JP2014506453A - 生得的多能性体細胞 - Google Patents
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Abstract
本発明の態様は、生得的多能性体細胞(SCIPP)の組成物に関する。SCIPPは、主要な胚葉(すなわち、外胚葉、内胚葉および中胚葉)それぞれの機能的な誘導体に分化する能力を有する。また、当該体細胞を対象から同定および単離するための方法およびキット、並びにSCIPPを研究目的または治療目的で使用するための方法およびキットも提供される。
Description
相互参照
本出願は、2011年1月19日に出願された米国仮特許出願第61/434,264号の利益を主張し、その出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
本出願は、2011年1月19日に出願された米国仮特許出願第61/434,264号の利益を主張し、その出願は、その全体が参照によって本明細書に組み入れられる。
政府の権利
本発明は、国立衛生研究所(NCI)により授与された助成金R01 CA097214の基、政府支援を受けて為された。政府は本発明においてある種の権利を有する。
本発明は、国立衛生研究所(NCI)により授与された助成金R01 CA097214の基、政府支援を受けて為された。政府は本発明においてある種の権利を有する。
緒言
幹細胞生物学への理解は、生物医学研究のいくつかの側面に対して重要である。再生医療において、幹細胞は欠損した組織を修復または置換する可能性を秘めている。がん等の病態では、幹細胞の性質は、悪性転換の重要なステップに関係している。
幹細胞生物学への理解は、生物医学研究のいくつかの側面に対して重要である。再生医療において、幹細胞は欠損した組織を修復または置換する可能性を秘めている。がん等の病態では、幹細胞の性質は、悪性転換の重要なステップに関係している。
現在、再生医療は、胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞を利用することに労力の大部分を費やしている。それぞれには欠点がある。胚性幹細胞は倫理的な問題を提起し、入手が困難である。誘導多能性幹細胞は、ヒト細胞に外来遺伝子を導入する方法によって非常に低い頻度で生じる。この方法は非常に困難であり、そのため、FDAの認可を受けて使用することができない。
相対的に豊富で、増殖可能であり、胚性幹細胞に付随する同様の倫理的問題を伴わずに入手可能である、幹細胞の新しい供給源を発見することは、再生医療の分野を進展させるための重要な目標となる。
概要
本発明の態様は、主要な胚葉(すなわち、外胚葉、内胚葉および中胚葉)のそれぞれの機能的派生体に分化する能力を有する、生得的多能性体細胞(Somatic Cells with Innate Potential for Pluripotency、SCIPP;本明細書では単一の内因性多能性体細胞(ePS細胞)とも称される)の組成物に関する。また、対象から体性幹細胞を同定および単離するための方法およびキット、並びに、それらの遺伝子改変の方法および組織再生における使用も提供される。
本発明の態様は、主要な胚葉(すなわち、外胚葉、内胚葉および中胚葉)のそれぞれの機能的派生体に分化する能力を有する、生得的多能性体細胞(Somatic Cells with Innate Potential for Pluripotency、SCIPP;本明細書では単一の内因性多能性体細胞(ePS細胞)とも称される)の組成物に関する。また、対象から体性幹細胞を同定および単離するための方法およびキット、並びに、それらの遺伝子改変の方法および組織再生における使用も提供される。
発明の詳細な説明
実質的に富化された、哺乳類の生得的多能性体細胞(Somatic Cells with an Innate Potential for Pluripotency,SCIPP)を提供する。SCIPPは、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて、外胚葉系、内胚葉系および中胚葉系の分化細胞を生み出すのに有用である。SCIPPは、実験的評価のための移植、並びに系統および細胞に特異的な産物の供給源としての移植に有用である。
実質的に富化された、哺乳類の生得的多能性体細胞(Somatic Cells with an Innate Potential for Pluripotency,SCIPP)を提供する。SCIPPは、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて、外胚葉系、内胚葉系および中胚葉系の分化細胞を生み出すのに有用である。SCIPPは、実験的評価のための移植、並びに系統および細胞に特異的な産物の供給源としての移植に有用である。
一部の実施形態では、前記細胞は、細胞系マーカー陰性(Lin−)、CD73+、且つCD90−であると定義される。Lin−細胞の判定は、細胞に結合して、それによりその細胞が特異的な細胞系統(例えば、血液細胞系統、例えば、マクロファージ、リンパ球等)に属していると同定する、系統マーカー特異的試薬(例えば、抗体)を使用することを含む、いかなる好都合な様式でも行うことができる。ある実施形態では、系統パネルには、CD2、CD3、CD16、CD31、CD45、CD64および/またはCD140bに対する結合試薬が含まれ得る。他の系統マーカーも、Lin−細胞を判定するのに使用され得る。
以下に詳細に記載される通り、SCIPPは、神経細胞および心筋細胞を含む機能的な分化細胞になることができ、それ故、組織が再生または置換されることにより恩恵がもたらされる種々の傷害、外傷または病状(例えば、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病、変形性関節症、創傷修復、化学療法後の回復、加齢等)を治療するのに使用することができる。
幹細胞の機能はいくつかの病状(例えば、がん)においても重要であるため、これらの細胞は、いくつかの疾患経過に対する予防および治療介入のための薬剤および生物マーカーの、治療目的でのスクリーニングおよび開発に使用される可能性も有している。SCIPPには、悪性形質転換並びに細胞の確率的転換(例えば、安定な表現型状態から可塑的な状態への転換)を研究するためのモデルとしての用途もある。
ある対象からSCIPPを単離するための系およびキットも提供される。さらに、本発明の態様は、エンドユーザーを対象とする、研究用および治療目的でのSCIPPの単離および提供のサービスに関する。
本発明についてさらに詳細に記述する前に、本発明が、記載された特定の実施形態に限定されるものではなく、それ自体、当然のことながら変化し得るものであることを理解されたい。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲にのみ限定されるものであるため、本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的とし、限定を意図するものではないことも理解されたい。
値の範囲が提供されたとき、その範囲の上限と下限の間の、文脈によって特に明示されない限り下限の10分の1の単位までの、間に挟まれた各値、およびその記載範囲内のあらゆる他の記載された、または間に挟まれた値は、本発明に包含されることを理解されたい。記載範囲に具体的に除外される境界値がある場合は、これらのより小さい範囲の上限および下限は、独立してそのより小さい範囲内に含まれてよく、これもまた本発明に包含もされる。記載範囲が一方または両方の境界値を含む場合、含まれる境界値のどちらかまたは両方を除外した範囲もまた、本発明に含まれる。
ある範囲は、「約」という用語に先行された数値を用いて、本明細書で提供される。本明細書において「約」という用語は、それに続くまさにその数値、並びにその用語に続く数値に近いまたは近似した数値のための字義通りのサポートを提供するのに使用される。ある数値が具体的に記載された数値に近いまたは近似しているかどうかを決定する際、近いまたは近似している未記載の数値は、それが提示された文脈において、具体的に記載された数値の実質的な等価物を提供する数値であり得る。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての専門用語および科学用語は、本発明が属する技術分野において通常の技量を有する者により一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の実施または試験に、本明細書に記載されるものと同様または等価であるいかなる方法および材料も使用可能ではあるが、本明細書には、代表的な実例となる方法および材料が記載されている。
本明細書で引用する全ての文献および特許は、個々の公報または特許が、あたかも具体的且つ個別的に参照により組み入れられることを指示されたかの如く、参照により本明細書に組み入れられ、引用された文献と関連した方法および/または材料を開示・説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。あらゆる文献の引用は、出願日前の文献の開示のためのものであって、本発明が先願発明によってかかる文献に先行しないと解されるべきではない。さらに、提供される文献の日付は、実際の刊行日とは異なる場合があり、独立に確認される必要があり得る。本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈によって特に明示されない限り、複数の指示対象を含むことに注意されたい。さらに、特許請求の範囲が、いかなる随意的な要素をも除外するよう記述され得ることに注意されたい。従って、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙と関連して、「単に」、「唯一の」などのような排他的専門用語を使用するための、または「消極的な」限定を使用するための先行詞として働くように意図される。
本開示を読む際に当業者に明らかであるように、本明細書で記述され説明される個々の実施形態はそれぞれ、本発明の範囲または精神から逸脱することなく、その他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離することができる、またはそれらと容易に組み合わせることができる、別々の構成要素および特徴を有する。記載されるいかなる方法も、記載された事象の順序で、または論理的に可能なあらゆる他の順序で、実行され得る。
定義
「個体」、「対象」、「宿主」および「患者」という用語は、本明細書では同義的に使用され、本明細書に記載の細胞を単離または同定するための、および/または診断、処置、または治療が望まれるもの、特にヒトのための、いずれかの組織の供給源である、あらゆる哺乳類対象を意味する。
「個体」、「対象」、「宿主」および「患者」という用語は、本明細書では同義的に使用され、本明細書に記載の細胞を単離または同定するための、および/または診断、処置、または治療が望まれるもの、特にヒトのための、いずれかの組織の供給源である、あらゆる哺乳類対象を意味する。
「遺伝子産物」は、ペプチドまたはタンパク質等の、遺伝子によって発現または産生される、生体高分子産物である。遺伝子産物は、例えば、スプライシングされていないRNA、mRNA、スプライスバリアントmRNA、ポリペプチド、翻訳後修飾されたポリペプチド、スプライスバリアントポリペプチド等であり得る。また、RNA遺伝子産物を鋳型として用いて生成される生体高分子産物(すなわち、RNAのcDNA)もこの用語に包含される。遺伝子産物は、酵素によって、組換えによって、化学作用によって、またはその遺伝子を産する細胞内で、生成され得る。多くの実施形態では、遺伝子産物は、タンパク質性である場合、生物活性を示す。多くの実施形態では、遺伝子産物は、核酸である場合、生物活性を示すタンパク質性遺伝子産物に翻訳され得る。
「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、本明細書では同義的に使用され、任意の長さのアミノ酸の多量体型を意味し、それには、コードアミノ酸および非コードアミノ酸、化学的または生化学的に改変または誘導体化されたアミノ酸、並びに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドが含まれ得る。前記用語には、融合タンパク質、例えば、限定はされないが、N末端メチオニン残基を有するまたは有さない、異種アミノ酸配列を含む融合タンパク質、異種および相同リーダー配列を含む融合物;免疫学的に標識されたタンパク質等が含まれる。
「ポリヌクレオチド」という用語は、任意の長さの、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドの多量体型を意味し、例えば、限定はされないが、一本鎖、二本鎖、または複数本鎖のDNAまたはRNA、ゲノムDNA、cDNA、DNA−RNAハイブリッド、またはプリンおよびピリミジン塩基、もしくは他の天然のヌクレオチド塩基、化学的もしくは生化学的に修飾されたヌクレオチド塩基、非天然のヌクレオチド塩基、もしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含む重合体が含まれる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチド等の修飾ヌクレオチド、およびヌクレオチド類似体、並びに一つまたは複数の非ヌクレオチド成分を含み得る。「ポリヌクレオチド」という用語は、ペプチド核酸も包含する(PNA;Pooga et al Curr Cancer Drug Targets. (2001) 1:231-9)。
「特異的結合」という用語は、様々な標的分子から成る均一混合物中に存在する特定の標的分子(例えば、ある細胞の表面上に存在するある特定のタンパク質)に選択的に結合する親和性試薬の能力を意味する。
特異的結合試薬(「親和性試薬」とも称される)には、例えば、抗体、抗体の抗原結合性断片;抗体のエピトープ結合性断片;または標的分子(例えば、ポリペプチド)上のエピトープに特異的に結合する他のタンパク質が含まれる。特異的な結合試薬には、標的分子に対する特異的結合を示す非抗体試薬も含まれる。
「抗体」、「抗体タンパク質」、「抗体試薬」等の用語は、抗体のエピトープ結合ドメインを少なくとも有する親和性試薬を意味するように、本明細書では使用される。これらの用語は、当業者により十分に理解されるものであり、抗原に特異的に結合する一つまたは複数のポリペプチドを含有するタンパク質を意味する。抗体の種類としては、限定はされないが、抗体アイソタイプ、モノクローナル抗体およびその抗原結合性断片(例えば、Fab、Fv、scFv、およびFd断片、キメラ抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体等)、人工抗体(例えば、インビトロで生産および選択された抗体および抗体断片)が挙げられる。一部の実施形態では、抗体試薬は、不溶性の、または固体の、担体(例えば、プレート、ビーズ、膜等)上に固定化される。一部の実施形態では、抗体のパネルが提供される。ここで、抗体のパネルは2つ以上の異なる抗体であり、それぞれは、SCIPPの特徴(signature)を構成するポリペプチドに対し特異的である。抗体試薬は、選択された標的ポリペプチドまたは選択された標的ポリペプチドの集合体に特異的に結合する。
一部の実施形態では、抗体試薬は、直接的または間接的に、検出可能に標識される。直接標識としては、放射性同位元素;検出可能な産物を有する酵素(例えば、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼ等);蛍光ラベル(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、フィコエリトリン等);蛍光放出金属;化学発光化合物、例えば、ルミノール、イソルミノール、アクリジニウム塩等;生物発光化合物、例えば、ルシフェリン、蛍光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質)等が挙げられる。他の適切な検出可能な標識としては、蛍光色素、例えば、フルオレセイン(Fluorescein)、ローダミン(Rhodamine)、テキサスレッド(Texas Red)、Cy2、Cy3、Cy5、ルシファーイエロー(Lucifer Yellow)、アレクサ(Alexa)色素ファミリー、BOD1PY、ホウ素ジピロメテンジフルオリド(boron dipyrromethene difluoride)、オレゴン(Oregon Green)、フィコエリトリン(Phycoerythrin)、フィコビリンタンパク質等が挙げられる。間接標識としては、抗体試薬に特異的な二次抗体(二次抗体は上記のように標識されている);および特異的結合対のメンバー、例えば、ビオチン−アビジン等が挙げられる。
「特異的に結合する」という用語は、特異的結合試薬の文脈、例えば、抗体結合の文脈においては、特定のポリペプチド、すなわち、ポリペプチドのエピトープ、例えば、細胞表面に発現されたポリペプチド(例えば、CD73、CD90等)に対する、高結合活性および/または高親和性結合を意味する。例えば、特定の標的タンパク質(またはその断片)上のエピトープに対する抗体結合は、他のいかなるエピトープ(とりわけ、同じ試料中に存在し得るエピトープ)に対する同じ抗体の結合よりも、より強力である。ポリペプチドに特異的に結合する特異的結合試薬(例えば、抗体)は、微弱ではあるが検出可能なレベルで、他のポリペプチドに結合し得る(例えば、特異的なポリペプチドに対して示される結合の10%以下)。そのような微弱な結合、つまりバックグラウンドの結合は、例えば適切な対照を用いることで、標的ポリペプチドに対する特異的な抗体結合と分けて、容易に識別可能である。
「単離された」または「実質的に単離された形態にある」組成物(例えば、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、抗体、または細胞の組成物)(「富化された」または「精製された」試料と称される場合もある)は、その組成物が自然に発生する環境、またはそれが発生した環境とは異なる環境にある、組成物を意味する。例えば、実質的に単離された形態にある細胞は、その細胞が自然に発生した宿主中の場所の外側にある、またはそこから離れている。実質的に単離された形態にある組成物は、通常、実質的に精製されているか、または富化されている。
本明細書で使用される場合、「対象」、「宿主」、「患者」、および「個体」は、同義的に使用されて、哺乳動物、例えば、ヒト、非ヒト霊長類、有蹄動物、イヌ、ネコ、ウマ等を意味する。
「評価する」という用語には、あらゆる形態の測定が含まれ、ある成分が存在するかどうかを決定することが含まれる。「決定する」、「測定する」、「評価する(evaluating、assessing)」、および「アッセイする」という用語は、同義的に使用され、定量的測定および定性的測定が含まれる。評価は相対的または絶対的なものであり得る。「〜の存在を評価する」には、存在する何かの量を決定すること、および/または存在するかしないかを決定することが含まれる。本明細書で使用される場合、「決定する」、「測定する」、「評価する」、および「アッセイする」という用語は、同義的に使用され、定量的測定および定性的測定の両方を含む。
CD73(エクト−5'−ヌクレオチダーゼとも称される)は、中性pHでAMPの生理活性アデノシンへの変換を触媒し;その酵素活性とは無関係な機能も有する、膜結合型酵素である。CD73は、内皮細胞、周皮細胞、濾胞樹状細胞、およびT細胞サブセット等を含む、種々の細胞上で発現される。ヒトCD73のアミノ酸配列が知られており、例えば、GenBank登録番号AAH65937、NP_002517、およびAI40168に存在する。
CD90は、Thy−1としても知られており、25〜37kDで、グリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型の、多くの細胞型に見られる細胞表面糖タンパク質である。ヒトCD90のアミノ酸配列が知られており、例えば、GenBank登録番号P04216、AAG13904、AAH65559、およびNP_006279に存在する。Seki et al. (1985) Proc. Natl. Acad. ScL U.S.A. 82:6657-6661も参照されたい。
当業者であれば、本明細書に記載の細胞表面マーカー(例えば、CD抗原)の発現レベルは、細胞表面上のマーカータンパク質の検出量を反映することは理解するであろう。従って、染色に対し「陰性」である細胞(例えば、マーカー特異的抗体の結合レベルが、アイソタイプ適合対照と検出可能な程違わない)は、そのマーカーが少量であることを表している場合がある。細胞を特定のマーカーに対して「陽性」または「陰性」と称することは当該技術分野では一般的なことであるが、実際の発現レベルは量的形質である。細胞表面上の分子数は、数対数単位で異なり得るが、それでも、「陽性」と特徴付けられる。
一部の実施形態では、細胞のマーカー特異的染色強度は、例えば当該技術分野において既知の蛍光標識された抗体を用いるフローサイトメトリーによってモニタリングされ得る。フローサイトメトリーでは、単一細胞に結合している蛍光色素(例えば、マーカー特異的抗体に結合された蛍光色素)の量的レベルを、レーザーを使用して検出する。蛍光色素の検出レベルは、特異的試薬(例えば標識された抗体)が結合した細胞表面マーカーの量に比例する。フローサイトメトリーは、複数の異なる蛍光色素のレベルを同時に検出するのに使用することができ、従って、単一細胞に結合した、複数種の異なる標識をされたマーカー特異的試薬(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、もしくは10種またはそれ以上の異なる蛍光色素/マーカー)の結合のレベルを検出することができる。フローサイトメトリーまたはFACSは、特異的試薬への結合の強度、並びに細胞サイズおよび光散乱等の他のパラメーターに基づいて細胞集団を分離するのにも使用することができる。染色の絶対レベルは特定の蛍光色素および試薬調製によって異なり得るが、データは対照に対して正規化することができる。
分布を対照に対して正規化するために、各細胞は、所望の各パラメーター(例えば、蛍光色素、光分散等)について、特定の染色強度を有するデータ点として記録される。これらのデータ点は対数スケールによって表され、そこでの測定の単位は任意の染色強度である。一例では、試料中で最も明るく染色された細胞が、未染色の細胞より4対数ほどもより強度が高い場合がある。この様式で表す場合、最も高い対数の染色強度にある細胞が高陽性(bright)で、一方で最も低い強度にある細胞が陰性であることは明らかである。「低」陽性に染色された細胞は、アイソタイプ適合対照の明るさを超える染色レベルを有するが、集団中に通常見出される最も明るく染色される細胞ほど強い染色レベルは有しない。代替的な対照は、表面に規定密度のマーカーを有する担体(例えば、組み立てビーズまたは細胞株)を利用し得、これにより強度についての陽性対照が提供される。
ある遺伝子の遺伝子発現レベルが、本明細書で開示される(例えば、図15、図34を参照)。遺伝子の特定は、Entrez PubMedデータベース[www(dot)ncbi(dot)nlm(dot)nih(dot)gov /sites/entrez?cmd=Pager&db=pubmed]を「Gene」検索を用いて検索することにより、見出され得る。PubMedから得られたある種の代表的な遺伝子IDは、以下に提供される(全てヒトについてのものである):
KLF4(Kruppel様因子4):遺伝子ID9314
cMYC(v−myc骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ)):遺伝子ID4609
OCT4(POU5F1):遺伝子ID5460
NANOG(Nanogホメオボックス):遺伝子ID79923
CD24:遺伝子ID100133941
EPCAM(上皮細胞接着分子):遺伝子ID4072
CECR1(ネコ眼症候群染色体領域、候補1):遺伝子ID51816
DNMT3B(DNA(シトシン−5−)−メチルトランスフェラーゼ3β):遺伝子ID1789
PTGS2(プロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼ2):遺伝子ID5743。
KLF4(Kruppel様因子4):遺伝子ID9314
cMYC(v−myc骨髄球腫症ウイルス癌遺伝子ホモログ(トリ)):遺伝子ID4609
OCT4(POU5F1):遺伝子ID5460
NANOG(Nanogホメオボックス):遺伝子ID79923
CD24:遺伝子ID100133941
EPCAM(上皮細胞接着分子):遺伝子ID4072
CECR1(ネコ眼症候群染色体領域、候補1):遺伝子ID51816
DNMT3B(DNA(シトシン−5−)−メチルトランスフェラーゼ3β):遺伝子ID1789
PTGS2(プロスタグランジン−エンドペルオキシドシンターゼ2):遺伝子ID5743。
生得的多能性体細胞(SCIPP)のマーカー
生得的多能性体細胞が提供され、本明細書では、SCIPPと称される。SCIPPは、本明細書において、内因性多能性体細胞(endogenous Pluripotent Somatic cell、ePS細胞)とも称され得る。「生得的多能性体細胞」、「SCIPP」、「内因性多能性体細胞」、および「ePS」という用語は、本明細書では同義的に使用され得る。SCIPP集団は、種々の研究および治療目的、例えば、移植、組織再生(例えば、対象の損傷した細胞/組織の置換または修復のための)、インビトロ発生アッセイ、薬物スクリーニング、細胞の分化および相互作用の実験モデル;増殖因子および分化因子の定義、並びに特定の系統の発生に関わる遺伝子の特徴付けのためのスクリーニングインビトロアッセイ等のいずれかにおいて有用である。天然の細胞をこれらの目的に使用してもよく、またはそれらは変化した能力を提供するために遺伝的に改変されていてもよい。
生得的多能性体細胞が提供され、本明細書では、SCIPPと称される。SCIPPは、本明細書において、内因性多能性体細胞(endogenous Pluripotent Somatic cell、ePS細胞)とも称され得る。「生得的多能性体細胞」、「SCIPP」、「内因性多能性体細胞」、および「ePS」という用語は、本明細書では同義的に使用され得る。SCIPP集団は、種々の研究および治療目的、例えば、移植、組織再生(例えば、対象の損傷した細胞/組織の置換または修復のための)、インビトロ発生アッセイ、薬物スクリーニング、細胞の分化および相互作用の実験モデル;増殖因子および分化因子の定義、並びに特定の系統の発生に関わる遺伝子の特徴付けのためのスクリーニングインビトロアッセイ等のいずれかにおいて有用である。天然の細胞をこれらの目的に使用してもよく、またはそれらは変化した能力を提供するために遺伝的に改変されていてもよい。
一部の実施形態では、SCIPPは、細胞表面上に存在するマーカーを特異的に認識する試薬を使用することにより、細胞の混合物から富化されうる。SCIPPは、検出可能なレベルのマーカーCD73を発現している、つまりマーカーCD73「陽性」であり、Thy−1(CD90)の発現の欠如について選択される、つまりThy−1(CD90)「陰性」である。SCIPP細胞はさらに、系統特異的マーカーの発現欠如の表現型を有する。染色を目的として、結合試薬の混合物(本明細書では「Lin」と命名)が使用され得る。Linのパネルは、2つ以上の系統マーカーを認識する結合試薬、例えば、抗体およびその機能的結合断片、リガンド、ペプチド模倣薬等を含む。Linパネル用に適切なマーカーは、成熟細胞上で典型的に発現されるものであるが、多系統、または幹細胞および前駆細胞上には存在しない。系統パネルマーカーには、CD2、CD3、CD16、CD31、CD45、CD64、CD140b、およびそれらの任意の組み合わせが非限定的に含まれる。
SCIPPは、それらの遺伝子発現パターンに基づいて、さらに特徴付けられ得る。図15および34は、SCIPP細胞集団(図15ではR1−ALD+およびR1−ALD−;図34ではR1)ならびに他の非SCIPPサブセット(R3−ALD+、R3−ALD−、ヒトMSC、およびヒトES細胞株H7)において分析された、ある遺伝子の制御倍率を示している。図15および34における各細胞集団において、ある遺伝子が増加/減少した発現を示しているかどうかを決定するための対照として、ヒトES細胞株H9における遺伝子発現が使用されている。SCIPPは、図15または34に示されている任意の1以上の遺伝子、2以上の遺伝子、3以上の遺伝子、5以上の遺伝子、10以上の遺伝子、20以上の遺伝子、または全ての遺伝子の発現について類似した遺伝子発現パターンを有し得る。簡潔のために図15または34に記載されている、本発明の態様によるSCIPPの遺伝子発現パターンは、その表中に記載されている全ての遺伝子発現の組み合わせを含み、従って、ありとあらゆる遺伝子発現の組み合わせが個々に且つ明示的に開示されるかの如く開示されることを、出願人は強調する。
SCIPPは、それらの遺伝子発現パターンに基づいて、さらに特徴付けられ得る。図15および34は、SCIPP細胞集団(図15ではR1−ALD+およびR1−ALD−;図34ではR1)ならびに他の非SCIPPサブセット(R3−ALD+、R3−ALD−、ヒトMSC、およびヒトES細胞株H7)において分析された、ある遺伝子の制御倍率を示している。図15および34における各細胞集団において、ある遺伝子が増加/減少した発現を示しているかどうかを決定するための対照として、ヒトES細胞株H9における遺伝子発現が使用されている。SCIPPは、図15または34に示されている任意の1以上の遺伝子、2以上の遺伝子、3以上の遺伝子、5以上の遺伝子、10以上の遺伝子、20以上の遺伝子、または全ての遺伝子の発現について類似した遺伝子発現パターンを有し得る。簡潔のために図15または34に記載されている、本発明の態様によるSCIPPの遺伝子発現パターンは、その表中に記載されている全ての遺伝子発現の組み合わせを含み、従って、ありとあらゆる遺伝子発現の組み合わせが個々に且つ明示的に開示されるかの如く開示されることを、出願人は強調する。
例えば、本明細書に記載のSCIPPは、多能性維持に関わる遺伝子、および/または分化細胞を多能性に再プログラムするために使用される遺伝子を発現し得る(多能性因子および再プログラム因子の例示的な記述としては、米国特許出願公開第US20090068742号(Yamanaka et al.);同第US20090191159号(Sakurada et al.);同第US20080233610号(Thomson et al.);および同第US20080280362号(Jaenish et al.)を参照されたい;それぞれはその全体が参照により本明細書に組み入れられる)。SCIPPにおいて発現される、この分類の遺伝子には、KLF4、MYC、OCT4、NANOG、CD24およびこれらの任意の組み合わせが含まれる。SCIPPは、ある種のエピジェネティックな可塑性マーカー(例えば、CECR1、DNMT3B、または両方)、ストレスマーカー(例えば、PTGS2/COX2)、細胞接着分子(例えば、EPCAM)、またはそれらの任意の組み合わせを発現し得る。図15および図34に示すように、KLF4、MYC、およびPTGS2遺伝子のそれぞれの発現レベルは、ESCまたはMSCのいずれかにおいて観察される遺伝子発現レベルと比較した場合、SCIPP(R1−ALD+およびR1−ALD−)において増加している。SCIPPにおけるPOU5F1(OCT3/4)、NANOG、CD24およびEPCAM遺伝子のそれぞれの発現レベルは、MSCと比較して増加しており、ESCで検出されるそれと同等のレベルである。SCIPPにおけるCECR1およびDNMT3B遺伝子のそれぞれの発現レベルは、ESCと比較して減少しており、MSCで検出されるそれと同等のレベルである。
従って、ある実施形態では、SCIPPは、ESCまたはMSCのいずれかと比較して増加したレベルの、KLF4、MYC、およびPTGS2遺伝子のうちのいずれか一つまたは複数を発現する。ある実施形態では、SCIPPは、MSCと比較して増加したレベルで、且つ、ESCで検出されるそれと同等のレベルで、POU5F1/OCT3/4、NANOG、CD24およびEPCAM遺伝子のうちのいずれか一つまたは複数を発現する。ある実施形態では、SCIPPは、ESCと比較して減少したレベルで、且つ、MSCで検出されるそれと同等のレベルで、CECR1およびDNMT3B遺伝子のいずれか1つまたは両方を発現する。
ある実施形態では、SCIPPの集団は、ALD+細胞およびALD−細胞の両方を含有する。
対象中に存在するとき、SCIPPは、上皮マーカーを発現しており、定常状態では他の細胞と容易には識別されない。しかし、ある条件下では、SCIPPは、増加したレベルのある種の多能性遺伝子、例えば、OCT4、NANOG、SOX等の発現を開始する。そのような条件には、組織の損傷(例えば、創傷治癒条件下)、アクチビンAの存在、およびdsDNA切断発生時が含まれる。
SCIPPは培地中で増殖し得るが、不死ではない、すなわち、SCIPPは制限された増殖能を有する。他の幹細胞(例えばES細胞)とは対照的なこの特徴は、前記細胞またはその誘導体を、組織の再生または修復のための治療剤として使用する際に、ある利点を与える。具体的には、SCIPPは、対象における制御されない増殖について低減した能力を有する。
SCIPPは、ある種の培養基上またはある種の培地製剤中での増殖能に基づいてさらに特徴付けられ得る。SCIPPは、インビトロ培養において独特な増殖特徴を示す。例えば、SCIPPは、胎盤線維芽細胞フィーダー細胞上およびATALA培地中で増殖することができる(以下の実施例の項を参照)。この独特な増殖特性は、SCIPPが体細胞組織から増殖することを可能とし、それによって、CD73、CD90および/または系統マーカーの発現に基づく培養前ソーティングの使用さえなしに、高度に富化されたSCIPP培養物を生産するための頑強な(robust)方法を可能にする。
ヒト乳腺組織を対象にした初期研究に基づくと、およそ5%の管上皮細胞(以下および図ではR1と称する)は、典型的には、CD73+/CD90−細胞サブセットに含まれる。この5%のCD73+/CD90−管上皮細胞サブセットのうち、およそ3%が典型的な無病個体におけるSCIPP細胞である。これは、CD73+/CD90−サブセットの増殖および発生的特徴の分析に基づいている。例えば、およそ3%のCD73+/CD90−細胞は、(1)培地中でマンモスフィアまたはニューロスフィアを形成し、(2)多能性を有するコロニーを生じる(例えば、胎盤性フィーダー細胞上またはATALA培養条件中で)。
SCIPPの単離/富化方法
SCIPPの単離/富化方法が提供される。単離/富化されたSCIPP試料は、SCIPP表現型の単一細胞を含み得るか、または、選択された表現型のうち1%以上(例えば、前記細胞のうち2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、100%まで)のSCIPPを含有する細胞集団を含み得、例えば、選択された表現型のうち1%〜100%、5%〜100%、8%〜100%、10%〜100%、15%〜100%のSCIPPを含有する細胞集団であり得る。
SCIPPの単離/富化方法が提供される。単離/富化されたSCIPP試料は、SCIPP表現型の単一細胞を含み得るか、または、選択された表現型のうち1%以上(例えば、前記細胞のうち2%以上、3%以上、4%以上、5%以上、6%以上、7%以上、8%以上、9%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、100%まで)のSCIPPを含有する細胞集団を含み得、例えば、選択された表現型のうち1%〜100%、5%〜100%、8%〜100%、10%〜100%、15%〜100%のSCIPPを含有する細胞集団であり得る。
上記で言及したように、SCIPPは、いずれかの親和性試薬(例えばモノクローナル抗体)を用いて同定される特異的マーカーに基づいて、および/または、分化(differential)培養技術によって、例えば、対象から得られた細胞試料を胎盤線維芽細胞フィーダー細胞上もしくはATALA培地中で培養することによって、対象から得られた細胞試料中の他の細胞から分離することができる。従って、以下に詳細に記載されるように、単離方法には、対象由来の細胞の集団を、CD73+/CD90−/Lin−細胞に関して富化し、続いて、SCIPP増殖促進条件下で、それらの細胞を培養することが含まれ得る。他の実施形態では、対象由来の細胞試料は、最初のCD73+/CD90−/Lin−細胞の富化無しで、SCIPP増殖促進条件に暴露され得る。富化/分化増殖のいかなる組み合わせも、本明細書に詳細に記載されるSCIPPを得るのに使用され得ることに注目されたい。さらに、CD73+細胞、CD90−細胞、またはLin−細胞のうち1つのみについての富化も使用され得る(3つ全てに対立するものとして)。
SCIPP細胞の供給源として有用な、エクスビボおよびインビトロにおける細胞集団には、種々の体細胞組織のいずれか(例えば、乳腺組織、膵臓組織等)に由来する、新しく採取または凍結された細胞が含まれ得、ある実施形態では、これらの組織は「正常」(すなわち、腫瘍性でなく、腫瘍細胞を含有しない等)または「無病」である。「無病」とは、組織が、がんに関して無症候性であるか、もしくは実質的に無症候性であること、または組織が由来する対象が、がんに関して無症候性である、もしくは臨床的寛解期にあることを意味する。「寛解」または「臨床的寛解」とは、同義的に使用され得るが、がん性細胞は未だ体内に存在している可能性があるが、臨床診断に基づいて、がんの臨床徴候、放射線学的徴候、および症状が、有意に減少した、または完全に消失したことを意味する。従って、寛解には部分的寛解および完全な寛解が包含されることが意図される。「正常」および「無病」という用語は、本明細書で同義的に使用され得る。ある実施形態では、SCIPPの供給源は、例えば乳房縮小術から得られるような、無病または正常な乳腺組織である。前駆細胞は、あらゆる哺乳類種、例えばヒト、ウマ、ウシ、ブタ、イヌ、ネコ、げっ歯類(例えばマウス、ラット、ハムスター)、霊長類等から得られ得る。組織は、生体ドナーから生検によって採取されるか、または死後約96時間以内の、死亡したもしくは瀕死のドナーから採取されるか、または新しく凍結された組織、死後最大72時間以内に凍結され、約−20℃未満で、通常はおよそ液体窒素温度(−180℃)で無期限に維持された組織であり得る。
本細胞は、ある細胞表面マーカーを発現するが、ある細胞特異的マーカーは欠如している細胞を富化する技術によって、細胞の混合物から分離される。例えば、SCIPPについて富化された試料を生産する方法には、細胞試料(例えば、体細胞試料)を、CD73に特異的な親和性試薬、およびCD90に特異的な親和性試薬と接触させ、その後CD73陽性且つCD90陰性である細胞に関して選択することが含まれる。一部の実施形態では、細胞試料は、系統マーカー(Lin)陰性である細胞に関しても選択される(上記の通りに;例えば、試料を、Linマーカーに特異的な親和性試薬と接触させ、Lin陰性である細胞に関して選択すること;細胞は同時にまたは順次にCD73+ CD90−である細胞に関して選択され得る)。従って、選択は、全てのマーカーに対して、同時に、またはあらゆる適切な順序過程でなされ得る(例えば、Linマーカーおよび/またはCD90のうちの一つまたは複数に対して、陰性選択が行われ、続いてCD73に対して陽性選択が行われる)。
本細胞はさらに、上記の(および図15および図34に示される)一つまたは複数の遺伝子の発現レベルに基づいて単離され得る。
組織から細胞を単離するために、適切な機械的処理工程および/または酵素処理工程が使用され得、細胞は、分散または懸濁に適切な溶液中に置かれる。そのような溶液は、一般的には、低濃度(一般的には5〜25mM)の許容できる緩衝液と併せて、ウシ胎仔血清または他の天然の因子が好都合に添加された、平衡塩類溶液(例えば生理食塩水、PBS、ハンクス平衡塩類溶液等)である。好都合な緩衝液には、HEPES、リン酸緩衝液、乳酸緩衝液等が含まれる。細胞単離のための酵素には、コラゲナーゼ、ヒアルロニダーゼ、トリプシン、ディスパーゼ−DNaseI等のうちのいずれか一つまたは複数が含まれ得る。例示的な組織処理工程は、以下の実施例に記載される。
本細胞集団の分離では、アフィニティー分離が使用されて、実質的に富化された集団を提供し得る。アフィニティー分離の技術には、抗体でコーティングされた磁気ビーズを用いる磁気分離、アフィニティークロマトグラフィー、モノクローナル抗体に連結された、もしくはモノクローナル抗体と併せて使用される細胞傷害性薬物(例えば補体および細胞毒)、並びに固体マトリックス(例えばプレート)に付着した抗体での「パニング」、または他の好都合な技術が含まれ得る。正確な分離を提供する技術には、様々な程度の精巧さ(例えば、複数のカラーチャネル、低角および鈍角の光散乱検出チャネル、インピーダンスチャネル等)を有し得る蛍光活性化セルソーターが含まれる。細胞は、死細胞に結合する色素(例えばヨウ化プロピジウム)を用いることで、死細胞に対して選択され得る。選択された細胞の生存能に対し過度に有害でない技術であれば全て使用することができる。
ある実施形態では、使用される親和性試薬は、上記の細胞表面分子に対する特異的な受容体またはリガンドであり得る。抗体試薬に加えて、ペプチド−MHC抗原およびT細胞受容体対が使用され得る;ペプチドリガンドおよび受容体;エフェクター分子および受容体分子、ファージディスプレイ断片等。抗体およびT細胞受容体は、モノクローナルまたはポリクローナルであり得、遺伝子導入動物、免疫動物、ヒトまたは動物の不死化されたB細胞、抗体またはT細胞受容体をコードするDNAベクターをトランスフェクションされた細胞等によって産生され得る。抗体の調製、および特異的結合メンバーとしてのそれらの使用適合性の詳細は、当業者には周知である。
親和性試薬としての抗体の使用が特に重要である。これらの抗体に分離用の標識が結合されていると好都合である。標識には、直接分離を可能にする磁気ビーズ、担体に結合したアビジンまたはストレプトアビジンで取り除くことができるビオチン、蛍光活性化セルソーター等と一緒に使用して特定の細胞型の分離を容易にし得る蛍光色素が含まれる。好都合な蛍光色素は全て使用することができ、上記のもの、並びに以下の実施例に記載されるもの、例えば、フィコビリンタンパク質(例えばフィコエリトリンおよびアロフィコシアニン)、フルオレセインおよびテキサスレッド(Texas red)が含まれる。しばしば、それぞれの異なるマーカーに特異的な抗体は、各マーカーに関する独立的な選別を可能とするために、他と区別して検出できる、異なる蛍光色素で標識される。しかし、複数の異なるマーカーがネガティブ選択マーカーとして使用される場合、それぞれの異なるマーカーに特異的な抗体は、同じ蛍光色素で標識されてもよい(例えば、全ての系統マーカー特異的抗体は同じ蛍光色素で標識されてもよい)。
抗体は細胞の懸濁液に加えられ、結合可能な細胞表面抗原と結合するのに十分な時間(例えば、5分間〜1時間;ただし、この時間は変動する可能性があり、使用者の所望および使用される抗体によって決まる)だけ、インキュベートされる。分離の効率が抗体の欠如によって制限されないように、反応混合物中で十分な抗体濃度を有することが通常望ましい。適切な濃度は、タイトレーションによって決定することができる。細胞が後の工程(すなわち、富化過程の後)で培養、増殖、増幅または移植される場合、細胞が分離される培地は、その細胞の生存能を維持するあらゆる培地である。種々の培地が市販されており、細胞の性質によって使用することができ、例えば、ウシ胎仔血清、BSA、HSA等がしばしば添加されている、ダルベッコ変法イーグル培地(dMEM)、ハンクス平衡塩類溶液(HBSS)、ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(dPBS)、RPMI、イスコフ培地(Iscove's medium)、5mM EDTA含有PBS等が含まれる。しかし、富化されたSCIPPが培養および増殖を必要としないアッセイで使用される場合(例えば、遺伝子発現解析(例えば、マイクロアレイアッセイ)で即座に使用される場合)、細胞は生存能を必ずしも維持しない培地中に置かれ得る。
ある実施形態では、分離された細胞は、細胞の生存能および多能性を維持するあらゆる適切な培地中に収集され得る。種々の培地が市販されており、細胞の性質によって使用することができ、例えば、ウシ胎仔血清がしばしば添加されている、dMEM、HBSS、dPBS、RPMI、イスコフ培地等が含まれる。
上記で言及したように、対象から得られた細胞は、(細胞表面マーカー富化の有無にかかわらず)SCIPP選択条件下で培養され得る。当該SCIPP培養条件では、試料中に存在するSCIPPの多能性が維持され、同時に、当該細胞は、系統の制限された細胞への有意な分化無しに増殖する。
SCIPPが富化された組成物は、このようにして達成される。SCIPP富化細胞集団は、1%以上のSCIPP細胞を含有する可能性があり、例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%またはそれ以上のSCIPP細胞を含有する細胞集団が含まれ(上記の通り)、一部の実施形態では、細胞組成の95%以上であり得る。上記の通り、SCIPPは、それらの表面の表現型によって、および多能性を維持しつつ特定の培養条件下で増殖させるそれらの能力によって、同定される。さらに、SCIPPは、適切なインビトロまたはインビボ条件下で、外胚葉系、内胚葉系および中胚葉系へと発達する。富化された細胞集団は即座に使用されてもよく、または液体窒素温度で凍結されて長期間保存されてもよく、解凍によって再利用することができる。例えば、細胞は、10%DMSO、50%FCS、40%RPMI 1640培地の中で保存することができる。
インビトロ培養および遺伝子操作
富化された細胞集団は、種々の培養条件下、インビトロで増殖させることができる。培養培地は液体でも半固体でもよく、例えば寒天、メチルセルロース等が含まれる。細胞集団は、ウシ胎仔血清(約5〜10%)、L-グルタミン、チオール、特に2−メルカプトエタノール、および抗菌剤(例えばペニシリンおよびストレプトマイシン)が通常添加された、イスコフ改変DMEMまたはRPMI 1640等の適切な栄養培地中に懸濁されることが好都合であり得る。
富化された細胞集団は、種々の培養条件下、インビトロで増殖させることができる。培養培地は液体でも半固体でもよく、例えば寒天、メチルセルロース等が含まれる。細胞集団は、ウシ胎仔血清(約5〜10%)、L-グルタミン、チオール、特に2−メルカプトエタノール、および抗菌剤(例えばペニシリンおよびストレプトマイシン)が通常添加された、イスコフ改変DMEMまたはRPMI 1640等の適切な栄養培地中に懸濁されることが好都合であり得る。
培地は、細胞が応答性である増殖因子を含有していてもよい。増殖因子は、本明細書で定義される通り、培養液またはインタクトな組織のいずれかにおいて、例えば、膜貫通受容体に対する特異的効果を通じて、細胞の生存、増殖および/または分化を促進することが可能な分子である。増殖因子には、ポリペプチド因子および非ポリペプチド因子が含まれる。増殖因子に加えて、あるいはその代わりに、本細胞は、間質細胞またはフィーダー層細胞との共培養下で増殖してもよい。
本培養細胞は、種々様々な方法にて使用され得る。例えば、条件培地である栄養培地を様々な段階で分離してよく、その成分を分析してもよい。分離は、HPLC、逆相HPLC、ゲル電気泳動、等電点電気泳動、透析、または他の非分解性の技法で達成することができ、それらは、分子量、分子容、電荷、それらの組み合わせ等による分離を可能にする。これらの技法のうち1つまたは複数を組み合わせて、特定の画分に関してさらに富化してもよい。
SCIPPは遺伝的に改変(alter)または改変(modify)されてもよい。例えば、SCIPP細胞に遺伝子を導入してもよく、または、種々の目的(例えば、機能喪失型変異を有する遺伝子を置き換えるため、有害な遺伝子の発現を遮断するため、またはマーカーもしくはレポーター遺伝子として使用するための遺伝子を発現するため等)のために、遺伝子が欠失/不活化されてもよい。従って、いかなる適切なベクターもSCIPPに導入することができ、例えば、遺伝子発現ベクター;遺伝子ターゲティングベクター(例えば、ES細胞における相同組換えに基づく方法で使用されるもの、例えば、遺伝子ノックアウトした細胞株および動物を作製する際に使用される);アンチセンスmRNA、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム等を発現し、それによって遺伝子の発現を遮断するベクター;等が含まれる。遺伝子治療の他の方法は、薬物耐性遺伝子(例えば、多数の薬物耐性遺伝子(MDR)、またはbcl-2などの抗アポトーシス遺伝子)を導入して、正常な前駆細胞が優位性を有することを可能にし、選択圧にかけることである。当該技術分野で知られる様々な技術、例えば、エレクトロポレーション、カルシウム沈降DNA、融合、トランスフェクション、リポフェクション、マイクロインジェクション等を、標的細胞のトランスフェクションに使用することができる。DNAを導入する具体的な様式は、本発明の実施には重大ではない。
標的哺乳類細胞に外来遺伝子を導入するのに有用な多くのベクターを利用することができる。ベクターは、エピソーム性(例えばプラスミド、サイトメガロウイルス、アデノウイルス等のウイルス由来ベクター)であり得、または相同組換えまたはランダムな組込みによって標的細胞ゲノムに組み込まれ得る(例えば、MMLV、HIV−1、ALV等のレトロウイルス由来ベクター)。一般的に使用されるレトロウイルスベクターは「不完全」である。すなわち、増殖性感染に必要なウイルスタンパク質を産生することができないため、ベクターの複製はパッケージング細胞株中での増殖を必要とする。HIVまたはFIV gag配列に基づいたもの等のレンチウイルスベクターは、非分裂細胞のトランスフェクションに使用することができる。
SCIPPまたはそれに由来する細胞/組織を遺伝的に改変するために使用されるベクターは、例えばCre/Lox等のリコンビナーゼ系などを用いることによって後に取り除かれなければならない遺伝子を含んでもよく、または、例えばヘルペスウイルスTK、bcl−xs等の選択毒性を与える遺伝子を含むことによって、該遺伝子を発現する細胞が破壊されてもよい。
SCIPPで遺伝子を発現させるために使用されるベクターは、ベクター中の重要な遺伝子に機能的に連結された適切なプロモーターを含む。「適切なプロモーター」とは、トランスフェクトされた細胞(SCIPP)、またはその子孫のいずれかにおいて、使用者によって所望の通りに(例えば、所望の標的細胞型で、および/または所望の時間で)プロモーターが活性化されることを意味する。プロモーターは、当該技術分野で知られているような、恒常的活性型、条件的活性型、誘導型、または抑制可能なプロモーターであり得る。
遺伝的に組み換えられた前駆細胞を有することを証明するのに、様々な技術を使用することができる。細胞のゲノムは、制限されてもよく、増幅されてまたは増幅されずに使用されてもよい。ポリメラーゼ連鎖反応;ゲル電気泳動;制限分析;サザンブロット、ノーザンブロット、およびウェスタンブロット;配列決定;等、全て使用することができる。細胞は、その細胞が、利用者の所望の通りに、導入されたDNAを発現しつつ、所望の細胞系統に成熟可能であることを保証する種々の条件下で、増殖することができる。
処置および治療におけるSCIPPの使用
SCIPP細胞(それに由来する細胞または組織も含む)は、単独で、または増殖因子、系統拘束因子(lineage-commitment factor)、もしくは対象の遺伝子、RNAもしくはタンパク質と組み合わせて、細胞/組織の損傷を有する対象に対するいくつかの処置法において使用することができる。例示的な処置/治療には、細胞または組織移植、先天性奇形、待期的手術、疾患、および遺伝性疾患が含まれる。処置に使用されるSCIPP、またはそれに由来する細胞/組織は、自己由来(対象由来)であっても同種由来(ドナー由来)であってもよい。
SCIPP細胞(それに由来する細胞または組織も含む)は、単独で、または増殖因子、系統拘束因子(lineage-commitment factor)、もしくは対象の遺伝子、RNAもしくはタンパク質と組み合わせて、細胞/組織の損傷を有する対象に対するいくつかの処置法において使用することができる。例示的な処置/治療には、細胞または組織移植、先天性奇形、待期的手術、疾患、および遺伝性疾患が含まれる。処置に使用されるSCIPP、またはそれに由来する細胞/組織は、自己由来(対象由来)であっても同種由来(ドナー由来)であってもよい。
SCIPP細胞またはそれに由来する細胞/組織は、組織/細胞の再生を必要としている対象の部位に、生理学的に許容されるあらゆる培地中で、投与することができる。細胞は、注射、外科的手段等を含む、いかなる好都合な方法によっても導入することができる。SCIPPまたはそれに由来する細胞/組織は、液体窒素温度で凍結して長期間保存することができ、解凍すると使用可能である。解凍後、細胞を直接使用してもよく、または所望の増殖および/もしくは分化に適切な増殖因子および/もしくは間質細胞を使用して増殖させてもよい。
処置法には、移植用にSCIPPを直接提供して、そこで組織がインビボで再生し、欠損した組織をSCIPPからインビトロで再現し、その後その組織を移植すること、または、エクスビボもしくはインビボ遺伝子治療のためのトランスフェクションもしくは形質転換に適切な十分な数のSCIPPを提供することが含まれる。従って、本発明には、本発明のSCIPPの移植;SCIPP由来の系統の制限された細胞集団の移植;SCIPP由来の組織および臓器の移植;等を含む、いくつかの治療法が含まれる。そのような方法は、そのような治療から恩恵を受けるであろう状態、疾患、傷害、細胞の衰弱または欠乏症の処置または軽減に使用することができる。
そのような処置法で使用されるSCIPP細胞は、分化を促進せずに増殖を促進する培養条件を用いて、hESCおよび/または誘導多能性幹細胞(iPSC)の分化を促進せずに増殖を促進するのに有用であると当該技術分野で知られている方法を用いて、培地中で継続的に増殖させることができる。SCIPP細胞は、そのような細胞が分化した後に、そのような処置法において、使用することができる。SCIPP細胞は、幹細胞(例えばhESCおよび/またはiPSC)を分化させるのに有用であると当該技術分野において既知の方法を用いて、所望の系統を有する細胞を富化する増殖環境において、分化させることができ、その手引きは本明細書で提供される。
本明細書に記載されるように、本発明のSCIPPは、外胚葉系、中胚葉系、および内胚葉系のいずれかの細胞に分化する能力を有する。従って、本発明のSCIPPは、中胚葉、外胚葉および/または内胚葉由来の細胞、組織、臓器がインビボ、エクスビボもしくはインビトロで誘導される、移植、細胞置換療法、組織再生、遺伝子治療、臓器組織の置換または再生、および細胞治療で利用することができる。例示的な内胚葉細胞系統には、気道および胃腸管の上皮内層、咽頭、食道、胃、腸、および唾液腺を含む多くの関連する腺、肝臓、膵臓並びに肺が含まれる。例示的な中胚葉細胞系統には、平滑筋層、結合組織、並びに組織および臓器に関連する血管および心血管系の置換/治療用の血管、心臓、心筋、心血管、他の血管、血液細胞、骨髄、骨格、横紋筋、並びに生殖器および排出器が含まれる。例示的な外胚葉細胞系統には、表皮(皮膚の表皮層)、感覚器、並びに、脳、脊髄、および神経系の全末梢性要素(outlying component)を含む、神経系全体が含まれる。本発明のSCIPPの重大な利点は、任意の特定の組織系統(外胚葉、内胚葉または中胚葉)への拘束の前に自己再生し、その後拘束されてからさらなる増殖をする、その潜在能力である。これらの増殖特性および分化特性は、移植に利用できる適切な細胞および組織の量が制限されている場合に、非常に重要であり、有用である。
SCIPPは、欠損組織、損傷組織、または患部組織の機能的能力および/または寿命を維持または増加させる治療において、これらの細胞を有用にする性質を有する。これらの性質には、限定はされないが、単離および分取が可能な点、多能性を保持したままの顕著な増殖能、並びに操作されて複数の別々の組織系統に拘束される能力が含まれる。
ある実施形態では、治療(例えば、宿主への移植)に使用されるSCIPPは、(上記のような)外来遺伝子を含有する。例えば、本発明の多能性胚様幹細胞に、目的のタンパク質または遺伝子を発現するDNAまたはRNAを含むベクターをトランスフェクションすることによるものである。
ある実施形態では、本明細書に参照される治療法は、増殖因子、系統拘束/分化因子、薬剤または他の治療化合物等を含む医薬組成物中の、SCIPPおよび/またはそれに由来する細胞、組織または臓器の投与を含み得る。
ある実施形態では、SCIPP細胞に由来する細胞、組織、または臓器は、それらが由来したSCIPP細胞と同じゲノムを有し得る。これが意味することは、いかなる核型の変化が加えられても、SCIPP細胞とそれに由来する細胞または組織との間で、染色体DNAが少なくとも90%同一であるということである。操作されていない遺伝因子の全てが保存されているため、組換え法により処置されて、導入遺伝子を導入された、または内在性遺伝子をノックアウトされた細胞または組織であっても、それらが由来したSCIPP細胞と同じゲノムを有すると考えられる。SCIPP細胞およびそれに由来する細胞または組織は、標準的な遺伝的フィンガープリント法技術により、同じゲノムを有することを確認することができる。細胞または組織が、正常な有糸分裂を通じて未分化のSCIPP細胞から得られる場合も、同じゲノムを有していることが推測される。
スクリーニング法
本細胞は、特定の系統または分化細胞系統または種類(例えば、神経細胞、心筋細胞、乳腺細胞等)への細胞の分化または発生を促進する因子を検出するための、インビトロアッセイおよびスクリーニングに有用である。この目的のために、タンパク質結合に関するイムノアッセイ;細胞の増殖、分化および機能活性の決定(インビボおよびインビトロの両方);細胞形態の評価等を含む種々様々なアッセイを使用することができる。
本細胞は、特定の系統または分化細胞系統または種類(例えば、神経細胞、心筋細胞、乳腺細胞等)への細胞の分化または発生を促進する因子を検出するための、インビトロアッセイおよびスクリーニングに有用である。この目的のために、タンパク質結合に関するイムノアッセイ;細胞の増殖、分化および機能活性の決定(インビボおよびインビトロの両方);細胞形態の評価等を含む種々様々なアッセイを使用することができる。
例示的な実施形態では、スクリーニング法は、候補分化因子を、生得的多能性体細胞(SCIPP)の集団(例えば、少なくとも50%のCD73+/CD90−/Lin−を含有する集団;上で詳細に記載されている通り)と混合する工程、およびSCIPP由来の分化細胞の形成に対する該候補分化因子の効果をモニタリングする工程が含まれる。当該モニタリングする工程は、いかなる好都合なアッセイまたはアッセイの組み合わせをも含むことができ、その多くは、当該技術分野において既知であり、例えば、遺伝子発現アッセイ(タンパク質または核酸いずれかの発現)、インビトロおよびインビボ発生アッセイ、機能的細胞アッセイ等が含まれる。モニタリングには、使用される候補因子が既知の活性を有する対照細胞集団(当該技術分野において一般に使用されるような、陽性対照または陰性対照のいずれか)との比較を行うことも含まれ得る。従って、スクリーニング検査に関する制限は何も意図されていない。
核酸に基づく遺伝子発現アッセイでは、特定のmRNAを検出するための、当該技術分野において既知のいかなる適切な定性的または定量的方法も、使用することができる。mRNAは、例えば、マイクロアレイに対するハイブリダイゼーションによって、組織切片におけるin situハイブリダイゼーションによって、逆転写酵素−PCRによって、または、ポリA+mRNAを含むノーザンブロットにおいて、検出することができる。当業者は、2つの試料間のmRNA転写物のサイズまたは量における差異を決定するのに、これらの方法を容易に使用することができる。例えば、SCIPPにおける特定のmRNAのレベルは、標準試料、例えば、MSC、ES、分化細胞、および/または腫瘍性細胞もしくはがん細胞(例えば、乳腺腫瘍細胞)におけるmRNAの発現と比較される。
ある実施形態では、遺伝子発現は、細胞またはその分泌物中のタンパク質またはポリペプチドのレベルを検出することによって、アッセイされ得る。例えば、検出では、従来の方法に従って行われる、標識抗体を用いた細胞の染色が利用され得る。細胞は、細胞質タンパク質を染色するために、透過処理され得る。通常、発現量に差がある本発明のポリペプチドと特異的に結合する抗体は、試料に添加され、エピトープへの結合が可能となるのに十分な時間インキュベートされる。抗体は、直接検出用に検出可能に(例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光剤、化学発光剤(chemiluminescer)等を用いて)標識することができ、または、結合を検出するための第二段階における抗体または試薬(例えば、ビオチンと西洋わさびペルオキシダーゼ結合アビジン、蛍光化合物(例えばフルオレセイン、ローダミン、テキサスレッド(Texas red)等に結合された二次抗体)と組み合わせて使用することができる。抗体結合の有無は、解離細胞のフローサイトメトリー、顕微鏡観察、X線検査、シンチレーション測定等を含む、種々の方法により検出することができる。発現量に差があるポリペプチドのレベルまたは量の定性的または定量的な検出のための、いかなる適切な代替法も使用することができる(例えばELISA、ウェスタンブロット、免疫沈降、ラジオイムノアッセイ等)。
候補分化因子の作用をモニタリングするための機能アッセイは、動物モデル(例えば、げっ歯類、ネコ、イヌ、霊長類等)を使用することも含み得る。そのような動物モデルは、動物宿主が免疫無防備状態または免疫障害性であるもの(例えば、NOD/SCIDマウス)を含み、細胞における潜在的な分化因子の作用を決定することを含む、細胞の発生能を決定するのに有用な系であることが分かっている(インビトロまたはインビボのいずれかで適用)。スクリーニング検査を可能にする例示的なアッセイは、以下の実施例にも記載される。
キット、系およびサービス
上記のような、本方法を実施するためのキットおよび系も、本発明によって提供される。例えば、対象(または対象から得られた組織/細胞試料)(例えば、ヒト対象)からSCIPPを単離するよう構成された試薬および構成要素を含有するキットが提供される。キットの種々の構成要素は、別々の容器の中に存在していてもよく、または適合性のある特定の構成要素を必要に応じて単一の容器内に予め混合しておいてもよい。試薬には、一つまたは複数の、溶媒、組織/試料を収集および調製するための試薬、緩衝液、酵素試薬、特異的結合試薬、標準試薬または対照試薬(例えば、アイソタイプ対照抗体)、培地等が含まれていてもよい。従って、キットは、バイアルまたはビン等の、一つまたは複数の容器を含み、各容器は、試料の処理または調製の工程を行うための、および/または、対象からSCIPPを単離するための一つまたは複数の工程を行うための、別々の構成要素を含有していてもよい。
上記のような、本方法を実施するためのキットおよび系も、本発明によって提供される。例えば、対象(または対象から得られた組織/細胞試料)(例えば、ヒト対象)からSCIPPを単離するよう構成された試薬および構成要素を含有するキットが提供される。キットの種々の構成要素は、別々の容器の中に存在していてもよく、または適合性のある特定の構成要素を必要に応じて単一の容器内に予め混合しておいてもよい。試薬には、一つまたは複数の、溶媒、組織/試料を収集および調製するための試薬、緩衝液、酵素試薬、特異的結合試薬、標準試薬または対照試薬(例えば、アイソタイプ対照抗体)、培地等が含まれていてもよい。従って、キットは、バイアルまたはビン等の、一つまたは複数の容器を含み、各容器は、試料の処理または調製の工程を行うための、および/または、対象からSCIPPを単離するための一つまたは複数の工程を行うための、別々の構成要素を含有していてもよい。
上記の構成要素に加えて、本キットは通常、本方法を実施するために、例えば、対象(または対象から得られた組織/細胞試料)からSCIPPを単離するために、キットの構成要素を使用するための説明書をさらに含む。本方法を実施するための説明書は、通常、適切な記録媒体上に記録される。例えば、説明書は、紙またはプラスチック等の基材上に印刷されてもよい。従って、説明書は、キットまたはその構成要素(すなわち、パッケージングまたはサブパッケージングと関連して)等の容器の標識の添付文書としてキットの中に存在していてもよい。他の実施形態では、説明書は、適切なコンピューター可読の記憶媒体(例えばCD−ROM、ディスケット等)に存在する、電子記憶データファイルとして存在する。さらに他の実施形態では、実際の説明書はキットの中に存在していないが、遠隔ソースから(例えばインターネットを介して)説明書を入手するための手段が提供される。この実施形態の一例は、説明書を見ることができる、および/または説明書をダウンロードすることができるウェブアドレスを含むキットである。説明書を伴っている場合と同様に、説明書を入手するためのこの手段は、適切な基材上に記録される。
上記で言及したように、本明細書に記載のSCIPP細胞を特異的に同定/単離するのに十分な染色試薬を含むキットが提供され得る。目的の組み合わせは、本発明のマーカーまたはマーカーの組み合わせに特異的な一つまたは複数の試薬を含んでもよく、さらに、系統パネル(上記と同様、例えば、CD2、CD3、CD16、CD31、CD45、CD64およびCD140b)、CD73、およびCD90に特異的な抗体を含んでもよい。ある実施形態では、染色試薬は抗体であり、いくつかのキットでは、抗体は検出可能に標識されている(例えば、上記と同様、蛍光ラベルで異なる様式で標識されている)。
一部の実施形態では、本キットは、SCIPP中に存在するポリヌクレオチド遺伝子発現産物(例えばmRNA)の検出用の試薬を含む。例えば、キットは、PCRプライマー対、一つまたは複数の核酸プローブ、または両方を含んでもよく、該プライマー対およびプローブは、SCIPPにおいて発現される遺伝子に対し特異的である(例えば、図15に列挙された遺伝子、および上記遺伝子を参照されたい)。例えば、遺伝子KLF4、MYC、PTGS2、OCT4、NANOG、CD24、EPCAM、CECR1、およびDNMT3B(またはこれらの任意の組み合わせ)のうちのいずれか一つまたは複数に対するPCRプライマー対が、本キットに含まれていてもよい。核酸は、一部の実施形態では、適切な貯蔵媒体(例えば緩衝液)中に存在し、典型的には適切な容器の中に存在する。キットは、プライマーおよび/またはプローブを含み、さらに、緩衝液;試薬(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応のための(例えば、デオキシヌクレオチド三リン酸塩(dATP、dTTP、dCTP、およびdGTP)、熱安定性DNAポリメラーゼ、ポリメラーゼ連鎖反応に適切な緩衝液、Mg2+イオン(例えば、MgCl2)を含有する溶液、およびポリメラーゼ連鎖反応を行うための当業者に周知である他の構成要素))を含んでいてもよい。キットは、生物試料からのDNA(またはmRNA)の抽出に必要な試薬をさらに含んでいてもよい。キットは、mRNAからcDNAコピーを作製するために、mRNAの逆転写に必要な試薬をさらに含んでいてもよい。キットは、一部の実施形態では、標準物質に対する標的ポリヌクレオチドのレベルを正規化するための標準物質、例えば、あるレベルのグルコース−6−リン酸脱水素酵素ポリヌクレオチド(例えば、G6PDH mRNAまたはG6PDH mRNAのcDNAコピー)を提供する。
ある実施形態では、キットは、研究または治療を目的とする使用者に対して、単離された生きたSCIPPを含んでいてもよい。これらの実施形態のうちのいくつかでは、対象からSCIPPを単離するためのサービス(利用者の選択またはサービス提供者の選択のいずれか)が提供され、単離されたSCIPPは、(例えば、研究または治療を目的とした)利用者に配達される。そのようなサービスは、品質管理評価、例えば、細胞純度、細胞分類(例えば、HLA分類、遺伝子分類等)、病原体評価等を含み得る。提供されるSCIPPは、新しく単離されるか、または培地中で増殖し得る。SCIPPに由来する細胞または組織(例えば、分化細胞、系統特異的前駆細胞等)も提供され得る。
以下の実施例は、本発明の作製方法および使用方法の完全な開示および記載を当業者に提供するために記載され、発明者が自身の発明と見なすものの範囲を限定することを意図しておらず、また、以下の実験が、実施された全実験または実施された実験のみであることを表すものでもない。使用される数字(例えば量、温度等)に関して正確性を確実にするための努力は為したが、幾らかの実験誤差および偏差は考慮されるべきである。他に示さない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏温度であり、圧力は大気圧またはそれ付近である。
材料および方法
以下は、以下の実施例で使用された一般的な材料およびプロトコールである。
以下は、以下の実施例で使用された一般的な材料およびプロトコールである。
乳腺上皮の分離
乳腺組織を、施設内で承認されたIRBプロトコールに従って乳房縮小術を受けている無病の女性から得た。S. R. Romanov et al., Nature 409, 633 (2001)で先に述べられている通りに(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)、組織を機械的および酵素的に分離した。簡潔に説明すると、組織を細かく切り刻み、10%ウシ胎児血清(JRサイエンティフィック社(JR Scientific, Inc)、カタログ番号43603)、100ユニット/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンSO4、0.25μg/ml ファンギゾン、ゲンタマイシン(ロンザ社(Lonza)、カタログ番号CC4081G)、0.88mg/ml コラゲナーゼ(ワージントン(Worthington)、カタログ番号CLS−2)および0.40mg/ml ヒアルロニダーゼ(シグマ社、カタログ番号H3506−SG)を添加した、L−グルタミンおよび25mm HEPES(フィッシャー社(Fisher)、カタログ番号MT10041CV)を含有するRPMI 1640中で、37℃で16時間、分離させた。細胞懸濁液を1400rpmで10分間遠心し、続いて、RPMI 1640/10%FBSで一回洗浄した。150μmナイロンメッシュ(フィッシャー社、カタログ番号NC9445658)、および40μmナイロンメッシュ(フィッシャー社、カタログ番号NC9860187)を通じた連続的な濾過の後、上皮細胞に富んだ集団(オルガノイドと称される)を回収した。最終濾液は主に線維芽細胞および内皮細胞から成る乳腺間質細胞を含んでいた。1200rpm、5分間の遠心分離の後、上皮オルガノイドおよび濾液を長期保存のために凍結した。単一細胞懸濁液を作製するために、上皮オルガノイドを、0.5g/L トリプシン−0.2g/L EDTA−0.58g/L NaHCO3中で5分間、ディスパーゼ−DNAse I(ステムセルテクノロジーズ社(StemCell technologies)、それぞれ、カタログ番号7913およびカタログ番号7900)中で1分間さらに消化し、その後、40μm セルストレーナー(フィッシャー社、カタログ番号087711)を通して濾過した。
乳腺組織を、施設内で承認されたIRBプロトコールに従って乳房縮小術を受けている無病の女性から得た。S. R. Romanov et al., Nature 409, 633 (2001)で先に述べられている通りに(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)、組織を機械的および酵素的に分離した。簡潔に説明すると、組織を細かく切り刻み、10%ウシ胎児血清(JRサイエンティフィック社(JR Scientific, Inc)、カタログ番号43603)、100ユニット/ml ペニシリン、100μg/ml ストレプトマイシンSO4、0.25μg/ml ファンギゾン、ゲンタマイシン(ロンザ社(Lonza)、カタログ番号CC4081G)、0.88mg/ml コラゲナーゼ(ワージントン(Worthington)、カタログ番号CLS−2)および0.40mg/ml ヒアルロニダーゼ(シグマ社、カタログ番号H3506−SG)を添加した、L−グルタミンおよび25mm HEPES(フィッシャー社(Fisher)、カタログ番号MT10041CV)を含有するRPMI 1640中で、37℃で16時間、分離させた。細胞懸濁液を1400rpmで10分間遠心し、続いて、RPMI 1640/10%FBSで一回洗浄した。150μmナイロンメッシュ(フィッシャー社、カタログ番号NC9445658)、および40μmナイロンメッシュ(フィッシャー社、カタログ番号NC9860187)を通じた連続的な濾過の後、上皮細胞に富んだ集団(オルガノイドと称される)を回収した。最終濾液は主に線維芽細胞および内皮細胞から成る乳腺間質細胞を含んでいた。1200rpm、5分間の遠心分離の後、上皮オルガノイドおよび濾液を長期保存のために凍結した。単一細胞懸濁液を作製するために、上皮オルガノイドを、0.5g/L トリプシン−0.2g/L EDTA−0.58g/L NaHCO3中で5分間、ディスパーゼ−DNAse I(ステムセルテクノロジーズ社(StemCell technologies)、それぞれ、カタログ番号7913およびカタログ番号7900)中で1分間さらに消化し、その後、40μm セルストレーナー(フィッシャー社、カタログ番号087711)を通して濾過した。
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールに関する。マイコプラズマ試験を、バイオニック・テスティング・ラボラトリーズ社(Bionique Testing Laboratories Inc.)(ニューヨーク州サラナックレーク)でのPCR分析により行った。濾液画分から、またはR1細胞培養物から得られた細胞の核型分析を、モレキュラー・ダイアグノスティックス・サービス社(Molecular Diagnostic Services Inc.)(カリフォルニア州サンディエゴ)で、中期染色体に対して行った。分析された全ての試料は、二倍体の46、XXの核型を生じた(図22および図20、パネルA〜Eを参照)。
細胞分取のためのフローサイトメトリー用染色およびALDEFLUORアッセイ
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
上記と同様に得た単一細胞懸濁液を、細胞分取用に、ヒト特異的一次抗体である、PE標識型抗CD73抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号550257)およびAPC標識型抗CD90抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号559869)の2種類、並びに系統マーカーに対するビオチン化抗体である、抗CD2抗体、抗CD3抗体、抗CD16抗体、抗CD64抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号555325、555338、555405および555526)、抗CD31抗体(インビトロジェン社、カタログ番号MHCD3115)、抗CD45抗体、抗CD140b抗体(バイオレジェンド社(BioLegend)、カタログ番号304003および323604)を用いて染色して、造血系細胞、内皮系細胞および白血球系細胞(Lin+細胞)を特異的に取り除いた。順次的な一次抗体とのインキュベーションを、室温で20分間、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS中で行い、続いて、1%BSAを含有するPBS中で洗浄した。ビオチン化一次抗体を、ストレプトアビジン−パシフィックブルー(Pacific Blue)標識抗ヒト二次抗体(インビトロジェン社、カタログ番号S11222)を用いて検出した。
インキュベートの後、細胞を1%BSA含有PBS中で一回洗浄し、高いALDH酵素活性を有する亜集団を単離するために、ALDEFLUORキット(ステム・セル・テクノロジーズ社、カタログ番号1700)を用いて処理した。上記で得られた細胞を、ALDH基質(BAAA、1×106細胞1μmol/l)を含有するALDEFLUORアッセイ緩衝液中に懸濁させ、37℃で30分間インキュベートした。特異的なALDH阻害剤である、50mmol/l ジエチルアミノベンズアルデヒド(DEAB)で処理した一定分量を、陰性対照として使用した。細胞分取を、FACSAria IIセルソーター(BDバイオサイエンス社)を用いて行った。
フローサイトメトリー用染色および細胞分取
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
上記と同様に得た単一細胞懸濁液を、細胞分取用に、ヒト特異的一次抗体である、PE標識型抗CD73抗体(BDバイオサイエンス社)およびAPC標識型抗CD90抗体(BDバイオサイエンス社)の2種類、並びに系統マーカーに対するビオチン化抗体である、抗CD3抗体、抗CD16抗体、抗CD64抗体(BDバイオサイエンス社)、抗CD31抗体(インビトロジェン社)、抗CD45抗体、抗CD140b抗体(バイオレジェンド社(BioLegend))を用いて染色して、造血系細胞、内皮系細胞および白血球系細胞を特異的に取り除いた。順次的な一次抗体とのインキュベーションを、室温で20分間、1%ウシ血清アルブミン(BSA)を含有するPBS中で行い、続いて、1%BSAを含有するPBS中で洗浄した。ビオチン化一次抗体を、ストレプトアビジン−パシフィックブルー(Pacific Blue)標識抗ヒト二次抗体(インビトロジェン社)を用いて、検出した。インキュベートの後、細胞を1%BSA含有PBS中で一回洗浄し、細胞分取をFACSAria IIセルソーター(BDバイオサイエンス社)を用いて行った。
マンモスフィア培養
G. Dontu et al., Genes Dev 17, 1253 (2003)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に先に記述されている通りに、マンモスフィア培養を行った。単一細胞を、初代培養では10,000生細胞/mlの密度で、後の継代では1000細胞/mlの密度で、超低接着表面プレート(ultra-low attachment plate)(コーニング社(Corning))に播種した。マンモスフィア培養のために、細胞を、B27(インビトロジェン社、カタログ番号17504044)、20ng/ml EGF(ロンザ社)、20ng/ml bFGF(シグマ社、カタログ番号F0291−25UG)、および4μg/ml ヘパリン(シグマ社、カタログ番号H1027)を添加した無血清の乳腺上皮基礎培地(MEBM)(ロンザ社)中で増殖させた。7〜10日後に、マンモスフィアを、穏やかな遠心分離(700rpm)により収集し、0.5g/L トリプシン−0.2g/L EDTA−0.58g/L NaHCO3中で5〜10分間、酵素的に分離させた。分離した細胞を40μmの篩に通し、0.4%トリパンブルー溶液(シグマ社、カタログ番号T8154)で染色して、細胞生存率を評価し、顕微鏡分析で細胞分離の完了を確認した。
G. Dontu et al., Genes Dev 17, 1253 (2003)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に先に記述されている通りに、マンモスフィア培養を行った。単一細胞を、初代培養では10,000生細胞/mlの密度で、後の継代では1000細胞/mlの密度で、超低接着表面プレート(ultra-low attachment plate)(コーニング社(Corning))に播種した。マンモスフィア培養のために、細胞を、B27(インビトロジェン社、カタログ番号17504044)、20ng/ml EGF(ロンザ社)、20ng/ml bFGF(シグマ社、カタログ番号F0291−25UG)、および4μg/ml ヘパリン(シグマ社、カタログ番号H1027)を添加した無血清の乳腺上皮基礎培地(MEBM)(ロンザ社)中で増殖させた。7〜10日後に、マンモスフィアを、穏やかな遠心分離(700rpm)により収集し、0.5g/L トリプシン−0.2g/L EDTA−0.58g/L NaHCO3中で5〜10分間、酵素的に分離させた。分離した細胞を40μmの篩に通し、0.4%トリパンブルー溶液(シグマ社、カタログ番号T8154)で染色して、細胞生存率を評価し、顕微鏡分析で細胞分離の完了を確認した。
分化培養条件
上記の通りに分離されたマンモスフィアから得られた単一細胞懸濁液を、2000生細胞/直径10cmディッシュの密度で、コラーゲンコートされたカバーガラスまたは細胞培養プレートに播種した。細胞を、5%FBS、5μg/ml インスリン(ロンザ社)、1μg/ml ヒドロコルチゾン(ロンザ社)、10μg/ml コレラ毒素(シグマ社、カタログ番号C8052−2MG)、10ng/ml EGF(ロンザ社)、およびゲンタマイシン(ロンザ社、カタログ番号CC4081G)を含有するハムF-12培地中で増殖させた。5日後、腺胞分化(alveolar differentiation)についてのアッセイの場合には、Matrigel(BDバイオサイエンス社、カタログ番号356230)の層を1μg/ml プロラクチン(シグマ社、カタログ番号L4021−50UG)と共に加えた。12日後、細胞を固定し、免疫染色のために収集した。J. Debnath, et al., Methods 30, 256 (2003)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に先に記述されている通りに、三次元培養を行った。簡潔に説明すると、上記の増殖培地中に再懸濁した単一細胞を、増殖因子を減らしたMatrigel(BDバイオサイエンス社、カタログ番号356230)の1〜2mm厚に凝固した層上に、コロニー形成密度(colonogenic density)で、播種した。14日後、Matrigelにおける腺房構造および分岐した腺房構造の形成を撮影し、ウェスタンブロット解析を行った。
上記の通りに分離されたマンモスフィアから得られた単一細胞懸濁液を、2000生細胞/直径10cmディッシュの密度で、コラーゲンコートされたカバーガラスまたは細胞培養プレートに播種した。細胞を、5%FBS、5μg/ml インスリン(ロンザ社)、1μg/ml ヒドロコルチゾン(ロンザ社)、10μg/ml コレラ毒素(シグマ社、カタログ番号C8052−2MG)、10ng/ml EGF(ロンザ社)、およびゲンタマイシン(ロンザ社、カタログ番号CC4081G)を含有するハムF-12培地中で増殖させた。5日後、腺胞分化(alveolar differentiation)についてのアッセイの場合には、Matrigel(BDバイオサイエンス社、カタログ番号356230)の層を1μg/ml プロラクチン(シグマ社、カタログ番号L4021−50UG)と共に加えた。12日後、細胞を固定し、免疫染色のために収集した。J. Debnath, et al., Methods 30, 256 (2003)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に先に記述されている通りに、三次元培養を行った。簡潔に説明すると、上記の増殖培地中に再懸濁した単一細胞を、増殖因子を減らしたMatrigel(BDバイオサイエンス社、カタログ番号356230)の1〜2mm厚に凝固した層上に、コロニー形成密度(colonogenic density)で、播種した。14日後、Matrigelにおける腺房構造および分岐した腺房構造の形成を撮影し、ウェスタンブロット解析を行った。
免疫染色および免疫ブロット
コロニーの系統構成を評価するために、カバーガラス上で増殖させた細胞を、PBS+2%パラホルムアルデヒド(PFA)中で、室温で20分間固定し、次に、それぞれ筋上皮マーカーおよび管腔上皮マーカーとして使用される、FITC共役型の抗CD49f一次抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号555735)および抗MUC−1抗体(ミリポア社、カタログ番号05−652)を用いて染色した。抗MUC−1抗体の結合は、Alexa−Fluor568(インビトロジェン社、カタログ番号A−11031)で標識された二次抗体を使用して検出した。DAPI/蛍光退色防止剤(antifade)(インビトロジェン社、カタログ番号P36935)を用いて、核の対比染色および封入を行った。20倍対物レンズを備えた蛍光顕微鏡(Zeiss LSM 510 NLO)を用いて、カバーガラスを観察した。また、細胞をトリプシンでカバーガラスから剥がし、PBS中2%PFA溶液の中で室温で20分間固定した後、系統構成を分析した。試料を、1%BSA含有PBS中、上記の抗CD49f−FITC一次抗体および抗MUC−1一次抗体を用いて、室温で20分間染色し、その後、Tricolor標識型ヤギ−抗マウス−IgG1二次抗体(インビトロジェン社、カタログ番号M32006)と一緒にインキュベートした。インキュベートした後、細胞を1%BSA含有PBSで一回洗浄した。BD LSRIIフローサイトメーター(BDバイオサイエンス社)を用いるフローサイトメトリー分析は、後の継代における、マンモスフィア由来細胞由来の異なる乳腺上皮細胞型の分布(%)を決定することを可能にした:R1−ALD+(継代1〜3):筋上皮(MUC−1−/CD49f+):11.43±0.48、1.02±0.18および1.42±0.19;管腔(MUC−1+/CD49f−):60.22±1.57、62.57±1および23.62±0.91;二分化能(MUC−1+/CD49f+):20.32±0.63、31.81±0.76および65.54±1.08;R2−ALD+(継代数1〜2):筋上皮:15.45±0.94および20.34±0.94;管腔:81.23±0.49および75.99±0.57;二分化能:0.26±0.07および0.11±0.07;R3−ALD+(継代数1〜2):筋上皮:0.07±0.02および0.04±0.07;管腔:94.92±0.57および96.6±0.69;二分化能:4.01±0.69および2.32±0.18。R1〜R3 ALD−分取細胞は管腔細胞のみを生じた:R1−ALD−:96.4±0.57、R2−ALD−:96.8±0.94およびR3−ALD−:97.77±0.49)。データは平均値±SEM(n=5)として表されている。Matrigelおよびプロラクチンと共に層にされていた細胞の可溶化液において、腺胞系統への分化を評価した。簡潔に説明すると、細胞を4℃で3分間、1500rpmでペレットにし、氷冷した洗浄緩衝液(25mM Tris、pH7.5、250mM スクロース、2.5mM MgCl2、10mM ベンズアミジン、10mM NAF、1mM バナジン酸ナトリウム、10μg/ml ロイペプチン、10μg/ml アプロチニン、1μg/ml ペプスタチンおよび1mM PMSF)中で一回洗浄した。ペレットを、溶解緩衝液(20mM HEPES−KOH、pH7.5、10mM KCl、1.5mM MgCl2、1mM EDTA、1mM EGTA、250mM スクロース、1mM バナジン酸ナトリウム、1mM DTT、25μg/ml ロイペプチン、25μg/ml アプロチニン、2.5μg/ml ペプスタチン、1mM PMSF、10mM ベンズアミジンおよび20mM NaF)中に再懸濁させ、加圧型細胞破砕装置で処理した(Dounce homogenized)細胞抽出物のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸(ピアス・バイオテクノロジー社(Pierce Biotechnology)、イリノイ州ロックフォード)を用い、標準物質としてBSA(シグマ社)を用いて、決定した。細胞抽出物を、5%β−メルカプトエタノールを含有するローディング緩衝液中で加熱変性させ、勾配(4〜20%)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(キャンブレックス社(Cambrex))によって分離した。
コロニーの系統構成を評価するために、カバーガラス上で増殖させた細胞を、PBS+2%パラホルムアルデヒド(PFA)中で、室温で20分間固定し、次に、それぞれ筋上皮マーカーおよび管腔上皮マーカーとして使用される、FITC共役型の抗CD49f一次抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号555735)および抗MUC−1抗体(ミリポア社、カタログ番号05−652)を用いて染色した。抗MUC−1抗体の結合は、Alexa−Fluor568(インビトロジェン社、カタログ番号A−11031)で標識された二次抗体を使用して検出した。DAPI/蛍光退色防止剤(antifade)(インビトロジェン社、カタログ番号P36935)を用いて、核の対比染色および封入を行った。20倍対物レンズを備えた蛍光顕微鏡(Zeiss LSM 510 NLO)を用いて、カバーガラスを観察した。また、細胞をトリプシンでカバーガラスから剥がし、PBS中2%PFA溶液の中で室温で20分間固定した後、系統構成を分析した。試料を、1%BSA含有PBS中、上記の抗CD49f−FITC一次抗体および抗MUC−1一次抗体を用いて、室温で20分間染色し、その後、Tricolor標識型ヤギ−抗マウス−IgG1二次抗体(インビトロジェン社、カタログ番号M32006)と一緒にインキュベートした。インキュベートした後、細胞を1%BSA含有PBSで一回洗浄した。BD LSRIIフローサイトメーター(BDバイオサイエンス社)を用いるフローサイトメトリー分析は、後の継代における、マンモスフィア由来細胞由来の異なる乳腺上皮細胞型の分布(%)を決定することを可能にした:R1−ALD+(継代1〜3):筋上皮(MUC−1−/CD49f+):11.43±0.48、1.02±0.18および1.42±0.19;管腔(MUC−1+/CD49f−):60.22±1.57、62.57±1および23.62±0.91;二分化能(MUC−1+/CD49f+):20.32±0.63、31.81±0.76および65.54±1.08;R2−ALD+(継代数1〜2):筋上皮:15.45±0.94および20.34±0.94;管腔:81.23±0.49および75.99±0.57;二分化能:0.26±0.07および0.11±0.07;R3−ALD+(継代数1〜2):筋上皮:0.07±0.02および0.04±0.07;管腔:94.92±0.57および96.6±0.69;二分化能:4.01±0.69および2.32±0.18。R1〜R3 ALD−分取細胞は管腔細胞のみを生じた:R1−ALD−:96.4±0.57、R2−ALD−:96.8±0.94およびR3−ALD−:97.77±0.49)。データは平均値±SEM(n=5)として表されている。Matrigelおよびプロラクチンと共に層にされていた細胞の可溶化液において、腺胞系統への分化を評価した。簡潔に説明すると、細胞を4℃で3分間、1500rpmでペレットにし、氷冷した洗浄緩衝液(25mM Tris、pH7.5、250mM スクロース、2.5mM MgCl2、10mM ベンズアミジン、10mM NAF、1mM バナジン酸ナトリウム、10μg/ml ロイペプチン、10μg/ml アプロチニン、1μg/ml ペプスタチンおよび1mM PMSF)中で一回洗浄した。ペレットを、溶解緩衝液(20mM HEPES−KOH、pH7.5、10mM KCl、1.5mM MgCl2、1mM EDTA、1mM EGTA、250mM スクロース、1mM バナジン酸ナトリウム、1mM DTT、25μg/ml ロイペプチン、25μg/ml アプロチニン、2.5μg/ml ペプスタチン、1mM PMSF、10mM ベンズアミジンおよび20mM NaF)中に再懸濁させ、加圧型細胞破砕装置で処理した(Dounce homogenized)細胞抽出物のタンパク質濃度を、ビシンコニン酸(ピアス・バイオテクノロジー社(Pierce Biotechnology)、イリノイ州ロックフォード)を用い、標準物質としてBSA(シグマ社)を用いて、決定した。細胞抽出物を、5%β−メルカプトエタノールを含有するローディング緩衝液中で加熱変性させ、勾配(4〜20%)ポリアクリルアミドゲル電気泳動(キャンブレックス社(Cambrex))によって分離した。
タンパク質をHybond−Pメンブレン(GEヘルスケア・バイオ社(GE Healthcare Bio)、ニュージャージー州ピスカタウェイ)に転写した。メンブレンを、マウス抗ヒトβカゼインモノクローナル抗体(サンタクルーズバイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology)、カタログ番号SC−53189)、またはマウス抗β−アクチン抗体(シグマ社、カタログ番号AC−15)、続いて西洋わさびペルオキシダーゼ結合型ヤギ抗マウス抗体(バイオメダ社(Biomeda Corp.)、カリフォルニア州フォスターシティ)を用いて、プローブした。β−アクチンを正規化用ローディング対照として使用した。SuperSignal West Pico化学発光検出キット(ピアス社)を用いて、染色を現像した。
動物モデル
NOD/SCIDマウスを使用して、3つの無病乳腺組織試料から分取されたR1〜R4上皮亜集団の幹細胞の特性を、インビボで評価した。正常乳腺上皮細胞の異種移植に使用された動物モデルは、D. A. Proia, et al., Nat Protoc 1, 206 (2006)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に先に記述されている。脂肪パッドを春機発動期前にクリアリングし、照射(4Gy)された、および非照射の、不死化初代ヒト乳腺線維芽細胞(合計500,000細胞/脂肪パッド)の1:1混合物を35ul注射することにより、ヒト化した。ヒトテロメアおよびGFPを有する不死化された線維芽細胞(RMF/EG)は、Charlotte Kuperwasser博士(タフツ医科大学(Tufts University School of Medicine)、マサチューセッツ州ボストン)から贈与されたものである。クリアリングおよびヒト化から2〜4週間後に、分取された上皮細胞を、35ulのMatrigel−コラーゲンI(BDバイオサイエンス社)の1:3混合物中で、500,000個のRMF/EG線維芽細胞と混合し、脂肪パッドに移植した。細胞を注射してから12週間後に、安楽死させた動物における管の成長を分析した。分取された細胞を注射し、交配させ、妊娠18日目に安楽死させた動物において、ヒトβカゼイン産生をモニタリングした。組織学的分析のために、脂肪パッドをホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋した。各細胞集団の増殖能の評価を、H&E染色で分析した。動物研究は、施設内で承認された動物プロトコールに従って実施された。
NOD/SCIDマウスを使用して、3つの無病乳腺組織試料から分取されたR1〜R4上皮亜集団の幹細胞の特性を、インビボで評価した。正常乳腺上皮細胞の異種移植に使用された動物モデルは、D. A. Proia, et al., Nat Protoc 1, 206 (2006)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に先に記述されている。脂肪パッドを春機発動期前にクリアリングし、照射(4Gy)された、および非照射の、不死化初代ヒト乳腺線維芽細胞(合計500,000細胞/脂肪パッド)の1:1混合物を35ul注射することにより、ヒト化した。ヒトテロメアおよびGFPを有する不死化された線維芽細胞(RMF/EG)は、Charlotte Kuperwasser博士(タフツ医科大学(Tufts University School of Medicine)、マサチューセッツ州ボストン)から贈与されたものである。クリアリングおよびヒト化から2〜4週間後に、分取された上皮細胞を、35ulのMatrigel−コラーゲンI(BDバイオサイエンス社)の1:3混合物中で、500,000個のRMF/EG線維芽細胞と混合し、脂肪パッドに移植した。細胞を注射してから12週間後に、安楽死させた動物における管の成長を分析した。分取された細胞を注射し、交配させ、妊娠18日目に安楽死させた動物において、ヒトβカゼイン産生をモニタリングした。組織学的分析のために、脂肪パッドをホルマリン中で固定し、パラフィンに包埋した。各細胞集団の増殖能の評価を、H&E染色で分析した。動物研究は、施設内で承認された動物プロトコールに従って実施された。
免疫組織化学および免疫蛍光
ホルマリンで固定されパラフィン包埋された組織に対して、免疫組織化学を行った。5ミクロン厚の切片からパラフィンを除去し、段階的なアルコールにより再水和し、免疫組織化学のために抗原回復させた。切片を、1:80に希釈した抗ヒト平滑筋アクチン(α−SMA)マウスモノクローナル抗体(ダコ社(Dako)、カタログ番号M0851)および抗ヒトCK8/18マウスモノクローナル抗体(ライカ・マイクロシステムズ社(Leica Microsystems)、カタログ番号RTU−5D3)、並びに抗ヒトβカゼインウサギポリクローナル抗体(Charles Streuli博士、マンチェスター大学、英国マンチェスターからの贈与)と一緒にインキュベートした。免疫複合体をABCペルオキシダーゼ法で可視化し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。蛍光二重染色のために、試料を、1/500に希釈された、Alexa Fluor594(インビトロジェン社、カタログ番号A11020)およびAlexa Fluor488(インビトロジェン社、カタログ番号A21121)標識型二次抗体と一緒に、室温で2時間インキュベートした。核をVectashield−DAPIで対比染色し、カバーガラスをかけた。切片を蛍光顕微鏡(Zeiss LSM 510 NLO)で観察した。
ホルマリンで固定されパラフィン包埋された組織に対して、免疫組織化学を行った。5ミクロン厚の切片からパラフィンを除去し、段階的なアルコールにより再水和し、免疫組織化学のために抗原回復させた。切片を、1:80に希釈した抗ヒト平滑筋アクチン(α−SMA)マウスモノクローナル抗体(ダコ社(Dako)、カタログ番号M0851)および抗ヒトCK8/18マウスモノクローナル抗体(ライカ・マイクロシステムズ社(Leica Microsystems)、カタログ番号RTU−5D3)、並びに抗ヒトβカゼインウサギポリクローナル抗体(Charles Streuli博士、マンチェスター大学、英国マンチェスターからの贈与)と一緒にインキュベートした。免疫複合体をABCペルオキシダーゼ法で可視化し、切片をヘマトキシリンで対比染色した。蛍光二重染色のために、試料を、1/500に希釈された、Alexa Fluor594(インビトロジェン社、カタログ番号A11020)およびAlexa Fluor488(インビトロジェン社、カタログ番号A21121)標識型二次抗体と一緒に、室温で2時間インキュベートした。核をVectashield−DAPIで対比染色し、カバーガラスをかけた。切片を蛍光顕微鏡(Zeiss LSM 510 NLO)で観察した。
外胚葉系分化:神経:
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取されたR1〜R4サブセットおよびそれら各々のALDEFLUOR陽性亜集団およびALDEFLUOR陰性亜集団を、浮遊状態で、20,000細胞/ウェルの密度で、24ウェル低接着表面プレート(low-attachment plate)(コーニング社)において、3週間、20ng/ml bFGF(R&Dシステムズ社、カタログ番号233−FB−025/CF)および500ng/ml ノギン(R&Dシステムズ社、カタログ番号3344−NG−050)を含有する神経前駆体用培地(neural precursor medium)(NPM)中で、培養した。培養の3週間後、培地を、20ng/ml bFGFを添加したNPMに変更し、さらに一週間培養した。得られた分化型神経系細胞(ニューロスフィア)の表現型分析を行う前に、NPM(分裂促進因子を含まない)中に再懸濁したニューロスフィアを、ポリ−D−リジン(シグマ社、カタログ番号P7886)およびラミニン(シグマ社、カタログ番号L2020)でコートされたカバーガラス上に、24時間(ネスチン発現について免疫染色するため)または21日間(完全に分化させるため)植えた。ウサギ抗ヒトネスチン抗体(ミリポア社、カタログ番号AB5922)、Alexa Fluor555結合型マウス抗ヒトβ−III−チューブリン抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号560339)およびAlexa Fluor488結合型マウス抗ヒトGFAP抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号560297)を含む一次抗体を用いて、免疫蛍光分析を行った。Alexa Fluor546結合型抗ウサギ二次抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A10040)を使用して、抗ネスチン一次抗体を標識した。ドーパミン作動性細胞への分化をもたらす二段階誘導を引き起こすために、第一に、R1−ALDEFLUOR−陽性細胞を、8日間、N2およびB27添加剤を添加したDMEM/F12、10ng/ml bFGF並びにペニシリン/ストレプトマイシンから成る神経用基礎培地(neural basal medium)中で、ニューロスフィアとして、培養した。新しいbFGFを一日おきに添加した。8日後、ニューロスフィアを、ポリ−D−リジン(100ug/ml、シグマ社)およびラミニン(20ug/ml、シグマ社)でコートされたカバーガラスに移し、SDF−1(100ng/ml)、PTN(100ng/ml)、IGF−II(100ng/ml)およびEFNB1(200ng/ml)(R&Dシステムズ社、それぞれ、カタログ番号350−NS/CF、252−PL、292−G2および473−EB)の存在下、神経基礎培地中で培養して、ドーパミン作動性神経細胞に向けた特異的な分化を誘導した(27)。培地の半分を、分化の4日目およびその後21日目まで2〜3日毎に、増殖因子を含有する新しい培地と置き換えた。免疫蛍光分析を、マウス抗チロシン水酸化酵素(TH)(シグマ社、カタログ番号T1299)一次抗体およびウサギ抗小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)(ミリポア社、カタログ番号AB1598P)一次抗体、続いて、Alexa Fluor 488結合型ヤギ−抗ウサギ(インビトロジェン社、カタログ番号A11008)二次抗体およびAlexa Fluor 555結合型ヤギ抗マウス(インビトロジェン社、カタログ番号A21127)二次抗体を用いて行い、ドーパミン作動性神経細胞への分化を確認した。
Multiclamp700B増幅器(モレキュラーデバイス社、カリフォルニア州サニーベール)を用いて、ホールセル電流クランプ記録を得た。シグナルを、digidata1440Aアナログ・デジタル変換器(モレキュラーデバイス社)を用いて、1kHzでフィルタリングし、10kHzでサンプリングした。3M KClを用いて液間電位差を測定し、調整した。カバーガラス上で増殖させた細胞を、約300mOsm(pH7.4)で、135mM NaCl、5mM KCl、2mM CaCl2、1.2mM MgCl2、10mM HEPESおよび10mM グルコースを含有する浴溶液(bath solution)中に置いて、微分干渉光学系を有するOlympus IX71顕微鏡(オリンパス社、日本、東京)を用いて、40倍の拡大率で、可視化した。パッチ電極(3〜4MΩ)は、約290mOsm(pH7.4)で、115mM K−グルコン酸塩、20mM KCl、10mM Na2リン酸塩、10mM HEPES、2mM Mg3ATP、0.3mM Na2GTPを含有していた。電圧応答を記録するため、電流を手動でインジェクトして、膜電位を約−70mVに維持した。テトロドトキシン(TTX)をトクリス社(Tocis)(ミズーリ州、ミズーリ)から入手し、重力送りの灌流系を介して適用した。全データを記録し、pClamp10ソフトウェア(モレキュラーデバイス社)を用いて解析した。
インビトロにおける神経系誘導体への外胚葉系分化
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取したR1〜R4亜集団およびH7 hESCを、浮遊状態で、20,000細胞/ウェルの密度で、24ウェル低接着表面プレート(コーニング社)中で、3週間、20ng/ml bFGF(R&Dシステムズ社、カタログ番号233−FB−025/CF)および500ng/ml ノギン(R&Dシステムズ社、カタログ番号3344−NG−050)を含有する神経前駆体用培地(NPM)中で、培養した。培養の3週間後、培地を、20ng/ml bFGFを添加したNPMに変更し、さらに1週間培養した。得られた分化型神経系細胞(ニューロスフィア)の表現型分析を行う前に、NPM(分裂促進因子を含まない)中に再懸濁したニューロスフィアを、ポリ−D−リジン(シグマ社、カタログ番号P7886)およびラミニン(シグマ社、カタログ番号L2020)でコートされたカバーガラス上に、24時間(ネスチン発現について免疫染色するため)または21日間(さらなる分化を可能とさせるため)植えた。ウサギ抗ヒトネスチン抗体(ミリポア社、カタログ番号AB5922)、Alexa Fluor555結合型マウス抗ヒトTUJ1/β−III−チューブリン抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号560339)およびAlexa Fluor488結合型マウス抗ヒトGFAP抗体(BDバイオサイエンス社、カタログ番号560297)を含む一次抗体を用いて、免疫蛍光分析を行った。Alexa Fluor546結合型抗ウサギ二次抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A10040)を使用して、抗ネスチン一次抗体を標識した。染色の対照を図31、パネルA〜D(上段)に示す。
内胚葉系分化:胚体内胚葉:
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取したR1〜R4サブセット、およびそれら各々のALDEFLUOR−陽性亜集団およびALDEFLUOR−陰性亜集団を、胚体内胚葉への分化を誘導すると先(E. Kroon et al., Nat Biotechnol 26, 443 (2008);この開示は参照により本明細書に組み入れられる)に報告された条件下で、培養した。簡潔に説明すると、カバーガラスに播種された分取細胞を、以下の通りに3日間分化させた:一日目:グルコース、Glutamaxペニシリン/ストレプトマイシン、100ng/ml アクチビンA、および25ng/ml Wnt3a(R&Dシステムズ社、それぞれ、カタログ番号338−AC−025および5036−WN−010/CF)を添加したRPMI中での培養;2日目および3日目:Wnt3aが0.2%FBSに置き換えられた以外は同じ培地での培養。ウサギ抗ヒトSox17(サンタクルーズバイオテクノロジー社、カタログ番号SC−20099)一次抗体、ヤギ抗ヒトHNF−3β/Foxa2(R&Dシステムズ社、カタログ番号AF2400)一次抗体およびヤギ抗ヒトブラキュリ(R&Dシステムズ社、カタログ番号AF2085)一次抗体、続いて、Alexa Fluor546結合型ロバ抗ウサギ(インビトロジェン社、カタログ番号A10040)二次抗体およびAlexa Fluor 488結合型ロバ抗ヤギ(インビトロジェン社、カタログ番号A11055)二次抗体を用いて免疫蛍光分析を行い、胚体内胚葉への分化を確認した。
インビトロにおける胚体内胚葉および膵臓誘導体への内胚葉系分化
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取したR1〜R4亜集団を、ヒトESCにおいて膵臓系統を誘導するとKroon et al.により先に報告された条件下で培養した(E. Kroon et al., Nat Biotechnol 26, 443 (2008))。カバーガラスまたはフィーダー細胞層上に播種された分取細胞を、3日間(胚体内胚葉)または12日間(膵臓系統)の分化にかけた。ウサギ抗ヒトSOX17(サンタクルーズバイオテクノロジー社、カタログ番号SC−20099)一次抗体、ヤギ抗ヒトHNF−3β/FOXA2(R&Dシステムズ社、カタログ番号AF2400)一次抗体、ヤギ抗ヒトブラキュリ(R&Dシステムズ社、カタログ番号AF2085)一次抗体、ヤギ抗ヒトPDX1(サンタクルーズバイオテクノロジー社、カタログ番号SC14662)一次抗体およびヤギ抗ヒトNKX6.1(サンタクルーズバイオテクノロジー社、カタログ番号SC15030)一次抗体、続いて、Alexa Fluor546結合型ロバ抗ウサギ(インビトロジェン社、カタログ番号A10040)二次抗体およびAlexa Fluor 488結合型ロバ抗ヤギ(インビトロジェン社、カタログ番号A11055)二次抗体を用いて免疫蛍光分析を行い、内胚葉系への分化を確認した。染色の対照を図31、パネルA〜D(上段)に示す。
中胚葉系分化:心筋系:
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取したR1〜R4サブセット、およびそれら各々のALDEFLUOR−陽性亜集団およびALDEFLUOR−陰性亜集団を、J. Bartunek et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol 292, H1095 (2007)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)によって、心筋系の分化を誘導すると先に記述された条件下で培養した。分取した細胞(12,000細胞/集団)を、3週間、20%FBS、100μM L−アスコルビン酸(シグマ社、カタログ番号A5960)および20nM デキサメタゾン(シグマ社、カタログ番号D4902)を添加したDMEM中で、増殖させた。次に、細胞をコラーゲンコート4ウェルチャンバースライドに播種し、2%FBS、50ng/ml bFGF、25ng/ml BMP−2(R&Dシステムズ社、カタログ番号355−BM−010)および2ng/ml インスリン様増殖因子1(IGF−I)(R&Dシステムズ社、カタログ番号291−G1−050)を含有する心臓分化用培地中で、6日間、増殖させた。分化した細胞を氷冷したメタノール中で固定し、1/200希釈のマウス抗ヒトGATA−4モノクローナル抗体(IgG2a)(カタログ番号SC−25310)、1/200希釈のヤギ抗ヒトMEF−2ポリクローナル抗体(カタログ番号SC−13917)、1/100希釈のウサギ抗ヒトNkx2.5ポリクローナル抗体(カタログ番号SC−14033)、および1/100希釈のヤギ抗ヒトトロポニンIポリクローナル抗体(カタログ番号SC−8118)を含む、サンタクルーズバイオテクノロジーズ社から入手した一次抗体を用いて、免疫蛍光法で分析した。Alexa Fluor488結合型ヤギ抗マウスIgG2a抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A21131)、Alexa Fluor488結合型ロバ抗ヤギIgG抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A11055)、およびAlexa Fluor488結合型ヤギ抗ウサギIgG抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A11008)を含む二次抗体を用いて、染色を完了させた。
分取したR1サブセットを、自然に拍動する心筋細胞に分化させるため、まず、分取細胞を、ヒト胎盤線維芽細胞フィーダー細胞(Susan博士(フィッシャー社、カリフォルニア大学、カリフォルニア州サンフランシスコ)からの贈与)上で、上記と同様の無血清乳腺基礎培地中で、増殖させた。14日後、胎盤フィーダー細胞に現れたコロニーを手動で切り分け、Knockout DMEM(インビトロジェン社)、20%FBS、可欠アミノ酸、グルタミンおよびβ−メルカプトエタノールを含有する心臓分化用培地中の懸濁液中で、胚様体(EB)を形成させた。懸濁液中で4日後、EBをゼラチンコート24ウェルプレートに播種し、新しい培地を毎日与えた。拍動するEBのモニタリングを、コマ撮りのビデオ顕微鏡法を用い、インプロビジョン社(Improvision)製Open labソフトウェアにより制御される環境チャンバ中、リアルタイムで、実行した。5〜10%のEBが、培養の12〜14日後に、拍動を開始した。
インビトロでの心筋細胞、脂肪細胞および内皮細胞誘導体への中胚葉系分化
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例9〜14で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取したR1〜R4亜集団を、J. Bartunek et al., Am J Physiol Heart Circ Physiol 292, H1095 (2007)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)により、心筋性分化を誘導すると先に記述された条件下で、培養した。分取細胞(12,000細胞/集団)を、3週間、20%FBS、100μM L−アスコルビン酸(シグマ社、カタログ番号A5960)および20nM デキサメタゾン(シグマ社、カタログ番号D4902)を添加したDMEM中で、増殖させた。次に、細胞を、コラーゲンコート4ウェルチャンバースライドに播種し、2%FBS、50ng/ml bFGF、25ng/ml BMP−2(R&Dシステムズ社、カタログ番号355−BM−010)および2ng/ml インスリン様増殖因子1(IGF−I)(R&Dシステムズ社、カタログ番号291−G1−050)を含有する心臓分化用培地中で、6日間増殖させた。分化した細胞を氷冷したメタノール中で固定し、サンタクルーズバイオテクノロジーズ社から入手した、マウス抗ヒトGATA−4モノクローナル抗体(IgG2a)(カタログ番号SC−25310)、ヤギ抗ヒトMEF−2ポリクローナル抗体(カタログ番号SC−13917)、ウサギ抗ヒトNkx2.5ポリクローナル抗体(カタログ番号SC−14033)およびヤギ抗ヒトトロポニンIポリクローナル抗体(カタログ番号SC−8118)を含む一次抗体を用いて、免疫蛍光法により分析した。Alexa Fluor488結合型ヤギ抗マウスIgG2a抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A21131)、Alexa Fluor488結合型ロバ抗ヤギIgG抗体(インビトロジェン社、カタログ番号A11055)、およびAlexa Fluor488結合型ヤギ抗ウサギIgG(インビトロジェン社、カタログ番号A11008)を含む二次抗体を用いて、染色を完了した。
分取したR1亜集団を自然に拍動する心筋細胞に分化させるため、まず、分取細胞を、ヒト胎盤線維芽細胞フィーダー細胞(Susan博士(フィッシャー社、UCSF)からの贈与)上で、無血清乳腺基礎培地(上記と同様)中で、増殖させた。14日後、フィーダー細胞層に現れたコロニーを手動で切り分け、Knockout DMEM(インビトロジェン社)、20%FBS、可欠アミノ酸、グルタミンおよびβ−メルカプトエタノールを含有する心臓分化用培地中の懸濁液中で、胚様体(EB)を形成させた。懸濁液中で4日後、EBをゼラチンコート24ウェルプレートに播種し、新しい培地を毎日与えた。拍動するEB由来細胞のモニタリングを、コマ撮りのビデオ顕微鏡法を用い、インプロビジョン社(Improvision)製Open labソフトウェアにより制御される環境チャンバ中、リアルタイムで、実行した。5〜10%のEB由来細胞が、培養の12〜14日後に、拍動を開始した。
脂肪細胞分化:分取細胞を、2週間、15%ES−FBS(オメガ・サイエンティフィック社(Omega Scientific Inc.)、カタログ番号FB−05)、18%Chang Bおよび2%Chang C(イルビン・サイエンティフィック社(Irvine Scientific)、それぞれ、カタログ番号C−100およびC−106)並びに1×ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したグルタミン含有α−MEM培地中で、増殖させた。次に、細胞を24ウェルチャンバースライドに播種し、増殖条件(増殖培地)または分化条件(ギブコ社製StemPro脂肪生成分化キット、カタログ番号A10070−01)下に、9日間(オイルレッド0染色、定量的リアルタイムPCR分析のため)または18日間(FABP4の免疫蛍光法分析のため)、置いた。培地を3〜4日毎に交換した。染色前に、細胞を2%PFAで固定した。ウサギ抗ヒトFABP4一次抗体(ケイマン・ケミカル社(Cayman Chemical)、カタログ番号10004944)、続いてAlexa Fluor488結合型ヤギ抗ウサギIgG(インビトロジェン社、カタログ番号A11008)を用いて、免疫蛍光分析を行った。ヒトMSCを分化対照として使用した。
定量的リアルタイムPCRを、標準方法を用いて行った。FABP4(Hs01086177_m1)、レプチン(Hs00174877_m1)およびPPARγ(Hs01115511_m1)用のプライマープローブセットを、ABI社から入手した。グルクロニダーゼB(GusB;IDT)発現を、インプットcDNAにおける変動を正規化するのに利用した。
分取したR1〜R4亜集団を、内皮細胞分化を誘導するとLevenberg, et al.により先に記述された条件下で、培養した(S. Levenberg, J. S. Golub, M. Amit, J. Itskovitz-Eldor, R. Langer, Endothelial cells derived from human embryonic stem cells. Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 99, 4391 (2002);これらの開示は参照により本明細書に組み入れられる)。簡潔に説明すると、細胞を前述の内皮用培地中で培養し、2週間後、CD31/PECAM1細胞表面マーカーの発現について、フローサイトメトリーで分析した。R1細胞は、これらの条件下で培養された場合に、2%のCD31/PECAM1+細胞を生じた。CD31/PECAM1+細胞をフローサイトメトリーで単離し、Matrigel分化アッセイにおいて、50,000細胞/培地500μlで、播種した。細胞播種の24時間後に、位相差顕微鏡観察で、コード形成を評価した。HUVECおよび初代乳腺上皮細胞を、それぞれ陽性分化対照および陰性分化対照として使用した。
ヒト胚性幹細胞(hESC)培養
10継代毎に凍結したストックの置換を伴う培養で通例維持された、H7およびH9 hESC(Susan博士(フィッシャー社、UCSF)からの贈与)を、フィーダー細胞層として使用されるマウス胎仔線維芽細胞(MEF;ミリポア社、カタログPMEF−CFL)上で、増殖させた。MEFを、DMEM、M199(インビトロジェン社、カタログ番号11150−059)および10%FBS中で、増殖させた。フィーダー細胞に5,100radのガンマ線を照射し、長期保存用に凍結した。使用前に、フィーダー細胞を37℃で解凍し、洗浄し、ゼラチンコート6ウェル組織培養プレート上に播種した。H7細胞およびH9細胞を解凍し、洗浄し、コンフルエントなフィーダー細胞上に播種し、継代培養前に最大1週間、増殖させた。hESC培地は、Knockout DMEM、20%Knockout Serum Replacement(ギブコ社、カタログ番号10828−028)、10ng/ml bFGF 可欠アミノ酸、グルタミン、β−メルカプトエタノールおよびペニシリン/ストレプトマイシンから成った。培養物を毎日モニタリングして、hESCの集団がフィーダー細胞に接着し、典型的なhESCコロニーを形成していたことを確認した。コロニーの平均サイズが300〜400細胞に達したら、コロニーを手動で切り分け、継代した。
10継代毎に凍結したストックの置換を伴う培養で通例維持された、H7およびH9 hESC(Susan博士(フィッシャー社、UCSF)からの贈与)を、フィーダー細胞層として使用されるマウス胎仔線維芽細胞(MEF;ミリポア社、カタログPMEF−CFL)上で、増殖させた。MEFを、DMEM、M199(インビトロジェン社、カタログ番号11150−059)および10%FBS中で、増殖させた。フィーダー細胞に5,100radのガンマ線を照射し、長期保存用に凍結した。使用前に、フィーダー細胞を37℃で解凍し、洗浄し、ゼラチンコート6ウェル組織培養プレート上に播種した。H7細胞およびH9細胞を解凍し、洗浄し、コンフルエントなフィーダー細胞上に播種し、継代培養前に最大1週間、増殖させた。hESC培地は、Knockout DMEM、20%Knockout Serum Replacement(ギブコ社、カタログ番号10828−028)、10ng/ml bFGF 可欠アミノ酸、グルタミン、β−メルカプトエタノールおよびペニシリン/ストレプトマイシンから成った。培養物を毎日モニタリングして、hESCの集団がフィーダー細胞に接着し、典型的なhESCコロニーを形成していたことを確認した。コロニーの平均サイズが300〜400細胞に達したら、コロニーを手動で切り分け、継代した。
奇形腫形成アッセイ
6〜7週齢の雌SCID/BEIGEマウス(チャールス・リバー社)を使用して、施設内で承認された動物プロトコールAN079997/AN086757に従って、直接分取したR1細胞、培養増殖したR1サブクローンおよびH7ヒトESCの奇形腫形成能を試験した。簡潔に説明すると、T. A. Prokhorova et al., Stem cells and development 18, 47 (2009)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)の公開されたプロトコールに従って、腎被膜下に細胞を移植した。マウスを、注入の8週間後(H7細胞)または12週間後(R1細胞)に安楽死させた。奇形腫を外科的に採取し、上記の通りに、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、免疫組織化学用に処理した。
6〜7週齢の雌SCID/BEIGEマウス(チャールス・リバー社)を使用して、施設内で承認された動物プロトコールAN079997/AN086757に従って、直接分取したR1細胞、培養増殖したR1サブクローンおよびH7ヒトESCの奇形腫形成能を試験した。簡潔に説明すると、T. A. Prokhorova et al., Stem cells and development 18, 47 (2009)(この開示は参照により本明細書に組み入れられる)の公開されたプロトコールに従って、腎被膜下に細胞を移植した。マウスを、注入の8週間後(H7細胞)または12週間後(R1細胞)に安楽死させた。奇形腫を外科的に採取し、上記の通りに、ホルマリンで固定し、パラフィンに包埋し、免疫組織化学用に処理した。
奇形腫分析のための組織化学および免疫組織化学
組織は、奇形腫、乳腺腫瘍、陽性対照として使用された種々のヒト組織、または陰性対照として使用されたマウス腎臓を含んでいた。標準的な手順を用いて、パラフィン包埋組織を4μmの連続切片に切り、脱パラフィン処理し、再水和した。全ての工程は、記載がある場合以外は、室温で行われた。クエン酸塩緩衝液(pH6.0)中で10分間マイクロ波照射することにより抗原回復させた後、切片を、抗ヒト ラミンA/C一次抗体(エピトミクス社(Epitomics Inc.)、カタログ番号2966−1、クローンEPR4100)、抗GFAP一次抗体(ダコ社、カタログ番号M0761)、抗HAPLN1一次抗体(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号HPA019105)、抗PDX1一次抗体(エピトミクス社、カタログ番号3470−1、クローンEPR3358)、抗AFP一次抗体(ダコ社、カタログ番号IR500)および抗TFF3一次抗体(エピトミクス社、カタログ番号3178−1、クローンEPR3973)と一緒に、1時間インキュベートした。HRP polymerキット(Ultravision LPキット、サーモサイエンティフィック社)と一緒に15分間、ジアミノベンジジン基質(ジェンメッド社(Genemed)、カタログ番号520017)と一緒に5分間、インキュベートした後に、染色を可視化した。マウス抗GFAPモノクローナル抗体により染色されたマウス腎臓切片について、抗原回復前にさらなるペルオキシダーゼブロッキング工程(3%H202、10分間)を加え、Mouse on Mouseキット(ベクター・ラボラトリーズ社(Vector Laboratories Inc.)、カタログ番号BMK2202)をUltravision LPキットの代わりに使用した。染色した切片を、digital slide scanner(アペリオ社(Aperio Inc.))で、20倍で、スキャンした。Imagescopeソフトウェア(Aperio Inc.)を用いて、画像の収集および処理を行った。染色対照を図32に示す。
組織は、奇形腫、乳腺腫瘍、陽性対照として使用された種々のヒト組織、または陰性対照として使用されたマウス腎臓を含んでいた。標準的な手順を用いて、パラフィン包埋組織を4μmの連続切片に切り、脱パラフィン処理し、再水和した。全ての工程は、記載がある場合以外は、室温で行われた。クエン酸塩緩衝液(pH6.0)中で10分間マイクロ波照射することにより抗原回復させた後、切片を、抗ヒト ラミンA/C一次抗体(エピトミクス社(Epitomics Inc.)、カタログ番号2966−1、クローンEPR4100)、抗GFAP一次抗体(ダコ社、カタログ番号M0761)、抗HAPLN1一次抗体(シグマ・アルドリッチ社、カタログ番号HPA019105)、抗PDX1一次抗体(エピトミクス社、カタログ番号3470−1、クローンEPR3358)、抗AFP一次抗体(ダコ社、カタログ番号IR500)および抗TFF3一次抗体(エピトミクス社、カタログ番号3178−1、クローンEPR3973)と一緒に、1時間インキュベートした。HRP polymerキット(Ultravision LPキット、サーモサイエンティフィック社)と一緒に15分間、ジアミノベンジジン基質(ジェンメッド社(Genemed)、カタログ番号520017)と一緒に5分間、インキュベートした後に、染色を可視化した。マウス抗GFAPモノクローナル抗体により染色されたマウス腎臓切片について、抗原回復前にさらなるペルオキシダーゼブロッキング工程(3%H202、10分間)を加え、Mouse on Mouseキット(ベクター・ラボラトリーズ社(Vector Laboratories Inc.)、カタログ番号BMK2202)をUltravision LPキットの代わりに使用した。染色した切片を、digital slide scanner(アペリオ社(Aperio Inc.))で、20倍で、スキャンした。Imagescopeソフトウェア(Aperio Inc.)を用いて、画像の収集および処理を行った。染色対照を図32に示す。
単一細胞由来R1クローン細胞の培養条件
単一R1細胞およびH7 hESCを、フィーダー細胞層として使用されたヒト胎盤線維芽細胞(Susan博士(フィッシャー社、UCSF)からの贈与)上で、増殖させた。ヒト胎盤(妊娠6.4週目)から得られた線維芽細胞を、DMEM、M199(インビトロジェン社、カタログ番号11150−059)および10%FBSを含有する培地中で増殖させ、5,100radでγ線照射し、長期保存用に凍結した。使用前に、フィーダー細胞を37℃で解凍し、洗浄し、ゼラチンコート24ウェル組織培養プレートに播種した。フィーダー細胞を播種した24〜48時間後に、単一R1細胞およびH7細胞をフィーダー細胞上に播種し、R1細胞に関しては最大14日間、またはH7細胞に関しては7日間、培養した。hESC培地は、Knockout DMEM、20%Knockout Serum Replacement(ギブコ社、カタログ番号10828−028)、10ng/ml bFGF、可欠アミノ酸、グルタミン、β−メルカプトエタノールおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有していた。R1細胞用培地は、B27(インビトロジェン社、カタログ番号17504044)、20ng/ml EGF(ロンザ社)、20ng/ml bFGF(シグマ社、カタログ番号F0291−25UG)、および4μg/ml ヘパリン(シグマ社、カタログ番号H1027)を添加した、無血清乳腺上皮基礎培地(MEBM)(ロンザ社)を含有した。培養物を毎日モニタリングして、単一R1細胞からコロニーが生じたこと、およびhESCのクラスターがフィーダー細胞に接着して典型的なhESCコロニーに展開していることを確認し、継代(passaging)を決定した。単一コロニーおよびH7細胞を、製造業者の取扱説明書に従って、抗ヒトOCT3/4一次抗体(サンタクルーズ・バイオテック社(Santa Cruz Biotech)、カタログ番号SC−9081)、抗ヒトNANOG一次抗体(R&Dシステムズ社、カタログ番号AF1997)、抗ヒトSOX2一次抗体(R&Dシステムズ社、カタログ番号MAB2018)、抗上皮細胞表面マーカーEPCAM一次抗体(ステム・セル・テクノロジーズ社、カタログ番号10109)および抗γチューブリン一次抗体(シグマ社、カタログ番号T6557)、並びにそれぞれの二次抗体を用いて、PCR(以下の項を参照)、フローサイトメトリー分析、免疫蛍光法およびウェスタンブロット解析によって、多能性マーカーについてプローブした。個々のR1細胞から得られた対応する単一コロニーを、手動で分離し、トリプシン処理し、3つに分割して、上記手順に従って、各系統に向けたサブクローンの分化能についてプローブした。
単一R1細胞およびH7 hESCを、フィーダー細胞層として使用されたヒト胎盤線維芽細胞(Susan博士(フィッシャー社、UCSF)からの贈与)上で、増殖させた。ヒト胎盤(妊娠6.4週目)から得られた線維芽細胞を、DMEM、M199(インビトロジェン社、カタログ番号11150−059)および10%FBSを含有する培地中で増殖させ、5,100radでγ線照射し、長期保存用に凍結した。使用前に、フィーダー細胞を37℃で解凍し、洗浄し、ゼラチンコート24ウェル組織培養プレートに播種した。フィーダー細胞を播種した24〜48時間後に、単一R1細胞およびH7細胞をフィーダー細胞上に播種し、R1細胞に関しては最大14日間、またはH7細胞に関しては7日間、培養した。hESC培地は、Knockout DMEM、20%Knockout Serum Replacement(ギブコ社、カタログ番号10828−028)、10ng/ml bFGF、可欠アミノ酸、グルタミン、β−メルカプトエタノールおよびペニシリン/ストレプトマイシンを含有していた。R1細胞用培地は、B27(インビトロジェン社、カタログ番号17504044)、20ng/ml EGF(ロンザ社)、20ng/ml bFGF(シグマ社、カタログ番号F0291−25UG)、および4μg/ml ヘパリン(シグマ社、カタログ番号H1027)を添加した、無血清乳腺上皮基礎培地(MEBM)(ロンザ社)を含有した。培養物を毎日モニタリングして、単一R1細胞からコロニーが生じたこと、およびhESCのクラスターがフィーダー細胞に接着して典型的なhESCコロニーに展開していることを確認し、継代(passaging)を決定した。単一コロニーおよびH7細胞を、製造業者の取扱説明書に従って、抗ヒトOCT3/4一次抗体(サンタクルーズ・バイオテック社(Santa Cruz Biotech)、カタログ番号SC−9081)、抗ヒトNANOG一次抗体(R&Dシステムズ社、カタログ番号AF1997)、抗ヒトSOX2一次抗体(R&Dシステムズ社、カタログ番号MAB2018)、抗上皮細胞表面マーカーEPCAM一次抗体(ステム・セル・テクノロジーズ社、カタログ番号10109)および抗γチューブリン一次抗体(シグマ社、カタログ番号T6557)、並びにそれぞれの二次抗体を用いて、PCR(以下の項を参照)、フローサイトメトリー分析、免疫蛍光法およびウェスタンブロット解析によって、多能性マーカーについてプローブした。個々のR1細胞から得られた対応する単一コロニーを、手動で分離し、トリプシン処理し、3つに分割して、上記手順に従って、各系統に向けたサブクローンの分化能についてプローブした。
多能性関連遺伝子についての定量的リアルタイムPCR
全RNAを、分取したR1〜R4亜集団、フィーダー細胞層上に増殖したR1コロニー、増殖培地中で増殖したR1コロニー、未分化のH7およびH9 hESC、またはヒトMSCから、PicoPure RNA単離キット(モレキュラーデバイス社、カタログ番号KIT0204)を用いて、抽出した。RNAの純度および濃度を、2100Bioanalyzer(アジレント・テクノロジーズ社)を用いて決定した。定量的リアルタイPCRを、7ngのインプットRNAを用いて、Custom Human RT2 Profiler PCR Array(キアゲン社、米国、メリーランド)で、製造業者の取扱説明書に従って行った。p値を、スチューデントt検定を用いて、RT2 Profiler PCR Array(キアゲン社)オンラインサポートにより提供されるソフトウェアで、作成した。
全RNAを、分取したR1〜R4亜集団、フィーダー細胞層上に増殖したR1コロニー、増殖培地中で増殖したR1コロニー、未分化のH7およびH9 hESC、またはヒトMSCから、PicoPure RNA単離キット(モレキュラーデバイス社、カタログ番号KIT0204)を用いて、抽出した。RNAの純度および濃度を、2100Bioanalyzer(アジレント・テクノロジーズ社)を用いて決定した。定量的リアルタイPCRを、7ngのインプットRNAを用いて、Custom Human RT2 Profiler PCR Array(キアゲン社、米国、メリーランド)で、製造業者の取扱説明書に従って行った。p値を、スチューデントt検定を用いて、RT2 Profiler PCR Array(キアゲン社)オンラインサポートにより提供されるソフトウェアで、作成した。
ヒト間葉系幹細胞の培養条件
ヒト間葉系幹細胞(ロンザ社;カタログ番号PT−2501)を、製造業者の取扱説明書に従って、推奨される5,000〜6,000細胞/cm2の密度で播種し、播種の3〜4日後に、MSCGM培地(ロンザ社、カタログ番号PT−3001)を与え、継代培養した。
ヒト間葉系幹細胞(ロンザ社;カタログ番号PT−2501)を、製造業者の取扱説明書に従って、推奨される5,000〜6,000細胞/cm2の密度で播種し、播種の3〜4日後に、MSCGM培地(ロンザ社、カタログ番号PT−3001)を与え、継代培養した。
プラスミドおよびレトロウイルス遺伝子の導入
低分子ヘアピンp16INK4aに対するレンチウイルスの浮遊液および何も標的としない対照(non-targeting control)を、J. Zhang, C. R. Pickering, C. R. Holst, M. L. Gauthier, T. D. Tlsty, p16INK4a modulates p53 in primary human mammary epithelial cellsにより先に公開されたように、トランスフェクションされた293T細胞から回収した。Cancer Res 66、 10325 (2006);この開示は参照により本明細書に組み入れられる。乳腺細胞をレンチウイルスの浮遊液に曝すことにより、4μg/mL ポリブレン(シグマ・アルドリッチ社、ウィスコンシン州ミルウォーキー)の存在下で、5時間、乳腺細胞に形質導入した。この工程を24時間後に繰り返して、導入効率を高めた。最初の形質導入後、細胞を適切な培地中に72時間維持し、その後、2μg/mL ピューロマイシン(シグマ社)の存在下で選択した。細胞を初代乳腺上皮用培地中でさらに72時間増殖させ、トリプシン処理し、全RNAおよび細胞ペレットの両方を、それぞれ、q−PCRおよびフローサイトメトリー分析のために単離した。q−PCRを、ABI社から入手した16INK4aに対するプライマープローブセット(カスタムプローブID:4331348)を用いて、行った。グルクロニダーゼB(GusB;IDT)発現を利用して、インプットcDNAにおける分布を正規化した。細胞ペレットを、上記の抗体を用いるフローサイトメトリーによって、CD73およびCD90細胞表面マーカーの発現について分析した。
低分子ヘアピンp16INK4aに対するレンチウイルスの浮遊液および何も標的としない対照(non-targeting control)を、J. Zhang, C. R. Pickering, C. R. Holst, M. L. Gauthier, T. D. Tlsty, p16INK4a modulates p53 in primary human mammary epithelial cellsにより先に公開されたように、トランスフェクションされた293T細胞から回収した。Cancer Res 66、 10325 (2006);この開示は参照により本明細書に組み入れられる。乳腺細胞をレンチウイルスの浮遊液に曝すことにより、4μg/mL ポリブレン(シグマ・アルドリッチ社、ウィスコンシン州ミルウォーキー)の存在下で、5時間、乳腺細胞に形質導入した。この工程を24時間後に繰り返して、導入効率を高めた。最初の形質導入後、細胞を適切な培地中に72時間維持し、その後、2μg/mL ピューロマイシン(シグマ社)の存在下で選択した。細胞を初代乳腺上皮用培地中でさらに72時間増殖させ、トリプシン処理し、全RNAおよび細胞ペレットの両方を、それぞれ、q−PCRおよびフローサイトメトリー分析のために単離した。q−PCRを、ABI社から入手した16INK4aに対するプライマープローブセット(カスタムプローブID:4331348)を用いて、行った。グルクロニダーゼB(GusB;IDT)発現を利用して、インプットcDNAにおける分布を正規化した。細胞ペレットを、上記の抗体を用いるフローサイトメトリーによって、CD73およびCD90細胞表面マーカーの発現について分析した。
単一細胞由来R1クローンの増殖および細胞周期分析
R1分取細胞を、15%ES−FBS(オメガ・サイエンティフィック社、カタログ番号FB−05)、18%Chang Bおよび2%Chang C(イルビン・サイエンティフィック社、それぞれ、カタログ番号C−100およびC−106)並びに1×ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したグルタミン含有α−MEM培地中で、2週間増殖させた。次に、細胞をトリプシン処理し、限界希釈法で播種して、単一細胞由来サブクローンを作製した。培地中で2週間後に得られた単一細胞由来コロニーを、クローニングリングを用いてトリプシン処理し、増殖させて、増殖曲線(図20、パネルA)を作成した。集団倍加を、式:PD=log(A/B)/log2を用いて算出し、式中、Aは収集した細胞の数であり、Bは最初に播種された細胞の数である。
R1分取細胞を、15%ES−FBS(オメガ・サイエンティフィック社、カタログ番号FB−05)、18%Chang Bおよび2%Chang C(イルビン・サイエンティフィック社、それぞれ、カタログ番号C−100およびC−106)並びに1×ペニシリン/ストレプトマイシンを添加したグルタミン含有α−MEM培地中で、2週間増殖させた。次に、細胞をトリプシン処理し、限界希釈法で播種して、単一細胞由来サブクローンを作製した。培地中で2週間後に得られた単一細胞由来コロニーを、クローニングリングを用いてトリプシン処理し、増殖させて、増殖曲線(図20、パネルA)を作成した。集団倍加を、式:PD=log(A/B)/log2を用いて算出し、式中、Aは収集した細胞の数であり、Bは最初に播種された細胞の数である。
回収前に4時間、10mmol/L ブロモデオキシウリジン(BrdU)を代謝させて、細胞を標識した。細胞を、標準的なトリプシン処理で単離し、PBS中に再懸濁し、氷冷した70%エタノールを添加して固定した。核を単離し、ヨウ化プロピジウムおよびFITC結合型抗BrdU抗体(BDバイオサイエンス社)で染色した。フローサイトメトリーをLSRII cytometer(BDバイオサイエンス社)で行い、FlowJoソフトウェアを用いて解析した。解析した全事象をゲートにかけて、デブリおよび凝集塊を除去した。各分析について最小でも20,000の事象が収集された。
テロメラーゼ逆転写酵素の発現測定およびテロメラーゼ活性アッセイ
ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の発現レベルを、q−PCRで、ABI社から入手したhTERTに対するプライマープローブセット(Hs00162669_m1)を用いて、評価した。グルクロニダーゼB(GusB;IDT)の発現を利用して、インプットcDNAにおける分散を正規化した。テロメラーゼ活性を、高感度且つ非同位バージョンのテロメア反復増幅プロトコール(Telomeric Repeat Amplification Protocol)(TRAP)アッセイ、すなわち蛍光に基づくTRAPeze XLテロメラーゼ検出キット(ミリポア社)を用いて、評価した。184A1(ヒト乳腺細胞株)、Wi−38(ヒト線維芽細胞株)、Hela、H7 hESC並びにPD44.5および55.2からの単一細胞由来R1サブクローンから得られた溶解物(1000細胞相当)を、Amplifuorプライマーを含有するTRAPeze XL反応混合物と混合し、30℃で30分間インキュベートした。増幅した蛍光標識テロメラーゼ産物を、蛍光プレートリーダーで定量化した。TPG(総生産物)単位として表される、テロメラーゼ活性を、製造業者が記述しているように、各溶解物について、内部標準に対するテロメラーゼ産物の比を比較して算出した。
ヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)の発現レベルを、q−PCRで、ABI社から入手したhTERTに対するプライマープローブセット(Hs00162669_m1)を用いて、評価した。グルクロニダーゼB(GusB;IDT)の発現を利用して、インプットcDNAにおける分散を正規化した。テロメラーゼ活性を、高感度且つ非同位バージョンのテロメア反復増幅プロトコール(Telomeric Repeat Amplification Protocol)(TRAP)アッセイ、すなわち蛍光に基づくTRAPeze XLテロメラーゼ検出キット(ミリポア社)を用いて、評価した。184A1(ヒト乳腺細胞株)、Wi−38(ヒト線維芽細胞株)、Hela、H7 hESC並びにPD44.5および55.2からの単一細胞由来R1サブクローンから得られた溶解物(1000細胞相当)を、Amplifuorプライマーを含有するTRAPeze XL反応混合物と混合し、30℃で30分間インキュベートした。増幅した蛍光標識テロメラーゼ産物を、蛍光プレートリーダーで定量化した。TPG(総生産物)単位として表される、テロメラーゼ活性を、製造業者が記述しているように、各溶解物について、内部標準に対するテロメラーゼ産物の比を比較して算出した。
DNAフィンガープリント法
DNAフィンガープリント法(STR分析)を、モレキュラー・ダイアグノスティックス・サービス社(カリフォルニア州サンディエゴ)で行った。各細胞集団から単離した3ナノグラムのゲノムDNAを、製造業者の取扱説明書に従って、PowerPlex 1.2またはCellID短いタンデム反復遺伝子型同定システム(プロメガ社)を用いて、増幅した。DNA増幅を、Applied Biosystems 2720サーモサイクラーで行った。増幅後、反応物をHi−Diホルムアミドで変性し、得られた断片を、POP7ポリマーを備えたABI Prism 3130キャピラリー電気泳動プラットフォーム(アプライドバイオシステムズ社)で、分離および検出した。それぞれの遺伝子座の解析および対立遺伝子の割り当てを、GeneScan and Genotyper(アプライドバイオシステムズ社)およびPowerTyper 12 macro(プロメガ社)ソフトウェアパッケージを用いて行った。
DNAフィンガープリント法(STR分析)を、モレキュラー・ダイアグノスティックス・サービス社(カリフォルニア州サンディエゴ)で行った。各細胞集団から単離した3ナノグラムのゲノムDNAを、製造業者の取扱説明書に従って、PowerPlex 1.2またはCellID短いタンデム反復遺伝子型同定システム(プロメガ社)を用いて、増幅した。DNA増幅を、Applied Biosystems 2720サーモサイクラーで行った。増幅後、反応物をHi−Diホルムアミドで変性し、得られた断片を、POP7ポリマーを備えたABI Prism 3130キャピラリー電気泳動プラットフォーム(アプライドバイオシステムズ社)で、分離および検出した。それぞれの遺伝子座の解析および対立遺伝子の割り当てを、GeneScan and Genotyper(アプライドバイオシステムズ社)およびPowerTyper 12 macro(プロメガ社)ソフトウェアパッケージを用いて行った。
核型解析
核型分析をモレキュラー・ダイアグノスティックス・サービス社(カリフォルニア州サンディエゴ)で行った。簡潔に説明すると、初代乳腺細胞を80%コンフルエントまで増殖させた。細胞を75ng/mLコルセミドで18.5時間処理して、有糸分裂を静止させた。処理後、細胞をトリプシン−EDTAを用いて回収し、低張液で処理し、メタノール/酢酸中で固定した。固定した細胞から分裂中期スプレッドを調製し、染色して染色体Gバンドを観察した。各組織試料について、20個の中期染色体をカウントし、そのうち5つを分析および核型決定した。いくつかの乳腺組織試料について、代表的な核型分析を示す。
核型分析をモレキュラー・ダイアグノスティックス・サービス社(カリフォルニア州サンディエゴ)で行った。簡潔に説明すると、初代乳腺細胞を80%コンフルエントまで増殖させた。細胞を75ng/mLコルセミドで18.5時間処理して、有糸分裂を静止させた。処理後、細胞をトリプシン−EDTAを用いて回収し、低張液で処理し、メタノール/酢酸中で固定した。固定した細胞から分裂中期スプレッドを調製し、染色して染色体Gバンドを観察した。各組織試料について、20個の中期染色体をカウントし、そのうち5つを分析および核型決定した。いくつかの乳腺組織試料について、代表的な核型分析を示す。
定量的リアルタイムPCR
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
以下は、以下の実施例1〜8で使用された材料およびプロトコールを記載している。
分取したR1〜R4サブセット、並びに対応するR1およびR3のALDEFLUOR−陽性亜集団およびALDEFLUOR−陰性亜集団、未分化のH7およびH9 ヒトESC、またはヒト間葉系幹細胞から、PicoPure RNA単離キット(モレキュラーデバイス社、カタログ番号KIT0204)を用いて、全RNAを抽出した。2100 Bioanalyzer(アジレント・テクノロジーズ社)を用いて、RNAの純度および濃度を決定した。定量的リアルタイPCRを、7ngのインプットRNAを用いて、Custom Human RT2 Profiler PCR Array(キアゲン社、米国、メリーランド)で、製造業者の取扱説明書に従って、行った。スチューデントt検定を用いて、RT2 Profiler PCR Array(キアゲン社、米国、メリーランド)サポートオンラインにより提供されたソフトウェアで、P値を作成した。
実施例1:負の増殖シグナルを回避するヒト上皮細胞の同定および特徴付け
体性幹細胞の重要な表現型は、負の増殖シグナルを回避し、創傷治癒に参加する能力である。この前提に基づき、培地中で細胞の大部分がアレスト状態にあるときに増殖を続ける、ヒト乳腺内細胞の小さな亜集団が同定された。比較遺伝子発現プロファイリングを用いて、増殖の障壁を回避する、細胞における遺伝子の劇的な発現差異を同定したところ、最も顕著であったのは、細胞表面マーカーCD73/NT5Eの過剰発現およびCD90/THY1の発現低下であった。この細胞表面マーカーであるCD73/CD90の組み合わせを利用し、FACSを用いて、細胞系マーカー陽性(Lin+)細胞を枯渇させ、造血系細胞、内皮系細胞および白血球系細胞を取り除いた後に、乳房縮小術に由来する新しく単離した単一細胞懸濁液から上皮亜集団を単離した(図7、パネルA)。得られた細胞系マーカー陰性(Lin−)集団(図7、パネルA)を、4つの別々の亜集団、CD73+CD90−(R1)、CD73+CD90+(R2)、CD73−CD90−(R3)およびCD73−CD90+(R4)(図7、パネルBおよび図1、パネルA)に分割したところ、それぞれ、全Lin−集団の5.3%、1.9%、84.6%および8.2%であった(図1、パネルA、C)。
体性幹細胞の重要な表現型は、負の増殖シグナルを回避し、創傷治癒に参加する能力である。この前提に基づき、培地中で細胞の大部分がアレスト状態にあるときに増殖を続ける、ヒト乳腺内細胞の小さな亜集団が同定された。比較遺伝子発現プロファイリングを用いて、増殖の障壁を回避する、細胞における遺伝子の劇的な発現差異を同定したところ、最も顕著であったのは、細胞表面マーカーCD73/NT5Eの過剰発現およびCD90/THY1の発現低下であった。この細胞表面マーカーであるCD73/CD90の組み合わせを利用し、FACSを用いて、細胞系マーカー陽性(Lin+)細胞を枯渇させ、造血系細胞、内皮系細胞および白血球系細胞を取り除いた後に、乳房縮小術に由来する新しく単離した単一細胞懸濁液から上皮亜集団を単離した(図7、パネルA)。得られた細胞系マーカー陰性(Lin−)集団(図7、パネルA)を、4つの別々の亜集団、CD73+CD90−(R1)、CD73+CD90+(R2)、CD73−CD90−(R3)およびCD73−CD90+(R4)(図7、パネルBおよび図1、パネルA)に分割したところ、それぞれ、全Lin−集団の5.3%、1.9%、84.6%および8.2%であった(図1、パネルA、C)。
これらの発見の普遍性を確認するために、乳房縮小術を受けた10人の無病女性から得られたこれらの亜集団を分析した。平均値からの標準誤差を含む全ての値は、図の説明に提供される。組織提供者は、24歳〜49歳であり、コーカサス人またはアフリカ系アメリカ人のいずれかであった。全ての細胞集団が正常な(46XX)核型を示した。
アルデヒド脱水素酵素(ALDH1)は、正常なヒト乳腺幹細胞のマーカーであるため、ALDEFLUORアッセイを使用して、上記4つの上皮サブセットにおいて、ALDH酵素活性を有する集団の存在および大きさを評価した。ALDEFLUOR陽性(ALD+)細胞はまれであり、全乳腺上皮細胞の4%しか占めていなかった(図13および図8、パネルA)。ALD+細胞はR4で検出されなかった。R1中のALD+細胞の大プール(40%)は、R1区画の31%に相当する。対照的に、R3は全ALD+細胞の約半分を占めているが(52%)、このALD+プールは全R3細胞集団の非常に小さな割合にしか相当しない(2.4%)。最後に、R2中のALD+細胞の小プール(8%)は、R2区画の16%を占める(図13および図8、パネルB)。
従って、ALD+細胞は、R1およびR2亜集団において最も高度に富化されるが、以下に記載する通り、全幹細胞活性がR1に含まれる。
実施例2:R1 ALDEFLUOR陽性細胞は標準的なマンモスフィア自己複製能を示す
ALDを発現するまたはしないR1〜R4乳腺上皮サブセットがマンモスフィア形成能を有するかどうかを試験するために、先に確立されたインビトロアッセイ法を使用した。マンモスフィアとして培養され、連続継代された単一細胞のスフィア開始効率(sphere initiation efficiency)を評価することにより、細胞自己複製能を評価した(図1、パネルB)。R4集団におけるALD+細胞の欠如と一貫して、このサブセットは懸濁液中でマンモスフィアを生成しなかった(図2、パネルA;および図9、パネルA、d)。対照的に、R1〜R3集団は、96ウェルプレートに1細胞/ウェルで播種された場合でも、懸濁液中でマンモスフィアを生成することができた(第1継代)。R1はマンモスフィア形成の最大の発生頻度を示し(3.9%)、一方R2およびR3は、それぞれ0.47%および0.58%の発生頻度を示した(図2、パネルA;9、パネルA、a〜c)。3継代までは、細胞を1000細胞/mlで培養した場合、同様の結果が得られた。
ALDを発現するまたはしないR1〜R4乳腺上皮サブセットがマンモスフィア形成能を有するかどうかを試験するために、先に確立されたインビトロアッセイ法を使用した。マンモスフィアとして培養され、連続継代された単一細胞のスフィア開始効率(sphere initiation efficiency)を評価することにより、細胞自己複製能を評価した(図1、パネルB)。R4集団におけるALD+細胞の欠如と一貫して、このサブセットは懸濁液中でマンモスフィアを生成しなかった(図2、パネルA;および図9、パネルA、d)。対照的に、R1〜R3集団は、96ウェルプレートに1細胞/ウェルで播種された場合でも、懸濁液中でマンモスフィアを生成することができた(第1継代)。R1はマンモスフィア形成の最大の発生頻度を示し(3.9%)、一方R2およびR3は、それぞれ0.47%および0.58%の発生頻度を示した(図2、パネルA;9、パネルA、a〜c)。3継代までは、細胞を1000細胞/mlで培養した場合、同様の結果が得られた。
先の乳腺細胞研究と一致して、インビトロにおける自己複製能は、R1〜R3中のALD+細胞に限定された(図2、パネルA;9、パネルA、e〜g 対 h〜j)。R1−ALD+については、強固(robust)且つ持続的なマンモスフィア生成が観察され(4継代に亘って5〜6%)、R2−ALD+およびR3−ALD+については、この表現型は最小であった(図2、パネルA)。従って、インビトロにおける自己複製能は、CD73/CD90発現プロファイルによって十分に定義され、そこで、R1は、未選別の細胞と比較して、懸濁液中でのコロニー形成能アッセイにおいて、10倍(4%対0.4%)富化された(図2、パネルA)。
実施例3:R1 ALDEFLUOR−陽性細胞は、3種の乳腺系統全てに沿ったインビトロ分化能を有する
多系統に分化する能力は、幹細胞の機能的な特徴である。細胞が幹細胞または前駆細胞の特性を有しているかどうかを試験するために、R1〜R3ALD+から得られたマンモスフィア由来細胞を、3種のインビトロ乳腺系統アッセイ(MLA a〜c;図1、パネルB)およびインビボ乳腺再生アッセイ(図1、パネルB)を用いて評価した。
多系統に分化する能力は、幹細胞の機能的な特徴である。細胞が幹細胞または前駆細胞の特性を有しているかどうかを試験するために、R1〜R3ALD+から得られたマンモスフィア由来細胞を、3種のインビトロ乳腺系統アッセイ(MLA a〜c;図1、パネルB)およびインビボ乳腺再生アッセイ(図1、パネルB)を用いて評価した。
インビトロでの系統分化能を評価するため、類似のアッセイを、連続継代した細胞に対して行った。R1〜R3 ALD+由来のマンモスフィアを単一細胞へと解離させ、コラーゲンコートのカバーガラス上にコロニー形成密度で播種し(MLA a;図1、パネルB)、一定分量を浮遊培養して、自己複製能について試験した(図1、パネルB)。各R1〜R3のALD+(およびALD−)の連続集団(serial population)の分化能を、フローサイトメトリー分析およびコロニー形態分析によって評価した。
分化を促進するコロニー形成性培養条件の後に生じた細胞の子孫において、系統特異的マーカーの発現をモニタリングした。管腔上皮系統または筋上皮系統への拘束を、それぞれMUC−1およびCD49f(α−6−インテグリン)という2種の乳腺上皮系統特異的マーカーについての免疫染色により決定した。予想通り、R1〜R3 ALD−は、多分化能を示さず(図2、パネルB)、管腔上皮細胞(MUC−1+/CD49f−)について高度に富化されていた(96〜97%)。
多分化能を示した唯一のALD+集団は、R1であった。第一継代では、全3種の系統が生じた。後の継代で、分化した子孫を使って、二分化能前駆細胞が富化された(図2、パネルB)。実際に、二分化能(MUC−1+/CD49f+)を有するR1−ALD+細胞の割合は、継代1〜3に渡って増加した:それぞれ20%、32%および66%(図2、パネルB)。対照的に、R2−ALD+およびR3−ALD+は、ごくわずかな割合の二分化能前駆細胞しか含まなかった:継代1および2において、それぞれ、0.3〜0.1%および4〜2%(図2、パネルB)。さらに、R2は管腔細胞および筋上皮細胞の両方を生じたが、R3は主に管腔細胞に限定された。
単一細胞の系統分化能を評価する形態学的コロニー形成アッセイにおいて、R1−ALD+マンモスフィア由来細胞は、3種のコロニーに分化した:筋上皮細胞のみを含むコロニー(図2、パネルC、上段パネル)、もしくは管腔上皮細胞のみを含むコロニー(図2、パネルC、中段パネル)、または両系統の細胞、並びに両方の系統マーカーの共発現を有する二分化能細胞(図2、パネルC、下段パネル)。この分化能は後の継代で維持された(データ未記載)。上記のフローサイトメトリーの結果からの予想通り、R2−ALD+マンモスフィア由来細胞は筋上皮コロニーおよび管腔上皮コロニーにのみ分化し、一方、R3−ALD+マンモスフィア由来細胞は、主に管腔上皮コロニーに分化した(データ未記載)。特に注目すべきことに、R3−ALD+マンモスフィア由来細胞から生じた管腔上皮コロニーは、R1−ALD+由来のものと比べ、両方ともMUC−1を発現していたにもかかわらず、形態的に異なっていた(より大型)(データ未記載)。
腺胞上皮細胞系統(MLA b)に沿って分化する能力を試験するために、R1〜R3 ALD+マンモスフィアに由来する細胞を、コラーゲン基質上で7日間分化させ、次に、プロラクチンを添加した、増殖因子を欠いた再構成基底膜ゲル(Matrigel)で覆い、さらに7日間培養した。腺胞分化の獲得をβカゼインの細胞内産生によって評価した(図2、パネルD)。これらの条件下で、R1−ALD+マンモスフィア由来細胞は、管腔系統、筋上皮系統および腺胞系統に沿って分化することができた唯一の細胞であったが、このことは、唯一の真に多分化能を有する集団であることを示している。
最後に、先に記述された三次元Matrigel細胞培養系(MLA c)を用いて、R1−R3 ALD+マンモスフィア由来細胞の機能的な管−腺胞構造を形成する能力を比較することにより、インビトロでの分化能を評価した(図1、パネルB)。この系は、インビボで観察された乳腺管系(mammary tree)の空間定位および複雑な構造を、インビトロで再現する能力を試験する。初代ヒト乳腺上皮細胞は、2種の多細胞性構造(管腔上皮由来の小腺房様構造および筋上皮由来の固体球状(solid spherical)コロニー)に組織化される。R1〜R3 ALD+マンモスフィア由来細胞の、分岐した、管−腺房構造および機能的腺胞細胞を作り出す能力を試験するために、分離されたマンモスフィアから得られた単一細胞を、三次元Matrigel培地にコロニー形成密度で播種し、3週間培養した。それらの増殖を毎日モニタリングして、それぞれの構造が単一細胞から生じること、および個々の構造が合体しないということを確実にした。R1〜ALD+マンモスフィア由来細胞は、2つの形態学的に異なる構造を有するコロニーを生じた:26%は分岐した、管−腺房構造を有するコロニーで、残りは腺房様構造を形成するコロニー(図9、パネルB)。対照的に、R2−ALD+マンモスフィア由来細胞は、腺房様構造のみを生じた(図9、パネルB)。R3−ALD+マンモスフィア由来細胞、並びにALD−細胞は、いかなる構造も生じなかった(図9、パネルB)。プロラクチンを分化培地に添加した場合、R1−ALD+は、腺房構造の中心管腔(central lumen)で分泌されるβカゼインを生成したが、R2−ALD+マンモスフィア由来細胞培養物は生成しなかった(データ未記載)。これらのデータにより、R1−ALD+集団がインビトロにおいて真の多系統分化能を有し、一方で、R2−ALD+集団およびR3−ALD+集団が、それらの分化能に著しい制限があることが、再度示された。
実施例4:R1 ALDEFLUOR陽性細胞は、3種全ての乳腺系統に沿って、インビボにおいて分化することが可能である
インビボでの分化能を評価するため、Kuperwasser et al.により記述されたマウスモデルを利用して、インビボでの乳腺再生活性を高める、R1〜R4の能力を評価した。R1〜R4を、NOD/SCIDマウスの、クリアリングされヒト化された乳腺脂肪パッドに移植した(図10、パネルA〜M)。15,000個の細胞を移植した後の管形成によって示されたように、R1のみが増殖能を有した(図10、パネルA〜B)。重要なことは、この増殖能はそのALD+画分の中に備わっており、わずか5,000個の細胞を移植することで示されたということである(図10、パネルE〜F)。R1−ALD−画分は、30,000個の細胞を移植した後でさえ、いかなる管も生じることができない(図10、パネルJ〜K)。R3も、ALDEFLUOR活性を有するが、300,000個の細胞を移植した後でさえ、乳腺を再構成することができなかった(図10、パネルC〜D)。従って、ALDEFLUOR活性は単独では増殖能を決定づけない。
インビボでの分化能を評価するため、Kuperwasser et al.により記述されたマウスモデルを利用して、インビボでの乳腺再生活性を高める、R1〜R4の能力を評価した。R1〜R4を、NOD/SCIDマウスの、クリアリングされヒト化された乳腺脂肪パッドに移植した(図10、パネルA〜M)。15,000個の細胞を移植した後の管形成によって示されたように、R1のみが増殖能を有した(図10、パネルA〜B)。重要なことは、この増殖能はそのALD+画分の中に備わっており、わずか5,000個の細胞を移植することで示されたということである(図10、パネルE〜F)。R1−ALD−画分は、30,000個の細胞を移植した後でさえ、いかなる管も生じることができない(図10、パネルJ〜K)。R3も、ALDEFLUOR活性を有するが、300,000個の細胞を移植した後でさえ、乳腺を再構成することができなかった(図10、パネルC〜D)。従って、ALDEFLUOR活性は単独では増殖能を決定づけない。
上皮増殖物がヒト由来であることを、CK8/18(管腔上皮細胞)およびα−平滑筋アクチン(α−SMA)(筋上皮細胞)に対するヒト特異的抗体を用いる免疫染色で確認した。ヒト乳腺管系の場合と同様に、動物宿主中で2種類の管構造(腺房および複雑な管−小葉増殖物)が生じた。両方とも、管腔上皮層、および外側の筋上皮細胞層から構成された(図3、パネルA〜B)。移植から生じた管構造が完全な機能的分化を経ているかどうかを試験するために、移植細胞を有するマウスを交配させ、妊娠18日目まで発生させた。腺房を裏打ちしている管腔細胞内、およびR1−ALD+増殖物のみにおけるヒト管構造の管腔中の分泌物内で、ヒトβカゼイン発現が観察された(図3、パネルDおよびF)。これらの観察によって、R1 ALD+細胞の多分化能が、インビトロおよびインビボの両方において、さらに実証された。
実施例5:R1 ALDEFLUOR陽性多能性細胞は、さらなる外胚葉系統に、インビトロで分化することができる
CD73およびCD90は、他の幹細胞集団で発現されるため、乳腺系統以外の外胚葉系統、すなわち神経系統、に分化するR1〜R4サブセットの能力を決定した。ニューロスフィア形成は、R1およびR2 ALD+画分に限定され、3継代まで維持された。ニューロスフィア由来の自発的に分化した神経系統細胞の表現型を、上記の通りに分析した。R1−ALD+ニューロスフィアおよびR2−ALD+ニューロスフィアから得られた細胞は両方とも、神経特異的マーカー、ネスチンに対して陽性に染色されるが、それらは、成熟神経細胞(β−III−チューブリン/TUJ−1陽性細胞)またはグリア細胞(GFAP陽性細胞)を生じる能力において、顕著に異なる。R2−ALD+ニューロスフィア由来細胞は、グリア系統、特に、アストロサイトにのみ分化する。対照的に、R1−ALD+ニューロスフィア由来細胞は、神経細胞およびアストロサイトの両方に分化し、分化した神経細胞の割合は、アストロサイトよりもさらにより高い(それぞれ、89%対11%)(図11、パネルA〜B)。これは、ヒトH7、ESCの場合も同様であった(図11、パネルC)。
CD73およびCD90は、他の幹細胞集団で発現されるため、乳腺系統以外の外胚葉系統、すなわち神経系統、に分化するR1〜R4サブセットの能力を決定した。ニューロスフィア形成は、R1およびR2 ALD+画分に限定され、3継代まで維持された。ニューロスフィア由来の自発的に分化した神経系統細胞の表現型を、上記の通りに分析した。R1−ALD+ニューロスフィアおよびR2−ALD+ニューロスフィアから得られた細胞は両方とも、神経特異的マーカー、ネスチンに対して陽性に染色されるが、それらは、成熟神経細胞(β−III−チューブリン/TUJ−1陽性細胞)またはグリア細胞(GFAP陽性細胞)を生じる能力において、顕著に異なる。R2−ALD+ニューロスフィア由来細胞は、グリア系統、特に、アストロサイトにのみ分化する。対照的に、R1−ALD+ニューロスフィア由来細胞は、神経細胞およびアストロサイトの両方に分化し、分化した神経細胞の割合は、アストロサイトよりもさらにより高い(それぞれ、89%対11%)(図11、パネルA〜B)。これは、ヒトH7、ESCの場合も同様であった(図11、パネルC)。
機能的ドーパミン作動性(DA)神経細胞に分化する、R1−ALD+細胞の能力を、さらに評価した。分化の21日後、R1 ALD+細胞の80%は、DA特異的マーカーである、チロシン水酸化酵素(TH)および小胞モノアミン輸送体2(VMAT2)について陽性染色を有する、明確な錐体形態となった(図11、パネルD、上段パネル)。その後、これらの細胞が、神経細胞の特徴である電気的膜特性(たとえば、負の静止膜電位(RMP)および活動電位発火)を示すかどうかを調べた。これを試験するために、R1−ALD+由来DA神経細胞およびhESC由来DA神経細胞におけるホールセルパッチクランプ記録を行った(図4、パネルA〜B)。両方の神経細胞集団が、同様の負のRMP(それぞれ、−37および−36mV)を示し、その値は、未成熟hESC由来神経細胞で既に報告されたものと同等であったが、インビボにおいて典型的に観察されるもの(−58mV)よりもより高かった。これは、本物の(bona fide)神経細胞のイオンチャネルの発現および細胞膜を挟んだイオン勾配の効率的な制御を反映している。
R1−ALD+由来DA神経細胞およびhESC由来DA神経細胞が活動電位を発生させることができるかどうかを試験するために、一連の脱分極電流工程を導入することにより、両グループの細胞を脱分極させた。予想通り、脱分極した膜電位では、試験された5種全てのhESC由来DA神経細胞は、閾膜電位が全か無かの様式で達成された後、活動電位を発射した(図4、パネルD)。脱分極後、R1−ALD+由来DA神経細胞において、同様の全か無かの偏向電圧が観察された(図4、パネルC)。活動電位が発射された閾値は、両方の場合で同様であり、それぞれ、52±12pAおよび84±27.9pAであった。重要なことに、活動電位の自発的反復発射を示す成熟神経細胞と異なり、hESC由来DA神経細胞およびR1 ALD+由来DA神経細胞の両方において、閾値を越えて、各電流工程の間に、1つだけの活動電位が発射され、潜時はより高い電位でより短くなった。この知見は、それらの高い入力抵抗(それぞれ、1.6および1.1GΩ)によって示されるように、これらDA神経細胞の未熟な状態を再度裏付ける(図4、パネルE)。重要なことに、偏向電圧はテトロドトキシンによって除去することができ(TTX;図4、パネルF)、このことは、神経細胞についての予想通り、この偏向電圧がNa+チャネルに介在されたことを示している。これらの結果は、hESCおよびR1 ALD+細胞が、非常に類似した特徴を共有する機能的神経細胞に分化することができるという、生理学的証拠を提供する。
実施例6:R1多能性細胞は、インビトロにおいて、ALDEFLUOR発現とは無関係に、内胚葉および中胚葉系統に沿って分化することができる
R1−ALD+が外胚葉系統に沿った種々の細胞型に分化できることが確認されたため、内胚葉および中胚葉を含む他の体細胞系統に沿ったR1の分化能を調べた。
R1−ALD+が外胚葉系統に沿った種々の細胞型に分化できることが確認されたため、内胚葉および中胚葉を含む他の体細胞系統に沿ったR1の分化能を調べた。
内胚葉への分化能を決定するために、ヒトESCが胚体内胚葉に分化するのを可能にする条件下で、R1〜R4を培養した。分化の3日後、胚体内胚葉であることを示すマーカー(転写因子SOX17およびFOXA2)を、免疫染色で評価した。R3およびR4はこれらの分化条件下では生存できなかった。R2は生存したが、増殖ができず、細胞質においてSOX17の非常に弱い発現を示したが、FOXA2は発現しなかった(データ未記載)。胚体内胚葉へ向かう分化を経た唯一の集団はR1であり、R1細胞の40%がその核中でSOX17およびFOXA2の両方を発現した(図5、パネルA〜B)。どの細胞も中内胚葉マーカーであるブラキュリを発現しなかったが、このことは、混入した中内胚葉系統からの寄与無しに、胚体内胚葉に向かう分化が完了したことを示している。驚くべきことに、その分化能はALDEFLUOR発現とは無関係であり、R1−ALD+細胞およびR1−ALD−細胞の両方が、胚体内胚葉を生じた(図5、パネルA〜B)。
中胚葉への分化能を決定するために、R1〜R4を、成体間葉系幹細胞(MSC)を心筋細胞系統に向かって誘導すると以前に報告された増殖因子に曝した。これらの条件下では、R1およびR2は、それらのALDEFLUOR活性に関係なく、生存し、一方で、R3およびR4は死滅した。分化後、心筋分化を示すマーカー(転写因子GATA4、MEF−2およびNkx2.5、およびトロポニンI)を、免疫染色で評価した。R1−ALD−細胞は、全ての心筋マーカーを一様に発現した(図5、パネルD)。R1−ALD+細胞は、4種のマーカーのうち3種:GATA4、Nkx2.5およびトロポニンIの発現を示したが、MEF−2は発現しなかった(図5、パネルC)。R2の分化能はさらにもっと低減されており、R2細胞はNkx2.5のみを発現した(データ未記載)。以前の報告から予想されたように、これらの条件下では、心筋細胞の収縮は観察されなかった。重要なことに、R1細胞は、ALDEFLUOR活性の有無に関わらず、ヒト胎盤線維芽細胞フィーダー細胞上で培養され、hESCの心筋細胞への分化を促進する条件下で増殖したとき(17)、自発的な拍動が観察された(データ未記載)。
CD73+CD90−(R1)細胞は、多能性、上皮系統および間葉系系統への機能的分化を示したため、ヒト生得的多能性体細胞(hSCIPP)である。
実施例7:個々のR1細胞は胚性幹細胞の特定の表現型特性を発現する
単一R1細胞は、一次組織から単離され、多能性ヒトES細胞の増殖を可能にする条件下に播種された場合(23)、14日目までに、ES細胞において以前に記述された多能性遺伝子、Nanog、Oct3/4およびSox2を強く発現するコロニーを形成する(図6、パネルA)。これはR2〜R4では観察されなかった。これらの単一細胞由来サブクローンの子孫を3つに分割し、上記の、神経細胞、心筋細胞および胚体内胚葉を生じることが示された分化条件に置いた(図12)。短いタンデム反復分析を用いて、親乳腺細胞集団およびその中胚葉に分化したR1誘導体について、由来および個々のアイデンティティを確認した(図14)。従って、これらの体細胞は、適当な条件に置かれた場合、生得的な多能性を示す(SCIPP)。
単一R1細胞は、一次組織から単離され、多能性ヒトES細胞の増殖を可能にする条件下に播種された場合(23)、14日目までに、ES細胞において以前に記述された多能性遺伝子、Nanog、Oct3/4およびSox2を強く発現するコロニーを形成する(図6、パネルA)。これはR2〜R4では観察されなかった。これらの単一細胞由来サブクローンの子孫を3つに分割し、上記の、神経細胞、心筋細胞および胚体内胚葉を生じることが示された分化条件に置いた(図12)。短いタンデム反復分析を用いて、親乳腺細胞集団およびその中胚葉に分化したR1誘導体について、由来および個々のアイデンティティを確認した(図14)。従って、これらの体細胞は、適当な条件に置かれた場合、生得的な多能性を示す(SCIPP)。
最新の研究により、幹細胞表現型の一般的特徴には、強い動的不均一性の発生が含まれることが示されている。この表現型の流動性は、フローサイトメトリーを用い、無数の発現変化の分布をモニタリングすることで、測定することができる。ES細胞では、これは、分化の確率の分布と相関するNanog発現の変動によって示される。造血前駆細胞では、Scal発現がこの機能を果たす。細胞表面マーカーCD73およびCD90の発現を使用して、R1集団の劇的な可塑性を示した(図6、パネルB)。実際に、R1集団は、R1〜R4の4つの初期状態へと向かう動的な再分布を示す。元のR1集団の再分布と関連するのは、分化能の制限の獲得である(データ未記載)。
実施例8:hSCIPPは、それらをhESCから区別する遺伝子発現特性を示す
hSCIPPは3種の胚系統に沿った多能性表現型を示すことができるため、この新しく特徴付けられたhSCIPP集団と、よく特徴付けられたhESC集団の間の分子の共通点および差異を評価した。この目的のため、4つの乳房縮小術から単離されたR1集団およびR4集団における、重要な多能性マーカー遺伝子および既知の再プログラム因子を含む、43遺伝子の転写産物発現レベルを、定量的RT−PCR(qRT−PCR)を用いて測定した。この分析により、R1−ALD+およびR1−ALD−が同様の発現プロファイルを示すこと、並びにこのプロファイルが、hESCといくつかの共通点を共有しているが、明らかにそれらをhESCと区別するものでもあること、が明らかにされた。hSCIPPとhESCの間で共有される1つの特徴は、分化細胞と比較した場合の、Oct3/4およびNanog等の多能性遺伝子の高発現である(図6、パネルA〜Cおよび図15)。hESCと異なり、hSCIPPは、大きく減少したレベルの特定のエピジェネティックな可塑性マーカー(Dnmt3b等)を発現するが、非常に重要な再プログラム因子であるKlf4およびMyc、並びにストレスマーカーであるPtgs21Cox2を強発現する(図6、パネルA〜Cおよび図15)。従って、hSCIPPは、それらの多能性を裏付け、それらをhESCから明確に区別する、独特な発現プロファイルを示す。
hSCIPPは3種の胚系統に沿った多能性表現型を示すことができるため、この新しく特徴付けられたhSCIPP集団と、よく特徴付けられたhESC集団の間の分子の共通点および差異を評価した。この目的のため、4つの乳房縮小術から単離されたR1集団およびR4集団における、重要な多能性マーカー遺伝子および既知の再プログラム因子を含む、43遺伝子の転写産物発現レベルを、定量的RT−PCR(qRT−PCR)を用いて測定した。この分析により、R1−ALD+およびR1−ALD−が同様の発現プロファイルを示すこと、並びにこのプロファイルが、hESCといくつかの共通点を共有しているが、明らかにそれらをhESCと区別するものでもあること、が明らかにされた。hSCIPPとhESCの間で共有される1つの特徴は、分化細胞と比較した場合の、Oct3/4およびNanog等の多能性遺伝子の高発現である(図6、パネルA〜Cおよび図15)。hESCと異なり、hSCIPPは、大きく減少したレベルの特定のエピジェネティックな可塑性マーカー(Dnmt3b等)を発現するが、非常に重要な再プログラム因子であるKlf4およびMyc、並びにストレスマーカーであるPtgs21Cox2を強発現する(図6、パネルA〜Cおよび図15)。従って、hSCIPPは、それらの多能性を裏付け、それらをhESCから明確に区別する、独特な発現プロファイルを示す。
実施例9:p16 INK4a によって制御される細胞表面マーカー
p16INK4aの抑制は重要な幹細胞表現型である。p16INK4aの転写および活性を阻害するポリコーム抑制タンパク質であるBMI−1のノックアウトのために操作されたマウスは、造血幹細胞および神経幹細胞を生じることができない。機能的には、幹細胞におけるp16INK4aの抑制は、ストレス応答性の細胞周期停止を不活化するだけでなく、さらには、分化のためのエピジェネティックな可塑性を可能にする。p16INK4aの抑制は、幹細胞特性を有する細胞を将来的に単離するのに使用され得る細胞表面マーカーの発現も調節する可能性がある。自然に抑制されたp16INK4aを有する、または有さないヒト乳腺上皮細胞の比較遺伝子発現プロファイリングにより、CD73の劇的な過剰発現およびCD90の劇的な発現低下が同時に起こることが同定された。これらのタンパク質の調節におけるp16INK4aの因果的役割を確かめるため、フロー活性化細胞分取(flow activated cell sorting)(FACS)を用いて、shp16を有するヒト乳腺上皮細胞を、CD73およびCD90の発現について評価した。p16INK4aタンパク質の基底発現における61〜77%の減少に伴い、CD73−CD90+画分からCD73+CD90−画分へと劇的に移行し、結果としてCD73+CD90−細胞が平均して100倍超増加した(図21)。
p16INK4aの抑制は重要な幹細胞表現型である。p16INK4aの転写および活性を阻害するポリコーム抑制タンパク質であるBMI−1のノックアウトのために操作されたマウスは、造血幹細胞および神経幹細胞を生じることができない。機能的には、幹細胞におけるp16INK4aの抑制は、ストレス応答性の細胞周期停止を不活化するだけでなく、さらには、分化のためのエピジェネティックな可塑性を可能にする。p16INK4aの抑制は、幹細胞特性を有する細胞を将来的に単離するのに使用され得る細胞表面マーカーの発現も調節する可能性がある。自然に抑制されたp16INK4aを有する、または有さないヒト乳腺上皮細胞の比較遺伝子発現プロファイリングにより、CD73の劇的な過剰発現およびCD90の劇的な発現低下が同時に起こることが同定された。これらのタンパク質の調節におけるp16INK4aの因果的役割を確かめるため、フロー活性化細胞分取(flow activated cell sorting)(FACS)を用いて、shp16を有するヒト乳腺上皮細胞を、CD73およびCD90の発現について評価した。p16INK4aタンパク質の基底発現における61〜77%の減少に伴い、CD73−CD90+画分からCD73+CD90−画分へと劇的に移行し、結果としてCD73+CD90−細胞が平均して100倍超増加した(図21)。
CD73+CD90−を乳腺幹細胞の分化能サインと同定したため、19の無病ヒト乳腺組織(乳房縮小術)を、CD73+CD90−細胞の存在について分析した。全ての組織は、目に見える疾患、細菌、真菌またはウイルスの混入を持たず、正常な二倍体46、XX核型を示した(実施例、および図22)。新しく単離した単一細胞は、最初に、細胞系マーカー陽性(Lin+)画分(造血細胞、内皮細胞および白血球細胞)が枯渇した(図7、パネルA)。結果として生じた、上皮細胞表面マーカーであるEPCAMを発現する細胞系マーカー陰性(Lin−)集団を、図7、パネルBに示されるゲーティングを使用して、4つの亜集団、CD73+CD90−(R1)(5.3%)、CD73+CD90+(R2)(1.9%)、CD73−CD90−(R3)(84.6%)およびCD73−CD90+(R4)(8.2%)に分画した(図1、パネルAおよびC、並びに図33)。次に、R1〜R4画分を、下記と同様に、乳腺幹細胞自己複製および多分化能について、標準的なアッセイで試験した。
実施例10:乳腺の多分化能を示す細胞はほとんどない
マンモスフィアとして培養され、連続継代された単一細胞のスフィア開始効率を評価することにより、自己複製能を評価した(図1、パネルB)。多くの細胞集団は、96ウェルプレート中に1細胞/ウェルで播種された場合であっても初期マンモスフィアを生成することができたが、連続的なマンモスフィア形成を示した細胞のみが幹細胞特性を有していた。強く持続的なマンモスフィア生成は、R1内の細胞に対してのみ観察され、8継代目まで及んだ(図1、パネルC;図16、パネルA;および図23、パネルA)。重要なことに、稀な幹細胞集団についての予想通りに、全上皮細胞の0.16%のみを占める、CD73+CD90−細胞(R1細胞)の小さな分画(約3%)のみが、インビトロにおいて、この完全で持続的なクローン原性乳腺自己複製能を示した。
マンモスフィアとして培養され、連続継代された単一細胞のスフィア開始効率を評価することにより、自己複製能を評価した(図1、パネルB)。多くの細胞集団は、96ウェルプレート中に1細胞/ウェルで播種された場合であっても初期マンモスフィアを生成することができたが、連続的なマンモスフィア形成を示した細胞のみが幹細胞特性を有していた。強く持続的なマンモスフィア生成は、R1内の細胞に対してのみ観察され、8継代目まで及んだ(図1、パネルC;図16、パネルA;および図23、パネルA)。重要なことに、稀な幹細胞集団についての予想通りに、全上皮細胞の0.16%のみを占める、CD73+CD90−細胞(R1細胞)の小さな分画(約3%)のみが、インビトロにおいて、この完全で持続的なクローン原性乳腺自己複製能を示した。
どの乳腺細胞が幹細胞特性または前駆細胞特性を有するかをさらに試験するために、R1〜R3由来のマンモスフィア由来細胞を、3つのインビトロ乳腺系統アッセイ(Mammary Lineage Assay)(MLA a〜c;図1、パネルB)および1つのインビボ乳腺再生アッセイ(図1、パネルB)を用いて評価した。
第一のアッセイでは、フローサイトメトリーおよびコロニー形態分析によって、マンモスフィア由来細胞の連続継代に対して、インビトロにおける系統分化能を評価した。R1〜R3に由来するマンモスフィアを単一細胞に分離させ、懸濁液中で増殖させて、自己複製能および多分化能について試験し、一定分量をコロニー形成密度でコラーゲンコートのカバーガラスに播種した(MLA a;図1、パネルB)。乳腺管腔マーカーであるMUC−1、および筋上皮マーカーであるCD49f(α−6−インテグリン)の発現に対して細胞を染色することにより、分化をモニタリングした(図23、パネルB)。フローサイトメトリーにより、R1が多分化能を有する唯一の集団であることが確認された。最初のマンモスフィア継代により、3種全ての系統が生じた。継代を続けることで、分化型の子孫を消費して、二分化能前駆細胞(MUC−1+/CD49f+)が、継代1〜3にわたって増加した:それぞれ20%、32%および66%(図16、パネルB)。補足的な形態学的コロニー生成アッセイ(complementary morphologic colony-producing assay)を用いて、R1マンモスフィア由来(単一)細胞は、3種のコロニーに分化した:筋上皮細胞のみを含有するコロニー(図16、パネルBおよび図23、パネルB:頂部)、管腔上皮細胞のみを含有するコロニー(図16、パネルB;および図23、パネルB:中央)、または両系統の細胞、並びに両系統マーカーの共発現を有する二分化能細胞(図16、パネルBおよび図18、パネルB;底部)。この分化能は後の継代で維持された(データ未記載)。対照的に、フローサイトメトリー(図16、パネルB)および形態学的解析(データ未記載)の両方により、R2マンモスフィア由来細胞およびR3マンモスフィア由来細胞が、それぞれ、主に筋上皮コロニーおよび管腔コロニーに、または管腔コロニーのみに、分化したことが示された。
第二のアッセイ(MLA b;図1、パネルBおよび図16、パネルC)において、βカゼインの細胞内産生により、機能的腺胞分化の獲得を評価した。R1〜R3マンモスフィアに由来する細胞を、コラーゲン基質上で分化させ、プロラクチンを添加した増殖因子を欠く再構成基底膜ゲル(Matrigel)で覆い、さらに培養した。これらの条件下で、R1マンモスフィア由来細胞のみが、腺胞分化と合致した、βカゼインを産生した。R2〜R3は、プロラクチンの存在下では分化できない管腔細胞を生じた。これらの細胞は、Lim et. al.によって報告された、乳腺刺激性の指示(cue)に応答することができず、並びに三次元Matrigel培養において管/小葉を形成できない、成熟管腔細胞に似ている可能性がある。
第三のインビトロ分化アッセイ(MLA c;図1、パネルB)により、R1〜R3マンモスフィア由来細胞の、インビボで観察された2種の多細胞性構造(管腔起源の小腺房様構造および筋上皮起源の固体球状コロニー)に組織化する能力を比較した。分離されたマンモスフィア(R1〜R3)からの単一細胞を、三次元Matrigel中にてコロニー生成密度で培養した。R1マンモスフィア由来細胞のみが、両方の構造(26%の分岐した管−腺房構造および74%の腺房様構造)を生じた(図23、パネルC)。プロラクチンを分化培地に添加した際、R1マンモスフィア由来細胞培養物はβカゼインを産生したが、R2マンモスフィア由来細胞培養物は産生しなかった(データ未記載)。従って、R1集団はインビトロにおいて真の多系統分化能を示し、一方、R2集団およびR3集団は、分化能が著しく束縛されていた。
最後に、R1〜R4の、インビボにおける乳腺再生能を強化する能力を、上記と同様に評価した。R1〜R4を分取し、NOD/SCIDマウスの、クリアリングされヒト化された乳腺脂肪パッドに直接移植した。わずか5,000個の細胞を移植した後の管形成によって示されたように、R1のみが増殖能を有した(図24、パネルA〜B)。R2、R3(図24、パネルA)およびR4は、最大300,000個の細胞を移植した後でさえ、乳腺を再構成することができなかった。ヒト乳腺管系において観察されたように、宿主の中に生じた腺房生成物および管−小葉生成物は、管腔層および外側の筋上皮細胞層から成っていた(図16、パネルD)。これらの上皮生成物がヒト由来であることを、CK8/18(管腔細胞)およびα−平滑筋アクチン(α−SMA)(筋上皮細胞)に対するヒト特異的抗体を用いて確認した。これらのヒト管構造が完全な機能的分化を経たかどうかを試験するために、マウスを交配させ、妊娠18日目に乳腺を採取した。ヒトβカゼインは、腺房を裏打ちしている管腔細胞内で発現され、R1生成物のみにおけるヒト管構造の管腔に分泌された(図24、パネルC〜F)。これらの結果により、インビトロおよびインビボの両方における、R1細胞の乳腺多分化能が確立された。
実施例11:さらなる系統への分化
qPCRアレイによるR1〜R4亜集団の分析により、R1集団において、多能性(multi- and pluripotency)を与える遺伝子の特有の発現が明らかにされた(図19、パネルA)。従って、R1〜R4亜集団の、他の外胚葉系および中内胚葉系に分化する能力を試験した。
qPCRアレイによるR1〜R4亜集団の分析により、R1集団において、多能性(multi- and pluripotency)を与える遺伝子の特有の発現が明らかにされた(図19、パネルA)。従って、R1〜R4亜集団の、他の外胚葉系および中内胚葉系に分化する能力を試験した。
持続的なニューロスフィア自己複製能を、以前に確立されたインビトロアッセイ22を用いて評価した。ニューロスフィア形成は、R1画分(7連続継代まで;図25、パネルA〜D)およびR2画分(2連続継代まで)に束縛されており、マンモスフィア形成の発生頻度(R1の約4%、または全Lin−集団の約0.2%)に類似した発生頻度を示した。神経前駆細胞マーカーであるネスチンの発現を、R1およびR2ニューロスフィアから自発的に分化した神経系統細胞において確認した。しかし、R1ニューロスフィア由来細胞の89%および11%が、それぞれ、神経細胞分化マーカー(β−III−チューブリン/TUJ−1)およびグリア分化マーカー(GFAP)を発現した一方で(図25、パネルA〜D)、R2ニューロスフィア由来細胞は、GFAPのみを発現した。
内胚葉系に分化するR1〜R4亜集団の能力を試験するために、R1〜R4を、ヒトESC(hESC)が胚体内胚葉に分化するのを可能にする条件下で培養し、転写因子であるSOX17およびFOXA2の発現について、免疫染色により評価した。R3およびR4はこれらの条件下で生存できなかった。R2は生存したが、増殖できず、SOX17の非常に弱い細胞質発現を示し、FOXA2の発現を示さなかった(データ未記載)。R1細胞のみが胚体内胚葉表現型を示し、細胞の40%がSOX17およびFOXA2の核発現を示した(図26、パネルA)。どの細胞も中内胚葉マーカーであるブラキュリを発現せず、このことは、中内胚葉系統からの寄与無しの、胚体内胚葉へと向かう完全な拘束を示している(図26、パネルA)。適当な条件下で、R1細胞は、膵臓分化マーカーであるPDX1およびNKX6.1の発現によって示されるように、膵臓系統に向かってさらに分化することができる(図17、パネルA)。
中胚葉分化能(mesodermal potential)を決定するために、R1〜R4を、成体ヒト間葉系幹細胞(MSC)およびhESCを脂肪細胞系統、内皮細胞系統または心筋細胞系統へと向かって誘導すると以前に報告された分化培地に曝した。脂肪細胞化条件下では、R1細胞のみが付着および増殖した。内皮細胞化条件および心筋細胞化条件の下では、R1およびR2は生存し、一方でR3およびR4は死滅した。R1細胞のみが、脂肪細胞のレプチン、PPARγおよびFABP4、内皮細胞のCD31およびCD34、並びに、心筋細胞のGATA4、MEF−2、NKX2.5、およびトロポニンI等の細胞型特異的マーカーを、均一に共発現した(図17、および図25、パネルA〜D)。R2細胞はNKX2.5のみを発現した(データ未記載)。機能アッセイによって、R1からの脂質で満たされた脂肪細胞および細管形成内皮細胞の生成が示された(図17、パネルCおよび25、パネルA〜D)。以前の報告から予想された通り、心筋細胞の自発的拍動は、R1細胞が、ヒト胎盤線維芽細胞フィーダー細胞上で培養され、心筋細胞へのhESC分化を促進する条件下で増殖した場合に観察されるのみであった。従って、ヒト体細胞集団由来のCD73+CD90−細胞のごく一部(3%)が、マーカーの機能的発現、並びに外胚葉系、内胚葉系および中胚葉系の表現型を示す。
実施例12:奇形腫の形成
奇形腫形成能を試験するために、R1〜R4細胞を、免疫無防備状態マウスの腎被膜下に移植した。乳腺組織から直接分取したR1集団(図18、パネルAおよび図27、パネルA〜C)および陽性対照hESC H7(図28、パネルA)の両方が、3種全ての胚葉の提示を伴って、奇形腫を生じた。R2〜R4の集団、並びに前癌状態の乳腺細胞(184A1)は、細胞塊(cell mass)も形成できなかったが、一方で、転移性乳腺細胞(MDA−MB−231)の注射によって、分化型の構造を持たない悪性腫瘍が形成された(図28、パネルB)。これらのデータをまとめると、一部分のR1集団が、3種全ての発生系統の誘導体を生じることができること、およびそれらが悪性ではないこと、が示される。
奇形腫形成能を試験するために、R1〜R4細胞を、免疫無防備状態マウスの腎被膜下に移植した。乳腺組織から直接分取したR1集団(図18、パネルAおよび図27、パネルA〜C)および陽性対照hESC H7(図28、パネルA)の両方が、3種全ての胚葉の提示を伴って、奇形腫を生じた。R2〜R4の集団、並びに前癌状態の乳腺細胞(184A1)は、細胞塊(cell mass)も形成できなかったが、一方で、転移性乳腺細胞(MDA−MB−231)の注射によって、分化型の構造を持たない悪性腫瘍が形成された(図28、パネルB)。これらのデータをまとめると、一部分のR1集団が、3種全ての発生系統の誘導体を生じることができること、およびそれらが悪性ではないこと、が示される。
実施例13:クローンの多能性の証拠
ヒト組織から直接単離された無培養のR1細胞を、奇形腫アッセイにおいて分化能について評価することによって、分化能が培養下の細胞増殖に起因し得ないということが分かる。しかし、このアプローチを用いても、R1細画分が、それぞれ3種全ての胚系統を生じる能力を有する単一の細胞(すなわち多能性細胞)から成ることを確認することはできない。実際には、その代わりとして、このR1集団は、それぞれが単一の胚系統への制限された能力を有する細胞の集団に相当し得る。
ヒト組織から直接単離された無培養のR1細胞を、奇形腫アッセイにおいて分化能について評価することによって、分化能が培養下の細胞増殖に起因し得ないということが分かる。しかし、このアプローチを用いても、R1細画分が、それぞれ3種全ての胚系統を生じる能力を有する単一の細胞(すなわち多能性細胞)から成ることを確認することはできない。実際には、その代わりとして、このR1集団は、それぞれが単一の胚系統への制限された能力を有する細胞の集団に相当し得る。
これら2つの可能性を見分けるために、多能性ヒトES細胞の増殖を可能にする条件下で増殖した、R1単一細胞由来サブクローンの子孫を、手動で3つに分割し、上記のインビトロ分化アッセイおよびインビボ分化アッセイのそれぞれにかけて、多能性について評価した。これらの単一細胞由来のR1サブクローンは、前述の系統誘導体全てを生じた(図29、パネルA〜D)。それらは、3種全ての胚系統に対する寄与を有する奇形腫も形成した(図18、パネルBおよび図27、パネルC〜D)。従って、直接分取したR1細胞および単一細胞由来R1サブクローンは、3種全ての生殖細胞系列誘導体をインビトロおよびインビボで生成するのに、並びに多能性を示すのに、等しく強力である。
一次組織から単離した稀なR1細胞の多能性が、当該細胞を、hESCの増殖を可能にすることが知られている条件下に置いた場合に、明らかになった。R1集団のおよそ3%が、14日目までに単一細胞由来コロニーを形成した(図19、パネルA〜B)。幹細胞状態の獲得は、4つの方法によって評価される、これらのコロニーにおける基準となる多能性遺伝子であるNANOG、OCT3/4およびSOX2の強い誘導によって説明され得る。フローサイトメトリー分析によって、各コロニー内の細胞の95%超が、上皮細胞表面マーカーであるEPCAMと同時に、前記3つの多能性遺伝子を共発現したことが示された(図30、パネルA)。コロニーの免疫細胞化学的染色は、発現レベルだけでなく、細胞内局在および集団内分布も提供した(図6、パネルB)。多能性マーカーの発現を、qPCR(図19、パネルA)およびウェスタンブロット解析(図30、パネルB)を用いて、それぞれ転写物レベルおよびタンパク質レベルで確認した。R2〜R4亜集団内では、多能性マーカーの発現が観察されなかった。
R1細胞の起源および個々のアイデンティティを確認するために、法医学的分析と同様に、短いタンデム反復(STR)を、2つの乳腺組織に由来する、FACSで単離した細胞におけるマーカーと、中胚葉に分化したR1誘導体(拍動する心筋細胞)におけるマーカーを比較した。親試料および分化した試料の各対は、所与の提供者について同一の遺伝子マーカーを示し、それぞれは、代表的な対照hESC集団またはK562対照細胞株からのマーカーと異なっていた(図14)。まとめると、これらのデータは、単一の内因性多能性細胞(endogenous Pluripotent Somatic Cell:ePS細胞)が、適当な条件に曝された場合に、多能性機能を示し、3種全ての胚系統を生じることが可能であることを示している(図19、パネルD)。
実施例14:ePS細胞はhESCおよびMSCと異なる
新規に特徴が示された多能性ePS細胞集団と、よく特徴が示されているhESC集団との間の分子的な共通点および差異点を評価した。さらに、CD73はMSCの細胞表面マーカーであるため、MSCもその比較に含めた。この目的のため、4つの乳房縮小術から分取されたR1集団において、43遺伝子の転写物レベルを、定量的RT−PCR(qRT−PCR)を用いて測定し、それらを、hESCおよびMSCの2つから得られた特性と比較した(図34)。これらの遺伝子には、多能性遺伝子、ストレス遺伝子および再プログラム遺伝子が含まれている。分析によって明らかになったのは、R1が、hESCと多少の共通点を共有していたが(図19、パネルA)、MSCとの明確な他の共通点を示したこと(図19、パネルB)である。ePS細胞とhESCの間で共有され、それらを分化細胞またはMSCと区別する1つの特徴は、多能性遺伝子であるOCT3/4、SOX2およびNANOGの高発現であった(図19、パネルAおよび図34)。hESCと異なり、そしてMSCと同様に、ePS細胞は、さらに減少したレベルの、エピジェネティックな可塑性マーカーであるDNMT3bを発現した(図19、パネルBおよび図34)。さらに、R1細胞はCD90の発現減少を明らかに示したが、この後者の表現型は、R1細胞をhESCおよびMSCの両方と区別するものである(図19、パネルC)。単一細胞由来クローン集団または直接分取した無培養集団を用いて、同様の結果が得られた(図19、パネルA〜Cおよび図34)。従って、ePS細胞は、それらの多能性を支持し、それらをhESCおよびMSCから区別する、独特な発現プロファイルを示した。最後に、不死なhESCと対照的に、ePS細胞は不死ではなく、G1アレスト状態になる前に、最大58回の集団倍加にわたって増殖し、二倍体核型を維持した(図20、パネルA〜C)。ePS集団は、分化細胞において観察されたものと比較して非常に低いレベルのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)およびテロメラーゼ活性を示し、hESCまたは悪性細胞において観察されるものよりさらにより低いレベルのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)およびテロメラーゼ活性を示した(図20、パネルD〜E)。
新規に特徴が示された多能性ePS細胞集団と、よく特徴が示されているhESC集団との間の分子的な共通点および差異点を評価した。さらに、CD73はMSCの細胞表面マーカーであるため、MSCもその比較に含めた。この目的のため、4つの乳房縮小術から分取されたR1集団において、43遺伝子の転写物レベルを、定量的RT−PCR(qRT−PCR)を用いて測定し、それらを、hESCおよびMSCの2つから得られた特性と比較した(図34)。これらの遺伝子には、多能性遺伝子、ストレス遺伝子および再プログラム遺伝子が含まれている。分析によって明らかになったのは、R1が、hESCと多少の共通点を共有していたが(図19、パネルA)、MSCとの明確な他の共通点を示したこと(図19、パネルB)である。ePS細胞とhESCの間で共有され、それらを分化細胞またはMSCと区別する1つの特徴は、多能性遺伝子であるOCT3/4、SOX2およびNANOGの高発現であった(図19、パネルAおよび図34)。hESCと異なり、そしてMSCと同様に、ePS細胞は、さらに減少したレベルの、エピジェネティックな可塑性マーカーであるDNMT3bを発現した(図19、パネルBおよび図34)。さらに、R1細胞はCD90の発現減少を明らかに示したが、この後者の表現型は、R1細胞をhESCおよびMSCの両方と区別するものである(図19、パネルC)。単一細胞由来クローン集団または直接分取した無培養集団を用いて、同様の結果が得られた(図19、パネルA〜Cおよび図34)。従って、ePS細胞は、それらの多能性を支持し、それらをhESCおよびMSCから区別する、独特な発現プロファイルを示した。最後に、不死なhESCと対照的に、ePS細胞は不死ではなく、G1アレスト状態になる前に、最大58回の集団倍加にわたって増殖し、二倍体核型を維持した(図20、パネルA〜C)。ePS集団は、分化細胞において観察されたものと比較して非常に低いレベルのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)およびテロメラーゼ活性を示し、hESCまたは悪性細胞において観察されるものよりさらにより低いレベルのテロメラーゼ逆転写酵素(TERT)およびテロメラーゼ活性を示した(図20、パネルD〜E)。
実施例15:膵臓および包皮から得られたePS細胞
膵臓:CD73+CD90−集団を、膵臓の管画分から単離した。細胞を単一細胞単離物として回収し、系統特異的マーカー並びにCD73およびCD90で染色した。系統陰性細胞は1%のR1細胞を生じた(図35、パネルA)。これらの細胞を新しく分取し、マンモスフィア形成アッセイ用に播種した場合、膵臓から得られたR1細胞は、3継代目まで継代され、筋上皮コロニーおよび管腔コロニーに向かって分化したマンモスフィアを生じた。βカゼイン産生はインビトロの条件では見られなかった。CD49fおよびMUC−1の染色を用いるマンモスフィアアッセイによって、膵臓におけるR1細胞に由来する2種のコロニーの存在が示された(図35、パネルB)。使用された試料:2
膵臓:CD73+CD90−集団を、膵臓の管画分から単離した。細胞を単一細胞単離物として回収し、系統特異的マーカー並びにCD73およびCD90で染色した。系統陰性細胞は1%のR1細胞を生じた(図35、パネルA)。これらの細胞を新しく分取し、マンモスフィア形成アッセイ用に播種した場合、膵臓から得られたR1細胞は、3継代目まで継代され、筋上皮コロニーおよび管腔コロニーに向かって分化したマンモスフィアを生じた。βカゼイン産生はインビトロの条件では見られなかった。CD49fおよびMUC−1の染色を用いるマンモスフィアアッセイによって、膵臓におけるR1細胞に由来する2種のコロニーの存在が示された(図35、パネルB)。使用された試料:2
包皮:R1の単離は上記と同じ。包皮を表皮と真皮に分けた。真皮由来のR1は、ヒト化した脂肪パッド実験において、乳腺−管様構造を生じた。3つの包皮試料をこのアッセイに使用した。表皮および真皮由来のR1を使用した。真皮由来のR1は、ヒト化モデルにおいて、インビボで乳腺を与えた。表皮および真皮の両方におけるR1の割合は、およそ1%であった。
考察
注目すべき表現型可塑性を示す、無病ヒト乳腺組織から単離された体細胞の独特な集団が、本明細書に記載された。これらの細胞は以下の多能性の基準を満たした:(a)細胞培養無しでの多能性の表示、(b)クローンの多能性の証拠、(c)細胞型特異的遺伝子発現の表示、(d)3種全ての系統誘導体の機能性(外胚葉:移植マウスにおける人乳の分泌、中胚葉:脂質蓄積脂肪細胞、細管形成内皮細胞および拍動する心筋細胞、並びに内胚葉:腸杯細胞)、並びに最後に、(e)細胞−細胞融合または混入現象の排除(複数の細胞集団の、分化前後のSTR分析および核型分析を通じて)。
注目すべき表現型可塑性を示す、無病ヒト乳腺組織から単離された体細胞の独特な集団が、本明細書に記載された。これらの細胞は以下の多能性の基準を満たした:(a)細胞培養無しでの多能性の表示、(b)クローンの多能性の証拠、(c)細胞型特異的遺伝子発現の表示、(d)3種全ての系統誘導体の機能性(外胚葉:移植マウスにおける人乳の分泌、中胚葉:脂質蓄積脂肪細胞、細管形成内皮細胞および拍動する心筋細胞、並びに内胚葉:腸杯細胞)、並びに最後に、(e)細胞−細胞融合または混入現象の排除(複数の細胞集団の、分化前後のSTR分析および核型分析を通じて)。
上で詳細に記載されたように、細胞がALDEFLUOR陽性であることは、完全な分化能を有する細胞(または「幹細胞表現型」)と普遍的に関連しているわけではない。例えば、CD73を欠いているALDEFLUOR陽性細胞は、完全な多能的分化能を有さなかった。対照的に、CD73を発現する細胞は、完全な分化能を示し、ALDEFLUOR陽性であることは、外胚葉系統へと向かう分化的利点のみを与える。CD73を発現する細胞は、それらのALDEFLUORステータスに関わらず、胚体内胚葉および中胚葉に向かって、等しく十分に分化する。
遺伝子発現データは、これらのePS細胞が、hESCおよびhMSCと多少の共通点を共有しているが、独特な特性を示すという結論を裏付けている。
この独特なヒト体細胞集団の単離は、2つのグリコシル−ホスファチジルイノシトール(GPI)アンカー細胞表面タンパク質の発現差異に基づいており、その2つのタンパク質とは、細胞外ATPのアデノシンへの変換に関与する細胞外ラフト関連酵素である、エクト−5'−ヌクレオチダーゼNT5E/CD73、および細胞接着分子であるCD90/THY−1である。CD73およびCD90は、MSCの細胞表面マーカーとして以前使用されていた。しかし、MSCにおけるEPCAM発現の欠如およびCD90の強い発現によって、これらはePSと容易に区別される。CD73は、酵素的機序および非酵素的機序を通じて細胞の運命に影響を与えることができ、微小環境の変化および細胞−間質相互作用の制御がもたらされる。CD90発現は、筋線維芽細胞表現型および腫瘍関連線維芽細胞表現型に関連があるとされている。
複数の個体から得られたePS細胞が悪性状態ではないことが示された。ヒト組織から直接単離された、または培地中で増殖したePS細胞は、正常な二倍体46、XX核型、テロメラーゼの低発現および低活性を示し、最終的に複製老化を開始するが、これによりePS細胞は、不死の、ゲノム的に不安定な腫瘍細胞から区別される。さらに、前癌状態の細胞は増殖物を形成せず、一方、転移性細胞は頑健な悪性増殖物を生じるが、ePS細胞で見られた分化型誘導体の発現は無い。
上記の発明は理解を明確にするための説明および例として多少詳細に記載されているが、添付の特許請求の範囲の精神または精神から逸脱することなく、それに対して、ある変更および修正がなされ得ることは、本発明の教示に照らし合わせて、当業者には容易に明白である。
従って、上記は単に本発明の原理を説明するものである。当業者であれば、本明細書に明示的に記載されないまたは示されないが、本発明の原理を具現化し、その精神および範囲に含まれる、種々の構成を考案することができることが理解されよう。さらに、本明細書に記載される全ての例および条件についての用語は、主に、読者が、本発明の原理および発明者によって与えられた概念を理解して、技術を促進することを補助することを目的としており、そのような具体的に記載された例および条件への限定がないものとして解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、態様、および実施形態並びにその具体例を記載する本明細書の全ての記述は、その構造的均等物および機能的均等物の両方を包含することが意図されている。
さらに、そのような均等物は、現在知られている均等物および将来開発される均等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行するように開発されたあらゆる要素の両方を含むことが意図されている。従って、本発明の範囲は、本明細書に示され、記載された例示的な実施形態に限定されることを意図していない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具現化される。
Claims (23)
- 細胞のうち少なくとも8%が生得的多能性体細胞(SCIPP)である、単離された細胞集団。
- CD73+/CD90−/細胞系マーカー陰性(Lin−)細胞が富化された細胞を含む、請求項1に記載の単離された集団。
- 細胞系マーカーが、T細胞、胸腺細胞、NK細胞、好中球、B細胞、骨髄性細胞、マクロファージ、単球、血小板、顆粒球、B細胞、顆粒球、および樹状細胞のうちの一つまたは複数に特異的なマーカーを含む、請求項1〜2のいずれか一項に記載の単離された集団。
- 細胞系マーカーが、CD2、CD3、CD16、CD31、CD45、CD64およびCD140bの任意の組み合わせを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の単離された集団。
- SCIPPが、胚性幹細胞(ESC)および成体間葉系細胞(MSC)と比較して増加したレベルのKLF4、MYC、PTGS2、またはそれらの任意の組み合わせを発現する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の単離された集団。
- SCIPPが、MSCと比較して増加したレベルで、且つESCと同等のレベルで、POU5F1(OCT3/4)、NANOG、CD24、EPCAM、またはそれらの任意の組み合わせを発現する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の単離された集団。
- SCIPPが、ESCと比較して減少したレベルで、且つMSCと同等のレベルで、CECR1、DNMT3Bまたは両方を発現する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の単離された集団。
- SCIPPが無病の乳腺組織に由来する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の単離された集団。
- SCIPPがヒトSCIPPである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の単離された集団。
- 単離された集団中の細胞のうち少なくとも50%がSCIPPである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の単離された集団。
- SCIPPが遺伝的に改変されている、請求項1〜10のいずれか一項に記載の単離された集団。
- 生得的多能性体細胞(SCIPP)が富化された試料を生産する方法であって、SCIPPの分化の維持および増殖を促進する条件下で対象由来の細胞試料を培養する工程を含む、方法。
- 前記培養工程の前に、対象由来の細胞試料を、CD73陽性、CD90陰性、且つ細胞系マーカー陰性の細胞に関して選択する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。
- 細胞系マーカーが、T細胞、胸腺細胞、NK細胞、好中球、B細胞、骨髄性細胞、マクロファージ、単球、血小板、顆粒球、B細胞、顆粒球、および樹状細胞のうちの一つまたは複数に特異的なマーカーを含む、請求項12〜13のいずれか一項に記載の方法。
- 細胞系マーカーが、CD2、CD3、CD16、CD31、CD45、CD64およびCD140bの任意の組み合わせを含む、請求項12〜14のいずれか一項に記載の方法。
- 対象由来の細胞試料が乳腺細胞を含む、請求項12〜15のいずれか一項に記載の方法。
- 細胞試料がヒト対象由来である、請求項12〜16のいずれか一項に記載の方法。
- SCIPPが富化された試料が、少なくとも50%のSCIPPを含む、請求項12〜17のいずれか一項に記載の方法。
- SCIPPが富化された試料が、胚性幹細胞(ESC)および成体間葉系細胞(MSC)と比較して増加したレベルのKLF4、MYC、PTGS2、またはそれらの任意の組み合わせを発現するSCIPPを含む、請求項12〜18のいずれか一項に記載の方法。
- SCIPPの分化の維持および増殖を促進する前記条件が、胎盤線維芽細胞フィーダー細胞上での増殖およびATALA培地での増殖から選択される、請求項12〜19のいずれか一項に記載の方法。
- 細胞分化に影響を与える因子をスクリーニングする方法であって、
候補分化因子と、生得的多能性体細胞(SCIPP)を少なくとも1%含む細胞集団とを混合する工程;および
SCIPPからの分化細胞の形成に対する該候補分化因子の影響をモニタリングする工程
を含む、方法。 - SCIPPが、胚性幹細胞(ESC)および成体間葉系細胞(MSC)と比較して増加したレベルのKLF4、MYC、PTGS2、またはそれらの任意の組み合わせを発現する、請求項21に記載の方法。
- 前記モニタリングする工程が、遺伝子発現アッセイ;インビトロ発生アッセイ;インビボ発生アッセイ;機能的細胞アッセイ;またはそれらの任意の組み合わせを行うことを含む、請求項21または22に記載の方法。
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