JP6228733B2 - 鉄系焼結体の高周波焼入れ方法 - Google Patents

鉄系焼結体の高周波焼入れ方法 Download PDF

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Description

本件出願に係る発明は、強度に優れた鉄系焼結体の高周波焼入れ方法に関するものである。
従来より、鉄系焼結体は、歯車等の機械構造部品として採用されている。この鉄系焼結体は、鉄を主成分とする原料粉末を加圧成形して高密度圧粉体とし、当該高密度圧粉体を焼結して得られる。この鉄系焼結体は、最終形態に近い製品を得ることができるため、加工作業性の簡素化や、製造コストの低減を図ることができる。
鉄系焼結体は、焼結後に浸炭焼入焼戻し処理を施すことにより、ある程度の疲労強度を確保することができる。例えば、特許文献1には、高密度と高面圧疲労強度を兼ね備えた鉄基焼結体を得ることを目的として、「金型に、加熱した鉄基粉末混合物を充填したのち、所定の温度で加圧成形して鉄基粉末成形体とし、ついで該鉄基粉末成形体に焼結処理を施し鉄基焼結体とする鉄基焼結体の製造方法において、前記金型を、予熱され、表面に温間金型潤滑用潤滑剤を帯電付着させた金型とし、前記鉄基粉末混合物を、鉄基粉末と、鉄基粉末混合物全量に対し、0.45質量%超1.0質量%以下の黒鉛粉と、0.05〜0.40質量%の粉末成型用潤滑剤とを含む鉄基粉末混合物とし、前記焼結処理後に、さらにガス浸炭焼入処理を行い、ついで焼戻し処理を行うことを特徴とする鉄基焼結体の製造方法」が開示されている。
特許文献1の鉄基焼結体の製造方法は、鉄基粉末混合物を焼結後、ガス浸炭焼入処理を施して、焼結体表面に炭素侵入層を形成し、その後の焼入処理によって、焼結体表面を硬化させ、焼結体の面圧疲労強度の向上を図っている。
ところが、この特許文献1に記載されている浸炭焼入焼戻し処理を行った鉄基焼結体は、浸炭焼入時において寸法に歪みが生じるという問題がある。そのため、高い寸法精度が求められる場合に、浸炭焼入焼戻し処理を行った鉄基焼結体は敬遠されていた。そこで、高い寸法精度が求められる場合や、必要部分のみに耐摩耗性を付与する場合には、以下の特許文献2に開示の技術が採用されてきた。
特許文献2には、鉄を主成分とする原料粉末を金型のキャビティに充填し、上下パンチで圧粉成形する成形工程と、前記成形工程で得られた成形体を鉄の融点未満の温度の加熱して焼結する焼結工程と、前記焼結工程で得られた焼結体の少なくとも一部を圧縮して緻密化させる緻密化工程と、前記緻密化工程で得られた加工体を浸炭性雰囲気中700〜1300℃の温度で再焼結する再焼結工程と、再焼結工程で得られた再焼結体を高周波加熱により加熱して、焼入れを行う高周波熱処理工程と、からなる焼結部品の製造方法が開示されている。
特許文献2の焼結部品の製造方法は、再焼結後の熱処理として高周波加熱により焼結部品を焼入れすることにより、当該焼結部品に発生する歪み量を抑制することができる。よって良好な寸法精度とすると共に焼結部品に必要な機械的強さと硬さの付与を図っている。
特開2002−155303号公報 特許2009−167489号公報
特許文献2に開示の焼結部品の製造方法を適用した場合、高周波誘導加熱法を用いて加熱して焼入れを行う操作(以下、この操作を単に「高周波誘導加熱−焼入れ処理」と称する。)の時間が長くなると、焼結部品の変形が大きくなり、焼入れ前後で寸法差が大きくなる問題がある。また、高周波誘導加熱−焼入れ処理を行った焼結部品は、硬化層の深さを制御することで、良好な圧縮残留応力を確保することができ、比較的高い疲労強度を実現することができる。
しかしながら、近年では、機構の複雑化に伴い、焼結体は、形状が更に複雑になると共に、より高い強度特性や寸法精度などが要求されている。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、本件発明にかかる鉄系焼結体の高周波焼入れ方法を採用することで、得られる製品が、高い表面硬さと、良好な疲労強度及び高い寸法精度を備えるものとなることに想到した。
1.鉄系焼結体の製造方法
本件出願に係る鉄系焼結体の高周波焼入れ方法は、以下の工程を備えることを特徴とする。
圧縮成形工程: 少なくとも鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形して、圧粉体を得る工程。
焼結工程: 当該圧粉体を焼結して鉄系焼結体を得る工程。
第1熱処理工程: 高周波誘導加熱法を用いて、前記鉄系焼結体を所定の周波数で高周波誘導加熱し、当該鉄系焼結体の表面をAc3変態点以上の温度に加熱し、室温に急冷して焼入れる工程。
第2熱処理工程: 高周波誘導加熱法を用いて、第1熱処理工程の終了した鉄系焼結体を、800℃〜1050℃の温度に加熱し、急冷して焼入れする工程。
第3熱処理工程: 第2熱処理工程を終了した鉄系焼結体を、120℃〜300℃の温度に加熱して焼戻す工程。
本件出願に係る鉄系焼結体の高周波焼入れ方法は、前記第2熱処理工程が、高周波誘導加熱法を用いて、鉄系焼結体の表面が300℃以上でAc3変態点を超えない温度になるまで加熱し、加熱を停止した状態で、1.0秒以上放冷する予備加熱処理を行い、高周波誘導加熱法を用いて、焼入れを行う予定の深さまでをAc3変態点以上の温度に加熱して、室温に焼入れする本加熱処理を行うものであることが好ましい。
2.本件出願に係る鉄系焼結体
本件出願に係る鉄系焼結体は、上述の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法を用いて得られるものであって、当該鉄系焼結体の表面に形成された硬化層の有効硬化層深さが0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする。
また、本件出願に係る鉄系焼結体は、上述の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法を用いて得られるものであって、当該鉄系焼結体の表面に形成された硬化層の結晶粒径が15μm以下であることを特徴とする。
本件出願に係る鉄系焼結体の高周波焼入れ方法は、鉄系焼結体に比較的短い時間で高周波誘導加熱による焼入れを行うことができ、鉄系焼結体自体の変形を少なくすることができる。また、第1熱処理工程、第2熱処理工程及び第3熱処理工程により当該鉄系焼結体の表面硬化層に高圧縮残留応力を付与することができる。よって、高い表面硬さと、良好な疲労強度及び高い寸法精度を備える鉄系焼結体の提供が可能となる。また、本件発明の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法は、既存の高周波誘導加熱設備を用いて、従前の高周波誘導加熱法によって得られる焼結体よりも高い疲労特性の鉄系焼結体を提供することが可能となる。
本件発明の鉄系焼結体の製造方法の概略工程図である。 本件発明の鉄系焼結体の製造方法における「第1熱処理工程」、「第2熱処理工程」及び「第3熱処理工程(焼戻し)」の概念を説明するためのイメージ図である。 本実施例の回転曲げ疲労試験片の形状及び寸法を示す図である。 実施例及び比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の表面からの距離とビッカース硬さとの関係を示すグラフである。 実施例、比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の表面の金属組織の顕微鏡写真及び比較例1の素地の金属組織の顕微鏡写真である。 実施例及び比較例1の鉄系焼結体表面の金属組織の顕微鏡写真である。 実施例及び比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の硬化層深さと残留応力との関係を示す図である。 実施例及び各比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の回転曲げ疲労試験の結果を示す図である。
以下に、本件発明にかかる「鉄系焼結体の高周波焼入れ方法」及び「鉄系焼結体」の実施形態について詳述する。
1.鉄系焼結体の高周波焼入れ方法の形態
本件出願に係る鉄系焼結体の高周波焼入れ方法は、以下に述べる「圧縮成形工程」、「焼結工程」、「第1熱処理工程」、「第2熱処理工程」及び「第3熱処理工程(焼戻し)」を必須の工程として備えることを特徴とする。なお、その他の工程に関しては、任意の工程であることを念のために明記しておく。以下、図1の概略工程図を参照して、工程毎に説明する。
圧縮成形工程:この圧縮成形工程は、少なくとも鉄系粉末を含む原料粉末(供試粉)を圧縮成形して、密度が6.0g/cm〜7.7g/cmである高密度圧粉体を得る。
本件発明における鉄系粉末を含む原料粉末の組成は、圧縮性が良好であり、焼結体となったときの延性及び塑性変形に優れたものを採用することが好ましい。更に、焼入性が良好であること、及び合金元素が少ないことがより好ましい。よって、本件発明において用いる鉄系粉末を含む原料粉末は、これらの特性を有する粉末であれば、如何なる組成の粉末をも採用することができる。
この圧縮成形工程では、従来の粉末冶金において焼結体を製造する場合と同様に、原料粉末の圧縮成形を行う。原料粉末の圧縮成形方法は、一般に、金型内に原料粉末を充填し、室温にて、機械プレスや油圧プレスにて圧縮成形し、所定形状の圧粉体を得る方法が採用されている。本件発明においても、原料粉末の圧縮成形方法は、特に限定されるものではなく、いずれの圧縮成形方法を採用することができる。本件発明において、当該圧縮成形工程で得られる圧粉体は、密度が6.0g/cm〜7.7g/cmの高密度圧粉体であることが好ましい。本件発明は、高い疲労強度を備えた焼結体を得ることを目的とするためである。なお、本件発明における圧縮成形工程において、成形圧力や圧粉体の形状等は特に限定されるものではない。
焼結工程:この焼結工程は、上述の圧縮成形工程において得られた高密度圧粉体を焼結して鉄系焼結体を得る工程である。高密度圧粉体の焼結は、高温の炉内に一定時間保持することにより行う。得られる焼結体の機械的性質や、寸法精度を得るため、焼結温度や、焼成時間、炉内雰囲気を調整する必要がある。また、炉内雰囲気は、エンドサーミックスガス雰囲気(RX雰囲気)、水素を含む窒素ガス雰囲気、アンモニア分解ガス雰囲気、あるいは、真空中とすることが好ましい。当該焼結工程により、高密度圧粉体は、鉄中にMo及びCが拡散し、強度及び延性などの特性の向上を図ることができる。
機械加工工程:この機械加工工程は、焼結工程において得られた鉄系焼結体を、寸法矯正の目的でサイジングを行う工程である。当該機械加工工程は、鉄系焼結体の寸法精度が高い場合には、行わなくても良い。
次に、図2の熱処理サイクルの模式図を参照して、「第1熱処理工程」、「第2熱処理工程」及び「第3熱処理工程(焼戻し)」について説明する。
第1熱処理工程:この第1熱処理工程では、高周波誘導加熱法を用いて、上述の焼結工程において得られた鉄系焼結体を所定の周波数で高周波誘導加熱し、当該鉄系焼結体の表面をAc3変態点以上の温度に加熱し、室温に急冷する。なお、このときの冷却は、水溶性焼入冷却剤又は焼入れ油を用いることが好ましい。
第2熱処理工程:この第2熱処理工程では、高周波誘導加熱法を用いて、第1熱処理工程の終了した鉄系焼結体を、800℃〜1050℃の温度に加熱し、急冷して焼入れを行う。なお、このときの冷却も、水溶性焼入冷却剤又は焼入れ油を用いて行うことが好ましい。
そして、この第2熱処理工程では、「焼戻しのための予備加熱処理」と「焼入れのための本加熱処理」とを1回の熱サイクルで行うものとすることが好ましい。この「焼戻しのための予備加熱処理」は、所定の周波数の高周波誘導加熱法を用いて、鉄系焼結体の表面が300℃以上でAc3変態点を超えない温度になるまで加熱するものである。この「焼戻しのための予備加熱処理」は、鉄系焼結体の表面が焼戻し温度に到達した時点で加熱を停止し、所定時間放冷させつつ、熱伝導により鉄系焼結体内部を昇温させる。このときの加熱の停止時間は、1.0秒以上とすることが好ましい。1.0秒未満の場合、鉄系焼結体の内部まで熱を伝導させることが困難となるからである。そして、加熱停止時間の上限は、鉄系焼結体の表面温度が、焼戻し温度から300℃以上低くならない時間とすることが好ましい。
「焼戻しのための予備加熱処理」は、予備加熱の高周波誘導加熱の通電時間が、2.0秒以上であることが好ましい。「焼戻しのための予備加熱処理」は、通常の高周波誘導加熱法を用いた場合の昇温速度に比べて、時間をかけて昇温することにより、焼結体内部に熱が伝達する時間を確保することができ、鉄系焼結体の表面と内部との温度差を小さくすることができる。また、予備加熱処理での加熱は、焼戻しすべき箇所がAc3変態点を超えない温度で行う。当該焼戻しすべき箇所の温度は、加熱時の表面温度より低いが、余裕をみて表面でもAc3変態点を超えない温度とすることが好ましい。また、当該焼戻温度は、表面温度で300℃以上であることが好ましく、比較的高い方が内部の引張残留応力の低減効果は大きくなる。
そして、「焼戻しのための予備加熱処理」後の「焼入れのための本加熱処理」は、所定の周波数の高周波誘導加熱法を用いて、焼結体の表面から焼入れを行う予定の深さまでをAc3変態点以上の温度となるまで加熱した後、水溶性焼入冷却剤を用いて急冷し焼入れる。
第3熱処理工程(焼戻し):この第3熱処理工程では、第2熱処理工程を終了した鉄系焼結体を、120℃〜300℃の温度で、高周波誘導加熱法による焼戻し又は炉内加熱法による焼戻しを行う
これら一連の第1熱処理工程から第3熱処理工程を行うことにより、鉄系焼結体は、表面硬化層に高圧縮残留応力が付与され、高い表面硬さと、良好な疲労強度及び高い寸法精度を備えることができる。
2.本件出願に係る鉄系焼結体の形態
上述の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法を用いることで、本件出願に係る鉄系焼結体が得られる。この鉄系焼結体は、表面に形成された硬化層の有効硬化層深さが0.5mm〜3.0mmであるという特徴を備えている。有効硬化層深さが0.5mm未満の場合には、耐摩耗特性、耐疲労性特性を向上させ得ないため好ましくない。一方、有効硬化層深さが3.0mmを超えるようにすると、圧縮残留応力の低下によって疲労強度が低下し、鉄系焼結体の変形も顕著となるため好ましくない。
そして、本件出願に係る鉄系焼結体の表面に形成された硬化層内の結晶粒径は、15μm以下であることが好ましい。硬化層の結晶粒径を15μm以下とすることにより、鉄系焼結体の疲労強度の向上を実現することができる。
以下に、本件発明にかかる鉄系焼結体の製造方法を用いた実施例と比較例とについて述べる。
実施例の鉄系焼結体は、本件発明の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法により得られる回転曲げ疲労試験片である。本実施例の鉄系焼結体の原料粉末は、Fe−0.6質量%Moプレアロイ鋼粉と、0.6質量%の黒鉛(C)と、0.2質量%の潤滑剤である。
そして、圧縮成形工程において、上述の組成の原料粉末を金型内に充填し、室温にて圧縮成形し、図3に示すような回転曲げ疲労試験片の形状及び寸法とする。本実施例における回転曲げ疲労試験片の圧粉体は、密度が7.4g/cmである。次いで、焼結工程において、圧縮成形工程において得られた回転曲げ疲労試験片となる高密度圧粉体は、焼結処理される。焼結条件は、焼結温度を1130℃、焼結時間を20分、炉内雰囲気をRX雰囲気とする。なお、焼結工程を経て得られた回転曲げ疲労試験片である鉄系焼結体は、機械加工により、寸法矯正を行う。
次に、焼結処理(必要に応じて機械加工処理)を行った後の回転曲げ疲労試験片としての鉄系焼結体は、高周波誘導加熱−焼入れ処理を2回行った。第1熱処理工程では、鉄系焼結体を、周波数200kHzの高周波誘導加熱により当該鉄系焼結体の表面温度がAc3変態点以上の温度である960℃となるまで加熱した後、水溶性焼入冷却剤を用いて急冷する。当該実施例では、第1熱処理工程における加熱時間は3秒である。
第2熱処理工程では、最初に、「焼戻しのための予備加熱処理」として、第1熱処理工程を終了した鉄系焼結体を、周波数200kHzでの高周波誘導加熱により当該焼結体の表面温度がAc3変態点を超えない焼戻温度である480℃となるまで加熱した後、加熱電力を停止した状態で放冷する操作を行う。本実施例の第2熱処理工程の「焼戻しのための予備加熱処理」の加熱時間は2秒間であり、放冷時間は1秒間である。
次いで、「焼入れのための本加熱処理」を行う。「焼戻しのための予備加熱処理」した後の鉄系焼結体を、周波数200kHzの高周波誘導加熱法により、鉄系焼結体の表面温度がAc3変態点以上の935℃となるまで加熱した後、水溶性焼入冷却剤を用いて急冷して焼入れた。当該実施例では、第2熱処理工程における「焼入れのための本加熱処理」の加熱時間は、0.3秒間である。
本実施例では、「焼入れのための本加熱処理」の昇温時間が、0.3秒と非常に短いため、鉄系焼結体の変形を最小限とすることができる。そのため、鉄系焼結体の形状が複雑化した場合であっても、高い寸法精度を実現することができる。そして、「焼入れのための本加熱処理」によって、鉄系焼結体は、高い圧縮残留応力が表面硬化層に付与される。本実施例のように、「焼入れのための本加熱処理」の昇温時間が、0.3秒と非常に短い場合、加熱処理後の組織の状態は、加熱処理前の組織の状態に影響を受けやすいが、当該「焼入れのための本加熱処理」の前段として、「第1熱処理工程」及び「第2熱処理工程の焼戻しのための予備加熱処理」を行っているため、加熱処理後の組織の状態は、加熱処理前の組織の影響を受けにくくなる。また、2回の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって、鉄系焼結体の素地の硬さの向上を図ることができる。なお、当該実施例では、第2熱処理工程において、「焼戻しのための予備加熱処理」と「焼入れのための本加熱処理」とで高周波誘導加熱の電力を切り替えて、「焼入れのための本加熱処理」の電力を、「焼戻しのための予備加熱処理」の電力より大きくする必要がある。
そして、第2熱処理工程後の鉄系焼結体は、第3熱処理工程において、電気炉で加熱して、当該鉄系焼結体の表面温度180℃の状態を1時間維持して焼戻しを行い、空冷した。以上に述べたようにして、本実施例としての回転曲げ疲労試験片を得た。
比較例
比較例1〜比較例3の鉄系焼結体は、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる回転曲げ疲労試験片である。比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の原料粉末及び焼結工程までの製造方法は、上述の実施例と同様であるため、説明を省略する。比較例1〜比較例3の焼結処理(必要に応じて機械加工処理)を行った後の鉄系焼結体は、高周波誘導加熱法を用いて高周波誘導加熱−焼入れ処理する。当該高周波誘導加熱−焼入れ処理では、鉄系焼結体を周波数200kHzの高周波誘導加熱法により、表面温度が1000℃となるまで加熱した後、急冷する。比較例1〜比較例3は、加熱時間を変更することにより表面に形成される硬化層の深さを調整した。比較例1は、硬化層の深さを1mmを目標とし、比較例2は、硬化層の深さを2mmを目標とし、比較例3は、全硬化焼入れ(試験片内部の中心部まで硬化したもの)とした。
各比較例1〜比較例3は、高周波誘導加熱−焼入れ処理後、電気炉において、当該鉄系焼結体の表面温度が180℃の状態を1時間維持して焼戻しを行い、空冷した。これにより、比較例1〜比較例3としての回転曲げ疲労試験片を得た。
以下に、実施例及び各比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の試験結果を示す。ここでは、実施例の鉄系焼結体の硬さ分布と、金属組織、残留応力、回転曲げ疲労試験結果について述べる。
<硬化層の硬さ分布>
図4は実施例及び比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の表面からの距離とビッカース硬さとの関係を示すグラフである。実施例の鉄系焼結体は、表面のビッカース硬さがHV575であり、ビッカース硬さHV400までの有効硬化層深さは1.1mmであった。図4のグラフを見ると、実施例の回転曲げ疲労試験片の表面から約0.8mmまでは表面と同じHV570〜580程度に硬化されており、表面から約1.1mmよりも深くなるに従って硬さが徐々に低下している。
これに対し、硬化層深さを1mmとなるように作製した比較例1の鉄系焼結体は、表面硬さがHV530であり、ビッカース硬さHV400までの有効硬化層深さは1.3mmであった。図4のグラフを見ると、比較例1の鉄系焼結体の表面から約0.5mmまでの範囲は表面と同じHV530程度に硬化されており、表面から0.5mmよりも深くなるに従い硬さが急激に低下している。
また、硬化層深さを2mmとなるように作製した比較例2の鉄系焼結体は、表面硬さがHV500であり、ビッカース硬さHV400までの有効硬化層深さは1.7mmであった。図4のグラフを見ると、比較例2の鉄系焼結体の表面から約0.7mmまでの範囲は表面と同じHV500〜530程度に硬化されており、表面から0.7mmよりも深くなるに従い徐々に硬さが低下している。
更に、全硬化焼入れとした比較例3の鉄系焼結体は、表面硬さがHV500であり、表面から芯部の全域にわたって、HV500〜580程度に硬化されている。
本件発明に係る2回の高周波誘導加熱−焼入れ処理を行った実施例の鉄系焼結体は、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる各比較例1〜比較例3と比べると、表面硬さが高いことが分かる。また、実施例と同程度の硬化層深さである比較例1の素地と、当該実施例の素地の硬さを比べると、実施例はHV300であるのに対し、比較例1はHV180であった。この際、比較した素地の硬さは、いずれも表面からの距離が2mmの深さ部分における硬さである。よって、本件発明に係る鉄系焼結体は、同程度の硬化層深さである比較例1と比べると、表面硬さのみならず、素地硬さも高いことが分かる。
<金属組織>
図5には実施例と比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の表面の金属組織の顕微鏡写真と比較例1の素地の金属組織の顕微鏡写真を示す。実施例及び各比較例の倍率は400倍である。実施例と各比較例1〜比較例3のいずれも表面と同じ程度のビッカース硬さとなっている範囲の金属組織は、Ac3変態点以上に高周波誘導加熱されてオーステナイト変態した組織から焼入されてマルテンサイト組織となっている。
本件発明に係る実施例の鉄系焼結体は、表面のマルテンサイト組織に隣接し、硬さが順次低下して素地硬度に至る範囲が、ソルバイト組織となっている。このソルバイト組織は、第2熱処理工程の「焼戻しのための予備加熱処理」時において、マルテンサイトを焼戻したときに生じる組織である。比較例1及び比較例2の鉄系焼結体は、表面のマルテンサイト組織に隣接し、硬さが順次低下して素地硬度に至る範囲が、ベイナイト組織となっている。比較例3は全硬化焼入れ試料であるため、表面から芯部に至るまでマルテンサイト組織となっている。
また、図6は実施例と比較例1の鉄系焼結体の表面の金属組織の顕微鏡写真を示す。図6は、図5よりも高い倍率である1000倍で観察した写真である。これによると、実施例と比較例1の表面の金属組織は、同じマルテンサイト組織であるが、実施例の結晶粒は、3μmであり、結晶粒が9μm〜12μmの比較例1と比べて、著しく微細化されていることが分かる。
<残留応力>
図7は、実施例及び比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の硬化層深さと残留応力との関係を示している。有効硬化層深さが1.1mmである実施例の鉄系焼結体の表面の残留応力は、−580MPaであった。有効硬化層深さが1.3mmである比較例1の鉄系焼結体の表面の残留応力は、−400MPaであり、有効硬化層深さが1.7mmである比較例2の鉄系焼結体の表面の残留応力は、−200MPaであった。全硬化焼入れした比較例3の鉄系焼結体は、表面の残留応力が−100MPaであった。当該測定結果から、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる各比較例の鉄系焼結体は、硬化層の深さが浅くなるほど、圧縮残留応力が大きくなることが分かる。本件発明に係る2回の高周波誘導加熱−焼入れ処理を行った実施例の鉄系焼結体は、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる各比較例1〜比較例3と比べると、どの比較例よりも圧縮残留応力が大きいことが分かる。また、実施例と同程度の硬化層深さである比較例1と、当該実施例とを比べると、実施例は比較例よりも高い圧縮残留応力が得られたことが分かる。
<回転曲げ疲労試験>
次に、図8を参照して実施例及び各比較例1〜比較例3の鉄系焼結体の回転曲げ疲労試験の結果を示す。回転曲げ疲労試験には、小野式回転曲げ疲労試験を採用し、室温・大気中にて実施した。応力繰り返し回数が10回の場合の疲労強度は、実施例が約510MPaであるのに対し、比較例1は約400MPa、比較例2は約270MPa、比較例3は約210MPaであった。当該試験結果から、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる各比較例の鉄系焼結体は、硬化層の深さが浅くなるほど、疲労強度が向上することが分かる。本件発明に係る2回の高周波誘導加熱−焼入れ処理を行った実施例の鉄系焼結体は、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる各比較例1〜比較例3と比べると、どの比較例よりも高い疲労強度が得られることが分かる。
<考察>
上述の各測定結果から、圧縮残留応力が高くなるに従い、回転曲げ疲労強度が高くなっていることが分かる。本件発明に係る2回の高周波誘導加熱−焼入れ処理を行った実施例の鉄系焼結体は、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理によって得られる各比較例1〜比較例3と比べると、最も圧縮残留応力が高く、疲労強度が高いことが分かる。従って、本件発明における第1熱処理工程〜第3熱処理工程によって、従来の高周波誘導加熱−焼入れ処理と比較して、当該鉄系焼結体の表面硬化層には、高い圧縮残留応力と高い表面硬さを付与することができる。よって、良好な疲労強度を鉄系焼結体に付与することができることが分かる。
本件発明にかかる鉄系焼結体の高周波焼入れ方法は、表面硬化層に高圧縮残留応力を付与することができ、高い表面硬さと、良好な疲労強度及び高い寸法精度を備える鉄系焼結体の提供ができる。

Claims (4)

  1. 以下の工程を備えることを特徴とする鉄系焼結体の高周波焼入れ方法。
    圧縮成形工程: 少なくとも鉄系粉末を含む原料粉末を圧縮成形して、圧粉体を得る工程。
    焼結工程: 当該圧粉体を焼結して鉄系焼結体を得る工程。
    第1熱処理工程: 高周波誘導加熱法を用いて、前記鉄系焼結体を所定の周波数で高周波誘導加熱し、当該鉄系焼結体の表面をAc3変態点以上の温度に加熱し、室温に急冷して焼入れる工程。
    第2熱処理工程: 高周波誘導加熱法を用いて、第1熱処理工程を終了した鉄系焼結体を、800℃〜1050℃の温度に加熱し、急冷して焼入れする工程。
    第3熱処理工程: 第2熱処理工程を終了した鉄系焼結体を、120℃〜300℃の温度に加熱して焼戻す工程。
  2. 前記第2熱処理工程は、高周波誘導加熱法を用いて、鉄系焼結体の表面が300℃以上でAc3変態点を超えない温度になるまで加熱し、加熱を停止した状態で、1.0秒以上放冷する予備加熱処理を行い、
    高周波誘導加熱法を用いて、焼入れを行う予定の深さまでをAc3変態点以上の温度に加熱し、室温に焼入れする本加熱処理を行うものである請求項1に記載の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法を用いて得られる鉄系焼結体であって、
    当該鉄系焼結体の表面に形成された硬化層の有効硬化層深さが0.5mm〜3.0mmであることを特徴とする鉄系焼結体。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の鉄系焼結体の高周波焼入れ方法を用いて得られる鉄系焼結体であって、
    当該鉄系焼結体の表面に形成された硬化層の結晶粒径が15μm以下であることを特徴とする鉄系焼結体。
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