癌患者の治療に関する依然として存在する問題のうちの1つは、治療薬に対する応答の個体差である。功を奏する癌療法の開発における進展が進歩する一方で、一部の患者のみが任意の特定の療法に応答する。特定の癌療法に特に応答性である癌患者、特定の癌阻害療法により恩恵を受ける癌患者、または治療法に対して非応答性である素因を有する癌患者を特定し、それによって疾患を効果的に管理することが有益であろう。標的とされる設計された治療法は、全体的により集中的な功を奏する患者の治療法を提供し得る。したがって、特定の癌阻害治療から恩恵を受ける癌患者、ならびにより積極的および/または代替的な癌阻害治療、例えば、患者が受容している癌療法(複数可)に対する代替法により恩恵を受けるであろう癌患者、例えば、血液学的癌患者(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍癌(例えば、メラノーマ、食道癌、膀胱癌、肺癌、乳癌、もしくは膵臓癌)の診断、病期診断、予後診断、および監視を提供することが有益であり、したがって、適切な予防措置につながるであろう。
本発明は、マーカー遺伝子を選択し、マーカー遺伝子セットを構築するための方法に部分的に基づき、マーカー遺伝子およびマーカー遺伝子セットを使用して、治療、例えば、NAE阻害治療、EGFR阻害治療、またはpan−キナーゼ阻害治療に対する応答を予測するための方法に部分的に基づく。
一態様において、本発明は、NEDD8活性化酵素(NAE)阻害剤を用いて癌を有する患者を治療するかどうかを決定するための方法であって、患者から得られた癌細胞サンプルにおいて、表1に特定される少なくとも2つのマーカーを含むマーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルの定量的尺度を決定するステップ;部分最小二乗回帰(PLSR)に基づくアルゴリズムを使用して、マーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルに基づく予測成果スコアを生成するステップ;予測成果スコアをカットオフ値と比較するステップ;ならびに予測成果スコアとカットオフ値との比較に基づいて、NAE阻害剤で患者を治療するかどうかを決定するステップを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、比較が、NAE阻害剤に対する癌細胞サンプルの感受性を予測する場合に、患者を治療することを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、比較が、NAE阻害剤に対する癌細胞サンプルの耐性を予測する場合に、患者を治療しないことを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、比較が、NAE阻害剤に対する癌細胞サンプルの高い感受性も高い耐性も予測しない場合に、NAE阻害剤の標準よりも強い用量レジメンを使用することを決定すること、または追加の治療剤をNAE阻害剤と組み合わせて追加することをさらに含む。いくつかの実施形態において、本方法は、インビトロで行われる。
別の態様において、本発明は、癌を有する患者を、NEDD8活性化酵素(NAE)阻害剤での治療のための候補として特定するための方法であって、患者から得られた癌細胞サンプルにおいて、表1に特定されるマーカー1、2、3、および4からなる群から選択されるマーカーを含む、マーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルの定量的尺度を決定するステップ;部分最小二乗回帰(PLSR)に基づくアルゴリズムを使用して、マーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルに基づいて予測成果スコアを生成するステップ;予測成果スコアをカットオフ値と比較するステップ;ならびに、比較がNAE阻害剤に対する癌細胞サンプルの感受性を示す場合に、患者を、NAE阻害剤での治療の候補として特定するステップを含む、方法を提供する。
別の態様において、本発明は、癌を有する患者を治療する方法であって、患者から得られた癌細胞サンプルにおいて、表1に特定されるマーカー1、2、3、および4からなる群から選択されるマーカーを含むマーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルの定量的尺度を決定するステップ;部分最小二乗回帰(PLSR)に基づくアルゴリズムを使用して、マーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルに基づいて予測成果スコアを生成するステップ;予測成果スコアをカットオフ値と比較するステップ;ならびに、比較がNAE阻害剤に対する癌細胞サンプルの感受性を示す場合に、NAE阻害剤で対象を治療するステップを含む、方法を提供する。
別の態様において、本発明は、癌を有する患者を、NAE阻害剤での治療のための候補として特定する方法であって、患者から得られた腫瘍サンプルにおいて、表1に特定されるマーカー1〜3および5〜45を含むマーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベル定量的尺度を決定するステップ;マーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルに基づいて予測成果スコアを生成するステップ;ならびに、予測成果スコアをカットオフ値と比較するステップ;ならびに、NAE阻害剤に対する患者の感受性または耐性を予測するステップを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、マーカー46、マーカー47、またはマーカー46およびマーカー47の両方をさらに含む。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、表1に特定されるマーカー4および46〜69をさらに含む。
別の態様において、本発明は、NAE阻害剤での癌の治療を、それを必要とする対象に行う方法であって、表1に特定されるマーカー1〜3および5〜45を含むマーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルの定量的尺度を決定するステップ;マーカー遺伝子セットの遺伝子発現レベルに基づいて予測成果スコアを生成するステップ;予測成果スコアをカットオフ値と比較するステップ;ならびに、比較がNAE阻害剤に対する感受性を示す場合に、NAE阻害剤で対象を治療するステップを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、マーカー46、マーカー47、またはマーカー46およびマーカー47の両方をさらに含む。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、表1に特定されるマーカー4および46〜69をさらに含む。
いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、マーカー1および2を含む。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、マーカー1、2、3、および4を含む。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、表1に特定されるマーカー1、2、3、および4からなる群から選択されるマーカーを含む。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、マーカー46、マーカー47、またはマーカー46およびマーカー47の両方をさらに含む。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、TGFβ−SMADシグナル伝達経路、接着受容体誘導型シグナル伝達経路、c−myc転写因子経路、およびc−myb転写因子経路からなる群から選択される経路におけるマーカーをさらに含む。ある実施形態において、マーカー遺伝子セットは、表1のマーカー1〜3および5〜45からなる。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、表1のマーカー1〜69からなる。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セットは、表1に特定されるマーカー1〜44、46〜48、50、51、53〜66、68、および69を含む。
いくつかの実施形態において、癌細胞は、血液学的癌または固形腫瘍癌に由来する。いくつかの実施形態において、固形腫瘍癌は、皮膚癌、乳癌、結腸癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、膀胱癌、および頭頸部癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、皮膚癌は、メラノーマである。いくつかの実施形態において、血液学的癌は、急性骨髄性白血病である。いくつかの実施形態において、腫瘍は、血液学的腫瘍または固形腫瘍である。いくつかの実施形態において、血液学的腫瘍は、多発性骨髄腫、白血病、およびリンパ腫からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、固形腫瘍は、メラノーマ、食道癌、膀胱癌、肺癌、膵臓癌 結腸直腸癌、胃癌、乳癌、卵巣癌、子宮頸癌、または前立腺癌からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、カットオフ値は、分離カットオフ値である。いくつかの実施形態において、予測成果スコアは、NAE阻害剤のlog2(IC50)に関して表される。いくつかの実施形態において、log2(IC50)は、−3〜1.0のカットオフ値範囲を有する。いくつかの実施形態において、カットオフ値未満の予測成果スコアは、NAE阻害剤に対する感受性を示す。ある実施形態において、カットオフ値は、−1.45である。
いくつかの実施形態において、NAE阻害剤に対する感受性を示す予測成果スコアは、患者をNAE阻害剤での治療の候補として特定する。いくつかの実施形態において、NAE阻害剤に対する耐性を示す予測成果スコアは、患者をNAE阻害剤での治療の候補ではないとして特定する。いくつかの実施形態において、予測成果スコアは、分離カットオフ値である。
いくつかの実施形態において、NAE阻害剤は、1−置換メチルスルファミン酸塩である。いくつかの実施形態において、1−置換メチルスルファミン酸塩は、(((1S,2S,4R)−4−{4−[(1S)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イルアミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}−2−ヒドロキシシクロペンチル)メチルスルファミン酸塩)である。
いくつかの実施形態において、本方法は、インビトロで行われる。
いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子発現レベルは、マーカーセット中のマーカー遺伝子の核酸の量を測定することによって決定される。いくつかの核酸の実施形態において、核酸は、配列番号1〜69、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される。他の核酸の実施形態では、核酸は、配列番号117〜185、およびそれらの断片からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子発現レベルは、マーカーセット中のマーカー遺伝子のポリペプチドの量を測定することによって決定される。いくつかのポリペプチドの実施形態において、ポリペプチドは、配列番号1〜69、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される核酸によってコードされる、ポリペプチドまたはそのアイソフォームである。
一態様において、本発明は、表1に特定されるマーカー1および2を含むマーカー遺伝子セットの発現レベルを判定するための試薬と、使用のための説明書とを含む、キットを提供する。いくつかの実施形態において、キットは、マーカー3の発現レベルを判定するための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、マーカー4の発現レベルを判定するための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、マーカー46もしくはマーカー47のレベルを判定するための試薬、またはマーカー46および47のレベルを判定するための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、表1に特定されるマーカー5〜44、46〜48、50、51、53〜66、68、および69の発現レベルを判定するための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、表1に特定されるマーカー4および46〜69を判定するための試薬をさらに含む。いくつかの実施形態において、キットは、表1に特定されるマーカー1〜3および5〜45を含むマーカー遺伝子セットの発現レベルを判定するための試薬と、使用のための説明書と、を含む。本発明は、NAE阻害剤の有効量で癌を治療するための、請求項69〜75のいずれかに記載のキットの使用をさらに提供する。いくつかの実施形態において、キットは、インビトロでの使用のために提供される。
一態様において、本発明は、治療剤に対する対象の感受性を予測する、遺伝子発現プロファイルに使用するための、PLSRに基づくモデルを特定するための方法であって、:遺伝子発現データセットを訓練データセットと試験データセットとの間で釣り合い型スプリットに分割するステップ;PLSRアルゴリズムを繰り返し使用して、無作為スプリットによって訓練データセットをサブ訓練セットとサブ試験セットにさらに分割し、したがって、サブ訓練データセットを用いてPLSRモデルを訓練するステップ;データセット間で共通する特性を表す上位PLSRモデルを選択するステップ;コンセンサス重み付け法を適用して、コンセンサスに最も類似するコア遺伝子発現モデルを特定するステップ;ならびに、コアモデルにおいて表示される遺伝子間の生物学的経路の関連性を分析して、過剰表示される生物学的経路を特定するステップ;ならびに、過剰表示される経路に見られる1つ以上のマーカーを選択して、予測マーカー遺伝子セットを生成するステップ;それによって、PLSRに基づくモデルを生成するステップを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態において、コンセンサス重み付け法は、特異値分解に基づく方法である。いくつかの実施形態において、この方法は、少なくとも1つのデータ縮小ステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、この方法は、特性選択ステップをさらに含む。
本明細書に記載されるマーカー遺伝子であって、その特徴が、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩(例えば、MLN4924)での治療後の成果と関連する、マーカー遺伝子は、表1に提供される。本明細書に記載されるマーカー遺伝子であって、その特徴が、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブでの治療後の成果と関連する、マーカー遺伝子は、表2に提供される。本明細書に記載されるマーカー遺伝子であって、その特徴が、pan−キナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブでの治療後の成果と関連する、マーカー遺伝子は、表3に提供される。マーカー遺伝子に対応する、mRNAの配列、プローブセット標的の配列、すなわち、プローブセットが結合する配列もまた、表1、表2、および表3に提供される。表1、表2、および表3に列挙されるマーカー遺伝子は、偏在性であるか、または制限された発現を有するかのいずれかである、アイソフォームを有し得る。表1、2、および3の代表的な核酸配列番号は、代表的なアイソフォームタンパク質(例えば、最長または主要なアイソフォーム)をコードするmRNAのみを指し、これは、このようなアイソフォームの少なくとも前駆体を表し、必ずしも成熟タンパク質を表さない。これらの配列は、マーカー遺伝子が何であるかをそのアイソフォームまたは前駆体に限定することを意図するものではない。さらなるアイソフォームおよび成熟タンパク質は、当業者であれば、表1、表2、または表3に列挙されるID番号によって特定される、Entrez Gene(National Center for Biotechnology Information,Bethesda,MDが管理するデータベース)に提供される情報を概観することによって容易に読み取り、理解することができる。表中のプローブセット標的配列は、マーカー発現を測定するために実施例のAffymetrixアレイに使用される、プローブセット(プローブセット識別子によって特定される)によって結合される標的である。Affymetrixアレイ上のプローブセットの配列標的は、公的に容易に入手可能である(AFFYMETRIX(登録商標)Inc.Santa Clara CAのウェブサイトを参照されたい)。このような配列は、必ずしも翻訳され得るわけではなく、マーカー遺伝子の未翻訳部分を含み得る。マーカー遺伝子の発現は、多くの手段、例えば、対象から得られた、腫瘍細胞サンプル等のサンプルにおける、マーカー遺伝子核酸、マーカー遺伝子核酸によってコードされるタンパク質、またはプローブセット標的配列を定量化することによって、測定され得る。
マーカー遺伝子は検出可能であり、それらの特徴は、表1、表2、または表3に特定されるプローブセットとの接触によって測定され得る。マーカー遺伝子は検出可能であり、それらの特徴は、表1、表2、もしくは表3に特定されるプローブセットまたはその配列の相補体によって認識される配列からなる群から選択される配列との接触によって測定され得る。表1、表2、または表3に列挙される核酸およびタンパク質等の核酸またはタンパク質に結合する分子等、他の検出物質が、表1、表2、または表3に特定されるマーカー遺伝子の特徴を検出、特定、およびその測定を補助し得る。いくつかの実施形態において、表1、2、および3に列挙されるプローブセット以外のプローブセットが、表1、表2、または表3に特定されるマーカー遺伝子を検出および測定し得、Affymetrixヒト遺伝子発現アレイ、例えば、HG133もしくはHuman Gene 1.0 STもしくはU133 Plus 2.0アレイ(Affymetrix,Inc.,Santa Clara,CA)、Illuminaビーズチップ(Illumina,Inc.,San Diego,CA)、またはAgilent単一チャネルアレイ(Agilent Technologies,Santa Clara,CA)等の、種々のアレイに見出され得る。
マーカー遺伝子であって、その特徴、例えば、組成または発現が、NAE阻害治療、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療、例えばMLN4924等に対する応答を予測し得る、マーカー遺伝子の例としては、MYB、MYC、CGA、および/またはRGS10が挙げられる。いくつかの実施形態において、マーカー遺伝子セット、例えば、遺伝子であって、その特徴が、訓練セットとの比較のためのスコアを生成するために測定され、NAE阻害治療、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療、例えばMLN4924に対する応答を予測し得る遺伝子のリストは、マーカー番号1、マーカー番号1および2、マーカー番号2および3、マーカー番号3および4、マーカー番号1および4、マーカー番号1、2、および3、マーカー番号1、2、および4、マーカー番号1、3、および4、またはマーカー番号1、2、3、および4として表1に特定される1つ以上の遺伝子を含み得る。別の実施形態において、NAE阻害治療、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療、例えばMLN4924に対する応答を予測し得るマーカー遺伝子セットは、マーカー番号1〜3および5〜45として表1に特定されるマーカーを含む。いくつかの実施形態において、NAE阻害治療、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療、例えばMLN4924に対する応答を予測し得るマーカー遺伝子セットは、マーカー番号46および/または47(ABCC3および/またはABCG2)として表1に特定されるマーカーをさらに含む。別の実施形態において、NAE阻害治療、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療、例えばMLN4924に対する応答を予測し得るマーカー遺伝子セットは、マーカー番号1〜44、46〜48、50、51、53〜66、68、および69として表1に特定されるマーカーを含む、すなわち、マーカー番号45(VCAN)、49(BAG2)、52(CD36)、または67(PTPRM)を含まない。別の実施形態において、NAE阻害治療、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療、例えば、MLN4924に対する応答を予測し得るマーカー遺伝子セットは、マーカー番号1〜69として表1に特定されるマーカーを含む。
いくつかの実施形態において、本方法は、配列番号1〜69、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される、1つ以上の核酸の量を測定することによって、表1のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。他の実施形態において、本方法は、配列番号1〜69、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される核酸によってコードされる、1つ以上のポリペプチドまたはそのアイソフォームの量を測定することによって、表1のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、配列番号117〜185、およびそれらの断片からなる群から選択される1つ以上の核酸の量を測定することによって、表1のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。
いくつかの実施形態において、本方法は、配列番号70〜120、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される1つ以上の核酸の量を測定することによって、表2のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。他の実施形態において、本方法は、配列番号70〜120、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される核酸によってコードされる、1つ以上のポリペプチドまたはそのアイソフォームの量を測定することによって、表2のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。いくつかの実施形態において、本方法は、配列番号186〜232およびそれらの断片からなる群から選択される1つ以上の核酸の量を測定することによって、表2のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。
いくつかの実施形態において、本方法は、配列番号233〜345、およびそれらのスプライス変異形からなる群から選択される1つ以上の核酸の量を測定することによって、表3のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。他の実施形態において、本方法は、配列番号233〜345、およびそれらのスプライス変異形から成る群から選択される核酸によってコードされる、1つ以上のポリペプチドまたはそのアイソフォームの量を測定することによって、表1のマーカーのうちの1つ以上の遺伝子発現を測定することができる。
いくつかの実施形態において、治療に対する成果は、コアPLSRモデルにおいて過剰表示される経路の活性化と関連し得る。一実施形態において、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩での治療に対する好ましくない成果は、デカペンタプレジックに対向する母(mothers against decapentaplegic)のホモログ(SMAD)シグナル伝達および接着受容体誘導型シグナル伝達経路に対する形質転換成長因子(TGF)βの活性化と関連する。NEDD8依存性タンパク質分解の標的であるSMADおよびβ−カテニンの活性化は、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩での治療に対する好ましくない成果につながり得る。このような阻害剤は、β−カテニンおよびSMAD分解を阻害し、それによって、好ましくない成果を導き得るシグナル伝達をさらに刺激する。いくつかの実施形態において、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩での治療に対する好ましい成果は、転写因子、例えば、c−myc(MYC)およびc−myb(MYB)の上方制御と関連し、これらは、遺伝子増殖の制御因子であり、癌の進行と関連する。この転写因子の上方制御は、さらに、好ましくない成果と関連するとして特定された遺伝子のうちのいくつかの発現または活性を阻害することによって、好ましい成果を導き得る。表1は、これらの経路と関連するいくつかの遺伝子を含む。これらの経路における他の遺伝子は、本明細書に記載される使用のためのマーカーセットにおける経路を表し得、このマーカーセットに追加されてもよく、または表1のマーカーと置換されてもよい。
マーカー遺伝子セット、例えば、遺伝子であって、その特徴が訓練セットとの比較のためのスコアを生成するために測定され、EGFR阻害治療、例えばエルロチニブ治療に対する応答を予測し得る遺伝子のリストは、表2に特定される遺伝子のうちの1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブでの治療に対する成果は、PGE2経路、細胞接着ケモカインおよび接着経路、MEK−ERK経路とのクロストーク、またはErbB2誘導型乳癌細胞侵入経路等のEGFR関連経路における遺伝子の上方制御と関連する。表2は、これらの経路と関連するいくつかの遺伝子を含む。これらの経路における他の遺伝子は、本明細書に記載される使用のためのマーカーセットにおける経路を表し得、このマーカーセットに追加されてもよく、または表2のマーカーと置換されてもよい。
いくつかの実施形態において、pan−キナーゼ阻害剤、例えばソラフェニブでの治療に対する成果は、成長因子経路における遺伝子の上方制御と関連する。表3において、ソラフェニブ感受性株において高度に発現される遺伝子は、マーカー121〜132である。ソラフェニブ耐性細胞株において高度に発現される遺伝子は、マーカー133〜233である。成長因子経路におけるマーカーの選択により、コアソラフェニブ予測モデルを形成することができる。マーカー遺伝子であって、その特徴、例えば、組成または発現が、pan−キナーゼ治療、例えばソラフェニブに対する応答を予測し得るマーカー遺伝子の例は、PDGFRA、FGFR1、HGF、IGF1R、MET、TGFB2、TGFA、IGFBP3、IRS2、EGFR、およびIGFBP1を含み得る。
マーカー遺伝子の特徴の特定および/または測定を用いて、例えば、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療での腫瘍の治療によって、好ましい成果が予想され得るかどうか、またはNAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩阻害剤の代替治療および/またはそれを用いたより積極的な治療が、予想生存期間を改善し得るかどうかを決定することができる。例えば、本明細書に提供される組成物および方法を使用して、患者が、1−置換メチルスルファミン酸塩治療剤等のNAE阻害剤、または1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害剤の投薬もしくは投与レジメンに対して好ましい成果を有することが予想されるかどうかを決定することができる。これらの特定に基づいて、本発明は、限定することなく、1)NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩の治療レジメンが、好ましい成果の達成および/または癌の管理に有効であるかを決定するための方法および組成物、2)NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩での治療(単独で、もしくは薬剤の組み合わせで)ならびに腫瘍の治療に使用される投薬および投与の有効性を監視するための方法および組成物、3)例えば、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩での阻害治療レジメンを含む、腫瘍の治療のための方法および組成物、4)特定の患者における腫瘍の治療に有効な特定の治療剤および治療剤の組み合わせ、ならびに投薬および投与レジメンを特定するための方法および組成物、ならびに5)疾患管理戦略を特定するための方法および組成物を提供する。
マーカー遺伝子の特徴の特定および/または測定を用いて、例えば、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブ治療での腫瘍の治療によって、好ましい成果が予想されるかどうか、または、例えば、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブの代替治療および/またはそれを用いたより積極的な治療が、予想生存期間を改善し得るかどうかを決定することができる。例えば、本明細書に提供される組成物および方法を使用して、患者が、エルロチニブ等のEGFR阻害剤またはエルロチニブ等のEGFR阻害剤の投薬もしくは投与レジメンに対して好ましい成果を有すると予想されるかどうかを決定することができる。これらの特定に基づいて、本発明は、限定することなく、1)EGFR阻害剤、例えばエルロチニブの治療レジメンが、好ましい成果の達成および/または癌の管理に有効であるかを決定するための方法および組成物、2)EGFR阻害剤、例えばエルロチニブでの治療(単独で、もしくは薬剤の組み合わせで)ならびに腫瘍の治療に使用される投薬および投与の有効性を監視するための方法および組成物、3)例えば、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブの治療レジメンを含む、腫瘍の治療のための方法および組成物、4)特定の患者における腫瘍の治療に有効な特定の治療剤および治療剤の組み合わせ、ならびに投薬および投与レジメンを特定するための方法および組成物、ならびに5)疾患管理戦略を特定するための方法および組成物を提供する。
ユビキチンおよび他のユビキチン様分子(ubl)は、ublのC末端グリシンとのアシルアデニル酸中間体の形成を触媒する、特定の酵素(E1酵素)によって活性化される。活性化されたublは、次いで、チオエステル結合中間体の形成を通じてE1酵素内の触媒システイン残基に輸送される。E1−ubl中間体およびE2が会合して、チオエステル交換をもたらし、ここで、ublが、E2の活性部位システインに輸送される。ublは、次いで、直接またはE3リガーゼとともにのいずれかで、標的タンパク質のリジン側鎖のアミノ基とのイソペプチド結合形成を通じて標的タンパク質と共役する。神経前駆体細胞発現発生的下方制御(Neural precursor cell−Expressed Developmentally Downregulated)8(NEDD8)と称されるublは、ヘテロ二量体NEDD8活性化酵素(NAE、APPBP1−UBA3、UBE1C(ユビキチン活性化酵素E1C)としても知られる)によって活性化され、2つのE2共役酵素(ユビキチン輸送タンパク質12(UBC12)およびUBC17)のうちの1つに輸送され、最終的に、カリン−RINGサブタイプのユビキチンリガーゼによってNEDD8とカリンタンパク質とのライゲーションをもたらす。NEDD化(neddylation)の機能は、ならびにp27およびI−κBを含む多数の細胞周期および細胞シグナル伝達タンパク質の代謝回転に関与する、カリン系ユビキチンリガーゼの活性化である。Pan et al.,Oncogene 23:1985−97(2004)を参照されたい。NAEの阻害は、カリン−RINGリガーゼ媒介性タンパク質代謝回転を破壊し得、細胞、例えば、腫瘍細胞または病原生物、例えば、寄生生物におけるアポトーシス死をもたらし得る。Soucy et al.(2010)Genes&Cancer 1:708−716を参照されたい。
「E1酵素阻害剤」または「E1酵素の阻害剤」という用語は、本明細書に定義される構造を有し、E1酵素と相互作用し、その酵素活性を阻害することができる化合物を表して使用される。E1酵素活性の阻害は、基質ペプチドまたはタンパク質とのユビキチン様(ubl)共役(例えば、NEDD化)を活性化するE1酵素の能力を低減させることを意味する。いくつかの実施形態において、E1酵素阻害剤は、1つを上回るE1酵素を阻害し得る。他の実施形態において、E1酵素阻害剤は、特定のE1酵素に特異的である。種々の実施形態において、E1酵素活性のこのような低減は、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、または少なくとも約99%である。種々の実施形態において、E1酵素活性を低減させるのに必要とされるE1酵素阻害剤の濃度は、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満、約50nM未満、または約10nM未満である。
本明細書で使用されるとき、「NAE阻害剤」という用語は、NAEヘテロ二量体を阻害するE1酵素阻害剤を指す。NAE阻害剤の例としては、MLN4924(図1Bを参照されたい)を含む、1−置換メチルスルファミン酸塩(図1Aを参照されたい)が挙げられる。そのPCT出願が国際公開第07/092213号、同第06084281号、および同第2008/019124号として公開された、Langston S.らの米国特許出願第11/700,614号は、E1活性化酵素、例えば、NAEの有効な阻害剤である化合物を開示する(前述の公開特許出願のそれぞれの全内容は、参照により本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、NAE阻害剤は、他の(非NAEの)E1酵素を阻害しないか、または阻害が非常に弱い。化合物は、インビトロおよびインビボでNAE活性を阻害するのに有用であり、細胞増殖の障害、例えば癌、ならびにNAE活性と関連する他の障害、例えば病原性感染および神経変性障害の治療に有用である。Langston et al.に記載される化合物の1つのクラスは、4−置換((1S,2S,4R)−2−ヒドロキシ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}シクロペンチル)メチルスルファミン酸塩である。
MLN4924(((1S,2S,4R)−4−{4−[(1S)−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−1−イルアミノ]−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}−2−ヒドロキシシクロペンチル)メチルスルファミン酸塩;図1B)は、NAE特異的E1阻害剤であり、これは、カリン−RINGリガーゼ媒介性タンパク質代謝回転を破壊し、細胞タンパク質恒常性の混乱によってヒト腫瘍細胞におけるアポトーシス死をもたらす(Soucy et al.(2009)Nature 458:732−736)。細胞および腫瘍異種移植片研究におけるMLN4924の評価は、2つの異なる作用機序を明らかにした。第1のものは、CRL1SKP2およびCRL4DDB1基質Cdt−1のMLN4924媒介性異常制御によるDNA再複製、DNA損傷、および細胞死の誘導である(Milhollen et al.(2011)Cancer Res.71:3042−3051)。p53の状態は、DNA再複製の誘導に影響を及ぼさないが、細胞を、適切な遺伝的背景に応じてよりアポトーシスまたは老化を受けやすくすることが示されている(Milhollen et al.(2011)(上記)、Lin et al.(2010)Nature 464:374−379、およびLin et al.(2010)Cancer Res.70:10310−20)。第2の機序は、主として、リン酸化IκBαのCRL1βTRCP媒介性代謝回転の異常制御によるNF−κB依存性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫におけるNF−κB経路活性の阻害である(Milhollen et al.(2010)Blood 116:1515−1523)。加えて、急性骨髄性白血病(AML)の前臨床モデルは、Cdt−1異常制御、NF−κB阻害、および活性酸素種の誘導と関連する機序を通じて、細胞株および初代患者芽球の両方においてMLN4924阻害に感受性である(Swords et al.(2010)Blood 115:3796−3800)。
本明細書で使用されるとき、「EGFR阻害剤」という用語は、上皮成長因子受容体の阻害剤を指し、受容体を通じたシグナル伝達を妨害し得る。EGFR阻害剤は、例えば、EGFRによるアデノシン三リン酸(ATP)結合または加水分解を阻害することによる、チロシンキナーゼ阻害剤であり得る。EGFR阻害剤は、受容体への上皮成長因子の結合を妨害し得る。酵素のATP結合部位に結合するEGFR阻害剤の例としては、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(すなわち、エルロチニブ)およびN−(3−クロロ−4−フルオロ−フェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリン−4−イルプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(すなわち、ゲフィチニブ)が挙げられる。
本明細書で使用されるとき、「MYC」とは、v−myc骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(鳥類)、遺伝子ID 4609を指し、この遺伝子は、GenBank受託番号NM_002467、配列番号1(オープンリーディングフレームは、配列番号1のヌクレオチド526〜1890であり、GenPept受託番号NP_002458をコードする)と関連する。プローブセット202431_s_atは、配列番号117(配列番号1のヌクレオチド1580〜1997)を標的とする。MYCの他の名称には、bHLHe39、c−Myc、およびMRTLが挙げられる。MYCは、癌原遺伝子転写因子であり、細胞周期、転写、およびアポトーシスにおいて役割を果たす。これは、血液学的癌を含む種々の癌において役割を果たす。
本明細書で使用されるとき、「MYB」は、v−myb骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(鳥類)、遺伝子ID 4602を指し、8つのアイソフォームと関連する遺伝子であり、最長のアイソフォーム、GenBank受託番号NM_001130173、配列番号2(オープンリーディングフレームは、配列番号2のヌクレオチド200〜2485である)によって本明細書に表され、GenPept受託番号NP_001123645をコードする。プローブセット204798_atは、配列番号118(配列番号2のヌクレオチド3140〜3642)を標的とし、これはまた、他のMYBアイソフォームにおいても見出され得る。MYBの他の名称には、c−mybおよびefgが挙げられる。MYBは、造血における転写因子であり、血液学的癌を含む種々の癌において役割を果たす。
本明細書で使用されるとき、「CGA」は、糖タンパク質ホルモン、αポリペプチド、遺伝子ID 1081を指し、この遺伝子は、GenBank受託番号NM_000735、配列番号3(オープンリーディングフレームは、配列番号3のヌクレオチド143〜493である)と関連し、GenPept受託番号NP_000726をコードする。プローブセット204637_atは、配列番号119(配列番号3のヌクレオチド127〜649)を標的とする。CGAの他の名称には、CG−α、FSHA、GPHa、HCG、LHA、またはTSHAが挙げられる。CGAは、絨毛性ゴナドトロピンのαサブユニットであり、これは、妊娠初期に胎盤によって生成され、癌性細胞によって生成され得る。
本明細書で使用されるとき、「RGS10」は、G−タンパク質シグナル伝達の制御因子10、遺伝子ID 6001を指し、2つのアイソフォームと関連する遺伝子であり、より短いアイソフォーム、GenBank受託番号NM_002925、配列番号4(オープンリーディングフレームは、配列番号4のヌクレオチド64〜567である)によって本明細書に表され、GenPept受託番号NP_002916をコードする。プローブセット204319_atは、配列番号120(配列番号4のヌクレオチド111〜649)を標的とする。RGS10は、タンパク質を活性させ、Gタンパク質サブユニットを不活性化させる、GTPaseとして作用し得る。RGSは、腫瘍細胞の生存を含む、細胞生存を制御し得る。
NAE阻害剤、例えば、1−置換メチルスルファミン酸塩での治療時の成果、例えば治療に対する応答、早期疾患再発の可能性、または生存期間を予測するために、血液学的腫瘍(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍(例えば、メラノーマ、食道癌、肺癌、もしくは膀胱癌)におけるマーカー遺伝子の特徴を測定するための組成物および方法が、提供される。マーカーは、MLN4924での治療に対する感受性を示す腫瘍細胞の発現プロファイルに基づいて特定された。観察された感受性は、一般に、1つを上回る方法によって試験される腫瘍細胞間において一貫している。
EGFR阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ阻害剤での治療時の成果、例えば、治療に対する応答、早期疾患再発の可能性、または生存期間を予測するための、肺癌、膵臓癌、または乳癌腫瘍におけるマーカー遺伝子の特徴を測定するための組成物および方法が、提供される。マーカーは、エルロチニブでの治療に対する感受性を示す腫瘍細胞の発現プロファイルに基づいて特定された。
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術および科学用語は、本発明が属する当業者によって一般に理解される意味を有する。概して、本明細書に記載の細胞および組織培養、分子生物学、ならびにタンパク質およびオリゴまたはポリヌクレオチド化学反応およびハイブリダイゼーションに関連して利用される命名法、ならびにそれらの技法は、当技術分野で既知のものである。GenBankまたはGenPept受託番号ならびに有用な核酸およびペプチド配列は、National Center for Biotechnology Information,Bethesda,MDが管理するウェブサイトで見つけることができる。本出願(表を含む)を通じて引用されるすべてのデータベース受託記録内容(例えば、HG133アレイ注釈ファイル、Entrez、Gene、GenBank、RefSeq、COSMICからのもの)は、参照により本明細書に組み込まれる。いずれも2003年6月9日付けのFASTAファイル(AFFYMETRIX(登録商標),Inc.,Santa Clara,CAのウェブサイトを参照されたい)である、HG−133Aプローブ配列およびHG−133Bプローブ配列を開示するファイルの内容もまた、参照により本明細書に組み込まれる。標準の技法が、DNA組み換え、オリゴヌクレオチド合成、タンパク質精製、組織培養、ならびに形質転換およびトランスフェクション(例えば、エレクトロポレーション、リポフェクション等)に使用される。酵素反応は、製造業者の仕様書に従って、または当該技術分野で一般に達成されるか、または本明細書に記載のように行われる。前述の技法および手順は、概して、当技術分野で既知の方法、例えば、本明細書を通して引用され、かつ論じられる様々な一般的かつより具体的な参考文献に記載の方法に従って行われる。例えば、Sambrook et al.(2000)Molecular Cloning:A Laboratory Manual(3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)またはHarlow,E.and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY)を参照されたい。本明細書に記載の分析化学、有機合成化学、ならびに医薬品および薬化学に関連して利用される命名法、ならびにそれらの実験室手順および技法は、当技術分野で既知である。標準の技法が、化学合成、化学分析、薬学的調製、製剤化、および送達、ならびに患者の治療に使用される。さらに、別途文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含むものとし、複数形の用語は、単数形を含むものとする。「1つ(a)」および「1つ(an)」という冠詞は、本明細書において、1つまたは1つを上回る(すなわち、少なくとも1つの)その冠詞の文法上の目的語を指して使用される。例として、「1つの要素(an element)」は、少なくとも1つの要素を意味し、1つを上回る要素を含み得る。矛盾が生じた場合、定義を含む本明細書が支配するものとする。
本明細書で使用されるとき、「好ましい」成果または予後は、長期の生存期間、長期の無増悪期間(TTP)、長期の無増悪生存期間、および/または良好な応答を指す。逆に、「好ましくない」予後は、短期の生存期間、短期の無増悪期間(TTP)、短期の無増悪生存期間、および/または応答不良を指す。
本明細書で使用されるとき、本明細書に使用される「マーカー遺伝子」とは、遺伝子であって、その対応する「マーカー」または「バイオマーカー」物質、例えば、核酸および/またはタンパク質が、それらの分析、例えば、検出、測定、シークエンシング、および/または定量化により、薬剤、例えば、1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害剤またはエルロチニブ等のEGFR阻害剤での治療の成果に関する情報が提供される、特徴、例えば、組成または量(複数可)を有する、遺伝子を指す。例えば、マーカーには、マーカー遺伝子物質であって、その特徴、例えば、組成または量が、短期生存期間を有する患者を示す、マーカー遺伝子物質、例えば、核酸またはタンパク質が含まれるか、あるいは、マーカーには、長期生存期間の患者を示す、特徴、例えば、組成または量を示す、マーカー遺伝子物質、例えば、核酸またはタンパク質が含まれる。別の例では、マーカーには、マーカー遺伝子物質であって、その特徴、例えば組成または量が、治療に対する応答不良を有する患者を示す、マーカー遺伝子物質、例えば、核酸またはタンパク質が含まれるか、あるいは、マーカーには、マーカー遺伝子物質であって、その特徴、例えば組成または量が、良好な応答を有する患者を示す、マーカー遺伝子物質、例えば、核酸またはタンパク質が含まれる。さらなる例において、マーカーには、マーカー遺伝子物質であって、その特徴、例えば、組成または量が、疾患が治療時の短期の無憎悪期間(TTP)または無憎悪生存期間を有する患者を示す、マーカー遺伝子物質、例えば、核酸またはタンパク質が含まれるか、あるいは、マーカーには、マーカー遺伝子物質であって、その特徴、例えば、組成または量が、疾患が治療時の長期のTTPまたは無憎悪生存期間を有する患者を示す、マーカー遺伝子物質、例えば、核酸またはタンパク質が含まれる。したがって、本明細書で使用されるとき、マーカーは、これらの可能性の1つ1つを含むよう意図されており、さらに、それぞれの単一マーカーを、マーカーとして個別に含み得るか、または代替として、「マーカー」もしくは「マーカーセット」について言及されるとき、特徴のうちの1つ以上もしくはすべてを集合的に含み得る。
「マーカーセット」または「マーカー遺伝子セット」は、2つ以上(例えば、約2、3、4、5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、100、150、200、300、または400個)の本発明のマーカーまたはマーカー遺伝子を含む、マーカーの群である。
「マーカー核酸」は、本発明のマーカー遺伝子によってコードされるかまたはそれらに対応する、核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、cDNA)である。このようなマーカー核酸には、限定することなく、プローブおよびプローブセットによって認識される核酸配列、例えば、プローブセットが結合する標的配列、全長配列または部分配列、例えば、ゲノムDNAのエクソンのうちの1つ以上(最大でマーカー遺伝子のうちのいずれかのオープンリーディングフレームを含む)またはこのような配列の相補体を含む、DNA、例えばゲノムDNA(例えば、そこに発生する任意のイントロンを含む)のセンスおよびアンチセンス鎖が含まれる。マーカー核酸はまた、任意のマーカーの全長もしくは部分配列またはそのような配列の相補体を含むRNAを含み、ここで、すべてのチミジン残基はウリジン残基と置き換えられ、RNAは、ゲノムDNAの転写によって生成され(すなわち、スプライシングの前に)、RNAは、ゲノムDNAから転写されたRNAのスプライシングによって生成され、本明細書で使用されるとき、「マーカー核酸」はまた、ゲノムDNAの転写によって生成されたRNA(スプライシングされたRNAを含む)の逆転写によって作製されたcDNAを含み得る。マーカー核酸はまた、遺伝コードの縮重のため、本発明のマーカーに対応するタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なる配列、したがって同じタンパク質をコードする配列を含む。本明細書で使用されるとき、「対立遺伝子変異形」という語句は、所与の遺伝子座に生じるヌクレオチド配列、またはそのヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドを指す。このような天然に存在する対立遺伝子変異は、典型的には、所与の遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の不一致をもたらし得る。代替の対立遺伝子は、例えば、癌を有さない個体の細胞、例えば、生殖系列細胞中のいくつかの異なる個体の目的とする遺伝子をシークエンシングすることによって特定され得る。これは、様々な個体の同一の遺伝子座を特定するために、ハイブリダイゼーションプローブを用いて容易に実行され得る。天然に存在する対立遺伝子変異の結果であり、かつ野生型マーカー遺伝子の機能活性を変化させない、ありとあらゆるそのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型または変異の検出は、本明細書に記載のマーカーの野生型バージョンの範囲内に収まることが意図される。「マーカータンパク質」は、本発明のマーカー、例えば、核酸によってコードされるか、またはそれに対応する、例えば、マーカー遺伝子に対応するRNAの翻訳によって生成されるタンパク質である(すなわち、膜貫通シグナル配列等の通常切断される領域の切断の前および後両方のタンパク質を含む)。「タンパク質」および「ポリペプチド」という用語は、同義に使用される。マーカーのタンパク質は、具体的には、その名称またはアミノ酸配列で言及され得るが、当業者であれば、変異、欠失、および/または翻訳後修飾が、タンパク質構造、外観、細胞位置、および/または挙動に影響を与え得ることを理解する。別途示されない限り、そのような違いは本明細書で区別されず、本明細書に記載のマーカーは、そのような違いのうちのいずれかまたはすべてを含むよう意図される。
本明細書で使用されるとき、マーカーの「特徴」は、その大きさ、配列、組成、または量である。特徴は、予後または成果と相関し得る。マーカーの特徴についての情報は、マーカー核酸、例えば、DNAもしくはRNA、またはマーカー遺伝子に対応するマーカータンパク質のいずれかを分析、例えば、検出、測定、シークエンシング、および/または定量化することによって、得ることができる。特徴、例えば、組成(例えば、塩基もしくはアミノ酸組成またはペプチド消化もしくは遺伝子断片パターン)または量(例えば、コピー数および/もしくは発現レベル)、大きさ(例えば、長さもしくは分子量)、配列(例えば、核酸配列もしくはタンパク質配列)は、それが存在するかもしくは不在であるか、野生型もしくは変異であるか、分析されるマーカー物質のベースライン、閾値、カットオフ、参照、もしくは通常の量よりも高いか低いか、についての情報を提供し得る。マーカーの情報的に有益な発現レベルは、測定された発現レベルと成果との統計学的相関に基づいて決定され得る。特徴の統計学的分析の結果は、本明細書に記載される方法に使用するマーカーを選択するための閾値または範囲を確立し得る。あるいは、異なる特徴、例えば組成または量を有する、マーカー、例えばマーカー遺伝子は、成果を予測する量の範囲を呈する。なおもさらに、マーカーのセットは、ともに、それらの特徴、例えば、組成または量の組み合わせが、本明細書に提供される方法によって決定されるマーカー遺伝子セットの所定のスコアと一致するか、またはそれを上回るかもしくは下回るかのいずれかである場合、予測となり得る。マーカー遺伝子のマーカー(例えば、核酸もしくはタンパク質)の1つのみの特徴の分析は、予後を導く、すなわち、成果を示す、結果を提供し得る。マーカーまたはマーカー遺伝子に対応する1つを上回るマーカー物質の1つを上回る特徴の分析は、1つを上回る分析の結果が、互いに一致する場合、すなわち、結果の生物学が矛盾しない場合、予後を導く結果を提供し得る。マーカーまたはマーカー遺伝子に対応する1つを上回るマーカー材料の複数の特徴の測定からの一貫した結果の例は、DNAもしくはRNAにおけるナンセンス変異もしくは欠失、およびコードされたタンパク質の低量もしくは低分子量、または通常よりも多い、例えば2つを上回る、コピー数の遺伝子、ならびにmRNAの高発現またはコードされたタンパク質の高活性の特定であり得る。タンパク質が、その活性レベルに基づいてその合成を制御するフィードバックループを有する経路内に存在するとき、異なる例が生じ得る。この例において、低量または低活性のタンパク質は、マーカー遺伝子変異のため、組織としての豊富な量のそのmRNAに関連し得、したがって、タンパク質活性に飢えており、タンパク質産生を繰り返しシグナル伝達する。
本明細書で使用されるとき、「遺伝子欠失」は、2に満たないDNAのコピー数の量を指し、「増幅」は、2を超えるDNAのコピー数の量を指す。「2倍体」量は、2に等しいコピー数を指す。「2倍体または増幅」という用語は、遺伝子コピーが「欠失していない」と解釈され得る。代替の情報的に有益な量が遺伝子欠失であるマーカーにおいて、増幅は通常見られない。逆に、「2倍体または欠失」という用語は、コピー数が「増幅していない」と解釈され得る。代替の情報的に有益な量が増幅であるマーカーにおいて、遺伝子欠失は通常見られない。明確にするために、配列欠失は、マーカー遺伝子変異の結果として遺伝子内で生じ得、転写されたタンパク質の不在またはmRNAまたはタンパク質の短縮をもたらし得る。そのような欠失は、コピー数に影響を与え得ない。
「無憎悪期間」(TTP)または「無憎悪生存期間」(PFS)という用語は、患者が、疾患、例えば、治療によってもたらされた安定な疾患を有して生存し、疾患が活動性の進行性疾患に変わるまでの薬剤での治療後の期間の長さを指す。これらの用語は、技術的には異なる期間を指すが、高度な重複を有し、本明細書において、治療と再発との間の期間、例えば、長期間または短期間を指して、同義に使用される。時には、治療は、良好な応答でも応答不良でもない安定した疾患、例えば、ある期間の間、疾患が単に悪化しない、例えば、進行性、すなわち活動性の疾患とならない最小応答(MR)をもたらす。治療の期間から進行性疾患期間までの期間は、少なくとも2〜6週間、少なくとも4〜8週間、少なくとも2〜4か月、少なくとも3〜6か月、または6か月超であり得る。
「長期の生存期間」および「短期の生存期間」という用語は、患者、例えば、癌患者が生存することが予測される治療の初回投与を受けた後の期間を指す。「長期生存者」とは、短期生存者として特定された患者よりも遅い進行速度を有するか、または腫瘍による死が遅いことが予想される患者を指す。「生存期間の改善」または「より遅い死亡速度」は、例えば、集団の70%、80%、90%以上が治療の初回投与を受けた後に十分な期間生存するような参照基準と比較した、本明細書に記載のマーカーのうちの1つ以上の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量に基づいて決定された推定寿命である。「より速い死亡速度」または「より短い生存期間」とは、例えば、集団の50%、40%、30%、20%、または10%以下が治療の初回投与を受けた後に十分な期間生存しないような参照基準と比較した、本明細書に記載のマーカーのうちの1つ以上の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量に基づいて決定された推定寿命を指す。いくつかの実施形態において、十分な期間とは、癌療法を受けた初日から測定して少なくとも6、12、18、24、または30ヶ月である。
治療薬との接触なしでの癌の成長と比較して、癌の成長速度が治療薬との接触の結果として抑制される場合、疾患、例えば、癌、組織、例えば、腫瘍もしくは細胞、例えば、腫瘍由来の細胞株もしくは細胞は、治療に対して「応答性」もしくは「感受性」であるか、または治療への「良好な応答」が存在する。治療薬との接触なしでの癌の成長と比較して、癌の成長速度が治療薬との接触の結果として抑制されない場合、または非常に低い程度にしか抑制されない場合、疾患、例えば、癌、組織、例えば、腫瘍もしくは細胞、例えば、腫瘍由来の細胞株もしくは細胞は、治療薬に対して「非応答性」もしくは「耐性」であるか、または「応答不良」が存在する。癌の成長は、様々な方法で測定され得、例えば、特徴、例えば、腫瘍の大きさまたはその腫瘍型に適切な腫瘍マーカーの発現が測定され得る。例えば、骨髄腫と関連するマーカーの特定、およびNAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩治療に対するその応答を支援するために使用される応答定義である、Blade et al.(1998)Br J Haematol.102:1115−23に記載されるSouthwestern Oncology Group(SWOG)基準が用いられ得る。これらの基準は、骨髄腫において測定される応答の種類を定義し、疾患増悪までの期間も特徴付け、これは、腫瘍の治療薬に対する感受性のもう1つの重要な尺度である。固形腫瘍の場合、固形腫瘍における応答評価基準(RECIST)ガイドライン(Eisenhauer et al.(2009)E.J.Canc.45:228−247)を用いて、固形腫瘍に関連したマーカーの特定および固形腫瘍のNAE阻害剤またはEGFR阻害剤に対する応答を支援することができる。国際ワーキンググループは、様々な種類の癌の応答基準を設定、更新、および公開するために定期的に招集されている。そのような公開された報告に従って、対象の腫瘍のマーカーの特定およびそれらのNAE阻害剤またはEGF阻害剤に対する応答を支援することができる。例としては、急性骨髄性白血病(AML、Cheson et al.(2003)J.Clin.Oncol.21:4642−4649)、リンパ腫、例えば、非ホジキンおよびホジキンリンパ腫(Cheson et al.(2007)J.Clin.Oncol.25:579−596)の基準である。基準は、細胞組成(例えば、血液塗抹標本もしくは骨髄生検中の芽球数、有糸分裂像の存在および数)または組織構造(例えば、不規則な組織構造もしくは基底膜の細胞浸潤)を特定するための組織学的方法等の従来の方法に加えて、陽電子放出断層撮影(PET)(例えば、測定可能な代謝活性変化を有する部位(例えば、腫瘍部位)を特定するか、またはインビボで腫瘍中の特異的マーカーを追跡するもの)、免疫組織化学分析(例えば、特異的腫瘍マーカーへの抗体の結合を検出することによって腫瘍細胞を特定するもの)、およびフローサイトメトリー(例えば、差次的マーカーおよび蛍光染色によって細胞型を特徴付けるもの)等の分析方法を考慮に入れる。NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩等治療、またはEGFR阻害剤、例えばエルロチニブに対して応答する性質は、変わりやすい性質であり得、異なる癌は、異なる条件下で、所与の治療薬に対して異なるレベルの「応答性」を呈する。なおもさらに、応答性の尺度は、患者の生活の質、転移の程度等を含む腫瘍成長の大きさを超えたさらなる基準を用いて判定され得る。加えて、臨床予後マーカーおよびその変形は、適用可能な条件下で判定され得る(例えば、骨髄腫中のMタンパク質、前立腺癌におけるPSAレベル)。
「治療」とは、疾患を予防または阻害する、例えば、腫瘍成長を阻害する、ならびに腫瘍の縮小を引き起こす、および/またはより長期の生存期間を提供する、治療法の使用を意味するものとする。治療は、腫瘍の転移の予防も含むことが意図される。疾患、例えば、癌または腫瘍の少なくとも1つの症状(応答性/非応答性、無増悪期間、または当技術分野で既知であり、本明細書に記載される指標によって決定される)が、緩和されるか、なくなるか、遅延するか、最小限に抑えられるか、または予防される場合、疾患、例えば、腫瘍は、「阻害される」か、または患者は、「治療される」。本明細書にさらに記載される治療レジメン(例えば、NAE阻害剤、例えば1−置換メチルスルファミン酸塩のレジメン、またはEGFR阻害剤、例えばエルロチニブのレジメン)を用いた治療に従う患者の任意の症状(身体症状またはその他の症状)の任意の改善は、本発明の範囲内である。
本明細書で使用されるとき、「薬剤」という用語は、腫瘍細胞を含む、疾患細胞または組織、例えば癌細胞が、治療プロトコルにおいて曝露され得る任意のものとして広く定義される。本発明の文脈において、そのような薬剤には、1−置換メチルスルファミン酸塩等のNAE阻害剤、エルロチニブ等のEGFR阻害剤、ならびに当技術分野で既知であり、かつ本明細書でさらに詳細に説明される化学療法剤が含まれるが、これらに限定されない。
「プローブ」という用語は、特異的に目的とされた標的分子、例えば、本発明のマーカーに選択的に結合することができる任意の分子を指す。プローブは、当業者によって合成されるか、または適切な生物学的調製物から得られるかのいずれかであり得る。標的分子の検出の目的のために、プローブは、本明細書に記載されるように標識されるように特異的に設計され得る。プローブとして利用され得る分子の例として、RNA、DNA、タンパク質、抗体、および有機単量体が挙げられるが、これらに限定されない。
マーカーの「標準的な」特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量は、「参照サンプル」の特徴、例えば、組成または量を指し得る。参照サンプルは、疾患組織、例えば腫瘍が由来するものと同じ患者由来の正常な、例えば生殖系列の対応サンプルであり得る。参照サンプルは、疾患を有さない健常対象由来のサンプルであり得る。特徴の参照値は、例えば、複数の対象における野生型マーカーの特徴の平均値、例えば、組成または量であり得る。特徴、例えば、組成または量の参照値は、例えば、アレイ中のゲノム全体にわたり正規化される、参照データベースからの1つ以上のマーカーのレベル、例えば、ベースライン、例えば、組成または量から構成され得る。標準的な量のDNAコピー数は、通常のDNAコピー数が1である男性(雄性)のX連鎖遺伝子を除き、2または2倍体である。
「相補性」とは、2つの核酸鎖の領域間または同一の核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広範な概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、第1の領域に逆平行の第2の核酸領域の残基がチミンまたはウラシルである場合、この残基と特異的水素結合を形成(「塩基対合」)することができることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、第1の鎖に逆平行の第2の核酸鎖の残基がグアニンである場合、この残基と塩基対合することができることが知られている。2つの領域が逆平行様式で配置されるときに、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が第2の領域の残基と塩基対合することができる場合、核酸の第1の領域は、同一または異なる核酸の第2の領域と相補的である。ある実施形態において、第1の領域が第1の部分を含み、第2の領域が第2の部分を含み、それにより、第1および第2の部分が逆平行様式で配置されるとき、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%、またはすべてが、第2の部分のヌクレオチド残基と塩基対合することができる。
「相同」とは、本明細書で使用されるとき、同一の核酸鎖の2つの領域間または2つの異なる核酸鎖の領域間のヌクレオチド配列類似性を指す。両方の領域内のヌクレオチド残基位置が同一のヌクレオチド残基によって占有されるとき、それらの領域は、その位置で相同である。第1の領域は、それぞれの領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基位置が同一の残基によって占有される場合、第2の領域と相同である。2つの領域間の相同性は、同一のヌクレオチド残基によって占有される2つの領域のヌクレオチド残基位置の割合で(すなわち、パーセント同一性によって)表される。一例として、ヌクレオチド配列5’−ATTGCC−3’を有する領域およびヌクレオチド配列5’−TATGGC−3’を有する領域は、50%の同一性で相同性を持つ。一実施形態において、第1の領域は第1の部分を含み、第2の領域は第2の部分を含み、それにより、これらの部分のそれぞれのヌクレオチド残基位置の少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、同一のヌクレオチド残基によって占有される。100%同一性の実施形態において、これらの部分のそれぞれのすべてのヌクレオチド残基位置は、同一のヌクレオチド残基によって占有される。
本明細書で別途特定されない限り、「1つの抗体」および「複数の抗体」という用語は、抗体の天然に存在する形態、例えば、ポリクローナル抗体(例えば、IgG、IgA、IgM、IgE)、ならびにモノクローナルおよび組み換え抗体、例えば、一本鎖抗体、二本鎖および多重鎖タンパク質、キメラ、CDR移植、ヒトおよびヒト化抗体、ならびに多特異的抗体、ならびに前述のすべての断片および誘導体(それらの断片(例えば、dAbs、scFv、Fab、F(ab)’2、Fab’)および誘導体は、少なくとも1つの抗原結合部位を有する)を広く包含する。抗体誘導体は、タンパク質または抗体に共役される化学的部分を含み得る。「抗体」という用語は、合成変異形および遺伝子操作された変異形も含む。
「キット」は、本発明のマーカーまたはマーカーセットを特異的に検出するための少なくとも1つの試薬、例えば、プローブを含む任意の製品(例えば、パッケージまたは容器)である。この製品は、例えば患者から得られたサンプルにおいて、本発明の方法を、例えばインビトロで実行するために、販売促進されるか、分配されるか、販売されるか、または一つの単位として売り出され得る。そのようなキットに含まれる試薬は、マーカー発現の検出または測定に使用されるプローブ/プライマーおよび/または抗体を含み得る。加えて、本発明のキットは、好適な検出アッセイを説明する取扱説明書を包含し得る。このようなキットは、例えば、臨床試験または受託試験環境において、癌の症状を呈する患者の診断、評価、または治療を可能にするために、記録、記憶、送信、または受信される、1つ以上のマーカーの発現レベル、特徴、例えば、組成に関する情報を生成するために好都合に使用され得る。いくつかの実施形態において、キットは、例えば、血液学的癌、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、リンパ腫(例えば、非ホジキンリンパ腫)、白血病(例えば、急性骨髄性白血病)、および固形腫瘍(例えば、皮膚、肺、乳房、卵巣等の腫瘍)を含む、NAE阻害治療で治療することができる癌が存在する可能性を呈する患者に使用され得る。他の実施形態において、キットは、肺癌、乳癌、膵臓癌、および肺癌の脳への転移を含む、EGFR阻害治療で治療することができる癌が存在する可能性を呈する患者に使用され得る。
本方法および組成物は、癌を罹患する患者の診断および治療に使用され得る。癌または腫瘍は、本方法に従って治療または診断され得る。「癌」または「腫瘍」は、初期の腫瘍および任意の転移を含む、患者における任意の腫瘍成長を含むことを意図する。癌は、血液学的または固形腫瘍型のものであり得る。血液学的腫瘍には、例えば、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫、白血病(例えば、ワルデンシュトレーム症候群、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、他の白血病)、リンパ腫(例えば、B細胞リンパ腫、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫)、および骨髄異形成症候群を含む、血液学的起源の腫瘍が含まれる。固形腫瘍は、臓器で発生し得、皮膚癌、肺癌、脳癌、乳癌、前立腺癌、卵巣癌、結腸癌、腎臓癌、膵臓癌、肝臓癌、食道癌、胃癌、腸癌、膀胱癌、子宮癌、頸癌、精巣癌、副腎癌等の癌を含む。本明細書で使用されるとき、腫瘍細胞を含む癌細胞は、異常な(増加した)速度で分裂する細胞、またはその成長もしくは生存期間の制御が、癌細胞が発生または生存する同一の組織中の細胞とは異なる細胞を指す。癌細胞には、癌腫、例えば、扁平上皮癌、基底細胞癌、汗腺癌、脂腺癌、腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、未分化癌、気管支癌、メラノーマ、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌(bile duct carcinoma)、胆管癌(cholangiocarcinoma)、乳頭癌、移行上皮癌、絨毛腫、セミノーマ、胎生期癌、乳癌、消化管癌、結腸癌、膀胱癌、前立腺癌、および頸頭部領域の扁平上皮癌中の細胞;肉腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索肉腫(chordosarcoma)、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、滑膜肉腫、および中皮肉腫中の細胞;血液癌、例えば、骨髄腫、白血病(例えば、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、顆粒球性白血病、単球性白血病、リンパ球性白血病)、およびリンパ腫(例えば、濾胞性リンパ腫、マントル細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、悪性リンパ腫、形質細胞腫、細網肉腫、またはホジキン病)中の細胞;ならびに神経膠腫、髄膜腫、髄芽腫、神経鞘腫、または上衣腫を含む神経系の腫瘍中の細胞が含まれるが、これらに限定されない。
バイオマーカーのモデル化フレームワーク
薬物応答のバイオマーカーに関して、近年、FDA主導のプロジェクト(Shi et al.(2010)Nat.Biotechnol.28:827−838)が、臨床エンドポイントの予測に遺伝子発現データを使用する方法を評価するために行われた(MAQCII:MicroArray Quality Contol II)。このプロジェクトにおいて、36の独立したチームが6つのマイクロアレイデータセットを分析して、サンプルを13個のエンドポイントのうちの1つに分類するための予測モデルが生成された。独立した試験データを使用して、この研究は、ほとんどのチームの遺伝子発現に基づく予測モデルが、エストロゲン受容体の状態および肝臓の全体的な壊死スコアを含む、いくつかのエンドポイントに対して非常に良好に機能することを見出した。しかしながら、患者の群分けに(分類の問題を解決するために)任意のカットオフ(24か月)が事前選択されていたため、全てのチームが、多発性骨髄腫患者に対しては全生存について予測不良であった。一方で、多発性骨髄腫症例における遺伝子発現および全生存の両方のデータは連続変数であるため、回帰に基づく予測モデルも構築することができる(回帰問題を解決するため)。実際に、もともと多発性骨髄腫データセットを生成したチームは、データの分析に単変量のCox回帰アプローチを採用し、約14%の患者の「高危険性」サブグループを定義することができるシグネチャー遺伝子セットを特定することができた(Zhan et al.(2006)Blood 2020−2028)。このシグネチャーを後で検証することにより、クラス帰属関係(class membership)を事前定義することなく回帰アプローチを用いることの利点が強調された。
IC50データに適用することができ、サンプルサイズの必要性が最小限でありながら多数の独立変数を扱うことができるため、本明細書では部分最小二乗回帰(PLSR)モデル化アプローチを利用する。さらに、訓練データセット中のコンセンサスな特性を捕捉した後に、経路に基づくフィルタ処理ステップによりモデルの性能を損ねることなくシグネチャー遺伝子セットを高度に縮小するための特別なスプリット戦略が、実装され得る。近年、モデル性能を改善するために機能上の群(経路およびネットワーク)が、遺伝子発現に基づく予測モデル構築アプローチに組み込まれている(Nikolsky et al.(2011)Applied Statistics for Network Biology:Methods in Systems Biology,415−442で概説される)。複数の比較研究において、経路記述子の性能は、比較的小さな遺伝子発現データセットにおいてさえも、遺伝子シグネチャーと類似であるか、またはそれを上回った。さらに、機能上の予測因子は、分子の腫瘍不均質性に対してはあまり感受性ではない可能性があり、したがって、より強力な予測因子であり得る(同じ経路由来の異なる遺伝子が、異なる患者においては改変されている可能性があるため)。
典型的なバイオマーカーのモデル化アプローチでは、データセットを訓練サブセットと試験サブセットとに分割する:訓練サブセットにおいてモデルを訓練し、次いで試験サブセットでそれを試験する。このプロセスを何度も繰り返すことによって、試験サブセットにおけるモデル性能に関する分布を生成することができる。この分布の平均または中央値が、モデル性能を示すのに使用される。一態様において、本明細書に記載されるバイオマーカーのモデル化フレームワークにより、データセット全体にわたり重要な特性を表し得る上位性能モデル(複数可)を見出すことができる。上位モデル(複数可)は、無作為スプリットの分布の平均または中央値よりも良好な性能を有し得、したがって、例えば、治療の成果に関する、高い予測能力を提供し得る。一実施形態において、予測モデルを構築するための方法は、例えば、細胞株に対する薬剤活性のインビトロスクリーニングで試験した細胞株から、または薬物もしくは薬剤で治療した患者、例えばヒト、例えば癌患者のサンプルからの、遺伝子発現データのみを使用することに重点を置く。遺伝子発現データは、当該技術分野で既知標準的な方法により容易に入手可能であるか、本明細書に、もしくは公開された研究からの公的なデータベースでオンラインに記載されるか、または研究者により公的な場所に保管されている。他の実施形態において、予測モデルを構築するための方法は、遺伝子増幅データまたは遺伝子変異データを単独または遺伝子発現データと組み合わせて使用することに重点を置き得る。
いくつかの実施形態において、この方法は、薬剤に対する既知の応答、例えば、薬剤に対する感受性または耐性により、サンプル、例えば培養細胞または患者由来のサンプル、例えば腫瘍サンプルにおける可能性のあるマーカーの特徴、例えば発現データを審査することを含む。いくつかの実施形態において、バイオマーカーのモデル化フレームワークを構築するための方法は、訓練および試験のために、種々の形、例えば、薬剤での治療時のIC50、EC50、応答、無憎悪期間もしくは無憎悪生存期間、または全生存で整理されたサンプル、例えば細胞もしくは腫瘍から、データセット、例えば、特性の集合物、または可能性のあるマーカーを選択すること;特性を訓練および試験、例えばsep試験のサブセットにスプリットすること;例えば、順方向検索を用いてコンセンサスな遺伝子の重み付けを行って、コア部分最小二乗回帰(PLSR)モデル、例えば、マーカーセット、例えば、マーカー遺伝子セットを見出すこと;ならびに、マーカーセットを集中させる経路の関与に基づいてマーカーを選択すること、を含み得る。
一実施形態において、特性選択の前に、本方法は、少なくとも1つのデータ縮小ステップを含み得る。データ縮小は、データを正規化するステップ、強度閾値を確立するステップ、および分散閾値を適用するステップからなる群から選択されるステップのうちの1つ以上を含み得る。各サンプル、例えば細胞株における各遺伝子の特徴、例えば発現のベースラインを安定化させるために、遺伝子発現アレイのデータ正規化プロセスは、例えば、分位点に基づくアプローチを使用した全ゲノムにわたるロバストマルチアレイ(RMA)平均であり得る。プラットフォーム、例えば、アレイ全体でデータを正規化する理由は、個々のマーカー、例えば遺伝子の特徴が、異なる条件下または異なるサンプルでは異なる可能性があるが、プラットフォーム全体、例えばアレイ内の全ゲノム、およびその分布は、マーカーの大半が条件によって規制されないため、互いに類似となるはずであることである。強度閾値は、その系にあまり存在していない可能性のある特徴、およびしたがって、弱いバックグラウンド強度を生成している可能性のある特徴が含まれるのを最小限にするために、例えば、特徴の測定値の30%、40%、50%、60%の強度であり得る。一実施形態において、強度閾値は40%である。分散閾値、例えば、カットオフは、特徴、例えば発現が、サンプルによって変動する特性、例えばマーカー遺伝子のみを保持するように、0.25、0.5、0.75、1.0、1.25、1.5、2.0、2.5、またはそれ以上であり得る。一実施形態において、分散閾値は1.0である。一実施形態において、特性選択の前に、本方法は、データの正規化、強度閾値の確立、および分散閾値の適用から構成されるデータ縮小ステップを含む。
選択したデータセット、例えば、縮小したデータセット、例えば、プローブセットによって特定された特性をフィルタ処理したものから、特性を選択するステップは、各プローブセットの発現結果と、薬剤に対するサンプルの応答、例えば、log2(IC50)との間の相関を決定することを含む。薬剤応答をサンプル、例えばパネル細胞株に無作為に割り当てることによって、各プローブセットに並べ替えを行い、並べ替え検定に基づいて未加工のp値を計算する。未加工p値のカットオフ、例えば、0.001、0.01、0.05、または0.1を使用して特性プローブセットを選択する。一実施形態において、p値カットオフは0.01である。いくつかの遺伝子の発現は、アレイにおいて1つ以上のプローブセットによって測定することができる。遺伝子が1つ以上のプローブによって表される場合には、結果の強度、例えば、遺伝子の各プローブセットによる発現測定値が、評価される。遺伝子発現について最も高い強度結果を生成したプローブセットが、その遺伝子の代表的なプローブセットとして選択される。その最も高い強度のプローブセットは、典型的に、その遺伝子の最も高い分散のプローブセットでもある。
特性は、無作為または釣り合い型手法を含む、複数の方法によって、訓練モデルと試験モデルとにスプリットすることができる。全データセットの無作為スプリットは、例えば、分布の平均または中央値に、モデルを制限し得、相関から一部の一貫した特性を排除する危険性を有し得る。例えば、無作為スプリット後には、ほとんどの訓練サンプルが薬剤に対して極めて耐性となる可能性がある。その結果、得られるモデルは、薬剤に対する感受性に関する情報を捕捉することなく、耐性に関連する特性のみを捕捉し得る。釣り合い型スプリット手法は、モデルが、全セットの代表であること、すなわち、全訓練データセットにおけるものと類似の頻度で、例えば、高IC50値および低IC50値の両方を有する細胞株結果からの一貫または共通した特性を含むこと、を確実にし得る。例えば、サンプル、例えば細胞株、例としてIC50によって整理されたものを、均等な部分に分割し、次いで、固定の割合、例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70% 80%、または90%の細胞株を、各部分から無作為に取り出し、合わせてsep試験群にすることができる。訓練データセットのサンプルサイズおよび薬物治療応答の分布に応じて、均等部分の数を増加させてもよい。例えば、非常に大きな細胞株パネルでは、全薬剤治療分布の特性をより良好に捕捉するために、均等部分の数を、3から10以上に増加させる可能性を有してもよい。スプリット、例えば、釣り合い型スプリットは、異なる組み合わせのデータを含むように、例えば、少なくとも2回、少なくとも10回、少なくとも25回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも125回 少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも250回、少なくとも300回、少なくとも400回、またはそれ以上、繰り返してもよい。サンプル、およびしたがってそこからのデータを、訓練セットと試験セットとに分配する比は、サンプルの数、例えば、細胞株パネルの大きさまたは患者の数、観察された薬剤応答の分布、および癌種類情報を考慮して、変動し得る。
一実施形態において、本方法は、訓練サブセットを、サブ訓練サブセットおよびサブ試験サブセットにさらにスプリットすることをさらに含む。この実施形態では、訓練セットおよび試験セットへの1回目のスプリットは、釣り合い型スプリットによって行われ得、サブ試験セットおよびサブ訓練セットへのサブスプリット、例えば、繰り返しのサブスプリットは、無作為スプリットによって行われ得る。スプリットの最終的な結果の例において、例えば、釣り合い型スプリットにより全データを70%訓練と30%sep試験とに分割し、次いで、訓練サブセットデータを60%サブ訓練および40%サブ試験に分割する場合、sep試験サブセットは、データの30%のデータを含み得(釣り合い型)、サブ訓練サブセットは、データの42%を含み得、サブ試験サブセットは、データの28%を含み得る(必ずしも釣り合い型ではない)。これらのサブセットのパーセンテージは、変動し得る。より多数のサンプル、例えば、大きな細胞株パネル、より広範囲の薬剤応答、およびより少ない癌種を訓練データセットに用いることで、サブ試験群とsep試験群との比を、それぞれ10%程度の低さに減少させる(したがって、サブ訓練の比は80%程度の高さに増加し得る)可能性を有し得る。全体として、データは、1000回を上回って、10,000回を上回って、または100,000回を上回って、スプリットされ得る(主要なデータセットがスプリットされる回数と、訓練セットがスプリットされる回数を乗じる)。一実施形態において、約200,000個のスプリットが存在し、各スプリットにPLSR訓練/試験を行う。一実施形態において、このスプリット戦略は、非常に小さなサブセットを生成することの潜在的な欠点を回避するために、大きな細胞株パネルに行われる。
さらなる実施形態において、訓練サブセットをサブ訓練サブセットとサブ試験サブセットにスプリットすることには、サブ訓練サブセットにおいてモデルを訓練し、サブ試験サブセットならびにsep試験サブセットにおけるその性能を評価することが含まれる。サブセットにおけるこの訓練および試験の評価は、例えば、少なくとも10回、少なくとも100回、少なくとも250回 少なくとも500回、少なくとも1000回、少なくとも2000回、少なくとも4000回、またはそれ以上繰り返され得る。
訓練および試験は、PLSR方法を使用して行うことができ、これは、サンプルサイズの必要性が最小限でありながら多数の独立変数を扱うことができる(Lindgren et al.(1993)J.Chemometrics 7:45−59、Wold et al.,Chemometrics and Intelligent Laboratory Systems 58:109−130、Jane et al(2006)Cell 124:1225−1239)。PLSRは、観察可能な変数および予測される変数の両方を新しい空間に射影することによって、それらの間の基本的関係を見出す。換言すると、PLSR方法には、独立変数および従属変数の両方に連続変数が存在し、両方の変数型が、一連の新しい直交方向に射影される。新しい方向では、独立変数および従属変数は、最大の共分散を有する。PLSRは、多数の独立変数に対して非常によく機能し、遺伝子シグネチャーの予測に非常によく適合する。PLSRは、サンプルサイズの必要性が最小限である。多くの他の回帰に基づくアプローチとは異なり、PLSRは、多重共線性問題を有さない。以下は、PLSRの基本的なアルゴリズムである:Xが予測因子変数のn×p行列として指定され、Yが応答変数のn×q行列として指定される場合。PLS回帰は、
Y=TQT+F、およびX=TPT+E
の潜在的分解を見出すように試み、ここで、Tは、k線形結合(スコア)を生成するn×k行列であり、P(p×k行列)およびQ(q×k行列)は、係数行列(負荷量)であり、E(n×p行列)およびF(n×q行列)は、確率的誤差の行列である。T=XWとなるような潜在的成分行列Tを特定するために、PLSは、継続的な最適化問題からW=(w1,w2,...,wk)となる列を見つけることを必要とする。k番目の推定方向ベクトル
の基準は、
j=1,...,k−1では、式中SXXは、Xのサンプル共分散行列である。潜在的成分(T)を推定した後、負荷量(Q)を、モデルY=TQT+Fに関して通常の最小二乗法によって推定する。βPLSは、
によって推定され、ここで、
は、Y=XWQT+F=XβPLS+Fであるため、WおよびQの推定値である。PLSRは、公的に入手可能なRソフトウェアパッケージ「PLS」内でモデル化することができる(Comprehensive R Archive Network、Vienna University of Economics and Business,Vienna,Austriaによってホストされ、R Foundation for Statistical Computingによって管理されるウェブサイトで入手可能)。SPOTFIRE(登録商標)Platform(TIBCO Software,Inc.,Palo Alto,CA)およびMATLAB(登録商標)ソフトウェア(Mathworks,Inc.Natick,MA)等の他のソフトウェアが、PLSR分析に利用可能である。
別のモデル化方法は、エラスティックネット(Elastic net)回帰モデル化(Zou and Hastie,(2005)J.R.Statist.Soc.B 67:301−320)である。PLSRと同様に、エラスティックネットは、独立変数および従属変数の両方を、直交の新しい方向に射影して、これらの変数間の最大の関係性を探す。PLSRとは異なり、エラスティックネットは、独立変数と従属変数との間の相関係数を最大化することを目指す(PLSRでの共分散の最大化ではなく)。加えて、エラスティックネットは、近年の2つの研究では、薬物の治療応答の予測モデルを構築するためではなく、薬物の作用機序と関連し得る重要な特性を特定するために、主に使用されていた(Garnett et al.(2012)Nature 483:570−577、Barretina et al.(2012)Nature 483:603−607)。
この一連の評価において、例えば、PLSR分析からの上位モデル、例えば、少なくとも2個のモデル、少なくとも4個のモデル、少なくとも6個のモデル、少なくとも10個のモデル、少なくとも25個のモデル、少なくとも50個のモデル、少なくとも75個のモデル、または少なくとも100個のモデルを、さらなるモデル化に選択することができる。さらなる実施形態において、上位モデルの特性を比較して、重複の程度を判定し、重複するモデルを破棄する。上位モデル間で特性の重複が多すぎる場合、最終的なモデルが、例えば、全細胞株パネルから、もとのデータセットの一部分の表示を失うことになるという危険性がある。上位モデルの重複を最小化することにより、モデル化フレームワークは、確実に全パネルにわたって共通の特性を捕捉することができる。重複は、すべての可能性のあるモデル対において試験することができる。重複モデルを分析して、重複のスコアを生成することができる。モデルは、カットオフ値、例えば、80%分位点、85%分位点、90%分位点、95%分位点、97%分位点、または99%分位点に関するスコアに基づいて、破棄することができる。重複の審査の例では、0.3、0.25、および0.35の対スコア(1.0のスコアが完全な重複である)を有するモデルが破棄され得るが、一方で0.27、0.22、および0.30の対スコアを有するモデルは、次のステップのために保持され得る。
コンセンサス重み付けは、単一のモデルではなく複数のPLSRモデルの負荷に基づいて、特性、例えば遺伝子に確実に優先順位付けを行うことができる。このプロセスは、しばしば、各遺伝子の最終的な相対的重要性(すなわち、ランク)が、複数のモデルまたはモダリティから統合したそのランクとして決定されるため、関連文献においてランク統合と称される。このプロセスは、他の利用可能なランク統合方法を使用して同様に行うことができる。ランク統合方法は、大きくは3つのカテゴリに分けられる:コンドルセ法、平均法、および進化的最適化法。最初の群の方法は、順序統計を使用し、この場合、遺伝子Aと遺伝子Bとの間の順序の相対性が、個別の順序リストで保たれる可能性が、保たれない可能性よりも高いかどうかが調査される。次いで、各推定ランクリストをスコア付けし、最も高いスコアを有するランクリストを、最終のものとして選択する。第2のカテゴリの方法は、遺伝子について個別のランクリストから計算した遺伝子の重みの加重平均をとり、この加重平均をその遺伝子の最終スコアとして使用する。重み付けスキームは、暫定的もしくは発見的、または特性、例えば遺伝子の重みの全体的な分布を考慮することによるデータ駆動型であり得る。データ駆動型の場合の一例は、特異値分解(SVD)に基づく方法である。第3のカテゴリは、凝集ランクリストを見出すために、計算上集中最適化アルゴリズムを採用する方法を含む。遺伝的アルゴリズムまたはシミュレーテッドアニーリング等の進化的アルゴリズムが、しばしば、各提示されたランクリストのスコア付け機能を最適化するために選択される。進化的アルゴリズムは、自然界における自然淘汰を模倣し、いくつかの可能性のある合理的な解法を模索することによって、最適または最良に近い解法を探そうと試みる。
一実施形態において、特異値分解(SVD)が、このプロセスに用いられる。SVDは、個別のモデルから計算された遺伝子の重みと最適に相関する方向を特定し、遺伝子の重みを最適な方向に射影することによって、最終的なコンセンサス重みを決定する。各個別のマーカーの重み、例えば、遺伝子の重みは、基本的PLSRアルゴリズムにおいて記載された「負荷量」数から得られる。例えば、SVD法を使用した、特性、例えば、発現レベルが成果、例えばIC50と相関する遺伝子のコンセンサス重み付けは、順方向、すなわち、上位の値、例えば特性、例えば発現が成果と最も近く関連する1つもしくは1つ以上の遺伝子を選択すること、または逆方向、すなわち、下位の値、例えば特性、例えば発現が成果と最も相関しない1つもしくは1つ以上の遺伝子を破棄すること、であり得る。順方向の重み付け方法において、コンセンサスは、最も高い重みの特性、例えば、上位の特性、上位2個の特性、上位3個の特性、上位4個の特性、上位5個の特性、上位6個の特性、上位8個の特性、上位10個以上の特性で開始し、1回につき1つの特性、例えば遺伝子を追加する。特性を追加するプロセスは、コンセンサス重み付けと各個別の上位モデルとの間で個々の特性の重みを比較する。典型的には、SVDは個別の遺伝子の重みリストからの各遺伝子の相対的な重要性に関して一貫した傾向またはテーマを捕捉するため、結果として得られるコンセンサス遺伝子重みは、個別の遺伝子の重みの任意の対が互いに相関するよりも良好に、個別の遺伝子重みと相関する。コンセンサス重み付けとの最も高い類似性を示す上位モデルを、後のステップのために代表的なモデル、「コアPLSRモデル」として選択することができる。
コアPLSRモデルは、約100〜1000、約150〜800、約200〜700、約200〜400、約300〜500、約250〜600、または約400〜700個のマーカー、例えば、マーカー遺伝子を有し得る。このモデルは、そのサブ訓練サブセットの訓練モデルが、そのサブ試験およびsep試験サブセットの再予測に成功し得るようなものである。コアPLSRモデルの性能を調べる手段は、受容オペレータ特徴曲線下面積(AUC)、その閾値が変動する場合の差別の尺度、およびサンプルの値、例えば細胞株であるサンプルに対するIC50値の実験値とモデル予測値との間のピアソン相関によるものである。コアPLSRモデルの特性、例えばマーカー遺伝子を、過剰表示される生物学的経路の表示、例えば、正準シグナル伝達経路について分析することができる。この経路分析、例えば、経路強化分析は、METACORE(商標)ソフトウェアスイート(GeneGo,Thomson Reuters,Carlsbad,CA)およびIPAソフトウェア(INGENUITY(登録商標)Systems,Redwood City,CA)を含む、多数のコンピュータプログラムのうちの任意のものによって行うことができる。過剰表示される経路、例えばシグナル伝達経路は、コアPLSRモデルにおいて、その経路を有するマーカー、例えば、マーカー遺伝子の関連性の程度に関する有意性、例えば、p値カットオフ、例えば、0.1未満、0.075未満、0.05未満、0.025未満、0.01未満、または0.001未満のp値に基づいて、特性、例えば、マーカー遺伝子から特定される。カットオフのストリンジェンシーが高いほど、すなわち、p値が低いほど、経路から選択されるマーカーは少ない。有意に過剰表示される経路の特定は、コアPLSRモデルから、これもまた過剰表示される経路にあるマーカー、例えば、マーカー遺伝子のサブセットを選択することを可能にする。過剰表示される経路のメンバーではないコアPLSRモデルからのマーカーは、最終的なモデルから破棄され得る。一実施形態において、経路に関与しないすべてのマーカーが破棄される。マーカーサブセット選択プロセスは、約20個のマーカー、約40個のマーカー、約50個のマーカー、約60個のマーカー、約75個のマーカー、約90個のマーカー、約40〜70個のマーカー、約44個のマーカー、約51個のマーカー、約65個のマーカー、または約69個のマーカーを含む、マーカーセットをもたらす。コアPLSRモデルは、次いで、例えば、サブセットの性能を評価するために、上位モデルのものと同じサブ訓練、サブ試験、およびsep試験サブセットを使用して、サブセット、例えば「経路に基づく分類因子」において再訓練および再試験され得る。この「経路に基づく分類因子」を選択する目的は、特定の薬剤のために構築されたデータ駆動型モデルと正準経路情報を重ねることで、潜在的に生物学的シグナル(正準経路に表示される)を強化すると同時に、マーカーセットの大きさを大幅に縮小することである。この経路に基づく分類因子は、コアPLSRモデルのサブセットとして、訓練セット全体の共通の特性を反映する。このアプローチは、モデルを構築する前に、分類因子への遺伝子の統合を経路で開始する方法(Lee et al.(2008)PLoS Comput.Biol.4:e1000217)とは対照的である。本明細書に記載される方法は、全ゲノム情報を使用して予測モデルを訓練し、コアシグネチャー遺伝子セットを見出すため、モデル遺伝子を選択する際に経路の定義に依存しない。さらに、シグネチャー遺伝子は、過剰表示される経路において集合的に作用し得、複数の経路が、治療剤に対する応答を定義するように一緒に作用し得る。AUCおよび相関法によって評価すると、このような「経路に基づく分類因子」は、訓練データ自体ではコアPLSRモデルと同等か、または時にはわずかに低く機能し得るが、独立した試験データセットでは予測性能を改善し得る。
一実施形態において、本明細書に記載されるマーカー、例えば、マーカー遺伝子は、データセットの大きさを縮小すること、サンプルから特性を選択すること、特性を例えば釣り合い型および無作為スプリットの組み合わせによって訓練および試験して、上位性能モデルを特定すること、重複を除去することによってモデル数を低減させること、特性にコンセンサス重み付けを行って、コンセンサスに最も類似するコアPLSRモデルを見出すこと、コアPLSRモデルにおける特性間の生物学的経路の過剰表示を特定すること、ならびにコア特性から、過剰表示経路に見出されるマーカーを選択して、訓練セット全体の共通の特性を保持するサブセットを生成すること、を含む、方法によって特定することができる。これらのマーカーを使用して、新しいサンプルにおいて治療剤を用いた治療の成果を予測することができる。マーカーは、本明細書に記載され得る、例えば、表1、表2、および表3に特定されるマーカーの群から選択され得るか、または他の組織、例えば他の腫瘍型に由来するサンプル、もしくは他の治療剤、例えば他のNAE阻害剤もしくはEGFR阻害剤を用いた治療に由来するサンプルを含む、他のデータセットから得ることができる。
治療剤に対する応答性を予測するためのバイオマーカーの使用
本明細書に記載されるか、または上述の方法から特定されるマーカーを、サンプル、例えば、例として患者、例えば癌患者、例えばヒトに由来する新しい細胞、組織、または疾患組織、例えば腫瘍の特徴と比較して、治療剤、例えば、NAE阻害剤またはEGFR阻害剤による治療後の成果を予測することができる。
マーカー、例えばマーカー遺伝子を、本明細書に記載されるPLSR方法によって、マーカーを特定するために使用されるサンプル、例えば、細胞株または患者サンプルにおける、特徴、例えば発現レベルと成果との関連性、例えばIC50との間の相関に関して分析する。このプロセスにより、薬剤に対して感受性であったかまたは好ましい成果と関連があったサンプル中ではどのマーカーが高度に発現するか、および薬剤に対して耐性であったかまたは好ましくない成果と関連があったサンプル中ではどのマーカーが高度に発現するかを特定することができる。サンプル、例えば、モデル構築のスプリットから確保した細胞株、例えば、sep試験サブセットを使用して、例えば本明細書に記載されるマーカー、またはマーカーセット、例えば、上述の方法により構築された経路に基づく分類因子もしくは表1、表2、および表3に特定されるマーカーの群から選択される1つ以上のマーカーを含むマーカーセットを試験することができる。例えば、スコアにより表される相関は、例えば、PLSR法におけるコンセンサス重み付けによって、マーカーによって予測された成果およびsep試験サンプルにおいて観察された成果から導出される。相関の検討は、感受性または好ましい成果のサンプルと、耐性または好ましくない成果のサンプルとの分離の決定を助ける。その分離は、カットオフ値として選択され、新しいサンプルの予測に使用されることになる。カットオフ値は、モデルの構築に治療データを使用した薬剤、または作用機序が類似であるか、もしくは同じ標的に結合する薬剤に特異的である。
サンプルの特徴を成果と関連付けるには複数の手段が存在する。例えば、細胞数における成果の結果は、EC50値(例えば、細胞数の測定後に、EC50濃度を、阻害剤濃度のlogに対する対照パーセント(POC)曲線の変曲点から計算することができる)またはIC50値(例えば、POC−log阻害剤プロットからであり、IC50は、50%最大可能応答での濃度である)として表すことができる。生物学的尺度における成果の結果は、アポトーシス(例えば、阻害剤濃度のlogに対してプロットしたカスパーゼ3の活性化の測定、5倍を超える誘導の濃度として決定される)、有糸分裂活性(例えば、ホスホ−ヒストン3の倍増を測定することによって決定される)、または代謝活性(例えば、脂肪酸合成の量を測定する)として表され得る。特徴と成果との関連性はまた、応答、無憎悪期間、無憎悪生存期間、または全生存等の臨床データに基づき得る。
細胞株パネルは癌種の混合を含むため、パネルからの相関は、例えば、少数のサンプルを予測する実際のカットオフを合理的に表し得る。妥当な数の患者由来サンプルがある場合、例えば臨床試験における場合、患者は単一の種類の癌のみを有し得、そのサンプル集団は細胞株パネルと同じではない可能性があるため、カットオフは実際のカットオフを表さない可能性がある。その場合、細胞株パネルからのカットオフは、2番目に良好な分離カットオフとして使用され得るか、または新しい集団由来の分離点、すなわち、新しい分離カットオフとして使用され得る。
新しいサンプル、例えば、新しい試験サンプル、例えば細胞、組織、例えば腫瘍の特徴は、例えば本明細書に記載されるマーカーを特定するために使用されるプラットフォームと同じではないプラットフォームで測定された可能性がある。その場合、マーカーは、異なるプラットフォームで特性を比較して、重複するマーカー、例えばマーカー遺伝子を特定することができる。重複するマーカーを特定した後、試験データセットのプラットフォームを、例えば、分位点に基づく正規化において、訓練データセットのプラットフォームに対して正規化して、マーカー、例えば本明細書に記載されるマーカーを特定するために使用したサンプルと、成果予測が所望されるサンプルとの間の特徴、例えば発現レベルの比較を可能にする。次いで、重複マーカーを使用して、訓練データセットにおいてモデルを再訓練および再試験する。これにより、新しいプラットフォームに生成されたデータセットに適用することができる、本明細書に記載されるマーカー、または本明細書に記載される方法により導出されたマーカー、例えばマーカーセットを表すマーカーを特定することができる。
予測を行うためには、それぞれの新しい試験サンプルにおけるマーカー、例えばマーカー遺伝子の特徴、例えば発現レベルに関する情報を、PLSRモデルアルゴリズムの入力として使用する。これにより、上述のもの等、実験的または臨床的に記載される成果結果の形式で表される、予測された成果スコアがもたらされる。成果スコアを、感受性サンプルと耐性サンプルとを分離することによって導出されたカットオフと比較する。IC50値を薬剤に対する応答の尺度として使用する場合、低いIC50値(低いPLSR予測スコアも同様)は、薬剤に対する感受性と関連し、一方で高いIC50値(高いPLSR予測スコアも同様)は、薬剤に対する耐性と関連する。スコアがカットオフ値を上回る新しいサンプルは、耐性または好ましくない成果と関連し、スコアがカットオフ値を下回る新しいサンプルは、薬剤、例えばNAE阻害剤またはEGFR阻害剤での治療の感受性または好ましい成果と関連する。したがって、サンプル、例えば腫瘍サンプルが、感受性と関連するスコアを生成する患者は、薬剤、例えばNAE阻害剤またはEGFR阻害剤での治療により利益を得ることが予測される。サンプル、例えば腫瘍サンプルが、耐性と関連するスコアを生成する患者は、薬剤、例えばNAE阻害剤またはEGFR蘇我剤での治療により利益が得られないことが予測される。
各阻害剤の分離カットオフは、阻害剤の効力に応じて特徴的な範囲を有する。成果の尺度がlog2(IC50)等のIC50を使用する場合、スコアは、その指数の対数であり、正または負のいずれの値でもあり得る。log2(IC50)スコアの範囲の例は、−3(より強力)から+3(あまり強力でない)となる。いくつかの実施形態において、NAE阻害剤のlog2(IC50)分離カットオフスコアは、−3〜1または−2.5〜0.5の範囲である。いくつかの実施形態において、EGFR阻害剤のlog2(IC50)分離カットオフスコアは、0.0〜1.0の範囲である。いくつかの実施形態において、pan−キナーゼ阻害剤のlog2(IC50)分離カットオフスコアは、1.0〜2.5の範囲である。
いくつかの実施形態において、MLN4924のlog2(IC50)分離カットオフスコアは、−1.6〜−1.3の範囲である。ある実施形態において、MLN4924のlog2(IC50)分離カットオフスコアは、−1.45である。いくつかの実施形態において、対象は、サンプルのlog2(IC50)が−1.0未満である場合、NAE阻害剤で治療されることになる。いくつかの実施形態において、対象は、サンプルのlog2(IC50)が−0.5未満である場合、NAE阻害剤で治療されることになる。いくつかの実施形態において、対象は、サンプルのlog2(IC50)が0.5未満である場合、NAE阻害剤で治療されることになる。いくつかの実施形態において、対象は、サンプルのlog2(IC50)が0.0を超える場合、NAE阻害剤で治療されることはない。低ければ低いほど、予測に使用されるスコアはよりストリンジェントであり、ほとんどの感受性対象を予測するであろう。低い分離カットオフスコアを臨床で使用することにより、阻害剤により利益を得ることが特定された患者が、阻害剤での治療に対する応答が成功するであろう確率を上げることができる。より高いスコアは、あまりストリンジェントでない予測となり、臨床での使用は、患者による応答の範囲の可能性を広げ、より高いカットオフスコアにより近いと予測された一部の患者は、治療により利益を得られないか、またはあまり強力でない応答を有する。NAE阻害剤のlog2(IC50)の場合における−1〜0の範囲等、高い分離カットオフスコアを使用することで、治療により利益を得る可能性が低いか、または阻害剤のより強いレジメンもしくは治療レジメンに加えて補助的な治療剤を必要とする患者を特定することができる。分離カットオフスコアの例は、実施例、ならびに図5、6、および7の垂直方向の線、および図9の水平方向の線に見出すことができる。
要約すると、予測を行うための当業者が必要とする項目には:
(A)PLSRモデル、例えば、マーカー遺伝子またはマーカー遺伝子セット、例えば、表1、表2、もしくは表3に特定されるか、または本明細書に記載される方法によって訓練データセットから得られるマーカー、(B)訓練データセットから生成されるPLSRカットオフ(または可能性のあるカットオフが複数存在する場合は表)、(C)マーカー遺伝子またはセット内の各マーカー遺伝子について測定された特徴の値、例えば、試験データセットの遺伝子発現結果、すなわち、試験されるサンプルからのもの、ならびに(D)PLSRアルゴリズムを実行し、(C)の値からスコアを計算することができる、Rソフトウェアパッケージ等のコンピュータプログラムが含まれる。PLSRモデルを使用してコンピュータプログラムによって生成されたスコアが、カットオフを上回るか、または下回るかを評価し、それによって、サンプルの試験が行われた患者が、薬剤での治療に好ましくない成果を有するか、または好ましい成果を有するかを決定することができる。
サンプルおよび特性の測定
薬理ゲノム学的マーカーの量の測定による腫瘍の治療の成果の判定が本明細書に記載される。非侵襲的、便宜的、または低費用の手段による成果の判定もまた記載される。本発明は、患者における腫瘍の治療または疾患の管理に適切な治療レジメンを決定、判定、助言、または提供するための方法を提供する。本明細書に開示されるキットおよび方法を使用した治療の監視は、好ましくない成果の可能性を特定し、それらの予防を可能にし得、したがって、治療レジメンの調整、治療の中止、または代替治療の使用を通じて罹患率の低下、死亡率の低下、および治療費の節約を可能にし得る。
本明細書で使用されるとき、「非侵襲性」という用語は、対象に最小の危害を加える手順を指す。臨床応用の場合、非侵襲性サンプリング手順は、典型的には麻酔なしで、かつ/または外科的手段もしくは縫合を用いることなく、例えば予約無しの環境で迅速に行われ得る。非侵襲性サンプルの例には、血液、血清、唾液、痰、乳頭吸引液、尿、口腔スワブ、咽喉培養物、糞便サンプル、および頸管スミアが挙げられる。非侵襲的診断分析には、X線、磁気共鳴映像法、陽電子放出断層撮影等が含まれる。
「サンプル」という用語は、培養細胞もしくは細胞株、患者サンプル、例えば、対象から単離される組織、細胞、生検、生体液、およびそれらの単離物、ならびに対象に存在する組織、細胞、および体液を含むことを意図し、患者または健常な対象から得ることができる。サンプルは、遺伝子型または表現型、例えば、組織学的、生化学的、または基本的分析に使用することができる。骨髄の血液学的腫瘍、例えば、骨髄腫瘍において、腫瘍の一次分析は、骨髄サンプルにおいて行われ得る。しかしながら、いくつかの腫瘍細胞(例えば、クロノタイプ腫瘍細胞、循環内皮細胞)は、全血中の細胞集団のパーセンテージである。これらの細胞は、血液学的腫瘍、例えば白血病、リンパ腫、および骨髄腫の標準的な治療法である骨髄移植に備えて、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)での患者の治療中に血液中にも動員され得る。多発性骨髄腫中の循環腫瘍細胞の例は、例えば、Pilarski et al.(2000)Blood 95:1056−65およびRigolin et al.(2006)Blood 107:2531−5によって研究されている。したがって、例えば、マーカーをインビトロで測定して治療の成果を決定するための非侵襲的サンプルには、末梢血サンプルが含まれ得る。したがって、末梢血中の細胞は、マーカー量について試験され得る。血液学的腫瘍を有する患者については、通常の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量の対照参照サンプルは、患者の皮膚または口腔スワブから得ることができる。固形腫瘍については、典型的な腫瘍サンプルは、腫瘍の生検であり得る。あるいは、腫瘍部位から採取するかまたはこすり取った腫瘍細胞のサンプルは、血液、痰、乳頭吸引液、尿、糞便、頸管スメア等、非侵襲的に収集することができる。いくつかの実施形態において、生検サンプルは、インビトロ外植片として培養して、これを後にサンプルとして使用することができるか、または例えば異種移植片として、例えば原発性腫瘍異種移植片として、免疫不全動物モデルに移入させ、これを後にサンプルとして使用してもよい。固形腫瘍については、通常の特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量の対照参照サンプルは、患者の血液から得ることができる。
血液収集容器は、抗凝血剤、例えば、ヘパリンまたはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、血液の完全性を維持するためにデキストロースまたはアルブミンまたは緩衝液、例えば、リン酸塩等の添加物を有するクエン酸ナトリウムまたはクエン酸塩溶液を含み得る。マーカーの量がサンプル中のそのDNAレベルを測定することによって測定される場合、DNA安定剤、例えば、DNAseを阻害する薬剤が、サンプルに添加され得る。マーカーの量がサンプル中のそのRNAレベルを測定することによって測定される場合、RNA安定剤、例えば、RNAseを阻害する薬剤が、サンプルに添加され得る。マーカーの量がサンプル中のそのタンパク質レベルを測定することによって測定される場合、タンパク質安定剤、例えば、プロテアーゼを阻害する薬剤が、サンプルに添加され得る。血液収集容器の一例には、血液収集時のRNA安定化に有用なPAXGENE(登録商標)チューブ(PREANALYTIX、Valencia,CA)がある。末梢血サンプルは、修飾、例えば、分画、分類、または濃縮され得る(例えば、腫瘍で富化されたサンプルまたは腫瘍を失ったサンプル(例えば、参照サンプル用に)をもたらすため)。修飾されたサンプルの例として、例えば、負の選択、例えば、赤血球から白血球の分離(例えば、高密度糖溶液またはポリマー溶液(例えば、FICOLL(登録商標)溶液(GE healthcareのAmersham Biosciences部門、Piscataway,NJ)またはHISTOPAQUE(登録商標)−1077溶液(Sigma−Aldrich Biotechnology LPおよびSigma−Aldrich Co.,St.Louis,MO))の分画遠心分離)、ならびに/または選択剤(例えば、直接単離(例えば、B細胞マーカーに結合する磁気ビーズ(例えば、Miltenyi Biotec,Auburn,CAのもの)を含む細胞の溶液への磁場の印加)または蛍光活性化細胞分類のためにCD34、CD38、CD138、もしくはCD133等の腫瘍細胞もしくは骨髄前駆体マーカーに結合する試薬)へのB細胞の結合による正の選択によって収集され得る、クロノタイプ骨髄腫細胞が挙げられる。
あるいは、細胞株、例えば腫瘍細胞株、例えばOCI−Ly3、OCI−Ly10細胞(Alizadeh et al.(2000)Nature 403:503−511)、RPMI6666細胞、SUP−B15細胞、KG−1細胞、CCRF−SB細胞、8ES細胞、Kasumi−1細胞、Kasumi−3細胞、BDCM細胞、HL−60細胞、Mo−B細胞、JM1細胞、GA−10細胞、もしくはB細胞リンパ腫(例えば、BC−3)、または細胞株、もしくは腫瘍細胞株の収集物(例えば、McDermott et al.(2007)PNAS 104:19936−19941またはONCOPANEL(商標)抗癌腫瘍細胞プロファイリングスクリーニング(Ricerca Biosciences,Bothell,WA)を参照されたい)のサンプルを、アッセイすることができる。当業者であれば、本方法で使用される適切な細胞を、容易に選択および入手することができる(例えば、American Type Culture Collection(ATCC(登録商標)),Manassas,VAから)。患者において治療の成果を予測するか、または治療プロトコルの有効性を監視するための組成物または方法が用いられる場合、治療される患者から得られた組織または血液サンプルは、アッセイに有用な細胞源またはマーカー遺伝子源または遺伝子産物源である。
サンプル、例えば、腫瘍サンプル、例えば、生検もしくは骨髄サンプル、血液もしくは修飾された血液サンプル、または他の非侵襲的細胞サンプル(例えば、腫瘍細胞を含む)、ならびに/あるいは参照サンプル、例えば、対応対照(例えば、生殖系列)サンプルは、サンプル中のマーカーの量を評価する前に、様々な周知の収集後調製および保存技法(例えば、核酸および/またはタンパク質抽出、固定、保存、凍結、限外濾過、濃縮、蒸発、遠心分離等)に供され得る。
試験対象からのサンプル(例えば、骨髄サンプル、腫瘍生検、または参照サンプル)における本発明のマーカーの特徴は、特徴、例えば核酸(例えば、RNA、mRNA、ゲノムDNA、もしくはcDNA)および/または翻訳されたタンパク質の特徴を検出または測定するための様々な周知の方法のうちのいずれかによって判定することができる。このような方法の非限定的な例としては、分泌、細胞表面、細胞質、もしくは核内タンパク質の検出のための免疫学的方法、タンパク質精製方法、タンパク質機能もしくは活性アッセイ、核酸ハイブリダイゼーション法、核酸逆転写法、および核酸増幅法があげられる。これらの方法には、遺伝子アレイ/チップ技術、RT−PCR、TAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems,Foster City,CA)(例えば、GLPによって認可された実験室条件下)、インサイツハイブリダイゼーション、免疫組織化学方法、免疫ブロット法、FISH(蛍光インサイツハイブリダイゼーション)、FACS分析、ノーザンブロット、サザンブロット、INFINIUM(登録商標)DNA分析ビーズチップ(Illumina,Inc.,San Diego,CA)、定量PCR、細菌人工染色体アレイ、単一ヌクレオチド多型(SNP)アレイ(Affymetrix,Santa Clara,CA)、または細胞遺伝学的分析が含まれる。したがって、本発明の検出方法を用いて、例えば、サンプル中のRNA、mRNA、タンパク質、cDNA、またはゲノムDNAをインビトロならびにインビボで検出することができる。さらに、本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸のインビボでの検出技法は、対象に標識プローブを導入して、バイオマーカー、例えば、バイオマーカーの転写物に相補的な核酸または標識抗体、ポリペプチドを対象とするFc受容体または抗原、例えば野生型または変異体マーカーを検出することを含む。例えば、抗体は、放射性同位体であって、対象におけるその存在および位置が標準の画像化技法によって検出され得る放射性同位体で標識され得る。これらのアッセイは、様々な方法で実施することができる。当業者であれば、マーカー(複数可)、組織サンプル、および問題の変異の性質に基づいて、これらまたは他の適切かつ利用可能な方法から選択することができる。いくつかの方法は、以下の項でより詳細に説明される。様々な方法もしくは方法の組み合わせが、様々な事例、または、例えば、様々な種類の腫瘍もしくは患者集団において適切であり得る。
ある実施形態では、マーカーに対応するmRNAは、当技術分野で既知の方法を用いて、サンプルにおいてインサイツ形式およびインビトロ形式の両方によって分析され得る。発現レベルを測定するための方法の一例が実施例に含まれる。多くの発現検出方法が単離RNAを用いる。インビトロ方法の場合、mRNAの単離を選択しない任意のRNA単離技法を用いて、腫瘍細胞からRNAを精製することができる(例えば、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York 1987−1999を参照されたい)。さらに、多数の組織サンプルを、例えば、Chomczynskiの一段階RNA単離プロセス(米国特許第4,843,155号(1989年))等、当業者に周知の技法を用いて容易に処理することができる。RNAを、標準の手順(例えば、Chomczynski and Sacchi(1987)Anal.Biochem.162:156−159を参照されたい)、溶液(例えば、トリゾール、TRI REAGENT(登録商標)(Molecular Research Center,Inc.,Cincinnati,OH、米国特許第5,346,994号を参照されたい)、またはキット(例えば、QIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia,CA)もしくはLEUKOLOCK(商標)全RNA単離システム(Applied BiosystemsのAmbion部門、Austin,TX))を用いて単離することができる。
さらなるステップを用いて、DNAをRNAサンプルから除去することができる。細胞溶解を、非イオン性界面活性剤を用いて達成した後、マイクロ遠心分離して、核、したがって細胞DNAの大部分を除去することができる。DNAは、その後、DNA分析のために核から単離され得る。一実施形態において、RNAは、チオシアン酸グアニジン溶解、その後、RNAをDNAから分離するCsCl遠心分離を用いて、目的とする様々な種類の細胞から抽出される(Chirgwin et al.(1979)Biochemistry 18:5294−99)。ポリ(A)+RNAは、オリゴ−dTセルロースの選択によって選択される(Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning−−A Laboratory Manual(2nd ed.),Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)。あるいは、DNAからのRNAの分離は、例えば、熱フェノールまたはフェノール/クロロホルム/イソアミルアルコールでの有機抽出によって達成され得る。所望される場合、RNAse阻害剤を、溶解緩衝液に添加してもよい。同様に、ある特定の細胞型については、タンパク質変性/消化ステップをプロトコルに追加することが望ましい場合がある。多くの適用において、トランスファーRNA(tRNA)およびリボソームRNA(rRNA)等の他の細胞RNAに対してmRNAを富化することが望ましい。ほとんどのmRNAは、3’末端にポリ(A)尾部を含有する。これは、それらが、例えば、セルロースまたはSEPHADEX.R(商標)媒体等の固体支持体に結合されたオリゴ(dT)またはポリ(U)を用いて、親和性クロマトグラフィーによって富化されることを可能にする(Ausubel et al.(1994)Current Protocols In Molecular Biology,vol.2,Current Protocols Publishing,New Yorkを参照されたい)。いったん結合されると、ポリ(A)+mRNAは、2mM EDTA/0.1%SDSを用いて親和性カラムから溶出される。
別の実施形態において、マーカーにおける変異は、マーカー遺伝子と相関する核酸、例えばDNA、RNA、cDNA、またはタンパク質のシークエンシングを行うことによって特定され得る。核酸のシークエンシングを行うための当技術分野で既知のいくつかのシークエンシング法が存在する。プライマーは、潜在的な変異部位を含む領域に結合するように設計され得るか、または野生型配列ではなく変異した配列を補完するように設計され得る。プライマー対は、マーカー遺伝子における潜在的な変異を含む領域を括弧で囲む(bracket)ように設計され得る。プライマーまたはプライマー対を用いて、マーカー遺伝子に対応するDNAの一方の鎖または両方の鎖をシークエンシングすることができる。配列量を増大させるためにシークエンシングして、例えばマーカー遺伝子における変異を検出する前に、プライマーをプローブとともに用いて、目的とする領域を増幅することができる。シークエンシングされ得る領域の例として、全遺伝子、全遺伝子の転写物、および全遺伝子または転写物の断片、例えば、エクソンまたは非翻訳領域のうちの1つ以上が挙げられる。プライマー選択および配列または組成分析を目的とした変異の例は、COSMICおよびdbGaP等の変異情報を収集する公開データベースにおいて見出すことができる。
シークエンシング法は当業者に既知である。この方法の例として、サンガー法、SEQUENOM(商標)法、および次世代シークエンシング(NGS)法が挙げられる。電気泳動、例えば、プライマー伸長標識DNA断片を分離するためのキャピラリー電気泳動の使用を含むサンガー法は、ハイスループット適用のために自動化され得る。プライマー伸長シークエンシングは、目的とする領域のPCR増幅後に行われ得る。ソフトウェアは、配列塩基呼び出し(sequence base calling)および変異特定を補助し得る。SEQUENOM(商標)MASSARRAY(登録商標)シークエンシング分析(San Diego,CA)は、変異を特定するために目的とする特定の断片の実際の質量を予想される質量と比較する質量分析法である。NGS技術(「超並列シークエンシング」および「第2世代シークエンシング」とも称される)は、概して、以前の方法よりもはるかに高いスループットを提供し、様々なアプローチを用いる(Zhang et al.(2011)J.Genet.Genomics 38:95−109およびShendure and Hanlee(2008)Nature Biotech.26:1135−1145において概説される)。NGS法は、サンプル中のマーカーにおける低頻度の変異を特定し得る。いくつかのNGS法(例えば、GS−FLXゲノムシークエンサー(Roche Applied Science,Branford,CT)、ゲノムアナライザー(Illumina,Inc.San Diego,CA)、SOLID(商標)アナライザー(Applied Biosystems,Carlsbad,CA)、Polonator G.007(Dover Systems,Salem,NH)、HELISCOPE(商標)(Helicos Biosciences Corp.,Cambridge,MA)を参照されたい)は、フローセルにおいて空間的に分離されたPCR産物をクローン増幅するか、またはクローン増幅しない環状アレイシークエンシング、およびシークエンシング酵素(例えば、ポリメラーゼまたはリガーゼ)によって組み込まれる標識修飾ヌクレオチドを検出する様々なスキームを用いる。1つのNGS法では、プライマー対をPCR反応において使用して、目的とする領域を増幅することができる。増幅された領域は連結されて、連鎖状の産物になり得る。クローンライブラリは、PCR産物または連結された産物からフローセル内に生成され、ポリメラーゼが標識塩基の同一性に応じて4つのチャネルのうちの1つに画像化される可逆的に終結された標識塩基を添加するときにシングルエンドシークエンシングのためにさらに増幅され(「ブリッジ」または「クラスター」PCR)、その後、次のサイクルのために除去される。ソフトウェアは、変異を特定するためのゲノム配列の比較に役立ち得る。
タンパク質および核酸の組成または量は、当技術分野で既知の多くの方法によって、例えば、それらを切断、分解、または消化するようにそれらを処理し、その後、それらの構成成分を分析することによって決定され得る。質量分析、電気泳動、およびクロマトグラフィーは、比較のために構成成分を分離および定義し得る。欠失または挿入を引き起こす変異は、これらの方法における大きさまたは電荷の違いによって特定され得る。タンパク質消化または制限酵素での核酸消化は、いくつかの変異後に異なる断片パターンを明らかにし得る。それらの構造の文脈において特定のマーカータンパク質または変異体アミノ酸を認識する抗体は、サンプルにおけるマーカータンパク質または変異を特定、検出、および定量化し得る。
ある実施形態において、DNA、例えば、野生型または変異マーカーに対応するゲノムDNAは、当技術分野で既知の方法を用いて、サンプルにおいてインサイツ形式およびインビトロ形式の両方によって分析され得る。DNAは、サンプルから直接単離され得るか、または別の細胞成分、例えば、RNAもしくはタンパク質の単離後に単離され得る。キット、例えば、QIAAMP(登録商標)DNAマイクロキット(Qiagen,Valencia,CA)は、DNA単離に使用可能である。そのようなキットを用いてDNAを増幅することもできる。
本発明のマーカーに対応するポリペプチドのインビトロでの検出技法は、酵素免疫吸着法(ELISA)、ウエスタンブロット、タンパク質アレイ、免疫沈降、および免疫蛍光法を含む。そのような例において、マーカーの発現は、マーカータンパク質もしくはその断片、例えば、変異され得る領域もしくは変異配列を含む部分を含むタンパク質もしくは断片、またはその構造の文脈における変異残基(その正常な翻訳後修飾のすべてまたは一部を経たマーカータンパク質を含む)に特異的に結合する抗体(例えば、放射性標識抗体、発色団標識抗体、フルオロフォア標識抗体、または酵素標識抗体)、抗体誘導体(例えば、基質またはタンパク質リガンド対(例えば、ビオチン−ストレプトアビジン)のタンパク質もしくはリガンドと共役した抗体)、または抗体断片(例えば、一本鎖抗体、単離された抗体、超可変ドメイン等)を用いて判定される。抗体は、表1、表2、および表3に特定されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有するタンパク質を検出し得る。dbGaPのCOSMIC等の公開データベースにおいて変異したとして列挙される残基は、変異体残基を特異的に認識し、かつそれに結合する抗体を生成するための免疫原性組成物中で調製され得る。別の方法は、抗体対を利用し得、ここで、この対の一方は、上流のマーカータンパク質、すなわち、予想される変異、例えば、ナンセンスまたは欠失変異の領域のN末端に結合し、対の他方は、下流のタンパク質に結合する。野生型タンパク質は、その対の両方の抗体に結合するが、ナンセンスまたは欠失変異を有するタンパク質は、その対のN末端抗体にのみ結合する。サンドイッチELISAアッセイ等のアッセイは、例えば参照サンプルと比較して、腫瘍サンプル中の野生型タンパク質の数量損失を検出し得るか、または標準のELISAは、抗体の結合レベルを比較して、変異が腫瘍サンプルに存在することを推測する。
タンパク質マーカーの量または機能性を決定するための間接的な方法は、タンパク質の活性の測定も含む。例えば、サンプル、あるいはサンプルから単離されるか、またはサンプルから単離、クローニング、もしくは増幅された核酸から発現されたタンパク質は、マーカータンパク質活性について判定され得る。例えば、シグナル伝達経路におけるマーカーの活性は、例えば、無細胞アッセイまたは細胞に基づくアッセイにおいて、結合パートナーと会合するその能力によって測定することができる。
一実施形態において、マーカーの発現は、mRNA/cDNA(すなわち、転写ポリヌクレオチド)を患者サンプル中の細胞から調製し、かつmRNA/cDNAをマーカー核酸の相補体またはその断片である参照ポリヌクレオチドとハイブリダイズすることによって判定される。cDNAは、任意に、参照ポリヌクレオチドとのハイブリダイゼーションの前に様々なポリメラーゼ連鎖反応法のうちのいずれかを用いて増幅され得る。1つ以上のマーカーの発現は、同様に、定量PCRを用いて検出されて、マーカー(複数を含む)の発現レベルを判定することができる。mRNAレベルの測定の使用例は、マーカー遺伝子における不活性化変異が、細胞におけるmRNAのレベルの変化をもたらし得ることである。このレベルは、タンパク質の機能不全もしくは不在を考慮してフィードバックシグナル伝達タンパク質が産生されるため上方制御され得るか、または変化したmRNA配列が不安定であるため下方制御され得る。あるいは、本発明のマーカーの変異または変異形(例えば、上述の単一ヌクレオチド多型、欠失等)を検出する多くの既知の方法のうちのいずれかを用いて、患者におけるマーカー遺伝子の変異の発生を検出することができる。
直接測定の一例として、転写物の定量化がある。本明細書で使用されるとき、発現のレベルまたは量は、マーカーによってコードされるmRNAの発現の絶対量またはマーカーによってコードされるタンパク質の発現の絶対量を指す。選択されたマーカーの絶対発現量に基づく決定の代替案として、決定は、正規化された発現量に基づき得る。発現量は、より小さな対照遺伝子発現群との比較、または複数のサンプルにおいて正規化したマーカーの発現によって、上述のようにアレイにおいてゲノム全体で正規化され得る。そのような正規化は、あるサンプルの発現レベルを別のサンプルと比較すること、例えば、異なる時間または異なる対象由来のサンプル間の発現レベルを比較することを可能にする。さらに、正規化の後、発現レベルは、相対発現レベルとして提供され得る。マーカーの絶対発現レベルの補正は、例えば、構成的に発現されるハウスキーピングの役割において、その発現を、マーカーではない対照マーカーの発現と比較することによって、生じ得る。正規化に好適なマーカーにはまた、アクチン遺伝子またはβ−2ミクログロブリン等のハウスキーピング遺伝子が含まれる。データ正規化目的での参照マーカーには、遍在的に発現されるマーカーおよび/またはその発現が癌遺伝子によって制御されないマーカーが含まれる。構成的に発現される遺伝子は当技術分野で既知であり、関連組織および/または患者の状況、ならびに分析方法に従って特定および選択され得る。マーカーまたはマーカーセットの発現のベースラインを決定するための代替的な方法として、マーカーまたはマーカーセット中のマーカーの量は、ベースライン、例えばマーカーのそれぞれの平均量またはレベルを確立するために、少なくとも1個、または2、3、4、5個以上のサンプル、例えば、7、10、15、20、または50個以上のサンプルに対して決定される。試験サンプルに対して決定されたマーカーまたはマーカーセット中のマーカーの量(例えば、絶対発現レベル)を、次いで、そのマーカーまたはマーカーセット中のマーカーに得られたベースライン値で除する。これにより相対量を提供し、異常なレベルのマーカー発現またはタンパク質活性の特定に役立つ。ゲノムDNAサンプルのベースライン、例えば、2倍体コピー数は、腫瘍を有さない対象由来の細胞または患者由来の非腫瘍細胞における量を測定することによって決定することができる。
本発明の核酸分子の配列に基づくプローブを用いて、本発明の1つ以上のマーカーに対応する転写物またはゲノム配列を検出することができる。このプローブは、それに結合される標識基、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、または酵素補助因子を含み得る。そのようなプローブは、例えば、対象由来の細胞のサンプル中のタンパク質をコードする核酸分子のレベルを測定することによって、例えば、mRNAレベルを検出するか、またはタンパク質をコードする遺伝子が変異もしくは欠失されたかを決定することによって、タンパク質を発現する細胞または組織を特定するための診断試験キットの一部として使用され得る。
本明細書に記載のデータベース記録に記載されるヌクレオチド配列に加えて、当業者であれば、アミノ酸配列の変化をもたらすDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在し得ることを理解する。そのような遺伝的多型は、天然に発生する対立遺伝子変異のため、集団内の個体の間に存在し得る。対立遺伝子は、所与の遺伝子座で選択的に生じる遺伝子群のうちの1つである。加えて、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型も存在し得、その遺伝子の全体の発現レベルに影響を与え得ることが理解される(例えば、制御または分解に影響を与えることによって)。
プライマーまたは核酸プローブは、特異的マーカーまたはその変異領域と相補的なヌクレオチド配列を含み、マーカー遺伝子またはマーカー遺伝子に関連した核酸と選択的にハイブリダイズするのに十分な長さを有する。プライマーおよびプローブを用いて、マーカー核酸の単離およびシークエンシングを補助することができる。核酸プローブまたはプライマーの長さは、少なくとも10ヌクレオチド、少なくとも12ヌクレオチド、少なくとも15ヌクレオチド、少なくとも17ヌクレオチド、少なくとも20ヌクレオチド、少なくとも22ヌクレオチド、少なくとも25ヌクレオチド、少なくとも30ヌクレオチド、または少なくとも40ヌクレオチドであり得る。プローブまたはプライマーは、マーカー遺伝子配列またはその相補体の連続したヌクレオチドを含み得る。一実施形態において、プライマーまたは核酸プローブ、例えば、実質的に精製されたオリゴヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、マーカー核酸の約6、8、10、12、15、20、25、30、40、50、60、75、100、150、200個以上の連続するヌクレオチドまたはその全長にハイブリダイズする、ヌクレオチド配列を有する領域を含む。別の実施形態において、プライマーまたは核酸プローブは、表1、表2、もしくは表3に特定される配列、またはこれらの配列のうちのいずれかの相補体のヌクレオチド配列を含む、マーカー核酸にハイブリダイズすることができる。例えば、少なくとも約15個の連続するヌクレオチド、少なくとも約25ヌクレオチド、少なくとも約30ヌクレオチドのヌクレオチド配列、または表1、表2、もしくは表3に特定される配列のうちの約15〜約20ヌクレオチドを有するヌクレオチド配列、またはこれらの配列のうちのいずれかの相補体を含む、プライマーまたは核酸プローブが、本発明によって提供される。約30個を上回るヌクレオチドの配列を有するプライマーまたは核酸プローブもまた、本発明の範囲内である。別の実施形態において、プライマーまたは核酸プローブは、表1、表2、もしくは表3に特定される配列のうちのいずれかの配列のヌクレオチド配列に少なくとも70%、少なくとも75%、80%、もしくは85%、または少なくとも90%、95%、もしくは97%同一である配列、またはこれらの配列のうちのいずれかの相補体を有し得る。核酸類似体は、ハイブリダイゼーションのための結合部位として使用され得る。好適な核酸類似体の一例は、ペプチド核酸である(例えば、Egholm et al.,Nature 363:566 568(1993)、米国特許第5,539,083号を参照されたい)。
プライマーまたは核酸プローブは、結合エネルギー、塩基組成、配列複雑性、交差ハイブリダイゼーション結合エネルギー、および二次構造を考慮したアルゴリズムを用いて選択され得る(2001年1月25日に公開されたFriendらの国際特許公開第01/05935号、Hughes et al.,Nat.Biotech.19:342−7(2001)を参照されたい。本発明の有用なプライマーまたは核酸プローブは、それぞれの転写物、例えば、変異標的領域に特有の配列に結合し、その特定の核酸、例えば、転写物または変異転写物のみを増幅、検出、およびシークエンシングするためにPCRで用いられ得る。遺伝子の変異の例は、本明細書で引用される参考文献および本明細書に記載の公開データベースに記載される。Oligoバージョン5.0(National Biosciences,Plymouth,MN)等の当技術分野で周知のコンピュータプログラムは、必要とされる特異性および最適増幅特性を有するプライマーの設計において有用である。完全に相補的な核酸プローブおよびプライマーが本明細書に記載のマーカー、およびその変異体、多型、または対立遺伝子を検出するために使用され得る一方で、完全な相補性からの逸脱が分子の標的領域への特異的なハイブリダイゼーションを阻止しない場合、そのような逸脱が企図される。例えば、オリゴヌクレオチドプライマーは、その5’末端に非相補的な断片を有し得、そのプライマーの残りの部分は、標的領域に相補的であり得る。あるいは、非相補的なヌクレオチドは、結果として生じるプローブまたはプライマーが依然として標的領域に特異的にハイブリダイズすることができる限り、核酸プローブまたはプライマーに散在し得る。
マーカーは、治療成果の別の評価基準、例えば、生化学的マーカー(例えば、Mタンパク質、タンパク尿)、または組織学的マーカー(例えば、芽球数、単位面積当たりの有糸分裂像数)と組み合わせて研究され得る。マーカーは、異なる期間、例えば、薬剤での治療を開始する前または後に得られたサンプルから測定され得る。小さいサンプルサイズのデータの有意性、マーカー遺伝子の異なる特徴が成果と同じ方向性に関連するかどうか、またはマーカーセット中のマーカー(複数可)の特徴と生物学的マーカーもしくは組織学的マーカーとの間に関連性があるかどうか、を試験するためのフィッシャーの直接検定(p値=ΣP(X=x)x=1からNAEまたはEGFR阻害に対する感受性を示す試験された状況、例えば変異の数まで)。最後の時点(または他の時点)で観察されたベースラインからの変化を、対応のあるt検定を用いて分析することができる。
1つの時点の量と次の時点の量の差または腫瘍サンプルの量と正常サンプルの量の差は、治療成果の予後を示し得る。ベースラインレベルは、治療前に、例えば、ゼロ時点で、治療の1日前、3日前、1週間前、および/または2週間以上前に1、2、3、4回以上発現を測定することによって決定され得る。あるいは、ベースラインレベルは、数名の対象、例えば、健常な対象、あるいは上述の治療を受けないか、または依然として治療を受けていない同一の健康状態もしくは障害を有する患者から決定され得る。あるいは、National Center for Biotechnology Information(NCBI,Bethesda,MD)の遺伝子発現オムニバス(GEO)プログラムで蓄積された発現値を用いることができる。例えば、プロテアソーム阻害治療前にサンプリングされた骨髄腫mRNA発現量のデータセットには、GEO受託番号GSE9782(Mulligan,et al.(2006)Blood 109:3177−88においても分析されたもの)およびGSE6477(Chng et al.(2007)Cancer Res.67:292−9においても分析されたもの)が含まれる。治療が腫瘍に与える影響を試験するために、マーカーの発現は、何らかの治療後の任意または複数の時点で、例えば、治療の1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、および/または6ヶ月以上後に測定され得る。例えば、マーカーの量は、何らかの治療後に1回、または治療中に複数の間隔、例えば、1週間、2週間、4週間、または2カ月、3カ月、もしくはそれ以上で、測定され得る。逆に、治療レジメンの投与を中止した後の進行性疾患の発現を決定するために、マーカーの量は、任意または複数の時点で、例えば、最後の治療から1日後、2日後、3日後、5日後、1週間後、2週間後、3週間後、4週間後、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後、および/または6ヶ月以上後に決定され得る。当業者は、マーカーの量を判定するために、様々な要素、例えば、治療の薬物動態、治療期間、治療の薬力学、患者の年齢、障害の性質、または治療の作用機序に応じて時点(複数可)を決定する。NAE阻害治療またはEGFR阻害治療中の異なる時点で得られたサンプルをスコア付けする際に、好ましくない成果に向かう傾向は、治療に対する腫瘍の応答の減少、例えば、耐性の増加を示し、患者を治療するために別の治療プロトコルが開始されるべきである。好ましい成果に向かう傾向は、治療レジメンの有用性または治療の利益の継続を示し、そのため治療を継続することができる。
任意のマーカー、例えば、マーカー遺伝子またはマーカーの組み合わせ、例えば、本発明のマーカー遺伝子、またはその変異、ならびにこのマーカー、例えば、本発明のマーカー遺伝子と組み合わせた任意の既知のマーカーは、本発明の組成物、キット、および方法において使用され得る。一般に、マーカーは、腫瘍細胞を含むサンプル中のマーカーの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量の可能な限り大きな分散に関して選択される。この分散は、マーカーの量を判定するための方法の検出限界と同程度に小さい場合もあるが、別の実施形態では、差は、少なくとも判定法の標準誤差よりも大きくあり得る。RNAまたはタンパク質の量の場合、差は、少なくとも1.5、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、100、500、1000倍以上であり得る。「低い」RNAまたはタンパク質の量は、ベースラインと比較して発現が低いということであり得る。DNAの量、例えばコピー数の場合、量は、0、1、2、3、4、5、6個以上のコピーである。欠失は、コピー数を0または1にさせ、増幅は、コピー数を2より多くする。差は、信頼レベル、例えば、0.05未満のp値、0.02未満のp値、0.01未満のp値、またはそれよりも低いp値によって認められ得る。
1つを上回るマーカー、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75個以上のマーカーのセットの測定は、治療成果を示す発現プロファイルまたは傾向を提供し得る。いくつかの実施形態において、マーカーセットは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、または25個以下のマーカーを含む。いくつかの実施形態において、マーカーセットは、複数のマーカー遺伝子、または1つ以上のマーカー遺伝子(例えば、核酸およびタンパク質、ゲノムDNAおよびmRNA、または本明細書に記載のマーカーの様々な組み合わせ)に対応する複数のマーカー物質を含む。マーカーセット中のマーカーの量の判定による治療成果の分析は、統計学的方法、例えば、そのセット中のマーカーの量の治療成果のクラスまたは傾向、例えば、各マーカーの測定値のシグナル対ノイズ比またはハイブリダイゼーション効率に対する寄与に影響し得る変数を計上する、本明細書に記載されるPLSR法を伴い得る。マーカーセット、例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75個以上のマーカーのセットを分析するための組成物は、本明細書に記載される少なくとも1つのマーカー核酸、例えば、表1、表2、もしくは表3に特定される核酸配列、またはそれらの配列のうちのいずれかの相補体を分析するための1つのプライマー、プローブ、または複数のプライマーを含み得る。選択されたマーカーセットを分析するための組成物は、本明細書に提供されるマーカーから構築され得るか、または本明細書に提供されるか、もしくは当該技術分野で既知の類似の方法を用いてマーカーから選択され得る。新しいマーカーを本発明のアッセイにおける使用に適格とするための1つの手段は、標準的な統計方法を使用して、決定係数r2を計算し、rを求めた後、ピアソンの積率相関係数を計算する、および/または最小二乗プロットを作成することによって、成果に対する関係性を相関させることである。相関により、マーカー、例えば、マーカー遺伝子の発現レベルに対するDNAのコピー数を分析することができる。遺伝子産物は、相関の結果(r2、例えば、この分析におけるデータの線形勾配)が、少なくとも0.1〜0.2、少なくとも0.3〜0.5、または少なくとも0.6〜0.8以上である場合、マーカーとして選択され得る。マーカーは、応答、TTP、または生存期間との正の相関で変化し得る(すなわち、コピー数と同一の様式で発現レベルを変化させ得る、例えば、コピー数が減少するときに減少し得る)。コピー数との負の相関で変化する(すなわち、コピー数レベルと反対の様式で発現レベルを変化させる、例えば、コピー数が減少するときに増加する)マーカーは、一貫性のない結果決定を提供する。
このアッセイで用いる新たなマーカーを適格とするための別の方法は、試験薬での治療前および治療後に数名の対象における多数のマーカーをアッセイする方法である。発現結果は、治療前のサンプルと比較して、治療後に一定方向に大規模な変化を示すマーカーの特定を可能にする。反復測定線形回帰モデルを構築して、統計学的に有意な変化または差を示す遺伝子を特定することができる。その後、これらの有意な遺伝子をランク付けするために、例えば、ベースライン対時間曲線からの変化下面積を計算することができる。これは、最大の統計的に有意な変化を示す遺伝子のリストをもたらし得る。その後、いくつかのマーカーは、主成分分析、クラスタリング方法(例えば、K平均法、階層分析)、多変量分散分析(MANOVA)、または線形回帰技法等の方法を用いてともに1組に組み合わせられ得る。そのような遺伝子(または遺伝子群)をマーカーとして使用するために、ベースラインから2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、7、10倍以上の発現の差を示す遺伝子が、マーカーセットに含まれる。発現プロファイル、例えば、集計マーカーセットのベースラインまたは参照との発現レベルの差の複合は、例えば、マーカーの過半数、例えば、60%、70%、80%、90%、95%以上のマーカーが、特定の結果、例えば、ベースラインまたは参照との有意差を示す場合、またはより多くのマーカー、例えば、10%、20%、30%、40%より多くのマーカーが、他方の方向ではなく一方の方向に有意な結果を示す場合、傾向を示す。
本発明の組成物、キット、および方法が患者における治療成果を特徴付けるために使用される実施形態において、本発明のマーカーまたはマーカーセットは、有意な結果が試験薬で治療された少なくとも約20%、少なくとも約40%、60%、70%、80%、85%、もしくは90%、または実質的にすべての患者において得られるように選択される。本発明のマーカーまたはマーカーセットは、約10%を超える陽性的中率(PPV)が一般集団のために得られるように選択され得、マーカーのさらなる信頼は、PPVが80%を超えるアッセイの特異性と関連するときに推測され得る。
治療剤
本発明のマーカーおよびマーカーセットは、患者、例えば癌患者、例えば、血液学的癌(例えば、多発性骨髄腫、白血病、リンパ腫等)または固形腫瘍癌(例えば、メラノーマ、食道癌、膀胱癌、肺癌、例えば非小細胞肺癌(NSCLC)、肺の腺癌、もしくは肺から脳への転移、膵臓癌、または乳癌)を有する患者における治療の好ましい成果(例えば、治療剤に対する感受性)の可能性を、本発明のマーカー(複数可)の特徴、例えば組成または量に影響を及ぼすその能力に基づいて、判定する。この予測を使用して、癌治療を評価して、いずれかの分類の患者に最も公的な治療レジメンを設計することができる。
具体的には、この方法を使用して、先の項で説明されたNAE阻害剤またはEGFR阻害剤に対する患者の感受性を予測することができる。本方法において試験される薬剤は、単一の薬剤または薬剤の組み合わせであり得る。本発明の方法は、NAE阻害治療またはEGFR阻害治療と、プロテアソーム阻害治療、および/または他のもしくは追加の薬剤、例えば化学療法剤からなる群から選択されるものとの組み合わせを含む。例えば、本方法は、単一の化学療法剤、例えば、NAE阻害剤(例えば、MLN4924)またはエルロチニブ等のEGFR阻害剤が、癌の治療に使用され得るかどうか、または1つ以上の薬剤を、NAE阻害剤(例えば、MLN4924)またはEGFR阻害剤、例えば、エルロチニブと組み合わせて使用すべきかどうか、を決定するために使用され得る。有用な組み合わせには、異なる作用機序を有する薬剤、例えば、アルキル化剤およびNAE阻害剤と組み合わせた抗有糸分裂剤の使用が含まれ得る。
本明細書で使用されるとき、「プロテアソーム阻害剤」という用語は、インビトロまたはインビボで20Sまたは26Sプロテアソームの酵素活性を直接阻害する任意の物質を指す。いくつかの実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、ペプチジルボロン酸である。本発明の方法における使用に好適なペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤の例は、Adamsらの米国特許第5,780,454号(1998)、同第6,066,730号(2000)、同第6,083,903号(2000)、同第6,297,217号(2001)、同第6,465,433号(2002)、同第6,548,668号(2003)、同第6,617,317号(2003)、および同第6,747,150号(2004)に開示されており、これらのそれぞれは、そこに開示されるすべての化合物および式を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態において、ペプチジルボロン酸プロテアソーム阻害剤は、N(4モルホリン)カルボニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸、N(8キノリン)スルホニル−β−(1−ナフチル)−L−アラニン−L−アラニン−L−ロイシンボロン酸、N(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸、およびN(4モルホリン)−カルボニル−[O−(2−ピリジルメチル)]−L−チロシン−L−ロイシンボロン酸からなる群から選択される。特定の実施形態において、プロテアソーム阻害剤は、N(ピラジン)カルボニル−L−フェニルアラニン−L−ロイシンボロン酸(以前はMLN341またはPS−341と呼ばれたボルテゾミブ、VELCADE(登録商標))である。文献は、筋タンパク質分解速度を低減させ、細胞におけるNF−kBの活性を低減させ、細胞におけるp53タンパク質の分解速度を低減させ、細胞におけるサイクリン分解を阻害し、癌細胞の成長を阻害し、NF−kB依存性細胞接着を阻害するための、開示されるボロン酸エステルおよびボロン酸化合物の使用について説明する。ボルテゾミブは、酵素の活性な部位のうちの1つに緊密に(Ki=0.6nM)結合することによって、プロテアソームを特異的かつ選択的に阻害する。ボルテゾミブは、選択的に細胞毒性であり、インビトロおよびインビボアッセイにおいてNational Cancer Institute(NCI)における新しい細胞毒性パターンを有する(Adams J,et al.Cancer Res(1999)59:2615−22)。
さらに、プロテアソーム阻害剤には、ペプチドアルデヒドプロテアソーム阻害剤(それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Steinらの米国特許第5,693,617号(1997)、Simanらの国際特許公開第91/13904号、Iqbal et al.,J.Med.Chem.38:2276−2277(1995)、およびIinumaらの国際特許公開第05/105826号)、ペプチジルエポキシケトンプロテアソーム阻害剤(Crewsらの米国特許第6,831,099号、Smythらの国際特許公開第05/111008号、Bennettらの国際特許公開第06/045066号、Spaltenstein et al.Tetrahedron Lett.37:1343(1996)、Meng,Proc.Natl.Acad.Sci.96:10403(1999)、およびMeng,Cancer Res.59:2798(1999))、α−ケトアミドプロテアソーム阻害剤(ChatterjeeおよびMallamoの米国特許第6,310,057号(2001)および同第6,096,778号(2000)、ならびにWangらの米国特許第6,075,150号(2000)および同第6,781,000号(2004))、ペプチジルビニルエステルプロテアソーム阻害剤(Marastoni et al.,J.Med.Chem.48:5038(2005)、ならびにペプチジルビニルスルホンおよび2−ケト−1,3,4−オキサジアゾールプロテアソーム阻害剤(Rydzewski et al.,J.Med.Chem.49:2953(2006)、およびBogyo et al.のProc.Natl.Acad.Sci.94:6629(1997)に開示されるもの等)、アザペプトイド(Bouget et al.,Bioorg.Med.Chem.11:4881(2003)、Baudy−Floc’hらの国際特許公開第05/030707号、およびBonnemainsらの国際特許公開第03/018557号)、エフラペプチンオリゴペプチド(Papathanassiuの国際特許公開第05/115431号)、ラクタシスチンおよびサリノスポラミドおよびそれらの類似体(Fenteanyらの米国特許第5,756,764号(1998)、同第6,147,223号(2000)、同第6,335,358号(2002)、および同第6,645,999号(2003)、Fenteany et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(1994)91:3358、Fenicalらの国際特許公開第05/003137号、Palladinoらの国際特許公開第05/002572号、Stadlerらの国際特許公開第04/071382号、XiaoおよびPatelらの米国特許公開2005/023162号、ならびにCoreyの国際特許公開第05/099687号)が含まれる。
本発明の方法において、NAE阻害剤(例えば、MLN4924)またはEGFR阻害剤、例えばエルロチニブと組み合わせて使用するためのさらなる治療剤は、グルココルチコイドステロイドを含む既知のクラスの治療剤を含む。グルココルチコイド治療薬は、概して、少なくとも1つのグルココルチコイド剤(例えば、デキサメタゾン)を含む。本発明のある特定の適用において、本発明の方法に使用される薬剤は、グルココルチコイド剤である。多発性骨髄腫患者の治療ならびに他の癌治療で利用されるグルココルチコイドの一例は、デキサメタゾンである。血液学的腫瘍の治療および固形腫瘍の組み合わせ療法において用いられるさらなるグルココルチコイドには、ヒドロコルチゾン、プレジソロン、プレドニゾン、およびトリアムシノロンが挙げられる。
NAE阻害剤またはEGFR阻害剤と組み合わせて使用するための他の治療剤には、多様な化学療法剤の例が含まれる。「化学療法剤」は、増殖性細胞または組織の成長を阻害する化学試薬を含むことが意図されており、ここで、そのような細胞または組織の成長は望ましくない。化学療法剤、例えば、抗代謝剤、例えば、Ara AC、5−FU、ゲムシタビン、およびメトトレキサート、抗有糸分裂剤、例えば、タキサン、ビンブラスチン、およびビンクリスチン、アルキル化剤、例えば、メルファラン(melphanlan)、カルムスチン(BCNU)、およびナイトロジェンマスタード、トポイソメラーゼII阻害剤、例えば、VW−26、トポテカン、およびブレオマイシン、鎖切断剤、例えば、ドキソルビシンおよびミトキサントロン(DHAD)、架橋剤、例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン(CBDCA)、放射光および紫外光は、当該技術分野で周知であり(例えば、Gilman A.G.,et al.,The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th Ed.,Sec 12:1202−1263(1990)を参照されたい)、腫瘍性疾患の治療に典型的に使用される。一般に化学療法治療に用いられる化学療法剤の例を、以下の表4に列挙する。
本明細書に開示の薬剤は、皮内、皮下、経口、動脈内、または静脈内を含む任意の経路で投与され得る。一実施形態において、投与は、静脈内経路による。非経口投与は、ボーラスまたは注入で提供され得る。
薬学的に許容される混合物中の本開示の化合物の濃度は、投与される化合物の用量、用いられる化合物(複数を含む)の薬物動態特性、および投与経路を含むいくつかの要素によって異なる。薬剤は、単回投与または反復投与で投与され得る。治療薬は、患者の全般的な健康状態、ならびに選択された化合物(複数を含む)の製剤および投与経路を含むいくつかの要因に応じて、1日1回またはより高い頻度で投与され得る。
検出方法
予後アッセイの一般的原理は、マーカーおよびプローブを含有し得るサンプルまたは反応混合物を、適切な条件下でマーカーおよびプローブを相互作用および結合させるのに十分な時間調製し、故に、除去され、かつ/または反応混合物中で検出され得る複合体を形成することを含む。これらのアッセイを様々な方法で実施することができる。
例えば、そのようなアッセイを実施するための1つの方法は、マーカーまたはプローブを基質とも称される固相支持体上に係留することと、反応の最後に固相上に係留された標的マーカー/プローブ複合体を検出することとを含む。そのような方法の一実施形態において、マーカーの存在および/または濃度についてアッセイされる対象由来のサンプルは、担体または固相支持体上に係留され得る。別の実施形態では、プローブが固相に係留され得、かつ対象由来のサンプルがアッセイの非係留成分として反応することを許され得るといった逆の状況も可能である。そのような実施形態の一例として、サンプルの発現分析のために係留された予測マーカーまたはマーカーセットを含有するアレイまたはチップの使用が挙げられる。
アッセイ成分を固相に係留するための多くの確立された方法が存在する。これらには、制限なく、ビオチンおよびストレプトアビジンの共役によって固定化されるマーカーまたはプローブ分子が含まれる。そのようなビオチン化アッセイ成分は、当技術分野で既知の技法(例えば、ビオチン化キット(Pierce Chemicals、Rockford,IL))を用いてビオチン−NHS(N−ヒドロキシスクシンイミド)から調製され、ストレプトアビジンをコーティングした96ウェルプレート(Pierce Chemical)のウェルに固定化され得る。ある実施形態において、固定化アッセイ成分を有する表面は、事前に調製され、保存され得る。
そのようなアッセイに好適な他の担体または固相支持体には、マーカーまたはプローブが属する分子のクラスに結合することができる任意の物質が含まれる。周知の支持体または担体には、ガラス、ポリスチレン、ナイロン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレン、デキストラン、アミラーゼ、天然および変性セルロース、ポリアクリルアミド、斑糲岩、およびマグネタイトが含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、抗体または抗原への結合に好適な多くの他の担体を理解しており、そのような支持体を本発明での使用に適応させることができる。例えば、細胞から単離されたタンパク質は、ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で泳動し、ニトロセルロース等の固相支持体上で固定化され得る。その後、この支持体は、好適な緩衝液で洗浄され、続いて、検出可能に標識された抗体で処理され得る。その後、固相支持体は、2回目の緩衝液での洗浄が行われ、非結合抗体を除去し得る。その後、固体支持体上の結合標識の量が従来の方法で検出され得る。
上述の手法でアッセイを実施するために、非固定化成分は、第2の成分が係留された固相に添加される。反応が完了した後、非複合成分は、形成された任意の複合体が固相上に固定化されたまま留まるような条件下で除去され得る(例えば、洗浄によって)。固相に係留されたマーカー/プローブ複合体の検出は、本明細書に概説されるいくつかの方法で達成され得る。
ある実施形態において、プローブが非係留アッセイ成分であるとき、このプローブは、本明細書で論じられ、かつ当業者に周知の検出可能な標識を用いて、直接的または間接的のいずれかで、アッセイの検出および読み出しのために標識され得る。プローブ(例えば、核酸または抗体)に関して、「標識」という用語は、検出可能な物質をプローブに結合(すなわち、物理的に連結)させることによるプローブの直接標識、ならびに直接標識される別の試薬と反応させることによるプローブの間接標識を包含するよう意図される。間接標識の一例として、蛍光標識された二次抗体を用いた一次抗体の検出が挙げられる。例えば、蛍光エネルギー移動の技法(FET、例えば、Lakowiczらの米国特許第5,631,169号、Stavrianopoulosらの米国特許第4,868,103号を参照のこと)を利用して、いずれの成分(マーカーまたはプローブ)もさらに操作または標識することなくマーカー/プローブ複合体形成を直接検出することも可能である。第1の「ドナー」分子上のフルオロフォア標識は、適切な波長の入射光での励起時にその放射された蛍光エネルギーが第2の「受容体」分子上の蛍光標識によって吸収され、次いで、吸収したエネルギーのため蛍光を発することができるように選択される。あるいは、「ドナー」タンパク質分子は、単にトリプトファン残基の天然蛍光エネルギーを利用し得る。「受容体」分子標識が「ドナー」分子標識と異なり得るように異なる波長の光を放射する標識が選択される。標識間のエネルギー移動の効率が分子を分離する距離に関連しているため、分子間の空間的関係が判定され得る。結合が分子間で生じるといった状況下において、アッセイにおける「受容体」分子標識の蛍光放射は最大であるべきである。FET結合事象は、当技術分野で周知の標準の蛍光定量的検出手段によって(例えば、蛍光光度計を用いて)好都合に測定され得る。
別の実施形態では、マーカーを認識するプローブの能力の決定は、リアルタイム生体分子相互作用分析(BIA)(例えば、Sjolander,S.and Urbaniczky,C.(1991)Anal.Chem.63:2338−2345およびSzabo et al.(1995)Curr.Opin.Struct.Biol.5:699−705を参照のこと)等の技術を利用して、いずれのアッセイ成分(プローブまたはマーカー)も標識することなく達成され得る。本明細書で使用されるとき、「BIA」または「表面プラズモン共鳴」は、相互作用物(例えば、BIACORE(商標))のうちのいずれも標識することなく生体特異的相互作用をリアルタイムで試験する技術である。結合表面における質量の変化(結合事象を示す)は、表面付近の光の屈折率の変化(表面プラズモン共鳴(SPR)の光学現象)をもたらし、生体分子間のリアルタイム反応の指標として使用され得る検出可能なシグナルをもたらす。
あるいは、別の実施形態では、類似の診断および予後アッセイは、液相中の溶質としてマーカーおよびプローブを用いて実施され得る。そのようなアッセイにおいて、複合マーカーおよびプローブは、分画遠心分離、クロマトグラフィー、電気泳動、および免疫沈降を含むが、これらに限定されないいくつかの標準の技法のうちのいずれかによって非複合成分から分離される。分画遠心分離において、マーカー/プローブ複合体は、それらの異なる大きさおよび密度に基づいて複合体の沈降平衡が異なるため、一連の遠心分離ステップによって非複合アッセイ成分から分離され得る(例えば、Rivas,G.,and Minton,A.P.(1993)Trends Biochem Sci.18:284−7を参照されたい)。標準のクロマトグラフ技法も複合分子を非複合分子から分離するために利用され得る。例えば、ゲル濾過クロマトグラフィーは、大きさに基づいて、かつカラム形式の適切なゲル濾過樹脂を利用して分子を分離し、例えば、比較的大きい複合体は、比較的小さい非複合成分から分離され得る。同様に、非複合成分と比較したマーカー/プローブ複合体の比較的異なる電荷特性は、例えば、イオン交換クロマトグラフィー樹脂を利用して複合体と非複合成分を区別するために利用され得る。そのような樹脂およびクロマトグラフ技法は、当業者に周知である(例えば、Heegaard,N.H.(1998)J.Mol.Recognit.11:141−8、Hage,D.S.,and Tweed,S.A.(1997)J.Chromatogr.B.Biomed.Sci.Appl.699:499−525を参照されたい)。ゲル電気泳動もまた、複合アッセイ成分を非結合成分から分離するために用いられ得る(例えば、Ausubel et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,New York,1987−1999を参照されたい)。この技法において、タンパク質または核酸複合体は、例えば大きさまたは電荷に基づいて分離される。いくつかの実施形態において、還元剤の不在下における非変性ゲルマトリックス物質および条件は、電気泳動プロセス中に結合相互作用を維持するために使用される。特定のアッセイおよびその成分に適切な条件は、当業者に周知である。
単離mRNAは、サザンまたはノーザン分析、ポリメラーゼ連鎖反応およびTAQMAN(登録商標)遺伝子発現アッセイ(Applied Biosystems(Foster City,CA))、ならびにプローブアレイが含まれるが、これらに限定されないハイブリダイゼーションまたは増幅アッセイで使用され得る。mRNAレベルを検出するための1つの診断方法は、単離mRNAを検出される遺伝子によってコードされるmRNAにハイブリダイズし得る核酸分子(プローブ)と接触させることを含む。マーカー遺伝子の変異を含む核酸は、プローブまたはプライマーとして使用され得る。本発明の核酸プローブまたはプライマーは、一本鎖DNA(例えば、オリゴヌクレオチド)、二本鎖DNA(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド)、またはRNAであり得る。本発明のプライマーは、目的とする領域に隣接した核酸配列にハイブリダイズし、かつ伸長するか、または目的とする領域を被覆する核酸を指す。核酸プローブは、例えば、全長cDNA、またはその一部、例えば、マーカーの少なくとも7、15、20、25、30、50、75、100、125、150、175、200、250、または500個以上の連続したヌクレオチドを有し、かつストリンジェントな条件下で本発明のマーカーをコードするmRNAまたはゲノムDNAに特異的にハイブリダイズするのに十分なオリゴヌクレオチドであり得る。核酸プローブの正確な長さは、当業者が日常的に考慮および実施する多くの要素に依存する。本発明の核酸プローブは、当技術分野で既知の任意の好適な方法論を用いて化学合成によって調製され得るか、組み換え技術によって産生され得るか、または例えば制限消化によってサンプルから得られ得る。本発明の診断アッセイにおける使用に好適な他のプローブが本明細書に記載される。プローブは、それに結合される標識基、例えば、放射性同位体、蛍光化合物、酵素、酵素補助因子、ハプテン、配列タグ、タンパク質、または抗体を含み得る。核酸は、塩基部分、糖部分、またはリン酸骨格で修飾され得る。核酸標識の一例は、SUPER(商標)修飾塩基技術(Nanogen,Bothell,WA、米国特許第7,045,610号を参照されたい)を用いて組み込まれる。発現レベルは、例えば増幅DNAレベルを測定した後の一般的な核酸レベルとして(例えば、DNA挿入染色、例えば、SYBRグリーン染色(Qiagen Inc.(Valencia,CA))を用いて)、または特異的核酸として(例えば、プローブが標識された状態のプローブに基づく設計を用いて)測定され得る。TAQMAN(登録商標)アッセイ形式は、プローブに基づく設計を用いて、特異性およびシグナル対ノイズ比を増加させ得る。
そのようなプライマーまたはプローブは、例えば、対象由来の細胞のサンプル中で転写された核酸分子の量を測定することによって、例えば、転写物、mRNAレベルを検出することによって、またはタンパク質をコードする遺伝子が変異もしくは欠失したかを決定することによって、タンパク質を発現する細胞または組織を特定するための診断試験キットの一部として使用され得る。RNAまたはcDNAの核酸プローブとのハイブリダイゼーションは、問題のマーカーが発現されることを示し得る。本発明は、遺伝コードの縮重のため、マーカータンパク質(例えば、表1、表2、または表3に特定される配列を有するタンパク質)をコードし、したがって同じタンパク質をコードする核酸のヌクレオチド配列とは異なる核酸分子を検出することをさらに包含する。当業者であれば、アミノ酸配列の変化につながるDNA配列多型が集団(例えば、ヒト集団)内に存在し得ることを理解する。そのような遺伝的多型は、天然の対立遺伝子変異のため、集団内の個体の間に存在し得る。対立遺伝子は、所与の遺伝子座で選択的に生じる遺伝子群のうちの1つである。そのような天然の対立遺伝子変異は、典型的には、所与の遺伝子のヌクレオチド配列に1〜5%の不一致をもたらし得る。代替の対立遺伝子は、いくつかの異なる個体、例えば、個体由来の正常なサンプル中の目的とする遺伝子をシークエンシングすることによって特定され得る。これは、様々な個体の同一の遺伝子座を特定するために、ハイブリダイゼーションプローブを用いて容易に実行され得る。天然の対立遺伝子変異の結果であり、かつ機能活性を変化させないありとあらゆるそのようなヌクレオチド変異および結果として生じるアミノ酸多型または変異の検出は、本発明の範囲内に収まるよう意図される。加えて、RNA発現レベルに影響を与えるDNA多型も存在し得、その遺伝子の全体の発現レベルに影響を与え得ることが理解される(例えば、制御または分解に影響を与えることによって)。
本明細書で使用されるとき、「ハイブリダイズ」という用語は、互いに大いに同一または相同であるヌクレオチド配列が互いにハイブリダイズされたまま留まるといったハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を説明するよう意図される。いくつかの実施形態において、条件は、互いに少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、90%、または95%同一である配列がその後の増幅および/または検出のために互いにハイブリダイズされたまま留まるような条件である。ストリンジェントな条件は、関与するヌクレオチド配列の長さによって異なるが、当業者に既知であり、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubel et al.,eds.,John Wiley&Sons,Inc.(1995)の第2項、第4項、および第6項の教示に基づいて見出されるか、または決定され得る。さらなるストリンジェントな条件およびそのような条件を決定するための式は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989)の第7章、第9章、および第11章において見出され得る。少なくとも10塩基対長であるハイブリッドに対するストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例として、約65〜70℃での4×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション(または約42〜50℃での4×SSCと50%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーション)、その後、約65〜70℃での1×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。そのようなハイブリッドに対する高度にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の非限定的な例として、約65〜70℃での1×SSCにおけるハイブリダイゼーション(または約42〜50℃での1×SSCと50%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーション)、その後、約65〜70℃での0.3×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。そのようなハイブリッドに対するストリンジェンシーが低下したハイブリダイゼーション条件の非限定的な例として、約50〜60℃での4×SSCにおけるハイブリダイゼーション(または代替としては、約40〜45℃での6×SSCと50%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーション)、その後、約50〜60℃での2×SSC中での1回以上の洗浄が挙げられる。上に列挙される値、例えば、65〜70℃または42〜50℃の中間範囲は、本発明によって包含されるようにも意図される。ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の別の例は、約45℃での6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)におけるハイブリダイゼーション、その後、50〜65℃での0.2×SSC、0.1%SDSでの1回以上の洗浄である。ストリンジェントなハイブリダイゼーション緩衝液のさらなる例は、1M NaCl、50mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES)緩衝液(pH6.5)、0.5%サルコシン酸ナトリウム、および30%ホルムアミドにおけるハイブリダイゼーションである。ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液中のSSPE(1×SSPEは、0.15M NaCl、10mM NaH2PO4、および1.25mM EDTA、pH7.4である)は、SSC(1×SSCは、0.15M NaClおよび15mMクエン酸ナトリウムである)で代用されてもよく、洗浄は、各ハイブリダイゼーションが完了した後、毎回15分間行われる 長さが50未満の塩基対であると予想されるハイブリッドのハイブリダイゼーション温度は、ハイブリッドの融解温度(Tm)よりも5〜10℃低くなければならず、ここで、Tmは、次の等式に従って決定される。長さが18塩基対未満のハイブリッドについては、Tm(℃)=2(A+T塩基の数)+4(G+C塩基の数)である。長さが18〜49塩基対であるハイブリッドについては、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)−(600/N)であり、ここで、Nは、ハイブリッドの塩基の数であり、[Na+]は、ハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度である(1×SSCの[Na+]=0.165M)。当業者であれば、さらなる試薬がハイブリダイゼーションおよび/または洗浄緩衝液に添加されて、核酸分子の、膜、例えば、遮断薬(例えば、BSAまたはサケもしくはニシン精子担体DNA)、界面活性剤(例えば、SDS)、キレート剤(例えば、EDTA)、Ficoll、ポリビニルピロリドン(PVP)等を含むが、これらに限定されないニトロセルロースまたはナイロン膜への非特異的なハイブリダイゼーションを減少させ得ることも理解するであろう。特にナイロン膜を使用する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件のさらなる非限定的な例は、約65℃で0.25〜0.5M NaH2PO4、7%SDSにおけるハイブリダイゼーション、その後、65℃で0.02M NaH2PO4、1%SDSでの1回以上の洗浄(または代替として0.2×SSC、1%SDS)であり、例えば、Church and Gilbert(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:1991−1995を参照されたい。プライマーまたは核酸プローブは、検出方法において単独で使用され得るか、またはプライマーは、検出方法において少なくとも1つの他のプライマーまたは核酸プローブとともに使用され得る。プライマーは、核酸の少なくとも一部を増幅するためにも使用され得る。本発明の核酸プローブは、目的とする領域にハイブリダイズし、かつさらに伸長されない核酸を指す。例えば、核酸プローブは、バイオマーカーの変異体領域に特異的にハイブリダイズし、かつ患者のDNAもしくは形成されるハイブリッドの種類にハイブリダイズすることによって、またはハイブリダイズすることなく、バイオマーカーの変異の存在もしくは正体またはマーカー活性の量を示し得る核酸である。
1つの形式において、RNAは、例えば、単離RNAをアガロースゲル上で泳動させ、かつRNAをゲルからニトロセルロース等の膜に移動させることによって、固体表面上に固定化され、プローブと接触する。代替の形式において、核酸プローブ(複数を含む)は、固体表面上に固定化され、RNAを、治療成果を示す少なくとも1つのマーカーを含むマーカーセットを用いて、例えば、AFFYMETRIX(登録商標)遺伝子チップアレイもしくはSNPチップ(Santa Clara,CA)またはカスタマイズされたアレイにおいてプローブ(複数を含む)と接触させる。当業者であれば、本発明のマーカーの量の検出で用いるための既知のRNAおよびDNA検出方法を容易に適応させることができる。例えば、高密度マイクロアレイまたは分岐鎖DNAアッセイは、先の項に記載されるように腫瘍細胞を単離するよう修飾されたサンプル等のサンプル中のより高い濃度の腫瘍細胞から恩恵を受け得る。関連実施形態において、サンプルから得られる転写ポリヌクレオチドの混合物は、基質であって、マーカー核酸の少なくとも一部(例えば、少なくとも7、10、15、20、25、30、40、50、100、500個以上のヌクレオチド残基)と相補的であるか、または相同であるそれに固定されたポリヌクレオチドを有する基質と接触する。マーカーと相補的であるか、または相同であるポリヌクレオチドは、基質上で差次的に検出可能であり(例えば、異なる発色団またはフルオロフォアを用いて検出可能であるか、または異なる選択された位置に固定され)、その後、単一の基質(例えば、選択された位置に固定されるポリヌクレオチドの「遺伝子チップ」マイクロアレイ)を用いて同時に複数のマーカーの発現レベルが判定され得る。ある実施形態において、ある核酸と別の核酸とのハイブリダイゼーションを含むマーカー発現を判定する方法が用いられるとき、ハイブリダイゼーションは、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で行われ得る。
サンプル中の本発明のマーカーに対応するRNAの量を決定するための代替の方法は、例えば、RT−PCR(Mullisの米国特許第4,683,202号(1987)に記載の実験的実施形態)、リガーゼ連鎖反応(BaranyのProc.Natl.Acad.Sci.USA,88:189−193(1991))、自己維持配列複製(Guatelli et al.のProc.Natl.Acad.Sci.USA 87:1874−1878(1990))、転写増幅システム(Kwoh et al.のProc.Natl.Acad.Sci.USA 86:1173−1177(1989))、Q−βレプリカーゼ(Lizardi et al.のBio/Technology 6:1197(1988))、ローリングサークル複製(Lizardi et al.の米国特許第5,854,033号)、または任意の他の核酸増幅方法による核酸増幅プロセスを含み、当業者に周知の技法を用いた増幅分子の検出が続く。これらの検出スキームは、核酸分子が非常に少ない数だけ存在する場合にそのような分子の検出に特に有用である。本明細書で使用されるとき、増幅プライマーは、遺伝子の5’または3’領域にアニーリングし(それぞれ、プラス鎖およびマイナス鎖、または逆もまた同様)、かつその間に短い領域を含有することができる一対の核酸分子として定義される。概して、増幅プライマーは、約10〜約30ヌクレオチド長であり、約50〜約200ヌクレオチド長の領域に隣接する。適切な条件下で適切な試薬を用いて、そのようなプライマーは、プライマーに隣接するヌクレオチド配列を含む核酸分子の増幅を可能にする。
インサイツ方法の場合、RNAは、検出前に細胞から単離される必要はない。そのような方法において、細胞または組織サンプルは、既知の組織学的方法を用いて調製/処理される。その後、サンプルは、支持体、典型的には、スライドガラス上に固定化され、次いで、マーカーをコードするRNAにハイブリダイズし得るプローブと接触する。
本発明の別の実施形態において、マーカーに対応するポリペプチド、例えば、表1、2または3に特定されるマーカー遺伝子と関連するヌクレオチドによってコードされるポリペプチドが、検出される。いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドを検出するための薬剤は、本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合することができる抗体である。関連する実施形態において、抗体は、検出可能な標識を有する。抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。無傷抗体またはその断片(例えば、FabまたはF(ab’)2)が使用され得る。
様々な形式を用いて、サンプルが所与の抗体に結合するタンパク質を含有するかを決定することができる。そのような形式の例として、酵素免疫アッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、ウエスタンブロット分析、および酵素免疫吸着法(ELISA)が挙げられるが、これらに限定されない。当業者であれば、B細胞が本発明のマーカーを発現するかどうかを決定するのに使用するための既知のタンパク質/抗体検出方法を容易に適応させることができる。
マーカーに対応するポリペプチドのレベルを決定するための別の方法は、質量分析である。例えば、無傷タンパク質またはペプチド、例えば、トリプシンペプチドは、1つ以上のポリペプチドマーカーを含有するサンプル、例えば、血液サンプル、リンパサンプル、または他のサンプルから分析され得る。この方法は、この方法の感受性を増加させるために、豊富なタンパク質、例えば、血清アルブミンの量を減少させるようにサンプルを処理することをさらに含み得る。例えば、液体クロマトグラフィーを用いてサンプルを分画することができ、したがって、サンプルの部分を質量分析によって別々に分析することができる。これらのステップは、別々のシステムまたは組み合わせた液体クロマトグラフィー/質量分析システム(LC/MS、例えば、Liao,et al.(2004)Arthritis Rheum.50:3792−3803を参照されたい)。質量分析システムは、タンデム(MS/MS)モードでもあり得る。タンパク質またはペプチド混合物の電荷状態分布は、1回または複数回の走査をさせて得られ、例えばLC/MSシステムにおいて保持時間および質量対電荷比(m/z)を用いた統計学的方法によって分析されて、NAE阻害治療に応答するか、または応答しない患者由来のサンプル中の統計学的に有意なレベルで差次的に発現されたタンパク質を特定することができる。使用され得る質量分析計の例には、イオントラップシステム(ThermoFinnigan,San Jose,CA)または四重極飛行時間型質量分析計(Applied Biosystems,Foster City,CA)がある。この方法は、例えば、飛行時間型(MALDI−TOF)質量分析法でのマトリックス支援レーザー脱離イオン化におけるペプチド質量フィンガープリントのステップをさらに含み得る。この方法は、トリプシンペプチドのうちの1つ以上をシークエンシングするステップをさらに含み得る。この方法の結果を用いて、質量分析トリプシンペプチドm/z基準ピークに基づいて、例えば、National Center for Biotechnology Information,Bethesda,MDまたはSwiss Institute for Bioinformatics,Geneva,Switzerlandが管理する一次配列データベースからタンパク質を特定することができる。
電子装置可読アレイ
本発明の方法とともに用いるための少なくとも1つの本発明の予測マーカーを含む可読アレイを含む電子装置も企図される。本明細書で使用されるとき、「電子装置可読媒体」とは、電子装置によって読み取られ、かつ直接アクセスされ得るデータまたは情報を記憶、保持、または含有する任意の好適な媒体を指す。本明細書で使用されるとき、「電子装置」という用語は、データまたは情報を記憶するように構成または適合される任意の好適なコンピューティングもしくは処理装置または他のデバイスを含むよう意図される。本発明との使用および記録された情報の監視に好適な電子装置の例として、スタンドアロンのコンピューティング装置;ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)インターネット、イントラネット、およびエクストラネットを含むネットワーク;個人用携帯情報端末(PDA)、携帯電話、ポケベル等の電子器具;ならびにローカルおよび分散処理システムが挙げられる。本明細書で使用されるとき、「記録される」とは、電子装置可読媒体に情報を記憶またはコード化するためのプロセスを指す。当業者であれば、既知の媒体に情報を記録して、本発明のマーカーを含む製品を生産するための現在既知の方法のうちのいずれかを容易に適応させることができる。
例えば、マイクロアレイシステムが周知であり、サンプルを判定する(例えば、遺伝子発現の判定(例えば、DNA検出、RNA検出、タンパク質検出)または代謝産物産生の判定)ために当技術分野で使用されている。本発明に従って用いるマイクロアレイは、本明細書に記載の治療レジメンに対する応答および/または非応答を特徴とする本発明の予測マーカー(複数を含む)の1つ以上のプローブを含む。一実施形態において、マイクロアレイは、短期生存者において発現の増加を示したマーカーからなる群から選択されるマーカーのうちの1つ以上に対応する1つ以上のプローブ、および患者のうち長期生存者において発現の増加を示した遺伝子を含む。いくつかの異なるマイクロアレイ構成およびそれらを産生するための方法は当業者に既知であり、例えば、米国特許第5,242,974号、同第5,384,261号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,445,934号、同第5,556,752号、同第5,405,783号、同第5,412,087号、同第5,424,186号、同第5,429,807号、同第5,436,327号、同第5,472,672号、同第5,527,681号、同第5,529,756号、同第5,545,531号、同第5,554,501号、同第5,561,071号、同第5,571,639号、同第5,593,839号、同第5,624,711号、同第5,700,637号、同第5,744,305号、同第5,770,456号、同第5,770,722号、同第5,837,832号、同第5,856,101号、同第5,874,219号、同第5,885,837号、同第5,919,523号、同第5981185号、同第6,022,963号、同第6,077,674号、同第6,156,501号、同第6261776号、同第6346413号、同第6440677号、同第6451536号、同第6576424号、同第6610482号、同第5,143,854号、同第5,288,644号、同第5,324,633号、同第5,432,049号、同第5,470,710号、同第5,492,806号、同第5,503,980号、同第5,510,270号、同第5,525,464号、同第5,547,839号、同第5,580,732号、同第5,661,028号、同第5,848,659号、および同第5,874,219号、Shena,et al.(1998),Tibtech 16:301、Duggan et al.(1999)Nat.Genet.21:10、Bowtell et al.(1999)Nat.Genet.21:25、Lipshutz et al.(1999)Nature Genet.21:20−24,1999、Blanchard,et al.(1996)Biosensors and Bioelectronics,11:687−90、Maskos,et al.,(1993)Nucleic Acids Res.21:4663−69、Hughes,et al.(2001)Nat.Biotechol.19:342,2001に開示されており、それぞれ、参照により本明細書に組み込まれる。組織マイクロアレイは、タンパク質特定のために使用され得る(Hans et al.(2004)Blood 103:275−282を参照されたい)。ファージ−エピトープマイクロアレイは、タンパク質(複数可)が患者において自己抗体を誘導するかどうかに基づいて、サンプル中の1つ以上のタンパク質を特定するために使用され得る(Bradford et al.(2006)Urol.Oncol.24:237−242)。
したがって、マイクロアレイは、例えば、マーカー遺伝子に対応する核酸を特定、検出、または定量化するために、本明細書で特定される1つ以上のマーカー、例えば、治療成果を示すものに対応する1つ以上のプローブを含む。マイクロアレイは、治療成果を示す、例えば、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも10個、少なくとも15個、少なくとも20個、少なくとも25個、少なくとも30個、少なくとも35個、少なくとも40個、少なくとも45個、少なくとも50個、少なくとも55個、少なくとも60個、少なくとも65個、少なくとも70個、少なくとも75個、少なくとも85個、もしくは少なくとも100個のバイオマーカーおよび/またはその変異に対応するプローブを含み得る。マイクロアレイは、本明細書に記載の1つ以上のバイオマーカーに対応するプローブを含み得る。なおもさらに、マイクロアレイは、本明細書に記載され、かつ本明細書に記載の方法に従って選択およびまとめられ得る完全なマーカーセットを含み得る。このマイクロアレイを用いて、アレイ中の1つ以上の予測マーカーまたは予測マーカーセットの発現をアッセイすることができる。一例において、アレイを用いて、サンプル中の2つ以上の予測マーカーまたはマーカーセット発現をアッセイして、アレイ中のマーカーの発現プロファイルを解明することができる。この様式において、全マーカーセットを、発現について同時にアッセイすることができる。これは、1つ以上のサンプルにおいて特異的に発現される一連のマーカーを示す発現プロファイルが作成されることを可能にする。なおもさらに、これにより、発現プロファイルが作成される、例えば、治療成果を判定するスコアに関して相関することを可能にする。
アレイは、正常および異常な(例えば、サンプル、例えば、腫瘍)細胞中の1つ以上のマーカーの差次的発現パターンの解明にも有用である。これは、患者の治療成果の特定を容易にするためのツールとしての機能を果たし得る一連のマーカーを提供する。さらに、アレイは、参照発現レベルについての参照マーカーの発現の解明に有用である。別の例において、アレイを用いて、アレイ中の1つ以上のマーカーの発現の経時変化を監視することができる。
そのような定性的決定に加えて、本発明は、マーカー発現の定量化を可能にする。したがって、予測マーカーは、サンプル中のマーカーの量によるマーカーセットまたは成果の指標に基づいて分類され得る。これは、例えば、本明細書に提供される方法に従う量のスコア化に基づいてサンプルの成果を解明する際に有用である。
アレイは、同一の細胞または異なる細胞中の他の予測マーカーの発現へのマーカーの発現の影響の解明にも有用である。これは、例えば、患者が好ましくない成果を有することが予測される場合、治療的介入に代替分子標的の選択を提供する。
試薬およびキット
本発明は、サンプル(例えば、骨髄サンプル、腫瘍生検、または参照サンプル)中の本発明のマーカーに対応するポリペプチドまたは核酸の存在を検出するためのキットも包含する。そのようなキットを用いて、治療成果を判定する、例えば、対象が、例えばNAE阻害剤またはEGFR阻害剤での治療後に、好ましい成果を有し得るかを決定することができる。例えば、キットは、本発明のマーカーに対応するゲノムDNAセグメント、ポリペプチド、もしくは転写RNA、またはサンプル中のマーカー遺伝子の変異を検出することができる標識化合物もしくは薬剤、およびサンプル中のゲノムDNAセグメント、ポリペプチド、またはRNAの量を決定するための手段を含み得る。マーカータンパク質への結合に好適な試薬は、抗体、抗体誘導体、抗体断片等を含む。マーカー核酸(例えば、ゲノムDNA、mRNA、スプライシングされたmRNA、cDNA等)への結合に好適な試薬は、相補的核酸を含む。キットは、アッセイされ、試験サンプルと比較され得る、対照もしくは参照サンプルまたは一連の対照もしくは参照サンプルも含有し得る。例えば、キットは、例えば腫瘍を有しない対象由来のサンプルまたは時点または参照ゲノム間のアッセイを標準化するために、例えば、マーカーの2倍体コピー数ベースラインまたは参照発現レベルを確立するために、例えば本明細書に記載の1つ以上のマーカーもしくは変異、または参照マーカー、例えば、ハウスキーピングマーカーを含む陽性対照サンプルを有し得る。一例として、キットは、相補的核酸のアニーリング、または抗体とそれが特異的に結合するタンパク質の結合に好適な流体(例えば、緩衝液)および1つ以上のサンプル区画を含み得る。本発明のキットは、任意に、本発明の方法の実行に有用なさらなる構成要素、例えば、サンプル収集容器、例えば、チューブと、任意に、例えば、サンプリング時と分析時との間に時間的または不利な保存および取扱条件が存在し得る場合、検出されるマーカーの量を最適化するための手段とを含み得る。例えば、キットは、提供される方法における使用のために、上述のサンプル中の腫瘍細胞の数を増加させるための手段、緩衝剤、防腐剤、安定剤、または細胞物質もしくはプローブを調製するためのさらなる試薬を含有し得、検出可能な標識を、単独で、または提供されるプローブ(複数を含む)と共役した状態で、または提供されるプローブ(複数を含む)内に組み込まれた状態で含有し得る。例示の一実施形態において、サンプル収集容器を含むキットは、例えば、抗凝血剤および/または安定剤(上述のものまたは当業者に既知のもの)を含むチューブを含み得る。キットは、検出可能な標識(例えば、酵素または基質)の検出に必要な成分をさらに含み得る。マーカーセットの場合、キットは、バイオマーカーの検出に用いるマーカーセットアレイまたはチップを含み得る。キットは、キットを用いて得られた結果を解釈するための説明書も含み得る。例えば、キットは、試験サンプルのスコアを、モデルまたはマーカーセットの作成に使用したサンプルと比較するために、カットオフ値の情報を含み得る。例えば、NAE阻害剤、例えば、MLN4924治療予測のカットオフ値は−1.45であり、EGFR阻害剤、例えばエルロチニブ治療予測のカットオフ値は、0.5である。キットは、本明細書に記載の1つ以上のバイオマーカー、例えば、2、3、4、5つ以上のバイオマーカーを検出するための試薬を含有し得る。
一実施形態において、キットは、少なくとも1つのバイオマーカー、例えば、治療成果(例えば、NAE阻害剤またはEGFR阻害剤治療の際の)を示すマーカーを検出するためのプローブを含む。例示的な実施形態において、キットは、表1、表2、または表3に特定される遺伝子、表1、表2、または表3に列挙されるマーカー核酸配列、本明細書に記載される方法によって構築されたモデルから特定されるマーカー核酸、ならびに前述のもののうちのいずれかの相補体からなる群から選択されるマーカー遺伝子を検出するための核酸プローブを含む。別の実施形態において、キットは、表1、表2、または表3に特定されるプローブセットの標的配列に結合する、それを検出する、またはそれを測定するための、試薬を含む。いくつかの実施形態において、キットは、MYC、MYB、CGA、およびRSG10からなる群から選択されるマーカーを検出するためのプローブを含む。ある実施形態において、キットは、MYC、MYB、CGA、およびRSG10からなる群からの2つ以上のマーカーを含むマーカーセットを検出するためのプローブを含む。核酸プローブを含むキット、例えば、オリゴヌクレオチドベースのキットの場合、キットは、例えば、基質に任意に固定される、本発明のマーカーに対応する核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチド(標識または非標識のもの)等の1つ以上の核酸試薬を含み得、基質、一対のPCRプライマー、本発明のマーカーに対応する核酸分子の増幅に有用なもの、分子ビーコンプローブ、本発明のマーカーに対応する少なくとも2つの核酸配列にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドを含むマーカーセット等に結合されない標識オリゴヌクレオチドを含み得る。キットは、RNA安定剤を含有し得る。
タンパク質プローブを含むキット、例えば、抗体ベースのキットの場合、キットは、例えば、(1)本発明のマーカーに対応するポリペプチドに結合する第1の抗体(例えば、固体支持体に結合される)と、任意に、(2)ポリペプチドまたは第1の抗体のいずれかに結合し、かつ検出可能な標識と共役する第2の異なる抗体とを含み得る。キットは、タンパク質安定剤を含有し得る。キットは、サンプルからの非バイオマーカー物質のプローブへの非特異的結合の量を減少させるための試薬を含有し得る。試薬の例として、非イオン性洗剤、非特異的タンパク質含有溶液、例えば、アルブミンもしくはカゼインを含有する溶液、または当業者に既知の他の物質が挙げられる。
本発明の予測マーカーに対応する単離されたポリペプチド、またはその断片もしくは変異体は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の調製のための標準の技法を用いて抗体を生成するための免疫原として使用され得る。例えば、免疫原は、典型的には、ウサギ、ヤギ、マウス、もしくは他の哺乳動物、または脊椎動物等の好適な(すなわち、免疫適格)対象を免疫化することによって抗体を調製するために使用される。なおもさらなる態様において、本発明は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片を提供し、この抗体または断片は、本発明のアミノ酸配列、本発明のcDNAによってコードされるアミノ酸配列、本発明のアミノ酸配列の少なくとも8、10、12、15、20、または25個のアミノ酸残基の断片、本発明のアミノ酸配列と少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列(パーセント同一性は、PAM120重量残基表(weight residue table)、ギャップ長ペナルティ12、およびギャップペナルティ4を有するGCGソフトウェアパッケージのALIGNプログラムを用いて決定される)、および45℃での6×SSCのハイブリダイゼーションならびに65℃での0.2×SSCおよび0.1%SDS中での洗浄の条件下で本発明の核酸分子からなる核酸分子にハイブリダイズする核酸分子またはその相補体によってコードされるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。モノクローナル抗体は、ヒト、ヒト化、キメラ、および/または非ヒト抗体であり得る。適切な免疫原性調製物は、例えば、組み換え発現されたか、または化学合成されたポリペプチドを含有し得る。この調製物は、フロイント完全もしくは不完全アジュバント等のアジュバント、または同様の免疫刺激剤をさらに含み得る。
ヒト抗体を作製するための方法は、当技術分野で既知である。ヒト抗体を作製するための1つの方法は、トランスジェニックマウス等のトランスジェニック動物の使用を用いる。これらのトランスジェニック動物は、それら自身のゲノムに挿入されるゲノムを産生するヒト抗体のかなりの部分を含有し、動物自身の内因性抗体産生は、抗体の産生が欠損した状態にされる。このようなトランスジェニック動物を作製するための方法は、当該技術分野で既知である。このようなトランスジェニック動物は、XENOMOUSE(商標)技術を用いて、または「ミニ遺伝子座」アプローチを使用して作製され得る。XENOMICE(商標)を作製するための方法は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,162,963号、同第6,150,584号、同第6,114,598号、および同第6,075,181号に記載されている。「ミニ遺伝子座」手法を用いてトランスジェニック動物を作製するための方法は、それぞれ参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,545,807号、同第5,545,806号、および同第5,625,825号に記載されている(国際公開第93/12227号も参照されたい)。
抗体は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、本発明のポリペプチド等の抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子、例えば、本発明のポリペプチドのエピトープを含む。本発明の所与のポリペプチドに特異的に結合する分子は、そのポリペプチドに結合するが、サンプル、例えば、ポリペプチドを自然に含有するサンプル中の他の分子には実質的に結合しない分子である。例えば、抗原結合断片、ならびに上述の抗体に由来する全長単量体、二量体、または三量体ポリペプチドは、それら自体有用である。この種の有用な抗体ホモログは、(i)VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる一価断片であるFab断片、(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片、(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFd断片、(iv)抗体の単一アームのVLおよびVHドメインからなるFv断片、(v)VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature 341:544−546(1989))、(vii)VHHドメインからなる単一ドメイン機能的重鎖抗体(ナノボディとして知られている)(例えば、Cortez−Retamozo,et al.,Cancer Res.64:2853−2857(2004)およびそれに引用される参考文献を参照されたい)、ならびに(vii)単離された相補性決定領域(CDR)、例えば、十分なフレームワークとともに抗原結合断片を提供する1つ以上の単離されたCDRを含む。さらに、Fv断片の2つのドメイン、VLおよびVHが別々の遺伝子によってコードされるが、それらは、組み換え方法を用いて、それらをVLおよびVH領域が対をなして一価分子(一本鎖Fv(scFv)として知られている)を形成する単一のタンパク質鎖として作製することを可能にする合成リンカーによって結合され得る(例えば、Bird et al.Science 242:423−426(1988)、およびHuston et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883(1988)を参照されたい)。そのような一本鎖抗体は、抗体の「抗原結合断片」という用語内に包含されるようにも意図される。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技法を用いて得られ、この断片は、無傷抗体と同一の様式で有用性についてスクリーニングされる。Fv、F(ab’)2、およびFab等の抗体断片は、無傷タンパク質の切断、例えば、プロテアーゼまたは化学切断によって調製され得る。本発明は、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体を提供する。前述のうちのいずれかの合成および遺伝子操作された変異形(米国特許第6,331,415号を参照されたい)も本発明によって企図される。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体は、従来のマウスモノクローナル抗体方法論、例えば、標準の体細胞ハイブリダイゼーション技法(Kohler and Milstein,Nature 256:495(1975))、ヒトB細胞ハイブリドーマ技法(Kozbor et al.,1983,Immunol.Today 4:72を参照されたい)、EBVハイブリドーマ技法(Cole et al.,pp.77−96 In Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,Inc.,1985を参照されたい)、またはトリオーマ技法を含む様々な技法によって産生され得る。概して、Harlow,E.and Lane,D.(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、およびCurrent Protocols in Immunology,Coligan et al.ed.,John Wiley&Sons,New York,1994を参照されたい。診断的適用の場合、抗体は、例えば、マウス、ラット、またはウサギにおいて生成されるモノクローナル抗体であり得る。さらに、インビボ用途で使用する場合、本発明の抗体は、ヒトまたはヒト化抗体であり得る。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞は、例えば、標準のELISAアッセイを用いて、目的とするポリペプチドに結合する抗体についてハイブリドーマ培養上清をスクリーニングすることによって検出される。
所望の場合、抗体分子は、対象から(例えば、対象の血液または血清から)収集または単離され、タンパク質Aクロマトグラフィー等の周知の技法によってさらに精製されて、IgG画分を得ることができる。あるいは、本発明のタンパク質またはポリペプチドに特異的な抗体は、例えば親和性クロマトグラフィーによって選択または(例えば、部分的に精製され)または精製されて、実質的に精製された抗体および精製された抗体を得ることができる。実質的に精製された抗体組成物とは、この文脈において、抗体サンプルが本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドのエピトープ以外のエピトープに対して指向される汚染抗体の最大で30乾燥重量%のみを含有し、かつサンプルの最大で20乾燥重量%、最大で10乾燥重量%、または最大で5乾燥重量%が汚染抗体であることを意味する。精製された抗体組成物とは、組成物中の抗体の少なくとも99%が本発明の所望のタンパク質またはポリペプチドに対して指向されることを意味する。
本発明のマーカーに対応するポリペプチドに対して指向される抗体(例えば、モノクローナル抗体)を用いて、マーカー(例えば、細胞サンプル中のマーカー)を検出して、マーカーの発現のレベルおよびパターンを評価することができる。抗体を診断的に用いて、例えば、所与の治療レジメンの有効性を決定するための臨床試験手順の一環として、(例えば、血液サンプル中の)組織または体液中のタンパク質レベルを監視することもできる。検出は、抗体を検出可能な物質に結合させることによって促進され得る。検出可能な物質の例として、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質、生物発光物質、および放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例として、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、またはアセチルコリンエステラーゼが挙げられ、好適な補欠分子族複合体の例として、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが挙げられ、好適な蛍光物質の例として、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、塩化ダンシル、またはフィコエリトリンが挙げられ、発光物質例として、ルミノールが挙げられ、生物発光物質の例として、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが挙げられ、好適な放射性物質の例として、125I、131I、35S、または3Hが挙げられる。
したがって、一態様において、本発明は、実質的に精製された抗体またはその断片、および非ヒト抗体またはその断片を提供し、その抗体または断片は、本明細書で特定されるマーカーによってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。本発明の実質的に精製された抗体またはその断片は、ヒト、非ヒト、キメラ、および/またはヒト化抗体であり得る。
別の態様では、本発明は、非ヒト抗体またはその断片を提供し、この抗体または断片は、本発明の予測マーカーの核酸分子によってコードされるアミノ酸配列を含むポリペプチドに特異的に結合する。そのような非ヒト抗体は、ヤギ、マウス、ヒツジ、ウマ、ニワトリ、ウサギ、またはラット抗体であり得る。あるいは、本発明の非ヒト抗体は、キメラおよび/またはヒト化抗体であり得る。加えて、本発明の非ヒト抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体であり得る。
実質的に精製された抗体またはその断片は、本発明のポリペプチドのシグナルペプチド、分泌配列、細胞外ドメイン、膜貫通もしくは細胞質ドメイン、または細胞質ループに特異的に結合し得る。本発明の実質的に精製された抗体もしくはその断片、非ヒト抗体もしくはその断片、および/またはモノクローナル抗体もしくはその断片は、分泌配列または本発明のアミノ酸配列の細胞外ドメインに特異的に結合する。
本発明は、検出可能な物質と共役する本発明の抗体を含有するキットおよび使用説明書も提供する。本発明のさらに別の態様は、本発明のプローブおよび薬学的に許容される担体を含む診断用組成物である。一実施形態において、診断用組成物は、本発明の抗体、検出可能な部分、および薬学的に許容される担体を含有する。
情報の使用
一方法において、情報、例えば、患者のマーカー(複数可)特徴、例えば、大きさ、配列、組成、もしくは量(例えば、本明細書に記載されるマーカーもしくはマーカーセットの評価結果)についての情報、または患者が好ましい成果を有することが予想されるかどうかについての情報が、第三者、例えば、病院、診療所、政府事業体、償還者、または保険会社(例えば、生命保険会社)に提供される(例えば、通信される、例えば、電子通信される)。例えば、医療処置の選択、医療処置の支払い、償還者による支払い、またはサービスもしくは保険費用は、情報の関数であり得る。例えば、第三者は、情報を受信し、少なくともある程度情報に基づいて決定し、任意に情報を通信するか、または情報に基づいて手順、支払い、支払いのレベル、補償範囲等を選択する。この方法では、表1、表2、もしくは表3から選択されるか、もしくはそれらから得られる、および/または本明細書に記載の方法から得られる、マーカーまたはマーカーセットの情報的に有益な発現レベルが決定される。
一実施形態において、保険料(例えば、生命保険料または医療保険料)は、1つ以上のマーカー、例えば、マーカーまたはマーカーセットの発現レベル、例えば、治療成果(例えば、情報的に有益な量)に関連した発現レベルについての情報の関数として評価される。例えば、患者のマーカー遺伝子または患者の本明細書に記載のマーカーセットが、被保険候補(または保険補償を求める候補)と、カットオフ値、訓練セット、参照値(例えば、罹患していない者)または参照サンプル、例えば、対応対照との間で異なる特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量を有する場合、保険料が増加し得る(例えば、あるパーセンテージ)。保険料を本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果に応じて計ることもできる。例えば、保険料を判定して、例えば、マーカーの関数として、例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果として、リスクを分散することができる。別の例において、保険料は、既知の治療成果を有するサンプルまたは患者から得られる保険数理データの関数として判定される。
マーカー特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量、例えば、本明細書に記載されるマーカーまたはマーカーセットの評価結果(例えば、スコア)についての情報は、例えば、生命保険の引受けプロセスにおいて使用され得る。情報は、対象のプロファイルに組み込まれ得る。プロファイル中の他の情報には、例えば、出生日、性別、結婚歴、銀行情報、信用情報、子供等が含まれ得る。保険契約は、プロファイル中の情報の1つ以上の他の項目に加えて、マーカー特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量、例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの評価結果の情報の関数として推奨され得る。保険料またはリスク評価もマーカーまたはマーカーセット情報の関数として評価され得る。一実装例において、ポイントは、予想される治療成果に基づいて割り当てられる。
一実施形態において、マーカー特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量、例えば、本明細書に記載されるマーカーまたはマーカーセットの評価結果についての情報は、対象に提供されたサービスまたは治療の代金を支払うために資金移動を許可するか(または本明細書で言及される別の決断を下すか)を決定する関数によって分析される。例えば、本明細書に記載のマーカーまたはマーカーセットの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量の分析結果は、対象が好ましい成果を有すると予想されることを示し得、治療過程が必要とされることを示唆し、それによって対象に提供されたサービスまたは治療の代金の支払い許可を示すか、または引き起こす結果の一因となる。一例において、表1から選択されるか、またはそれから得られ、かつ/あるいは本明細書に記載されるマーカーまたはマーカーセットの情報的に有益な特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量が決定され、情報的に有益な量が好ましい成果を特定した場合、支払いが許可される。例えば、事業体、例えば、病院、介護人、政府事業体、もしくは保険会社、あるいは医療費を支払うか、または補償する他の事業体は、本明細書に記載の方法の結果を用いて、関係者、例えば、対象患者以外の関係者が患者に提供されたサービス(例えば、特定の治療)または治療の代金を支払うかを決定することができる。例えば、第1の事業体、例えば、保険会社は、本明細書に記載の方法の結果を用いて、患者に、または患者の代わりに金銭上の支払いを提供するか、例えば、第三者、例えば、物品もしくはサービス業者、病院、医師、または他の介護人に患者に提供されたサービスまたは治療代を償還するかを決定することができる。例えば、第1の事業体、例えば、保険会社は、本明細書に記載の方法の結果を用いて、保険プランまたはプログラム、例えば、健康保険または生命保険プランまたはプログラムを継続させるか、中止するか、個人を加入させるかを決定することができる。
一態様において、本開示は、データを提供する方法を特色とする。この方法は、本明細書に記載のデータ、例えば、本明細書に記載の方法によって生成されたデータを提供し、記録、例えば、本明細書に記載の記録を提供して、支払いが提供されるかを決定することを含む。いくつかの実施形態において、データは、コンピュータ、コンパクトディスク、電話、ファクシミリ、Eメール、または手紙によって提供される。いくつかの実施形態において、データは、第一者によって第二者に提供される。いくつかの実施形態において、第一者は、対象、ヘルスケア提供者、治療担当医師、保健維持機構(HMO)、病院、政府事業体、または薬物を販売もしくは供給する事業体から選択される。いくつかの実施形態において、第二者は、第三者支払人、保険会社、雇用主、雇用主が提供する医療保険、HMO、または政府事業体である。いくつかの実施形態において、第一者は、対象、ヘルスケア提供者、治療担当医師、HMO、病院、保険会社、または薬物を販売もしくは供給する事業体から選択され、第二者は、政府事業体である。いくつかの実施形態において、第一者は、対象、ヘルスケア提供者、治療担当医師、HMO、病院、保険会社、または薬物を販売もしくは供給する事業体から選択され、第二者は、保険会社である。
別の態様において、本開示は、患者のマーカーまたはマーカーセットの特徴、例えば、大きさ、配列、組成、または量のリストおよび値を含む記録(例えば、コンピュータ可読記録)を特色とする。いくつかの実施形態において、記録は、各マーカーについて1つを上回る値を含む。
本発明は、これから以下の実施例によって説明され、これらは決して限定的であるよう意図されていない。
(実施例1)
細胞株パネルの発現分析
細胞株のパネルを使用して、臨床開発を補助し、可能性のある腫瘍感受性または耐性のバイオマーカーの特定を行った。大きな細胞株パネルN=240(Ricerca Biosciences,Inc.,Bothell,WA、O’Day et al.(2010)Fourth AACR International Conference on Molecular Diagnostics in Cancer Therapeutic Development))をこれらの研究に使用した。パネルの各細胞株における遺伝子の発現を、Human Genome U133 Plus 2.0 Array(Affymetrix,Santa Clara CA)で測定した。遺伝子発現データを生成するために、RNA単離、ハイブリダイゼーション、および洗浄条件は、Affymetrix遺伝子発現マニュアルに示されるものと同じにした。アレイを洗浄し、標準的なAffymetrixプロトコルに従ってAffymetrix Fluidics Workstationを用いて染色し、Affymetrix GeneArrayスキャナを用いてスキャンした。遺伝子発現強度(.CELファイル)を、Affymetrix GeneChip Operating Software(GCOS)によって捕捉した。この遺伝子発現データセットを、MLN4924治療モデルおよびエルロチニブ治療モデルの両方の訓練に使用した。
(実施例2)
MLN4924による細胞株パネルの処置
実施例1のパネルの細胞株を、MLN4924で処置し、細胞生存データ(IC50、EC50、およびPOC−対照のパーセンテージ)を生成した。MLN4924を、10個の濃度に半対数希釈で添加し、72時間処置した。蛍光顕微鏡法によるハイコンテント細胞スクリーニングには画像分析が含まれ、複数のデータ種を生成した。結果は、EC50値(細胞数の測定後に、EC50濃度を、MLN4924濃度のlogに対する対照のパーセント(POC)の曲線の変曲点から計算した)、IC50値(POC−log MLN4924プロットからであり、IC50は、50%最大可能応答での濃度である)、アポトーシス(MLN4924濃度のlogに対してプロットしたカスパーゼ3の活性化の測定であり、5倍を超える誘導の濃度として決定される)、および有糸分裂活性(ホスホ−ヒストン3の倍増を測定することによって決定される)を含んだ。EC50とIC50との比較(図2)により、細胞株を感受性、非感受性、または耐性に割り当てることができた。感受性または耐性としての細胞株の最終的な特定は、EC50値に基づいた。感受性に対するカットオフはパネルにおいて記録されたすべてのPOCの中央値よりも低い中央値EC50であり(<0.36)、感受性の境界線は0.36〜1.67の中央値EC50と関連し、非感受性または耐性の細胞株は、パネル中のすべてのPOCの第3四分位点を上回るEC50によって特定した(>1.67)。
(実施例3)
MLN4924の予測モデルの構築
データ縮小。まず、細胞株の遺伝子発現データに、ロバストマルチアレイ平均(robust multi−array average)(RMA)正規化を行って、遺伝子発現データのベースラインを確立した。次に、全ゲノムの40%の強度カットオフをデータに適用して、この系に存在しない可能性のある遺伝子を除去した。その後、分散カットオフ1を適用して、癌細胞株パネルにおいて最も強度が変動する遺伝子のみを残した。
特性選択。残りのフィルタ除去したプローブセットの発現のそれぞれと、薬物応答との間の相関を、log2(IC50)として評価した。薬物応答をパネルの細胞株に無作為に割り当てることによって、各プローブセットに並べ替えを行い、並べ替え検定に基づいて未加工p値を計算した。未加工p値のカットオフ0.01を使用して、特性プローブセットを選択した。次いで、各遺伝子の代表的なプローブセットを選択した(各遺伝子の最も高い強度のプローブセットであり、これらは、通常、その遺伝子の最も高い分散のプローブセットでもある)。369個の遺伝子をPLSRモデルの訓練および試験に選択した。
データのスプリットおよび上位非重複モデルの特定。モデル化訓練/試験のために、細胞株を、サブ訓練(42%)、サブ試験(28%)、およびsep試験(30%)に分割した。この方法で多数回(200,000回)スプリットした後、サブ試験およびsep試験の両方の結果において複数の特性を調べることによって上位モデルを選択した:1。上位モデルは、AUCおよび相関尺度の両方についてサブ試験において上位の性能を有するはずである;2。すべてのスプリットの中でも、AUCと相関との間に相関のあるものが、サブ試験に好ましいものであった;3。Sep試験(釣り合い型スプリットから)は、AUCおよび相関尺度の両方において、サブ試験と比べてさらにより狭い性能の分布を有するはずである;4。sep試験における上位モデル性能は、サブ試験のものに少なくとも類似するはずである;5。上位モデルは集合的に、すべてのスプリットの中でも比較的高い性能を有するはずである。全体として、この特別に設計したスプリット戦略は、上位性能モデルの中から、コンセンサス情報を特定するのに役立った。
上述の基準を使用して、上位5つのモデルを特定した後、細胞株における重複を上位モデルの各対間で調べた。これは、モデル化フレームワークが、シグネチャー遺伝子の寄与に関して互いに一貫性がある非重複の上位モデルを見出すことによって、全パネルにわたる共通の特性を捕捉するように設計されるためである。重複を調べるためには、まず、スプリットに対して並べ替えを行って、重複スコア分布を生成した。モデルの対での重複に対する90%分位点を、非重複のカットオフとして選択した。以下の表5に見ることができるように、モデル28および55は、他の上位モデルと有意に重複していた。
コンセンサス遺伝子の重みの探求およびコアシグネチャー遺伝子セットの選択。上述の特別に設計したスプリット戦略から上位モデルを特定した後、次のステップを使用して、遺伝子のコアセットを見出した:1。互いに重複していた(サブ訓練セットにおいて有意な共通の細胞株を共有する)上位モデル28および55の除去;2。特異値分解(SVD)を使用して残りの上位モデルにコンセンサス重み付けを行った;3。最も高い重み付けの遺伝子から開始し、1回につき1つの遺伝子を追加し、順方向検索を行ってコアシグネチャーセットを見出した。
審査により、コンセンサス重み付けと各個別の上位モデルとの間で、個別の遺伝子の重み付けを比較し、個々の上位モデルの間のすべての対での比較も一緒に行った。これらの上位モデルは、訓練サブセットの非重複分離を表したが、モデルへの遺伝子の寄与は、依然として上位モデル間で高く相関していた。SVDアプローチから特定したコンセンサス重み付けは、各個別の上位モデルに対するより高い相関を示した。コンセンサス重み付けに最も高い類似性を示した個別の上位モデル(モデル18)を、後のステップのための代表的なモデルとして選択した。モデルのAUCおよび相関性能の両方が全体モデルに類似のレベルに達した時点、250個の遺伝子で、コアPLSRモデルを特定した(図3Aおよび3B)。図3AおよびBの破線は、全体PLSRモデルから遺伝子を無作為に選択する1つの無作為に選択された対照の事例を示す(実線は、重み付けにより遺伝子を選択する)。これらの図に見ることができるように、この特定の無作為対照(破線)は、より早く飽和に達するとみられるが、依然として実線よりも変動する。
経路の関連性に基づくモデルの調整。経路に基づくPLSRモデルを次のステップにより構築した:1。コアPLSRモデル遺伝子セット(250個の遺伝子)を、入力としてGeneGoの経路強化分析に提供した;2。過剰表示される経路が、入力した遺伝子リストに見出された(p値カットオフ0.05を使用して);3。過剰表示経路にも出現したコア遺伝子を、コアPLSRモデル(69遺伝子)のサブセット(69個の遺伝子)として選択し、残りの遺伝子を破棄した;4。69個の遺伝子の「経路に基づく分類因子」を使用して上位PLSRモデルを再訓練/再試験して、AUCおよび相関によって、サブセットがコアPLSRモデルに類似の機能を果たしたことを検証する。MLN4924コアモデルにおける過剰表示経路には、耐性についてはTGFβ−SMADシグナル伝達経路および接着受容体誘導型シグナル伝達経路、ならびに感受性についてはc−mycおよびc−myb転写因子経路が含まれた。MLN4924の経路に基づく分類因子において特定された遺伝子を、表1に列挙する。表1に列挙される遺伝子の中でも、BAG2、MYC、MYB、CSDA、およびC1Rは、MLN4924に感受性であった細胞株に高度に発現し、残りの遺伝子は、MLN4924に耐性であった細胞株において高度に発現した。とりわけ、2つのポンプ遺伝子(pump gene)ABCC3およびABCG2は、シグネチャー遺伝子セットに含まれ、高度なポンプ遺伝子発現がMLN4924耐性と関連するという以前の予備知識と一致した。さらに、MYBおよびMYCの両方が、シグネチャーのリストに存在しており、MLN4924のMYC関連機序の治療効果を示唆する。
代替的な「経路に基づく分類因子」は、過剰表示されるシグナル伝達経路の特定に対してよりストリンジェントなカットオフを適用することによって生成した(0.05の代わりに0.01のp値)。これは、さらに高度に相関する表1のマーカー番号1〜3および5〜45のセットをもたらした。
経路に基づく分類因子における遺伝子、コアPLSRモデルのサブセットの挙動の審査により、MYB、MYC、CGA、およびRGS10の4つの遺伝子が、モデル予測性能に大きな役割を果たすことを決定した。これらの遺伝子はすべて、負のPLSR負荷値を有した。したがって、サンプル中のこれらの遺伝子自体または群としてのより高い発現値は、より良好なMLN4924感受性を示し得る。
(実施例4)
エルロチニブによる細胞株パネルの処置
エルロチニブモデルについては、実施例1に記載のものと同じ細胞株パネルに、エルロチニブで処置を行って、感受性および耐性の細胞株を特定した。成長およびアッセイ条件を、240個すべての細胞株について確立した。化合物を、Echo 550によりチップレス音響的移送を用いて10個の濃度に半対数希釈で添加した。追加の「ゼロ時点」(T0)プレートにも同じ密度で播種し、1日目に細胞数を分析して、倍増数を決定した。化合物の添加72時間時間後に、細胞を固定し、活性化したカスパーゼ3およびホスホヒストンH3に関して抗体で染色した。「drc」Rパッケージを採用して、4パラメータのロジスティック曲線を当てはめ、パネルの細胞株のIC50値を計算した。高い分散を有する(複製データ上で)および/または増殖データがない細胞株を除去した後、品質のよいデータを有する183個の細胞株を、さらなる研究に使用した。
(実施例5)
エルロチニブの予測モデルの構築
実施例1において生成された同じ細胞株発現データを使用して、次のステップを用いてエルロチニブ治療のモデルを構築した:
データ縮小。まず、細胞株の遺伝子発現データに、ロバストマルチアレイ平均(robust multi−array average)(RMA)正規化を行って、遺伝子発現データのベースラインを確立した。次に、全ゲノムの40%の強度カットオフをデータに適用して、強度が低いか、またはこの系に存在しない可能性のある遺伝子を除去した。その後、分散カットオフ1を適用して、癌細胞株パネルにおいて最も強度が変動する遺伝子のみを残した。このデータ縮小ステップにより、プローブセットの数を54,675から3,787に減らした。
特性選択。残った(3787個の)フィルタ処理したプローブセットの発現のそれぞれと、薬物応答との間の相関を、log2(IC50)として評価した。薬物応答を細胞株に無作為に割り当てることによって、各プローブセットに並べ替えを行い、並べ替え検定に基づいて未加工p値を計算した。未加工p値のカットオフ0.01を使用して、特性プローブセットを選択した。次いで、各遺伝子の代表的なプローブセットを選択した(各遺伝子の最も高い強度のプローブセットであり、これらは、通常、その遺伝子の最も高い分散のプローブセットでもある)。485個の遺伝子を、PLSRモデルの訓練および試験に選択した。
データのスプリット データセット中のコンセンサス特性も捕捉した上位モデルを見出すために、細胞株からの全訓練セットからのデータを、特別なスプリットアプローチによって分割した:まず、「釣り合い型スプリット」によってデータを訓練(70%)およびsep試験(釣り合いの検証)(30%)サブセットに分割した。次いで、訓練サブセットを、サブ訓練(無作為訓練)(訓練の60%)およびサブ試験(無作為検証)(訓練の40%)のサブセットにさらに分割した。全体としては、全訓練セットを3部に分割する:サブ訓練(無作為訓練)(42%)、サブ試験(無作為試験)(28%)、およびsep試験(釣り合いの検証)(30%)。この方法で多数回(200,000回)スプリット(200回の釣り合い型スプリットおよび各釣り合い型訓練サブセットの1000回のサブスプリット)して、さらなる評価のためのモデルを得た。
上位非重複モデルの特定。サブ試験およびsep試験の両方の結果について複数の特性を調べることによって、上位モデルを選択した:1。上位モデルは、AUCおよび相関尺度の両方についてサブ試験において良好な性能を有するはずである;2。すべてのスプリットの中でも、AUCと相関の間に相関のあったものが、サブ試験サブセットに好ましいものであった;3。sep試験(釣り合い型スプリットから)は、AUCおよび相関尺度の両方について、サブ試験と比較してさらにより狭い性能の分布を有するはずである;4。sep試験における上位モデル性能は、サブ試験のものに少なくとも類似するはずである;5。上位モデルは集合的に、sep試験におけるすべてのスプリットの中でも比較的高い性能を有するはずである。全体として、この特別に設計したスプリット戦略は、上位性能モデルの中から、コンセンサス情報を特定するのに役立った。
細胞株における重複を、上位モデルの各対間で調べた。重複を調べるためには、まず、スプリットに対して並べ替えを行って、重複スコア分布を生成した。モデルの対での重複に対する90%分位点0.304を、非重複のカットオフに選択した。以下の表6に見ることができるように、モデル3は、他の上位モデル4および5と有意に重複している。
訓練データセット内のコンセンサス情報を特定する手段を見出すことができる場合、結果として得られる薬物感受性シグネチャー(予測モデル)は、強力であり、かつ高い予測力を有するはずであると結論づけた。このスプリット戦略(無作為訓練、無作為検証、および釣り合い検証のサンプルサブセットへの分割)は、釣り合い検証サブセットならびに無作為検証サブセットを作製する。特性選択は、全データセットに対して行われ、そのため、同じ特性の遺伝子を使用して、異なるスプリット間でモデルの訓練および比較を行うことができた。これはまた、全データセットの中でコンセンサス情報を表す最良のモデルを見出すことを可能にした。重複が最小限の高スコアモデルを特定し、それらの間のコンセンサス重み付けを計算することによって、共通の特性を、訓練データセットにおいて捕捉した。
コンセンサス遺伝子の重みの探求およびコアシグネチャー遺伝子セットの選択。上述の特別に設計したスプリット戦略から上位モデルを特定した後、次のステップを使用して、遺伝子のコアセットを見出した:1。他のモデルと重複していた上位モデル3の除去;2。特異値分解(SVD)を使用して残りの上位モデルにコンセンサス重み付けを行った;3。最も高い重み付けの遺伝子から開始し、1回につき1つの遺伝子を追加し、順方向検索を行ってコアシグネチャーセットを見出した。
審査により、コンセンサス重み付けと各個別の上位モデルとの間で、個別の遺伝子の重み付けを比較し、個々の上位モデルの間のすべての対での比較も一緒に行った。興味深いことに、これらの有意に重複しない上位モデルは、相関する遺伝子の重みを有し、したがって、訓練データセット間で共通する特性を表す。コンセンサス重み付けに最も高い類似性を示した個々の上位モデル(モデル5)を、後のステップのための代表的なモデルとして選択した。5つの最も高い重みの遺伝子から開始し、1回につき1つの遺伝子を追加し、代表的なPLSRモデルを、シグネチャー遺伝子の大きさを1回につき1段階増加させることによって再訓練/再試験した(順方向選択アプローチ)。コアPLSRモデルは、AUCおよび相関尺度の両方に関してモデル性能曲線の早期プラトー点として特定された。モデルのAUCおよび相関性能の両方が、全体モデルに類似のレベルに達したとき、コアモデルに含まれるモデル5からの遺伝子数のプラトー点は、191個の遺伝子であった(図4Aおよび4B)。図4AおよびBの破線は、全体PLSRモデルから遺伝子を無作為に選択する1つの無作為に選択された対照の事例を示す(実線は、重み付けにより遺伝子を選択する)。これらの図に見ることができるように、最も高い重み付けの遺伝子(実線)からの順方向検索は、非常によく機能し、すぐに飽和に達し、無作為な事例(破線)よりも変動しない。
経路の関連性に基づくモデルの調整。経路に基づくPLSRモデルを次のステップにより構築した:1。コアPLSRモデル遺伝子セット(191個の遺伝子)を、入力としてGeneGoの経路強化分析に提供した;2。過剰表示される経路が、入力した遺伝子リストに見出された(p値カットオフ0.01を使用して);3。過剰表示経路にも出現したコア遺伝子を、コアPLSRモデル(51個の遺伝子)のサブセット(51個の遺伝子)として選択し、残りの遺伝子を破棄した;4。51個の遺伝子の「経路に基づく分類因子」を使用して上位PLSRモデルを再訓練/再試験して、AUCおよび相関によって、サブセットがコアPLSRモデルに類似の機能を果たしたことを検証する。これらの遺伝子を表2に列挙する。
51個の遺伝子のシグネチャーにおいて、22個の遺伝子は、IC50データと正の相関にあり、29個の遺伝子は、IC50データと負の相関にあった。興味深いことに、EGFRリガンド(NRG1)はシグネチャー遺伝子に含まれ、これは、エルロチニブが抗EGFR化合物であるという事実と一致する。表2に列挙される遺伝子の中でも、F2R、TUBA1A、MIR21、LEF1、COL1A2、SPATA13、VIM、L1CAM、IGFBP4、SDC2、VCAN、NRP1、GNG11、BMP4、ETV1、UBB、CCL2、NES、LGALS1、EPS8、およびBAMBIは、エルロチニブに耐性であった細胞株に高度に発現し、残りの遺伝子は、エルロチニブに感受性であった細胞株に高度に発現した。
機能的バイオマーカーは、より大きなデータセットではより強力であるとみられるが、それらの予測性能は、いくつかの小規模研究における遺伝子シグネチャーと有意に異なるものではなかった。一研究において、著者は、経路モデルの性能を向上させることができる経路に基づくモデル化アプローチを開発したChuang et al.(2007)Mol.Syst.Biol.3:140、Lee et al.(2008)PLos Comput.Biol.4:e1000217)。それぞれの事前選択された正準経路に対して、この著者は、発現プロファイルが集合的に全経路を超えて寄与した遺伝子のサブセットを特定した。次いで、複数の経路から選択された高寄与の遺伝子を統合し、それらをモデル構築および試験のための入力として使用した(Lu et al.(2005)Nature 435:834−838、Lee et al.(上記))。現在の研究では、このアプローチを採用したが、2つの重要な違いがあった。第1に、現在のアプローチは、予測モデルの訓練およびコアシグネチャー遺伝子セットの探求を、全ゲノム情報から開始した。この方法では、経路マップ上に捕捉される生物学の事前選択される限定された足場により、制限されることがなかった。第2に、正準経路の強化を適用して、上位スコアの経路を通じてコアシグネチャー遺伝子をフィルタ処理した。結果として得られた51個の遺伝子のエルロチニブに対する「機能的」シグネチャーは、元のPSLRシグネチャーよりも3倍小さかったが、エルロチニブで治療した患者に対する予測の正確度はより高かった。
(実施例6)
無憎悪生存期間を予測するためのエルロチニブ経路に基づくモデルの試験
エルロチニブ応答に対する癌細胞株パネルスクリーニングデータに基づいて構築したPLSRモデルを使用して、エルロチニブに対する患者の応答を試験した。特に、このモデルに、IC50値を使用して混合癌適応症のパネルについて訓練を行ったが、これは、BATTLE試験においてNSCLC患者の無憎悪生存期間を予測するために使用されたものであった(BATTLE試験患者のベースライン遺伝子発現(Kim et al.(2011)Cancer Discov.1:44−53)(GSE31437)としてGEOデータベースからダウンロードした)。BioconductorからのAffyパッケージ(Bolstat et al(2003)Bioinformatics 19:185−193)を使用して、1つずつのデータセットに別個にRMA正規化を行った。
患者のベースライン遺伝子発現データを、Affymetrixプラットフォーム(HG Gene 1.0 ST)を用いて生成し、これは、実施例1において細胞株パネルに使用したものとは異なるマイクロアレイプラットフォームである。この問題に対処するために、まず、U133plus2(実施例1の細胞株データ)とHG Gene 1.0 ST(BATTLE患者のデータ)との間で重複するすべてのプローブセットを特定した。次いで、BATTLEデータにおけるRMAの正規化を、実施例1の細胞株遺伝子発現に対して行った。実施例1データから訓練したコアPLSRモデルにおける191個の遺伝子の中でも、そのうち187個が、BATTLEデータセットにも存在した。したがって、コアPLSRモデルに、これらの187個の遺伝子を使用して実施例1データ上で再訓練を行って、BATTLE試験においてエルロチニブに対する患者の応答を予測するために適用することができる経路に基づく分類因子を特定した。
コアPLSRモデルの性能 図5Aおよび5Bは、BATTLA試験における患者の生存に対するコアPLSRモデルの性能を示す。図5Aは、PLSRモデルが予測したエルロチニブ応答の分布であった−垂直方向の線は、最大の分離点で、0.5のデータ駆動型カットオフを表す。図5Bは、各患者について臨床的出力(PFS)と比べたPLSRモデルが予測したスコアを提供する。コアPLSRモデル性能は、臨床およびPLSR両方の予測数に、データ駆動型カットオフを使用して評価した。患者の無憎悪生存期間の予測が、IC50に対してインビトロ細胞株スクリーニングデータにおいて訓練されたモデルから実行されたものであったという事実を考慮すると、観察された76%の全体的な正確度は、確実なモデル性能と見なされる。
経路に基づくPLSRモデル性能 BATTLE試験にけるコアPLSRモデルの試験と同様に、経路に基づくPLSR予測モデルを試験した。細胞株の経路に基づくPLSRモデルにおける51個の遺伝子が、BATTLE遺伝子発現データセットにも出現するという場合があり、そのため、51個の遺伝子の細胞株パネルの経路に基づくPLSRモデルは、BATTLEデータセットにおいて直接試験することができた。直交正準経路の情報を追加することによって、シグネチャー遺伝子セットの大きさは、187個の遺伝子から51個の遺伝子(コアPLSRモデルから経路に基づくPLSRモデル)へと縮小されたにもかかわらず、0.5のカットオフ値を使用して、モデル性能の全体的な正確度を76%から84%へと向上させた(図6Aおよび6B)。
(実施例7)
ソラフェニブ感受性モデルの構築
同じモデル化フレームワークを適用して、細胞株スクリーニングデータにも基づいてソラフェニブ予測モデルを構築した。ソラフェニブは、pan−キナーゼ阻害剤、すなわち、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)および他の受容体チロシンキナーゼ(RAF/Multi−RTK)に作用するが、EGFRには作用しないチロシンキナーゼ阻害剤である。エルロチニブのIC50分布(図5A)とは異なり、ソラフェニブのIC50値は、正規分布に従う(示されない)。ソラフェニブの感受性と耐性の症例をより良好に分離するために、パネル細胞株の中央の3分の1を除去した後に、モデル訓練プロセスを行った。このフィルタ処理を用いてすら、ソラフェニブ症例において良好な予測モデルを特定することは困難であった(エルロチニブ症例と比べて)。
エルロチニブおよびソラフェニブの予測モデル構築は、同じ183個の癌細胞株およびそれらのベースライン遺伝子発現データで開始した。したがって、データの縮小は、エルロチニブおよびソラフェニブの両方について、同じである。ソラフェニブの場合、550個のコアモデル遺伝子とともに903個の特性遺伝子が特定され、最終的に、最終経路シグネチャーについて113個の遺伝子が特定された(表3)。
エルロチニブと同様に、ソラフェニブシグネチャー遺伝子のネットワークは、タンパク質−タンパク質の相互作用および正準経路情報を使用して生成した。ネットワークは、変異形が対応する薬物応答と有意に関連する遺伝子を含有していた。具体的には、PTEN欠失およびHCF受容体増幅が、ソラフェニブに対する感受性と関連する。
IC50と正の相関にあり、そのため、耐性と関連するこれらの遺伝子は、薬物標的シグナル伝達(例としては、PI3Kシグナル伝達およびカルシウムシグナル伝達)に並行または交差するシグナル伝達経路に集中する傾向にある。過剰発現または変異による並行経路の活性化は、ソラフェニブの共通する耐性機序を伝える。ソラフェニブ耐性経路のうちの1つであるEGFRシグナル伝達は、4つの過剰発現するリガンドによって表される。さらに、EGFRにおける異なる遺伝的事象は、細胞株の中でもソラフェニブ耐性と関連する。重要なことに、EGFR変異は、BATTLE研究においてソラフェニブに対するより不良な応答と関連していた。
ソラフェニブモデルのシグネチャー遺伝子のコアセットには、成長因子経路に沿った遺伝子:PDGFRA、FGFR1、HGF、IGF1R、MET、TGFB2、TGFA、IGFBP3、IRS2、EGFR、IGFBP1が含まれる。
(実施例8)
BATTLE臨床試験を独立した試験データセットとして使用したエルロチニブおよびソラフェニブ経路に基づくモデルの試験
BATTLE臨床試験データを、独立した試験データセットとして使用して、OncoPanel細胞株データに由来する薬物感受性モデルの性能を評価した。この第2相試験において(Kim et al.(上述))、255人のNSCLC患者のサブセットを、エルロチニブ、バンデタニブ、ソラフェニブ、またはエルロチニブ+ベキサロテンの組み合わせのいずれかで治療した。255人の患者のうち、131人の患者が、分子プロファイリングに十分であり、臨床評価可能な腫瘍サンプルを有していた(GSE33072)。それらのうち、25人の患者は、エルロチニブ群であり、39人の患者はモデル試験に使用可能なソラフェニブ群であった。
患者におけるベースライン遺伝子発現データを、Affymetrix HG Gene 1.0 STアレイを使用して生成し、これは、細胞株パネルに使用したU133plus2アレイとは異なるプラットフォームである。プラットフォームの不適合性の問題に対処するため、U133plus2およびHG Gene 1.0 STのアレイ間で重複するプローブセットを特定し、次いで、細胞株パネルの遺伝子発現に対するBATTLEデータでの分位点正規化を実行した。エルロチニブ機能的経路に基づく全51個の遺伝子が、BATTLEデータセットに存在しており、全113個のソラフェニブシグネチャー遺伝子も同様に存在していた。
エルロチニブまたはソラフェニブ予測スコアのカットオフは、対応する薬物感受性モデルを使用して、細胞株パネルにおいてIC50を再予測することによるデータ駆動型であった。BATTLE患者のベースライン遺伝子発現を、全ゲノムに基づいて細胞株パネルの遺伝子発現に対して正規化したため、細胞株パネルデータセットから定義されたカットオフを、BATTLEデータセットに適用した。
患者のPFSカットオフについては、エルロチニブまたはソラフィニブ(Sorafinib)の群は患者数が少ないため(エルロチニブおよびソラフェニブ群それぞれ25人および39人の患者)、エルロチニブおよびソラフェニブのPFSの任意のカットオフは、それぞれ、2.4および4カ月で選択した。図7A〜7Dに水平方向の線として示される、これらのカットオフは、それぞれエルロチニブまたはソラフェニブで治療した患者における妥当なPFSの分離を示した。
エルロチニブにより生成した経路に基づく分類因子およびソラフェニブにより生成した経路に基づく分類因子を、それら自体の臨床応答データおよび互いのデータにおいて試験した。ソラフェニブは、血管内皮成長因子受容体(VEGFR)および他の受容体チロシンキナーゼ(RAF/Multi−RTK)に作用するが、EGFRには作用しないチロシンキナーゼである、すなわち、エルロチニブといくつかの機序類似性を共有するが、同じ標的を有さない。
エルロチニブモデルによりエルロチニブ応答を予測する。図7Aに示されるように、0.75の分離カットオフ値を使用して細胞株パネルのエルロチニブスクリーニングデータ(IC50)から構築されたエルロチニブモデルにより、エルロチニブで治療した患者について、患者の応答を予測した。正確度、感受性、特異性、陽性的中率、および陰性的中率に関するエルロチニブモデルの性能は、それぞれ、84%、63%、94%、83%、および84%である。
ソラフェニブモデルによりソラフィニブ(Sorafinib)応答を予測する。同様に、細胞株パネルのソラフェニブスクリーニングデータ(IC50)から構築されたソラフェニブモデルにより、2.0の分離カットオフ値を使用して、39人のソラフェニブで治療した患者(図7B)の薬物応答を予測することができる。正確度、感受性、特異性、陽性的中率、および陰性的中率についてのソラフェニブモデルの性能は、それぞれ、79%、89%、77%、53%、および96%である。
エルロチニブモデルはソラフェニブ応答を予測しない。エルロチニブモデルを、ソラフェニブ治療を受ける患者の応答を予測するためにさらに試験した。BATTLE臨床試験において十分に事前治療を受けたこの患者集団については、PFSおよびモデル予測スコアのいずれも、患者の大半がエルロチニブ感受性でないことを示唆した。結果として、ソラフェニブ治療成果の予測におけるエルロチニブ(Erlotinb)モデルの全体的な正確度は、0.75のカットオフ(図7C)で64%、0.5のカットオフ(示されない)で49%であった。興味深いことに、エルロチニブモデルは、ソラフェニブ治療群の4人の患者が、エルロチニブ感受性であると予測したが、それらのいずれも実際にはソラフェニブ治療には感受性でなく、これは、陽性的中率0%に相当する。比較として、エルロチニブモデルを使用してエルロチニブ治療を受ける患者の応答を予測する場合、陽性的中率は83%であった。
ソラフェニブモデルは、エルロチニブ応答を予測しない。ソラフェニブモデルは、陽性的中率が14%であり、BATTLEエルロチニブ治療を受ける患者の応答を予測することに失敗し、ソラフェニブモデルを使用してエルロチニブ応答を予測する全体的な正確度は、48%であった(図7D)。ソラフェニブモデルを使用してソラフェニブ治療を受ける患者の応答を予測した場合においてすら、陽性的中率がたった53%であったことは、注目に値する(エルロチニブ(Erlotinb)モデルの83%よりもさらに低い)。対照的に、ソラフェニブモデルは、非常に高い陰性的中率96%を有し、そのため全体的なモデルの正確度は79%であった(エルロチニブモデルの84%よりもわずかに低いだけ)。
まとめると、細胞株パネルデータから訓練したエルロチニブまたはソラフェニブモデルを使用して、対応する治療の患者応答を十分に予測することができる。しかしながら、これらのモデルは、交差評価(すなわち、ソラフェニブシグネチャーによりエルロチニブ応答を予測すること、およびその逆)では性能が低かった。これは、エルロチニブおよびソラフェニブのいずれのモデルも、薬物特異的であることを示唆する。
エルロチニブ予測モデルにおけるシグネチャー遺伝子は、EGFR阻害剤としてのエルロチニブの作用様式(MOA)を正しく捕捉した。さらに、エルロチニブシグネチャーの再構築したシグナル伝達ネットワークは、いくつかの高度に発現するエルロチニブ耐性関連成長因子を特色とした。同様に、ソラフェニブシグネチャーについて構築されたネットワークもまた、そのMOAと関連していた。
この分野において、以前になされたいくつかの細胞株に基づくシグネチャー生成研究が存在する。例えば、あるNCI−60研究において、「共発現外挿法」(COXEN)アルゴリズムは、細胞株と原発腫瘍との間で同期して発現する数少ない遺伝子を選択するために開発され(Lee et al.(2007)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 104:13086−13091)、腫瘍および細胞株両方の発現パターンを多重遺伝子予測因子の導出に使用した。最近では、COXENアルゴリズムは、細胞株で訓練した多重遺伝子予測因子を使用して55人のサンプル卵巣癌患者に適用された(Ferriss et al.(2012)PloS one 7:e30550.COXENアルゴリズムに対する1つの可能性のある制限は、その特性選択アプローチであった:前臨床および臨床のデータにクラスタリング分析を行ってモデル訓練のための入力遺伝子を選択した。現在の研究では、モデルを完全に細胞株パネルデータに基づいて構築したため、BATTLE臨床データセットを、独立した試験データセットとして使用することができる。
訓練および試験データセット、ならびにエンドポイントは、明らかに異なっていた:モデルは、IC50曲線を表現型として有する2Dのインビトロ細胞株パネルから構築した。無憎悪生存期間(PFS)を臨床エンドポイントとして使用して、BATTLE臨床試験からの原発腫瘍の発現データセットにおいて検証研究を行った。さらに、訓練データ(細胞株パネル)は癌適応症の混合を含むが、非小細胞肺癌(NSCLC)のみが、BATTLE試験における唯一の適応症である。Affymetrix U133plus2プラットフォームにおいてシグネチャーを生成し、Affymetrix Human Gene 1.0 STプラットフォームで生成したデータに対して試験した。実験条件間のこのような高い相違は、モデル化アプローチおよび特性選択についての注意深い検討を要求した。全体としては、細胞株により導出したエルロチニブおよびソラフェニブ感受性モデルは、BATTLE試験のPFS成果を、それぞれ84%および79%の高正確度で予測した(図7Aおよび7B)。
(実施例9)
生存を予測するためのエルロチニブおよびソラフェニブ経路に基づくモデルの試験
細胞株データから導出した薬物感受性モデルの判定のための別の手段は、患者の層別化についてそれらを試験することであった。BATTLE臨床試験の患者を、マーカー陽性(薬物感受性)またはマーカー陰性(薬物耐性)のサブグループに、対応する薬物の予測される感受性スコアに基づいて割り当て、次いで、マーカー+/−患者群を、臨床出力の無憎悪生存期間(PFS)に基づいて比較した。
図8Aは、エルロチニブのPLSRシグネチャーが、より長いPFSを有するエルロチニブ患者を予測することができたことを示す。エルロチニブ感受性患者群(実線)の中央値PFSは、3.84カ月であったが、エルロチニブ耐性患者(破線)のPFSは、1.84カ月であり、0.09のp値および0.43のハザード比に相当する。BATTLE試験でのすべての患者の中央値PFSは、1.90カ月であり、エルロチニブモデルが、実際に、2倍長い生存期間を有し、したがって、明らかにエルロチニブ治療から利益を得る、患者群を選択したことを示唆する。エルロチニブ(Erlotinb)治療群のすべての患者が、EGFR野生型であったため、EGFR変異バイオマーカーをここで使用することは不可能であった。一方で、現在の遺伝子発現に基づくバイオマーカーは、エルロチニブ感受性の患者と耐性の患者とを分離するのに適度に良好に機能する。
ソラフェニブモデルを用いてソラフェニブ群のBATTLEの患者を層別化する場合、モデルが特定したマーカー感受性群(実線)は、PFS2.66カ月の生存利益を有し、対するマーカー耐性群(破線)(図8B)は、0.006のp値および0.32のハザード比を有した。中央値PFS生存期間は、マーカー感受性群および非感受性群について、それぞれ、4.53および1.87カ月であった。ソラフェニブは、肺癌には認可されなかった。しかしながら、腎臓癌に対するFDAの認可につながった第3相臨床試験は、5.57カ月および2.80カ月(2.77カ月のPFS利益)に対応する167日対84日(ソラフェニブ対プラセボ)の中央値生存利益を観察した。
重要なことに、シグネチャーは薬物特異的であり、群を超えて機能しなかった。エルロチニブ予測モデルは、ソラフェニブ治療群のマーカー感受性とマーカー非感受性を分離することができず(実線および破線の分離のためのp値0.32、図8C)、ソラフェニブモデルは、エルロチニブ治療群の群を区別することができなかった(実線と破線の分離のためのp値0.54、図8D)。いずれもシグネチャーがマーカー感受性群の生存利益をもたらすことはなく、予測モデルが薬物特異的であることを示唆した。
KRAS変異には、通常、NSCLC患者における抗EGFR治療応答と関連すると考えられており(Langer(2011)P T 36:263−279)、KRAS変異状態は、臨床出力の評価において収集されることが多い(Weickhardt et al(2012)J.Clin.Oncol.30:1505−1512)。生存期間の予測力を、PLSRが生成したシグネチャーまたはKRAS変異状態のいずれかを使用して、BATTLE試験の患者を群分けし、次いで各バイオマーカーを用いて可能性のある生存優位性を推定することによって、評価した。
図8Aに示されるように、51個の遺伝子のPLSRシグネチャーにより特定されたエルロチニブ感受性患者は、より長いPFSでエルロチニブ治療に良好に応答する傾向にあり、0.09のp値は有意ではないが、小さなサンプルサイズ(25人の患者)によってもたらされた可能性が高い。一方で、KRAS変異状態は、エルロチニブ治療後の患者の生存期間についての情報をほとんど提供しなかった(実線と破線の分離のためのp値0.84、図8E)。
エルロチニブはEGFR阻害剤であるが、ソラフェニブは標的として多重チロシンキナーゼ受容体を有するという事実を考慮すると、エルロチニブおよびソラフェニブの間のモデル特異性は達成が困難であろうことが予想される。顕著なことに、エルロチニブおよびソラフェニブの薬物感受性モデルは、薬物特異的である、すなわち、エルロチニブモデルはソラフェニブ患者のPFSを予測することができず、逆もまた同様であった(図7および8)。
(実施例10)
メラノーマ外植片応答におけるMLN4924経路に基づくモデルの試験
ヒトメラノーマ腫瘍の外科標本を、マウスの皮下に埋め込んだ。その後のマウスにおける成長および継代の後、腫瘍を切除し、治療のためのコホートに展開した。マウスに、MLN4924で皮下処置を行い、腫瘍成長を測定して、感受性および耐性の腫瘍を特定した。メラノーマ外植片(すなわち、ヒト腫瘍異種移植片)から単離した全RNAを、Affymetrix遺伝子アレイにおいてハイブリダイズさせた。
MLN4924経路に基づく分類因子がMLN4924に対するメラノーマ外植片の応答を予測する能力を決定するために、評価の前にいくつかの技術的ステップを行うことが必要であった:実施例1からの遺伝子発現データはAffymetrix U133plus2プラットフォームからのものであったが、メラノーマ外植片遺伝子発現は、Affymetrix HuGene10stv1プラットフォームで生成された。したがって、まず、これらの2つのプラットフォームで共通する遺伝子を見出すことが必要であった。(2).分位点に基づく正規化を適用して、メラノーマ遺伝子発現の分布を実施例1の細胞株のものに対して調整した(PLSRモデルが実施例1のデータで訓練されるため)。(3).実施例1のデータセットから取得した69個の遺伝子シグネチャー中、メラノーマデータセットにも存在する遺伝子が65個あった(BAG2、CD36、PTPRM、およびVCANはなかった)。したがって、MLN4924 PLSRモデルを、この65個の遺伝子を使用して再訓練して、メラノーマデータセットに適用することができる予測モデルを得た。(4).細胞株PLSRモデルが導出したカットオフを採用して、感受性または耐性の標識を予測結果に割り当て、次いで、これを実験データと比較した。
図9は、実施例1の試験データセットに対する予測と実験のlog2(IC50)値を示し、これは、モデル化性能を評価するために訓練プロセスにおいて確保したものであった。予測および実験から得られたlog2(IC50)値の間の総括相関係数は0.52であり、感受性細胞株と耐性細胞株とを分離するためのデータ駆動型カットオフは、−1.45で水平方向の線として示される。
モデルならびにカットオフを採用して、メラノーマ外植片に対して予測を行った。全体として、PLSRモデルは、10個のメラノーマ外植片のうち8個に正しい予測を行い、したがって、80%の正確度であった(以下の表7に示される)。
エルロチニブ試験の場合と同様に、この実施例は、PLSR予測モデルの構築をインビトロ細胞株パネルから開始した。このモデルは癌適応症細胞株サンプルの混合に基づいて構築したものであるが、これを癌適応症の腫瘍/患者サンプル内での予測に使用した。最も重要な事には、このモデルはインビトロデータに基づいて構築したものであるが、インビボでの薬物応答の予測に使用した。
(実施例11)
MLN4924治療の異種移植片モデルとの比較
本明細書に記載されるMLN4924 PLSRモデルを、細胞成長の挙動に基づいて生成し、インビトロにおいてMLN4924で処置した。インビトロ細胞株阻害結果からインビボ治療結果を予測する能力を、インビボ治療結果のPLSRモデルの予測と比較した。
腫瘍モデルは、インビトロおよびラットもしくはマウスにおける異種移植片としてインビボでの両方において成長した。MLN4924での処置は、インビトロ培養物の細胞生存率データおよび異種移植片対象における薬物動態曝露関係を生成した。未処置またはビヒクル処置動物に由来する腫瘍細胞の異種移植片サンプルから遺伝子発現情報を取得し、Affymetrixアレイにおいて正規化した。
一般に、異種移植片研究については、腫瘍細胞株は、培養下で成長させた後の注射のために調製され、原発ヒト腫瘍は、腫瘍断片としての埋め込みのために調製される。典型的には、異種移植片を、それぞれ、皮下に注射または埋め込み、処置を開始する前にある特定の寸法まで成長させる。異種移植片の成長は、腫瘍体積を測定することによって監視する。種々の用量レベル(すなわち、10、30、60、90mg/kg)でのMLN4924の血漿濃度を判定し、それを使用してPKモデルを生成する。各研究群において送達された全MLN4924曝露(AUC)を、PKモデルを用いて計算した。
MLN4924の種々のインビボ腫瘍形態、用量、投薬スケジュール、および腫瘍阻害活性を用いた多様な研究を、各腫瘍型に行った。この多様性の結果として、腫瘍型の相対的な感受性を比較するための方法が必要であった。複数の腫瘍型における分析は、抗腫瘍活性が、研究中のMLN4924の全曝露またはAUCに関連していたことを示した。正規化した腫瘍成長速度(G)を、抗腫瘍活性研究において各処置群について算出し、データ点を、等式Gtreat/Gcontrol=1+Slope*AUCに当てはめた。この方法を使用して、阻害活性研究中に、腫瘍静止に達するのに必要な平均血漿濃度を、分散係数のパーセンテージ(CV%)の範囲とともに、各異種移植片モデルについて取得した。表8は、集計の結果を提供する。比較を単純化するために、表8は、MLN4924に対する全体的な異種移植片の感受性によって腫瘍型をランク付けする(ランク1が最も感受性であり、16が最も感受性でない)。
図10Aは、培養下で(培養データが利用可能な場合)MLN4924が同じ腫瘍を有する異種移植片を阻害する能力(log2(IC50)として表される)の比較を示す。図10Bは、表1のマーカーの発現を用いた予測を使用して、MLN4924が異種移植片を阻害する能力(log2(IC50)として表される)の比較を示す。
(実施例12)
核酸の単離および核酸のシークエンシングの方法
ゲノム単離およびDNAシークエンシング。細胞および腫瘍からのDNAの単離を、DNAEASY(登録商標)単離キット(Qiagen,Valencia,CA)を使用して行う。RNA単離は、MegaMax(Ambion division of Applied Biosystems,Austin,TX)を使用して行う。ゲノム単離は、製造業者が推奨するプロトコルに従って行う。
SANGERシークエンシング方法論。PCR増幅を遺伝子のエクソンごとに最適化サイクリング条件を用いて実施する。プライマー伸長シークエンシングをApplied BiosystemsのBigDyeバージョン3.1を用いて行う。その後、反応物をApplied Biosystemの3730xl DNAアナライザー上で泳動させる。シークエンシング塩基呼び出しをKBTM Basecaller(Applied Biosystems)を用いて行う。体細胞変異呼び出しをMutation Surveyor(SoftGenetics)によって決定し、Seqman(DNASTAR)を用いてシークエンシングデータを対応する参照配列とアライメントすることによって手作業で確認した。
SEQUENOMシークエンシング方法論。Sequenom(San Diego,CA)アッセイを、一塩基伸長によるTypePLEX(登録商標)化学反応を使用して設計する。このプロセスは、3つのステップからなる:1)目的のSNPまたは変異、および隣接する配列を含有するテキストファイルを、mysequenom.comにアップロードし、そこでウェブ上のプログラムProxSNPが実行される、2)ProxSNPの出力にPreXTENDが実行される、ならびに3)PreXTENDの出力にAssay Designが実行され、それにより、多重化反応において見出されるすべての可能性のあるピーク間の分離を確実にする伸長産物の予想質量が決定される。
次いで、PCRプライマーを、アッセイ設計ステップにおいて特定された領域を括弧で囲むように設計する。目的の領域を、プライマーを用いてPCR反応において増幅させる。15nlの増幅および伸長産物を、Nanodispenser RS1000を使用して384 SpectroCHIP II上に配置する。3点較正物をすべてのチップに添加して、Sequenom Maldi−tof小型質量分析計の適正な動作を確実にする。
SpectroCHIP IIをSequenom MALDI−TOF小型質量分析計内に設置する。この質量分析計を、384ウェルのspectroCHIP上のそれぞれのスポットごとに最大9つの取得物を発するように設定する。SequenomからのTypePLEX GoldキットSpectroCHIP II(10142−2)を、製造業者が推奨するプロトコルに従って使用する。Sequenom分析ソフトウェア、MassARRAY(登録商標)Typer Analyzer v4を使用して分析を行う。
次世代シークエンシング(NGS)方法論。Illuminaプラットフォーム(Illumina,Inc.San Diego,CA)を使用した標的化NGSを用いて、マーカーにおける低頻度の変異を確認および特定する。プライマー対を、コーディングエクソンを増幅するように設計する。PCR産物を、PicoGreenアッセイを用いて定量化し、各サンプルごとに等モル比で合わせる。精製した産物を末端修復し、ライゲーションによって連結する。連結した産物をHi−Seq 2000ライブラリ調製に使用する。連結したPCR産物を剪断し、それを用いて1つの多重化プール当たり12個のバーコード化したサンプルからなるバーコード化したHi−Seq 2000ライブラリを作製する。プールされたHi−Seq 2000ライブラリは、Hi−Seq 2000フローセルの8つのレーン上でのクラスター生成によるクローン増幅を経て、Hi−Seq 2000上で1×100シングルエンドシークエンシングを用いてシークエンシングする。一次シークエンシング読み取りとヒトゲノムとを整合することによりHg18を構築し、ならびに、IlluminaのCASAVAソフトウェアバージョン1.7.1を用いてSNP分析を行う。
一般手順
定量的RT−PCR
cDNA合成および定量的RT−PCRを、ABI遺伝子発現アッセイ、試薬、およびABI PRISM(登録商標)7900HT配列検出システム(Applied Biosystems,Foster City,CA)を使用して、以下のサイクル条件を用いて行う:AmpErase UNG活性化のために50℃で2分間維持、次いでDNAポリメラーゼの活性化のために95.0℃で10分間維持、その後95.0℃で15秒間および60.0℃で1分間の2部サイクルを40回実行。対照遺伝子B2M(Hs99999907_m1)およびRPLPO(Hs99999902_m1)の平均Ctを用いてdCtを計算する。相対mRNA発現定量化を、比較Ct法(Applied Biosystems)を使用して導出する。mRNA発現の倍変化の値を、正常サンプルおよび対応する腫瘍サンプルから生成する。
骨髄腫サンプルのサンプル取り扱い
患者の骨髄穿刺液を収集する際、迅速な負の選択によって骨髄腫細胞を富化した。富化手順は、細胞型特異的抗体と赤血球に結合する抗体とが一体化した混合液であるRosetteSep(Stem Cell Technologies)を用いる。抗体混合液は、以下の特異性を有する抗体を有する:CD14(単球)、CD2(TおよびNK細胞)、CD33(骨髄性前駆体および単球)、CD41(血小板および巨核球)、CD45RA(ナイーブBおよびT細胞)、ならびにCD66b(顆粒球)。これらの抗体は、サンプル中の非骨髄腫細胞型と赤血球とを架橋させる。修正したFicoll密度勾配を用いて結合した細胞型を除去する。その後、骨髄腫細胞を収集し、凍結させる。
全RNAをQIAGEN(登録商標)Group RNEASY(登録商標)単離キット(Valencia,CA)を用いて単離し、分光測光によって定量化する。
DNAをRNA単離法で用いたカラムの通過画分から単離する。
等価物
本発明の実施形態が特定の用語を用いて説明されているが、そのような説明は、例証目的のためであって、本発明の精神または範囲から逸脱することなく変更および変形を加えてもよいことを理解されたい。当業者であれば、日常の実験のみを用いて、本明細書に記載の本発明の特定の実施形態の多くの等価物を認識するか、解明することができる。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって包含されるよう意図される。