癌患者の治療に関する依然として存在する問題のうちの1つは、治療薬に対する応答の個体差である。功を奏する癌療法の開発における進展が進歩する一方で、一部の患者のみが任意の特定の療法に応答する。多くの利用可能な癌療法の低い治療指数および毒性のため、そのような応答差は、患者が、不要で効果がなく、さらには有害である可能性のある治療レジメンを経験する一員となる可能性がある。設計された療法が個々の患者を治療するように最適化され得る場合、そのような状況は低減するか、またはさらには排除され得る。さらに、標的とされる設計された療法は、全体的により集中的かつ功を奏する療法を患者に提供し得る。したがって、特定の癌療法を投与したときに好ましい成果を有すると予想される特定の癌患者、ならびにより積極的および/または代替の癌療法、例えば、患者に投与された以前の癌療法の代替療法を用いることによって好ましい成果を有し得る特定の癌患者を特定する必要性が存在する。したがって、特定の癌阻害療法から恩恵を受け、かつより積極的なおよび/または代替の癌阻害療法、例えば、患者が受けた1つもしくは複数の癌療法の代替療法から恩恵を受ける患者、例えば、血液学的癌(例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫または濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病または急性リンパ性白血病)患者を含む癌患者を診断、進行度診断、予後診断、および監視することは有益であり、したがって、適切な予防措置につながる。
本発明は、マーカー遺伝子の変異が変異遺伝子を含む細胞のプロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸に対する感受性に関連し得るという認識に一部基づく。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子は、ラット肉腫(RAS)シグナル伝達経路、例えば、その変異が経路の活性化を可能にする遺伝子に関与する。RASは、発癌性GTPaseであり、その活性GTP結合状態が腫瘍形成に関与する経路(例えば、マイトジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼカスケード)を活性化する。腫瘍抑制因子を含むタンパク質は、RAS結合GTPのGDPへの加水分解を促進してRASを不活性化し、したがって、RAS癌遺伝子からのシグナル伝達を制限する。RAS癌遺伝子上流(例えば、p210BCR−ABLもしくはerbB)、RAS癌遺伝子(例えば、HRAS、KRAS、もしくはNRAS)、RAS関連腫瘍抑制因子(神経線維腫症1型(NF1))、および/またはGTPase活性化タンパク質(例えば、RASGAP)のいずれかにおける、このチェックポイントに関与する遺伝子における変異は、RASシグナル伝達経路の活性化を可能にし得る。プロテアソーム阻害剤に対する感受性のためにマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質は、RASタンパク質であり得る。NRASは、マーカー遺伝子の一例である。RAS、例えば、NRAS、HRAS、およびKRASタンパク質のGTP結合状態でRASシグナル伝達が生じ、GDP結合状態でシグナル伝達が抑制される。変異RASタンパク質は、そのGTP結合状態での期間を延長し得、結果として生じるシグナル伝達経路活性化は、変異遺伝子を持つ細胞の増殖をもたらし得る。マーカー遺伝子は、1つ以上の変異、例えば、体細胞変異を呈し得、その存在は、コードされた遺伝子産物の発現または活性に影響を与え得る。いくつかの実施形態において、腫瘍細胞または腫瘍中のマーカー遺伝子において2つ以上の変異が存在し得る。さらなる実施形態において、1つ以上のさらなる遺伝子で変異(腫瘍形成をもたらし得る変異を含む)を有する細胞においてマーカー遺伝子変異が存在し得るが、さらなる変異遺伝子(複数を含む)は、本明細書でマーカー遺伝子と見なされるマーカー遺伝子ではない場合がある。いくつかの実施形態において、変異は、活性化変異である。他の実施形態では、変異は、マーカー遺伝子の発現に影響を与える。他の実施形態では、変異は、コードされた遺伝子産物と細胞結合パートナーとの相互作用の変化をもたらし得る。
一態様において、本発明は、血液学的腫瘍を有する患者をプロテアソーム阻害剤で治療するかを決定するための方法を提供し、この方法は、a)腫瘍細胞を含む患者試料中の少なくとも1つのマーカー遺伝子に関連した少なくとも1つのマーカーの少なくとも1つの特徴を測定するステップ(1つのマーカー遺伝子が神経芽細胞腫RASウイルス(v−ras)癌遺伝子ホモログ(NRAS)である)、b)ステップa)で測定された少なくとも1つの特徴がプロテアソーム阻害剤での治療成果に情報的に有益であるかを特定するステップ、およびc)腫瘍細胞が野生型NRASを含むことを情報的に有益な特徴が示す場合に、患者をプロテアソーム阻害剤で治療することを決定するステップを含む。いくつかの実施形態において、この方法は、血液学的腫瘍がt(4;14)転座サブタイプであるかを特定することを含む。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤で治療するかを決定する方法は、生体外で行われる。
一態様において、本発明は、患者における血液学的腫瘍のプロテアソーム阻害剤での治療を継続するかを決定するための方法を提供し、a)血液学的腫瘍を有する患者をプロテアソーム阻害剤で治療すること、b)患者から腫瘍細胞を含む試料を得ること、c)試料中の少なくとも1つのマーカー遺伝子に関連した少なくとも1つのマーカーの少なくとも1つの特徴を測定すること(少なくとも1つのマーカー遺伝子がNRASである)、d)c)での測定結果を参照と比較すること、およびe)腫瘍細胞が野生型NRASを含むことを比較が示す場合に、プロテアソーム阻害剤での治療を継続することを決定することを含む。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤での治療を継続するかを決定する方法は、生体外で行われる。いくつかの実施形態において、方法は、血液学的腫瘍サブタイプを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍サブタイプは、t(4;14)である。
一態様において、本発明は、腫瘍細胞を含む試料に添加する安定剤と試料中の少なくとも1つのマーカーの少なくとも1つの特徴を測定する試薬とを含むキットを提供し、測定結果は、少なくとも1つのマーカー遺伝子に変異が存在するかを示し、少なくとも1つのマーカー遺伝子は、NRASである。いくつかの実施形態において、キットは、腫瘍サブタイプを特定する試薬をさらに提供する。いくつかの実施形態において、腫瘍サブタイプ試薬は、t(4;14)転座が存在するかを特定する。
一態様において、本発明は、試料中の少なくとも2つのマーカーの少なくとも1つの特徴を測定する少なくとも2つの試薬を含むキットを提供し、測定結果は、少なくとも1つのマーカー遺伝子に変異が存在するかを示し、少なくとも1つのマーカー遺伝子は、NRASであり、試料は、血液学的腫瘍細胞を含む。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの試薬は、NRASマーカー遺伝子の変異状態を特定する少なくとも1つの試薬と、腫瘍がt(4;14)サブタイプであるかを特定する少なくとも1つの試薬とを含む。
一態様において、本発明は、プロテアソーム阻害剤に対する血液学的腫瘍細胞の感受性を予測するための方法を提供し、a)血液学的腫瘍細胞が変異NRASを発現するかを判定すること、およびb)プロテアソーム阻害剤に対する細胞の感受性を予測することを含み、変異NRASの発現は、プロテアソーム阻害剤に対する感受性不足を予測する。
一態様において、本発明は、野生型NRASを含む血液学的腫瘍を有する患者を治療するための方法を提供し、患者に治療的に有効な量のプロテアソーム阻害剤を投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、患者は、t(4;14)サブタイプを有する血液学的腫瘍を有する。
別の態様では、本発明は、血液学的腫瘍を治療するための薬剤の製造におけるプロテアソーム阻害剤の使用を提供し、血液学的腫瘍は、野生型NRASを有する。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍は、t(4;14)サブタイプを有する。
別の態様では、本発明は、患者における血液学的腫瘍を治療するためのプロテアソーム阻害剤の使用を提供し、血液学的腫瘍は、野生型NRASを有する。一実施形態において、血液学的腫瘍は、t(4;14)サブタイプを有する。
一態様において、本発明は、プロテアソーム阻害剤を血液学的癌を有する患者の治療における使用に好適であると特定するための方法を提供し、a)少なくとも1つのマーカー遺伝子に少なくとも1つの変異を含む血液学的腫瘍細胞を試験プロテアソーム阻害剤と接触させること(少なくとも1つのマーカー遺伝子がNRASである)、b)試験プロテアソーム阻害剤の細胞の生存率への影響を判定すること、およびc)試験プロテアソーム阻害剤が血液学的腫瘍細胞の生存率を低下させる場合に、血液学的癌を有する患者の治療における使用に好適であると決定することを含む。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍細胞は、t(4;14)サブタイプを有しない。
一態様において、本発明は、プロテアソーム阻害剤での癌治療の代金を支払うための方法を提供し、a)肺癌または結腸癌を有する患者由来の血液学的腫瘍細胞を含む試料中のNRASが変異したかを記録すること、およびb)NRASが野生型である場合に、プロテアソーム阻害剤での治療の支払いを許可することを含む。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍細胞は、t(4;14)サブタイプを含む。
一態様において、本発明は、プロテアソーム阻害剤での治療に応答しないであろう血液学的癌患者を特定する方法を提供し、患者由来の腫瘍細胞を含む試料における少なくとも1つのNRAS変異存在または不在を決定することを含み、それによって少なくとも1つのNRAS変異の存在は、血液学的癌患者がプロテアソーム阻害剤に応答しないであろうことを示す。いくつかの実施形態において、腫瘍細胞は、t(4;14)転座サブタイプを有しない。
一態様において、本発明は、プロテアソーム阻害剤での治療に対して好ましい成果を有するであろう血液学的癌患者を特定する方法を提供し、患者由来の腫瘍細胞を含む試料における少なくとも1つのNRAS変異の存在または不在を決定することを含み、それによって野生型NRAS変異の存在は、血液学的癌患者がプロテアソーム阻害剤に応答するであろうことを示す。
マーカー遺伝子における変異の特定および/または測定を用いて、例えばプロテアソーム阻害剤、例えばペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトン治療薬で腫瘍を治療することによって好ましい成果が予想され得るか、あるいは例えばプロテアソーム阻害剤、例えばペプチジルボロン酸もしくはペプチジルエポキシケトン阻害剤の代替治療および/またはそれを用いたより積極的な治療が応答を増強し得るかを決定することができる。例えば、本明細書に提供される組成物および方法を用いて、患者が、プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトン治療薬投薬または投与レジメンに好ましい成果を有すると予想されるかを決定することができる。これらの特定に基づいて、本発明は、制限なく、1)プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトン治療レジメンが好ましい成果の達成および/または癌の管理に効果的であるかを決定するための方法および組成物、2)プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトン治療薬(単独で、または作用薬と組み合わせて)ならびに腫瘍の治療に使用される投薬および投与レジメンの有効性を監視するための方法および組成物、3)例えばプロテアソーム阻害剤、例えばペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトン阻害治療レジメンを含む腫瘍を治療するための方法および組成物、4)特定の治療薬および治療薬の組み合わせ、ならびに特定の患者における腫瘍の治療に有効な投薬および投与レジメンを特定するための方法および組成物、ならびに5)疾患管理戦略を特定するための方法および組成物を提供する。
プロテアソーム阻害は、癌療法における重要な戦略を表す。プロテアソームは、細胞周期の調整に関与するタンパク質を分解する役割を果たすすべての細胞に存在する多酵素複合体である。例えば、King et al.(Science 274:1652−1659(1996))は、ユビキチン−プロテアソーム経路が、細胞周期、腫瘍成長、および転移の調整に重要な役割を果たすことを示した。p53、サイクリン、ならびにサイクリン依存性キナーゼp21およびp27KIP1を含むいくつかの主要な調節タンパク質は、ユビキチン−プロテアソーム経路によって細胞周期中に一時的に分解される。これらのタンパク質の要求される分解は、細胞が細胞周期を通じて成長し、かつ有糸分裂を経るのに必要とされる。さらに、ユビキチン−プロテアソーム経路は、転写調節に必要とされる。Palombella et al.(国際特許出願公開第WO95/25533号)は、転写因子NF−κBの活性化が阻害剤タンパク質IκBのプロテアソーム媒介性分解によって調節されることを教示する。次いで、NF−κBは、免疫および炎症応答に関与する遺伝子の調節において中心的役割を果たす。例えば、Read et al.(Immunity 2:493−506(1995))は、ユビキチン−プロテアソーム経路が、E−セレクチン、ICAM−1、およびVCAM−1等の細胞接着分子の発現に必要とされることを示した。Zetter(Seminars in Cancer Biology 4:219−229(1993))は、腫瘍細胞の脈管構造への接着および脈管構造からの血管外遊出を体内の遠位組織部位に指向することによって、細胞接着分子が生体内での腫瘍転移および血管新生に関与することを見出したため、さらなる所見は、癌療法におけるプロテアソーム阻害の役割をさらに支持する。さらに、Beg and Baltimore(Science 274:782(1996))は、NF−κBが抗アポトーシス因子であり、NF−κB活性化の阻害が細胞の環境ストレスおよび細胞毒性剤に対する感受性をさらに高めることを見出した。ボルテゾミブ(Velcade(登録商標))は、ファーストインクラスのペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤である。
本明細書で使用されるとき、「プロテアソーム」という用語は、細胞がもはや必要としないタンパク質または欠陥タンパク質を分解することによってタンパク質の恒常性に関与し、かつユビキチンまたはユビキチン様タンパク質で標識されることによって分解の標的とされる細胞内複合体を指す。プロテアソームは、タンパク質分解を媒介するプロテアーゼを有するコア複合体を含む。
本明細書で使用されるとき、「プロテアソーム阻害剤」という用語は、生体外または生体内で20Sまたは26Sプロテアソームの酵素活性を直接阻害する任意の物質を指す。プロテアソーム阻害剤、それらの薬理学的特性、ならびに腫瘍学的疾患および炎症性疾患を含む疾患の治療における使用は、Ruggeri et al.(2009)Adv.Pharmacol.57:91−135に概説されている。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ペプチジルボロン酸である。本発明の方法における使用に好適なペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤の例は、Adams et al.の米国特許第5,780,454号(1998)、同第6,066,730号(2000)、同第6,083,903号(2000)、同第6,297,217号(2001)、同第6,465,433号(2002)、同第6,548,668号(2003)、同第6,617,317号(2003)、および同第6,747,150号(2004)に開示されており、それぞれ、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、それに開示されるすべての化合物および式を含む。いくつかの実施形態において、ペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤は、N(4モルホリン)カルボニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸、N(8−キノリン)スルホニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸、N(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、およびN(4モルホリン)−カルボニル−[O−(2−ピリジルメチル)]−L−チロシン−L−ロイシンボロン酸からなる群から選択される。一実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、N(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸(ボルテゾミブ、以前はMLN341と呼ばれたVELCADE(登録商標)、またはPS−341)である。別の実施形態では、プロテアソーム阻害剤は、米国特許第7,442,830号に開示されており、例えば、[(1R)−1({[(2,4−ジクロロベンゾイル)アミノ]アセチル{−アミノ)−3−メチルブチル]ボロン酸(MLN2238)またはそのボロン酸エステル、例えば、そのクエン酸エステル、例えば、PCT公開第WO2009154737号に開示されるもの(クエン酸イクサゾミブ、MLN9708)である。クエン酸イクサゾミブは、血液学的および固形腫瘍異種移植片モデルにおいて抗腫瘍活性を有する(Kupperman et al.(2010)Cancer Res.70:1970−1980)。別の実施形態では、ペプチドボロン酸は、米国特許第7,915,236号に開示されており、例えば、[(1R)−1−[[(2S,3R)−3−ヒドロキシ−2−[(6−フェニル−ピリジン−2−カルボニル)アミノ]−1−オキソ−ブチル]アミノ]−3−メチルブチル]ボロン酸(デランゾミブ)である。前述の特許公開のそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
ペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤のさらなる例は、Fleming and Liの国際特許公開第WO2010/036357号および同第WO2011/123502号に開示されており、これらいずれも参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれ、それらに開示されるすべての化合物および式を含む。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、式(I)の化合物:
または薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物もしくはそれらのボロン酸無水物を特徴とし、式中、
Z
1およびZ
2はそれぞれ、独立して、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、もしくはアラルコキシであるか、またはZ
1およびZ
2は、ボロン酸錯化剤に由来する部分を一緒に形成する。
本明細書で使用されるとき、「ボロン酸」という用語は、−B(OH)2部分を含有する化学化合物を指す。いくつかの実施形態において、ボロン酸化合物は、ボロン酸部分の脱水によってオリゴマー無水物を形成し得る。例えば、Snyder et al.,J.Am.Chem.Soc.80:3611(1958)は、オリゴマーアリールボロン酸を報告している。
本明細書で使用されるとき、「ボロン酸無水物」という用語は、1つ以上の水分子を喪失した、ボロン酸化合物の2つ以上の分子の組み合わせによって形成される化学化合物を指す。水と混合されると、ボロン酸無水物化合物は水和して遊離ボロン酸化合物を放出する。様々な実施形態において、ボロン酸無水物は、2つ、3つ、または4つ以上のボロン酸ユニットを含み得、環状または線状構造を有し得る。本発明のペプチドボロン酸化合物のオリゴマーボロン酸無水物の非限定的な例が、以下に示される:
真上の式(1)および(2)において、可変nは、0〜約10、好ましくは、0、1、2、3、または4の整数である。いくつかの実施形態において、ボロン酸無水物化合物は、式(2)の環状三量体(「ボロキシン」)を含み、式中、nは、1である。可変Wは、以下の式(3)を有する:
いくつかの実施形態において、ボロン酸無水物化合物に存在するボロン酸の少なくとも80%は、単一のオリゴマー無水物形態で存在する。いくつかの実施形態において、ボロン酸無水物化合物に存在するボロン酸の少なくとも85%、90%、95%、または99%は、単一のオリゴマー無水物形態で存在する。ある好ましい実施形態において、ボロン酸無水物化合物は、式(3)を有するボロキシンからなるか、またはそれから本質的になる。
ボロン酸無水物化合物は、好ましくは、再結晶化、凍結乾燥、熱への曝露、および/または乾燥剤への曝露を含むが、これらに限定されない脱水条件に曝露することによって対応するボロン酸から調製され得る。好適な再結晶化溶媒の非限定的な例として、酢酸エチル、ジクロロメタン、ヘキサン、エーテル、アセトニトリル、エタノール、およびそれらの混合物が挙げられる。
いくつかの実施形態において、Z1およびZ2は、Olhava and Dancaの米国特許第7,442,830号、同第7,867,662号、および同第8,003,819号に開示されるボロン酸錯化剤に由来する部分を一緒に形成し、これらはすべて、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本発明の目的のために、「ボロン酸錯化剤」という用語は、それぞれがホウ素と共有結合を形成し得る少なくとも2つの官能基を有する任意の化合物を指す。好適な官能基の非限定的な例として、アミノ、ヒドロキシル、およびカルボキシルが挙げられる。いくつかの実施形態において、官能基のうちの少なくとも1つは、ヒドロキシル基である。「ボロン酸錯化剤に由来する部分」という用語は、ボロン酸錯化剤の2つの官能基から水素原子を取り除くことによって形成される部分を指す。
本明細書で使用されるとき、「ボロン酸エステル」および「ボロン酸エステル」という用語は、同義に使用され、−B(Z1)(Z2)部分を含有する化学化合物を指し、式中、Z1またはZ2のうちの少なくとも1つは、アルコキシ、アラルコキシ、もしくはアリールオキシであるか、またはZ1およびZ2は、少なくとも1つのヒドロキシル基を有するボロン酸錯化剤に由来する部分を一緒に形成する。
いくつかの実施形態において、Z
1およびZ
2はそれぞれ、ヒドロキシであり、式(I)の化合物は、式(II):
または薬学的に許容される塩もしくは薬学的組成物もしくはそれらのボロン酸無水物を特徴とする。
式(II)の化合物、[(1R)−1({[(2,4−ジクロロベンゾイル)アミノ]アセチル{−(アミノ)−3−メチルブチル]ボロン酸(MLN2238)は、Olhava and Dancaの米国特許第7,442,830号に開示されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
いくつかの他の実施形態において、Z1およびZ2は、鎖または環中の少なくとも2つの連結原子によって分離される少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物に由来する部分を一緒に形成し、この鎖または環は、炭素原子、および任意に、N、S、またはOであり得る1つまたは複数のヘテロ原子を含み、いずれの場合もホウ素に結合される原子は、酸素原子である。
本明細書で用いられるとき、「少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物」という用語は、2つ以上のヒドロキシル基を有する任意の化合物を指す。本発明の目的のために、2つのヒドロキシル基は、好ましくは、少なくとも2つの連結原子、好ましくは、約2〜約5つの連結原子、より好ましくは、2つまたは3つの連結原子によって分離される。便宜上、「ジヒドロキシ化合物」という用語は、上で定義される少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物を指すために使用され得る。したがって、本明細書で用いられるとき、「ジヒドロキシ化合物」という用語は、ヒドロキシル基を2つのみ有する化合物に限定されるようには意図されていない。少なくとも2つのヒドロキシル基を有する化合物に由来する部分は、そのヒドロキシル基のうちの任意の2つの酸素原子によってホウ素に結合され得る。好ましくは、ホウ素原子、ホウ素に結合される酸素原子、および2つの酸素原子を連結する原子は、5または6員環を一緒に形成する。
本発明の目的のために、ボロン酸錯化剤は、好ましくは、薬学的に許容されるもの、すなわち、ヒトへの投与に好適なものである。いくつかの好ましい実施形態において、ボロン酸錯化剤は、例えば、Plamondon et al.の国際公開第WO02/059131号およびGupta et al.の国際公開第WO02/059130号に記載の糖である。「糖」という用語は、単糖類、二糖類、多糖類、糖アルコール、およびアミノ糖を含む任意のポリヒドロキシ炭水化物部分を含む。いくつかの実施形態において、糖は、単糖類、二糖類、糖アルコール、またはアミノ糖である。好適な糖の非限定的な例として、グルコース、スクロース、フルクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、グルコサミン、およびN−メチルグルコサミンが挙げられる。ある実施形態において、糖は、マンニトールまたはソルビトールである。したがって、糖がマンニトールまたはソルビトールである実施形態において、Z1およびZ2は、式C6H12O6の部分を一緒に形成し、2つの脱プロトン化したヒドロキシル基の酸素原子は、ホウ素との共有結合を形成して、ボロン酸エステル化合物を形成する。ある実施形態において、Z1およびZ2は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第7,442,830号に開示のD−マンニトールに由来する部分を一緒に形成する。
いくつかの実施形態において、ボロン酸錯化剤は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるElliott et al.の国際公開第WO09/154737号に記載のα−ヒドロキシカルボン酸またはβ−ヒドロキシカルボン酸である。いくつかの実施形態において、ボロン酸錯化剤は、グリコール酸、リンゴ酸、ヘキサヒドロマンデル酸、クエン酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、3−ヒドロキシ酪酸、マンデル酸、乳酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、β−ヒドロキシイソ吉草酸、サリチル酸、酒石酸、ベンジル酸、グルコヘプトン酸、マロン酸、ラクトビオン酸、ガラクタル酸、エンボン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、および3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸からなる群から選択される。ある実施形態において、ボロン酸錯化剤は、クエン酸である。
α−ヒドロキシカルボン酸またはβ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸であるある実施形態において、式(I)の化合物は、式(III−A)もしくは(III−B):
またはそれらの混合物もしくはそれらの薬学的組成物を特徴とする。
α−ヒドロキシカルボン酸またはβ−ヒドロキシカルボン酸がクエン酸であるある実施形態において、式(I)の化合物は、式(III−A):
またはその薬学的組成物を特徴とする。
式(III−A)、2,2’−{2−[(1R)−1−({[(2,5ジクロロベンゾイル)アミノ]アセチル}アミノ)−3−メチルブチル]−5−オキソ−1,3,2−ジオキサボロラン−4,4−ジイル}ジ酢酸(MLN9708、クエン酸イクサゾミブ)の化合物は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるElliott et al.の国際公開第WO09/154737号に開示される。
さらに、プロテアソーム阻害剤は、ペプチドアルデヒドプロテアソーム阻害剤(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Stein et al.の米国特許第5,693,617号(1997)、Siman et al.の国際特許公開第WO91/13904号、Iqbal et al.のJ.Med.Chem.38:2276−2277(1995)、およびIinuma et al.の国際特許公開第WO05/105826号)、ペプチジルエポキシケトンプロテアソーム阻害剤(Crews et al.の米国特許第6,831,099号、Smyth et al.の国際特許公開第WO05/111008号、Bennett et al.の国際特許公開第WO06/045066号、または米国特許出願公開第US20050245435号、例えば、(S)−4−メチル−N−((S)−1−(((S)−4−メチル−1−((R)−2−メチルオキシラン−2−イル)−1−オキソペンタン−2−イル)アミノ)−1−オキソ−3−フェニルプロパン−2−イル)−2−((S)−2−(2−モルホリノアセトアミド)−4−フェニルブタンアミド)ペンタンアミド(カーフィルゾミブ)、Spaltenstein et al.のTetrahedron Lett.37:1343(1996)、MengのProc.Natl.Acad.Sci.96:10403(1999)、およびMengのCancer Res.59:2798(1999))、α−ケトアミドプロテアソーム阻害剤(Chatterjee and Mallamoの米国特許第6,310,057号(2001)および同第6,096,778号(2000)、ならびにWang et al.の米国特許第6,075,150号(2000)および同第6,781,000号(2004))、ペプチジルビニルエステルプロテアソーム阻害剤(Marastoni et al.のJ.Med.Chem.48:5038(2005)、およびペプチジルビニルスルホンおよび2−ケト−1,3,4−オキサジアゾールプロテアソーム阻害剤(Rydzewski et al.のJ.Med.Chem.49:2953(2006)、およびBogyo et al.のProc.Natl.Acad.Sci.94:6629(1997)に開示のもの)、アザペプトイド(Bouget et al.のBioorg.Med.Chem.11:4881(2003)、Baudy−Floc’h et al.の国際特許公開第WO05/030707号、およびBonnemains et al.の国際特許公開第WO03/018557号)、エフラペプチンオリゴペプチド(Papathanassiuの国際特許公開第WO05/115431号)、ラクタシスチンおよびサリノスポラミドおよびそれらの類似体(Fenteany et al.の米国特許第5,756,764号(1998)、同第6,147,223号(2000)、同第6,335,358号(2002)、および同第6,645,999号(2003)、Fenteany et al.のProc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:3358、Fenical et al.の国際特許公開第WO05/003137号、Palladino et al.の国際特許公開第WO05/002572号、Stadler et al.の国際特許公開第WO04/071382号、Xiao and Patelの米国特許公開2005/023162号、およびCoreyの国際特許公開第WO05/099687号)を含む。
NRASおよびKRAS等の遺伝子は、多くの癌型において変異する。癌に関連した変異の公開目録作成への関心が集まっている。癌に関連した変異についての情報を含む公開データベースの例には、National Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD)が管理する遺伝子型および表現型のデータベース(dbGaP)、ならびにWellcome Trust Sanger Institute(Cambridge,UK)が管理する癌における体細胞変異目録(COSMIC)データベースがある。
本明細書に記載の多発性骨髄腫患者由来の腫瘍試料中の43個のはっきりと異なる癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子における514個の既知の変異を評価した際に、観察された最も一般的な変異は、KRAS(n=32[24.1%]、95%CI:17.0〜31.3)およびNRAS(n=26[19.5%]、95%CI:12.8〜26.3)における変異であった。BRAFにおける変異は、3つの患者試料(2.3%、95%CI:0〜4.8)において検出された。3つすべての遺伝子について、この患者集団における変異率は、Chapman et al.(2011)Nature 471:467−472によって報告された変異率に類似した(KRAS、NRAS、およびBRAFにおいて、それぞれ、26.3%、23.7%、および4%)。骨髄腫腫瘍を有する患者の少なくとも50%、少なくとも70%、または75〜85%、または約80%は、野生型NRASを有する。したがって、骨髄腫腫瘍を有する患者の少なくとも50%、少なくとも70%、約75〜85%、または約80%は、プロテアソーム阻害剤での治療の候補である。野生型NRASを有する腫瘍を有する患者および野生型KRASを有する患者(患者の少なくとも40%、少なくとも50%、または約53〜57%)もプロテアソーム阻害剤での治療の候補であり得る。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍を有する患者(この患者の腫瘍細胞は野生型NRASを含む)は、プロテアソーム阻害剤での治療の候補であり得る。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍は、骨髄腫、多発性骨髄腫、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍は、多発性骨髄腫、マントル細胞リンパ腫、および濾胞性リンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍は、多発性骨髄腫である。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍は、マントル細胞リンパ腫である。
プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトンでの治療時の成果、例えば、治療または無増悪期間に対する応答を予測するために、変異状態を決定する、例えば、血液学的腫瘍、例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病中のマーカー遺伝子の変異を特定するための組成物および方法が提供される。いくつかの実施形態において、ペプチジルボロン酸での治療成果を予測するために、骨髄腫、多発性骨髄腫、リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、白血病、急性骨髄性白血病、および急性リンパ性白血病からなる群から選択される血液学的腫瘍の変異状態を決定するための組成物および方法が提供される。
マーカーは、患者由来の治療前の腫瘍試料の遺伝子プロファイルおよびボルテゾミブでの治療成果との相関関係に基づいて特定された。変異データの統計分析は、変異状態と成果との相関関係を支援した。
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。概して、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学反応およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、ならびにそれらの技法は、当技術分野で既知のものである。GenBankまたはGenPept受託番号ならびに有用な核酸およびペプチド配列は、National Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD)が管理するウェブサイトで見つけることができる。本出願(表を含む)を通して引用されるすべてのデータベース受託記録内容(例えば、Affymetrix HG133注釈ファイル、Entrez、GenBank、RefSeq、COSMICからのもの)は、参照により本明細書に組み込まれる。標準の技法は、DNA組換え、オリゴヌクレオチド合成、タンパク質精製、組織培養、ならびに形質転換およびトランスフェクション(例えば、電気穿孔、リポフェクション等)のために使用される。RAS活性のためのGTPaseアッセイ、またはRAS活性化シグナル伝達活性のためのアッセイ、例えば、レポーターアッセイ等の酵素反応は、製造業者の仕様書に従って、または当技術分野で一般に達成されるか、または本明細書に記載されるように行われる。RAS局在化およびシグナル伝達を決定するためのいくつかの方法は、Prior and Hancock(2011)Semin.Clin.Dev.Biol.Sep 8 epubで概説されるか、またはCuiffo and Ren(2010)Blood 114:3598−3605で見つけられるか、またはLim et al.(1996)Eur.J.Biochem.242:171−185で概説される。前述の技法および手順は、概して、当技術分野で既知の方法、例えば、本明細書を通して引用され、かつ論じられる様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載の方法に従って行われる。例えば、Sambrook et al.(2000)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY))またはHarlow,E.and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press(Cold Spring Harbor,NY))を参照されたい。本明細書に記載の分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品および薬化学に関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験室手順および技法は、当技術分野で既知である。標準の技法は、化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、および送達、ならびに患者の治療ために使用される。さらに、別途文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が支配するものとする。
「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「少なくとも1つ(one)」という冠詞は、本明細書において、1つのその冠詞の文法上の目的語、またはその冠詞の文法上の目的語のうちの2つ以上を指すために使用される。一例として、「1つの要素(an element)」とは、1つまたは2つ以上の要素、少なくとも1つの要素を意味する。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が支配するものとする。
本明細書で使用されるとき、「マーカー遺伝子」は、そのDNA、RNA、および/またはタンパク質が、治療時に予後または成果についての情報を提供する(すなわち、「情報的に有益」である)特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量(複数を含む)を有するように変異を有し得る遺伝子を指す。プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸(例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブ)での治療後の成果に関係していると本明細書に記載されるマーカー遺伝子は、本明細書に記載の染色体遺伝子座マーカー内の遺伝子の例であり、表1に提供される。マーカー遺伝子に対応するmRNA、オープンリーディングフレーム、およびタンパク質の配列も表1に列記される。表1に列記されるマーカー遺伝子は、遍在性であるか、または制限発現を有するかのいずれかであるアイソフォームを有し得る。表1のDNA配列番号は、主要なアイソフォームまたは最長のアイソフォームをコードするmRNAのみを指し、タンパク質配列番号は、そのようなアイソフォームの少なくとも1つの前駆体を表し、必ずしも成熟タンパク質を表すわけではない。これらの配列は、マーカー遺伝子の正体をそのアイソフォームまたは前駆体に限定するようには意図されていない。さらなるアイソフォームおよび成熟タンパク質は、当業者であれば、表1に列記されるID番号によって識別されるEntrez Gene(National Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD)が管理するデータベース)に提供される情報を概観することによって容易に読み取り、理解することができる。
本明細書で使用されるとき、「NRAS」は、神経芽細胞腫RASウイルス(v−ras)癌遺伝子ホモログを指し、この遺伝子は、GenBank受託番号NM_002524、配列番号1(オープンリーディングフレームは、配列番号2、配列番号1のヌクレオチド255〜824である)に関連しており、GenPept受託番号NP_002515、配列番号3をコードする。NRASの他の名称には、IV型自己免疫リンパ球増殖性症候群(ALPS4)、NRAS1、およびヌーナン症候群6(NS6)が含まれる。NRASは、GTPase活性を有する癌遺伝子として機能し、染色体1p上に見られ得る。NRASは、細胞膜およびRafおよびRhoA等の様々なエフェクタータンパク質と相互作用し、これらは、細胞骨格を介してそのシグナル伝達機能を実行し、細胞接着に影響を与える(Fotiadou et al.(2007)Mol.Cel.Biol.27:6742−6755)。
本明細書で使用されるとき、「KRAS」は、v−Ki−ras2 Kirstenラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログを指し、この遺伝子は、GenBank受託番号NM_004985、配列番号4(オープンリーディングフレームは、配列番号5、配列番号4のヌクレオチド182〜748である)に関連しており、染色体12上のKRAS遺伝子の優性転写変異形であるGenPept受託番号NP_004976、配列番号6をコードする。KRASの他の名称には、KRAS2およびヌーナン症候群3(NS3)が含まれる。KRASは、GTPase活性を有する癌遺伝子として機能し、染色体12p上に見られ得る。KRASは、細胞膜およびAktおよびCdc42等の様々なエフェクタータンパク質と相互作用し、これらは、細胞骨格を介するそのシグナル伝達機能を実行し、細胞運動に影響を及ぼす(Fotiadou et al.(上記参照))。
「マーカー」は、本明細書で使用されるとき、患者の腫瘍細胞における変異を有し、さらにその変異が患者の特徴である(その患者の成果が、例えばプロテアソーム阻害剤、例えばペプチジルボロン酸またはペプチジルエポキシケトンでの治療に好ましいか、または好ましくない)と特定されたマーカー遺伝子に関連した物質を含む。マーカーの例として、物質、例えば、染色体遺伝子座、遺伝子のDNA、遺伝子のRNA、または遺伝子のタンパク質が挙げられる。例えば、マーカーは、マーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNA、またはタンパク質を含み、その変異、または特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、もしくは量は、治療にあまり応答しない患者を示し、あるいは、マーカーは、マーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNA、またはタンパク質を含み、その変異、または特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、もしくは量は、良好に応答する患者を示す。別の例において、マーカーは、マーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNA、またはタンパク質を含み、その変異、または特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、もしくは量は、治療時に短期の無増悪期間(TTP)を有する患者を示し、あるいは、マーカーは、マーカー遺伝子物質、例えば、染色体遺伝子座、DNA、RNA、またはタンパク質を含み、その変異、または特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、もしくは量は、疾患が長期のTTPを有する患者を示す。したがって、本明細書で使用されるとき、マーカーは、これらの可能性の1つ1つを含むよう意図されており、さらに、それぞれの単一マーカーを個別に、またはマーカーとして独立して含み得るか、またはあるいは、「マーカー」または「マーカーセット」について言及されるとき、特徴のうちの1つ以上もしくはすべてを集合的に含み得る。
いくつかの実施形態において、マーカーは、核酸およびタンパク質からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、マーカーは、核酸である。いくつかの実施形態において、核酸マーカーは、染色体またはゲノムDNAである。いくつかの実施形態において、核酸は、mRNAである。いくつかの実施形態において、核酸は、mRNAから調製されたcDNAである。いくつかの実施形態において、マーカーは、タンパク質である。
いくつかの実施形態において、特徴は、大きさ、配列、組成、活性、および量からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、特徴は、配列である。いくつかの実施形態において、特徴は、量である。いくつかの実施形態において、特徴は、組成である。いくつかの実施形態において、特徴は、大きさである。いくつかの実施形態において、特徴は、活性である。
いくつかの実施形態において、マーカーは、染色体DNAまたはゲノムDNAであり、特徴は、配列である。いくつかの実施形態において、マーカーは、mRNAであり、特徴は、配列である。いくつかの実施形態において、マーカーは、cDNAであり、特徴は、配列である。いくつかの実施形態において、マーカーは、mRNAであり、特徴は、量である。いくつかの実施形態において、マーカーは、mRNAであり、特徴は、大きさである。
いくつかの実施形態において、マーカーは、タンパク質であり、特徴は、量である。いくつかの実施形態において、マーカーは、タンパク質であり、特徴は、活性である。いくつかの実施形態において、マーカーは、タンパク質であり、特徴は、配列である。
予後または治療または疾患管理戦略を決定するための測定に有用な染色体遺伝子座マーカーは、例えば115247085と115259515との塩基対の染色体1p13.2(NRAS)および例えば25358180と25403854との塩基対の染色体12p12.1(KRAS)からなる群から選択される。染色体遺伝子座および塩基対番号は、NCBI遺伝子データベースにおける参照ヒトゲノムBuild37.3(2011年10月5日現在)に基づいている。マーカーDNA、マーカーRNA、またはマーカータンパク質は、染色体遺伝子座マーカーの塩基対に相当し得る。例えば、マーカーDNAは、染色体遺伝子座マーカー由来のゲノムDNAを含み得、マーカーRNAは、遺伝子座マーカーから転写されたポリヌクレオチドを含み得、マーカータンパク質は、例えば腫瘍細胞を含む試料中の染色体遺伝子座マーカーにおける発現に由来するポリペプチドを含み得る。
「マーカー核酸」は、本発明のマーカー遺伝子によってコードされるか、本発明のマーカー遺伝子に関連するか、または本発明のマーカー遺伝子に対応する核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、cDNA)である。そのようなマーカー核酸は、全配列もしくは部分配列、例えば、ゲノムDNAのエクソンのうちの1つ以上(マーカー遺伝子のうちのいずれかのオープンリーディングフレームまで)、またはそのような配列の相補体を含む、DNA、例えば、ゲノムDNA(例えば、その中で生じる任意のイントロンを含む)のセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む。マーカー核酸は、任意のマーカーの全配列もしくは部分配列またはそのような配列の相補体を含むRNAも含み、すべてのチミジン残基は、ウリジン残基で置換され、RNAは、ゲノムDNA転写によって生成され(すなわち、スプライシングの前)、RNAは、ゲノムDNAから転写されたRNAのスプライシングによって生成され、タンパク質(すなわち、膜貫通シグナル配列等の正常に切断された領域の切断前および切断後の両方のタンパク質を含む)は、スプライシングされたRNAの翻訳によって生成される。本明細書で使用されるとき、「マーカー核酸」は、ゲノムDNAの転写によって生成されたRNA(スプライシングされたRNAを含む)の逆転写によって作製されたcDNAも含み得る。マーカー核酸は、遺伝コードの縮重のため、本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なる配列、したがって、同一のタンパク質または極めて類似性の高いタンパク質、例えば、野生型タンパク質または野生型機能を有しないが、多型を有するタンパク質をコードする配列も含む。本明細書で使用されるとき、「対立遺伝子変異形」という語句は、所与の遺伝子座に生じるヌクレオチド配列、またはヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。そのような天然に存在する対立遺伝子変異は、典型的には、所与の遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の不一致をもたらし得る。代替の対立遺伝子は、例えば、癌を有しない個体の細胞、例えば、生殖系列細胞中のいくつかの異なる個体の目的とする遺伝子を配列決定することによって特定され得る。これは、様々な個体の同一の遺伝子座を特定するために、ハイブリダイゼーションプローブを用いて容易に実行され得る。天然に存在する対立遺伝子変異の結果であり、かつ野生型マーカー遺伝子の機能活性を変化させないありとあらゆるそのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型または変異の検出は、本明細書に記載のマーカーの野生型バージョンの範囲内に収まるよう意図される。「マーカータンパク質」は、本発明のマーカー、例えば、核酸によってコードされるか、またはそれに対応するタンパク質である。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、同義に使用される。マーカーのタンパク質は、具体的には、その名称またはアミノ酸配列で言及され得るが、当業者であれば、ナンセンス、ミスセンス、または欠失等の変異が、様々な形でタンパク質構造、外観、細胞位置、および/または挙動に影響を与え得ることを理解する。別途示されない限り、そのような違いは本明細書で区別されず、本明細書に記載の変異体マーカーは、そのような違いのうちのいずれかまたはすべてを含むよう意図される。
変異RAS遺伝子を有する典型的な腫瘍は、1つ以下のいずれかのRAS遺伝子に変異を有する。コドン61における変異は、NRASおよびKRASにとって最も一般的であり(それぞれ、85%および47%)、コドン13における変異は、他の試料のほとんどに存在した。血液学的腫瘍、例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病におけるプロテアソーム阻害剤に対する感受性または応答を示すRAS変異のほとんどがNRAS遺伝子に存在したが、ごく一部は、KRAS遺伝子に存在し得る。一般的な実施形態において、野生型RAS遺伝子は、プロテアソーム阻害剤治療に応答して、血液学的腫瘍において好ましい成果、例えば、応答性および/または長期の無増悪期間を予測する。いくつかの実施形態において、野生型NRAS遺伝子は、プロテアソーム阻害剤での血液学的腫瘍の治療の好ましい成果を予測する。いくつかの実施形態において、野生型NRAS遺伝子は、ペプチジルボロン酸での血液学的腫瘍の治療の好ましい成果を予測する。いくつかの実施形態において、野生型NRAS遺伝子は、プロテアソーム阻害剤での骨髄腫腫瘍の治療の好ましい成果を予測する。骨髄腫腫瘍細胞試料が変異KRAS遺伝子を有し得るが、データは、KRAS変異が単独で多発性骨髄腫におけるボルテゾミブに対する応答を予測しないことを示している。したがって、野生型RAS遺伝子、例えば、NRASは、プロテアソーム阻害剤治療に応答して、骨髄腫腫瘍において好ましい成果、例えば、応答性および/または長期の無増悪期間を予測するが、変異NRAS遺伝子は、好ましくない成果を予測する。KRAS変異を有するより高い割合の腫瘍を有する血液学的悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、およびびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)等のリンパ腫を含む。
NRASの場合、mRNA等の野生型NRAS核酸の一例は、配列番号1である。いくつかの実施形態において、変異は、NRASマーカーの少なくとも1つの変異部位に見られ得る。血液学的癌患者における発現が非応答または好ましくない成果を示す変異体NRASの例として、配列番号2のコドン12(塩基34〜36)、コドン13(塩基37〜39)、もしくはコドン61(塩基181〜183)の少なくとも1つの塩基、または配列番号1の類似コドン(それぞれ、配列番号1の塩基288〜290、塩基291〜293、もしくは塩基435〜437)の少なくとも1つの変化を有するマーカー核酸が挙げられる。いくつかの実施形態において、NRASの対立遺伝子変異形は、配列番号2のコドン12、コドン13、もしくはコドン61ではないコドン、または配列番号1の類似コドンの変化を有し、結果として生じるコードされた対立遺伝子変異形タンパク質は、野生型RAS活性、例えば、GTPase活性を有する。あるいは、NRASの対立遺伝子変異形は、コドン12、コドン13、もしくはコドン61の塩基の変化を有し、この変化は、例えば、遺伝コードの縮重によるものであり、翻訳された残基の変化をもたらさない。前述の実施形態において、対立遺伝子変異形核酸は、配列番号3の12位のグリシン、配列番号3の13位のグリシン、および配列番号3の61位のグルタミンをコードし、コードされたポリペプチドは、野生型RAS活性、例えば、GTPase活性を有し、したがって、好ましくない成果に関連しない。
配列番号1の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片(この断片は塩基288〜290を含む)またはその相補体を含む核酸マーカーは、塩基288、289、および290からなる群から選択される少なくとも1つの塩基が、配列番号3のアミノ酸残基12の変化をもたらし得るように変異する場合に、コドン12の変異に情報的に有益な特徴を有し得る。いくつかの実施形態において、核酸マーカーは、配列番号2の塩基34〜36を含む。いくつかの実施形態において、NRAS核酸における変異は、配列番号3の12番目のグリシン残基の代わりに、アラニン、システイン、アスパラギン酸塩、アルギニン、セリン、およびバリンからなる群から選択されるアミノ酸残基を有するNRASタンパク質をもたらし得る。配列番号1の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片(この断片は塩基291〜293を含む)またはその相補体を含む核酸マーカーは、塩基291、292、および293からなる群から選択される少なくとも1つの塩基が、配列番号3のアミノ酸残基13の変化をもたらし得る様式で変異する場合に、コドン13の変異に情報的に有益な特徴を有し得る。いくつかの実施形態において、核酸マーカーは、配列番号2の塩基37〜39を含む。いくつかの実施形態において、NRAS核酸における変異は、配列番号3の13番目のグリシン残基の代わりに、アスパラギン酸塩、バリン、システイン、セリン、アラニン、およびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基を有するNRASタンパク質をもたらし得る。配列番号1の少なくとも10個の連続したヌクレオチドの断片(この断片は塩基435〜437からなる群から選択される塩基を含む)またはその相補体を含む核酸マーカーは、塩基435、436、および437からなる群から選択される少なくとも1つの塩基が、配列番号3のアミノ酸残基61の変化をもたらし得るように変異する場合に、コドン61の変異に情報的に有益な特徴を有し得る。いくつかの実施形態において、核酸マーカーは、配列番号2の塩基181〜183を含む。いくつかの実施形態において、NRAS核酸における変異は、配列番号3の61番目のグルタミン残基の代わりに、グルタミン酸塩、ヒスチジン、リジン、ロイシン、プロリン、およびアルギニンからなる群から選択されるアミノ酸残基を有するNRASタンパク質をもたらし得る。
本明細書で使用されるとき、マーカーの「情報的に有益な」特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量は、その違いが予後または成果に相関する特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量を指す。マーカーの情報的に有益な特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量は、マーカー遺伝子に対応する核酸、例えばDNAもしくはRNA、またはタンパク質のいずれかを分析することによって得られ得る。マーカー、例えば、染色体遺伝子座マーカーまたは患者由来の試料中のマーカーの特徴、例えば、大きさ(例えば、長さもしくは分子量)、配列(例えば、核酸配列もしくはタンパク質配列)、組成(例えば、塩基もしくはアミノ酸組成またはペプチド消化もしくは遺伝子断片パターン)、活性(酵素活性もしくはシグナル伝達活性)、または量(例えば、コピー数および/もしくは発現レベル)は、それが分析される物質の野生型または対立遺伝子変異形とは異なる場合、「情報的に有益」である。いくつかの実施形態において、マーカーの特徴は、それがマーカー遺伝子が野生型であることを示す場合、情報的に有益である。マーカーの量が測定されるいくつかの実施形態において、量は、それが発現を判定するために用いられるアッセイの標準誤差よりも大きく参照量を超えるか、または参照量を下回る場合、「情報的に有益」である。マーカーの情報的に有益な発現レベルは、測定された発現レベルと成果、例えば、良好な応答、応答不良、長期の無増悪期間、短期の無増悪期間、短期の生存期間、または長期の生存期間の統計的な相関関係に基づいて決定され得る。統計分析の結果は、本明細書に記載の方法で用いるマーカーを選択するための閾値を確立し得る。あるいは、異なる特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量を有するマーカー、例えば、染色体遺伝子座マーカー、またはマーカー遺伝子は、成果を予測する典型的な範囲の量を有する。情報的に有益な特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量は、成果に対して決定される特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量の範囲内に収まる特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量である。なおさらに、マーカーセットはともに、それらの特徴、例えば、大きさ、配列、組成物、活性、もしくは量の組み合わせが、本明細書に提供される方法によって決定されるマーカー、例えば、染色体遺伝子座マーカー、またはマーカー遺伝子セットの所定のスコアと一致するか、またはそれを超える/下回るかのいずれかの場合、「情報的に有益」であり得る。マーカー、例えば、マーカー遺伝子(すなわち、DNA、RNA、またはタンパク質)の1つのみの特徴の測定は、予後を提供し得る、すなわち、成果を予測し得るか、または成果を示し得る。遺伝子転座、転写スプライス変異、欠失、および切断は、マーカー配列または組成を変化させ得る点変異に加えて、マーカーの大きさ、配列、または組成を変化させ得る事象の例である。マーカー、例えば、マーカー遺伝子の2つ以上の特徴の測定は、2つの特徴の情報的に有益な結果が互いに一致するとき、すなわち、生物学的結果が矛盾しないとき、予後を提供し得る。マーカー遺伝子の複数の特徴の測定からの一貫した結果の例は、DNAもしくはRNAにおけるナンセンス変異、点変異、挿入、もしくは欠失、およびコードされたタンパク質の低量もしくは分子量変化、またはタンパク質の結合ポケットもしくは活性部位をコードする領域における変異、およびコードされたタンパク質の活性変化の特定であり得る。タンパク質がその活性レベルに基づいてその合成を制御するフィードバックループを有する経路内に存在するとき、異なる例が生じ得る。この例において、低量または低活性のタンパク質は、マーカー遺伝子変異のため、組織としての豊富な量のその変異mRNAに関連し得、したがって、タンパク質活性に飢えており、タンパク質産生を繰り返しシグナル伝達する。
非限定的な説明として、この場合において、例えば、NRASマーカー、例えば、DNA、mRNA、またはタンパク質の配列の特徴を測定したときの情報的に有益な結果の一例は、NRAS配列、例えば、配列番号1、2、または3の変異状態を特定した結果である。この場合において、その配列の変異の特定が、好ましくない成果に情報的に有益である一方で、野生型配列の特定は、プロテアソーム阻害剤での腫瘍の治療の好ましい成果に情報的に有益である。別の例において、特徴、例えば、NRASマーカー、例えば、タンパク質の活性の測定は、高いGTPase活性または低いシグナル伝達活性が存在する場合、好ましい成果の情報的に有益な結果を提供する。
いくつかの実施形態において、血液学的試料中のNRAS変異体は、患者における好ましくない成果を予測し、この患者の腫瘍は、t(4;14)転座を有しない。いくつかの実施形態において、この方法は、NRASの変異状態および腫瘍のサブタイプを特定することを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍のサブタイプは、t(4;14)転座である。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍が野生型NRASおよびt(4;14)転座を有する場合に、プロテアソーム阻害剤での治療に対して好ましい成果が予測される。
マーカーの「標準的な」特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量は、「参照試料」の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量を指し得る。参照試料は、であり得る。例えば体細胞変異を有する腫瘍がその患者に由来する同一の患者由来の標準的な対応試料、例えば、生殖系列試料であり得る。参照試料は、マーカー関連疾患または一部の健常な対象における野生型マーカーの参照特徴、例えば、平均的な特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、もしくは量を有しない健常な対象由来の試料であり得る。参照試料の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量は、参照データベースからの1つ以上のマーカーの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量からなり得る。あるいは、マーカーの「標準的な」特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または発現レベルは、腫瘍がその患者に由来する同一の患者由来の同様の環境または応答状態下の非腫瘍細胞のマーカー、例えば、マーカー遺伝子の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量である。標準的な量のDNAコピー数は、2または2倍体であるが、DNAコピー数が1である男性(雄)のX連鎖遺伝子を除く。
マーカー遺伝子の「過剰発現」および「過小発現」とは、例えば、発現を判定するために用いるアッセイの標準誤差を超える試験試料におけるmRNAまたはタンパク質によって測定されるとき、それぞれ、マーカー遺伝子の発現の標準的なレベルよりも高いレベルまたは低いレベル(例えば、2分の3倍超、少なくとも2倍、少なくとも3倍高いまたは低いレベル等)での患者のマーカー遺伝子の発現を指す。「有意な」発現レベルは、本明細書に提供される方法によって決定されるマーカー遺伝子セットの所定のスコアと一致するか、またはそれを超える/下回るかのいずれかのレベルを指し得る。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子欠失」は、2に満たないDNAのコピー数の量を指し、「増幅」は、2を超えるDNAのコピー数の量を指す。「2倍体」量は、2に等しいコピー数を指す。「2倍体または増幅」という用語は、遺伝子コピーが「欠失していない」と解釈され得る。代替の情報的に有益な量が遺伝子欠失であるマーカーにおいて、増幅は通常見られない。逆に、「2倍体または欠失」という用語は、コピー数が「増幅していない」と解釈され得る。代替の情報的に有益な量が増幅であるマーカーにおいて、遺伝子欠失は通常見られない。明確にするために、配列欠失は、マーカー遺伝子変異の結果として遺伝子内で生じ得、転写されたタンパク質の不在またはmRNAまたはタンパク質の短縮をもたらし得る。そのような欠失は、コピー数に影響を与え得ない。
本明細書で使用されるとき、「好ましい」成果または予後は、長期の無増悪期間(TTP、もしくは無増悪生存期間)および/または良好な応答を指す。逆に、「好ましくない」成果または予後は、短期の生存期間、短期の無増悪期間(TTP、または無増悪生存期間)、および/または応答不良を指す。
「長期の生存期間」および「短期の生存期間」という用語は、癌患者が生存することが予測される治療の初回投与を受けた後の期間を指す。「長期生存者」とは、短期生存者と特定された患者よりも遅い進行速度を有するか、または腫瘍による死が遅いことが予想される患者を指す。「生存期間の改善」または「より遅い死亡速度」は、例えば、集団の70%、80%、90%以上が治療の初回投与を受けた後に十分な期間生存するような参照基準と比較した、本明細書に記載のマーカーのうちの1つ以上の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量に基づいて決定された推定寿命である。「より速い死亡速度」または「より短い生存期間」とは、例えば、集団の50%、40%、30%、20%、または10%以下が治療の初回投与を受けた後に十分な期間生存しないような参照基準と比較した、本明細書に記載のマーカーのうちの1つ以上の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量に基づいて決定された推定寿命を指す。いくつかの実施形態において、十分な時間とは、癌療法を受けた初日から測定して少なくとも6、12、18、24、または30ヶ月である。
治療薬との接触なしでの癌の成長と比較して、癌の成長速度が治療薬との接触の結果として抑制される場合、癌は治療薬に「応答」するか、または治療に対する「良好な応答」が存在する。癌の成長は、様々な方法で測定され得、例えば、特徴、例えば、腫瘍の大きさまたはその腫瘍型に適切な腫瘍マーカーの発現が測定され得る。例えば、骨髄腫に関連したマーカーの特定およびそのプロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸治療薬に対する応答を支援するために使用される応答定義である、Blade et al.(1998)Br J Haematol.102:1115−23に記載のSouthwestern Oncology Group(SWOG)基準が用いられ得る。これらの基準は、骨髄腫において測定される応答の種類を定義し、疾患増悪までの期間も特徴付け、これは、腫瘍の治療薬に対する感受性のもう1つの重要な尺度である。固形腫瘍の場合、固形腫瘍(RECIST)ガイドラインにおける応答評価基準(Eisenhauer et al.(2009)E.J.Canc.45:228−247)を用いて、固形腫瘍に関連したマーカーの特定および固形腫瘍のプロテアソーム阻害剤に対する応答を支援することができる。国際ワーキンググループは、様々な種類の癌の応答基準を設定、更新、および公開するために定期的に招集されている。そのような公開された報告に従って、対象の腫瘍のマーカーの特定およびそれらのプロテアソーム阻害剤に対する応答を支援することができる。例として、急性骨髄性白血病(AML、Cheson et al.(2003)J.Clin.Oncol.21:4642−4649)、リンパ腫、例えば、非ホジキンおよびホジキンリンパ腫(Cheson et al.(2007)J.Clin.Oncol.25:579−596)の基準がある。基準は、細胞組成(例えば、血液塗抹標本もしくは骨髄生検中の芽球数、有糸分裂像の存在および数)または組織構造(例えば、不規則な組織構造もしくは基底膜の細胞浸潤)を特定するための組織学的方法等の従来の方法に加えて、陽電子放出断層撮影(PET)(例えば、測定可能な代謝活性変化を有する部位(例えば、腫瘍部位)を特定するか、または生体内で腫瘍中の特異的マーカーを追跡するもの)、免疫組織化学分析(例えば、特異的腫瘍マーカーへの抗体の結合を検出することによって腫瘍細胞を特定するもの)、およびフローサイトメトリー(例えば、差次的マーカーおよび蛍光染色によって細胞型を特徴付けるもの)等の分析方法を考慮に入れる。プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸治療薬に応答する性質は、変わりやすい性質であり得、異なる癌は、異なる条件下で、所与の治療薬に対して異なるレベルの「応答性」を呈する。なおさらに、応答性の尺度は、患者の生活の質、転移の程度等を含む腫瘍成長の大きさを超えたさらなる基準を用いて判定され得る。加えて、臨床予後マーカーおよびその変形は、適用可能な条件下で判定され得る(例えば、骨髄腫中のMタンパク質、前立腺癌におけるPSAレベル)。
治療薬との接触なしでの癌の成長と比較して、癌の成長速度が治療薬との接触の結果として抑制されない場合、または非常に低い程度にしか抑制されない場合、癌は治療薬に「応答しない」か、または「応答不良」であるか、あるいは治療に対する応答不良が存在する。上述のように、癌の成長は、様々な方法で測定され得、例えば、腫瘍の大きさまたはその腫瘍型に適切な腫瘍マーカーの発現が測定され得る。例えば、応答の定義を用いて、腫瘍の治療薬に対する非応答に関連したマーカーの特定を支援し、上述のガイドライン等のガイドラインが用いられ得る。治療薬に応答しない性質は、非常に変わりやすい性質であり得、異なる癌は、異なる条件下で、所与の治療薬に対して異なるレベルの「非応答性」を呈する。なおさらに、非応答性の尺度は、患者の生活の質、転移の程度等を含む腫瘍成長の大きさを超えるさらなる基準を用いて判定され得る。加えて、臨床予後マーカーおよびその変形は、適用可能な条件下で判定され得る(例えば、骨髄腫中のMタンパク質、前立腺癌のけるPSAレベル)。
本明細書で使用されるとき、「長期の無増悪期間」、「長期のTTP」、および「短期の無増悪期間」、「短期のTTP」とは、治療によってもたらされた安定した疾患が活動性疾患に変わるまでの期間を指す。時折、治療は、良好な応答でも応答不良でもない安定した疾患、例えば、疾患が単に悪化しない、例えば、ある期間進行性疾患にならないといった最小応答(MR)をもたらす。この期間は、少なくとも4〜8週間、少なくとも3〜6ヶ月、または6ヶ月以上であり得る。
「治療」とは、腫瘍のさらなる成長を予防または阻害し、かつ腫瘍の縮小を引き起こし、より長期の生存期間を提供するための治療法の使用を意味するものとする。治療は、腫瘍の転移の予防も含むよう意図される。癌または腫瘍の少なくとも1つの症状(応答性/非応答性、無増悪期間によって決定されるもの、または当技術分野で既知であり、かつ本明細書に記載される指標)が、緩和されるか、なくなるか、遅延するか、最小限に抑えられるか、または予防される場合、腫瘍は「阻害される」か、または「治療される」。本明細書にさらに記載される治療レジメン(例えば、プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸レジメン)を用いた治療に従う腫瘍の任意の症状(物理的な症状またはその他の症状)の任意の改善は、本発明の範囲内である。
本明細書で使用されるとき、「作用薬」という用語は、腫瘍細胞を含む癌細胞が治療プロトコルにおいて曝露され得る任意のものとして広く定義される。本発明の文脈において、そのような作用薬には、プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸剤、ならびに当技術分野で既知であり、かつ本明細書でさらに詳細に説明される化学療法剤が含まれるが、これらに限定されない。
「プローブ」という用語は、特異的に目的とされた標的分子、例えば、本発明のマーカーに選択的に結合することができる任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成されるか、または適切な生物学的調製物から得られるかのいずれかであり得る。標的分子の検出の目的のために、プローブは、本明細書に記載されるように標識されるように特異的に設計され得る。プローブとして利用され得る分子の例として、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機単量体が挙げられるが、これらに限定されない。
「相補性」とは、2つの核酸鎖の領域間または同一の核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広範な概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基が、その残基がチミンまたはウラシルである場合、第1の領域に逆平行の第2の核酸領域の残基と特異的水素結合を形成(「塩基対合」)することができることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基が、その残基がグアニンである場合、第1の鎖に逆平行の第2の核酸鎖の残基と塩基対合することができることが知られている。2つの領域が逆平行様式で配置されるときに、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対合することができる場合、核酸の第1の領域は、同一または異なる核酸の第2の領域と相補的である。いくつかの実施形態において、第1の領域が第1の部分を含み、第2の領域が第2の部分を含み、それにより、第1および第2の部分が逆平行様式で配置されるとき、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%、またはすべてが、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
「相同」とは、本明細書で使用されるとき、同一の核酸鎖の2つの領域間または2つの異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列類似性を指す。両方の領域内のヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基によって占有されるとき、領域は、その位置で相同である。第1の領域は、それぞれの領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同一の残基によって占有される場合、第2の領域と相同である。2つの領域間の相同性は、同一のヌクレオチド残基によって占有される2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合で(すなわち、パーセント同一性によって)表される。一例として、ヌクレオチド配列5’−ATTGCC−3’を有する領域およびヌクレオチド配列5’−TATGGC−3’を有する領域は、50%の同一性で相同性を持つ。一実施形態において、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、それにより、これらの部分のそれぞれのヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、同一のヌクレオチド残基によって占有される。100%同一性のいくつかの実施形態において、これらの部分のそれぞれのすべてのヌクレオチド残基位置は、同一のヌクレオチド残基によって占有される。
本明細書で別途特定されない限り、「1つの抗体」および「複数の抗体」という用語は、抗体の天然に存在する形態、例えば、ポリクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)、ならびにモノクローナルおよび組換え抗体、例えば、一本鎖抗体、二重鎖および多重鎖タンパク質、キメラ、CDR移植、ヒトおよびヒト化抗体、ならびに多特異的抗体、ならびに前述のすべての断片および誘導体(それらの断片(例えば、dAbs、scFv、Fab、F(ab)’2、Fab’)および誘導体は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する)を広く包含する。抗体誘導体は、タンパク質または抗体に接合される化学的部分を含み得る。「抗体」という用語は、合成変異形および遺伝子操作された変異形も含む。
「キット」は、本発明のマーカーまたはマーカーセットを特異的に検出するために少なくとも1つの試薬、例えば、プローブを含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。この製品は、例えば患者から得られた試料において本発明の方法を例えば生体外で実行するために、販売促進されるか、分配されるか、販売されるか、または一つの単位として売り出され得る。そのようなキットに含まれる試薬は、本明細書に記載の1つ以上のマーカーの分析で用いるプローブ/プライマーおよび/または抗体を含み得る。加えて、本発明のキットは、好適な検出アッセイを説明する取扱説明書を包含し得る。そのようなキットは、例えば、臨床試験設定または医薬品試験受託設定において、記録、記憶、送信、または受信される、例えば、1つ以上のマーカーの発現レベル、特徴、例えば、大きさ、配列、活性、または組成に関する情報を生成するために好都合に使用され、例えば、血液学的癌、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、リンパ腫(例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫)、または白血病(例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病)を含むプロテアソーム阻害治療薬で治療することができる癌が存在する可能性を呈する特定の患者において、癌の症状を呈する患者の診断、評価、または治療を可能にすることができる。
本方法および組成物は、癌に罹患する患者の診断および治療で用いるように設計される。癌または腫瘍は、本方法に従って治療または診断される。「癌」または「腫瘍」は、患者における初期の腫瘍および任意の転移を含む任意の腫瘍成長を含むよう意図される。癌は、血液学的癌または固形腫瘍型であり得る。血液学的腫瘍は、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、白血病(例えば、ワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、他の白血病)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫)、および骨髄異形成症候群を含む血液学由来の腫瘍を含む。固形腫瘍は、臓器で発生し得、皮膚癌、肺癌、脳癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、腸癌、膀胱癌、子宮癌、頸癌、精巣癌、副腎癌等の癌を含む。癌は、そのマーカー遺伝子が変異を有する細胞を含み得る。本明細書で使用されるとき、腫瘍細胞を含む癌細胞は、異常な(増加した)速度で分裂する細胞、またはその増殖もしくは生存期間の制御が、癌細胞が発生または生存する同一の組織中の細胞とは異なる細胞を指す。癌細胞には、癌腫、例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支癌、黒色腫、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌(bile duct carcinoma)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、乳頭癌、移行上皮癌、絨毛腫、セミノーマ、胎生期癌、乳癌、消化管癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌、および頸頭部領域の扁平上皮癌;肉腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索肉腫(chordosarcoma)、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、および中皮肉腫;血液癌、例えば、骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ球性白血病)、およびリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫、またはホジキン病)、ならびに神経膠腫、髄膜腫、髄芽腫、神経鞘腫、または上衣腫を含む神経系腫瘍中の細胞が含まれるが、これらに限定されない。
本明細書で使用されるとき、「非侵襲性」という用語は、対象に最小の危害を加える手順を指す。臨床応用の場合、非侵襲性サンプリング手順は、典型的には麻酔なしで、かつ/または外科的手段もしくは縫合を用いることなく、例えばウォークイン設定で迅速に行われ得る。非侵襲性試料の例は、血液、血清、唾液、尿、口腔スワブ、咽喉培養物、糞便サンプル、および頸管スミアを含む。非侵襲的診断分析は、X線、磁気共鳴映像法、陽電子放出断層撮影等を含む。
薬理ゲノムマーカーの量、例えば、RASの変異状態の測定による腫瘍の治療の成果の判定が本明細書に記載される。本発明の方法は、患者由来の細胞または核酸の試料中の野生型または変異体NRAS遺伝子の存在または不在の検出を含むことを特徴とし得る。変異は、(i)少なくとも1つのヌクレオチドの同一性の違い、または(ii)ヌクレオチドの数の違いであり得、この違いは、単一のヌクレオチドまたはいくつかのヌクレオチドであり得る。本発明は、染色体再配置、例えば、染色体転置等のNRAS遺伝子の違いを検出するための方法も提供する。例えば血液試料からの非侵襲的手段、便利な手段、または低コストの手段による成果の判定についても記載される。血液学的腫瘍、例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病の程度または成果を決定するための典型的な方法は、遺伝子型または表現型分析、例えば、組織学的分析のために組織を収集する骨髄生検を用い得る。本発明は、患者における腫瘍の治療または疾患の管理に適切な治療レジメンを決定するか、判定するか、勧めるか、または提供するための方法を提供する。本明細書に開示のキットおよび方法を用いた治療の監視は、好ましくない成果の可能性を特定してそれらの予防を可能にし得、したがって、治療レジメンの調整、治療の中止、または代替の治療の使用による罹患率の低下、死亡率の低下、および治療費の節約を可能にし得る。
「試料」という用語は、試料、例えば、対象から単離される組織、細胞、生体液、およびそれらの単離物、ならびに対象に存在する組織、細胞、および体液を含むよう意図され、患者または健常な対象から得られ得る。骨髄、例えば、骨髄腫腫瘍の血液学的腫瘍において、腫瘍の一次分析は、骨髄試料、例えば、骨髄腫腫瘍細胞を含む試料で行われ得る。しかしながら、いくつかの腫瘍細胞(例えば、クロノタイプ腫瘍細胞、循環内皮細胞)は、全血中の細胞集団の割合である。これらの細胞は、血液学的腫瘍、例えば、白血病、リンパ腫、および骨髄腫の標準的な治療法である骨髄移植に備えて、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)での患者の治療中に血液中にも動員され得る。多発性骨髄腫中の循環腫瘍細胞の例は、例えば、Pilarski et al.(2000)Blood 95:1056−65およびRigolin et al.(2006)Blood 107:2531−5によって研究されている。したがって、例えばマーカーを生体外で測定して治療の成果を決定するための非侵襲的試料は、末梢血試料を含み得る。したがって、末梢血中の細胞は、マーカー量について試験され得る。血液学的腫瘍を有する患者の場合、標準の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量の対照参照試料は、患者の皮膚または口腔スワブから得られ得る。固形腫瘍の場合、腫瘍細胞を含む典型的な試料は、腫瘍の生検である。固形腫瘍の場合、標準の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量の対照参照試料は、患者の血液から得られ得る。
いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍細胞は、骨髄腫癌細胞、リンパ腫癌細胞、および白血病癌細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍細胞を含む試料は、多発性骨髄腫癌細胞、マントル細胞リンパ腫癌細胞、濾胞性リンパ腫癌細胞、急性リンパ性白血病癌細胞、および急性骨髄性白血病癌細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍細胞を含む試料は、多発性骨髄腫癌細胞を含む。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍細胞を含む試料は、マントル細胞リンパ腫癌細胞を含む。
血液収集容器は、抗凝血剤、例えば、ヘパリンまたはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、血液の完全性を維持するためにデキストロースまたはアルブミンまたは緩衝液、例えば、リン酸塩等の添加物を有するクエン酸ナトリウムもしくはクエン酸塩溶液を含み得る。マーカーの量が試料中のそのDNAレベルを測定することによって測定される場合、DNA安定剤、例えば、DNAseを阻害する作用薬が試料に添加され得る。マーカーの量が試料中のそのRNAレベルを測定することによって測定される場合、RNA安定剤、例えば、RNAseを阻害する作用薬が試料に添加され得る。マーカーの量が試料中のそのタンパク質レベルを測定することによって測定される場合、タンパク質安定剤、例えば、プロテアーゼを阻害する作用薬が試料に添加され得る。血液収集容器の一例には、血液収集時のRNA安定化に有用なPAXGENE(登録商標)チューブ(PREANALYTIX、Valencia,CA)がある。末梢血試料は、修飾、例えば、分画、分類、または濃縮され得る(例えば、腫瘍で富化された試料または腫瘍を枯渇した試料(例えば、参照試料用に)をもたらすため)。修飾された試料の例として、例えば、負の選択、例えば、赤血球から白血球の分離(例えば、濃厚糖溶液または高分子溶液(例えば、FICOLL(登録商標)溶液(Amersham Biosciences division of GE healthcare(Piscataway,NJ))またはHISTOPAQUE(登録商標)−1077溶液(Sigma−Aldrich Biotechnology LPおよびSigma−Aldrich Co.(St.Louis,MO))の分画遠心分離)、ならびに/または選択剤(例えば、直接単離(例えば、B細胞マーカーに結合する磁気ビーズ(例えば、Miltenyi Biotec(Auburn,CA)のもの)を含む細胞の溶液への磁場の印加)または蛍光活性化細胞分類のためにCD34、CD38、CD138、もしくはCD133等の腫瘍細胞もしくは骨髄前駆体マーカーに結合する試薬)へのB細胞の結合による正の選択によって収集され得るクロノタイプ骨髄腫細胞が挙げられる。
あるいは、腫瘍細胞株、例えば、OCI−Ly3、OCI−Ly10細胞(Alizadeh et al.(2000)Nature 403:503−511)、RPMI6666細胞、SUP−B15細胞、KG−1細胞、CCRF−SB細胞、8ES細胞、Kasumi−1細胞、Kasumi−3細胞、BDCM細胞、HL−60細胞、Mo−B細胞、JM1細胞、GA−10細胞、もしくはB細胞リンパ腫(例えば、BC−3)もしくは細胞株、または腫瘍細胞株の収集(例えば、McDermott et al.(2007)PNAS 104:19936−19941またはONCOPANEL(商標)抗癌腫瘍細胞プロファイリングスクリーニング(Ricerca Biosciences(Bothell,WA))を参照のこと)がアッセイされ得る。当業者であれば、本方法で使用される適切な細胞を(例えば、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標))(Manassas、VA)から)容易に選択し、得ることができる。患者における治療の成果を予測するか、または治療プロトコルの有効性を監視するための組成物または方法が用いられる場合、治療される患者から得られた組織または血液試料は、アッセイに有用な細胞源またはマーカー遺伝子源または遺伝子産物源である。
試料、例えば、腫瘍試料、例えば、生検もしくは骨髄試料、血液もしくは修飾された血液試料(例えば、腫瘍細胞を含む)、および/または参照、例えば、対応対照(例えば、生殖系列)試料は、試料中のマーカーの量を判定する前に様々な周知の収集後調製および保存技法(例えば、核酸および/またはタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)に供され得る。
いくつかの実施形態において、マーカーにおける変異は、マーカー遺伝子、例えば、NRASと相関した核酸、例えば、DNA、RNA、cDNA、またはタンパク質を配列決定することによって特定され得る。核酸を配列決定するための当技術分野で既知のいくつかの配列決定方法が存在する。核酸プライマーは、潜在的な変異部位を含む領域に結合するように設計され得るか、または野生型配列ではなく変異した配列を補完するように設計され得る。プライマー対は、マーカー遺伝子における潜在的な変異を含む領域を括弧で囲む(bracket)ように設計され得る。プライマーまたはプライマー対を用いて、マーカー遺伝子に対応するDNAの一方の鎖または両方の鎖を配列決定することができる。配列量を増大させるために配列決定して、マーカー遺伝子における変異の検出する前に、プライマーをプローブ、例えば、核酸プローブ、例えば、ハイブリダイゼーションプローブとともに用いて、目的とする領域を増幅することができる。配列決定され得る領域の例として、全遺伝子、全遺伝子の転写物、および全遺伝子または転写物の断片、例えば、エクソンまたは非翻訳領域のうちの1つ以上、または変異部位を含むマーカーの一部が挙げられる。プライマー選択および配列決定または組成分析を目的とした変異の例は、COSMICおよびdbGaP等の変異情報を収集する公開データベースで見つけられ得る。NRAS等のマーカー遺伝子のいくつかの変異は、プロテアソーム阻害、例えば、ペプチジルボロン酸、例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブによる阻害に対する耐性に関連し得る変異の例として、実施例の表11に列記される。
配列決定法は当業者に既知である。配列決定法の例として、サンガー法、SEQUENOM(商標)法、および次世代シーケンシング(NGS)法が挙げられる。電気泳動、例えば、プライマー伸長標識DNA断片を分離するためのキャピラリー電気泳動の使用を含むサンガー法は、ハイスループット適用のために自動化され得る。プライマー伸長配列決定は、目的とする領域のPCR増幅後に行われ得る。ソフトウェアは、塩基配列決定コーリング(sequence base calling)および変異特定を支援し得る。SEQUENOM(商標)MASSARRAY(登録商標)配列決定分析(San Diego,CA)は、変異を特定するために目的とする特定の断片の実際の質量を予想される質量と比較する質量分析法である。NGS技術(「超並列配列決定」および「第2世代配列決定」とも称される)は、概して、以前の方法よりもはるかに高いスループットを提供し、様々な手法を用いる(Zhang et al.(2011)J.Genet.Genomics 38:95−109およびShendure and Hanlee(2008)Nature Biotech.26:1135−1145で概説される)。NGS法は、試料中のマーカーにおける低頻度の変異を特定し得る。いくつかのNGS法(例えば、GS−FLXゲノムシーケンサー(Roche Applied Science(Branford,CT))、ゲノムアナライザー(Illumina,Inc.(San Diego,CA))、SOLID(商標)アナライザー(Applied Biosystems(Carlsbad,CA))、Polonator G.007(Dover Systems(Salem,NH))、HELISCOPE(商標)(Helicos Biosciences Corp.(Cambridge,MA))を参照のこと)は、フローセルにおいて空間的に分離されたPCR産物をクローン増幅するか、またはクローン増幅しない環状アレイシークエンシング、およびシークエンシング酵素(例えば、ポリメラーゼまたはリガーゼ)によって組み込まれる標識修飾ヌクレオチドを検出する様々なスキームを用いる。1つのNGS法において、プライマー対をPCR反応で用いて、目的とする領域を増幅することができる。増幅された領域は連結されて、連鎖状の産物になり得る。クローンライブラリは、PCR産物または連結された産物からフローセル内に生成され、ポリメラーゼが標識塩基の同一性に応じて4つのチャネルのうちの1つに画像化される可逆的に終結された標識塩基を添加するときにシングルエンドシークエンシングのためにさらに増幅され(「ブリッジ」または「クラスター」PCR)、その後、次のサイクルのために除去される。ソフトウェアは、変異を特定するためのゲノム配列の比較に役立ち得る。別のNGS法は、ゲノム中のすべての遺伝子のエクソン配列決定に焦点を当てたエクソームシーケンシングである。他のNGS法と同様に、エクソンは、捕捉法または増幅法によって富化され得る。
タンパク質および核酸の組成は、当技術分野で既知の多くの方法によって、例えば、それらを切断、分解、または消化するようにそれらを処理し、その後、それらの構成成分を分析することによって決定され得る。質量分析、電気泳動、およびクロマトグラフィーは、比較のために構成成分を分離および定義し得る。欠失または挿入を引き起こす変異は、これらの方法における大きさまたは変化の違いによって特定され得る。タンパク質消化または制限酵素での核酸消化は、いくつかの変異後に異なる断片パターンを明らかにし得る。それらの構造の文脈において特定の変異体アミノ酸を認識する抗体は、試料におけるこれらの変異を特定および検出し得る(以下を参照のこと)。
いくつかの実施形態において、DNA、例えば、野生型または変異マーカーに対応するゲノムDNAは、当技術分野で既知の方法を用いて、生体試料においてin situ形式および生体外形式の両方によって分析され得る。DNAは、試料から直接単離され得るか、または別の細胞成分、例えば、RNAもしくはタンパク質の単離後に単離され得る。キット、例えば、QIAAMP(登録商標)DNAマイクロキット(Qiagen(Valencia,CA))は、DNA単離に使用可能である。そのようなキットを用いてDNAを増幅することもできる。
別の実施形態では、マーカーに対応するmRNAは、当技術分野で既知の方法を用いて、生体試料においてin situ形式および生体外形式の両方によって分析され得る。発現レベルを測定するための方法の一例が実施例に含まれる。多くの発現検出方法が単離RNAを用いる。生体外での方法の場合、mRNAの単離を選択しない任意のRNA単離技法を利用して、腫瘍細胞からRNAを精製することができる(例えば、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York 1987−1999を参照のこと)。さらに、多数の組織試料を、例えば、Chomczynskiの一段階RNA単離プロセス(米国特許第4,843,155号(1989年))等の当業者に周知の技法を用いて容易に処理することができる。RNAを、標準の手順(例えば、Chomczynski and Sacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−159を参照のこと)、溶液(例えば、トリゾール、TRI REAGENT(登録商標)(Molecular Research Center,Inc.(Cincinnati,OH)米国特許第5,346,994号を参照のこと)、またはキット(例えば、QIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia,CA)またはLEUKOLOCK(商標)全RNA単離システム(Ambion division of Applied Biosystems)(Austin,TX)))を用いて単離することができる。
さらなるステップを用いて、DNAをRNA試料から除去することができる。細胞溶解を、非イオン洗剤を用いて達成し、その後、マイクロ遠心分離して核、ゆえに、細胞DNAの大部分を除去することができる。DNAは、その後、DNA分析のために核から単離され得る。一実施形態において、RNAは、チオシアン酸グアニジン溶解、その後、RNAをDNAから分離するCsCl遠心分離を用いて、目的とする様々な種類の細胞から抽出される(Chirgwin et al.(1979)Biochemistry 18:5294−99)。ポリ(A)+RNAは、オリゴ−dTセルロースの選択によって選択される(Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(2nd ed.)、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor,N.Y.)。あるいは、DNAからのRNAの分離は、例えば、熱フェノールまたはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールでの有機抽出によって達成され得る。所望される場合、RNAse阻害剤は、溶解緩衝液に添加され得る。同様に、ある細胞型において、タンパク質変性/消化ステップをプロトコルに追加することが望ましくあり得る。多くの適用において、トランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)等の他の細胞RNAに対してmRNAを富化することが望ましい。ほとんどのmRNAは、3’末端にポリ(A)尾部を含有する。これは、それらが、例えば、セルロースまたはSEPHADEX.R(商標)媒体等の固体支持体に結合されたオリゴ(dT)またはポリ(U)を用いて、親和性クロマトグラフィーによって富化されることを可能にする(Ausubel et al.(1994)Current Protocols In Molecular Biology,vol. 2,Current Protocols Publishing,New Yorkを参照のこと)。いったん結合されると、ポリ(A)+mRNAは、2mMのEDTA/0.1%SDSを用いて親和性カラムから溶出される。
生体試料中の本発明のマーカーの特徴の分析は、生体試料(例えば、骨髄試料、腫瘍生検、または参照試料)を試験対象から得ることを含む。特徴は、例えば、1つもしくは複数のマーカー、例えば、核酸(例えば、RNA、mRNA、ゲノムDNA、もしくはcDNA)、および/または翻訳されたタンパク質の特徴を検出または測定するための様々な周知方法のうちのいずれかによって判定され得る。そのような方法の非限定的な例として、分泌タンパク質、細胞表面タンパク質、細胞質タンパク質、または核タンパク質を検出するための免疫学的方法;タンパク質精製方法;タンパク質機能もしくは活性アッセイ;ミスマッチ領域、すなわち、変異体または変異形領域を消化して、結果として生じた消化された断片から変異体または変異形を分離および特定する、任意に「ミスマッチ切断」ステップを含む核酸ハイブリダイゼーション方法(Myers,et al.(1985)Science 230:1242);核酸逆転写法;ならびに核酸増幅法および増幅された産物の分析が挙げられる。これらの方法は、遺伝子アレイ/チップ技術、RT−PCR、TAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems(Foster City,CA))(例えば、GLPによって認可された実験室条件下)、in situハイブリダイゼーション、免疫組織化学方法、免疫ブロット法、FISH(蛍光in situハイブリダイゼーション)、FACS分析、ノーザンブロット、サザンブロット、INFINIUM(登録商標)DNA分析ビーズチップ(Illumina,Inc.(San Diego,CA))、定量PCR、細菌人工染色体アレイ、単一ヌクレオチド多型(SNP)アレイ(Affymetrix(Santa Clara,CA))、または細胞遺伝学的分析を含む。
2つの核酸間の少なくとも1つのヌクレオチドの違いを検出するための技法の例として、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅、または選択的プライマー伸長が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、オリゴヌクレオチドプローブが調製され得、そこで、既知の多型ヌクレオチドが中心に置かれ(対立遺伝子または変異体特異的プローブ)、その後、完全一致が見られる場合にのみハイブリダイゼーションを許容する条件下で標的DNAにハイブリダイズされ得る(Saiki et al.(1986)Nature 324:163、Saiki et al(1989)Proc.Natl Acad.Sci USA 86:6230、およびWallace et al.(1979)Nucl.Acids Res.6:3543)。そのような対立遺伝子特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技法を用いて、NRASの異なる多型または変異領域におけるいくつかのヌクレオチド変化を同時に検出することができる。例えば、特異的対立遺伝子変異形または変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドは、固体支持体、例えば、ハイブリダイゼーション膜およびこの支持体、例えば、膜に結合され、その後、標識試料核酸とハイブリダイズされる。したがって、ハイブリダイゼーションシグナルの分析は、試料核酸のヌクレオチドの同一性を明らかにし得る。
したがって、本発明の検出方法を用いて、例えば、生体試料中のRNA、mRNA、タンパク質、cDNA、またはゲノムDNAを生体外でも生体内でも検出することができる。さらに、本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の生体内での検出技法は、対象に標識プローブを導入して、バイオマーカー、例えば、バイオマーカーの転写物と相補的な核酸または標識抗体、ポリペプチドに対して指向されるFc受容体または抗原、例えば、野生型または変異体マーカーを検出することを含む。例えば、抗体は、対象におけるその存在および位置が標準の画像化技法によって検出され得る放射性同位体で標識され得る。これらのアッセイを様々な方法で実施することができる。当業者であれば、マーカー(複数を含む)、組織試料、および問題の変異の性質に基づいて、これらまたは他の適切かつ利用可能な方法から選択することができる。いくつかの方法は、以下の項でより詳細に説明される。様々な方法もしくは方法の組み合わせは、様々な事例、または、例えば、様々な種類の腫瘍もしくは患者集団において適切であり得る。
本発明のマーカーに対応するポリペプチドの生体外での検出技法は、酵素免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット、タンパク質アレイ、免疫沈降、免疫化学的方法、および免疫蛍光法を含む。そのような例において、マーカーの発現は、マーカータンパク質もしくはその断片、例えば、変異され得る領域もしくは変異配列を含む部分を含むタンパク質もしくは断片、またはその構造の文脈における変異残基(その正常な翻訳後修飾のすべてまたは一部を経たマーカータンパク質を含む)に特異的に結合する抗体(例えば、非標識抗体、放射性標識抗体、発色団標識抗体、フルオロフォア標識抗体、または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質またはタンパク質リガンド対(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンドと接合された抗体)、または抗体断片(例えば、一本鎖抗体、単離された抗体、超可変ドメイン等)を用いて判定される。抗体は、配列番号3および6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質を検出し得る。あるいは、抗体は、配列番号3および6からなる群から選択される変異体の変異形アミノ酸配列を有する変異タンパク質を検出し得る。dbGaPのCOSMIC等の公開データベースにおいて変異したと見なされる残基は、変異体残基を特異的に認識し、かつそれに結合する抗体を生成するための免疫原性組成物中で調製され得る。別の方法は、抗体対を用いることができ、その対の一方は、マーカータンパク質、すなわち、予想される変異、例えば、ナンセンス変異、点変異、挿入、または欠失の領域のN末端に結合し、対の他方は、タンパク質の下流に結合する。野生型タンパク質は、その対の両方の抗体に結合するが、ナンセンス変異、点変異、挿入、または欠失変異を有するタンパク質は、その対のN末端抗体にのみ結合する。サンドイッチELISA法等のアッセイは、例えば参照試料と比較して、腫瘍試料中の野生型タンパク質の数量損失を検出し得るか、または標準のELISAは、抗体の結合レベルを比較して、変異が腫瘍試料に存在することを推測する。
いくつかの実施形態において、方法は、マーカータンパク質の量の測定を含む。いくつかの実施形態において、マーカータンパク質発現を測定するためのアッセイは、配列番号3または6に結合する抗体を用いる。いくつかの実施形態において、タンパク質発現の定量化は、腫瘍細胞を含む試料中の配列番号3または6に結合する抗体への結合量を測定する。いくつかの実施形態において、マーカータンパク質の量は、腫瘍生検の免疫組織化学によって定量化される。いくつかの実施形態において、マーカータンパク質の量は、血液から富化された腫瘍細胞の免疫組織化学によって定量化される。いくつかの実施形態において、マーカータンパク質の量は、抗体結合または染色度のスコアによって決定される。いくつかの実施形態において、マーカータンパク質の量は、腫瘍細胞中の抗体結合または染色を腫瘍細胞を含む試料中の非腫瘍細胞と比較することによって決定される。
タンパク質マーカーの量または機能性を決定するための間接的な方法は、タンパク質の活性の測定も含む。例えば、試料、あるいは試料から単離されるか、または試料から単離、クローニング、または増幅された核酸から発現されたタンパク質は、マーカータンパク質活性について判定され得る。RAS癌遺伝子の場合、活性化変異は、GTPase活性の低下またはRasGAPもしくは細胞膜への結合の変化として測定され得る。
一実施形態において、マーカーの発現は、mRNA/cDNA(すなわち、転写ポリヌクレオチド)を患者試料中の細胞から調製し、かつmRNA/cDNAをマーカー核酸の相補体またはその断片である参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることによって判定される。cDNAは、任意に、参照ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に様々なポリメラーゼ連鎖反応法のうちのいずれかを用いて増幅され得る。1つ以上のマーカーの発現は、同様に、定量PCRを用いて検出されて、マーカー(複数を含む)の発現レベルを判定することができる。mRNAレベルの測定の使用例は、マーカー遺伝子における不活性化変異が、細胞におけるmRNAのレベルの変化をもたらし得ることである。レベルは、タンパク質の機能不全もしくは不在を考慮してフィードバックシグナル伝達タンパク質が産生されるため上方制御され得るか、または変化したmRNA配列が不安定であるため下方制御され得る。あるいは、本発明のマーカーの変異または変異形(例えば、上述の単一ヌクレオチド多型、欠失等)を検出する多くの既知の方法のうちのいずれかを用いて、患者におけるマーカー遺伝子の変異の発生を検出することができる。
直接測定の一例として、転写物の定量化がある。本明細書で使用されるとき、発現のレベルまたは量は、マーカーによってコードされるmRNAの発現の絶対量またはマーカーによってコードされるタンパク質の発現の絶対量を指す。選択されたマーカーの絶対発現量に基づく決定の代替案として、決定は、規格化発現量に基づき得る。発現量は、例えば、構成的に発現されるハウスキーピングの役割において、その発現とマーカーではない対照マーカーの発現との比較時にマーカーの絶対発現レベルを補正することによって規格化され得る。規格化に好適なマーカーは、アクチン遺伝子またはβ−2ミクログロブリン等のハウスキーピング遺伝子も含む。データ規格化のための参照マーカーには、遍在的に発現されるマーカーおよび/またはその発現が癌遺伝子によって制御されないマーカーが含まれる。構成的に発現された遺伝子は当技術分野で既知であり、関連組織および/または患者の状態、ならびに分析方法に従って特定および選択され得る。そのような規格化は、ある試料の発現レベルを別の試料と比較すること、例えば、異なる時間または異なる対象由来の試料間の発現レベルを比較することを可能にする。さらに、発現レベルは、関連発現レベルとして提供され得る。ゲノムDNA試料のベースライン、例えば、2倍体コピー数は、腫瘍を有しない対象由来の細胞または患者由来の非腫瘍細胞の量を測定することによって決定され得る。マーカーまたはマーカーセットの相対量を決定するために、マーカーまたはマーカーセットの量は、問題の試料の発現の決定前にベースラインを確立するために、少なくとも1個、または2、3、4、5個以上の試料、例えば、7、10、15、20、または50個以上の試料から決定される。ベースライン測定を確立するために、大量の試料においてアッセイされたマーカーまたはマーカーセットの平均量またはそれぞれのレベルが決定され、これは、問題のバイオマーカーまたはバイオマーカーセットのベースライン発現レベルとして使用される。その後、試験試料のために決定されたマーカーまたはマーカーセットの量(例えば、絶対発現レベル)は、そのマーカーまたはマーカーセットのために得られたベースライン値で割られる。これは、相対量を提供し、異常なレベルのマーカータンパク質活性の特定に役立つ。
本発明の核酸分子の配列に基づくプローブを用いて、本発明の1つ以上のマーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。このプローブは、それに結合される標識基、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補助因子を含み得る。そのようなプローブは、例えば、対象由来の細胞の試料中のタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定することによって、例えば、mRNAレベルを検出するか、またはタンパク質をコードする遺伝子が変異もしくは欠失されたかを決定することによって、タンパク質を発現する細胞または組織を特定するための診断試験キットの一部として使用され得る。
本明細書に記載のデータベース記録に記載されるヌクレオチド配列に加えて、当業者であれば、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在し得ることを理解する。そのような遺伝的多型は、天然に発生する対立遺伝子変異のため、集団内の個体の間に存在し得る。対立遺伝子は、所与の遺伝子座で選択的に生じる遺伝子群のうちの1つである。加えて、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型も存在し得、その遺伝子の全体の発現レベルに影響を与え得ることが理解される(例えば、制御または分解に影響を与えることによって)。
プライマーまたは核酸プローブは、特異的マーカーまたはその変異領域と相補的なヌクレオチド配列を含み、マーカー遺伝子またはマーカー遺伝子に関連した核酸と選択的にハイブリダイズするのに十分な長さを有する。プライマーおよびプローブを用いて、マーカー核酸の単離および配列決定を支援することができる。一実施形態において、プライマーまたは核酸プローブ、例えば、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、マーカー遺伝子の約6、8、10、12、もしくは15、20、25、30、40、50、60、75、100個以上の連続したヌクレオチドにハイブリダイズするヌクレオチド配列を有する領域を含む。別の実施形態では、プライマーまたは核酸プローブは、配列番号1、2、4、5のうちのいずれかに記載の任意の配列のヌクレオチド配列、または例えば115247085と115259515の塩基対の染色体1pの配列、および例えば25358180と25403854の塩基対の染色体12pの配列、または前述の配列のうちのいずれかの相補体を含むマーカー核酸にハイブリダイズすることができる。例えば、少なくとも約15個の連続したヌクレオチド、少なくとも約25個のヌクレオチド、または配列番号1、2、4、5のうちのいずれかに記載の約15〜約20個のヌクレオチドを有するヌクレオチド配列、または115247085と115259515の塩基対の染色体1pの配列、または25358180と25403854の塩基対の染色体12pの配列、または前述の配列のうちのいずれかの相補体を含むプライマーまたは核酸プローブが、本発明によって提供される。約25個以上のヌクレオチドの配列を有するプライマーまたは核酸プローブも本発明の範囲内である。別の実施形態では、プライマーまたは核酸プローブは、配列番号1、2、4、5のうちのいずれかに記載の任意の配列のヌクレオチド配列と少なくとも70%、少なくとも75%、80%、もしくは85%、または少なくとも90%、95%、もしくは97%同一の配列、あるいは115247085と115259515の塩基対の染色体1pの配列、25358180と25403854の塩基対の染色体12pの配列、または前述の配列のうちのいずれかの相補体を有し得る。核酸類似体は、ハイブリダイゼーションのための結合部位として用いられ得る。好適な核酸類似体の一例には、ペプチド核酸がある(例えば、Egholm et al.,Nature 363:566 568(1993)、米国特許第5,539,083号を参照のこと)。
プライマーまたは核酸プローブは、結合エネルギー、塩基組成、配列複雑性、交差ハイブリダイゼーション結合エネルギー、および二次構造を考慮したアルゴリズムを用いて選択され得る(2001年1月25日に公開されたFriend et al.の国際特許公開第WO01/05935号、Hughes et al.,Nat.Biotech.19:342−7(2001)を参照のこと)。本発明の有用なプライマーまたは核酸プローブは、それぞれの転写物、例えば、変異標的領域に特有の配列に結合し、その特定の核酸、例えば、転写物または変異転写物のみを増幅、検出、および配列決定するためにPCRで用いられ得る。マーカー遺伝子、例えば、NRASのいくつかの変異の例は、実施例の表11で見つけられる。他の変異は、本明細書で引用される参考文献および本明細書に記載の公開データベースに記載される。当業者であれば、当技術分野の技術を用いて、例えば、プライマーまたは核酸プローブの縮重またはGC含有量を操作して、プライマーまたは核酸プローブが標準の配列、変異体、または対立遺伝子変異形に結合する可能性を調整することによって、本明細書に開示のマーカー、あるいは同様の特徴を有する関連マーカー、例えば、染色体遺伝子座上のマーカー、または本明細書に記載の同一のマーカー遺伝子の異なる領域における変異を有する関連マーカーのプライマーおよび核酸プローブを設計することができる。Oligoバージョン5.0(National Biosciences(Plymouth,MN))等の当技術分野で周知のコンピュータプログラムは、必要とされる特異性および最適増幅特性を有するプライマーの設計において有用である。完全に相補的な核酸プローブおよびプライマーが本明細書に記載のマーカー、およびその変異体、多型、または対立遺伝子を検出するために使用され得る一方で、完全な相補性からの逸脱が分子の標的領域への特異的なハイブリダイゼーションを阻止しない場合、そのような逸脱が企図される。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、その5’末端に非相補的な断片を有し得、そのプライマーの残りの部分は、標的領域に相補的であり得る。あるいは、非相補的なヌクレオチドは、結果として生じるプローブまたはプライマーが引き続き標的領域に特異的にハイブリダイズすることができる限り、核酸プローブまたはプライマーに散在し得る。
治療成果の指標は、1個のマーカー、2個のマーカー、3個のマーカー、もしくは4個以上のマーカー、例えば、5、6、7、8、9、10、15、20、もしくは25個のマーカー、またはその変異部分、例えば、RAS経路に関与するか、またはそれと相互作用するマーカー遺伝子、例えば、細胞周期を制御する遺伝子、例えば、癌における体細胞変異によって不活性化され得る遺伝子を研究することによって判定され得る。マーカーは、治療成果の別の評価基準、例えば、生化学的マーカー(例えば、Mタンパク質、タンパク尿)、または組織学的マーカー(例えば、芽球数、単位面積当たりの有糸分裂像数)と組み合わせて研究され得る。
統計的方法は、マーカーの量の測定時、例えば、DNA、RNA、またはタンパク質の測定時の治療成果の決定を支援し得る。1つのマーカーの量は、複数の時点、例えば、作用薬、例えば、プロテアソーム阻害剤での治療前、治療中、治療後に測定され得る。例えば時間的なベースラインからのマーカーの発現の変化の進行を決定するために、発現結果は、反復測定線形回帰モデルによって分析され得る(Littell,Miliken,Stroup,Wolfinger,Schabenberger(2006)SAS for Mixed Models,2
nd edition、SAS Institute,Inc.(Cary,NC)):
式中、Y
ijkは、i回目の治療における第jの動物のk日目のlog
2変換した発現(ハウスキーピング遺伝子に対して規格化された発現)であり、Y
ij0は、i回目の治療における第jの動物の定義されたベースラインlog
2変換した発現(ハウスキーピング遺伝子に対して規格化された発現)であり、
k日目は、カテゴリ変数として扱われ、ε
ijkは、残差項である。共分散行列(例えば、一次自己回帰、化合物対称性、空間べき乗則(spatial power law))を特定して、それぞれの動物における反復測定を経時的にモデル化することができる。さらに、それぞれの治療時点は、治療値がビヒクルと大きく異なったかを試験するために、ビヒクル群の同一の時点に戻って比較され得る。
いくつかの他の方法を用いて、データを分析することができる。例えば、サイクル数の代わりに相対発現値が分析され得る。これらの値は、倍率変化またはベースラインとの絶対差のいずれかとして試験され得る。さらに、不一致の反復測定分析(ANOVA)は、不一致がすべての群および時点にわたって等しい場合に使用され得る。最後の(または他の)時点にベースラインからの観察された変化は、対応のあるt−検定、小さい試料サイズのデータの有意性を試験するためのフィッシャーの正確検定(p値=Σ P(X=x)(x=1からプロテアソーム阻害に対する感受性、例えば、好ましい成果、またはプロテアソーム阻害に対する非応答性を示す試験された状態、例えば、野生型または変異の数))、または腫瘍患者が健常な対象と大きく異なるかを比較するためのウィルコクソンの符号順位検定(データが正規分布されない場合)を用いて分析され得る。
1つの時点の量と次の時点の量の差または腫瘍試料の量と正常試料の量の差は、治療成果の予後を示し得る。ベースラインレベルは、治療前に、例えば、ゼロ時点で、治療の1日前、3日前、1週間前、および/または2週間以上前に1、2、3、4回以上発現を測定することによって決定され得る。あるいは、ベースラインレベルは、数名の対象、例えば、健常な対象、あるいは上述の治療を受けないか、またはまだ治療を受けていない同一の健康状態もしくは障害を有する患者から決定され得る。あるいは、National Center for Biotechnology Information(NCBI(Bethesda,MD))の遺伝子発現オムニバス(GEO)プログラムで蓄積された発現値を用いることができる。例えば、プロテアソーム阻害治療前にサンプリングされた骨髄腫mRNA発現量のデータセットには、GEO受託番号GSE9782(Mulligan,et al.(2006)Blood 109:3177−88においても分析されたもの)およびGSE6477(Chng et al.(2007)Cancer Res.67:292−9)によっても分析されたもの)が含まれる。治療が腫瘍に与える影響を試験するために、マーカーの発現は、いくつかの治療後の任意または複数の時点で、例えば、治療の1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、3週間治療サイクル後に1回、4週間後、4週間治療サイクル後に1回、1ヶ月後、5週間治療サイクル後に1回、2ヶ月後、3ヶ月後、5ヶ月治療サイクル後に1回、および/または6ヶ月以上後に測定され得る。例えば、マーカーの量は、数回の治療後に1回、または治療中複数の間隔で、例えば、1週間、2週間、4週間、1回の3週間、4週間、または5週間サイクルおきに、2回のサイクル、2ヶ月、3ヶ月、または5回以上のサイクルおきに測定され得る。ボルテゾミブまたはデキサメタゾンでの治療サイクルは、実施例、作用薬での治療についての出版物、または製品の添付文書において見つけられ得る。クエン酸イクサゾミブ(MLN9708)での治療サイクルは、米国国立衛生研究所(Bethesda,MD)が管理する臨床試験ウェブサイトで見つけられ得る。逆に、治療レジメンの投与を中止した後の進行性の疾患の発現を決定するために、マーカーの量は、任意または複数の時点で、例えば、最後の治療から1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、および/または6ヶ月後以上後に決定され得る。当業者は、マーカーの量を判定するために、様々な要素、例えば、治療の薬物動態、治療期間、治療の薬物動力、患者の年齢、障害の性質、または治療の作用機序に応じて1つまたは複数の時点を決定する。プロテアソーム阻害治療に感受性のあるマーカーの発現のベースラインまたは所定の基準と比較して負の方向に向かう傾向または量の減少は、治療に対する腫瘍の応答性の減少、例えば、耐性の増加を示す。治療成果を有するマーカーの発現のベースラインまたは所定の基準と比較して好ましい成果に向かう傾向は、治療レジメンの有用性または治療の継続的な利益を示す。
任意のマーカー、例えば、マーカー遺伝子またはマーカーの組み合わせ、例えば、本発明のマーカー遺伝子、またはその変異、ならびにこのマーカー、例えば、本発明のマーカー遺伝子と組み合わせた任意の既知のマーカーは、本発明の組成物、キット、および方法において使用され得る。概して、腫瘍細胞を含む試料中のマーカーの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量と、対照細胞中の同一のマーカーの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量との間の可能な限り大きい差のマーカーが選択される。この差は、マーカーの量を判定するための方法の検出限界と同程度に小さい場合もあるが、別の実施形態では、差は、少なくとも判定法の標準誤差よりも大きくあり得る。RNAまたはタンパク質量の場合、差は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、100、500、1000倍以上であり得る。「低い」RNAまたはタンパク質量は、全体平均に対する発現が腫瘍(例えば、血液学的腫瘍、例えば、骨髄腫)試料にわたって低いという意味であり得る。DNAの量、例えば、コピー数の場合、量は、0、1、2、3、4、5、6個以上のコピーである。欠失は、コピー数を0または1にさせ、増幅は、コピー数を2より多くする。差は、信頼レベル、例えば、0.05未満のp値、0.02未満のp値、0.01未満のp値、またはそれよりも低いp値によって限定され得る。
2つ以上のマーカー、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、または25セット以上のマーカー、例えば、NRASマーカーを含むマーカーのセットの測定は、治療成果を示す発現プロファイルまたは傾向を提供し得る。いくつかの実施形態において、マーカーセットは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、または25個以下のマーカーを含む。いくつかの実施形態において、マーカーセットは、複数の染色体遺伝子座、複数のマーカー遺伝子、または1つ以上のマーカー遺伝子(例えば、核酸およびタンパク質、ゲノムDNAおよびmRNA、または本明細書に記載のマーカーの様々な組み合わせ)の複数のマーカーを含む。マーカーセット中のマーカーの量の判定による治療成果の分析は、統計的方法、例えば、そのマーカーセット中のマーカーの量の治療成果の等級または傾向、例えば、それぞれのマーカーの測定結果の信号対雑音比またはハイブリダイゼーションの効率に寄与し得る変数を計上する加重投票法によって達成され得る。マーカーセット、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、または25セット以上のマーカーは、少なくとも1つの本明細書に記載のマーカーDNAまたはRNA、例えば、115247085と115259515の塩基対の染色体1p上のマーカー、塩基対25358180と25403854の塩基対の染色体12p上のマーカー、NRAS、KRAS、または前述のうちのいずれかの相補体を分析するために、1つのプライマー、プローブ、または複数のプライマーを含み得る。マーカーセット、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、または25個以上のマーカーセットは、少なくとも1つもしくは少なくとも2つ以上のマーカー、あるいは例えば、NRASおよび/またはKRASのマーカーの少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、もしくは25個以上の変異を検出するために、1つのプライマー、プローブ、または複数のプライマーを含み得る。別の実施形態では、マーカーセットは、野生型バージョンの変異領域を含む野生型NRAS核酸もしくはプローブもしくはプライマー、またはその相補体を含み得るか、あるいはNRASの変異領域、例えば、配列番号2のコドン12、コドン13、またはコドン61の配列の特定を支援することができる。選択されたマーカーセットは、本明細書に提供されるマーカーから構築され得るか、または本明細書に提供される方法および当技術分野で既知の類似の方法を用いてマーカーの中から選択され得る。本発明のアッセイで用いる新たなマーカーを限定するための1つの方法は、腫瘍細胞を含む試料中のDNAのコピー数をマーカー、例えば、マーカー遺伝子の発現(例えば、ベースラインからの倍率変化)の差と相関させる方法である。関係を判断するための有用な方法は、標準の統計的方法を用いて、決定係数r2を計算し、rの値を求めた後、ピアソンの積率相関係数を計算し、かつ/または最小二乗プロットを作成する方法である。相関関係は、マーカー、例えば、マーカー遺伝子の発現レベルに対するDNAのコピー数を分析し得る。遺伝子産物は、相関関係の結果(r2、例えば、この分析におけるデータの線形勾配)が、少なくとも0.1〜0.2、少なくとも0.3〜0.5、または少なくとも0.6〜0.8以上である場合、マーカーとして選択され得る。マーカーは、応答、TTP、または生存期間との正の相関関係によって変化し得る(すなわち、コピー数と同一の様式で発現レベルを変化させ得る、例えば、コピー数が減少するときに減少し得る)。コピー数との負の相関関係によって変化する(すなわち、コピー数レベルと反対の様式で発現レベルを変化させる、例えば、コピー数が減少するときに増加する)マーカーは、一貫性のない結果決定を提供する。
このアッセイで用いる新たなマーカーを限定するための別の方法は、試験薬での治療前および治療後に数名の対象における多数のマーカーをアッセイする方法である。発現結果は、前処理された試料と比較して、治療後に一定方向に大規模な変化を示すマーカーの特定を可能にする。反復測定線形回帰モデルを構築して、統計的に有意な変化または差を示す遺伝子を特定することができる。その後、これらの有意な遺伝子をランク付けするために、例えば、ベースライン対時間曲線からの変化下面積を計算することができる。これは、最大の統計的に有意な変化を示す遺伝子リストをもたらし得る。その後、いくつかのマーカーは、主成分分析、クラスタリング方法(例えば、K平均法、階層分析)、多変量分散分析(MANOVA)、または線形回帰技法等の方法を用いてともに1組に組み合わせられ得る。そのような遺伝子(または遺伝子群)をマーカーとして使用するために、ベースラインと2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、7、10倍以上の発現の差を示す遺伝子がマーカーセットに包含される。発現プロファイル、例えば、集計マーカーセットのベースラインまたは参照との発現レベルの差の複合は、例えば、マーカーの過半数、例えば、60%、70%、80%、90%、95%以上のマーカーが、特定の結果、例えば、ベースラインまたは参照との有意差を示す場合、またはより多くのマーカー、例えば、10%、20%、30%、40%より多くのマーカーが、他方の方向ではなく一方の方向に有意な結果を示す場合、傾向を示す。
本発明の組成物、キット、および方法が患者における治療成果を特徴付けるために使用される実施形態において、本発明のマーカーまたはマーカーセットは、有意な結果が試験薬で治療された少なくとも約20%、少なくとも約40%、60%、もしくは80%、または実質的にすべての患者において得られるように選択される。本発明のマーカーまたはマーカーセットは、約10%を超える陽性的中率(PPV)が一般集団のために得られるように選択され得、マーカーのさらなる信頼は、PPVが80%を超えるアッセイの特異性と関連するときに推測され得る。
治療薬
本発明のマーカーおよびマーカーセットは、本発明の1つもしくは複数のマーカーの少なくとも1つの特徴、例えば、組成、もしくは量の値または変化に基づいて、患者、例えば、癌患者、例えば、血液学的腫瘍(例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病)を有する患者における好ましい成果(例えば、治療薬に対する感受性)の可能性を判定するために使用され得る。本発明のマーカーおよびマーカーセットは、癌患者、例えば、多発性骨髄腫を有する患者における好ましい成果の可能性を判定する。この予測を用いて、癌治療を評価して、好ましい成果または好ましくない成果のいずれかを有することが予測される患者に最も好適な治療レジメンを設計することができる。
本発明の方法で用いる治療薬は、プロテアソーム阻害剤として既知の治療薬のクラスを含む。プロテアソーム阻害剤については、先の項で説明されている。具体的には、この方法を用いて、先の項で説明されたプロテアソーム阻害剤に対する患者の感受性を予測することができる。本方法において試験される作用薬は、単一の作用薬または作用薬の組み合わせであり得る。本発明の方法は、プロテアソーム阻害治療薬と他の作用薬またはさらなる作用薬、「組み合わせ作用薬」、例えば、化学療法剤からなる群から選択されるものとの組み合わせを含む。例えば、本方法を用いて、単一の化学療法剤、例えば、プロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸(例えば、MLN9708)もしくはペプチジルエポキシケトンが癌を治療するために使用され得るか、または1つ以上の作用薬がプロテアソーム阻害剤(例えば、MLN9708)と組み合わせて使用されるべきであるかを決定することができる。有用な組み合わせ作用薬は、異なる作用機序を有する作用薬、例えば、プロテアソーム阻害剤と組み合わせた抗有糸分裂薬またはアルキル化剤の使用を含み得る。プロテアソーム阻害剤については、先の項で説明されている。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、少なくとも1つの組み合わせ作用薬と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態において、組み合わせ作用薬は、グルココルチコイド剤である。本発明の方法は、プロテアソーム阻害治療とグルココルチコイド阻害治療および/または化学療法剤を含む他のもしくはさらなる作用薬の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、化学療法剤と組み合わせて投与される。「化学療法剤」は、増殖性細胞または組織の増殖を阻害する化学試薬を含むよう意図されており、この場合、そのような細胞または組織の増殖は望ましくない。化学療法剤、例えば、代謝拮抗剤、例えば、Ara AC、5−FU、およびメトトレキサート;抗有糸分裂剤、例えば、タキサン、ビンブラスチン、ならびにビンクリスチン;アルキル化剤、例えば、メルファラン、カルムスチン(BCNU)、およびナイトロジェンマスタード;トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、VW−26、トポテカン、およびブレオマイシン;鎖切断剤、例えば、ドキソルビシンおよびミトキサントロン(DHAD);トポイソメラーゼI阻害剤、例えば、トポテカンおよびイリノテカン;チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、ソラフェニブまたはエルロチニブ;血管新生阻害剤/免疫調節薬、例えば、サリドマイド、レナリドミドおよびポマリドマイド;架橋剤、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン、およびカルボプラチン(CBDCA);放射光および紫外線光は、当技術分野で周知であり(例えば、Gilman A.G.,et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th Ed.,Sec 12:1202−1263(1990)を参照のこと)、典型的には、腫瘍性疾患を治療するために使用される。一般に化学療法治療で用いられる化学療法剤の例は、以下の表2に列記される。
本方法において試験される作用薬は、単一の作用薬または作用薬の組み合わせであり得る。例えば、本方法を用いて、プロテアソーム阻害剤等の単一の化学療法剤が癌を治療するために使用され得るか、または2つ以上の作用薬の組み合わせがプロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブ)と組み合わせて使用され得るかを決定することができる。有用な組み合わせ作用薬は、異なる作用機序を有する作用薬、例えば、アルキル化剤およびプロテアソーム阻害剤と組み合わせた抗有糸分裂剤の使用を含み得る。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、少なくとも1つの組み合わせ作用薬と組み合わせて投与される。本発明の方法で用いるさらなる治療薬は、グルココルチコイドステロイドを含む治療薬の既知のクラスを含む。グルココルチコイド治療薬は、概して、少なくとも1つのグルココルチコイド剤(例えば、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレジソロン、プレドニゾン、またはトリアムシノロン)を含む。本発明のある適用において、本発明の方法で用いられる第2の作用薬は、グルココルチコイド剤である。多発性骨髄腫患者の治療ならびに他の癌治療で利用されるグルココルチコイドの一例は、デキサメタゾンである。いくつかの実施形態において、組み合わせ作用薬は、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、プレジソロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロンからなる群から選択されるグルココルチコイド剤である。
いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、RAS/RAF/MEK経路の阻害剤と組み合わせて投与され得る。いくつかの実施形態において、組み合わせ作用薬は、ソラフェニブ、チピファルニブ、およびセルメチニブからなる群から選択される。
本明細書に開示の作用薬は、皮内、皮下、経口、動脈内、または静脈内を含む任意の経路で投与され得る。一実施形態において、投与は、静脈内経路による。非経口投与は、ボーラスまたは輸注で提供され得る。
薬学的に許容される混合物中の本開示の化合物の濃度は、投与される化合物の用量、用いられる化合物(複数を含む)の薬物動態特性、および投与経路を含むいくつかの要素によって異なる。作用薬は、単回投与または繰り返し投与で投与され得る。治療薬は、患者の全般的な健康状態、ならびに選択された化合物(複数を含む)の製剤および投与経路を含むいくつかの要素に応じて、1日1回またはより高い頻度で投与され得る。
検出方法
予後アッセイの一般的原理は、マーカーおよびプローブを含有し得る試料または反応混合物を、適切な条件下でマーカーおよびプローブを相互作用および結合させるのに十分な時間調製し、故に、除去され、かつ/または反応混合物中で検出され得る複合体を形成することを含む。これらのアッセイを様々な方法で実施することができる。
例えば、そのようなアッセイを実施するための1つの方法は、マーカーまたはプローブを基質とも称される固相支持体上に係留することと、反応の最後に固相上に係留された標的マーカー/プローブ複合体を検出することとを含む。そのような方法の一実施形態において、マーカーの存在および/または濃度についてアッセイされる対象由来の試料は、担体または固相支持体上に係留され得る。別の実施形態では、プローブが固相に係留され得、かつ対象由来の試料がアッセイの非係留成分として反応することを許され得るといった逆の状況も可能である。そのようないくつかの実施形態の一例として、試料の発現分析のために係留された予測マーカーまたはマーカーセットを含有するアレイまたはチップの使用が挙げられる。
アッセイ成分を固相に係留するための多くの確立された方法が存在する。これらには、制限なく、ビオチンおよびストレプトアビジンの共役によって固定化されるマーカーまたはプローブ分子が含まれる。そのようなビオチン化アッセイ成分は、当技術分野で既知の技法(例えば、ビオチン化キット(Pierce Chemicals、Rockford,IL))を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製され、ストレプトアビジンをコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化され得る。ある実施形態において、固定化アッセイ成分を有する表面は、事前に調製され、保存され得る。
そのようなアッセイに好適な他の担体または固相支持体には、マーカーまたはプローブが属する分子のクラスに結合することができる任意の物質が含まれる。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、およびマグネタイトが含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、抗体または抗原への結合に好適な多くの他の担体を理解しており、そのような支持体を本発明での使用に適応させることができる。例えば、細胞から単離されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で泳動し、ニトロセルロース等の固相支持体上で固定化され得る。その後、この支持体は、好適な緩衝液で洗浄され、続いて、検出可能に標識された抗体で処理され得る。その後、固相支持体は、2回目の緩衝液での洗浄が行われ、非結合抗体を除去し得る。その後、固体支持体上の非結合標識の量が従来の方法で検出され得る。
上述の手法でアッセイを実施するために、非固定化成分は、第2の成分が係留された固相に添加される。反応が完了した後、非複合成分は、任意の複合体が固相上に固定化されたまま留まるような条件下で除去され得る(例えば、洗浄によって)。固相に係留されたマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書に概説されるいくつかの方法で達成され得る。
いくつかの実施形態において、プローブが非係留アッセイ成分であるとき、このプローブは、本明細書で論じられ、かつ当業者に周知の検出可能な標識を用いて、直接的または間接的のいずれかで、アッセイの検出および読み出しのために標識され得る。プローブ(例えば、核酸または抗体)に関して、「標識」という用語は、検出可能な物質をプローブに結合(すなわち、物理的に連結)させることによるプローブの直接標識、ならびに直接標識される別の試薬と反応させることによるプローブの間接標識を包含するよう意図される。間接標識の一例として、蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出が挙げられる。例えば、蛍光エネルギー移動の技法(FET、例えば、Lakowicz et al.の米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulos,et al.の米国特許第4,868,103号を参照のこと)を利用して、いずれの成分(マーカーまたはプローブ)もさらに操作または標識することなくマーカー/プローブ複合体形成を直接検出することも可能である。第1の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光での励起時にその放射された蛍光エネルギーが第2の「受容体」分子上の蛍光標識によって吸収され、次いで、吸収したエネルギーのため蛍光を発することができるように選択される。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、単にトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用し得る。「受容体」分子標識が「ドナー」分子標識と異なり得るように異なる波長の光を放射する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率が分子を分離する距離に関連しているため、分子間の空間的関係が判定され得る。結合が分子間で生じるといった状況下において、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光放射は最大であるべきである。FET結合事象は、当技術分野で周知の標準の蛍光検出手段によって(例えば、蛍光光度計を用いて)好都合に測定され得る。
別の実施形態では、マーカーを認識するプローブの能力の決定は、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)(例えば、Sjolander,S.and Urbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345、およびSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705)等の技術を利用して、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)も標識することなく達成され得る。本明細書で使用されるとき、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、相互作用物(例えば、BIACORE(商標))のうちのいずれも標識することなく生体特異的相互作用をリアルタイムで試験する技術である。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)は、表面付近の光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)をもたらし、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用され得る検出可能なシグナルをもたらす。
あるいは、別の実施形態では、類似の診断および予後アッセイは、液相中の溶質としてマーカーおよびプローブを用いて実施され得る。そのようなアッセイにおいて、複合マーカーおよびプローブは、分画遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動、および免疫沈降を含むが、これらに限定されないいくつかの標準の技法のうちのいずれかによって非複合成分から分離される。分画遠心分離において、マーカー/プローブ複合体は、それらの異なる大きさおよび密度に基づいて複合体の沈降平衡が異なるため、一連の遠心分離ステップによって非複合アッセイ成分から分離され得る(例えば、Rivas,G.and Minton,A.P.(1993)Trends Biochem Sci.18:284−7を参照のこと)。標準のクロマトグラフ技法も複合分子を非複合分子から分離するために利用され得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、大きさに基づいて、かつカラム形式の適切なゲル濾過樹脂を利用して分子を分離し、例えば、比較的大きい複合体は、比較的小さい非複合成分から分離され得る。同様に、非複合成分と比較したマーカー/プローブ複合体の比較的異なる電荷特性は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂を利用して複合体と非複合成分を区別するために利用され得る。そのような樹脂およびクロマトグラフ技法は、当業者に周知である(例えば、Heegaard,N.H.(1998)J.Mol.Recognit.11:141−8、Hage,D.S.and Tweed,S.A.(1997)J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.Appl.699:499−525を参照のこと)。ゲル電気泳動は、複合アッセイ成分を非結合成分から分離するためにも用いられ得る(例えば、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,New York,1987−1999を参照のこと)。この技法において、タンパク質または核酸複合体は、例えば大きさまたは電荷に基づいて分離される。いくつかの実施形態において、還元剤の不在下における非変性ゲルマトリックス物質および条件は、電気泳動プロセス中に結合相互作用を維持するために使用される。特定のアッセイおよびその成分に適切な条件は、当業者に周知である。
単離mRNAは、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応およびTAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems(Foster City,CA))、ならびにプローブアレイが含まれるが、これらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイで使用され得る。mRNAレベルを検出するための1つの診断方法は、単離mRNAを検出される遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズし得る核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。マーカー遺伝子の変異を含む核酸は、プローブまたはプライマーとして使用され得る。本発明の核酸プローブまたはプライマーは、一本鎖DNA(例えば、オリゴヌクレオチド)、二本鎖DNA(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド)、またはRNAであり得る。本発明のプライマーは、目的とする領域に隣接した核酸配列にハイブリダイズし、かつ伸長するか、または目的とする領域を被覆する核酸を指す。核酸プローブは、例えば、全長cDNA、またはその一部、例えば、マーカーの少なくとも7、15、20、25、30、50、75、100、125、150、175、200、250、または500個以上の連続したヌクレオチドを有し、かつストリンジェントな条件下で本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。核酸プローブの正確な長さは、当業者が日常的に考慮および実施する多くの要素に依存する。本発明の核酸プローブは、当技術分野で既知の任意の好適な方法論を用いて化学合成によって調製され得るか、組換え技術によって産生され得るか、または例えば制限消化によって生体試料から得られ得る。本発明の診断アッセイにおける使用に好適な他のプローブが本明細書に記載される。プローブは、それに結合される標識基、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、酵素補助因子、ハプテン、配列タグ、タンパク質、または抗体を含み得る。核酸は、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で修飾され得る。核酸標識の一例は、SUPER(商標)修飾塩基技術(Nanogen(Bothell,WA)、米国特許第7,045,610号を参照のこと)を用いて組み込まれる。発現レベルは、例えば増幅DNAレベルを測定した後の一般的な核酸レベルとして(例えば、DNA挿入染色、例えば、SYBRグリーン染色(Qiagen Inc.(Valencia,CA))を用いて)、または特異的核酸として(例えば、プローブが標識された状態のプローブに基づく設計を用いて)測定され得る。TAQMAN(登録商標)アッセイ形式は、プローブに基づく設計を用いて、特異性および信号対雑音比を増加させ得る。
そのようなプライマーまたはプローブは、例えば、対象由来の細胞の試料中で転写された核酸分子の量を測定することによって、例えば、転写物、mRNAレベルを検出することによって、またはタンパク質をコードする遺伝子が変異もしくは欠失したかを決定することによって、タンパク質を発現する細胞または組織を特定するための診断試験キットの一部として使用され得る。RNAまたはcDNAの核酸プローブとのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現されることを示し得る。本発明は、遺伝コードの縮重のため、マーカータンパク質(例えば、配列番号3または6の配列を有するタンパク質)をコードし、したがって、同一のタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なる核酸分子を検出することをさらに包含する。当業者であれば、アミノ酸配列の変化につながるDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在し得ることを理解する。そのような遺伝的多型は、天然の対立遺伝子変異のため、集団内の個体の間に存在し得る。対立遺伝子は、所与の遺伝子座で選択的に生じる遺伝子群のうちの1つである。そのような天然の対立遺伝子変異は、典型的には、所与の遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の不一致をもたらし得る。代替の対立遺伝子は、いくつかの異なる個体、例えば、個体由来の正常な試料中の目的とする遺伝子を配列決定することによって特定され得る。これは、様々な個体の同一の遺伝子座を特定するために、ハイブリダイゼーションプローブを用いて容易に実行され得る。天然の対立遺伝子変異の結果であり、かつ機能活性を変化させないありとあらゆるそのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型または変異の検出は、本発明の範囲内に収まるよう意図される。加えて、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型も存在し得、その遺伝子の全体の発現レベルに影響を与え得ることが理解される(例えば、制御または分解に影響を与えることによって)。
本明細書で使用されるとき、「ハイブリダイズ」という用語は、互いに大いに同一または相同であるヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズされたまま留まるといったハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明するよう意図される。いくつかの実施形態において、条件は、互いに少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、90%、または95%同一である配列がその後の増幅および/または検出のために互いにハイブリダイズされたまま留まるような条件である。ストリンジェントな条件は、関与するヌクレオチド配列の長さによって異なるが、当業者に既知であり、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley & Sons,Inc.(1995)の第2項、第4項、および第6項の教示に基づいて見い出されるか、または決定され得る。さらなるストリンジェントな条件およびそのような条件を決定するための式は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989),chapters 7,9,and11)において見い出され得る。少なくとも10塩基対長であるハイブリッドに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例として、約65〜70℃での4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション(または約42〜50℃での4×SSCと50%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーション)、その後、約65〜70℃での1×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。そのようなハイブリッドに対する高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例として、約65〜70℃での1×SSCにおけるハイブリダイゼーション(または約42〜50℃での1×SSCと50%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーション)、その後、約65〜70℃での0.3×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。そのようなハイブリッドに対するストリンジェンシーが低下したハイブリダイゼーション条件の非限定的な例として、約50〜60℃での4×SSCにおけるハイブリダイゼーション(またはあるいは、約40〜45℃での6×SSCと50%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーション)、その後、約50〜60℃での2×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。上に列挙される値、例えば、65〜70℃または42〜50℃の中間範囲は、本発明によって包含されるようにも意図される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション、その後、50〜65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDS中での1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション緩衝液のさらなる例は、1M NaCl、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5)、0.5%サルコシン酸ナトリウム、および30%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーションである。ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液中のSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA(pH7.4)である)は、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)で代用されてもよく、洗浄は、ハイブリダイゼーションが完了した後、毎回15分間行われる。50未満の塩基対長であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くなければならず、式中、Tmは、以下の等式に従って決定される。18塩基対長未満のハイブリッドの場合、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。18〜49塩基対長のハイブリッドの場合、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、式中、Nは、ハイブリッド中の塩基の数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝液(1×SSCの[Na+]=0.165M)中のナトリウムイオンの濃度である。当業者であれば、さらなる試薬がハイブリダイゼーションおよび/または洗浄緩衝液に添加されて、核酸分子の膜、例えば、遮断薬(例えば、BSAまたはサケまたはニシン精子担体DNA)、洗剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、Ficoll、ポリビニルピロリドン(PVP)等を含むが、これらに限定されないニトロセルロースまたはナイロン膜への非特異的なハイブリダイゼーションを減少させ得ることも理解する。特にナイロン膜を用いるとき、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる非限定的な例は、約65℃での0.25〜0.5M NaH2PO4および7%SDSにおけるハイブリダイゼーション、その後、65℃での0.02M NaH2PO4および1%SDS中での1回以上の洗浄(またはあるいは、0.2XSSC、1%SDS)であり、例えば、Church and Gilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995を参照されたい。プライマーまたは核酸プローブは、検出方法において単独で使用され得るか、またはプライマーは、検出方法において少なくとも1つの他のプライマーまたは核酸プローブとともに使用され得る。プライマーは、核酸の少なくとも一部を増幅するためにも使用され得る。いくつかの実施形態において、変異部位を含む核酸マーカーの一部が増幅される。本発明の核酸プローブは、目的とする領域にハイブリダイズし、かつさらに伸長されない核酸を指す。例えば、核酸プローブは、バイオマーカーの変異体領域に特異的にハイブリダイズし、かつ患者のDNAもしくは形成されるハイブリッドの種類にハイブリダイズすることによって、またはハイブリダイズすることなく、バイオマーカーの変異の存在もしくは正体またはマーカー活性の量を示し得る核酸である。
1つの形式において、RNAは、例えば、単離RNAをアガロースゲル上で泳動させ、かつRNAをゲルからニトロセルロース等の膜に移動させることによって、固体表面上に固定化され、プローブと接触する。代替の形式において、核酸プローブ(複数を含む)は、固体表面上に固定化され、RNAを、治療成果を示す少なくとも1つのマーカーを含むマーカーセットを用いて、例えば、AFFYMETRIX(登録商標)遺伝子チップアレイもしくはSNPチップ(Santa Clara,CA)またはカスタマイズされたアレイにおいてプローブ(複数を含む)と接触させる。当業者であれば、本発明のマーカーの量の検出で用いるための既知のRNAおよびDNA検出方法を容易に適応させることができる。例えば、高密度マイクロアレイまたは分岐鎖DNAアッセイは、先の項に記載されるように腫瘍細胞を単離するよう修飾された試料等の試料中のより高い濃度の腫瘍細胞から恩恵を受け得る。関連実施形態において、試料から得られる転写ポリヌクレオチドの混合物は、マーカー核酸の少なくとも一部(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500個以上のヌクレオチド残基)と相補的であるか、または相同であるそれに固定されたポリヌクレオチドを有する基質と接触する。マーカーと相補的であるか、または相同であるポリヌクレオチドは、基質上で差次的に検出可能であり(例えば、異なる発色団またはフルオロフォアを用いて検出可能であるか、または異なる選択された位置に固定され)、その後、単一の基質(例えば、選択された位置に固定されるポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を同時に用いて複数のマーカーの発現レベルが判定され得る。いくつかの実施形態において、ある核酸とのハイブリダイゼーションから別の核酸とのハイブリダイゼーションを含むマーカー発現を判定する方法が用いられるとき、ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行われ得る。
試料中の本発明のマーカーに対応するRNAの量を決定するための代替の方法は、例えば、RT−PCR(Mullisの米国特許第4,683,202号(1987)、に記載の実験的実施形態)、リガーゼ連鎖反応(BaranyのProc.Natl.Acad.Sci.USA,88:189−193(1991))、自己維持配列複製(Guatelli et al.のProc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878(1990))、転写増幅システム(Kwoh et al.のProc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177(1989))、Q−βレプリカーゼ(Lizardi et al.のBio/Technology 6:1197(1988))、ローリングサークル複製(Lizardi et al.の米国特許第5,854,033号)、または当業者に周知の技法を用いた増幅分子の検出が続く任意の他の核酸増幅方法による核酸増幅プロセスを含む。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数だけ存在する場合にそのような分子の検出に特に有用である。本明細書で使用されるとき、増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域にアニーリングし(それぞれ、プラス鎖およびマイナス鎖、または逆もまた同様)、かつその間に短い領域を含有することができる一対の核酸分子として定義される。概して、増幅プライマーは、約10〜約30ヌクレオチド長であり、約50〜約200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下で適切な試薬を用いて、そのようなプライマーは、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
in situ方法の場合、RNAは、検出前に細胞から単離される必要はない。そのような方法において、細胞または組織試料は、既知の組織学的方法を用いて調製/処理される。その後、試料は、支持体、典型的には、スライドガラス上に固定化され、次いで、マーカーをコードするRNAにハイブリダイズし得るプローブと接触する。
本発明の別の実施形態では、マーカーに対応するポリペプチドが検出される。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドを検出するための作用薬は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合することができる抗体である。関連実施形態において、抗体は、検出可能な標識を有する。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。無傷抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)が使用され得る。
様々な形式を用いて、試料が所与の抗体に結合するタンパク質を含有するかを決定することができる。そのような形式の例として、免疫組織化学(IHC)、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析、および酵素免疫吸着法(ELISA)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、腫瘍細胞が本発明のマーカーを発現するかの決定に用いるための既知のタンパク質/抗体検出方法を容易に適応させることができる。当業者であれば、腫瘍細胞中のタンパク質の量を定量化するか、または腫瘍細胞が試料中の非腫瘍細胞よりも多くのタンパク質、正常な量のタンパク質、もしくは少ないタンパク質を発現するかを決定するためのそのような方法を容易に適応させることもできる。
マーカーに対応するポリペプチドのレベルを決定するための別の方法は、質量分析である。例えば、無傷タンパク質またはペプチド、例えば、トリプシンペプチドは、1つ以上のポリペプチドマーカーを含有する試料、例えば、血液試料、リンパ試料、または他の試料から分析され得る。この方法は、この方法の感受性を増加させるために、豊富なタンパク質、例えば、血清アルブミンの量を減少させるように試料を処理することをさらに含み得る。例えば、液体クロマトグラフィーを用いて試料を分画することができ、したがって、試料の部分を質量分析によって別々に分析することができる。これらのステップは、別々のシステムまたは組み合わせた液体クロマトグラフィー/質量分析システム(LC/MS、例えば、Liao,et al.(2004)Arthritis Rheum.50:3792−3803)で行われ得る。質量分析システムは、タンデム(MS/MS)モードでもあり得る。タンパク質またはペプチド混合物の電荷状態分布は、1回または複数回の走査をさせて得られ、例えばLC/MSシステムにおいて保持時間および質量対電荷比(m/z)を用いた統計的方法によって分析されて、プロテアソーム阻害治療に応答するか、または応答しない患者由来の試料中の統計的に有意なレベルで差次的に発現されたタンパク質を特定することができる。使用され得る質量分析計の例には、イオントラップシステム(ThermoFinnigan(San Jose,CA))または四重極飛行時間型質量分析計(Applied Biosystems(Foster City,CA))がある。この方法は、例えば、飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法でのマトリックス支援レーザー脱離イオン化におけるペプチド質量フィンガープリントのステップをさらに含み得る。この方法は、トリプシンペプチドのうちの1つ以上を配列決定するステップをさらに含み得る。この方法の結果を用いて、質量分析トリプシンペプチドm/z基準ピークに基づいて、例えば、National Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD)またはSwiss Institute for Bioinformatics(Geneva,Switzerland)が管理する一次配列データベースからタンパク質を特定することができる。
電子装置可読アレイ
本発明の方法とともに用いるための少なくとも1つの本発明の予測マーカーを含む可読アレイを含む電子装置も企図される。本明細書で使用されるとき、「電子装置可読媒体」とは、電子装置によって読み取られ、かつ直接アクセスされ得るデータまたは情報を記憶、保持、または含有する任意の好適な媒体を指す。本明細書で使用されるとき、「電子装置」という用語は、データまたは情報を記憶するように構成または適合される任意の好適なコンピューティングもしくは処理装置または他のデバイスを含むよう意図される。本発明との使用および記録された情報の監視に好適な電子装置の例として、スタンドアロンのコンピューティング装置;ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)インターネット、インターネット、およびエクストラネットを含むネットワーク;個人用携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ポケベル等電子器具;ならびにローカルおよび分散処理システムが挙げられる。本明細書で使用されるとき、「記録される」とは、電子装置可読媒体に情報を記憶またはコード化するためのプロセスを指す。当業者であれば、既知の媒体に情報を記録して、本発明のマーカーを含む製品を生産するための現在既知の方法のうちのいずれかを容易に適応させることができる。
例えば、マイクロアレイシステムが周知であり、試料を判定する(例えば、遺伝子発現の判定(例えば、DNA検出、RNA検出、タンパク質検出)または代謝産物産生の判定)ために当技術分野で使用されている。本発明に従って用いるマイクロアレイは、本明細書に記載の治療レジメンに対する応答および/または非応答を特徴とする本発明の予測マーカー(複数を含む)の1つ以上のプローブを含む。一実施形態において、マイクロアレイは、その変異状態が応答を示すマーカー、その変異状態が長期の無増悪期間を示すマーカー、およびその変異状態が患者間の長期生存者を示すマーカーからなる群から選択されるマーカーのうちの1つ以上に対応する1つ以上のプローブを含む。いくつかの異なるマイクロアレイ構成およびそれらを産生するための方法は当業者に既知であり、例えば、米国特許第5,242,974号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,445,934号、同第5,556,752号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,472,672号、同第5,527,681号、同第5,529,756号、同第5,545,531号、同第5,554,501号、同第5,561,071号、同第5,571,639号、同第5,593,839号、同第5,624,711号、同第5,700,637号、同第5,744,305号、同第5,770,456号、同第5,770,722号、同第5,837,832号、同第5,856,101号、同第5,874,219号、同第5,885,837号、同第5,919,523号、同第5981185号、同第6,022,963号、同第6,077,674号、同第6,156,501号、同第6261776号、同第6346413号、同第6440677号、同第6451536号、同第6576424号、同第6610482号、同第5,143,854号、同第5,288,644号、同第5,324,633号、同第5,432,049号、同第5,470,710号、同第5,492,806号、同第5,503,980号、同第5,510,270号、同第5,525,464号、同第5,547,839号、同第5,580,732号、同第5,661,028号、同第5,848,659号、および同第5,874,219号、Shena,et al.(1998),Tibtech 16:301、Duggan et al.(1999)Nat.Genet.21:10、Bowtell et al.(1999)Nat.Genet.21:25、Lipshutz et al.(1999)Nature Genet.21:20−24,1999、Blanchard,et al.(1996)Biosensors and Bioelectronics,11:687−90、Maskos,et al.(1993)Nucleic Acids Res.21:4663−69、Hughes,et al.(2001)Nat.Biotechol.19:342,2001に開示されており、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。組織マイクロアレイは、タンパク質特定のために使用され得る(Hans et al.(2004)Blood 103:275−282を参照のこと)。ファージ・エピトープマイクロアレイは、1つまたは複数のタンパク質が患者の自己抗体を誘導するかに基づいて試料中の1つ以上のタンパク質を特定するために使用され得る(Bradford et al.(2006)Urol.Oncol.24:237−242)。
したがって、マイクロアレイは、例えば、野生型マーカー遺伝子、正常な対立遺伝子変異形、およびマーカー遺伝子の変異を特定するために、本明細書で特定される1つ以上のマーカー、例えば、治療成果を示すマーカーに対応する1つ以上のプローブを含む。マイクロアレイは、治療成果を示す、例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも75個、もしくは少なくとも100個のバイオマーカーおよび/またはその変異に対応するプローブを含み得る。マイクロアレイは、本明細書に記載の1つ以上のバイオマーカーに対応するプローブを含み得る。なおさらに、マイクロアレイは、本明細書に記載され、かつ本明細書に記載の方法に従って選択および編集され得る完全なマーカーセットを含み得る。このマイクロアレイを用いて、アレイ中の1つ以上の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現をアッセイすることができる。一例において、アレイを用いて、試料中の2つ以上の予測マーカーまたはマーカーセット発現をアッセイして、アレイ中のマーカーの発現プロファイルを解明することができる。この様式において、最大約44,000個のマーカーを発現について同時にアッセイすることができる。これは、1つ以上の試料において特異的に発現される一連のマーカーを示す発現プロファイルが開発されることを可能にする。なおさらに、これは、治療成果を判定する発現プロファイルが開発されることを可能にする。
アレイは、正常および異常な(例えば、試料、例えば、腫瘍)細胞中の1つ以上のマーカーの差次的発現パターンの解明にも有用である。これは、患者の治療成果の特定を容易にするためのツールとしての機能を果たし得る一連のマーカーを提供する。さらに、アレイは、参照発現レベルについての参照マーカーの発現の解明に有用である。別の例において、アレイを用いて、アレイ中の1つ以上のマーカーの発現の経時変化を監視することができる。
そのような定性的決定に加えて、本発明は、マーカー発現の定量化を可能にする。したがって、予測マーカーは、試料中のマーカーの量によるマーカーセットまたは成果の指標に基づいてグループ分けされ得る。これは、例えば、本明細書に提供される方法に従う量のスコア化に基づいて試料の成果を解明する際に有用である。
アレイは、同一の細胞または異なる細胞中の他の予測マーカーの発現へのマーカーの発現の影響の解明にも有用である。これは、例えば、患者が好ましくない成果を有することが予測される場合、治療的介入に代替分子標的の選択を提供する。
試薬およびキット
本発明は、試料(例えば、骨髄試料、腫瘍生検、または参照試料)中の本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットも包含する。そのようなキットを用いて、治療成果を判定する、例えば、対象が、例えばプロテアソーム阻害剤での治療後に、好ましい成果を有し得るかを決定することができる。例えば、キットは、本発明のマーカーに対応するゲノムDNAセグメント、ポリペプチド、もしくは転写RNA、または生体試料中のマーカー遺伝子の変異を検出することができる標識化合物もしくは作用薬、および試料中のゲノムDNAセグメント、ポリペプチド、またはRNAの量を決定するための手段を含み得る。マーカータンパク質への結合に好適な試薬は、抗体、抗体誘導体、抗体断片等を含む。マーカー核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、スプライシングされたmRNA、cDNA等)への結合に好適な試薬は、相補的核酸を含む。キットは、アッセイされ、試験試料と比較され得る対照もしくは参照試料または一連の対照もしくは参照試料も含有し得る。例えば、キットは、例えば腫瘍を有しない対象由来の試料または時点または参照ゲノム間のアッセイを標準化するために、例えば、マーカーの2倍体コピー数ベースラインまたは参照発現レベルを確立するために、例えば本明細書に記載の1つ以上のマーカーもしくは変異、または参照マーカー、例えば、ハウスキーピングマーカーを含む正の対照試料を有し得る。一例として、キットは、相補的核酸のアニーリング、または抗体とそれが特異的に結合するタンパク質および1つ以上の試料区画の結合に好適な流体(例えば、緩衝液)を含み得る。本発明のキットは、任意に、本発明の方法の実行に有用なさらなる成分、例えば、試料収集容器、例えば、管と、任意に、例えば、サンプリング時と分析時との間に時間的または不利な保存および取扱条件が存在し得る場合、検出されるマーカーの量を最適化するための手段とを含み得る。例えば、キットは、上述の試料中の腫瘍細胞の数を増加させるための手段、緩衝剤、防腐剤、安定剤、または細胞物質もしくはプローブを調製するためのさらなる試薬を含有し得、検出可能な標識を、単独で、または提供されるプローブ(複数を含む)と接合した状態で、または提供されるプローブ(複数を含む)内に組み込まれた状態で含有し得る。例示の一実施形態において、試料収集容器を含むキットは、例えば、抗凝血剤および/または安定剤(上述のものまたは当業者に既知のもの)を含む管を含み得る。キットは、検出可能な標識(例えば、酵素または基質)の検出に必要な成分をさらに含み得る。マーカーセットの場合、キットは、バイオマーカーの検出で用いるマーカーセットアレイまたはチップを含み得る。キットは、キットを用いて得られた結果を解釈するための説明書も含み得る。キットは、本明細書に記載の1つ以上のバイオマーカー、例えば、2、3、4、5つ以上のバイオマーカーを検出するための試薬を含有し得る。
一実施形態において、キットは、少なくとも1つのバイオマーカー、例えば、治療成果を示すマーカー(例えば、プロテアソーム阻害剤での治療時に)を検出するためのプローブを含む。例示の実施形態において、キットは、配列番号1、2、4、5、または115247085と115259515の塩基対の染色体1pの配列、25358180と25403854の塩基対の染色体12pの配列、または前述のうちのいずれかもしくは配列番号3および/もしくは6の相補体からなる群から選択されるマーカー遺伝子を検出するための核酸プローブを含む。いくつかの実施形態において、キットは、NRASおよびKRASからなる群から選択されるマーカーを検出するためのプローブを含む。いくつかの実施形態において、キットは、NRASおよびKRASからなる群からの2つ以上のマーカーを含むマーカーセットを検出するためのプローブを含む。別の実施形態では、キットは、血液学的癌試料中のNRASを検出するためのプローブを含む。関連実施形態において、キットは、配列番号1、2、4、および5からなる群から選択される核酸配列(例えば、その断片、変異体、もしくは変異形(例えば、相同もしくは相補的))を含むか、またはそれから得られる核酸プローブを含む。キットは、配列番号2のコドン12、コドン13、および/もしくはコドン61、または配列番号1中の類似配列における変異の存在を特定するための試薬を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも2つのマーカーを検出するための試薬、例えば、プローブ、例えば、核酸プローブまたはタンパク質プローブ、またはそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの試薬は、核酸試薬である。核酸プローブを含むキット、例えば、オリゴヌクレオチドベースのキットの場合、キットは、例えば、基質に任意に固定される、本発明のマーカーに対応する核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(標識または非標識のもの)等の1つ以上の核酸試薬を含み得、基質、一対のPCRプライマー、本発明のマーカーに対応する核酸分子の増幅に有用なもの、分子ビーコンプローブ、本発明のマーカーに対応する少なくとも2つの核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマーカーセット等に結合されない標識オリゴヌクレオチドを含み得る。キットは、RNA安定剤を含有し得る。
あるいは、キットは、配列番号3の12番目のグリシン残基、13番目のグリシン残基、および/もしくは61番目のグルタミン残基が存在するか、または異なるアミノ酸であるかを決定するための試薬を含み得る。タンパク質プローブを含むキット、例えば、抗体ベースのキットの場合、キットは、例えば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に結合される)と、任意に、(2)ポリペプチドまたは第1の抗体のいずれかに結合し、かつ検出可能な標識に接合される第2の異なる抗体とを含み得る。キットは、タンパク質安定剤を含有し得る。キットは、試料からプローブまでの非バイオマーカー物質の非特異的結合の量を減少させるための試薬を含有し得る。試薬の例として、非イオン性洗剤、非特異的タンパク質含有溶液、例えば、アルブミンもしくはカゼインを含有する溶液、または当業者に既知の他の物質が挙げられる。
いくつかの実施形態において、キットは、腫瘍サブタイプを試験するための少なくとも1つの試薬を含み得る。いくつかの実施形態において、キットは、血液学的腫瘍がt(4;14)転座を有するかを決定するための少なくとも1つの試薬を含み得る。
本発明は、検出可能な物質に接合される本発明の抗体を含有するキットおよび使用説明書も提供する。本発明のさらに別の態様は、本発明のプローブおよび薬学的に許容される担体を含む診断用組成物である。一実施形態において、診断用組成物は、本発明の抗体、検出可能な部分、および薬学的に許容される担体を含有する。
抗体
本発明の予測マーカーに対応する単離されたポリペプチド、またはその断片もしくは変異体は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製のための標準の技法を用いて抗体を生成するための免疫原として使用され得る。例えば、免疫原は、典型的には、ウサギ、ヤギ、マウス、もしくは他の哺乳動物、または脊椎動物等の好適な(すなわち、免疫適格)対象を免疫化することによって抗体を調製するために使用される。なおさらなる態様において、本発明は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、この抗体または断片は、本発明のアミノ酸配列、本発明のcDNAによってコードされるアミノ酸配列、本発明のアミノ酸配列の少なくとも8、10、12、15、20、または25個のアミノ酸残基の断片、本発明のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列(パーセント同一性は、PAM120重量残基表、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を有するGCGソフトウェアパッケージのALIGNプログラムを用いて決定される)、および45°Cの6×SSCのハイブリダイゼーションならびに65°Cの0.2×SSCおよび0.1%SDS中での洗浄の条件下で本発明の核酸分子からなる核酸分子にハイブリダイズする核酸分子またはその相補体によってコードされるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。免疫原として用いるNRAS断片は、配列番号3のアミノ酸12、アミノ酸13、またはアミノ酸61を含み得る。モノクローナル抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、および/または非ヒト抗体であり得る。適切な免疫原性調製物は、例えば、組換え発現されたか、または化学合成されたポリペプチドを含有し得る。この調製物は、フロイント完全もしくは不完全アジュバント等のアジュバント、または同様の免疫刺激剤をさらに含み得る。
ヒト抗体を作製するための方法は、当技術分野で既知である。ヒト抗体を作製するための1つの方法は、トランスジェニックマウス等のトランスジェニック動物の使用を用いる。これらのトランスジェニック動物は、それら自身のゲノムに挿入されるゲノムを産生するヒト抗体のかなりの部分を含有し、動物自身の内因性抗体産生は、抗体の産生を欠損させる。そのようなトランスジェニック動物を作製するための方法は、当技術分野で既知である。そのようなトランスジェニック動物は、XENOMOUSE(商標)技術を用いて、または「ミニ遺伝子座(minilocus)」手法を用いて作製され得る。XENOMICE(商標)を作製するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、および同第6,075,181号に記載されている。「ミニ遺伝子座」手法を用いてトランスジェニック動物を作製するための方法は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、および同第5,625,825号に記載されている(国際公開第WO93/12227号も参照のこと)。
抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、本発明のポリペプチド等の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子、例えば、本発明のポリペプチドのエピトープを含む。本発明の所与のポリペプチドに特異的に結合する分子は、そのポリペプチドに結合するが、試料、例えば、ポリペプチドを自然に含有する生体試料中の他の分子には実質的に結合しない分子である。例えば、抗原結合断片、ならびに上述の抗体に由来する全長単量体、二量体、または三量体ポリペプチドは、それら自体有用である。この種の有用な抗体ホモログは、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature 341:544−546(1989))、(vii)VHHドメインからなる単一ドメイン機能的重鎖抗体(ナノボディとして知られている)(例えば、Cortez−Retamozo,et al.,Cancer Res.64:2853−2857(2004)およびそれに引用される参考文献を参照のこと)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、例えば、抗原結合断片を提供するのに十分なフレームワークを有する1つ以上の単離されたCDRを含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHが別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組換え方法を用いて、それらをVLおよびVH領域対が一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている)を形成する単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって結合され得る(例えば、Bird et al.Science 242:423−426(1988)、およびHuston et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988)を参照のこと)。そのような本鎖抗体は、抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含されるようにも意図される。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技法を用いて得られ、この断片は、無傷抗体と同一の様式で有用性についてスクリーニングされる。Fv、F(ab’)2、およびFab等の抗体断片は、無傷タンパク質の切断、例えば、プロテアーゼまたは化学切断によって調製され得る。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。前述のうちのいずれかの合成および遺伝子操作された変異形(米国特許第6,331,415号を参照のこと)も本発明によって企図される。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、従来のマウスモノクローナル抗体方法論、例えば、標準の体細胞ハイブリダイゼーション技法(Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975))、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al.,1983,Immunol.Today 4:72を参照のこと)、EBVハイブリドーマ技法(Cole et al.,pp.77−96 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapyy,Alan R.Liss,Inc.,1985を参照のこと)、またはトリオーマ技法を含む様々な技法によって産生され得る。概して、Harlow,E.and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、およびCurrent Protocols in Immunology,Coligan et al.ed.,John Wiley & Sons,New York,1994を参照されたい。診断的適用の場合、抗体は、例えば、マウス、ラット、またはウサギにおいて生成されるモノクローナル抗体であり得る。さらに、生体内適用で使用する場合、本発明の抗体は、ヒトまたはヒト化抗体であり得る。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準のELISAアッセイを用いて、目的とするポリペプチドに結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
所望の場合、抗体分子は、対象から(例えば、対象の血液または血清から)収集または単離され、タンパク質Aクロマトグラフィー等の周知の技法によってさらに精製されて、IgG画分を得ることができる。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドに特異的な抗体は、例えば親和性クロマトグラフィーによって選択または精製(例えば、部分的に精製)されて、実質的に精製された抗体および精製された抗体を得ることができる。実質的に精製された抗体組成物とは、この文脈において、抗体試料が本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドのエピトープ以外のエピトープに対して指向される汚染抗体の最大で30乾燥重量%のみを含有し、かつ試料の最大で20%、最大で10%、または最大で5乾燥重量%が汚染抗体であることを意味する。精製された抗体組成物とは、組成物中の抗体の少なくとも99%が本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドに対して指向されることを意味する。
本発明のマーカーに対応するポリペプチドに対して指向される抗体(例えば、モノクローナル抗体)を用いて、マーカー(例えば、細胞試料中のマーカー)を検出して、マーカーのレベルおよび発現パターンを評価することができる。抗体を診断的に用いて、例えば、所与の治療レジメンの有効性を決定するための臨床試験手順の一環として、(例えば、血液試料中の)組織または体液中のタンパク質レベルを監視することもできる。検出は、抗体を検出可能な物質に結合させることによって促進され得る。検出可能な物質の例として、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質例として、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例として、125I、131I、35S、または3Hが挙げられる。
したがって、一態様において、本発明は、実質的に精製された抗体またはその断片、および非ヒト抗体またはその断片を提供し、その抗体または断片は、本明細書で特定されるマーカーによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。本発明の実質的に精製された抗体またはその断片は、ヒト、非ヒト、キメラ、および/またはヒト化抗体であり得る。
別の態様では、本発明は、非ヒト抗体またはその断片を提供し、この抗体または断片は、本発明の予測マーカーの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。そのような非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウサギ、またはラット抗体であり得る。あるいは、本発明の非ヒト抗体は、キメラおよび/またはヒト化抗体であり得る。加えて、本発明の非ヒト抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
実質的に精製された抗体またはその断片は、本発明のポリペプチドのシグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、膜貫通もしくは細胞質ドメイン、または細胞質ループに特異的に結合し得る。本発明の実質的に精製された抗体もしくはその断片、非ヒト抗体もしくはその断片、および/またはモノクローナル抗体もしくはその断片は、分泌配列または本発明のアミノ酸配列の細胞外ドメインに特異的に結合する。
感受性アッセイ
癌性細胞の試料は、患者から得られる。本明細書に記載のマーカーのうちの少なくとも1つに対応するマーカーの発現レベルが試料において測定される。本明細書に特定され、記載され、かつ本明細書に記載の方法を用いてマーカーセットにまとめられるマーカーを含むマーカーセットが利用され得る。そのような分析は、患者における腫瘍の発現プロファイルを得るために使用される。その後、発現プロファイルの評価は、患者が好ましい成果を有すると予想され、かつ治療、例えば、プロテアソーム阻害治療(例えば、プロテアソーム阻害剤(例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブ)単独での治療、またはさらなる作用薬と組み合わせた治療)、または生存期間への同様の影響を有すると予想される代替の作用薬から恩恵を受けるかを決定するために使用される。発現プロファイルの評価を用いて、患者が好ましくない成果を有すると予想され、かつプロテアソーム阻害治療以外の癌療法から恩恵を受けるか、またはプロテアソーム阻害治療レジメンの変更から恩恵を受けるかを決定することもできる。評価は、提供される方法または当技術分野で既知の他の同様のスコアリング法(例えば、加重投票、閾値特徴組み合わせ(combination of threshold features;CTF)、Cox比例ハザード分析、主成分スコア化、線形予測スコア、近傍法等)のうちのいずれかを用いて、例えば、National Center for Biotechnology Information(NCBI(Bethesda,MD))の遺伝子発現オムニバス(GEO)プログラムで蓄積された発現値を用いて調製される1つのマーカーセットの使用を含み得る。なおさらに、評価は、2つ以上の調製されたマーカーセットの使用を含み得る。プロテアソーム阻害治療は、評価結果が好ましい成果を示すときに、癌の治療に適切であると特定されるか、またはより積極的な治療レジメンは、予想された好ましくない成果を有する患者を特定する。
一態様において、本発明は、治療成果について、患者、例えば、癌、例えば、血液学的癌(例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病)を有する患者を評価する方法を特色とする。この方法は、患者におけるマーカーのマーカーセット中のマーカーの発現の評価を提供すること(このマーカーセットは、複数の遺伝子を含み、それぞれ特定された成果を有する患者と非罹患対象との間で差次的に発現され、かつ対象におけるマーカーセット中のマーカーのそれぞれの差次的な量が、(例えば、非罹患参照試料のレベルと比較して)約15%、約10%、約5%、約2.5%、または約1%以下の誤判定で治療成果を予測するように(誤判定とは、患者が応答しない/応答するときに、その患者が応答する/応答しないと予測することを意味する)、十分な数の差次的に発現されるマーカーを含有するといった特性を有する)と、参照値を有する患者由来のマーカーセット中のマーカーのそれぞれの量の比較を提供して、それによって患者を評価することとを含む。
プロテアソーム阻害治療過程において患者から採取された腫瘍試料中の特定されたマーカーまたはマーカーセットのうちの1つ以上の量を試験することによって、治療薬が作用し続けるか、または癌が治療プロトコルに応答しなくなった(無効になった)かを決定することも可能である。例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブの治療を受けた患者の腫瘍細胞は除去され、かつマーカーまたはマーカーセットの発現が監視される。本明細書で特定される1つ以上のマーカーの量のプロファイルが、作用薬、例えば、プロテアソーム阻害剤の存在下で好ましい成果をより典型的に表す場合、治療は継続される。しかしながら、本明細書で特定される1つ以上のマーカーの量のプロファイルが、作用薬の存在下で好ましくない成果をより典型的に表す場合、癌は、治療、例えば、プロテアソーム阻害治療に耐性を示ようになった可能性があり、別の治療プロトコルを開始して患者を治療しなければならない。
重要なことに、これらの決定は、患者別に、または作用薬(もしくは作用薬の組み合わせ)別に行われ得る。したがって、特定のプロテアソーム阻害治療が特定の患者もしくは患者群/クラスに利益をもたらす可能性があるか否か、または特定の治療が継続されるべきかを決定することができる。
情報の使用
一方法において、情報、例えば、患者の腫瘍の変異状態、例えば、患者のマーカー(複数を含む)特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、もしくは量(例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果)についての情報、または患者が好ましい成果を有すると予想されるかの情報は、第三者に、例えば、病院、診療所、政府事業体、償還者、または保険会社(例えば、生命保険会社)に提供される(例えば、通信される、例えば、電子通信される)。例えば、医療処置の選択、医療処置の支払い、償還者による支払い、またはサービスもしくは保険費用は、情報の関数であり得る。例えば、第三者は、情報を受信し、少なくともある程度情報に基づいて決定し、任意に情報を通信するか、または情報に基づいて手順、支払い、支払いの段階、補償範囲等を選択する。この方法において、表1から選択されるか、またはそれから得られ、かつ/または本明細書に記載されるマーカーまたはマーカーセットの情報的に有益な発現レベルが決定される。
一実施形態において、保険料(例えば、生命保険料または医療保険料)は、1つ以上のマーカー、例えば、マーカーまたはマーカーセットの発現レベル、例えば、治療成果(例えば、情報的に有益な量)に関連した発現レベルについての情報の関数として評価される。例えば、患者のマーカー遺伝子または患者の本明細書に記載のマーカーセットが、被保険候補(または保険補償を求める候補)と参照値(例えば、罹患していない者)または参照試料、例えば、対応対照との間で異なる特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量を有する場合、保険料が増加し得る(例えば、ある割合)。保険料を本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果に応じて計ることもできる。例えば、保険料を判定して、例えば、マーカーの関数として、例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果として、リスクを分散することができる。別の例において、保険料は、既知の治療成果を有する患者から得られる保険数理データの関数として判定される。
マーカー特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量、例えば、本明細書に記載のマーカーもしくはマーカーセットの評価結果(例えば、情報的に有益な特徴、例えば、量)についての情報は、例えば、生命保険の引受プロセスにおいて使用され得る。情報は、対象のプロファイルに組み込まれ得る。プロファイル中の他の情報には、例えば、出生日、性別、結婚歴、銀行情報、信用情報、子供等が含まれ得る。保険証券は、プロファイル中の情報の1つ以上の他の項目に加えて、マーカー特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量、例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果の情報の関数として推奨され得る。保険料またはリスク評価もマーカーまたはマーカーセット情報の関数として評価され得る。一実装例において、ポイントは、予想される治療成果に基づいて割り当てられる。
一実施形態において、マーカー特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量、例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果についての情報は、対象に提供されたサービスまたは治療の代金を支払うために資金移動を許可するか(または本明細書で言及される別の決断を下すか)を決定する関数によって分析される。例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量の分析結果は、対象が好ましい成果を有すると予想されることを示し得、治療過程が必要とされることを示唆し、それによって対象に提供されたサービスまたは治療の代金の支払い許可を示すか、または引き起こす結果の一因となる。一例において、表1から選択されるか、またはそれから得られ、かつ/あるいは本明細書に記載されるマーカーまたはマーカーセットの情報的に有益な特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量が決定され、情報的に有益な量が好ましい成果を特定した場合、支払いが許可される。例えば、事業体、例えば、病院、介護人、政府事業体、もしくは保険会社、あるいは医療費を支払うか、または補償する他の事業体は、本明細書に記載の方法の結果を用いて、関係者、例えば、対象患者以外の関係者が患者に提供されたサービス(例えば、特定の治療)または治療の代金を支払うかを決定することができる。例えば、第1の事業体、例えば、保険会社は、本明細書に記載の方法の結果を用いて、患者に、または患者の代わりに金銭上の支払いを提供するか、例えば、第三者、例えば、物品もしくはサービス業者、病院、医師、または他の介護人に患者に提供されたサービスまたは治療代を償還するかを決定することができる。例えば、第1の事業体、例えば、保険会社は、本明細書に記載の方法の結果を用いて、保険プランまたはプログラム、例えば、健康保険または生命保険プランまたはプログラムを継続させるか、中止するか、個人を加入させるかを決定することができる。
一態様において、本開示は、データを提供する方法を特色とする。この方法は、本明細書に記載のデータ、例えば、本明細書に記載の方法によって生成されたデータを提供し、記録、例えば、本明細書に記載の記録を提供して、支払いが提供されるかを決定することを含む。いくつかの実施形態において、データは、コンピュータ、コンパクトディスク、電話、ファクシミリ、Eメール、または手紙によって提供される。いくつかの実施形態において、データは、第一者によって第二者に提供される。いくつかの実施形態において、第一者は、対象、ヘルスケア提供者、治療担当医師、保健維持機構(HMO)、病院、政府事業体、または薬物を販売もしくは供給する事業体から選択される。いくつかの実施形態において、第二者は、第三者支払人、保険会社、雇用主、雇用主が提供する医療保険、HMO、または政府事業体である。いくつかの実施形態において、第一者は、対象、ヘルスケア提供者、治療担当医師、HMO、病院、保険会社、または薬物を販売もしくは供給する事業体から選択され、第二者は、政府事業体である。いくつかの実施形態において、第一者は、対象、ヘルスケア提供者、治療担当医師、HMO、病院、保険会社、または薬物を販売もしくは供給する事業体から選択され、第二者は、保険会社である。
別の態様では、本開示は、患者のマーカーまたはマーカーセットの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、活性、または量のリストおよび値を含む記録(例えば、コンピュータ可読の記録)を特色とする。いくつかの実施形態において、記録は、それぞれのマーカーの2つ以上の値を含む。
スクリーニングアッセイ
本発明は、例えばNRAS変異体発現もしくはRAS経路活性に阻害作用を有するか、または例えばRAS経路におけるNRAS基質もしくはタンパク質の発現もしくは活性に刺激作用もしくは阻害作用を有するプロテアソーム阻害剤、すなわち、候補もしくは試験化合物または作用薬(例えば、タンパク質、ペプチド、ペプチド模倣薬、ペプトイド、小分子、または他の薬物)を特定するための方法(本明細書において「スクリーニングアッセイ」とも称される)を提供する。したがって、特定された化合物を用いて、治療プロトコルにおいて標的遺伝子産物(例えば、NRAS変異体遺伝子)の活性を調節するか、標的遺伝子産物の生物学的機能を作り上げるか、またはNRAS変異体相互作用を妨害する化合物を特定することができる。細胞、例えば、血液学的腫瘍、例えば、骨髄腫、例えば、多発性骨髄腫、リンパ腫、例えば、マントル細胞リンパ腫もしくは濾胞性リンパ腫、または白血病、例えば、急性骨髄性白血病もしくは急性リンパ性白血病由来の細胞、または細胞株、例えば、変異体NRAS遺伝子もしくは活性RAS経路を有する応答しない患者由来の腫瘍の外植片から増殖した細胞の死、アポトーシス、または老化を引き起こす化合物、例えば、プロテアソーム阻害剤を特定することができる。
他の実施形態では、アッセイは、NRAS変異体の1つ以上の活性を調節する化合物、例えば、ヌクレオチド、例えば、GTPもしくはGDPに結合する能力、ヌクレオチドを加水分解する能力、RASGAPに結合する能力、リン脂質二重層、例えば、細胞膜に結合する能力、細胞周期を制御する能力、細胞のタンパク質恒常性を調整する能力、および/または腫瘍細胞生存を支持する能力を特定することができる。いくつかの実施形態において、試験薬の存在下でのNRAS変異体の活性と、NRAS変異体またはNRAS変異体を含む細胞が耐性を有するプロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸、例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブの存在下での活性が比較され得る。
本発明の試験化合物は、生物学的ライブラリ、ペプトイドライブラリ(酵素分解に耐性を示すにもかかわらず生物活性状態のままである、ペプチドの機能性を有するが、新規の非ペプチド骨格を有する分子のライブラリ)(例えば、Zuckermann et al.(1994)J.Med.Chem.37:2678−85を参照のこと)、空間的にアドレス可能な並列固相または溶液相ライブラリ、逆重畳積分を必要とする合成ライブラリ法、「1ビーズ1化合物」ライブラリ法、および親和性クロマトグラフィー選択を用いた合成ライブラリ法を含む当技術分野で既知のコンビナトリアルライブラリ法における多数の手法のうちのいずれかを用いて得られ得る。生物学的ライブラリおよびペプトイドライブラリ手法は、ペプチドライブラリに限定されるが、他の4つの手法は、化合物のペプチド、非ペプチドオリゴマー、または小分子ライブラリに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。さらなる化合物は、先の項で説明されたプロテアソーム阻害剤を開示する出版物に提供される手引きから合成され得る。
化合物のライブラリは、溶液中(例えば、Houghten(1992)Biotechniques 13:412−421)、またはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82−84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555−556)、細菌上(Ladner、米国特許第5,223,409号)、胞子上(Ladner、米国特許第5,223,409号、)、プラスミド上(Cull et al.(1992)Proc Natl Acad Sci USA 89:1865−1869)、またはファージ上(Scott and Smith(1990)Science 249:386−390、Devlin(1990)Science 249:404−406、Cwirla et al.(1990)Proc.Natl.Acad.Sci. 87:6378−6382、Felici(1991)J.Mol.Biol.222:301−310、Ladner(上記参照))に提示され得る。
一実施形態において、アッセイは、NRAS変異体タンパク質またはその生物学的に活性な部分を発現する細胞を試験化合物と接触させて、NRAS変異体活性を調節する試験化合物の能力が決定される細胞ベースのアッセイである。NRAS変異体活性を調節する試験化合物の能力の決定は、例えば、ヌクレオチド、例えば、GTPもしくはGDPに結合する能力、ヌクレオチドを加水分解する能力、RASGAPに結合する能力、リン脂質二重層、例えば、細胞膜に結合する能力、細胞周期を制御する能力、タンパク質恒常性を調整する細胞の能力、および/または腫瘍細胞生存を支持する能力を監視することによって達成され得る。試験化合物の作用は、試験化合物に曝露されていない対照細胞と比較され得る。いくつかの実施形態において、試験薬の存在下でのNRAS変異体の活性と、NRAS変異体またはNRAS変異体を含む細胞が耐性を有するプロテアソーム阻害剤、例えば、ペプチジルボロン酸、例えば、ボルテゾミブまたはクエン酸イクサゾミブの存在下での活性が比較され得る。例えば、細胞は、哺乳動物由来の細胞、例えば、ヒトの細胞であり得る。他の実施形態では、アッセイは、生体外または生体内の薬物耐性細胞株、例えば、異種移植片腫瘍モデルにおいて、NRASと構造的または機構的に類似した酵素の変異形を調節する試験化合物の能力を決定することができる。化合物は、細胞生存率または細胞増殖が低下するとき、薬物耐性またはプロテアソーム阻害剤調節剤と特定される。
本発明は、これから以下の実施例によって説明され、これらは決して限定的であるよう意図されていない。
実施例1
第1相臨床試験における多発性骨髄腫の肯定的な所見(Orlowski,J Clin Oncol.2002 Nov 15;20(22):4420−7.,Aghajanian,Clin Cancer Res.2002 Aug;8(8):2505−11)に基づいて、より同種の患者集団におけるボルテゾミブの抗腫瘍活性のより正確な予測を可能にするために、第2相骨髄腫試験を実施した。薬理ゲノム学分析で用いるために、これらの試験、ならびに以下に説明される以下のさらなる試験に参加した患者の試料および応答基準を求めて、患者生存に関連したマーカーを特定した。骨髄穿刺液試料をボルテゾミブまたはデキサメタゾン治療の第2相および第3相試験に参加した133名の患者から収集した。これらの試験で患者を治療する前に、骨髄穿刺液を収集した。薬物情報:ボルテゾミブは、凍結乾燥粉末から再構成した後に1mg/mL注入することによって投与される、ロイシンフェニルアラニンジペプチドのボロン酸誘導体(CAS登録番号179324−69−7)である。デキサメタゾンは、錠剤(DECADRON(登録商標)Merck & Co.,Inc.)として投与される、合成副腎皮質ステロイド(CAS登録番号312−93−6)である。これらの試験は、以下の段落で説明される。
024:再発性疾患または難治性疾患のいずれかのCREST第2相試験(024)(1回再発した対象、Jagannath et al.(2004)Br.J.Haematol.127:165-172)。024試験において、30%および38%の完全応答(CR)+部分応答(PR)率が、それぞれ、1.0mg/m2および1.3mg/m2のボルテゾミブで治療された再発性多発性骨髄腫を有する患者の間で見られた。
025:再発性および難治性骨髄腫を有する患者のSUMMIT第2相試験(2回以上再発し、かつ最後の前治療が無効である対象、Richardson PG,et al.(2003)N.Engl.J.Med.348:2609-2617)。025試験において、ボルテゾミブ単独でのCR+PR率は、27%(193名中53名の患者)であり、ボルテゾミブ単独での全応答率(CR+PR+最小応答(MR))は、35%(193名中67名の患者)であった。
039:APEX第3相試験は、ボルテゾミブ(315名の患者)または高用量デキサメタゾン(312名の患者)での治療に無作為に割り当てられた、1〜3回前治療を受けた再発性または難治性多発性骨髄腫を有する627名の登録患者を含む、多施設での非盲検無作為試験であった(Richardson et al.(2005)N.Engl.J.Med.352:2487-2498)。ボルテゾミブを受けた患者を、ボルテゾミブでの最大8回の3週間治療サイクル、その後、最大3回の5週間治療サイクルといった方法で最長273日間治療した。各3週間治療サイクル内で、患者は、21日間サイクルの1日目、4日目、8日目、および11日目に、1.3mg/m2/用量のボルテゾミブをボーラス静脈内(IV)注入として週に2回、2週間単独で受けた。各5週間治療サイクル内で、患者は、35日間サイクルの1日目、8日目、15日目、および22日目に、1.3mg/m2/用量のボルテゾミブをボーラスIV注入として週に1回単独で受けた。デキサメタゾンを受けた患者を、最大4回の5週間治療サイクル、その後、最大5回の4週間治療サイクルで受けるといった方法で最大280日間治療した。各5週間治療サイクル内で、患者は、35日間サイクルの1〜4日目、9〜12日目、および17〜20日目に、40mg/日のデキサメタゾンを週に1回経口で受けた。各4週間治療サイクル内で、患者は、28日間サイクルの1〜4日目に40mg/日のデキサメタゾンを週に1回経口で受けた。
040:3回以上の前治療を受けた患者の039試験との比較試験。このボルテゾミブ治療試験は、慢性進行性疾患(PD)を経験した039試験のデキサメタゾン群内の患者を含んだ。039試験の患者ではなく、少なくとも4回の前治療を受けたさらなる240名の患者もこの試験に登録した。
すべての参加施設の審査委員会がこれらの研究を承認し、すべての患者に書面によるインフォームド・コンセントを提供した。さらなるコンセントを薬理ゲノム学分析のために提供した。これらの試験を、ヘルシンキ宣言および医薬品規制調和国際会議(International Conference on Harmonisation)の医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令(Good Clinical Practice)ガイドラインに従って実施した。
-039試験の概要
以下の項は、-039試験についてのより詳細な情報を提示する。この試験中、表3に提示される欧州血液骨髄移植(European Group for Blood and Marrow Transplant、EBMT)の基準に従って疾患応答を判定した。
患者が少なくとも1回の試験薬投与を受け、かつベースラインで測定可能な疾患を有した場合、これらの患者は評価可能であった(合計627名の患者:ボルテゾミブ群に315名およびデキサメタゾン群に312名)。欧州血液骨髄移植(EBMT)基準に従うボルテゾミブまたはデキサメタゾンでの治療に対する確認された応答の評価は、表4に示される。応答および疾患増悪日を、Blade基準(表3)に従って、中央実験室からのデータおよび各臨床現場からの症例報告書を統合したコンピュータアルゴリズムによって決定した。ボルテゾミブ群における応答率(完全応答+部分応答(CR+PR))は38パーセントであり、デキサメタゾン群では18パーセントであった(P<0.0001)。完全応答は、ボルテゾミブを受けた20名の患者(6パーセント)およびデキサメタゾン(P<0.001)を受けた2名の患者(1パーセント未満)において達成され、完全応答+ほぼ完全応答は、ボルテゾミブおよびデキサメタゾンを受けた患者において、それぞれ、13パーセントおよび2パーセントであった(P<0.0001)。Richardson et al.(上記参照)を参照されたい。
疾患増悪を表3および上に記載されるBlade基準によって決定した。ボルテゾミブ群における平均疾患無増悪期間は6.2ヶ月(189日)であり、デキサメタゾン群においては3.5ヶ月(106日)であった(ハザード率0.55、P<0.0001)。増悪日をコンピュータアルゴリズムによって決定した。実際の無作為化因子によって調整されたログランク検定からのp値。Richardson et al.(上記参照)を参照されたい。
両群の患者の平均無応答期間は43日であった。平均応答期間は、ボルテゾミブ群において8ヶ月であり、デキサメタゾン群においては5.6ヶ月であった。
ボルテゾミブを与えた患者は、より優れた全生存を有した。ボルテゾミブ群の80%およびデキサメタゾン群の66%が1年間生存した(P<0.0030)。これは、登録後の初年度におけるボルテゾミブ群の死亡の危険性を41%減少させたことを表す。全生存のハザード率は、0.57であり(P<0.0013)、ボルテゾミブが有利であった。全生存の分析は、疾患増悪を有し、その後、比較試験においてボルテゾミブに切り替えたデキサメタゾン群の147名の患者(44パーセント)からのデータを含む。
クオリティオブライフ判定を分析して、治療に対する応答がクオリティオブライフの測定可能な改善を伴ったかを決定することができる。要約スコアならびに個別の項目についての分析を行い、具体的な分析方法は、データベースをロックする前に開発された公式の統計分析計画に概説されている。
この組の患者のボルテゾミブに対する全応答率は、42.3%であった(CR+PR率32%)。デキサメタゾンに対する全応答率は、39.7%であった(CR+PR率22.2%)。生存試験について、一部の患者は少なくとも30ヶ月続けた。例えば、-039試験の患者は、平均22ヶ月続けた。
A.薬理ゲノム試料の取り扱い
患者の骨髄穿刺液を収集する際、骨髄腫細胞を迅速な負の選択によって富化した。富化手順は、赤血球RosetteSepに結合する抗体と結合した細胞型特異的抗体の混合物を用いた(幹細胞技術)。抗体混合物は、以下の特異性を有する抗体を有する:CD14(単球)、CD2(TおよびNK細胞)、CD33(骨髄性前駆体および単球)、CD41(血小板および巨核球)、CD45RA(ナイーブBおよびT細胞)、ならびにCD66b(顆粒球)。これらの抗体は、非骨髄腫細胞型を試料中の赤血球と架橋した。修正したFicoll密度勾配を用いて結合した細胞型を除去した。その後、骨髄腫細胞を収集し、凍結させた。国際研究において、分量および品質についてのフィードバックがもたらされ得るように、各部位由来の第1の2つの試料を収集し、RNA単離に供し、最終的には、第2相および第3相試験は、同様の割合の情報的に有益な試料を提供した。対照骨髄形質細胞試料を健常なドナー(AllCells(Berkeley,CA))から得た。
全RNAをQIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia,CA)を用いて単離し、分光測光によって定量化した。
DNAをRNA単離法で用いたカラムの通過画分から単離した。
B.ゲノム変化の分析
RNEASY(登録商標)カラムからの通過を遠心分離によって浄化し、その後、遠心限外濾過装置(MICROCON(登録商標)(遠心濾過デバイス、YM−30膜(最大30kDa)、Millipore Corp.(Billerica、MA))を用いて、約10倍に濃縮した。Qiagen QIAMP(登録商標)DNAマイクロキットを用いて不純物を除去した。Qiagen REPLI−G(登録商標)WGAキットを用いて試料由来のDNAを増幅した。133個の骨髄腫瘍生検由来のDNAの変異状態を、Sequenom(San Diego,CA)質量分析遺伝子型分析システムを用いて癌遺伝子および既知の腫瘍抑制因子のパネルを試験することによって決定した。
これらの試験が対になった腫瘍および正常な組織を収集しなかったため、データは、癌に関連し得る体細胞変異を特定するために対になった腫瘍および正常組織を配列決定しても得られず、これらの試験は、患者から生殖系列DNA試料を収集しなかった。むしろ、このプラットホームは、腫瘍DNAを以前に癌に関与した特定の配列(すなわち、「ホットスポット」変異)についてのみ問い合わせを行い、これらがヒト癌と非常に関連性があるといった予備知識に大いに依存している。評価した変異のパネルは、ONCOCARTA(商標)バージョン1.0、ならびに41個の癌遺伝子および腫瘍抑制遺伝子中の514個の既知の変異について調査された変異のリストを拡大するようにSequenomおよびMillenniumと協力して設計されたカスタムアッセイからなった。表5は、パネルに含まれる変異を有する遺伝子を列挙し、丸括弧()内の数字は、これらの遺伝子のアッセイにおいて標的とした変異のおおよその数を示す。
カスタムアッセイを、伸長産物の予想質量を決定する単一塩基伸長とのTYPEPLEX(登録商標)化学反応を用いて設計し、多重化反応において見られるすべての潜在的なピーク間の分離を確実にした。15nLの増幅および伸長産物をナノディスペンサーを用いて384 SpectroCHIPII上にスポッティングする。3点較正物をすべてのチップに添加して、Sequenom Maldi−tof小型質量分析計の正確な動作を確実にする。SpectroCHIP IIをSequenom MALDI−TOF小型質量分析計内に設置する。この質量分析計を、384ウェルspectroCHIP上のそれぞれのスポットごとに最大9つの取得物を発するように設定する。TypePLEX GoldキットSpectroCHIP IIを製造業者が推奨するプロトコルに従って使用する。
変異呼び出しフィルタが8%以上であり、信号対雑音比が5を超える(バックグラウンド)、Sequenom分析ソフトウェア、MassARRAY(登録商標)タイパーアナライザーv4を用いて分析を行い、その後、不純物(すなわち、塩)による誤判定を手動で調べた。正の変異体呼び出しの初期閾値は、最低10%の変異体対立遺伝子の頻度であるが、3%まで低下したシグナルが検出される場合がある。細胞のほぼ100%が腫瘍細胞である場合、10%閾値は、細胞株または異種移植片試料に有効に働く。しかしながら、臨床生検試料は、多くの場合、かなりの割合の非腫瘍細胞を有し、ある場合には、細胞の10〜12%のみが腫瘍細胞である。したがって、臨床試料における変異を分析するために、閾値を8%に下げた。社内での感受性評価は、8%の閾値を低い誤判定率で用いることができることを示唆する。誤判定は、信号と雑音との区別および特定の塩基に対して予想されたクロマトグラム上の分子量位置を中心としなかったピークの切り捨て等の変異を特定するためのデータのさらなる手動品質管理(QC)につながった。自動および手動での品質管理を行った後、我々は、フィッシャーの正確検定を用いて、変異とボルテゾミブまたはデキサメタゾンに対する応答との関連性について試験した。前述の41個の癌遺伝子(表5)のそれぞれについて、我々は、所与の遺伝子の変異が陽性であった患者のサブセット内の応答群の過剰提示および/または提示不足について試験した。ログ比検定(log ratio test)およびCox比例ハザード検定を両方ともに用いて、応答者または非応答者のいずれかの大いに富化された変異体群をさらに分析して、変異癌遺伝子の存在が腫瘍無増悪期間(TTP)または全生存(OS)に関連したかを決定した。RAS変異のTTPおよびOSへの影響についてさらに詳しく調べた。これらの分析のうちの1つの結果を説明するカプラン・マイヤー曲線が図1に示される。各下位群の結果をログランク法およびCox比例ハザート法を用いて比較した。表6は、スクリーニングにおいて検出された変異を有する遺伝子を要約する。
これらの結果を、全ゲノムまたは全エクソーム配列決定を38名の骨髄腫患者に適用したChapman et al.(上記参照)と比較した。彼らは、ゲノムの他の位置と比較して、予想よりも著しく高い頻度のKRAS、NRAS、BRAF、およびTP53におけるタンパク質が変化する変異を報告した。他の変異の頻度のわずかな差(表2および表3を比較のこと)は、これらのデータセット内の限られた数の患者および/またはMM癌ゲノムの一般的な異質性によるものであり得る。星印(*)は、Chapman et al.(表6)によって報告されておらず、存在せず、かつ/またはMM腫瘍の遺伝子プロファイルを説明する文献にめったに見られない11個の変異がこのスクリーニングにおいて検出されたことを示す。FGFR3遺伝子の1つの変異をこのスクリーニングで検出した。これは、頻繁に転座され(t4;14;p16)、かつ稀なタンパク質コード変異を呈する多発性骨髄腫におけるFGFR3の役割と一致する(Soverini S et al.(2002)Haematologica.87:1036−1040)。このスクリーニングでアッセイしたさらなる22個の遺伝子(ABL1、AKT1、AKT2、CDK、CSF1R、ERBB2、FBX4、FBXW7、FGFR1、FLT3、FLT4、FLT5、GNAQ、HRAS、MAP2K1、MAP2K2、MLH1、MYC、RET、SOS1、SRC、VHL)は、Chapman et al.のスクリーニングと一致し、この一連の骨髄腫患者において変異は観察されなかった。試験したパネル中の少なくとも48個の試料は変異を有しなかった。
C.RAS変異の分析
観察された最も一般的な変異は、KRAS(n=32[24.1%]、95%CI:17.0〜31.3)およびNRAS(n=26[19.5%]、95%CI:12.8〜26.3)であった。BRAFにおける変異は、3つの患者試料(2.3%、95%CI:0〜4.8)において検出された。3つすべての遺伝子について、この患者集団における変異率は、Chapman et al.(上記参照)によって報告された変異率に類似した(KRAS、NRAS、およびBRAFにおいて、それぞれ、26.3%、23.7%、および4%)。応答をボルテゾミブ(N=64)およびデキサメタゾン(N=31)で治療した患者由来の試料中のNRASおよびKRAS状態と相関させるフィッシャーの正確検定結果は、2×2頻度表7〜10に示される。
表7〜10で見られるように、処理前の試料中の野生型NRASがボルテゾミブに対する応答に大いに関連した一方で、処理前の試料中の変異NRASは、ボルテゾミブに対する非応答に大いに関連した。処理前の試料中のKRAS状態は、骨髄腫患者のボルテゾミブに対する応答と相関しなかった。処理前の試料中のNRAS状態およびKRAS状態のいずれも骨髄腫患者のデキサメタゾンに対する応答と相関しなかった。表11は、ボルテゾミブおよびデキサメタゾン(Dex)で治療した患者由来のいくつかの試料の特定されたNRAS変異および応答カテゴリを列挙する(PD=進行性疾患、IE=評価不可能、NC=変化なし、PR=部分応答、MR=最小応答)。
図1は、95名のボルテゾミブで治療した患者の疾患無増悪期間(無増悪生存率)と治療前のRAS状態を比較したカプラン・マイヤープロットを示す。ペアワイズログランク検定において、NRAS変異体(N=20)とRAS野生型(N=56)およびKRAS変異体(N=19)との比較は有意であった(それぞれ、p値1.9×10−4および1.6×10−3)が、KRAS変異体とRAS野生型の比較は有意ではなかった(p値0.695)。無増悪期間とRAS状態のCox比例ハザードモデリングは、NRAS変異に3.9のハザード比(p値3.5×10−4)を与えたが、KRAS変異には0.828のハザード比(p値0.69)を与えた。治療前の骨髄腫瘍試料がNRAS変異を有した患者は、ボルテゾミブ治療後に著しく短い無増悪期間を有した。
骨髄腫腫瘍がNRAS変異体であった患者のTTPの短縮とは対照的に、全生存についてのこれらの95名の患者の分析は、RAS変異体とRAS野生型を比較したとき、いかなる有意差も特定しなかった(ペアワイズログランク検定のp値は、NRAS変異体では0.204、KRAS変異体では0.497であり、Cox比例ハザード比率は、NRAS変異体では0.57(p値0.18)、KRAS変異体では1.25(p値0.51)であった)。NRAS変異体とKRAS変異体とのペアワイズログランク比較(p値0.074)において有意な傾向が存在した。処理前のNRAS変異体を有する患者は、ボルテゾミブ治療後、他の治療で治療した際に著しく長い生存期間を有した。可能性の1つとして、NRAS野生型患者と比較してNRAS変異体患者の全生存が低下しなかったように、その後の治療がNRAS変異体患者により著しく有効であったことが挙げられる。
NRAS変異とボルテゾミブに対する応答低減との間の観察された関連性の潜在的な交絡変数は、ボルテゾミブ応答に関連することで既知の多発性骨髄腫(MM)サブタイプにおけるKRASの過剰提示である。これは、ボルテゾミブが単独または組み合わせで、MMにおけるt(4;14)転座に関連した予後不良を少なくとも部分的に克服することを示している(Avet−Loiseau et al(2010)J.Clin.Oncol.28:4630−4634、Chang et al.(2011)35:95−98)。1つの研究(Walker et al.(2012)Blood 120:1077−1086)は、t(4;14)MM試料において、KRAS変異体がNRAS変異体よりも頻度が高いことを示した。KRAS変異体患者における応答をt(4;14)感受性とボルテゾミブとの関係について試験した。表12は、両方の腫瘍サブタイプデータ(Mulligan et al.(2007)Blood 109:3177−3188)を有し、かつ応答評価可能であった患者(n=40)の現在のデータセットのt(4;14)およびNRAS状態を詳述する。
表12Aは、t(4;14)転座を有する患者のサブセットが全体として他のサブセットよりも高い応答率を呈し、以前の報告書と一致したことを示す。しかしながら、この傾向は有意ではなかった。対照的に、表12Bは、この同一のコホート内のNRAS変異体患者がボルテゾミブに応答する可能性が著しく低いことを示した(P=0.01186)。遺伝子変化に関連した応答傾向が反対方向であったため、試料中にNRAS変異体とt(4;14)転座の両方を有した患者の数が少ない場合、t(4;14)陽性患者試料を除去して、応答欠如とNRAS変異体試料(N=32)との間の関連性の持続性を試験した。NRAS変異とボルテゾミブとの関連性が単にt(4;14)転座とNRAS変異の最小同時出現の人為的結果ではないというさらなる証拠として、表12Cは、この応答欠如がこの群からすべてのt(4;14)試料を除去した後も持続することを示し、実際にはこのサブセットにおいてより有意であるように見える。
実施例3.代替の核酸配列決定法
サンガー配列決定方法論。PCR増幅を遺伝子のエクソンごとに最適化サイクリング条件を用いて実施する。プライマー伸長配列決定をApplied BiosystemsのBigDyeバージョン3.1を用いて行う。その後、反応物をApplied Biosystemの3730xl DNAアナライザー上で泳動させる。配列決定塩基呼び出しをKBTM Basecaller(Applied Biosystems)を用いて行う。体細胞変異細胞をMutation Surveyor(SoftGenetics)によって決定し、Seqman(DNASTAR)を用いて手作業で配列決定データを対応する参照配列と整列させることによって確認した。
次世代シーケンシング(NGS)方法論。Illuminaプラットホーム(Illumina,Inc.(San Diego,CA))を用いた標的NGSを用いて、マーカーにおける低頻度の変異を確認および特定する。コーディングエクソンを増幅するようにプライマー対を設計する。PCR産物をPicoGreenアッセイを用いて定量化し、それぞれの試料ごとに等モル比で合わせる。精製した産物を末端修復し、連結反応によって濃縮する。濃縮した産物をHi−Seq 2000ライブラリ調製に使用する。濃縮したPCR産物をせん断し、1つの多重化プール当たり12個のバーコード化した試料からなるバーコード化したHi−Seq 2000ライブラリを作製するために使用する。プールされたHi−Seq 2000ライブラリは、Hi−Seq 2000フローセルの8つのレーン上でのクラスター生成によるクローン増幅を経て、Hi−Seq 2000上で1×100シングルエンドシークエンシングを用いて配列決定する。一次シークエンシング読み取りとヒトゲノムとの整合がHg18を構築し、同様に、SNP分析をIlluminaのCASAVAソフトウェアバージョン1.7.1を用いて行う。
一般的な手順
定量的RT−PCR
cDNA合成および定量的RT−PCRを、ABI遺伝子発現アッセイ、試薬、およびABI PRISM(登録商標)7900HT配列検出システム(Applied Biosystems(Foster City,CA))を用いて行い、以下のサイクル条件を用いる:AmpErase UNG活性化のために50℃で2分間維持、その後、DNAポリメラーゼの活性化のために95.0℃で10分間維持、その後、95.0℃で15秒間および60.0℃で1分間の40回2部サイクル運転。対照遺伝子B2M(Hs99999907_m1)およびRPLPO(Hs99999902_m1)の平均Ctを用いてdCtを計算する。比較CT法(Applied Biosystems)を用いて相対mRNA発現定量化をもたらす。mRNA発現倍率変化値を正常試料および対応する腫瘍試料から生成する。
アレイ上での骨髄腫遺伝子発現の分析
RNAを標準のT7ベースの増幅プロトコル(AFFYMETRIX(登録商標)Inc.(Santa Clara,CA))によってビオチン化cRNAに変換する。少数の0.5以上〜2.0μgの試料も標識し、その後、6μgのcRNAが産生されたときにハイブリダイズする。自動T7増幅手順について、製造業者のプロトコル(AGENCOURT(登録商標)Bioscience Corporation(Beverly,MA))に従ってAMPURE(登録商標)PCR精製システムを用いてcDNAおよびビオチン標識cRNAを精製した。cRNA収率を分光測光によって判定し、10μgのcRNAを断片化し、AFFYMETRIX(登録商標)ヒトゲノムHG−U133AおよびHG−U133B GENECHIP(登録商標)アレイ上での三重ハイブリダイゼーションのためにさらに処理した。cRNA収率が6μg〜10μgの範囲である場合、全cRNA試料を断片化する。
各試料のcRNAをU133A/Bアレイに三重にハイブリダイズし、オペレーター、チップロット、臨床現場、およびスキャナー(GENECHIP(登録商標)スキャナー3000)を完全に制御した。AFFYMETRIX(登録商標)MAS5.0を用いてバックグラウンド除去、平滑化調整、雑音補正、および信号計算を行う。品質管理マトリックスは、パーセントパーセント呼び出し(>25)、スケール係数(<11)、β−アクチン3’:5’比(<15)、およびバックグラウンド(<120)を含む。これらのマトリックスに入らない試料をその後の分析から除外する。
骨髄腫純度スコアは、赤血球系細胞、好中球、およびT細胞において高度に発現されることで既知の遺伝子の発現に対する、骨髄腫細胞(およびそれらの正常血漿前駆体細胞)において高度に発現されることで文献内で既知の遺伝子の発現を試験する(以下の14個のマーカーのリストを参照のこと)。骨髄腫スコア=骨髄腫マーカー(以下の1〜4番)/赤血球(5〜7番)+好中球(8〜11番)+T細胞(12〜14番)の発現:
1.205692_s_at CD38CD38抗原(p45)骨髄腫/形質細胞
2.201286_at SDC1シンデカン−1骨髄腫/形質細胞
3.201891_s_at B2M β−2ミクログロブリン骨髄腫/形質細胞
4.211528_x_at B2M β−2ミクログロブリン骨髄腫/形質細胞
5.37986_at EpoRエリスロポエチン受容体赤血球系細胞
6.209962_at EpoRエリスロポエチン受容体赤血球系細胞
7.205838_at GYPAグリコホリンA赤血球系細胞
8.203948_s_at MPOミエロペルオキシダーゼ好中球
9.203591_s_at CSFR3コロニー刺激因子3受容体(顆粒球)好中球
10.204039_at CEBPACCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、α好中球
11.214523_at CEBPECCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)、ε好中球
12.209603_at GATA3 GATA結合タンパク質3Tリンパ球
13.209604_s_at GATA4 GATA結合タンパク質4Tリンパ球
14.205456_at CD3ECD3E 抗原、εポリペプチドTリンパ球
10未満の骨髄腫純度スコアを有する試料をさらなる分析から除外する。
等価物
本発明の実施形態が特定の用語を用いて説明されているが、そのような説明は、例証目的のためであって、本発明の精神または範囲から逸脱することなく変更および変形を加えてもよいことを理解されたい。当業者であれば、日常の実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、解明することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるよう意図される。