以下、本発明に係る実施形態の鞍乗り型車両1について、前述する図面を参照して説明する。以下の説明で用いる方向の概念は、運転者Rが鞍乗り型車両1に乗車して前方を見た際の方向を基準としているが、便宜上使用するものであって発明の構成の向き等をその方向に限定するものではない。また、以下に説明する鞍乗り型車両1は、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は実施の形態に限定されず、発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除、変更が可能である。
図1に示す鞍乗り型車両1は、運転者Rが鞍乗りして乗車することができる車両であり、車体2と、後輪3と、前輪4とを備えている。車体2は、基本的に車体フレーム5と、後輪アーム6と、前輪アーム7とによって構成されている。車体フレーム5は、左右一対のヘッドフレーム8を有しており、一対のヘッドフレーム8は、左右方向(即ち、車幅方向)に離した状態で車体フレーム5の前側に位置しており、前下がりに傾斜するように夫々延在している。
一対のヘッドフレーム8の上端部には、アッパーフレーム9が夫々設けられ、一対のヘッドフレーム8の下端部には、ロアフレーム10が夫々設けられている。一対のアッパーフレーム9及び一対のロアフレーム10は、ヘッドフレーム8の上端部及び下端部から後方に夫々延在し、上下方向に離して配置されている。一対のアッパーフレーム9には、車体フレーム5を上方から覆うドーム状のカウル15が取り付けられ、更にカウル15の後方(具体的には、後述するリアフレーム14付近)にシート16が取り付けられている。シート16は、ライダーが跨いで着座できる(即ち、鞍乗りできる)ように構成されている。
また、アッパーフレーム9及びロアフレーム10の前側部分は、フロントガセットフレーム11によって連結され、それらの後端部には、クロスフレーム12,13を介してリアフレーム14が固定されている。リアフレーム14の前側部分は、二股に分かれており、各々の部分がクロスフレーム12,13を介してアッパーフレーム9及びロアフレーム10に固定されている。リアフレーム14は、その上方がシート16によって覆われており、その後側部分には、後輪アーム6が取り付けられている。
後輪アーム6は、リアフレーム14から後ろ下がりに傾斜するように延在しており、その前端部分が車幅方向に延びる後輪側角変位軸線L1(後輪側角変位軸線)回りに回動可能にリアフレーム14に取り付けられている。つまり、後輪アーム6は、車体フレーム5に角変位可能に取り付けられている。また、後輪アーム6の後端部分には、後輪3(第3の車輪)が回転可能に支持されている。このように構成されている後輪アーム6は、中空になっており、その内には、電気モータ19及び動力伝達機構(例えば、ギヤ機構やベルト)が収容されている。
駆動源である電気モータ19は、動力伝達機構を介して従動輪である後輪3に繋がっており、更に蓄電ユニット20に電気的に接続されている。蓄電ユニット20は、車体フレーム5内、具体的にはアッパーフレーム9とロアフレーム10とによって囲まれた空間に収容されている。蓄電ユニット20は、インバータ21を備えており、このインバータ21によって蓄えた電力を直流から交流に変換して電気モータ19に供給するように構成されている。電気モータ19は、電力が供給されると回転駆動力を発生するようになっている。発生した回転駆動力は、動力伝達機構を介して後輪3に伝達され、この回転駆動力によって後輪3が回転するようになっている。
このように構成されている後輪3は、前述の通り、後輪アーム6に回転可能に支持している。後輪アーム6は、車体フレーム5に対して角変位可能に取り付けられており、車体フレーム5は、図3に示すように一対の支持フレーム18を有している。各支持フレーム18は、ロアフレーム10の中間部から車体フレーム5の車幅方向中央に向かって後方に延びており、一対の支持フレーム18の後端部には、姿勢変更機構22が取り付けられている。
姿勢変更機構22は、車体フレーム5に対する後輪アーム6の取付角度を調整するように構成されており、リンク部材23を有している。リンク部材23は大略くの字形状をしており、その中間部分に位置する屈曲点が一対の支持フレーム18に挟み込まれるように支持されている。リンク部材23は、一対の支持フレーム18に対して車幅方向に延在する角変位軸線L2を中心に角変位するようになっており、その屈曲点から上下方向に夫々延在するように配置されている。リンク部材23の下端部には、ダンパ及びスプリングによって構成されているサスペンション24がクロスフレーム13に架け渡すように取り付けられている。
サスペンション24は、衝撃を吸収するように構成されており、平面視で車体フレーム5の車幅方向の中心軸線L3(図1参照)に沿い且つ側面視でロアフレーム10と平行になるように配置されている。サスペンション24の一端部は、車幅方向に延びる軸線を中心に回動可能にリンク部材23の下端部に取り付けられている。また、サスペンション24の他端部は、一対のロアフレーム10を連結しているクロスフレーム13の取付け部13aに回動可能に取り付けられている。
リンク部材23の上端側は、屈曲点より上側で二股状に枝分かれして一対の支持部23a,23aを構成しており、各支持部23aが後方に向かって斜めに伸びている。この支持部23a,23aの上端部には、後輪アーム6との間で架け渡すようにアクチュエータ25が夫々取り付けられている。一対のアクチュエータ25は、いわゆるシリンダ機構である。ロッド25bは、シリンダ25aとロッド25bとを夫々有しており、シリンダ25aは、支持部23aの上端部に回動可能に夫々取り付けられている。シリンダ25a内には、ロッド25bの一端が進退可能に挿入されており、他端側が後輪アーム6の方へと延在している。後輪アーム6には、その前端部分の左右両側に取付部6aが形成されており、取付部6aは、下方に延延在している。ロッド25bの他端は、この取付部6aに回動可能に取り付けられている。このように構成されているアクチュエータ25は、シリンダ25a内に圧油を供給することでロッド25bがシリンダ25aに対して進退して伸縮するようになっている。なお、アクチュエータ25は、必ずしもシリンダ機構である必要はなく、ボールねじ機構等の直動機構であってもよい。
このように構成されている姿勢変更機構22は、アクチュエータ25を伸縮させることで、車体フレーム5に対する後輪アーム6の取付角度を調整することができるようになっている。例えば、アクチュエータ25を伸長させると、右側面視で後輪アーム6が後輪側角変位軸線L1を中心に時計回り方向A1に回動し、アクチュエータ25を収縮させると、右側方から見て後輪アーム6が後輪側角変位軸線L1を中心に反時計回り方向B1に回動するようになっている。さらに詳細に説明すると、アクチュエータ25を収縮させると、図4に示すように車体フレーム5と後輪アーム6とのなす角θ1が小さくなり、図5に示すように後輪3が車体フレーム5に近づく。そうすると、車体フレーム5の後側部分(即ち、リアフレーム14)が上方に持ち上げられ、更にリアフレーム14の上方(具体的には、後輪側角変位軸線L1の上方)に位置するシート16もリアフレーム14と共に上方に持ち上げられる。この状態から図3に示すようにアクチュエータ25を伸長させると、車体フレーム5と後輪アーム6とのなす角θ1が大きくなり、図1に示すように後輪3が車体フレーム5から方向に離れていく。これにより、リアフレーム14が下降し、更にリアフレーム14と共にシート16下降する。このように鞍乗り型車両1では、車体フレーム5の後端側に配置されたシート16を昇降可能に構成されている。
また、姿勢変更機構22のアクチュエータ25は、リンク部材23及びサスペンション24を介して車体フレーム5に取付けられており、サスペンション24は、アクチュエータ25が前後方向に若干動けるように伸縮するようになっている。そのため、後輪アーム6は、アクチュエータ25によって設定された取付角度に対して後輪側角変位軸線L1回りの揺動が許容されており、後輪3が路面から衝撃を受けた際に、車体フレーム5に対して後輪アーム6が揺動するようになっている。また、前記衝撃は、路面から後輪アーム6及び姿勢変更機構22を介して車体フレーム5に伝わるようになっている。サスペンション24は、衝撃を減衰するダンパ機能を有しており、このような路面から車体フレーム5に伝わる衝撃を吸収するようになっている。
このように姿勢変更機構22は、後輪アーム6の取付角度を調整すると共に路面から車体フレーム5に伝わる衝撃を緩和するようになっている。このような機能を有する姿勢変更機構22は、車体フレーム5の後端側、具体的には一対のロアフレーム10の後端側に取付けられており、更にこの付近には、図1に示すようにステップ機構17が左右に1つずつ取り付けられている。
左右一対のステップ機構17は、ステップ支持部材17aと、ステップ17bとを夫々有している。ステップ支持部材17aは、大略後斜め下方に延在する板状の部材であり、その上端部が車幅方向に伸びる軸線回りに角変位可能にロアフレーム10に取付けられている。ステップ支持部材17aの下端部には、そこから車幅方向外方へと突出するようにステップ17bが取り付けられており、ステップ17bは、シート16に跨った運転者Rがその足を置くことができるようになっている。ステップ17bは、運転者Rがシート16に跨って前傾姿勢になった状態でその足を置きやすいような位置(即ち、後方位置)にくるように配置されている。なお、後方位置は、シート16の直下でシート16の後寄りの位置である。
また、ステップ支持部材17aは、後述するステップ位置変更機構48が発生する駆動力によって大略前斜め下方に延在する位置まで角変位できるようになっている。この状態では、ステップ17bは、前方位置に配置されており、その位置では、運転者Rがシート16に跨って直立姿勢になった状態でその足を置きやすくなっている。なお、前方位置は、シート16の直下でシート16の前寄りの位置である。このように、ステップ機構17が取り付けられている車体フレーム5の前端部分には、左右一対の前輪アーム7,7が取り付けられている。
各前輪アーム7,7は、左右対称に構成され、一対のヘッドフレーム8の各々に角変位可能に取付けられている。以下では、他の構成と同様に、一方の前輪アーム7(具体的には、右側の前輪アーム7)の構成についてだけ説明し、他方の前輪アーム7(具体的には、左側の前輪アーム7)の構成については、一方の前輪アーム7の各構成と同一の符号を付して説明を省略する。なお、図6〜図8では、説明の便宜上、他方の前輪アーム7及びカウル15を取り外した状態で鞍乗り型車両1を示している。
図6に示すように、前輪アーム7は、円筒状のステアリングシャフト26を有しており、ステアリングシャフト26は、右側のヘッドフレーム8の軸線(即ち、上下方向に延在し且つ斜め後ろに若干傾斜するアーム軸線L4)回りに角変位可能にヘッドフレーム8に外装されている。ステアリングシャフト26には、上下方向に間隔をあけて上側アーム部27及び下側アーム部28が夫々設けられている。上側アーム部27及び下側アーム部28は、互いに平行し且つ車幅方向に伸びる前輪側角変位軸線L5,L6回りに夫々揺動可能にステアリングシャフト26に取付けられている。これら2つのアーム部27,28は、ステアリングシャフト26から前方に延在しており、2つのアーム部27,28の前端部は、それらに回動可能に取り付けられたナックル29によって連結されている。
ナックル29には、センターハブ30が取り付けられており、センターハブ30は、斜め後ろに傾斜しながら上方に伸びるステアリング軸線L7回りに回動可能にナックル29に支持されている。センターハブ30には、円柱棒状の前輪用車軸31が挿通されて固定されており、前輪用車軸31は、センターハブ30から車幅方向外方に延在している。前輪用車軸31の中間部分には、図示しない軸受を介して前輪4が回転可能に取り付けられている。このように一対の前輪4,4は、左右対称に形成されている一対の前輪アーム7,7の各々に別々に取り付けられており、車幅方向に並んだ状態で車体2の前端に回転可能に取り付けられている。また、一対の車輪である一対の前輪4,4は、車体2の前端に取付けられることによって後輪3から後方に離して配置され、これによってシート16が一対の前輪4,4と後輪3との間に挟まれるようにして配置されている。また、前輪4が取り付けられている前輪用車軸31の先端部分には、ハンドルステム32が夫々固定されている。
ハンドルステム32は、板状の部材であり、前輪用車軸31の先端部分から斜め後ろに傾斜するように上方に伸びている。ハンドルステム32の上側部分には、ハンドルグリップ33が設けられており、ハンドルグリップ33は、車幅方向内方に向かって突出するように延在している。また、ハンドルステム32は、その幅方向にスライドしながら長手方向に伸縮するようになっており、ハンドルステム32内には、ハンドル位置変更機構34が内蔵されている。ハンドル位置変更機構34は、例えば電子サスペンション機構、シリンダ機構及びボールねじ機構等によって構成されており、入力される信号に応じて駆動してハンドルステム32をスライド及び伸縮させるようになっている。このようにハンドルステム32をスライド及び伸縮させることで、シート16に対するハンドルグリップ33の位置を変えることができる。このように構成されているハンドルステム32は、前輪用車軸31を介して一対の前輪アーム7,7の各々に取付けられており、一対の前輪アーム7には、更に車輪間隔変更機構35、ステアリング機構36、及び電子制御サスペンション37が設けられている。
図7に示す車輪間隔変更機構35は、一対の前輪4,4の間の車幅方向の間隔を変えられるようになっており、例えば、ダンパ機構等の伸縮可能な部材によって構成されている。本実施形態では、車輪間隔変更機構35は、ダンパ機構によって構成されており、ダンパ本体35aを有している。ダンパ本体35aは、車幅方向に延在するように車体フレーム5に固定されており、ダンパ本体35aの両端部からは、ロッド35b,35cが車幅方向外方に突出している。ロッド35b,35cは、ダンパ本体35aに対して進退可能に構成されており、ダンパ本体35aに圧油及び空気等の流体が供給されるとダンパ本体35aに対してロッド35b,35cが進退するようになっている。これにより、車輪間隔変更機構35が伸縮するようになっている。また、2つのロッド35b,35cの先端部分は、一対の前輪アーム7,7のステアリングシャフト26に夫々取り付けられており、車輪間隔変更機構35は、一対の前輪アーム7,7のステアリングシャフト26の後側に架け渡すように取り付けられている。
このように構成されている車輪間隔変更機構35は、それを伸縮させることによって一対の前輪アーム7,7を各々のアーム軸線L4回りに角変位させるようになっており、角変位することで2つの前輪アーム7,7のなす角θ2が変わるようになっている。つまり、車輪間隔変更機構35を伸長させた状態では、一対の前輪アーム7,7が互いに近接するように中心軸線L3に略平行に配置されている。これにより、一対の前輪4,4が図2及び図8に示すように互いに近接した状態で車幅方向に並んで配置される。また、このような閉状態から車輪間隔変更機構35を収縮させると、平面視で右側の前輪アーム7が時計回りに角変位し、また左側の前輪アーム7を反時計回りに角変位する。これにより、近接状態にあった一対の前輪アーム7,7のなす角θ2を大きくすることができ、一対の前輪4,4の間を拡げることができる(図9参照)。更に、このような開状態から車輪間隔変更機構35を伸長させると、右側の前輪アーム7が反時計回りに角変位し、また左側の前輪アーム7を時計回りに角変位する。これにより、先端部分が離していた一対の前輪アーム7,7のなす角θ2を小さくすることができ、一対の前輪4,4の間を狭めることができる(図8参照)。このように、車輪間隔変更機構35は、一対の前輪アーム7,7を角変位させて一対の前輪4,4の間の間隔を変更できるように構成されている。
図6に示すように、操舵装置であるステアリング機構36は、前輪4のステアリング角を調整するものであり、例えば、シリンダ機構等の直動アクチュエータによって構成されている。本実施形態において、ステアリング機構36は、シリンダ機構によって構成されており、ステアリングシリンダ36aとステアリングロッド36bとを有している。ステアリングシリンダ36aは、上側アーム部27に沿って延在しており、その一端がボールジョイントを介してステアリングシャフト26に連結されている。ステアリングシリンダ36aの他端には、ステアリングロッド36bが進退可能に挿入されており、ステアリングロッド36bの前端部は、ボールジョイントを介してセンターハブ30に連結されている。このように構成されているステアリング機構36では、ステアリングシリンダ36aに油圧が供給されると、ステアリングロッド36bがステアリングシリンダ36aに対して進退する。これにより、センターハブ30がステアリング軸線L7回りに角変位し、前輪4のステアリング角が切換わるようになっている。また、鞍乗り型車両1では、前輪4のステアリング角の切換えと共に切換えた方向に車体2を車幅方向に傾斜させる、即ちリーンさせる機能を有しており、その機能を達成すべく電子制御サスペンション37を有している。
車体傾斜機構である電子制御サスペンション37は、ダンパ37aを有しており、このダンパ37aが上側アーム部27とステアリングシャフト26とに架け渡すように取り付けられている。電子制御サスペンション37は、ダンパ37aに圧油が供給されることで伸縮するようになっており、電子制御サスペンション37が伸縮することで、上側アーム部27が前輪側角変位軸線L5回りに夫々角変位するようになっている。これにより、電子制御サスペンション37によって一対の前輪アーム7,7を角変位させることができ、例えば一対の前輪アーム7,7を互いに反対方向に角変位させる(または、一対の前輪アーム7,7の各々を異なる角変位角で角変位させる)ことで車体2をリーンさせることができるようになっている。また、電子制御サスペンション37は、図示しないスプリングを有しており、このスプリングとダンパ37aとによって、路面から前輪4及び上側アーム部27を介して車体フレーム5に伝わる衝撃を緩和するようになっている。このように、衝撃を緩和する機能も有しているので、衝撃を緩和させるべく新たな機構を設ける必要がなく、部品点数の低減を可能にしている。
このように構成されている鞍乗り型車両1は、その形態を高速形態と低速形態とに変更できるようになっている。高速形態では、図1に示すように鞍乗り型車両1の姿勢が高速姿勢(いわゆる、第2姿勢)になっており、図2に示すように一対の前輪4,4の間の間隔が後で詳述する低速形態のときよりも狭くなっている。高速姿勢とは、後輪アーム6を車体フレーム3から後方に離すように角変位させた姿勢であり、低速姿勢に対して後輪3(第3の車輪)と一対の前輪4,4との前後方向距離(即ち、ホイールベース)が長い姿勢である。また、高速姿勢では、後輪アーム6を角変位させることによって、シート16が低速姿勢の時より低く位置している。
このような高速姿勢をとっている高速形態では、一対の前輪4,4が正面から見て車体フレーム5の車幅方向外縁より内側に収まるように車幅方向に隣接させて配置されており、一対の前輪4,4の間の車幅方向の間隔(以下、「単に一対の前輪4,4の間の間隔」ともいう)は、おおよそ一対の前輪アーム7,7の左右幅と略同じになっている。更に、高速形態では、運転者Rから一対のハンドルグリップ33,33を遠ざけるように一対のハンドル位置変更機構34がハンドルステム32をスライドさせて収縮させている。これにより、一対のハンドルグリップ33は、図1に示すように前傾姿勢でシート16に跨る運転者Rの胸の辺りに位置するようになっており、運転者Rが前傾姿勢のままで一対のハンドルグリップ33を把持できるようになっている。また、高速形態では、一対のステップ機構17は、大略後斜め下方に延在し、ステップ17bが後方位置に配置されている。これにより、運転者Rが前傾姿勢の状態でステップ17bにその足を乗せることができるようになっている。
このような高速形態では、シート16が低く設定されているので走行中の空気抵抗を小さくすることができ、またホイールベースが長いので走行時の直進性が向上する。即ち、高速走行時における鞍乗り型車両1の走行安定性が向上する。また、一対の前輪4,4の間の間隔を狭めることで、走行風が当たる鞍乗り型車両1の面積を小さくすることができる、即ち走行中の鞍乗り型車両1の空気抵抗を低減することができる。更に、ハンドルグリップ33を前傾姿勢の運転者Rの胸の辺りに配置し、且つステップ17bを運転者Rの後方に配置することで前傾姿勢を取りやすくしており、運転者Rが前傾姿勢を取りやすくしている。更に、前傾姿勢にすることで、後述する運転者Rが直立姿勢でシート16に跨る場合に比べて走行時の空気抵抗を低減することができる。
他方、低速形態では、図3に示すように鞍乗り型車両1の姿勢が低速姿勢(いわゆる、第1姿勢)になっており、図10に示すように一対の前輪4,4の間の間隔が後述する高速形態のときよりも広くなっている。低速姿勢とは、後輪アーム6を車体フレーム5の方へと角変位させた姿勢であり、高速姿勢に対してホイールベースが短くなっている。また、低速姿勢では、後輪アーム6を角変位させることによって、シート16が高速姿勢の時より高く位置している。
このような低速姿勢をとっている低速形態では、一対の前輪4,4が離して配置されており、一対の前輪4,4の間の間隔が車体フレーム5の車幅と略同じくらいになっている。即ち、一対の前輪4,4が車体フレーム5の車幅方向外側に夫々位置している。更に、低速形態では、ハンドル位置変更機構34によってハンドルステム32を運転者Rに向かってスライドさせて伸長させている。これにより、図5に示すように、一対のハンドルグリップ33が直立姿勢でシート16に跨る運転者Rの腰から胸までの間に位置し、運転者Rが直立姿勢のままで一対のハンドルグリップ33を把持できるようになっている。また、低速形態では、一対のステップ機構17は、大略前斜め下方に延在し、ステップ17bが前方位置に配置されている。これにより、運転者Rが直立姿勢の状態でステップ17bにその足を乗せることができるようになっている。
このような低速形態では、シート16が高く設定されているので運転者Rの前方の視認性が向上し、またホイールベースが短いので鞍乗り型車両1の最小回転半径を小さくすることができる。即ち、鞍乗り型車両1の旋回性を向上させることができる。また、一対の前輪4,4の間の間隔を広げることで、鞍乗り型車両1が路面と広い間隔で3点で設置するようになり、停止時や低速走行時等において鞍乗り型車両1が転倒することを防ぐことができる。更に、ハンドルグリップ33を運転者Rの腰から胸の間に配置し、且つステップ17bを運転者Rの直下に配置することで直立姿勢を取りやすくしており、運転姿勢に起因する疲れを低減することができる。
このように2つの形態をとることができる鞍乗り型車両1は、アクチュエータ25等の構成を駆動させることによって2つの形態の間で変形できるようになっており、アクチュエータ25等の構成を駆動させるべく図12に示すような複数の供給装置41〜44を備えている。各供給装置41〜44は、アクチュエータ25のシリンダ25a、車輪間隔変更機構35のダンパ本体35a、ステアリング機構36のステアリングシリンダ36a、及び電子制御サスペンション37のダンパ37aに夫々接続されている。第1供給装置41は、圧油をシリンダ25aに供給し、アクチュエータ25を伸縮するようになっている。また、第2供給装置42は、圧油をダンパ本体35aに供給し、車輪間隔変更機構35を伸縮するようになっている。更に、第3供給装置43は、圧油をステアリングシリンダ36aに供給し、ステアリング機構36を伸縮するようになっている、そして、第4供給装置44は、圧油をダンパ37aに供給し、電子制御サスペンション37を伸縮させるようになっている。このように構成されている各供給装置41〜44は、電子制御装置45に電気的に接続されている。
電子制御装置45は、各供給装置41〜44の動作を制御するように構成され、更に形態変更操作子46及び一対のステアリング操作子47,47に電気的に接続されている。姿勢操作子であり、また間隔操作子である形態変更操作子46は、鞍乗り型車両1の形態の変更に関する指令を入力するための操作子であり、ボタン又はタッチパネルによって実現することができる。また、操舵用操作子である一対のステアリング操作子47は、鞍乗り型車両1の進行方向、例えば右又は左を入力するための操作子であり、ボタンによって実現することができる。これらの操作子46,47は、シート16に跨って乗車している状態で運転者Rが操作できる位置に配置されており、例えば、シート16と一対の前輪4,4との間であって、一対の前輪アーム7,7より上方に位置している。本実施形態では形態変更操作子46がハンドルステム32の車幅方向内側の面に配置され、ステアリング操作子47は左右一対のハンドルグリップ33に夫々取付けられている。
操作子46,47は、操作されることで形態変更信号(姿勢変更信号及び間隔変更信号)、及びステアリング信号(傾斜信号)を電子制御装置45に夫々出力するようになっている。電子制御装置45は、形態変更操作子46から形態変更信号が出力されると、形態変更信号に応じて第1供給装置41及び第2供給装置42の動作を制御し、ステアリング操作子47からステアリング信号が出力されると、ステアリング信号に応じて第3供給装置43及び第4供給装置44の動作を制御するようになっている。
また、電子制御装置45は、図示しないがインバータ21に電気的に接合されており、アクセル(図示せず)に応じたトルクが電気モータ19から出力されるようにインバータ21の動作を制御するようになっている。更に、電子制御装置45は、ハンドル位置変更機構34及びステップ位置変更機構48に電気的に接続されており、形態変更操作子46からの形態変更信号に応じて、ハンドル位置変更機構34及びステップ位置変更機構48の動きを制御するようになっている。ステップ位置変更機構48は、例えばシリンダ機構又はサーボモータによって構成されており、駆動力を発生してステップ機構17のステップ支持部材17aを角変位するようになっている。
このように構成されている電子制御装置45は、形態変更信号に応じて鞍乗り型車両1の形態を変更し、またステアリング信号に応じて一対の前輪4,4のステアリング角を切換え且つ車体2をリーンさせるようになっている。以下では、鞍乗り型車両1の形態を変更する際の各構成の動作を説明し、次に一対の前輪4,4のステアリング角を切換え且つ車体2をリーンさせる際の各構成の動作について説明する。
電子制御装置45は、図5及び図10に示す低速形態において運転者Rによって形態変更操作子46が操作されると、第1供給装置41の動作を制御してアクチュエータ25を伸長させる。これにより、後輪アーム6が車体フレーム5に対して遠ざかるように角変位し、ホイールベースが長くなり且つシート16が下がる。そして、後輪アーム6と車体フレーム5とのなす角θ1が予め定められた角度に達すると、電子制御装置45は第1供給装置41を停止させる。このように後輪アーム6を角変位させることで、鞍乗り型車両1が低速姿勢から高速姿勢へと切り替えられる。
また、電子制御装置45は、このような姿勢変形に連動させて(本実施形態では、姿勢変形と同時に)一対の前輪4,4の間の間隔を変更するようになっている。即ち、電子制御装置45は、形態変更操作子46が操作されると、第2供給装置42の動作を制御して収縮している車輪間隔変更機構35を伸長させる。これにより、一対の前輪アーム7,7が互いに近接する方向に角変位し、一対の前輪4,4の間の間隔が狭められる。そして、一対の前輪アーム7,7のなす角θ2が予め定められた角度に達する、本実施形態では一対の前輪アーム7,7が略平行になると、電子制御装置45は第2供給装置42を停止させる。
更に、電子制御装置45は、姿勢変形及び間隔変更に連動させて(本実施形態では、それらと同時に)、ハンドルステム32をスライド及び収縮させ、且つステップ機構17を角変位させるようになっている。具体的に説明すると、電子制御装置45は、形態変更操作子46が操作されると、ハンドル位置変更機構34の動作を制御して、伸長しているハンドルステム32を前輪4側にスライドさせると共に収縮させる。更に、電子制御装置45は、ステップ位置変更機構48の動作を制御してステップ機構17を右側面視で時計回りに角変位させ、ステップ17bを後方位置へと移動させる。このように鞍乗り型車両1の姿勢を変更すると共に一対の前輪4,4の間の間隔、ステップ17bの位置、及びハンドルグリップ33の位置を変更することで、鞍乗り型車両1は低速形態から高速形態へと切り替えられる。
また、高速形態において形態変更操作子46が操作されると、電子制御装置45は、鞍乗り型車両1の形態を高速形態から低速形態に変更すべく、第1供給装置41及び第2供給装置42の動作を制御してアクチュエータ25及び車輪間隔変更機構35を収縮させる。これにより、後輪アーム6が車体フレーム5から後方に遠ざかるように角変位し且つ一対の前輪アーム7,7が互いに離れる方向に角変位し、鞍乗り型車両1の姿勢が高速姿勢に変わり且つ一対の前輪4,4の間の間隔が広げられる。
更に、電子制御装置45は、形態変更操作子46が操作されると、ハンドル位置変更機構34の動作を制御してハンドルステム32を車体フレーム5側にスライドさせると共に伸長させる。更に、電子制御装置45は、ステップ位置変更機構48の動作を制御してステップ機構17を右側面視で反時計回りに角変位させ、ステップ17bを前方位置へと移動させる。このように鞍乗り型車両1の姿勢を変更すると共に一対の前輪4,4の間の間隔、ステップ17bの位置、及びハンドルグリップ33の位置を変更することで、鞍乗り型車両1は高速形態から低速形態へと切り替えられる。
このように形態を変更可能な鞍乗り型車両1では、ステアリング操作子47が操作されると、操作されたステアリング操作子47が配置されているハンドルグリップ33側の方向に一対の前輪4,4を向けるべく、電子制御装置45は、第3供給装置43の動作を制御する。例えば、左側のハンドルグリップ33に取付けられたステアリング操作子47(即ち、左側のステアリング操作子47)が操作されると、電子制御装置45は、一対の前輪4,4を左方に向けるべく第3供給装置43の動作を制御し、左側のステアリング機構36を収縮させ、且つ右側のステアリング機構36を伸長させる。なお、右側のハンドルグリップ33に取付けられたステアリング操作子47(即ち、右側のステアリング操作子47)が操作されると、電子制御装置45は、一対の前輪4,4を右方に向けるべく第3供給装置43の動作を制御する。このように、電子制御装置45は、ステアリング操作子47の操作に応じて一対の前輪4,4のステアリング角を調整する。
このようにステアリング角を調整する電子制御装置45は、ステアリング角を制限する制限装置であり、一対の前輪4,4の間の間隔に応じて調整可能なステアリング角の範囲を制限している、即ち、調整可能な最大ステアリング角を規制している。例えば、一対の前輪4,4の間の間隔が狭い場合は、最大ステアリング角を小さくし、一対の前輪4,4の間の間隔が広い場合は最大ステアリング角を大きく設定するようにしている。これにより、一対の前輪4,4の間の間隔が狭くて一対の前輪4,4が近接する際にステアリング角を調整する場合であっても、一対の前輪4,4同士が接触することを防ぐことができる。
また、電子制御装置45は、ステアリング角を調整すると同時に第4供給装置44の動作を制御し、操作されたステアリング操作子47側(即ち、進行方向側)へと車体2をリーンさせるようになっている。具体的には、電子制御装置45は、ステアリング操作子47の操作に応じて進行方向側の電子制御サスペンション37を収縮させ、進行方向と逆側の電子制御サスペンション37を伸長させるようになっている。例えば、右側に曲がるために、右側のステアリング操作子47が操作されると、電子制御装置45は、図11に示すように右側の電子制御サスペンション37が収縮させ、右側の電子制御サスペンション37を伸長させる。これにより、車体2を左側へとリーンさせることができ、ステアリング角の調整と連動させることで車体2をリーンさせない場合に比べて小さなステアリング角で鞍乗り型車両1の進行方向を切換えることできる。
このように構成されている鞍乗り型車両1は、姿勢変更機構22が車体フレーム5に対して後輪アーム6を角変位させることで、ホイールベース及びシート16の高さを変更することができる。これにより、姿勢変更するための機構に関して部品点数を低減することができる。また、鞍乗り型車両1は、一対の前輪4,4の間の間隔を狭めたり広げたりすることで、低速時や停止時であっても転倒しにくく車体2が安定している安定モード(即ち、低速形態)と、走行中の空気抵抗を低減することができる空気抵抗低減モード(即ち、高速形態)とに切換えることができる。
また、後輪3及び前輪4は、サスペンション24及び電子制御サスペンション37を介して車体フレーム5に連結されており、サスペンション24及び電子制御サスペンション37は、衝撃を吸収することができるように構成されている。それ故、路面から後輪アーム6及び前輪アーム7を介して車体フレーム5に伝わる衝撃をサスペンション24及び電子制御サスペンション37によって吸収させることができる。これにより、運転者Rの乗り心地を向上させることができる。
また鞍乗り型車両1では、車体フレーム5がリアフレーム14側からヘッドフレーム8側に向かって前下がりとなっており、車体フレーム5内に配置されている蓄電ユニット20もまた前下がりとなっている。また、後輪アーム6がリアフレーム14が後下がりとなっているので、リアフレーム14の下方、即ち後輪側角変位軸線L1の下方に空間を確保することができる。これにより、後輪3を車体フレーム5から離して配置することができ、後輪3が車体フレーム5に当たることを防ぐことができる。
この後輪3の前端は、低速姿勢において後輪側角変位軸線L1より前側に位置し、高速姿勢において後輪側角変位軸線L1より後方に位置している。また、後輪3の上端は、低速姿勢において後輪側角変位軸線L1より下方に位置し、高速姿勢において後輪側角変位軸線L1より上方に位置している。このように後輪3を配置することによって、低速姿勢においてシート16を高い位置に移動させることができる。更に、後輪3が前輪4より大径に形成されているので、高速姿勢において車体2を前下がりにしやすく、運転者Rに前傾姿勢をとらせやすくなっている。
また、鞍乗り型車両1では、前輪アーム7がヘッドフレーム8に角変位可能に取り付けられているので、一対の前輪4,4の位置だけを変える場合に比べて構造を簡単にすることができる。更に、前輪アーム7がヘッドフレーム8に角変位可能に取り付けられているので、ヘッドフレーム8と前輪4との距離を一定に保つことができる。これにより、ステアリングロッド36bを有するステアリング機構36によって前輪4のステアリング角を変更することができ、ステアリング機構36の構造を簡単にすることができる。
また、ハンドルステム32を前輪用車軸31の外側端部に配置することで、一対のハンドルグリップ33,33が車幅方向に離して配置されている。それ故、運転者Rは、安定した姿勢をとらせやすくすることができる。他方、一対のハンドルグリップ33の間の間隔も狭まることで、空気抵抗を受けにくい姿勢を運転者Rにさせることができる。更に、一対のハンドルグリップ33,33は、ハンドルステム32を介して前輪用車軸31の外側端部に設けられているので、一対の前輪4,4と一緒に動かすことができ、一対のハンドルグリップ33,33を動かすための機構を別途設けなくてもよい。これにより、部品点数を低減することができる。
また、鞍乗り型車両1では、駆動輪である後輪3の駆動源として電気モータ19が採用されている。電気モータ19を採用することにより、ホイールベースを変えるべく車体2の姿勢を変更させる際に電気モータ19の姿勢が変わってもエンジン等と異なり液漏れ等を起こさない。それ故、鞍乗り型車両1の設計の自由度を向上させることができる。
[その他の形態]
本実施形態の鞍乗り型車両1では、前輪4を2つ有しているが、前輪4を1つにして後輪3を2つにしてもよい。この場合、後輪3を左右に配置し、それらの間の間隔を変更するように構成すればよい。また、鞍乗り型車両1は、必ずしも後輪アーム6が車体フレーム5に対して角変位することによって姿勢変更が行われるように構成する必要はなく、前輪アーム7が車体フレーム5に対して角変位することによって姿勢変更が行われるように構成されていてもよい。
また、鞍乗り型車両1では、必ずしも一対の前輪4,4の間の間隔が変更可能に構成されている必要はなく、姿勢変更だけが可能な構成であってもよい。この場合、必ずしも鞍乗り型車両1が一対の前輪4,4を有する必要はなく、前輪4が1つであってもよい。逆に、鞍乗り型車両1では、必ずしも姿勢変更可能に構成されている必要はなく、一対の前輪4,4の間の間隔だけが変更可能に構成されていてもよい。
また、鞍乗り型車両1では、アクチュエータ25によって姿勢変更を行うことができるようになっているが、必ずしもアクチュエータ25を備えている必要はない。即ち、鞍乗り型車両1が手動で姿勢変更を行えるように構成されていてもよい。ハンドル位置変更機構34、車輪間隔変更機構35、ステアリング機構36、及びステップ位置変更機構48についても同様であり、ハンドル位置、一対の前輪4,4の間の間隔、ステアリング角、ステップ17bの位置の各々が手動で変更可能に構成されていてもよい。また、鞍乗り型車両1では、ステップ17bの位置の変更、ハンドルステム32のスライド及び伸縮、並びに一対の前輪4,4の間の間隔の変更が姿勢変更に連動して行われているが、必ずしも姿勢変更に連動させる必要なく、それらを姿勢変更の前又は変更後に独立して行われるようにしてもよい。また、ステップ機構17は、必ずしもロアフレーム10に角変位可能に取り付けられている必要はなく、ロアフレーム10に沿って前後方向にスライド可能に構成されていてもよい。この場合、ステップ位置変更機構48は、駆動力を発生して、ステップ17bをロアフレーム10に沿って前後方向に動かすように構成されている。
更に、鞍乗り型車両1では、前輪4が前輪アーム7によって上下方向に揺動可能に車体フレーム5に取付けられているが、前輪4がフロントフォークを介して車体フレーム5に取付けられてもよい。また、前輪アーム7は、ヘッドフレーム8に角変位可能に取り付けられているが、車幅方向に直動可能に取り付けられてもよい。この場合、前輪アーム7をヘッドフレーム8に対して車幅方向に移動させることで、一対の前輪4,4の間の間隔を変更することができる。また、ハンドルグリップ33がハンドルステム32を介して前輪用車軸31に設けられているので、前輪4の振動が直接伝わることになる。そこで、ハンドル位置変更機構34に緩衝機能を持たせる又はハンドル位置変更機構34とは別体でダンパ又はショックアブソーバを設ける等して前輪4からハンドルステム32を介してハンドルグリップ33に伝わる衝撃を緩和できるようにしてもよい。また、鞍乗り型車両1では、ハンドルグリップ33がハンドルステム32を介して前輪用車軸31に取付けられているが、ハンドルグリップ33が車体フレーム5に取付けられてもよい。これにより、高速姿勢時において一対の前輪4,4のステアリング角を変更した際に、一対の前輪4,4に連れられてハンドルグリップ33も動くことを防ぐことができる。それ故、運転者Rは、車体2につかまりやすい。
更に、形態変更操作子46及びステアリング操作子47は、ボタン等によって構成されているが、必ずしもボタン等に限定されず、レバーであってもよい。但し、ハンドルステム32及びハンドルグリップ33が姿勢変更の際に前輪4の回転軸線回りに角変位するので、ハンドルグリップ33にレバーを取付けた場合、姿勢に応じてハンドルグリップ33の周方向の位置が変わる。それ故、形態変更操作子46及びステアリング操作子47、特にステアリング操作子47は、ボタンで構成してハンドルグリップ33の端部に配置することが好ましい。
また、形態変更操作子46及びステアリング操作子47は、運転者Rが鞍乗り型車両1に乗車している状態で操作できるような位置に配置されているが必ずしもこのような位置である必要はなく、降車しないと押せない位置であってもよい。また、降車しないと姿勢変更できないように電子制御装置45を構成してもよい。
また、鞍乗り型車両1では、電子制御装置45によってステアリング角の範囲を規制しているが、必ずしも電子制御装置45によって規制する必要はなく、機械的に規制するようにしてもよい。