JP6248794B2 - 放熱性粘着樹脂組成物、及び、それを成形してなる放熱性粘着シート - Google Patents
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Description
すなわち本発明は、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、平均粒径が0.070〜0.120mmである熱伝導性フィラー(B)、及び、流動パラフィン(C)を含む組成物であって、前記(B)の割合が70〜85質量%であり、前記(C)の割合が1〜10質量%であることを特徴とする放熱性粘着樹脂組成物である。
本発明に係る放熱性粘着樹脂組成物は、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、平均粒径が0.070〜0.120mmである熱伝導性フィラー(B)、及び、流動パラフィン(C)を含有する。
本発明に用いるスチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)中に占めるスチレンの含有量は、10モル%以上、35モル%以下であることが好ましく15モル%以上、30モル%以下であることがより好ましい。スチレンの含有量が10モル%以上であれば十分な熱可塑性が得られ、一方、スチレンの含有量が35モル%以下であれば、熱伝導性フィラーを高充填した場合においても、流動パラフィンとの組み合わせにより十分な自己粘着性が得られる。このように、本発明においては、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)中に占めるスチレンの含有量を10モル%以上、35モル%以下の範囲とすることで、十分な熱可塑性を有し、かつ、優れた自己粘着性を有する樹脂組成物が得られる。
なお、本発明において、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)は、前述のSIBおよびSIBSの少なくとも1つを含むものであることが好ましく、これら2種類以上の混合物であってもよい。中でも、粘着性の点からSIBを含むことが特に好ましい。
なお、分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析にて、Waters社製GPCシステム(カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)、移動相:クロロホルム)を用い、分子量標準物質としてポリスチレンを使用して測定することができる。
本発明に用いる熱伝導性フィラーの平均粒径は0.070mm以上であることが重要である。平均粒径が0.070mm以上であることにより、本発明の樹脂組成物に優れた熱伝導性を付与することができる。かかる観点から、0.080mm以上であることがより好ましく、0.090mm以上であることがさらに好ましい。
一方、上限は、0.120mm以下であることが重要である。平均粒径が0.120mm以下であれば、本発明の樹脂組成物の機械強度を低下させることがない。かかる観点から、0.110mm以下であることがより好ましく、0.105mm以下であることがさらに好ましい。
本発明に用いる流動パラフィン(C)は、常温で液状のパラフィン系炭化水素を含むオリゴマー状重合体である。さらには、パラフィン系炭化水素とアルキルナフテン炭化水素の混合物である。前記流動パラフィンの製造方法は特に限定されないが、一般的には水添法やスルホン化法が採用される。水添法は、触媒の存在下において鉱物油に水素ガスを混合し、鉱物油に含まれる芳香族炭化水素等の不飽和炭化水素を水素と反応させ、飽和炭化水素とする方法である。一方、スルホン化法は鉱物油に無水硫酸を混合し、鉱物油に含まれる芳香族炭化水素等の不飽和炭化水素と反応させて、石油スルホン酸を生成、分離することで飽和炭化水素を回収する方法である。
前記流動パラフィン(C)の具体的な商品としては、エクソンモービル社製クリストール、プライモール、出光興産(株)製ダイアナプロセスオイルなどがあげられる。
なお、本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)以外の樹脂、例えば、ポリオレフィン系やポリスチレン系の熱可塑性エラストマーや、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、抗菌・防かび剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、染料等の添加剤を配合することができる。
スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、平均粒径が0.070〜0.120mmである熱伝導性フィラー(B)、及び、流動パラフィン(C)の混合物中に占める(B)の割合は70質量%以上であることが重要である。前記(B)の割合が70質量%以上であることにより、本発明の樹脂組成物に優れた熱伝導性を付与することができる。かかる観点から、73質量%以上であることがより好ましく75質量%以上であることがさらに好ましい。一方、上限は、85質量%以下であることが重要である。前記(B)の割合が85質量%以下であれば、本発明の樹脂組成物の自己粘着性を低下させるおそれがない。かかる観点から、83質量%以下であることがより好ましく80質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の放熱性粘着シートは、本発明の樹脂組成物を成形することにより得られるものであり、厚み方向の熱伝導率が0.7W/m・K以上であることを特徴とする。また、アルミニウムとの剥離強度が0.1〜0.5N/10mmであることを特徴とする。
本発明の放熱性粘着シートの製造方法としては、公知の方法により成形することが出来る。具体的には、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、流動パラフィン(B)、熱伝導性フィラー(C)、及び、その他添加剤等を混合した後、単軸又は二軸押出機などで溶融した後、口金から押し出すと同時に、保護フィルムを両側から貼り合わせることで、粘着シートが得られる。
本発明の放熱性粘着多層シートは、本発明の放熱性粘着シートを放熱性粘着シート(X)としたとき、その片面に、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、平均粒径が0.070〜0.120mmである熱伝導性フィラー(B)、及び、樹脂(D)との混合物からなるシート(Y)を設けてなり、前記樹脂(D)が、石油樹脂、テルペン樹脂、又は、それらの水素添加誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする。
前記シート(Y)を構成する混合物のうち、前記スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、前記熱電伝導性フィラー(B)については、放熱性粘着シート(X)と同様のもの、すなわち、前述のものを使用することができる。樹脂(D)については、以下に詳述する。
本発明の放熱性粘着多層シートにおいて、前記シート(Y)に用いる樹脂(D)は、石油樹脂、テルペン樹脂、又は、それらの水素添加誘導体から選ばれる少なくとも1種類の樹脂である。上記以外にも、クマロン−インデン樹脂、ロジン系樹脂、又は、それらの水素添加誘導体等を使用することができる。また、必要に応じて上記のうち2種類以上の樹脂を混合して用いてもよい。
前記シート(Y)を構成する組成物中に占める前記熱電伝導性フィラー(B)の割合は70〜85質量%以下であることが好ましく、73〜83質量%であることがより好ましく、75〜80質量%以下であることがさらに好ましい。熱導電性フィラー(B)の配合量がかかる範囲内であれば、自己粘着性を低下させることなく、優れた熱伝導性を付与することができる。
本発明の放熱性粘着多層シートの製造方法としては、公知の方法により成形することが出来る。具体的には、前記放熱性粘着シート(X)と前記シート(Y)を、共押出、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネート等により積層することにより成形することができる。
一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいう(日本工業規格JISK6900)。他方、一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいう。しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本発明において文言上両者を区別する必要がないので、本発明においては、「フィルム」と称する場合でも「シート」を含むものとし、「シート」と称する場合でも「フィルム」を含むものとする。
以下の実施例・比較例で示される種々の測定値、及び、評価は次のようにして行った。ここでフィルムの押出機からの流れ方向を縦方向、その直行方向を横方向と呼ぶ。
本発明の放熱性粘着シート、又は、放熱性粘着多層シートの放熱性(厚み方向の熱伝導率)は、シートの23℃における密度、23℃における比熱、厚み方向の熱拡散率の積によって算出した。
なお、23℃における密度は、Micromeritics社製AccuPycII1340を用い、比重びん法によって測定した。また、23℃における比熱は、パーキンエルマー社製示差走査熱量計DSC−7型を用いて測定した。また、厚み方向の熱拡散率はアルバック理工社製熱定数測定装置TC−9000型を用いて測定した。厚み方向の熱伝導率は0.7W/m・K以上を合格とした。
本発明の放熱性粘着シート、又は、放熱性粘着多層シートと、厚さ0.1mmのアルミニウムシートとを、23℃、1kg荷重で貼り合わせた後、長さ15mm、幅10mmの短冊状試験片を切り出した。次に、インテスコ社製恒温槽付き材料試験器201Xを用いて、放熱性粘着シートとアルミニウム間の剥離強度を測定した。測定方法は、T型剥離試験により測定を行なった(JISK6854−3 1999)。評価用サンプル10mm幅のものを使用し、雰囲気温度23℃、剥離速度200mm/分でT型剥離試験を実施した。剥離強度は0.1〜0.5N/10mmの範囲内にあるものを合格とした。
(スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A))
(A)−1:カネカ(株)製SIBSTAR062M(SIB/SIBS、スチレン含有量:23質量%)
(A)−2:カネカ(株)製SIBSTAR102T(SIBS、スチレン含有量:15質量%)
(B)−1:宇部マテリアルズ(株)製RF−70C−SC(ビニルシランカップリング処理酸化マグネシウム、平均粒径:0.094mm)
(B)−2:電気化学工業(株)製DAM−70(アルミナ、平均粒径:0.071mm)
(C)−1:ナカライテスク(株)製流動パラフィン
(D)−1:荒川化学(株)製アルコンP125(水素添加石油樹脂、軟化温度:125℃)
(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比24:70:6の割合でドライブレンドした後、φ40mm同方向二軸押出機を用いて200℃で混練した後、T型ダイよりシート状に押し出すと同時に、保護フィルムとして三菱樹脂(株)製ダイヤホイルMRF−100(シリコーンコーティング二軸延伸PETフィルム、厚み:0.1mm)両側から貼り合わせることにより、厚み1mmの粘着性シートを得た。得られたシートについて放熱性、自己粘着性の評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比20:75:5とした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比16:80:4とした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1、(B)−2、及び、(C)−1を、混合質量比16:80:4でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−2、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比16:80:4でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
流動パラフィンを添加せず、(A)−1、及び、(B)−1を、混合質量比20:80でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)の代わりに、旭化成ケミカルズ(株)製タフテックH1041(スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体、スチレン含有量:30質量%、以下(J)−1と略す)を用い、(J)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比16:80:4でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
熱伝導性フィラーとして、RF−98(未処理酸化マグネシウム、平均粒径:61μm、以下(K)−1と略す)を用い、(A)−1、(K)−1、及び、(C)−1を、混合質量比20:75:5でドライブレンドした後、実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を、混合質量比32:60:8とした以外は実施例1と同様の方法でシートの作製、評価を行った。結果を表1に示す。
放熱性粘着シート(X)として、(A)−1、(B)−1、及び、(C)−1を混合質量比16:80:4の割合でドライブレンドしたものと、シート(Y)として、(A)−1、(B)−1、及び、(D)−1を混合質量比10:80:10の割合でドライブレンドしたものとを、それぞれφ40mm同方向二軸押出機に供給し、各押出機において200℃で混練した後、2種2層のマルチマニホールド式の口金より2層構成になるように押出した。この時、放熱性粘着シート(X)とシート(Y)の厚み比が(X):(Y)=7:3となるように溶融樹脂の吐出量を調整した。この多層シートがT型ダイより押し出されると同時に保護フィルムとして三菱樹脂(株)製ダイヤホイルMRF−100を両側から貼り合わせることにより、厚み1mmの放熱性粘着多層シートを得た。得られたシート(Y)側には自己粘着性がなく、放熱性粘着シート(X)側の剥離強度は実施例3と同様で0.23N/10mmであった。また、厚み方向の熱伝導率は1.27W/m・Kであった。
これに対し、流動パラフィン(C)を含まない場合や(比較例1)、(A)成分であるスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体の代わりに、スチレン−エチレン−ブテン−スチレンブロック共重合体を用いた場合(比較例2)には、所望の剥離強度を得ることができなかった。また、平均粒径が規定値を満たさない熱伝導性フィラーを用いた場合(比較例3)には、所望の熱伝導率(放熱性)を得ることができなかった。さらに、熱伝導性フィラー(B)の含有量が規定値を満たさない場合(比較例4)には、熱伝導率(放熱性)、剥離強度ともに所望の値を得ることができなかった。
Claims (5)
- スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、平均粒径が0.070〜0.120mmである熱伝導性フィラー(B)、及び、流動パラフィン(C)を含む組成物であって、前記(B)の割合が70〜85質量%であり、前記(C)の割合が1〜10質量%であることを特徴とする放熱性粘着樹脂組成物。
- 前記スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)中に占めるスチレンの割合が10〜35モル%であることを特徴とする請求項1に記載の放熱性粘着樹脂組成物。
- 請求項1又は2に記載の放熱性粘着樹脂組成物を成形してなり、かつ、厚み方向の熱伝導率が0.7W/m・K以上であることを特徴とする放熱性粘着シート。
- 請求項1又は2に記載の放熱性粘着樹脂組成物を成形してなり、かつ、アルミニウムとの剥離強度が0.1〜0.5N/10mmであることを特徴とする放熱性粘着シート。
- 請求項3又は4に記載の放熱性粘着シート(X)の片面に、スチレン及びイソブチレンからなる共重合体(A)、平均粒径が0.070〜0.120mmである熱伝導性フィラー(B)及び樹脂(D)との混合物からなるシート(Y)を設けてなり、前記樹脂(D)が、石油樹脂、テルペン樹脂、又は、それらの水素添加誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする放熱性粘着多層シート。
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