特許文献1に提案されている技術では、点火ヒータの抵抗体は、ブリッジ回路に組み込まれているので、該抵抗体には、固定抵抗値の抵抗素子が直列に接続される。この場合、点火ヒータの抵抗体に直列に接続される抵抗素子の抵抗値が大きいほど、電源から点火ヒータの抵抗体に供給し得る電力が小さくなって、該抵抗体を通電によって昇温させるためのエネルギー効率が低下する。
このため、上記抵抗素子の抵抗値はできるだけ小さい値に設定しておく必要がある。しかるに、上記抵抗素子の抵抗値が小さいと、点火ヒータの抵抗体の昇温によって該抵抗体の抵抗値が、上記抵抗素子の抵抗値に比して十分に大きくなった状態では、該抵抗体の加熱温度の変化による該抵抗体の抵抗値の変化に対して、前記ブリッジ回路の出力電圧の変化、あるいは該抵抗体の両端間電圧の変化の感度が微小なものとなる。
このため、点火ヒータの抵抗体の昇温によって、該抵抗体の抵抗値がある程度大きくなった状態では、前記ブリッジ回路の出力電圧、あるいは、該抵抗体の両端間電圧に基づいて、抵抗体の実際の加熱温度を精度よく認識することが困難となる。
ひいては、特許文献1のものでは、バーナの点火のために該バーナに燃料を供給するタイミングが不適切なものとなって、バーナの着火不良が発生したり、あるいは、点火ヒータの抵抗体の劣化の検知の信頼性が損なわれ易いという不都合がある。
そして、このような不都合を解消するために、前記抵抗素子の抵抗値を大きくすると、電源の出力電力のうち、該抵抗素子で消費される電力が増えるために、点火ヒータの抵抗体を、電源からの通電によって昇温させるためのエネルギー効率が低下するという不都合がある。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、点火ヒータの抵抗体の通電による昇温を効率よく行いつつ、該抵抗体の実際の加熱温度を精度よく認識し得る値を取得して、該抵抗体の通電制御、あるいは、バーナへの燃料の供給制御を的確に行うことができる燃焼装置を提供することを目的とする。
本発明の燃焼装置は、かかる目的を達成するために、加熱温度に応じて抵抗値が変化する抵抗体と該抵抗体が収納された外装体とを有し、該抵抗体への通電による該抵抗体の発熱に応じて前記外装体の外表面から放射される熱によってバーナに供給された燃料を点火する点火ヒータを備える燃焼装置であって、前記点火ヒータの抵抗体に交流電圧を印加することで該抵抗体に通電する回路であり、該抵抗体に印加する交流電圧の大きさを制御可能なヒータ電源回路と、前記点火ヒータの抵抗体の通電電流に応じた検出信号を発生するように設けられたカレントトランスと、前記抵抗体の通電電流の大きさを前記カレントトランスの検出信号に基づいて検出する電流検出手段と、前記ヒータ電源回路による前記抵抗体への通電中における該抵抗体の抵抗値に対応する該抵抗体の加熱温度の推定値を示す温度推定出力値を、前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値を用いて逐次生成する温度推定手段と、前記温度推定手段の温度推定出力値に応じて、前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさと前記バーナへの燃料供給を開始するタイミングとのうちの少なくともいずれか一方を制御する制御手段とを備えることを特徴とする(第1発明)。
なお、本発明において、「温度推定出力値」は、前記抵抗体の加熱温度の推定値そのものでよいことはもちろんであるが、該抵抗体の加熱温度の推定値と1対1の対応関係を有する値であってもよい。すなわち、「温度推定出力値」は、その値から前記抵抗体の加熱温度を一義的に推定し得る値でよい。
また、本発明では、抵抗体の通電電流は交流電流であるので、該通電電流の大きさは、該通電電流の振幅又は実効値を表すものである。
上記第1発明によれば、カレントトランスを使用することで、ヒータ電源回路の出力電力の大部分を点火ヒータの抵抗体に供給しつつ、前記点火ヒータの抵抗体の通電電流の大きさを電流検出手段によりリアルタイムで精度よく検出できる。
さらに、前記温度推定手段は、電流検出手段による精度の良い検出値を用いて、前記温度推定出力値を生成する。このため、該温度推定出力値は、点火ヒータの抵抗体の実際の加熱温度を精度良く認識し得る値として得ることができる。
そして、前記制御手段は、前記温度推定手段の温度推定出力値に応じて、前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさと前記バーナへの燃料供給を開始するタイミングとのうちの少なくともいずれか一方を制御する。
これにより、前記抵抗体の通電制御、あるいは、バーナへの燃料供給の制御を、点火ヒータの実際の加熱温度に好適な形態で行うことができる。
よって、第1発明によれば、点火ヒータの抵抗体の通電による昇温を効率よく行いつつ、該抵抗体の実際の加熱温度を精度よく認識し得る値を取得して、該抵抗体の通電制御、あるいは、バーナへの燃料の供給制御を的確に行うことができる。
なお、温度推定出力値に応じた具体的な制御としては、例えば次のような制御を採用できる。
すなわち、例えば、前記ヒータ電源回路による前記抵抗体への通電開始後、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記抵抗体の加熱温度の推定値が所定温度以上の温度に上昇したときに、前記バーナへの燃料の供給を開始する。これにより、前記点火ヒータの外装体から放射される熱によるバーナの点火を行うために該バーナに燃料を供給することを、好適なタイミングで行うことができる。
あるいは、例えば、前記ヒータ電源回路による前記抵抗体の通電開始後、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記抵抗体の加熱温度の推定値が所定温度以上の温度に上昇したときに、前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさを、該加熱温度が前記所定温度以上の温度に上昇する前よりも、小さくする。これにより、前記抵抗体が過剰に高温になるのを防止できる。
上記第1発明では、前記制御手段は、前記ヒータ電源回路による前記抵抗体への通電開始後、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記抵抗体の加熱温度の推定値が第1の所定温度以上の温度に上昇した後に、前記バーナを点火させるために該バーナに燃料を供給すると共に、前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさを、前記抵抗体の加熱温度の推定値が前記第1の所定温度以上の温度に上昇する前よりも減少させるように該ヒータ電源回路を制御する点火制御処理を実行するように構成され、さらに、該点火制御処理の実行中に、前記温度推定手段の温度推定出力値の変化に基づいて、又は前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値の変化に基づいて、前記バーナが着火したか否かを検知するように構成されていることが好ましい(第2発明)。
かかる第2発明によれば、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記抵抗体の加熱温度の推定値が第1の所定温度以上の温度に上昇した後に実行される前記点火制御処理では、バーナへの燃料の供給が行われることに加えて、前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさが、前記抵抗体の加熱温度の推定値が前記第1の所定温度以上の温度に上昇する前よりも減少される。
一方、前記点火制御処理の実行中に、前記バーナが着火すると、前記抵抗体が、通電による加熱に加えて、バーナの燃焼炎によっても加熱され、ひいては、該抵抗体の抵抗値が比較的急激に変化する。
このため、点火制御処理の実行中に、前記バーナが着火すると、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記加熱温度の推定値が比較的急激に上昇し、あるいは、前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値が比較的急激に変化するという現象が顕著に発生する。
従って、前記点火制御処理の実行中に、前記温度推定手段の温度推定出力値の変化に基づいて、又は前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値の変化に基づいて、前記バーナが着火したか否かを高い信頼性で検知することができる。
また、第2発明によれば、熱電対、あるいはフレームロッド等の着火検知用のデバイスを備えずとも、バーナの着火を検知できるので、燃焼装置の部品点数の削減、あるいは、製造コストの低減を図ることができる。
また、上記第1発明又は第2発明では、前記制御手段は、前記バーナの燃焼運転中に、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記抵抗体の加熱温度の推定値を第2の所定温度に保持するように、該温度推定出力値に応じて前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさを制御するように構成されると共に、当該交流電圧の大きさの制御状態で、前記温度推定手段の温度推定出力値の変化に基づいて、又は前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値の変化に基づいて、前記バーナの失火の発生の有無を検知するように構成されていることが好ましい(第3発明)。
かかる第2発明によれば、前記バーナの燃焼運転中に、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記抵抗体の加熱温度の推定値を第2の所定温度に保持するように、該温度推定出力値に応じて前記ヒータ電源回路から前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさが制御される。
そして、このように前記抵抗体に印加する交流電圧の大きさが制御された状態で、前記バーナの失火が発生すると、バーナの燃焼炎による前記抵抗体の加熱が行われなくなるので、該抵抗体の実際の加熱温度が比較的急激に低下し、ひいては、該抵抗体の抵抗値が比較的急激に変化する。
このため、前記バーナの失火が発生すると、前記温度推定手段の温度推定出力値により示される前記加熱温度の推定値が比較的急激に低下し、あるいは、前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値が比較的急激に変化するという現象が顕著に発生する。
従って、前記温度推定手段の温度推定出力値の変化に基づいて、又は前記電流検出手段による前記抵抗体の通電電流の大きさの検出値の変化に基づいて、前記バーナの失火の発生の有無を高い信頼性で検知することができる。
また、第3発明によれば、熱電対、あるいはフレーロッド等の失火検知用のデバイスを備えずとも、バーナの失火の発生の有無を検知できるので、燃焼装置の部品点数の削減、あるいは、製造コストの低減を図ることができる。
本発明の一実施形態を図1〜図3を参照して以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態の燃焼装置1は、バーナ2と、バーナ2を点火するための熱を発生する点火ヒータ3と、点火ヒータ3の抵抗体3a(図2に示す)に通電するヒータ電源回路4と、点火ヒータ3の抵抗体3aの通電制御及びバーナ2への燃料供給の制御等を行う制御装置5とを備える。
バーナ2は、本実施形態では、例えばガスストーブ、ガス温風暖房器等に搭載されるガスバーナであり、燃料供給路11を介して供給される燃料ガスを燃焼させる。燃料供給路11には、バーナ2への燃料ガスの供給量を調整するためのガス比例弁12と、燃料供給路11を開閉するガス電磁弁13とが介装されている。
点火ヒータ3は、図2に示すように、抵抗体3aと、該抵抗体3aが収納された外装体3bとを備える。抵抗体3aは、その加熱温度に応じて抵抗値が変化する抵抗材料により構成されている。より詳しくは、本実施形態では、抵抗体3aは、その加熱温度の上昇に伴い抵抗値が単調増加する抵抗材料により構成されている。
外装体3bは、例えばセラミックにより構成され、抵抗体3aをその内部に封入した状態で焼結されている。この外装体3bは、抵抗体3aを保護すると共に、抵抗体3aの通電により発生する熱を該外装体3bの外表面から放射する機能を有する。そして、外装体3bは、その放射熱によって、バーナ2に供給された燃料ガスを点火するために、該バーナ2の炎口に近接して配置されている。
点火ヒータ3の抵抗体3aはヒータ電源回路4に電気的に接続されている。このヒータ電源回路4には、商用電源等の交流電源14から交流電力が供給される。そして、ヒータ電源回路4は、供給される交流電力から抵抗体3aに印加する交流電圧を生成し、その交流電圧を抵抗体3aに印加する。この場合、ヒータ電源回路4は、図示しないサイリスタ、トランジスタ等の半導体制御素子を内蔵しており、その半導体制御素子を制御することで、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさ(振幅値又は実効値)を可変的に制御することができるように構成されている。
ヒータ電源回路4から抵抗体3aへの電流路(通電ライン)の途中部には、抵抗体3aの通電電流(交流電流)に応じた検出信号(電圧信号)を出力するカレントトランス15が配置されている。このカレントトランス15は、コイルが巻回された環状のコアを有する公知の構造のものであり、その環状のコアの軸心部を抵抗体3aの通電電流の電流路が貫通するように配置される。
制御装置5は、本発明における制御手段に相当するものであり、CPU、RAM、ROM、インターフェース回路等を含む電子回路ユニットにより構成される。この制御装置5には、カレントトランス15の検出信号が、図示しないAD変換器等を介して入力される。
そして、制御装置5は、実装されるプログラムを実行することで実現される機能、あるいは、ハードウェア構成により実現される機能として、抵抗体3aの通電電流の大きさ(振幅値又は実効値)を検出する電流検出部21と、点火ヒータ3の抵抗体3aの加熱温度の推定値を示す温度推定出力値を生成する温度推定部22と、ヒータ電源回路4から抵抗体3aに印加させる交流電圧(ヒータ電源回路4の出力電圧)の大きさを制御することで該抵抗体3aの通電制御を行うヒータ通電制御部23と、バーナ2への燃料供給を前記ガス比例弁12及びガス電磁弁13を介して制御することでバーナ2の燃焼制御を行う燃焼制御部24とを備える。
この場合、燃焼制御部24は、バーナ2の点火時に、バーナ2が着火したか否かを検知する着火検知部31と、バーナ2の燃焼運転中にバーナ2の失火が発生したか否かを検知する失火検知部32としての機能を含んでいる。
なお、電流検出部21、温度推定部22は、それぞれ本発明における電流検出手段、温度推定手段に相当する。
次に、制御装置5の各機能部の処理の詳細と併せて、実施形態の燃焼装置1の作動を図3を参照しつつ説明する。
制御装置5は、図示しない運転スイッチ等のオン操作等によりバーナ2の燃焼運転の要求を検知すると、点火ヒータ3を、バーナ2の点火を行うための温度に昇温させるように該点火ヒータ3の抵抗体3aの通電を行う制御処理(以降、初期昇温制御処理という)をヒータ通電制御部23により開始する。該初期昇温制御処理の開始タイミングが、図3の時刻t0である。
この初期昇温制御処理では、制御装置5のヒータ通電制御部23は、図3(b)に示す如く、ヒータ電源回路4から点火ヒータ3の抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを、あらかじめ定められた所定値V1で一定に維持するようにヒータ電源回路4を制御する。上記所定値V1は、抵抗体3aに流れる電流が過大なものとならない範囲で該抵抗体3aを素早く昇温させるために、比較的大きな値(例えば実効値で100V)に設定されている。
この初期昇温制御処理により、点火ヒータ3の抵抗体3aの通電及び昇温が開始される。このとき、図3(c)に例示するように、抵抗体3aの通電電流の大きさ(振幅値又は実効値)が、抵抗体3aの抵抗値と印加電圧の大きさとに応じた値まで速やかに立ち上がる。そして、図3(a)に例示する如く、抵抗体3aの加熱温度が、該抵抗体3aの通電により発生する熱(ジュール熱)によって急速に上昇する。
ここで、本実施形態では、抵抗体3aの抵抗値は、その加熱温度の増加(昇温)に伴い、単調に増加する。このため、図3(c)に例示する如く、抵抗体3aの通電電流の大きさは、通電開始直後の立ち上がり後に減少していく。
また、制御装置5は、抵抗体3aの通電中に、電流検出部21及び温度推定部22の処理を逐次実行する。
この場合、電流検出部21は、カレントトランス15の検出信号を逐次取り込んで、該検出信号により抵抗体3aの通電電流の大きさ(振幅値又は実効値)を逐次検出する。このとき、カレントトランス15の検出信号は、抵抗体3aの通電電流にだけ依存するので、該検出信号により精度よく抵抗体3aの通電電流の大きさを検出できる。
そして、温度推定部22は、電流検出部21により検出された抵抗体3aの通電電流の大きさの値(以降、単に電流検出値という)を用いて、抵抗体3aの加熱温度の推定値を示す温度推定出力値を逐次生成する。
温度推定出力値としては、抵抗体3aの加熱温度そのものの推定値、あるいは、該加熱温度の推定値と1対1の一定の相関関係を有する値(加熱温度の推定値の変化に対して単調増加又は単調減少する関数値)を使用することができる。本実施形態では、温度推定出力値として、例えば抵抗体3aの加熱温度そのものの推定値が使用される。
ここで、抵抗体3aの抵抗値は、該抵抗体3aに印加される交流電圧の大きさの値を、該抵抗体3aの通電電流の大きさの値により除算してなる値となる。また、抵抗体3aの抵抗値と加熱温度とはほぼ一定の相関関係を有する。
そこで、本実施形態では、電流検出部21により温度推定部22は、電流検出部21により得られた抵抗体3aの電流検出値と、ヒータ電源回路4によって抵抗体3aに印加される交流電圧の大きさの値V1(ヒータ通電制御部23による制御設定値)とから抵抗体3aの抵抗値を逐次算出する。
そして、温度推定部22は、抵抗体3aの抵抗値と加熱温度との関係を表すものとして、あらかじめ図示しないメモリに記憶保持されたデータテーブル(又は演算式)を用いて、抵抗体3aの抵抗値の算出値から、温度推定出力値としての抵抗体3aの加熱温度の推定値を求める。
なお、抵抗体3aの電流検出値と、抵抗体3aに印加される交流電圧の大きさの値とから、例えば2次元マップを使用して、抵抗体3aの抵抗値、あるいは、加熱温度の推定値を求めるようにしてもよい。
また、抵抗体3aに印加される交流電圧の大きさが既定の一定値である場合、抵抗体3aの抵抗値は、抵抗体3aの通電電流の大きさに対して1対1の関係を有する(該抵抗値は抵抗体3aの通電電流の大きさに反比例する)。従って、抵抗体3aに印加される交流電圧の大きさが一定値V1に維持されている状態では、抵抗体3aの電流検出値から、あらじめ作成したデータテーブルあるいは演算式により該抵抗体3aの抵抗値あるいは加熱温度の推定値を求めることもできる。
制御装置5は、上記の如く初期昇温制御処理を実行しつつ、温度推定部22により逐次算出される抵抗体3aの加熱温度の推定値を監視する。
そして、制御装置5は、抵抗体3aの加熱温度の推定値が、バーナ2に供給する燃料ガスを点火ヒータ3の外装体3bから放射させる熱によって点火させ得る温度としてあらかじめ定められた所定温度T1(例えば1150°C)に達すると(図3の時刻t1)、バーナ2を点火させるための点火制御処理を開始する。なお、上記所定温度T1は、本発明における第1の所定温度に相当する。
上記点火制御処理では、制御装置5は、燃焼制御部24によりバーナ2への燃料供給を開始させる。この場合、燃焼制御部24は、ガス電磁弁13を開弁制御すると共に、バーナ2への燃料供給量が点火用の所定量となるようにガス比例弁12を制御する。
さらに、この点火制御処理では、制御装置5は、図3(b)に示す如く、抵抗体3aに印加させる交流電圧の大きさを、前記所定値V1よりも小さい値にあらかじめ定められた所定値V2(例えば実効値で50V)まで低下させて該所定値V2に維持するように、ヒータ通電制御部23によりヒータ電源回路4を制御する。上記所定値V2は、抵抗体3aの加熱温度を所定温度T1以上に維持しつつ、抵抗体3aが過剰に高温に昇温するのを防止し得るように設定されている。
かかる点火制御処理により、抵抗体3aが、過剰に昇温することなく、前記所定温度T1以上の加熱温度に保持された状態で、バーナ2に燃料ガスが供給される。このため、点火ヒータ3の外装体3bから放射される熱によって、バーナ2の炎口から噴出する燃料ガスが加熱されて着火する(図3の時刻t2)。
また、制御装置5は、上記の如く点火制御処理を実行しつつ、電流検出部21及び温度推定部22の処理を前記した如く逐次実行する。そして、制御装置5は、着火検知部31によりバーナ2が着火したか否かを検知するために、温度推定部22により逐次算出される抵抗体3aの加熱温度の推定値を監視する。
ここで、バーナ2が着火すると、抵抗体3aが、その通電によるジュール熱により加熱されることに加えて、バーナ2の燃焼炎によっても加熱される。このため、抵抗体3aの加熱温度は、バーナ2の着火前の温度から急激に上昇する(図3(a)の時刻t2の直後のグラフを参照)。
また、点火制御処理でヒータ電源回路4から抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさは、点火制御処理の開始前の初期昇温制御処理で抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさよりも小さいので、点火制御処理の実行中の抵抗体3aの加熱温度の変化は、バーナ2の着火前は、比較的緩やかなものとなる。このため、バーナ2が着火すると、抵抗体3aの加熱温度の急激な上昇が顕著に発生する。
そこで、着火検知部31は、抵抗体3aの加熱温度の推定値の時間的変化率に基づいて、該加熱温度の推定値の急激な上昇を検知することで、バーナ2が着火したことを検知する。その検知は、例えば加熱温度の推定値の時間的変化率(単位時間当たりの増加量)が所定の閾値以上となったか否かを判断することで行われる。
これにより、着火検知部31は、バーナ2が着火したか否かを適正に検知することができる。
補足すると、点火制御処理の実行中に、バーナ2の着火に応じて抵抗体3aの加熱温度が急激に上昇すると、該抵抗体3aの抵抗値が急激に増加することで、電流検出部21による抵抗体3aの電流検出値が、バーナ2の着火前の電流検出値から比較的急激に減少する。
そこで、点火制御処理の実行中に、抵抗体3aの電流検出値の時間的変化率に基づいて、該電流検出値の急激な減少を検知する(例えば電流検出値の単位時間当たりの減少量が所定の閾値以上となることを検知する)ことで、バーナ2が着火したことを検知するようにしてもよい。
制御装置5は、点火制御処理の実行中に着火検知部31によりバーナ2の着火を検知すると、以後は、燃焼制御部24により、バーナ2の燃焼量をガス比例弁12を介して制御する。
また、点火制御処理の開始後、所定時間(例えば3〜5秒)が経過しても、バーナ2の着火が検知されない場合には、制御装置5は、燃焼制御部24によりガス電磁弁13を閉弁制御して、バーナ2への燃料ガスの供給を遮断する。
バーナ2が着火した後(詳しくは、点火制御処理の開始後、上記所定時間(3〜5秒)が経過した後)の燃焼運転中において、制御装置5は、温度推定部22により算出される抵抗体3aの加熱温度の推定値をあらかじめ定められた所定温度T2(例えば1250°C)に概ね保持するように、ヒータ電源回路4から抵抗体3aに印加される交流電圧の大きさをヒータ通電制御部23により制御する。なお、上記所定温度T2は、本発明における第2の所定温度に相当する。
この場合、ヒータ通電制御部23は、抵抗体3aの加熱温度の推定値が所定温度T2よりも低い場合には、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを増加させる(ひいては、抵抗体3aの通電電流の大きさを増加させる)ようにヒータ電源回路4を制御する。また、抵抗体3aの加熱温度の推定値が所定温度T2よりも高い場合には、ヒータ通電制御部23は、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを減少させる(ひいては、抵抗体3aの通電電流の大きさを減少させる)ようにヒータ電源回路4を制御する。
これにより、図3(a)の時刻t3以後のグラフで示されるように、抵抗体3aの加熱温度が所定温度T2の近辺で概ね一定に維持されるようにし、抵抗体3aに印加させる交流電圧の大きさが制御される。
このように、抵抗体3aに印加させる交流電圧の大きさを制御した状態で、制御装置5は、失火検知部32によりバーナ2の失火が発生したか否かを検知するために、温度推定部22により逐次算出される抵抗体3aの加熱温度の推定値を監視する。
ここで、バーナ2の失火が発生すると(例えば図3の時刻t4)、その失火発生前に抵抗体3aの加熱源となっていたバーナ2の燃焼炎が無くなることで、抵抗体3aの加熱温度が、図3(a)に例示する如く、比較的急激に下降する。
そこで、失火検知部32は、抵抗体3aの加熱温度の推定値の時間的変化率に基づいて、該加熱温度の推定値の急激な下降を検知することで、バーナ2が失火したことを検知する。その検知は、例えば加熱温度の推定値の時間的変化率(単位時間当たりの減少量)が所定の閾値以上となったか否かを判断することで行われる。
これにより、失火検知部32は、バーナ2の失火が発生したか否かを適正に検知することができる。
そして、制御装置5は、失火検知部32によりバーナ2の失火の発生を検知すると、燃焼制御部24によりガス電磁弁13を閉弁制御することで、バーナ2への燃料供給を遮断する。さらに制御装置5は、抵抗体3aの通電を停止させる(抵抗体3aの印加電圧をゼロにする)ようにヒータ通電制御部23によりヒータ電源回路4を制御する。
補足すると、抵抗体3aに印加させる交流電圧の大きさを上記の如く制御した状態でのバーナ2の燃焼運転中に、バーナ2の失火の発生に応じて抵抗体3aの加熱温度が急激に下降すると、該抵抗体3aの抵抗値が急激に減少することで、電流検出部21による抵抗体3aの電流検出値が、バーナ2の着火前の電流検出値から比較的急激に増加する。
そこで、バーナ2の燃焼運転中に、抵抗体3aの電流検出値の時間的変化率に基づいて、該電流検出値の急激な増加を検知する(例えば電流検出値の単位時間当たりの増加量が所定の閾値以上となることを検知する)ことで、バーナ2の失火が発生したことを検知するようにしてもよい。
以上説明した実施形態によれば、カレントトランス15を使用することで、抵抗体3aの通電電流の大きさをリアルタイムで精度よく検出できる。そして、この場合、抵抗体3aの通電電流を検出するために、抵抗体3aの通電経路内に該抵抗体3aに直列に抵抗素子を介装したりする必要が無い。このため、ヒータ電源回路4の出力電圧(交流電圧)をそのまま抵抗体3aに印加することができる。ひいては、抵抗体3aを昇温させるための該抵抗体3aへの電力供給を、低損失で効率よく行うことができる。
また、抵抗体3aの通電電流の大きさをリアルタイムで精度よく検出できることから、温度推定部22が生成する温度推定出力値(加熱温度の推定値)によって、抵抗体3aの実際の加熱温度をリアルタイムで精度よく認識することができる。
このため、バーナ2を点火させるために該バーナ2に燃料ガスを供給することを、点火ヒータ3の外装体3bからの放射熱により当該点火を円滑に行い得る好適なタイミングで開始することができる。
また、温度推定部22により算出される抵抗体3aの加熱温度の推定値が所定温度T1に達するまでの初期昇温制御処理では、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさが、比較的大きな所定値V1に制御され、抵抗体3aの加熱温度の推定値が所定温度T1に達した後の点火制御処理では、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさが、所定値V1よりも小さい所定値V2に変更される。
この場合、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさの変更が、抵抗体3aの加熱温度の精度のよい推定値に応じて行われるので、初期昇温制御処理での抵抗体3aの昇温をできるだけ素早く行うために、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを、大き目の値にしても、抵抗体3aが過剰に昇温するのが高い信頼性で防止される。
また、点火制御処理において抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを、初期昇温制御処理よりも小さくすることで、点火制御処理の実行中に、バーナ2の着火に応じて抵抗体3aの加熱温度の推定値(又は抵抗体3aの電流検出値)が急激に変化することが顕著に発生する。
このため、点火制御処理の実行中に、抵抗体3aの加熱温度の推定値(又は抵抗体3aの電流検出値)の変化に基づいて、バーナ2が着火したか否かを検知することを高い信頼性で適切に行うことができる。
また、バーナ2の燃焼運転中においては、抵抗体3aの加熱温度の推定値をほぼ一定に保つように抵抗体3aに印加する交流電圧を制御するので、バーナ2の失火の発生時に、抵抗体3aの加熱温度の推定値(又は抵抗体3aの電流検出値)が急激に変化することが顕著に発生する。
このため、バーナ2の燃焼運転中に、抵抗体3aの加熱温度の推定値(又は抵抗体3aの電流検出値)の変化に基づいて、バーナ2の失火の発生の有無を高い信頼性で適切に検知することができる。
さらに、本実施形態によれば、点火ヒータ3と別に熱電対あるいはフレームロッド等のセンサを必要とせずに、バーナ2の着火あるいは失火を検知することができるので、燃焼装置1の部品点数を削減できると共に、製造コストを低減できる。
次に、以上説明した実施形態の変形態様をいくつか説明する。
前記実施形態では、初期昇温制御処理において抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを一定値(V1)とした。ただし、例えば、初期昇温制御処理において、抵抗体3aの加熱温度の推定値の単位時間あたりの増加率を算出しつつ、該増加率が所定値となるように抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを可変的に制御するようにしてもよい。
また、例えば、初期昇温制御処理における抵抗体3aの加熱温度の推定値の単位時間あたりの増加率に基づいて、抵抗体3aの劣化度合を検知し、その劣化度合いが所定値以上いとなった場合に、点火ヒータ3を交換すべき旨の報知を行うようにしてもよい。
また、前記実施形態では、温度推定部22が生成する温度推定出力値を、抵抗体3aの加熱温度の推定値そのものとした。ただし、温度推定出力値として、抵抗体3aの加熱温度の推定値そのもの以外に、抵抗体3aの加熱温度の推定値と一定の相関関係を有して1対1に対応する値を用いてもよい。
例えば、前記実施形態における抵抗体3aの抵抗値は、抵抗体3aの加熱温度の増加に対して単調に増加すると共に該加熱温度と一定の相関関係を有する。このため、該抵抗値の推定値を、温度推定出力値として使用することもできる。
この場合、バーナ2の着火前において、抵抗体3aの加熱温度が、前記所定温度T1に達したか否かは、抵抗体3aの抵抗値の推定値が前記所定温度T1に対応する抵抗値に達したか否かによって判断できる。
また、バーナ2の燃焼運転中において、抵抗体3aの加熱温度を所定温度T2に保持することは、抵抗体3aの抵抗値の推定値を前記所定温度T2に対応する抵抗値に保持するように、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさ制御することで実現できる。
また、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを一定に維持している状態では、抵抗体3aの電流検出値は、抵抗体3aの加熱温度の増加に対して単調に減少すると共に該加熱温度と一定の相関関係を有する。このため、例えば、前記初期昇温制御処理において、抵抗体3aの電流検出値を、抵抗体3aの加熱温度の推定値を示す温度推定出力値として使用することもできる。
この場合、初期昇温制御処理の実行中に、抵抗体3aの加熱温度が、前記所定温度T1に達したか否かは、抵抗体3aの電流検出値が前記所定温度T1に対応する所定値まで減少したか否かによって判断できる。
また、前記実施形態では、初期昇温制御処理の実行中に、抵抗体3aの加熱温度の推定値が前記所定温度T1に達したときに、バーナ2への燃料ガスの供給を開始すると共に、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさをV1からV2に減少させるようにした。
ただし、バーナ2への燃料の供給を開始するタイミングと、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを減少させるタイミングとをずらすようにしてもよい。例えば、抵抗体3aの加熱温度の推定値が前記所定温度T1よりも若干小さい所定温度に達したときに、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさを減少させた後に、該加熱温度の推定値がさらに前記所定温度T1まで上昇したときに、バーナ2への燃料の供給を開始するようにしてもよい。
また、前記実施形態では、抵抗体3aは、加熱温度の増加に伴い抵抗値が単調に増加する特性を有する抵抗体であるが、加熱温度の増加に伴い抵抗値が単調に減少する特性を有するものであってもよい。ただし、抵抗体3aの通電による昇温をできるだけ素早く行う上では、抵抗体3aは、加熱温度の増加に伴い抵抗値が単調に増加する特性を有するものであることが望ましい。
また、前記実施形態では、抵抗体3aに印加する交流電圧の大きさと、バーナ2への燃料供給との両方を温度推定出力値(抵抗体3aの加熱温度の推定値)に応じて制御したが、いずれか一方だけを温度推定出力値に応じて制御するようにすることも可能である。
また、前記実施形態では、バーナ2で燃焼させる燃料として、燃料ガスを使用するものを示したが、本発明の燃焼装置は、灯油等の液体燃料をバーナで燃焼させるものであってもよい。