バッテリなどの蓄電器から給電されるモータを有し、ペダルに加えられる踏力からなる人力駆動力をトルクセンサにより検出し、人力駆動力に対応したモータの補助駆動力(アシスト力)を加えることで、上り坂等でも楽に走行できる電動アシスト自転車は既に知られている。
この電動アシスト自転車において、モータなどが内蔵されたモータ駆動ユニットを、クランク軸が設けられている箇所に配設したものがある。このような配置構成の電動アシスト自転車は、重量が比較的大きいモータ駆動ユニットが、電動アシスト自転車の前後方向中央(すなわち、前輪と後輪との間の中間)の低い位置に配置される。したがって、この配置構成の電動アシスト自転車は、モータが前輪のハブや後輪のハブに内蔵されているものと比較して、前輪や後輪を持ち上げ易くて、走行路に段差があっても容易に乗り越えることができるなど、車体の取り回しがよく、また、走行安定性も良好である。
この種の電動アシスト自転車に設けられるモータ駆動ユニットとしては、大別して、図12に示すように、クランク軸101の一端部近傍箇所に配設された人力駆動力出力輪体としての駆動スプロケット(前スプロケットや大ギヤとも称せられる)102とは別に、モータからの補助駆動力を出力する補助駆動力出力スプロケット103を備えた、いわゆる二軸式とも称せられるモータ駆動ユニット100と、図13、図14に示すように、踏力による人力駆動力とモータによる補助駆動力とがモータ駆動ユニット200の内部で合成され、合成された合力が駆動スプロケット201から出力されるいわゆる一軸式とも称せられるモータ駆動ユニット200とがある。
前記二軸式のモータ駆動ユニット100は、例えば特許文献1等に開示されており、図12に示すように、補助駆動力出力スプロケット103が、モータ駆動ユニット100における駆動スプロケット102よりも後方の箇所から、モータ駆動ユニット100のユニットケース104より外側に突出された状態で配設されている。そして、人力駆動力が出力される駆動スプロケット102と補助駆動力が出力される補助駆動力出力スプロケット103とのそれぞれが、無端状駆動力伝達体としてのチェーン105に噛み合わされており、チェーン105によって人力駆動力と補助駆動力が合成されて後輪側に伝達される。
補助駆動力出力スプロケット103のさらに後方には、補助駆動力出力スプロケット103に噛み合った後のチェーン105に噛み合って下方に案内するテンショナ装置(ガイド装置とも称せられる)106が配設されている。そして、このテンショナ装置106に設けられたテンションスプロケット107により、補助駆動力出力スプロケット103に噛み合うチェーン105の巻き角度を増加させている。
一方、いわゆる一軸式のモータ駆動ユニット200は、例えば特許文献2等に開示されており、図13、図14に示すように、ペダルからの人力駆動力が伝達されるクランク軸202の外周に、セレーション結合などにより前記人力駆動力が伝達される筒状の人力伝達体203と、この人力伝達体203を介して伝達された人力駆動力とモータ204からの補助駆動力とが合成される合力体205とを配設している。そして、人力伝達体203からの人力駆動力が一方向クラッチ206を介して合力体205に伝達されるよう構成している。また、合力体205の一端部には、モータ204からの補助駆動力が減速機構207を介して伝達される大径歯車部205aが形成され、合力体205の他端部には、無端状駆動力伝達体としてのチェーン208に噛み合わされる駆動力出力輪体としての駆動スプロケット201が取り付けられている。そして、合力体205において合成された合力が駆動スプロケット201からチェーン208を介して後輪側に伝達される。
図13、図14に示すように、一軸式のモータ駆動ユニット200はチェーン208に駆動スプロケット201だけを噛み合わせて、人力駆動力と補助駆動力とを合成した合力をチェーン208に伝達する方式である。これに対して、二軸式のモータ駆動ユニット100は、図12に示すように、チェーン105に、人力駆動力を伝達する駆動スプロケット102と、補助駆動力を伝達する補助駆動力出力スプロケット103と、さらに、テンションスプロケット107とを噛み合わせる必要がある。
このため、一軸式のモータ駆動ユニット200は、モータ204や減速機構207などの配置を工夫することで、モータ駆動ユニット200の側面視した状態での面積(横方向からの投影面積)を、二軸式のモータ駆動ユニット100の面積よりも小さくできる(コンパクト化できる)利点がある。また、いわゆるフロント変速機を装着しようとした場合に、一軸式のモータ駆動ユニット200は、駆動スプロケット201を多段にすることで容易に装着することができる。一方、二軸式のモータ駆動ユニット100は、チェーン105に駆動スプロケット102と補助駆動力出力スプロケット103とテンションスプロケット107とを噛み合わせる必要があるので、フロント変速機を装着することは困難である。
さらに、一軸式のモータ駆動ユニット200は、テンションスプロケット107などのテンショナ装置106を設けなくて済む利点もある。また、電動アシスト自転車に用いられるブレーキ装置として、一般の自転車と同様に、ハンドルに取り付けたブレーキレバーを操作することで制動されるリムブレーキ、バンドブレーキ、またはローラブレーキなどが用いられる場合が多いが、地域によって、または運転者の要望などにより、ペダルを前進走行時の回転方向とは逆方向に回転することにより制動されるコースターブレーキを後輪に取り付けることが望まれる場合がある。この場合には、ペダルを逆方向に回転した際に、チェーンの下側部分を前方に引張るような張力が作用するので、二軸式のモータ駆動ユニット100では、テンショナ装置106として特別の工夫が必要となる。これに対して、一軸式のモータ駆動ユニット200では、そのような特別の工夫を必要としない利点もある。
ところで、このような利点を有する一軸式のモータ駆動ユニット200においては、クランク軸202からの人力駆動力が伝達される人力伝達体203の外周面とその対向部分に、人力駆動力を検出する磁歪式のトルクセンサ209が設けられる場合が多い。すなわち、人力伝達体203の外周面に磁歪発生部209bが形成されているとともに、この磁歪発生部209bに対向するように、磁歪発生部209bでの磁気の変動を検出するコイル209aが配設されている。そして、左右のペダルを踏み込んだ際にクランク軸202が踏力(人力駆動力)により捩れるため、クランク軸202からの人力駆動力が伝達される人力伝達体203の捩れ状態を、前記トルクセンサ209により検出している。
また、特許文献2に開示されているモータ駆動ユニット200においては、クランク軸202に外嵌されてクランク軸202と同じ回転数で回転する合力体205の回転を検知する回転センサ220らしきものが、明細書には記載されていないが、図示されている。このように、合力体205の回転、ひいてはクランク軸202の回転を検出する回転センサ220を設けると、ペダル8が踏み込まれて回転されていることを検知できる。なお、前記回転センサ220に代えて、クランク軸の回転を検知する回転センサを磁歪式のトルクセンサの近傍に配設することも可能であり、この構成によれば、クランク軸の回転を検出することができる。ここで、回転センサにより、クランク軸や合力体205の回転を検出する方法としては、クランク軸や合力体205に、極性の異なる磁石を周方向に複数埋め込んだ回転体を取り付けるなどして、回転に伴う極性の反転を回転センサにより検出することが考えられる。
しかしながら、図14に示すような従来の一軸式のモータ駆動ユニット200では、回転センサ220により、クランク軸202と同じ回転数で回転する合力体205の回転を検知するように構成されているため、合力体205やクランク軸202の回転状態を比較的低い精度(低い分解能)でしか読み取れない。したがって、合力体205に、周方向に極性の異なる磁石を複数埋め込んだ回転体を取り付けるなどして、回転に伴う極性の反転を回転センサにより検出する場合には、磁石による極数を極めて多くしないと、回転状態の分解能を高めることができない。また、クランク軸に、周方向に極性の異なる磁石を複数埋め込んだ回転体を取り付けて回転状態を検出する場合にも同様の課題を生じてしまう。
また、合力体205や、クランク軸に取り付けた回転体に、多数の磁石を埋め込むと、トルクセンサ209近傍の磁界が乱れる恐れがあり、トルク検出時のノイズとなって、トルクセンサ209の検出能力が低下するおそれがある。
また、この種の一軸式のモータ駆動ユニットでは、電子部品や制御基板などからなる制御部を、両側方に突出するクランク軸を避けた領域である、減速機構の側方などに配設する場合が多い(但し、特許文献2では図示されていない)。しかし、合力体205の近傍や、クランク軸に取り付けた回転体の近傍に、回転センサを配設する場合には、回転センサが設けられる箇所やその近傍箇所に、回転センサを制御するための基板を、前記制御部とは別個に配設する必要があり、製造コストの増加を招くことになる。
本発明は上記課題を解決するもので、クランク軸の回転状態を高い精度で(高分解能で)検出することができ、かつ、トルクの検出能力を良好に維持することができる、一軸式のモータ駆動ユニットを備えた電動アシスト自転車を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は、モータを備えたモータ駆動ユニットが前輪と後輪との間の中間位置に配設され、ペダルからの踏力による人力駆動力に、モータにより発生する補助駆動力を加えて走行可能である電動アシスト自転車であって、ペダルからの人力駆動力が伝達されるクランク軸の外周に、前記人力駆動力が伝達されて、前記人力駆動力を検出するためのトルクセンサの磁歪発生部が形成された筒状の人力伝達体が配設され、前記クランク軸の外周に、前記人力伝達体を介して伝達された人力駆動力とモータからの補助駆動力とが合成される合力体が配設され、前記合力体により人力駆動力と補助駆動力とが合成されてなる合力が、クランク軸と同軸心の駆動力出力輪体と、この駆動力出力輪体に掛け渡された無端状駆動力伝達体とを介して、後輪に伝達されるよう構成され、モータと合力体とにわたる補助駆動力の伝達経路に、複数の減速用歯車部を有して、モータからの回転を減速して前記合力体に伝達する減速機構が配設され、前記減速機構に、前記クランク軸よりも大きい回転数で前記クランク軸と連動して回転される回転体が配設され、前記回転体の回転を検出する回転検出器が設けられ、前記モータ駆動ユニットにおける前記減速機構の側方に、制御基板を有するとともに当該モータ駆動ユニットを制御する制御部が配設され、モータ駆動ユニットに、減速機構が配設されている領域と、制御部が設けられている領域とを仕切る仕切カバーが設けられ、仕切カバーに孔部が設けられ、前記回転検出器は、前記仕切カバーの孔部を通して、前記回転体に臨む姿勢で前記制御基板に取り付けられて、前記回転体の回転を検出するよう構成されていることを特徴とする。
この構成により、モータと合力体とにわたる補助駆動力の伝達経路に設けられた減速機構に、前記クランク軸よりも大きい回転数で前記クランク軸と連動して回転される回転体が配設され、前記回転体の回転を検出する回転検出器が設けられているので、クランク軸や人力伝達体に回転体を取り付けて回転を検出する場合よりも、高い精度(高い分解能)でクランク軸の回転状態を検出することができる。したがって、回転体に周方向に極性の異なる磁石を複数埋め込む場合でも、磁石による極数を多くしなくても、回転状態の分解能を高めることができる。また、回転体を前記クランク軸や前記人力伝達体ではなくて、前記減速機構に設けるため、前記人力伝達体に設けられているトルクセンサ近傍の磁界を乱す可能性を最小限に抑えることができて、トルクセンサの検出能力を良好に維持することができる。
また、前記モータ駆動ユニットにおける前記減速機構の側方に、制御基板を有するとともに当該モータ駆動ユニットを制御する制御部が配設され、前記回転検出器が、前記回転体に臨む姿勢で前記制御基板に取り付けられているので、回転体の回転状態を検出するための制御基板を、当該モータ駆動ユニットを制御する制御部に設けられる制御基板とは別途に設けなくても済む。
また、前記回転体は、減速用歯車支持軸に取り付けられていると好適であり、これにより、前記クランク軸よりも極めて大きい回転数で前記クランク軸に連動して回転する減速用歯車支持軸の回転状態を検出できるため、極めて高い精度(高い分解能)でクランク軸の回転状態を検出することができる。また、前記回転体を、クランク軸や人力伝達体から離れた減速用歯車支持軸に取り付けることにより、前記回転体に磁石を埋め込むなどした場合でも、前記人力伝達体に設けられているトルクセンサ近傍の磁界を乱す可能性を最小限に抑えることができる。
なお、減速用歯車支持軸と、モータの出力側歯車に噛み合う大径歯車部との間に、前記合力体側からの人力駆動力をモータ側に伝達しない人力駆動力切断用の一方向クラッチを配設してもよい。この構成により、バッテリの残容量が無くなった際にペダルを漕いで回転させた場合でも、前記人力駆動力切断用の一方向クラッチによって、モータを回転しなくても済み、ペダルに余分な力をかけなくて済む。
なお、前記回転検出器としては、前記トルクセンサとは別途の磁気センサを用いてもよいが、これに代えて、前記回転検出器として光センサを用いてもよい。
また、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に、一方向クラッチを配設せず、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体との相対的な回転方向にかかわらず、前記クランク軸の回転に伴って前記人力伝達体および前記合力体も回転されるよう構成してもよい。
この構成によれば、クランク軸の回転が常に回転体に連動して伝達されるため、クランク軸の回転を常に良好に検出することができる。また、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に一方向クラッチが配設されていると、トルクセンサの磁歪発生部が設けられている人力伝達体に、一方向クラッチに起因する振動が伝わるおそれがあるが、上記のように前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に一方向クラッチが配設されていないことにより、人力伝達体に一方向クラッチに起因する振動が伝わることがなく、トルク(人力駆動力)を良好に検出することができる。また、人力伝達体に一方向クラッチを組付ける必要がないため、人力伝達体の材料として広い範囲のものから選択できて、トルクの検出能力が高くなる材料を用いることができる。
また、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に、一方向クラッチを配設しない場合において、トルクの変動状態と、回転検出器で検出した出力信号に基づいて、クランク軸の回転方向に対する位置に対応するペダルの位置を推測可能な制御部を備えたことを特徴とする。すなわち、この構成においては、ペダルが組みつけられているクランク軸と、チェーンなどの無端状駆動力伝達体が掛けられる駆動力出力輪体が取り付けられている合力体との間に一方向クラッチが設けられていないため、ペダルと、クランク軸、人力伝達体、合力体の回転方向に対する相対位置が変動しない。したがって、制御部により、クランク軸、人力伝達体、合力体の回転位置と、トルクの変動状態とから、ペダルの位置などを推測することができる。
したがって、例えば、変速が指示された際に変速タイミングを調整可能な変速機を備え、変速が指示された際に、制御部によりペダルに作用する踏力が小さくなると推測されるタイミングで変速させてもよい。この構成により、変速が指示された際に、変速タイミングとして好ましい、ペダルに作用する踏力が小さくなるタイミング(例えば、ペダルが上死点や下死点に位置するタイミング)で、搭乗者の足への負担を最小限に抑えながら良好に変速させることができる。
また、本発明は、ペダルを前進走行時の回転方向と逆方向に回転させた際に作動するコースターブレーキが後輪のハブに配設されていることを特徴とする。このように、コースターブレーキが後輪のハブに配設されている場合でも、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に、一方向クラッチが配設されておらず、クランク軸の回転が合力体に必ず伝達されるので、ペダルを前進走行時と逆方向に回転させた際にはこの回転がコースターブレーキに良好に伝達されて、コースターブレーキを良好に作動させることができる。
なお、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に、モータ側からの補助駆動力をクランク軸側に伝達しないようにする補助駆動力切断用の一方向クラッチを配設してもよく、この場合には、前記一方向クラッチが接続されている状態では、前記クランク軸の回転状態を検出することができる。
また、本発明は、モータと合力体と減速機構と制御部とがモータ駆動ユニット内に組み込まれ、モータと制御部とが側面視して重なり、かつ幅方向の互いに反対側に配設されていることを特徴とする。
この構成により、モータ駆動ユニットの側面視した状態での面積(横方向からの投影面積)を、一軸式のモータ駆動ユニットとして特に小さくできる(コンパクト化できる)。また、モータと制御部とはモータ駆動ユニットにおいて幅方向の反対側に配設したので、制御部がモータの熱の影響を受け難くなり、良好な信頼性を保持することができる。
本発明によれば、モータと合力体とにわたる補助駆動力の伝達経路に設けられた減速機構に、前記クランク軸よりも大きい回転数で前記クランク軸と連動して回転される回転体を配設し、前記回転体の回転を検出する回転検出器を設けることにより、高い精度(高い分解能)でクランク軸の回転状態を検出することができる。したがって、回転体に周方向に極性の異なる磁石を複数埋め込む場合でも、磁石による極数を多くしなくても、回転状態の分解能を高めることができ、製造コストの増加を抑えることができる。また、回転体を前記クランク軸や前記人力伝達体ではなくて、前記減速機構に設けるため、前記人力伝達体に設けられているトルクセンサ近傍の磁界を乱す可能性を最小限に抑えることができて、トルクセンサの検出能力を良好に維持することができて信頼性が向上する。
また、前記モータ駆動ユニットにおける前記減速機構の側方に、制御基板を有するとともに当該モータ駆動ユニットを制御する制御部を配設し、前記回転検出器を、前記回転体に臨む姿勢で前記制御基板に取り付けることにより、回転体の回転状態を検出するための制御基板を、当該モータ駆動ユニットを制御する制御部に設けられる制御基板とは別途に設けなくても済み、製造コストの増加を抑えることができる。
また、前記回転体を、減速用歯車支持軸に取り付けることにより、極めて高い精度(高い分解能)でクランク軸の回転状態を検出することができるとともに、前記回転体に磁石を埋め込むなどした場合でも、前記人力伝達体に設けられているトルクセンサ近傍の磁界を乱す可能性を最小限に抑えることができて、信頼性が向上する。
また、減速用歯車支持軸と、モータの出力側歯車に噛み合う大径歯車部との間に、前記合力体側からの人力駆動力をモータ側に伝達しない人力駆動力切断用の一方向クラッチを配設することにより、バッテリの残容量が無くなった際にペダルを漕いで回転させた場合でも、前記人力駆動力切断用の一方向クラッチによって、モータを回転しなくても済み、ペダルに余分な力をかけなくて済む。
また、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体とにわたる駆動力の伝達経路に、一方向クラッチを配設せず、前記クランク軸と前記人力伝達体と前記合力体との相対的な回転方向にかかわらず、前記クランク軸の回転に伴って前記人力伝達体および前記合力体も回転されるよう構成することにより、クランク軸の回転が常に回転体に連動して伝達されるため、クランク軸の回転を常に良好に検出することができる。また、人力伝達体に、一方向クラッチに起因する振動が伝わることがなく、トルク(人力駆動力)を良好に検出することができる。また、人力伝達体の材料として広い範囲のものから選択できて、トルクの検出能力が高くなる材料を用いることができる。
また、制御部により、クランク軸、人力伝達体、合力体の回転位置と、トルクの変動状態とから、ペダルの位置などを推測することができる。また、変速が指示された際に変速タイミングを調整可能な変速機を備え、変速が指示された際に、制御部によりペダルに作用する踏力が小さくなると推測されるタイミングで変速させることにより、変速タイミングとして好ましいタイミングで、搭乗者の足への負担を最小限に抑えながら良好に変速させることができる。
また、減速用歯車支持軸と、モータの出力側歯車に噛み合う大径歯車部との間に、前記合力体側からの人力駆動力をモータ側に伝達しない人力駆動力切断用の一方向クラッチを配設することにより、バッテリの残容量が無くなった際にペダルを漕いで回転させた場合でも、前記人力駆動力切断用の一方向クラッチによって、モータを回転しなくても済み、ペダルに余分な力をかけなくて済む。また、モータの回転状態にかかわらず、クランク軸の回転を常に良好に検出することができる。
また、モータと合力体と減速機構と制御部とがモータ駆動ユニット内に組み込まれ、モータと制御部とを側面視して重なり、かつ幅方向の互いに反対側に配設することで、モータ駆動ユニットの側面視した状態での面積(横方向からの投影面積)を、一軸式のモータ駆動ユニットとして特に小さくできる(コンパクト化できる)とともに、制御部がモータの熱の影響を受け難くなって、良好な信頼性を保持することができる。
以下、本発明の実施の形態に係る電動アシスト自転車について図面に基づき説明する。なお、以下の説明における左右方向および前後方向とは、進行方向に向って当該電動アシスト自転車1に搭乗した状態での方向を言う。また、この発明の構成が以下で述べる構成に限定されるものではない。
図1、図2における1は本発明の実施の形態に係る電動アシスト自転車である。図1、図2などに示すように、この電動アシスト自転車1は、ヘッドパイプ2a、前フォーク2b、メインパイプ2c、立パイプ2d、チェーンステー2e、シートステー2fなどからなる金属製のフレーム2と、前フォーク2bの下端に回転自在に取り付けられた前輪3と、チェーンステー2eの後端に回転自在に取り付けられた後輪4と、前輪3の向きを変更するハンドル5と、サドル6と、踏力からなる人力駆動力がかけられるクランク7およびペダル8と、補助駆動力(アシスト力)を発生させる駆動源としての電動のモータ21(図4参照)およびこのモータ21を含めた各種の電気的制御を行う制御部24(図4参照)などが設けられたモータ駆動ユニット20と、モータ21に駆動用の電力を供給する二次電池からなるバッテリ12と、ハンドル5などに取り付けられて、搭乗者などが操作可能な手元操作部(図示せず)と、クランク軸7aと同軸心で一体的に回転するように取り付けられ、人力駆動力および補助駆動力が合わされた合力を出力する駆動力出力輪体としての駆動スプロケット(前スプロケット、クランクスプロケットや前ギヤとも称せられる)13と、後輪4のハブ(後ハブとも称する)9に取り付けられた後部輪体としての後スプロケット(後ギヤとも称せられることがある)14と、駆動スプロケット13と後スプロケット14とにわたって回転可能な状態で無端状に巻回された無端状駆動力伝達体としてのチェーン15と、チェーン15などを側方から覆うチェーンカバー17と、などを備えている。なお、バッテリ12は蓄電器の一例であり、二次電池が好適であるが、蓄電器の他の例としてはキャパシタなどであってもよい。なお、クランク7は、左右にそれぞれ設けられるクランクアーム7bと、左右のクランクアーム7b同士を連結するクランク軸7aとからなり、クランクアーム7bの端部にペダル8が回転自在に取り付けられている。
図1、図2に示すように、この電動アシスト自転車1においても、モータ駆動ユニット20が、クランク軸7aの略後方など、前輪3と後輪4との間の中間位置(より詳しくは中間位置の下部)に配置されている。そして、このような配置構成にすることで、重量が比較的大きいモータ駆動ユニット20が、電動アシスト自転車1の前後方向中央に配置されるため、前輪3や後輪4を持ち上げ易くて、走行路に段差があっても容易に乗り越えることができるなど、電動アシスト自転車1の車体(フレーム2など)の取り回しがよく、また、走行安定性も良好となる。
図3(a)および(b)はモータ駆動ユニット20の右側面図および左側面断面図(駆動スプロケット13は省いている)、図4はモータ駆動ユニット20の平面横断面図である。
図3(a)、(b)、図4に示すように、モータ駆動ユニット20は、モータケース22a、左側ケース22b、右側ケース22cからなるユニットケース22により外殻部などが構成され、モータ駆動ユニット20の前部をクランク軸7aが左右に貫通している。また、クランク軸7aの外周に、クランク軸7aからの人力駆動力が伝達される略筒状の人力伝達体28と、この人力伝達体28を介して伝達された人力駆動力とモータ21からの補助駆動力とを合成する合力体29とが配設されている。さらに、ユニットケース22の前後方向中央部に、減速用歯車36などを有する減速機構25が配設され、ユニットケース22内の後部左側にモータ21が配設され、ユニットケース22内の後部右側に、各種の電気的制御を行う電子部品が設けられた制御基板24aや各種情報の記憶部などを有する制御部24が配設されている。なお、39は、減速機構25(詳しくは、後述する減速用歯車36の大径歯車部36d)などが配設されている領域と、制御部24が設けられている領域とを仕切る仕切カバー(油避けカバー)である。
モータ駆動ユニット20についてより詳しく述べると、図4などに示すように、クランク軸7aが、モータ駆動ユニット20の前部を左右に貫通した状態で軸受26、27により回転自在に配設され、このクランク軸7aにおける左側寄り部分の外周に、セレーション部(またはスプライン部)7cを介して、筒状の人力伝達体28が一体的に回転する状態で嵌め込まれている。なお、人力伝達体28の内周におけるクランク軸7aのセレーション部(またはスプライン部)7cに対応する箇所にもセレーション部(またはスプライン部)28bが形成されてクランク軸7aのセレーション部(またはスプライン部)7cと噛み合っている。
人力伝達体28の外周表面には、磁気異方性を付与した磁歪発生部31bが形成されているとともに、その外周に一定の隙間(空間)を介してコイル31aが配設され、これらの磁歪発生部31bおよびコイル31aにより磁歪式のトルクセンサ(人力検知部)31が構成されている。これにより、クランク軸7aからの人力駆動力が人力伝達体28に伝達されるとともに、トルクセンサ31により人力駆動力が検出される。また、この磁歪式のトルクセンサ31では、磁歪発生部31bが、人力伝達体28の軸心方向に対して例えば+45度と−45度とをなす螺旋形状に形成されており、人力伝達体28に人力駆動力が伝達されると人力伝達体28の表面の磁歪発生部31bに歪みが発生して透磁率の増加部分と減少部分とが発生するため、コイル31aのインダクタンス差を測定することでトルク(人力駆動力)の大きさを検出できるよう構成されている。なお、この実施の形態では、上記構成により、クランク軸7aが反対方向に回転されたことをも検出可能に構成されているがこれに限るものではない。
また、人力駆動力と補助駆動力とを合成するための合力体29は、クランク軸7aの外周における人力伝達体28の右側に隣接した箇所で、クランク軸7aに対しては回転自在の状態で配設されているが、人力伝達体28の右端部外周に形成されたセレーション部(またはスプライン部)28aと、合力体29の左端部内周に形成されたセレーション部(またはスプライン部)29aとが嵌合されている。なお、この実施の形態では、人力伝達体28のセレーション部(またはスプライン部)28aに、合力体29の左端部内周に形成されたセレーション部(またはスプライン部)29aが外嵌されている。このように、クランク軸7aと人力伝達体28との間、および人力伝達体28と合力体29との間(すなわち、クランク軸7aと人力伝達体28と合力体29との間の力の伝達経路)には、一方向クラッチ(補助駆動力切断用の一方向クラッチ)が設けられておらず、この結果、クランク軸7aに伝達された人力駆動力が人力伝達体28から合力体29に伝達されて、これらのクランク軸7aと人力伝達体28と合力体29とが常に一体的に回転するよう構成されている。
さらに、図4に示すように、モータ駆動ユニット20における合力体29の左寄り箇所外周には、モータ21からの補助駆動力を入力するための大径歯車部29bが一体形成されている。また、合力体29の右端部外周には駆動スプロケット13が嵌め込まれて、合力体29と駆動スプロケット13とは一体的に回転する。なお、合力体29に外嵌された軸受27により、クランク軸7aが合力体29を介して回転自在に支持されている。なお、合力体29とクランク軸7aとの間に薄肉の軸受などを配設してもよい。
モータ21は軸受32、33によりその回転軸21aおよびロータ部21bが回転自在に支持されている。また、モータ21の回転軸21aが右側方に突出され、この突出部の外周に歯部21cが形成されている。減速機構25は、減速用歯車36を介することにより、モータ21の回転を減速させるとともに回転トルク(補助駆動力)が増幅されて合力体29の大径歯車部29bに伝達するよう構成されている。
ここで、減速用歯車36の支持軸(減速用歯車支持軸)には、軸受34、35により回転自在に支持された減速用歯車小径支持軸部(減速用歯車支持軸の一例であり、以下、単に小径支持軸部と略す)36aと、これよりも大径の減速用歯車大径支持軸部(減速用歯車支持軸の他の例であり、以下、単に大径支持軸部と略す)36bとが一体形成されている。また、小径支持軸部36aの外周に、小径支持軸部36aとは別体の減速用小径歯車部(減速用歯車部の一例であり、以下、単に小径歯車部と略す)36cが、圧入またはセレーション部(あるいはスプライン部)などを介して、一体的に回転するように組みつけられている。そして、小径歯車部36cが合力体29の大径歯車部29bに噛み合わされている。一方、減速用歯車36の大径支持軸部36bの外周に減速用大径歯車部(減速用歯車部の他の例であり、以下、単に大径歯車部と略す)36dが配設されているとともに、この大径歯車部36dがモータ21の回転軸21aの歯部21cに噛み合わされているが、減速用歯車36における大径支持軸部36bと大径歯車部36dとの間には、合力体29からの回転駆動力をモータ21側に伝達しないための、人力駆動力切断用の一方向クラッチ37が配設されている。
この一方向クラッチ37は、走行中にある程度の補助駆動力が出力されるなど、モータ出力(補助駆動力)に基づく減速用歯車36の大径歯車部36dの内周部分が、これに対向する大径支持軸部36bの外周部分に対して、相対的に駆動スプロケット13を前進させる方向に回転する場合(すなわち、減速用歯車36の大径歯車部36dの内周の前進方向への回転数が、これに対向する大径支持軸部36bの外周の前進方向への回転数よりも大きい場合)には、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された補助駆動力を、そのまま大径支持軸部36bに伝達するように動作する。そして、補助駆動力が、小径支持軸部36aと小径歯部36cとを介して、合力体29の大径歯車部29bに伝達される。これにより、合力体29において、人力駆動力と補助駆動力とが合成され、これらの合成された合力が、駆動スプロケット13から、チェーン15を介して、後輪4に伝達される。
一方、バッテリ12の残容量が無くなって、モータ21から補助駆動力が出力されない状態でペダル8を漕いだ場合など、モータ出力(補助駆動力)に基づく減速用歯車36の大径歯車部36dの内周部分が、これに対向する大径支持軸部36bの外周部分に対して、相対的に駆動スプロケット13を前進させる方向とは逆方向に回転する場合(減速用歯車36の大径歯車部36dの内周の前進方向への回転数が、これに対向する大径支持軸部36bの外周の前進方向への回転数よりも小さい場合)には、減速用歯車36の大径歯車部36dに伝達された補助駆動力が一方向クラッチ37により切断されて、大径支持軸部36bに伝達されないよう構成されている。
これにより、バッテリ12の残容量が無くなって、モータ21から補助駆動力が出力されない状態でペダル8を漕いだ場合などには、人力駆動力によって小径歯車部36cおよび小径支持軸部36aや大径支持軸部36bは回転されるが、大径歯車部36dやモータ21の回転軸21aおよびロータ部21bは回転されない。
さらに上記構成に加えて、図4、図5に示すように、減速用歯車36の支持軸(減速用歯車支持軸)、より詳しくは、減速用歯車支持軸における大径支持軸部36bの右端部外周には、大径支持軸部36bの回転を検出するための回転体11が取り付けられている。また、この回転体11の後端部箇所に右側方から臨む姿勢で、磁気センサからなる回転検出器10が設けられている。減速用歯車36の小径歯車部36cは、これに噛み合う合力体29の大径歯車部29bの歯数の1/4〜1/5とされており、これに伴って、大径支持軸部36bを含む減速用歯車支持軸や回転体11は、クランク軸7aや人力伝達体28、合力体29に連動しながら、クランク軸7aよりも大きい回転数、この実施の形態ではクランク軸7aの4〜5倍の回転数で回転する。そして、回転体11の右側面の外周部近傍箇所には、周方向に対して交互に極性が入れ替わるように、極性の異なる磁石11aが周方向に複数埋め込まれている。また、図3(b)、図4、図5に示すように、回転検出器10は、制御部24に配設されており、制御部24の制御基板24aに取り付けられている。
なお、この実施の形態では、仕切カバー(油避けカバー)39における回転検出器10と回転体11との間の箇所に孔部39aが形成されて連通されており、磁石11aによる極性の変動状態を良好に検出できるよう構成されている。しかし、これに限るものではなく、回転検出器10と回転体11との間で磁気を遮らない材料で、仕切カバー(油避けカバー)39の全体または一部を形成してもよい。
また、この電動自転車1では、後輪4のブレーキ装置として、ブレーキレバーを操作することにより作動するブレーキシューを前輪のリムに押し付けるリムブレーキや、後輪のバンドブレーキやローラブレーキなどは設けられていない。そして、これらのブレーキ装置の代わりに、後ハブ9(図2参照、但し、実際には、図2に示す後スプロケット14の向こう側に後ハブ9が設けられている)に、ペダル8を前進走行時の回転方向と逆方向に回転することにより後輪4が制動される、図6に示すようなコースターブレーキ60が設けられている。なお、前輪3のブレーキ装置としては、ブレーキレバーを操作することによりそれぞれ作動するキャリパーブレーキやリムブレーキを設けてもよいし、設けなくてもよい(図1においては前輪3のブレーキ装置を設けていない場合を示している)。
図6は、コースターブレーキ60が設けられている後輪4のハブ(後ハブ)9の分解斜視図、図7、図8は、それぞれ後ハブの断面図である。この実施の形態では、JIS(日本工業規格)D9419に規定する自転車用コースターハブ機構Bタイプの「ローラークラッチ駆動式」のコースターブレーキ60が用いられており、後ハブ9の外郭部をなして後輪4と一体的に回転するハブ本体の内部にコースターブレーキ60が配設されている。
図6〜図9に示すように、コースターブレーキ60は、後輪4のハブ軸67に回転自在に外嵌され、その一端側(図6における右端側)外周に後スプロケット14が一体的に回転するように固定され、その他端側(図6における左端側)に図7、図8に示すような突部61a、大径カム面61bおよび小径カム面61cが周方向適当間隔ごとに形成された駆動体61と、外周寄り部分において周方向適当間隔ごとにローラ62が配設されているとともに軸方向に沿って図6における左側に突出するカム部63aを有するカム台63と、カム台63のカム部63aにその傾斜カム部64aが係合するとともにテーパ面64bを有するエキスパンダー64と、径方向に拡縮可能で後ハブ9の内周面に摺接可能なブレーキシュー65と、ブレーキシュー65を外側に移動可能なテーパ面66aを有するブレーキコーン66となどから構成されている。
そして、ペダル8が通常の走行方向(前進走行時の回転方向、正方向とも称す)に回転されると、チェーン15および後スプロケット14などを介して、駆動体61が図7において示すg方向に回転され、これに伴い、ローラ62が駆動体61の大径部61bにより外側に押圧される。この結果、ローラ62が、駆動体61と、後ハブ9のハブ本体との間に強く圧接された状態で挟持され、これによって、駆動体61とともに前記ハブ本体が一体化されて、後輪4全体も回転される。なお、この際、カム台63のカム部63aはエキスパンダー64の傾斜カム部64aにおける軸方向に対して薄い厚み部分に当接している状態となり、エキスパンダー64は図6において右側寄りに位置するため、エキスパンダー64のテーパ面64bがブレーキシュー65に当接せず、ブレーキシュー65も拡径されずに後ハブ9の内周面から離反されている。
一方、ペダル8が前進走行時の回転方向と逆方向に回転されて、チェーン15を介して、後スプロケット14が逆方向に回転された場合には、図8に示すように、駆動体61が後スプロケット14と同方向であるh方向に回転され、これにより、ローラ62の箇所では、駆動体61の小径カム面61cに当接してハブ本体の内周面からは隙間を有する状態となる。しかしながら、駆動体61のh方向への回転により、ローラ62を介して、カム台63がh方向に回転されると、カム台63のカム部63aに傾斜カム部64aで当接しているエキスパンダー64が図6における左側に移動される。これにより、ブレーキシュー65が、エキスパンダー64のテーパ面64bとブレーキコーン66のテーパ面66aとにより両側から押圧されて拡径して、後ハブ9のハブ本体の内周面に強く押圧され、この結果、後ハブ9を介して後輪4が制動される。
なお、走行中にペダル8が停止されて、チェーン15を介して、後スプロケット14の回転が停止された場合には、駆動体61が図7に示すようなg方向に回転される力がなくなるため、図8に示すように、ローラ62は、駆動体61の小径カム面61c側に寄って後ハブ9の内周面から隙間を有する状態となる。また、駆動体61が回転されないため、カム台63も回転されず、これにより、エキスパンダー54は図6において右側寄りに位置した状態のままとなり、エキスパンダー64のテーパ面64bがブレーキシュー65に当接せず、ブレーキシュー65も拡径されずに後ハブ9の内周面から離反される。この結果、後ハブ9が回転している状態であっても、後ハブ9の回転力は、駆動体61や後スプロケット14には伝達されず、これらの間にフリーホイール(一方向クラッチ機構やラチェット機構)を配設した場合のように、空回り状態となって惰性走行状態が維持される。
なお、この実施の形態では、コースターブレーキ60として、「ローラークラッチ駆動式」のものを用いた場合を述べたが、これに限るものではなく、これに代えて、「テーパーコーン駆動式」のコースターブレーキや、「多板式」のコースターブレーキを用いてもよい。
上記構成において、前進走行時にペダル8を踏み込むと、このペダル8にかけられた踏力に基づく人力駆動力が、クランク軸7aから人力伝達体28を介して合力体29に伝達され、前記人力駆動力が、人力伝達体28に設けられたトルクセンサ31により検出される。そして、前記人力駆動力に対応する補助駆動力が減速機構25の減速用歯車36などを介して、合力体29に伝達され、合力体29で合わされた合力が、駆動スプロケット13から、チェーン15を介して、後輪4に伝達される。これにより、人力駆動力に対応したモータ21の補助駆動力(アシスト力)を加えることで、上り坂等でも楽に走行できる。
一方、走行中に搭乗者がペダル8を漕ぐことを止めると、これに伴ってクランク軸7aおよび合力体29の回転も停止するため、この停止状態が回転検出器10により検出され、モータ21が直ぐに停止または制動される。これにより、モータ21からの補助駆動力がペダル8に作用することを防止できて、ペダル8に余分な力をかけなくて済む。
また、走行中に搭乗者がペダル8を逆方向に回転させると、これに伴ってクランク軸7a、人力伝達体28および合力体29を介して駆動スプロケット13も逆方向に回転され、この動作がチェーン15を介して後ハブ9が設けられているコースターブレーキ60に伝達されて、コースターブレーキ60が作動する。
また、これらの動作において、従来の一軸式のモータ駆動ユニットでは、トルクセンサが取り付けられている人力伝達体や合力体の端部に一方向クラッチが設けられていたため、一方向クラッチの切替動作時の振動やカム部の噛み合い動作や乗越え動作時の振動が直接に人力伝達体や合力体の端部に伝達されて、トルク検出時のノイズとなって、トルクの検出能力が低下するおそれがあった。また、このように、トルクの検出能力が低下すると、トルク値に対する高度な制御を行い難くなったり、トルク値に対する素早い制御が行い難くなったりするおそれもあった。また、コースターブレーキを後輪のハブに設けようとしても、ペダルを前進走行時と逆方向に回転させた際に、ペダルの回転が駆動スプロケットやチェーンに伝達できないため、コースターブレーキに対応することができなかった。
これに対して、本発明の実施の形態では、クランク軸7aと人力伝達体28と合力体29とにわたる駆動力の伝達経路に一方向クラッチが全く配設されていないので、人力伝達体28にトルクセンサ31の磁歪発生部31bが設けられていても、人力伝達体28に一方向クラッチに起因する振動が伝わることがない。これにより、トルク(人力駆動力)を良好に検出することができて、電動アシスト自転車1の信頼性が向上する。また、人力伝達体28に一方向クラッチを組付ける必要がないため、人力伝達体28の材料をとして広い範囲のものから選択できて、トルクの検出能力が高くなる材料を用いることができる。これにより、トルクをより良好に検出できるトルクセンサ31の磁歪発生部31bを用いることができる。
また、上記構成によれば、走行中にペダル8を漕ぐことを停止したり、逆方向に回転したりした際には、この動作がトルクセンサ31や回転検出器10により検出されて、モータ21が直ぐに停止または制動されるよう構成されている。これにより、モータ21からの補助駆動力がペダル8に作用することを防止するようになっている。
また、上記構成によれば、コースターブレーキ60が後輪4のハブ9に配設されている場合でも、クランク軸7aと人力伝達体28と合力体29とにわたる駆動力の伝達経路に一方向クラッチが全く配設されておらず、ペダル8およびクランク軸7aの回転が合力体29に必ず伝達されるので、ペダル8を前進走行時と逆方向に回転させた際にはこの回転がコースターブレーキ60に良好に伝達されて、コースターブレーキ60を良好に作動させることができる。
また、上記構成においては、モータ21と合力体29とにわたる補助駆動力の伝達経路に設けられた減速機構25に、クランク軸7aよりも大きい回転数でクランク軸7aと連動して回転する回転体11を配設し、この回転体11の回転を回転検出器10で検出するよう構成している。特に、本実施の形態では、クランク軸7aに連動してクランク軸7aの4〜5倍の回転数で回転する減速用歯車支持軸(大径支持軸部36b)に取り付けた回転体11の回転を、回転検出器10で検出するよう構成している。これにより、クランク軸7aや人力伝達体28に回転体11を取り付けて回転を検出する場合よりも、4〜5倍の高い精度(高い分解能)でクランク軸7aの回転状態を良好に検出することができる。
また、上記のように回転体11に周方向に極性の回転体に周方向に極性の異なる磁石11aを複数埋め込む場合でも、磁石11aの極数を多くしなくても(磁石11aの数を増加させなくても)、回転状態の分解能を高めることができ、製造コストの増加を抑えることができる。また、回転体11を減速用歯車支持軸(大径支持軸部36b)に取り付けたことにより、トルクセンサ31から回転体11を離れた位置に配設できる。この結果、人力伝達体28に設けられているトルクセンサ31の近傍の磁界を乱す可能性を最小限に抑えることができて、トルクセンサ31の検出能力を良好に維持することができて信頼性が向上する。
また、上記実施の形態では、モータ駆動ユニット20における減速機構25の側方に、制御基板24aを有するとともに当該モータ駆動ユニット20を制御する制御部24を配設し、回転検出器10を、回転体11に臨む姿勢で制御基板24aに取り付けている。この構成により、回転体11の回転状態を検出するための制御基板を、当該モータ駆動ユニット20を制御する制御部24に設けられる制御基板24aとは別途に設けなくても済んで、制御基板24aの中に組み込むことができ、製造コストの増加を抑えることができる。
また、上記構成において、合力体29、人力伝達体28やクランク軸7aの回転を検出する回転検出器10を設けて、制御部24により、合力体29、人力伝達体28やクランク軸7aが正方向(当該電動アシスト自転車1が前進する方向)に回転していることを検出した場合は、一時的に力を抜いて走行した場合や、ペダル8が上死点や下死点位置となって踏み込む力が一時的に弱くなるなどしてトルクが変動した場合でも、補助駆動力の変動を抑えるように制御してもよい。この構成によれば、走行している際での補助駆動力の変動を抑えることができて、乗り心地の向上を図ることができる。
また、上記構成においては、ペダル8が組みつけられているクランク軸7aと、駆動スプロケット13が取り付けられている合力体29との間に一方向クラッチが設けられていないため、ペダル8と、クランク軸7a、人力伝達体28、合力体29の回転方向に対する相対位置が変動しない。また、クランク軸7aの回転数と減速用歯車支持軸(大径支持軸部36b)に取り付けた回転体11の回転数とは一定の割合である。したがって、制御部24により、減速用歯車支持軸(大径支持軸部36b)に取り付けた回転体11の回転数(回転量)に基づくクランク軸7a、人力伝達体28、合力体29の位置と、トルクの変動状態とから、ペダル8の位置などを推測することが可能であり、これにより、各種の制御を行ってもよい。
例えば、当該電動アシスト自転車1として、複数の変速段を有し、変速が指示された際に変速タイミングを調整可能な変速機を備えた構造とするとともに、制御部24により、トルクの変動状態と、回転検出器10で検出した出力信号に基づいて、合力体29の回転方向に対する位置に対応するペダル8の位置などを推測し、変速が指示された際に、変速タイミングとして好ましい、ペダル8に作用する踏力が小さくなるタイミング(例えば、ペダル8が上死点や下死点に位置するタイミング)で変速させてもよい。この構成によれば、変速が指示された際に、搭乗者の足への負担を最小に抑えることができると同時に良好に変速できる。
また、上記構成においては、モータ21と合力体29とにわたる補助駆動力の伝達経路に、複数の減速用歯車部としての小径歯車部36cおよび大径歯車部36dと、これらの小径歯車部36cおよび大径歯車部36dを支持する減速用歯車支持軸としての小径支持軸部36aおよび大径支持軸部36bとを有する減速機構25の減速用歯車36を配設している。そして、この実施の形態では、大径歯車部36dと大径支持軸部36bとの間に、合力体29側からの人力駆動力をモータ21側に伝達しない人力駆動力切断用の一方向クラッチ37を配設している。
これにより、バッテリ12の残容量が無くなって、モータ21から補助駆動力が出力されない状態でペダル8を漕いだ場合などには、人力駆動力によって小径歯車部36cおよび小径支持軸部36aや大径支持軸部36bは回転されるが、大径歯車部36dやモータ21の回転軸21aおよびロータ部21bは回転されず、ペダル8に余分な力をかけなくて済む(いわゆる引きずり抵抗を極めて減少させることができる)。また、モータ21の回転状態にかかわらず、クランク軸7aの回転を常に良好に検出することができる利点もある。
また、本実施の形態では、図3に示すように、側面視して、モータ21と制御部24とがほぼ重なるように配置したので、モータ駆動ユニット20の側面視した状態での面積(横方向からの投影面積)を、一軸式のモータ駆動ユニット20として特に小さくできる(コンパクト化できる)利点がある。そして、モータ21と制御部24とはモータ駆動ユニット20において正面視や平面視して幅方向の反対側に配設した(モータ21を左側、制御部24を右側に配設した)ので、制御部24がモータ21の熱の影響を受け難くなり、良好な信頼性を保持することができる。
なお、上記実施の形態では、後ハブ9にコースターブレーキ60が設けられている場合を述べたが、これに限るものではない。すなわち、コースターブレーキ60に代えて、ブレーキ装置として、一般の自転車と同様に、ハンドル5に取り付けたブレーキレバー70(図9参照)を操作することで制動されるリムブレーキ、バンドブレーキ、またはローラブレーキなどを設けた場合にも、上記実施の形態のモータ駆動ユニット20を用いてもよい。なお、この場合には、後輪4の回転力をチェーン15に伝達しないペダル停止時用の一方向クラッチを後輪4のハブ9に配設して、下り坂などの前進走行時において、ペダル8が回転しないよう構成してもよい。
なお、上記実施の形態では、フロント変速機が装着されておらず、駆動スプロケット13が1つ(1段)である場合を述べたが、これに限るものではなく、大小の駆動スプロケットを備えたフロント変速機を装着してもよい。
また、上記実施の形態では、クランク軸7aと人力伝達体28と合力体29とにわたる駆動力の伝達経路に一方向クラッチが配設されていない場合を述べたが、これに限るものではなく、クランク軸7aと人力伝達体28と合力体29とにわたる駆動力の伝達経路に、モータ21側からの補助駆動力をクランク軸7a側に伝達しないようにする補助駆動力切断用の一方向クラッチ38を配設してもよい。例えば、図10に示すように、クランク軸7aに対して回転自在の状態で外嵌するとともに人力伝達体28に、セレーション部(またはスプライン部)28a、40bを介して係合する中間筒体40を設け、この中間筒体40と合力体29との間に、補助駆動力切断用の一方向クラッチ38を配設している。すなわち、この一方向クラッチ38は、中間筒体40からの前進方向への人力駆動力は合力体29に伝達するが、合力体29からの前進方向への補助駆動力は中間筒体40を介してクランク軸7aやペダル8側に伝達されないよう構成されている。また、この電動アシスト自転車では、搭乗者がペダル8を漕ぐことを止めても、しばらくの間だけ、モータ21が回転し続けるように、いわゆる遅れ制御を行うが、前記一方向クラッチ38により補助駆動力を切断させて、クランク軸7aやペダル8が勝手に回転し続けることが阻止されている。
この実施の形態においても、搭乗者がペダル8を漕いでいる状態では、前記一方向クラッチ38が接続されているため、この状態では、回転体11の回転状態に基づいてクランク軸7aの回転状態を検出することができる。したがって、この構成においても、回転検出器10からの情報により、クランク軸7aが正方向(当該電動アシスト自転車1が前進する方向)に回転していることを検出した場合は、一時的に力を抜いて走行した場合や、ペダル8が上死点や下死点位置となって踏み込む力が一時的に弱くなるなどしてトルクが変動した場合でも、補助駆動力の変動を抑えるように制御することが可能であり、走行している際での補助駆動力の変動を抑えることができて、乗り心地の向上を図ることができる。ただし、前記一方向クラッチ38が切断された場合には、クランク軸7aと合力体29との相対位置はずれるため、ペダル8の位置を推測することはできない。
また、上記実施の形態においては、回転検出器10として、磁気センサを用いた場合を述べたが、これに限るものではなく、回転検出器10として、光センサを用いてもよい。例えば、図11に示すように、出射部10aと受光部10bとを隣接させた光センサからなる回転検出器10を横方向(詳しくは、後述する回転体11の歯部11bの回転方向)に2つ並べる。また、大径支持軸部36bに取り付ける回転体11に、くし(櫛)歯状に外周方向に延びる歯部11aを設ける。そして、回転体11の歯部11aに反射した光を受ける場合と、歯部11a間の溝部11cで光が反射しない場合との信号に基づいて、回転体11、ひいては、大径支持軸部36bやクランク軸7aの回転状態や回転方向を検出するよう構成してもよい。また、これに代えて、光を透過させて検出する出射部と受光部とを設けてもよい。