図1は、本発明が適用される車両10の概略構成を説明する図であると共に、車両10における各種制御の為の制御機能及び制御系統の要部を説明する図である。図1において、車両10は、動力源12と、駆動輪14と、動力源12の動力を駆動輪14へ伝達する動力伝達装置16とを備えている。
動力源12は、例えば燃料の燃焼によって動力を発生するガソリンエンジンやディーゼルエンジン等のエンジンである。又は、動力源12は、例えば電動機(モータ)としての機能及び発電機(ジェネレータ)としての機能を有する回転機である。又は、車両10は、動力源12として、上記エンジンに加えて、上記回転機を備えていても良い。
動力伝達装置16は、動力源12に連結された自動変速機18、自動変速機18の出力回転部材である出力軸20に連結された差動歯車装置22、差動歯車装置22に連結された左右の車軸24等を備えている。動力伝達装置16において、動力源12から出力される動力は、自動変速機18へ伝達され、自動変速機18から差動歯車装置22等を介して駆動輪14へ伝達される。前記動力は、特に区別しない場合にはトルクや力も同義である。
又、車両10は、更に、シフト操作装置30、切替装置40、パワースイッチ50、パーキングブレーキ装置60、ホイールブレーキ装置70などを備えている。
シフト操作装置30は、自動変速機18における複数種類のシフトポジションを人為的操作により選択する為の操作装置、すなわち人為的に操作されることで自動変速機18のシフトポジションの切替え要求を受け付ける操作装置である。シフト操作装置30は、自動変速機18のシフトポジションに対応した操作ポジションPOSshへ運転者により操作される。操作ポジションPOSshは、例えばP,R,N,D,M操作ポジションを含んでいる。自動変速機18のシフトポジションは、自動変速機18のシフトレンジと同意である。
P操作ポジションは、自動変速機18がニュートラル状態とされ且つ機械的に出力軸20の回転が阻止された、自動変速機18のパーキングポジション(=Pポジション)を選択するパーキング操作ポジションである。自動変速機18のニュートラル状態は、例えば自動変速機18における動力伝達が遮断された状態、すなわち自動変速機18が動力を伝達することが不能な状態である。出力軸20の回転が阻止された状態は、出力軸20が回転不能に固定されたパーキングロック(=Pロック)の状態である。出力軸20は、切替装置40により回転不能に固定される。
R操作ポジションは、車両10の後進走行を可能とする自動変速機18の後進走行ポジション(=Rポジション)を選択する後進走行操作ポジションである。N操作ポジションは、自動変速機18がニュートラル状態とされた自動変速機18のニュートラルポジション(=Nポジション)を選択するニュートラル操作ポジションである。D操作ポジションは、例えば車両10の前進走行を可能とする自動変速機18の前進走行ポジション(=Dポジション)を選択する前進走行操作ポジションである。M操作ポジションは、運転者によるパドルスイッチ等の操作によって自動変速機18のギヤ段を切り替える手動変速を可能とする手動変速操作ポジション(=Mポジション)である。
シフト操作装置30は、複数の操作ポジションPOSshへ運転者により選択的に操作される操作子を有している。この操作子は、例えばシフトレバー32とPスイッチ34とである。シフトレバー32及びPスイッチ34はどちらも、外力が付与されていない状態では元位置に戻されるモーメンタリ式の操作子である。
シフトレバー32は、自動変速機18のシフトポジションを、Pポジション以外の複数の非Pポジションのうちの所望するシフトポジションとする為に、その所望するシフトポジションに対応する操作ポジションPOSshへ運転者により択一的に操作される。非Pポジションは、Pロックの状態が解除されたシフトポジションであり、例えばR,N,D,Mポジションである。Pスイッチ34は、自動変速機18のシフトポジションをPポジションとする為に運転者により操作される。シフトレバー32にて操作可能な操作ポジションPOSshは、例えばR,N,D,M操作ポジションであり、Pスイッチ34にて操作可能な操作ポジションPOSshは、例えばP操作ポジションである。
シフト操作装置30は、シフトレバー32におけるR,N,D,M操作ポジションを検出するレバーポジションセンサ36を備えており、R,N,D,M操作ポジションに応じたレバーポジション信号Splevを、後述する電子制御装置90へ出力する。電子制御装置90は、そのレバーポジション信号Splevに基づいてR,N,D,M操作ポジションへの操作を検出する。R,N,D,M操作ポジションへの操作は、自動変速機18のシフトポジションをR,N,D,Mポジションの何れかへ切り替える為のシフト操作であり、シフトレバー操作とも称する。
Pスイッチ34は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者によりP操作ポジションまで押込み操作される。Pスイッチ34は、P操作ポジションまで押込み操作される毎に、P操作ポジションに応じたPスイッチ信号Spswを後述する電子制御装置90へ出力する。電子制御装置90は、そのPスイッチ信号Spswに基づいてP操作ポジションへの操作を検出する。P操作ポジションへの操作は、自動変速機18のシフトポジションをPポジションへ切り替える為のパーキングシフト操作であり、Pスイッチ操作とも称する。
切替装置40は、電動アクチュエータ41の作動により自動変速機18のシフトポジションを切り替える。切替装置40は、電動アクチュエータ41、エンコーダ42、パーキングロック機構44などを備えている。パーキングロック機構44は、パーキングロックギヤ46、パーキングロックポール47、カム48、パーキングロッド49等を備えている。パーキングロックギヤ46は、出力軸20と一体回転するように設けられた部材である。パーキングロックポール47は、パーキングロックギヤ46のギヤ歯に噛み合う爪部を有しており、パーキングロックギヤ46に噛み合うことが可能な部材である。カム48は、パーキングロッド49のパーキングロックポール47側の先端に設けられており、パーキングロックポール47側へ移動させられることでパーキングロックポール47をパーキングロックギヤ46に噛み合わせるテーパー部材である。パーキングロッド49は、一端部においてカム48を支持する部材であり、他端側において不図示の部材を介して電動アクチュエータ41に機械的に連結されている。切替装置40は、後述する電子制御装置90からの制御信号に基づいて電動アクチュエータ41が作動させられることによって、Pロックの状態とPロックの状態が解除された非Pロックの状態とを切り替えるPロック装置であり、自動変速機18のシフトポジションをPポジションと非Pポジションとで切り替える。例えば、Pスイッチ34におけるPスイッチ操作が検出されると、カム48がパーキングロックポール47側へ付勢されるように電動アクチュエータ41が電子制御装置90によって制御されてパーキングロッド49やカム48が作動させられる。これにより、パーキングロックポール47がパーキングロックギヤ46側へ動かされる。パーキングロックポール47がパーキングロックギヤ46と噛み合う位置まで動かされると、パーキングロックギヤ46と共に出力軸20が回転不能に固定され、出力軸20と連動して回転する駆動輪14が回転不能に固定される。車両10では、シフトバイワイヤ(=SBW)方式を用いて、自動変速機18のシフトポジションが切り替えられる。
パワースイッチ50は、車両10の電源供給状態を車両走行を可能とする電源オン状態と車両走行を不能とする電源オフ状態との間で切り替える為に運転者により操作される車両電源スイッチである。パワースイッチ50は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者によりスイッチオンポジションまで押込み操作される。パワースイッチ50は、スイッチオンポジションまで押込み操作される毎に、スイッチオンポジションに応じたパワースイッチ信号PSonを後述する電子制御装置90へ出力する。電子制御装置90は、そのパワースイッチ信号PSonに基づいてパワースイッチ50の操作を検出する。パワースイッチ50の操作は、車両10の電源供給状態を切り替える為のパワースイッチ操作である。
パーキングブレーキ装置60は、車輪例えば後輪にパーキングブレーキによるブレーキトルクを付与するブレーキ装置である。本実施例では、上記後輪は駆動輪14である。パーキングブレーキ装置60は、パーキングブレーキアクチュエータ62、ケーブル64、パーキングブレーキ機構66、パーキングブレーキ操作部材68などを備えている。パーキングブレーキ装置60では、運転者によるパーキングブレーキ操作部材68の操作状態に応じて後述する電子制御装置90によってパーキングブレーキアクチュエータ62が作動させられ、ケーブル64を介してパーキングブレーキ機構66が作動させられる。例えば、パーキングブレーキ操作部材68が押し込み操作されてパーキングブレーキ操作信号PBonが検出されている間は、パーキングブレーキ装置60が作動させられて、パーキングブレーキの状態はパーキングブレーキ作動状態とされる。パーキングブレーキ操作部材68が引き上げ操作されてパーキングブレーキ操作信号PBonが検出されていない間は、パーキングブレーキ装置60が作動させられず、パーキングブレーキの状態はパーキングブレーキ解除状態とされる。
ホイールブレーキ装置70は、車輪にホイールブレーキによるブレーキトルクを付与するブレーキ装置である。ホイールブレーキ装置70は、ホイールブレーキアクチュエータ72、ホイールブレーキペダル74などを備えている。ホイールブレーキ装置70は、運転者によるホイールブレーキペダル74でのブレーキ操作状態などに応じて、ホイールブレーキアクチュエータ72によってホイールシリンダへブレーキ油圧を供給する。ホイールブレーキ装置70では、通常時には、ブレーキマスタシリンダから発生させられる、ホイールブレーキペダル74におけるブレーキ操作量Braに対応した大きさのマスタシリンダ油圧が直接的にブレーキ油圧としてホイールシリンダへ供給される。一方で、ホイールブレーキ装置70では、例えばABS制御時、車速制御時などには、ホイールブレーキによるブレーキトルクの発生の為に、ブレーキ操作量Braに拘わらず、各制御で必要なブレーキ油圧がホイールシリンダへ供給される。上記車輪は、駆動輪14及び不図示の従動輪である。
又、車両10は、車両10の制御装置を含むコントローラとしての電子制御装置90を備えている。電子制御装置90は、例えばCPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより車両10の各種制御を実行する。例えば、電子制御装置90は、動力源12の出力制御、自動変速機18の変速制御、切替装置40による自動変速機18のシフトポジションの切替制御、電源供給状態の切替制御等を実行するようになっており、必要に応じて出力制御用、変速制御用、SBW制御用、電源制御用等に分けて構成される。
電子制御装置90には、車両10に備えられた各種センサ等(例えばPスイッチ34、レバーポジションセンサ36、エンコーダ42、パワースイッチ50、パーキングブレーキ操作部材68、ホイールブレーキペダル74、出力回転速度センサ80など)による検出値に基づく各種信号等(例えばPスイッチ信号Spsw、レバーポジション信号Splev、切替装置40における電動アクチュエータ41の作動位置に対応するエンコーダカウントを取得する為のパルス信号Senc、運転者によるパワースイッチ操作を示す信号であるパワースイッチ信号PSon、パーキングブレーキを作動させる為の運転者によるパーキングブレーキ操作部材68の操作が為された状態を示す信号であるパーキングブレーキ操作信号PBon、ホイールブレーキを作動させる為の運転者によるホイールブレーキペダル74の操作が為された状態を示す信号であるブレーキオンWBon、運転者によるホイールブレーキペダル74の操作における踏力に対応するブレーキ操作量Bra、車速Vに対応する出力軸20の回転速度である出力回転速度Noなど)が、それぞれ供給される。
電子制御装置90からは、車両10に備えられた各装置(例えば動力源12、自動変速機18、電動アクチュエータ41、パーキングブレーキアクチュエータ62、ホイールブレーキアクチュエータ72など)に各種指令信号(例えば動力源12を制御する為の動力源制御指令信号Spu、自動変速機18を制御する為の変速機制御指令信号Spt、切替装置40の作動を制御する為のP切替制御指令信号Splock、パーキングブレーキ装置60の作動を制御する為のパーキングブレーキ制御指令信号Spb、ホイールブレーキによるブレーキトルクを制御する為のホイールブレーキ制御指令信号Swbなど)が、それぞれ出力される。
電子制御装置90は、車両10における各種制御を実現する為に、電源制御手段すなわち電源制御部92、及び切替制御手段すなわち切替制御部94を備えている。
電源制御部92は、運転者によるパワースイッチ操作に基づいてすなわちパワースイッチ信号PSonに基づいて、車両10の電源供給状態を切り替える。車両10の電源供給状態としては、例えば電源オン状態と電源オフ状態とに分けることができる。電源オン状態は、例えばアクセルオンすれば車両10が発進・走行できるような車両走行を可能とする電源供給状態である。電源オフ状態は、車両走行を不能とする電源供給状態である。電源オフ状態は、車両走行が不能であれば良く、例えばセキュリティー機能が作動している程度の状態はもちろんであるが、本実施例では、オーディオ類やバッテリ電源取出ソケットなどへ通電されている状態、車室内のディスプレイにおいて車両情報等が表示されている状態、自動変速機18のシフトポジションの切替えが行える状態なども含むものとする。つまり、車両10の一部の機能のみ稼働可能とする電源一部オン状態であっても車両走行が不能であれば電源オフ状態に含まれる。
電源制御部92は、電源オフ状態で自動変速機18がPポジションとされているときに、ブレーキオンWBonが入力されている状態でパワースイッチ信号PSonの入力を検知した場合には、車両10の電源供給状態を電源オン状態へ切り替える。又、電源制御部92は、電源オン状態で自動変速機18がPポジションとされているときに、車速Vが所定停止車速Vths未満であり且つパワースイッチ信号PSonの入力を検知した場合には、車両10の電源供給状態を電源オフ状態へ切り替える。所定停止車速Vthsは、例えば車両停止状態であると判断する為の予め実験的に或いは設計的に求められて記憶されたすなわち予め定められた車両停止判定車速であり、例えば2~3km/hである。
又、電源制御部92は、電源オン状態で自動変速機18が非Pポジションとされているときに、車速Vが所定停止車速Vths未満であり且つパワースイッチ信号PSonの入力を検知した場合には、自動変速機18のシフトポジションをPポジションとする為のオートPロック切替要求信号を切替制御部94へ出力する。電源制御部92は、切替制御部94によるPポジションへの切替えが完了させられた後に車両10の電源供給状態を電源オフ状態へ切り替える。
切替制御部94は、シフト操作装置30における操作ポジションPOSshに基づいて自動変速機18のシフトポジションを切替装置40により電気的に切り替える。具体的には、切替制御部94は、レバーポジション信号SplevやPスイッチ信号Spswに基づいて、運転者が所望する自動変速機18のシフトポジションである要求ポジションを設定する。切替制御部94は、要求ポジションに対応した自動変速機18のシフトポジションへの切替えを行う。切替制御部94は、シフトポジションが非Pポジションにあるときに、Pスイッチ操作を検知した場合すなわちPスイッチ信号Spswの入力を検知した場合には、要求ポジションとしてPポジションを設定し、電動アクチュエータ41を作動させてパーキングロック機構44をPロックの状態とすることによって、自動変速機18のシフトポジションを非PポジションからPポジションへ切り替える。一方で、切替制御部94は、シフトポジションがPポジションにあるときに、非P操作ポジションへの操作を検知した場合すなわちレバーポジション信号Splevの入力を検知した場合には、要求ポジションとしてその非P操作ポジションに対応する非Pポジションを設定し、電動アクチュエータ41を作動させてパーキングロック機構44を非Pロックの状態とすることによって、自動変速機18のシフトポジションをPポジションから非Pポジションへ切り替える。加えて、切替制御部94は、要求ポジションに対応したRポジション、Nポジション、Dポジションの何れかのシフトポジションへ切り替える。
切替制御部94は、電源制御部92によるオートPロック切替要求信号の入力を検知した場合には、電動アクチュエータ41を作動させてパーキングロック機構44をPロックの状態とすることによって、自動変速機18のシフトポジションを非PポジションからPポジションへ切り替える。このように、切替制御部94は、車両10の電源供給状態を電源オフ状態へ切り替える為の電源オフ操作であるパワースイッチ操作が運転者により為された場合には、自動変速機18のシフトポジションをPポジションとする自動パーキング制御を行う。
切替制御部94は、運転者により所定の第1操作が為された状態で電源制御部92によるオートPロック切替要求信号の入力を検知した場合には、自動変速機18のシフトポジションをNポジションに保持する。前記運転者により所定の第1操作が為された状態とは、例えば自動変速機18のシフトポジションがNポジションとされている状態で、運転者によりシフトレバー32がN操作ポジションに所定保持時間以上保持された時点から所定待機時間以内の状態である。前記所定保持時間は、例えば意図的にN操作ポジションに保持されたと判断する為の予め定められた下限時間であり、例えば2~3秒である。前記所定待機時間は、例えばNポジションのままで電源オフ状態へ切り替えることを意図してパワースイッチ操作を行ったと判断する為の予め定められた上限時間であり、例えば4~6秒である。このように、切替制御部94は、前記運転者により所定の第1操作が為された状態で車両10の電源供給状態を電源オフ状態へ切り替える為の電源オフ操作であるパワースイッチ操作が運転者により為された場合には、前記自動パーキング制御を行わず、自動変速機18のシフトポジションをNポジションとするニュートラル保持制御を行う。本実施例では、前記ニュートラル保持制御を行う制御様式を、Nポジション保持モードと称する。Nポジション保持モードは、特殊モードである。尚、車両10の電源供給状態は、前記ニュートラル保持制御時においても前記自動パーキング制御時と同様に、電源制御部92によって電源オフ状態へ切り替えられる。
切替制御部94は、前記ニュートラル保持制御の実行中にPスイッチ操作が運転者により為された場合すなわちPスイッチ信号Spswの入力を検知した場合には、前記ニュートラル保持制御を解除し、電動アクチュエータ41を作動させてパーキングロック機構44をPロックの状態とすることによって、自動変速機18のシフトポジションをNポジションからPポジションへ切り替える第1ニュートラル解除制御を行う。これにより、特殊モードから通常モードへ復帰させられる。
ここで、前記運転者により所定の第1操作が為された状態でパワースイッチ操作が運転者により為されたことで行われるニュートラル保持制御は、例えば駆動輪14を転がして車両10を移動する為に意図的にPポジションへの切替えを行わない為の特殊モードである。再度パワースイッチ操作が為された時点でこの特殊モードが解除されてしまうと、意図せずにPポジションへ切り替わってしまう可能性がある。その為、Pポジションへ切り替える為の運転者の意図的な操作を検出して通常モードへ復帰させる必要があり、Pスイッチ操作の検出を特殊モードを解除する唯一の方法とすることが考えられる。しかしながら、Pスイッチ34の固着などによってPスイッチ信号Spswが出力されない場合、特殊モードから通常モードへ復帰することができなくなるおそれがある。Pスイッチ操作を検出できないときでも前記ニュートラル保持制御を解除することができることが望まれる。
電子制御装置90は、Pスイッチ操作を検出できないときでも前記ニュートラル保持制御を解除するという制御機能を実現する為に、更に、状態判定手段すなわち状態判定部96を備えている。
状態判定部96は、前記ニュートラル保持制御の実行中すなわちNポジション保持モード中であるか否かを判定する。状態判定部96は、Nポジション保持モード中であると判定した場合には、Pスイッチ操作が運転者により為されたか否かを判定する。状態判定部96は、Nポジション保持モード中であると判定した場合には、Pスイッチ操作以外の所定の第2操作が運転者により為されたか否かを判定する。
切替制御部94は、状態判定部96によりNポジション保持モード中であると判定されたときに、状態判定部96によりPスイッチ操作が運転者により為されたと判定された場合には、前記第1ニュートラル解除制御を行ってNポジション保持モードを終了する。
切替制御部94は、状態判定部96によりNポジション保持モード中であると判定されたときに、状態判定部96によりPスイッチ操作以外の前記所定の第2操作が運転者により為されたと判定された場合には、前記ニュートラル保持制御を解除する第2ニュートラル解除制御を行ってNポジション保持モードを終了する。例えば、切替制御部94は、前記第2ニュートラル解除制御では、前記ニュートラル保持制御を解除し、電動アクチュエータ41を作動させてパーキングロック機構44をPロックの状態とすることによって、自動変速機18のシフトポジションをNポジションからPポジションへ切り替える。これにより、特殊モードから通常モードへ復帰させられる。
前記ニュートラル保持制御を解除することができる操作は簡単な操作であることが望ましいが、簡単な操作であると意図せずに前記ニュートラル保持制御を解除してしまうおそれがある。Pスイッチ操作とは別に、簡単であるが偶発的に起こり難いような、前記ニュートラル保持制御を解除する操作が望まれる。
前記所定の第2操作は、例えばPスイッチ操作とは別の、簡単であるが偶発的に起こり難いような操作である。具体的には、前記所定の第2操作は、パワースイッチ操作を第1所定回数以上繰り返す操作、シフト操作装置30の操作、特にはシフトレバー32の操作であるシフトレバー操作を第2所定回数以上繰り返す操作、パーキングブレーキ装置60を作動させる操作、及びホイールブレーキ装置70を作動させるホイールブレーキペダル74の操作であるブレーキ操作を第3所定回数以上断続的に繰り返すか又は所定時間以上継続して行う操作のうちの少なくとも一つである。前記第1所定回数や前記第2所定回数や前記第3所定回数は、各々、例えば偶発的に起こり難いような操作回数すなわち意図的に行われた操作回数として予め定められた下限操作回数であり、例えば5~8回である。前記第1所定回数や前記第2所定回数や前記第3所定回数は、各々、同じ値でも良いし、異なる値でも良い。前記所定時間は、例えば偶発的に起こり難いような続けて操作された時間すなわち意図的に続けて操作された時間として予め定められた下限操作時間であり、例えば2~3秒である。
図2は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわちPスイッチ操作を検出できないときでもNポジションの保持を解除する為の制御作動を説明するフローチャートであり、例えば繰り返し実行される。図3は、図2のフローチャートに示す制御作動を実行した場合の実施態様の一例である。
図2において、先ず、状態判定部96の機能に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S10において、Nポジション保持モード中であるか否かが判定される。このS10の判断が否定される場合は、本ルーチンが終了させられる。このS10の判断が肯定される場合は状態判定部96の機能に対応するS20において、Pスイッチ操作が運転者により為されたか否かが判定される。このS20の判断が否定される場合は状態判定部96の機能に対応するS30において、Pスイッチ操作以外の前記所定の第2操作が運転者により為されたか否かが判定される。このS30の判断が否定される場合は上記S20へ戻される。上記S20の判断が肯定される場合又は上記S30の判断が肯定される場合は、切替制御部94の機能に対応するS40において、Nポジション保持モードが終了させられる。
図3は、例えば自動変速機のNポジションの状態でコンベヤーやローラー等で駆動輪を転がして車両を移動させながら洗車する形式の自動洗車機を車両10が利用する場合の実施態様の一例を示している。図3において、自動変速機のDポジションの状態で洗車機内のコンベヤー上まで走行させられて停車させられた車両10は、N操作ポジションへのシフトレバー操作によって、電源オン状態のままで自動変速機18はNポジションへ切り替えられる(状態(1)→状態(2)参照)。状態(2)において、N操作ポジションへのシフトレバー操作が所定保持時間以上行われた後、所定待機時間以内にパワースイッチ操作が為されたことによって、電源オフ状態へ切り替えられ、且つ、Nポジション保持モードへ移行させられる(状態(2)→状態(3)参照)。状態(3)において、Pスイッチ操作が為されたことによって、ニュートラル保持制御が解除され、電源オフ状態のままで自動変速機18がPポジションへ切り替えられる(状態(3)→状態(4)参照)。一方で、状態(3)において、パワースイッチ操作が為されたことによって、Nポジションのままで状態(3)とは別の電源オフ状態へ遷移させられる(状態(3)→状態(5)参照)。状態(5)において、パワースイッチ操作が為されたことによって、状態(3)へ切り替えられる(状態(5)→状態(3)参照)。偶発的なパワースイッチ操作では、状態(3)と状態(5)との間で切り替えられるだけである。状態(5)においても、状態(3)と同様に、Pスイッチ操作が為されたことによって、ニュートラル保持制御が解除され、Pポジションへ切り替えられる(状態(5)→状態(4)参照)。状態(4)において、ブレーキオンWBonが入力されている状態でパワースイッチ操作が為されたことによって、Pポジションのままで電源オン状態へ切り替えられる(状態(4)→状態(6)参照)。状態(3)や状態(5)において、パワースイッチ操作が所定回数以上繰り返されたことによって、ニュートラル保持制御が解除され、電源オフ状態のままで自動変速機18がPポジションへ切り替えられる(状態(3),(5)→状態(7)参照)。
上述のように、本実施例によれば、ニュートラル保持制御の実行中にPスイッチ操作以外の所定の第2操作が運転者により為された場合には、ニュートラル保持制御を解除する第2ニュートラル解除制御が行われるので、Pスイッチ操作以外の操作でニュートラル保持制御を解除することができる。よって、Pスイッチ操作を検出できないときでもNポジションの保持を解除することができる。
また、本実施例によれば、前記所定の第2操作は、パワースイッチ操作を第1所定回数以上繰り返す操作などであるので、Pスイッチ操作以外の簡単な操作でニュートラル保持制御を解除することができ、又、意図せずにニュートラル保持制御が解除されることを防止又は抑制することができる。これにより、簡単であるが偶発的に起こり難いような、Nポジションの保持を解除する操作を実現することができる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前述の実施例では、前記所定の第2操作として、パワースイッチ操作を第1所定回数以上繰り返す操作などを例示したが、この態様に限らない。例えば、前記所定の第2操作は、ステアリングホイールに設けられたパドルスイッチにおける所定の操作、ステアリングパッドに配設されたステアリングスイッチにおける所定の操作、ライトコントロールスイッチにおけるハイビームヘッドランプを点灯する為の操作、パワーウインドゥの作動スイッチにおけるドアガラスを閉める為の操作、ドアコントロールスイッチにおけるドアのロックとアンロックとを切り替える為の操作などでも良い。要は、前記所定の第2操作は、例えばPスイッチ操作とは別の、簡単であるが偶発的に起こり難いような操作であれば良い。
また、前述の実施例では、シフト操作装置30は、シフトレバー32及びPスイッチ34の2つの操作子を備えていたが、この態様に限らない。例えば、シフト操作装置30は、自動変速機18の各シフトポジションに対応したP,R,N,D等の操作ポジションと、その操作ポジションへ操作されるレバーやダイヤル等の1つの操作子と、その操作子が各操作ポジションへ操作されたことを電気的に検出する位置センサとを備えているようなシフト操作装置であっても良い。
また、前述の実施例では、切替装置40は、自動変速機18のシフトポジションをPポジションと非Pポジションとで切り替えたが、この態様に限らない。例えば、切替装置40は、自動変速機18のシフトポジションを、P、R,N,Dポジション等の各ポジションに切り替える切替装置であっても良い。
また、前述の実施例では、パーキングブレーキ装置60は、パーキングブレーキアクチュエータ62によって作動させられたが、この態様に限らない。例えば、パーキングブレーキ装置60は、パーキングブレーキ機構とケーブル等によって機械式に連結されたパーキングブレーキ操作部材の操作によって作動させられるパーキングブレーキ装置であっても良い。
尚、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。