JP6232907B2 - 融合細胞およびその作製方法 - Google Patents

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Description

本発明は、融合細胞およびその作製方法に関する。
現在までに、高いタンパク質生産能を有する細胞株の開発を目的とする多くの研究が行われている。特に、高品質タンパク質(例、抗体等のタンパク質医薬)の商業生産のための汎用細胞(例、CHO細胞)を利用して、このような細胞株を開発することが求められている。例えば、このような細胞株を作製するため、特殊な発現ベクターを利用する技術などが開発されている(特許文献1)。
ところで、タンパク質の生産能の向上を目的としたものではないものの、他の細胞改変技術も知られている。このような技術としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)を用いた細胞融合が知られている(非特許文献1)。
特開2011−152117号公報
Somatic Cell Genetics,vol.1,No.4,1975,pp397−400
上述したとおり、高いタンパク質生産能を有する細胞株の開発が行われているが、高いタンパク質生産能を有する細胞株の出現頻度は実際には低く、また、初期には高いタンパク質生産能を有していた細胞株も、数回の継代後には、高いタンパク質生産能を保持しなくなることが多い。したがって、高いタンパク質生産能を安定的に保持する細胞株の樹立は困難であった。
また、タンパク質の大量生産では、細胞の浮遊培養が採用されており、それ故、浮遊培養用に樹立された細胞株が適宜用いられている。これは、タンパク質の大量生産では、できるだけ多くの細胞を、限られた敷地面積において効率良く培養することが求められているためである。したがって、タンパク質の大量生産では、通常、細胞の接着培養は採用されておらず、接着培養に適した細胞株の開発は行われていない。
さらに、上述したタンパク質の大量生産に用いられている、浮遊培養用に樹立された細胞株は、血清含有培地を含む巨大な培養槽中で培養されており、それにより、高いタンパク質生産能を実現している。したがって、タンパク質を従来法で大量生産するためには、血清含有培地からタンパク質を精製する必要がある。タンパク質(例、抗体等のタンパク質医薬)の大量生産では、スケール・メリットの観点より、血清含有培地からタンパク質を精製する負担を軽減し得るが、種々のタンパク質を小規模で個別に生産することが求められる場合には、血清含有培地からのタンパク質の精製は、過度の負担になり、コストの上昇を招き易い。血清は高価であり、またロット間の品質の差異も大きいため、血清の使用の回避も求められている。したがって、無血清培地中で良好に培養可能な細胞株の開発が求められている。しかしながら、無血清培地中で浮遊・増殖する細胞は報告されているものの、無血清培地中で良好に接着・増殖する細胞は知られていない。
本発明者は、鋭意検討した結果、所定の特性を有する細胞がタンパク質生産能に優れることを見出した。本発明者はまた、同調化された細胞を人為的に融合させることにより、そのような特性を有する細胞を作製できることを見出した。本発明者は、驚くべきことに、同調融合により作製された融合細胞が、そのような特性およびタンパク質の高い生産能を、継代後も安定的に保持し続けることなどをさらに見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕同調化された細胞を人為的に融合させることを含む、融合細胞の作製方法。
〔2〕細胞を同調化させることをさらに含む、〔1〕の方法。
〔3〕細胞の同調化が、細胞周期のM期で細胞を停止させることにより行われる、〔2〕の方法。
〔4〕細胞の同調化が微小管阻害剤を用いて行われる、〔2〕または〔3〕の方法。
〔5〕微小管阻害剤がチューブリン重合阻害剤である、〔4〕の方法。
〔6〕以下の特性を有する、融合細胞:
a)融合に用いられた元の細胞に比し1.3倍のサイズ;
b)融合に用いられた元の細胞に比し1.3倍複雑な細胞内構造;および
c)融合に用いられた元の細胞に比し向上したタンパク質生産能。
〔7〕融合細胞が哺乳動物由来である、〔6〕の融合細胞。
〔8〕融合細胞が、無血清培地中で培養したときに扁平状に伸展した接着細胞として増殖する能力を有する細胞である、〔6〕または〔7〕の融合細胞。
〔9〕扁平状に伸展した接着細胞の長径が70μm以上である、〔8〕の融合細胞。
〔10〕融合細胞がチャイニーズハムスター卵巣細胞またはその亜株由来である、〔6〕〜〔9〕のいずれかの融合細胞。
〔11〕タンパク質の発現ベクターを含む、〔6〕〜〔10〕のいずれかの融合細胞。
〔12〕同調化された細胞を人為的に融合させることにより得られる細胞である、〔6〕〜〔11〕のいずれかの融合細胞。
〔13〕〔6〕〜〔12〕のいずれかの融合細胞を培地中で培養することを含む、タンパク質の製造方法。
〔14〕タンパク質が抗体である、〔13〕の方法。
〔15〕培地が無血清培地である、〔13〕または〔14〕の方法。
本発明の方法は、タンパク質の高い生産能を有する細胞、および分泌タンパク質の高い分泌能を有する細胞などの作製に有用である。
本発明の方法はまた、細胞融合の材料として接着細胞を用いた場合には、接着培養に適した細胞の作製に有用である。
本発明の方法はさらに、無血清培地中で良好に培養できる細胞、特に無血清培地中で良好に接着培養できる細胞の作製に有用である。
図1は、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株の染色体核酸量を、FCM解析(ゲート細胞% vs.蛍光強度)により示す図である。コントロールとして、通常のCHO細胞を同様に解析した。目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株(VDSC42M/CHO)および通常のCHO細胞は、約200の蛍光強度に、ほぼ重なったシャープな主要ピークを示した。 図2は、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の染色体核酸量を、FCM解析(ゲート細胞% vs.蛍光強度)により示す図である。コントロールとして、通常のCHO細胞を同様に解析した。目的タンパク質を大量に生産する能力を有する安定な2種のCHO細胞株のうち、VDSC1M/CHOは、約300の蛍光強度にシャープな主要ピークを示し、VDSC46M/CHOは、約350の蛍光強度にブロードなピークを示した。通常のCHO細胞は、約200の蛍光強度にシャープな主要ピークを示した。 図3は、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株のサイズ(表面積)を、FCM解析(ゲート細胞% vs.前方散乱)により示す図である。コントロールとして、通常のCHO細胞を同様に解析した。目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株(VDSC42M/CHO)および通常のCHO細胞は、約200のFSに、ほぼ重なったシャープな主要ピークを示した。 図4は、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株のサイズを、FCM解析(ゲート細胞% vs.前方散乱)により示す図である。コントロールとして、通常のCHO細胞を同様に解析した。目的タンパク質を大量に生産する能力を有する安定な2種のCHO細胞株のうち、VDSC1M/CHOは、約300のFSに高い主要ピーク(約0.6のゲート細胞%)を示し、VDSC46M/CHOは、約300のFSに低いピーク(約0.4のゲート細胞%)を示し、これらのピークは重なっていた。通常のCHO細胞は、約200のFSにシャープな主要ピークを示した。 図5は、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株の細胞内構造の複雑さを、FCM解析(ゲート細胞% vs.側方散乱)により示す図である。コントロールとして、通常のCHO細胞を同様に解析した。目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株(VDSC42M/CHO)は、約180のSSにおいてシャープな主要ピークを示した。通常のCHO細胞は、約190のSSにおいてシャープな主要ピークを示した。 図6は、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の細胞内構造の複雑さを、FCM解析(ゲート細胞% vs.側方散乱)により示す図である。コントロールとして、通常のCHO細胞を同様に解析した。目的タンパク質を大量に生産する能力を有する安定な2種のCHO細胞株のうち、VDSC1M/CHOは、約300のSSに主要ピークを示し、VDSC46M/CHOは、約400のSSを中心として非常にブロードな存在を示した。通常のCHO細胞は、約190のSSにシャープな主要ピークを示した。 図7は、融合細胞の染色体核酸量を、FCM解析(ゲート細胞% vs.蛍光強度)により示す図である。コントロールとして、細胞融合に用いられた元のCHO細胞を同様に解析した。CHO細胞では、約200および約370の蛍光強度に、シャープなピークが認められた。前者のピークは、非分裂期の細胞に対応し、後者のピークは、分裂期の細胞(細胞分裂のため、染色体数が2倍に増幅中)に対応すると考えられる。一方、融合細胞では、約400の蛍光強度に、主要ピークが認められた。また、蛍光強度の値は染色体核酸量と比例し得ることから、約400の蛍光強度に対応する融合細胞の染色体核酸量は、元のCHO細胞の染色体核酸量に比し、約2倍であると見積られた。また、約600の蛍光強度でも約0.14のゲート細胞(%)が認められた。約600の蛍光強度に対応する融合細胞の染色体核酸量は、元のCHO細胞の染色体核酸量に比し、約3倍であると見積られた。 図8は、融合細胞のサイズを、FCM解析(ゲート細胞% vs.前方散乱)により示す図である。コントロールとして、細胞融合に用いられた元のCHO細胞を同様に解析した。CHO細胞では、約200のFSに、シャープなピークが認められた。一方、融合細胞では、約300のFSに、ブロードなピークが認められた。また、FSの値は細胞サイズと比例し得ることから、約300のFSに対応する融合細胞のサイズは、元のCHO細胞のサイズに比し、約1.5倍であると見積られた。また、約400および約600のFSでも一定のゲート細胞(%)が認められた。約400および約600のFSに対応する融合細胞のサイズは、それぞれ、元のCHO細胞のサイズに比し、約2倍および約3倍であると見積られた。 図9は、融合細胞の細胞内構造の複雑さを、FCM解析(ゲート細胞% vs.側方散乱)により示す図である。コントロールとして、細胞融合に用いられた元のCHO細胞を同様に解析した。CHO細胞では、約180のSSに、シャープなピークが認められた。一方、融合細胞では、約400のSSに、ブロードなピークが認められた。また、SSの値は細胞内構造の複雑さと比例し得ることから、約400のSSに対応する融合細胞の細胞内構造の複雑さは、元のCHO細胞の細胞内構造の複雑さに比し、約2.2倍であると見積られた。また、約600および約800のSSでも一定のゲート細胞(%)が認められた。約600、約800および約1000のSSに対応する融合細胞の細胞内構造の複雑さは、それぞれ、元のCHO細胞の細胞内構造の複雑さに比し、約3.3倍、約4.4倍および約5.6倍であると見積られた。 図10は、血清含有培地または無血清培地中に蒔いて2日間培養されたCHO細胞および融合細胞(樹立後約2ヶ月経過)の顕微鏡図を示す図である。 図11は、外来タンパク質(hMGFP)発現ベクターが導入されたCHO細胞および融合細胞により発現される外来タンパク質量の相対的な比較を、FCM解析(ゲート細胞% vs.蛍光強度)により示す図である。 図12は、外来タンパク質(hMGFP)発現ベクターが導入されたCHO細胞により発現される外来タンパク質量を、FCM解析(ゲート細胞% vs.蛍光強度)により、相対的に示す図である(GFP:hMGFP)。表1もまた参照のこと。 図13は、外来タンパク質(hMGFP)発現ベクターが導入された融合細胞により発現される外来タンパク質量を、FCM解析(ゲート細胞% vs.蛍光強度)により、相対的に示す図である(GFP:hMGFP)。表2もまた参照のこと。 図14は、ニワトリIgM発現ベクターが導入されたCHO細胞および融合細胞によるニワトリIgM分泌レベルを示す図である。 図15は、マウスIgG発現ベクターが導入されたCHO細胞および融合細胞によるマウスIgG分泌レベルを示す図である。
本発明は、融合細胞の作製方法を提供する。本発明の方法は、同調化された細胞を人為的に融合させることを含む。同調化された細胞の融合は、人為的に行われる。換言すれば、同調化された細胞の融合は、インビボでは行われず、代表的にはインビトロで行われる。したがって、融合に用いられる細胞は、単離または精製された細胞であり得る。
本発明の方法において材料として用いられる細胞は、細胞核を有する真核細胞である。細胞核を有する真核細胞が細胞融合可能であることは、当該技術分野における技術常識である。このような真核細胞としては、単細胞生物(例、酵母)、多細胞生物由来の細胞が挙げられる。多細胞生物由来の細胞としては、例えば、昆虫細胞、植物細胞、鳥類(例、ニワトリ)細胞、および哺乳動物等の動物の細胞が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、げっ歯類(例、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ)、愛玩動物(例、イヌ、ネコ)、家畜または使役動物(例、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)が挙げられる。
細胞が動物細胞に由来する場合、動物細胞は、任意の組織に由来し得る。このような組織としては、例えば、呼吸器系組織(例、肺、気管、気管支、咽頭、鼻腔、副鼻腔)、消化器系組織(例、胃、小腸、大腸、直腸)、膵臓、腎臓、肝臓、胸腺、脾臓、心臓、甲状腺、副腎、前立腺、卵巣、子宮、脳、皮膚、筋肉、血管、および血液組織(例、骨髄、末梢血)が挙げられる。細胞はまた、上記組織以外の組織に存在する細胞であり得る。このような細胞としては、例えば、腺細胞(例、肺腺細胞、乳腺細胞)、上皮細胞、内皮細胞(例、動脈および静脈等の血管内皮)、表皮細胞、間質細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、メサンギウム細胞、膵β細胞、神経細胞、グリア細胞、および血球細胞が挙げられる。細胞はまた、正常細胞または癌細胞であり得る。細胞はさらに、接着細胞または浮遊細胞であり得る。細胞はまた、初代培養細胞または細胞株であり得る。細胞はまた、分化細胞(例、終末分化細胞)であり得る。細胞はまた、幹細胞(例、iPS等の人工多能性幹細胞、胚性幹細胞および体性幹細胞等の天然多能性幹細胞)等の未分化細胞またはその分化細胞であり得る。
細胞融合では、少なくとも2つの細胞が融合される。ここで、2つの細胞は、同種であっても異種であってもよい。用語「異種」とは、細胞種が異なることを意味する。本発明の方法では、細胞融合に用いられる細胞の由来が異なることを意味し、代表的には、異なる動物種由来の細胞、および同一の動物種由来の異なる組織等に由来する細胞が意図される。異種細胞の融合により作製される細胞としては、ハイブリドーマが有名である。好ましくは、融合される少なくとも2つの細胞は互いに同種である。
特定の実施形態では、細胞融合に用いられる細胞は、高品質タンパク質(例、抗体等のタンパク質医薬)の商業生産のために汎用されている細胞であってもよい。このような細胞としては、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞およびその亜株(例、CHO−K1、DG44)、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞およびその亜株が挙げられる。
細胞融合法としては、種々の方法が知られている。このような方法としては、例えば、電気刺激法、センダイウイルス等のウイルスを用いる方法、ポリアルキレングリコール(例、ポリエチレングリコール)等のアルキレングリコール重合体を用いる方法が挙げられる。本発明では、これらの既知の方法を用いることができるが、アルキレングリコール重合体を用いる方法が好ましい。
本発明の方法では、同調化された細胞が用いられる。細胞の同調化とは、細胞における細胞周期の期(phase)を合わせることをいう。このような期としては、例えば、静止期(G0期)、間期におけるG1期、S期およびG2期、ならびに細胞分裂期(M期)が挙げられる。細胞周期の特定期の研究目的のため、種々の方法が、細胞周期の同調化に汎用されており、例えば、低分子有機化合物、抗体および核酸分子(例、siRNA)等の細胞周期停止剤を用いる方法、ならびに特殊な細胞処理等の方法が知られている。本発明では、このような手法を利用することができる。汎用される細胞周期停止剤としては、例えば、S期停止剤(例、高濃度チミジン、アフィディコリン)、およびM期停止剤が挙げられる。M期停止剤としては、例えば、微小管阻害剤(例、チューブリン重合阻害剤およびチューブリン脱重合阻害剤)が挙げられる。チューブリン重合阻害剤としては、例えば、ノコダゾール、コルヒチン、コルセチン、コルセミド、ビンカアルカロイド(例、ビンブラスチン、ビンクリスチン)、グリセオフルビン、2−メトキシエストラジオール、リゾキシン、5HPP−33が挙げられる。チューブリン脱重合阻害剤としては、例えば、タキサン化合物(例、パクリタキセル、ドセタキシル)が挙げられる。また、細胞分裂期には器壁から細胞が剥がれ易くなる性質を利用して、物理的刺激を加えて分裂期の細胞を特異的に回収する方法も知られている。したがって、トリプシン等のペプチダーゼを使用せず、物理刺激を加えて細胞を回収することにより、分裂期の細胞を特異的に回収することができる。好ましくは、細胞の同調化は、細胞周期停止剤を用いて、細胞を細胞周期の特定期に停止させることにより行われる。
本発明はまた、融合細胞を提供する。本発明の融合細胞は、単離または精製されていてもよい。あるいは、本発明の融合細胞は、複数の細胞の集団の形態で提供されてもよい。本発明の融合細胞が複数の細胞の集団の形態で提供される場合、当該複数の細胞は、後述する種々の特性を平均値として有する(例えば、融合に用いられた元の細胞に比し平均1.3倍のサイズ、融合に用いられた元の細胞に比し平均1.3倍複雑な細胞内構造、および融合に用いられた元の細胞に比し、平均的に向上したタンパク質生産能)。
本発明の融合細胞は、細胞核を有する複数(例、2個または3個)の真核細胞の融合により得られる、正常数(2倍体)を超える染色体数を有する細胞である。例えば、融合細胞は、3倍体〜8倍体の染色体数を有する。染色体数が大きくなると、細胞の増殖が遅くなり、細胞分裂速度の低下に伴い生産されるタンパク質の総量も低下し得ることから、染色体数は、好ましくは、6倍体以下である。より好ましくは染色体数は、4倍体である。本発明の融合細胞の染色体数は、例えば、実施例中に開示されるように、ヨウ化プロピジウム染色後にフローサイトメーターを用いて染色体核酸量を測定することにより、評価することができる。本発明の融合細胞は、例えば、上述した本発明の方法により得ることができる。
本発明の融合細胞は、本発明の方法において材料として用いられる細胞の種類に応じて、単細胞生物(例、酵母)、または多細胞生物由来の細胞に由来し得る。多細胞生物由来の細胞としては、例えば、昆虫細胞、植物細胞、鳥類(例、ニワトリ)細胞、および哺乳動物等の動物の細胞が挙げられる。哺乳動物としては、例えば、霊長類(例、ヒト、サル、チンパンジー)、げっ歯類(例、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ)、愛玩動物(例、イヌ、ネコ)、家畜または使役動物(例、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ)が挙げられる。
本発明の融合細胞が動物細胞に由来する場合、動物細胞は、任意の組織に由来し得る。このような組織としては、例えば、呼吸器系組織(例、肺、気管、気管支、咽頭、鼻腔、副鼻腔)、消化器系組織(例、胃、小腸、大腸、直腸)、膵臓、腎臓、肝臓、胸腺、脾臓、心臓、甲状腺、副腎、前立腺、卵巣、子宮、脳、皮膚、筋肉、血管、および血液組織(例、骨髄、末梢血)が挙げられる。本発明の融合細胞はまた、上記組織以外の組織に存在する細胞に由来する細胞であり得る。このような細胞としては、例えば、腺細胞(例、肺腺細胞、乳腺細胞)、上皮細胞、内皮細胞(例、動脈および静脈等の血管内皮)、表皮細胞、間質細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞、メサンギウム細胞、膵β細胞、神経細胞、グリア細胞、および血球細胞(例、B細胞、T細胞)が挙げられる。本発明の融合細胞はまた、正常細胞または癌細胞(例、ミエローマ)に由来し得る。本発明の融合細胞はさらに、接着細胞または浮遊細胞であり得る。本発明の融合細胞はまた、初代培養細胞または細胞株に由来し得る。本発明の融合細胞はまた、分化細胞(例、終末分化細胞)であり得る。本発明の融合細胞はまた、幹細胞(例、iPS等の多能性人工幹細胞、胚性幹細胞、体性幹細胞)等の未分化細胞またはその分化細胞に由来し得る。本発明の細胞はまた、同種細胞または異種細胞由来の細胞であり得るが、好ましくは同種細胞由来の細胞であり得る。
特定の実施形態では、本発明の融合細胞は、高品質タンパク質(例、抗体等のタンパク質医薬)の商業生産のために汎用されている細胞に由来する細胞であってもよい。高品質タンパク質(例、抗体等のタンパク質医薬)の商業生産のために汎用されている細胞は、上述したとおりである。
本発明の融合細胞はまた、例えば、融合に用いられた元の細胞に比し、サイズ(表面積)が大きいことによって特徴付けることができる。本発明の融合細胞は、融合に付される細胞(異種細胞が融合に用いられ、かつ異種細胞のサイズが異なる場合、異種細胞のうちより大きい細胞を基準とする)よりも大きなサイズを有する限り特に限定されないが、このような融合細胞のサイズは、融合に用いられた元の細胞のものに比し、例えば約1.3倍以上、好ましくは約1.5倍以上、より好ましくは約1.7倍以上、さらにより好ましくは約2.0倍以上、特により好ましくは約2.5倍以上、約2.7倍以上または約3.0倍以上である。このような融合細胞のサイズはまた、融合に用いられた元の細胞のものに比し、例えば約5倍以下、約7倍以下、約10倍以下、約15倍以下または約20倍以下であってもよい。融合に用いられた元の細胞に対する本発明の融合細胞のサイズは、例えば、実施例中に開示されるように、フローサイトメーターを用いて前方散乱(FS)を測定することにより、評価することができる。
本発明の融合細胞はまた、例えば、融合に用いられた元の細胞に比し、細胞内構造が複雑であること(オルガネラの発達度合い)によって特徴付けることができる。本発明の融合細胞は、融合に付される細胞(異種細胞が融合に用いられ、かつ異種細胞の細胞内構造の複雑さが異なる場合、異種細胞のうちより複雑な細胞内構造を有する細胞を基準とする)よりも複雑な細胞内構造を有する限り特に限定されないが、このような融合細胞の細胞内構造の複雑さは、融合に用いられた元の細胞のものに比し、例えば約1.3倍以上、好ましくは約1.5倍以上、より好ましくは約2.0倍以上、さらにより好ましくは約2.5倍以上、特により好ましくは約3.0倍以上、約3.5倍以上、約4.0倍以上または約4.5倍以上である。このような融合細胞のサイズはまた、融合に用いられた元の細胞のものに比し、例えば約5倍以下、約7倍以下、約10倍以下、約15倍以下または約20倍以下であってもよい。融合に用いられた元の細胞に対する本発明の細胞内構造の複雑さは、例えば、実施例中に開示されるように、フローサイトメーターを用いて側方散乱(SS)を測定することにより、評価することができる。
本発明の融合細胞はさらに、例えば、融合に用いられた元の細胞に比し、タンパク質生産能が向上したことによって特徴付けることができる。タンパク質は、内因性タンパク質(即ち、融合に付される細胞が元々生産していたタンパク質)または外来性タンパク質(例、発現ベクターの導入により生産可能になる外来タンパク質)である。本発明の融合細胞は、融合に付される細胞(異種細胞が融合に用いられ、かつ異種細胞のタンパク質生産能が異なる場合、異種細胞のうちより高い生産能を有する細胞を基準とする)よりも向上したタンパク質生産能を有する限り特に限定されないが、このような融合細胞のタンパク質生産能は、融合に用いられた元の細胞のものに比し、例えば約1.3倍以上、好ましくは約1.5倍以上、より好ましくは約2.0倍以上、さらにより好ましくは約2.5倍以上、特により好ましくは約3.0倍以上、約3.5倍以上、約4.0倍以上、約4.5倍以上または約5.0倍以上である。このような融合細胞のタンパク質生産能はまた、融合に用いられた元の細胞のものに比し、例えば約10倍以下、約20倍以下、約30倍以下、約40倍以下、約50倍以下または約100倍以下であってもよい。融合に用いられた元の細胞に対する本発明のタンパク質生産能は、例えば、測定の簡便さの観点から、実施例中に開示されるように、蛍光タンパク質の発現ベクターを細胞に導入し、次いでフローサイトメーターを用いて蛍光タンパク質が発するシグナルを測定することにより、評価することができる。
特定の実施形態では、本発明の融合細胞は、血清含有培地および無血清培地の双方において良好な接着性を示し得る。例えば、本発明の接着融合細胞は、無血清培地中で培養したときであっても、扁平状に伸展した接着細胞として増殖する能力を有し得る。本発明の接着融合細胞は、融合に付される細胞(異種細胞が融合に用いられ、かつ異種細胞の接着性が異なる場合、異種細胞のうちより高い伸展接着性を有する細胞を基準とする)よりも、接着したときに大きなサイズを有する限り特に限定されない。例えば、本発明の接着融合細胞のサイズは、伸展方向(長軸方向)において、例えば約60μm以上、好ましくは約70μm以上、より好ましくは約80μm以上、さらにより好ましくは約90μm以上、特に好ましくは約100μm以上、約110μm以上、約120μm以上、または約130μm以上である。本発明の接着融合細胞のサイズは、伸展方向(長軸方向)において、例えば約150μm以下、約200μm以下、約300μm以下、約400μm以下、約500μm以下または1000μm以下であってもよい。本発明の接着融合細胞のサイズはまた、伸展方向と直行する方向(培養ディッシュの平面上における短軸方向)において、例えば約15μm以上、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約25μm以上、さらにより好ましくは約30μm以上、特に好ましくは約45μm以上、約50μm以上、約55μm以上または約60μm以上である。本発明の接着融合細胞のサイズは、伸展方向と直行する方向において、例えば約80μm以下、約100μm以下、約200μm以下、約300μm以下または約400μm以下であってもよい。本発明の接着融合細胞のサイズは、例えば、実施例中に開示されるように、培養中の接着融合細胞の顕微鏡写真を撮影し、そのサイズを、伸展方向およびその直行方向において計測することにより、評価することができる。
別の特定の実施形態では、本発明の融合細胞は、上記特徴を安定的に保持することができる。例えば、本発明の融合細胞は、例えば約5回、好ましくは約10回、より好ましくは約15回、さらにより好ましくは約20回であっても、上記特徴を安定的に保持し得る。本発明の融合細胞はまた、例えば約6回、好ましくは約13回、より好ましくは約20回、さらにより好ましくは約26回の細胞分裂後であっても、上記特徴を安定的に保持し得る。本発明の融合細胞は、接着細胞または浮遊細胞として、血清含有培地または無血清培地のいずれかにおいて、上記継代後または上記細胞分裂後に、上記特徴を安定的に保持し得る。
本発明の融合細胞には、発現ベクター等のベクターが導入されていても、導入されていなくてもよい。本発明の融合細胞に導入され得るベクターとしては、例えば、プラスミド、ウイルスベクター(例、アデノウイルス、レトロウイルス)、人工染色体、および組込型(integrative)ベクター(例、レトロウイルス)が挙げられる。発現ベクターはまた、一過的発現または恒常的(すなわち、安定的)発現のためのベクターである。発現ベクターは、好ましくはタンパク質発現ベクターである。タンパク質は、種々のカテゴリーに属するタンパク質を用いることができる。このようなタンパク質としては、例えば、抗体等の分泌因子、増殖因子、酵素、受容体(例、細胞膜受容体)、リガンド、アダプター、細胞接着因子、細胞外マトリクス、輸送体、および核内タンパク質(例、転写因子)が挙げられる。抗体は、IgG、IgM、IgA、IgD、IgE、IgY等のいずれのアイソタイプであってもよい。抗体はまた、モノクローナル抗体(例、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体)であってもよい。抗体はさらに、全長抗体または抗体断片(例、単鎖抗体)であってもよい。
本発明はまた、タンパク質の製造方法を提供する。本発明の方法は、本発明の融合細胞を培地中で培養することを含む。タンパク質は、内因性タンパク質または外来性タンパク質である。具体的には、このようなタンパク質としては、上述したような種々のカテゴリーに属するタンパク質が挙げられるが、抗体が好ましい。抗体としては、例えば、上述した抗体が挙げられる。外来性タンパク質の発現のためには、例えば、上述した発現ベクターを本発明の融合細胞に導入すればよい。
培地は、細胞培養に用いられる培地を基礎培地として調製することができる。基礎培地としては、例えば、MEM培地、DMEM培地、αMEM培地、ハム培地、RPMI1640培地、Fischer’s培地、およびこれらの混合培地が挙げられる。培地は、例えば、血清(例、FCS)、血清代替物、脂肪酸又は脂質、アミノ酸、ビタミン、増殖因子、サイトカイン、抗酸化剤、2−メルカプトエタノール、ピルビン酸、緩衝剤、無機塩類等を含有していてもよいが、好ましくは無血清培地であってもよい。培養温度、CO濃度等の他の培養条件は適宜設定することができる。培養温度は、特に限定されるものではないが、例えば約30〜40℃、好ましくは約37℃である。また、CO濃度は、例えば約1〜10%、好ましくは約5%である。培養のため蒔かれる細胞数、各種因子の濃度等のその他の条件は、適宜設定することができる。培養は、接着培養または浮遊培養のいずれであってもよい。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、これらは単なる例に過ぎず、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
参考例1:タンパク質の高い生産能を有する細胞株(非融合細胞)の解析
抗体を始めとする医薬タンパク質は主に、培養細胞を用いて生産されている。培養細胞によるタンパク質の生産量はコストに与える影響が大きいことから、タンパク質の高い生産能を有する培養細胞(細胞株)の樹立が試みられている。医薬タンパク質の生産では、CHO細胞が培養細胞として汎用されているが、CHO細胞は、タンパク質の高い生産能を有する細胞株の出現頻度が低い、および無血清培地中での接着培養が困難などの問題があった。そこで、タンパク質の高い生産能を有するCHO細胞株の解析を行った。
国際公開第2013/42426号公報に開示される方法により作製されたニワトリ(chicken)IgM(以下、必要に応じて「目的タンパク質」と称する)の発現ベクターを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞に導入した。得られたCHO細胞を長期間培養し、培養されたCHO細胞株のなかから、目的タンパク質を大量に生産する能力を有する安定なCHO細胞株を2種(VDSC46M/CHO、およびVDSC1M/CHO)、目的タンパク質を少量生産する能力を有する安定なCHO細胞株を1種(VDSC42M/CHO)単離した。次いで、これらの細胞株を解析、比較した。コントロールとして、通常のCHO細胞を解析、比較した。
先ず、Propidium iodide(PI)溶液およびFlow cytometer(FCM)を利用して染色体核酸量を測定した。結果を図1、2に示す。図1、2に示される結果は、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の染色体核酸量が、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株および/または元のCHO細胞の染色体核酸量に比し、多いことを示す。また、蛍光強度の値は染色体核酸量と比例し得ることから、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の染色体核酸量は、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株および/または元のCHO細胞の染色体核酸量に比し、約1.5倍以上であると見積られた(図1、2)。
次いで、FCMにより前方散乱光(Forward Scattered Light:FS)を測定した。FSの情報は、細胞サイズ(表面積)の指標として利用することができる。結果を図3、4に示す。図3、4に示される結果は、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の細胞サイズが、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株および/または元のCHO細胞の細胞サイズに比し、大きいことを示す。また、FSの値は細胞サイズと比例し得ることから、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の細胞サイズは、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株および/または元のCHO細胞の細胞サイズに比し、約1.5倍以上であると見積られた(図3、4)。
最後に、FCMにより側方散乱光(Side Scattered Light:SS)を測定した。SSの情報は、細胞内構造の複雑さ(オルガネラの発達度合い)の指標として利用することができる。結果を図5、6に示す。図5、6に示される結果は、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の細胞内構造が、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株および/または元のCHO細胞の細胞内構造に比し、複雑であることを示す。また、SSの値は細胞内構造の複雑さと比例し得ることから、目的タンパク質を大量に生産する能力を有するCHO細胞株の細胞内構造は、目的タンパク質を少量生産する能力を有するCHO細胞株および/または元のCHO細胞の細胞内構造に比し、約1.5倍以上複雑であると見積られた(図5、6)。
以上より、タンパク質の高い生産能を有する細胞株は、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、および複雑な細胞内構造を有していた。したがって、これらの特徴を有する細胞を人工的に樹立することにより、タンパク質の高い生産能を有する細胞株が得られる可能性が示唆された。
実施例1:同調化された細胞の融合による融合細胞の調製(1)
COインキュベーター(37℃、5% CO)でF12培地(10% FBS添加)にてCHO細胞を培養した。80%コンフルエントに到達後、培地をF12培地(10% FBS、0.1μg/mL ノコダゾール添加)に交換し、さらに36時間培養することによって細胞周期をM期に同調させた。ノコダゾールの使用により、細胞周期を、M期で停止させることができる。同調させた細胞をPBS(−)で洗浄した後、trypsin溶液(0.25% trypsin 1mM EDTA−4Na)を添加し、次いでCOインキュベーターで2分間放置した後、CHO細胞を剥離した。剥離したCHO細胞をF12培地(10% FBS添加)10mLに懸濁し、次いで遠心管に移した。遠心分離(1000rpm,5分)後、上清を除去し、次いで血清不含F12培地で2回洗浄した。血清不含F12培地10mLに懸濁したCHO細胞をカウントした。1x10の細胞を含むCHO細胞懸濁液を分取し、遠心分離(1000rpm,5分)の後、上清を除去した。
得られた細胞サンプルに、1mLのポリエチレングリコール1500を混ぜながらゆっくりと添加した。次に、血清不含F12培地13mLを細胞懸濁液と混ぜながらゆっくりと添加した。遠心分離(1000rpm,5分)し、上清を除去した後、10mLのF12培地(10% FBS添加)に懸濁し、これを、96ウェルプレートに1ウェル(100μL)に対して0.5個の細胞が含まれるように蒔いた。3日に一回培地を交換しながら融合細胞を増殖させた。増殖した融合細胞を6ウェルプレートに移し、次いで増殖させた。
次いで、得られた融合細胞を、Flow cytometer(FCM)により解析した。先ず、融合細胞の一部を採取し、70%エタノールで24時間固定した。遠心分離(1000rpm,5分)し、上清を除去した後、Propidium iodide(PI)溶液(4mM)を2mL添加し、氷上で2時間染色した。染色した細胞をFlow cytometer(FCM)で解析し、DNAの増幅について検討した。その結果、増幅した染色体を有する融合細胞の存在を確認することができた(図7)。DNAの増幅が見られるウェル中の細胞を選択した。DNAの増幅が認められたウェル中の細胞を、再度1ウェルに対して0.5個の細胞が含まれるように96ウェルプレートに蒔き、増殖させ、融合細胞を得た。
得られた融合細胞について、FCMによりFSおよびSSを測定した。その結果、融合細胞のサイズの拡大および細胞内構造の複雑さを確認することができた(図8、9)。以上より、得られた融合細胞は、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、および複雑な細胞内構造を有していた。これらの特徴は概して、参考例1で確認された、タンパク質の高い生産能を有する細胞株(非融合細胞)のものと同様であった。具体的には、融合細胞は、融合に用いられた元のCHO細胞に比し、約1.5倍以上の染色体の増幅、約1.5倍以上の大きな細胞サイズ、および約1.5倍以上の複雑な細胞内構造を有していた。
なお、樹立された融合細胞を血清含有培地(10% FBS含有Ham’s F12倍地)中で継代培養したところ、融合細胞は、20回継代した後(26回の細胞分裂回数に相当)であっても、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、および複雑な細胞内構造の特徴を保持していた。
実施例2:無血清培地中での融合細胞の培養
実施例1で得られた融合細胞を、血清含有培地(10% FBS含有Ham’s F12倍地)、および無血清培地(ASF 培地104N)中で2日間培養した。コントロールとして、細胞融合に用いた通常のCHO細胞を同様に培養した。
その結果、CHO細胞および融合細胞の双方とも、血清含有培地中では、培養ディッシュ上に良好に接着し、伸展して扁平状の形態を呈した(図10)。一方、無血清培地中では、CHO細胞は、培養ディッシュ上に接触していたものの十分な接着性を示さず、丸い形態を呈した(図10)。一方、融合細胞は、無血清培地中でも、培養ディッシュ上に良好に接着し、伸展して扁平状の形態を呈した(図10)。したがって、融合細胞は、血清含有培地および無血清培地の双方において、良好な接着性を有することが示された。
また、接着した融合細胞のサイズは、FCM解析の結果と相関するように、血清含有培地中で接着したCHO細胞のサイズに比し、有意に大きかった(図10)。接着した融合細胞のサイズは、血清含有培地および無血清培地の双方で、伸展方向(長軸方向)において、多くの細胞が約70μm以上の長さを示したのに対し、血清含有培地中で接着したCHO細胞のサイズは概ね、伸展方向において、約50μm以下の長さであった(図10)。接着した融合細胞のサイズは、伸展方向と直行する方向(培養ディッシュの平面上における短軸方向)において、多くの細胞が約15μm以上の長さを示したのに対し、血清含有培地中で接着したCHO細胞のサイズは概ね、伸展方向と直行する方向において、約15μm未満の長さであった(図10)。
なお、樹立された融合細胞を上記無血清培地中で継代培養したところ、融合細胞は、20回継代した後(26回の細胞分裂回数に相当)であっても、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、複雑な細胞内構造の特徴および良好な接着性を保持していた。
実施例3:タンパク質の生産能の検討
実施例1で得られた融合細胞によるタンパク質の生産能を検討した。タンパク質としては、融合細胞の内因性タンパク質の代わりに、FCMでの解析が容易である外来タンパク質hMGFP(Monster GFP)を指標とした。通常のCHO細胞(コントロール)および実施例1で得られた融合細胞にhMGFP発現ベクター(Promega社phMGFP vector:E6421からhMGFPをPCRで増幅し、Lifetechnologies社のpcDNA3.1(−):V795−20に導入したもの)を導入し、G418(3mg/mL)入り培地で一週間selectionをかけたものをFCMで解析し、hMGFPの発現量のパターンを、CHO細胞と融合細胞との間で比較した。
その結果、CHO細胞は、外来タンパク質の生産能を有する細胞数が少なく、また、陽性細胞の割合も低かった(図12、13、表1)。一方、融合細胞は、外来タンパク質の高い生産能を有する細胞数が多く、また、陽性細胞の割合も高かった(図11、13、表2)。
以上より、実施例1で得られた融合細胞は、タンパク質の高い生産能を有すること、および外来タンパク質の発現効率が良いことが示された。
実施例4:抗体(IgM)の分泌能の検討
実施例1で得られた融合細胞によるニワトリIgMの生産能を検討した。発現ベクターとしては、国際公開第2013/42426号公報に開示される方法により作製されたニワトリIgM軽鎖および重鎖の発現ベクターを利用した。CHO細胞(コントロール)および実施例1で得られた融合細胞に発現ベクターを導入し、G418(500μg/mL)およびハイグロマイシンB(500μg/mL)含有培地で一週間selectionしたものを限界希釈法にてクローニングし、分泌される抗体をELISAにより定量した。
その結果、融合細胞は、CHO細胞に比し、IgMの分泌能に優れる割合が高いことが確認された(図14)。
実施例5:抗体(IgG)の分泌能の検討
実施例1で得られた融合細胞によるマウスIgGの生産能を検討した。発現ベクターとしては、国際公開第2013/42426号公報に開示される方法により作製されたマウスIgG軽鎖および重鎖の発現ベクターを利用した。CHO細胞(コントロール)および実施例1で得られた融合細胞に発現ベクターを導入し、G418(500μg/mL)およびハイグロマイシンB(500μg/mL)含有培地で一週間selectionしたものを限界希釈法にてクローニングし、分泌される抗体をELISAにより定量した。
その結果、融合細胞は、CHO細胞に比し、IgGの分泌能に優れる割合が高いことが確認された(図15)。
比較例1:同調化されていない細胞の融合による融合細胞の調製
非同調化された細胞の融合による融合細胞の調製は、同調化剤(ノコダゾール)処理をしなかった点を除き、実施例1と同様にして行った。その結果、得られた融合細胞は当初、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、および複雑な細胞内構造を有していたが、血清含有培地(10% FBS含有Ham’s F12倍地)で継代培養したところ、融合細胞は、3回継代した後(約4回の細胞分裂回数に相当)、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、複雑な細胞内構造および良好な接着性の特徴を保持できず、通常のCHO細胞と同様の特徴を示す細胞に復帰した。
実施例6:同調化された細胞の融合による融合細胞の調製(2)
CHO細胞以外の細胞を材料として用いて本発明の方法により調製される融合細胞が、上記特徴を有するかどうか、さらに検討した。CHO細胞以外の細胞としては、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)、およびベビーハムスター腎臓細胞(BHK)を用いた。融合細胞の調製は、異なる細胞を材料として用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。その結果、本実施例で得られた融合細胞は、実施例1で得られた融合細胞と同様に、染色体の増幅、大きな細胞サイズ、複雑な細胞内構造の特徴、および良好な接着性を有していた。また、融合細胞は、比較例1で行われた継代数を超えた場合であっても、これらの特徴を安定的に保持しており、融合に用いたHUVECおよびBHKと同様の特徴を示す細胞に復帰しなかった。

Claims (8)

  1. 以下の特性を有する、チャイニーズハムスター卵巣細胞またはその亜株由来である融合細胞:
    a)融合に用いられた元の細胞に比し細胞の表面積が1.3倍以上のサイズ;
    b)融合に用いられた元の細胞に比しフローサイトメーターの側法散乱値が1.3倍以上複雑な細胞内構造;および
    c)融合に用いられた元の細胞に比し向上した外来タンパク質生産能。
  2. 融合細胞が、無血清培地中で培養したときに扁平状に伸展した接着細胞として増殖する能力を有する細胞である、請求項記載の融合細胞。
  3. 扁平状に伸展した接着細胞の長径が70μm以上である、請求項記載の融合細胞。
  4. タンパク質の発現ベクターを含む、請求項のいずれか一項記載の融合細胞。
  5. 同調化された細胞を人為的に融合させることにより得られる細胞である、請求項のいずれか一項記載の融合細胞。
  6. 請求項のいずれか一項記載の融合細胞を培地中で培養することを含む、タンパク質の製造方法。
  7. タンパク質が抗体である、請求項記載の方法。
  8. 培地が無血清培地である、請求項または記載の方法。
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