JP6233166B2 - 水性インキ - Google Patents

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Description

本発明は、コート紙、アート紙やポリ塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難浸透性基材だけで無く、浸透性の高い紙面、繊維材料等に対しても印刷適性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、塗膜耐性、高速印刷時の描画性能に優れる水性インキに関する。
インクジェット印刷は、幅広い分野で開発、商品化がされており、インクジェット技術の向上によりデジタル印刷の出力機としての利用が期待され、様々な用途でインクジェットプリンターの実用化が進んできている。
従来、インクジェットプリンターを用いて難浸透性基材上に画像形成するためには、乾燥性の良好なインキが求められていた。特に産業用途として使用されている印刷基材である、コート紙やポリ塩化ビニルシート等は、基材に対するインキの濡れや吸収が難しいため、基材表面に処理をする事無く、直接描画する事が大変難しい。しかし、市場からは前記の基材を用い、高速生産性が求められる背景もあり、前記基材に対して、濡れ易く、速乾性を有する溶剤インキやUV硬化型インキが現在使用されている。しかしながら、溶剤インキは乾燥時に揮発する溶剤の臭気や有害性が環境に影響することが懸念され、UVインキは使用するモノマーによっては皮膚に対して強い刺激性を与えるものや臭気を有するものが多く、インキを扱う作業者に対しての問題があった。
作業者に対して安全性の高く、環境に対する負荷が少ないことから、屋内外全ての用途での使用が可能であるインキとして、水性インキに期待が集まっており、近年開発が進められている。また、普通紙や専用紙など、インキが吸収しやすい紙基材に対しては、多くのシステムインテグレーターが、民生用に使用されている水性インクジェット用インキを使用し、産業用プリンターの開発を進めており、特に欧米市場に関しては、前記プリンターを導入し、新聞、建築材料用の壁紙、ダンボールなど、使用用途を限定する事により、既存印刷からデジタル印刷への転換が進み始めている。
更なるデジタル印刷への転換や市場拡大を考えると、普通紙や専用紙などのインキを吸収し易い紙系基材のみならず、テキスタイル市場等で使用されている布のような繊維材料、インキが吸収し難いコート紙、アート紙、ポリ塩化ビニルシートなどのような様々な印刷基材に対して、基材表面の加工を行わずに、直接描画で画像形成できる水性インクジェットインキの開発が急務となっている。
しかし、プリンター装置の改良による高速化、高画質化に対応するため、吐出インキ液滴の微小化、インクジェットヘッドからの吐出周波数の高速化が進むなかで、特に顔料インキにおいては、鮮明性、色濃度などの品質向上を図るため、インキ中の顔料粒子の微細化が進んでいる。これにより、染料インキと同程度の色再現領域が確保されると共に、インクジェット用加工紙(特に写真紙)に対する画像品質の向上が見られている。しかし、非加工の普通紙や繊維材料に対しては、インキ液滴が用紙の繊維中に浸透しやすくなってしまったため、印刷物の色の濃さ(発色性)や、画像の滲みが発生してしまい、印刷物の品質を著しく低下するに至っている。
また、コート紙やポリ塩化ビニルシートのような難吸収性基材に対して印刷するには、基材に対する濡れ性が鍵であることが一般的な文献や公開特許から確認されており、疎水性溶剤や界面活性剤等を処方に添加する事が知られているものの、それだけでは既存印刷や粉体トナー印刷の置き換えとなるプリント・オン・デマンド市場のような高速生産性を必要とする分野では、印刷画像品質が市場の要求を満たせない事が発明者らの検討から分かっている。
インクジェット用の水性インキとしては特許文献1〜4のように、増粘剤として糖類や天然高分子、水溶性樹脂を用い、印刷対象を非加工の吸収基材とし発色性や滲みを改善する水性インキの開発が古くからなされている。しかし、印刷物として発色性や画像滲みが改善したインキを用いても、経時保存後のインキを使用すると吐出安定性が悪化する事が発明者らの検討から分かっている。原因としては、まず糖類や天然高分子では、経時保存により微生物におかされやすく、腐敗が進む。また水溶性樹脂に関しては、経時保存によりインキ中のpHが低下する。これらが起因となり、インキ粘度が減粘し、インクジェットヘッドの適正粘度領域から外れてしまう事が原因と考えられている。
また、特許文献5にて記載されている微粒子状の架橋型N−ビニルカルボン酸樹脂を用いたが、インクジェットヘッドの駆動周波数を上げる事で吐出安定性が低下し、プリンターの印刷物生産性を上げられないことが発明者らの検討から分かっている。
特開昭62−283174号公報 特許第4450305号公報 特開平8−41394号公報 特開平10−46077号公報 特許第2738273号公報
本発明の目的は、コート紙、アート紙やポリ塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難浸透性基材だけで無く、浸透性の高い紙面、繊維材料等に対しても印刷適性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、塗膜耐性、高速印刷時の描画性能に優れる水性インキを提供することである。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
即ち、本発明は、少なくとも水、色材、有機溶剤および酸価200KOHmg/g以上のビニル重合ポリマーを含有するインキであって、
前記有機溶剤の、沸点が150℃以上280℃以下かつ、表面張力が20mN/m以上35.1mN/m以下であり、インキ全体に対する有機溶剤含有量が10重量%以上40重量%以下であり、
前記ビニル重合ポリマーが、エマルジョンタイプであり、インキ全体に対するビニル重合ポリマーの固形分含有量が0.01重量%以上0.33重量%以下であり、
25℃における該インキの粘度(V1)が、4mPa・s<V1<20mPa・sであり、25℃で動的表面張力を測定した際の10mS時の値が35mN/m以下である事を特徴とする水性インキに関する。
更に、本発明は、気温20℃−湿度30%の環境下で5gのインキを50℃のホットプレートを用い30分加熱した際の重量変化幅が、0.75g以上1.50g以下であることを特徴とする、上記水性インキに関する。
更に、本発明は、有機溶剤である炭素数4以上のアルカンジオール類が、インキ全体に対して10重量%以上25重量%以下含まれることを特徴とする、上記水性インキに関する。
更に、本発明は、有機溶剤である1,2−ヘキサンジオールが、インキ全体に対して10重量%以上20%重量以下含まれることを特徴とする、上記水性インキに関する。
更に、本発明は、酸価300KOHmg/g以下、かつ重量平均分子量30000未満の水溶性樹脂と、アルカリ剤とを含有する、上記水性インキ。
更に、本発明は、界面活性剤を含むことを特徴とする上記水性インキに関する。
更に、本発明は、上記水性インキを含むインキセットであって、
シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキを含むインキセットに関する。
更に、本発明は、上記水性インキの液滴を吐出させ、印刷基材上に付着させて印字を行うインクジェット記録方法に関する。
更に、本発明は、上記水性インキで印刷してなる印刷物に関する。
本発明によれば、コート紙、アート紙やポリ塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難浸透性基材だけで無く、浸透性の高い紙面、繊維材料等に対しても印刷適性に優れ、インクジェットノズルからの吐出安定性、塗膜耐性、高速印刷時の描画性能に優れる水性インキを提供することが可能となる。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明の水性インキについて説明する。
本発明の水性インキは、少なくとも水、色材、有機溶剤および酸価200KOHmg/g以上のビニル重合ポリマーを含有するインキであって、25℃における該インキの粘度(V1)が、4mPa・s<V1<20mPa・sであり、25℃で動的表面張力を測定した際に10mS時の値が35mN/m以下である事を特徴とする。先ず、本発明を特徴づけるビニル重合ポリマーについて説明する。
一般的に、インキが浸透しやすい非加工の普通紙や繊維基材は、印字するとインキ滴が基材の繊維中に浸透し、その結果、印字濃度(発色性)の低下や、画像滲みが発生し印刷物品質が著しく低下する。一方インキ側の特徴としては、特に顔料インキにおいて、鮮明性、色濃度などの向上を図るため、インキ中の顔料粒子の微細化が進んでおり、上記のような非加工の浸透基材には、より浸透しやすいインキとなってしまっている。その為、如何なる印刷基材に対しても直接描画でき、優れた印刷物を作成するには、インクジェトヘッドから吐出されたインキが被記録体上で定着する際に着色成分である顔料粒子が、被記録体の表面部分で凝集する事無く固着する事が望ましい。
本発明者らが鋭意検討したところ、本発明のインキ構成において、剪断減粘性付与剤として特定酸価を有するビニル重合ポリマーを使用した場合に、非加工の普通紙や、普通紙よりも浸透性の強い布のような繊維基材においても直接描画可能であり、発色性や滲みに対して著しい改善が認められ、印刷物品質の向上が確認された。また、プリント・オン・デマンド市場で一般的に使用されている、高速印刷機にて印刷したところ、表面加工されているインクジェット専用紙のような吸収基材だけではなく、コート紙やアート紙のような難吸収性基材に対しても、濃度や発色性に優れ、高速印刷設定でも画像滲みが著しく改善し、印刷物品質の向上が確認された。
剪断減粘性付与剤に、上記のような特定酸価を有するビニル重合ポリマー以外を使用できない理由を以下に示す。ペントース、ヘキトース、ヘプトース、オクトース等の多糖類、キサンタンガム、カラギーナンガム、ローカストビンガム等のガム類、ヒドロキシエチルセルロース等の天然高分子は、経時保存することにより微生物におかされやすく腐敗し、粘度低下が発生し吐出安定性が著しく悪化することや、塗膜耐性が悪化するなどの問題から使用できない。また、特定酸価を有するビニル重合ポリマーではない水溶性樹脂では、経時安定性は問題ないものの普通紙にて印字濃度(発色性)の低下や、画像滲みが発生し印刷物品質が著しく低下する。また、普通紙や繊維基材上での印刷物品質を改善するまで水溶性樹脂を添加すると、吐出安定性が低下するため、使用する事はできない。
剪断減粘性付与剤に特定酸価を有するビニル重合ポリマーを使用することで、非加工の浸透基材に対しても印刷可能となる理由としては以下のように考えられる。
特定酸価を有するビニル重合ポリマーの樹脂構造内に組み込まれているカルボン酸基が、水分子と水和しつつ、顔料粒子や水分散性樹脂微粒子に吸着する事で形成される3次元網目構造体による構造粘性の付与(架橋)が、少ない添加量においても発現するため、インクジェットヘッドから安定に吐出される。また、剪断減粘性付与剤が添加されている事により、被記録体に着弾したインキの溶媒が揮発する事により、インキが凝集する事無く記録体表面部分で急激に粘度上昇し、基材へ固着するため、如何なる被記録体に対しても発色性に優れ、滲みの無い印刷物の生産が可能となる。また、酸価が大きいほど印刷可能な非加工の浸透基材種が増える理由としては、水和部や顔料分散体、樹脂微粒子との物理的架橋点が増加するために、添加量が少なくても被記録体表面でのインキ粘度の急増が起こるからである。
また、インクジェット印刷は、ピエゾ素子を振動や、インキを沸騰させて発生させた泡により圧力波を発生させ、インキ滴を飛翔し、記録する方式であり、インクジェットヘッドから安定的に吐出できる事が必須性能である。今回剪断減粘性付与剤として使用しているビニル重合ポリマーは、上記でも示したように酸価が高ければ高いほど少量添加で印刷物品質の向上が見込める。そのため、水、顔料粒子、水分散性樹脂微粒子と形成されている3次元網目構造体は小さな圧力波でも破壊されやすく、容易に微小液滴となり安定的に吐出飛翔することができる。これらの背景から、インクジェットヘッドからの吐出安定性に関しても、問題ない材料である。
本発明で剪断減粘性付与剤として使用するビニル重合ポリマーに該当する材料名を以下に例示する。これらは、ビニルモノマーを重合したビニル重合ポリマーである。
(架橋型アクリル樹脂)
BF Good rich社製カーボポール934、同940、同941、同1342、同EZ-1、同ET2020、ペミュレンTR-1、同TR-2、日本化薬株式会社製ジュンロンPW110、同PW111、同PW115、レオジック250H、同252L、同305L、同306L、同830L、同835H、エレメンティスジャパン社製レオネート101、和光純薬株式会社製ハイビスワコー103、同104、同105、同204、同304、東亜合成社製アロンA20L、同A7100、同A10H、同A30、同A93、同A7255、同A7185、同A7195、住友精化株式会社製アクペックHV-501、同HV-504、同HV-505、三洋化成株式会社製サクリスA-1、同C-1、同L-1、同N-1、ローム&ハース社製プライマルG111、同RM5、同TT935、クラリアントポリマー社製レビオスCR、同CRX、同DP60-3902
(架橋型アクリル樹脂エマルジョンタイプ)
ローム&ハース社製プライマルASE60、同TT615、エレメンティスジャパン社製レオネート1、同430、同450、クラリアントポリマー社製ビスカレックスHV-30、同VG-2、同AT-55、同AT-77、第一工業製薬株式会社製スーパーフレックスVF、同VM、BASF社製コラクラールP、同D、東亞合成社製アロンB300K、同B500、同A7075、同7055、サンノプコ社製SNシックナー613、同615、同618、同630、同632、同633、同634、同635、同636、同650、同A813、同A815、同A818、同A850
なかでも、酸価200KOHmg/g以上が好ましく、樹脂分子量が大きいものの方が好ましい。またビニル重合ポリマーは、樹脂水溶液よりはエマルジョンタイプの方が、樹脂分子量が大きく、添加量を少なく抑える事ができ、吐出安定性の低下を防ぐ事が可能であるため好ましい。添加量としては、固形分重量としてインキ全量に対して、0.01重量%以上0.50重量%以下である事が好ましく、0.05重量%以上0.20重量%以下がより好ましい。0.01重量%未満では、非加工印刷基材上で発色性の低下や画像滲みが発生し、著しく印刷物品質を低下させてしまうことから、好ましくないことがある。また0.50重量%を超えると、プリンターの印刷物生産性能を上げる為に必要な、インクジェットヘッドでの高周波数における吐出安定性が悪化する為、高速印刷に対する印刷信頼性を悪化させるため、好ましくないことがある。
更に、本発明で使用する水性インクジェットインキに含まれる水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
本発明で使用することができる水の含有量としては、インキ全量に対して、20〜80重量%の範囲である。
本発明で使用される色材としては、特に制限される事はなく、染料でも顔料でも用いる事が可能である。しかし、顔料は染料に比べ発色性に欠けるものの、耐候性に優れており、屋外用途の印刷物にも対応可能となる事から、汎用性が増えるという点で、特に顔料を用いる事が好ましい。
顔料としては、無機顔料及び有機顔料を使用することができ、それぞれ単独又は複数種混合して用いる事ができる。前記無機顔料としては、例えば酸化チタン及び酸化鉄の他に、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造されたカーボンブラック等が使用できる。また、前記有機顔料としては、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフラロン顔料等)、染料キレート(例えば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が使用できる。具体的には、以下に説明するように、各色インキに応じて所望の顔料が用いられる。尚、顔料は以下の例示に限定されるものではない。
本発明で使用することができる顔料としては、シアン顔料が挙げられ、例えば、C.I.Pigment Blue1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。
本発明で使用することができるマゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red5、7、12、22、23、31、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、112、122;キナクリドン固溶体、146、147、150、238、269、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。
本発明で使用することができるイエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow12,13,14,17,20,24,74,83,86,93,94,95,109,110,117,120,125,128,137,138,139,147,148,150,151,154,155,166,168,180,185、213等が挙げられる。
本発明で使用することができるブラックの顔料としては、カーボンブラックが挙げられ、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50〜400m2/g、揮発分が0.5〜10重量%、pH値が2乃至10等の特性を有するものが好適である。このような特性を有する市販品としては下記のものが挙げられる。例えば、
No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製)、RAVEN1255(コロンビア製)、REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(以上、キャボット製)、Nipex 160IQ、Nipex 170IQ、Nipex 75、Printex 85、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)等があり、何れも好ましく使用することができる。
本発明では、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキとして、上記色材を用いることができ、これら4色のインキセットしても用いることができる。しかし、本発明では上述した顔料に限定されるものではなく、その他の顔料を使用してオレンジ、グリーン、ホワイト等の特色や顔料を含まないクリアを組み合わせたインキセットとして使用することができる。
本発明で使用することができる顔料の含有量としては、インキ全量に対して、0.1〜20重量%の範囲である。
本発明のインキは、既述の顔料を使用すると共に、該顔料を分散するための分散剤を含んでいても含んでいなくても良いが、分散剤を用いず(0重量%)に、自己分散型の顔料を用いる事も可能である。尚、自己分散型の顔料は、顔料表面に−COOH、−CHO、−OH、−SO3H及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上等の官能基(分散性付与基)を有するように処理された顔料であって、分散剤を別途配合せずとも、水系のインキ中で均一に分散し得るものである。ここでいう『分散』とは、自己分散型の分散が分散剤無しに水中に安定に存在している状態をいい、分散している状態のもののみならず、溶解している状態のものも含むとする。
しかし、本発明にて使用される有機溶剤の含有量が増えるほど、顔料の分散状態が破壊され、インキの保存安定性が悪化する可能性が高い。これらの背景から、筆者らが検討した結果、自己分散顔料よりも、前記顔料を分散するための分散剤を含有する方が、インキの保存安定性が良好である事が本検討にて確認された。そのため、分散剤を含有する方がより好ましい。
本発明に使用される分散剤種としては、例えば、カチオン性分散剤、アニオン性分散剤、ノニオン性分散剤や界面活性剤等が挙げられる。アニオン性分散剤の例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニル−マレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸共重合体が挙げられる。
また、アニオン性界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートのアンモニウム塩等が挙げられ、ノニオン性界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド等が挙げられ、これらの1種又は2種以上が用いられる。
本発明で使用する分散剤としては、水性顔料インキに使用される従来公知のアルカリ可溶性樹脂が使用されることが好ましく、特に限定されないが、顔料分散剤とバインダーの両方の作用を有するものの方が、なお好ましい。重量平均分子量としては吐出安定性の観点から50000以下である事が好ましく、30000以下である事がより好ましい。添加量としては、インキ全量に対して、0.30重量%以上2.00重量%以下である事が好ましく、2種類以上併用しても問題はない。0.3重量%未満では有機溶剤の添加に対し、分散安定性を維持する事が難しく、好ましくないことがある。また2.00重量%を超えると、インクジェットヘッドノズル上でインキが乾燥した際にインキ粘度が急激に上昇し、インキの吐出安定性が悪化し、印刷信頼性が低下するため好ましくないことがある。
より具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン誘導体、ビニルナフタレン誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族、脂環式、芳香族アルコールエステルなど、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル誘導体などから選ばれた2つ以上の単量体からなるランダム共重合体、グラフト共重合体あるいはブロック共重合体などが挙げられる。
ここで、(メタ)アクリル酸アルキルエステル誘導体としては、炭素数が10以上である事が好ましく、例えばデシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。また、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族、脂環式、芳香族アルコールエステルとしては、例えばマレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和2塩基酸の脂肪族、脂環式、芳香族アルコールのジエステル、ハーフエステルが挙げられる。
更に、前記分散剤を可溶化させるために、アルカリ剤を使用することが好ましい。使用するアルカリ剤種としては特に限定されないが、例えばアンモニア、第一級、第二級、もしくは第三級の有機アミン(塩基性含窒素複素環化合物を含む)および水酸化アルカリ金属からなる群から化合物が好適に使用可能である。具体的には、アンモニア水、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。なかでも、ジメチルアミノエタノールが安全面、法規制面から使用しやすく、好ましい。
本発明で記載されている、動的表面張力の意味、測定方法、理由について以下に示す。動的表面張力とは、液面が発生してからある時間経過した際の表面張力を示す。測定方法としては、バブルプレッシャー法やプレート法で測定する事が可能である。
本発明では、KRUSS社のBP100(バブルプレッシャ動的表面張力計)を使用し実施した。測定される時間は10mSと、インクジェットインキにおいて考慮される動的表面張力と比べ、非常に長い時間を経て測定されるが、測定誤差も少なく、安定した数値を測定する必要があるため、バブルプレッシャー法が好ましいと考えた。動的表面張力値としては、10ms時の値が35mN/m以下となることで、コート紙や塩化ビニルシートのような難吸収性基材に対してもインキが濡れ、印刷物品質が向上することが本検討にて確認されている。これは、インクジェットインキに一般的に使用されている界面活性剤等で、静的表面張力値を落としても、印刷基材への濡れは改善するが、印刷物品質の向上は見られない現象を説明しているものと考える。つまり、界面活性剤は液面が発生してから表面に移動するまでに時間が必要であり、液面に吸着してから作用を発現することが一般的に知られている。しかし、インクジェットインキに関しては、10pL程度の微小液滴状態で画像形成されている事から、界面活性剤が液面に移動する前にインキが乾燥固化してしまい、界面活性剤の性能が発現できない状況であるため、実際の印刷試験では印刷物品質が向上しない状態であると推測している。
更に、本発明で記載されている、インキ粘度をV1、インキ中の総溶剤量(水と有機溶剤と合計量)が50重量%となった時のインキ粘度をV2と置いた際に、乾燥粘度挙動が8<V2/V1<80となる事が好ましい理由を以下に示す。
まず、前記インキ粘度の測定は20mPa・s以下と低粘度範囲である事から、JIS Z 8809で規定されている粘度計校正用標準液で検出され、25℃、常圧下で測定された値である。測定機種は、東機産業社のTV−22型粘度計を使用し実施した。インキの乾燥粘度挙動に対しては、前記剪断減粘性付与剤の説明の際にも記載したが、インキ液滴が基材に着弾し、インキ中の溶媒が瞬時に揮発する事で、インキ粘度が急激に上昇、基材表面に固着する事により、布のような吸収性基材にもインキが浸透しないため、裏抜けせず発色性の良好な印刷物を得る事が可能となる。また、コート紙や塩化ビニルシートのような難吸収性基材に対しては、基材への浸透効果が望めない事から、高速印刷における基材表面への固着が大変難しい。そのため前記同様、基材表面にてインキが急増粘する事で基材表面に固着し、インキ中の溶媒が多い次のインキ液滴が隣に着弾したとしても、インキ液滴同士の融着が防止される事から、画像にブツブツ感が現われるようなビーディング現象や、異なる色間で滲みが現われるブリーディング現象が発生する事無く、印刷物品質を著しく向上することが可能となる。また、前記剪断減粘性付与剤を添加することにより起こる効果であり、一般的に実施されている凝集固着でない事から、発色性にも優れている。乾燥粘度挙動がV2/V1<8の場合は、高速印刷時に基材上でのドット融着が発生してしまい、印刷物品質が低下する。またV2/V1>80の場合は、インクジェットヘッドノズル上にてインキ粘度が上昇しやすくなってしまい、吐出安定性が低下し、印刷信頼性を悪化させてしまう事から、好ましくない。
更に、本発明で記載されている、気温20℃−湿度30%環境下で、5gのインキを50℃のホットプレートにて30分加熱した際に、インキの重量変化幅について0.75〜1.50gが好ましい理由を以下に示す。
まず、前記重量変化幅は、インキの揮発速度を規定する値である。乾燥粘度挙動と揮発速度が規定した数値に入る事により、インキが基材に着弾し、印刷基材上でのインキ粘度上昇が起こる事から、吸収基材への浸透や、難吸収性基材上でのインキ液滴の融着が発生しないため、印刷物品質の更なる向上が確認されている。インキの重量変化を測定する方法としては、気温20℃−湿度30%環境下で、5gのインキをメンタム缶に仕込んだ後、50℃のホットプレートにて30分放置、加熱を実施。加熱前後でのインキの重量変化を天秤にて測定し、揮発速度の数値として規定した。インキの重量変化幅が0.75g以下では、インキの保湿性能が良好であるため、インクジェットヘッド上で急激な粘度上昇が起こりにくく、吐出安定性が良好になり印刷信頼性が改善するものの、揮発速度が遅い事により、印刷基材上でのインキ粘度の急上昇が得られないため、印刷物品質の低下が起こるため、好ましくない。また、インキの重量変化幅が1.50g以上では、インキの揮発速度が速いため、印刷基材上でのインキ粘度の急上昇が起こる事により、印刷物品質の向上が確認されたものの、インクジェットヘッド上で急激な粘度上昇が起こり、吐出安定性が悪化し、印刷信頼性が低下する事から、好ましくない。
本発明で保湿剤として使用する有機溶剤は、コート紙、アート紙やポリ塩化ビニルシートなどの疎水性の高い難浸透性基材上での濡れ性及びインクジェットノズル上での保湿性を高めるという観点から、沸点が150℃以上280℃以下で、溶剤自体の表面張力が20mN/m以上35mN/m以下であり、インキ中の有機溶剤含有量はインキ全量に対して、10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。
本発明において前記保湿剤を使用する理由としては、インクジェットヘッドのノズルにてインキが乾燥しやすくなり、インキ粘度が急増粘し、吐出安定性の悪化を防ぐ事を目的としている。また、上記した好適な範囲の沸点や表面張力値を有する水溶性有機溶剤を使用すると、十分な保湿性を確保でき、優れた吐出安定性と難吸収性基材への濡れ性を劇的に改善する事ができる事から好ましい。上記範囲よりも高い沸点を有する有機溶剤を使用した場合、乾燥性が悪化するため、吐出安定性は確保できるものの、揮発し難いインキとなる事から、基材上でのインキ粘度の急増粘が起こらず、印刷物品質の低下を招くため好ましくない。また、有機溶剤の表面張力が上記範囲よりも高い場合、難吸収性基材上において十分な濡れ性が得られず、印刷物品質が悪化するため、好ましくない。
本発明で保湿剤として用いられる有機溶剤のインキにおける含有量の合計は、インキ全量に対して、10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。水溶性有機溶剤の含有量の合計が10重量%を下回るとインキの保湿性が不足し、吐出安定性が損なわれる可能性がある。また、難吸収性基材上での濡れ性が低下し印刷物品質が悪化する可能性がある。水溶性有機溶剤の含有量の合計が30重量%よりも多い場合、インキの粘度が高くなってしまい、吐出安定性を損なう可能性がある。また、インキの保存安定性や揮発速度も実用に適さなくなり、印刷物品質が悪化する可能性がある。
また、本発明の効果が小さくならない程度の好適な含有量の範囲内であれば、有機溶剤を単独もしくは複数併用することができる。
具体的な有機溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、アルカンジオール類等が挙げられる。
更に、難浸透性基材に対する浸透及び密着性を向上させる目的で、水溶性の含窒素系溶剤を添加することもできる。
前記含窒素系溶剤としては、2−ピロリドン、N−メチルピロリドン、N−エチルピロリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、3−エチル−2−オキサゾリジノン、N,N−ジメチル−β−メトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−エトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−2−エチルヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジメチル−β−オクトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ブトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ペントキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘキソキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−ヘプトキシプロピオンアミド、N,N−ジエチル−β−オクトキシプロピオンアミドなどが挙げられる。
本発明で用いられる炭素数が4以上のアルカンジオール類としては、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール等が挙げられ、単独もしくは複数使用することができる。難浸透性基材上で優れた濡れ性を得るという観点から、上記アルカンジオール類の中でも1,2−(炭素数が4〜6のアルカン)ジオール類を使用することがより好ましい。
アルカンジオール類のインキ中における含有量は、難浸透性基材上で優れた濡れ性や乾燥性を確保するという観点から、インキ全量に対して、10重量%以上25重量%以下であることが好ましく、10重量%以上20重量%以下であることがより好ましい。含有量が10重量%よりも少ない場合、インクジェットノズル上での保湿性が不十分なため、吐出安定性を損なう可能性がある。また、難浸透性基材に対するインキの濡れ性が不十分となり、画像の白抜け等が生じてしまう。25重量%よりも多い場合、インキの揮発速度が悪化し、難浸透性基材上でドットがつながり、混色滲みやドット融着による白抜け等、印刷物品質の低下につながることがある。
上記アルカンジオール類のなかでも1,2−ヘキサンジオールは、溶剤自身の表面張力が低いものの、顔料分散体に対する安定性が比較的良好であり、インキの保存安定性を悪化させる事無く、難吸収性基材に対する濡れ性を良化する事が可能である。また、乾燥過程において顔料分散体が分散を保ったままの状態で、均一なインキ塗膜の形成が可能であり、高い光沢を有する印刷物品質を得ることができるため、使用する事が好ましい。含有量としてはインキ全量に対して、10重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
本発明のインキは、表面張力を調整し基材上の濡れ性を確保する目的で界面活性剤を使用することができる。界面活性剤としては、アセチレン系、シリコン系、アクリル系、フッ素系など用途に合わせて様々なものが知られているが、インキの表面張力を十分に下げ、且つインクジェットヘッドのノズル面に使用されている撥水膜に対し、撥インキ性を維持し安定した吐出を実現するという観点から、シリコン系界面活性剤を使用することが好ましい。界面活性剤の添加量の例としては、インキの全重量に対して、インキ全量に対して、0.1〜5重量%が好ましく、インキの保存安定性の観点から0.5〜4重量%が好適である。
また、本発明のインキは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインキとするために、消泡剤、防腐剤等の添加剤を適宜に添加することができる。これらの添加剤の添加量の例としては、インキの全重量に対して、0.01〜10重量%が好適である。
更に、本発明で使用するバインダー樹脂に関しては、印字物の塗膜耐性を高めるためにバインダー樹脂を用いることができる。バインダー樹脂としては水分散性樹脂微粒子を使用することが好ましい。水性インキのバインダー樹脂としては大別して水溶性樹脂と樹脂微粒子が知られているが、一般に樹脂微粒子は水溶性樹脂と比較して高分子量であり、高い耐性を実現することができる。
水溶性樹脂は、酸価300KOHmg/g以下、かつ重量平均分子量30000未満であることが好ましい。
また、樹脂微粒子はインキの粘度を低くすることができ、より多量の樹脂をインキ中に配合することができることから、インクジェットインキの耐性を高めるのに適していると言える。樹脂微粒子の種類としてはアクリル系、ウレタン系、スチレンブタジエン系、塩化ビニル系、ポリオレフィン系等が挙げられる。
水分散性樹脂微粒子のガラス転移点温度(Tg)を高くすることで耐擦性、耐薬品性等の耐性を向上させることが可能であり、好ましくは50〜100℃の範囲であり、より好ましくは75℃〜90℃の範囲である。50℃よりも低い場合には十分な耐性が得られず、実用にて印刷物から印刷が剥がれる場合がある。また、100℃よりも高い場合には塗膜が非常に硬くなり、印刷物を折り曲げた際に印刷面にワレ、ヒビが生じる場合がある。
また、水分散性樹脂微粒子は印字物の塗膜耐性を高めるだけでなく、液滴が着弾した後に速やかに成膜することで、ドット同士の滲みを抑制し、色間の滲みのない優れた印刷品質を得ることができる。
上記したような水分散性樹脂微粒子のインキ中における含有量は、インキ不揮発分全量に対して、3〜20重量%の範囲であることが好ましい。
<インキの調製方法>
上記したような成分からなる本発明のインキの調製方法としては、下記のような方法が挙げられるが、本発明は、これらに限定されるものではない。先ず初めに、分散剤を使用した顔料分散体の作成方法を以下に記載する。まず顔料分散樹脂と、水とが少なくとも混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行い、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の顔料分散液を得る。次に、インキの作成方法を以下示す。まず、必要に応じてこの顔料分散液に、水溶性有機溶剤、或いは、上記で挙げたような適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌、必要に応じて濾過して本発明のインキとする。
本発明のインキの調製方法においては、上記で述べたように、インキの調製に分散処理を行って得られる顔料分散液を使用するか、市販の自己分散体を使用する。分散剤を使用した顔料分散体を作成する場合、顔料分散液の調製の際に行う分散処理の前に、プレミキシングを行うのが効果的である。即ち、プレミキシングは、少なくとも顔料分散剤と水とが混合された水性媒体に顔料を加えて行えばよい。このようなプレミキシング操作は、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができるため、好ましい。
上記した顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでもよいが、例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
さらに、上記した顔料のプレミキシング及び分散処理において、顔料分散樹脂は水のみに溶解もしくは分散した場合であっても、水溶性有機溶剤と水の混合溶媒に溶解もしくは分散した場合であっても良い。
本発明のインキは、インクジェット記録用であるので、顔料としては、最適な粒度分布を有するものを用いることが好ましい。即ち、顔料粒子を含有するインキをインクジェット記録方法に好適に使用できるようにするためには、ノズルの耐目詰り性等の要請から、最適な粒度分布を有する顔料を用いることが好ましい。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、下記の方法が挙げられる。先に挙げたような分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を上げると、処理時間を長くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組み合わせ等の手法がある。
<記録方法>
本発明で用いられる記録方法は、印刷基材上に付着させて印字を行うインクジェット記録方法であって、上記の水性インクジェットインキを使用したインクジェット記録方法が提供される。
<記録物>
また、本発明によれば、上記した水性インクジェットインキで印刷してなる印刷物が提供される。
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。なお、実施例中、「部」は、「重量部」を、「%」は、「重量%」を、それぞれ表す。また、顔料の平均一次粒子径、および樹脂の重量平均分子量(Mw)、酸価(KOHmg/g)は以下の通りである。
ただし、実施例1〜6、10、16,17,26は、参考例である。

樹脂の重量平均分子量(Mw)は、TSKgelカラム(東ソー社製)を用い、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC−8120GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)である。
樹脂酸価は、自動滴下装置(KEM社製、AT−610)を用い、滴下液を0.1mol/l水酸化カリウム−エタノール溶液にて滴下。サンプル量、サンプル固形分、滴定量、滴定液濃度から、酸価(KOHmg/g)を算出した。
<アルカリ可溶性樹脂1の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、トリエチレングリコールモノメチルエーテル93.4部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を110℃に加熱して、ラウリルメタクリレート35.0部、スチレン35.0部、アクリル酸30.0部、およびV−601(和光純薬製)6.0部の混合物を2時間かけて滴下し、重合反応を行った。滴下終了後、さらに110℃で3時間反応させた後、V−601(和光純薬製)0.6部を添加し、さらに110℃で1時間反応を続けて、アルカリ可溶性樹脂1の溶液を得た。アルカリ可溶性樹脂1の重量平均分子量は約16000であった。
さらに、室温まで冷却した後、ジメチルアミノエタノール37.1部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。さらに、水を200部添加し、水性化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、アルカリ可溶性樹脂1の不揮発分20%の水性化溶液を得た。アルカリ可溶性樹脂1の実測酸価は230KOHmg/gであり、重量平均分子量(Mw)で16000程度である。
<アルカリ可溶性樹脂2の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、JONCRYL 611(重量平均分子量8100、酸価55KOHmg/g)を20部、ジメチルアミノエタノール1.74部と水を78.26部添加し中和した。これは、アクリル酸を100%中和、水溶化した。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、アルカリ可溶性樹脂2の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
<アルカリ可溶性樹脂3の製造例>
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、BYK P105(重量平均分子量10000以下、酸価360KOHmg/g)を20部、ジメチルアミノエタノール11.44部と水を68.56部添加し中和、水溶化した。これは、アクリル酸を100%中和する量である。これを1gサンプリングして、180℃20分加熱乾燥して不揮発分を測定し、先に水性化した樹脂溶液の不揮発分が20%になるように水を加えた。これより、アルカリ可溶性樹脂3の不揮発分20%の水性化溶液を得た。
<水分散性樹脂微粒子1の製造例>
攪拌器、温度計、滴下ロート、還流器を備えた反応容器に、イオン交換水40部と界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬製)0.2部とを仕込み、別途、2−エチルヘキシルアクリレート10部、メチルメタクリレート57部、スチレン30部、ジメチルアクリルアミド2部、メタクリル酸1部、イオン交換水53部および界面活性剤としてアクアロンKH−10(第一工業製薬製)1.8部をあらかじめ混合しておいたプレエマルジョンのうちの1%をさらに加えた。内温を60℃に昇温し十分に窒素置換した後、過硫酸カリウムの5%水溶液10部、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液20部の10%を添加し重合を開始した。反応系内を60℃で5分間保持した後、内温を60℃に保ちながらプレエマルジョンの残りと過硫酸カリウムの5%水溶液、および無水重亜硫酸ナトリウムの1%水溶液の残りを1.5時間かけて滴下し、さらに2時間攪拌を継続した。固形分測定にて転化率が98%超えたことを確認後、温度を30℃まで冷却した。ジエチルアミノエタノールを添加して、pHを8.5とし、さらにイオン交換水で不揮発分を40%に調整して樹脂微粒子水分散体を得た。得られた樹脂微粒子水分散体を水分散性樹脂微粒子1とした。水分散性樹脂微粒子1の計算上のガラス転移点温度は80℃である。
<水性自己分散顔料分散体>
実施例で使用する自己分散顔料分散体について以下に示す。
・顔料分散体A:Cabot社製 CAB−O−JET 450C
(PB15:4シアン顔料分散体)・顔料分散体B:Cabot社製 CAB−O−JET 265M
(PR122マゼンタ顔料分散体)・顔料分散体C:Cabot社製 CAB−O−JET 470Y
(PY74イエロー顔料分散体)・顔料分散体D:Cabot社製 CAB−O−JET 400
(カーボンブラック分散体)前記顔料分散体A〜Dは、顔料表面改質技術を利用した分散体であり、自己分散体に位置付けられる。
<分散剤を含む顔料分散液の製造>
[シアン顔料分散液の製造]
顔料としてPigment Blue 15:3を20部、アルカリ可溶性樹脂1の水溶液を42.9部、水37.1部をマヨネーズ瓶に仕込み、ディスパーで予備分散した後、分散メディアとして直径0.5mmのジルコニアビーズ1800gを充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて2時間本分散を行い、シアン顔料分散液を得た。このシアン顔料分散液を顔料分散液Eとした。
[マゼンタ顔料分散液の製造]
顔料としてPigment Red 122を20部に変えた以外は、シアン顔料分散液Fと同様の方法で、マゼンタ顔料分散液を得た。このマゼンタ顔料分散液を顔料分散液とした。
[イエロー顔料分散液の製造]
顔料としてPigment Yellow 120を20部に変えた以外は、シアン顔料分散液と同様の方法で、イエロー顔料分散液を得た。このイエロー顔料分散液を顔料分散液Gとした。
[ブラック顔料分散液の製造]
顔料としてカーボンブラックを20部に変えた以外は、シアン顔料分散液と同様の方法で、ブラック顔料分散液を得た。このブラック顔料分散液を顔料分散液Hとした。
実施例、比較例で使用する水溶性有機溶剤について以下に示す。
<水溶性有機溶剤>
・PGMME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
(沸点:120℃・表面張力:25.4mN/m)・DMTEG:テトラエチレングリコールジメチルエーテル
(沸点:275℃・表面張力:33.0mN/m)・BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
(沸点:230℃・表面張力:27.9mN/m)・MMB:3−メチル−3−メトキシブタノール
(沸点:174℃・表面張力:29.7mN/m)・MEG:エチレングリコールモノメチルエーテル
(沸点:124℃・表面張力:29.9mN/m)・GLY:グリセリン (沸点:290℃・表面張力:62.0mN/m)
<アルカンジオール類>
・1,2−PD:1,2−プロパンジオール
(沸点:187.6℃・表面張力:35.1mN/m)・1,2−BD:1,2−ブタンジオール
(沸点:194℃・表面張力:31.6mN/m)・1,2−HexD:1,2−ヘキサンジオール
(沸点:224℃・表面著力:25.9mN/m)
<実施例1〜34,比較例2〜9>
上記の顔料分散体A〜H用いて表1,3,4に記載のとおりのインキを作成。自己分散体を使用する場合は顔料分散体A〜Dを、樹脂分散体を用いる場合は顔料分散体E〜Hと各原料をディスパーにて撹拌を行いながら混合。十分に均一になるまで攪拌した後、1μmおよび0.45μmのメンブランフィルターで濾過を行い、ヘッドつまりの原因となる粗大粒子を除去しインキを調製した。調製したシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの4色のインキを1組のインキセットとし、表1,3,4に示す組成の異なる実施例1〜34,比較例2〜9のインキセットを得た。これらのインキセットを用いて以下の評価を行った。
調製したインキの評価方法について下記に示す。
<評価1:吐出安定性試験>
実施例1〜34、比較例1〜9で得られたインキについて、25℃の環境下でピエゾ素子を有する京セラ社製インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターである、(株)トライテック社製One Pass JETにシリンジにより注入。インクジェットヘッドノズル部分にキャップ等の密閉保管処置をせずに、室温にて数分放置。その後、インクジェットヘッドノズルのクリーニング等を行わずに、ノズルチェックパターンを印字してノズル抜けの有無を確認し評価を行った。評価基準は下記のとおりである。
1:室温5分以下で放置で、インクジェットヘッドからインキが吐出できない。
2:室温5〜10分以下で放置で、インクジェットヘッドからインキが吐出できない。
3:室温10〜20分以下で放置で、インクジェットヘッドからインキが吐出できない。
4:室温20〜30分以下で放置で、インクジェットヘッドからインキが吐出できない。
5:室温30分以上放置でも、インクジェットヘッドからインキが安定して吐出する事が可能。
<評価2:塗膜耐性の評価>
実施例1〜34、比較例1〜9で得られたインキについて、25℃の環境下でピエゾ素子を有するエプソン社製インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンター(武藤工業社製インクジェットプリンターVJ−1608HSJ)に充填し、60℃に加温しながら印字率100%のベタ印刷を実施。印刷基材としてポリ塩化ビニルシート(PVC)であるメタマーク社製MD−5を使用して印字を行った後、印刷物を70℃で3分間加熱乾燥。得られた印刷物を学振型摩擦堅牢試験機AB−301(テスター産業株式会社製)を用いて、荷重500g,摩擦回数100回の条件で、摩擦用白綿布(カナキン3号)を取り付けた摩擦子と印字サンプルとを擦り合わせ、画像の表面状態を目視にて観察した。評価基準は下記のとおりであり、4、5の評価であると耐擦性に優れた画像を形成していると判断できる。
1:摩擦回数20回未満で、印刷基材が見えるほどインキ塗膜がとれる
2:摩擦回数20回以上50回未満で、印刷基材が見えるほどインキ塗膜がとれる
3:摩擦回数50回以上100回未満で、印刷基材が見えるほどインキ塗膜がとれる
4:カナキンにインキの付着が僅かにあるが、印刷基材は見えない
5:カナキンにインキの付着が全くない
<評価3:サイングラフィック用プリンターを用いた、布基材での印刷品質確認試験>
実施例1〜34、比較例1〜9で得られたインキについて、25℃の環境下でピエゾ素子を有するエプソン社製インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンター(武藤工業社製インクジェットプリンターVJ−1608HSJ)に充填し、下記基材を60℃に加温しながら印字率100%のベタ印刷をG1モード(解像度:720×1080dpi−印刷物生産速度:8m2/h)にて実施。印刷物の白抜け度合の目視確認と、印字率100%での濃度(OD値)を測色機(X−rite社製 eye−one pro)にて測定し確認。評価基準は下記の通り。
1:基材によってインキの濡れが異なるため、ドット融着や印刷基材への浸透による印字
率100%印刷部分の白抜けが存在する印刷物があり、印刷基材違いでの印字率10
0%でのOD値の差が±1.50以上である。
2:基材によってインキの濡れが異なるため、ドット融着や印刷基材への浸透による印字
率100%印刷部分の白抜けが存在する印刷物があり、印刷基材違いでの印字率10
0%でのOD値の差が±0.75以上±1.50未満である。
3:基材に関わらずインキが十分に広がり目視で白抜けはないが、印字率100%のOD
値差が±0.5以上±0.75未満である。
4:基材に関わらずインキが十分に広がり目視で白抜けはないが、印字率100%のOD
値差が±0.5未満である。
5:基材に関わらずインキが十分に広がり目視で白抜けはないが、印字率100%のOD
値差が±0.3未満である。
(評価基材)
・ポリ塩化ビニルシート(PVC):メタマーク社製MD−5
・コート紙:王子製紙社製OKトップコート+
・布基材:デュポン社製TYVEK1082D
<評価4:1Passプリンターによる、高速印刷時での印刷物画像品質確認>
実施例1〜34、比較例1〜9で得られたインキについて、25℃の環境下でピエゾ素子を有する京セラ社製インクジェットヘッドを搭載したインクジェットプリンターである、(株)トライテック社製One Pass JETにシリンジにより注入。印刷基材搬送速度50m/分と25m/分の2条件で印字率100%でのベタ印刷を実施し、画像品質を評価した。評価基材は王子製紙社製OKトップコート+(コート紙)を使用し、4、5の評価であると良好とした。
1:25m/分・50m/分共に、ベタ印刷画像に多数のスジや滲みが発生する。
2:25m/分ではベタ印刷画像で数本のスジが発生し、50m/分では多数のスジや滲
みが発生する。
3:25m/分・50m/分共に、ベタ印刷画像で数本のスジが発生する。
4:25m/分ではベタ印刷画像が完全に埋まるが、50m/分では数本のスジが発生す
る。
5:25m/分・50m/分共に、ベタ印刷画像が完全に埋まる。
表1に実施例1〜15のインキ処方を記載。各インキの粘度、10mS時の動的表面張力値、又は上記4つの評価結果を表2に示す。
表1
Figure 0006233166
表2
Figure 0006233166
実施例1〜15では請求項の範囲内の水、色材、有機溶剤および剪断減粘性付与剤として酸価200KOHmg/g以上のビニル重合ポリマーを含有するインキであって、インキ粘度をV1と置いた際に、インキ粘度が4mPa・s<V1<20mPa・sであり、動的表面張力を測定した際に10mS時の値が35mN/m以下であるインキを使用し、インクジェットプリンターにて印刷する事により、高速印刷でも難吸収性基材だけでなく、非加工の普通紙や布基材のような浸透性基材に対しても優れた印刷物を提供する事ができ、且つインクジェットノズルからの吐出安定性、塗膜耐性に優れる水性インクジェットインキが得られている。
実施例1〜5にて、剪断減粘性付与剤や水溶性樹脂等の種類・添加量を振る事により、塗膜耐性や多基材に対する印刷物品質の改善傾向を確認。しかし実施例6〜10より、自己分散体から樹脂分散体への変更、剪断減粘性付与剤の種類や添加量の増減により、吐出安定性の悪化や、多基材に対する印刷物品質の低下を確認。また、実施例1〜10までの処方では、評価4に用いられている高速印刷時の印刷物品質が良好となる傾向は見られない。一方、実施例11〜15ではインキ中に使用されている溶剤種を変更する事により、塗膜耐性や多基材での印刷物品質だけではなく、吐出安定性や高速印刷時の印刷物品質においても良好な結果が得られいる。これらの結果から筆者らは、剪断減粘性付与剤に酸価200KOHmg/g以上の架橋型ポリマーを使用し、インキ粘度、動的表面張力を調整するだけではなく、他のパラメーターをコントロールする事により、全ての評価項目で良好な結果を得られると推測。継続評価を実施例16〜34にて実施した。
実施例16〜34、比較例1〜9を表3,4に示す処方にてインキを作成。インキ粘度や、10mS時の動的表面張力に加え、乾燥によるインキ粘度挙動、50℃−30分加温によるインキの揮発速度等のパラメーターを新たに追加測定し、実施例1〜15と同様の評価を実施した。表5,6に結果を示す。
尚、比較例1はサイングラフィック用インクジェットプリンターに搭載されている、Eco−Sol Maxインキ(溶剤インクジェットインキ)を用い、評価を実施した。
表3
Figure 0006233166
表4
Figure 0006233166
表5
Figure 0006233166
表6
Figure 0006233166
実施例17〜21にて、剪断減粘性付与剤の種類や添加量を振る事により、吐出安定性の改善傾向を確認。また、実施例21,23にて顔料分散体が自己分散から樹脂分散へ、バインダー樹脂をアルカリ可溶性樹脂1から水分散性樹脂微粒子1へ変更する事により、吐出安定性の劇的な改善を確認。前記の組み合わせに加え、添加溶剤の種類と量を振り、50℃−30分加温でのインク重量変化幅をコントロールすることにより、実施例28〜34にて吐出安定性に優れた水性インクジェットインキが得られている。
実施例17に関しては、バインダー樹脂にアルカリ可溶性樹脂1を用いる事で、塗膜耐性の向上を確認。また、実施例21〜23にて分散体を樹脂分散へ、バインダー樹脂を水分散性樹脂微粒子1へ変更する事により、塗膜耐性が改善。特にバインダー樹脂を変更した実施例22〜23にて塗膜耐性を著しく改善した水性インクジェットインキが得られている。
実施例16,21,22,24,26に関して、インキを50℃−30分間加熱した際のインキ重量変化幅が1.3g以上になる事により、インキが印刷基材へ着弾後、剪断減粘性付与剤の効果によって急増粘し、基材に浸透し難くなり、基材表面で塗膜化する事により、難吸収性基材または吸収性基材の何れにおいても、画像品質が良好であり、且つ基材の種類に関わらず発色性が良好な印刷物を作成する事が可能な水性インクジェットインキが得られている。また、実施例27〜30にて剪断減粘性付与剤存在下で、有機溶剤に1,2−アルカンジオールを、バインダー樹脂に水分散性樹脂微粒子1を使用する事で、インキを50℃−30分間加熱した際のインキ重量変化幅が1.3g以下となるものの、基材の種類に関わらず発色性が良好な印刷物を作成する事が可能な水性インクジェットインキが得られている。理由としては、インキ原料として使用している、1,2−アルカンジオールが水分散性樹脂微粒子1の分散状態を破壊しやすい溶剤であり、基材表面にインキが着弾した後、インキ中の水が揮発すると共に、1,2−アルカンジオールが水分散性樹脂微粒子1の分散状態を破壊し樹脂を溶解する事により、インキ粘度が急激に増粘し塗膜化する。このようにインキの揮発速度が遅くなるにも関わらず、インキの乾燥粘度挙動をコントロールすることができた事により、前記評価にて紹介した吐出安定性と、基材種に関わらず発色性に優れた印刷物の生産を両立することが可能な水性インクジェットインキが得られている。
実施例21,22,24,26に関して、インキの乾燥粘度挙動であるV2/V1>30であり、且つインキを50℃−30分間加熱した際のインキ重量変化幅が1.3g以上になる事により、高速印刷条件下でも抜けや滲みが発生し難く、画像品質が良好な印刷物を得る事が可能な水性インクジェットインキが得られている。また、実施例29,31,32,34では、1,2−ヘキサンジオールを一定量以上使用し、インキの動的表面張力を32mN/m以下とする事で、インキを50℃−30分間加熱した際のインキ重量変化幅が1.3g以下となるが、高速印刷条件下でも良好な画像品質の印刷物を得る事が可能な水性インクジェットインキが得られている。理由としては、インキの動的表面張力が下がる事により、印刷基材へのインキの濡れがより改善され、インキ1滴が構成するドットの直径が大きくなる。また、インキ中に剪断減粘性付与剤が存在する事と1,2−ヘキサンジオールが水分散性樹脂微粒子1を溶解する事により、印刷基材上でのインキ粘度の急増粘が発生。これらの複合作用により、初弾のインキ液滴が印刷基材に着弾後、次弾のインキ液滴が短い時間内に初弾インキドットの隣に着弾したとしても、インキ液滴同士の融着が防止され、画像にブツブツ感が現われるようなビーディング現象や、異なる色間で滲みが現われるブリーディング現象が発生し難くなる事から、印字率100%のベタ印刷部でも抜けや滲みの無い印刷物を得る事が可能となる。このようにインキの揮発速度が遅くなるにも関わらず、インキの動的表面張力調整による印刷基材への濡れや、インキの乾燥粘度挙動をコントロールすることができた事により、吐出安定性と、高速印刷条件下においても優れた品質の印刷物生産を両立することが可能な水性インクジェットインキが得られている。
一方、本発明の範囲外である比較例においては全ての評価項目を満足し、実用可能な品質のインキとすることができないことが示されている。溶剤インキを使用している比較例1においては、動的表面張力が低いものの、乾燥粘度挙動やインキを50℃−30分間加熱した際のインキ重量変化幅が小さく、インキの揮発速度が遅いために、布基材のような浸透性基材において発色性が低下し、画像品質の悪化が著しい事が確認された。また、高速印刷条件下での印刷物描画性能が著しく悪い結果となっている。インキの動的表面張力が35mN/m以上である比較例2の水性インキであるが、印刷基材への濡れが悪いため、何れの印刷基材においてもビーディングやブリーディング現象が発生し、印刷物品質が著しく悪い結果となっている。比較例3,4では、剪断減粘性付与剤を除いたインキ組成で検討を行っているが、インキ粘度V1が4mPa・s以下であることにより吐出安定性が悪化。また、インキ粘度を4mPa・s以上にする為、インキ中の添加溶剤量が多くなる事により、インキを50℃−30分間加熱した際のインキ重量変化幅が0.75g以下となる事で、基材上での粘度上昇が遅くなり、得られる印刷物品質が低下する結果となっている。比較例5では、剪断減粘性付与剤を添加したとしても、添加量のコントロールをしていない事により、インキ粘度V1が20mPa・s以上になってしまい、吐出安定性が悪化してしまう事が確認されている。
剪断減粘性付与剤として酸価200KOHmg/g以下の架橋型ポリマーを使用している比較例6,7に関しては、酸価が小さいことにより顔料分散体や水分散性樹脂微粒子と3次元網目構造を形成する為の吸着点が少ないため、印刷基材上にインキが着弾した際にインキ粘度の急増粘が起こらず、吸収基材ではインキが基材へ浸透してしまい、難吸収性基材ではドット融着が発生する事により、印刷物品質が悪化してしまっている。また比較例8,9に関しては、剪断減粘性付与剤として多糖類であるマルチトースや、天然高分子であるケルザンAR(キサンタンガム)を用いることにより、水に溶解し易い点や分子量が大きい点等から、吐出安定性や塗膜耐性の低下が確認されている。

Claims (10)

  1. 少なくとも水、色材、有機溶剤および酸価200KOHmg/g以上のビニル重合ポリマーを含有するインキであって、
    前記有機溶剤の、沸点が150℃以上280℃以下かつ、表面張力が20mN/m以上35.1mN/m以下であり、インキ全体に対する有機溶剤含有量が10重量%以上40重量%以下であり、
    前記ビニル重合ポリマーが、エマルジョンタイプであり、インキ全体に対するビニル重合ポリマーの固形分含有量が0.01重量%以上0.33重量%以下であり、
    25℃における該インキの粘度(V1)が、4mPa・s<V1<20mPa・sであり、25℃で動的表面張力を測定した際の10mS時の値が35mN/m以下である事を特徴とする水性インキ。
  2. 更に、インキ中の有機溶剤量が当初の総溶剤量(水と有機溶剤と合計量)の50重量%に減量した際のインキの粘度(V2)が、8<V2/V1<80である事を特徴とする、請求項1記載の水性インキ。
  3. 更に、気温20℃−湿度30%の環境下で5gのインキを50℃のホットプレートを用い30分加熱した際の重量変化幅が、0.75g以上1.50g以下であることを特徴とする、請求項1または2記載の水性インキ。
  4. 有機溶剤である炭素数4以上のアルカンジオール類が、インキ全体に対して10重量%以上25重量%以下含まれることを特徴とする、請求項1〜いずれか記載の水性インキ。
  5. 有機溶剤である1,2−ヘキサンジオールが、インキ全体に対して10重量%以上20%重量以下含まれることを特徴とする、請求項1〜いずれか記載の水性インキ。
  6. 更に、酸価300KOHmg/g以下、かつ重量平均分子量30000未満の水溶性樹脂と、アルカリ剤とを含有する、請求項1〜いずれかに記載の水性インキ。
  7. 更に、界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1〜いずれか記載の水性インキ。
  8. 請求項1〜いずれか記載の水性インキを含むインキセットであって、
    シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、ブラックインキを含むインキセット。
  9. 請求項1〜いずれか記載の水性インキの液滴を吐出させ、印刷基材上に付着させて印字を行うインクジェット記録方法。
  10. 請求項1〜いずれか記載の水性インキで印刷してなる印刷物。
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