JP6240626B2 - 抗アトピー性皮膚炎用組成物 - Google Patents

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Description

この発明は、じゃばら乾燥果皮末を有効成分として含む抗アトピー性皮膚炎用組成物に関する。
アレルギーは発生機序によって大きくI型からV型に分類される(クームス分類)。
そのうち、花粉症やアレルギー性鼻炎は、別名、即時型過敏とも呼ばれるI型アレルギーであることが分かっている。なお、I型アレルギーは、アレルギーの原因となるアレルゲンに特異的に反応するIgEや一部のIgG4などの免疫グロブリン等が関与する液性免疫である(非特許文献1を参照。)。
これに対して、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎は、I型アレルギーに加えて、アレルゲンに特異的に反応する感作T細胞等が関与する細胞性免疫であるIV型アレルギーと、特定のアレルゲンとは関連しない、非特異的刺激反応が関係していることが分かっている。
さらに、I型アレルギーに分類される花粉症や食物アレルギーとアトピー性皮膚炎の違いについて考える。花粉症の場合、花粉アレルゲンの曝露がなくなると症状が寛解する。すなわち、花粉の飛散シーズンが終わると症状はなくなり、花粉飛散期に花粉が飛散しない地域へ避難することで花粉症の発症を回避することができる。食物アレルギーはアレルギーを発症するアレルゲンを摂取・曝露しないことで、食物アレルギーの発症を防ぐことができる。つまり、花粉症や食物アレルギーは、アレルゲン曝露・アレルギー反応と症状とが対応関係にある。
一方、アトピー性皮膚炎は慢性疾患であり、患者をアレルゲンに曝露されない状態に置いただけで寛解することはない。アトピー性皮膚炎の治療には、症状の発露であるアレルギー反応以外の分部に対処しなければならない。つまり、アトピー性皮膚炎は、アレルギー反応を含む複雑な病態メカニズムをもつ慢性疾患である。以上より、アトピー性皮膚炎の治療は、同じI型アレルギーに分類される花粉症や食物アレルギーの場合とは、大きく異なっている。
ところで、日本皮膚科学会ガイドラインにおいて、アトピー性皮膚炎は「表皮、中でも角層の異常に起因する皮膚の乾燥とバリア機能異常という皮膚の生理学的異常を伴い、多彩な非特異的刺激反応および特異的アレルギー反応が関与して生じる、慢性に経過する炎症と掻痒をその病態とする湿疹・皮膚炎群の一疾患」と定義されている。
また、日本皮膚科学会のアトピー性皮膚炎の診断基準では、痒み、特徴的な皮疹とその分布、慢性・反復性の経過、の3つすべて当てはまるものをアトピー性皮膚炎と診断している。
このようなアトピー性皮膚炎の定義と病態の実際を考えると、その症状を緩和するためには、アレルゲン特異的刺激反応を抑制するだけでは不十分であり、むしろ、(1)皮膚の乾燥とバリア機能異常を正常に戻すこと、(2)非特異的な刺激反応を抑え炎症を抑えること、(3)痒みを抑えることなどによって、非特異的刺激反応を抑制することのほうが重要である。
この非特異的刺激反応は、慢性的な炎症と痒みが生じる症状である。なお、非特異的刺激反応の原因は、患者の皮膚が乾燥して、皮膚のバリア機能が損なわれることによって、皮膚の角質直下まで伸びている神経線維を直接刺激すること、及び神経線維の刺激によって発生する神経ペプチド(サブスタンスP)が表皮内のケラチノサイトに結合して、様々な炎症性サイトカインを放出することなどである。
また、非特異的刺激反応は、そのまま放置しておくと、患者が炎症部分を掻き毟ることによって症状がより悪化する。そのため、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の治療に、アレルギー反応を抑制する抗アレルギー剤が単独で使用されることは稀であり、非特異的反応を抑えるためにプロピオン酸クロベタゾールなどのステロイド剤が併用されること、又はステロイド剤が単独で使用されることが多い。
ただ、ステロイド剤は、内服薬の場合には高血圧、糖尿病、骨粗鬆症、緑内障、白内障、感染症に罹患し易くなるなどの副作用が生じる懼れがあり、外用薬の場合には軟膏を塗った皮膚がうすくなる(皮膚萎縮)、ニキビやヘルペスなど感染症が悪化する等の副作用が生じる懼れがあるため、その使用が忌避されている。
そこで、ステロイド剤の代わりに生薬、特に柑橘類を原料とする生薬が従来から研究されている。例えば、チンピの抽出物を含む接触皮膚炎抑制剤(特許文献1を参照。)、ユズ又はウンシュウミカンの抽出物を含むRANTES産生阻害剤(特許文献2を参照。)、サンショウ抽出物を含むアトピー性皮膚炎用外用剤(特許文献3を参照。)、陳皮を有効成分とするヒスタミンH1受容体遮断剤(特許文献4を参照。)、ジャバラ抽出物を含む化粧料(特許文献5を参照。)が挙げられる。
また、ウンシュウミカンの花部の抽出物を含む皮膚外用剤(特許文献6を参照。)、柑橘類由来のクリプトキサンチン及び/又はその誘導体を含むヒアルロン酸合成促進剤(特許文献7を参照。)、ジャバラ抽出物を含む局所用スキンケア組成物(特許文献8を参照。)、温州みかん由来のクリプトキサンチン及び/又はその誘導体を含む抗炎症剤(特許文献9を参照。)、八朔、甘夏、夏みかん及びグレープフルーツ等の柑橘類に含まれるオーラプテンを有効成分とするMCP−1の発現抑制剤(特許文献10を参照。)が挙げられる。
しかし、これらの皮膚外用剤等は、ある程度の治療効果を供えてはいるものの、その効果は限定的であり、特に非特異的刺激反応の抑制効果は不十分であった。そのため、これら皮膚外用剤等だけでは、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎を治療できず、現時点ではステロイド剤を使用しなければならない。
特開2001−81037号公報 特開2003−63980号公報 特開2003−306438号公報 特開2004−59545号公報 特開2007−238464号公報 特開2009−173682号公報 特開2011−42627号公報 特開2011−510980号公報 特開2014−189522号公報 国際公開第WO2007/132893号
「アレルギー」、[online]、Wikipedia、[平成26年8月8日検索]、インターネット<URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/アレルギー>
そこで、この発明は、ステロイド剤を使用しなくても、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の症状を軽減・治療する効果が高く、アレルゲン特異的刺激反応の抑制に加えて、非特異的刺激反応についても抑制でき、環境にも優しい抗アトピー性皮膚炎用組成物を提供することを課題とする。
発明者は、鋭意検討の結果、じゃばらの乾燥果皮末を抗アトピー性皮膚炎用組成物に使用することによって、ステロイド剤を使用せずとも、アレルギー性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の症状を充分軽減・治療できること、特にアレルゲン特異的刺激反応の抑制に加えて、非特異的刺激反応についても抑制できること、及びこれらの効果がナリルチンによって生じることを見出し、この発明を完成させた。
すなわち、この出願の請求項1に記載の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、フリーズドライ法によって乾燥して、熱乾燥法により乾燥したのち、粉末に粉砕して、200〜1000メッシュの篩を通過したじゃばら乾燥果皮末を有効成分として含むものである。また、請求項に記載の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、請求項に記載の抗アトピー性皮膚炎用組成物であって、80℃で熱乾燥するものである。
この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、アトピー性皮膚炎やアレルギー性皮膚炎の症状を軽減する効果に優れている。また、従来は焼却廃棄されていたじゃばら果皮が利用できるため、環境にも優しい。
図1は、ナリルチンの投与量がケモカイン(CXCL1)遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。 図2は、ナリルチンの投与量がケモカイン(CCL4)遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。 図3は、ナリルチンの投与量がインターロイキン(IL-16)遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。 図4は、ナリルチンの投与量がL-ヒスチジン脱炭酸酵素(HDC)遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。
この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、じゃばら乾燥果皮末を有効成分として含むものである。そこで、この発明の構成要素であるじゃばら乾燥果皮末、他の構成要素及び調製方法などについて以下に詳説する。
1.じゃばら乾燥果皮末
(1)じゃばら果実
この発明で使用するじゃばら果実は、特に限定することなく使用できる。中でも、単位重量当たりのナリルチンの含有量が多いことから、摘果された果実や果皮が黄変する以前の未成熟段階の果実が好ましい。ここで、未成熟段階の果実とは、具体的には、着果から3月〜4月後に摘果した果実が好ましい。なお、じゃばらは、一般的に6月ごろに着果することから、9月〜10月ごろに収穫された果実が好ましい。
(2)じゃばら果皮
じゃばら果皮は、じゃばら果実から手で剥いたもの、公知の自動皮むき機により剥いたもの、果汁圧搾機により果汁を搾った後に残る残渣などが使用できるが、手間を考えると果汁圧搾機の残渣が好ましい。
(3)乾燥方法
じゃばら乾燥果皮末は、フリーズドライ法で乾燥したのち、熱乾燥法によって乾燥することによって製造したものであり、中でも、80℃で熱乾燥したものが好ましい。このようにして製造したじゃばら乾燥果皮は、高いナリルチン濃度を維持したまま、酸化されるとアレルギー誘発物質になるリモネンが完全に除去されている。そのため、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物自身によるアレルギー等が発症する可能性をほぼ完全に無くすことができる。
(4)果皮末化
じゃばら乾燥果皮は、ボールミル等を使用する公知の粉砕方法により果皮末に加工して使用する。なお、果皮末に加工する際の粉末の大きさは、200〜1000メッシュのものである。粉末が200メッシュの篩を通らないほど大きければ、乾燥果皮末から溶出するナリルチン量が限定され、粉末が1000メッシュの篩を通り抜けるほど小さければ粉砕に手間が掛かるからである。
(5)含有量
抗アトピー性皮膚炎用組成物におけるじゃばら乾燥果皮末の含有量は、0.01〜10%(重量%、特に記載がなければ以下同じ。)であり、1〜5%が好ましい。1%以上であれば充分な効果が得られ、5%以下であれば塗り心地、安定性、色味がよいからである。
(6)その他の成分
この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、この発明の効果を損なわない範囲において、一般に化粧料、医薬部外品、医薬品等の抗アトピー性皮膚炎用組成物に使用される公知の任意成分を必要に応じて加えてもよい。
具体的には、例えば、陰イオン(高級脂肪酸アルカリ金属塩、高級脂肪酸アミン塩、アミノ酸系界面活性剤)、非イオン界面活性剤、リン脂質ステロールエステルなどの界面活性剤、炭化水素(流動パラフィン、スクワラン、ワセリンなど)、油脂(動植物油、トリグリセリド、ワックスエステル、高級アルコール、高級脂肪酸、シリコーン、エステル油、ロウ類など)など、湿潤剤(グリセリン等の多価アルコール、糖類、生体高分子、アミノ酸、ペプチド類など)、アルコール(エチルアルコール)、皮膜形成剤(ポリビニルアルコール、ぺクチン)、水溶性、油溶性高分子、エチルヘキサン酸セチル等の保湿剤、紫外線吸収剤、防腐剤(メチルパラベン、フェノキシエタノール)、抗酸化剤、増粘剤(ポリアクリルアミド、ラウレス-7、水添ポリイソブテン)、金属封鎖剤、着色剤(天然色素、合成色素)、各種香料、各種植物抽出物及び動物抽出物、ビタミン剤(油溶性ビタミン、水溶性ビタミン)、アルブチン、コウジ酸、エラグ酸、尿素、アラントイン、抗炎症剤(グルチルレチン酸、グリチルリチン酸、アズレン)、収斂剤(パラフェノールスルホン酸亜鉛)、クエン酸を含む有機酸類とその塩等、及び粉体(有機粉体、無機系粉体)などが挙げられる。
(7)調製方法
この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、化粧料、医薬部外品、医薬品等を調製する公知の方法により調製できる。具体的には、高速ホモミキサー、プラネタリーミキサー、流動式混合機などにより、抗アトピー性皮膚炎用組成物の構成成分を混合することによって調製することができる。なお、加える成分に応じて、加温や冷却しながら混合してもよい。
(8)剤型
この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、皮膚に使用するものであれば特に限定しない。具体的には、溶液系、可溶化系、乳化系、粉末分散系、水―油二層系、水―油―粉末系、水―油―シリコーン系の三層系や親水性軟膏や吸水性軟膏、ゲル系、エアゾール系など任意の剤型でよい。
(9)用途
この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、外皮に使用される化粧料、医薬部外品、医薬品等に広範囲に使用できる。具体的には、洗顔料、乳液、クリーム、化粧水、パック、美容液等のスキンケア化粧料、ファンデーションなどのベースメイクアップや口紅、アイシャドウ、アイライナーなどのポイントメークやシャンプー、リンス、コンディショナーや頭皮ケア剤などを含むヘアケア製品、浴用剤、芳香性化粧料等にも使用でき、分野別では、サンケア商品、ボディケア商品、美白商品や抗老化用商品にも使用できる。
以下に、実施例に基づいてこの発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は如何なる意味においても特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではない。
1.抗アトピー性皮膚炎用組成物アレルギー性皮膚炎等に与える影響
(1)じゃばら乾燥果皮末の調製
和歌山県和歌山市松江北のじゃばら果樹からじゃばら果実を10月末頃に採取して、その果皮を手で剥ぎ取った。剥ぎ取った果皮を-70℃のフリーズドライ法で乾燥したのち、80℃で8時間熱乾燥して乾燥果皮を得た。乾燥果皮をボールミルで粉砕して、200メッシュの篩に掛け、200メッシュの篩を通過したじゃばら乾燥果皮末を得た。
(2)抗アトピー性皮膚炎用組成物の調製
この発明に係る抗アトピー性皮膚炎用組成物を調製した。具体的には、表1に記載の成分をビーカーに入れ、ホモミキサーや攪拌機で攪拌して調製した。
Figure 0006240626
(3)抗アトピー性皮膚炎用組成物の性能試験
(2)で製造した抗アトピー性皮膚炎用組成物を、成人男女各10名(20代〜50代)の顔及び皮膚に塗布して、その性能を「使用感試験」、「刺激試験」、「肌質改善試験」により評価した。その結果を表2から表4に示す。
なお、「使用感試験」は、塗布直後の肌馴染みや塗布直後及び翌日の保湿感を被験者へのアンケートによって評価する試験である。また、「刺激試験」は塗布直後に塗布部分に感じた刺激を被験者へのアンケートによって評価する試験である。さらに、「肌質改善試験」は、1日2回30日間塗布したのち、塗布部分の症状の変化を目視により評価する試験である。
Figure 0006240626
Figure 0006240626
Figure 0006240626
表2は「使用感試験」の結果を示しており、この表から、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、皮膚の乾燥とバリア機能異常を正常に戻し、肌馴染みや、保湿感などの使用感の点で優れことが分かった。また、表3は「刺激試験」の結果を示しており、この表から、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は塗布しても皮膚に有害な刺激を与えないことが分かった。さらに、表4は「肌質改善試験」の結果を示しており、この表から、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、皮膚の乾燥とバリア機能異常を正常に戻して、肌質を改善する能力に優れ、少なくとも塗布しても症状を悪化はしないことが分かった。
(4)アトピー性皮膚炎に対する効果の確認
(2)で製造した抗アトピー性皮膚炎用組成物をアトピー性皮膚炎の患者10人の患部に朝晩2回塗布して、症状の変化を目視により調べた。なお、患者の年齢、性別、及び症状の変化を表5に示す。
Figure 0006240626
表5から、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物を患部に塗布することによって、赤い腫れ・痒みの症状(I型アレルギー)は塗布後1〜5日で改善し、好酸球の湿潤による患部の湿潤(IV型アレルギー、アトピー性皮膚炎)も塗布後5〜14日で改善した。なお、前記のように皮膚の赤い腫れ、痒み、患部の湿潤は、非特異的反応に関係しているので、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は非特異的反応の抑制にも貢献すると考えられる。
さて、一般的に、ステロイド剤は、即効性はあるものの、長期使用による弊害と副作用があり、反対に、生薬は、即効性は期待できないものの、体質改善などの体に穏やかな方法で作用するので副作用が少ない。
それにもかかわらず、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、生薬にしては、即効性が極めて高く、かつ症状の改善効果も高かった。すなわち、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は生薬の安全性と、ステロイド剤の高い即効性及び薬効を備えていることが分かった。
2.ナリルチンがアレルギー性皮膚炎等に関連する遺伝子の転写量に与える影響
じゃばら乾燥果皮末に含まれるナリルチンA及びナリルチンBが、抗アレルギー・抗炎症に関与する遺伝子の転写量に与える影響を、実験動物を使用して調べた。その詳細を以下に示す。
(1)実験動物と材料
ナリルチンは、大阪薬科大学生薬学教室谷口教授が精製したものを使用した。なお、ナリルチンは、分子式C27H32O14のS体の化合物であり、立体構造的に区別する場合、2S-ナリルチンと表記される。また、精製法によっては、ナリルチン(2S-ナリルチン)の単離過程で、R体に異性化した2R-ナリルチンが20重量%程含まれる。
そこで、本実施例では、「ナリルチン精製品(2S-ナリルチン100重量%、以下、ナリルチンAと省略する。)」及び「2R-ナリルチンを除去していない粗精製品(2S-ナリルチン80重量%及び2R-ナリルチン20重量%の混合物、以下、ナリルチンBと省略する。)」の両方を使用した。
実験動物は、NC/Ngaマウスの雌、7週齢を使用し、動物飼育施設にて1ケージあたり5匹で飼育した。飼育中の給餌は固型飼料CRF-1を給餌器に入れて自由摂取により行い、飼育中の給水は水道水を給水瓶に入れて自由摂取により行った。
(2)アレルギーモデルマウスの作製
アレルギーモデルマウスは、Yamamoto(下記の参考文献1を参照。)らの方法に従って作製した。)。具体的には、まずNC/Ngaマウスの背部及び耳介部をバリカン、電気シェーバーにて毛刈りしたのち、除毛剤エピラットを適量塗布し除毛した。除毛剤をふき取ったのち、ビオスタAD(株式会社ビオスタ製)100mgをマイクロピペットのチップ裏部で背部及び耳介部に均一に塗布した(初回惹起)。
初回惹起から3日後、7日後、10日後、14日後、17日後に再惹起を行った。具体的には、シェーバーで除毛のち、4% SDS水溶液 150μlをマイクロピペットで背部、耳介部に滴下しながらマイクロピペットのチップ裏部で均一に塗布後約2〜3時間自然に乾燥させた。乾燥させたのち、ビオスタAD 100mgをマイクロピペットのチップ裏部で背部及び耳介部に均一に塗布し、ダニアレルゲンによるアトピー性皮膚炎モデルを作製した。モデルを作製したのち、アトピー性皮膚炎の症状をスコア化し、麻酔下にてヘパリン採血により全採血した。
参考文献1:A novel atopic dermatitis model induced by topical application with dermatophagoides farinae extract in NC/Nga mice. Yamamoto M, Haruna T, Yasui K, Takahashi H, Iduhara M, Takaki S, Deguchi M, Arimura A. Allergol Int. 2007. 56: 139-148.
(3)生体外刺激(ex vivo simulation)法によるmRNA転写量の測定
アレルギーモデルマウスの白血球でしている細胞性免疫関連遺伝子のmRNA転写量をex vivo simulation法により測定した。具体的には、以下のようにして測定した。
なお、細胞性免疫関連遺伝子として、好中球走化性を促進し、皮膚の非特異的な刺激反応及び炎症に関係するケモカインCXCL1遺伝子及びケモカインCCL4遺伝子、アトピー性皮膚炎の特異的刺激反応に関連するマーカーIL-16遺伝子、痒みの原因となるヒスタミンの合成に関与するL-ヒスチジン脱炭酸酵素HDC遺伝子の転写量を測定した。
(3a)アレルゲン混合液とナリルチン溶液の調製
ダニアレルゲンDer f1及びDer f2(アサヒフードアンドヘルスケア株式会社製)を、それぞれ濃度が100μg/mlとなるように溶解・懸濁してアレルゲン混合溶液を調製した。また、ナリルチンAとナリルチンBを、血液との反応時の濃度が100μM、10μM、1μMになるようにDMSOにて溶解し、ナリルチン溶液を調製した。なお、ナリルチンを含まない溶液を実験対照として使用するため調製した。
(3b)ex vivo simulation法によるmRNA転写量の測定
ヘパリン採血したマウス全血60μlに、アレルゲン混合溶液1.2μl、及びナリルチン溶液1.2μlを添加し、37℃で4時間反応させた。このナリルチン添加マウス全血中の各遺伝子のmRNAの転写量を、Mitsuhashiの方法(下記の参考文献2を参照。)に従って測定した。具体的には次のようにして行った。
まず、ナリルチン添加マウス全血を、全血から白血球だけを捕獲する96ウェルのフィルタープレートに通過させた。細胞溶解液をフィルタープレートの各ウェルに加え、フィルタープレートに捕獲された白血球を溶解した。なお、細胞溶解液は、測定対象となる遺伝子のmRNAアンチセンスプライマーの何れかを一つを含んでいる。
つぎに、遠心操作によって、フィルタープレート上の細胞溶解液を96ウェルのオリゴ(dT)プレートに移して、細胞溶溶解液中のmRNAとウェル中のオリゴdTとをハイブリダイゼーションさせたのち、オリゴ(dT)プレートの各ウェルを吸引ノズルで洗浄してmRNAを精製した。
各ウェルに直接逆転写酵素とdNTPを加えて、既にmRNAにハイブリダイゼーションしているオリゴ(dT)とアンチセンスプライマーを起点として、2個所から同時にcDNAを合成した。各ウェルにDNAポリメラーゼを加えて、リアルタイムPCRによりmRNAの転写量の変化を測定し、ナリルチンの濃度の違いがmRNAの転写量に与える影響を比べた。その結果を図1から図4に示す。なお、図1から図4の縦軸は、ナリルチンの投与量が0μMの場合のmRNAの転写量を1.0としたときの相対値である。
参考文献2:Mitsuhashi M. Ex vivo simulation of leukocyte function: stimulation of specific subset of leukocytes in whole blood followed by the measurement of function-associated mRNAs. J Immunol Methods. 2010, 363: 95-100.
(4)実験結果
図1は、ナリルチンの投与量が、ケモカインCXCL1遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。また、図2は、ナリルチンの投与量が、ケモカインCCL4遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。さらに、図3は、ナリルチンの投与量が、インターロイキンIL-16遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。加えて、図4は、ナリルチンの投与量がL-ヒスチジン脱炭酸酵素HDC遺伝子の転写量に与える影響を示すグラフである。
図1から図3に示すように、ナリルチンの血中濃度が1μMという低濃度でも細胞性免疫に係る遺伝子の転写が充分低下しており、特に、ケモカインCXCL1遺伝子(図1)は1μMでも殆どしていないといえる程度まで転写量が低下していることが分かった。
また、図4に示すように、痒みの原因であるヒスタミンの合成と関連するL-ヒスチジン脱炭酸酵素HDC遺伝子の転写量も低下していた。このことから、ナリルチンの投与によってアトピー性皮膚炎での痒み症状が抑制され、患者のQOLを向上できると考えられる。以上の結果から、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物はアレルギー皮膚炎やアトピー性皮膚炎に対して高い効果を有すると推測できる。
以上のように、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は、(1)皮膚の乾燥とバリア機能異常を正常に戻し(表2及び表4を参照。)、(2)皮膚の非特異的な刺激反応及び炎症を抑え(表5、図1及び図2を参照。)、(3)痒みを抑える(表5及び図4を参照。)ことによって、アトピー性皮膚炎の特異的刺激と非特異的刺激の何れも抑制できることが明らかになった。すなわち、この発明の抗アトピー性皮膚炎用組成物は生薬の安全性と、ステロイド剤の高い即効性及び薬効を備えていることが分かった。

Claims (2)

  1. フリーズドライ法によって乾燥して、熱乾燥法により乾燥したのち、粉末に粉砕して、200〜1000メッシュの篩を通過したじゃばら乾燥果皮末を有効成分として含む抗アトピー性皮膚炎用組成物。
  2. 80℃で熱乾燥する請求項に記載の抗アトピー性皮膚炎用組成物。
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