JP6226320B2 - 鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定法、同定装置および同定用プログラム - Google Patents
鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定法、同定装置および同定用プログラム Download PDFInfo
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Description
、作業領域の形状や大きさ、計算精度(逆行列の条件数)の観点から同時同定法よりも逐次同定法が好ましい。
レータにおけるパラメータの同定に応用できないという課題がある。この理由は、当該同定法は、概算可能な配管体積を未知パラメータとする一方で、圧力や温度に依存して変化する体積弾性率(非特許文献11)を既知パラメータとしているからである。また、鉛直多関節マニピュレータは、水平1自由度アームには存在しなかった遠心力・コリオリ力項と重力項を有しているからである。
はじめに、鉛直多関節油圧マニピュレータの制御系設計のための状態空間表現を述べる。記述の簡単化のために、図1、2に示す鉛直2関節油圧マニピュレータの場合を例に挙げて説明するが、一般のn関節(n:2以上の整数)の場合にも同様に適用可能である。
qi∈R:相対関節角度
p±∈R:圧力
usi∈R:スプール変位
表1に、既知パラメータと未知パラメータを示す。未知パラメータの一部である体積弾性率b、流量係数Cfは電動マニピュレータには存在しないパラメータであり、公称値が無い、または、公称値が一定ではなく温度や経年によって変化することが多い。
性率bは前者であって関節番号iに依存せず、慣性Mや流量係数Cfは後者であって関節番号iに依存する。
図3は本発明のパラメータ同定法による鉛直2関節油圧マニピュレータのパラメータ同定手順を示す説明図である。本発明のパラメータ同定法は従来の逐次同定法を修正したものである。従来の逐次同定法では、図3に示すパラメータ同定のための各ステップ1〜3(Step1〜3)を間欠無く連続して実施するのではなく、各ステップ1〜3間において同定計算を実施する。すなわち、ステップ1とステップ2の間においてステップ1の動作結果を用いた同定計算を実施し、ステップ2とステップ3の間においてステップ2の動作結果を用いた同定計算を実施する(非特許文献13)。
パラメータ同定装置100を用いて、第1関節軸(Joint1)を固定し(q1の値を一定とし)、第2関節軸(Joint2)が単独運動を行うように、鉛直多関節油圧マニピュレータを駆動する。一定のサンプリング周期で(各時刻において)、制御用の入力信号uに対する相対関節間角度q、ピストン変位s、圧力p+、p−を測定して記憶保持する。
第2関節軸を最小値に固定し(q2=q2min)、第1関節軸が単独運動を行うように、鉛直多関節油圧マニピュレータを駆動する。一定のサンプリング周期で(各時刻において)、制御用の入力信号uに対する相対関節間角度q、ピストン変位s、圧力p+、p−を測定する。式(1)の非線形の状態方程式は次式で表される。但し、同定計算はしない。
第2関節軸を最大値に固定し(q2=q2max)、第1関節軸が単独運動を行うように、鉛直多関節油圧マニピュレータを駆動する。一定のサンプリング周期で(各時刻において)、制御用の入力信号uに対する相対関節間角度q、ピストン変位s、圧力p+、p−を測定する。式(1)の状態方程式は次式で表される。ここでも、同定計算はしない。なお、ステップ2およびステップ3の実行順序は、逆であってもよいことは勿論である。
上記の各ステップ1〜3において、パラメータ同定装置100は、各時刻t=t1,・・・,tN毎に次のパラメータを得るものとする。
)で示す2つの線形方程式に厳密に統合する。
上記の説明は、理解を容易にするために、関節数が2の場合のものである。本発明は関節数が3以上の場合にも同様に適用可能なことは勿論である。
(2)第3関節軸の相対関節間角度を最小値に固定し、第1関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第2関節軸について前述のステップ2を実行して1つの線形方程式を導出する。
(3)第3関節軸の相対関節間角度を最大値に固定し、第1関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第2関節軸について前述のステップ3を実行して1つの線形方程式を導出する。
(4)第2関節軸の相対関節間角度を最小値に固定し、第1関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第3関節軸について前述のステップ2を実行して1つの線形方程式を導出する。
(5)第2関節軸の相対関節間角度を最大値に固定し、第1関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第3関節軸について前述のステップ3を実行して1つの線形方程式を導出する。
(6)得られた5組の線形方程式を用いて、前述したステップ4を実行して、パラメータ同定を行う。
(b)kを1〜(n−1)までの整数とすると、第(k+1)関節軸の相対関節間角度を
最小値に固定し、第k、第(k+1)関節以外の各関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第k関節軸についてステップ2を実行して1つの線形方程式を導出する。
(c)第(k+1)関節軸の相対関節間角度を最大値に固定し、第k、第(k+1)関節軸以外の各関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第k関節軸についてステップ3を実行して1つの線形方程式を導出する(各関節軸についてステップ2、3の実行順序は逆であってもよい。)。
(d)ステップ1、および、第(n−1)〜第1関節軸のそれぞれについてステップ2、3を実行して得られた、合計で(2n−1)組の線形方程式に対して、ステップ4を実行して、2つの正規方程式を導出し、当該正規方程式を解き、パラメータ同定を行う。
次に、上記のパラメータ同定法によってパラメータを設定した鉛直2関節油圧マニピュレータの実験方法と結果について述べて考察する。
図4は試験機の外観写真であり、図5は試験機のシステム構成(信号の流れ)を示す概略構成図である。
第1〜第3リンクおよび第1、第2関節軸を備えた剛体のマニピュレータ本体21
油圧ユニット22(ダイキン工業、NDR081−071H−30、吐出流量11.7[L/min]、供給圧力ps=7[MPa],容量7[L])
油圧配管23(横浜ゴム、SWP70−6、内径1/4インチ)
油圧アクチュエータの制御弁12(ダイキン工業,KSPS−G02−41−10,直動形,ゼロラップ型,定格流量40[L/min],ディザー周波数300[Hz],ゲイン特性130[Hz]/−3[dB]±10[%])
油圧アクチュエータの片ロッドシリンダ11(JPN,KW−1CA30×75,ストロークL=75[mm])
オイルフィルタ(大生工業,UM−03−20U−1V)
表2に本発明のパラメータ同定法によって同定されたパラメータの最大値と最小値と平均値および相対標準偏差(RSD[%])を示す。計算機(1.67[GHz])を用いた式(4)の計算時間は6.5[s]であり、式(4)の行列X1N、X2Nの条件数は、最大でそれぞれ11と27、最小でそれぞれ10と25であった。また、行数はそれぞれ12000と24000であった。本発明のパラメータ同定法では、パラメータの符号や値域について一切の制約条件を与えることなく、かつ、パラメータの初期推定値を必要としないにもかかわらず、16次元の同定されたパラメータの値は全て正であった。
表2から、同定されたパラメータの相対標準偏差は、最大で2.15[%]、最小で0.14[%]となった。一般に、相対標準偏差が5.00[%]以下であれば、精度が良いと知られている.同定結果の相対標準偏差は、すべて5.00[%]以下を達成しているため、パラメータ同定の精度が良いと言える。
値に十分近い値が得られており、同じ供給圧力の研究(非特許文献15)で推定された値とも近い。機械系のパラメータだけでなく、流体系のパラメータについても公称値に近い値を得られたことから、本発明の同定法は有効であると考えられる。
最後に、先に述べた本発明のパラメータ同定法による同定結果を用いて、非線形モデルを構築して、試験機を用いて本発明の同定法の妥当性を検証する。
モデル検証のため、式(1)の状態方程式に対して、本発明のパラメータ同定法によって同定されたパラメータを用いて非線形モデルを計算機(1.67 [GHz], Simulink)に構築する。ただし、離散化法はRunge−Kutta法(4次、可変ステップ)である。同定実験で扱わなかった時間区間t=10〜14[s]の入力信号を印加した非線形モデルの出力信号と、同一の時間区間における試験機の出力信号を用いてモデル検証する。非線形モデルの初期状態は、検証開始時刻における試験機の状態を与える。ただし試験機の初期ピストン速度は1次後進差分を用いて与える。さらに、同定入力とは異なる周波数におけるモデル出力の有効性を示すため、周波数f=3.0[Hz]において同様にモデル検証する。
図9〜図11にステップ1、2、3の同定入力と同一の周波数f=1.0[Hz]、また図12〜図14に同定入力とは異なる周波数f=3.0[Hz]での検証結果を示す。実線は入力信号と試験機の出力信号、破線は構築した非線形モデルの出力信号である。まず、f=1.0[Hz]だけでなく、f=3.0[Hz]までにおいて負圧発生(虚数発生)が生じず、数値シミュレーションが可能であった。次に試験機の出力信号が振幅と位相の観点で非線形モデルによって再現された。特に図9で顕著な圧力のピーク前後における特徴的な波形も非線形モデルによって再現された。表3に各周波数におけるFit率[%]の評価結果を示す。全てのFit率は正の値を達成していた。
図9〜図14と表3から、ピストン変位・圧力について、試験機出力の波形によく一致した非線形モデル出力の波形が得られており、パラメータ同定が良好に行われていることを示している。特に、図13では、高周波における圧力のピーク時の特徴的な波形も非線形モデルによって再現された。またFit率は十分に高い値が達成されている。本明細書では記載を省略したが、非線形モデルの速度のFit率はすべて90%以上であった。
kgm2]であり、同定された値は妥当であるといえる。次に手先負荷の増加にともない、R12とW1、W2は増加した一方で、流体系のパラメータは変動していない。また、各軸における圧力の特徴的な波形も非線形モデルによって再現された。よって、油圧マニピュレータの手先負荷が変動する場合においても、本発明の同定法の有効性が示された。
Link0 第1リンク
Link1 第2リンク
Link2 第3リンク
Joint1 第1関節軸
Joint2 第2関節軸
Actuator1 第1油圧アクチュエータ
Actuator2 第2油圧アクチュエータ
10 油圧アクチュエータ
11 油圧シリンダ
12 制御弁
13 スプール
14 キャップ側の油圧室
15 ロッド側の油圧室
16 ピストン
20 試験機
21 マニピュレータ本体
22 油圧ユニット
23 油圧配管
24、25 圧力センサ
26 ポテンショメータ(ポジションセンサ)
27 温度センサ
28 差動トランス
29 制御装置
30 AD変換器
31 制御計算機
32 DA変換器
100 パラメータ同定装置
Claims (3)
- 鉛直多関節油圧マニピュレータの非線形モデルを表す状態空間方程式に基づき、前記鉛直多関節油圧マニピュレータの体積弾性率および流量係数を含む未知のパラメータを同定するパラメータ同定法であって、
前記鉛直多関節油圧マニピュレータは、nを2以上の整数とすると、固定端リンクの側から、第1〜第n関節軸を順次介して第1〜第nリンクが直列に連結され、前記第1〜第n関節軸を中心として前記第1〜第nリンクをそれぞれ旋回させる第1〜第n油圧アクチュエータが取り付けられている開ループリンク構造のものであり、
前記状態空間方程式を式(1)で表し、
式(1)のxを次式で与え、
q2:第2関節軸の相対関節角度
p+1:第1油圧アクチュエータのシリンダのキャップ側圧力
p−1:第1油圧アクチュエータのシリンダのロッド側圧力
p+2:第2油圧アクチュエータのシリンダのキャップ側圧力
p−2:第2油圧アクチュエータのシリンダのロッド側圧力
us1:第1油圧アクチュエータのスプール変位
us2:第2油圧アクチュエータのスプール変位
式(1)のf0(x)、g0(x)を式(2)で与え、
前記鉛直多関節油圧マニピュレータの関節数nが3以上の場合には、
前記第1〜第(n−1)関節軸のそれぞれの相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、前記第n関節軸について前記ステップ1を実行して線形方程式を導出し、
kを1〜(n−1)までの整数とすると、第(k+1)関節軸の相対関節間角度を最小値に固定し、k関節軸および第k、第(k+1)関節以外の各関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、k関節軸について前記ステップ2を実行して線形方程式を導出し、
第(k+1)関節軸の相対関節間角度を最大値に固定し、第k、第(k+1)関節軸以外の各関節軸の相対関節間角度を任意の角度に固定した状態で、第k関節軸について前記ステップ3を実行して線形方程式を導出し、
前記第1ステップ、および、前記第(n−1)〜第1関節軸のそれぞれについて前記ステップ2、3を実行することによって得られる(2n−1)組の線形方程式について、前記ステップ4を実行して正規方程式を導出して当該正規方程式を解く
ことを特徴とする鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定法。 - 請求項1に記載のパラメータ同定法を用いた鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定装置であって、
前記ステップ1〜3のそれぞれを実行するために前記鉛直多関節油圧マニピュレータを駆動する駆動制御部と、
前記ステップ1〜3のそれぞれにおける各時刻t=1、・・・、tN毎に、相対関節間角度q、キャップ側圧力p+およびロッド側圧力p−の測定値が入力される入力部と、
前記測定値および前記鉛直多関節油圧マニピュレータの既知パラメータを記憶保持する記憶部と、
前記測定値および前記既知パラメータに基づき、前記の式(4)を計算して、前記の式(3)の未知パラメータを算出する演算部と、
を有していることを特徴とする鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定装置。 - 請求項1に記載のパラメータ同定法を用いた鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定用プログラムであって、コンピュータを、
前記ステップ1〜3のそれぞれを実行するために、前記鉛直多関節油圧マニピュレータを駆動制御する駆動制御手段、
前記ステップ1〜3のそれぞれにおける各時刻t=1、・・・tN毎に、相対関節間角度q、キャップ側圧力p+およびロッド側圧力p−の測定値を取得する入力手段、
前記測定値および前記鉛直多関節油圧マニピュレータの既知パラメータを記憶保持する記憶手段、および、
前記測定値および前記既知パラメータに基づき、前記の式(4)を計算して、前記の式(3)の未知パラメータを算出する演算手段、
として機能させることを特徴とする鉛直多関節油圧マニピュレータのパラメータ同定用プログラム。
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