JP6249019B2 - 摩擦圧接方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属部材同士の接合に適した摩擦圧接方法に関する。
金属部材同士を接合する方法の一つとして、摩擦圧接が提案されている。摩擦圧接は、被接合材となる金属部材の接合面同士を接触させ、その接合面を加圧しながら機械的に相対運動させ、発生する摩擦熱を加熱源として圧接する方法である。
部材の相対運動は、例えば接触面に垂直な軸を中心とした回転運動や、接触面に平行な方向の往復運動などがある。摩擦圧接は、通電加熱を利用しないため、大きな電源設備を必要とせず、比較的簡単な設備で寸法精度の高い製品が得られる。このことから、仕上げ加工を施した部品の接合などに適用される。また、一般的な溶接とは異なり異種金属材料間の接合も可能であるため、応用分野が広い。そのため、自動車用のバルブなど、多くの精密機械部品などに適用されている。
摩擦圧接は、金属部材の融点近くまで加熱し、接合面近傍の塑性流動による密着性が必要となる。そのため、接合面近傍では変形が生じ易く、また金属部材の熱影響部が広くなり強度や材料特性の面で悪影響を及ぼしている。このため金属部材の熱影響を制御する方法として種々の方法が提案されている。
特許文献1には、熱容量の異なる金属部材を摩擦圧接する際に、金属部材間に回転体としてのインサート材を入れ、両部材を個々に温度制御しつつ、インサート材を回転させて摩擦接合する方法が開示されている。特許文献1の摩擦圧接方法では、インサート部材を介して一対の金属部材を接合することができる。
特許文献2には、接合温度の低温化を図るため、液相拡散接合に用いる非晶質合金箔(ロウ付け用ロウ材)を、摩擦圧接法で予め金属部材に接合することが提案されている。即ち、一次接合となる摩擦圧接は、ロウ材(非晶質金属箔)の融点以下の温度ででき、二次接合となる液相拡散接合(ロウ付け)は、ロウ材(非晶質金属箔)の融点程度の温度でできる。そのため、通常の摩擦圧接に比べ低温化できるため、変形量が少なく、金属部材の熱影響部を少なくすることができる。しかし、特許文献2の方法は、本質的には金属部材を液相拡散接合しているものであり、摩擦圧接ではない。
特開2009−101374号公報 特開2006−159212号公報
久曽神他「炭素鋼の摩擦圧接に関する研究」1976年4月1日日本機械学会論文集(C編)P1406〜1414
被接合材となる金属部材の接合面には酸化物(自然酸化膜を含み、母材に起因する金属酸化物。以下単に酸化物という。)が存在する。摩擦圧接のような固相接合する際には、接合面から酸化物を除去することが重要である。接合界面中に酸化物が残留すると、その部分が欠陥となり接合強度が低下するからである。さらに、酸化物がクラックの発生源となり破壊靭性を著しく劣化させるおそれもあるからである。
通常の摩擦圧接では、接合面近傍が高温化するため軟化する。そのため、圧接する際に、その軟化部が塑性流動し、酸化物ごと部材の外部に押し出している。これがバリとなる。この塑性流動により酸化物が除去され、清浄な金属面同士が密着し欠陥のない接合材が得られる。
しかし、酸化物を押し出すためには、十分な量の塑性流動を起こさせる必要がある。そのため、入熱量を多くし、できるだけ高温にする必要がある。金属部材のサイズが大きくなればなるほど、塑性流動する量が増加するため、入熱量が大きくなる。
例えば鋼の場合、十分な量の塑性流動を確保し接合強度を高めるためには、最高到達温度が1300〜1400℃になる(非特許文献1)。一般的な低炭素鋼の融点が1400℃〜1500℃程度であるから、非常に高温であることが分かる。このように高温加熱をする場合、十分な摩擦熱を発生させるために時間がかかり、接合時間を短くすることが難しい。
さらに、加熱時間が長くなるため、熱伝導により金属部材の熱影響部が広がり、当該熱影響部の材料特性が変化する。このため、設計どおりの強度や機能を確保できないなどの問題が生じている。
例えば、鋼材を摩擦圧接する時には、接合部の周辺が広い範囲で温度上昇し、熱影響部(以下、HAZ(Heat Affected Zone)と称する。)が形成される。接合界面は一旦オーステナイト領域まで加熱され急冷されるためマルテンサイト組織となり著しいHAZ硬化を生じる場合がある。焼入れ鋼などのマルテンサイト鋼の場合、HAZ部で温度がAc1点未満しか加熱されていない領域では焼戻され、いわゆるHAZ軟化が生じる。このため焼入れ鋼の場合、HAZ部の一部で強度低下が生じ、接合部材全体の強度が低下するおそれがある。
さらに、高温加熱によって軟質化した領域はアップセット加圧(押圧)により塑性流動が生じ外部に排出される。これがバリになる。金属材料の場合、接合部の加熱温度が高いと軟化領域も広がるため、接合部の周辺の広い範囲が塑性流動し、変形量が大きくなるだけでなく、バリの量も多くなる。このため最終製品の精度が悪化することと、バリ除去などの加工(切削加工など)が必要となり、手間とコストが余計にかかることになる。この現象は、鋼に限ったことではなく、アルミニウム、チタン、銅などの金属材料でも同様のことが生じる。
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、金属部材の摩擦圧接において、従来のように高温加熱による弊害をなくしつつ、短時間で、十分な接合強度が得ることを課題とする。
本発明者らの鋭意研究の結果、以下の知見を得た。
(a)金属部材の摩擦圧接方法において、金属部材より融点の低いインサート材を金属部材の間に配置して摩擦圧接を実施した際に、溶融したインサート材の流動とともに、接合面の酸化物(酸化皮膜)を除去できることを見出した。これにより、金属部材を必要以上に加熱することなく、インサート材が溶融すれば金属部材の接合面に存在する酸化物(酸化皮膜を含む。)を除去することができる。
(b)単にインサート材を挟持して加熱し押圧しただけでは、接合面上の酸化物は完全には除去できないことも見出した。
すなわち、接合面の相対的運動(例えば回転運動等)により、接合面上の酸化物が剥離され、若しくは剥離され易い状態になり、これに加え、溶融したインサート材の流動により、この剥離した酸化物がこそぎ取られ、そして押し流されるものと考えられる。これにより、接合面の清浄度を著しく高めることができ、欠陥のない接合界面を得ることができる。
(c)上記効果を最大限得るためには、インサート材の融点を接合に必要な加熱温度(圧接温度)より50℃程度低くすることが好ましいことを見出した。インサート材の融点が必要以上に低いと、酸化物の剥離が進まないうちに、インサート材が外部に押し出されてしまうためである。
こうすることにより、従来の摩擦圧接より低温でありながら、酸化物が除去された清浄な接合面同士を圧接し、金属部材の密着性を確保し、高い接合強度を得ることができる。さらに、加熱温度が低いため接合時間が短縮される。
そして、金属材料は材質により融点が変動するが、近似的に、インサート材の融点を金属部材の融点(摂氏温度)との比率で表すことができることを見出した。即ち、インサート材の融点を金属部材の融点(摂氏温度)の60%〜80%の温度(摂氏温度)になるよう選択するとよいことを見出した。
本発明は、これら知見を基に成されたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)一対の金属部材の摩擦圧接方法であって、前記金属部材の対向し接合される面である接合面の間に、前記金属部材の融点(摂氏温度)の60〜80%の融点(摂氏温度)を有する金属からなるインサート材を挟持した状態で摩擦圧接を開始し、前記金属部材の融点のうち低い方の温度未満の温度において、前記インサート材を溶融させ、前記一対の金属部材の間から押し出すこと、すなわち溶融した前記インサート材を前記対向する接合面の間から押し出すこと、を特徴とする摩擦圧接方法。
(2)前記インサート材の厚さが10〜500μmであることを特徴とする(1)に記載の摩擦圧接方法。
(3)前記インサート材が、少なくとも一方の前記接合面をカバーすることを特徴とする(1)または(2)に記載の摩擦圧接方法。
(4)圧接時の温度が、前記インサート材の融点(摂氏)より50℃以上高いことを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の金属部材の摩擦圧接方法。
(5)摩擦圧接後に、前記金属部材間に前記インサート材が残留していないことを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の金属部材の摩擦圧接方法。
(6)前記金属部材が鋼であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の金属部材の摩擦圧接方法。
本発明によれば、金属部材の摩擦圧接接合において、従来のように高温加熱よる弊害をなくし、短時間で接合でき、従来と同等以上の接合強度が得られる。
本発明の一実施形態に係る摩擦圧接方法を説明するための図
以下、本発明に係る摩擦圧接方法を説明する。本発明に係る摩擦圧接方法は、一対の金属部材の間にインサート材を挟んだ状態で摩擦圧接を行う方法である。ここで、一対の金属部材の対向し接合される面を接合面とよぶ。また、一対の金属部材が接合されたものを接合材とよぶ。また、接合材の接合界面近傍を接合部とよぶ。さらに、本発明において、温度に関するもの(例えば融点など)は、特に断りのない限り摂氏温度(℃)を示すものとする。
図1は、本発明の一実施形態に係る摩擦圧接方法を説明するための図である。なお、図1においては、円柱状の金属部材1、2を接合する場合を示しているが、本発明に係る摩擦圧接方法は、その形状を特に限定するものではなく、他の形状(例えば円筒形状、角柱形状等)を有する鋼材の接合にも適用できる。
図1(a)に示すように、金属部材1、2を、その間に円板状のインサート材3を挟んだ状態で互いに突き合わせる。インサート材3は、その融点が摂氏温度で金属部材1、2の60%〜80%の温度となる金属からなる。例えば、金属部材1、2が鋼の場合、鋼の融点(1500℃程度)に対し900℃〜1200℃程度の融点を有する金属であればよい。インサート材3の材料としては、Cu、Fe、Ni、Au系合金等を挙げることができる。インサート材3の厚さは、例えば10〜500μmであることが好ましい。インサート材は、少なくとも一方の金属部材の接合面をカバーすることが好ましい。
本実施形態では、金属部材1は、摩擦圧接装置(図示せず)の回転保持部(図示せず)に保持され、金属部材2は、摩擦圧接装置(図示せず)の固定部(図示せず)に固定される。金属部材1をインサート材3を介して金属部材2に軽く押し付け、インサート材3を金属部材1、2に挟持された状態にする。この時、作業性の観点から、インサート材3を、固定された金属部材2の接合面に接着剤等で取り付けておいてもよい。この状態で摩擦圧接を開始する。
なお、本発明の摩擦圧接方法は、公知の摩擦圧接装置、あるいは公知の摩擦圧接装置に簡単な設計変更を加えた装置を用いて実施できるので、摩擦圧接装置の詳細な説明は省略する。
次に、図1(b)に示すように、本実施形態では、金属部材1を高速回転させつつ軸方向に移動させて、インサート材3を介して鋼材2に押し付ける。インサート材3は、金属部材1、2から圧力を受けることで保持されつつ、両部材と相対的に回転する。これにより、鋼材1とインサート材3との接触部および鋼材2とインサート材3との接触部においてそれぞれ摩擦熱が発生する。この摩擦熱によって、インサート材3が加熱され溶融する。なお、金属部材1の回転数および押圧力は、鋼材1、2およびインサート材3の寸法、材質、摩擦圧接装置の種類等に応じて決定される。例えば、金属部材が鋼の場合、回転速度1000〜4000rpm、押圧力30〜300MPaの範囲で適宜設定すればよい。また、本実施形態は、金属部材1のみを回転させているが、両部材を回転させてもよい。その場合には、金属部材1、2を逆回転させると、相対的な回転数が増加するため好ましい。もちろん、相対的運動は回転に限定されることはなく、直線的往復運動などでもよい。摩擦熱が発生する運動形態であれば、その態様は限定しない。
次に、図1(c)に示すように、金属部材1、2をさらに押し付けあうことによって、金属部材1、2の間から溶融したインサート材3を押し出し、金属部材1と金属部材2とを直接接触させて接合する。この時、金属部材1、2の接合面にあった酸化物は、剥離し、溶融したインサート材とともに外部へ排出される。
通常、金属部材の接合面には酸化物が存在している。例えば、金属部材が鋼の場合は、Feや、鋼中のSiやMnの酸化物であるSiOやMnOが、接合面上に存在している。金属部材がアルミニウムの場合はAl(いわゆるアルミナ)が接合面上に存在している。この酸化物は、高温と回転力(相対的運動による力)により金属部材から剥離しているか、若しくは剥離し易くなっている。そこに溶融したインサート材が、押圧により外部へ押し出されるように流動するため、これに流されるように接合面上の酸化物も外部へ押し出される。
こうして、インサート材や酸化物といった不純物のない清浄度の高い接合面同士で接触するため、接合強度の高い、良好な接合材が得られる。このときの接合部の温度は、インサート材の融点より50℃程度高いので、従来の摩擦圧接における温度よりは低いが、密着性を得るには十分な温度である。
その後、接合面から排出されたインサート材3を除去し、金属部材1、2からなる接合材が完成する。従来の摩擦圧接よりは低い温度でありながら、欠陥がなく、接合強度の高い接合材を得ることができる。
従来技術では、金属部材そのものの塑性流動により酸化物を外部に排出していたため、相当量の金属部材の塑性流動が必要であった。しかし、本発明では、酸化物の排出は、溶融したインサート材に委ねられるため、金属部材自体の流動量は発生しないか、あっても比較的少量でよい。そのため、金属部材の変形を抑制することができ、できあがった接合材の仕上がり精度を高めることができる。
また、これにより、金属部材1、2の広い範囲が高温になることを防止できるので、接合部周辺の広い範囲にHAZが形成されることを防止できる。この結果、HAZ軟化域も縮小され、接合材としての強度低下を抑制することができる。
[インサート材]
本発明に係るインサート材について、金属部材が鋼の場合を例にして説明する。
[インサート材の融点]
鋼の場合、接合面温度が1000℃程度で、密着が容易になり、結合力(接合強度)が向上することが知られている(非特許文献1)。この圧接に必要な温度を、ここでは圧接温度とよぶ。圧接温度は、融点とある程度相関があることが分かっている。発明者らの研究では、S15C鋼(融点:約1500℃)で、インサート材融点900℃、圧接温度950℃で、十分接合できることを確認した。即ち、インサート材の融点は、鋼の融点の60%であり、圧接温度は63%であったことになる。なお、圧接温度は、固定チャック側の接合体中心部の接合界面近傍に熱電対を埋め込んで測定した。一方、従来の摩擦圧接では、接合面の加熱温度は1300〜1400℃に達する(非特許文献1)。即ち、鋼の融点の90%程度に達する。従来の方法は、いかに高温であったかが分かる。
本発明の課題にあるように、摩擦圧接の際に加熱温度が高すぎるとHAZが広がり、強度低下などの弊害を生じる。そこで接合面の加熱温度は、従来の加熱温度より低くする必要があるので、1300℃未満にすることが好ましい。こうすることにより、加熱時間を短縮し、HAZ幅を抑えることができ、高温化による弊害をなくすことができる。
発明者らの研究の結果、鋼の場合、インサート材の融点は900℃〜1200℃とすることが好ましく、接合面の加熱温度(圧接温度)はインサート材の融点より50℃程度高くするとよいことを知見した。
一般に鋼などの金属の融点は、その成分組成により変化する。融点が低くなると、圧接温度も低くなり、接合面の最高加熱温度も低くしないといけない。前述したように圧接温度は、融点とある程度の相関関係があり、近似的に比例関係にあると見做せられる。そこで、本発明では、インサート材の融点を金属部材の融点に対する比率で示すことにした。上記のS15C鋼の場合、融点は約1500℃であり、インサート材の融点は、母材となる金属部材の融点の60%〜80%に設定するとよい。そして、圧接時の接合面温度(圧接温度)はインサート材の融点より50℃程度高い温度になるよう設定するとよい。通常の鋼であれば、この範囲であれば良好な圧接ができる。
また、例えば高炭素鋼(C:2%)の場合は融点が1150℃程度になる。融点が低温化することにより、圧接温度も低温化する。その場合でも、母材となる鋼の融点の60%に相当する700℃の融点を有するインサート材を適用し、750℃の圧接温度で摩擦圧接することができる。
接合温度が高温であると接合性が向上することを考慮すると、圧接温度をインサート材の融点の70℃以上とすることが好ましく、80℃以上にすると更に好ましい。圧接温度の上限は、特に設定しないが、高くても従来と同様の金属部材の融点の90%程度である。
インサート材の材質は特に限定するものではないが、Cu、Fe、Ni、Au系合金等から融点を調整して得ることができる。例えば、ロウ付け材などを適用することができる。例えば、Ni−3.5%Si−8%B−11%V合金(融点:1073℃)、Fe−2.5%Si−12%B−8%V合金(融点:1122℃)およびNi−0.8%Si−15%P−7%V合金(融点:942℃)が知られている(いずれも特許文献2)。
[インサート材の厚さ]
インサート材もその融点程度に加熱すると軟化し、押圧することにより塑性流動する。したがって、インサート材の厚さが薄過ぎると、インサート材の融点に達する前に金属部材の接合面同士が接してしまい、接合面間にインサート材がなくなる可能性がある。このため、インサート材の厚さは10μm以上とするとよい。取扱い性、製造可能性などの観点から、好ましくは25μm以上、さらに好ましくは50μm以上とするとよい。
一方、インサート材が厚過ぎると、インサート材の加熱時間が長くなり、さらに接合面間からインサート材の排出に要する時間が増大する。これにより、金属部材へ伝導する熱量が増加し、結果としてHAZ幅が広がる可能性がある。このため、インサート材の厚さは500μm以下とするとよい。厚さ低減による加熱時間の短縮効果は大きいことから、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下にするとよい。
[インサート材の形状]
インサート材の形状は特に限定しない。インサート材が溶融し、接合面から押し出される際に、接合面全体を通過するものであれば問題ない。一部でもインサート材が通過しない部分があると、その部分の酸化物が除去されないおそれがあるからである。そのため、金属部材の接合面上の酸化物の排出効果を高める観点から、少なくとも一方の接合面をカバーできる大きさにすることが好ましい。これにより、インサート材が接合面全体に充満することができ、接合面上の酸化物を確実に排出することができるからである。
以上の知見は、鋼以外の金属にも適用でき、融点を基準にすれば概ね同じ数値範囲なることを確認した。鋼以外の金属は、主にAl、Ti、Cuなどの合金が挙げられる。
実験では、金属部材として鋼材を用いた。実験に用いた鋼材およびインサート材を以下に示す。
鋼材: Fe-0.45%C-0.2%Si-0.7%Mn
融点:約1440℃
直径20mm×長さ100mmの円柱形
両端面は機械加工による平面に仕上げ
インサート材:Cu−35%Zn合金
融点:930℃
直径 22mm×厚さ100μm(0.1mm)の円盤状
上記鋼材を2本用意し、同軸上に1本を固定チャックに、もう1本を回転チャックにセットし、チャックを軸方向に移動し、両鋼材でインサート材を挟持するようセットした(図1(a)参照)。その後回転チャックを回転し、両鋼材を押し付けるようにチャックを移動させた(図1(b)参照)。その時の回転数は1800rpm一定とし、摩擦圧力200MPa、摩擦時間3s(sは秒(second)を示す。以下同じ。)、アップセット圧力300MPa、アップセット時間3sで接合した。
接合の評価は、接合材(両鋼材が接合され1本になった鋼材)により引張り試験を行い、破断強度比(破断強度/母材強度)および破断部位で評価した。
また、比較例として、同じ鋼材を用いて、インサート材を入れずに従来の摩擦圧接を行った。比較例1は摩擦時間2sとし、比較例2では摩擦時間3sとした。その他の条件はインサート材を入れた場合と同条件とした。
試験結果を表1に示す。
Figure 0006249019
実施例および比較例1は、接合界面以外で破断していることから、接合自体は良好であったものと思われる。
また、接合部の硬さ分布を測定した結果、実施例では接合界面からHAZ最軟化部までの距離が約1.5mmであったのに対し、比較例1では約3mmであった。すなわち、実施例でのHAZ幅が狭くなったことが確認できた。
実施例と比較例1の破断強度比から考察して、比較例1の破断強度比は0.95であることから、やはり高温加熱の影響が若干ではあるが表れていると思われる。このことから、本発明に係る摩擦圧接による接合材は、比較的低温での接合であるにも関わらず従来と同等の接合強度を有していることと、HAZ幅が狭くなったことが確認できた。
比較例2は、接合界面で破断していることから、接合自体が十分ではなかったと思われる。原因としては、接合時間が短く低温のため塑性流動が十分ではなく接合面上の酸化物が残留したことと、密着性が悪く固相接合が不十分なうちに冷却されたことが考えられる。接合体の外周部は、1000℃以上に加熱されていたが、中心部は周速が得られず摩擦熱が発生しないため、周囲からの熱伝導により加熱される必要がある。すなわち、接合時間が短すぎると、中心部が十分に接合されないため、接合強度が低下したと考えられる。一方、実施例では、接合時間2s程度からインサート材が排出され始めた。このことは接合界面全体がインサート材の融点以上に達したことを意味する。つまり、インサート材を挟むことにより、従来方法よりも中心部の接合界面温度が上昇しやすくなったと考えられる。
以上のことから、本発明に係る摩擦圧接により、従来方法より低温でも、従来と同等以上の接合品質を得られることが確認できた。
なお、言うまでもないが、本発明に係る摩擦圧接方法の実施形態は、前述した態様に限定されるものではない。
本発明によれば、鋼などの金属部材同士を接合する場合でも、低温で接合ができ、且つ従来と同等以上の接合品質を得ることができる。そのため、本発明は、精密機械部品の製造などで利用することができる。
1、2 金属部材
3 インサート材

Claims (6)

  1. 一対の金属部材の摩擦圧接方法であって、前記金属部材の対向し接合する面である接合面の間に、前記金属部材の融点(摂氏温度)の60〜80%の融点(摂氏温度)を有する金属からなるインサート材を挟持した状態で摩擦圧接を開始し、前記金属部材の融点のうち低い方の温度未満の温度において、前記インサート材を溶融させ、前記一対の金属部材の間から押し出すことを特徴とする摩擦圧接方法。
  2. 前記インサート材の厚さが10〜500μmであることを特徴とする請求項1に記載の摩擦圧接方法。
  3. 前記インサート材が、少なくとも一方の接合面をカバーすることを特徴とする請求項1または2に記載の摩擦圧接方法。
  4. 圧接時の温度が、前記インサート材の融点(摂氏)より50℃以上高いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属部材の摩擦圧接方法。
  5. 摩擦圧接後に、前記金属部材間に前記インサート材が残留していないことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の金属部材の摩擦圧接方法。
  6. 前記金属部材が鋼であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の金属部材の摩擦圧接方法。
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