以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る動力伝達機構が組み込まれた車両1の駆動系統の構成を概念的に示す図である。
車両1は、エンジン(E/G)2を動力源とする自動車である。車両1は、変速機3を備えている。
変速機3は、たとえば、Vベルト式の無段変速機(CVT:Continuously
Variable Transmission)であり、プライマリプーリ4と、セカンダリプーリ5と、プライマリプーリ4とセカンダリプーリ5とに巻き掛けられたVベルト6とを備えている。プライマリプーリ4を支持する入力軸7には、エンジン2からの動力が入力される。セカンダリプーリ5を支持する出力軸8には、ファイナルギヤ9が取り付けられている。ファイナルギヤ9は、ディファレンシャルギヤ10と噛合している。
変速機3の入力軸7に入力される動力は、プライマリプーリ4、Vベルト6、セカンダリプーリ5、出力軸8、ファイナルギヤ9およびディファレンシャルギヤ10を介して、ディファレンシャルギヤ10から左右に延びるドライブシャフト11L,11Rに伝達される。これにより、ドライブシャフト11L,11Rが回転し、ドライブシャフト11L,11Rとともに、それぞれ駆動輪12L,12Rが回転する。
エンジン2の出力軸(以下、「E/G出力軸」という。)13と変速機3の入力軸7との間には、トルクコンバータ14、逆方向減速機構15および前後進切替機構16が介装されている。
トルクコンバータ14は、トルコン入力軸21、トルコン出力軸22、ポンプインペラ23、タービンランナ24およびロックアップクラッチ25を備えている。トルコン入力軸21およびトルコン出力軸22は、E/G出力軸13と同一の回転軸線を中心に回転可能に設けられている。トルコン入力軸21には、E/G出力軸13が連結されている。ポンプインペラ23は、トルコン入力軸21と一体的に回転可能に設けられている。タービンランナ24は、トルコン出力軸22と一体的に回転可能に設けられている。ロックアップクラッチ25が継合されると、ポンプインペラ23とタービンランナ24とが直結され、その継合が解除されると、ポンプインペラ23とタービンランナ24とが分離される。
ロックアップクラッチ25が切断された状態において、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に動力が入力されると、トルコン入力軸21およびポンプインペラ23が回転する。ポンプインペラ23が回転すると、ポンプインペラ23からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24で受けられて、タービンランナ24が回転する。そして、タービンランナ24の回転による動力がトルコン出力軸22から出力される。
ロックアップクラッチ25が継合された状態において、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に動力が入力されると、トルコン入力軸21、ポンプインペラ23およびタービンランナ24が一体となって回転する。そして、タービンランナ24の回転による動力がトルコン出力軸22から出力される。
逆方向減速機構15は、トルコン入力軸21とトルコン出力軸22との間に介装されている。具体的には、逆方向減速機構15は、トルクコンバータ14に内蔵されて、トルコン入力軸21とトルコン出力軸22との間に介装されている。逆方向減速機構15は、遊星歯車機構31およびワンウェイクラッチ32を備えている。
遊星歯車機構31は、サンギヤ33、プラネタリギヤ34、キャリア35およびリングギヤ36を備えている。サンギヤ33は、トルコン出力軸22に保持されている。サンギヤ33の外周面には、ギヤ歯が形成されている。プラネタリギヤ34は、たとえば、複数設けられ、サンギヤ33の周囲に等角度間隔で配置されている。各プラネタリギヤ34の外周面には、ギヤ歯が形成されている。各プラネタリギヤ34は、サンギヤ33と噛合している。キャリア35は、トルコン入力軸21に保持され、各プラネタリギヤ34を回転可能に一括して保持している。リングギヤ36は、円環状をなし、サンギヤ33およびプラネタリギヤ34の周囲を取り囲むように配置されて、回転不能に設けられている。リングギヤ36の内周面には、ギヤ歯が形成されている。リングギヤ36は、各プラネタリギヤ34と噛合している。
ワンウェイクラッチ32は、トルコン出力軸22とサンギヤ33との間に介装されている。ワンウェイクラッチ32には、トルコン出力軸22からサンギヤ33への動力の伝達を許容し、サンギヤ33からトルコン出力軸22への動力の伝達を阻止する構成のものが採用されている。
前後進切替機構16は、変速機3の入力軸7とトルクコンバータ14のトルコン出力軸22との間に介装されている。前後進切替機構16は、遊星歯車機構41、逆転クラッチ42および前進ブレーキ43を備えている。
遊星歯車機構41は、サンギヤ44、プラネタリギヤ45、キャリア46およびリングギヤ47を備えている。サンギヤ44は、トルコン出力軸22に保持されている。サンギヤ44の外周面には、ギヤ歯が形成されている。プラネタリギヤ45は、たとえば、複数設けられ、サンギヤ44の周囲に等角度間隔で配置されている。各プラネタリギヤ45の外周面には、ギヤ歯が形成されている。各プラネタリギヤ45は、サンギヤ44と噛合している。キャリア46は、各プラネタリギヤ45を回転可能に一括して保持している。リングギヤ47は、円環状をなし、サンギヤ44およびプラネタリギヤ45の周囲を取り囲むように配置されている。リングギヤ47は、変速機3の入力軸7に保持されている。リングギヤ47の内周面には、ギヤ歯が形成されている。リングギヤ47は、各プラネタリギヤ45と噛合している。
逆転クラッチ42は、トルコン出力軸22とキャリア46との間に介装されている。逆転クラッチ42が締結されると、トルコン出力軸22とキャリア46とが連結されて、それらが一体的に回転可能になる。逆転クラッチ42が切断されると、トルコン出力軸22とキャリア46とが分離されて、それらが個別に回転可能になる。
前進ブレーキ43は、作動状態(オン)でキャリア46の回転を停止させ、非作動状態でキャリア46の回転を許容するブレーキ機構である。
逆転クラッチ42が切断され、前進ブレーキ43が作動している状態において、E/G出力軸13からの動力がトルコン出力軸22に伝達されると、サンギヤ44がトルコン出力軸22とともに回転する。そして、サンギヤ44の回転がプラネタリギヤ45を介してリングギヤ47に伝達され、リングギヤ47がサンギヤ44と逆方向に減速回転する。このとき、リングギヤ47の回転は、変速機3、ファイナルギヤ9およびディファレンシャルギヤ10を介して、ドライブシャフト11L,11Rに伝達され、駆動輪12L,12Rを車両1の前進方向に回転させる。
逆転クラッチ42が継合され、前進ブレーキ43が作動していない状態において、E/G出力軸13からの動力がトルコン出力軸22に伝達されると、サンギヤ44およびプラネタリギヤ45がトルコン出力軸22とともに回転する。プラネタリギヤ45の回転がリングギヤ47に伝達され、リングギヤ47がサンギヤ44と同方向に回転する。このとき、リングギヤ47の回転は、変速機3、ファイナルギヤ9、ディファレンシャルギヤ10およびドライブシャフト11L,11Rに伝達され、駆動輪12L,12Rを車両1の後進方向に回転させる。
また、E/G出力軸13には、フライホイール51が保持されている。フライホイール51の外周には、ギヤ歯(アウタリングギヤ)が形成されている。そして、車両1には、エンジン2を始動させるためのスタータ52が備えられている。スタータ52の出力軸には、スタータギヤ53が保持されている。スタータギヤ53は、フライホイール51のギヤ歯と噛合/噛合解除可能に設けられている。
また、車両1には、オルタネータ54が備えられている。オルタネータ54は、回転軸55がE/G出力軸13と平行をなすように設けられている。そして、E/G出力軸13および回転軸55には、それぞれプーリ56,57が保持されている。プーリ56,57には、ベルト58が巻き掛けられている。これにより、回転軸55には、E/G出力軸13の回転がプーリ56,57およびベルト58を介して伝達される。回転軸55が回転すると、その回転が電力に変換されて、オルタネータ54から電力が出力される。オルタネータ54から出力される電力は、バッテリ(図示せず)に蓄えられて、補機類の駆動に使用される。
さらに、車両1には、機械式オイルポンプ61が備えられている。機械式オイルポンプ61は、ポンプ入力軸がトルクコンバータ14のポンプインペラ23に接続されている。これにより、ポンプインペラ23が回転すると、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸が回転し(機械式オイルポンプ61が作動し)、機械式オイルポンプ61からオイルが送り出される。機械式オイルポンプ61から送り出されるオイルは、変速機3に供給される。
また、車両1には、電動式オイルポンプ62が備えられている。電動式オイルポンプ62は、モータによって駆動されるオイルポンプであり、機械式オイルポンプ61で十分な油圧を発生できない状況で作動し、オイルを変速機3に供給する。
図2は、車両1の高速コースト走行中における動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
車両1が高速コースト走行しているときには、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25および前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断される。また、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が作動状態にされる。また、フューエルカット制御により、エンジン2の回転数が自立復帰(スタータレス始動)可能な最低の回転数に低下するまで、エンジン2に対する燃料の供給が停止される。
駆動輪12L,12Rからの動力は、それぞれドライブシャフト11L,11Rを介して、ディファレンシャルギヤ10に伝達され、ディファレンシャルギヤ10からファイナルギヤ9を介して、変速機3の出力軸8に伝達される。出力軸8に伝達された動力は、セカンダリプーリ5、Vベルト6およびプライマリプーリ4を介して、変速機3の入力軸7に伝達される。このとき、出力軸8から入力軸7に伝達される動力は、所定の変速比で変速される。
前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断され、前進ブレーキ43が作動しているので、入力軸7に伝達される動力は、遊星歯車機構41のプラネタリギヤ45を介してサンギヤ44に伝達され、サンギヤ44およびトルコン出力軸22を回転させる。このとき、キャリア46が固定されているので、入力軸7の動力は、増速および反転されて、トルコン出力軸22に伝達される。
トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が切断されているので、トルコン出力軸22の動力は、遊星歯車機構31のサンギヤ33を介してプラネタリギヤ34に伝達され、キャリア35およびトルコン入力軸21をサンギヤ33と同方向に回転させる。リングギヤ36が固定的に配置されているので、トルコン出力軸22の動力は、減速されて、トルコン入力軸21に伝達される。そして、その減速された動力がトルコン入力軸21からE/G出力軸13に伝達され、E/G出力軸13がトルコン入力軸21の回転数よりも低い回転数で回転する。
また、E/G出力軸13の回転は、プーリ56,57およびベルト58を介して、オルタネータ54の回転軸55に伝達される。そして、回転軸55の回転により、オルタネータ54から電力が出力される。
なお、変速機3の変速比は、エンジン2(E/G出力軸13)の回転数が自立復帰可能な最低の回転数以上であって、その回転数に可及的に近づくように設定される。
図3は、車両1の高速コースト走行中にエンジン2が再始動されるときの動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
車両1の高速コースト走行中に、運転者によってアクセル操作がなされると、エンジン2が再始動される。このとき、エンジン2の回転数が自立復帰可能な最低の回転数以上に維持されているので、エンジン2に対する燃料の供給が再開されて、エンジン2の点火プラグがスパークされることにより、スタータ52が使用されずに、エンジン2が駆動状態に復帰する。
エンジン2の回転数がトルコン入力軸21の回転数付近まで上昇すると、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合される。ロックアップクラッチ25が継合されると、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に入力される動力により、ポンプインペラ23およびタービンランナ24が一体となって回転する。これにより、トルコン入力軸21に入力される動力は、速度変化なく、トルコン出力軸22に伝達される。
また、ポンプインペラ23が回転すると、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸が回転し、機械式オイルポンプ61からオイルが送り出される。
前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断され、前進ブレーキ43が作動しているので、トルコン出力軸22の動力は、遊星歯車機構41のサンギヤ44を介してプラネタリギヤ45に伝達され、プラネタリギヤ45を回転させる。そして、プラネタリギヤ45の回転がリングギヤ47に伝達され、リングギヤ47が回転することにより、トルコン出力軸22の動力が変速機3の入力軸7に伝達される。このとき、キャリア46が固定されているので、トルコン出力軸22の動力は、減速されて、入力軸7に伝達される。
入力軸7の動力は、プライマリプーリ4、Vベルト6、セカンダリプーリ5、出力軸8、ファイナルギヤ9およびディファレンシャルギヤ10を介して、ドライブシャフト11L,11Rに伝達され、駆動輪12L,12Rを車両1の前進方向に回転させる。
エンジン2の再始動後も、E/G出力軸13の回転がオルタネータ54の回転軸55に伝達されるので、オルタネータ54から電力が出力される。
図4は、車両1の低速コースト走行中にエンジン2が再始動されるときの動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
車両1の低速コースト走行中、たとえば、車両1が20km/h以下の車速でのコースト走行中は、高速コースト走行中と同様に、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25および前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断される。また、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が作動状態にされる。したがって、駆動輪12L,12Rからエンジン2への動力の伝達経路は、高速コースト走行中と低速コースト走行中とで同じである。
低速コースト走行中に、車両1の車速が低下し、これに伴って、エンジン2の回転数を自立復帰可能な最低の回転数未満に低下しても、エンジン2に対する燃料の供給が再開されない。そのため、エンジンストールが発生する。
その後、運転者によってアクセル操作がなされると、エンジン2が再始動される。このとき、エンジンストールが発生しているので、エンジン2の再始動には、スタータ52が使用される。すなわち、スタータ52のスタータギヤ53がフライホイール51のギヤ歯に噛合されて、スタータ52によるクランキングを経て、エンジン2が再始動される。
エンジン2の再始動後、エンジン2の回転数がトルコン入力軸21の回転数付近まで上昇すると、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合される。ロックアップクラッチ25が継合されると、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に入力される動力により、ポンプインペラ23およびタービンランナ24が一体となって回転する。これにより、トルコン入力軸21に入力される動力は、速度変化なく、トルコン出力軸22に伝達される。
また、ポンプインペラ23が回転すると、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸が回転し、機械式オイルポンプ61からオイルが送り出される。
前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断され、前進ブレーキ43が作動しているので、トルコン出力軸22の動力は、遊星歯車機構41のサンギヤ44を介してプラネタリギヤ45に伝達され、プラネタリギヤ45を回転させる。そして、プラネタリギヤ45の回転がリングギヤ47に伝達され、リングギヤ47が回転することにより、トルコン出力軸22の動力が変速機3の入力軸7に伝達される。このとき、キャリア46が固定されているので、トルコン出力軸22の動力は、減速されて、入力軸7に伝達される。
入力軸7の動力は、プライマリプーリ4、Vベルト6、セカンダリプーリ5、出力軸8、ファイナルギヤ9およびディファレンシャルギヤ10を介して、ドライブシャフト11L,11Rに伝達され、駆動輪12L,12Rを車両1の前進方向に回転させる。
また、エンジン2の再始動後は、E/G出力軸13の回転がオルタネータ54の回転軸55に伝達されるので、オルタネータ54から電力が出力される。
以上のように、変速機3からトルコン出力軸22に入力される動力は、逆方向減速機構15により、トルコン出力軸22からトルコン入力軸21に減速されて伝達される。そのため、車両1のコースト走行時に、ロックアップクラッチ25を切断(ロックアップ解除)して、変速機3からの動力をトルコン出力軸22、逆方向減速機構15およびトルコン入力軸21を介してエンジン2に伝達することにより、エンジン2の回転数を変速機3の回転数よりも下げることができる。よって、車両1のコースト走行時に、エンジン2のフリクションやポンピングロスを低減することができ、車両1に生じる減速力を低減することができる。その結果、車両1の減速度を弱めるための不必要なアクセル操作を抑制することができるので、車両1の燃費を向上させることができる。
また、車両1のコースト走行時に、ロックアップクラッチ25が継合された場合、トルコン入力軸21とトルコン出力軸22とが一体的に回転するので、変速機3からの動力を減速せずにエンジン2に伝達することができる。すなわち、ロックアップクラッチ25の継合により、変速機3の回転数とエンジン2の回転数とを一致させることができる。そのため、コースト走行時のフューエルカット制御において、ロックアップクラッチ25が切断された状態で、エンジン2の回転数が自立復帰可能な最低の回転数付近まで低下したときに、ロックアップクラッチ25を継合させて、エンジン2の回転数を上げることにより、エンジン2に対する燃料の供給が停止(フューエルカット)されている時間を延ばすことができる。
また、逆方向減速機構15がトルクコンバータ14に内蔵されているので、トルクコンバータ14の内部のオイルを逆方向減速機構15の潤滑油として使用することができる。そのため、逆方向減速機構15にオイルを供給するためのオイル供給経路を新たに追加して設ける必要がない。また、トルクコンバータ14の内部のオイルを利用して、逆方向減速機構15を冷却することができる。そのため、逆方向減速機構15を内蔵下トルクコンバータ14をコンパクトに形成することができる。
<第2実施形態>
図5は、本発明の第2実施形態に係る動力伝達機構が組み込まれた車両1の駆動系統の構成を概念的に示す図である。図5以降の各図において、図1に示される各部に相当する部分には、それらの各部と同一の参照符号が付されている。また、図5に示される構成について、図1に示される構成との相違点のみを説明する。
図5に示される構成の車両1には、モータジェネレータ71が備えられている。モータジェネレータ71は、モータおよび発電機の両方の機能を有している。モータジェネレータ71の回転軸72には、M/Gギヤ73が保持されている。
なお、モータジェネレータ71が発電機の機能を有しているので、図5に示される構成の車両1では、図1に示されるオルタネータ54が不要である。また、図5では、図1に示されるスタータ52が図示されていないが、スタータ52は、図5に示される構成の車両1に備えられていてもよいし、後述するように、モータジェネレータ71がエンジン2のスタータとして使用される場合には、図5に示される構成の車両1からスタータ52が省略されてもよい。
トルコン出力軸22には、前後進切替機構16よりもエンジン2側の位置に、伝達ギヤ74が保持されている。伝達ギヤ74は、M/Gギヤ73と噛合している。
また、トルコン出力軸22には、前後進切替機構16よりもエンジン2側の位置に、機械式オイルポンプ61のポンプ軸が同軸に設けられている。これにより、機械式オイルポンプ61のポンプ軸は、トルコン出力軸22と一体的に回転し、機械式オイルポンプ61は、トルコン出力軸22の回転によって駆動される。
なお、機械式オイルポンプ61は、伝達ギヤ74よりもエンジン2側に設けられていてもよいし、前後進切替機構16よりもエンジン2側であれば、伝達ギヤ74よりも変速機3側に設けられていてもよい。
図6は、図5に示される構成の車両1の高速コースト走行中における動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
図5に示される構成においても、高速コースト走行中は、図1に示される構成と同様に、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25および前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断される。また、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が作動状態にされる。したがって、図5に示される構成において、駆動輪12L,12Rからエンジン2への動力の伝達経路は、図1に示される構成と同じであるので、その説明を省略する。
図5に示される構成では、トルコン出力軸22に動力が伝達されると、トルコン出力軸22の回転が伝達ギヤ74を介してM/Gギヤ73に伝達される。そして、M/Gギヤ73とともに、モータジェネレータ71の回転軸72が回転する。このとき、モータジェネレータ71が制御されて、運転者が想定する範囲内での減速度が生じるように、モータジェネレータ71により、回転軸72の回転が電力に回生される。
また、トルコン出力軸22とともに、機械式オイルポンプ61のポンプ軸が回転し、機械式オイルポンプ61からオイルが送り出される。
図7は、図5に示される構成の車両1の高速コースト走行中にエンジン2が再始動されるときの動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
車両1の高速コースト走行中に、運転者によってアクセル操作がなされると、エンジン2が再始動される。このとき、エンジン2の回転数が自立復帰可能な最低の回転数以上に維持されているので、エンジン2に対する燃料の供給が再開されて、エンジン2の点火プラグがスパークされることにより、スタータ52が使用されずに、エンジン2が駆動状態に復帰する。
エンジン2の回転数がトルコン入力軸21の回転数付近まで上昇すると、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合される。ロックアップクラッチ25が継合されると、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に入力される動力により、ポンプインペラ23およびタービンランナ24が一体となって回転する。これにより、トルコン入力軸21に入力される動力は、速度変化なく、トルコン出力軸22に伝達される。図5に示される構成において、トルコン出力軸22から駆動輪12L,12Rへの動力の伝達経路は、図1に示される構成と同じであるので、その説明を省略する。
エンジン2の再始動後も、モータジェネレータ71が制御されて、モータジェネレータ71による電力の回生が行われる。
また、トルコン出力軸22が回転すると、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸がトルコン出力軸22と一体的に回転し、機械式オイルポンプ61からオイルが送り出される。
図8は、図5に示される構成の車両1の低速コースト走行中にエンジン2が再始動されるときの動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
図5に示される構成においても、車両1の低速コースト走行中は、高速コースト走行中と同様に、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25および前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断される。また、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が作動状態にされる。したがって、駆動輪12L,12Rからエンジン2への動力の伝達経路は、高速コースト走行中と低速コースト走行中とで同じである。
しかしながら、車両1の車速の低下に伴って、トルコン出力軸22が回転すると、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸の回転数が小さくなり、機械式オイルポンプ61で発生する油圧が低下する。機械式オイルポンプ61で十分な油圧を発生できない状況になると、前進ブレーキ43がオフにされて、モータジェネレータ71が制御され、モータジェネレータ71がモータとして駆動される。これにより、モータジェネレータ71から出力される動力が回転軸72、M/Gギヤ73および伝達ギヤ74を介してトルコン出力軸22に伝達され、トルコン出力軸22の回転数が上げられる。その結果、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸の回転数が上昇し、機械式オイルポンプ61から発生する油圧が増大する。したがって、図5に示される構成では、図1に示される電動式オイルポンプ62を省略することができる。
低速コースト走行中に、車両1の車速が低下し、これに伴って、エンジン2の回転数を自立復帰可能な最低の回転数未満に低下しても、エンジン2に対する燃料の供給が再開されない。そのため、エンジンストールが発生する。
その後、運転者によってアクセル操作がなされると、エンジン2が再始動される。このとき、エンジンストールが発生しているので、エンジン2の再始動には、モータジェネレータ71が使用される。すなわち、前進ブレーキ43がオンのまま、モータジェネレータ71が制御され、モータジェネレータ71がモータとして駆動される。これにより、モータジェネレータ71から出力される動力が回転軸72、M/Gギヤ73および伝達ギヤ74を介してトルコン出力軸22に伝達される。そして、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が切断されているので、トルコン出力軸22の動力は、遊星歯車機構31のサンギヤ33を介してプラネタリギヤ34に伝達され、キャリア35およびトルコン入力軸21をサンギヤ33と同方向に回転させる。リングギヤ36が固定的に配置されているので、トルコン出力軸22の動力は、減速されて、トルコン入力軸21に伝達される。そして、その減速された動力がトルコン入力軸21からE/G出力軸13に伝達され、E/G出力軸13が回転することにより、エンジン2のクランキングが達成される。
クランキングを経て、エンジン2が再始動され、エンジン2の回転数がトルコン入力軸21の回転数付近まで上昇すると、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合される。ロックアップクラッチ25が継合されると、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に入力される動力により、ポンプインペラ23およびタービンランナ24が一体となって回転する。これにより、トルコン入力軸21に入力される動力は、速度変化なく、トルコン出力軸22に伝達される。トルコン出力軸22から駆動輪12L,12Rへの動力の伝達経路は、前述のとおりであるから、その説明を省略する。
以上のように、図5に示される構成によっても、図1に示される構成と同様の作用効果を奏することができる。しかも、図5に示される構成では、図1に示されるスタータ52および電動式オイルポンプ62を省略することができるので、図1に示される構成と比較して、車両1のコストの低減を図ることができる。
なお、第2実施形態では、モータジェネレータ71の回転軸72にM/Gギヤ73が保持され、トルコン出力軸22に伝達ギヤ74が保持されて、M/Gギヤ73と伝達ギヤ74とが噛合している構成を取り上げた。この構成に限らず、図9に示されるように、モータジェネレータ71の回転軸72(ロータ)がトルコン出力軸22と同軸に設けられてもよい。言い換えれば、モータジェネレータ71の回転軸72がトルコン出力軸22と一体回転可能に接続されてもよい。図9に示される構成では、M/Gギヤ73および伝達ギヤ74が不要であるので、図5に示される構成と比較して、部品点数を削減することができ、それによる低コスト化を図ることができる。
<第3実施形態>
図10は、本発明の第3実施形態に係る動力伝達機構が組み込まれた車両1の駆動系統の構成を概念的に示す図である。図10に示される構成について、図1および図5に示される各構成との相違点のみを説明する。
図10に示される構成では、図1に示される構成と同様に、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸がトルクコンバータ14のポンプインペラ23に接続されている。
また、図10に示される構成では、モータジェネレータ71の回転軸72にM/Gギヤ73が保持され、トルコン出力軸22に伝達ギヤ74が保持されて、M/Gギヤ73と伝達ギヤ74とが噛合している。なお、この構成は必須ではなく、図9に示されるように、モータジェネレータ71の回転軸72がトルコン出力軸22と同軸に設けられることにより、部品点数の削減による低コスト化が図られてもよい。
さらに、図10に示される構成では、モータジェネレータ71がエンジン2のスタータとして使用されるので、図1に示されるスタータ52が省略されている。
エンジン2の始動の際には、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25および前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断される。また、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が非作動状態にされる。そして、モータジェネレータ71が制御され、モータジェネレータ71がモータとして駆動される。これにより、図10に示されるように、モータジェネレータ71から出力される動力が回転軸72、M/Gギヤ73および伝達ギヤ74を介してトルコン出力軸22に伝達される。ロックアップクラッチ25が切断されているので、トルコン出力軸22の動力は、逆方向減速機構15の遊星歯車機構31のサンギヤ33を介してプラネタリギヤ34に伝達され、キャリア35およびトルコン入力軸21をサンギヤ33と同方向に回転させる。リングギヤ36が固定的に配置されているので、トルコン出力軸22の動力は、減速されて、トルコン入力軸21に伝達される。そして、その減速された動力がトルコン入力軸21からE/G出力軸13に伝達され、E/G出力軸13が回転することにより、エンジン2のクランキングが達成される。
図11は、図10に示される構成の車両1のエンジン2の始動から走行が開始されるまでの期間における動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
クランキングを経て、エンジン2が再始動されると、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が作動状態にされる。ロックアップクラッチ25が切断されているので、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に動力が入力されると、トルコン入力軸21およびポンプインペラ23が回転する。ポンプインペラ23が回転すると、ポンプインペラ23からタービンランナ24に向かうオイルの流れが生じる。このオイルの流れがタービンランナ24で受けられて、タービンランナ24が回転する。そして、タービンランナ24の回転による動力がトルコン出力軸22から出力される。
また、ポンプインペラ23の回転が開始されると、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸が回転し始め、機械式オイルポンプ61から発生する油圧が上昇する。
前後進切替機構16の逆転クラッチ42が切断され、前進ブレーキ43が作動しているので、トルコン出力軸22の動力は、遊星歯車機構41のサンギヤ44を介してプラネタリギヤ45に伝達され、プラネタリギヤ45を回転させる。そして、プラネタリギヤ45の回転がリングギヤ47に伝達され、リングギヤ47が回転することにより、トルコン出力軸22の動力が変速機3の入力軸7に伝達される。このとき、キャリア46が固定されているので、トルコン出力軸22の動力は、減速されて、入力軸7に伝達される。
図12は、図10に示される構成の車両1の走行中における動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
車両1のサービスブレーキが解除されると、トルコン出力軸22から変速機3の入力軸7に伝達される動力は、プライマリプーリ4、Vベルト6、セカンダリプーリ5、出力軸8、ファイナルギヤ9およびディファレンシャルギヤ10を介して、ドライブシャフト11L,11Rに伝達され、駆動輪12L,12Rを車両1の前進方向に回転させる。これにより、車両1が発進する。
車両1の発進後、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合される。ロックアップクラッチ25が継合されると、E/G出力軸13からトルコン入力軸21に入力される動力により、ポンプインペラ23およびタービンランナ24が一体となって回転する。これにより、トルコン入力軸21に入力される動力は、速度変化なく、トルコン出力軸22に伝達される。トルコン出力軸22から駆動輪12L,12Rへの動力の伝達経路は、前述のとおりであるから、その説明を省略する。
また、車両1の発進後は、モータジェネレータ71が制御されて、モータジェネレータ71により、トルコン出力軸22から伝達ギヤ74およびM/Gギヤ73を介して回転軸72に伝達される回転が電力に回生される。
図13は、図10に示される構成の車両1の停止中における動力の伝達の様子を図解的に示す図である。
図10に示される構成の車両1では、停車中に、モータジェネレータ71による発電(停止発電)が行われることがある。
モータジェネレータ71による停止発電の際には、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合されている。また、前後進切替機構16の前進ブレーキ43が非作動状態にされる。これにより、トルコン出力軸22の動力は、変速機3の入力軸7に伝達されない。
トルコン出力軸22の動力は、伝達ギヤ74を介してM/Gギヤ73に伝達され、M/Gギヤ73とともに、モータジェネレータ71の回転軸72を回転させる。その一方で、モータジェネレータ71が制御されて、モータジェネレータ71による電力の回生が行われる。
図10に示される構成によれば、図1に示されるスタータ52を省略することができるので、図1に示される構成と比較して、車両1のコストを低減することができる。
<第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態に係る動力伝達機構が組み込まれた車両1の駆動系統の構成を概念的に示す図である。図14に示される構成について、図5に示される各構成との相違点のみを説明する。
図14に示される構成の車両1では、機械式オイルポンプ61のポンプ入力軸がモータジェネレータ71の回転軸72と同軸に設けられている。また、モータジェネレータ71の回転軸72には、第1M/Gギヤ81および第2M/Gギヤ82が保持されている。第1M/Gギヤ81は、伝達ギヤ74に噛合している。第2M/Gギヤ82は、ファイナルギヤ9に噛合している。そして、回転軸72と第1M/Gギヤ81との間には、それらを断接する第1クラッチ83が介裝されている。また、回転軸72と第2M/Gギヤ82との間には、それらを断接する第2クラッチ84が介裝されている。
第1クラッチ83および第2クラッチ84の一方が継合されているときは、他方が切断される。
たとえば、エンジン2の駆動中は、第1クラッチ83が継合され、第2クラッチ84が切断される。このときには、エンジン2の出力が駆動輪12L,12Rに伝達されるとともに、そのエンジン2の出力がモータジェネレータ71に伝達されて、モータジェネレータ71による発電が行われる。
一方、エンジン2の回転の停止中は、第1クラッチ83が切断され、第2クラッチ84が継合される。このとき、駆動輪12L,12Rからの動力は、それぞれドライブシャフト11L,11Rを介して、ディファレンシャルギヤ10に伝達され、ディファレンシャルギヤ10からファイナルギヤ9および第2M/Gギヤ82を介して、モータジェネレータ71の回転軸72に伝達される。モータジェネレータ71を制御することにより、回転軸72に伝達される回転を電力に回生することができる。また、モータジェネレータ71が制御され、モータジェネレータ71がモータとして正方向に駆動されると、モータジェネレータ71から出力される動力が第2M/Gギヤ82、ファイナルギヤ9およびディファレンシャルギヤ10を介して、ドライブシャフト11L,11Rに伝達される。そして、その動力が駆動輪12L,12Rを車両1の前進方向に回転させる。また、モータジェネレータ71をモータとして逆方向に駆動することにより、モータジェネレータ71から出力される動力により、車両1を後進させることも可能である。
このように、図14に示される構成では、エンジン2の回転の停止中に、モータジェネレータ71により、駆動輪12L,12Rの動力を電力に回生することができ、また、モータジェネレータ71が発生する動力で駆動輪12L,12Rを回転させることができる。
<変形例>
以上、本発明のいくつかの実施形態について説明したが、本発明は、さらに他の形態で実施することもできる。
たとえば、図15に示されるように、トルクコンバータ14のタービンランナ24とトルコン出力軸22との間に、ワンウェイクラッチ91が介裝されてもよい。ワンウェイクラッチ91は、タービンランナ24からトルコン出力軸22への動力の伝達を許容し、トルコン出力軸22からタービンランナ24への動力の伝達を阻止する。
この構成によれば、車両1のコースト走行時に、トルコン出力軸22の動力がタービンランナ24に伝達されることを防止できる。そのため、車両1のコースト走行時に、トルクコンバータ14のロックアップクラッチ25が継合されていても、トルコン出力軸22の動力を逆方向減速機構15およびトルコン入力軸21を介してエンジン2に伝達することができる。その結果、コースト走行の開始時に、ロックアップクラッチ25の切断によるロックアップ解除が不要になるので、ロックアップ解除によるショックの発生を防止でき、また、エンジン2の回転数を速やかに低下させることができる。
また、図16に示されるように、逆方向減速機構15は、トルコン入力軸21とポンプインペラ23との間に介装されて、ロックアップクラッチ25と直列に設けられてもよい。この場合、逆方向減速機構15の遊星歯車機構31のサンギヤ33は、ポンプインペラ23と一体的に回転する軸93に保持される。キャリア35は、トルコン入力軸21に保持される。リングギヤ36は、回転不能に設けられる。また、ワンウェイクラッチ32は、軸93とサンギヤ33との間に介裝され、軸93からサンギヤ33に向かう一方向に動力を伝達する。さらにまた、トルコン入力軸21とポンプインペラ23との間に、トルコン入力軸21からポンプインペラ23に向かう一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチ92が介裝される。
この構成が採用される場合、車両1のコースト走行中は、ロックアップクラッチ25が継合される。ロックアップクラッチ25が継合されていても、トルコン出力軸22の動力を逆方向減速機構15およびトルコン入力軸21を介してエンジン2に伝達することができる。よって、コースト走行の開始時に、ロックアップクラッチ25の切断によるロックアップ解除が不要になるので、ロックアップ解除によるショックの発生を防止でき、また、エンジン2の回転数を速やかに低下させることができる。
さらにまた、図17に示されるように、逆方向減速機構15は、ロックアップクラッチ25と一体的に設けられていてもよい。この場合、逆方向減速機構15の遊星歯車機構31のサンギヤ33は、トルコン出力軸22に保持される。キャリア35は、ロックアップクラッチ25と一体的に回転可能に設けられる。リングギヤ36は、回転不能に設けられる。また、図16に示される構成と同様に、トルクコンバータ14のタービンランナ24とトルコン出力軸22との間に、タービンランナ24からトルコン出力軸22への一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチ91が介裝される。
この構成が採用される場合、車両1のコースト走行中は、ロックアップクラッチ25が継合される。そして、トルコン出力軸22に入力される動力は、逆方向減速機構15により、トルコン出力軸22からロックアップクラッチ25に減速されて伝達され、トルコン入力軸21を介してエンジン2に伝達される。このとき、ワンウェイクラッチ91の働きにより、トルコン出力軸22の動力がタービンランナ24に伝達されない。コースト走行の開始時に、ロックアップクラッチ25の切断によるロックアップ解除が不要になるので、ロックアップ解除によるショックの発生を防止でき、また、エンジン2の回転数を速やかに低下させることができる。
さらにまた、逆方向減速機構15がロックアップクラッチ25と一体的に設けられているので、構成が簡素である。
また、ワンウェイクラッチ32が遊星歯車機構31よりも変速機3側に設けられた構成を取り上げたが、ワンウェイクラッチ32は、遊星歯車機構31よりもエンジン2側に設けられてもよい。たとえば、キャリア35とトルコン入力軸21との間に、ワンウェイクラッチ32が省略されて、または、ワンウェイクラッチ32が省略されずに、キャリア35からトルコン入力軸21に向かう一方向に動力を伝達するワンウェイクラッチが介装されてもよい。
また、逆方向減速機15にワンウェイクラッチ32が備えられた構成を取り上げたが、ワンウェイクラッチ32に限らず、回転数差に応じて一方向にトルクを伝達できる機能を有するものであれば、たとえば、トルクダイオードがワンウェイクラッチ32に代えて用いられてもよい。
遊星歯車機構31として、いわゆるシングルピニオン式の遊星歯車の構成を取り上げたが、いわゆるダブルピニオン式の遊星歯車の構成が採用されてもよい。
また、逆方向減速機構15には、遊星歯車機構31に代えて、図18に示される平行軸式の減速機構101が採用されてもよい。減速機構101には、トルコン入力軸21に保持される第1ギヤ102と、トルコン出力軸22に保持される第2ギヤ103と、第1ギヤ102と噛合する第3ギヤ104と、第2ギヤ103と噛合する第4ギヤ105と、第3ギヤ104および第4ギヤ105を連結する連結部材106とが含まれる。ワンウェイクラッチ32は、トルコン出力軸22と第2ギヤ103との間に介装されて、トルコン出力軸22から第2ギヤ103への動力の伝達を許容し、第2ギヤ103からトルコン出力軸22への動力の伝達を阻止する。この平行軸式の減速機構101が採用されることにより、遊星歯車機構31が採用された構成と比較して、逆方向減速機構15のコストを低減することができる。
また、図5〜図8、図10〜図14の各図に示される構成において、伝達ギヤ74に代えて、トルコン出力軸22にスプロケットが保持され、M/Gギヤ73または第2M/Gギヤ82に代えて、モータジェネレータ71の回転軸72にスプロケットが保持されて、それらのスプロケットにチェインが巻き掛けられた構成が採用されてもよい。
また、前述の実施形態では、変速機3として、Vベルト式の無段変速機を例示したが、変速機3は、トルクコンバータ14とともに用いられるものであれば、Vベルト式以外の型式の無段変速機であってもよいし、無段変速機に限らず、有段変速機であってもよい。また、自動変速機に限らず、手動変速機であってもよい。
その他、前述の構成には、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。