JP6232300B2 - 既設pc鋼材の再定着方法 - Google Patents
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Description
この特許文献1は、既設の連続したコンクリート構造物のある区間を解体・撤去するような工事を行う場合に、その解体・撤去部の両側のコンクリートにおいて、解体前にPC鋼材等の緊張材により付与されていたプレストレスを、解体後も維持すべく緊張材を継続使用する際の中間定着具および中間定着具を用いたPC緊張材の中間定着方法を開示する。この特許文献1に開示された中間定着具は、PC緊張材の周囲を所定の環状すきまを保って挟み込む半割りスリーブを合わせてなる筒状部材と、開口部を有し筒状部材の外周に順に嵌め込まれて筒状部材を補強する複数個の板状C形部材とを有することを特徴とする。そして、このような中間定着具を用いた中間定着方法により緊張材を中間定着させる。
また、このようなPC鋼材としてPC鋼棒が用いられている場合には、1本毎に定着させるため、簡易なクサビ式による定着、単純なセンターホールジャッキを用いての再定着が可能であるが、PC鋼線またはPC鋼より線等の複数本定着(束定着)の場合、鋼線間どうしまたはより線間どうしで緊張力のばらつきがあるため、マルチジャッキを用いて再緊張することは困難であるとともに、橋梁補修工事における桁下等の狭い空間であるにも関わらず大型のマルチジャッキを使用するための緊張余長および緊張作業空間が必要とな
り、そのような大きな空間の確保が困難であった。
すなわち、本発明に係る既設PC鋼材の再定着方法は、張力が付与された複数の鋼線からなるPC鋼材により躯体部分に圧縮力が付与された既設PC構造物において、前記PC鋼材の一部を切断した後に残存したPC鋼材を再定着する。この再定着方法は、前記PC鋼材を切断する位置近傍のコンクリートをはつるとともに、既設定着部を撤去することにより、予め算出された長さのPC鋼材を露出させる露出ステップと、前記露出されたPC鋼材の端面に、複数の鋼線の間隔を拡張させるための支圧板台座および前記支圧板台座に支持される支圧板を設置する設置ステップと、前記設置ステップにより形成された空間にシングルジャッキを設置して、前記PC鋼材を1本毎に緊張して定着する緊張定着ステップと、前記PC鋼材の定着後に、前記支圧板台座内にグラウトを充填する充填ステップとを含む。
さらに好ましくは、前記緊張定着ステップにおいて、前記支圧板台座にできるだけ均等に支圧応力がかかるように、前記PC鋼材を1本毎に緊張して定着するように構成することができる。
このような特徴を備えた再定着方法について、以下に詳しく説明する。図1はこの再定着方法が適用される既設PC構造物の概要図であって、図2は、この再定着方法の露出ステップにより露出されたPC鋼材の状態を示す概要図である。
<露出ステップ>
まず、図1に示す状態で露出ステップにて不要なコンクリートである撤去PC構造物100および既設定着具150を撤去して、図2に示すように、PC鋼材200を露出させる。この露出ステップにおいて、上述したように、既設定着具150を撤去することにより引き込まれるPC鋼材200の長さを考慮して算出された長さのPC鋼材を露出させるように、撤去PC構造物100および既設定着具150を撤去している。
露出ステップにおいて既設定着具150を撤去することにより、既設のPC鋼材に付与されていた緊張力が開放される(この開放に伴う不具合は別途の補強方法(外ケーブルの設置等)により解決する)。このとき、PC鋼材200は、複数の鋼線から構成され、緊張力のばらつき、グラウト充填状態のばらつき、または、コンクリートとの付着状態のばらつき等により、残留PC構造物110の内部へ引き込まれる(戻る)可能性がある。このように、PC鋼材200が残留PC構造物110の内部へ引き込まれてしまうと再定着させることができなくなるので、露出させるPC鋼材200の長さを管理する必要がある。
必要PC鋼材露出長さ
≧既設PC鋼材に対する緊張伸び量+定着部長さ+緊張余長・・・(1)
この露出ステップにおいては、この式(1)で示される必要PC鋼材露出長さ以上のPC鋼材200が露出するように、PC鋼材を露出させる
<設置ステップ>
緊張定着ステップにおいてPC鋼材200の1本ずつに緊張力を付与して再定着させるためには、PC鋼材200の1本ずつ(ここでは、7本より線12.4mm×12本のより線1本ずつまたは単線7mm×12本の単線1本ずつ)に定着具(クサビ)が必要となる。このため、上述した露出ステップの後であってPC鋼材200の1本ずつに緊張力を付与して再定着させる緊張定着ステップの前に、PC鋼材200の1本ずつに対して定着具を設けることができるように、PC鋼材200の間隔を拡張する必要がある。
しかしながら、この最大角度αを大きくすることにより図5における高さを小さくすることができる。ここで、橋梁補修工事における桁下等の狭い空間での作業性を考慮した場合、緊張定着ステップにおいてよりコンパクトであることが重要となる。このため、本実施の形態に係る再定着方法においては、支圧板300の下穴形状を変更して1本毎の最大角度αを約7°とした。これにより、支圧板台座310の高さを低くすることができ、橋梁補修工事における桁下等の狭い空間での作業性が良好となる。
上述した設置ステップの後、緊張定着ステップにおいてPC鋼材200の1本ずつに緊張力を付与するして再定着させる。緊張定着ステップにおいては、図7に示すように、PC鋼材1本毎(上述したように、ここでは、7本より線12.4mm×12本のより線1本ずつまたは単線7mm×12本の単線1本ずつ)に定着具500をセットして、シングルジャッキ400によりPC鋼材1本ずつを緊張させる。このとき、PC鋼材1本ずつ緊張状態および定着状態に差異があることが通常であるので(施工状態の差異、経年変化にいる差異が存在)、PC鋼材1本ずつに対応した適正な緊張力をシングルジャッキ400により付与する。その後、図8に示すように、PC鋼材1本毎にセット量調整シム600(以下、単にシム600と記載する場合がある)を用いてセット量を補正する。このように1台のシングルジャッキ400を用いるので、PC鋼材1本ずつに適性な緊張力を付与できるともに、橋梁補修工事における桁下等の狭い空間での作業性が良好となる。
、下側にひずみゲージ900AD、定着具500側から見て左側にひずみゲージ900AL、定着具500側から見て右側にひずみゲージ900AR、を設けた。さらに、ひずみゲージ900は、図9(C)に示すように、PC鋼材200の長手方向の直角方向であってその上側にひずみゲージ900CU、下側にひずみゲージ900CD、定着具500側から見て左側にひずみゲージ900CL、定着具500側から見て右側にひずみゲージ900CR、を設けた。すなわち、ひずみゲージ900は、4ヶ所(上下左右)において2方向(軸方向および直角方向)のひずみを測定した。
さらに、この模擬試験の結果、橋梁補修工事における桁下等の狭い空間での作業であっても、PC鋼材200の1本ずつへの定着具500の挿入作業に関しては、治具等を用いることにより、問題なく実施可能であった。また、PC鋼材200の1本ずつの緊張作業に関しても、PC鋼材200の伸び量を個別に測定することができ、問題なく実施可能であった。
上述した緊張定着ステップの後、図11に示すように、充填ステップにおいてPC鋼材200の緊張余長を切断して、支圧板台座310内部にセメントグラウト120(単にグラウト120と記載する場合がある)を充填する。定着部における防錆対策は、PC鋼材200にとって非常に重要なものであるために、この充填ステップにおける作業も非常に重要である。すなわち、支圧板台座310内部にグラウトが充填されない部分が発生しないように、適切な組成のグラウト(低粘性が好ましい)を準備して、そのグラウトを適切に加圧してエア溜まりを解消する。特に、上部に発生するエア溜まりについては、グラウト充填後に0.3MPa程度で加圧作業を行うことにより解消される。
上述した充填ステップの後、図12に示すように、定着部全体の防錆・保護するために、打設ステップにおいてコンクリート躯体130を打設する。これにより、再定着されたPC鋼材200、定着具500が恒久的なものとすることができる。
以上のようにして、本実施の形態に係る既設PC鋼材の再定着方法によると、
(1)残存するPC鋼材個々のプレストレス力を把握することができるため、現状のグラウト充填状況または付着力が推測できる。
(2)1本毎の鋼材にシングルジャッキを用いて緊張することにより、複数の鋼材からなるPC鋼材に均等な荷重が導入できる。また、ジャッキが小型となることにより、必要緊張余長が短くなるとともに、橋梁補修工事における桁下等の狭い空間での作業性を向上することができる。
(3)特許文献に示すような中間定着部を設けないため、再定着作業に必要な部品点数が
少なくなり、かつ、作業時間が短縮化できるので、経済性・作業性が向上する。
110 残留PC構造物(PC構造物の中の撤去部分以外のコンクリート)
120 セメントグラウト
130 打設コンクリート
150 既設定着具
200 PC鋼線
300 支圧板
310 支圧板台座
320 チェアー
330 収束治具
400 シングルジャッキ
500 定着具
600 セット量調整シム(シム)
650 シム(模擬試験)
700 反力台
800 ロードセル
900 ひずみゲージ
Claims (4)
- 張力が付与された複数の鋼線からなるPC鋼材により躯体部分に圧縮力が付与された既設PC構造物において、前記PC鋼材の一部を切断した後に残存したPC鋼材を再定着する既設PC鋼材の再定着方法であって、
前記PC鋼材を切断する位置近傍のコンクリートをはつるとともに、既設定着部を撤去することにより、予め算出された長さのPC鋼材を露出させる露出ステップと、
前記露出されたPC鋼材の端面に、複数の鋼線の間隔を拡張させるための支圧板台座および前記支圧板台座に支持される支圧板を設置する設置ステップと、
前記設置ステップにより形成された空間にシングルジャッキを設置して、前記PC鋼材を1本毎に緊張して定着する緊張定着ステップと、
前記PC鋼材の定着後に、前記支圧板台座内にグラウトを充填する充填ステップとを含む、既設PC鋼材の再定着方法。 - 前記露出ステップにおいて、既設定着部を撤去することにより引き込まれるPC鋼材の長さを考慮して算出された長さのPC鋼材を露出させる、請求項1に記載の既設PC鋼材の再定着方法。
- 前記緊張定着ステップにおいて、前記支圧板台座にできるだけ均等に支圧応力がかかるように、前記PC鋼材を1本毎に緊張して定着する、請求項1記載の既設PC鋼材の再定着方法。
- 前記PC構造物はPC橋梁である、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の既設PC鋼材の再定着方法。
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