以下、本発明に係る遮音床構造、及びそれに使用されるセメント板床材を説明するための第1技術例を、図1〜図5を参照して説明する。この遮音床構造11及びセメント板床材12は、建物の特に住宅、集合住宅等の床を形成するために適用され、例えば床が衝撃を受けたときに、その床衝撃音が上階から下階へ漏れないようにすることができるものである。そして、この遮音床構造11は、床衝撃音のうち特に重量衝撃音(足音や飛び跳ねる音等)が上階から下階へ漏れないようにすることができるものである。
図1は、床を形成する1つの床単位13を示す斜視図であり、この床単位13に対して遮音床構造11が適用されている。従って、床は、図1に示す床単位13を1又は2以上施工することによって形成され、この1又は2以上の床単位13で形成された床は、遮音床構造11が適用されたものとなる。
この図1に示す遮音床構造11は、枠状梁部14と、接合床部15とを備えている。
枠状梁部14は、梁14aが略矩形の枠状に組まれて形成されたものであり、梁14aは、例えばH形鋼が使用されている。床単位13を2つ以上含む床を施工するときは、梁14aを碁盤目状に組み付けることによって実現することができる。
接合床部15は、図1に示すように、複数のセメント板床材12と、複数の接合目地材16とを備えている。複数のセメント板床材12は、互いに平行して枠状梁部14の上面に水平に配置されている。
接合目地材16は、互いに隣合うセメント板床材12の互いに向い合う側面12aどうしの間に形成された目地17に設けられている。この接合目地材16を介して互いに向い合うセメント板床材12が互いに接合されて接合床部15となっている。
そして、このように形成された接合床部15は、その周縁部が枠状梁部14と対応する大きさ及び形状の略矩形となるように形成され、当該接合床部15の周縁部が枠状梁部14の上面に例えば取付け金具20によって取り付けられている。
図1に示す接合床部15を構成する各セメント板床材12は、セメント系中空パネルであり、例えば押出成形セメント板である。そして、このセメント板床材12には、複数の中空部18が互いに平行してこのセメント板床材12の長手方向に形成されている。
図2は、接合床部15の縁部を枠状梁部14に取り付けている取付け構造19を示している。この図2は、互いに隣合う2つの床単位13の接合床部15の互いに向い合う各縁部を共通の梁14aに取り付けている状態を示している。この共通の梁14aは、互いに隣合う2つの枠状梁部14の一部を構成する共通の梁14aである。
図2に示すように、接合床部15を構成する各セメント板床材12は、取付け金具20、ボルト21及びナット22を使用して、梁14aに取り付けられている。また、接合床部15間の目地は、図2の23に示すように、不燃性のパッキング材やガスケットを充填してもよい。そして、図2に現れているように、セメント板床材12は、上面部12b、下面部12c、及び中空部18を有している。また、中空部18は、図1及び図2に示す隔壁部12dによって区画されている。
次に、図1に示す接合床部15において、複数のセメント板床材12を、接合目地材16を介して互いに接合する接合構造、即ち、位置ずれ防止構造24について説明する。この位置ずれ防止構造24は、例えば図10(a)に示すように、一対のセメント板床材12の互いに向い合う一対の側面12a及び接合目地材16によって構成され、セメント板床材12が衝撃を受けたときに生じる振動によって、一方の側面12aが他方の側面12aに対して上下方向にずれることを防止するためのものである。
そして、この図10(a)に示す位置ずれ防止構造24は、一対のセメント板床材12の目地17を形成する互いに向い合う一対の各側面12aに設けられた上側凸部25及び下側凸部26と、この上側凸部25と下側凸部26との間に設けられた接合目地材16とによって構成されている。この接合目地材16は、例えばモルタル、グラウト材等の湿式目地材である。
次に上記のように構成された第1技術例の遮音床構造11及びセメント板床材12の作用を説明する。この図1に示す遮音床構造11は、セメント板床材12が受けた衝撃、特に重量衝撃によって生じる床衝撃音に対する遮音性能(例えば遮音特性)が、当該セメント板床材12の衝撃に対する剛性の大きさに応じて高くなること、つまり、衝撃によって当該セメント板床材12に生じる振動の振幅を小さくするほど遮音性能が高くなることに着目して発明されたものである。
この遮音床構造11が備えている図10(a)に示す位置ずれ防止構造24によると、セメント板床材12が衝撃を受けたときに生じる振動によって、目地17を形成する互いに向い合うセメント板床材12の一対の側面12aのうちの一方の側面12aが、他方の側面12aに対して上下方向にずれることを防止することができる。これによって、目地17に接合目地材16が設けられた複数のセメント板床材12、即ち、接合床部15の全体で衝撃を受け止めることができる。
従って、接合目地材16で接合された複数のセメント板床材12全体の剛性を、接合目地材16で接合されていない複数の各セメント板床材の剛性よりも大きくすることができる。これによって、接合目地材16で接合された複数のセメント板床材12全体に生じる振動の振幅を、接合目地材16で接合されていない複数の各セメント板床材に生じる振動の振幅よりも小さくすることができる。このようにして、このセメント板床材12(接合床部15)が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を小さくすることができる。
つまり、図10(a)に示す位置ずれ防止構造24によると、セメント板床材12が衝撃を受けたときに生じる振動によって、目地17を形成する一方の側面12aが他方の側面12aに対して上下方向にずれようとしたときに、各側面12aに設けられた上側凸部25及び下側凸部26の上下方向の移動が接合目地材16によって係止される。これによって、当該一方の側面12aが他方の側面12aに対して上下方向にずれることを防止することができ、目地17に接合目地材16が設けられた複数のセメント板床材12(接合床部15)の全体で衝撃を受け止めることができる。
また、図1に示すように、接合床部15の略矩形の周縁部の全体を、略矩形の枠状に組まれて形成された枠状梁部14の上面に取り付けることによって、接合床部15の略矩形の周縁部の全体が、略矩形の枠状に組まれて形成された枠状梁部14の上面に支持される。これによって、接合床部15の衝撃に対する剛性を更に大きくすることができる。よって、このセメント板床材12が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を更に小さくすることができる。
そして、1又は2以上の床単位13で遮音床構造を施工することができるので、所望の広さの床面積及び床形状の遮音床構造を施工することができる
このようにして、このセメント板床材12が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を十分に小さくすることができ、床衝撃音に対する遮音性能を高くすることができるので、遮音性能の優れた遮音床構造11を提供することができる。
そして、この遮音床構造11によると、セメント板床材12が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音が、例えば階下に伝わることを効果的に緩和することができるので、快適な住環境を提供することができる。また、セメント板床材12によると、遮音床構造11に使用することができ、このセメント板床材12が使用された遮音床構造11は、上記と同様の作用、効果を奏する。
次に、図3〜図5を参照して、床衝撃音レベルの測定結果を説明する。この図5は、図3に示す位置ずれ防止構造24を有する遮音床構造11の床衝撃音レベルの測定結果「□」と、図4に示す位置ずれ防止構造24を有しない床構造27の床衝撃音レベルの測定結果「○」との間で遮音性能の違いを表したものである。
この遮音性能は、幅500mm、長さ2000mm、厚さ100mmの押出し成形セメント板の4枚の目地に接合目地材を設けたものと、接合目地材を設けていないものそれぞれの上面に、床下地材として厚さ15mmのパーティクルボードと、仕上げ材として厚さ12mmのフローリング材を貼り付けたもので床衝撃音レベルを測定したものである。
この図3に示す位置ずれ防止構造24を有する遮音床構造11は、図1に示す第1技術例の遮音床構造11である。そして、図4に示す床構造27と、図3に示す遮音床構造11とが相違するところは、図3に示す遮音床構造11は、目地17に接合目地材16が設けられているのに対して、図4に示す床構造27では、目地17に接合目地材16が設けられていないところである。これ以外は、図4に示す床構造27は、図3に示す遮音床構造11と同一の構成であり、同等部分を同一の図面符号で示し、それらの説明を省略する。
また、図5に示す床衝撃音レベルとは、JISA1418で規定される重量衝撃源(例えばタイヤ)を床面に落下させた時の下階における各周波数帯の床衝撃音の音圧レベルである。
この測定方法は、ピット等の上側開口部に被測定物であるセメント板床材を載置し、所定高さ(例えば60cm〜90cm)からタイヤを自由落下させる等して、その際に生じた床衝撃音を受音室に設置したマイクロホンによって検出するものである。
図5のL−30〜L−80は遮音等級であり、このL値が小さくなるほど遮音等級、即ち遮音性が上がる。また、遮音等級は、床衝撃音レベルが5dB下がるごとに、1ランク上がる。
つまり、図5に示すL値(L−80、L−70、・・・)は、上の階の床を叩いたときに生じた床衝撃音が、どれだけ下の階に伝わるかを意味するものである。このL値が小さいほど遮音性能が良いことを意味する。
図5から明らかなように、図3に示す遮音床構造11は、図4に示す床構造27よりも優れた遮音性能を有していることが分かる。
次に、本発明に係る遮音床構造の第2〜第5技術例を、図6〜図9を参照して説明する。この図6〜図9に示す第2〜第5技術例の遮音床構造30、31、32、33と、図1に示す第1技術例の遮音床構造11とが相違するところは、図1に示す第1技術例では、接合床部15が、その下面の外周縁部が直接に枠状梁部14の上面に当接する状態でこの枠状梁部14によって支持されている構成としたのに対して、図6〜図9に示す第2〜第5技術例では、接合床部15が、その下面の外周縁部の一部又は全部が第1緩衝材34を介して枠状梁部14の上面に当接する状態でこの枠状梁部14によって支持されている構成としたところである。これ以外は、第1技術例の遮音床構造11と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
図6に示す第2技術例の遮音床構造30は、接合床部15の下面の矩形の外周縁部のうち、幅方向(中空部と直交する方向)の2つの縁部が第1緩衝材34を介して枠状梁部14の上面に当接する状態でこの枠状梁部14によって支持されている。
図7に示す第3技術例の遮音床構造31は、接合床部15の下面の矩形の外周縁部を形成する幅方向の2つの縁部、及び長さ方向(中空部と平行する方向)の2つの縁部、即ち、接合床部15の下面の矩形の外周縁部の全体が第1緩衝材34を介して枠状梁部14の上面に当接する状態でこの枠状梁部14によって支持されている。
図8に示す第4技術例の遮音床構造32は、接合床部15の下面の矩形の外周縁部を形成する幅方向の2つの縁部、及び長さ方向の2つの縁部が第1緩衝材34を介して枠状梁部14の上面に当接する状態でこの枠状梁部14によって支持されている。ただし、接合床部15の下面の長さ方向の2つの各縁部に対しては、その縁部の長さ方向において互いに所定の間隔を隔てて複数の第1緩衝材34が設けられている
図9に示す第5技術例の遮音床構造33は、接合床部15の下面の矩形の外周縁部を形成する幅方向の2つの縁部、及び長さ方向の2つの縁部が第1緩衝材34を介して枠状梁部14の上面に当接する状態でこの枠状梁部14によって支持されている。ただし、接合床部15の下面の長さ方向の2つの各縁部に対しては、それらの各縁部の略中央部に1つずつ所定長さの第1緩衝材34が設け設けられている。
この第1緩衝材34は、接合床部15が受けた衝撃を低減するものであればよく、例えば合成樹脂製の発泡体シート、ゲル状シート、不織布を使用することができる。
これら図6〜図9に示す第2〜第5技術例の第1緩衝材34によると、接合床部15が受けた衝撃を小さくすると共に、その衝撃によって生じる当該接合床部15の振動を抑制することができる。これによって、この接合床部15が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を小さくすることができる。
そして、図6〜図9に示す第2〜第5技術例の遮音床構造30〜33によると、遮音床構造30〜33に要求される遮音性能を満たすように、必要とする範囲及び場所に所望の数の第1緩衝材34を設けることができる。これによって、必要とされる適切な遮音性能を有する遮音床構造を提供することができる。
次に、本発明に係る遮音床構造の第6〜第9技術例を、図10(b)、図11、及び図12を参照して説明する。この図10(b)、図11、及び図12に示す第6〜第9技術例の遮音床構造37、38、39、40と、図1に示す第1技術例の遮音床構造11とが相違するところは、位置ずれ防止構造41、42、43、44と24とが相違するところである。
図1に示す第1技術例の位置ずれ防止構造24では、図10(a)に示すように、一対のセメント板床材12の目地17を形成する互いに向い合う一対の各側面12aに上側凸部25及び下側凸部26が設けられ、この上側凸部25と下側凸部26との間に形成された凹部の底面が平坦部として形成されている。
これに対して、図10(b)、図11、及び図12に示す第6〜第9技術例の位置ずれ防止構造37〜40では、一対のセメント板床材12の目地17を形成する互いに向い合う一対の各側面12aに上側凸部25及び下側凸部26が設けられ、この上側凸部25と下側凸部26との間に形成された凹部の底面に複数の溝部45が設けられている。この複数の溝部45は、例えばセメント板床材12の目地17を形成する側面12aの全範囲に亘って形成されている。
図10(b)に示す第6技術例の位置ずれ防止構造37の複数の第1溝部45は、断面V字形状に形成され、接合目地材16として、モルタル、グラウト材等の湿式接合目地材が使用されている。
図11(a)に示す第7技術例の位置ずれ防止構造の複数の第2溝部45は、断面台形状に形成されている。この断面台形状の第2溝部45は、当該溝部45の目地17内側に向かって開口する開口部が底部よりも幅が広がっている。接合目地材16は、湿式接合目地材が使用されている。
図11(b)に示す第8技術例の位置ずれ防止構造は、溝部45の底部が溝部45の開口部からセメント板床材12の上面側に向かって延びるように形成された第3溝部45と、下面側に向かって延びるように形成された第4溝部45と、断面台形状に形成された第5溝部45とが形成されている。これら第3溝部45、第5溝部45、及び第4溝部45は、セメント板床材12の上面側から下面側に向かって順に形成されている。接合目地材16は、湿式接合目地材が使用されている。
図12(a)、(b)に示す第9技術例の位置ずれ防止構造40の複数の第6溝部45は、断面直角三角形状に形成されている。そして、接合目地材として、例えば合成樹脂製の乾式接合目地材46が使用されている。この乾式接合目地材46は、帯状に形成されたものであり、両方の各側面には、複数の凸条46aが形成されている。この凸条46aは、断面直角三角形状に形成されている。
この第6溝部45は、その底部が傾斜面として形成され、当該底部は、セメント板床材12の上面側から下面側に向かうに従ってその深さが浅くなるように形成されている。そして、乾式接合目地材46の凸条46aは、その側面が傾斜面として形成され、その傾斜面は、乾式接合目地材46の上端部側から下端部側に向かうに従って凸条46aの高さが低くなるように、第6溝部45と対応する形状に形成されている。
このように、第6溝部45、及び乾式接合目地材46の凸条46aを形成することによって、乾式接合目地材46を目地17に装着し易く、しかも、目地17に装着された乾式接合目地材46がその目地17から外れ難くすることができる。
図10(b)、図11、及び図12に示す第6〜第9技術例の遮音床構造によると、接合床部が衝撃を受けたときに生じる振動によって、目地17を形成する一方の側面12aが他方の側面12aに対して上下方向にずれようとしたときに、その側面12aの上下方向の移動が、各側面12aに設けられた各溝部45に係合する接合目地材16、46によって係止される。これによって、当該一方の側面12aが他方の側面12aに対して上下方向にずれることを防止することができ、目地17に接合目地材16、46が設けられた複数のセメント板床材12の全体で衝撃を受け止めることができる。即ち、位置ずれ防止構造によって互いに接合された複数のセメント板床材12の剛性を高めることができる。その結果、このセメント板床材12が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を小さくすることができる。
そして、接合目地材は、湿式又は乾式接合目地材16,46を使用することができるので、施工の自由度を拡げることができる。
そして、図11(b)に示す第8技術例のように、第3〜第5溝部45を設け、これら第3〜第5溝部45に乾式接合目地材46を係合させることによって、一対の各セメント板床材12の側面12aの上下方向の位置ずれを確実に防止することができる。ただし、目地17を形成する一対の側面12aの結合度合いを向上させるためには、湿式目地材16を使用することが好ましい。
次に、本発明に係る遮音床構造の第1〜第6実施形態を、図13〜図18を参照して説明する。この図13〜図18に示す第1〜第6実施形態の遮音床構造49、50、51、52、53、54と、図1に示す第1技術例の遮音床構造11とが相違するところは、図1に示す第1技術例では、接合床部15の上面に、直接に床材(図示せず)が敷設される構成としたのに対して、図13〜図18に示す第1〜第6実施形態では、接合床部15の上面と床材55の下面との間に、複数のリブ56及び第2緩衝材57が配置されている構成としたところである。これ以外は、第1技術例の遮音床構造と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
この図13に示す第1実施形態の遮音床構造49は、セメント板床材12の上面に対して、目地17を形成する側面12a(中空部18)に平行して互いに間隔を隔てて複数のリブ56が設けられ、この複数のリブ56の上面に対して床材55が敷設されている。そして、リブ56どうしの間に形成されるリブ空間58が、セメント板床材12における当該リブ56の延びる方向の端面で開口している(図13参照)。また、接合目地材16は、目地17を密封する構成である。
そして、各リブ56の上面には、第2緩衝材57が配置されている。この第2緩衝材57は、後述する。更に、床材55は、床仕上げ材55aと、床下地材55bとを有する構成である。
この図13〜図18に示す第1〜第6実施形態の遮音床構造49〜54によると、セメント板床材12の上面に複数のリブ56を介して床材55を敷設したときは、このリブ56によって床材55とセメント板床材12とが互いに直接に接触する面積を小さくすることができる。これによって、床材55が衝撃を受けたときに生じる振動が、セメント板床材12に伝わる程度を小さくすることができ、その結果、この床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音が階下に伝わることを効果的に緩和することができる。
そして、図13に示すように、床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を、リブ56どうしの間に形成されるリブ空間58に通して、セメント板床材12における当該リブ56の延びる方向の端面に形成されたリブ空間58の開口から逃がす(抜けさせる)ことができる。これによって、リブ空間58を伝わる床衝撃音(特に、63Hz程度の重量衝撃音)が階下に伝わることを緩和することができる。
また、接合目地材16は、セメント板床材12の目地17を密封する構成としたので、リブ空間58を伝わる当該床衝撃音が目地17を通って階下に伝わることを緩和することができる。
なお、この遮音床構造49〜54によって低減された床衝撃音は、例えば隣接する床単位のリブ空間58を伝わせたり、この遮音床構造49〜54が実施されている階の室内側に戻すことにより効果的に緩和することができる。
また、図13〜図18に示す第1〜第6実施形態の遮音床構造49〜54は、複数の各リブ56が、セメント板床材12の上面であって、セメント板床材12に形成された複数の各隔壁部12dの上方位置に設けられている。この複数の各隔壁部12dは、セメント板床材12に形成されている複数の各中空部18を区画するものである。この図13に示す第1実施形態の遮音床構造49の複数の各リブ56は、断面矩形状に形成されている。
図13に示すリブ56の幅は、規格範囲内のセメント板床材12に対して、10〜150mmであり、リブ56の間隔は、30〜500mm、好ましくは50〜150mmとするとよい。
ここで、リブ56の幅を10mm未満とすると、床材55を支持するための強度が不足する可能性がある。また、リブ56の幅が150mmを超えると、床衝撃音がリブ56を通ってセメント板床材12に伝搬する面積が大きくなり、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。また、リブ56の間隔が30mm未満とすると、リブ56の本数が増加するため、床衝撃音がリブ56を通ってセメント板床材12に伝搬する面積が大きくなり、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。リブ56の間隔が500mmを超えると、リブ空間58が広くなり、床衝撃音の抜けが悪くなる。その結果、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。
また、図13に示すように、セメント板床材12に対して複数の中空部18を形成すると、軽量で強度が大きく、しかも、セメント材料が少なくて済むセメント板床材12を提供することができる。そして、複数の各リブ56を、セメント板床材12の上面であって複数の各隔壁部12dの上方位置に設けることによって、強度の大きいセメント板床材12を提供することができる。そして、このように強度の大きいセメント板床材12よると、このセメント板床材12が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を小さくすることができる。
図14は、目地17に接合目地材16を設けていない床構造59を示している。この床構造59では、リブ空間58を伝わる当該床衝撃音が目地17を通って階下に伝わる可能性がある。
図15(a)、(b)は、図13に示す遮音床構造49において、床衝撃音がリブ空間58を伝搬して、このリブ空間58の開口から抜け出ている状態を示している。図15(a)は、図13に示す遮音床構造49の部分断面正面図、図15(b)は、図13に示す遮音床構造49の部分断面斜視図である。
図16(a)、(b)に示す第2実施形態の遮音床構造50の複数の各リブ56は、セメント板床材12と結合する下端部から上端部に向かうに従って幅が大きくなる形状、例えば断面逆台形状に形成されている。この図16(a)、(b)は、床衝撃音がリブ空間58を伝搬して、このリブ空間58の開口から抜け出ている状態を示している。図16(a)は、遮音床構造50の部分断面正面図、図16(b)は、遮音床構造50の部分断面斜視図である。
この図16(a)、(b)に示す第2実施形態の遮音床構造50によると、各リブ56の側面56aが傾斜面として形成されている。このようにリブ56の側面56aを傾斜面とすると、床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を、リブ56どうしの間に形成されるリブ空間58に通して、セメント板床材12における当該リブ56の延びる方向の端面に形成されたリブ空間58の開口から効果的に逃がす(抜けさせる)ことができる。
その理由は、リブ56の側面56aを傾斜面として形成した場合は、リブ56の側面を垂直面として形成した場合と比較して、リブ空間58を伝わる床衝撃音が、セメント板床材12の上面と床材55の下面との間で反射を繰り返す時間を短くして、床衝撃音をリブ空間58の開口から早期に逃がすことができるからであると考えられる。このことは、後述する図27に示す床衝撃音レベルの測定結果によって確認されている。
図16に示すリブ56の下部の幅は、規格範囲内のセメント板床材12に対して10〜150mm、上部の幅は、下部の幅に対して+1mm以上+100mm以下、好ましくは、+2mm以上+55mm以下であり、リブ56の間隔は、リブ56の下部を基準にして30〜500mm、好ましくは50〜250mmとするとよい。
そして、リブ56の幅が10mm未満とすると、床材55を支持するための強度が不足する。また、リブ56の幅が150mmを超えると、床衝撃音がリブ56を通ってセメント板床材12に伝搬する面積が大きくなり、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。また、リブ56の上部の幅が下部の幅に対して+1mm未満としたり、+100mmを超えるようにすると、リブ56の斜面(側面)で反射する床衝撃音を、セメント板床材12の端面に形成されるリブ空間58の開口から逃がすことができる程度が低くなるため、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。
そして、リブ56の間隔が30mm未満とすると、リブ56の本数が増加するため、床衝撃音がリブ56を通ってセメント板床材12に伝搬する面積が大きくなり、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。リブ56の間隔が500mmを超えると、リブ空間58が広くなり、床衝撃音の抜けが悪くなる。その結果、遮音性能の向上の程度が極端に低くなる。
図17(a)、(b)に示す第3及び第4実施形態の遮音床構造51、52の複数の各リブ56は、セメント板床材12に対して後付けされたものである。つまり、複数の各リブ56は、セメント板床材12が製造された後に、このセメント板床材12の上面に設けられている。
図17(a)に示す第3実施形態の遮音床構造51は、複数の各リブ56の幅が狭く、リブ56の間隔が狭いものを示す例である。
図17(b)に示す第4実施形態の遮音床構造52は、複数の各リブ56の幅が広く、リブ56の間隔が広いものを示す例である。
図18(a)、(b)に示す第5及び第6実施形態の遮音床構造53、54の複数の各リブ56は、セメント板床材12と一体物として形成されたものである。つまり、複数の各リブ56は、セメント板床材12と一体物として同時に押出し成形されて形成されている。
このように、複数の各リブ56を、セメント板床材12と一体物として形成すると、セメント板床材12の断面二次モーメントが大きくなり、セメント板床材12の剛性を上げることができ、床衝撃音遮音性能を向上させることができる。
この断面二次モーメントは、セメント板床材12において、その中空部18の長さ方向に直交する断面を通り、かつ、当該セメント板床材12の板面に平行する軸線に関するものである。
図18(a)に示す第5実施形態の遮音床構造53は、複数の各リブ56の幅が狭く、リブ56の間隔が狭いものを示す例である。
図18(b)に示す第6実施形態の遮音床構造54は、複数の各リブ56の幅が広く、リブ56の間隔が広いものを示す例である。
次に、本発明に係る遮音床構造の第7〜第9実施形態を、図19〜図27を参照して説明する。この図19〜図27に示す第7〜第9実施形態の遮音床構造61、62、63は、図13示す第1実施形態の遮音床構造49が備えている第2緩衝材57の構成を限定するものである。これ以外は、第1実施形態の遮音床構造49と同等の構成であり同様に作用するので、同等部分を同一の図面符号で示しそれらの説明を省略する。
図19(a)、(b)、(c)に示す第7〜第9実施形態の遮音床構造61〜63は、複数の各リブ56の上面に第2緩衝材57を設けたものである。床材55は、複数の第2緩衝材57及びリブ56を介してセメント板床材12によって支持される。第2緩衝材57は、第1緩衝材34と同等のものである。
これら図19〜図27に示す第7〜第9実施形態の第2緩衝材57によると、床材55が受けた衝撃を小さくすると共に、その衝撃によって生じる当該床材55の振動を抑制することができる。これによって、この床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を小さくすることができる。
図19(a)に示す第7実施形態の遮音床構造61は、複数の各リブ56の上面全体に亘って第2緩衝材57を設けたものである。
このようにすると、図20及び図23に示すように、床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を、複数の各リブ空間58を伝搬させて、各リブ空間58の両端の開口から2方向に逃がす(抜けさせる)ことができる。ただし、図20では、リブ56、第2緩衝材57、及びリブ空間58は、図示していない。
図19(b)、(c)に示す第8及び第9実施形態の遮音床構造62、63の第2緩衝材57は、以下のように配置されている。つまり、同一のリブ56上に配置された第2緩衝材57は、当該リブ56の延びる方向において互いに間隔を隔てて複数配置され、当該第2緩衝材57どうしの間に衝撃音通路64が形成されている構成となっている(図21、図22、図24、及び図25参照)。
このようにすると、床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を、リブ56どうしの間に形成されるリブ空間58に通して、当該リブ空間58のセメント板床材12の端面に形成されたリブ56間の開口から逃がす(抜け出る)ことができると共に、当該リブ56間の開口以外の第2緩衝材57どうしの間に形成された衝撃音通路64からも逃がす(抜けさせる)ことができる。これによって、床衝撃音を逃がすことができる通路を増加させることができるので、リブ空間58を伝わる床衝撃音が階下に伝わることを更に緩和することができる。
なお、この遮音床構造61〜63によって低減された床衝撃音は、上記と同様に、例えば隣接する床単位のリブ空間58を伝わせたり、この遮音床構造61〜63が実施されている階の室内側に戻すことにより効果的に緩和することができる。
図19(b)に示す第8実施形態の遮音床構造62は、衝撃音通路64がリブ56と直交する直線方向に形成されているものである(図21及び図24参照)。このように衝撃音通路64が形成されるように、第2緩衝材57が、リブ56の延びる方向において互いに間隔を隔てて複数配置されている。
このようにすると、図21及び図24に示すように、床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を、互いに直交するリブ空間58及び衝撃音通路64に分散させて4方向に逃がす(抜けさせる)ことができる。ただし、図21では、リブ56、第2緩衝材57、及びリブ空間58は、図示していない。
図19(c)に示す第9実施形態の遮音床構造63は、衝撃音通路64がリブ56と所定の2つの角度(略90°と略45°)を成す2本の直線方向に形成されているものである(図22及び図25参照)。このように衝撃音通路64が形成されるように、第2緩衝材57が、リブ56の延びる方向において互いに間隔を隔てて複数配置されている。
このようにすると、図22及び図25に示すように、床材55が衝撃を受けたときに発生する床衝撃音を、リブ空間58及び衝撃音通路64によって複数の方向に分散させて放射方向に逃がす(抜けさせる)ことができる。
ただし、衝撃音通路64がリブ56と所定の2以上の角度(略90°、略60°、略30°、・・・)を成す2以上の直線方向に形成されているものとしてもよい。なお、図22では、リブ56、第2緩衝材57、及びリブ空間58は、図示していない。
次に、図26に示す床衝撃音レベルの測定結果を説明する。図26は、幅500mm、長さ2000mm、厚さ100mmの押出し成形セメント板の4枚の目地に接合目地材を設け、表面に長さ2000mm、幅50mm、厚さ20mmのリブを167mmピッチで取り付け、その上面に長さ100mm又は2000mm、幅50mm、厚さ15mmの第2緩衝材を取り付け、その上面に床下地材として厚さ15mmのパーティクルボードと、床仕上げ材として厚さ12mmのフローリング材を貼り付けたもので床衝撃音レベルを測定したものである。
なお、長さ100mmの第2緩衝材57は、床衝撃音抜き2方向の遮音床構造では、1つのリブの長さ方向に対して10枚を均等な間隔で取り付け、床衝撃音抜き放射方向の遮音床構造では、1つのリブの長さ方向に対して10枚又は9枚を千鳥配置となるように取り付けている。
図26の「□」で示す床衝撃音レベルの測定結果は、図20に示す床衝撃音抜け2方向の遮音床構造61のものである。図26の「△」で示す床衝撃音レベルの測定結果は、図21に示す床衝撃音抜け4方向の遮音床構造62のものである。図26の「●」で示す測定結果は、図22に示す床衝撃音抜け放射方向の遮音床構造63のものである。
図26から明らかなように、「●」で示す遮音床構造63が最も遮音性能が優れており、次に、「△」、「□」で示す遮音床構造62、61の順で遮音性能が優れていることが分かる。よって、床衝撃音がリブ空間58を通って遮音床構造の外周面から外側に抜け易くしたものほど、遮音性能が向上することが分かる。
次に、図27に示す床衝撃音レベルの測定結果を説明する。図27は、幅500mm、長さ2000mm、厚さ100mmの押出し成形セメント板の4枚の目地に接合目地を設け、表面に長さ2000mm、上側の幅50mm、下側の幅40mm又は上下の各幅が同じ50mm、厚さ20mmの断面逆台形又は矩形状のリブを167mmピッチで取り付け、その上面に長さ2000mm、幅50mm、厚さ15mmの第2緩衝材を取り付け、その上面に床下地材として厚さ15mmのパーティクルボードと、床仕上げ材として厚さ12mmのフローリング材を貼り付けたもので床衝撃音レベルを測定したものである。
図27の「□」で示す床衝撃音レベルの測定結果は、図15に示す床衝撃音抜け2方向、かつ、断面矩形状リブ56の遮音床構造49のものである。図27の「△」で示す床衝撃音レベルの測定結果は、図16に示す床衝撃音抜け2方向、かつ、断面逆台形状リブ56の遮音床構造50のものである。
図27から明らかなように、遮音性能は、「△」で示す遮音床構造50の方が「□」で示す遮音床構造49よりも優れていることが分かる。これによっても、床衝撃音がリブ空間58を通って遮音床構造の外周面から外側に抜け易くしたものほど、遮音性能が向上することが分かる。
ただし、上記各実施形態では、図1、図2、図15、及び図16等に示す断面形状のセメント板床材12を例に挙げたが、これ以外の断面形状を有するセメント板床材に対して本発明を適用することができる。
そして、図19〜図27に示す第7〜第9実施形態では、図13示す第1実施形態の遮音床構造49が備えている第2緩衝材57の構成を図19(a)、(b)、(c)に示すように限定したが、これに代えて、図16〜図18に示す第2〜第6実施形態の遮音構造50〜54が備えている第2緩衝材57の構成を図19(a)、(b)、(c)に示すようにしてもよい。
また、図28に示すように、各リブ56は、セメント板床材12の上面に対して敷設された各第2緩衝材57の上面に設けた構成としてもよい。この場合も、図13に示すように、第2緩衝材57をリブ56の上面に対して設けたものと同等の効果を得ることができる。
また、上記実施形態では、例えば図10に示すように、目地17に対して位置ずれ防止構造24等を適用したが、この位置ずれ防止構造24等を適用しなくてもよい。
更に、上記実施形態では、図1に示すように、枠状梁部14にセメント板床材12を敷設したが、これ以外の構造の梁に敷設されるセメント板床材12本発明を適用してもよい。
そして、上記実施形態で説明した床下地材55b及び床仕上げ材55aは、互いに隣接する床単位13を跨いで取り付けてもよい。