JP6242184B2 - N−置換(メタ)アクリルアミドの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、(メタ)アクリル酸を出発物質とする、各種重合体原料として有用なN−置換(メタ)アクリルアミドの簡便な工業的製造方法に関する。
N−置換(メタ)アクリルアミドは、単独または他の重合性モノマーと共重合した機能性ポリマーとして、日常生活において、その利便性から、塗料、粘着剤、接着剤、各種コーティング剤、紙力増強剤などの製紙用薬剤、産業排水や生活排水の処理に用いる高分子凝集剤、高分子改質剤、分散剤、増粘剤、コンタクトレンズや生体用ゲルなどの合成原料、UV硬化樹脂用反応性希釈剤など、極めて多様な分野において使用されている。従って、N−置換(メタ)アクリルアミドの製造方法は従来より盛んに検討、報告されてきた。
N−置換(メタ)アクリルアミドの工業的製法としては、出発物質から纏めると主に下記に示すような4種類が挙げられる。第1の製法は、(メタ)アクリルアミドを用いてアミンと、触媒としてアミンのアクリル酸塩の存在下、100〜250℃でアミド交換反応とマイケル付加反応を行い、さらに160〜350℃の高温で液相熱分解によりアミンを除去、N−置換(メタ)アクリルアミドを取得する方法である(特許文献1)。第2の製法は、(メタ)アクリル酸エステルを使用してアミンと、強塩基性触媒や有機錫触媒存在下で直接アミド化反応またはアミンとマイケル付加反応後にアミド化反応を行い、次にその生成物アミドアダクトを無触媒、酸性触媒或いは重合禁止剤の存在下で約150〜200℃において液相熱分解することでN−置換(メタ)アクリルアミドを合成する方法である(特許文献2〜8)。第3の製法は、アクリロニトリルとオレフィンあるいはアルコールを濃硫酸、ルイス酸等の存在下で反応させN−置換(メタ)アクリルアミドを製造する方法である(特許文献9)。第4の製法は、(メタ)アクリル酸を用い、メソポーラスシリカ触媒存在下でアミンと直接アミド化(特許文献10)、または(メタ)アクリル酸と3〜10倍モルの2級アミンを加圧下で反応させN,N−二置換βアミノ酸を合成し、その後、アルミナ触媒と対流システムを用いて120〜200℃、0.17〜0.87MPaの条件下で低沸点の2級アミンとアミド化反応を行い、さらに、気相重合禁止剤を添加し、200〜300℃、0.15〜0.95MPaの条件下で分解させ、N−置換(メタ)アクリルアミドを合成する方法である(特許文献11)。
しかしながら、これらの方法は、高温や加圧の条件で反応するため、過大なエネルギーと高価な設備投資が必要となり、いずれも工業生産に適した安価、簡便な方法ではなかった。また、強塩基や強酸性触媒を使用する場合、中和処理等を必要とし、目的物の単離に煩雑な操作が必要となるばかりでなく、目的物の収率も十分に満足すべきものではなかった。さらに、第1の製法で副生した毒性ガスアンモニア、第2の製法で使用済の有機錫触媒などについて、分離、回収、除害などの措置を取らなければならなかった。
第2と第4の製造方法は、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸の二重結合が極めて反応性に富むために、予めアミンを二重結合に保護基として付加させ、アミド化終了後加熱して保護基を脱離させ目的物を製造するのが一般的である。これらの方法はグリーン化学合成ではないが、N、N−二置換(メタ)アクリルアミドの製造法としては収率もよく工業的に有利な方法である。しかし、N−モノ置換(メタ)アクリルアミドに適用する場合には大きな欠点があった。すなわち、(メタ)アクリル酸エステルや(メタ)アクリル酸と1級アミンとの反応で得られるN−モノ置換β−アミノ(メチル)プロピオン酸アミドには、高沸点、高粘度の不純物が多量に生成することから収率を低下させ、またこれらを熱分解して目的物を得ようとした場合、高沸点、高粘度の不純物の存在により必要な反応温度が上昇し、目的物の重合が極めて起こり易くなり、収率のさらなる低下と共に精製コストの上昇をまねき、またこれらが甚だしい場合には操作が困難となり、目的物が取得できない場合もあった。
グリーン化学合成として、近年、シリカやアルミナを触媒としてカルボン酸とアミンのアミド化反応が注目されるようになった。しかし、(メタ)アクリル酸のような不飽和カルボン酸において、二重結合とアミンのアザーマイケル付加反応が優先的に進行するため、特許文献10に報告されたように(メタ)アクリル酸とアミンの直接アミド化の反応収率は40%程度と低かった。一方、特許文献11ではアミン保護のN,N−二置換βアミノ酸を合成してから続けてアミンとのアミド化反応を行ったが、(メタ)アクリル酸と2級アミンのアザーマイケル付加反応には大過剰のアミン(3〜10倍モル)が必要であり、過剰に使用されたアミンの回収、再使用など煩雑な後工程を追加され、経済的に不利な面があった。また、当然であるが、過剰のアミンがN,N−二置換βアミノ酸と有機中和塩を多く副生してしまい、目的生成物の純度低下、反応液の粘度増加および次工程の触媒汚染による失活など数多くの問題が残されている。
以上述べたように、N−置換(メタ)アクリルアミドを高純度、高収率、簡便且つ安価な工業的製造方法、特に、グリーン化学合成の観点から、水しか副生しない(メタ)アクリル酸を原料として用いたプロセスは、まだ確立されていない。
特開昭58−18346号公報 特開平4−208258号公報 特開平6−199752号公報 特開2000−273072号公報 特開2012−97005号公報 特開平4−154749号公報 特開平7−188135号公報 特開平11−302240号公報 特開2000−2648654号公報 特開2012−46431号公報 WO2010/126086号公報
本発明の課題は、(メタ)アクリル酸を出発原料とする高純度のN−置換(メタ)アクリルアミド(N−モノ置換(メタ)アクリルアミドとN,N−二置換(メタ)アクリルアミド)を高純度、高収率、簡便且つ安価に工業的に製造する方法を提供することである。
本発明者はこれらの課題を解決するために鋭意検討を行った結果、(メタ)アクリル酸とアミン化合物とを反応させ、一般式[1]に示されるアミノプロピオン酸誘導体を合成した後、触媒としてシリカを主成分とする無機物を添加し、前記と同一又は異なるアミン化合物とアミド化を行い、一般式[3]に示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体を得、続いて熱分解反応によりアミンを脱離させることによって、目的化合物N−置換(メタ)アクリルアミド(一般式[4])を得ることを見出し、本発明に到達した。
Figure 0006242184
Figure 0006242184
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(各式中、R、R、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合及びRとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとR、および/またはRとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す)
すなわち本発明は、
(1)一般式[1]で示されるアミノプロピオン酸誘導体と一般式[2]で示されるアミン化合物を、シリカを主成分とする無機物の存在下で反応させることを特徴とする、一般式[3]で示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法、
Figure 0006242184
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(各式中、R、R、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合及びRとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとR、および/またはRとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す)
(2)前記一般式[1]で示されるアミノプロピオン酸誘導体を、前記一般式[2]で示されるアミン化合物と、(メタ)アクリル酸をモル比(アミン化合物/(メタ)アクリル酸)が0.5以上〜3.0未満、反応温度が20〜120℃の範囲で反応させて得ることを特徴とする前記(1)に記載のアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法、
(3)前記のシリカを主成分とする無機物は多孔質のシリカゲル、メソポーラスシリカ、シリカアルミナ、ゼオライトからなる群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法、
(4)前記のシリカを主成分とする無機物中のシリカ含量は60〜100重量%であることを特徴とする前記(1)〜(3)の何れか一項に記載のアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法、
(5)前記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の方法により得られたアミノプロピオン酸アミド誘導体について、さらに熱分解によりアミンを脱離させることを特徴とする、一般式[4]で示されるN−モノ置換(メタ)アクリルアミド、またはN,N−二置換(メタ)アクリルアミドの製造方法
Figure 0006242184
を提供するものである。
本発明の方法によると、高純度のN−モノ置換(メタ)アクリルアミドとN,N−二置換(メタ)アクリルアミドを出発原料(メタ)アクリル酸から高収率で安価かつ簡便に製造することができる。また、本発明の方法では、環境負荷の小さいシリカ系触媒を使用し、原料アミンを過剰に用いる必要がなく、重合などのトラブルが発生せず、温度も圧力も温和な条件において、低コストで製造することができる。
本発明の製造方法において、アミンとカルボン酸の脱水アミド化反応におけるシリカ主成分とする無機物の触媒メカニズムについて、反応機構は必ずしも明らかではないが、触媒の表面に孤立シラノール基、さらに酸強度の高い酸点を存在するため、活性点としてアミンを容易に活性化させ、そのことによりカルボン酸が活性化されたアミンを攻撃し易くなり、温和な条件下でも反応がスムーズに進行していくことを発明者らは推測している。
本発明は、下記(イ)〜(ハ)の三つの工程からなる、一般式[4](式中、Rは水素原子またはメチル基、RとRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよい)で示されるN−モノ置換(メタ)アクリルアミドとN,N−二置換(メタ)アクリルアミドを効率よく工業的に製造する方法を提供するものである。
Figure 0006242184
(イ)(メタ)アクリル酸とアミン化合物とを、モル比(アミン化合物/(メタ)アクリル酸)が0.5以上〜3.0未満、反応温度が20〜120℃の範囲で反応させ、一般式[1](式中、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す)で示されるアミノプロピオン酸誘導体を製造する工程。
(ロ) 一般式[2](式中、RとRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよい)で示されるアミン化合物と一般式[1]で示されるアミノプロピオン酸誘導体とを、シリカを主成分とする無機物の存在下で反応させ、一般式[3](式中、R、R、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合及びRとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとR、および/またはRとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す。)で示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体を製造する工程。
(ハ)一般式[3]で示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体が、熱分解反応によりアミンを脱離させる、一般式[4](式中、Rは水素原子またはメチル基、RとRは各々独立に水素原子、炭素数1〜6の直鎖または分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよい)で示されるN−モノ置換(メタ)アクリルアミドとN,N−二置換(メタ)アクリルアミドを製造する工程。
Figure 0006242184
Figure 0006242184
Figure 0006242184
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以下、本発明の各工程を詳述する。
(イ) の工程
この工程は、(メタ)アクリル酸とアミン化合物とを汎用ラジカル重合禁止剤存在下で反応させることによって行われる。反応の最初は中和熱が発生するため、(メタ)アクリル酸とアミン化合物の混合は半回分式で行うことが好ましい。アミン化合物と(メタ)アクリル酸の仕込みモル比はアミン/(メタ)アクリル酸=0.5以上〜3.0未満であり、また、0.5以上〜2.0が好ましく、0.8〜1.2が特に好ましい。この反応は量論的に進行し、即ち、理論的に1:1モル比の反応であるが、回避困難な副反応により(メタ)アクリル酸を量論以上に消耗してしまうため、アミン化合物の構造や品種によって、0.5倍モルまで仕込み量を低減することは可能である。アミン化合物の仕込み比が0.5倍モル未満であれば、未反応の(メタ)アクリル酸が多く残存し、目的生成物であるアミノプロピオン酸誘導体の分離、精製は困難となる。一方、アミン化合物の仕込み比は3.0倍モルを超えると、アミノプロピオン酸誘導体と未反応のアミン化合物との有機中和塩が多く副生し、目的生成物の純度と収率が急激に低下する恐れがある。
(イ)工程の反応温度と反応時間は、該反応の出発原料であるアミン化合物の品種およびアミン化合物と(メタ)アクリル酸の配合比に応じて適切に選定されるが、通常、反応温度は20〜120℃程度で、反応時間は0.5〜48時間の範囲である。また、好ましい反応温度は40〜100℃程度で、反応時間は2〜36時間の範囲である。この反応は、アミン化合物と(メタ)アクリル酸とは中間体として有機中和塩を一旦形成してからアミンの分子内および/または分子間転位によって、(メタ)アクリル酸のアミン付加体として一般式[1]で示されるアミノプロピオン酸誘導体を生成すると本発明者らが推定している。反応温度は20℃未満、または反応時間は0.5時間未満であると、アミンの転位速度や転位の量(転化率)が著しく低下し、アミノプロピオン酸誘導体が十分に取得できない可能性がある。一方、反応温度は120℃超えると、低分子アミン化合物が反応系外へ脱離しやすくなり、また、反応時間は48時間を超える場合、生産性やコストにはデメリットが発生する。
(イ)工程において、反応温度がアミン化合物の沸点より高くなる場合、耐圧性反応容器を用いて、加圧下で反応させることができる。その時の反応圧力は反応の進行状況に特に影響しないので、制限することはないが、一般的に0.101〜0.981MPaの範囲である。
(イ)工程の反応はアミン化合物の品種によって、(メタ)アクリル酸との相溶性改善などの目的で、必要に応じて溶媒を使用してもよい。反応溶媒は、特に限定するものではなく、反応の出発原料および生成物との副反応を起こさなければ、一般的な溶媒を使用することができる。また、溶媒の使用量はアミン化合物と(メタ)アクリル酸の合計に対して、10〜1000重量%であることが好ましい。
(イ)工程の反応は無触媒でも十分な速度で進行することができる。アミン化合物の品種や反応設備、効率などを考慮して、塩基性触媒により反応温度の低減や反応時間の短縮など調整することは可能である。塩基性触媒は無機系も有機系も、また汎用な均一系においても分離しやすい不均一系においてもよい。無機塩基としては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが挙げられ、有機塩基としては、第3級アミン、ピリジン、上記アルカリ金属のアルコキシドなどが挙げられる。また、これらの塩基性化合物は、一種を単独使用しても良く、二種以上を組み合わせて使用してもよい。触媒使用する場合、その配合量は(メタ)アクリル酸に対して0.005〜10モル%であることが好ましい。また、反応終了後、塩基性触媒が硫酸、塩酸などの酸性化合物による中和してから次の工程に持ち越すことが好ましい。
(イ)工程の反応はラジカル重合禁止剤の存在下で行うことが好ましい。重合禁止剤としては公知のものが使用できるが、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、2,6−ジ−tert−ブチルパラハイドロキノン、2,5−ジ−tert−ブチルハイドロキノン、2,4−ジメチル−6−tertブチルフェノール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール化合物、N−イソプロピル−N'−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1,3−ジメチルブチル)−N'−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N−(1−メチルヘプチル)−N'−フェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N'−ジフェニル−パラ−フェニレンジアミン、N,N'−ジ−2−ナフチル−パラ−フェニレンジアミン等のパラフェニレンジアミン類、チオジフェニルアミン等のアミン化合物、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、アセトアミドテトラメチルピペリジン−1−オキシル等のピペリジン−1−オキシルフリーラジカル化合物類等を例示することができる。これらの重合禁止剤は、1種又は2種以上を併用しても構わない。また、重合禁止剤の添加量は、(メタ)アクリル酸に対して1〜10000ppm、好ましくは5〜5000ppmである。
本発明に使用されるアミン化合物はN−モノ置換またはN,N−二置換の炭素数1〜6の飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖状の脂肪族第一級アミンと第二級アミン、モルホリン、ヒドロキシル基を有する前記第一級アルカノールアミンと第二級アルカノールアミン、アミノ基を有する前記第一級アミンと第二級アミンである。具体的には、(ジ)メチルアミン、(ジ)エチルアミン、(ジ)プロピルアミン、(ジ)イソプロピルアミン、(ジ)ブチルアミン、(ジ)イソブチルアミン、(ジ)ペンチルアミン、(ジ)ヘキシルアミン、(ジ)アリルアミン、メチルエチルアミン、メチル(イソ)プロピルアミン、メチル(イソ)ブチルアミン、メチル(イソ)ヘキシルアミン、エチル(イソ)プロピルアミン、エチル(イソ)ブチルアミン、エチル(イソ)ヘキシルアミン、プロピルイソプロピルアミン、プロピルブチルアミン、プロピルヘキシルアミン、イソプロピルブチルアミン、イソプロピルイソブチルアミン、イソプロピルヘキシルアミン、ブチルイソブチルアミン、ブチルヘキシルアミン、モルホリン、モノエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、プロパノールアミン;イソプロパノールアミン、ブタノールアミン、
ペンタノールアミン、ヘキサノールアミン、N,N−ジメチルアミノエチルアミン、N,N−ジエチルアミノエチルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノエチルアミン、N,N−ジアリルアミノエチルアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミノプロピルアミン、N,N−ジアリルアミノプロピルアミン等があげられる。
(ロ)の工程
この工程は、シリカを主成分とする無機物の存在下で、前記(イ)工程で得られたアミノプロピオン酸誘導体を用い、煩雑な操作を伴わずに収率よく、一般式[2]で示されるアミン化合物とのアミド化反応により一般式[3]で示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体を製造するものである。
Figure 0006242184
Figure 0006242184
(各式中、R、R、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合及びRとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキレン基、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアミノアルキレン基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとR、および/またはRとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
本発明に用いるシリカを主成分とする無機物(シリカ主成分無機物)は多孔質シリカゲル、メソポーラスシリカ、シリカアルミナ、ゼオライトからなる群より選択された1種または2種以上である。
シリカ主成分無機物触媒の形状において、粉末状、微粒子状、顆粒状、薄膜等成型品など特に制限はなく、反応方法に応じて流動床、固定床などに適した形状を適宜選択することが出来る。また、反応はバッチ方式でも連続方式であってもよい。例えば、バッチ式の液相懸濁反応の場合は、反応活性点から考えると、触媒の形状は粉末状又は微粒子状が好ましい。また、微粒子において、水や有機溶剤による均一に分散された分散液の状態では取り扱い易いので、用いることはできる。分散液として用いる場合、反応系に加え、分散剤を蒸留等によって除去してから、所定条件に調整し、アミド化反応を行うことができる。
本発明において、多孔質シリカゲルとは、細孔を有するシリカゲルであり、製造方法等により限定することなく使用できる。多孔質シリカゲルの形状は、破砕した非球状のシリカゲルであっても、球状のシリカゲルであってもよいが、球状のシリカゲルは強度が高く、リサイクル使用しやすいので、より好ましい。また、本発明における「球状」とは真球に限定されるものではなく、楕円球などやや変形した球形を含み、平均球形度0.5以上であり、0.85以上のもがより好ましくい。また、球状のシリカゲルにおいて、通常、平均粒径は0.1〜10,000μmであり、好ましくは1〜5,000μmである。平均細孔径は0.5〜100nmであり、2〜50nmが好ましい。比表面積は10〜10000m/gであり、30〜1000m/gであることがより好ましい。これらの範囲を外れる場合、2有効粒子や細孔の含有率が低下し、反応速度の低下、副反応の進行などを招いてしまう可能性がある。本発明で用いられる多孔質シリカゲルは、市販の工業品として容易に入手可能、また、公知の方法により合成や処理することも可能である。例えば、クロマトの担体としてもよく利用されているシルカゲル40、シリカゲル60、WakosilC−200、WakosilC−300等が挙げられる。
本発明において、メソポーラスシリカとは、均一で規則的なメソ孔(直径 2〜50nm
の細孔)を持つ二酸化ケイ素主成分の無機物である。メソポーラスシリカは粉末であっても、微粒子であっても、薄膜等成型品であってもよい。また、比表面積が大きく、強度が高く、リサイクル使用しやすく、簡便に工業化生産できる面から、球状の微粒子がより好ましい。メソポーラスシリカの細孔径は2〜50nmであり、2nm〜10nmが好ましい。メソポーラスシリカの細孔径が2nmより小さくなると、原料分子や生成物分子の拡散速度が低く、反応性が低下するおそれがある。一方、メソポーラスシリカの細孔径が50nmより大きくなると、原料分子と生成物分子の間で遷移状態が形成され難くなり、高選択率、高収率が得られなくなるおそれがある。
メソポーラスシリカの比表面積は10〜3000m/gであり、50〜3000m/gが好ましい。粒子系触媒としてこの範囲の比表面積のものが容易に製造でき、また原料分子に効率よく接触して作用することが可能である。なお、比表面積は、例えば窒素ガスを吸着させて比表面積を測定するBET法によって求めることができる。また、平均粒径は0.2〜10,000μmであり、好ましくは1〜5,000μmである。
メソポーラスシリカの代表的な例として、MCM−41、MCM−48、MCM−50、SBA−1、SBA−11、SBA−15、SBA−16、FSM−16、KIT−5、KIT−6、HMS(六方晶)、MSU−F、MSU−Hなど挙げられる。これらのメソポーラスシリカは市販されているものを入手して使用することができ、又は公知の方法を利用して合成することができる。
本発明において用いられるメソポーラスシリカの合成方法に特に制限はないが、基本的にシリカ源と型剤であるカチオン性もしくは中性の界面活性剤の反応複合体を焼成処理する公知の方法を利用することができる。シリカ源の種類としては、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウムなどの珪酸塩、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのアルコキシシランを単独、あるいは混合して使用することができる。型剤(テンプレート)としては炭素数8以上のアルキル基を有する4級アンモニウム塩、特にハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン型界面活性剤やポリ(エチレングリコール―エチレン)ブロック共重合体系中性界面活性剤を好適に用いることができる。また、反応複合体中に残存する型剤は酸性溶液で処理した後、焼成することにより除去してメソポーラスシリカが合成される。
前記の焼成処理は空気や酸素の存在下で行うことが好ましい。焼成温度は200〜800
℃、また300〜700℃
がより好ましい。焼成温度が200℃未満であると型剤の燃焼が遅くなり、十分に除去できない可能性がある。また、焼成温度が800℃以上であると、細孔壁を構成しているシリカが部分的に崩壊する欠点がある。
本発明において、シリカアルミナとは、シリカ(SiO)とアルミナ(Al)を主成分とする複合酸化物であり、結晶性のものであっても、非晶質のものであってもよい。シリカアルミナのシリカ及びアルミナの含有率の合計は95重量%以上であり、且つシリカの含有率は50mol%以上であることが好ましい。本発明で用いるシリカアルミナ触媒は、粉末であっても、微粒子であっても、薄膜等成型品であってもよい。また、比表面積が大きく、強度が高く、リサイクル使用しやすく、簡便に工業化生産できる面から、球状の微粒子がより好ましい。球状の粒子系シリカアルミナにおいて、通常、平均粒径は0.2〜20,000μmであり、好ましくは1〜10,000μmである。平均細孔径は1〜100nmであり、2〜50nmが好ましい。比表面積は10〜10000m/gであり、30〜1000m/gであることがより好ましい。球状の粒子系触媒としてこの範囲の平均粒径や比表面積のものが容易に製造でき、また原料分子や生成物分子の拡散速度が高く、遷移状態が形成され易くなり、高選択率、高収率が得られる利点がある。
本発明で用いられるシリカアルミナは、市販の工業品として容易に入手可能、また、公知の方法により合成や処理することも可能である。例えば、水ガラスやシリカゲル等のシリカ源、及び硫酸アルミニウム、アルミン酸ソーダやアルミナゲル等のアルミナ源から共沈法、ゲル混錬法、ゲル沈着法、共ゲル化法、含浸法等で調製されるシリカアルミナヒドロゲルを乾燥、焼成することにより製造することができる。また、テトラエトキシシランとアルミニウムイソプロポキシドとの混合溶液を加水分解するアルコキシド法(ゾルゲル法)及び化学蒸着法等により製造することもできる。このように製造されたシリカアルミナを十分に水洗して、400〜700℃程度で数〜十数時間焼成することにより、高純度化することができる。市販品であれば、例えば、富士シリシア化学社製シリカアルミナ308、日揮触媒化成社製N633HN、N631HN、N633L、N631L、シグマアルドリッチ社製Al−MCM−41、Al−MSU−Fなどが挙げられる。
本発明において、ゼオライトとは規則性の微細孔(マイクロポア)を有するケイ素とアルミニウムの結晶性複合酸化物であり、天然品或いは合成品のいずれでも良い。また、構造タイプとしてMFI型、β型、モルデナイト型(MOR)、フォージャサイト型(FAU)、フェリエライト型(FER)、LTL型、LTA型、MWW型、MSE型、Y型FAU、X型FAUが挙げられる。ゼオライトの構成成分であるSiO/Alモル比は1以上、好ましくは2以上である。SiO/Alモル比は1未満の場合、アルミナ由来の酸点の量が増加し、副反応が発生しやすくなる。また、ゼオライトは粉末、粒状、成形体のいずれでもよい。比表面積が大きく、強度が高く、リサイクル使用しやすく、簡便に工業化生産できる面から、球状の微粒子がより好ましい。球状の粒子系ゼオライトにおいて、通常、平均粒径は1〜500μm、比表面積が150m2 /g以上、細孔容積は0.1〜2cm/g程度である。比表面積と細孔容積がこれらの範囲内にあれば、触媒の活性が低下することはなく、好適である。本発明に用いられるゼオライトは市販のものでもよいし、公知の方法で調製して使用してもよい。市販品であれば、例えば、東ソー社製のY型320HOA、FER型720KOA、MOR型640HOA、690HOA、MFI型890HOAなどが挙げられる。
本発明に用いるシリカ主成分無機物、例えば、多孔質シリカゲル、メソポーラスシリカ、シリカアルミナ、ゼオライト等は、下記の従来公知(特許文献10、12〜15と非特許文献1〜5)の方法により調製することができる。
特許文献12:特開平10−130013号公報
特許文献13:特開2004−182492号公報
特許文献14:特開2011−532号公報
特許文献15:特開2013−47166号公報
非特許文献1:Sakthivel, S. J.
Huang, W. H. Chen, Z. H. Lan, K. H. Chen, H.P. Lin, C. Y. Mou, S. B. Liu, Adv.
Funct. Mater.,2005年、15巻、253頁
非特許文献2:S. Inagaki, M.
Ogura, T.Inami, Y. Sasaki, E. Kikuchi, M. Matsukata, Micropours and Mesoporoua
Materials, 2004年、74巻、163頁
非特許文献3:. Inagaki, A.
Koiwai, N. Suzuki, Y. Fukushima and K. Kuroda, Bull. Chem. Soc. Jpn., 1996年、69巻、1449頁
非特許文献4:J.S. Beck, J.C.
Vartuli, W.J. Roth, M.E. Leonowicz, C.T. Kresge, K.D. Schmitt, C.T.-W. Chu,
D.H. Olson, E.W. Sheppard, S.B. McCullen, J.B. Higgins and J.L. Schlenker, J.
Am. Chem. Soc. 1992年、114巻、10834頁
非特許文献5:P. D. Yang, D. Y.
Zhao, D. I. Margolese, B. F. Chmelka, G. D. Stucky, Nature 1998年、396巻、152頁
本発明に用いるシリカ主成分無機物は、表面に孤立シラノール基が存在することが好ましい。シリカ主成分無機物を重アセトニトリル中に添加し、1H−MAS−NMR分析により孤立シラノール基由来のプロトンピークを3.3ppmm付近に確認することができる。シリカ主成分無機物の表面にある孤立シラノール基の含有量は多いほど、触媒として活性が高くなるが、孤立シラノール基の高濃度化は特殊な加工技術、精密な制御など触媒の製造コストが高くなる。本発明において、孤立シラノール基の含有量は0.01mmol/g以上であり、さらに0.05mmol/g以上が好ましく、1.00mmol/g以上が特に好ましい。また、シリカ主成分無機物の表面に酸強度の高い酸点を同時に存在することがより好ましい。酸強度の高い酸点の存在は、同様に重アセトニトリルに添加したシリカ主成分無機物の1H−MAS−NMRスペクトルにおける5ppm付近にブロードなプロトンピークから容易に判別することができる。
(ロ)工程において、アミノプロピオン酸誘導体に対するアミン化合物は化学量論量使用することができ、又はそれよりも過剰に用いることで反応の完結が促進されるため、好ましい。一般的に、アミノプロピオン酸誘導体に対して、アミン化合物は1〜30倍モルの範囲で用いられる。また、1.01〜20倍モルの範囲が好ましく、1.05〜10倍モルの範囲が特に好ましい。アミン化合物は反応の原料と同時に反応の溶媒として使用することができる。アミノプロピオン酸誘導体に対してアミン化合物の配合比は30倍モルを超えると、反応後の回収など経済的な面に不利である。
また、(ロ)工程は(イ)工程と同じアミン化合物を使用しても、異なるアミン化合物を使用してもよい。(イ)工程と同じアミンを使う場合、(イ)工程からの持ち込み分を考慮し、(ロ)工程の所定配合比になるように、アミン量を調整(除去または添加)し、(ロ)工程の条件で反応を行うことができる。また、(イ)工程と異なるアミンを使う場合、(イ)工程で残存アミンがある場合、それを常圧または減圧下で除去してから(ロ)工程に使用されるアミン化合物を所定配合比で添加して、反応を行う。
(ロ)工程に用いるシリカ主成分無機物の使用量は、アミノプロピオン酸誘導体とアミン化合物の品種や性状(反応温度における液体または固体)、溶解性、反応温度および使用する溶媒によって最適な範囲があるが、通常、アミノプロピオン酸誘導体と化学量論的なアミン化合物の合計に対して、0.1〜100重量%の範囲、好ましくは0.5〜80重量%の範囲、特に好ましくは1〜50重量%の範囲である。
(ロ)工程の反応温度と反応時間は、該反応の出発原料であるアミノプロピオン酸誘導体とアミン化合物の品種、配合比に応じて、適切に選定されるが、反応の選択率が高く、反応速度が比較的速い理由で、反応温度は10〜150℃程度で、反応時間は0.1〜48時間の範囲である。また、好ましい反応温度は20〜120℃程度で、反応時間は1〜36時間の範囲である。反応の出発原料であるアミン化合物が過剰に配合することによって反応溶媒としての作用も提供できるが、さらに必要に応じて溶媒を使用してもよい。反応は常圧下又はオートクレーブ等加圧可能な装置を用いる加圧下で実施することができる。反応溶媒は、特に限定するものではなく、反応の出発原料、生成物およびシリカ主成分無機物との副反応を起さなければ、一般的な溶媒を使用することができる。例えば、トルエン、キシレンなどの疎水性溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)などの親水性溶媒が挙げられる。溶媒を使用する場合、その使用量としては、通常、アミノプロピオン酸とアミン化合物の合計に対して20〜1000重量%の範囲、好ましくは50〜500重量%の範囲、特に好ましくは100〜300重量%の範囲である。反応溶媒が、原料の溶解や撹拌効率向上などの目的で使用される場合、20重量%未満と十分な効果が期待できない可能性があり、また、1000重量%を超えると、不経済である同時に反応速度の低下を招くことがある。
(ロ)工程の製造方法において、反応は、バッチ方式でも、連続方式でもよく、また、シリカ主成分無機物の供給方式も流動床でも固定床でもよい。バッチ方式の場合は、例えば、反応容器に原料のアミノプロピオン酸誘導体、アミン化合物、シリカ主成分無機物および溶媒を仕込み、必要に応じて反応容器内および反応液内を不活性ガスで置換した後、撹拌により懸濁状態を維持しながら、反応温度を所定値に調整し、所定時間で反応を行う。また、反応終了後の反応液混合物は、例えば、固形状のシリカ主成分無機物をフィルターなどで濾別し、反応液から分離、回収してもよいし、分離せず、そのまま次工程に持ち越してもよい。反応終了後の反応液混合物の室温における粘度は1000mPa・s以下の場合、シリカ主成分無機物をろ過、遠心分離などによって回収、再利用することが好ましい。
(ハ)の工程
この工程は、一般式[3]で示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体を熱分解反応によりアミンを脱離させ、一般式[4]で示されるN−モノ置換(メタ)アクリルアミド、N,N−二置換(メタ)アクリルアミドを合成する。該工程の反応は特許文献2〜6、16と17に開示された何れかの方法、即ち、無触媒または酸性触媒の存在下で実施することができる。また、(イ)工程と同様に重合禁止剤の存在下で実施することが好ましい。重合禁止剤としては公知のものが使用できる。
特許文献16:特開2011−168514号公報
特許文献17:特開2007−230967号公報
(ハ)工程は、(ロ)工程で得られたアミノプロピオン酸アミド誘導体を用いて、所定の反応温度と操作圧力において、液相分解反応による1分子のアミン化合物を脱離し、未反応の原料アミン化合物((ロ)工程で過剰仕込みによる残存した分)や反応溶媒とともに沸点順で蒸留、回収し、留出残分として、目的のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド、N,N−二置換(メタ)アクリルアミドを得ることができる。また、必要に応じて、得られた留出残分を精密蒸留することにより高純度の留出成分として得ることができる。
本発明の実施例と比較例に用いたシリカ主成分無機物を表1に示す。
Figure 0006242184
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。実施例及び比較例に記載するN−置換(メタ)アクリルアミドおよび用いた材料の略称は以下の通りである。
(1)N−置換(メタ)アクリルアミド
DMAA:N,N−ジメチルアクリルアミド
DEAA:N,N−ジエチルアクリルアミド
DPAA:N,N−ジプロピルアクリルアミド
NIPAM:N−イソプロピルアクリルアミド
ACMO:アクリロイルモルホリン
DMAPAA:ジメチルアミノプロピルアクリルアミド
HEAA:N−ヒドロキシエチルアクリルアミド
HEMAA:N−ヒドロキシエチルメタクリルアミド
MHEAA:N−メチル−N−ヒドロキシエチルアクリルアミド
NMAA:N−メチルアクリルアミド
EMAA:N−メチル−N−エチルアクリルアミド
(2)(メタ)アクリル酸
AAc:アクリル酸
MAc:メタクリル酸
(3)アミン化合物
DMA:ジメチルアミン
DEA:ジエチルアミン
DPA:ジプロピルアミン
i-PA:イソプロピルアミン
Mor:モルホリン
DMPA:N,N−ジメチルプロピルアミン
EA:エタノールアミン
NMA:N−メチルアミン
EMA:エチルメチルアミン
MEA:N−メチルエタノールアミン
(4)重合禁止剤
TDA:チオジフェニルアミン
HQ:ハイドロキノン
MEHQ:ハイドロキノンモノメチルエーテル
TEMPO:2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル
TBC:4−tert−ブチルカテコール
BHT:ジブチルヒドロキシトルエン
DDA:スチリル化−N−-アミノビフェニール
W−300:4,4‘−ブチリデンビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)
(5)塩基性触媒
NaOH:水酸化ナトリウム
SM:ナトリウムメトキシド
実施例1
(イ)攪拌機と温度センサーの付いた1000mLの耐圧反応容器(オートクレーブ)にAAc 216.2g(3mol)とTDA 0.44gを投入し、40℃を超えないように、水浴で冷却させながら、大気圧下において、撹拌しながらDEA(液体)219.6g(3mol)を連続的にAAc液中に加えた。DEAを添加終了後、反応液温度を80℃に昇温し、加圧状態下で6時間反応液を撹拌した。反応終了後、反応液を常圧、常温に戻して、N,N−ジエチルアミノプロピオン酸(略称DEA−AAC)432gを淡黄色固体として得た。得られた固体の一部を取り出し、テトラヒドロフランによる再結晶を行い、融点55〜56℃、純度99.9%の白色結晶を取得した。また、再結晶前の粗DEA−AACの純度は93%、反応の収率は92%であることを算出した。
(ロ)(イ)工程の反応装置と反応生成物(320g、純度は93%)を用いて、DEA 300g(4.10mol)とシリカ主成分無機物としてMCM−41 45gを投入し、加圧状態下、100℃で8時間反応させた。反応終了後、反応液の温度を室温に戻し、MCM−41をろ過により除去した後、反応液を蒸留塔付けの装置に移し、蒸留により未反応のDEAと副生成した水を除去し、N,N−ジエチル−β−ジエチルアミノプロピオン酸アミド(略称DEA−AAm) 420g(純度96%、収率98%)を淡黄色の液体として得た。
(ハ)攪拌機、温度計、ガス導入ラインを付けた1000mLの四つ口フラスコに、(ロ)工程で得られたDEA−AAM 400g、濃硫酸(98%)2g、TDA 0.4gを加えた。その後、充填物、コンデンサーと留出受器を付けた蒸留塔をフラスコに付け、微量窒素ガスをキャリアーとして流し、反応液を撹拌しながら、釜温160℃、真空度60kPaに調整し、熱分解反応を6時間実施し、水凝縮器より粗N,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)250g(純度=93%、収率=92%)を得た。
さらに、得られた粗DEAAを20cmのマクマホンパッキン(サイズ6mm)充填塔付きの蒸留精製装置に移し、減圧蒸留により精製を行い(60℃/0.13kPa)、無色液体として高純度品DEAA(純度99.7%)220gを取得した。
実施例2〜8
実施例1において、出発原料、触媒、溶媒、重合禁止剤および各工程の反応条件を表1に示す通りに変更し、実施例1と同様に合成を行い、それぞれの目的化合物を取得した。結果を表2に示す。
実施例9
実施例1において、(イ)と(ロ)工程の出発原料、触媒、溶媒、重合禁止剤および各工程の反応条件を表2に示す通りに変更し、(ハ)工程は酸性触媒を添加せず、釜温250℃にて実施例1と同様に合成を行った。目的化合物であるN,N−ジプロピルアクリルアミド(DPAA)を取得した結果を表2に示す。
実施例10〜18
実施例1において、出発原料、触媒、溶媒、重合禁止剤および各工程の反応条件を表2に示す通りに変更し、実施例1と同様に各位工程の合成を行った。また、(ロ)工程で得られた反応後の反応液混合物の粘度が高いため、あるいは、(ロ)工程の生成物アミノプロピオン酸アミド誘導体の融点は室温以上であるため、(ロ)工程で使用したシリカ主成分無機物を反応液から分離せず、(ハ)工程の反応を継続に行った。但し、(ロ)工程で大きいサイズ粒子状シリカ主成分無機物を使用した実施例13と14において、実施例1と同様にシリカ主成分無機物のろ過除去を行った。それぞれの目的化合物を取得し、結果を表2に示す。
Figure 0006242184
比較例1〜8
実施例1において、出発原料、触媒、溶媒、重合禁止剤および各工程の反応条件を表3に示す通りに変更したこと以外は、実施例1に記載した方法に準じて反応を行った。反応結果を表3に示す。なおこれらの比較例では最終生成物の蒸留生成操作は行わなかった。
Figure 0006242184
比較例1から、(イ)工程の原料アミン仕込み量が低すぎると工程収率が低くなることが分かった。一方、(イ)工程の原料アミン仕込み量がアクリル酸に対して3倍モルよりも多い比較例2において、黄色液体しか得られず、該工程の目的生成物(融点56℃、室温では固体として存在する)を取得することができなかった。また、比較例3は、(イ)工程の反応温度が高すぎたため、副反応が多く発生し、工程収率が18%と極めて低かった。さらに、比較例8では、(イ)工程の重禁無添加による重合トラブルが発生したため、比較例1〜3と同様に(ロ)工程以降の検討は行わなかった。
比較例4〜7において、(ロ)工程の反応物仕込み比、触媒使用料、反応温度や時間などの条件が、本発明の提案範囲から外れる高収率で高純度のアミノプロピオン酸アミド誘導体を得ることは困難であり、また、該工程で副生した多種の不純物について、分離や除去し難いので、次の(ハ)工程まで影響を及ばし、収率が低かった。
以上説明してきたように、本発明の方法は、(メタ)アクリル酸を出発物質とする、温和な反応条件においても短時間、効率よく、高純度のN−置換(メタ)アクリルアミドおよびN,N−二置換(メタ)アクリルアミドを製造することができる。また、シリカ系触媒の選定により、常圧、低温でも十分な速度と高選択率で反応が進行し、重合などのトラブルが発生せず、不純物の副生が少なく、高純度品を高収率で取得することができる。
本発明の製法方法で取得するN−置換(メタ)アクリルアミドおよびN,N−二置換(メタ)アクリルアミドは、単独または他の重合性モノマーと共重合した機能性ポリマーとして、日常生活において、その利便性から、塗料、粘着剤、接着剤、各種コーティング剤、紙力増強剤などの製紙用薬剤、産業排水や生活排水の処理に用いる高分子凝集剤、高分子改質剤、分散剤、増粘剤、コンタクトレンズや生体用ゲルなどの合成原料、UV硬化樹脂用反応性希釈剤など、極めて多様な分野において好適に使用することができる。

Claims (4)

  1. 一般式[1]で示されるアミノプロピオン酸誘導体と一般式[2]で示されるアミン化合物とを、シリカを主成分とする無機物の存在下で反応させることを特徴とする、一般式[3]で示されるアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法であって、前記シリカを主成分とする無機物中のシリカ含量は60〜100重量%であることを特徴とするアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法。
    Figure 0006242184
    Figure 0006242184
    Figure 0006242184
    (各式中、R、R、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合及びRとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、または、N,N−ジメチルアミノエチル基、N,N−ジエチルアミノエチル基、N,N−ジイソプロピルアミノエチル基、N,N−ジアリルアミノエチル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基、N,N−ジエチルアミノプロピル基、N,N−ジイソプロピルアミノプロピル基、N,N−ジアリルアミノプロピル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとR、および/またはRとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
  2. 前記一般式[1]で示されるアミノプロピオン酸誘導体が、前記一般式[2]で示されるアミン化合物と、(メタ)アクリル酸とを、モル比(アミン化合物/(メタ)アクリル酸)が0.5以上〜3.0未満、反応温度が20〜120℃の範囲で反応させて得ることを特徴とする請求項1に記載のアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法。
  3. 前記のシリカを主成分とする無機物は多孔質のシリカゲル、メソポーラスシリカ、シリカアルミナ、ゼオライトからなる群から選択された1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のアミノプロピオン酸アミド誘導体の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法により得られたアミノプロピオン酸アミド誘導体について、さらに熱分解によりアミンを脱離させることを特徴とする、一般式[4]で示されるN−モノ置換(メタ)アクリルアミドまたはN,N−二置換(メタ)アクリルアミドの製造方法。
    Figure 0006242184
    (式中、RとRは各々独立に水素原子または炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基(但し、RとRが同時に水素原子である場合を除く。)、または、炭素数1〜6の直鎖状又は分岐鎖状のヒドロキシアルキル基、または、N,N−ジメチルアミノエチル基、N,N−ジエチルアミノエチル基、N,N−ジイソプロピルアミノエチル基、N,N−ジアリルアミノエチル基、N,N−ジメチルアミノプロピル基、N,N−ジエチルアミノプロピル基、N,N−ジイソプロピルアミノプロピル基、N,N−ジアリルアミノプロピル基であり、互いに同一であっても異なっていてもよく、また、RとRは、それらを担持する窒素原子と一緒になって、酸素原子を含む飽和5〜7員環を形成してもよく、Rは水素原子またはメチル基を表す。)
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