JP6245519B2 - 全固体リチウム二次電池用正極及びそれを用いた全固体リチウム二次電池 - Google Patents
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Li2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子と、
リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と、
前記硫化物系固体電解質の粒子と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との間に設けられ、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に接しているSiO2膜と、
を備え、
前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面を横切る方向に沿って、透過型電子顕微鏡を用いて前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面近傍の複数の位置でエネルギー分散型X線分光分析を行い、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の領域において得られる遷移金属M(MはMn、Ni、Co又はFe)のKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値を前記遷移金属Mのシグナル強度と定義し、前記SiO2膜の領域において得られるSiのKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値をSiのシグナル強度と定義したとき、
前記遷移金属Mのシグナル強度の平均値である平均シグナル強度Imに対するSiのシグナル強度の最大値である最大シグナル強度Isの比率(Is/Im)が0.2以上である、全固体リチウム二次電池用正極を提供する。
Li2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子と、
リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と、
前記硫化物系固体電解質の粒子と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との間に設けられ、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に接しているSiO2膜と、
を備え、
前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面を横切る方向に沿って、透過型電子顕微鏡を用いて前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面近傍の複数の位置でエネルギー分散型X線分光分析を行い、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の領域において得られる遷移金属M(MはMn、Ni、Co又はFe)のKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値を前記遷移金属Mのシグナル強度と定義し、前記SiO2膜の領域において得られるSiのKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値をSiのシグナル強度と定義したとき、
前記遷移金属Mのシグナル強度の平均値である平均シグナル強度Imに対するSiのシグナル強度の最大値である最大シグナル強度Isの比率(Is/Im)が0.2以上である、全固体リチウム二次電池用正極を提供する。
第1〜第4態様のいずれか1つの正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された硫化物系固体電解質と、
を備えた、全固体リチウム二次電池を提供する。
リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面上にSiO2膜を形成する工程と、
前記SiO2膜を有する前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と硫化物系固体電解質の粒子とを混合する工程と、
を含み、
前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面を横切る方向に沿って、透過型電子顕微鏡を用いて前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面近傍の複数の位置でエネルギー分散型X線分光分析を行い、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の領域において得られる遷移金属M(MはMn、Ni、Co又はFe)のKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値を前記遷移金属Mのシグナル強度と定義し、前記SiO2膜の領域において得られるSiのKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値をSiのシグナル強度と定義したとき、
前記遷移金属Mのシグナル強度の平均値である平均シグナル強度Imに対するSiのシグナル強度の最大値である最大シグナル強度Isの比率(Is/Im)が0.2以上である、全固体リチウム二次電池用正極の製造方法を提供する。
Li2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子と、
リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と、
前記硫化物系固体電解質の粒子と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との間に設けられ、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に接しているSiO2膜と、
を備え、
前記SiO2膜は、パーヒドロポリシラザンを用いて形成されている、全固体リチウム二次電池用正極を提供する。
工程1.リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面上にSiO2膜を形成する工程
工程2.Li2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子を調製する工程
工程3.正極合剤を調製する工程
工程4.全固体リチウム二次電池を作製する工程
工程5.全固体リチウム二次電池の初期特性を評価する工程
まず、BET法によって比表面積を予め測定した所定量のリチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面上にSiO2膜(SiO2層)を形成するためのパーヒドロポリシラザン溶液(コート剤)を調製する。すなわち、SiO2膜の原料としてパーヒドロポリシラザンを用いる。パーヒドロポリシラザンを使用することによって、緻密なSiO2膜を形成できる。緻密なSiO2膜は、全固体リチウム二次電池の特性を改善するのに適している。
硫化リチウム(Li2S)の粒子と五硫化ニリン(P2S5)の粒子とを80:20〜70:30の重量比で混合し、遊星型ボールミルを用いたメカニカルミリング法でLi2Sを含む硫化物系固体電解質を合成する。ただし、これらの粒子の混合比率は特に限定されない。メカニカルミリング法は、200〜600rpm、5〜24時間の条件で行うことができる。これにより、Li2S−P2S5ガラス固体電解質の粒子が得られる。メカニカルミリング後、不活性雰囲気下、200〜300℃、1〜10時間の条件でLi2S−P2S5ガラス固体電解質の粒子をアニールする。これにより、Li2S−P2S5ガラスセラミックス固体電解質の粒子が得られる。
工程1.で調製したSiO2膜で被覆されたリチウム含有遷移金属酸化物の粒子と、工程2.で調製したLi2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子とをそれぞれ所定量秤量し、十分に混合する。これにより、正極合剤が得られる。混合比率は特に限定されない。一例において、重量比にて、リチウム含有遷移金属酸化物:固体電解質=5:5〜9:1である。
図1に示すように、絶縁管3に下ダイ1を挿入する。絶縁管3の中にLi2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子を入れる。絶縁管3に上ダイ2を挿入し、硫化物系固体電解質の粒子を加圧して固体電解質層102を形成する。上ダイ2を外し、絶縁管3の中に正極合剤を入れる。絶縁管3に上ダイ2を再度挿入し、正極合剤を加圧して固体電解質層102の上に正極合剤層101を形成する。正極合剤層101を形成するときに正極合剤に加える圧力は、固体電解質層102を形成するときに固体電解質に加える圧力よりも高いことが望ましい。例えば、固体電解質層102を形成するときは0.2〜5MPa、正極合剤層101を形成するときは5〜50MPaの圧力を加えることによって各層を形成することが望ましい。
工程4.で作製した全固体リチウム二次電池の初期の充放電特性を定電流充放電によって評価できる。例えば、正極合剤層における正極活物質(リチウム含有遷移金属酸化物)の重量から算出した理論容量の0.05Cに相当する電流値で充放電を行う。充電及び放電終止電圧は、それぞれ、3.6V及び2.4Vでありうる。放電電気量を充電電気量で割ることによって充放電効率(%)を算出できる。
25μLの20%パーヒドロポリシラザン−キシレン溶液(AZマテリアルズ社製、NP110−20)を1mLの超脱水キシレン(和光純薬工業社製)で希釈した。得られた溶液に2gのコバルト酸リチウム(LiCoO2)の粒子を攪拌しながら加えた。LiCoO2粒子のBET比表面積は0.35m2/gであった。LiCoO2粒子が乾燥したことを目視で確認できるまで、60℃のホットプレート上で溶液を攪拌しながら加熱して液体成分を蒸発させた。得られた粒子をメノウ乳鉢に入れ、粒子の塊を砕いてほぐした。以上の操作は、露点−60℃のドライエア雰囲気下で行った。次に、パーヒドロポリシラザンをSiO2に転化させるための処理を行った。具体的には、パーヒドロポリシラザンの被膜を有するLiCoO2粒子を大気雰囲気下、150℃、1時間の条件で熱処理した。得られた粒子の塊を再度砕いてほぐした。これにより、SiO2膜で被覆されたLiCoO2粒子を得た。
薄片化:FIB(Focused Ion Beam:集束イオンビーム)法
EDS(Energy dispersive X-ray spectrometry:エネルギー分散型X線分析)法
加速電圧:200kV
(測定装置)
FIB:日立製作所社製FB2000A
TEM/STEM:日立製作所社製HF-2200
EDS:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製NORAN System Seven
(特性X線)
SiとCoの特性X線の種類とその波長(eV)
Si-Kα:1.739 keV
Si-Kβ:1.836 keV
Co-Kα:8.040 keV
Co-Kβ:7.648 keV
0.8gの硫化リチウム(Li2S)と0.2gの五硫化二リン(P2S5)とを遊星型ボールミル(Fritsch社製、P−7型)用ジルコニアポット(内容積45mL)に入れ、510rpm、8時間の条件でミリングを行った。ミリングによって得られた粒子を不活性雰囲気下、270℃、2時間の条件でアニールした。これにより、固体電解質の粒子を得た。得られた固体電解質の粒子のリチウムイオン伝導度は、8×10-4S/cmであった。
パーヒドロポリシラザンを用いて形成されたSiO2膜を有するLiCoO2粒子(正極活物質)と、固体電解質の粒子とをメノウ乳鉢で十分に混合し、正極合剤を得た。正極活物質と固体電解質との重量比は6:4であった。
80mgの固体電解質の粒子をセル容器に入れ、2MPaの圧力を加えることで固体電解質の粒子を予備成形し、固体電解質層を得た。固体電解質層を覆うように10mgの正極合剤の粒子をセル容器に入れ、18MPaの圧力を加えることで正極合剤の粒子を成形し、正極合剤層を得た。その後、固体電解質層を挟んで正極合剤層と対向する側に金属インジウム箔(直径10mm、厚さ200μm)を配置し、2MPaの圧力を正極合剤層、固体電解質層及び金属インジウム箔に加えて、これらを一体化させた。このようにして、実施例1の全固体リチウム二次電池を得た。
全固体リチウム二次電池の初期特性を以下の方法で調べた。41μA(0.05C相当)の定電流で3.6Vまで全固体リチウム二次電池を充電し、20分間の休止の後、41μAの定電流で2.4Vまで全固体リチウム二次電池を放電させた。実施例1の全固体リチウム二次電池の充電電気量は110mAh/g、放電電気量は89mAh/g、充放電効率は80.5%であった。
SiO2膜の厚さを変えるために、パーヒドロポリシラザンの添加量を50μLに変更したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例2のLiCoO2粒子を調製した。実施例2のLiCoO2粒子において、SiO2膜の厚さは9nmであった。Si/Coシグナル強度比は0.28であった。その後、実施例1と同じ方法で実施例2の全固体リチウム二次電池を作製した。実施例2の全固体リチウム二次電池の充電電気量は106mAh/g、放電電気量は84mAh/g、充放電効率は79.2%であった。
SiO2膜の厚さを変えるために、パーヒドロポリシラザンの添加量を100μLに変更したことを除き、実施例1と同じ方法で実施例3のLiCoO2粒子を調製した。実施例3のLiCoO2粒子において、SiO2膜の厚さは18nmであった。Si/Coシグナル強度比は0.27であった。その後、実施例1と同じ方法で実施例3の全固体リチウム二次電池を作製した。実施例3の全固体リチウム二次電池の充電電気量は103mAh/g、放電電気量は80mAh/g、充放電効率は78.1%であった。
SiO2膜を有さないLiCoO2粒子を正極合剤として用い、実施例1と同じ方法で比較例1の全固体リチウム二次電池を作製した。比較例1の全固体リチウム二次電池の充電電気量は89mAh/g、放電電気量は61mAh/g、充放電効率は68.0%であった。
パーヒドロポリシラザンに代えて、テトラエトキシシランを用いたゾルゲル法によってLiCoO2粒子の表面上にSiO2膜を形成した。テトラエトキシシランを用いてSiO2膜を形成する方法を以下に示す。
SiO2膜の厚さを変えるために、テトラエトキシシランの添加量を37μLに変更したことを除き、比較例2と同じ方法で比較例3のLiCoO2粒子を調製した。比較例3のLiCoO2粒子において、SiO2膜の厚さは7nmであった。Si/Coシグナル強度比は0.09であった。その後、実施例1と同じ方法で比較例3の全固体リチウム二次電池を作製した。比較例3の全固体リチウム二次電池の充電電気量は110mAh/g、放電電気量は76mAh/g、充放電効率は68.9%であった。
SiO2膜の厚さを変えるために、テトラエトキシシランの添加量を80μLに変更したことを除き、比較例2と同じ方法で比較例4のLiCoO2粒子を調製した。比較例4のLiCoO2粒子において、SiO2膜の厚さは15nmであった。Si/Coシグナル強度比は0.07であった。その後、実施例1と同じ方法で比較例4の全固体リチウム二次電池を作製した。比較例4の全固体リチウム二次電池の充電電気量は108mAh/g、放電電気量は74mAh/g、充放電効率は68.9%であった。
2 上ダイ
3 絶縁管
4 絶縁チューブ
5 ボルト
6 ナット
10 発電要素
101 正極合剤層
102 固体電解質層
103 負極層
104 固体電解質の粒子
105 SiO2膜
106 リチウム含有遷移金属酸化物の粒子
Claims (12)
- Li2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子と、
リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と、
前記硫化物系固体電解質の粒子と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との間に設けられ、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に接しているSiO2膜と、
を備え、
前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面を横切る方向に沿って、透過型電子顕微鏡を用いて前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面近傍の複数の位置でエネルギー分散型X線分光分析を行い、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の領域において得られる遷移金属M(MはMn、Ni、Co又はFe)のKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値を前記遷移金属Mのシグナル強度と定義し、前記SiO2膜の領域において得られるSiのKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値をSiのシグナル強度と定義したとき、
前記遷移金属Mのシグナル強度の平均値である平均シグナル強度Imに対するSiのシグナル強度の最大値である最大シグナル強度Isの比率(Is/Im)が0.2以上である、全固体リチウム二次電池用正極。 - 前記SiO2膜は、パーヒドロポリシラザンを用いて形成されている、請求項1に記載の全固体リチウム二次電池用正極。
- 前記SiO2膜の厚さが18nm以下である、請求項1又は2に記載の全固体リチウム二次電池用正極。
- 前記比率(Is/Im)が0.27以上である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の全固体リチウム二次電池用正極。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間に配置された硫化物系固体電解質と、
を備えた、全固体リチウム二次電池。 - リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面上にSiO2膜を形成する工程と、
前記SiO2膜を有する前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と硫化物系固体電解質の粒子とを混合する工程と、
を含み、
前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面を横切る方向に沿って、透過型電子顕微鏡を用いて前記SiO2膜と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との界面近傍の複数の位置でエネルギー分散型X線分光分析を行い、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の領域において得られる遷移金属M(MはMn、Ni、Co又はFe)のKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値を前記遷移金属Mのシグナル強度と定義し、前記SiO2膜の領域において得られるSiのKα線のシグナル強度とKβ線のシグナル強度との合計値をSiのシグナル強度と定義したとき、
前記遷移金属Mのシグナル強度の平均値である平均シグナル強度Imに対するSiのシグナル強度の最大値である最大シグナル強度Isの比率(Is/Im)が0.2以上である、全固体リチウム二次電池用正極の製造方法。 - 前記SiO2膜を形成する工程において、前記SiO2膜の原料としてパーヒドロポリシラザンを用いる、請求項6に記載の全固体リチウム二次電池用正極の製造方法。
- 前記SiO2膜を形成する工程は、
前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面にパーヒドロポリシラザンを付着させる工程と、
熱処理を行うことによって、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面上で前記パーヒドロポリシラザンをSiO2に転化させる工程と、
を含む、請求項6又は7に記載の全固体リチウム二次電池用正極の製造方法。 - 前記SiO2膜の厚さが18nm以下である、請求項6〜8のいずれか1項に記載の全固体リチウム二次電池用正極の製造方法。
- 前記比率(Is/Im)が0.27以上である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の全固体リチウム二次電池用正極の製造方法。
- Li2Sを含む硫化物系固体電解質の粒子と、
リチウム含有遷移金属酸化物の粒子と、
前記硫化物系固体電解質の粒子と前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子との間に設けられ、前記リチウム含有遷移金属酸化物の粒子の表面に接しているSiO2膜と、
を備え、
前記SiO2膜は、パーヒドロポリシラザンを用いて形成されている、全固体リチウム二次電池用正極。 - 前記SiO2膜の厚さが18nm以下である、請求項11に記載の全固体リチウム二次電池用正極。
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