JP6243738B2 - 羊膜間葉系幹細胞の調製方法および単離された羊膜間葉系幹細胞集団 - Google Patents

羊膜間葉系幹細胞の調製方法および単離された羊膜間葉系幹細胞集団 Download PDF

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Description

本発明は、哺乳動物の羊膜由来の間葉系細胞から、間葉系幹細胞集団を調製する方法および単離された羊膜間葉系幹細胞集団に関するものである。
再生医療の分野においては、幹細胞に関する研究が進められている。特に、胚性幹細胞(ES細胞)は、すべての細胞系譜に分化することができる能力(分化万能性)を有するため、非常に有用である。しかしながら、ヒトES細胞を作成するには、ヒト初期胚を破壊する工程が必須となるため、倫理的な面で問題があった。また、ES細胞は、臓器移植と同様に、ドナーの確保、他家移植による免疫拒絶反応といった様々な問題があり、臨床へ応用する際の障壁となっていた。
近年、ES細胞に近い細胞として、人工多能性幹細胞(iPS細胞)が樹立され、注目を集めている。iPS細胞は、Oct3/4、Klf4、c−Myc、及びSox2の4種の遺伝子を体細胞に導入することにより、ES細胞と類似の分化万能性を持たせた細胞である。iPS細胞は、採取に差し支えない組織由来の体細胞から樹立できるため、ES細胞の抱える倫理的問題を回避でき、また、患者自身の分化した体細胞を利用することで免疫拒絶を防ぐことができることから、臨床への応用が期待されている。しかし、iPS細胞は、その作製にがん原遺伝子であるc−Mycを使用しており、また、レトロウイルスを用いて染色体内のランダムな位置に遺伝子を導入することから、細胞ががん化し、腫瘍を形成しやすいという問題があり、臨床応用のためには、さらなる研究が必要とされている。
これらの問題を解決するために、最近、羊膜が注目されている。羊膜は、外胚葉由来の上皮細胞と中胚葉由来の間葉系細胞から構成される胚体外組織であり、多能性幹細胞としての特性を有する細胞群を含有することが確認されている。羊膜は、出産後の排泄物として廃棄されるものであるので、生体材料として使用する上での倫理的問題が少ない。また、羊膜は、免疫学的にも特殊な性質を有しており、免疫原性が低いため、他家移植による免疫拒絶反応も比較的穏やかであることが期待されている。
これまでに本発明者らは、ヒト羊膜上皮由来幹細胞が肝細胞やインスリン産生細胞へと分化する可能性や、ヒト羊膜由来間葉系幹細胞が軟骨細胞や心筋細胞へ分化する可能性を報告している(特許文献1)。
したがって、羊膜由来間葉系幹細胞を効率よく簡便に単離・調製することが望まれている。しかし、羊膜由来間葉系細胞の細胞集団から、選択的に間葉系幹細胞を得ることは困難であった。
一方、フローサイトメトリーにより細胞にレーザー光を照射し、その照射光の前方散乱光および側方散乱光を測定し、その測定値に基づいて神経幹細胞を分離・分取する方法が知られている(特許文献2)。
しかしながら、羊膜由来間葉系幹細胞の場合には、従来一般的に行われている培養方法や、フローサイトメトリーによる通常のソーティングゲートの組み合わせでは、羊膜由来間葉系細胞の細胞集団から、高い分化能と増殖能を兼ね備えた間葉系幹細胞を選択的に取得することは困難であった。
特許文献1 特開2003−231639号公報
特許文献2 特開2003−304867号公報
本発明は、哺乳動物の羊膜由来の間葉系細胞から、効率よく簡便に、長期間にわたり継代培養可能な増殖能と高い分化能を兼ね備えた間葉系幹細胞集団を調製する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、採取した羊膜間葉系細胞から、長期間にわたり継代培養可能な増殖能と高い分化能を有する羊膜由来間葉系幹細胞集団を容易に得ることができる方法を見出すに至った。
すなわち、第一発明は、(A)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、(B)前記間葉系細胞の細胞集団について、(b1)フローサイトメーターを用いて前方散乱光および側方散乱光を検出し、二次元分布図を作成し、(b2)前記二次元分布図上に、四角形の3分割ゲートを設定することにより選択された細胞を分取するステップと、(C)前記分取された細胞を継代培養するステップとを含む、羊膜間葉系幹細胞集団を調製する方法を提供するものである。
前記ステップ(B)における(b1)において、前記二次元分布図に示された細胞は、間葉系細胞の細胞集団全体の85〜95%であることが望ましい。
前記ステップ(B)における(b2)において、前記四角形の3分割ゲートは、前方散乱光の強度に基づいて3分割したものであることが望ましい。
前記四角形の3分割ゲートは、(i)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の5〜15%が含まれるように上辺を設定した第1のゲートと、(ii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第1のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35〜45%が含まれるように上辺を設定した第2のゲートと、(iii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第2のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35%以上が含まれるように上辺を設定した第3のゲートとからなることが望ましい。
前記ステップ(C)における継代培養は、(c1)前記分取された細胞を400〜3500/cmの細胞濃度において播種し、2〜3日間初期培養するステップと、(c2)前記初期培養の1/500以上1/10未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3〜4回繰り返すステップと、(c3)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持するステップとを含むことが望ましい。
前記ステップ(c2)における細胞濃度は、前記初期培養の1/200以上1/50未満であることが望ましい。
また、第二発明は、(D)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、(E)前記採取された細胞集団を400〜35000/cmの細胞濃度において播種し、2〜3日間初期培養するステップと、(F)前記初期培養の1/5000以上1/10未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3〜4回繰り返すステップと、(G)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持するステップを含む、羊膜間葉系幹細胞集団を調製する方法を提供するものである。
前記ステップ(F)における細胞濃度は、前記初期培養の1/2000以上1/50未満であることが望ましい。
さらに、本発明は、上記第一発明の方法および/または第二発明の方法により調製された、哺乳動物の羊膜間葉系幹細胞集団を提供する。
前記哺乳動物は、ヒトであることが望ましい。
前記羊膜間葉系幹細胞集団は、紡錘状の形態を有する細胞を含み、かつ、50回以上の細胞分裂(population doublings)が可能であることが望ましい。
前記羊膜間葉系幹細胞集団は、軟骨、骨、心筋、神経、肝臓、膵臓などへの高い分化能を有する。
本発明に係る羊膜間葉系幹細胞集団の調製方法は、高い分化能と増殖能を有する羊膜間葉系幹細胞集団を、哺乳動物の羊膜由来間葉系細胞から効率よく簡便に調製することを可能とする。また、本発明に係る方法により調製された羊膜間葉系幹細胞集団を用いることにより、倫理的問題が少なく、かつ、他家移植による免疫拒絶反応が少ない安全な再生医療が可能となる。さらに本発明の羊膜間葉系幹細胞集団は、肝硬変時に起こる肝小葉の線維化を軽減する効果も有する。
フローサイトメーターによって細胞を分取する為の二次元分布図(スキャッタグラム)およびゲートを示す図である。 スキャッタグラムおよびゲートの模式図である。 第2の発明に係る培養方法の模式図である。 羊膜間葉系細胞集団の顕微鏡像および増殖曲線。(a)は、単離直後の羊膜間葉系細胞集団(fresh HAM:fHAM)の顕微鏡像を示す。(b)は、通常の培養条件により継代培養された羊膜間葉系細胞集団の顕微鏡像を示す。(c)は、低濃度条件により継代培養された羊膜間葉系細胞集団(HAMα)の顕微鏡像を示す。(d)は、HAMαの典型的な増殖曲線であり、縦軸が細胞分裂回数、横軸が培養日数を示す。 フローサイトメーターにより分取された細胞から作成された羊膜間葉系幹細胞(sorted HAMα:sHAMα)の顕微鏡像。(a)および(b)は、ゲートSから採取され、継代培養された羊膜間葉系幹細胞(sHAMα−S)の顕微鏡像を示す。(c)は、通常の培養条件により継代培養された羊膜間葉系細胞集団の顕微鏡像を示す。 HAMαにおける幹細胞マーカーの発現を、免疫細胞化学染色により示した図である。 HAMαにおける、軟骨で発現される遺伝子と細胞外マトリックス遺伝子の発現パターンを示す図である。 HAMαにおける、骨で発現される遺伝子と細胞外マトリックス遺伝子の発現パターンを示す図である。 HAMα、および、フローサイトメーターによりゲートS、M、Lから採取され、継代培養された羊膜間葉系幹細胞(それぞれ、sHAMα−S、sHAMα−M、sHAMα−L)における、幹細胞転写因子(山中4因子:Oct3/4、Sox2、KLF、c−Myc)および神経幹細胞マーカー(Nestin、Musashi)の発現を、免疫細胞化学染色により示した図である。 HAMα、sHAMα−S、sHAMα−M、およびsHAMα−Lにおける、幹細胞マーカー(CD44、SSEA−1、SSEA−3、SSEA−4、Tra?1?60)および間葉系細胞マーカー(Vimentin)の発現を、免疫細胞化学染色により示した図である。 HAMα、sHAMα−S、sHAMα−Lにおける、心筋組織に特異的な転写因子(GATA4)の発現を、RT−PCR法により示した図である。 sHAMα−Sにおける心筋組織マーカーの発現を、免疫細胞化学染色により示した図である。 肝硬変の線維化に対するHAMαの効果を示す図である。 肝細胞特異的マーカー遺伝子の発現を、RT−PCR法により示した図である。 肝細胞への分化誘導後の細胞について、肝細胞特異的マーカーの発現を免疫細胞化学染色により示した図である。
第一発明は、(A)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、(B)前記間葉系細胞の細胞集団について、(b1)フローサイトメーターを用いて前方散乱光および側方散乱光を検出し、二次元分布図を作成し、(b2)前記二次元分布図上に、四角形の3分割ゲートを設定することにより選択された細胞を分取するステップと、(C)前記分取された細胞を継代培養するステップとを含む、羊膜間葉系幹細胞集団を調製する方法である。
「羊膜」とは、哺乳動物の発生過程において形成される、胎子と羊水を包む膜である。哺乳動物には、ヒトをはじめとする霊長類の他、ウシ、ウマ、ブタ、ヤギ、イヌ、ウサギ、モルモット、ラット、マウスなどが含まれる。本発明で使用される羊膜は、好ましくはヒトの羊膜である。
羊膜は、通常の外科的手法により得ることができる。または、分娩後に廃棄される胎盤から得ることも可能である。ヒト羊膜は、例えばインフォームドコンセントを得た妊婦から、帝王切開により採取することができる。
第一発明の方法では、ステップ(A)として、哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取する。羊膜は、上皮細胞と間葉系細胞とから構成されており、羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するには、羊膜から上皮細胞を取り除き、分離操作を行えばよい。間葉系細胞の細胞集団の採取は、例えば特開2003−231639号公報に記載される方法に準じて行うことができる。
「細胞集団」とは、当該技術分野において通常理解される意味であり、複数の細胞の集まりのことである。採取された羊膜間葉系細胞の細胞集団には、種々の増殖能、寿命、性質を有する細胞が混在している。そのため、一般的な培養条件において間葉系細胞の細胞集団について維持培養を行った場合には、間葉系細胞の細胞集団に含まれる細胞のうち、培養開始初期に接着し、増殖を開始する上皮様の細胞が培養面の大半を占拠してしまうことにより、それよりも遅れて増殖を開始する羊膜間葉系幹細胞は、増殖できずに駆逐されてしまい、単離することができない。
そこで、第一発明の方法では、採取された羊膜間葉系細胞の細胞集団から羊膜間葉系幹細胞集団を調製するために、ステップ(B)として、前記間葉系細胞の細胞集団を、(b1)フローサイトメーターを用いて前方散乱光および側方散乱光を検出し、二次元分布図を作成し、(b2)前記二次元分布図上に、四角形の3分割ゲートを設定することにより、細胞集団を分取する。このステップにより、分化能および増殖能の異なる細胞集団を分離し、羊膜間葉系幹細胞集団を採取することが可能となる。
「羊膜間葉系幹細胞集団」とは、羊膜間葉系幹細胞以外の細胞が実質的に分離除去された細胞集団を意味し、細胞集団のうち少なくとも80%、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が羊膜間葉系幹細胞である細胞集団を意味する。
第一発明において使用するフローサイトメーターは、特に限定されず、例えばFACS−Aria(日本BD社)、MoFlo−XDP(ベックマン・コールター社)、EPICS−Altra(ベックマン・コールター社)などを用いることができる。
第一発明の方法では、フローサイトメーターを用いて前方散乱光(Forward Scatter:FS)および側方散乱光(Side Scatter:SS)を検出することにより、二次元分布図(スキャッタグラム)を作成する。前方散乱光は、レーザー光の軸に対して前方向の小さい角度で散乱する光であり、細胞の大きさに関連して強度が変化する。すなわち、細胞のサイズが大きいほど前方散乱光の強度の値は大きくなる。一方、側方散乱光は、レーザー光の軸に対して約90度で散乱する光であり、核や顆粒などの細胞の内部構造に応じて強度が変化する。すなわち、細胞の内部密度が高いほど側方散乱光の強度の値は大きくなる。
検出された前方散乱光および側方散乱光に基づいて作成されたスキャッタグラムの模式図を図2に示す。細胞集団は、スキャッタグラムにおいて、楕円で示す領域に分布して表示される。この楕円領域内に、間葉系細胞の細胞集団全体の85〜95%が表示されることが好ましい。また、楕円領域は、右斜め方向に展開することが好ましい。
第一発明の方法では、上記二次元分布図(スキャッタグラム)上に、四角形の3分割ゲートを設定する。このとき、四角形の3分割ゲートは、(i)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の5〜15%が含まれるように上辺を設定した第1のゲート(ゲートS)、(ii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第1のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35〜45%が含まれるように上辺を設定した第2のゲート(ゲートM)、(iii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第2のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35%以上が含まれるように上辺を設定した第3のゲート(ゲートL)とすることができる。特に好ましくは、上記四角形の3分割ゲートは、(i)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の10%が含まれるように上辺を設定した第1のゲート(ゲートS)、(ii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第1のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の40%が含まれるように上辺を設定した第2のゲート(ゲートM)、(iii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第2のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の40%以上が含まれるように上辺を設定した第3のゲート(ゲートL)とすることができる。このようにゲートを3分割することにより、羊膜間葉系幹細胞を多く含む細胞集団と、それ以外の細胞集団とを分離することが可能となる。羊膜間葉系幹細胞を多く含む細胞集団は、特に、第1のゲート(ゲートS)から高効率で得ることができる。
第一発明の方法では、次に、ステップ(C)として、上記ゲートごとに分取された細胞について、継代培養を行う。ステップ(C)の継代培養は、通常の培養条件により行うことができるが、好ましくは、(c1)前記分取された細胞を400〜3500/cmの細胞濃度において播種し、2〜3日間初期培養するステップを行った後、(c2)前記初期培養の1/500以上1/10未満、特に好ましくは1/200以上1/50未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3〜4回繰り返し、(c3)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持することができる。ここで、(c2)の細胞濃度が初期培養の1/500未満であると、細胞増殖不良の原因となる。また、(c2)の細胞濃度が初期培養の1/10以上であると、羊膜由来間葉系幹細胞以外の細胞が優位に増殖してしまい、羊膜由来間葉系幹細胞を得ることができない。その他の具体的な条件(培地、温度、二酸化炭素濃度など)は、特に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。
また、ステップ(C)の継代培養は、成長因子 (例えばbFGF、EGF、PDGF)などのサイトカインを培地に添加することにより、さらに効率よく羊膜由来間葉系幹細胞を得ることができる。
第二発明は、(D)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、(E)前記採取された細胞集団を400〜35000cmの細胞濃度において播種し、2〜3日間初期培養するステップと、(F)前記初期培養の1/5000以上1/10未満、特に好ましくは1/2000以上1/50未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3〜4回繰り返すステップと、(G)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持するステップとを含む、羊膜間葉系幹細胞を調製する方法である。すなわち、第二発明の方法では、第一発明のステップ(A)と同様の手順であるステップ(D)により哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取した後、フローサイトメーターを用いた細胞集団の分離を行うことなく、第一発明のステップ(c1)〜(c3)と同様の手順であるステップ(E)〜(G)の培養を行うことにより、羊膜間葉系幹細胞集団を調製する。第二発明の培養方法の模式図を図3に示す。
本発明は、上記第一発明の方法および/または第二発明の方法により調製された羊膜間葉系幹細胞集団を提供する。本発明に係る羊膜間葉系幹細胞集団は、羊膜間葉系幹細胞以外の細胞が実質的に分離除去された細胞集団であり、細胞集団のうち少なくとも80%、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上が羊膜間葉系幹細胞である細胞集団である。また、本発明に係る羊膜間葉系幹細胞集団は、好ましくはヒト羊膜間葉系幹細胞集団である。
上記第一発明の方法および/または第二発明の方法により調製された羊膜間葉系幹細胞集団は、紡錘状の形態を有する細胞を含み、かつ、高い増殖能を有し、好ましくは50回以上の細胞分裂(population doublings)が可能である。
上記第一発明の方法および/または第二発明の方法により調製された羊膜間葉系幹細胞集団は、軟骨、骨、心筋、神経、肝臓、膵臓などへの高い分化能を有し、好ましくは軟骨、骨、心筋、肝臓への分化能を有する。また、肝硬変時に起こる肝小葉の線維化を軽減する効果を有する。
第二発明の方法により調製された羊膜間葉系幹細胞集団は、FERM P−22119およびFERM P−22125として、独立行政法人製品評価技術基盤機構に寄託されている。
以下に製造例、試験例及び実施例を挙げ、本発明について更に説明する。なお、これらは本発明を何ら限定するものではない。
<羊膜間葉系細胞の細胞集団の調製>
インフォームドコンセントを得たヒト妊婦を帝王切開し、ヒト羊膜を入手した。得られた羊膜から血液などを除去した後、直ちに0.03%ヒアルロニダーゼと0.025%デオキシリボヌクレアーゼIが入ったリン酸塩緩衝液に浸し、手術用ハサミにより断片化した。その後、0.25%trypsin/DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)溶液中、37℃で30分間インキュベートすることにより羊膜組織断片を消化し、消化溶液をガーゼで濾過する操作を6〜8回繰り返した。この工程により、羊膜組織断片からヒト羊膜上皮細胞(Human amnion epithelial cells:HAEC)が除去される。
HAECが取り除かれ、ガーゼに残った羊膜組織断片を、0.075%コラゲナーゼ−0.0075%DNアーゼI/DMEM溶液中、37℃で15分間インキュベートすることにより消化した。得られた消化溶液をガーゼで濾過し、ヒト羊膜間葉系細胞(Human amnion mesenchymal cells:HAMC)を含む細胞集団を採取した。
得られたHAMCは、1.5〜2×10/10cmディッシュとなるように、10%FBS(Biosolutions社製)−DMEM(SIGMA Aldrich Japan社製、D5671)にて、37℃、5%COの条件下で5〜6日培養した。
<フローサイトメーターによる細胞の分取>
培養された細胞を、0.1%trypsin−0.008%EDTA/PBS溶液によりディッシュから剥離回収し、10%FBS−DMEMにより2回洗浄した。得られた細胞は、1×10/mlの濃度になるように、10%FBS−DMEMにより希釈された。
得られた細胞溶液をフローサイトメーターに供し、二次元分布図(スキャッタグラム)を取得した。図1に示すように、細胞集団全体の90%の細胞がスキャッタグラム上で検出され、かつ、楕円形状の細胞集団がスキャッタグラム上において中心よりやや左に位置するように、前方散乱光(Forward Scatter:FS)および側方散乱光(Side Scatter:SS)の感度を設定した。FSおよびSSの感度は、光電子倍増管(Photo multipliertube,PMT)の電圧と増幅率を調節することにより調整した。
次いで、スキャッタグラムに対し、以下の3分割ゲートを設定した。
(1)ゲートS:側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の10%が含まれるように上辺を設定。
(2)ゲートM:側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、ゲートSの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の40%が含まれるように上辺を設定。
(3)ゲートL:側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、ゲートMの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の40%以上が含まれるように上辺を設定。
各ゲートから分取された細胞集団は、2580/cm濃度により初期培養された。(この培養を継代数(P)=1とし、それぞれ、sorted HAMα−S(sHAMα−S)、sorted HAMα−M(sHAMα−M)、sorted HAMα−L(sHAMα−L)とした。
<羊膜間葉系幹細胞の調製>
sHAMα−Sでは、P=1の初期培養の時点で、周囲の細胞と異なるコロニーが観察された(図5aおよび5b)。通常の培養条件で培養を行った場合に観察される上皮様細胞(図5c)とは異なり、紡錘状の細胞(図5a)や、培養神経細胞様の細胞(図5b:細胞−細胞間に大きな空間が存在し、細胞同士がネットワークを構築する)が、コロニーを形成した。
また、別の培養条件として、上記「羊膜間葉系細胞の細胞集団の調製」で得られたHAM細胞を含む細胞集団を、フローサイトメーターに供することなく、低濃度条件下に継代培養を実施した。低濃度条件下による継代培養は、517/cmの濃度で細胞を播種し、一週間維持した後、新たなディッシュに再播種することにより行った。培地は、週に2回交換した。この継代培養を3〜4回繰り返した場合にも、ゲートSから分取された細胞集団の継代培養で観察されたものと同様のコロニー形成が確認された。
上記コロニーが観察された培養を、細胞がコンフルエントになるまで継続し、ヒト羊膜間葉系幹細胞集団(以下、HAMαと称する)を得た。このHAMαについて継代培養を継続した結果を図4に示す。HAMαは、紡錘状の形態を有し(図4a〜c)、50回以上の細胞分裂が可能であった(図4d)。
<羊膜間葉系幹細胞の性質についての検討>
HAMαが羊膜間葉系幹細胞の性質を有するかどうかを確認するために、種々の幹細胞マーカーに対する抗体を用いて免疫細胞化学的解析を行った。一次抗体には、抗Oct3/4(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗OctA(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗c−Myc(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗Sox2(R&D System社製)、抗Nanog(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗KLF4(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗CD44(Abcam社製)、抗SSEA−3(Millipore社製)、抗SSEA−4(Millipore社製)、抗TRA−1−60(Millipore社製)、抗TRA−1−81(Millipore社製)を使用した。一次抗体反応は、4℃にて一晩行った。二次抗体反応は、ビオチン標識二次抗体(ニチレイバイオサイエンス社製)を用いて、室温にて30分行った。その後、FITC標識ストレプトアビジン(Vector Laboratories社製)を室温にて30分反応させて染色を行った。また、核染色は、Hoechst33342(同仁化学研究所製)により行った。染色した標本は、蛍光顕微鏡により観察した。
結果を図6に示す。HAMαは、Oct3/4、c−Myc、Sox2、Nanog、SSEA−3、SSEA−4などの多能性幹細胞マーカーを強く発現していることが明らかになった。
また、HAMαについてFACS解析を行った結果では、間葉系幹細胞マーカー(CD73、CD90、CD105、CD44)の発現が確認された。一方で、血液幹細胞マーカー(CD34、CD14、CD45、HLA−DR)の発現は認められなかった。この結果から、HAMαは間葉系の幹細胞集団であることが示された。
<羊膜間葉系幹細胞の分化能の検討>
HAMαの分化能について検討を行った。まず、HAMαの軟骨分化能について検討を行った。2×10個のHAMα細胞を15ml遠沈管に回収し、150gで5分間遠心分離することにより、HAMαのペレットを得た。得られたHAMαのペレットを、以下の4種類の培地を用いて28日間培養した。(1)ヒト間葉系幹細胞軟骨細胞分化培地キット(hMSC Differentiation BulletKit、Chondrogenic社製)の基本培地、(2)基本培地に10ng/mlのrTGF−β3(R&D Systems社製)を添加したもの、(3)基本培地に10ng/mlのrTGF−β3および500ng/mlのrBMP−2(Astellas Pharma社製)を添加したもの、(4)基本培地に500ng/mlのrBMP−2を添加したもの。
培養後の細胞を回収して得られたペレットについて、RT−PCR法により、軟骨細胞マーカー遺伝子の発現解析を行った。RNAの抽出は、RNeasy Micro kit(QIAGEN社製)を用いて行った。RT−PCR反応は、One−Step RT−PCR kit(QIAGEN社製)を用いて行った。
結果を図7に示す。分化したHAMαは、軟骨細胞マーカーであるSOX9、アグリカン、COL2A1、COL1A1を発現していた。この結果から、HAMαは軟骨への分化能を有していることが明らかになった。
続いて、HAMαの骨分化能について検討を行った。骨分化誘導は、10%FBS−DMEMの基本培地に、10mMのβ-グリセロリン酸二ナトリウム、50μg/mlのアスコルビン酸、100nMのデキサメタゾンを添加した分化培地中で培養することにより行った。独立したHAMα細胞集団(HAMα1〜3)を上記分化培地中で3週間培養した後、培養物からRNAを抽出し、RT−PCR法により、骨形成マーカー遺伝子の発現解析を行った。
結果を図8に示す。分化誘導を行ったHAMαは、骨形成マーカーであるオステオカルシンを発現していた(図8、レーンI)。この結果から、HAMαは骨への分化能を有していることが明らかになった。
<羊膜間葉系幹細胞の性質についての検討・2>
HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lについて、幹細胞マーカーに対する抗体を用いて免疫細胞化学的解析を行った。一次抗体には、抗Oct3/4(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗c−Myc(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗Sox2(R&D System社製)、抗Nanog(Santa Cruz Biotechnology社製)、抗KLF4(Santa Cruz Biotechnology社製)、Nestin(Santa Cruz Biotechnology社製)、Musashi(Abcam社製)、抗CD44(Abcam社製)、抗SSEA−1(Millipore社製)、抗SSEA−3(Millipore社製)、抗SSEA−4(Millipore社製)、抗TRA−1−60(Millipore社製)、抗TRA−1−81(Millipore社製)、抗Vimentin(ダコ・ジャパン社製)を使用した。一次抗体反応は、4℃にて一晩行った。二次抗体反応は、Alexa Flour594またはAlexa Flour488標識二次抗体(invitrogen社製)を用いて、室温にて1時間行った。核染色は、Hoechst33342(同仁化学研究所製)あるいはDapi(Fluomount−G:SouthernBiotec社製)により行った。染色した標本は、蛍光顕微鏡により観察した。
結果を図9および図10に示す。HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lのすべてについて、Oct3/4、c−Myc、Sox2およびKLF4(山中4因子)の顕著な発現が認められた(図9A〜D)。また、HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lのすべてについて、間葉系細胞マーカーであるVimentinの強い発現が認められた(図10F)。これらの結果から、HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lは、いずれも間葉系幹細胞の集団であることが示された。特に、sHAMα−Sは、Mα−MおよびsHAMα−Lに比較して、山中4因子の発現が顕著であり、このことから、sHAMα−Sが、幹細胞としての強い特性を有することが示された。また、HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lのすべてについて、神経幹細胞マーカーであるNestinおよびMusashiの発現が認められた(図9E、F)。
<羊膜間葉系幹細胞の分化能の検討・2>
HAMα、sHAMα−SおよびsHAMα−Lについて、心筋分化能の検討を行った。HAMα、sHAMα−SおよびsHAMα−Lを、1×10個/cmの密度になるように100mmディッシュに播種し、心筋分化培地(20%FBS−DMEMに10μMの5−アザシチジンを添加したもの)中において24時間培養した。その後、培地を20%FBS−DMEMに交換し、1週間に2回新しい20%FBS−DMEMに培地交換することにより、4週間培養した。
(RNA抽出)
培養後、100mmディッシュをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1回洗浄し、RNA抽出用試薬(ISOGEN、和光純薬株式会社)1mLを加え、細胞溶解液を回収した。回収した細胞溶解液に0.2mLのクロロホルムを加えて混合した後、5分間、1000rpmで遠心分離した。回収した上清に、2−プロパノールを加えて混合した後、5分間、1000rpmで遠心分離した。上清を捨て、得られた沈殿物を70%エタノールによりリンスし、5分間、1000rpmで遠心分離した。上清を捨て、得られた沈殿物に滅菌水(RNase/DNaseフリー)を加え、溶解した。
(RT−PCR)
cDNA合成には、TOYOBO ReverTra Aceキット(東洋紡株式会社)を使用し、以下の反応条件により行った。
(1)各RNA 1μgを5分間、65℃で処理し変性させた。
(2)緩衝液、プライマーミックス、エンザイムミックスを規定量添加した。
(3)15分間、37℃処理し逆転写させた。
(4)5分間、95℃処理し逆転写酵素を失活させ、反応を終了させた。
続いて、PCR反応には、QIAGEN PCR COREキット(株式会社キアゲン)使用し、以下の反応条件により行った。
(1)各cDNA 1μg、各500nMプライマー、緩衝液、dNTPを規定量混合させた。
(2)95℃で1分間処理。
(3)95℃で1分間、60℃(または55℃)で1分間、72℃で1分間の処理を40サイクル。
(4)72℃で7分間処理。
得られたPCR産物は、2%アガロース/TAEゲルに供され、電気泳動後、ゲルをエチジウムブロマイドで15分間染色し、ルミノ・イメージアナライザー(LAS3000:GEヘルスケア・ジャパン株式会社)により解析した。
結果を図11に示す。sHAMα−Sのみが、分化誘導前から心筋特異的転写因子であるGATA4を発現しており、分化誘導によりその発現量が増加した。それ以外の細胞集団については、分化誘導の前後を通じてGATA4の発現は見られなかった。
(免疫細胞化学染色)
HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lの心筋組織への分化度を検討するために、心筋組織マーカーであるミオシン軽鎖に対する抗体(抗Mlc2、Proteintech社製)、および心筋ミオシン重鎖に対する抗体(抗cardiac MHC、Abcam社製)を用いて免疫細胞化学的解析を行った。
結果を図12に示す。sHAMα−Sにおけるミオシン軽鎖の発現が確認された。この結果から、sHAMα-Sは他の分画に比べ、心筋への分化能が高いことが示された。
<HAMαの肝硬変に対する効果>
肝硬変モデルマウスにHAMαを投与した場合の、肝硬変における線維化に対する効果について検討した。
(1)肝硬変モデルマウスの作成
6〜8週齢のICRマウスに、四塩化炭素/オリーブオイル溶液(オリーブオイル:四塩化炭素=4:1)を腹腔内に4週間投与し、肝硬変モデルを作成した。
(2)HAMαの投与
肝硬変モデルマウス一匹あたり10個のHAMαを、脾臓あるいは静脈内に投与した。投与から2週間後、肝臓を摘出し、組織学的検討を行った。
(3)組織標本の作成
摘出した肝臓は、4%パラホルムアルデヒド溶液にて固定後、常法により脱水し、パラフィン包埋を行った。パラフィン包埋された肝臓は、ミクロトームによる薄切の後、脱パラフィンされた。脱パラフィン後のサンプルをシリウスレッドにより染色した。
(4)画像解析
染色後の標本について、一枚の標本から無作為に5視野を抽出し、ImageJによる画像解析を実施し、その結果について統計処理を行った。
結果を図13に示す。HAMα投与群の肝臓では、非投与群の肝臓と比較して、線維化領域の有意な減少が見られた。この結果から、HAMαは肝硬変による線維化を減少させる効果があることが示された。
<羊膜間葉系幹細胞の分化能の検討・2>
HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lについて、肝分化能の検討を行った。HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lを、3×10個/cmの密度になるように、コラーゲンでコートされた100mmディッシュに播種した。分化培地には、10%FBS−DMEMに20ng/mLの肝細胞増殖因子(HGF)、10ng/mLの繊維芽細胞増殖因子2(FGF−2)、10ng/mLのオンコスタチンM(OSM)、100nMのデキサメタゾン(Dex)、10units/mLのヘパリンを添加したものを用い、3日ごとに培地を交換して、10日間培養した。
(RT−PCR)
上記の方法に準じて、培養後の細胞からRNAを抽出し、RT−PCRを行った。結果を図14に示す。肝細胞への分化誘導前のsHAMα−SおよびsHAMα−Lにはアルブミンの発現が見られないが、チトクローム450に対するmRNAはすべての群で発現が認められた。この結果から、HAMαは肝細胞への分化能が高い間葉系細胞集団であることが示された。
(免疫細胞化学染色)
HAMα、sHAMα−S、sHAMα−MおよびsHAMα−Lの肝細胞への分化度を検討するために、免疫細胞化学的解析を行った。一次抗体には、肝細胞マーカーに対する以下の抗体:抗アルブミン抗体(Abcam社製)、抗Alpha−1−antitrypsin抗体(Dako社製)、抗ヒトサイトケラチン18(CK18)抗体(ダコ・ジャパン社製)、未分化細胞マーカーに対する抗体(抗サイトケラチン5(CK5)ポリクローナル抗体、Convance社製)、および、間葉系細胞マーカーに対する抗体(抗Vimentin、ダコ・ジャパン社製)を使用した。二次抗体には、Alexa Flour594またはAlexa Flour488標識二次抗体(invitrogen社製)を使用した。核染色は、Hoechst33342(同仁化学研究所製)あるいはDapi(Fluomount−G:SouthernBiotec社製)により行った。染色した標本は、蛍光顕微鏡により観察した。
結果を図15に示す。上記のRT−PCR解析ではsHAMα−Lにはアルブミンの発現が見られなかったが、免疫細胞化学染色解析では強いアルブミンの発現が確認された。また、sHAMα−Lには、他の肝細胞マーカーであるCK18の発現も認められた。一方、sHAMα−Sには、いずれの肝細胞マーカーについてもわずかな発現しか見られなかった。このことから、sHAMα−Lが特に強い肝分化能を有する細胞集団であることが示された。
実施例の結果より、本発明の方法は、長期間にわたり継代培養することができ、かつ、軟骨、骨、心筋および肝細胞への高い分化能を有する羊膜由来間葉系幹細胞を調製できるものであることが示された。また、本発明方法より調製した羊膜由来間葉系肝細胞には肝硬変で生じる肝臓の線維化を軽減する効果があることが明らかである。本発明は、再生医療分野などにおいて利用される羊膜由来間葉系幹細胞の効率的な調製に極めて有用な手段を提供するものである。

Claims (9)

  1. (A)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、
    (B)前記間葉系細胞の細胞集団について、
    (b1)フローサイトメーターを用いて前方散乱光および側方散乱光を検出し、前記間葉系細胞の細胞集団全体の85〜95%が示されるように二次元分布図を作成し、
    (b2)前記二次元分布図上に、前方散乱光の強度に基づいて、四角形の3分割ゲートを設定する
    ことにより選択された細胞を分取するステップと、ここで、前記四角形の3分割ゲートは、
    (i)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の10%が含まれるように上辺を設定した第1のゲートと、
    (ii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第1のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の40%が含まれるように上辺を設定した第2のゲートと、
    (iii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第2のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の40%以上が含まれるように上辺を設定した第3のゲートと
    からなり、
    (C)前記分取された細胞を2580/cm の細胞濃度において播種し、2〜3日間初期培養した後、継代培養するステップと
    を含む、羊膜間葉系幹細胞集団を調製する方法。
  2. 前記ステップ(C)における継代培養は、
    (c2)前記初期培養の1/500以上1/10未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3〜4回繰り返すステップと、
    (c3)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持するステップと
    を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記ステップ(c2)における細胞濃度は、前記初期培養の1/200以上1/50未満である請求項に記載の方法。
  4. 肝細胞、神経細胞、軟骨または骨への分化能を有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により調製された、哺乳動物の羊膜間葉系幹細胞集団。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、(i)の第1のゲートから分取された、哺乳動物の羊膜間葉系幹細胞集団。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、(ii)の第2のゲートから分取された、哺乳動物の羊膜間葉系幹細胞集団。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法において、(iii)の第3のゲートから分取された、哺乳動物の羊膜間葉系幹細胞集団。
  8. 前記哺乳動物は、ヒトである請求項のいずれか1項に記載の羊膜間葉系幹細胞集団。
  9. 紡錘状の形態を有する細胞を含み、かつ、50回以上の細胞分裂(population doublings)が可能である請求項のいずれか1項に記載の羊膜間葉系幹細胞集団。
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