JP6226498B1 - 既設アンカー除荷方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】テンドンをケーブルとする既設アンカーを容易に除荷することができる技術を提供する。また、シャッターの挿入作業を必要とせず、しかも荷重解放時の衝撃を緩和することができるケーブル固定具とこれを用いた除荷方法を提供する。【解決手段】アンカーのケーブル固定具は、除荷用クサビ310と除荷用カプラーを備えたものである。除荷用クサビ310は、上面よりも底面の方が小径であるテーパー形状を呈するものである。また除荷用カプラーは、ケーブルと除荷用クサビを嵌入し得る除荷用クサビ孔を有するものであり、この除荷用クサビ孔は上面よりも底面の方が小径であるテーパー形状を呈するものである。なお、除荷用クサビ310の底面の外径は、既設アンカーヘッドに設けられたクサビ孔の内径よりも大きな寸法である。【選択図】図2

Description

本願発明は、既設アンカーの除荷に関する技術であり、より具体的には、荷重解放時の衝撃を緩和することができるケーブル固定具とこれを用いた除荷方法に関するものである。
アンカーは、テンドン(引張り材)と呼ばれる部材に緊張力を与え、これを構造物等に設置することによって目的の力を付与する構造であり、橋梁のコンクリート床板にプレストレスを導入する際に使用されたり、吊り橋ケーブルの反力として使用されたり、構造物の浮き上がり防止(地盤下からの引張)として使用されるなど、多岐にわたって利用されるシステムである。
特に、のり面・斜面の対策工や、地すべり対策工、あるいは山留擁壁の補強工としては、今やアンカーシステムは欠かせないものとなった。のり面対策工や地すべり対策工等として使用されるアンカーは、テンドンの一方の固定端を地盤内に設置することから、古くは「アースアンカー」、現在では「グラウンドアンカー」と呼ばれている。このグラウンドアンカーは、ダムの安定対策として1957年に初めて我が国に導入されて以来、60年近くにわたって採用されている。経済的であり施工性にも優れていることから、さらに高度成長に伴う社会資本整備の加速化もあって、2万4千件ともいわれる夥しい数の施工実績を数えるほど多用されてきた。
現在のグラウンドアンカーは、優れた施工性を有し、しかも極めて高い性能を発揮するものであるが、これは導入以降になされた研究開発の結果であることが知られている。例えば、導入当初は防食に対して強く意識されていなかったが、その後、耐久性の問題から二重防食が義務づけられるようになった経緯もある(現在では、防食技術が進歩したこともあって必ずしも二重防食とはされていない。)。いずれにしろグラウンドアンカーの技術は年々向上しており、言い換えれば設置から長い期間経過したグラウンドアンカーほど発展途上のものであって、浸食や劣化等が相当に進んでいることが推測される。実際、近年になってテンドンの破断や、頭部の落下、浮き上がりといった変状も報告されている。
グラウンドアンカーは1本あたり数百kNという緊張力を与えるものであり、例えばテンドンが破断すると補強対象物(のり面や山留擁壁など)の安定を損なうだけでなく、第三者に被害を及ぼすおそれさえある。現在では、既に設置されたグラウンドアンカーのうちおよそ1/4が10年以上経過しているともいわれており、今後ますますグラウンドアンカーの変状が進行することが予想され、事故等が生じる危険性も高まりつつある。
一方、橋梁やトンネルといった社会資本も長期間経過したものが多くなり、我が国の社会資本全体が更新の時期を迎えようとしている。とはいえ数多くの社会資本を同時期に更新し、あるいは大規模な補強を行うことは、費用の面でも労力の点でも難しい。そこで近年では、社会資本の健全性を適切に判断したうえで早い段階から軽微な補修等を行うなど、社会資本の延命化を図ることが求められている。グラウンドアンカーもその例外ではなく、延命化を図るべく適切な維持管理が行われているところである。
グラウンドアンカーの維持管理の一環として、初期点検、日常点検、定期点検、異常時点検といった点検が行われる。そして点検の結果、健全性に問題があると認められたグラウンドアンカーに対しては「アンカーの健全性調査」が実施される。このアンカーの健全性調査には、頭部詳細調査や、防錆油の試験、超音波探傷試験、リフトオフ試験、頭部背面調査などの種類があり、その目的に応じて適宜必要な種類の調査が選択される。例えばリフトオフ試験は、現状の残存引張り力を確認すべき場合に選択される。グラウンドアンカーの残存引張り力は、地盤のクリープによって、あるいは構造物の沈下や劣化によって、設置当初よりも増減することがあり、対策等の要否を判定するため現状の残存引張り力を確認するわけである。
リフトオフ試験の結果、グラウンドアンカーの残存引張り力が減少しているケースでは、斜面や構造物等の安定が維持できなくなっていることも考えられ、この場合、そのグラウンドアンカーを再緊張することで引張り力を増大させるか、あるいはグラウンドアンカーを増し打ちするなどの補強対策が施される。一方、グラウンドアンカーの残存引張り力が増加しているケースでは、テンドンの破断や、応力集中による受圧構造物の破壊といったおそれがあり、この場合、そのグラウンドアンカーの残存引張り力を緩和する対策が施される。
グラウンドアンカーの残存引張り力(以下、単に「緊張力」という。)を緩和する場合はもちろん、緊張力を増大させる場合も一旦はテンドンの緊張力を解放(以下、「除荷」という。)しなければならない。また、リフトオフ試験を行う場合も緊張後には除荷する必要があり、頭部背面調査を行う場合もやはり除荷しなければならない。このように、グラウンドアンカーの維持管理を行うにあたっては、様々な場面でアンカーの除荷が行われる。
ところでグラウンドアンカーは、テンドンの定着方式に着目すると、クサビ定着式アンカー、ナット定着式アンカー、クサビナット定着式アンカーに分類される。アンカーの除荷を行うためには現状の定着を解除すべく再緊張する必要があるが、このうちナット定着式アンカーやクサビナット定着式アンカーは、鋼棒(テンドン)や定着具の外周にネジが設けられているため、(除荷のための)再緊張が比較的容易であるとされている。このネジを利用すれば、油圧ジャッキで引き上げるためのテンションロッドを簡単に連結することができるわけである。一方、クサビ定着式アンカーの場合、通常はテンドンとして鋼線や鋼より線(以下、「ケーブル」という。)が用いられており、再緊張が難しいとされている。クサビ定着式アンカーの定着具にはネジが設けられていないことが多く、再緊張するためには既設の定着具を取り外し、再緊張に適した(例えば外周にネジが設けられた)定着具を新たに設置しなければならないことがその理由として挙げられる。
クサビ定着式アンカーを除荷するため、つまり現状の定着を解除するためには、定着具からクサビを取り外す必要があり、そのためにはケーブルを直接つかんで引き上げる必要がある。これまでも、ケーブルをつかむ特殊な治具を用いるなど、クサビ定着式アンカーを除荷するための技術に関しては種々提案されている。例えば特許文献1では、除荷用クサビとカプラーで既設ケーブルを把持したうえでジャッキにより緊張し、既設の定着クサビを除去するという除荷手法を提案している。
特開2003−268766号公報
特許文献1に示す技術は、既設ケーブルを直接引き上げることによって定着クサビ(既設)を取り外すことができるうえ、除荷用クサビと定着具(既設)の間にシャッターを挿入したうえでジャッキの緊張を解除することによって除荷用クサビを取り外すことができるものである。しかしながら、特許文献1で必要とされるシャッターの挿入作業は、既設ケーブルを引き上げるために数百kNという緊張力を与えた状況下で行われることから、作業者にとっては危険を伴う作業であると指摘することができる。
また特許文献1に示す技術は、シャッターを使用しない手法に比べると、アンカー体や引張り部に与える荷重解放時の衝撃が増大するという難点も挙げられる。以下、この問題について図15と図16を参照しながら詳しく説明する。
図15は、特許文献1の技術を用いてクサビ定着式アンカーを除荷するための各工程を示すステップ図であり、図16は、荷重解放時の状態を示すモデル図である。なおこれらの図に示すクサビ定着式アンカーは、アンカー孔Ha内に複数のケーブルCa1が収められており、これらのケーブルCa1は既設のクサビWeによって既設の定着具Ahに定着されている。このアンカーの除荷を行うためには、まず図15(a)に示すようにケーブルCa1を除荷用カプラーUcで把持する。より詳しくは、ケーブルCa1を除荷用カプラーUcの下方から挿通し、その状態で除荷用クサビUwを嵌入することでケーブルCa1を除荷用カプラーUcで把持する。なお、除荷用カプラーUcの上方には緊張用ケーブルCa2が挿通されており、緊張用クサビLwを嵌入することで緊張用ケーブルCa2は除荷用カプラーUcに固定される。
除荷用カプラーUcがケーブルCa1を把持すると、図15(b)に示すようにジャッキを利用して緊張用ケーブルCa2を引き上げる(緊張する)。これによって既設クサビWeは下向きの力から解放されるため、既設定着具Ahから取り外すことができる。既設クサビWeを取り外すと、図15(c)に示すように、既設定着具Ahと除荷用カプラーUcの間にシャッターSpを挿入する。なお、このシャッターSpには溝が設けられており、既設定着具Ahと除荷用カプラーUcの間にあるケーブルCa1はこの溝を通過することができる。
シャッターSpが挿入されると、徐々にジャッキの緊張力を解除して除荷用カプラーUcを降ろしていく。除荷用クサビUwは、その先端(下端)の一部が除荷用カプラーUcから突出しているため、まずはこの除荷用クサビUw先端部分がシャッターSp上面に当接する。さらに除荷用カプラーUcを降ろしていくと、除荷用カプラーUcの底面がシャッターSp上面に当接し、その後、除荷用カプラーUc内に押し込まれていくことで除荷用クサビUwはケーブルCa1から外れ、この結果ケーブルCa1は除荷用カプラーUcの把持から解放される(図15(d))。
図15(d)に示す状態は、既にケーブルCa1が除荷用カプラーUcの把持から解放され、すなわちケーブルCa1の荷重が解放された後の状態であるが、この状態に至る前後に先に指摘した問題が生じている。図16は、ケーブルCa1の荷重が解放される前後を模式的に示すモデル図であり、(a)は荷重解放前を示し、(b)は荷重解放後(つまり、図15(d)の状態)を示している。図16(a)を見ると、除荷用カプラーUcがシャッターSp上に載っていることから、緊張されたケーブルCa1の上端は他のケーブルCa1よりも高い位置にある。これは、当該ケーブルCa1が当初(緊張前)よりも所定長tだけ伸ばされていることを意味しており、すなわちその分(所定長t×ケーブルCa1のバネ係数)だけ当初より緊張力が増加していることを意味している。
所定長tはシャッターSpの厚さに依存するためそれほど長い寸法にはならないものの、一般にケーブルCa1のバネ係数は極めて大きな値を示すことから、所定長tによる増加分の緊張力は相当な大きさとなる。当初の緊張力に加えこの増加分の緊張特が加わった状態からその荷重が一気に解放されると、極めて大きな衝撃が作用することとなり、アンカー体や引張り部へ甚大な影響を及ぼすこととなる。
本願発明の課題は、従来技術が抱える問題を解決することであり、すなわち、テンドンをケーブルとする既設アンカー(以下、「ケーブル式アンカー」という。)を容易に除荷することができる技術を提供することであり、シャッターの挿入作業を必要とせず、しかも荷重解放時の衝撃を緩和することができるケーブル固定具とこれを用いた除荷方法を提供することである。
なお発明者らは、ケーブルがアンカー孔内に引き込まれた既設アンカーを再緊張するため、定着具もアンカー孔内に設置すること、つまりアンカー孔内でケーブルを定着具に固定し、その状態で定着具を引き上げることにも着目した。ところが通常の定着具には、ケーブルを挿通したうえでクサビを嵌入する程度の径をもつ挿通孔が、ケーブルの数だけ設けられる。そのため通常の定着具は、必然的に相当な大きさ(径)の定着具となり、定着具がアンカー孔内に入らないケースもある。そこで、通常の定着具がアンカー孔内に入らないケースであっても、ケーブルがアンカー孔内に引き込まれた既設アンカーを再緊張することができる技術を提供することも本願発明の課題の一つとしている。
本願発明は、除荷用のクサビが既設の定着具に設けられたクサビ孔に入り込まないように荷重を解放するという点に着目してなされたものであり、これまでにない発想に基づいて行われた発明である。
本願発明のケーブル固定具は、既設アンカーのケーブルを固定するものであり、「除荷用クサビ」と「除荷用カプラー」を備えたものである。除荷用クサビは、上面よりも底面の方が小径であるテーパー形状を呈するものである。また除荷用カプラーは、ケーブルと除荷用クサビを嵌入し得る「除荷用クサビ孔」を有するものであり、この除荷用クサビ孔は上面よりも底面の方が小径であるテーパー形状を呈するものである。なお、除荷用クサビの底面の外径は、既設クサビ孔(既設アンカーの定着具に設けられたクサビ孔)の最大内径よりも大きな寸法であり、これにより除荷用クサビが既設クサビ孔に貫入するのを回避することができる。
本願発明のケーブル固定具は、除荷用カプラーに「ケーブル収容部」が設けられたものとすることもできる。このケーブル収容部は、周辺ケーブル(固定対象のケーブルとは異なるケーブル)を収容し得る空間が形成されたものである。
本願発明の既設アンカー除荷方法は、ケーブル固定具を用いて既設アンカーを除荷する方法であり、除荷用ケーブル固定工程と、除荷用緊張工程、既設クサビ除去工程、ケーブル固定解除工程を備えた方法である。このうち除荷用ケーブル固定工程では、ケーブルを除荷用クサビ孔に挿通するとともに一部が除荷用カプラーの底面よりも突出するように除荷用クサビを除荷用クサビ孔に嵌入してケーブルをケーブル固定具に固定する。また除荷用緊張工程では、ジャッキによって除荷用カプラーを引き上げることでケーブルを緊張し、既設クサビ除去工程では既設クサビ孔内に嵌入された既設クサビを取り外す。そしてケーブル固定解除工程では、除荷用緊張工程における緊張を解除し、除荷用クサビの底面を定着具の上面に当接させた後、さらに除荷用カプラーの底面を定着具の上面に当接させ、除荷用クサビを除荷用クサビ孔内に押し込むことでケーブル固定具によるケーブルの固定を解除する。
本願発明の既設アンカー除荷方法は、さらに再緊張用ケーブル固定工程と、定着カプラー設置工程、再緊張工程を備えた方法とすることもできる。再緊張用ケーブル固定工程では、孔内アンカーヘッドの挿通孔に既設のケーブルを挿通しながら孔内アンカーヘッドをアンカー孔内に設置するとともに、ケーブルが挿通された挿通孔内に定着クサビを嵌入することでケーブルを孔内アンカーヘッドに固定する。また定着カプラー設置工程では、アンカー孔内に設置された孔内アンカーヘッドの外周に螺合することによって定着カプラーを孔内アンカーヘッドに取り付け、再緊張工程では、アンカー孔外に設置したジャッキによって定着カプラーを引き上げることでケーブルを再緊張する。
本願発明の既設アンカー除荷方法は、再緊張用ケーブル固定工程が先行ケーブル固定工程と後続ケーブル固定工程によって行われる方法とすることもできる。すなわち、複数のケーブルを先行グループと後続グループに分け、先行ケーブル固定工程で先行グループのケーブルを先行用孔内アンカーヘッドに固定し、後続ケーブル固定工程で後続グループのケーブルを後続用孔内アンカーヘッドに固定する。なおこの場合は、クサビ挿通孔と普通挿通孔(クサビ挿通孔よりも小径)の2種類の挿通孔を具備する孔内アンカーヘッドを使用する。より詳しくは、先行ケーブル固定工程において、先行グループのケーブルをクサビ挿通孔に挿通するとともに、後続グループのケーブルを普通挿通孔に挿通したうえで、先行用孔内アンカーヘッドをアンカー孔内に設置し、さらに先行グループのケーブルが挿通されたクサビ挿通孔内に定着クサビを嵌入することで、先行グループのケーブルを先行用孔内アンカーヘッドに固定する。また後続ケーブル固定工程において、後続グループのケーブルをクサビ挿通孔に挿通するとともに、先行グループのケーブルを普通挿通孔に挿通したうえで、後続用孔内アンカーヘッドを先行用孔内アンカーヘッドに重ねて(積層して)アンカー孔内に設置し、さらに後続グループのケーブルが挿通されたクサビ挿通孔内に定着クサビを嵌入することで、後続グループのケーブルを後続用孔内アンカーヘッドに固定する。そして定着カプラー設置工程では、先行用孔内アンカーヘッドに定着カプラーを取り付ける。
本願発明の既設アンカー除荷方法は、さらに再定着工程を備えた方法とすることもできる。この再定着工程では、再緊張工程後に定着カプラーのうちアンカー孔外に突出した部分の外周に定着リングを螺合してケーブルを再度定着する。
本願発明の既設アンカー除荷方法には、次のような効果がある。
(1)既設のケーブル式アンカーを容易に除荷することができる。
(2)荷重解放時の衝撃を緩和することができるため、アンカー体や引張り部への影響を抑えることができるうえ、作業者が安全に除荷作業を行うことができる。
(3)相当荷重が作用する状況下でのシャッター挿入作業を必要としないため、この点においても作業者が安全に除荷作業を行うことができる。
本願発明のケーブル固定具を示す断面図。 (a)は除荷用クサビの断面図、(b)は2分割タイプの除荷用クサビを上方及び下方から見た平面図、(c)は3分割タイプの除荷用クサビを上方及び下方から見た平面図。 (a)は下部除荷用カプラーと上部除荷用カプラーを示す断面図、(b)は除荷用カプラーの断面図、(c)はケーブル収容部が設けられた除荷用カプラーの断面図。 本願発明の既設アンカー除荷方法の主な工程の流れを示すフロー図。 (a)は既設ケーブルを本願発明のケーブル固定具に固定する工程を説明するステップ図、(b)は既設クサビを取り外す工程を説明するステップ図、(c)は除荷用クサビの底面が既設定着具に当接した状態を説明するステップ図、(d)は下部除荷用カプラーの底面が既設定着具に当接した状態を説明するステップ図。 (a)は既設ケーブルが除荷用クサビの把持から解放される前の状態を模式的に示すモデル図、(b)は既設ケーブルが除荷用クサビの把持から解放された後の状態を模式的に示すモデル図。 アンカーの再緊張方法の主な工程の流れを示すフロー図。 (a)は先行ケーブル固定工程で使用される第1孔内アンカーヘッドを示す平面図、(b)は後続ケーブル固定工程で使用される第2孔内アンカーヘッドを示す平面図。 既設アンカーが有する6本のケーブルを示す断面図。 (a)は第1孔内アンカーヘッドを設置する工程を説明するステップ図、(b)は第1ケーブルを第1孔内アンカーヘッドに固定する工程を説明するステップ図、(c)は第2孔内アンカーヘッドを設置する工程を説明するステップ図、(d)は第2ケーブルを第2孔内アンカーヘッドに固定する工程を説明するステップ図。 (a)は定着カプラーを示す平面図、(b)は定着カプラーを示す断面図。 (a)は定着カプラーと定着リング、支圧板を設置する工程を説明するステップ図、(b)はテンションバーを定着リングに固定する工程を説明するステップ図、(c)はジャッキによってテンションバーを引き上げる工程を説明するステップ図、(d)は定着リングを設置しジャッキを撤去した状態を示すステップ図。 (a)は定着リングを示す平面図、(b)は定着リングを示す断面図。 (a)は支圧板を示す平面図、(b)は支圧板を示す断面図。 (a)は既設ケーブルを除荷用カプラーで把持する工程を説明するステップ図、(b)は既設クサビを取り外す工程を説明するステップ図、(c)は既設定着具と除荷用カプラーの間にシャッターを挿入する工程を説明するステップ図、(d)は除荷用カプラーの把持からケーブルを解放する工程を説明するステップ図。 (a)は既設ケーブルの荷重が解放される前の状態を模式的に示すモデル図、(b)は既設ケーブルの荷重が解放された後の状態を模式的に示すモデル図。
本願発明の既設アンカー除荷方法の実施形態の一例を、図に基づいて説明する。なお、ここでは便宜上、実施形態を既設のグラウンドアンカーの例で説明しているが、本願発明はコンクリート床板にプレストレスを導入するアンカーなどグラウンドアンカー以外のアンカーにも適用可能であり、したがってここでいう「アンカー」は、グランドアンカーを含む種々のアンカーを意味している。
また、アンカーは様々な点に着目して分類がされることがあるが、テンドンがケーブル(鋼線や鋼より線)である限りあらゆる既設アンカーに対して本願発明を適用することができる。例えば、テンドンの定着方式に着目して分類される「クサビ定着方式アンカー」や「クサビナット定着式アンカー」に適用することができ、あるいは地盤への定着方式に着目して分類される「摩擦型アンカー」や、「支圧型アンカー」、「複合(摩擦+支圧)型アンカー」にも適用することができる。
なお、本願発明既設アンカー除荷方法は、除荷後に再緊張を行うこともできる。そこで、除荷を行うまでの実施形態を「除荷の実施形態」とし、さらに再緊張を行う実施形態を「再緊張の実施形態」として、それぞれ分けて説明することとする。
1.除荷の実施形態
本願発明の「ケーブル固定具」は、本願発明の「既設アンカー除荷方法」に使用されるものである。そこで、まずはケーブル固定具について説明し、そのあとに既設アンカー除荷方法について説明することとする。
(ケーブル固定具)
図1は、本願発明のケーブル固定具300を示す断面図である。この図に示すようにケーブル固定具300は、除荷用クサビ310と除荷用カプラー320を含んで構成され、また緊張用クサビ340を含んで構成することもできる。除荷用カプラー320は、下部除荷用カプラー321と上部除荷用カプラー322の2層構造とされ、この下部除荷用カプラー321には除荷用クサビ孔323が設けられ、一方の上部除荷用カプラー322には緊張用クサビ孔324が設けられている。
図2は除荷用クサビ310の詳細を示す図であり、(a)は除荷用クサビ310の断面図、(b)は2分割タイプの除荷用クサビ310を上方及び下方から見た平面図、(c)は3分割タイプの除荷用クサビ310を上方及び下方から見た平面図である。除荷用クサビ310は既設のケーブル220を把持(固定)するものであり、その中央部にはケーブル220を収容するための略円柱状の内部空間が設けられ、ケーブル220と接触する内部空間の壁面は例えば鋸歯状とするなど粗面に形成するとよい。また、図2(a)に示すように除荷用クサビ310の外形は、上面よりも底面の方が小径である円錐台状を呈しており、したがってその側面はテーパー形状となっている。また、図1からも分かるように、除荷用クサビ310を除荷用クサビ孔323内に収めると、除荷用クサビ310の先端(下端)の一部が下部除荷用カプラー321の底面から突出する形状及び寸法となっている。つまり除荷用クサビ310の底面の外径は、除荷用クサビ孔323の底面の内径よりも小さな寸法とされる。
また、図2(a)に示すように除荷用クサビ310の底面の外径φ1は、既設定着具240に設けられた既設クサビ孔241の最大内径φ2よりも大きな寸法とされる。なお、通常の既設クサビ孔241は内面がテーパー状の円錐第形状であり、最上部の内径が最大内径φ2となる。除荷用クサビ310のうち最小外径となる底面外径φ1が、既設クサビ孔241の最大内径φ2よりも大きな寸法であることから、上方から強く押し付けられたとしても、除荷用クサビ310はその一部さえも既設クサビ孔241内に貫入することがない。
除荷用クサビ310は、荷重が解除されたケーブル220から取り外しやすいように、複数の分割片311によって構成される。例えば、図2(b)に示す除荷用クサビ310は2つの分割片311によって形成され、図2(c)に示す除荷用クサビ310は3つの分割片311によって形成されている。もちろん、除荷用クサビ310を4以上に分割して形成することもできる。
図1に示す緊張用クサビ340は、内部空間に収めた緊張用ケーブル350を把持するもので、緊張用ケーブル350とともに緊張用クサビ孔324に嵌入される。また除荷用クサビ310と同様、その外形は円錐台状であり、複数の分割片によって構成される。
図3は除荷用カプラー320の詳細を示す図であり、(a)は下部除荷用カプラー321と上部除荷用カプラー322を示す断面図、(b)は除荷用カプラー320の平面図、(c)はケーブル収容部330が設けられた除荷用カプラー320の平面図である。図3(a)に示すように除荷用カプラー320は、下部除荷用カプラー321と上部除荷用カプラー322を接合して形成されるものであり、図3(b)からも分かるように外形は略円柱状となっている。なおこの図では、双方に設けられたネジによって下部除荷用カプラー321と上部除荷用カプラー322を螺合しているが、外周に取り付ける接続リングを用いて接合するなど、従来から用いられている他の手法によって接合することもできる。
下部除荷用カプラー321には、上下に貫通する除荷用クサビ孔323が形成されている。この除荷用クサビ孔323は、ケーブル220を把持した状態の除荷用クサビ310を収容する空間であり、その形状は上面よりも底面の方が小径である円錐台状であり、したがってその側面はテーパー形状となっている。これにより、除荷用クサビ孔323内に収められた除荷用クサビ310は、上方には移動しやすいが下方には移動できない機構となる。
ところで本願発明のケーブル固定具300では、除荷用クサビ310の底面外径φ1を既設クサビ孔241の最大内径φ2よりも大きな寸法とする結果、下部除荷用カプラー321は従来品よりも大きな寸法となる傾向にある。そのため、除荷用クサビ310が把持するケーブル220(つまり、除荷対象のケーブル220)とは異なるケーブル220(以下、「隣接するケーブル220」という。)が、下部除荷用カプラー321に干渉することもある。この場合、図3(c)に示すように、除荷用カプラー320の一部を切り欠いた収容部330を設けるとよい。この収容部330に隣接するケーブル220を収容することで、下部除荷用カプラー321と隣接するケーブル220との干渉が回避できるわけである。なお図3(c)では、除荷用カプラー320の一部を切り欠くことで収容部330を形成しているが、柱状の貫通孔を設けこれを収容部330とすることもできる。
上部除荷用カプラー322には、上下に貫通する緊張用クサビ孔324が形成されている。この緊張用クサビ孔324は、緊張用ケーブル350を把持した状態の緊張用クサビ340を収容する空間であり、その形状は底面よりも上面の方が小径である円錐台状であり、したがってその側面はテーパー形状となっている。これにより、緊張用クサビ孔324内に収められた緊張用クサビ340は、下方には移動しやすいが上方には移動できない機構となる。
(既設アンカー除荷方法)
次に、図4と図5を参照しながら本願発明の既設アンカー除荷方法について詳しく説明する。図4は、本願発明の既設アンカー除荷方法の主な工程の流れを示すフロー図であり、図5は、本願発明の既設アンカー除荷方法の主な各工程を示すステップ図である。図4に示すように、はじめに既設アンカーの頭部周辺で足場を組み立て、ジャッキをはじめ必要となる機器を配置し、第三者を含む安全対策を施すなど、所定の準備工を行う(Step100)。
準備が整うと、既設アンカーの除荷を行うために既設のケーブル220を本願発明のケーブル固定具300に固定する(Step201)。具体的には図5(a)に示すように、除荷用クサビ310でケーブル220を堅固に把持し、その状態で除荷用クサビ310とケーブル220を除荷用クサビ孔323内に収容する。このとき、図1にも示すように、除荷用クサビ310の先端(下端)の一部が下部除荷用カプラー321の底面から突出するように、除荷用クサビ310を嵌入する。そして、緊張用クサビ孔324内に緊張用ケーブル350及び緊張用クサビ340を収容した上部除荷用カプラー322と、下部除荷用カプラー321とを接合して除荷用カプラー320を形成する。
既設のケーブル220をケーブル固定具300に固定すると、図5(b)に示すようにジャッキを利用して緊張用ケーブル350を引き上げ、すなわちケーブル220を緊張する(Step202)。これによって既設クサビ230は下向きの力から解放されるため、既設定着具240から取り外すことができる(Step203)。
既設クサビ230を取り外すと、ケーブル固定具300によるケーブル220の固定を解除する(Step204)。以下、ケーブル220の固定解除について、図5(c)と図5(d)を参照しながら詳しく説明する。ジャッキの緊張力を徐々に解除して除荷用カプラー320を降ろしていくと、除荷用クサビ310の一部(先端)が下部除荷用カプラー321の底面から突出しているため、まずは図5(c)に示すように除荷用クサビ310の底面が既設の定着具240の上面に当接する。このとき、除荷用クサビ310の底面外径φ1が、既設クサビ孔241の最大内径φ2よりも大きな寸法であることから、除荷用クサビ310はその一部さえも既設クサビ孔241内に貫入することがない。
さらに除荷用カプラー320を降ろしていくと、図5(d)に示すように下部除荷用カプラー321の底面が既設の定着具240の上面に当接する。既述したとおり除荷用クサビ孔323内に収められた除荷用クサビ310は上方に移動しやすいことから、図5(c)から図5(d)に至る過程で、除荷用クサビ310は除荷用クサビ孔323内に押し込まれていく。この結果、ケーブル220は除荷用クサビ310による把持から解放され、すなわちケーブル固定具300によるケーブル220の固定が解除される。
図6は、ケーブル220が除荷用クサビ310の把持から解放される(つまり、荷重が解放される)前後を模式的に示すモデル図であり、(a)は荷重解放前(つまり、図5(c)の状態)を示し、(b)は荷重解放後(つまり、図5(d)の状態)を示している。図6(a)では、ケーブル220が除荷用クサビ310に把持されていることから、まだ荷重は解放されていないが、ケーブル220の上端は他のケーブル220とほぼ同じ高さにある。これは、除荷対象のケーブル220が当初(緊張前)と同じ伸びであることを意味しており、すなわち当初の緊張力が付与されている状態にあることを意味している。
図6(b)を見ると、ケーブル220の上端は、図6(a)の状態からさらに低い位置にある。これは、下部除荷用カプラー321の底面から突出した除荷用クサビ310(の一部)が除荷用クサビ孔323内に押し込まれた結果であり、換言するとケーブル220の上端が図6(a)の状態からこの突出長だけ下がっており、つまり図6(b)の状態のケーブル220は当初より小さい緊張力が付与された状態にある。図16と対比すると、図6(b)のケーブル220に付与された緊張力が小さいことが、より明確に理解できる。既述のとおりケーブル220のバネ係数は極めて大きな値であることから、ここで軽減される緊張力は相当程度の大きさであり、すなわち本願発明の既設アンカー除荷方法によれば、ケーブル220除荷時に作用する衝撃が軽減され、この結果、アンカー体や引張り部へ与える影響を軽減することができる。
2.再緊張の実施形態
以下、除荷後に行う再緊張について詳しく説明する。なお、「アンカー頭部構造」と「孔内アンカーヘッド」は、「アンカーの再緊張方法」に使用されるものであり、アンカーの再緊張方法を説明する中でアンカー頭部構造と孔内アンカーヘッドを合わせて説明することとする。またアンカーの再緊張方法は、既設アンカーのケーブルを複数のグループに分け、それぞれ段階的に孔内アンカーヘッドに固定する実施例も挙げられる。そこで、2段階に分けたケース、3段階以上に分けたケース、段階を分けることなく一度に固定するケースの3つ例に分けて説明することとする。
(2段階に分けて固定するケース)
ここでは、テンドンが複数のケーブルで構成された既設のアンカーに対し、複数のケーブルを「先行グループ」と「後続グループ」に分けて段階的に再緊張する例について説明する。なお本ケースでは、先行グループを「第1グループ」、後続グループを「第2グループ」ということとし、第1グループに属するケーブルを「第1ケーブル」、第2グループに属するケーブルを「第2ケーブル」ということとする。また、第1ケーブルと第2ケーブルは、それぞれ別の孔内アンカーヘッドに固定されることから、第1ケーブルが固定される孔内アンカーヘッド(つまり、先行用の孔内アンカーヘッド)を「第1孔内アンカーヘッド」、第2ケーブルが固定される孔内アンカーヘッド(つまり、後続用の孔内アンカーヘッド)を「第2孔内アンカーヘッド」と分けて呼ぶこととする。
図7は、アンカーの再緊張方法の主な工程の流れを示すフロー図である。以下、この図にしたがって説明する。既述したように、準備工(Step100)が実施され、既設アンカーの除荷(Step200)が行われると、ケーブル220を孔内アンカーヘッドに固定する(再緊張用ケーブル固定工程)。この再緊張用ケーブル固定工程は、先行ケーブル固定工程と後続ケーブル固定工程の2段階に分けて行われ、先行ケーブル固定工程では第1ケーブルが第1孔内アンカーヘッドに固定され、後続ケーブル固定工程では第2ケーブルが第2孔内アンカーヘッドに固定される。先行ケーブル固定工程と後続ケーブル固定工程について説明する前に、まず孔内アンカーヘッドについて説明する。
図8は、孔内アンカーヘッドを示す平面図であり、(a)は先行ケーブル固定工程で使用される第1孔内アンカーヘッドを示し、(b)は後続ケーブル固定工程で使用される第2孔内アンカーヘッドを示している。なお、ここで対象としている既設アンカーは、図9の断面図に示すように6本のケーブル220a〜220fで構成されており、このうちケーブル220a、ケーブル220c、ケーブル220eを第1グループに分類された第1ケーブル221とし、ケーブル220b、ケーブル220d、ケーブル220fを第2グループに分類された第2ケーブル222としている。
孔内アンカーヘッドは、形状(寸法を除く)や材質などは従来から用いられている定着具(アンカーヘッド)と同様であり、またケーブル220を挿通するための挿通孔を有する点も従来と同様である。なお、ここでは孔内アンカーヘッドを一般的な形状である円柱形として説明しているが、もちろん他の形状としてもよい。孔内アンカーヘッドが従来のものと異なるのは、「クサビ挿通孔」と「普通挿通孔」の2種類の挿通孔を有する点である。このクサビ挿通孔は、ケーブル220を挿通するとともにクサビを嵌入し得る程度の内径となっており、一方の普通挿通孔は、クサビ挿通孔よりも小径であるがケーブル220を挿通できる程度の内径となっている。なお、孔内アンカーヘッドの外形は、アンカー孔210内に入るように、アンカー孔210の内径より小さな寸法(直径)とされる。
図8(a)に示す第1孔内アンカーヘッド111は、既設アンカーのケーブル220の数に対応して6つの挿通孔を有しており、第1ケーブル221の数に対応する3つのクサビ挿通孔111wと、第2ケーブル222の数に対応する3つの普通挿通孔111nで構成されている。言い換えると、第1孔内アンカーヘッド111に設けられた3つのクサビ挿通孔111wは第1ケーブル221を挿通する挿通孔であり、第1孔内アンカーヘッド111に設けられた3つ普通挿通孔111nは第2ケーブル222を挿通する挿通孔である。なお、クサビ挿通孔111wにはクサビが嵌入されるのに対し、普通挿通孔111nはケーブルを挿通すれば足りることから、普通挿通孔111nの孔径はクサビ挿通孔111wの孔径より小さくすることができる。また、クサビ挿通孔111wはクサビを嵌入するためにテーパー状の孔形とされるが、普通挿通孔111nはテーパー状とすることなく円柱状の孔形とされる。
同様に、図8(b)に示す第2孔内アンカーヘッド112は、やはり既設アンカーのケーブル220の数に対応して6つの挿通孔を有しており、第2ケーブル222の数に対応する3つのクサビ挿通112wと、第1ケーブル221の数に対応する3つの普通挿通孔112nで構成されている。言い換えると、第2孔内アンカーヘッド112に設けられた3つクサビ挿通112wは第2ケーブル222を挿通する挿通孔であり、第2孔内アンカーヘッド112に設けられた3つ普通挿通孔112nは第1ケーブル221を挿通する挿通孔である。
図8からも分かるように、第1孔内アンカーヘッド111と第2孔内アンカーヘッド112は、それぞれ同数の挿通孔を有し、挿通孔が設けられる位置も略同じである。そして、第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111wと、第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nは、略同じ位置に同じ数だけ設けられている。また、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nと、第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通112wも、略同じ位置に同じ数だけ設けられている。これにより、第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111wに挿通したケーブル220(第1ケーブル221)を第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nに挿通することができ、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nに挿通したケーブル220(第2ケーブル222)を第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通孔112wに挿通することができるわけである。
以下、図10を参照しながら先行ケーブル固定工程と後続ケーブル固定工程について説明する。ところで、除荷された後のケーブル220は、その先端がアンカー孔210内に引き込まれることがある。図10は、除荷後にケーブル220がアンカー孔210内に引き込まれたケースを示しており、そのケーブル220を孔内アンカーヘッドに固定するステップ図を示している。なおこの図では便宜上、図9に示す6本のケーブル220a〜220fのうち3本のみを表しており、右側にケーブル220c(第1ケーブル221)、中央にケーブル220d(第2ケーブル222)、左側にケーブル220e(第1ケーブル221)を示している。
先行ケーブル固定工程では、まず図10(a)に示すように第1孔内アンカーヘッド111が設置される(Step301)。このとき、第1ケーブル221を第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111wに挿通し、かつ第2ケーブル222を第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nに挿通した状態で、アンカー孔210の孔口から孔奥に向けて押し込んでいく。
第1孔内アンカーヘッド111をアンカー孔210内の所定位置に配置できると、図10(b)に示すように、第1ケーブル221用の定着クサビ(以下、「第1クサビ121」という。)を第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111w内に嵌入する(Step302)。第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111w内には既に第1ケーブル221が挿通されており、その状態で第1クサビ121を嵌入することによって、第1ケーブル221を第1孔内アンカーヘッド111に固定するわけである。もちろん、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nにはクサビは嵌入しない。
後続ケーブル固定工程では、図10(c)に示すように第2孔内アンカーヘッド112が設置される(Step303)。このとき、第2ケーブル222を第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通112wに挿通し、かつ第1ケーブル222を第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nに挿通した状態で、アンカー孔210の孔口から孔奥に向けて第1孔内アンカーヘッド111と重なる(積層する)位置まで押し込んでいく。
第2孔内アンカーヘッド112を第1孔内アンカーヘッド111と重なる位置に配置できると、図10(d)に示すように、第2ケーブル222用の定着クサビ(以下、「第2クサビ122」という。)を、第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通112w内に嵌入する(Step304)。第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通112w内には既に第2ケーブル222が挿通されており、その状態で第2クサビ122を嵌入することによって、第2ケーブル222を第2孔内アンカーヘッド112に固定するわけである。もちろん、第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nにはクサビは嵌入しない。
既設アンカーの全てのケーブル220(第1ケーブル221と第2ケーブル222)が、それぞれ第1孔内アンカーヘッド111と第2孔内アンカーヘッド112に固定できると、定着カプラーを第1孔内アンカーヘッド111に取り付ける(Step400)。図11は定着カプラー130を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。定着カプラー130は中空の筒状を呈しており、孔内アンカーヘッドの外形に合わせた平面形状とされる。ここでは第1孔内アンカーヘッド111や第2孔内アンカーヘッド112を円柱状の例で説明していることから、図11(a)に示すように定着カプラー130は円筒状となっている。なお、後に説明するように定着カプラー130は、第1孔内アンカーヘッド111や第2孔内アンカーヘッド112に嵌め込むため定着カプラー130の内径は第1孔内アンカーヘッド111や第2孔内アンカーヘッド112の外径より若干大きく、そしてアンカー孔210内に挿入するためアンカー孔210の内径より若干小さな径で形成される。
また図11(b)に示すように、定着カプラー130の外周面には外周ネジ131が設けられており、定着カプラー130の内周面のうち下方には下部内周ネジ132が、定着カプラー130の内周面のうち上方には上部内周ネジ133が、それぞれ設けられている。なお、後述するようにテンションバー400のうち貫入体401の内側にネジが設けられている場合は、この内側ネジと外周ネジ131を螺合させることとし、上部内周ネジ133を省略することもできる。
図12(a)に示すように、定着カプラー130は第1孔内アンカーヘッド111と第2孔内アンカーヘッド112を嵌め込むように、アンカー孔210内に挿入して設置する。言い換えれば、中空の内部に第1孔内アンカーヘッド111と第2孔内アンカーヘッド112を収容するように、定着カプラー130を設置する。したがって、定着カプラー130の先端(孔奥側)が、第1孔内アンカーヘッド111の底面付近に達するまで定着カプラー130は挿入される。このとき、定着カプラー130をアンカー孔210内に挿入していくにあたっては、第1孔内アンカーヘッド111の外周に設けられたネジ(図10)と、定着カプラー130の下部内周ネジ132が螺合される。これにより、定着カプラー130は第1孔内アンカーヘッド111に堅固に取り付けられる。なお、孔内アンカーヘッドの外形は、アンカー孔210内に入るようにアンカー孔210の内径より小さな寸法(直径)とされると説明したが、アンカー孔210の内径よりも定着カプラー130の壁厚分だけさらに小さくするとよい。
図12(a)に示すように、第1孔内アンカーヘッド111に取り付けられた定着カプラー130はその一部がアンカー孔210外に突出しており、この部分には外周ネジ131と上部内周ネジ133(既述のとおり、場合によっては省略可)が設けられている。次のステップであるテンションバーの設置前に、このアンカー孔210外に突出した部分を利用して、定着リング140と支圧板150を設置しておく。
図13は定着リング140を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。定着リング140は中空の筒状を呈しており、定着カプラー130の外形に合わせた平面形状とされる。ここでは定着カプラー130を円筒状の例で説明していることから、図13(a)に示すように定着リング140も円筒状となっている。また図13(b)に示すように、定着リング140の内周面には内周ネジ141が設けられている。この内周ネジ141と定着カプラー130の外周ネジ131が螺合することによって、定着リング140は定着カプラー130に取り付けられる。したがって、定着リング140の内径は、定着カプラー130の外径より若干大きな径で形成される。
図14は支圧板150を示す図であり、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。この図に示すように支圧板150は、板状のものであって中央部に貫通孔が設けられている。この貫通孔内に定着カプラー130を挿入しながら、地表面に接地するように支圧板150は設置される。したがって貫通孔の内径は、定着カプラー130の外径よりやや大きな径で形成される。なお支圧板150は、定着リング140よりも先に定着カプラー130に挿入される。
定着カプラー130と、定着リング140、支圧板150が設置できると、既設アンカーの再緊張を行う(Step500)。既設アンカーの再緊張を行うにあたっては、まず図12(b)に示すように、テンションバー400を定着カプラー130に固定する。このテンションバー400のうち貫入体401の外周にはネジが設けられており、このネジと定着カプラー130の上部内周ネジ133が螺合することによって、テンションバー400が着カプラー130に固定される。あるいは、貫入体401を中空にするとともにその内周にネジを設け、この内周ネジと定着カプラー130の外周ネジ131を螺合することによって、テンションバー400を定着カプラー130に固定することもできる。
そして図12(c)に示すように、アンカー孔210外に設置したジャッキ(例えば油圧ジャッキ)によって、テンションバー400の柱状部402を引き上げていく。テンションバー400が引き上げられると、これに伴って定着カプラー130と、これに取り付けられた第1孔内アンカーヘッド111が引き上げられ、さらに第1孔内アンカーヘッド111に持ち上げられるように第2孔内アンカーヘッド112も引き上げられる。この結果、第1孔内アンカーヘッド111に固定された第1ケーブル221に緊張力が導入され、第2孔内アンカーヘッド112に固定された第2ケーブル222に緊張力が導入される。
既設アンカーを再緊張すると、ケーブル220に導入した緊張力を維持すべく定着リング140を設置する(Step600)。具体的には、図12(c)に示すように、ジャッキによって引き上げられた定着カプラー130に螺合された定着リング140を、支圧板150に重なるまで締めこんでいく。定着リング140の締め込みが十分となった段階で、ジャッキの緊張を解放し、ケーブル220に導入された緊張力を定着リング140と支圧板150に預ける。なお、アンカーの残存引張り力を確認する場合、あるいは再緊張した結果存続使用が難しいことが判明した場合など、単に再緊張するだけで完了する場合は、もちろん定着リングの設置工程(再定着工程)を行う必要はない。
図12(d)は、定着リングを設置しジャッキを撤去した状態を示す図であり、すなわち再緊張後のアンカー頭部構造を示している。この図に示すように、アンカー頭部構造は、第1孔内アンカーヘッド111と、第2孔内アンカーヘッド112、定着カプラー130、定着リング140によって構成される。
第1孔内アンカーヘッド111は、そのクサビ挿通孔111wに第1ケーブル221が挿通されて第1クサビ121が嵌入され、通挿通孔111nに第2ケーブル222が挿通されており、アンカー孔210内の所定位置に配置される。また、第2孔内アンカーヘッド112は、そのクサビ挿通孔112wに第2ケーブル222が挿通されて第2クサビ122が嵌入され、通挿通孔112nに第1ケーブル221が挿通されており、アンカー孔210内で第1孔内アンカーヘッド111に重ねられて(積層して)配置される。
定着カプラー130は、その先端(孔奥側)が第1孔内アンカーヘッド111の外周に螺合することで、第1孔内アンカーヘッド111に取り付けられており、その一部はアンカー孔210外に突出している。そして、この突出した部分の外周に螺合することで、定着リング140は定着カプラー130に取り付けられる。ジャッキで定着カプラー130を引き上げた状態で定着リング140は締め込まれていることから、ケーブル220には新たに緊張力が導入されており、ジャッキの緊張が解放された結果、定着リング140にはケーブル220に導入された緊張力が預けられている。
(3段階以上に分けたケース)
次に、テンドンが複数のケーブル220で構成された既設のアンカーに対し、複数のケーブル220を「先行グループ」と「後続グループ」に分け、さらに後続グループを2以上に分けて段階的に再緊張する例について説明する。なお、本ケースの内容は、「孔内アンカーヘッド」と「再緊張用ケーブル固定工程」以外はここまで説明した「2段階に分けて固定するケース」と同様である。したがって「2段階に分けて固定するケース」と重複する説明は避け、本ケースに特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2段階に分けて固定するケース」で説明したものと同様である。
以下、既設アンカーのケーブルを3つのグループに分け、3段階に分けて孔内アンカーヘッドに固定する例について説明する。この場合、先行グループは「第1グループ」とし、後続グループは「第2グループ」と「第3グループ」とする。なお、第1グループに属するケーブルは「第1ケーブル221」、第2グループに属するケーブルは「第2ケーブル222」、第3グループに属するケーブルは「第3ケーブル223」とし、第1ケーブルを固定するものを「第1孔内アンカーヘッド111」、第2ケーブルを固定するものを「第2孔内アンカーヘッド112」、第3ケーブルを固定するものを「第3孔内アンカーヘッド113」とする。
第1孔内アンカーヘッド111は、既設アンカーのケーブル220の本数に対応する数の挿通孔を有しており、第1ケーブル221の本数に対応する数のクサビ挿通孔111wと、第2ケーブル222と第3ケーブル223を足し合わせた本数に対応する数の普通挿通孔111nで構成されている。同様に、第2孔内アンカーヘッド112は、既設アンカーのケーブル220の本数に対応する数の挿通孔を有しており、第2ケーブル221の本数に対応する数のクサビ挿通孔112wと、第1ケーブル221と第3ケーブル223を足し合わせた本数に対応する数の普通挿通孔112nで構成され、第3孔内アンカーヘッド113は、既設アンカーのケーブル220の本数に対応する数の挿通孔を有しており、第3ケーブル223の本数に対応する数のクサビ挿通孔113wと、第1ケーブル221と第2ケーブル222を足し合わせた本数に対応する数の普通挿通孔113nで構成されている。なお、第1孔内アンカーヘッド111と、第2孔内アンカーヘッド112、第3孔内アンカーヘッド113の外形は、アンカー孔210内に入るようにアンカー孔210の内径より小さな寸法(直径)であり、しかもアンカー孔210の内径よりも定着カプラー130の壁厚分だけさらに小さな寸法とされる。また、第1孔内アンカーヘッド111の外周には、定着カプラー130の下部内周ネジ132と螺合するネジが設けられている。
第1孔内アンカーヘッド111と第2孔内アンカーヘッド112、第3孔内アンカーヘッド113は、それぞれ同数の挿通孔を有しており、挿通孔が設けられる位置もそれぞれ略同じである。そして、第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111wは、第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nや第3孔内アンカーヘッド113の普通挿通孔113nと略同じ位置に設けられている。同様に、第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通孔112wは、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nや第3孔内アンカーヘッド113の普通挿通孔113nと略同じ位置に設けられており、第3孔内アンカーヘッド113のクサビ挿通孔113wは、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nや第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nと略同じ位置に設けられている。
これにより第1ケーブル221は、第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111wと、第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112n、第3孔内アンカーヘッド113の普通挿通孔113nに挿通することができる。同様に第2ケーブル222は、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nと、第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通孔112w、第3孔内アンカーヘッド113の普通挿通孔113nに挿通することができ、第3ケーブル223は、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nと、第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112n、第3孔内アンカーヘッド113のクサビ挿通孔113wに挿通することができる。
先行ケーブル固定工程では、第1孔内アンカーヘッド111を設置する。このとき、第1ケーブル221を第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111wに挿通し、かつ第2ケーブル222と第3ケーブル223を第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nに挿通した状態で、アンカー孔210の孔口から孔奥に向けて押し込んでいく。第1孔内アンカーヘッド111をアンカー孔210内の所定位置に配置できると、第1クサビ121を第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111w内に嵌入する。第1孔内アンカーヘッド111のクサビ挿通孔111w内には既に第1ケーブル221が挿通されており、その状態で第1クサビ121を嵌入することによって、第1ケーブル221を第1孔内アンカーヘッド111に固定するわけである。もちろん、第1孔内アンカーヘッド111の普通挿通孔111nにはクサビは嵌入しない。
後続ケーブル固定工程では、第2ケーブル222と第3ケーブル223をそれぞれ2段階に分けて固定する。まず、第2孔内アンカーヘッド112を、第1孔内アンカーヘッド111と重なる(積層する)位置まで押し込んで設置する。このとき、第2ケーブル222を第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通孔112wに挿通し、かつ第1ケーブル221と第3ケーブル223を第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nに挿通した状態で、アンカー孔210の孔口から孔奥に向けて押し込んでいく。第2孔内アンカーヘッド112を第1孔内アンカーヘッド111と重なる位置に配置できると、第2クサビ122を第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通孔112w内に嵌入する。第2孔内アンカーヘッド112のクサビ挿通孔112w内には既に第2ケーブル222が挿通されており、その状態で第2クサビ122を嵌入することによって、第2ケーブル222を第2孔内アンカーヘッド112に固定するわけである。もちろん、第2孔内アンカーヘッド112の普通挿通孔112nにはクサビは嵌入しない。
次に、第3孔内アンカーヘッド113を、第2孔内アンカーヘッド112と重なる(積層する)位置まで押し込んで設置する。このとき、第3ケーブル223を第3孔内アンカーヘッド113のクサビ挿通孔113wに挿通し、かつ第1ケーブル221と第2ケーブル222を第3孔内アンカーヘッド113の普通挿通孔113nに挿通した状態で、アンカー孔210の孔口から孔奥に向けて押し込んでいく。第3孔内アンカーヘッド113を第2孔内アンカーヘッド112と重なる位置に配置できると、第3ケーブル223用の定着クサビ(以下、「第3クサビ123」という。)を第3孔内アンカーヘッド113のクサビ挿通孔113w内に嵌入する。第3孔内アンカーヘッド113のクサビ挿通孔113w内には既に第3ケーブル223が挿通されており、その状態で第3クサビ123を嵌入することによって、第3ケーブル223を第3孔内アンカーヘッド113に固定するわけである。もちろん、第3孔内アンカーヘッド113の普通挿通孔113nにはクサビは嵌入しない。
以上説明したように、既設ケーブル220をN(3以上の整数)グループに分けて再緊張するケースでは、N個の孔内アンカーヘッドを用意し、先行ケーブル固定工程で第1ケーブル221を第1孔内アンカーヘッド111に固定するとともに、後続ケーブル固定工程を(N−1)段階に分けて順にケーブル220を孔内アンカーヘッドに固定していく。このとき、後続ケーブル固定工程のそれぞれの段階において、その段階に使用する孔内アンカーヘッドのクサビ挿通孔にはそれまでにまだ孔内アンカーヘッドに固定されていないケーブルを挿通し、既に孔内アンカーヘッドに固定されたケーブルは普通挿通孔に挿通する(その後の段階で孔内アンカーヘッドに固定するケーブルも普通挿通孔に挿通する)。そして、ケーブルが挿通されたクサビ挿通孔に対してクサビを嵌入することで、そのケーブルを孔内アンカーヘッドに固定する。
(段階を分けることなく一度に固定するケース)
続いて、段階を分けることなく一度に固定するケースについて説明する。既設のアンカー孔210の内径が、設置されたケーブル220の本数に対して比較的大きい場合は、1つの孔内アンカーヘッドに全ケーブル用のクサビ挿通孔を設けることができる(クサビ挿通孔に加えて普通挿通孔を設けることもできる)。したがってこの場合は、段階を分けることなくケーブルを一度に固定することができる。なお、本ケースの内容は、「孔内アンカーヘッド」と「再緊張用ケーブル固定工程」以外はここまで説明した「2段階に分けて固定するケース」と同様である。したがって「2段階に分けて固定するケース」と重複する説明は避け、本ケースに特有の内容のみ説明することとする。すなわち、ここに記載されていない内容は、「2段階に分けて固定するケース」で説明したものと同様である。
本ケースのアンカーヘッドは、既設アンカーのケーブル220の本数に対応する数のクサビ挿通孔を有しており、さらにクサビ挿通孔に加えて普通挿通孔を設けることもできる。アンカーヘッドの外形は、アンカー孔210内に入るようにアンカー孔210の内径より小さな寸法(直径)であり、しかもアンカー孔210の内径よりも定着カプラー130の壁厚分だけさらに小さな寸法とされる。また、本ケースの孔内アンカーヘッドの外周には、定着カプラー130の下部内周ネジ132と螺合するネジが設けられている。
再緊張用ケーブル固定工程では、本ケースの孔内アンカーヘッドを設置する。このとき、全てのケーブル220をクサビ挿通孔に挿通した状態で、アンカー孔210の孔口から孔奥に向けて押し込んでいく。本ケースの孔内アンカーヘッドをアンカー孔210内の所定位置に配置できると、クサビをクサビ挿通孔内に嵌入する。クサビ挿通孔内には既にケーブル220が挿通されており、その状態でクサビを嵌入することによって、ケーブル220を本ケースの孔内アンカーヘッドに固定するわけである。
本願発明の既設アンカー除荷方法は、のり面・斜面対策工や、地すべり対策工に利用できるほか、コンクリート床板へのプレストレス導入や、ダムの安定化対策、橋脚や橋台の安定化対策などにも利用することができる。本願発明が、社会資本の一つであるアンカーの延命化を図り得ることを考えれば、産業上利用できるばかりでなく社会的にも大きな貢献を期待し得る発明といえる。
111 第1孔内アンカーヘッド
111n (第1孔内アンカーヘッドの)普通挿通孔
111w (第1孔内アンカーヘッドの)クサビ挿通孔
112 第2孔内アンカーヘッド
112n (第2孔内アンカーヘッドの)普通挿通孔
112w (第2孔内アンカーヘッドの)クサビ挿通孔
113n 普通挿通孔
121 第1クサビ
122 第2クサビ
130 定着カプラー
131 (定着カプラーの)外周ネジ
132 (定着カプラーの)下部内周ネジ
133 (定着カプラーの)上部内周ネジ
140 定着リング
141 (定着リングの)内周ネジ
150 支圧板
210 アンカー孔
220 ケーブル
221 第1ケーブル
222 第2ケーブル
230 既設クサビ
240 既設定着具
241 既設クサビ孔
250 既設支圧板
300 本願発明のケーブル固定具
310 除荷用クサビ
311 (除荷用クサビの)分割片
320 除荷用カプラー
321 下部除荷用カプラー
322 上部除荷用カプラー
323 除荷用クサビ孔
324 緊張用クサビ孔
330 (除荷用カプラーの)収容部
340 緊張用クサビ
350 緊張用ケーブル
400 テンションバー
401 (テンションバーの)貫入体
402 (テンションバーの)柱状部
φ1 除荷用クサビの底面の外径
φ2 既設クサビ孔の最大内径
Ah 既設のアンカーヘッド
Ca1 既設のケーブル
Ca2 緊張用ケーブル
Ha アンカー孔
Lw 緊張用クサビ
Sp シャッター
Uc 除荷用カプラー
Uw 除荷用クサビ
We 既設のクサビ

Claims (5)

  1. 除荷用クサビと除荷用カプラーを備えたケーブル固定具を用いて、ケーブルを有する既設アンカーを除荷する方法であって、
    前記除荷用クサビは、上面よりも底面の方が小径であるテーパー形状を呈するとともに、底面の外径は前記既設アンカーの定着具に設けられた既設クサビ孔の内径よりも大きな寸法であり、
    前記除荷用カプラーは、上面よりも底面が小径であるテーパー形状であって前記ケーブルとともに前記除荷用クサビを嵌入し得る除荷用クサビ孔を有し、
    前記ケーブルを前記除荷用クサビ孔に挿通するとともに、一部が前記除荷用カプラーの底面よりも突出するように前記除荷用クサビを前記除荷用クサビ孔に嵌入して、前記ケーブルを前記ケーブル固定具に固定する除荷用ケーブル固定工程と、
    ジャッキによって前記除荷用カプラーを引き上げることで、前記ケーブルを緊張する除荷用緊張工程と、
    前記既設クサビ孔内に嵌入された既設クサビを取り外す既設クサビ除去工程と、
    前記除荷用緊張工程における緊張を解除し、前記除荷用クサビの底面を前記定着具の上面に当接させた後、さらに前記除荷用カプラーの底面を前記定着具の上面に当接させ、前記除荷用クサビを前記除荷用クサビ孔内に押し込むことで、前記ケーブル固定具による前記ケーブルの固定を解除するケーブル固定解除工程と、
    を備えたことを特徴とする既設アンカー除荷方法。
  2. 孔内アンカーヘッドが具備する挿通孔に前記ケーブルを挿通したうえで、前記孔内アンカーヘッドをアンカー孔内に設置するとともに、前記ケーブルが挿通された前記挿通孔内に定着クサビを嵌入することで前記ケーブルを前記孔内アンカーヘッドに固定する再緊張用ケーブル固定工程と、
    アンカー孔内に設置された前記孔内アンカーヘッドの外周に螺合することによって、定着カプラーを前記孔内アンカーヘッドに取り付ける定着カプラー設置工程と、
    アンカー孔外に設置したジャッキによって前記定着カプラーを引き上げることで、前記ケーブルを緊張する再緊張工程と、
    をさらに備えたことを特徴とする請求項1記載の既設アンカー除荷方法。
  3. 前記孔内アンカーヘッドは、クサビ挿通孔と、前記クサビ挿通孔よりも小径の普通挿通孔の、2種類の前記挿通孔を具備し、
    前記再緊張用ケーブル固定工程は、複数の前記ケーブルを先行グループと後続グループに分けてそれぞれ異なる前記孔内アンカーヘッドに固定するものであって、前記先行グループの前記ケーブルを先行用孔内アンカーヘッドに固定する先行ケーブル固定工程と、前記後続グループの前記ケーブルを後続用孔内アンカーヘッドに固定する後続ケーブル固定工程と、を有し、
    前記先行ケーブル固定工程では、前記先行グループの前記ケーブルを前記先行用孔内アンカーヘッドの前記クサビ挿通孔に挿通するとともに、前記後続グループの前記ケーブルを前記先行用孔内アンカーヘッドの前記普通挿通孔に挿通したうえで、前記先行用孔内アンカーヘッドをアンカー孔内に設置し、かつ前記先行グループの前記ケーブルが挿通された前記クサビ挿通孔内に定着クサビを嵌入することで、前記先行グループの前記ケーブルを前記先行用孔内アンカーヘッドに固定し、
    前記後続ケーブル固定工程では、前記後続グループの前記ケーブルを前記後続用孔内アンカーヘッドの前記クサビ挿通孔に挿通するとともに、前記先行グループの前記ケーブルを前記後続用孔内アンカーヘッドの前記普通挿通孔に挿通したうえで、前記後続用孔内アンカーヘッドを前記先行用孔内アンカーヘッドに重ねてアンカー孔内に設置し、かつ前記後続グループの前記ケーブルが挿通された前記クサビ挿通孔内に定着クサビを嵌入することで、前記後続グループの前記ケーブルを前記後続用孔内アンカーヘッドに固定し、
    前記定着カプラー設置工程では、前記先行用孔内アンカーヘッドに前記定着カプラーを取り付ける、
    ことを特徴とする請求項2記載の既設アンカー除荷方法。
  4. 前記後続ケーブル固定工程では、前記後続グループの前記ケーブルがさらに2以上のグループに分けられるとともに、それぞれ異なる前記孔内アンカーヘッドに段階的に固定され、
    前記後続ケーブル固定工程の各段階では、前記孔内アンカーヘッドにまだ固定されていない前記ケーブルを前記クサビ挿通孔に挿通するとともに、前記孔内アンカーヘッドに既に固定された前記ケーブルを前記普通挿通孔に挿通したうえで、前記後続用孔内アンカーヘッドをアンカー孔内に設置し、かつ前記ケーブルが挿通された前記クサビ挿通孔内に前記定着クサビを嵌入することで、前記ケーブルを前記後続用孔内アンカーヘッドに固定する、
    ことを特徴とする請求項3記載の既設アンカー除荷方法。
  5. 前記再緊張工程後に、前記定着カプラーのうちアンカー孔外に突出した部分の外周に定着リングを螺合して、前記ケーブルを再度定着する再定着工程を、
    さらに備えたことを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の既設アンカー除荷方法。
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