JP7076126B2 - 羊膜間葉系幹細胞の抗腫瘍薬としての使用 - Google Patents
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Description
羊膜に存在する多能性幹細胞を得るために、例えば、細胞に標識などの付加をすることなく細胞の大きさ・細胞質の電子密度のみで細胞を分離したのち、培養で性質の異なる幹細胞を得る方法が知られている(特許文献1)。
また、羊水由来の間葉系幹細胞と乳がん細胞株を共培養すると、乳がん細胞の生育が抑制されることが報告されている(非特許文献1)。
近年、その中に存在する線維芽細胞が特に環境に影響を与えるとして通常の線維芽細胞と区別して癌関連線維芽細胞(cancer associated fibroblast:CAF)と称され、CAFは骨髄の間葉系幹細胞(mesenchymal stem cell:MSC)由来であると考えられている。
近年、CAFが癌細胞と直接接することで、癌細胞へのシグナルに影響し、通常の癌細胞を癌幹細胞へと誘導するとの報告がされている(非特許文献2)。
本来、生体に存在するMSCは、抗炎症効果を持つとともに、炎症細胞の誘導など免疫系の調整に役立つ細胞である。
その為、MSCの活性がどちらの方向に向かっているかによって、癌の生育にも癌の抑制にも働く可能性が高い。
特に癌組織が生育しているときは、MSCが既にCAFという悪玉に変化している状況であり、癌組織環境を破壊し、正常にMSCが機能するような方策が求められている。
このことから、特許文献1に記載され羊膜間葉系細胞は、癌組織環境を破壊する細胞医薬として使用することができ、本発明を完成させるに至った。
以下、本発明を詳細に説明する。
(A)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、
(B)前記間葉系細胞の細胞集団について、
(b1)フローサイトメーターを用いて前方散乱光および側方散乱光を検出し、二次元分布図を作成し、
(b2)前記二次元分布図上に、四角形の3分割ゲートを設定することにより選択された細胞を分取するステップと、
(C)前記分取された細胞を継代培養するステップと
を含む、羊膜間葉系幹細胞集団の調製方法。
(i)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の5~15%が含まれるように上辺を設定した第1のゲートと、
(ii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第1のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35~45%が含まれるように上辺を設定した第2のゲートと、
(iii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第2のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35%以上が含まれるように上辺を設定した第3のゲートと
からなるものであり、
(c1)前記分取された細胞を400~3500/cm2の細胞濃度において播種し、2~3日間初期培養するステップと、
(c2)前記初期培養の1/500以上1/10未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3~4回繰り返すステップと、
(c3)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持するステップと
を含むものであり、
また、CA125は、子宮がん、膵がん、胆のう胆管がんで高値となることから、CA125は、婦人科系のがんと消化器がんのマーカーとして診断と予後判定の指標として用いられている。
CA125タンパクを過剰に発現する腫瘍細胞とは、上記した卵巣がん、子宮頸がん、子宮体癌などの婦人科系のがん、膵がん、胆のう胆管がんなどの消化器がんが挙げられる。
本発明のヒトの羊膜間葉系幹細胞集団またはその細胞集団由来の細胞の使用として、卵巣がん、子宮頸がん、子宮体癌などの婦人科系のがんに対する使用が好ましい。
具体的には、上記の調製方法で得られる羊膜間葉系幹細胞集団またはその細胞集団から単離された細胞(以下、羊膜間葉系幹細胞等と称する。)を生理食塩水や適切な緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)に懸濁させることによって得られる。
この場合、細胞数が少ない場合には、細胞培養して、所定の細胞濃度が得られるまで増殖させてもよい。
増殖方法としては、例えば、WO2014/132936に記載の方法などを参照して、羊膜間葉系幹細胞等の培養及び増殖において、適宜、培地、抗生物質・血清などの添加物を選択し、所定濃度の羊膜間葉系幹細胞を含む溶液を調製することができる。
さらに、製剤上許容される他の成分(例えば、担体、賦形剤、崩壊剤、緩衝剤、乳化剤、懸濁剤、無痛化剤、安定剤、保存剤、防腐剤、生理食塩水など)や羊膜間葉系幹細胞等以外の細胞または成分を細胞製剤に含有させてもよく、上記成分などは適切な濃度で細胞製剤に添加すればよい。
このように、羊膜間葉系幹細胞等は、各種添加物を含む医薬組成物として使用することもできる。
本発明の細胞製剤は、所望の治療効果が得られるまで、複数回を、適宜、間隔をおいて患部または静脈内に、治療上有効量、例えば、一個体あたり1×103細胞~1×107細胞で1~10回程度の投与量が好ましいが、一個体における投与総量は、特に限定されない。
また、微小環境への効果であることから、現在開発の主流である標的薬のように癌のタイプが限定されることがなく、スペクトルの広い治療の可能性が期待される
しかし、他の組織同様に、羊膜幹細胞はheterogeneousな細胞群であるため、単に羊膜間葉系幹細胞を単離しただけでは、含まれる幹細胞の細胞特性に違いがあり、分化能や移植時の効果にばらつきが生じる。
そこで、本発明者らは、次の3つのステップにより得られる羊膜間葉系幹細胞を、HAMα、HAMα-S、HAMα-M、HAMα-Lに分類している。
ステップ1:羊膜から羊膜上皮細胞と羊膜間葉系細胞を分取する。
ステップ2:フローサイトメトリーを用い、前方散乱光および側方散乱光を測定し、その測定値に基づいて二次元分布図を作成し、これにより三分割ゲートを設定する。
ステップ3:ステップ2において、分離した細胞について、細胞濃度を変えて、3から4継代培養し、紡錘状のコロニーを単離する。
HAMα-S、HAMα-M、HAMα-Lは、それぞれ、羊膜由来間葉系幹細胞のサブクラスである。
特に、HAMα-Sは、HAMα-MおよびHAMα-Lに比較して、山中4因子を顕著に発現する。
また、HAMα、HAMα-S、HAMα-MおよびHAMα-Lは、神経幹細胞マーカーであるNestinおよびMusashiを発現する。
HAMα、およびHAMα-Mは、肝細胞への分化能を有し、特にHAMα-LMは、肝分化能が高い。
HAMα-Mは、採取時には、中等度の大きさであるが、培養を繰り返す間に細胞質が豊富な細胞となり、サイトスピン標本で観察すると、HAMα-Lよりも大型の細胞として観察される。
細胞質がOct3/4によく染まり、SSEA4や神経幹細胞のマーカーであるNestinやMusashiに良く染まる細胞である。
また、間葉系幹細胞では染まり難い、Tra-1-60に陽性の細胞が散在する。
一方で、Sox2やKLF4の発現が弱い。
一方、造血系幹細胞の発現はほとんどなくHLA-DRの発現は認められない。
さらに、分化誘導をかけると間葉系の特徴である軟骨細胞、骨細胞、脂肪細胞への分化能は有するが、脂肪への分化能は弱い。
しかし、心臓への分化誘導では、他の素部クラスと異なり、GATA4の発現が認められなかった。
他のサブクラスと同様に、HAMα-Mは、肝硬変モデルマウスへの移植で、拒絶反応は起こさず、線維化の減少が見られた。抗原で刺激したNK細胞や単球との共培養で抗炎症性のサイトカインイIL-4やIL-10を分泌する細胞である。
羊膜由来間葉系幹細胞のサブクラスHAMαMと子宮体癌を共培養し、HAMαMの動態をタイムラプス撮影装置により12時間および24時間観察した。
対象として、normal Human skin Fibroblasts,(HSF:C-12302)を使用し、HAMαと比較した。
また、経時的な観察後、上皮細胞のマーカーであるCK18で免疫染色し、癌細胞の残存を計量した。
子宮体癌細胞を24well dishに1ウエル500個ずつ播種し、10%ウシ胎児血清、1% L-グルタミンおよび1% anti biotics添加high glucose DMEM培地 (SIGMA-ALDRICH社)を使用し、37℃、5%CO2で一晩培養した。
HAMα-MあるいはHSF細胞は、癌細胞と区別する為に、あらかじめPKH26 (生細胞染色液:SIGMA-ALDRICH社)で染色し、上記dishに1wellあたり2000個ずつ添加し、撮影を開始した。
タイムラプス撮影装置(BZ-X700:キーエンス社)を使用いた観察では、培養環境を37℃、5%CO2で保持し、各wellの観察点を設定し、20倍の対物レンズで15分ごとに24時間観察した。
経時的観察により、HAMαMは癌細胞に近づき(図2の「240→」)、細胞内に取り込み、大型化している像が観察された(図2の「645、855→」)。
また、14時間後にも、HAMαMが癌細胞を取り込んでいる像(図3A丸の1(記号))や癌細胞と接触し、触手をのばしている像(図3A丸の2(記号)、丸の3(記号))が観察された。
ここで「→」はHAMαM。
一方、HSFとの共培養では、どちらの細胞も紡錘状で互いに緩衝せず生育しており、HSF細胞を追加することにより、癌細胞が減少することはなかった。
Claims (2)
- ヒトの羊膜間葉系幹細胞集団またはその細胞集団由来の細胞からなり、CA125タンパクを過剰に発現する腫瘍細胞に対する癌細胞の増殖抑制用細胞医薬の調製方法であって、
前記羊膜間葉系幹細胞集団が以下の調製方法により得られるものであり、
(A)哺乳動物の羊膜から間葉系細胞の細胞集団を採取するステップと、
(B)前記間葉系細胞の細胞集団について、
(b1)フローサイトメーターを用いて前方散乱光および側方散乱光を検出し、二次元分布図を作成し、
(b2)前記二次元分布図上に、四角形の3分割ゲートを設定することにより選択された細胞を分取するステップと、
(C)前記分取された細胞を継代培養するステップとを含み、
前記ステップ(B)における(b2)において、四角形の3分割ゲートは、前方散乱光の強度に基づいて3分割したものであり、
前記ステップ(B)における(b2)において、四角形の3分割ゲートは、
(i)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前方散乱光の検出限界を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の5~15%が含まれるように上辺を設定した第1のゲートと、
(ii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第1のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35~45%が含まれるように上辺を設定した第2のゲートと、
(iii)側方散乱光の検出上限を右辺、側方散乱光の検出限界を左辺とし、前記第2のゲートの上辺を底辺として、前記二次元分布図に示された細胞集団の35%以上が含まれるように上辺を設定した第3のゲートとからなり、
前記第2のゲートから分取された細胞を有効成分とする前記癌細胞の増殖抑制用細胞医薬の調製方法。 - 前記ステップ(C)における継代培養は、
(c1)前記分取された細胞を400~3500/cm2の細胞濃度において播種し、2~3日間初期培養するステップと、
(c2)前記初期培養の1/500以上1/10未満の細胞濃度において播種し、1週間に2回の培地交換を行う継代培養を3~4回繰り返すステップと、
(c3)前記継代培養において紡錘状の形態を有する細胞のコロニーが形成されたとき、細胞がコンフルエントになるまで同一の培養皿で培養を維持するステップと
を含む、請求項1記載の細胞医薬の調製方法。
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PloS ONE, 2015, Vol.10, No.4, #e0123350 |
Stem Cell Research & Therapy, 2021, Vol.21, #126 |
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