まれる。発現レベルは、たとえば増幅されたDNAレベルの測定の後で、全体的な核酸レベルとして測定することができ(たとえば、SYBRグリーン色素(Qiagen Inc.、Valencia、CA)等のDNA挿入色素を用いて)、または、たとえば標識されたプローブを有する特定の核酸として、たとえば設計に基づくプローブを用いて測定することができる。TAQMAN(登録商標)アッセイフォーマットは、信号対雑音比および特異性を挙げるために、プローブベースの設計を用いることができる。
そのようなプライマーまたはプローブは、たとえば対象由来の細胞試料中の転写核酸分子の量を測定することによりタンパク質を発現している細胞または組織を特定し、たとえばタンパク質をコードしている遺伝子が変異または欠損しているかどうかを決定するための、または転写物、mRNAレベルの検出のための診断テストキットの一部として用いることができる。RNAまたはcDNAと核酸プローブとのハイブリダイゼーションにより、問題となっているマーカーが発現されているものであることが示唆される。本発明はさらに、遺伝子コードの縮重により、マーカータンパク質(たとえば、配列番号3、6、10、11、14、17、20、23または26の配列を有するタンパク質)をコードする核酸のヌクレオチド配列から異なるが、同じタンパク質をコードする核酸分子を検出することを包含する。当業者であれば、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多形が、個体群(たとえば、ヒト個体群)中に存在しうることを認識するであろう。そのような遺伝的多形は、自然発生する対立遺伝子変異により個体群中の個々の間に存在しうる。対立遺伝子は、一定の遺伝子座で代替的に発生する遺伝子群の1つである。そのような自然発生の対立遺伝子変異は、一般的に、一定の遺伝子のヌクレオチド配列中に1〜5%の相違をもたらしうる。代替的な対立遺伝子は、多くの異なる個体(たとえば、個々由来の正常試料)における対象遺伝子の配列解析を行うことにより特定することができる。これは、様々な個体における同じ遺伝子座を特定するためのハイブリダイゼーションプローブを用いることにより、容易に実施することができる。そのようなヌクレオチド変異の一部またはすべて、および、結果として生じる機能活性を変化させない自然発生の対立遺伝子変異の結果であるアミノ酸多形または変異を検出することが、本発明の範囲内にあることが意図される。さらに、RNAの発現レベルに影響を与えるDNA多形は、またその遺伝子の全体的な発現レベルに影響を与えうる(たとえば、制御や分解に影響を与えることにより)ものとして存在することが、理解されるであろう。
本明細書において、「ハイブリダイズする」という用語は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄に対し、互いに有意に同一または相同なヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズしたままでいる状態を記述することが意図される。いくつかの実施形態において、その状態は、引き続く増幅および/または検出のために、互いに少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、90%または95%同一である配列が、互いにハイブリダイズしたままであるような状態である。ストリンジェントな条件は、関与するヌクレオチド配列の長さにより変化するが、当業者に公知であり、Current Protocols in Molecular Biology, Ausubel et al., eds., John Wiley & Sons, Inc. (1995)の2、4および6項にある技術に基づき見出す、または決定することができる。さらなるストリンジェントな条件およびそのような条件を決定するための方法は、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Sambrook et al., Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY (1989)の7、9および11項に見出すことができる。少なくとも10塩基対の長さがある合成物に対するストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の非限定的な例としては、4X塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約65〜70℃(または、4X SSC+50%ホルムアミド、約42〜50℃)でハイブリダイゼーション、次いで、1X SSC、約65〜70℃で1回以上の洗浄が挙げられる。そのような合成物に対する高度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の非限定的な例としては、1X SSC、約65〜70℃(または、1X SSC+50%ホルムアミド、約42〜50℃)でハイブリダイゼーション、次いで、0.3X SSC、約65〜70℃で1回以上の洗浄が挙げられる。そのような合成物に対する低度にストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の非限定的な例としては、4X SSC、約50〜60℃(または、代替的に6X SSC+50%ホルムアミド、約40〜45℃)でハイブリダイゼーション、次いで、2X SSC、約50〜60℃で1回以上の洗浄が挙げられる。上記に列挙された値の中間の範囲、たとえば、65〜70℃、または42〜50℃もまた、本発明により包含されるものとみなされる。ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の他の例は、6X 塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)、約45℃でハイブリダイゼーション、次いで、0.2X SSC、0.1%SDS、50〜65℃で1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション緩衝液のさらなる例は、1M NaCl、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5)、0.5%サルコシン酸ナトリウム、および30%ホルムアミドでのハイブリダイゼーションである。SSPE(1xSSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4)を、ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液において、SSC(1xSSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウム)の代わりにすることができ、洗浄は、各ハイブリダイゼーションが完了した後で15分間、行われる。50塩基対の長さ未満であると予測される合成物に対するハイブリダイゼーションの温度は、その合成物の融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くなければならず、ここで、Tmは、以下の式に従い決定される。18塩基未満の長さの合成物に対しては、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)。18〜49塩基対の長さの合成物に対しては、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、ここでNは、合成物中の塩基の数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1xSSCに対し、[Na+]=0.165M)。また、当業者であれば、核酸分子が膜(たとえば、ニトロセルロース膜またはナイロン膜糖)へ非特異的にハイブリダイズすることを減少させるために、追加の試薬(ブロッキング剤(たとえば、BSAまたはサケ精子担体DNAもしくはニシン精子担体DNA)、洗剤(たとえば、SDS)、キレート剤(たとえば、EDTA)、Ficoll、ポリビニルピロリドン(PVP)等が挙げられるが、これらに限定されない)をハイブリダイゼーション緩衝液および/または洗浄緩衝液に添加してもよいことが理解される。特に、ナイロン膜を用いる場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーションの条件の追加の非限定的な例は、約65℃、0.25−0.5M NaH2PO4、7%のSDSでハイブリダイゼーション、次いで、65℃、0.02M NaH2PO4、1%のSDSで1回以上洗浄(または、代替として0.2X SSC、1%のSDS)(たとえば、Church and Gilbert (1984) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:1991-1995を参照のこと)である。プライマーまたは核酸プローブは、検出法で単独で用いることができ、または、プライマーは、検出法で、少なくとも1つの他のプライマーまたは核酸プローブと共に用いることができる。プライマーはまた、少なくとも1つの核酸部分を増幅するために用いることができる。本発明の核酸プローブは、対象の領域にハイブリダイズする核酸を指し、さらには伸長されない。たとえば、核酸プローブは、バイオマーカーの変異領域に特異的にハイブリダイズする核酸であり、患者のDNAにハイブリダイズするか、またはハイブリダイズしないかによって、または形成された合成物のタイプによって、バイオマーカーの変異の存在もしくは特定の指標、またはマーカー活性量の指標となりうる。
1つの形式において、RNAは、たとえばアガロースゲル上で単離RNAを泳動し、RNAをゲルから膜(たとえばニトロセルロース)に移すことにより、固体表面上に固定され、プローブと接触する。別のフォーマットにおいては、核酸プローブ(複数含む)は、固体表面上に固定され、RNAは、たとえば、AFFYMETRIX(登録商標)遺伝子チップアレイまたはSNPチップ(Santa Clara、CA)、または治療結果の指標となるマーカーの少なくとも1つを含有するマーカーセットを用いてカスタマイズされたアレイの中でプローブ(複数含む)と接触する。当業者であれば、公知のRNAおよびDNA検出法を、本発明のマーカーの量の検出における使用のために容易に適合させることができる。たとえば、高密度マイクロアレイまたは分岐DNAアッセイに対しては、たとえば上述の項に記述されているように腫瘍細胞を単離するために改変された試料等の中の腫瘍細胞をより高濃度にすることが有効である。関連実施形態において、試料から得られた転写ポリヌクレオチドの混合物を、マーカー核酸の少なくとも一部(たとえば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500またはそれ以上のヌクレオチド残基)と相補的または相同であるポリヌクレオチドを固定させた基質と接触させる。もしマーカーと相補的または相同なポリヌクレオチドが基質上で特異的に検出されれば(たとえば、異なる発色団もしくはフルオロフォアを使用して、または異なる選択位置に固定されて、検出される)、複数のマーカーの発現レベルを、1つの基質(たとえば、選択された位置で固定されたポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を用いて同時に分析することができる。1つの核酸と他とのハイブリダイゼーションを含む、マーカーの発現分析法が用いられる実施形態において、そのハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で実施することができる。
試料中の本発明のマーカーに対応するRNAの量を測定する別の方法には、核酸増幅(たとえば、RT−PCR(実験態様は、Mullisの米国特許第4,683,202号(1987)に記述されている)、リガーゼ鎖反応(Barany, 1991, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 88:189-193)、自家持続配列複製法(Guatelli et al., 1990, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:1874-1878)、転写増幅系(Kwoh et al., 1989, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:1173-1177)、Q−Beta Replicase(Lizardi et al., 1988, Bio/Technology 6:1197)、ローリングサークル複製(Lizardiらの米国特許第5,854,033号)、または任意の他の核酸増幅法)のプロセス、次いで、当分野に公知の技術を用いた増幅された分子の検出が含まれる。これらの検出スキームは、核酸分子の数が極端に少ない場合の核酸分子の検出に対し、特に有用である。本明細書おいて、増幅プライマーは、遺伝子の5´領域または3´領域(それぞれ+鎖および−鎖、逆もまた然り)にアニールすることができる核酸分子の対であると定義され、その間に短い領域を含有する。概して、増幅プライマーは、約10〜約30ヌクレオチドの長さであり、約50〜約200ヌクレオチドの長さの領域に隣接する。適切な条件下、および適切な試薬を用いて、プライマーが隣接するヌクレオチド配列を含有する核酸分子が、そのプライマーにより増幅される。
in situ法については、検出の前にRNAを細胞から単離する必要は無い。そのような方法においては、細胞試料または組織試料は、公知の組織学的方法を用いて調製/処理される。次いで、試料は支持体(典型的にはガラススライド)上に固定され、次いで、マーカーをコードするRNAにハイブリダイズすることができるプローブと接触する。
本発明の他の実施形態において、マーカーに対応するポリペプチドが検出される。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドを検出するための剤は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合することができる抗体である。関連実施形態において、抗体は、検出可能な標識を有している。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルであっても良い。損なわれていない抗体、またはその断片(たとえば、FabまたはF(ab´)2)を用いても良い。
様々な形式を用いて、試料が特定の抗体に結合するタンパク質を含有するかどうかを測定することができる。そのような形式の例としては、酵素免疫測定法(EIA)、放射免疫測定法(RIA)、ウェスタンブロット分析、および酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、B細胞が本発明のマーカーを発現しているかどうかの測定に用いるために、公知のタンパク質/抗体の検出法を容易に適合させることができる。
マーカーに対応するポリペプチドのレベルを測定する他の方法は、質量分析法である。たとえば、損なわれていないタンパク質またはペプチド(たとえば、トリプシンペプチド)を、1つ以上のポリペプチドマーカーを含有する血液試料、リンパ液試料、または他の試料等の試料から分析することができる。その方法にはさらに、豊富なタンパク質(たとえば、血清アルブミン等)の量を少なくするよう試料を処理し、本方法の感度を高めることが含まれる。たとえば、液体クロマトグラフィーを用いて試料を分画化し、部分試料を質量分析法で別々に分析できるようにすることができる。そのステップは、別々系で実施することができるか、または液体クロマトグラフィー/質量分析を組み合わせた系(LC/MS、たとえば、Liao, et al. (2004) Arthritis Rheum. 50:3792-3803を参照のこと)で実施することができる。質量分析系はまた、タンデム(MS/MS)モードであっても良い。タンパク質またはペプチド混合物の荷電状態分布を、1つまたは複合的なスキャンにより得て、統計的手法により分析することができ、たとえば、LC/MS系での保持時間および質量対電荷比(m/z)を用いて、NAE阻害療法に応答性または非応答性である患者由来の試料中に、統計的に有意なレベルの差で発現しているタンパク質を特定する。使用することができる質量分析計の例としては、イオントラップ系(ThermoFinnigan, San Jose, CA)または四重極飛行時間型質量分析計(Applied Biosystems, Foster City, CA)がある。当該方法にはさらに、たとえばマトリックス支援レーザー脱離イオン化−飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法でのペプチド質量フィンガープリンティングのステップが含まれても良い。当該方法にはさらに、1つ以上のトリプシンペプチドを配列解析するステップが含まれても良い。本方法の結果を用いて、一次配列データベース(たとえば、National Center for Biotechnology Information, Bethesda, MDまたは、Swiss Institute for Bioinformatics, Geneva, Switzerlandにより維持されるデータベース)から、質量分析トリプシンペプチドのm/zベースピークに基づき、タンパク質を特定することができる。
電子機器読み取り可能なアレイ
本発明方法と併せた使用のために、本発明の予測マーカーの少なくとも1つを含有する、読み取り可能なアレイを含む電子機器がまた企図される。本明細書において、「電子機器読み取り可能な媒体」とは、電子機器による直接的な読み取りおよびアクセスが可能なデータまたは情報の保存、維持または含有のための任意の適切な媒体を指す。本明細書において、「電子機器」という用語は、任意の適切なコンピューター機器もしくは処理装置または、データもしくは情報の保存のために設定または適合された他のデバイスを含むことが意図される。本発明での使用および記録された情報のモニタリングに適した電子機器の例としては、独立型のコンピューター機器;ネットワーク(ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)インターネット、イントラネットおよびエキストラネットを含む);たとえば携帯端末(PDA)、携帯電話、ポケベル等の電子装置;ならびにローカルおよび分散処理システムが含まれる。本明細書において、「記録された」とは、電子機器読み取り可能な媒体上に情報を保存またはエンコードするためのプロセスを指す。当業者であれば、本発明のマーカーを含有する製品を作製するために、公知の媒体上に情報を記録するための現時点で公知の任意の方法を容易に適合させることができる。
たとえば、マイクロアレイシステムは良く知られており、たとえば分析により遺伝子が発現しているかどうか(たとえば、DNA検出、RNA検出、タンパク質検出)、代謝物が産生されているかどうか等の試料の分析のために当分野で用いられている。本発明による使用のためのマイクロアレイには、本明細書に記述される治療レジメンに対して応答性および/または非応答性の特性がある、本発明の予測マーカー(複数含む)のプローブが1つ以上、含まれる。1つの実施形態において、マイクロアレイは、短期間生存者において発現上昇していることが示されているマーカーからなる群から選択されるマーカーの1つ以上と対応するプローブの1つ以上、および患者のうち長期間生存者で発現上昇していることが示されている遺伝子に対応するプローブの1つ以上を含有する。多くの異なるマイクロアレイ構成およびその生産方法が当業者に公知であり、たとえば、米国特許第号、第5,242,974号、第5,384,261号、第5,405,783号、第5,412,087号、第5,424,186号、第5,429,807号、第5,436,327号、第5,445,934号、第5,556,752号、第5,405,783号、第5,412,087号、第5,424,186号、第5,429,807号、第5,436,327号、第5,472,672号、第5,527,681号、第5,529,756号、第5,545,531号、第5,554,501号、第5,561,071号、第5,571,639号、第5,593,839号、第5,624,711号、第5,700,637号、第5,744,305号、第5,770,456号、第5,770,722号、第5,837,832号、第5,856,101号、第5,874,219号、第5,885,837号、第5,919,523号、第5981185号、第6,022,963号、第6,077,674号、第6,156,501号、第6261776号、第6346413号、第6440677号、第6451536号、第6576424号、第6610482号、第5,143,854号、第5,288,644号、第5,324,633号、第5,432,049号、第5,470,710号、第5,492,806号、第5,503,980号、第5,510,270号、第5,525,464号、第5,547,839号、第5,580,732号、第5,661,028号、第5,848,659号、および第5,874,219号;Shena, et al. (1998), Tibtech 16:301; Duggan et al. (1999) Nat. Genet. 21:10; Bowtell et al. (1999) Nat. Genet. 21:25; Lipshutz et al. (1999) Nature Genet. 21:20-24, 1999; Blanchard, et al. (1996) Biosensors and Bioelectronics, 11:687-90; Maskos, et al., (1993) Nucleic Acids Res. 21:4663-69; Hughes, et al. (2001) Nat. Biotechol. 19:342, 2001(これらは各々、参照により本明細書に援用される)において開示されている。組織マイクロアレイを、タンパク質特定のために用いることができる(Hans et al. (2004)Blood 103:275-282を参照のこと)。ファージ−エピトープマイクロアレイを用いて、タンパク質(複数含む)が患者体内で自己抗体を誘導するか否かに基づき、試料中のタンパク質を1つ以上、特定することができる(Bradford et al. (2006) Urol. Oncol. 24:237-242)。
ゆえに、マイクロアレイには、本明細書に特定されるマーカー(たとえば、治療結果の指標となるもの。たとえば、野生型マーカー遺伝子、正常な対立遺伝子変異体、およびマーカー遺伝子の変異を特定するためのもの)の1つ以上に対応するプローブを1つ以上含有する。マイクロアレイは、たとえば、治療結果の指標となる、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも40、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも75、もしくは少なくとも100のバイオマーカーおよび/またはその変異体に対応するプローブを含有することができる。マイクロアレイは、本明細書に記述されるマーカーの1つ以上に対応するプローブを含有することができる。さらには、マイクロアレイは、本明細書に記述されるマーカーセットの完全な一式を含有しても良く、それは、本明細書に記述される方法に従い、選択およびまとめられてもよい。マイクロアレイを用いて、アレイ中の予測マーカーの1つ以上、または予測マーカーセットの発現を分析することができる。1つの例において、アレイを用いて、アレイ中のマーカーの発現プロファイルを確認するために、試料中の予測マーカーの1つ以上または予測マーカーセットの発現を分析することができる。この方法において、約44,000マーカーまで同時に発現を分析することができる。これにより、1つ以上の試料中で特異的に発現された一連のマーカーを示すよう、発現プロファイルを開発させることが可能となる。さらに、これにより、治療結果を分析するために、発現プロファイルを発展させることが可能となる。
アレイはまた、正常細胞および異常細胞(たとえば、腫瘍等の試料)の1つ以上のマーカーの異なる発現パターンを確認するのに有用である。これにより、患者の治療結果特定を容易にするためのツールとして役立つ一連のマーカーが提供される。さらに、アレイは、基準発現レベルのための基準マーカーの発現を確認するのに有用である。他の例において、アレイを用いて、アレイ中の1つ以上のマーカーの経時的な発現をモニターすることができる。
そのような定性的な測定に加え、本発明により、マーカー発現を定量化することも可能である。ゆえに、予測マーカーは、マーカーセットまたは試料中のマーカー量による結果の表示に基づき、グループ化することができる。これは、たとえば、本明細書に提供される方法による量のスコアリングによって、試料の結果を確認するのに有用である。
アレイはまた、同一細胞または異なる細胞中の他の予測マーカーの発現に対する、マーカー発現の影響を確認するのに有用である。これにより、たとえば、もし患者が好ましくない予後となると予測される場合に、治療介入のための別の分子標的の選択を提供することができる。
試薬およびキット
本発明はまた、生物試料(たとえば、骨髄試料、腫瘍生検または基準試料)中の本発明のマーカーに対応する核酸またはポリペプチドの存在を検出するためのキットを包含する。そのようなキットを用いて、治療結果を分析する(たとえば、NAE阻害物質治療の後で、患者が好ましい結果を有することができるかどうかを決定する)ためのマーカー遺伝子の少なくとも1つの変異状態を測定することができる。たとえば、生物試料中の本発明のマーカーまたはマーカー遺伝子の変異に対応するゲノムDNA部分、ポリペプチドまたは転写されたRNAを検出することができる、標識された化合物もしくは剤、および、試料中のゲノムDNA部分、ポリペプチドまたはRNAの量を測定するための手段を含有することができる。マーカータンパク質との結合に適した試薬としては、抗体、抗体誘導体、抗体断片等が挙げられる。マーカー核酸(たとえば、ゲノムDNA、mRNA、スプライシングされたmRNA、cDNA等)との結合に適した試薬としては、相補的な核酸が挙げられる。標識は、マーカー結合剤(たとえば、プローブ、またはプローブもしくはプライマー等の核酸試薬、または、たとえば特異的結合剤もしくは抗体等のタンパク質試薬)、に直接付着させることができ、または、二次試薬が間接標識のための標識を含有することができる。キットはまた、対照試料もしくは基準試料、または、検証試料を分析および比較することができる一連の対照試料もしくは基準試料を含有することができる。たとえば、キットは、本明細書に記述されるマーカーもしくは変異、または基準マーカー(たとえば、腫瘍を有していない対象由来の、試料間、もしくは時点間、もしくは基準ゲノム間の分析結果を標準化するためのハウスキーピング遺伝子等)の1つ以上を含む陽性対照試料を、たとえばマーカーの基準発現レベルまたは2倍体コピー数のベースラインを確立するために、有しても良い。例として、キットは、相補的な核酸のアニーリング、または抗体と、抗体が特異的に結合するタンパク質との結合に適した液体(たとえば、緩衝液)、および、試料部分の1つ以上を含有してもよい。本発明のキットは、任意選択的に、本発明の方法の実施に有用な追加の構成要素(たとえばチューブ等の試料収集容器)を含有しても良く、および、たとえば試料採取時と分析時との間に、時間、または有害な保管および操作状況があり得る場合に、任意選択的に、検出されるマーカーの量を最適化するための手段を含有しても良い。たとえば、キットは、上述のように、試料中の腫瘍細胞の数を増加させるための手段、緩衝剤、防腐剤、安定化剤または本明細書に提供される方法で使用するための細胞材料またはプローブの調製のための追加の試薬;ならびに提供されるプローブ(複数含む)内に組み込まれるか、または結合されるか、または単独で検出可能な標識を含有することができる。1つの例示的な実施形態において、試料収集容器を含有するキットは、たとえば、抗凝固剤および/または安定化剤(たとえば、上述の、または当業者公知のRNA安定化剤)を含有するチューブ等を含有することができる。キットはさらに、検出可能な標識を検出するために必要な構成要素(たとえば、酵素または基質)を含有することが出来る。マーカーセットに対しては、キットは、バイオマーカーの検出に用いるためのマーカーセットアレイまたはチップを含有することができる。キットはまた、キットを用いて得られた結果を解釈するための説明書を含むことができる。キットは、1つ以上のバイオマーカー(たとえば、本明細書に記述される2、3、4、5またはそれ以上のバイオマーカー)の検出のための試薬を含有することができる。
1つの実施形態において、キットは、少なくとも1つのバイオマーカー、(たとえばNAE阻害物質治療による)治療結果を示すマーカーを検出するためのプローブを含有する。1つの例となる実施形態において、キットは、配列番号1、2、4、5、7、8、9、12、13、15、16、18、19、21、22、24、25、または、染色体22qの塩基対29999545〜30094589、染色体18qの塩基対48556583〜48611412、染色体Xpの塩基対44732423〜44971847、染色体4qの塩基対153242410〜153456172、染色体17pの塩基対7571720〜7590868、染色体9pの塩基対21967751〜21994490上の配列、または、任意の前述の相補物、または配列番号3、6、10、11、14、17、20、23および/もしくは26からなる群から選択されるマーカー遺伝子を検出するための核酸プローブを含有する。いくつかの実施形態において、キットは、NF2、SMAD4、KDM6A、FBXW7、TP53、CDKN2A、CDKN2A_p14およびAPCからなる群から選択されるマーカーを検出するためのプローブを含有する。他の実施形態において、キットは、NF2、SMAD4、KDM6A、FBXW7、TP53、CDKN2A、CDKN2A_p14およびAPCからなる群から選択されるマーカー遺伝子中の変異を検出するためのプローブを含有する。1つの実施形態において、キットは、NF2、SMAD4、KDM6A、FBXW7、TP53、CDKN2A、CDKN2A_p14およびAPCからなる群由来の2つ以上のマーカーを含有するマーカーセットを検出するためのプローブを含有する。他の実施形態において、キットは、子宮または子宮頚の癌におけるFBXW7を検出するためのプローブを含有する。1つの実施形態において、キットは、腸管、胸部、肺、頭頸部、子宮頚または皮膚の癌におけるTP53を検出するためのプローブを含有する。1つの実施形態において、キットは、腸管の癌におけるTPCおよびAPCを検出するためのプローブを含有する。1つの実施形態において、キットは、皮膚または中枢神経系の癌におけるCDKN2A_p14を検出するためのプローブを含有する。1つの実施形態において、キットは、頭頸部または皮膚の癌におけるCDKN2Aを検出するためのプローブを含有する。1つの実施形態において、キットは、頭頸部の癌におけるSMAD4を検出するためのプローブを含有する。関連実施形態において、キットは、配列番号1、2、4、5、7、8、9、12、13、15、16、18、19、21、22、24および25からなる群から選択される核酸配列を含む、または当該核酸配列から誘導された(たとえば、それらの(たとえば相同または相補的な)断片、変異または変異体)核酸プローブを含有する。核酸プローブを含有するキット(たとえば、オリゴヌクレオチドベースのキット)については、当該キットは、たとえば、本発明のマーカーに対応する核酸配列にハイブリダイズする(標識または非標識の)オリゴヌクレオチド(任意選択的に基質に固定されている)等の核酸試薬を1つ以上含有することができ、および、任意選択的にさらに、基質に結合しない標識オリゴヌクレオチド、プライマー、PCRプライマー対(たとえば、本発明のマーカーに対応する核酸分子を増幅するのに用いることができる)、分子標識プローブ、本発明のマーカーに対応する核酸配列の少なくとも2つとハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含有するマーカーセット等を含有することができる。当該キットは、RNA安定化剤を含有することができる。
タンパク質プローブを含有するキット(たとえば、リガンドまたは抗体ベースのキット))については、当該キットは、たとえば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する(たとえば固形支持体に付着する)一次抗体、そして任意選択的に、(2)一次抗体またはポリペプチドのいずれかに結合し、検出可能な標識が結合された、異なる2次抗体、を含有することができる。当該キットは、タンパク質安定化剤を含有することができる。当該キットは、バイオマーカーではない試料由来の物質が、プローブに非特異的に結合する量を減少させるための試薬を含有することができる。非特異結合を減少させるための試薬の例としては、非イオン洗剤、たとえばアルブミンまたはカゼインを含有する、非特異的タンパク質を含有する溶液、または当業者公知の他の物質が挙げられる。
本発明の予測マーカーに対応する単離ポリペプチド、またはそれらの断片もしくは変異体を、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体調製の標準的な技術を用いた抗体作製のために、免疫原として用いることができる。たとえば、通常、ウサギ、ヤギ、マウスもしくは他の哺乳類または脊椎動物等の適切な対象(すなわち、免疫応答可能な対象)を免疫することによる抗体の調製に、免疫原が用いられる。さらなる態様において、本発明により、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片が提供され、それら抗体または断片は、本発明のアミノ酸配列、本発明のcDNAによりコードされるアミノ酸配列、本発明のアミノ酸配列の少なくとも8、10、12、15、20または25の連続したアミノ酸残基の断片、本発明のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%または99%同一であるアミノ酸配列(ここで、同一性パーセントは、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティは12、およびギャップペナルティは4で、GCGソフトウェアパッケージのALIGNプログラムを用いて決定されている)、および、本発明の核酸分子からなる核酸分子に、45℃、6X SSCのハイブリダイゼーションおよび65℃、0.2X SSC、0.1%SDSでの洗浄の条件下でハイブリダイズする核酸分子によりコードされるアミノ酸配列またはその相補物からなる群から選択されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドに特異的に結合する。モノクローナル抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体および/または非ヒト抗体であっても良い。適切な免疫原調製物は、たとえば、遺伝子組み換えで発現されたポリペプチドまたは化学合成されたポリペプチドを含有してもよい。当該調製物はさらに、フロイントの完全アジュバントもしくは不完全アジュバントまたは類似の免疫賦活化剤等のアジュバントを含有しても良い。
ヒト抗体を作製する方法は当分野に公知である。ヒト抗体を作製する1つの方法は、たとえばトランスジェニックマウス等のトランスジェニック動物を使用することである。これらのトランスジェニック動物は、それら自身のゲノムに挿入された、ヒトの抗体を産生するゲノムのかなりの部分を含有し、そして、動物自身の内因性抗体の産生はできない状態となっている。そのようなトランスジェニック動物の作製方法は当分野で公知である。そのようなトランスジェニック動物は、XENOMOUSE(商標)技術を用いて作製することができ、または、「ミニ遺伝子座(minilocus)」法を用いて作製することができる。XENOMICE(商標)を作製する方法は、米国特許第6,162,963号、第6,150,584号、第6,114,598号および第6,075,181号に記述されており、それらは参照により本明細書に援用される。「ミニ遺伝子座」法を用いたトランスジェニック動物の作製方法は、米国特許第5,545,807号、第5,545,806号および第5,625,825号に記述されており、また、国際特許公開WO93/12227も参照できる(それら各々は、参照により本明細書に援用される)。
抗体は、イムノグロブリン分子および、免疫学的に活性なイムノグロブリン分子の部分(すなわち、本発明のポリペプチド(たとえば、本発明のポリペプチドのエピトープ等)等の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子)を含有する。本発明の特定のポリペプチドに特異的に結合する分子は、そのポリペプチドには結合するが、試料(たとえば生物試料であり、自然にポリペプチドを含有する)中の他の分子には実質的に結合しない分子である。たとえば、抗原結合断片、ならびに、上述の抗体から得られる全長単量体ポリペプチド、全長二量体ポリペプチドまたは全長三量体ポリペプチドは、それら自身、有用なものである。このタイプの有用な抗体ホモログとしては、(i)VL、VH、CLおよびCH1ドメインから構成される一価の断片である、Fab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド結合により連結された2つのFab断片を含有する二価の断片である、F(ab´)2、(iii)VHおよびCH1ドメインから構成されるFd断片、(iv)抗体の単一のアームのVLドメインおよびVHドメインから構成されるFv断片、(v)VHドメインから構成される、dAb断片(Ward et al., Nature 341:544-546 (1989))、(vii)VHHドメイン(ナノボディとして知られる)から構成される、単一ドメイン機能性重鎖抗体(たとえば、Cortez-Retamozo, et al., Cancer Res. 64: 2853-2857(2004)およびそれに引用される参照文献を参照のこと)、および、(vii)単離された相補性決定領域(CDR)であり、たとえば抗原結合断片を提供するのに十分なフレームワークとともに単離された1つ以上のCDR等、が挙げられる。さらに、Fv断片の2つのドメイン(VLおよびVH)は別々の遺伝子によりコードされているが、遺伝子組換え法を用いて、VLとVH領域が一価分子を形成するように対になる単一タンパク質鎖として形成することができる合成リンカーにより、それらを連結させることができる(単鎖Fv(scFv)として知られる。たとえば、Bird et al. Science 242:423-426 (1988)および、Huston et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883 (1988)を参照のこと)。そのような単鎖抗体もまた、抗体の「抗原結合断片」という用語の中に包含されることが意図される。これらの抗体断片は、当業者公知の従来法を用いて得ることができ、そしてその断片は、無傷抗体と同じ方法で有用性をスクリーニングされる。たとえばFv、F(ab´)2およびFab等の抗体断片は、無傷タンパク質の開裂(たとえば、プロテアーゼによる開裂または化学的な開裂)により調製されてもよい。本発明により、ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体が提供される。前述の任意のものの合成変異体および遺伝子操作変異体(米国特許第6,331,415号を参照のこと)もまた、本発明から予期される。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体は、従来的なマウスのモノクローナル抗体技術を含む、様々な技術により産生することができ、たとえば、Kohler and Milstein, Nature 256: 495 (1975)の標準的な体細胞ハイブリダイゼーション技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kozbor et al., 1983, Immunol. Today 4:72を参照のこと)、EBVハイブリドーマ技術(Cole et al., pp. 77-96(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., 1985)を参照のこと)、またはトリオーマ技術等がある。概要は、Harlow, E. and Lane, D. (1988) Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, NY、および、Current Protocols in Immunology, Coligan et al. ed., John Wiley & Sons, New York, 1994を参照のこと。診断応用については、抗体は、たとえばマウス、ラットまたはウサギで作製されたモノクローナル抗体であってもよい。さらに、in vivo応用での使用については、本発明の抗体は、ヒト抗体またはヒト化抗体であってもよい。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、対象のポリペプチドに結合する抗体について、ハイブリドーマの培養上清を、たとえば標準的なELISAアッセイを用いてスクリーニングすることにより検出される。
もし所望であれば、抗体分子を対象から(たとえば、対象の血液または血清から)単離または採取することができ、さらに、たとえばプロテインAクロマトグラフィー等の公知の技術により精製してIgG分画を得ることができる。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドに特異的な抗体を、たとえばアフィニティクロマトグラフィー等により精製または選択(たとえば部分的精製)し、実質的に精製された抗体、および精製抗体を得ることができる。実質的に精製された抗体組成物とは、本文中の関連においては、抗体試料に、本発明の所望のタンパク質またはポリペプチド以外のエピトープに指向する抗体を最大でもたった30%(乾重量で)のみ混入しており、および、試料の最大で20%、最大で10%または最大で5%(乾重量で)が、混入抗体であることを意味している。精製抗体組成物とは、その組成物中の抗体の少なくとも99%が、本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドに指向するものであることを意味する。
本発明のマーカーに対応するポリペプチドに指向する抗体(たとえば、モノクローナル抗体)を用いて、そのマーカーの発現パターンおよび発現レベルを評価するために、マーカー(たとえば細胞試料中の)の検出を行うことができる。また、抗体を診断的に用いて、たとえば特定の治療レジメンの有効性を測定するための臨床の検査手順の一部として、組織または体液(たとえば、血液試料または尿の)タンパク質レベルをモニターすることができる。検出は、抗体と検出可能な物質を連結させることにより促進することができる。検出可能な物質の例としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質および放射性物質が挙げられる。適切な酵素の例としては、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、適切な補欠分子族複合体の例としては、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、適切な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシルまたはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質の例としては、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例としては、ルシフェラーゼ、ルシフェリンおよびエクオリンが挙げられ、ならびに、適切な放射性物質の例としては、125I、131I、35Sまたは3Hが挙げられる。
従って、1つの態様において、本発明により、実質的に精製された抗体またはその断片、および非ヒト抗体またはその断片が提供され、その抗体または断片は、本明細書に特定されるマーカーによりコードされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドに特異的に結合する。本発明の実質的に精製された抗体またはその断片は、ヒト抗体、非ヒト抗体、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であっても良い。
他の態様において、本発明により、非ヒト抗体またはその断片が提供され、その抗体または断片は、本発明の予測マーカーの核酸分子によりコードされるアミノ酸配列を含有するポリペプチドに特異的に結合する。そのような非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウサギ、またはラットの抗体であっても良い。あるいは、本発明の非ヒト抗体は、キメラ抗体および/またはヒト化抗体であっても良い。さらに、本発明の非ヒト抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であっても良い。
実質的に精製された抗体またはその断片は、本発明のポリペプチドのシグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、膜貫通ドメインもしくは細胞質ドメインまたは細胞質ループに特異的に結合しても良い。本発明の、実質的に精製された抗体もしくはその断片、非ヒト抗体もしくはその断片、および/または、モノクローナル抗体もしくはその断片は、本発明のアミノ酸配列の細胞外ドメインまたは分泌配列に特異的に結合する。
本発明はまた、検出可能な物質に結合された本発明の抗体、および使用説明書を含有するキットを提供する。本発明のさらに他の態様は、本発明のプローブおよび薬学的に受容可能な担体を含有する診断用組成物である。1つの実施形態において、診断用組成物には、検出可能な部分である本発明の抗体、および薬学的に受容可能な担体が含まれる。
感受性アッセイ
癌試料が、患者から得られる。発現レベルは、本明細書に記述されるマーカーの少なくとも1つと対応するマーカーに対して、試料中で測定される。マーカーセットが、本明細書に記述され、特定され、および本明細書に記述される方法を用いてマーカーセット中に共に入れられるマーカーを含有して、利用することができる。そのような分析を用いて、患者の腫瘍の発現プロファイルを得る。次いで、発現プロファイルの評価を用いて、患者が、好ましい結果を有すると期待されるか否か、およびたとえばNAE阻害療法(たとえば、NAE阻害物質(MLN4924等)単独での治療、または追加の剤との組み合わせでの治療)で利益を得るかどうか、または別の剤で生存率に同様の効果がもたらされると期待されるかどうかを決定する。また、発現プロファイルの評価を用いて、患者が好ましくない結果となると予測されるかどうか、およびNAE阻害療法以外の癌療法から利益を得るかどうか、または変更したNAE阻害療法レジメンから利益を得るかどうかを決定することができる。評価には、たとえば、Gene Expresion Omunibus(GEO)プログラム(National Center for Biotechnology Information (NCBI, Bethesda, MD))に預託された発現値を用いて、任意の本発明方法または当分野公知の他の類似のスコアリング方法(たとえば、重み付き投票、閾値特性の組み合わせ(CTF)、Cox比例ハザード分析、主要成分スコアリング、線形予測スコア、K−最近傍等)を用いて調製された1つのマーカーセットの使用を含むことができる。さらに、評価には、2つ以上の調製されたマーカーセットの使用を含むことができる。評価結果により好ましい結果が示される場合、癌の治療に適しているとしてNAE阻害療法が特定され、または、好ましくない結果が予期される患者に対しては、より積極的な治療レジメンが特定される。
1つの態様において、本発明は、たとえば癌(血液のがん(多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍癌(メラノーマ、食道癌または膀胱癌))を有している患者を、治療結果について評価する方法を特徴とする。当該方法には、患者におけるマーカーのマーカーセット中のマーカーの発現評価を提供することが含まれ、ここで、当該マーカーセットには以下の特徴がある:多量の遺伝子が含まれ、それらは各々、特定された結果を有する患者と、罹患していない対象との間で区別できるように発現しており、対象のマーカーセット中の各マーカーの異なる量(たとえば、罹患していない基準試料でのレベルと比較して)が、約15%、約10%、約5%、約2.5%、または約1%を超えない偽陽性で治療結果を予測できるような十分な数の特異的発現マーカーを含有し(ここで、偽陽性とは、対象がそうではない場合に、患者を応答性または不応性として推定してしまうことを意味する)、そして、基準値を有する患者由来のセット中の各マーカーの量の比較を得て、それにより患者を評価する。
NAE阻害療法の過程で患者から採取した腫瘍試料中の特定のマーカーまたはマーカーセットの1つ以上の量を検証することにより、治療剤が継続して機能するかどうか、または癌が治療プロトコールに対して不応性(難治性)となるかどうかを決定することができる。たとえば、MLN4924の治療を受けている患者は、腫瘍細胞が除去され、マーカーまたはマーカーセットの発現をモニターされる。たとえば、NAE阻害物質等の剤により、さらに好ましい結果となることが本明細書に特定されるマーカーの1つ以上の量のプロファイルにより示されている場合、その治療は続行される。しかし、剤により好ましくない結果となることが本明細書に特定されるマーカーの1つ以上の量のプロファイルにより示されている場合、癌は、たとえばNAE阻害療法等の療法に対して抵抗性となる可能性があり、他の治療プロトコールを開始し、患者を治療しなければならない。たとえば、癌は、NAE阻害に対する抵抗性に関連するマーカー遺伝子中に変異を含有しうる。
重要なことは、これらの決定は、患者ごと、または剤(もしくは剤の組み合わせ)ごとに行われうるということである。ゆえに、特定のNAE阻害療法が特定の患者または患者群/患者型に利益をもたらす可能性があるかどうか、または特定の治療を継続するべきかどうかを決定することができる。
情報の使用
1つの方法において、たとえば患者の腫瘍の変異状態(たとえば、本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットを評価した結果である、患者のマーカー(複数含む)の、サイズ、配列、組成または量等の特性)等に関する情報、または、患者が好ましい結果を得ると期待されるかどうかという情報が、病院、診療所、政府当局、補償団体または保険会社(生命保険会社等)等の第三者に、開示(たとえば、電子的に通信される等で伝達)される。たとえば、医療手順の選択、医療手順に対して支払を行うかどうか、補償団体による支払、またはサービスもしくは保険に対するコストなどが、情報の機能であってもよい。たとえば、第三者が情報を受信し、少なくとも情報の一部に基づき決定を行い、そして任意選択的に情報を伝え、または情報に基づき手順、支払、支払のレベル、範囲の選択を行う。当該方法において、表1から選択される、もしくは表1から導かれる、および/または本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットの有益な発現レベルが測定される。
1つの実施形態において、医療保険または生命保険等の保険料は、マーカーもしくはマーカーセット等の1つ以上のマーカーの発現レベル(たとえば、治療結果に関連する発現レベル(たとえば、有益な量))に関する情報の機能として、評価される。たとえば、もし本明細書に記述される患者のマーカー遺伝子またはマーカーセットが、保険対象(または保険補償を求める対象)と、基準値(たとえば、罹患していない人)または基準試料(たとえば合致対照)の間で異なる特性(たとえば、サイズ、配列、組成または量等)を有している場合、保険料は、増加され得る。保険料はまた、本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットを評価した結果に基づき見積もられ得る。たとえば、保険料は、たとえば、マーカー(たとえば、本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットの評価結果)に応じて、リスクを分散させるために評価されてもよい。他の例において、保険料は、既知の治療結果を有する患者から得られた保険数理データに応じて分析されてもよい。
サイズ、配列、組成または量等のマーカー特性に関する情報((たとえば、有益な量等)の本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットの評価結果)を、たとえば生命保険に関する引受業務プロセスの中で用いることができる。当該情報は、対象に関するプロファイルの中に組み込むことができる。プロファイル中の他の情報としては、たとえば、生年月日、性別、配偶者の有無、銀行預金情報、クレジットカード情報、子供等が挙げられる。保険契約は、プロファイル中の1つ以上の他の情報項目と共に、たとえば本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットの評価結果のたとえばサイズ、配列、組成または量等のマーカー特性に関する情報に応じたものとすることが推奨され得る。保険料またはリスク分析はまた、マーカーまたはマーカーセット情報に応じて評価することができる。1つの実施形態において、予測される治療結果に基づき、ポイントが割り当てられる。
1つの実施形態において、サイズ、配列、組成または量等のマーカー特性に関する情報(たとえば、本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットの評価結果)は、対象に提供されるサービスまたは治療に対して支払を行うための資金の移転を許可するかどうか(または、本明細書に言及される他の決定を行うかどうか)を決定する機能により分析される。たとえば、本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットのサイズ、配列、組成または量等の特性の分析結果により、対象に好ましい結果が期待されることが示される可能性がある場合は、治療が必要であり、対象に提供されるサービスまたは治療に対する支払のための許可を示す、または許可を与える結果がもたらされる。1つの例において、表1から選択もしくは得られる、または本明細書に記述されるマーカーまたはマーカーセットのサイズ、配列、組成または量等の有益な特性が測定され、もしその有益な量により好ましい結果が確認される場合、支払が許可される。たとえば、事業体(病院、介護者、政府当局または保険会社、または医療費の支払もしく補償を行う他の事業体)は、本明細書に記述される方法の結果を用いて、対象患者以外の関係者が、その患者に提供されるサービス(たとえば、特定の治療)または治療に対して支払を行うかどうかを決定することができる。たとえば、一番目の事業体(たとえば、保険会社)は、本明細書に記述される方法の結果を用いて、患者に、または患者のために、金銭を支払うかどうか(たとえば、患者に提供されるサービスまたは治療に対して、商品もしくはサービスのベンダー、病院、医師または他の介護者等の第三者に補償を行うかどうか)を決定することができる。たとえば、一番目の事業体(たとえば、保険会社)は、本明細書に記述される方法の結果を用いて、保険プランまたはプログラム(たとえば、健康保険もしくは生命保険のプランまたはプログラム)にある個々人を、継続するか、中断するか、登録するかどうかを決定することができる。
1つの態様において、本開示は、データの提供方法を特徴とする。本方法には、支払を行うかどうかを決定するために、本明細書に記述されるデータ(たとえば、本明細書に記述される方法により作製される)を提供し、記録(たとえば、本明細書に記述される記録)を提供することが含まれる。いくつかの実施形態において、データは、コンピューター、コンピューターディスク、電話、ファクシミリ、電子メール、または手紙により提供される。いくつかの実施形態において、データは、1番目の当事者から2番目の当事者へと提供される。いくつかの実施形態において、一番目の当事者は、患者、ヘルスケア提供者、治療を行う医師、保険維持機構(HMO)、病院、政府当局または薬剤を販売もしくは供給する者から選択される。いくつかの実施形態において、2番目の当事者は、第三者支払い当事者、保険会社、雇用者、雇用者が提供する健康保険のプラン、HMOまたは政府当局である。いくつかの実施形態において、1番目の当事者は、対象、ヘルスケア提供者、治療を行う医師、HMO、病院、保険会社、または薬剤を販売もしくは供給する事業体から選択され、2番目の当事者は政府当局である。いくつかの実施形態において、1番目の当事者は、対象、ヘルスケア提供者、治療を行う医師、HMO、病院、保険会社、または薬剤を販売もしくは供給する者から選択され、2番目の当事者は保険会社である。
他の態様において、本開示は、患者のマーカーもしくはマーカーセットに対するサイズ、配列、組成または量等の特性のリストおよび値を含む記録(コンピューターで読み取り可能な記録)を特徴とする。いくつかの実施形態において、当該記録には、各マーカーに対する2以上の値が含まれる。
本発明は、以下の実施例により解説されるが、当該実施例は、何らかの本発明を限定する意図は無い。
実施例1.細胞株パネルスクリーニング
臨床開発を支持し、腫瘍感受性または抵抗性のバイオマーカーの可能性があるものを特定するために、2つの大きな癌細胞株パネル(パネル1、N=653(McDermott et al. (2007) PNAS 104:19936-19941);パネル2、N=240(O’Day et al. (2010) Fourth AACR International Conference on Molecular Diagnostics in Cancer Therapeutic Development))をMLN4924で処理して、細胞活性のデータ(IC50、EC50およびPOC−対照のパーセンテージ)を作製した。
パネル1(上記のMcDermott et alら)。細胞株を、3つの濃度(20nM、200nM,および2μM)のMLN4924に、72時間、曝した。活性、すなわち細胞数を、細胞浸透性核酸染色の蛍光を測定することにより定量化した。各試料の3重分の値の平均をとり、DMSO対照と比較して、対照パーセンテージを算出した。結果中、対照または活性無しの値は、約1の値が与えられ、感受性が示される値は1未満、全細胞群が死亡すると値は0、そして抵抗性が示される値は1より大きい値である。活性の連続的な値を各濃度に対して得て、一部の値を、最終的な感受性または抵抗性に対するカットオフとして選択した。たとえば、パネル中で記録されたすべてのPOCのメジアン値よりも小さいメジアンPOC(<0.34)は、感受性を示唆し、0.34〜0.75は感受性の境界を示唆し、パネル中のすべてのPOCの4分の3よりも大きい値(>0.75)は、非感受性または抵抗性を示唆する。概して、感受性細胞株では、用量反応関係が認められた。感受性、非感受性または抵抗性としての細胞株の最終判断は、2μMでのその生存率により決定された。
パネル2(Ricerca Biosciences、Inc., Bothell、WA)。MLN4924を、10の濃度の1/2log希釈で加え、72時間、処理した。画像解析を含めた蛍光顕微鏡による高含有細胞スクリーニングを行い、いくつかのタイプのデータを作製した。結果には、EC50値(細胞数測定の後、EC50濃度は、MLN4924濃度のlogに対する対照パーセント曲線(POC)の変曲点から算出された)、IC50値(POC−log MLN4924プロットから、IC50は、50%最大予想反応での濃度である)、アポトーシス(5倍超の誘導に対する濃度として決定された、MLN4924濃度のlogに対してプロットされたカスパーゼ3の活性測定)および有糸分裂活性(ホスホ−ヒストン3の倍数増加測定により決定)が含まれた。EC50とIC50の比較(図3)により、細胞株を、感受性、非感受性または抵抗性に割り当てることができた。感受性または抵抗性の細胞株の最終的な特定は、EC50値に基づいた。感受性に対するカットオフは、パネルに記録されたすべてのPOCのメジアン値よりも小さいメジアンEC50(<0.36)であり、境界感受性は、0.36〜1.67のメジアンEC50と関連しており、非感受性または抵抗性細胞株は、EC50がパネル中のすべてのPOCの4分の3よりも大きい(>1.67)ことで特定された。
パネル1とパネル2で重複している細胞株(114が重複)は、増殖阻害効果の一致を示した(スピアマンの相関係数=0.72)。さらに、各細胞株パネル全体として(重複細胞株だけではない)の組織学的および変異分析もまた、2つのパネル間で一致した結果を示した(図4AおよびB)。
対照値のメジアンパーセンテージを用いたフィッシャーの直接検定を、細胞株における個々の変異とMLN4924に対する感受性または抵抗性との関連を評価するために用いた。選択された遺伝子に対するp値の要約を表3にまとめる。フィッシャーの直接検定において、変異が感受性と関連していた遺伝子として、NF2、SMAD4、KDM6A、CDKN2AおよびCDKN2A_p14が挙げられる。RB1とTP53は、非感受性と関連していた。
※は、全ての細胞型で確証されていない、RB1関連の表現型を表す。いくつかの腫瘍型は、他よりも、より抵抗性と関連していた:脳腫瘍、膀胱腫瘍、骨腫瘍および肺腫瘍(NSCLC)は、それぞれ、p値が0.102、0.205、0.226、および0.281である。RB1が感受性マーカーではないという結果は、MLN4924のメカニズムへの関与からRB1を除外した、Jia et al. ((2011) Neoplasia 13:561-569)の結果と一致している。
実施例2.変異の関連性の分析
細胞株における変異遺伝子を治療剤に対する感受性と相関させるにあたっての困難性の1つには、多くの細胞株が、2つ以上の変異遺伝子を有しているということである。たとえば、甲状腺癌由来の8505Cという名称の細胞株は、BRAF、TP53、NF2およびCDKN2Aに変異を有している。特に、TP53およびCDKN2A変異は、複数の細胞株において、他の変異と共に発生していた。どの変異が細胞株パネルにおいて感受性または抵抗性と関連しているのかを知るために、副解析(sub−analysis)を実施した。
APC対TP53 細胞株パネル1において、23の細胞株がAPCに変異を有している。これらのうち、18の細胞株がTP53にも変異を有している。APCがMLN4924に対する抵抗性を引き起こしているのか、または、単にTP53変異でよく見られるパッセンジャー変異(passenger mutation)であるのかを決定することは困難であった。細胞株のさらなる分析を、TP53を含む二重の変異を有する細胞株を差し引きすることにより行った(表4)。
表4Aに示されるように、細胞株パネルからのTP53変異の差し引きによって、MLN4924での治療に対するTP53野生型細胞株の抵抗性と残りの変異との関連性を結論付けるには小さすぎるNをもたらす。23すべてのAPC変異を除去した後も、TP53は抵抗性と関連があると思われる(表4B)。それにもかかわらず、APCおよびTP53の両方の変異を有する細胞株は、抵抗性と強い関連性を示している(表4C)。さらに、APC+TP53変異の亜群の細胞株の大部分は、腸管癌腫瘍試料由来である(表5。この表にはまた、元のの差し引き分析には含まれていなかった6つのパネル1の細胞株と、パネル2由来のデータおよび細胞株が含まれている)。
組織構造との関連性
一部のTP53変異は、一部の腫瘍型において、他のものよりも抵抗性と関連している可能性がある。TP53変異細胞株を、マンホイットニー(ノンパラメトリック)検定により、組織型内で分析した。図5に示されるように、TP53変異は、大腸癌細胞株で、MLN4924に対する抵抗性と有意に相関した(p値=0.04022)。
他の組織における同様の関連性の分析により、TP53は、乳癌および肺癌(NSCLC)細胞株においてMLN4924抵抗性と関連していることが示唆される。
腫瘍の組織構造と、MLN4924治療に対する抵抗性または感受性との関連性の可能性について、さらに変異を分析した。表6に、パネル1の分析結果を提供し、表7に、パネル2の分析結果を提供するが、それらのサイズはより小さいため、このタイプの分析が困難であることが判明した。組織との関連性のカットオフは、p値が<0.05で選択された。
TP53が、MLN4924に対する抵抗性と全体的に関連していることとは対照的に、頭頸部癌においては、TP53変異は感受性と関連している。同様の対比は、皮膚および中枢神経系(CNS)におけるCDKN2A変異にも認められた。CDKN2A変異は、全体的にはMLN4924治療に対する感受性と関連性を有しているにもかかわらず、皮膚およびCNS腫瘍細胞株においては、CDKN2AまたはCDKN2A.p14変異は、MLN4924治療に対する抵抗性と関連していた。また、表6および7において、TP53変異が、子宮頸癌および皮膚癌において、抵抗性と有意に相関していること;CDKN2A変異が、頭頸部癌において感受性と有意に相関していること;SMAD4変異が、頭頸部癌において感受性と有意に相関していること、RB1変異が、肺癌において抵抗性と有意に相関していること;およびRB1変異が骨癌において感受性と有意に相関していることを示す。
実施例3 個々の細胞株スクリーニング結果
以下の表に、マーカーの変異によりMLN4924に対する感受性がもたらされたと結論付けられた個々の細胞株のスクリーニングの結果を示す。変異の注記および変異構文の説明は、COSMICデータベースに見出すことができる。
実施例4 TP53欠損と抵抗性との関連性
MLN4924に対する応答性におけるTP53の役割を決定するための他の方法は、TP53遺伝子を欠損させる実験であった。早期の研究において、MLN4924に対する再複製応答におけるp53の重要性は、特定の遺伝子操作に依存しているよう思われ、CDT1の過剰発現を良く反映していると予測された(Cdt1は、2つの別のCRL複合体の基質であり、多くの細胞株においてMLN4924により安定化される)。ノックダウン実験において、p53は、早期ではCDT1ノックダウンと同じような振る舞いをすると思われたが、後期では、高濃度のMLN4924が使用されない限りは、そうではなかった。ウェスタンブロッティングより、siRNA SMARTpoolによってp53タンパク質が効果的にノックダウンされたことが示唆されたが、RNAiでは通常、タンパク質の完全な消失はもたらされない。したがって、特に、MLN4924はp53の安定性をもたらすため、残ったタンパク質によりMLN4924に対する応答性がまだ影響を受けている可能性がある(Liao et al. (2011) Mol. Cell Proteomics 10:10.1074/mcp.M111.009183)。MLN4924の生存能力への効果を、遺伝子組み換えでp53を欠損させたHCT−116細胞と、その元の対照細胞で分析した。
p53発現が野生型(+/+)または欠損(−/−)のいずれかである、同系HCT−116細胞株の対(それぞれ、HD PAR−018およびHD 104−001、Horizon Discovery Ltd)を、別々の384ウェルのプレートに播種し、次いで、翌日、三重でMLN4924の希釈で処理し、1600、1200、800および400細胞/ウェルの密度で播種した細胞と共に、それぞれ24、36、48または72時間インキュベートした。化合物のインキュベーションの後、HCT−116細胞の生存率を、LEADseekerイメージングシステム(GE Healthcare)を用いて、ATPliteアッセイ(Perkin Elmer)により、メーカーの説明書に従い分析した。
HCT−116TP53+/+細胞(MLN4924 LC50=21±1nM)は、HCT−116TP53−/−細胞(MLN4924 LC50=74±5nM)よりも、72時間で、MLN4924に対し高い感受性を示した(図6A〜D)。これらの結果より、p53欠損により、HCT−116のMLN4924に対する感受性が減少することが示唆され、72時間でのp53の包括的な役割はアポトーシス促進であることが示唆される。TP53−/−細胞は24、36および48時間では高濃度の薬剤でも細胞がほとんど死ななかったことから、この解釈は早期の時点では強化される。ウェスタンブロットより、TP53−/−HCT−116細胞において、MLN4924により、未だにp21の発現が上方調節されていたことが示された。HCT−116細胞におけるp21の安定化は、CRL4−Cdt2阻害の直接的な効果によるものであろう(Nishitani et al., 2008; Abbas et al., 2008; Kim et al., 2008)。
この結果は、HCT−116細胞−/−細胞p53ノックアウト細胞を用いた、Linら((2010) Cancer Res. 70:10310-10320)における結果と逆になっている。その実験では、TP53ノックアウト細胞は、MLN4924による全体的な細胞死または増殖に対して、より感受性であったと結論付けられた。本実験とLinらの結果が異なった理由は、細胞をMLN4924でした時間の長さである。Linらは、細胞を8時間処理して、洗浄した。本実験および前の実施例の細胞株パネルにおいて、細胞は72時間にわたり継続してMLN4924で処置された。洗浄時、p53レベルは安定化され、早期の経路よりも、当初は阻害され、それにより早期の感受性がもたらされた代替経路の活性化を利用している。
実施例5 核酸の単離および核酸の配列解析方法
ゲノム単離およびDNA配列解析
細胞および腫瘍からのDNA単離は、DNAEASY(登録商標)単離キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて行う。RNA単離は、MegaMax(Ambion division of Applied Biosystems, Austin, TX)を用いて行う。ゲノム単離は、メーカーが推奨するプロトコールに従い行う。
SANGER配列解析法
PCR増幅は、遺伝子エクソンごとに最適化されたサイクル条件で行う。プライマー伸長シークエンシングは、Applied Biosystems BigDye version 3.1を用いて行う。次いで、Applied Biosystem’s 3730xl DNA Analyzerで反応させる。シークエンスベースコールは、KBTM Basecaller(Applied Biosystems)を用いて行う。体細胞変異コールは、Mutation Surveyor(SoftGenetics)で測定され、Seqman(DNASTAR)を用いて対応する参照配列と、配列データを並べることにより手動で確認する。
SEQUENOM配列法 Sequenom(Sandiego, CA)分析を、一塩基伸長で、TypePLEX(登録商標)化学法を用いて設計する。このプロセスは、3つのステップからなる。1)対象のSNPまたは変異および隣接する配列を含有するテキストファイルを、mysequenom.comにアップロードし、そこでウェブベースのProxSNPプログラムを介して実行する。2)ProxSNPのアウトプットを、PreXTENDを介して実行する。3)PreXTENDのアウトプットを、マルチプレックス化された反応物中に見出される可能性のあるすべてのピーク間での分離を確実にするために、伸長産物の予測質量を決定するAssay Designを介して実行する。
次いで、PCRプライマーを、分析設計ステップで特定された領域を囲むように設計する。対象の領域を、プライマ―を用いてPCR反応中で増幅する。増幅および伸長された産物15nlを、Nanodispenser RS1000を用いて、384SpectroCHIP II上にスポットする。3点検量体を各チップに加え、Sequenom Maldi−tofコンパクト質量分析計の適正な実行を確実にする。
SpectroCHIP IIを、Sequenom MALDI−TOFコンパクト質量分析計に配置する。質量分析計を、384ウェルのspectroCHIP上の各スポットに対し、最大で9つを取得できるよう作動するようにセットする。Sequenom(10142−2)から入手したTypePLEX Gold kit SpectroCHIP IIを、メーカーの推奨プロトコールに従って用いる。分析は、MassARRAY(登録商標)Typer Analyzer v4のSequenom分析ソフトウエアを用いて実施する。
次世代シークエンシング(NGS)法 Illumina platform (Illumina, Inc. San Diego, CA)を用いた標的化NGSを使用して、マーカー中の低頻度変異を確認および特定する。プライマー対は、コーディングエクソンを増幅するように設計する。PCR産物は、PicoGreenアッセイを用いて定量し、等モル比で各試料を混合する。精製産物を、ライゲーションにより末端修復および連結する。連結産物を、Hi−Seq 2000ライブラリー調製に用いる。連結PCR産物を分断し、マルチプレックス化プールごとにバーコードを付けた12の試料からなる、バーコード化したHi−Seq 2000ライブラリーを作製するために用いる。プールされたHi−Seq 2000ライブラリーを、Hi−Seq 2000フローセルの8レーン上でのクラスター作製により、クローン増幅させ、Hi−Seq 2000上での1×100 シングルエンドシークエンシングを用いて配列解析する。ヒトゲノム、ビルドHg18に対するプライマリーシークエンシングリードのマッチング、ならびに、SNP分析は、IlluminaのCASAVAソフトウエア、バージョン1.7.1.を用いて行う。
一般手順
定量RT−PCR
cDNA合成および定量RT−PCRは、ABI Gene Expression Assay、試薬、およびABI PRISM(登録商標)7900HT Sequence Detection Systems (Applied Biosystems, Foster City, CA)を用いて、以下のサイクル条件で行う。AmpErase UNG活性化のため、2分間、50℃で維持。次いで、DNAポリメラーゼ活性化のために95℃、10分間、次いで、95℃15秒、60℃1分の2パートサイクルを40回行う。dCtは、対照遺伝子B2M(Hs99999907_m1)およびRPLPO(Hs99999902_m1)の平均Ctを用いることにより算出する。相対mRNA発現の定量は、Comparative Ct Method (Applied Biosystems)を用いて得られる。mRNA発現の倍数変化値は、正常試料および対応腫瘍試料から作製される。
骨髄腫試料に対する試料取扱い
患者の骨髄吸引液が採取されると、急速な負の選択を介して骨髄腫細胞が富化される。富化手順には、赤血球 RosetteSep(Stem Cell Technologies)に結合する抗体と連結された細胞型特異的抗体のカクテルを用いる。抗体カクテルには、以下の特異性を有する抗体が含まれる:CD14(単球)、CD2(T細胞およびNK細胞)、CD33(骨髄前駆細胞および単球)、CD41(血小板および巨核細胞)、CD45RA(ナイーブB細胞およびT細胞)およびCD66b(顆粒球)。抗体は、試料中の非骨髄腫細胞型を赤血球に架橋する。結合された細胞型を、改変フィコール密度勾配を用いて除去する。次いで、骨髄腫細胞を回収し凍結する。
全RNAを、QIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia、CA)を用いて単離し、分光光度法により定量化する。
RNA単離法で使用したカラムのフロースルー分画から、DNAを単離する。
骨髄腫遺伝子発現のアレイ分析
標準T7ベースの増幅プロトコール(AFFYMETRIX(登録商標)Inc., Santa Clara, CA)により、RNAをビオチニル化 cRNAに転換する。0.5以上〜2.0μgの試料の少量をまた標識し、6μgのcRNAが産生されれば、次いで、ハイブリダイズを行う。自動化T7増幅手順のために、cDNAおよびビオチン標識cRNAを、AMPURE(登録商標)PCR Purification Systemを使用してメーカーのプロトコール(AGENCOURT(登録商標)Bioscience Corporation, Beverly, MA)に従い精製する。cRNA産生量を分光光度法により分析し、10μgのcRNAを断片化し、さらに、AFFYMETRIX(登録商標)Human GenomeHG−U133AおよびHG−U133B GENECHIP(登録商標)アレイ上で3重でのハイブリダイゼーションで処理する。cRNA産生量が6μg〜10μgの範囲にある場合、全cRNA試料を断片化する。
各試料に対するcRNAを、U133A/Bアレイに3重でハイブリダイズする;オペレーター、チップロット、臨床現場およびスキャナー(GENECHIP(登録商標)スキャナー3000)は、期間中ずっと制御される。バックグラウンドの差し引き、スムージング調整、ノイズ補正およびシグナル算出は、AFFYMETRIX(登録商標)MAS5.0で実施する。品質管理の基準には、プレゼントコールパーセント(percent present call)(>25)スケールファクター(<11)、βアクチン3´:5´比(<15)およびバックグランド(<120)が含まれる。これらの基準から外れる試料は、次の分析から除外される。
骨髄腫の純度スコアにより、文献において骨髄腫細胞(およびそれらの正常な血漿前駆細胞)で高度に発現していると知られている遺伝子の発現を、赤血球系細胞、好中球およびT細胞で高度に発現していると知られている遺伝子(以下のリストの14のマーカーを参照のこと)の発現に対し、検証する。骨髄腫スコア=骨髄腫マーカー(以下の#1〜4)/赤血球(#5〜7)+好中球(#8〜11)+T細胞(#12〜14):
1. 205692_s_at CD38 CD38抗原(p45) 骨髄腫/血漿細胞
2. 201286_at SDC1 syndecan−1 骨髄腫/血漿細胞
3. 201891_s_at B2M beta−2 マイクログロブリン 骨髄腫/血漿細胞
4. 211528_x_at B2M beta−2 マイクログロブリン 骨髄腫/血漿細胞
5. 37986_at EpoR エリスロポエチン受容体 赤血球系細胞
6. 209962_at EpoR エリスロポエチン受容体 赤血球系細胞
7. 205838_at GYPA グリコフォリンA 赤血球系細胞
8. 203948_s_at MPO ミエロペルオキシダーゼ 好中球
9. 203591_s_at CSFR3コロニー刺激因子3受容体(顆粒球) 好中球
10. 204039_at CEBPACCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、α好中球
11. 214523_at CEBPECCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、ε好中球
12. 209603_at GATA3 GATA結合タンパク質3 Tリンパ球
13. 209604_s_at GATA4 GATA結合タンパク質4 Tリンパ球
14. 205456_at CD3ECD3E抗原、εポリペプチド Tリンパ球
10未満の骨髄腫純度スコアの試料は、追加分析から除外される。
均等物
特定の用語を用いて本発明の実施形態が記述されているが、そのような記述は例示説明を目的とするのみであり、本発明の範囲または主旨から離れることなく変更および変形がなされうることが理解される。当業者であれば、日常的な実験を超えることなく、本明細書に記述される本発明の特定の実施形態の多くの均等物を認識し、または確認することができるであろう。そのような均等物は、以下のクレームに包含されることが意図される。