以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明が好適に適用された車両の動力伝達装置10の構成を説明するための骨子図である。図1において、上記動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、その入力軸14と後輪(駆動輪)16との間の動力伝達経路においてその入力軸14に連結された差動部18と、その差動部18と駆動輪である後輪16との間の動力伝達経路において差動部18に連結された出力軸20とを、備えている。この動力伝達装置10は、FR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14には、走行用の駆動力源としての例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン22が直接に或いは脈動吸収ダンパ24を介して直接的に連結されている。また、エンジン22の動力は、差動部18等を介して、さらに動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置26および一対の車軸28を順次介して左右一対の駆動輪16へ伝達される。なお、上記差動部18は、動力伝達機構の一例である。
上記差動部18は、入力軸14に入力されたエンジン22の出力を機械的に分配する遊星歯車装置から成る機械的機構であってエンジン22の出力を第1電動機MG1および出力軸20に分配する差動機構としての動力分配機構30と、その動力分配機構30に動力伝達可能に連結された第1電動機MG1と、出力軸20と一体的に回転するように設けられている第2電動機MG2とを備えている。
上記動力分配機構30は、エンジン22と駆動輪16との間に連結された差動機構であって、サンギヤS0、遊星歯車P0、その遊星歯車P0を自転および公転可能に支持するキャリヤCA0、遊星歯車P0を介してサンギヤS0と噛み合うリングギヤR0を回転要素として備える遊星歯車装置で構成される。この動力分配機構30においては、キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン22に連結され、サンギヤS0は第1電動機MG1に連結され、リングギヤR0は第2電動機MG2に連結されている。
図1に示すように、車両には、常用ブレーキとして良く知られた所謂ディスクブレーキである車輪の制動装置32が備えられている。上記制動装置32は、車軸28、34に固定されて前輪36および後輪16のそれぞれの車輪と共に回転するディスク38と、車体に連結されたサスペンションを構成する部材等に配設され、ブレーキペダル40の操作量に応じてマスターシリンダー42等からブレーキ油圧が供給されることによりブレーキパッド(摩擦材)を介してディスク38を挟圧するキャリパ44とを備えるホイールブレーキ(油圧ブレーキ)46と、ブレーキアクチュエータ(車輪制動制御装置)48等とを有して構成されている。上記ブレーキアクチュエータ48は、例えば、ブレーキ油圧の元圧を発生させる油圧ポンプやアキュムレータ、および各車輪に備えられるホイールブレーキ46のブレーキ油圧を調圧する複数個のソレノイドバルブ50等を備え、後述する電子制御装置52(図4参照)からの指令に従って各車輪のキャリパ44へブレーキ油圧を供給するとともにその供給されるブレーキ油圧を調圧制御するものである。
図1に示すように、出力軸20には、パーキングロック機構54を構成するパーキングギヤ56が設けられている。上記パーキングロック機構54は、たとえば、図2に詳しく示すように、駆動輪16に連結されている出力軸20に固定されたパーキングギヤ56と、そのパーキングギヤ56と噛み合う噛合位置へ第1軸心C1回りに回動可能に設けられて選択的にパーキングギヤ56の第2軸心C2回りの回転をロックするパーキングポール58と、そのパーキングポール58の先端部と当接する円錐状のテーパカム60aに挿し通されてそのテーパカム60aを一端部において支持する長手状のパーキングロッド60と、そのパーキングロッド60に設けられてテーパカム60aをその小径方向に付勢する図示しないスプリングと、パーキングロッド60の他端部に第3軸心C3回りに回動可能に接続されて節度機構により少なくともパーキングロック位置およびパーキングアンロック位置に位置決めされるディテントプレート62と、そのディテントプレート62に固設されて第3軸心C3回りに回転可能に支持された軸状のシャフト64と、そのシャフト64を第3軸心C3回りに回動駆動させるモータアクチュエータ66と、シャフト64の第3軸心C3回りの回動角度を検出するロータリエンコーダ68と、ディテントプレート62の第3軸心C3回りの回動に節度を与えて各シフト位置に固定するディテントスプリング70およびその先端部に設けられた係合部70aとを、備えている。
図3は、パーキングロック機構54がロック状態にある場合を示す図である。図3に示すように、パーキングロック機構54がロック状態である場合、パーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされ、パーキングギヤ56の第2軸心C2回りの回転が阻止すなわち差動部18の出力軸20が回転不可能なロック状態にされる。また、図2は、パーキングロック機構54がアンロック状態にある場合を示す図である。図2に示すように、パーキングロック機構54がアンロック状態である場合、パーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わず、パーキングギヤ56の第2軸心C2回りの回転が許容すなわち差動部18の出力軸20が回転可能なアンロック状態にされる。
パーキングロック機構54では、モータアクチュエータ66によって、シャフト64が第3軸心C3回り矢印A1方向に回動させられるとすなわちシャフト64に固定されたディテントプレート62がパーキングロック位置に回動させられると、パーキングロッド60のテーパカム60aが第1軸心C1方向においてシャフト64から離間する方向に移動させられて、そのテーパカム60aがパーキングポール58の先端部に当接し、そのパーキングポール58が第1軸心C1回り矢印A2方向(図3参照)に付勢部材71の付勢力に抗して回動する。また、パーキングロック機構54では、モータアクチュエータ66によって、シャフト64が第3軸心C3回り矢印A1方向とは反対方向に回動させられるとすなわちシャフト64に固定されディテントプレート62がパーキングアンロック位置に回動させられると、パーキングロッド60のテーパカム60aが第1軸心C1方向においてシャフト64に接近する方向に移動させられて、付勢部材71の付勢力によってパーキングポール58が第1軸心C1回り矢印A2方向とは反対方向に回動する。
以上のように構成されたパーキングロック機構54では、パーキングロック操作に応じて電子制御装置52からパーキングロック指令が出力されると、モータアクチュエータ66によって、シャフト64が第3軸心C3回り矢印A1方向に所定角度回動させられて、パーキングロックポール58とパーキングギヤ56とが噛み合うロック状態に切り替えられる。また、パーキングロック機構54では、上記ロック状態において、パーキングアンロック操作に応じて電子制御装置52からパーキングアンロック指令が出力されると、モータアクチュエータ66によって、シャフト64が第3軸心C3回り矢印A1方向とは反対方向に所定角度回動させられて、パーキングポール58とパーキングギヤ56との噛み合いが解放されるアンロック状態に切り替えられる。なお、上記パーキングロック機構54は、シフト・バイ・ワイヤー(Shift by Wire)式のパーキングロック機構である。
図4は、本実施例の車両の動力伝達装置10を制御するための制御装置である電子制御装置52による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。上記電子制御装置52は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン22、第1電動機MG1、および第2電動機MG2に関するハイブリッド駆動制御、車両状態に応じて制動装置32を作動させる制動制御、パーキングロック機構54をロック状態に切り替える切替制御等を実行するためのものである。
上記電子制御装置52には、例えば、パーキングロック機構54を作動すなわちモータアクチュエータ66を作動させるパーキングスイッチ(Pスイッチ)72からのパーキングロック信号と、外気温センサ(温度検出装置)74により検出される、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)を推定するそのモータアクチュエータ66の環境温度T(℃)例えば外気温T(℃)を表す信号等とが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置52からは、例えば、パーキングロック機構54をロック状態へ切り替えるモータアクチュエータ66への作動指令信号、ブレーキアクチュエータ48に備えられている、ホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbを制御するソレノイドバルブ50への指令信号等が、それぞれ出力される。なお、上記電子制御装置52は、パーキングロック操作に応じて、車両状態によってブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50とモータアクチュエータ66とを制御して、パーキングロック機構54をロック状態に切り替える車両用パーキングロック機構制御装置として機能する。
図4において、パーキングロック判定部76は、例えば運転者によってパーキングロック操作が実行されたか否かを判定する。すなわち、パーキングロック判定部76は、例えば運転者によってパーキングスイッチ72が操作され、そのパーキングスイッチ72からのパーキングロック信号に基づいて、パーキングロック操作が実行されたか否かを判定する。
アクチュエータ温度推定部78は、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度(所定値)TA1(℃)未満であるか否かを推定する。すなわち、アクチュエータ温度推定部78は、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)に関連するそのモータアクチュエータ66の環境温度T(℃)例えば外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満であるか否かを判定する。なお、アクチュエータ温度推定部78では、外気温センサ74から検出された外気温T(℃)がモータアクチュエータ66の温度TA(℃)として推定される。また、上記所定外気温T1は、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)より高く、パーキングスイッチ72が操作されてからのモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間(sec)すなわちパーキングスイッチ72が操作されてからパーキングロック機構54においてパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合ってロック状態が完了するまでの応答時間(sec)が比較的に短くなる、モータアクチュエータ66の作動応答性が向上する実験的に予め設定された温度である。
また、アクチュエータ温度推定部78において、所定外気温T1(℃)は、例えば、外気温T(℃)に対してパーキングスイッチ72が操作されてからパーキングロック機構54がロック状態になるまでの応答時間(sec)の関係を示す図5を参考にして求めている。なお、後述するパーキングロック切替制御部80では、外気温センサ74によって検出される外気温T(℃)によって、ホイールブレーキ46を作動させた状態でパーキングギヤ56にパーキングポール58を噛み合わせたり、ホイールブレーキ46を作動させないでパーキングギヤ56にパーキングポール58を噛み合わせたりしているが、本実施例では、パーキングロック機構54において、ホイールブレーキ46の作動頻度が好適に低減され、且つパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合った際に発生する衝撃荷重が好適に低減されるように、所定外気温T1(℃)が例えば0℃に設定されている。
パーキングロック切替制御部80は、パーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され、且つアクチュエータ温度推定部78で外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満でありモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であると推定されると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbを車輪の回転が制限される程度に高めて、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66を作動する。なお、パーキングロック切替制御部80では、モータアクチュエータ66が作動することによってパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbが略零に低減させられる。
また、パーキングロック切替制御部80は、パーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され、且つアクチュエータ温度推定部78で外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満ではなくモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満でないと推定されると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46を作動させずに、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66を作動する。なお、パーキングロック切替制御部80では、モータアクチュエータ66が作動することによってパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられる。
図6は、電子制御装置52すなわち車両用パーキングロック機構制御装置において、例えば運転者のパーキングロック操作に応じて動力伝達機構である差動部18の出力軸20を回転不可能なロック状態に切り替える切替制御の一例を説明するフローチャートである。
図6のフローチャートに示すように、先ず、パーキングロック判定部76に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、例えば運転者によってパーキングロック操作が実行されたか否かすなわち運転者によってパーキングスイッチ72が操作されP(パーキング)レンジ切替指令があった否かが判定される。このS1の判定が否定される場合には再度上記S1が実行されるが、このS1の判定が肯定される場合にはアクチュエータ温度推定部78に対応するS2が実行される。
上記S2では、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であるか否かが推定すなわちモータアクチュエータ66の温度TA(℃)に関連する外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満であるか否かが判定される。このS2の判定が肯定される場合すなわち上記S1でパーキングロック操作が実行され且つモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であると推測される場合にはパーキングロック切替制御部80に対応するS3が実行されるが、このS2の判定が否定される場合すなわち上記S1でパーキングロック操作が実行され且つモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)以上であると推測される場合にはパーキングロック切替制御部80に対応するS4が実行される。
上記S3では、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbが車輪の回転が制限される程度に高められる。次に、上記S4では、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66が作動され、パーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられる。
上述のように、電子制御装置52である車両用パーキングロック機構制御装置では、上記S2において外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満の時、つまりパーキングロック操作の開始からモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間すなわちパーキングロック操作の開始からパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態が完了するまでの応答時間が比較的長くなってパーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時に比較的大きな衝撃荷重が入力される時には、上記S3でホイールブレーキ46が作動されるので、パーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時の衝撃荷重が好適に低減される。また、上記S2において外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)以上の時、つまりパーキングロック操作の開始からモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間すなわちパーキングロック操作の開始からパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態が完了するまでの応答時間が比較的短くなってパーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時に比較的大きな衝撃荷重が入力されない時には、上記S3が実行されないすなわちホイールブレーキ46が作動されないので、そのホイールブレーキ46の作動頻度を好適に低減させることができる。
上述のように、本実施例の電子制御装置52によれば、パーキングロック操作を検出し、且つモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であると推測すなわち外気温センサ74によって検出された外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満である場合には、ブレーキアクチュエータ48によりホイールブレーキ46を作動させてモータアクチュエータ66を作動させる。このため、パーキングロック操作からモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間が比較的長くなりパーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時に比較的大きな衝撃荷重が入力される、外気温センサ74によって検出された外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満の時には、ブレーキアクチュエータ48によってホイールブレーキ46が作動されるので、パーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時の衝撃荷重が低減されて車両の揺動が好適に抑制される。また、パーキングロック操作を検出し、且つモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)以上であると推測すなわち外気温センサ74によって検出された外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)以上である場合には、ホイールブレーキ46を作動させずにモータアクチュエータ66を作動させる。このため、パーキングロック操作からモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間が比較的短くなりパーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時に比較的大きな衝撃荷重が入力されない、外気温センサ74によって検出された外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)以上の時には、ホイールブレーキ46が作動されないので、そのホイールブレーキ46の作動頻度を好適に低減させることができる。これによって、パーキングギヤ56とパーキングポール58との係合に起因する車両の揺動を抑制し、且つ従来に比較してホイールブレーキ46の作動頻度を低減することができる。
また、本実施例の電子制御装置52によれば、外気温センサ74は、外気温T(℃)を検出することによってモータアクチュエータ66の温度TA(℃)を推定するものである。このため、例えばモータアクチュエータ66の温度TA(℃)を直接検出する温度検出装置以外でも使用することができる。
続いて、本発明の他の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。以下の説明において、実施例相互に共通する部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
本実施例の電子制御装置82である車両用パーキングロック機構制御装置は、図7に示すように、車体傾斜センサ84により検出される路面の勾配θを示す路面勾配信号が電子制御装置82に供給される点、その電子制御装置82の制御機能が電子制御装置52の制御機能と一部異なる点で相違しており、その他の点は前述の電子制御装置52と略同様である。
図7において、坂路判定部86は、車両の停車位置が坂路であるか否かを判定する。すなわち、坂路判定部86は、車体傾斜センサ84により検出される路面の勾配θが所定値θ1以上であるか否かによって、車両の停車位置が坂路であるか否かを判定する。
パーキングロック切替制御部88は、パーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され、且つ坂路判定部86で車両の停車位置が坂路であると判定され、且つアクチュエータ温度推定部78で外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満でありモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であると推定されると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbを車輪の回転が制限される程度に高めて、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66を作動する。なお、パーキングロック切替制御部88では、モータアクチュエータ66が作動することによってパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbを略零に低減させる。
また、パーキングロック切替制御部88は、パーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され且つ坂路判定部86で車両の停車位置が坂路ではないと判定されると、或いはパーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され且つ坂路判定部86で車両の停車位置が坂路であると判定され且つアクチュエータ温度推定部78で外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満ではなくモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満でないと推定されると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46を作動させずに、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66を作動する。なお、パーキングロック切替制御部88では、モータアクチュエータ66が作動することによってパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられる。
図8は、電子制御装置82すなわち車両用パーキングロック機構制御装置において、例えば運転者のパーキングロック操作に応じて動力伝達機構である差動部18の出力軸20を回転不可能なロック状態に切り替える切替制御の一例を説明するフローチャートである。
図8のフローチャートに示すように、先ず、パーキングロック判定部76に対応するS11において、例えば運転者によってパーキングロック操作が実行されたか否かすなわち運転者によってパーキングスイッチ72が操作されP(パーキング)レンジ切替指令があった否かが判定される。このS11の判定が否定される場合には再度上記S11が実行されるが、このS11の判定が肯定される場合には坂路判定部86に対応するS12が実行される。
上記S12では、車両の停車位置が坂路であるか否かが判定される。このS12の判定が肯定される場合にはアクチュエータ温度推定部78に対応するS13が実行されるが、このS12の判定が否定される場合にはパーキングロック切替制御部88に対応するS15が実行される。上記S15では、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66が作動され、パーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられる。
上記S13では、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であるか否かが推定すなわちモータアクチュエータ66の温度TA(℃)に関連する外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満であるか否かが判定される。このS13の判定が否定される場合には上記S15が実行されるが、このS13の判定が肯定される場合には、パーキングロック切替制御部88に対応するS14が実行される。上記S14では、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbが車輪の回転が制限される程度に高められる。
上述のように、電子制御装置82である車両用パーキングロック機構制御装置では、上記S12において車両の停車位置が坂路ではない時、つまりパーキングロック操作の開始からモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間すなわちパーキングロック操作の開始からパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態が完了するまでの応答時間が比較的長くても短くても車輪が殆ど回転せずにパーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時に比較的大きな衝撃荷重が入力されない時には、上記S14が実行されないすなわちホイールブレーキ46が作動されないので、そのホイールブレーキ46の作動頻度を好適に低減させることができる。
本実施例の電子制御装置90である車両用パーキングロック機構制御装置は、図9に示すように、パーキングブレーキセンサ92により検出される、各車輪に設けられた例えばドラムブレーキ式パーキングブレーキのON、OFF信号が電子制御装置90に供給される点、その電子制御装置90の制御機能が電子制御装置52の制御機能と一部異なる点で相違しており、その他の点は前述の電子制御装置52と略同様である。
図9において、パーキングブレーキ作動判定部94は、パーキングブレーキが作動していないか否かを、パーキングブレーキセンサ92により検出されるON、OFF信号によって判定する。
パーキングロック切替制御部96は、パーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され、且つパーキングブレーキ作動判定部94でパーキングブレーキが作動していないと判定され、且つアクチュエータ温度推定部78で外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満でありモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であると推定されると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbを車輪の回転が制限される程度に高めて、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66を作動する。なお、パーキングロック切替制御部96では、モータアクチュエータ66が作動することによってパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbを略零に低減させる。
また、パーキングロック切替制御部96は、パーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され且つパーキングブレーキ作動判定部94でパーキングブレーキが作動していると判定されると、或いはパーキングロック判定部76でパーキングロック操作が実行されたと判定され且つパーキングブレーキ作動判定部94でパーキングブレーキが作動していないと判定され且つアクチュエータ温度推定部78で外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満ではなくモータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満でないと推定されると、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46を作動させずに、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66を作動する。なお、パーキングロック切替制御部96では、モータアクチュエータ66が作動することによってパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられる。
図10は、電子制御装置90すなわち車両用パーキングロック機構制御装置において、例えば運転者のパーキングロック操作に応じて動力伝達機構である差動部18の出力軸20を回転不可能なロック状態に切り替える切替制御の一例を説明するフローチャートである。
図10のフローチャートに示すように、先ず、パーキングロック判定部76に対応するS21において、例えば運転者によってパーキングロック操作が実行されたか否かすなわち運転者によってパーキングスイッチ72が操作されP(パーキング)レンジ切替指令があった否かが判定される。このS21の判定が否定される場合には再度上記S21が実行されるが、このS21の判定が肯定される場合にはパーキングブレーキ作動判定部94に対応するS22が実行される。
上記S22では、パーキングブレーキが作動していないか否かが判定される。このS22の判定が肯定される場合にはアクチュエータ温度推定部78に対応するS23が実行されるが、このS22の判定が否定される場合にはパーキングロック切替制御部96に対応するS25が実行される。上記S25では、パーキングロック機構54のモータアクチュエータ66が作動され、パーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態に切り替えられる。
上記S23では、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であるか否かが推定すなわちモータアクチュエータ66の温度TA(℃)に関連する外気温T(℃)が所定外気温T1(℃)未満であるか否かが判定される。このS23の判定が否定される場合には上記S25が実行されるが、このS23の判定が肯定される場合には、パーキングロック切替制御部96に対応するS24が実行される。上記S24では、ブレーキアクチュエータ48のソレノイドバルブ50によってホイールブレーキ46のブレーキ油圧Pbが車輪の回転が制限される程度に高められる。
上述のように、電子制御装置90である車両用パーキングロック機構制御装置では、上記S22においてパーキングブレーキが作動している時、つまりパーキングロック操作の開始からモータアクチュエータ66が作動するまでの作動時間すなわちパーキングロック操作の開始からパーキングギヤ56にパーキングポール58が噛み合わされてロック状態が完了するまでの応答時間が比較的長くても短くても車輪の回転が制限されパーキングギヤ56とパーキングポール58との係合時に比較的大きな衝撃荷重が入力されない時には、上記S24が実行されないすなわちホイールブレーキ46が作動されないので、そのホイールブレーキ46の作動頻度を好適に低減させることができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
前述の実施例において、アクチュエータ温度推定部78では、外気温センサ74から検出された外気温T(℃)をモータアクチュエータ66の温度TA(℃)として推定していたが、例えば、外気温センサ74から検出された外気温T(℃)を例えば外気温T(℃)とモータアクチュエータ66の温度TA(℃)との関係を示す予め求めた式に代入してモータアクチュエータ66の温度TA(℃)を推定しても良い。また、アクチュエータ温度推定部78では、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)が所定温度TA1(℃)未満であるか否かを、外気温センサ74から検出される外気温T(℃)によって推定していたが、モータアクチュエータ66の温度TA(℃)を直接測定して所定温度TA1(℃)未満であるか否かを判断して良い。
前述の実施例の車両では、差動部18が動力伝達機構として機能していたが、たとえば遊星歯車式の多段の自動変速機が設けられたものでも良い。この場合には、自動変速機の出力軸をロック状態とするようにパーキングロック機構54が設けられる。
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。