JP6227527B2 - リウマチ性疾患を予防または治療する方法 - Google Patents

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Description

関連出願のデータ
本出願は、2012年7月4日に出願された、「リウマチ性疾患を予防または治療する方法」と題された豪州特許出願第2011902655号からの優先権を主張する。その出願内容の全体は本明細書に参照により援用される。
配列表
配列表は、本出願と共に電子的形態で出願される。配列表内容の全体は、本明細書に参照により援用される。
本出願は、リウマチ性疾患を予防または治療する方法に関する。
リウマチ性疾患は、一般に、「関節炎」と呼ばれる普遍的な疾患に類するものであり、多くの場合、自己免疫反応により引き起こされる、または自己免疫反応と関連している。この疾患群には、リウマチ性関節炎、脊椎関節症(たとえば、強直性脊椎炎等)、シェーグレン症候群(乾燥症候群)、ライター病、乾癬性関節炎、腸の関節炎(炎症性腸疾患、仙腸骨炎または脊椎炎に関連した関節の不具合)、および骨関節炎が含まれる。
疾病対策センター(CDC)によると、米国単独で、約5000万人の成人が何らかの関節炎と診断されている。この数値は、2030年には6700万人に増加すると予想されている。CDCは、米国における関節炎にかかる費用は、関節炎の治療に対しては約808億米国ドル、間接的な費用(たとえば、逸失利益)については約470億米国ドルになると推定している。トータルの費用は、2003年の米国の国内総生産の1.2%にあたる1278億ドルとなる。
リウマチ性関節炎および骨関節炎
リウマチ性関節炎(RA)は、関節軟骨および骨の破壊を伴う広範囲な滑膜炎に特徴付けられる、痛みを伴う慢性の全身性疾患である。RAの臨床経過は様々であり、多くの場合、再発パターンを示すが、進行した場合、必然的に関節変形と機能の損傷がもたらされる。RAは3つの類型に区別される:軽度で自己限定性の疾患:軽度に進行性の疾患;および投薬でのコントロールが困難な進行性の疾患であり、関節の機能低下および放射線学的悪化(たとえば、特にパンヌスと呼ばれる増殖性の炎症滑膜下における、関節腔の狭小化、軟骨の崩壊erosion)により特徴付けられる。この疾患の全身状態に伴い、脈管炎、肺胞炎および眼疾患を含む、関節外症状がある。文献で報告されている本疾患の患者数は、米国の人口の約1%であり、女性がすべてのケースの3分の2を占めている。
RAの発症は、多くの場合、疲労、食欲不振、全身衰弱および筋骨格系の疼痛を伴い、知らぬ間に進行する。特有の症状は後に現れる。数か所の関節が、多くの場合は左右対称性に侵される。疾患に侵される関節は、ほとんどの場合、手関節、手根関節、膝関節および足の関節である。関節は疼痛を伴い、腫れ上がり、動きは制限される。1時間を上回る朝のこわばりが非常に代表的な特徴である。持続的な炎症を伴いながら、最も典型的には手根関節の橈側偏位および近位指節間関節の過伸展または屈曲を含む、様々な変形が発現する(他の変形もまた発生する)。骨格筋の委縮も発生する。すべての患者の約20〜30%において、関節周囲構造上に、または外傷部位上にリウマチ結節が発生するが、それらは通常、限定的な臨床的意義しか有しない。結節は、たとえば胸膜または髄膜等の他の構造においても見いだされうる。リウマチ性血管炎は、ほぼ全ての器官系(肺、胃腸管、肝臓、脾臓、膵臓、リンパ節、精巣および眼)に影響を与えうる。
RAに対する治癒的な処置は無い。すべての投薬計画は、主に症状と炎症を軽減するために試みられる。アスピリンおよび急速な作用の発現を有する他の非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は、治療の第一選択である。経口および注入グルココルチコイドは、必要に応じて投薬計画に加えられる。治療の第三選択としては、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARDs)が挙げられるが、それらは作用発現が遅く、時として数か月かかる。DMARDsには、アザチオプリン、スルファサラジン、金、D−ペニシラミン、ヒドロキシクロロキン、メトトレキサートおよびシクロスポリンが挙げられる。最近追加された生物学的製剤(たとえば、エンブレル(登録商標)、レミケード(登録商標)およびヒュミラ(登録商標))により、代替療法が提供されるようになったが、これらの製品を常用すると、免疫防御システムが抑制され、たとえば結核等の日和見感染および疾患の発症増加が付随する。
骨関節炎(OA)は、西側諸国で最も普遍的な関節炎の形態である。疼痛と機能障害により臨床的に特徴づけられる膝のOAは、米国の年配者の間において、慢性的な障害をもたらす原因となっている。
病理学的に、OAにおける最も著しい変化は、関節軟骨ならびに辺縁および中心骨の新規形成の局所喪失である。しかしながら、OAは単なる関節軟骨および軟骨下骨の疾患ではない。むしろ、滑膜、鞘、靱帯、関節周囲筋および感覚神経における変化もまた見いだされる、滑膜関節の疾患である。
OAはかつて、非炎症性の関節症と考えられていたが、患者は多くの場合、局所炎症および滑膜炎と合致する徴候や症状を示し、前臨床および臨床試験より得られた最近の結果により、病態生理学的な炎症および炎症性メディエーターの役割が裏付けられている。
骨関節炎の現在の治療法としては、非薬物療法、薬物療法および外科的治療が挙げられる。非薬物療法には、運動、減量プログラム、温熱療法、および補装具またはブレーシングが挙げられる。膝のOAに対する、関節可動域訓練および強化訓練は、障害の減少、機能改善および関節保護を対象としている。薬物療法としては、鎮痛剤(たとえば、アセトアミノフェン)、非選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤またはCOX−2酵素選択的阻害剤のいずれかである非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDS)、コルチコステロイドの関節内注射または関節内補充療法、および実証済みまたは推定の疾患修飾性骨関節炎薬剤(DMOADs)が挙げられる。外科的手段としては、関節壊死組織除去術および洗浄、ならびに最終的には人口膝関節全置換術が挙げられる。
膝のOAに対し最も普遍的に用いられている薬物療法により、多くの場合、50%未満の疼痛緩和が得られている。たとえば、アセトアミノフェン、選択的NSAIDs、または非選択的NSAIDsの使用により、多くの場合、膝OAの疼痛において、100ポイント(100−mm)の視覚的アナログ尺度を用いての基準の約70ポイントから、30ポイント以下への平均改善がもたらされている。ゆえに、膝OAの疼痛管理において、まだ十分改善の余地がある。さらに、構造的崩壊の進行を遅らせるための治療法は、まだ示されていない。
強直性脊椎炎
強直性脊椎炎(AS)は、患者の機能、健康状態および身体障害に相当の影響を与える慢性、進行性の炎症性疾患である。ASの患者数は、伝統的に、0.1〜1.9%の範囲にあると推定されており、女性より男性のほうが、患者数が多い。軸骨格および広範囲の関節の慢性疾患であるため、ASは、炎症性の背痛および硬直をもたらし、皮膚、眼および腸の他の炎症性疾患も付随する。重篤なケースでは、ASにより完全な脊椎固定術がなされ、極度の身体的制限がもたらされることとなる。ゆえに、ASに対する安全で効果的な治療法が未だに求められている。
疾患が進行するにつれ、ASの患者は、疼痛を感じ、関節が硬直し、そして最終的には脊椎可動性を失う。これらの臨床症状および引き続く疾患の進行により、機能的制限および健康状態に関連した人生の質(HRQOL)が損なわれることとなる。
ASの治療法は無い。一般的に、治療には、たとえばNSAIDs、コルチコステロイドおよびDMARDs等の薬剤を用いた疼痛および硬直の緩和が試みられる。
豪州特許出願第2011902655号
当業者には、炎症性関節疾患が、社会に多大な影響を与える消耗性疾患に分類されることが明らかである。これらの疾患に対する治療法もまた、求められている。
本発明に繋がる研究において、発明者らはリウマチ性疾患に対する間葉系前駆細胞(MPC)の効果を究明しようと試みた。発明者らは、これらの疾患の多くは、たとえば自己免疫性ならびに関節における免疫細胞および炎症性サイトカインの存在等の普遍的な特徴を共有しているため、リウマチ性疾患に対するモデルとしてリウマチ性関節炎のヒツジのモデルを全体的に研究した。発明者らは、MPCは、病理組織学的な関節炎の指標(たとえば、滑膜の過形成、間質組織の活性化および炎症性細胞の浸潤等)の減少に効果的であることを究明した。さらに発明者らは、MPCの投与により、CD14細胞に加えて、たとえば滑膜組織における炎症誘発性サイトカイン(たとえば、IL−6、TNFα、IL−17)のレベルを減少させることを示した。発明者らは、これらの細胞およびサイトカインのレベルを減少させるMPCの能力により、MPC(および/またはその子孫細胞、および/またはそれらから分泌される可溶性因子)が、リウマチ性関節炎および/または骨関節炎等のリウマチ性疾患の治療に適したものとなると考えている。
発明者らはまた、MPCが長期にわたる治療効果をもたらし、細胞の単回注射の効果は少なくとも約30日間継続することを明らかにした。
発明者らはさらに、MPCまたはその子孫細胞が、リウマチ性疾患の病変部位に移動することを明らかにした。そのような移動により、たとえば対象の関節液への細胞投与と比較して、より困難性が少なくおよび/または浸潤性が少なく、簡易な細胞の全身投与が可能となり、有益なものとなる。
STRO−3マーカーの発現により単離されたヒツジのMPCは、機能的にヒトMPC(STRO−3およびSTRO−1マーカーを共発現する(本明細書の実施例2に示す))と同等である。
それゆえ、本開示により、対象のリウマチ性疾患を治療または予防する方法が提示され、当該方法には対象にSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与することが含まれる。
一つの例において、リウマチ性疾患は自己免疫性リウマチ性疾患である。
一つの例において、リウマチ性疾患は、リウマチ性関節炎、スティル病(若年性特発性関節炎または若年性リウマチ性関節炎と同義語)、強直性脊椎炎、ライター病、乾癬性関節炎、腸の関節炎、仙腸関節炎、脊椎炎および骨関節炎からなる群から選択される。
一つの例において、リウマチ性疾患は骨関節炎である。
例示的な態様において、リウマチ性疾患はリウマチ性関節炎である。
一つの例において、当該方法は、STRO−1強陽性細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団および/またはそれらに由来する可溶性因子を投与することを含む。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子を富化した集団は、全身投与される。たとえば、当該細胞は、静脈内投与される。この点において、発明者らは、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は対象の炎症を起こした関節の部位へと移動することを明らかにしている。ゆえに、本開示により、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞が、対象の炎症を起こした関節から離れた部位へ投与されることが予期される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、CD14細胞に加えて、IL−6、TNFα、IL−17を減少させるのに十分な量で、たとえば対象の関節内(たとえば滑膜組織内)へ投与される。
細胞の例示的な投与量としては、0.1×10〜5×10個のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞が含まれる。たとえば、本方法は、1kg当たり、0.3×10〜2×10個のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞を投与することが含まれる。
一つの例において、当該細胞は、約0.3×10細胞/kg〜約4×10細胞/kg(たとえば、約0.3×10細胞/kg〜約2×10細胞/kg)の投与量で投与される。
本方法の一つの態様では、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を低用量で投与することが含まれる。そのような低用量は、たとえば、0.1×10細胞/kg〜約0.5×10STRO−1細胞/kg(たとえば、約0.3×10STRO−1細胞/kg)である。
他の例において、高用量の細胞が対象に投与される。例示的な投与量としては、少なくとも約1.5×10細胞/kgが含まれる。たとえば、高用量として、約1.5×10〜約4×10細胞/kgが含まれる。たとえば、高用量として、約1.5×10細胞/kgまたは約2×10細胞/kgが含まれる。本発明者らは、そのような用量により、たとえば、CD14細胞に加えて、IL−6、TNFα、IL−17のレベルを減少させることによる利益がもたらされることを明らかにしている。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億〜3億個の細胞の投与量で投与される。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億〜2億個の細胞の投与量で投与される。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億個の細胞の投与量で投与される。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1.5億個の細胞の投与量で投与される。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約2億個の細胞の投与量で投与される。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約3億個の細胞の投与量で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化させた集団および/またはそれらから由来する可溶性因子は、毎週1回かそれ以下の頻度(たとえば4週に1度かそれ以下の頻度)で投与される。
本開示により、当該細胞および/または可溶性因子の多量投与もまた予期される。たとえば、そのような方法には、当該細胞を投与すること、および炎症性関節疾患の一つ以上の症状が発生しているか、または再発しているときに、測定するために対象をモニターすること、および当該細胞および/または可溶性因子のさらなる用量を投与することが含まれる。リウマチ性疾患の症状を評価する適切な方法は、当業者に明らか、および/または本明細書に記述される。
他の例において、細胞および/または可溶性因子は、一定のスケジュール(たとえば、毎週1度、または2週に1度、または3週に1度、または4週に1度、または5週に1度、または6週に1度かそれ以上の間隔)で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化させた集団は、自家、または同種異系であり、および/または可溶性因子は、自家細胞または同種異系細胞から由来することができる。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化させた集団は、投与の前に、および/または可溶性因子を得る前に、培養増殖させる。
一つの例において、STRO−1細胞を富化させた集団は、STRO−1強陽性であり、および/もしくは組織非特異性アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現し、ならびに/または子孫細胞および/もしくは可溶性因子は、STRO−1細胞(STRO−1強陽性である、および/またはTNAPを発現している)から由来する。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、前記STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子、ならびに担体および/または賦形剤を含有する組成物の形態で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、リウマチ性疾患を予防または治療するための他の化合物と共に投与される。一つの例において、他の化合物は、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)である。一つの例において、DMARDは、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、アザチオプリン、D−ペニシラミン、金塩類ミノサイクリン、シクロスポリンおよびTNF阻害剤からなる群から選択される。
一つの例において、DMARDは、アザチオプリン、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、レフルノミド、メトトレキサートおよびスルファサラジンからなる群から選択される。一つの例において、DMARDはメトトレキサートである。
他の例において、DMARDは、抗TNF抗体(たとえば、インフリキシマブ、ゴリムマブまたはアダリムマブ)または可溶性TNF受容体(たとえば、エタネルセプト)である。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、B細胞除去剤と共に投与される。一つの例において、B細胞除去剤は、抗CD20抗体(たとえば、リツキシマブまたはオファツムマブ)である。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、リウマチ性関節炎に罹患し、メトトレキサートでの治療を受けている対象に投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、メトトレキサート療法に対する補助療法および/または併用療法として投与される。
一つの例において、対象は、中度の活性化リウマチ性関節炎、または重度の活性化リウマチ性関節炎、または中度から重度の活性化リウマチ性関節炎に罹患している。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、リウマチ性関節炎に罹患し、メトトレキサートでの治療を受けている対象に投与され、ここで、当該細胞は、約1×10〜約3×10細胞/kgの用量で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、リウマチ性関節炎に罹患し、メトトレキサートでの治療を受けている対象に投与され、ここで、当該細胞は、約1.5×10〜約2×10細胞/kgの用量で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、リウマチ性関節炎に罹患し、メトトレキサートでの治療を受けている対象に投与され、ここで、当該細胞は、約1.5×10細胞/kgの用量で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、リウマチ性関節炎に罹患し、メトトレキサートでの治療を受けている対象に投与され、ここで、当該細胞は、約2×10細胞/kgの用量で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、リウマチ性関節炎に罹患し、メトトレキサートでの治療を受けている対象に投与され、ここで、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億の細胞〜約3億の細胞の間の用量(たとえば、対象の体重に関係なく、約1億の細胞〜約2億の細胞)で投与される。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、全身投与(たとえば、静脈内投与)される。
ゆえに、一つの例において、本開示により、対象の骨関節炎を予防または治療する方法が提示され、当該方法は、対象にSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団および/またはそれらに由来する可溶性因子を、静脈内(または全身)投与することが含まれる。例示的な細胞、用量および治療の組み合わせは、本明細書に記述され、本開示の実施例を準用して用いられる。
他の例において、本開示により、対象のリウマチ性関節炎を予防または治療する方法が提示され、当該方法は、対象にSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団および/またはそれらに由来する可溶性因子を、静脈内(または全身)投与することが含まれる。例示的な細胞、用量および治療の組み合わせは、本明細書に記述され、本開示の実施例を準用して用いられる。
本開示によりさらに、対象のリウマチ性疾患の予防または治療に用いるための、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団および/またはそれらに由来する可溶性因子が提示される。
本開示によりさらに、対象のリウマチ性疾患を予防または治療するための薬物の製造における、STRO−1細胞および/もしくはその子孫細胞を富化した細胞集団ならびに/またはそれらから由来する可溶性因子の使用が提示される。
配列表への手掛かり
配列番号1 GAPDHをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号2 GAPDHをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号3 SDF−1をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号4 SDF−1をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号5 IL−1βをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号6 IL−1βをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号7 FLT−1をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号8 FLT−1をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号9 TNF−αをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号10 TNF−αをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号11 KDRをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号12 KDRをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号13 RANKLをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号14 RANKLをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号15 Leptinをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号16 Leptinをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号17 CBFA−1をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号18 CBFA−1をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号19 PPARγ2をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号20 PPARγ2をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号21 OCNをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号22 OCNをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号23 MyoDをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号24 MyoDをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号25 SMMHCをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号26 SMMHCをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号27 GFAPをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号28 GFAPをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号29 Nestinをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号30 Nestinをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号31 SOX9をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号32 SOX9をコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号33 X型コラーゲンをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号34 X型コラーゲンをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号35 アグリカンをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
配列番号36 アグリカンをコードする核酸を増幅させるためのオリゴヌクレオチド
成人ヒト骨髄単核細胞(BMMNC)によるTNAP(STRO−3)および間葉系前駆細胞マーカー、STRO−1強陽性の共発現を示す。STRO−1 MACSで選別したBMMNCのインキュベーション、およびFITCに結合したヤギ抗マウスIgM抗体での間接標識(x軸)、およびPEに結合したヤギ抗マウスIgGで間接標識されたSTRO−3mAb(マウスIgG1)(y軸)によって、二色免疫蛍光法およびフローサイトメトリーを行った。ドットプロットヒストグラムはリストモードデータとして収集した5×10個のイベントを表わしている。垂直線および水平線は、同条件下で処置したアイソタイプ一致の対照抗体、1B5(IgG)および1A6.12(IgM)で得られた平均蛍光の1.0%未満の活性レベルに設定した。結果は、少数のSTRO−1強陽性細胞集団がTNAPを共発現したが(右上の象限)、一方残りのSTRO−1細胞はSTRO−3mAbと反応しなかったことを示している。 培養し、増殖したSTRO−1強陽性MPCのSTRO−1強陽性またはSTRO−1弱陽性(dim)の子孫細胞の遺伝子発現プロファイルを示す。ex vivoで増殖した骨髄MPCの単一細胞懸濁液を、トリプシン/EDTA処置により準備した。細胞をSTRO−1抗体で染色し、次いで、ヤギ抗マウスIgM−フルオレセインイソチオシアネートとインキュベーションすることにより明らかにした。トータルの細胞RNAは、純化されたSTRO−1弱陽性またはSTRO−1強陽性発現細胞集団から調製され、次いで、蛍光活性化細胞ソーティングを行った(A)。RNAzolB抽出法および標準的な方法を用いて、トータルRNAを各亜集団から単離し、cDNA合成の鋳型として用いた。様々な転写物の発現を、従前に記述される標準的なプロトコールを用いてPCR増幅により評価した(Gronthos et al. J Cell Sci. 116:1827-1835, 2003)。本研究に用いたプライマーのセットを、表2に示す。増幅に次いで、各反応混合物を1.5%アガロースゲル電気泳動により分析し、エチジウムブロマイド染色により可視化した(B)。 各細胞マーカーに対する相対遺伝子発現を、ImageQantソフトウェアを用いて、ハウスキーピング遺伝子(GAPDH)の発現を基準として評価した(C)。 培養し、増殖したSTRO−1MPCのSTRO−1強陽性子孫細胞は、高レベルのSDF−1を発現したが、STRO−1弱陽性子孫細胞は発現しなかった。(A)MACSで単離したSTRO−1BMMNCの調製物を、FACSを用いて、STRO−1強陽性およびSTRO−1弱陽性/微陽性(dim/dull)のリージョンに従い、異なるSTRO−1サブセットへと分割した。トータルのRNAを、各STRO−1亜集団から調製し、STRO−1強陽性のサブトラクションハイブリダイゼーションライブラリーの構築に用いた(B−C)。STRO−1強陽性をサブトラクトしたcDNAで形質転換されたバクテリアのクローンから増幅されたrepresentativePCR産物でブロットされたニトロセルロースフィルターの複製。次いで、そのフィルターを、[32P]デオキシシチジントリホスフェート(dCTP)で標識したSTRO−1強陽性(B)またはSTRO−1弱陽性/微陽性(dim/dull)(C)をサブトラクトしたcDNAのいずれかでプローブした。矢印は、ヒトSDF−1に対応するcDNA断片を含有する1クローンの差次的発現を示す。(D)培養の前の、新鮮なMACS/FACS単離BMMNC STRO−1集団から調製したトータルRNA中のSDF−1およびグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)転写物の相対発現を示す逆転写(RT)−PCR分析。bpは、塩基対を示す。 リウマチ性関節炎のヒツジモデルの跛行スコアを示す図形である。スコアは、本明細書に記述されるように決定された。 試験経過中(図中に示す)における個々のヒツジの右膝(刺激無し)および左膝(刺激有り)から得た滑液中の白血球数を示す図形である。ヒツジB1627およびB4036は、ニワトリII型コラーゲンで免疫され、他のすべてのヒツジはウシII型コラーゲンで免疫された。最も高い反応性を示したヒツジにおいて、対照側における白血球濃度もまた上昇したことから、全身性の反応が発生した可能性が示唆される。 対照ヒツジ(n=7)およびウシII型コラーゲンで免疫したヒツジ(n=5)の滑液中の白血球数を示す図形である。データは、平均±標準誤差を示す。 図7Aは、ウシII型コラーゲンで免疫した5頭のヒツジの右膝(対照)および左膝(刺激有り)から得た滑液中の、ウシII型コラーゲンに対するIgM抗体(左側のパネル)およびIgG抗体(右側のパネル)のレベルを示す図形である。滑液は最初の免疫から42日後の検死で得た。刺激を受けた膝中のIgMのレベルは4〜8倍に上昇し、IgGのレベルは10〜60倍に上昇した。 図7は、ニワトリII型コラーゲンで免疫した2頭のヒツジの右膝(対照)および左膝(刺激有り)から得た滑液中の、ニワトリII型コラーゲンに対するIgM抗体(左側のパネル)およびIgG抗体(右側のパネル)のレベルを示す図形である。滑液は最初の免疫から42日後の検死で得た。刺激を受けた膝中のIgMのレベルは3〜5倍に上昇し、IgGのレベルは2〜8×106倍に上昇した。 図8Aは、全群の左膝関節から得た滑膜に対する、総計の、および個々の病理組織スコア(過形成、間質の活性化、炎症性細胞の浸潤)を示す。Anova=p<0.04;pはマンホイットニー検定から得た。 図8Bは、全てのIV注射群の右膝関節から得た滑膜に対する、総計の、および個々の病理組織を示す。 図8Cは、生理食塩水またはMPCを関節内(IA)に注射された群から得た滑膜に対する、総計の、および個々の病理組織スコアを示す。 図9Aは、CD14スコアリングシステム(Mo et al., J Rheumatol. 38: 2301 - 2308, 2011に記述される、内膜スコアリングスキーム)を示す。 図9Bは、CD4、CD8、γ−δTCR、CD79aおよびKi−67に適用される個別細胞スコアリングスキームを示す。 図9Cは、VCAM−1、IL−6、IL−10、IL−1β、IL−17、TNFαおよび間質性CD14に適用される、サイトカインおよび付着分子スコアリングシステムを示す。 図10Aは、対照およびMPCを注射された群の左膝関節滑膜組織中の、CD4、CD8、γ−δTCRおよびCD79aに対する平均±SD免疫組織学スコアを示す。 図10Bは、対照およびMPCを注射された群の左膝関節滑膜組織中の、VCAM−内膜、VCAM−間質、Ki67−内膜およびKi67−間質の平均±SD免疫組織学スコアを示す。 図10Cは、対照およびMPCを注射された群の左膝関節滑膜組織中の、IL−10−内膜、IL−10−間質、IL1β−内膜およびIL1β−間質の平均±SD免疫組織学スコアを示す。 図10Dは、IV生理食塩水対照およびMPCを注射された群の滑膜内膜および間質組織の、IL−6およびTNFαに対する滑膜の免疫組織化学染色スコアに対する平均+SEMを示す。示されるp値は、マン−ホイットニーノンパラメトリックt検定を用いて算出された。 図10Eは、生理食塩水対照およびMPCを注射された群のCD14陽性細胞の、滑膜の免疫組織化学間質組織染色に対する平均+SEMを示す。示されるp値は、マン−ホイットニーノンパラメトリックt検定を用いて算出された。 図10Fは、生理食塩水対照とMPCを注射された群のIL−17に対する、滑膜の免疫組織化学間質組織染色に対する平均+SEMを示す。示されるp値は、クラスカル−ワリス検定&ダン事後検定を用いてANOVAから導かれた。 図11Aは、割り当てられたスコアを示すCD14細胞に対する免疫染色がなされた滑膜切片の顕微鏡写真を示す。倍率は100倍である。 図11Bは、割り当てられたスコアを示すTNF−αに対する免疫染色がなされた滑膜切片の顕微鏡写真を示す。倍率は100倍である。 図11Cは、割り当てられたスコアを示すIL−6に対する免疫染色がなされた滑膜切片の顕微鏡写真を示す。倍率は100倍である。 図11Dは、割り当てられたスコアを示すIL−17に対する免疫染色がなされた滑膜切片の顕微鏡写真を示す。倍率は100倍である。 図11Eは、割り当てられたスコアを示すIL−10に対する免疫染色がなされた滑膜切片の顕微鏡写真を示す。倍率は100倍である。
一般的技術および選択された定義
本明細書を通じて、それ以外に具体的に述べられている場合または文脈がそれ以外に要求する場合を除いて、単一ステップへの参照、物質の組成物、ステップの群または物質の組成物の群は、1つおよび複数(すなわち一つまたは複数)のそれらのステップ、物質の組成物、ステップの群または物質の組成物の群を包含すると解されるものとする。
本明細書に記載される各実施例または例示は、それ以外に具体的に述べられて場合を除き、それぞれおよびすべての実施態様に準用されるものとする。
当業者は、本明細書に記述される発明が、具体的に記載されたもの以外の変形および修正を許容することができることを理解するであろう。本発明がそのような変形および修正すべてを含むことを理解すべきである。本発明はまた、本明細書で参照または表示されているステップ、機能、組成物および化合物のすべてを個々にまたは集合的に、ならびに、前記ステップもしくは機能のいずれかの、およびすべての組み合わせ、またはいずれか2つ以上の組み合わせを含む。
本発明は、本明細書に記述される実施態様によって範囲を制限されるものではなく、例示を目的とすることだけを意図している。機能的に等価な生成物、組成物、および方法は、本明細書に記載される場合、明確に、本明細書に記述される本発明の範囲内にある。
本発明は、それ以外に表示されている場合を除き、分子生物学、微生物学、ウイルス学、DNA組み換え技術、溶液中でのペプチド合成、固相ペプチド合成、および免疫学の従来技術を用いて過度の実験なしに実行される。そのような手順は、たとえば、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Second Edition (1989),Vol I,II,およびIIIの全部; DNA Cloning: A Practical Approach, Vols. I and II (D. N. Glover, ed., 1985), IRL Press, Oxford,のテキスト全体; Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach (M. J. Gait, ed, 1984) IRL Press, Oxford,のテキスト全体、および特にその中でのGaitによる,ppl−22の論文; Atkinson et al, pp35-81; Sproat et al, pp 83-115; および Wu et al, pp 135-151; 4. nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach (B. D. Hames & S. J. Higgins, eds., 1985) IRL Press, Oxford,のテキスト全体; Immobilized Cells and Enzymes: A Practical Approach (1986) IRL Press, Oxford,のテキスト全体; Perbal, B., A Practical Guide to Molecular Cloning (1984); Methods In Enzymology (S. Colowick and N. Kaplan, eds., Academic Press, Inc.),のシリーズ全体; J.F. Ramalho Ortigao, “The Chemistry of Peptide Synthesis” In: Knowledge database of Access to Virtual Laboratory website (Interactiva, Germany); Sakakibara, D., Teichman, J., Lien, E. Land Fenichel, R.L. (1976). Biochem. Biophys. Res. Commun. 73 336-342; Merrifield, R.B. (1963). J. Am. Chem. Soc. 85, 2149-2154; Barany, G. and Merrifield, R.B. (1979) in The Peptides (Gross, E. and Meienhofer, J. eds.), vol. 2, pp. 1-284, Academic Press, New York. 12. Wunsch, E., ed. (1974) Synthese von Peptiden in Houben-Weyls Metoden der Organischen Chemie (Muler, E., ed.), vol. 15, 4th edn., Parts 1 and 2, Thieme, Stuttgart; Bodanszky, M. (1984) Principles of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg; Bodanszky, M. & Bodanszky, A. (1984) The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag, Heidelberg; Bodanszky, M. (1985) Int. J. Peptide Protein Res. 25, 449-474; Handbook of Experimental Immunology, VoIs. I-IV (D. M. Weir and C. C. Blackwell, eds., 1986, Blackwell Scientific Publications); および Animal Cell Culture: Practical Approach, Third Edition (John R. W. Masters, ed., 2000), ISBN 0199637970,のテキスト全体、に記載されている。
本明細書全体において、文脈がそれ以外を要求する場合を除き、「comprise(含む)」という語、または「comprises」もしくは「comprising」といった変化形は、述べられたステップまたは要素または完全体またはステップ(複数)もしくは要素(複数)もしくは完全体(複数)の群の包含を意味するが、あらゆる他のステップまたは要素または完全体または要素もしくは完全体の群の排除を意味するものではないことが理解されるであろう。
本明細書で使用される場合、「由来する(derived from)」の用語は、特定の完全体が、具体的な源から、その源から必ずしも直接的ではないにしても、得られうることを表示すると解されるものとする。STRO−1細胞および/またはその子孫細胞に由来する可溶性因子という文脈では、この用語は、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞のin vitro培養の間に産生される一つまたは複数の因子、例えば、タンパク質、ペプチド、炭水化物等などを意味すると解されるものとする。
本明細書で使用される場合、「リウマチ性疾患」という用語は、対象の少なくとも一つの関節における炎症性反応により特徴付けられる任意の疾患を意味すると解される。一つの例において、リウマチ性疾患は、自己免疫性疾患に関連付けられて、または自己免疫性疾患により引き起こされる。例示的なリウマチ性疾患は、当分野に公知および/または本明細書に記述される。
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、対象の関節における、リウマチ性疾患を引き起こす、またはリウマチ性疾患に関連する炎症性細胞の数および/または炎症性サイトカインおよび/または炎症を減少させるのに十分な量のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子を意味すると解される。
本明細書で使用される場合、「治療有効量」という用語は、リウマチ性疾患の一つ以上の症状を阻害または減少させるのに十分な量のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子を意味すると解されるものとする。
本明細書で使用される場合、「予防有効量」という用語は、炎症性関節疾患の一つ以上の検出可能な兆候の発生を止める、または阻害する、または遅延させるのに十分な量のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子を意味すると解されるものとする。
本明細書で使用される場合、「低用量」という用語は、1×10細胞/kg未満の量のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞であり、依然として対象の関節における炎症性細胞の数および/または炎症性サイトカインおよび/または炎症を減少させるのに十分な量を意味すると理解されるべきである。たとえば、低用量とは、1kg当たり、0.5×10以下の細胞、または0.4×10以下の細胞、または0.3×10以下の細胞、または0.1×10以下の細胞を含有する。
本明細書で使用される場合、「高用量」という用語は、対象における(たとえば、対象の関節内のたとえば滑膜組織内)、CD14細胞に加えて、IL−6、TNFα、IL−17を減少させるのに十分な量のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞という意味であり、たとえば1.5×10細胞/kgを超える量を意味すると理解されるべきである。たとえば、1回投与量は、約1.5×10〜約4×10細胞/kgを含有する。たとえば、高用量は、約1.5×10または約2×10/kgを含有する。
本明細書で使用される場合、「治療する(treat)」または「治療(treatment)」または「治療すること(treating)」という用語は、治療有効量の可溶性因子および/または細胞を投与し、炎症性関節疾患の少なくとも一つの症状を減少または阻害することを意味すると理解される。
本明細書で使用される場合、「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、「予防(prevention)」という用語は、予防有効量の可溶性因子および/または細胞を投与し、炎症性関節疾患の発症または進行を停止する、または妨げる、または遅延させることを意味すると理解されるものとする。
本明細書で使用される場合、「可溶性因子」という用語は、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞によって産生される、水溶性のあらゆる分子、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、糖ペプチド、リポタンパク質、リポペプチド、炭水化物を意味すると解されるものとする。そのような可溶性因子は、細胞内にありうる、および/または細胞によって分泌されうる。そのような可溶性因子は、複雑な混合物(例えば上清)および/もしくはその画分であり得る、並びに/または精製された因子であり得る。本発明の一つの例において、可溶性因子は、上清中に含有される。従って、一つまたは複数の可溶性因子の投与を目的とする本明細書のいかなる例も、上清の投与に準用されると解されるものとする。
本明細書で使用される場合、「上清」という用語は、例えば液状培地といった適切な培地において間葉系前駆細胞および/またはその子孫細胞のin vivoでの培養をおこなった後に生成される非細胞性物質をさす。典型的には、上清は、適切な条件と時間のもと培地中で細胞を培養し、その後に遠心分離といった過程により細胞性物質を除去することによって生成される。上清は、投与前にさらなる精製ステップを経ても経なくてもよい。一つの例において、上清は、10個より少ない、たとえば10個より少ないといった、例えば、10個より少ない細胞を含み、例えば生細胞は含まない。
本明細書で使用される場合、「正常または健康な対象」という用語は、当分野および/または本明細書に記述される任意の既知の方法により評価される炎症性関節失権に罹患していない対象を意味すると解されるものとする。
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、ヒト、たとえば哺乳類を含む任意の動物を意味すると解されるものとする。例示的な対象としては、限定されないが、ヒト、霊長類、家畜(たとえば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ等)、ペット(たとえば、イヌ、ネコ等)、実験動物(たとえば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター等)、捕獲された野生動物(たとえば、キツネ、シカ等)が挙げられる。一つの例において、哺乳類はヒトまたは霊長類である。一つの例において、哺乳類はヒトである。一つの例において、対象は、炎症性関節損傷の一つ以上の徴候、症状または他の指標を経験した、またはしているか、炎症性関節損傷と診断されているか(たとえば、新たに診断され、または過去に診断されて現在、再発または反復している)、または炎症性関節損傷を発症するリスクがあり、治療に適格である。
リウマチ性疾患
本開示の一つの例において、リウマチ性疾患は炎症性関節疾患である。炎症性関節疾患は、本明細書において、最も広い意味で用いられ、結合組織および軟骨を含む関節の一つ以上の任意の部分の部分的な、もしくは完全な破壊、または損傷を指し、ここで損傷とは、任意の原因による構造的な、および/または機能的な損傷を含み、関節における炎症により特徴付けられ、関節の疼痛/関節痛を引き起こすかどうかは問わない。この損傷は、たとえば関節炎(たとえば急性または慢性関節炎)、リウマチ性関節炎(若年発症リウマチ性関節炎、若年特発性関節炎(JIA)または若年性RA(JRA)を含む)等の自己免疫疾患等の任意の疾患、およびリウマチ性滑膜炎、痛風の、または通風性関節炎、急性免疫性関節炎、慢性免疫性関節炎、変形性関節炎、II型コラーゲン誘導性関節炎、感染性関節炎、敗血症性関節炎、ライム病関節炎、増殖性関節炎、乾癬性関節炎、スティル病、脊椎関節炎、骨関節炎、進行性慢性関節炎(arthritis chronica progrediente)、変形性関節炎、初期慢性多発性関節炎(polyarthritis chronica primaria)、反応性関節炎、閉経期関節炎、エストロゲン枯渇性関節炎および強直性脊椎炎/強直性リウマチ性関節炎等の病期、RA以外のリウマチ性自己免疫性疾患、RAに続発する重篤な全身性病変(脈管炎、肺線維症またはフェルティ症候群を含むが、限定されない)、血清反応陰性脊椎関節症、ライム病、混合性結合組織疾患、膠原病に関連した自己免疫性疾患により引き起こされうる。
一つの例において、炎症性関節疾患は、たとえば、単なる酷使またはスポーツによる傷害または関節への衝撃等により引き起こされる軟骨または骨または関節への障害ではない(これらの状態は、病気ではないため)ことが、当業者により理解される。
一つの例において、炎症性関節疾患は、自己免疫性疾患により引き起こされる、または自己免疫性疾患と関連している。「自己免疫性疾患」とは、対象自身の組織もしくは器官またはそれら自身の共分離物もしくは発現またはそれらからもたらされた状態より発生し、それらに向かう疾患である。一つの例において、炎症性関節疾患は、たとえば、対象の関節中に存在する抗原に対し、対象が有している免疫反応により引き起こされた自己免疫性炎症性関節疾患である。
一つの例において、炎症性関節障害は、たとえば、リウマチ性関節炎、骨関節炎、強直性脊椎炎または乾癬性関節炎等の関節炎により引き起こされる。
一つの例において、炎症性関節疾患は、リウマチ性関節炎である。
一つの例において、炎症性関節疾患は、骨関節炎である。
本明細書の目的に対し、関節は、(たとえば動物等の脊椎動物の)骨格の要素の間の接触点であり、その要素を囲み、支持する部分を有し、限定されないが、たとえば、腰、脊椎の椎骨の間の関節、脊椎と骨盤の間の関節(仙腸関節)、腱と靱帯が骨に付着する部分の関節、肋骨と脊椎の間の関節、肩、膝、足、肘、手、指、足関節および足指(特に、手および足の関節)が含まれる。
炎症性関節疾患を検出および/もしくは診断する方法、ならびに/または、追加の治療が必要もしくは推奨される場合には治療効果をモニターする方法が当業者に明らかである。たとえば、治療の間の様々な時点とベースラインの間の圧痛関節数および腫脹関節数を比較することが、治療への反応性および関節の状態を評価する典型的な方法である。米国リウマチ学会(ACR)のRAに対する関節カウント(joint count)(Felson et al. Arthritis & Rheumatology 38: 727-735, 1995)において、68の関節が圧痛に対して評価され、腫脹に対して66の関節が評価されている(腰は腫脹に対しては評価されていない)。欧州で主に用いられている疾患活動性スコア(DAS)においては、44または28のいずれかの関節カウントがRAに用いられている。関節カウントに加えて、ACR評価基準には、集成値を含有するために以下の要素を含んでいる:対象の全体的な様相(視覚的アナログ尺度[VAS]における)、対象の疼痛、医師の全体的な様相、健康状態質問票(HAQ;機能測定)、および急性期反応(C−反応性タンパク質または沈降速度のいずれか)。ACR20反応は、圧痛関節カウントおよび腫脹関節カウントにおいて20%の改善、および複合基準の他の5要素のうち少なくとも3つの20%の改善に相当する。ACR50反応および70反応は、これらの要素の少なくとも50%および70%の改善を表す。ACRシステムは単に変化を表し、DASシステムは疾患活動性の現在の状態および変化の両方を表す。DASスコアリングシステムは、RAの臨床試験から導かれた重み付きの数式を用いる。たとえば、DAS28は、0.56(T28)+0.28(SW28)+0.70(Ln ESR)+0.014 GHであり、ここで、Tは圧痛関節数を表し、SWは腫脹関節数を表し、ESRは赤血球沈降速度であり、GHは全体的な健康状態である。DASの様々な値により、疾患活動性の高低、ならびに再発が表され、変化とエンドポイントスコアによって、反応の程度(無し、中程度、良い)による対象の分類がもたらされる。
本明細書に使用される場合、「リウマチ性関節炎」とは、2000年に改訂されたリウマチ性関節炎の分類のための米国リウマチ協会基準、または任意の類似の基準に従い診断された、認識されている疾患状態を指す。RAの生理学的な指標は、リウマチ性関節炎において一定したものではないが、特徴的な、対称性の関節腫脹が挙げられる。手の近位指関節(PIP)ならびに中手指節関節(MCP)、手首、肘、膝、足関節および中足指節関節(MTP)の紡錘上の腫脹は、普遍的に侵襲される部位であり、腫脹は容易に検出できる。受動運動での疼痛は、関節の炎症に対する最も感受性の高いテストであり、炎症および構造的な変形は多くの場合、侵襲された関節に対する動きの範囲を制限する。典型的な目に見える変化としては、MCP関節での指の尺骨偏位、MCPおよびPIP関節の過伸展または過屈曲、肘の屈曲拘縮、ならびに手根骨および足指の亜脱臼が挙げられる。症状の治療で、DMARDが有効でない、または完全に有効であるという点において、リウマチ性関節炎の対象がDMARDに抵抗性、または抵抗性ではないことがありうる。さらに、対象は、抗CD20治療(たとえば、リツキシマブ)および/または、たとえばエタネルセプト、インフリキシマブおよび/またはアダリムマブ等のTNF阻害剤を伴う、従前の、または現在の治療に対し、毒性または不十分な有効性(たとえば、エタネルセプトは週に2度、25mgで3か月間。インフリキシマブは3mg/kgで少なくとも4回の注入)のために、十分に応答していない。
リウマチ性関節炎はまた、自己抗体(たとえば、リウマチ性因子(IgGに結合する抗体))および/または抗環状シトルリン化ペプチドおよび/または異種核リボ核タンパク質A2(RA33)および/またはII型コラーゲンおよび/またはストレスタンパク質(たとえば、BiPまたはhsp90)および/またはグルコース6リン酸イソメラーゼ(GPI)の存在により診断することができる。
「乾癬性関節炎」または「PsA」は、肌(乾癬)および関節(関節炎)の炎症により特徴付けられる慢性疾患である。乾癬は、落屑を伴う、まばらで、隆起した、赤色部位の肌の炎症を特色とし、多くの場合、肘および膝の先端、頭皮、へそ、生殖器周囲または肛門周囲が侵襲される。乾癬を有する対象の約10%がまた、それらの関節の関連炎症を発症する。炎症性関節炎および乾癬の両方を有する対象が、乾癬性関節炎であるとして診断される。乾癬性関節炎は、たとえば眼、心臓、肺および腎臓等の、関節や肌から離れた体組織の炎症もまた引き起こす全身性のリウマチ性疾患である。
「強直性脊椎炎」または「AS」は、脊椎および仙腸関節(仙骨(尾骨直上の骨)が腸骨(上臀部のいずれかの側上の骨)に出会う場所の腰背部に位置する)の慢性炎症の形態である。これらの領域における慢性炎症は、脊椎の、および脊椎周囲の疼痛および硬直をもたらす。長い時間をかけて、慢性脊椎炎症(脊椎炎)は、強直と呼ばれる過程である、脊椎の完全な共接着(癒合)をもたらす。強直は、脊椎の可動性の消失をもたらす。強直性脊椎炎もまた、全身性のリウマチ性疾患であり、体全体の他の組織に影響を与えうることを意味する。ゆえに、強直性脊椎炎は脊椎から離れた他の関節、ならびにたとえば眼、心臓、肺および腎臓等の他の器官での炎症または障害を引き起こしうる。
MPCまたは子孫細胞、およびそれらに由来する上清または1つもしくは複数の可溶性因子
MPCは、骨髄、血液、歯髄細胞、脂肪組織、皮膚、脾臓、膵臓、脳、腎臓、肝臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、リンパ節、胸腺、骨、靱帯、腱、骨格筋、真皮、および骨膜に見出される細胞であり、たとえば中胚葉および/または内胚葉および/または外胚葉等の生殖細胞系に分化することができる細胞である。
一つの例において、MPCは、多数の細胞型、例えば、限定はされないが、脂肪組織、骨組織、軟骨組織、弾性組織、筋肉組織、および線維性結合組織に分化可能な多能性細胞である。これらの細胞が迎える具体的な細胞系譜の決定および分化経路は、増殖因子、サイトカイン、および/または宿主組織によって構築される局所的な微小環境の条件等の機械的影響および/または内在性生物活性因子からの種々の影響に依存する。MPCは多能性細胞であり、従って、分裂して、どちらも幹細胞である娘細胞を生じる非造血系前駆細胞であるか、または適切な時期に不可逆的に分化して表現型を持つ細胞(phenotypic cell)を生じる前駆細胞である。
MPCは、STRO−1マーカー陽性である(すなわち、MPCはSTRO−1細胞である)。
一つの例において、STRO−1細胞は、対象、例えば、治療を受ける対象または近縁の(related)対象もしくは非近縁の(unrelated)対象(同一種か異種かに関わらない)から得られた試料から富化される。「富化された」、「富化」という用語またはその変化形は、無処置の細胞集団(例えば、天然環境にある細胞)と比較したときに、ある特定の細胞型の割合またはいくつかの特定の細胞型の割合が増加している細胞集団を記述するために本明細書では使用される。一例では、STRO−1細胞が富化された集団の割合は、少なくとも約0.1%または0.5%または1%または2%または5%または10%または15%または20%または25%または30%または50%または75%のSTRO−1細胞を含む。この点において、「STRO−1細胞が富化された細胞集団」という用語は、「X%のSTRO1細胞を含む細胞集団」という用語について明示的な支持を与えると解されるであろう。ここでX%は、本明細で列挙されているようにパーセンテージである。STRO−1細胞は、一部の例では、クローン原生コロニー、例えばCFU−F(線維芽細胞)を形成する可能性があり、またはそのサブセット(例えば50%または60%または70%または70%または90%または95%)がこの活性を有する可能性がある。
一つの例において、細胞集団は、選択可能な形態でSTRO−1細胞を含む細胞の調整物から富化される。この点において、「選択可能な形態」という用語は、STRO−1細胞の選択を可能にするマーカー(例えば細胞表面マーカー)を発現することを意味すると理解されるであろう。マーカーは、STRO−1であってもよいが、しかしそうである必要はない。例えば、本明細書に記載されているおよび/または例示されているように、STRO−2および/またはSTRO−3(TNAP)および/またはSTRO−4および/またはVCAM−1および/またはCD146および/または3G5を発現する細胞(例えばMPC)はまた、STRO−1(そしてSTRO−1強陽性(bright)である可能性がある)を発現する。従って、細胞がSTRO−1であるという表示は、細胞がSTRO−1発現によって選択されるということを必ずしも意味するものではない。一例では、細胞は、少なくともSTRO−3発現に基づいて選択され、例えばそれらはSTRO−3(TNAP)である。
細胞またはその集団の選択への言及が、特定の組織源からの選択である必要はない。本名明細書に記載されるように、STRO−1細胞は、非常に多様な源から選択または分離または富化されうる。とはいうものの、一部の例では、これらの用語は、STRO−1細胞(例えばMPC)を含むあらゆる組織、または血管組織、または周皮細胞(例えばSTRO−1周皮細胞)を含む組織、または本明細書に列挙される組織のいずれかまたはそれ以上のものに支持を与える。
一つの例において、本発明で用いられる細胞は、TNAP、VCAM−1、THY−1、STRO−2、CD45、CD146、3G5またはそれらのあらゆる組合せからなる群から、個々に、または集合的に選択される一つまたは複数のマーカーを発現する。
「個々に(Individually)」とは、本発明が、列挙されたマーカーまたはマーカー群を個別に包含すること、および、個々のマーカーまたはマーカー群が本明細書に個別には列挙されているわけではないにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、かかるマーカーまたはマーカー群を互いから個別に、且つ可分的に定義してもよいことを意味している。
「集合的に(Collectively)」とは、本発明があらゆる数の、またはあらゆる組合せの一覧にされたマーカーまたはペプチド群を含むこと、および、かかるあらゆる数の、またはあらゆる組合せの列挙されたマーカーまたはマーカー群が本明細書では具体的に一覧にされているわけではないにもかかわらず、添付の特許請求の範囲が、かかる組合せまたは部分的な組合せを、マーカーまたはマーカー群の他のあらゆる組合せから個別に、且つ可分的に定義してもよいことを意味している。
例えば、STRO−1細胞はSTRO−1強陽性(bright)(STRO−1強陽性(br)と同義)である。一例では、Stro−1強陽性細胞は、STRO−1弱陽性またはSTRO−1中間(intermediate)細胞と比較して優先的に富化される。
たとえば、STRO−1強陽性細胞は、さらに、TNAP、VCAM−1、THY−1、STRO−2および/またはCD146のうちの一つまたは複数である。例えば、細胞は、1つ以上の前述のマーカーに選択されるおよび/または1つ以上の前記マーカーを発現することが示される。この点において、マーカーを発現することが示された細胞が、具体的に試験される必要はなく、むしろ、これまで富化されたまたは単離された細胞が試験されてもよく、引き続いて使用、単離または富化された細胞もまた、同一のマーカーを発現するものと、妥当に仮定されてもよい。
一つの例において、前記間葉系前駆細胞は、国際公開第WO2004/85630号で定義されたように、血管周囲の間葉系前駆細胞である。たとえば、間葉系前駆細胞は、血管周囲細胞(たとえば、当該細胞は、STRO−1またはSTRO−1強陽性および/または3G5である)のマーカーを発現する。一つの例において、当該細胞は、血管組織またはそれらの器官もしくは部分から単離された細胞であるか、または以前にそのような細胞であったか、またはその子孫細胞である。
所与のマーカーに関して「陽性」であると見なされる細胞は、用語が蛍光の強度に関連する場合、マーカーが細胞表面上に存在している程度に応じた、低(低(lo)または弱陽性(dim))レベルもしくは高(強陽性(bright、bri))レベルのマーカーどちらかを発現している場合がある。ここで、この用語は、細胞の分取過程で使用される他のマーカーの蛍光強度に関係している。低(または弱陽性(dim)もしくは微陽性(dull))および強陽性の差異は、分取されている特定の細胞集団上の使用されるマーカーとの関連で理解されるだろう。所与のマーカーに関して「陰性」であるとみなされる細胞は、必ずしもその細胞に全く存在していないわけではない。この用語は、マーカーが、前記細胞によって相対的に非常に低いレベルで発現されていること、および、検出可能な程度に標識された場合に、マーカーが非常に小さなシグナルを発すること、またはバックグラウンドレベル、例えば、アイソタイプ対照抗体を用いて(suing)検出されたレベル以上には検出不能であること、を意味する。
「強陽性(bright)」という用語は、本明細書で使用される場合、検出可能な程度に標識された場合に、相対的に高いシグナルを発する細胞表面上マーカーを指している。理論に制限されることを望むものではないが、「強陽性」細胞は、試料中の他の細胞よりもいっそう多くの標的マーカータンパク質(例えばSTRO−1から識別される抗原)を発現すると提唱されている。例えば、STRO−1強陽性細胞は、FITC結合STRO−1抗体で標識された場合、蛍光標識細胞分取(FACS)分析によって測定される、非強陽性細胞(STRO−1微陽性/弱陽性)よりも大きな蛍光シグナルを発する。たとえば、「強陽性」細胞は、出発試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞のうちの少なくとも約0.1%を構成している。他の例では、「強陽性」細胞は、出発試料中に含まれる最も明るく標識された骨髄単核細胞のうちの少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、または少なくとも約2%を構成している。一例では、STRO−1強陽性細胞は、「バックグラウンド」、すなわちSTRO−1である細胞と比較して、STRO−1の細胞表面発現が2対数分(2 log magnitude)高い。比較した場合、STRO−1弱陽性および/またはSTRO−1中間細胞は、「バックグラウンド」よりも、STRO−1の細胞表面発現が2対数未満分高く、典型的には、約1対数以下分高い。
本明細書で使用される場合、「TNAP」という用語は、組織非特異的アルカリホスファターゼの全てのアイソフォームを包含することが意図されている。例えば、その用語には、肝アイソフォーム(LAP)、骨アイソフォーム(BAP)および腎アイソフォーム(KAP)が包含される。一例では、TNAPはBAPである。一例では、TNAPは、本明細書で使用される場合、ブダペスト条約の規定に基づきPTA−7282の寄託受託番号で2005年12月19日にATCCに寄託されたハイブリドーマ細胞株によって産生されるSTRO−3抗体と結合することができる分子を指す。
さらに、一つの例において、STRO−1細胞はクローン原性のCFU−Fを生じさせることができる。
一つの例において、かなりの割合のSTRO−1多能性細胞が、少なくとも2種類の異なる生殖細胞系に分化することができる。多能性細胞が分化決定され得る系譜の例としては、限定はされないが、骨前駆細胞;胆管上皮細胞および肝細胞への多分化能を有する肝細胞前駆細胞;乏突起膠細胞および星状膠細胞へと進行するグリア細胞前駆細胞を生じることができる神経限定細胞(neural restricted cell);ニューロンへと進行する神経前駆細胞;心筋および心筋細胞の前駆細胞、グルコース応答性インスリン分泌膵β細胞株が挙げられる。他の系譜としては、限定はされないが、象牙芽細胞、象牙質産生細胞および軟骨細胞、並びに以下の前駆細胞:網膜色素上皮細胞、線維芽細胞、ケラチノサイト等の皮膚細胞、樹状細胞、毛包細胞、尿細管上皮細胞、平滑筋細胞および骨格筋細胞、精巣前駆細胞、血管内皮細胞、腱、靱帯、軟骨、脂肪細胞、線維芽細胞、骨髄基質、心筋、平滑筋、骨格筋、周皮細胞、血管細胞、上皮細胞、グリア細胞、神経細胞、星状膠細胞および乏突起膠細胞が挙げられる。
他の例においては、STRO−1細胞は、培養後、造血細胞を生じさせることができない。
一つの例において、本細胞は治療を受ける対象から採取され、標準的な技術を用いてin vitroで培養され、自己成分または同種異系成分としてその対象に投与するための上清または可溶性因子または増殖した細胞を得るために用いられる。別の例では、樹立されたヒト細胞株のうちの一つまたは複数の細胞が用いられる。本発明の別の有用な例では、非ヒト動物の(または、対象がヒトでない場合は別の種に由来の)細胞が用いられる。
本発明はまた、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞(後者は増殖後細胞(expanded cell)とも称される)から得られる、または由来する、in vitroでの培養から生成される上清または可溶性因子の使用も企図している。本発明の増殖後細胞は、培養条件(培地中の刺激因子の数および/または種類を含む)、継代数等に応じて、種々様々な表現型を有し得る。ある例では、子孫細胞は、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、または約10回の継代後に、親集団から得られる。もっとも、子孫細胞は、任意の回数の継代後に親集団から得ることができる。
子孫細胞は任意の適切な培地中で培養することによって得ることができる。「培地」という用語は、細胞培養に関して使用される場合、細胞周辺の環境の成分を含む。培地は固体、液体、気体または相および物質の混合物であってもよい。培地には、液体の増殖培地、および細胞増殖を維持しない液体培地が含まれる。また、培地には、寒天、アガロース、ゼラチンおよびコラーゲン基質等のゼラチン質の培地も含まれる。気体培地の例としては、ペトリ皿または他の固体もしくは半固体の担体上で増殖している細胞が曝される気相が挙げられる。また、「培地」という用語は、それが未だ細胞と接触していない場合であっても、細胞培養での使用を目的としている物質を指す。すなわち、細菌培養用に調製された栄養分に富んだ液体が培地である。水または他の液体と混合されたときに細胞培養に適したものとなる粉末状混合物は、「粉末状培地」と称することができる。
一つの例において、本発明の方法に有用な子孫細胞は、STRO−3抗体で標識した磁気ビーズを用いて、TNAPSTRO−1細胞を骨髄から単離し、その後、その単離細胞を培養増殖することによって得られる(適切な培養条件の例は、Gronthos et al. Blood 85: 929-940, 1995を参照)。
一つの例において、そのような増殖後細胞(子孫)(例えば、少なくとも5回継代後)は、TNAP、CC9、HLAクラスI、HLAクラスII、CD14、CD19、CD3、CD11a、CD31、CD86、CD34および/またはCD80であり得る。しかし、可能性としては、本明細書に記載の条件とは異なる培養条件下では、種々のマーカーの発現は異なる場合がある。また、これらの表現型の細胞は増殖後の細胞集団において優勢であり得るが、一方で、そのことはこの表現型を有さない細胞の割合が小さいことを意味するものではない(例えば、わずかな比率の増殖後細胞はCC9であり得る)。一例では、増殖後細胞は異なる細胞型への分化能をまだなお有している。
一つの例において、上清もしくは可溶性因子、または細胞それ自体を得るために用いられる消費後(expended)細胞集団が含む細胞は、そのうち少なくとも25%、例えば少なくとも50%等がCC9である。
他の例において、上清もしくは可溶性因子、または細胞それ自体を得るために用いられる増殖後細胞集団が含む細胞は、そのうち少なくとも40%、例えば少なくとも45%等がSTRO−1である。
さらなる例では、増殖後細胞は、LFA−3、THY−1、VCAM−1、ICAM−1、PECAM−1、P−セレクチン、L−セレクチン、3G5、CD49a/CD49b/CD29、CD49c/CD29、CD49d/CD29、CD90、CD29、CD18、CD61、インテグリンβ6−19、トロンボモジュリン、CD10、CD13、SCF、PDGF−R、EGF−R、IGF1−R、NGF−R、FGF−R、レプチン−R(STRO−2はレプチン−Rである)、RANKL、STRO−1強陽性およびCD146からなる群から集合的に、もしくは個々に選択される一つもしくは複数のマーカー、またはこれらのマーカーのあらゆる組合せを発現し得る。
一つの例において、子孫細胞は、国際公開第WO2006/032092号に定義および/または記載される、多能性増殖後STRO−1多能性細胞子孫(Multipotential Expanded STRO-1+ Multipotential cells Progeny)(MEMP)である。子孫が由来し得るSTRO−1多能性細胞が富化された集団を調製する方法は、国際公開第WO01/04268号および同第WO2004/085630号に記載されている。in vitroという文脈では、STRO−1多能性細胞は完全に純粋な調製物として存在することはまれであり、通常は組織特異的分化決定済み(committed)細胞(TSCC)である他の細胞と一緒に存在している。国際公開第WO01/04268号は、そのような細胞を骨髄から約0.1%〜90%の純度レベルで回収することに言及している。子孫が由来するMPCを含む集団は、組織源から直接回収してもよいし、あるいは、ex vivoで既に増殖させてある集団であってもよい。
例えば、子孫は、それらが存在する集団の全細胞の少なくとも約0.1、1、5、10、20、30、40、50、60、70、80または95%を含む、収集され、増殖していない、実質的に精製されたSTRO−1多能性細胞の集団から得てもよい。このレベルは、例えば、TNAP、STRO−1強陽性、3G5、VCAM−1、THY−1、CD146およびSTRO−2からなる群から個々に、または集合的に選択される少なくとも1つのマーカーが陽性である細胞を選別することによって達成することができる。
MEMPSは、STRO−1強陽性マーカーに対し陽性であり、アルカリホスファターゼ(ALP)マーカーに対し陰性であるという点で、新たに収集されたSTRO−1多能性細胞と区別することができる。対照的に、新たに単離されたSTRO−1多能性細胞は、STRO−1強陽性およびALPの両方に対し陽性である。本発明の一例では、投与される細胞のうち少なくとも15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%が、STRO−1強陽性、ALPの表現型を有する。さらなる一例では、MEMPSはKi67、CD44および/またはCD49c/CD29、VLA−3、α3β1マーカーのうちの一つまたは複数に対し陽性である。さらなる例では、MEMPはTERT活性を示さず、および/または、CD18マーカーに対し陰性である。
STRO−1細胞出発集団は、国際公開第WO01/04268号または同第WO2004/085630号に記載される、あらゆる一つまたは複数の組織型、すなわち、骨髄、歯髄細胞、脂肪組織および皮膚由来、あるいは、より広範に、脂肪組織、歯、歯髄、皮膚、肝臓、腎臓、心臓、網膜、脳、毛包、腸、肺、脾臓、リンパ節、胸腺、膵臓、骨、靱帯、骨髄、腱および骨格筋由来であってもよい。
本発明を実施する際、任意の所与の細胞表面マーカーを保有している細胞の分別は、例示的な異なる方法によって達成できるが、一部の方法は、結合物質(例えば、抗体またはその抗原結合断片)を関係するマーカーに結合し、高レベル結合、または低レベル結合または結合なしのいずれかである、結合を示す細胞を分別することに依存することは理解されるだろう。最も都合のよい結合物質は、これらの後者の作用物質の特異性という理由から、モノクローナル抗体である、またはモノクローナル抗体に基づく例示的な方法で、抗体または抗体ベースの分子である。抗体は両方のステップに用いることができるが、他の作用物質を用いてもよく、従って、マーカーを保有している細胞、またはマーカーがない細胞を富化するために、これらのマーカーに対するリガンドを使用してもよい。
抗体またはリガンドを固体の担体に付着させることで、粗分別が可能となる
例示的な分別技術は、収集される画分の生存能の保持率を最大とする。異なる効率の種々の技術が、比較的粗い分別を行うために使用可能である。使用される具体的な技術は、分別効率、随伴する細胞毒性、実施の容易さおよび速さ、並びに高性能機器および/または技巧の必要性に応じたものとなるだろう。分別の手順には、限定はされないが、抗体被膜磁気ビーズを用いた磁気分別、アフィニティークロマトグラフィーおよび固体の基盤に付着した抗体での「パニング」が含まれ得る。正確な分別を提供する技術としては、限定はされないが、FACSが挙げられる。FACSを実施するための方法は、当業者には明らかであるだろう。
本明細書に記載のマーカーの各々に対する抗体は市販されており(例えば、STRO−1に対するモノクローナル抗体はR&Dシステム社、米国から購入できる)、ATCCまたは他の預託機関から入手可能であり、および/または、当該分野で認知されている技術を用いて作製することができる。
STRO−1細胞を単離するための例示的な方法は、例えば、STRO−1の高レベル発現を認識する磁気細胞分取(MACS)を利用する固相分取ステップである第一ステップを含む。所望であれば、より高レベルの前駆細胞発現をもたらすために、国際公開第WO01/14268号の特許明細書に記載される第二の分取ステップを続けることができる。この第二の分取ステップには、2つ以上のマーカーの使用が含まれ得る。
STRO−1細胞を得るための方法には、既知の技術を用いた第一富化ステップの前に、細胞の源を収集することが含まれてもよい。従って、組織が外科的に摘出される。源組織を構成する細胞は、その後分別されて、いわゆる単一細胞浮遊液にされる。この分別は、物理的手段および/または酵素的手段によって達成することができる。
適切なSTRO−1細胞集団を得た後、細胞を任意の適切な手段で培養または増殖させてMEMPを得ることができる。
一つの例において、前記細胞は治療を受ける対象から採取され、標準的な技術を用いてin vitroで培養され、その対象に自己または同種異系間の組成物として投与することを目的とした上清または可溶性因子または増殖後細胞を得るために用いられる。別の例では、樹立されたヒト細胞株のうちの一つまたは複数の細胞が、上清または可溶性因子を得るために使用される。本発明の別の有用な例では、非ヒト動物(または、対象がヒトでない場合は別の種に由来)の細胞が、上清または可溶性因子を得るために使用される。
本発明は、あらゆる非ヒト動物種由来の細胞、例えば、限定はされないが、非ヒト霊長類細胞、有蹄動物、イヌ、ネコ、ウサギ、げっ歯類、トリ、および魚の細胞を用いて実施できる。本発明を実施することができる霊長類細胞としては、限定はされないが、チンパンジー、ヒヒ、カニクイザル、および他のあらゆる新世界ザルまたは旧世界ザルの細胞が挙げられる。本発明を実施することができる有蹄動物細胞としては、限定はされないが、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、水牛およびバイソンの細胞が挙げられる。本発明を実施することができるげっ歯類細胞としては、限定はされないが、マウス、ラット、モルモット、ハムスターおよびスナネズミの細胞が挙げられる。本発明を実施することができるウサギ種の例としては、家畜化されたウサギ、ノウサギ(jack rabbit、hare)、ワタオウサギ、カンジキウサギ、およびナキウサギが挙げられる。ニワトリ(Gallus gallus)は、本発明の方法を実施することができるトリ種の一例である。
本発明の方法に有用な細胞は、使用前、または上清もしくは可溶性因子を得る前に、保存することができる。真核細胞、具体的には哺乳類細胞を保存および保管するための方法およびプロトコールは、当該技術分野において周知である(例えば、Pollard, J. W. and Walker, J. M. (1997) Basic Cell Culture Protocols, Second Edition, Humana Press, Totowa, N.J.; Freshney, R. I. (2000) Culture of Animal Cells, Fourth Edition, Wiley-Liss, Hoboken, N.J.を参照)。間葉系幹/前駆細胞、またはその子孫等の単離された幹細胞の生物活性を維持するための方法は、本発明と一緒に利用することができる。一例では、前記細胞は凍結保存を用いて維持および保管される。
遺伝子改変細胞
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、遺伝子改変されて、例えば、関心のタンパク質を発現および/または分泌する。例えば、細胞は、炎症性関節疾患の治療に有用なタンパク質(たとえば、抗TNF抗体(たとえば、アダリムマブまたはインフリキシマブ)または抗CD20抗体(たとえば、リツキシマブまたはオクレリズマブ)または可溶性TNF受容体(たとえばエタネルセプト))、またはそのような疾患の治療に有用なペプチド(たとえば、米国特許5837686号に記述される)を発現するように設計される。
細胞を遺伝子改変する方法は、当業者には明らかであるだろう。例えば、細胞で発現されるべき核酸は、細胞での発現を誘導するためのプロモーターと機能的に連結される。例えば、核酸は、例えば、ウイルスプロモーター、例えば、CMVプロモーター(例えば、CMV−IEプロモーター)またはSV−40プロモーター等の、対象の種々の細胞中で機能できるプロモーターに連結される。さらなる適切なプロモーターは当該技術分野において周知であり、本発明の本例に準用すると解されるものとする。
たとえば、核酸は発現コンストラクトの形態で提供される。本明細書で使用される場合、「発現コンストラクト」という用語は、細胞中で機能的に連結された核酸(例えば、レポーター遺伝子および/または対抗選択可能な(counter-selectable)レポーター遺伝子)を発現させる能力を有する核酸を指す。本発明の文脈においては、発現コンストラクトは、プラスミド、バクテリオファージ、ファージミド、コスミド、ウイルスのサブゲノム断片もしくはゲノム断片、または異種DNAを発現可能な形態で維持および/または複製できる他の核酸を含むか、またはそれら自身であってもよいことは理解されるべきである。
本発明の方法を実施するための適切な発現コンストラクトを構築するための方法は、当業者には明らかであり、例えば、Ausubel et al (In: Current Protocols in Molecular Biology. Wiley Interscience, ISBN 047 150338, 1987)または Sambrook et al (In: Molecular Cloning: Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratories, New York, Third Edition 2001)に記載されている。例えば、発現コンストラクトの各成分は、例えばPCRを用いて適切な鋳型核酸から増幅され、その後、例えばプラスミドまたはファージミド等の適切な発現コンストラクト中にクローニングされる。
そのような発現コンストラクトに適切なベクターは、当該技術分野において周知であり、および/または、本明細書に記載されている。例えば、哺乳類細胞における、本発明の方法に適切な発現ベクターは、例えば、ライフテクノロジーズ社より提供されるpcDNAベクター一式のベクター、pCIベクター一式(プロメガ社)のベクター、pCMVベクター一式(クロンテック社)のベクター、pMベクター(クロンテック社)、pSIベクター(プロメガ社)、VP16ベクター(クロンテック社)またはpcDNAベクター一式(インビトロジェン社)のベクターである。
当業者は、さらなるベクター、および例えば、ライフテクノロジー社、クロンテック社またはプロメガ社等の、そのようなベクターの供給源は承知しているだろう。
単離された核酸分子またはそれを含む遺伝子コンストラクトを発現のために細胞に導入する手段は、当業者に周知である。所与の生物体に用いられる技術は、既知の優れた技術に依存する。組換えDNAを細胞に導入するための手段としては、マイクロインジェクション、DEAE−デキストランによって媒介されるトランスフェクション、例えばリポフェクタミン(ギブコ社、米国メリーランド州)および/またはセルフェクチン(ギブコ社、米国メリーランド州)による、リポソームによって媒介されるトランスフェクション、PEGによって媒介されるDNAの取り込み、エレクトロポレーション、並びに、例えばDNAを被膜したタングステンまたは金粒子(アグラセタス社(Agracetus Inc.)、米国ウィスコンシン州)による微小粒子照射(microparticle bombardment)が特に挙げられる。
あるいは、本発明の発現コンストラクトはウイルスベクターである。適切なウイルスベクターは当該技術分野において周知であり、市販されている。核酸の運搬および宿主細胞ゲノムへの核酸の組込みを目的とした従来のウイルスベースの系としては、例えば、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルスベクターが挙げられる。あるいは、アデノウイルスベクターが、エピソームのままの核酸を宿主細胞に導入するのに有用である。ウイルスベクターは、標的細胞および標的組織における遺伝子導入の、効率的で且つ用途の広い方法である。さらに、高い導入効率が、多くの異なる細胞型および標的組織で確認されている。
たとえば、レトロウイルスベクターは、通常、最大6〜10kbの外来配列パッケージング容量を有する、シス作動性長末端反復配列(LTR)を含む。最小のシス作動性LTRであってもベクターの複製およびパッケージングには十分であり、その後、発現コンストラクトを標的細胞に組み込むのに使用され、長期発現を提供する。広く使用されているレトロウイルスベクターとしては、マウス白血病ウイルス(MuLV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、サル免疫不全ウイルス(SrV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、およびその組合せをベースとするものが含まれる(例えば、Buchscher et al., J Virol. 56:2731-2739 (1992); Johann et al, J. Virol. 65:1635-1640 (1992); Sommerfelt et al, Virol. 76:58-59 (1990); Wilson et al, J. Virol. 63:274-2318 (1989); Miller et al., J. Virol. 65:2220-2224 (1991); PCT/US94/05700; Miller and Rosman BioTechniques 7:980-990, 1989; Miller, A. D. Human Gene Therapy 7:5-14, 1990; Scarpa et al Virology 75:849-852, 1991; Burns et al. Proc. Natl. Acad. Sci USA 90:8033-8037, 1993を参照)。
また、様々なアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター系が核酸運搬用に開発されている。AAVベクターは、当該技術分野において周知の技術を用いて容易に構築することができる。例えば、米国特許第5,173,414号および同第5,139,941号;国際公開第WO92/01070号および同第WO93/03769号;Lebkowski et al. Molec. Cell. Biol. 5:3988-3996, 1988; Vincent et al. (1990) Vaccines 90 (Cold Spring Harbor Laboratory Press);Carter Current Opinion in Biotechnology 5:533-539, 1992; Muzyczka. Current Topics in Microbiol, and Immunol. 158:97-129, 1992; Kotin, Human Gene Therapy 5:793-801, 1994; Shelling and Smith Gene Therapy 7:165-169, 1994;並びにZhou et al. J Exp. Med. 179:1867-1875, 1994を参照されたい。
本発明の発現コンストラクトを運搬するのに有用なさらなるウイルスベクターとしては、例えば、ワクシニアウイルスおよびトリポックスウイルス等の痘ファミリー(pox family)のウイルス由来のもの、またはアルファウイルス属または複合(conjugate)ウイルスベクター(例えば、Fisher-Hoch et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 56:317-321, 1989に記載のもの)が挙げられる。
細胞および可溶性因子の治療/予防における有用性試験
細胞または可溶性因子の、炎症性関節疾患を治療するまたは予防するまたはその開始もしくは進行を遅延させる能力を測定する方法は、当業者には明らかであるだろう。
たとえば、リウマチ性関節炎のin vitroモデルは、Schultz et al., Arthritis and Rheumatism, 40: 1420-1428, 1997に記載されており、関節炎に罹患している対象由来の滑膜および関節軟骨組織片、または滑膜細胞および軟骨細胞を3次元フィブリン基質にて培養することを含む。本明細書に記載される細胞および/または可溶性因子を培養へと投与することにより、たとえば、タンパク質分解酵素の発現、軟骨細胞基質構造、基質分解または細胞数を分析することにより、当該細胞/因子の治療的効果/予防効果を測定することができる。
他の関節炎のin vitroモデルとしては、TNFαおよび/またはIL−1βの存在下で軟骨円板を滑膜線維芽細胞と培養することが挙げられる。本明細書に記載される細胞および/または可溶性因子を培養へと投与することにより、たとえば、タンパク質分解酵素の発現、コラーゲン基質構造、基質分解、炎症誘発性サイトカインレベル(たとえば、IL−6および/またはIL−8)または細胞数を分析することにより、当該細胞/因子の治療的効果/予防効果を測定することができる。
他の例において、本明細書に記載される細胞および/または可溶性因子の効果は、リウマチ関節炎のin vivoモデル(たとえば、マウスのSKG系統(Sakaguchi et al., Nature, 426: 454-460)、ラットII型コラーゲン関節炎モデル、マウスII型コラーゲン関節炎モデルまたは数種の抗原誘導性関節炎モデル(Bendele J Musculoskel Neuron Interact 2001; 1(4):377-385))において評価される。本発明者らはまた、リウマチ性関節炎のヒツジモデルを示している。
強直性脊椎炎の動物モデルもまた当業者に公知であり、balb/cマウスをアグリカンおよび/またはベルシカンで免疫することを含むモデル、白血球抗原−B27を過剰発現するank/ankマウス、ラットのモデルが挙げられる。
上記のことから当業者には明らかであるが、本開示はまた、その炎症性関節疾患の治療、予防もしくは遅延のための細胞もしくは可溶性因子を同定または単離するための方法を提示し、当該方法は、
(i)炎症性関節疾患に罹患している試験対象に細胞または可溶性因子を投与し、対象の関節における炎症を評価すること、
(ii)(i)での対象の関節における炎症レベルを、細胞または可溶性因子を投与されていない、炎症性関節疾患を罹患している対照となる対象の関節における炎症レベルと比較すること、
を含み、
ここで、対照となる対象と比較して、試験対象の関節における炎症の減少は、細胞または可溶性因子が炎症性関節疾患を治療、予防または遅延させることを示唆する。
本開示はまた、その炎症性関節疾患の治療、予防もしくは遅延のための細胞もしくは可溶性因子を同定または単離するための方法を提示し、当該方法は、
(i)炎症性関節疾患の試験in vitroモデルを接触させ、モデルにおける炎症の一つ以上のマーカーのレベルを測定すること、
(ii)細胞または可溶性因子を投与されていない、炎症性関節疾患の対照in vitroモデルにおける炎症の一つ以上のマーカーのレベルを測定すること、
を含み、
ここで、対象モデルと比較した、試験モデルにおける炎症のマーカーレベルの減少は、細胞または可溶性因子が炎症性関節疾患を治療、予防または遅延させることを示唆する。
炎症の例示的なマーカーとしては、タンパク質分解酵素の発現、コラーゲン基質構造、基質分解、炎症誘発性サイトカインレベル(たとえば、IL−6および/またはIL−8)または炎症性細胞数が挙げられる。
当該細胞は、任意の例に従い、本明細書に記述される任意の細胞でありうる。
細胞性組成物
本開示の一例では、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、組成物の形態で投与される。たとえば、かかる組成物は薬剤的に許容できる担体および/または賦形剤を含む。
「担体」および「賦形剤」という用語は、貯蔵、投与、および/または活性化合物の生物活性を促進するために当該技術分野において従来用いられる組成物を指す(例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 16th Ed., Mac Publishing Company (1980)を参照)。担体は活性化合物のあらゆる望ましくない副作用を減らすこともできる。適切な担体は、例えば、安定であり、例えば、担体中の他の成分と反応できない。一例では、担体は、治療に使用された投与量および濃度において、重大な局所的または全身的な有害作用をレシピエントにもたらさない。
本開示のための適切な担体には、従来的に使用されるものが含まれ、例えば、水、食塩水、水性デキストロース、ラクトース、リンゲル液、緩衝液、ヒアルロナンおよびグリコールは、特に(等張である場合)水剤用に、例示的な液体担体である。適切な医薬担体および賦形剤としては、デンプン、セルロース、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、塩化ナトリウム、グリセロール、プロピレングリコール、水、エタノール等が挙げられる。
別の例では、担体は、例えば、その中で細胞が生育または懸濁される、培地組成物である。例えば、かかる培地組成物は、それを投与された対象においていかなる有害作用も誘導しない。
例示的な担体および賦形剤は、細胞の生存能、ならびに/または炎症性関節疾患を減少、防止もしくは遅延させる細胞の能力に悪影響を及ぼさない。
一例では、担体または賦形剤によって緩衝作用(buffering activity)がもたらされ、それにより細胞および/または可溶性因子が適切なpHに維持されることで生物活性が発現される。例えば、その担体または賦形剤はリン酸緩衝食塩水(PBS)である。PBSは、魅力的な担体または賦形剤であるが、その理由は、血流中または組織もしくは組織の周辺もしくは隣接領域中への、例えば、注射による直接的な適用を目的として、本発明の組成物が液体として製造されるような場合に、PBSが細胞および因子と最小限にしか相互作用せず、細胞および因子の迅速な放出を可能とするためである。
STRO−1細胞および/またはその子孫細胞は、レシピエント適合性であり、レシピエントに対し有害ではない産物に分解される足場に組み込む、または埋め込むこともできる。これらの足場によって、レシピエントである対象に移植されるべき細胞に、支持および保護がもたらされる。天然および/または合成の生分解性足場は、そのような足場の例である。
種々の異なる足場が、本発明の実施において成功裏に使用され得る。好ましい足場としては、限定はされないが、生物的で、分解可能な足場が挙げられる。天然の生分解性足場としては、コラーゲン、フィブロネクチン、およびラミニン足場が挙げられる。細胞移植の足場のための適切な合成材料は、広範な細胞成長および細胞機能を支持可能なものであるべきである。そのような足場は再吸収可能なものであってもよい。適切な足場としては、例えば、Vacanti, et al. J. Ped. Surg. 23:3-9 1988; Cima, et al. Biotechnol. Bioeng. 38:145 1991; Vacanti, et al. Plast. Reconstr. Surg. 88:753-9 1991に記載されるような、ポリグリコール酸の足場;またはポリ酸無水物、ポリオルトエステル、およびポリ乳酸等の合成高分子が挙げられる。
別の例では、本細胞はゲル状足場(アップジョン社のゼルフォーム等)に投与され得る。
本明細書に記載の方法に有用な本細胞性組成物は、単独で、または他の細胞との混合物として投与されてもよい。本発明の組成物と併せて投与され得る細胞としては、限定はされないが、他の多分化能もしくは多能性を有する細胞もしくは幹細胞、または骨髄細胞が挙げられる。異なる型の細胞は、本発明の組成物と、投与の直前または少し前に混合することができ、あるいは、それらを投与前にある一定期間一緒に共培養してもよい。
一例では、本組成物は、有効量または治療的もしくは予防的に有効量の細胞を含む。例えば、本組成物は、約1×10STRO−1細胞/kg〜約1×10STRO−1細胞/kgまたは約1×10STRO−1細胞/kg〜約5×10STRO−1細胞/kgを含む。投与されるべき細胞の正確な量は、種々の因子、例えば、対象の年齢、体重、および性別、並びに炎症性関節疾患の範囲および重症度に応じて決定される。
一例では、低用量の細胞が対象に投与される。例示的な投与量は、kgあたり約0.1×10〜約0.5×10個の間の細胞、例えば、kgあたり約0.1×10〜約0.5×10個の間の細胞といった、kgあたり約0.5×10〜約0.5×10個の間の細胞、例えば、kgあたり約0.1×10〜約0.5×10個の間の細胞、kgあたり約0.2×10または0.3×10または0.4×10個の細胞を含む。
一つの例において、高用量の細胞が対象に投与される。例示的な投与量としては、少なくとも約1.5×10細胞/kgが含まれる。たとえば、高用量には、約1.5×10〜約6×10細胞/kgが含有され、たとえば、約1.5×10〜約5×10細胞/kg、たとえば、約1.5×10〜約4×10細胞/kg、たとえば、約1.5×10〜約3×10細胞/kgである。たとえば、高用量には、約1.5×10〜約2×10細胞/kgが含有される。
一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、トータルの細胞数の用量として投与される。
たとえば、一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億〜3億の細胞の投与量で、投与される。
たとえば、一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億〜2億の細胞の投与量で、投与される。
たとえば、一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1億の細胞の投与量で、投与される。
たとえば、一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約1.5億の細胞の投与量で、投与される。
たとえば、一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約2億の細胞の投与量で、投与される。
たとえば、一つの例において、当該細胞は、対象の体重に関係なく、約3億の細胞の投与量で、投与される。
一部の例では、細胞は、細胞が対象の血行路に出て行くことを拒むが、細胞から分泌された因子が血行路に進入することは許すチャンバー内に含まれる。このように、本細胞が対象の血行路に因子を分泌することを可能とさせることにより、可溶性因子は対象に投与され得る。そのようなチャンバーは、対象におけるある部位に均等に埋め込むことで可溶性因子の局所レベルを増加させることができ、例えば、膵臓の中または近くに埋め込まれる。
本発明の一部の例では、細胞性組成物を用いた治療の開始前に対象を免疫抑制することは、必ずしも必要であったり、望まれたりするわけではない。従って、STRO−1細胞またはその子孫の、同種異系間、さらには異種間での移植であっても、場合によっては許容されることがある。
しかし、他の場合においては、細胞治療開始前に、対象を薬理学的に免疫抑制することおよび/または細胞組成物に対する対象の免疫応答を減少させることが望ましいか、または適切であり得る。これは、全身的または局所的な免疫抑制剤の使用によって達成することができ、あるいは封入デバイスにて本細胞を送達することによって達成することもできる。本細胞は、細胞および治療因子に必要とされる栄養分および酸素を透過させるが、免疫液性因子および細胞は透過させないカプセルに封入してもよい。例えば、カプセルの材料は、アレルギーを起こしにくいもので、標的組織内に容易に且つ安定して位置し、移植された構造体にさらなる保護を与える。移植細胞に対する免疫応答を低減または除去するためのこれらおよび他の手段は、当該技術分野において周知である。代わりに、本細胞を、それらの免疫原性を低減させるために、遺伝的に改変してもよい。
可溶性因子
本発明の一例では、STRO−1細胞由来の、および/もしくは子孫細胞由来の上清または可溶性因子は、例えば、適切な担体および/または賦形剤を含む組成物の形態で、投与される。たとえば、担体または賦形剤は可溶性因子または上清の生物学的効果に悪影響を及ぼさない。
一例では、本組成物は、可溶性因子または上清の成分、例えば、プロテアーゼ阻害剤を安定化させるための組成物を含む。たとえば、プロテアーゼ阻害剤は、対象に対し有害作用を有するのに十分な量では含まれない。
STRO−1細胞由来の、および/もしくは子孫細胞由来の上清または可溶性因子を含む組成物は、例えば、培地中で、または安定な担体もしくは緩衝溶液、例えば、リン酸緩衝食塩水中で、適切な液体懸濁液として調製してもよい。適切な担体は本明細書の上記の通りである。別の例では、STRO−1細胞由来の、および/または子孫細胞由来の上清または可溶性因子を含む懸濁液は、注射用の油状懸濁液である。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油;またはオレイン酸エチルもしくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル;またはリポソームが挙げられる。注射用に使用されるべき懸濁液は、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、またはデキストラン等の、懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してもよい。所望により懸濁液は、化合物の溶解性を増加させ、高濃度での溶液の調製を可能とさせる、適切な安定剤または作用物質を含んでもよい。
無菌の注射剤は、必要とされる量の上清または可溶性因子を、上記成分のうちの一つまたは組合せと一緒に、適切な溶媒に組み入れ、必要に応じて、その後フィルター滅菌を行うことによって、調製できる。
通常、分散液は、上清または可溶性因子を、基本(basic)分散媒および上に列挙されたものから必要な他の成分を含有する無菌のビヒクルに組み入れることによって調製される。無菌注射剤調製用の無菌散剤の場合、例示的な調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥であり、それによって、活性成分およびその予め細菌濾過した溶液由来の任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。本発明の別の態様によれば、上清または可溶性因子は、その溶解性を増強する一つまたは複数のさらなる化合物と共に製剤化され得る。
担体または賦形剤の他の例は、例えば、Hardman, et al. (2001) Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics, McGraw-Hill, New York, N. Y.; Gennaro (2000) Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Lippincott, Williams, and Wilkins, New York, N. Y.; Avis, et al. (eds.) (1993) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Marcel Dekker, NY; Lieberman, et al. (eds.) (1990) Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems, Marcel Dekker, NY; Weiner and Kotkoskie (2000) Excipient Toxicity and Safety, Marcel Dekker, Inc., New York, N. Y.に記載されている。
治療組成物は、通常、製造および貯蔵の条件下では無菌且つ安定であるべきである。本組成物は、溶液、マイクロエマルション、リポソーム、または他の規則構造として製剤化することができる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール等)、および適切なその混合物を含有する溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチン等の被膜の使用によって、分散の場合に必要とされる粒径の維持によって、および界面活性剤の使用によって、適切な流動性を維持することができる。多くの場合において、本組成物中に等張剤、例えば、糖類、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトール等、または塩化ナトリウムを含むことが望ましい。注射用組成物の持続的吸収は、本組成物中に、吸収を遅延させる作用物質、例えば、一ステアリン酸塩およびゼラチンを含むことによってもたらされ得る。さらに、可溶性因子を、徐放性製剤、例えば徐放性ポリマーを含む組成物中に、投与してもよい。例えば、移植片およびマイクロカプセル化した送達系を含む徐放性製剤等、活性化合物は化合物を急速な放出から保護する担体と一緒に調製することができる。エチレン酢酸ビニル、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、ポリ乳酸およびポリ乳酸ポリグリコール酸コポリマー(PLG)等の、生分解性、生体適合性の高分子を使用することができる。そのような製剤を調製するための多くの方法が、特許されているか、または当業者に一般的に知られている。
上清または可溶性因子は、例えば、可溶性因子を除放させるために、適切な基質と併せて投与してもよい。
組成物のさらなる構成要素
STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、他の有益な薬物または生化学的分子(増殖因子、栄養因子)とともに投与されてもよい。他の薬剤とともに投与されるとき、それらは、単一の薬剤的組成物で、または独立した薬剤的組成物で、同時にまたは連続して、他の薬剤とともに(他の薬剤の投与の前後に)投与されてもよい。同時投与されてもよい生理活性因子には、反アポトーシス剤(例えばEPO、EPOミメチボディ、TPO、IGF−IおよびIGF−II、HGF、カスパーゼ阻害剤);抗炎症薬(例えばp38MAPK阻害剤、TGFベータ阻害剤、スタチン、IL−6およびIL−1阻害剤、ぺミロラスト、トラニラスト、レミケード、シロリムスおよびNSAIDs(非ステロイド性の抗炎症薬物;例えば、テポキサリン、トルメン、スプロフェン);免疫抑制/免疫修飾剤(例えば、シクロスポリン、タクロニムスのようなカルシニューリン阻害剤;mTOR阻害剤(例えば、シロリムス、エベロリムス);抗増殖剤(例えばアザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル);コルチコステロイド(例えばプレドニゾン、ヒドロコルチゾン);コルチコステロイド(例えば、プレドニゾロン、ヒドロコルチゾン);モノクローナル抗IL−2Rアルファ受容体抗体(例えば、バシリキシマブ、ダクリズマブ)といった抗体、(例えば、抗胸腺細胞グロブリン(ATG);抗リンパ球グロブリン(ALG);モノクローナル抗T細胞抗体OKT3)といったポリクローナル抗T細胞抗体;反血栓形成剤(例えば、ヘパリン、ヘパリン誘導体、ウロキナーゼ、PPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害剤および血小板阻害薬);および抗酸化剤(例えば、プロブコール、ビタミA、アスコルビン酸、トコフェノール、コエンザイムQ10、グルタチオン、L−システイン、N−アセチルシステイン)とともに局所麻酔薬、などが挙げられる。
一つの例において、当該細胞および/または可溶性因子は、免疫抑制剤または抗炎症剤またはDMARDまたは非ステロイド系抗炎症剤とともに投与される。
例示的な免疫抑制剤/抗炎症剤としては、サイトカイン産生、自己抗原発現を下方調整もしくは抑制、またはMHC抗原を覆う物質が挙げられる。そのような剤の例としては、2−アミノ−6−アリル−5−置換ピリミジン(米国特許第4,665,077号を参照のこと)、ガンシクロビル、タクロリムス、たとえばコルチゾールもしくはアルドステロン等のグルココルチコイド、たとえばシクロオキシゲナーゼ阻害剤、5−リポキシゲナーゼ阻害剤もしくはロイコトリエン受容体アンタゴニスト等の抗炎症剤;たとえばアザチオプリンもしくはミコフェノレートモフェチル(MMF)等のプリンアンタゴニスト;たとえばシクロホスファミド等のアルキル化剤;ブロモクリプチン;ダナゾール;ダプゾーン;グルタールアルデヒド(米国特許第4,120,649号に記載されるように、MHC抗原を覆う);MHC抗原およびMHC断片に対する抗イディオタイプ抗体;シクロスポリンA;たとえばコルチコステロイドもしくはグルココルチコステロイドもしくはグルココルチコイドアナログ(たとえば、プレドニゾン、SOLU−MEDROL(登録商標)メチルプレドニゾロンコハク酸ナトリウムを含むメチルプレドニゾロン、およびデキサメタゾン)等のステロイド;たとえばメトトレキサート(経口または皮下)等のジヒドロフォレート還元酵素阻害剤;たとえばクロロキンおよびヒドロキシクロロキン等の抗マラリア剤;スルファサラジン;レフルノミド;たとえば抗インターフェロン−α、−βまたは−γ抗体、抗腫瘍壊死因子(TNF)−α抗体(インフリキシマブまたはアダリムマブ)、抗TNF−α免疫付着因子(エタネルセプト)、抗TNF−β抗体、抗インターロイキン−2(IL−2)抗体ならびに抗IL−2受容体抗体ならびに抗インターロイキン‐6(IL−6)受容体抗体およびアンタゴニストを含む、サイトカイン抗体またはサイトカイン受容体抗体等のサイトカインアンタゴニスト;抗CD11aおよび抗CD18抗体を含む抗LFA−1抗体;抗L3T4抗体、異種抗リンパ球グロブリン;たとえば抗CD3または抗CD4/CD4a抗体等の汎T抗体;LFA−3結合ドメインを含有する可溶性ペプチド(WO90/08187);ストレプトキナーゼ;形質転換増殖因子−β(TGF−β);ストレプトドルナーゼ;宿主由来のRNAまたはDNA;FK506;RS−61443;クロラムブシル;デオキシスペルグアリン;ラパミシン;T細胞受容体(US5114721);T細胞受容体断片(W90/11294);たとえばBAFF抗体およびBR3抗体およびzTNF4アンタゴニスト等のBAFFアンタゴニスト;CD40−CD40リガンドおよびCTLA4−Igに対するブロッキング抗体を含む、たとえば抗CD40受容体または抗CD40リガンド(CD154)等のT細胞ヘルパーシグナルを阻害する生物学的薬剤;たとえばT10B9等のT細胞受容体抗体(EP340,109)が挙げられる。本明細書の一部の免疫抑制剤はまた、たとえばメトトレキサート等のDMARDsである。本明細書の例示的な免疫抑制剤としては、シクロホスファミド、クロラムブシル、アザチオプリン、レフルノミド、MMFまたはメトトレキサートが挙げられる。
「疾患修飾性抗リウマチ薬」または「DMARD」の例としては、それらの塩および誘導体を含む、ヒドロキシクロロキン、スルファサラジン、メトトレキサート、レフルノミド、エタネルセプト、インフリキシマブ(経口および皮下メトトレキサートも加わる)、アザチオプリン、D−ペニシラミン、金塩類(経口)、金塩類(筋肉内)、ミノシクリン、シクロスポリンAおよび局所シクロスポリンを含むシクロスポリン、ブドウ球菌タンパク質Aが挙げられる。一つの例において、DMARDはメトトレキサートである。
「非ステロイド系抗炎症剤」または「NSAIDs」の例としては、アスピリン、アセチルサリチル酸、イブプロフェン、フルルビプロフェン、ナプロキセン、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、フェニルブタゾン、ジクロフェナク、ケトプロフェン、ベノリレート、メフェナム酸、メトトレキサート、フェンブフェン、アザプロパゾン;たとえばセレコキシブ4−(5−(4−メチルフェニル)−3−(トリフルオロメチル)−1H−ピラゾール−1−イル)ベンゼンスルフォナム−イデ、バルデコキシブ、メロキシカム、GR253035(Glaxo Wellcome)等のCOX−2阻害剤;およびMK966(Merck Sharp & Dohme)、ならびにそれらの塩および誘導体等が挙げられる。
あるいは、またはさらには、他の化合物としては、抗CD20抗体(たとえば、リツキシマブまたはオファツムマブ)がある。あるいは、またはさらには、他の化合物としては、抗CD22抗体(たとえば、エプラツズマブ)がある。あるいは、またはさらには、他の化合物としては、抗TNF抗体(たとえば、インフリキシマブまたはアダリムマブまたはゴリムマブ)、または可溶性TNF受容体(たとえば、エタネルセプト)がある。あるいは、またはさらには、他の化合物としては、CTLA−4アンタゴニスト(たとえば、アバタセプト、CTLA4−Ig)がある。あるいは、またはさらには、他の化合物としては、抗IL−6または抗IL−6R抗体(たとえば、トシリズマブ)がある。
一つの例において、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれらから由来する可溶性因子は、他の治療化合物(たとえば、メトトレキサート)に対する補助療法および/または併用療法として投与される。
「補助療法(Adjunctive therapy)」とは、従前の治療に付加または補足する治療を意味する。
「併用療法(Concomitant therapy)」とは、他の治療と同時に施されるが、他の治療の補足ではない治療を意味し、たとえば、両方の治療は、各々がリウマチ性疾患を治療しうる。
本明細書において、治療の同時投与、または一つ以上の治療的投与量を投与することに関する議論は、必ずしも治療が単一の組成物中で投与されることを意味するものではない。治療は、同時に、または別々の組成物で連続して投与されてもよい。連続投与の間の期間は、最初の治療のレベルが、二番目の治療が投与されたときに、二番目の治療の治療的効果または予防的効果をもたらす、または付加するのにまだ十分なレベルであれば、数日であってもよい。
一つの例において、任意の例により本明細書に記載される医薬組成物は、炎症性関節疾患を治療するために用いられる化合物を含有する。あるいは、任意の実施態様により本明細書に記載される治療方法/予防方法は、さらに炎症性関節疾患を治療するために用いられる化合物を投与することを含む(たとえば、同一の組成物で、または別々の組成物で、および/または同時にもしくは異なる時間に)。例示的な化合物は本明細書に記載されており、本開示のこれらの実施例に準用されるとみなされる。
他の例において、任意の例により本明細書に記載される組成物は、前駆細胞を血管細胞へと分化を誘導または促進する因子を含有する。例示的な因子としては、血管内皮増殖因子(VEGF)、血小板由来増殖因子(PDGF;たとえば、PDGF−BB)およびFGFが挙げられる。
他の例において、任意の例により本明細書に記載される組成物はさらに、組織特異的分化決定済み細胞(tissue specific committed cell、TSCC)を含有する。この点において、国際特許出願番号第PCT/AU2005/001445号において、TSCCおよびSTRO−1細胞の投与により、TSCC増殖の促進がもたらされることが示されている。一つの例において、TSCCは血管細胞である。対象にそのような組成物を投与することにより、血管系の産生増加がもたらされ、たとえば、病気に冒された組織へ運搬される栄養素の増加がもたらされうる。
医療デバイス
本開示はまた、本明細書に記載のいずれかの例による方法において使用される医療デバイスを提供する。例えば、本開示は、本明細書に記載のいずれかの例による、STRO−1細胞および/もしくはそれらの子孫細胞および/もしくはそれからの可溶性因子ならびに/または組成物を含む、注射器もしくはカテーテルまたは他の適切な送達デバイスを提供する。注射器またはカテーテルは、本明細書に記載のいずれかの例による方法における使用説明書と同梱されていてもよい。
他の例では、本開示は、本明細書に記載のあらゆる例にように、STRO−1細胞および/もしくはその子孫細胞および/もしくはその可溶性因子ならびに/または組成物を含む移植片提供する。移植片は、本明細書に記載のいずれかの例による方法における使用説明書と同梱されてもよい。適切な移植片は、例えば、本明細書で上述の足場、ならびにSTRO−1細胞および/もしくはその子孫細胞および/またはその可溶性因子とともに形成されてもよい。
投与様式
STRO−1細胞由来の上清もしくは可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、外科的に移植、注射、送達(例えば、カテーテルまたは注射器を手段として)されてもよいし、あるいは、修復または増強を必要としている部位、例えば関節または関節に隣接した部位に直接的または間接的に投与されてもよい。
一例では、STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、対象の血流に送達される。例えば、STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は非経口的に送達される。非経口投与の経路の例としては、限定はされないが、腹腔内、脳室内(intraventricular, intracerebroventricular)、くも膜下腔内、動脈内、節内、または静脈内が挙げられる。一例では、STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、動脈内、大動脈中、心臓の心房もしくは心室中、または血管中に、例えば、静脈内に送達される。
心臓の心房または心室への細胞送達の場合、肺への急速な細胞送達によって生じ得る合併症を避けるため、細胞は左心房または左心室に投与されることがある。
一例では、STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、例えば、注射器を用いて、またはカテーテルもしくは中心静脈カテーテル(central line)を通じて、送達部位に注入される。
治療製剤の投与計画の選択は、いくつかの因子、例えば、血清または組織での実体(entity)の代謝回転速度、症状レベル、および実体(entity)の免疫原性に依存する。たとえば、投与計画は、許容できる副作用レベルを一貫させて、対象に送達される治療化合物の量を最大とする。従って、送達される製剤の量は、特定の実体(entity)および治療されている状態の重症度に部分的に依存する。
一例では、STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、単回急速投与量として送達される。あるいは、STRO−1細胞由来の上清または可溶性因子、STRO−1細胞またはその子孫は、持続点滴によって、または、例えば、1日、1週間の間隔の、もしくは週に1〜7回の投与によって、投与される。例示的な投与プロトコールは、重大な望ましくない副作用を回避する、最大の投与量または投与頻度を含むものである。週当たりの合計投与量は、使用される化合物のタイプおよび活性に応じて決定される。適切な投与量の決定は、臨床医によって、例えば、当該技術分野において、治療に影響を与えると知られている、もしくは疑われている、または治療に影響を与えると予想されるパラメータまたは因子を用いて、行われる。通常、投与はやや適量未満の量から開始され、その後、あらゆる負の副作用と比較して所望の、または最適の効果が達成されるまで、小さな増加量で増加される。重要な診断法としては、糖尿病の症状のそれが挙げられる。
本発明者らは、STRO−1細胞および/もしくはその子孫ならびに/またはそれに由来する可溶性因子によって提供される治療的有用性が、対象において少なくとも4週間、認められることを示した。したがって一部の例では、細胞は毎週、2週間ごとに、3週間に1回、または4週間に1回投与される。
炎症性関節疾患の治療またはその進行を遅延させることを目的とした本発明の例に従って、一つの例において、STRO−1細胞および/もしくはその子孫細胞ならびに/またはそれに由来する可溶性因子が、例えばこの技術分野で標準的な既知のまたは本明細書に記載の方法を用いて、障害の診断の後に投与される。
炎症性関節疾患を予防するまたはその開始を遅延させることを目的としたそれらの例について、STRO−1細胞および/もしくはその子孫細胞ならびに/またはそれに由来する可溶性因子を、障害の臨床診断に先立って投与することができる。
対象群
本開示の方法はまた、リウマチ性疾患に罹患する対象の亜群に含まれる対象の治療に有用である。
一つの例において、リウマチ性疾患(たとえば、リウマチ性関節炎)に罹患する対象は、TNF阻害剤(たとえば、抗TNF抗体または可溶性TNF受容体)に十分に反応しない。「TNF阻害剤に十分に反応しない」対象は、毒性または不十分な効果により、一つ以上のTNF阻害剤を用いた従前の治療または現時点での治療に十分に反応していない。一つの例において、そのような対象は、たとえば、エタネルセプトを25mgで3か月超、1週間に2度投与されているか、3mg/kg超でインフリキシマブを少なくとも4回注射されているが、それらに十分に反応していない。
一つの例において、対象はリウマチ性疾患(たとえば、リウマチ性関節炎)に罹患しており、メトトレキサートに十分に反応していない。「メトトレキサートに十分に反応していない」対象は、毒性または不十分な効果により、メトトレキサートを用いた従前の治療または現時点での治療に十分に反応していない対象である。一つの例において、当該対象は、メトトレキサート(10〜25mg/週)を少なくとも12週、投与されているが、いまだに活動性疾患の状態にある。
一つの例において、対象はすでにメトトレキサートの治療を受けている。
一つの例において、対象はすでにメトトレキサートの治療を受けており、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれら由来の可溶性因子の投与は、STRO−1細胞および/またはその子孫細胞および/またはそれら由来の可溶性因子の投与を受けていない対象と比較して、抗TNF治療の処方を遅らせる。
一つの例において、対象は活動性リウマチ性関節炎に罹患している。「活動性リウマチ性関節炎」を伴う対象とは、リウマチ性関節炎の症状が活動性であり、潜伏期ではない対象を意味する。一つの例において、そのような対象は、ベースライン訪問の時点で、6か月超の疾患継続期間の、中度〜重度の活動性リウマチ性関節炎を有している。一つの例において、そのような対象は、以下を有している:(1)腫脹した関節数(SJC)が4より多い(66の関節をカウント)、(2)圧痛のある関節数(TJC)が4より多い(68の関節をカウント)、および/またはC反応性タンパク質(CRP)がスクリーニング訪問の時点で、正常上限(ULN)より多い。
一つの例において、対象は、中度の活動性リウマチ性関節炎または重度の活動性リウマチ性関節炎または中度〜重度の活動性リウマチ性関節炎に罹患している。
中度の活動性リウマチ性関節炎に罹患している人は、多くの場合、以下の症状のすべてまたは少なくとも2つまたは3つまたは4つの組み合わせを有している。
● 6〜20の炎症を起こした関節
● 通常、関節以外の組織において炎症は無い
● ESRまたはCRPレベルの上昇
● リウマチ性因子検査陽性または抗環状シトルリン化ペプチド(抗CCP)抗体陽性
● 炎症の兆候はあるが、X線撮影で骨損傷の兆候は無い。
重度の活動性リウマチ性関節炎を有する人は、多くの場合、以下の症状のすべてまたは少なくとも2つまたは3つまたは4つの組み合わせを有している。
● 持続的に炎症を起こした関節が20超、または機能的能力の急速な消失
● ESRまたはCRPレベルの上昇
● 慢性疾患に関連した貧血
● 低血液アルブミンレベル
● リウマチ性因子検査陽性であり、多くの場合高いレベルである
● X線撮影で骨および軟骨損傷の兆候
● 関節以外の組織における炎症
一つの例において、対象は、持続的な活動性リウマチ性関節炎を有している。持続的な活動性リウマチ性関節炎を有した人は、少なくとも6〜20か月間、炎症の兆候があり、不可逆的な関節の損傷および機能喪失を有し得る。
一つの例において、細胞または可溶性因子の投与が、関節の構造的な損傷の進展を妨げる。対象(たとえば、崩壊した関節数および/または関節損傷スコアに基づくリウマチ性関節炎に罹患している対象)における「関節の構造的な損傷の進展の阻害」という表現は、リウマチ性疾患により引き起こされる関節の構造的な損傷を阻むまたは遅らせることを指す。関節の構造的な損傷の進展を測定する方法は当業者に公知であり、限定されないが、Genant改変トータルシャープスコア(Total Sharp Score、TSS)、崩壊スコア(erosion score、ES)、および/または関節腔狭小化(JSN)スコアが挙げられる。一つの例において、本明細書に開示される方法にはさらに、たとえば、本明細書に記載される方法および/またはX線撮影により、関節の構造的な損傷の進展を分析することが含まれる。たとえば、分析は、細胞または可溶性因子の最後の投与後、約1か月または3か月または6か月または12か月に行われる。
本発明はさらに、以下の非限定的な実施例において記述される。
実施例1:STRO−3 細胞の選択によるMPCの免疫選択
骨髄(BM)を、健康な正常成人の志願者(20〜35歳)から採取する。簡潔には、40mlのBMを、後腸骨稜から、リチウム−ヘパリン抗凝固剤含有チューブに吸引する。
BMMNCを、前述(Zannettino, A.C. et al. (1998) Blood 92: 2613-2628)の通りに、Lymphoprep(商標)(ニコメッドファーマ(Nycomed Pharma)、ノルウェイ、オスロ)を用いて、密度勾配分別によって調製する。400×g、4℃、30分間の遠心分離後、淡黄色の層をホールピペットで除去し、5%ウシ胎仔血清(FCS、CSLリミテッド社(CSL Limited)、オーストラリア、ヴィクトリア)を含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS;ライフテクノロジー社(Life Technologies)、メリーランド州ゲイサーズバーグ)から成る「HHF」中で3回洗浄する。
続いて、STRO−3(またはTNAP)細胞を、前述(Gronthos et al. (2003) Journal of Cell Science 116: 1827-1835; Gronthos, S. and Simmons, P.J. (1995) Blood 85: 929-940)の通りに、磁気活性化細胞分取で単離した。簡潔には、およそ1〜3×10個のBMMNCを、HHF中10%(v/v)正常ウサギ血清から成るブロッキング緩衝液中で、20分間、氷上でインキュベートする。細胞を、ブロッキング緩衝液中10μg/mlのSTRO−3mAb溶液200μlと一緒に、氷上で1時間インキュベートする。続いて、細胞を400×gでの遠心分離によってHHF中で2回洗浄する。HHF緩衝液中1/50希釈のヤギ抗マウスγ−ビオチン(サザンバイオテクノロジー社(Southern Biotechnology Associates)、英国バーミンガム)を加え、細胞を氷上で1時間インキュベートする。細胞を、上記と同様に、MACS緩衝液(1%BSA、5mM EDTAおよび0.01%アジ化ナトリウムを補充したCa2+およびMn2+を含まないPBS)中で2回洗浄し、最終体積0.9mlのMACS緩衝液中に再懸濁する。
100μlのストレプトアビジンミクロビーズ(ミルテニーバイオテック社(Miltenyi Biotec);ドイツ、ベルギッシュグラートバハ)を細胞懸濁液に添加し、氷上で15分間インキュベートする。細胞懸濁液を2回洗浄し、0.5mlのMACS緩衝液に再懸濁した後、ミニMACSカラム(MS Columns、ミルテニーバイオテック社(Miltenyi Biotec))上に充填し、0.5mlのMACS緩衝液で3回洗浄して、STRO−3mAb(2005年12月19日にアメリカ合衆国培養細胞系統保存機関(ATCC)にPTA−7282の受託番号で寄託;国際公開第WO2006/108229号を参照)と結合しなかった細胞を回収する。さらに1mlのMACS緩衝液を加えた後、カラムを磁石から取り除き、TNAP細胞を陽圧で単離した。各画分からの細胞の一定分量をストレプトアビジン−FITCで染色し、純度をフローサイトメトリーで評価することができる。
実施例2:STRO−3mAbによって選択された細胞はSTRO−1 強陽性 細胞である。
STRO−3mAbを、STRO−1強陽性細胞を単離する単一試薬として用いることの可能性を確認する目的の実験を設計した。
STRO−3(IgG1)はSTRO−1(IgM)とは異なるアイソタイプであることを考慮し、STRO−3のクローン原性CFU−Fを同定する能力を、MACS方法を用いて単離されたSTRO−1のその共発現に基づく2色FACS分析によって評価した(図1)。ドットプロットヒストグラムは、リストモードデータとして収集された5×10個の事象を表わしている。垂直線および水平線は、同条件下で処理したアイソタイプ対応対照抗体、1B5(IgG)および1A6.12(IgM)で得られた平均蛍光の1.0%未満の反応性レベルに設定された。結果は、STRO−1強陽性細胞のうち微量の集団がTNAPを共発現したが(右上象限)、残りのSTRO−1細胞はSTRO−3mAbと反応しなかったことを示している。その後、4つの象限全てからFACSで単離された細胞をCFU−Fの発生率に対して評価した(表1)。
実施例3:STRO−1 微陽性(dull) 細胞およびSTRO−1 強陽性 細胞の相対遺伝子発現および相対表面タンパク質発現
最初の一連の実験において半定量RT−PCR分析を実施し、蛍光活性化細胞ソーティングにより単離されたSTRO−1微陽性(dull)細胞またはSTRO−1強陽性細胞集団により発現されている様々な系統関連遺伝子の遺伝子発現プロファイルを検証した(図2A)。2番目の一連の実験において、フローサイトメトリーおよび平均チャンネル蛍光分析を実施し、蛍光活性化細胞ソーティングにより単離されたSTRO−1微陽性(dull)細胞またはSTRO−1強陽性細胞集団により発現されている様々な系統関連タンパク質の表面タンパク質発現プロファイルを検証した。
2×10個の、ソートされた初代細胞のSTRO−1微陽性(dull)細胞もしくはSTRO−1強陽性細胞のいずれか、軟骨細胞ペレットおよび他が誘導した培養物から、細胞のトータルRNAを調製し、メーカーの推奨に従い、RNAzolB抽出法(Biotecx Lab. Inc., Houston, TX)を用いて溶解した。次いで、各亜群由来の単離RNAを、First−strand cDNA合成キット(Pharmacia Biotech, Uppsala, Sweden)を用いて調製されたcDNA合成の鋳型として用いた。様々な転写物の発現を、従前に記述されている標準プロトコールを用いてPCR増幅により評価した(Gronthos et al., J. Bone and Min. Res. 14:48-57, 1999)。本実験で用いたプライマーセットを、表2に示す。増幅に次いで、各反応混合物を1.5%アガロースゲル電気泳動により評価し、エチジウムブロマイド染色により可視化した。RNAの品質は、GAPDHの発現により評価した。
各細胞マーカーの相対遺伝子発現を、ImageQantソフトウェアを用いて、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの発現を参照にして評価した(図2B、C)。さらに、二色フローサイトメトリー分析を用いて、ex vivoで増殖させたMPCのタンパク質発現プロファイルを、STRO−1抗体との組み合わせで適用性の広い細胞系統関連マーカーのそれらの発現に基づき、検証した。STRO−1微陽性(dull)培養細胞もしくはSTRO−1強陽性培養細胞の遺伝子およびタンパク質発現に基づく、全体的なフェノタイプの概要を、表3に示す。そのデータにより、ex vivoで増殖したSTRO−1強陽性MPCは、血管周囲細胞に関連するマーカー(アンギオポエチン−1、VCAM−1、SDF−1、IL−1β、TNFα、およびRANKL)の発現をより高く特異的に示すことが示唆される。STRO−1微陽性(dull)培養細胞およびSTRO−1強陽性培養細胞のタンパク質および遺伝子発現プロファイルの間の比較は、表3および4に要約される。
また、サブトラクティブなハイブリダイゼーション実験を実施し、STRO−1強陽性細胞独自に発現されている遺伝子を同定した。簡潔に述べると、STRO−1微陽性(dull)細胞およびSTRO−1強陽性細胞は上述のように単離した(図3Aを参照のこと)。トータルRNAは、RNA STAT−60システム(TEL−TEST)を用いて、5つの異なる骨髄サンプルからプールされたSTRO−1微陽性(dull)細胞およびSTRO−1強陽性細胞から調製した。First strandの合成は、SMART cDNA合成キット(Clontech Laboratories)を用いて行った。得られたmRNA/single strandのcDNAハイブリッドを、メーカーの説明書に従い、最初のRTプロセスの間に形成された、3´および5´プライム末端で特異的なプライマーサイトを用いて、long−distancePCR(Advantage 2 PCR kit; Clontech)により増幅した。STRO−1強陽性cDNAのRsaI酵素による消化に次いで、2本の分注物を用いて、Clontech PCR−Select cDNA Subtraction Kitを用いて、異なる特異的なアダプターオリゴヌクレオチドにライゲートした。メーカーのプロトコールに従い、STRO−1強陽性(テスター)およびSTRO−1微陽性(dull)(ドライバー)cDNAを用いて、逆もまた同様に、サブトラクティブなハイブリダイゼーションを2回行った。この手順はまた、STRO−1強陽性ドライバーcDNAに対してハイブリダイズしたSTRO−1微陽性(dull)テスターcDNAを用いて、逆にも実施した。
STRO−1強陽性集団により独自に発現されている遺伝子を同定するために、STRO−1強陽性でサブトラクトしたcDNAを用いて、STRO−1強陽性のサブトラクトされたcDNA(T/Aクローニングベクターにライゲートされている)で形質転換された、ランダムに選択された200のバクテリアクローンを含有する複製低密度マイクロアレイを構築した。次いで、そのマイクロアレイを、[32P]dCTPで標識されたSTRO−1強陽性またはSTRO−1微陽性(dull)のサブトラクトされたcDNAのいずれかでプローブした(図3B〜C)。差次的スクリーニングにより、STRO−1微陽性(dull)およびSTRO−1強陽性亜集団の間で特異的に高く発現されている、トータルで44のクローンを同定した。特異的に発現されているクローンのすべてをDNA配列解析し、1クローンのみが、既知の間質細胞の有糸分裂促進因子の代表的なもの(すなわち、血小板由来増殖因子(PDGF)(Gronthos and Simmons, Blood. 85: 929-940, 1995))であることが明らかとなった。興味深いことに、44のクローンのうち、6クローンが、ケモカインである間質細胞由来因子−1(SDF−1)に相当するDNAインサートを含有することが判明した。ヒトSTRO−1強陽性細胞におけるSDF−1転写物の多量さは、新鮮なソートされたSTRO−1強陽性、STRO−1微陽性(dull)およびSTRO−1陰性骨髄細胞亜集団から調製されたトータルRNAの半定量RT−PCRにより確認された(図3Dおよび表3)。
STRO−1発現の密度とタンパク質表面発現との関連を示すために、ex vivoで増殖した骨髄MPC由来の細胞の単一細胞懸濁液をトリプシン/EDTA剥離により調製し、次いで、広範囲に細胞系統関連マーカーを識別する抗体との組み合わせで、STRO−1抗体と共にインキュベートした。STRO−1は、ヤギ抗マウスIgMフルオレセインイソチオシアネート抗体を用いて識別された一方で、他のすべてのマーカーは、ヤギ抗マウスまたは抗ウサギIgGフィコエリトリンのいずれかを用いて識別された。細胞内抗原を識別するこれらの抗体に対し、細胞調製物を、STRO−1抗体で最初に標識し、冷却した70%エタノールで固定し、細胞膜を透過処理し、次いで、細胞内抗原特異的抗体とともにインキュベートした。同一条件下で、アイソタイプを一致させた対照抗体を用いた。COULTER EPICSフローサイトメーターを用いて、二色フローサイトメトリー分析を実施し、リストモードデータを収集した。ドットプロットは、各系統細胞マーカー(y軸)およびSTRO−1(x軸)の蛍光強度のレベルを示す、5000のリストモードイベントを表す。垂直および水平象限は、アイソタイプを合致させた陰性対照抗体を参照にして設定された。
実施例4 リウマチ関節炎のヒツジモデル
4.1 方法
リウマチ関節炎のヒツジモデルを作製する方法のアウトラインを以下に記述する。
1. 0日目
i. 5頭のヒツジ(B1626, B1584, B3619, B1612, B1302)に、フロイント完全アジュバント+5mgウシII型コラーゲン(ヒツジ1頭当たり、5×0.2ml S/C)を投与した。溶液は、皮下(S/C)に投与した。
ii. 2頭のヒツジ(B1627, B4036)に、フロイント完全アジュバント+5mgニワトリII型コラーゲン(ヒツジ1頭当たり、5×0.2ml S/C)を投与した。
iii. ELISAを用いてII型コラーゲン抗体を検証するために、10mlの血液を採取した。
iv. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
2. 14日目
i. 5頭のヒツジに、フロイント不完全アジュバント+5mgウシII型コラーゲン(ヒツジ1頭当たり、5×0.2ml S/C)を投与した。
ii. 2頭のヒツジに、フロイント不完全アジュバント+5mgニワトリII型コラーゲン(ヒツジ1頭当たり、5×0.2ml S/C)を投与した。
iii. ELISAを用いたII型コラーゲン抗体の検証および白血球細胞数のカウントのために、10mlの血液を採取した。
iv. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
3. 28日目
i. 5頭のヒツジに左膝内への、関節内注射を介して、生理食塩水中に溶解した100μgのウシII型コラーゲンを投与した(ヒツジ1頭当たり500μl)。
ii. 2頭のヒツジに、左膝内へ、生理食塩水に溶解した100μgのニワトリII型コラーゲン関節内注射を行った(ヒツジ1頭当たり500μl)。
iii. ELISAを用いたII型コラーゲン抗体の検証および白血球細胞数のカウントのために、10mlの血液を採取した。
iv. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
4. 30日目 +IA注射2日
i. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
5. 36日目 +IA注射8日
i. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
6. 42日目 +IA注射14日
i. ウシII型コラーゲンの投与を受けた4頭のヒツジ(B1626, B3619, B1612, B1302)を殺処分した。
ii. ニワトリII型コラーゲンの投与を受けた2頭のヒツジ(B1627, B4036)を殺処分した。
iii. ELISAを用いたII型コラーゲン抗体の検証および白血球細胞数のカウントのために、10mlの血液を採取した。
iv. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
v. 殺処分したヒツジ
◎ 左右の膝関節の滑液
a.II型コラーゲン抗体に対する評価
b.細胞数カウント
◎ 左右の膝関節の滑膜組織
a.ホルマリン固定 H&E切片
b.液体窒素凍結
◎ 左右の関節軟骨
a.写真
b.ホルマリン固定およびH&Eのための脱灰
7. 56日目
i. ウシII型コラーゲンの投与を受けた1頭のヒツジ(1584)を殺処分
ii. ELISAを用いたII型コラーゲン抗体の検証および白血球細胞数のカウントのために、10mlの血液を採取した。
iii. 以下の臨床検査を行った:
◎ 跛行
◎ 腫脹
◎ 関節肥大
iv. 殺処分したヒツジ
◎ 左右の膝関節の滑液
a.II型コラーゲン抗体、細胞数に対する評価
◎ 左右の膝関節の滑膜組織
a.ホルマリン固定 H&E切片
b.液体窒素凍結
◎ 左右の関節軟骨
a.写真
b.ホルマリン固定およびH&Eのための脱灰
4.2 結果
関節腫脹とともに、軽度跛行の臨床症状が7頭すべてのヒツジにおいて明白であり、4頭のヒツジにおいて関節の屈曲における疼痛が明らかであった。これらの症状は、左膝(処置を受けた)においてのみ、認められた。
ヒツジを安楽死させた後、7頭のヒツジのうち6頭において、脛骨足根骨関節を取り囲む滑膜の全体的な肥大が明白であった。これは、炎症性変化の最も著しい証拠である。この関節の関節軟骨を検証し、3頭のヒツジにおいて、炎症性びらん病変が認められ、それは距骨の関節表面上が最も著しかった。
炎症性変化が左膝(処置を受けた)において認められた一方で、対側(右)の膝においては、非常に軽度の炎症性変化が稀に認められた。
表5に処置を受けたヒツジにおいて認められた特徴の結果を要約する
羊の臨床評価
表6に処置を受けたヒツジの評価に用いたスコアリングシステムを詳述する。
表7〜11は、様々な時点でのヒツジの臨床評価の結果を示す。CIIのIA注射の後まで、何も臨床変化は認められなかった。
図4に、関節内II型コラーゲン注射に引き続く、ヒツジの平均跛行スコアを示す。示されるように、最初のII型コラーゲン注射の約28日後で、跛行が増加した。
図5は、各ヒツジの右膝(刺激無し)および左膝(刺激有り)由来の滑液中の白血球数を示す。より高い反応群では、対照側の白血球濃度もまた上昇しており、このことから、全身性反応の可能性が示唆される。図6は、対照ヒツジおよびウシII型コラーゲンで免疫されたヒツジの滑液中の平均白血球数を示す。
図7Aおよび図7Bは、それぞれ、ウシII型コラーゲンおよびニワトリII型コラーゲンで免疫されたヒツジ由来の滑液中のIgMおよびIgG抗体のレベルを示す。これらの結果から、これらの動物の免疫された膝におけるII型コラーゲンに対するIgMおよびIgGの増加が示唆される。これらのデータはまた、表12に要約されている。
上記に示されるデータにより、0日目および14日目にフロイントアジュバントに溶解した異種II型コラーゲンを皮下に注射し、28日目に膝関節内へII型コラーゲンを関節内注射することにより、コラーゲン誘導性関節炎(CIA)が7頭のヒツジに誘導されたことが示される。疾患は急速に進行し、CIIの関節内注射後14日までに、関節の炎症、滑膜過形成、単核細胞浸潤、抗II型コラーゲン抗体、および一部のヒツジにおいて関節軟骨のびらん性病変の特徴があった。跛行の臨床兆候は、7頭すべてのヒツジにおいて明確であり、脛骨足根骨関節を取り囲む滑膜の全体的な肥大が、7頭のヒツジのうち6頭で明らかであった。
ヒツジにおけるCIAは、ヒトのリウマチ性関節炎に非常に類似した関節炎の優れた大型動物モデルであると思われる。
実施例5 実験デザイン
リウマチ性関節炎のヒツジモデルは、原則的に、実施例4に記載のとおり作製された。
表13に示すように、36頭のヒツジを、ランダムに6グループ(それぞれが6頭のヒツジを含む)の1つに割り当てた。被験物質は、最初のコラーゲン注射後42日で関連動物に投与された。
被験物質の投与の30日後、ヒツジを安楽死させ、肉眼的剖検を実施し、病理学および組織学的検証のために組織を採取した。
MPC投与量の調製
● 2400万のヒツジMPC(oMPC)を4.0mLのProFreeze(登録商標)/DMSO/Alpha−MEMに溶解した(IV注射による30万oMPC/kgの用量を提供するために用いられる)。
● 8000万のoMPCを、4.0mLのProFreeze(登録商標)/DMSO/Alpha−MEMに溶解した(IV注射による100万oMPC/kgの投与量を提供するために用いられる)。
● 1億6000万のoMPCを、4.0mLのProFreeze(登録商標)/DMSO/Alpha−MEMに溶解した(IV注射による200万oMPC/kgの投与量を提供するために用いられる)。
● 3500万のoMPCwo,0.7mLのProFreeze(登録商標)/DMSO/Alpha−MEMに溶解した(関節内注射による2500万oMPC/kgの投与量を提供するために用いられる)。
● 滅菌生理食塩水(対照)
肉眼的病理所見
死亡または安楽死させたすべての動物に対し、剖検および組織採取を実施した。採取した組織は10%緩衝ホルマリン中で固定した。肉眼で見える所見を、各組織で記録した。
左膝関節(処置済)および右膝関節(対照)を、露出させ、滑膜まで解剖した。滑膜サンプル(および下層脂肪)を、固定のための10%緩衝中性ホルマリン、または凍結のためのOCT化合物のいずれかに静置した。
次いで、関節を外し、関節表面を、肉眼的な軟骨病変兆候を検証し、写真撮影した。距骨の関節表面切片(以下を参照)を、のこぎりを使用して除去し、10%緩衝中性ホルマリンで固定した。
膝関節由来の滑膜組織の組織病理学的スコアリング
病理切片の調製法、ならびに、対照および処置動物の左右膝関節の滑膜内および準滑膜組織内の病理学的変化のスコアリングは、Krennら (Pathol Res. Pract. 198:317-325)の公表文献に基づいた。
免疫組織化学実験および膝関節由来の滑膜組織のスコアリング
滑膜を、処置済動物および対照動物由来の、左右の脛骨足根骨関節(膝関節)の背外側および背内側領域から採取した。これらの組織はOCT化合物中で凍結させ、ガラススライド上でクライオスタットを用いて切片を作製した。切片は、公表されている技法(16)および市販のプロトコールに従い、特異的な細胞のタイプおよび抗体の同定に対する、標準的な免疫組織化学法を用いた染色に供した。用いた抗体は、CD4(44〜97)、CD8(38〜65)、γ−δ(γδT細胞)(86D/127−5)、CD14(VMRD a−M−M9)、B細胞(CD79a:HM57)、およびTNF−α、インターロイキン6、インターロイキン−1β、インターロイキン17、インターロイキン10、インターフェロンγ、VIII因子、およびVCAM−1等のサイトカインに対するものが含まれる(それらは、市販または自作により得た)。染色された切片は、盲目化されてスコア化された。
臨床病理
約30〜40mLの血液を、実験エントリー前、0日目(ベースライン)、42日目、49日目、56日目、63日目および剖検時(72日目)で採取し、以下のアッセイに使用した。
サイトカイン:滑液中および血漿サイトカイン(TNF−a、IFN−g、IL−1b、およびIL−6)のレベルを測定した。
統計法
様々な処置群に対して得たデータの統計分析およびグラフ表示は、1方向ANOVAを用いて着手され、次いで、Graphpad Prism Statistical software (version 5.0b) (GraphPad Software Inc, La Jolla, Ca USA)を用いて、チューキーまたはニューマン−クールズ多重比較検定が行った。処置群の間の統計的有意差は、p<0.05として解された。パラメトリックデータに対し、個々の処置群および対照の間の有意差は、対応スチューデントt検定を用いて決定された。ノンパラメトリックな分析については、群間の差異は、p<0.05で許容する有意差で、マン−ホイットニーまたはウィルコクソンのマッチドペア符号付き順位検定を用いて評価した。
実施例6:膝関節由来の滑膜組織の組織病理学スコアリングの結果
全ての動物の左膝関節(ウシII型コラーゲン(BII)が注射された関節)および右膝関節の滑膜に対する、個々の組織病理学スコアが、盲目化された観察者により測定された。過形成、間質(滑膜組織)活性化および炎症性浸潤に対する個々のスコアの総和により得た、各セクションに対する総計および構成要素スコアは、図8Aおよび8Bにグラフを使用して要約されている。これらの図より、BIIを注射された左関節の総計スコアが、対側の右関節に対するスコアよりも高いことが明らかである。さらに、MPC処置群および対照群の間の統計的有意差が、低MPC(p<0.017)および高MPC(p<0.025)を注射された群に対し示された(図8A)が、右関節の対応する滑膜に対する群の組織病理学スコアはいずれに対しても示されなかった(図8B)。対照およびMPC処置群の間の差異に対する大きな貢献は、細胞処置群における滑膜過形成の減少にあると思われる(図8A)。
関節内注射群の左右膝関節における滑膜組織病理学変化のスコアは、生理食塩水または2500万のMPCを注射された群の間の統計的有意差をいずれも示さなかったが、案の定、右関節よりも左関節に対するスコアのほうが高かった(図8C)。
実施例7:滑膜組織の免疫組織化学実験
方法の項に記述された、抗体での免疫組織化学染色の後に、様々な動物群の滑膜組織における細胞性変化およびサイトカインレベルを半定量化するために用いたスコアリングシステムの結果を、図9A〜9Cに示す。これら多項目をスコアリングする3つの異なる方法の使用により、検証した実験群のそれぞれに対し、有意の組み合わせスコアが生み出されることを除外する。ゆえに、抗体を使用した個々のマーカーについて実験群それぞれに対し得られた平均スコアは、別々に表示し、図10A〜10Fに示す。割り当てられたスコアと共に、これらの項のいくつかの代表的な顕微鏡写真の例を図11A〜11Eに示す。
内膜IL−1およびVCAM−1の減少、ならびにγδTCR(図10A〜図10C)の増加に対する明確な傾向が明らかであるが、対照群とMPC注射群の間の統計的有意差は示すことができなかった。しかしながら、高用量MPC注射群については、IL−6(p=0.029)およびTNF−α(p=0.049)で染色した滑膜内膜(滑膜細胞)(図10D)、およびCD14細胞に対し染色した間質組織(図10E)が、生理食塩水を注射した対照群よりも有意に低いことが示された(p=0.009)。さらに、高用量群の滑膜内膜組織におけるIL−17サイトカインレベルもまた、対応する対照群に対し、有意に低かった(ANOVA、p<0.005)(図10F)。
生理食塩水およびMPC注射群について得られた免疫組織化学スコアの結果を、表14に示す。MPCを注射された関節におけるCD4,CD8およびCD79に対する染色が高いように思われ、MPCを注射された関節において観察されたリンパ球の多さと一致する特徴であると思われた。しかしながら、MPCを注射された関節におけるTNF−αおよびIL−17の平均値は、特に左関節滑膜の内膜領域で、生理食塩水を注射された関節よりも低かった。
全体考察
本明細書に開示されるように、フロイント完全アジュバントおよびフロイント不完全アジュバントに溶解したウシII型コラーゲンをSC注射し、次いで膝関節内に同一タンパク質単独の関節内(IA)注射を行うことによる、成獣ヒツジの免疫化により、ヒトRAの古典病理学的な顕著な特徴の多くを示す関節症の誘導をもたらした。
ゆえに、このRAのヒツジモデルは、MPCのIV投与の治療効果(等量の生理食塩水のIVの効果と比較した、0.3×10細胞/kg、1.0×10細胞/kg、および2.0×10細胞/kgの用量でのMPC投与)の評価に適しているとみなした。比較目的のために、左膝関節内に生理食塩水または25×10MPCを単回投与されたIA群もまた、本研究に含めた。ウシII型コラーゲンを関節内注射した(28日目)後、MPCまたは生理食塩水を14日投与し、30日後に殺処分した(72日目)。
滑膜組織の組織病理学分析および免疫組織化学分析の結果は、陽性であった。さらに、3つのIV MPC用量を投与されたもののうち、200万MPC/kgの最も高用量のものが、一定して、生理食塩水対照群と比較して、統計的に改善を生み出した。低用量MPC群もまた、同じ実験パラメータにおいて良い効果を示したが、中用量MPC処置は、混合された反応を示した。本実験において用量反応性が明確でなかった理由は、完全には明らかになってはいないが、各群において用いられた動物が少量であったこと、および対照群のパラメータの多くで観察された高い標準誤差により実証されているように、群内における疾患発現の程度における不均質性が関係するのであろう。それにもかかわらず、生理食塩水対照と比較した、高用量MPC群由来の左膝関節の滑膜において観察された組織病理学スコアの統計的に有意な減少(図8)は、IL−6、TNFα(図10D)に対する滑膜細胞(内膜)の染色、およびCD14細胞(図10E)およびIL−17(図10F)に対する間質組織染色の免疫組織化学スコアの減少により支持された。
慢性RAのヒツジモデルを用いた本実験の結果により、30万〜200万MPC/kgの単回IV注射が関節炎の重要な組織病理学的指標(いわゆる、滑膜過形成、間質組織活性化および炎症性細胞浸潤)の減少に有効であることが確認された。さらに、凍結切片の免疫組織化学染色を用いて、IL−6、TNFα、IL−17およびCD14+細胞が、生理食塩水対照と比較してMPC高用量動物におい有意に減少していたことの実証により、我々の作業仮説は支持された。IL−17は、in vivoで単球遊走を誘導することが示されており(Shahrara et al. (2009) Journal of Immunology 182: 3884-3891)、このことから、このサイトカインはRAを罹患する対象の関節内への単球のリクルートの原因となっていることが示唆された。この見解は、滑膜間質におけるIL−17のレベルを減少させることにより、注射されたMPCが、骨髄から炎症を起こした関節への単球の遊走数を間接的に減少させ、これにより、たとえば増殖内膜の滑膜細胞により産生されるIL−6およびTNFα等の炎症誘発性サイトカインのレベルを制限するという、我々の仮説と一致した。
さらに、軟骨および滑膜において発現される「従来型の」炎症性サイトカイン(インターロイキン‐1β(IL−1β)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、IL−6、IL−8、IL−17および可溶性CD14を含む)が、骨関節炎に一役担っていることが提唱されている(Liu-Bryan and Terkeltaub Arthritis and Rheumatism, 64: 2055-2058, 2012)。ゆえに、本明細書に提示されるデータにより、骨関節炎の治療に対する、MPC投与(たとえば、静脈内投与)の役割が支持される。

Claims (20)

  1. 対象におけるリウマチ性疾患を治療または予防するための組成物であって、多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団を含む、非経口的に投与するための組成物。
  2. 前記リウマチ性疾患が、リウマチ性関節炎、スティル病、強直性脊椎炎、ライター病、乾癬性関節炎、仙腸関節炎、脊椎炎および骨関節炎からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
  3. 前記リウマチ性疾患が、リウマチ性関節炎である、請求項1に記載の組成物。
  4. 前記対象が、多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団の投与の前に、メトトレキサートでの治療を受けている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 多能性STRO−1強陽性細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
  6. 対象の関節におけるIL−6、TNFα、IL−17および/またはCD14細胞のいずれか一つ以上のレベルを減少させるのに十分な量で投与するための、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
  7. 1キログラム当たり、0.1×10 〜5×10の多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  8. 0.3×10細胞/kg〜2×10細胞/kgを含み、前記細胞は多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  9. 低用量の多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、
    前記低用量の多能性STRO−1 細胞および/またはその子孫細胞が、1キログラム当たり、0.1×10 〜0.5×10 のSTRO−1 細胞および/またはその子孫細胞を含む、組成物
  10. 前記低用量の多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞が、1キログラム当たり、0.3×10のSTRO−1細胞および/またはその子孫細胞を含む、請求項9に記載の組成物。
  11. 高用量の多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の組成物であって、
    前記高用量の多能性STRO−1 細胞および/またはその子孫細胞が、1キログラム当たり、1.5×10 〜2×10 のSTRO−1 細胞および/またはその子孫細胞を含む、組成物
  12. 前記多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞の用量が、1億の細胞〜3億の細胞の用量を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
  13. 1週に1度またはそれ以下の頻度で投与するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
  14. 4週に1度またはそれ以下の頻度で投与するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
  15. 動脈内、大動脈内、心臓の心房もしくは心室内、または静脈内に投与するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
  16. STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した前記集団が、自家または同種異系であ、請求項1〜15のいずれか1項に記載の組成物。
  17. STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した前記集団が、投与の前に、培養増殖されている、請求項1〜16のいずれか1項に記載の組成物。
  18. 多能性STRO−1細胞を富化した前記集団が、STRO−1強陽性であり、および/もしくは組織非特異性アルカリホスファターゼ(TNAP)を発現し、ならびに/または前記子孫細胞が、STRO−1強陽性であり、および/またはTNAPを発現する多能性STRO−1細胞由来である、請求項1〜17のいずれか1項に記載の組成物。
  19. 前記多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞ならびに担体および/または賦形剤を含有する組成物の形態で投与するための、請求項1〜18のいずれか1項に記載の組成物。
  20. 非経口投与により対象のリウマチ性疾患を治療または予防するための薬物の製造における、多能性STRO−1細胞および/またはその子孫細胞を富化した細胞集団の使用。
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