JP6231923B2 - 支圧型ピン支承および補強方法 - Google Patents

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Description

本発明は、支圧型ピン支承等に関する。
橋梁の支持構造に「支圧型ピン支承」と呼ばれるタイプがある。支圧型ピン支承は、下沓に横置きしたピンで上沓を可動支承し、左右側端面それぞれで上沓と下沓とピンとをキャップで纏めて覆うことで上沓の上揚を防止する構造を有する。支圧型ピン支承は、新設の橋梁において採用されるケースは稀となってきたが、既設の橋梁においてまだまだ多数残っている。そのため、既設の支圧型ピン支承を耐震補強するための技術が開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
特開2012−127072号公報
本発明は、既設の支圧型ピン支承を改良することで耐震性を向上させた新たな支圧型ピン支承とするための技術を実現することを目的として考案されたものである。
以上の課題を解決するための第1の発明は、下沓に横置きしたピンで上沓を可動支承し、左右側端面それぞれで前記上沓と前記下沓と前記ピンとをキャップで纏めて覆うことで前記上沓の上揚を防止する支圧型ピン支承であって、前記上沓の上沓リブと前記下沓の下沓リブとを結合し、前記上沓と前記下沓とにおける水平方向の相対移動を制限する制限部、を備えた支圧型ピン支承である。
支圧型ピン支承が激しい地震を受けると橋桁部は水平に振れ、ピン支承に引っ張り力が作用してピンが破断するケースが知られている。第1の発明によれば、ピン支承に作用する引っ張り力を、ピンと制限部とで分担して受けることができる。よって、既設の支圧型ピン支承を改良することで耐震性を向上させた新たな支圧型ピン支承を実現することができる。
第2の発明は、前記上沓はピン方向に沿って前記上沓リブを複数有し、前記下沓はピン方向に沿って前記下沓リブを複数有し、前記制限部は、ピン方向の最も一方側に位置する前記上沓リブと、最も他方側に位置する前記下沓リブとを連結するワイヤーを有する第1の発明の支圧型ピン支承である。
第2の発明によれば、上沓と下沓の比較的強固な構造部位を連結できるので、高い耐震性を確保できる。また、既設の支圧型ピン支承へ本発明を適用する場合には、リブへの施工が比較的容易であり、また強度低下の心配も低いので好適である。
連結させる上沓リブと下沓リブとの相対位置関係は適宜設定可能であるが、第3の発明として、前記制限部が、ピン方向の最も他方側に位置する前記上沓リブと、最も一方側に位置する前記下沓リブとを連結するワイヤーを更に有する第2の発明の支圧型ピン支承を構成することができる。
第3の発明によれば、地震により橋桁部が振られることで生じる橋軸直方向の力、すなわち上沓或いは下沓をピン方向に水平方向にずらそうとする力に対して効果的に抵抗できるようになる。
第4の発明は、下沓に横置きしたピンで上沓を可動支承し、左右側端面それぞれで前記上沓と前記下沓と前記ピンとをキャップで纏めて覆うことで前記上沓の上揚を防止する既設の支圧型ピン支承の補強方法であって、
前記上沓の上沓リブと前記下沓の下沓リブとを結合し、前記上沓と前記下沓とにおける水平方向の相対移動を制限すること、を含む補強方法である。
第4の発明の補強方法を実施することで、既設の支圧型ピン支承の耐震性を向上させることができ、第1の発明と同様の効果が得られる。
第1実施形態の支圧型ピン支承の構成例を示す斜視図。 第1実施形態の支圧型ピン支承の構成例を示す正面図。 第2実施形態の支圧型ピン支承の構成例を示す斜視図。 第2実施形態の支圧型ピン支承の構成例を示す正面図。 第3実施形態の支圧型ピン支承の構成例を示す正面図。
〔第1実施形態〕
図1は本発明を適用した第1実施形態の支圧型ピン支承10Aの構成例を示す斜視図である。図2は同正面図である。
本実施形態の支圧型ピン支承10Aは、左右側端面それぞれで上沓12と下沓14とピン16とを纏めてキャップ18で覆い、上沓12の上揚を防止する。ピン16には径が太い部分と細い部分とがあり、両端部が細い部分となって雄ネジが切ってあり、キャップ18を被せた後にナットを締め付けることで両者が結合されている。
上沓12は、ピン16に当接するピン当接部122と、橋桁部3と連結される橋桁連結部124とが、複数の上下方向のリブ126(以下「上沓リブ126」と呼ぶ)で一体に連結されている。また、下沓14は、ピン16を下支えするピン支持部142と、土台5と連結される土台連結部144とが、複数の上下方向のリブ146(以下「下沓リブ146」と呼ぶ)とで一体に連結されている。
そして、本実施形態の支圧型ピン支承10Aは、上沓12と下沓14との水平方向の相対移動を制限する制限部として、正面あるいは背面から見て対角関係にある上沓リブ126と下沓リブ146とをワイヤー30で連結している。すなわち、正面側において、ピン16のピン方向において最も一方側に位置する上沓リブ126と、最も他方側に位置する下沓リブ146とをワイヤー30で連結するとともに、最も他方側に位置する上沓リブ126と、最も一方側に位置する下沓リブ146とをワイヤー30で連結する。背面側においても同様に連結する。
ワイヤー30は、可動支承としての機能を損なわない程度に張設するものとする。あるいは、若干の余裕を持たせつつも、仮に地震でピン16が破断しても、上沓12が下沓14から落下しない程度に両者の水平方向(図2で言うところの左右方向)の相対移動を制限するように設定するものとする。
ワイヤー30の連結構造によれば、図1,2において、正面側の計3個の上沓リブ126のうちの中間の上沓リブ126、および、計3個の下沓リブ146のうちの中間の下沓リブ146にワイヤー30が抵触することがない。すなわち、上沓リブ126は、いずれも左右側面視において略同一形状を有し、下沓リブ146も、左右側面視において略同一形状を有している。そのため、対角関係に交差してワイヤー30を連結することで、中間の上沓リブ126及び中間の下沓リブ146の外側を通るようにワイヤー30が張設され、ワイヤー30が中間のリブに抵触することがない。上沓リブ126及び下沓リブ146が3以上(例えば4)であっても同様である。
また、上沓リブ126,下沓リブ146とワイヤー30との連結方法自体は適宜公知技術を利用できる。図示の例では、上沓リブ126及び下沓リブ146に貫通孔を設けてワイヤークランプやシャックルなどの固定金具32を取り付け、これにワイヤー30の端部を固定している。勿論、リブに対して直接アイボルトを立設してワイヤー30を固定するとしても良いし、ワイヤー30をリブに設けた貫通孔にくぐらせて折り返し、ループを作って別途ワイヤークランプで固定するとしてもよい。
本実施形態の支圧型ピン支承10Aは、地震によって生じる橋桁部3の橋軸直方向(図2の左右方向)の揺れをピン16とワイヤー30とで支えることができるので、ピン16のみで支えていた従来に比べて高い耐震性を有することとなる。
ワイヤー長の設定や伸びによっては、橋軸直方向(図2の左右方向)の揺れをワイヤー30で支えられない場合もあるが、その場合でも仮に地震でピン16が破断しても上沓12が下沓14から落下するのを防止することができる。
尚、本実施形態では、ワイヤー30は正面側と背面側それぞれにおいて対角線状に合計4本設ける構成としているが、ワイヤー30の本数は4本以上でも良いし、4本未満でもよい。
〔第2実施形態〕
図3は第2実施形態の支圧型ピン支承10Bの構成例を示す斜視図である。図4は、同正面視部分断面図である。尚、第1実施形態と同様の構成要素について同じ符号を付与している。
本実施形態の支圧型ピン支承10Bは、第1実施形態と同様に上沓リブ126と下沓リブ146とをワイヤーループ37(制限部)で連結するが、連結する上沓リブ126と下沓リブ146との位置関係が対角ではなく上下関係にある点が異なる。
具体的には、上沓リブ126と下沓リブ146のそれぞれに貫通孔36を追加し、二つの貫通孔36をワイヤーループ38で連結する。
なお、本実施形態のワイヤーループ37は、可動支承としての機能を損なわない程度に張設するものとする。あるいは、ワイヤーループ37の長さに若干の余裕を持たせつつも、仮に地震でピン16が破断しても、上沓12が下沓14から落下しない程度に両者の水平方向(図2で言うところの左右方向:橋軸直方向)の相対移動を制限するように設定するものとする。
〔第3実施形態〕
図5は第3実施形態の支圧型ピン支承10Cの構成例を示す正面視部分断面図である。尚、第1〜第2実施形態と同様の構成要素について同じ符号を付与している。
本実施形態の支圧型ピン支承10Cは、第2実施形態と同様に、上下位置関係にある上沓リブ126と下沓リブ146とを連結するが、ワイヤーループ38ではなく、それらのリブの左右側面それぞれに連結板40(制限部)を密着させて、貫通孔36を挿通したボルト42で連結固定する。貫通孔36の径は、ボルト42の径より若干大きく設定されているため上沓12の可動を許容することができる。
なお、連結する上沓リブ126と下沓リブ146の位置関係は、上下位置関係に限らず斜め位置関係でもよいし、連結板40の数も適宜設定可能である。例えば、左端の上沓リブ126の右側面と中央の下沓リブ146の左側面とに密着させるようにして第1の連結板40を設置・連結する。更に、右端の上沓リブ126の左側面と中央の下沓リブ146の右側面とに密着させるように第2の連結板40を設置・連結する。これを、正面側および背面側に施工して、合計4枚の連結板40を設置するとしてもよい。
なお、本発明の適用形態は第1〜第3実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
3…橋桁部
5…土台
10A〜10C…支圧型ピン支承
12…上沓
14…下沓
16…ピン
30…ワイヤー
32…固定金具
36…貫通孔
38…ワイヤーループ
40…連結板
42…ボルト
122…ピン当接部
124…橋桁当接部
126…上沓リブ
142…ピン当接
144…橋桁連結部
146…下沓リブ

Claims (4)

  1. 橋梁を支持するために下沓に横置きしたピンで上沓を可動支承し、左右側端面それぞれで前記上沓と前記下沓と前記ピンとをキャップで纏めて覆うことで前記上沓の上揚を防止する支圧型ピン支承であって、
    前記上沓はピン軸方向に沿って上沓リブを複数有し、
    前記下沓はピン軸方向に沿って下沓リブを複数有し、
    ピン軸方向の最も一方側に位置する前記上沓リブと最も他方側に位置する前記下沓リブとを連結する第1ワイヤーと、
    ピン軸方向の最も他方側に位置する前記上沓リブと最も一方側に位置する前記下沓リブとを連結する第2ワイヤーと、
    備え、前記第1ワイヤー及び前記第2ワイヤーの前記連結によって前記上沓と前記下沓とにおける橋軸直角方向の相対移動を制限する支圧型ピン支承。
  2. 前記ピンを挟んだ両側において、
    ピン軸方向の最も一方側に位置する前記上沓リブと最も他方側に位置する前記下沓リブとを前記第1ワイヤーで連結し、
    ピン軸方向の最も他方側に位置する前記上沓リブと最も一方側に位置する前記下沓リブとを前記第2ワイヤーで連結する、
    請求項1に記載の支圧型ピン支承。
  3. 前記上沓リブ及び前記下沓リブはそれぞれ3以上あり、
    前記ピンを挟んだ両側において、
    前記第1ワイヤー及び前記第2ワイヤーは、ピン軸方向の中間に位置する前記上沓リブ及び前記下沓リブの外側を通って対角関係に交差するように張設された、
    請求項2に記載の支圧型ピン支承。
  4. 橋梁を支持するために下沓に横置きしたピンで上沓を可動支承し、左右側端面それぞれで前記上沓と前記下沓と前記ピンとをキャップで纏めて覆うことで前記上沓の上揚を防止する既設の支圧型ピン支承の補強方法であって、
    前記上沓はピン軸方向に沿って上沓リブを複数有し、
    前記下沓はピン軸方向に沿って下沓リブを複数有し、
    ピン軸方向の最も一方側に位置する前記上沓リブと最も他方側に位置する前記下沓リブとを第1ワイヤーで連結することと、
    ピン軸方向の最も他方側に位置する前記上沓リブと最も一方側に位置する前記下沓リブとを第2ワイヤーで連結することと、
    を含み、前記第1ワイヤー及び前記第2ワイヤーの前記連結によって前記上沓と前記下沓とにおける橋軸直角方向の相対移動を制限する補強方法。
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