JP6225915B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子 - Google Patents

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
発光型の電子ディスプレイデバイスとして、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)がある。ELDの構成要素としては、無機エレクトロルミネッセンス素子(無機EL素子)や有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が挙げられる。
無機EL素子は、平面型光源として使用されてきたが、発光素子を駆動させるためには交流の高電圧が必要である。
一方、有機EL素子は、発光する化合物を含有する発光層を、陰極と陽極とで挟んだ構成を有し、発光層に電子および正孔を注入して、再結合させることにより励起子(エキシトン)を生成させ、このエキシトンが失活する際の光の放出(蛍光・リン光)を利用して発光する素子である。数V〜数十V程度の電圧で発光が可能であり、さらに自己発光型であるために視野角に富み、視認性が高く、薄膜型の完全固体素子であるために省スペース、携帯性等の観点から注目されている。
また、有機EL素子は、従来実用に供されてきた主要な光源、たとえば、発光ダイオードや冷陰極管と異なり、面光源であることも大きな特徴である。この特性を有効に活用できる用途として、照明用光源や様々なディスプレイのバックライトがある。特に近年、需要の増加が著しい液晶フルカラーディスプレイのバックライトとして用いることも好適である。
通常、有機EL素子をこのような照明用光源あるいはディスプレイのバックライトとして用いる場合には、白色、もしくは、いわゆる電球色(以下、総合して白色と称す。)を呈する光源として用いることになる。あるいは、青、緑、赤、さらには、それらの中間色等任意の発光色を呈するパネルを作製し、照明光源として用いることもできる。
照明の分野においては、近年、いわゆるデザイン照明の領域のみならず、一般のインテリア照明の領域においても調色機能を有する照明光源が求められてきており、有機EL素子を照明用光源として用いる場合にも、このような機能が付与されていることが好ましい。
ところで、一般に、有機EL素子は、陽極/有機発光層/陰極からなる層構成を基本とし、これに正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層等の層を適宜設けることによって構成されている。
このような構成からなる有機EL素子は、一般的に輝度と駆動寿命とがトレードオフの関係になることが知られている。そのため、このトレードオフの関係を改善するべく、有機材料、有機層構成、素子駆動方法等様々な視点から検討が加えられてきた。
そして、有機層構成の観点から、このトレードオフ関係を改善する技術として、少なくとも有機材料を用いて構成された発光層を含む1層以上からなる発光機能層群を一つの発光ユニットとし、中間層を介して複数の発光ユニットを積層することにより、輝度を維持しつつ長寿命化を図る、あるいは駆動寿命を大きく損なうことなく高輝度で発光させ得る、素子構造が提案されている。
この素子構造においては、駆動方法は大きく二つの方式に大別される。一つは中間層を電気的にフローティング状態で駆動させる方式、もう一つは中間層を外部電源に接続し、いわゆる中間電極として機能させ、発光ユニットごとに直接電圧を印加し駆動させる方式である。
後者の方式においては、輝度と駆動寿命とのトレードオフ関係を改善することができるのみでなく、たとえば、各発光ユニットを異なる発光色のユニットとすれば、発光ユニットごとに輝度を調整できることから、調色可能な有機EL素子を作製することができる。
このような中間電極を有する有機EL素子としては、たとえば、下記特許文献1〜4において各構成が開示されている。
「特許文献1」、「特許文献2」には、中間電極材料としてITO(Indium Tin Oxide)を用いる構成が開示されている。
ITOは、透明性が高く、有機EL素子の中間電極として用いるには好ましい特性を有している。その成膜方法としては、一般にスパッタ法が用いられているが、当該成膜方法では、有機層に損傷を与え、有機EL素子の性能を損なう危険がある。そのため、有機層とITO電極間に金属薄膜層を設けたり、スパッタ成膜速度を極力遅くする等、有機層の損傷を回避もしくは低減する方法が考案されてはいるが、層構成、製造プロセスが複雑になったり、製造コストが上昇する等の問題がある。
「特許文献3」には、仕事関数3eV以下の金属またはその化合物と仕事関数4eV以上の化合物とを含む電荷発生層を有する有機EL素子が開示されている。「仕事関数4eV以上の化合物」は、金属材料ではないため金属材料ほどの導電性は有しておらず、中間電極としての機能を発現するには、その導電性は全く不十分である。また、電荷発生層は、外部電源と接続されたものではない。
「特許文献4」には、仕事関数が4.2eV以下の金属と仕事関数が4.2eVより大きい金属とを有機化合物に混合した電極層、もしくは上記各金属を有機化合物に混合した各層を積層した電極層を有する有機EL素子が開示されている。該電極層は、電荷発生層、もしくは、より高導電性の電極に隣接する層として用いることを想定していると考えられ、また、有機化合物を含有することから、その導電性は金属単体からなる層より低く、その導電性は全く不十分である。
欧州特許第0715803号明細書 米国特許第5707745号明細書 特開2007−242601号公報 特開2011−040412号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、ITOに代わる光透過性、導電性に優れた中間電極を有することで、発光効率、駆動電圧および保存安定性に優れた調色可能な有機EL素子を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、下部電極と上部電極との間に、少なくとも二つの発光ユニットと、外部電源と電気的に接続される少なくとも一つの中間電極と、を有し、発光ユニット間に中間電極が配置され、中間電極のうち少なくとも一つが、仕事関数3eV以下の金属からなる第1金属層と、第1金属層に隣接した仕事関数4eV以上の金属からなる第2金属層と、から構成され、かつ、第1金属層の層厚と第2金属層の層厚とを足し合わせた総層厚が15nm以下であり、第1金属層が、中間電極と中間電極に対向する電極との間に電圧を印加した際、第2金属層に対し、陽極となる電極側に設けられている有機EL素子により、上記課題を改善できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明にかかる上記課題は、以下の手段により解決される。
1.下部電極と上部電極との間に、少なくとも二つの発光ユニットと、外部電源と電気的に接続される少なくとも一つの中間電極と、を有し、前記発光ユニット間に前記中間電極が配置され、少なくとも二つの前記発光ユニットがそれぞれ独立して発光可能である有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
前記中間電極が、平面方向に導電性を有し、
前記中間電極のうち少なくとも一つが、仕事関数3eV以下の金属からなる第1金属層と、前記第1金属層に隣接した仕事関数4eV以上の金属からなる第2金属層と、から構成され、かつ、前記第1金属層の層厚と前記第2金属層の層厚とを足し合わせた総層厚が15nm以下であり、
前記第1金属層が、前記中間電極と前記中間電極に対向する電極との間に電圧を印加した際、前記第2金属層に対し、陽極となる前記電極側に設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.前記1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第1金属層の層厚が、3nm以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第2金属層の層厚が、10nm以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記1〜3のいずれか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第2金属層には、銀が含有されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.前記1〜4のいずれか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記第1金属層には、リチウムまたはカルシウムが含有されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
6.前記1〜5のいずれか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記中間電極を挟んで位置する前記発光ユニットの発光色が互いに異なることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
7.前記1〜6のいずれか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
前記下部電極と前記上部電極との間に、少なくとも三つの前記発光ユニットと、外部電源に接続される少なくとも二つの前記中間電極と、を有し、前記発光ユニット間に前記中間電極が配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
8.前記1〜7のいずれか一に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
複数の前記発光ユニットからの発光の混色により白色発光することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
本発明の上記手段によれば、光透過性、導電性に優れた中間電極を有することで、発光効率、駆動電圧および保存安定性に優れた調色可能な有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の有機EL素子を組み込んだ照明装置の一例を示す概略図である。 本発明の有機EL素子を組み込んだ照明装置の一例を示す断面図である。
本発明の有機EL素子は、下部電極と上部電極との間に、少なくとも二つの発光ユニットと、外部電源と電気的に接続される少なくとも一つの中間電極と、を有し、発光ユニット間に中間電極が配置され、中間電極のうち少なくとも一つが、仕事関数3eV以下の金属からなる第1金属層と、第1金属層に隣接した仕事関数4eV以上の金属からなる第2金属層と、から構成され、かつ、第1金属層の層厚と第2金属層の層厚とを足し合わせた総層厚が15nm以下であり、第1金属層が、中間電極と中間電極に対向する電極との間に電圧を印加した際、第2金属層に対し、陽極となる電極側に設けられていることを特徴とする。
本発明の有機EL素子は、照明装置に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、および本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。
なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用する。
《有機EL素子の層構成》
本発明の有機EL素子の層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(I)下部電極/第1発光ユニット/中間電極/第2発光ユニット/上部電極
(II)下部電極/第1発光ユニット/第1中間電極/第2発光ユニット/第2中間電極/第3発光ユニット/上部電極
(III)下部電極/第1発光ユニット/第1中間電極/第2発光ユニット/第2中間電極/第3発光ユニット/第3中間電極/第4発光ユニット/上部電極
(I−1)下部電極/白色発光ユニット/中間電極/白色発光ユニット/上部電極
(I−2)下部電極/青色発光ユニット/中間電極/緑・赤色発光ユニット/上部電極
(I−3)下部電極/緑・赤色発光ユニット/中間電極/青色発光ユニット/上部電極
(II−1)下部電極/青色発光ユニット/第1中間電極/青色発光ユニット/第2中間電極/緑・赤色発光ユニット/上部電極
(II−2)下部電極/青色発光ユニット/第1中間電極/緑色発光ユニット/第2中間電極/赤色発光ユニット/上部電極
(II−3)下部電極/緑色発光ユニット/第1中間電極/赤色発光ユニット/第2中間電極/青色発光ユニット/上部電極
本発明において、発光ユニット数としては2以上であれば特に制限はないが、生産効率を鑑みると、2〜10が好ましく、2〜4がより好ましい。発光ユニット数をN(Nは2以上の整数)とすると、本発明にかかる中間電極数はN−1である。
以下、本発明の有機EL素子の一例として、上記構成(I)からなる有機EL素子について説明する。
図1に示すとおり、有機EL素子1は、支持基板2上に、下部電極4、発光ユニット6、中間電極8、発光ユニット10、上部電極12が順次積層され、構成されている。
中間電極8は、金属層8aと金属層8bとを有している。
有機EL素子1は、対向する電極を独立して駆動可能となっている。
たとえば、下部電極4が陽極、中間電極8が陰極となるように電圧を印加した場合には、発光ユニット6を独立して発光させることができる。
なお、この場合には、金属層8aは、仕事関数3eV以下の金属から構成され、金属層8bは、仕事関数4eV以上の金属から構成されている。
これとは別に、中間電極8が陽極、上部電極12が陰極となるように電圧を印加した場合には、発光ユニット10を独立して発光させることができる。
また、中間電極8が陰極、上部電極12が陽極となるように構成してもよく、この場合には、金属層8bの上部電極12側に、さらに、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層(図示略)が設けられる。
すなわち、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層は、仕事関数4eV以上の金属からなる金属層の一方の面のみに設けてもよいし、その両面に設けてもよい。
また、発光ユニットの層構成の好ましい具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されない。
(i)正孔注入輸送層/発光層/電子注入輸送層
(ii)正孔注入輸送層/第1発光層/第2発光層/電子注入輸送層
(iii)正孔注入輸送層/第1発光層/中間層/第2発光層/電子注入輸送層
(iv)正孔注入輸送層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層
(v)正孔注入輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子注入輸送層
(vi)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
(vii)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層
(viii)正孔注入層/正孔輸送層/電子阻止層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層
本発明において、各層を形成する方法としては、たとえば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(ラングミュア−ブロジェット法)、インクジェット法、スプレー法、印刷法、スロット型コータ法等の公知の薄膜形成法により成膜して形成することができる。
本発明においては、発光ユニット内の発光層にリン光発光材、蛍光発光材を混在させてもよいが、好ましくはリン光発光材または蛍光発光材のみで構成することが好ましい。
本発明においては、蛍光発光層およびリン光発光層は、ホスト−ドーパント型の発光層であることが好ましい。
また、発光層に含有される発光ドーパントは、発光層の層厚方向に対し、均一な濃度で含有されていてもよく、また濃度分布を有していてもよい。
また、本発明においては、各発光ユニットは構成の異なるものを組み合わせて使用することができるが、発光ユニットを構成する発光層を除いて、同一の層、材料を用いた構成であることが好ましく、さらには発光層数も同一であることが好ましい。この場合には、生産上、使用材料数を少なくできコスト面、品質管理面でメリットがあり、さらには蒸着プロセスであれば成膜チャンバーを各発光ユニットで共通化し易い等、生産効率面のメリットも享受できる。
上記理由より、白色発光ユニットを積層する場合には、発光層を含む全層の構成、材料が同じであることがなお好ましい。
また、異なる発光色を呈する発光ユニットを積層する場合には、これら発光ユニットが相互に補色の関係にあることが好ましい。たとえば、青色発光ユニットと、補色となる黄緑色、黄色またはオレンジ色の発光色を呈する発光ユニットとを設けることで、白色発光を得ることができる。
なお、「補色」の関係とは、混合すると無彩色になる色同士の関係をいう。つまり、補色の関係にある色を発光する物質の発光を混合すると、白色発光を得ることができる。
高演色性の白色発光が得られ、より幅広い範囲の色度の調整が容易であることから、青色発光層に加え、緑色および赤色の発光色を呈する層が、いずれかの発光ユニットに設けられていることが好ましい。
また、青、緑、赤の発光材料を一つの発光層中に混在させ、白色発光を呈する発光層として、発光ユニットに設けることもできる。
本発明においては、中間電極を挟んで位置する発光ユニットの発光色が異なり、各発光ユニットを独立に駆動させることにより、発光色を変化させることを可能とした有機EL素子であることが、広範な照明用途に応用できることから好ましい。
また、少なくとも二つの中間電極と少なくとも三つの発光ユニットとを有する構成であることが、発光色の変調範囲を拡大できることからより好ましい。
さらには、各発光ユニットからの発光の混色により、白色発光を可能とした有機EL素子であることが、一般照明に適した白色光を含めて発光色を可変できることから好ましい。
本発明の有機EL素子や化合物の発光する色は、「新編色彩科学ハンドブック」(日本色彩学会編、東京大学出版会、1985)の108頁の図4.16において、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)で測定した結果をCIE色度座標に当てはめたときの色で決定される。
本発明においては、光色の黒体輻射軌跡からの偏差Duvが、相関色温度2500〜7500Kの範囲内において、−20〜+20の範囲内に含まれる光を白色光と呼ぶものとする。Duv(=1000duv)の定義は、JIS Z 8725:1999「光源の分布温度および色温度・相関色温度測定方法」による。
本発明における各発光ユニットに包含される個々の発光層の層厚は、特に制限はないが、形成する膜の均質性や、発光時に不必要な高電圧を印加するのを防止し、かつ、駆動電流に対する発光色の安定性向上の観点から、5〜200nmの範囲内に調整することが好ましく、さらに好ましくは10〜100nm以下の範囲内に調整される。
《中間電極》
本発明にかかる中間電極は、外部電源と電気的に接続されており、少なくとも一つの中間電極が、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層と、該層に隣接して仕事関数4eV以上の金属からなる金属層と、を有し、かつ、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層の層厚と仕事関数4eV以上の金属からなる金属層の層厚とを足し合わせた総層厚が15nm以下であり、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層が、中間電極と中間電極に対向する電極との間に電圧を印加した際、仕事関数4eV以上の金属からなる金属層に対して、陽極となる電極側に設けられている。
仕事関数3eV以下の金属からなる金属層を、仕事関数4eV以上の金属からなる金属層の陽極となる電極側に隣接して設けることにより、駆動電圧を低下することができ、また、中間電極の導電性を高めることができる。さらに、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層のみで中間電極を形成した場合と比較して、良好な保存安定性を得ることができる。
中間電極の層厚は、5〜10nmの範囲内であることが好ましい。
中間電極の層厚が10nm以下である場合には、金属材料の光学吸収による損失が小さく、発光効率の低下を抑制することができる。また、中間電極の層厚が5nm以上である場合には、中間電極の平面方向の導電性が高くなり、電極としての機能をより発揮することができる。
本発明においては、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層の層厚が3nm以下であることが良好な保存安定性を有することから好ましく、1.5nm以下であることがさらに好ましい。
また、仕事関数4eV以上の金属からなる金属層の層厚が10nm以下であることが、高発光効率が得られることから好ましい。
なお、本発明における「中間電極の層厚」とは、中間電極の単位面積当たりの成膜質量を材料の密度で除して求められる「平均層厚」として定義される。したがって、中間電極のある部分が「平均層厚」より厚くても、あるいは逆に薄くなっていても構わない。
仕事関数3eV以下の金属としては、カルシウム(仕事関数2.87eV、融点1112.2K)、リチウム(同2.9eV、同453.7K)、ナトリウム(同2.75eV、同371K)、カリウム(同2.3eV、同336.9K)、セシウム(同2.14eV、同301.6K)、ルビジウム(同2.16eV、同312.1K)、バリウム(同2.7eV、同998.2K)またはストロンチウム(同2.59eV、同1042.2K)が挙げられるが、中でも常圧での融点が400K以上であり、有機EL素子の高温環境下での性能を損なうおそれが小さく、かつ容易に入手可能なリチウムまたはカルシウムが好ましい。
仕事関数4eV以上の金属としては、アルミニウム(仕事関数4.28eV)、銀(同4.26eV)等が挙げられるが、中でも、光吸収による損失が少なく、反射率が高いことから、銀を用いることが好ましい。
中間電極に隣接する層は、上部電極側に位置する発光ユニットと下部電極側に位置する発光ユニット間で、中間電極を介して、各発光ユニットからの電荷の授受、各発光ユニットへの電荷の注入を容易に行える機能を有することが望ましい。
このような機能を有する層として、電荷輸送性を高めるため、たとえば、電荷輸送性有機材料と、該有機材料を酸化もしくは還元できる、あるいは該有機材料と電荷移動錯体を形成しうるような無機材料、有機金属錯体等とをドーピングした混合層を形成することもできる。あるいは、低仕事関数のアルカリ原子またはアルカリ土類原子を含有するアルカリ化合物またはアルカリ土類化合物の薄層を設けることもできる。
本発明においては、仕事関数3eV以下の金属からなる金属層に対し、仕事関数4eV以上の金属からなる金属層とは反対側で隣接する層に、ピリジン環を有する化合物が含有されていることが、これら金属層の膜均質性、膜安定性を高める上で好ましい。
ピリジン環を有する化合物が含有されている層を仕事関数3eV以下の金属からなる金属層に隣接させることによる上記効果の由来は未だ定かではないが、ピリジン環と金属原子との静電相互作用により金属原子のマイグレーションが抑制され、成膜時に均一な膜ができやすく、また、熱による膜質変動が起きにくい等の要因が考えられる。
《発光層》
以下、発光層に含まれるホスト化合物およびドーパントについて説明する。
(1)リン光ホスト化合物
本発明に用いられるリン光ホスト化合物としては、構造的には特に制限はないが、代表的にはカルバゾール誘導体、トリアリールアミン誘導体、芳香族ボラン誘導体、含窒素複素環化合物、チオフェン誘導体、フラン誘導体、オリゴアリーレン化合物等の基本骨格を有するもの、カルボリン誘導体やジアザカルバゾール誘導体(ここで、ジアザカルバゾール誘導体とは、カルボリン誘導体のカルボリン環を構成する炭化水素環の少なくとも一つの炭素原子が窒素原子で置換されているものを表す。)等が挙げられる。
リン光ホスト化合物は、単独で用いてもよく、または複数種併用して用いてもよい。
本発明にかかるリン光発光層に用いられるリン光ホスト化合物としては、下記一般式(a)で表される化合物が好ましい。
Figure 0006225915
一般式(a)中、「X」は、NR′、O、S、CR′R″またはSiR′R″を表し、R′およびR″は各々水素原子または置換基を表す。「Ar」は芳香族環を表す。nは、0〜8の整数を表す。
一般式(a)における「X」において、R′およびR″で各々表される置換基としては、アルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(たとえば、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、1,3−ブタジエニル基、2−ペンテニル基、イソプロペニル基等)、アルキニル基(たとえば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素環基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、たとえば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基等)、芳香族複素環基(たとえば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(カンルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す。)、フタラジニル基等)、複素環基(たとえば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(たとえば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(たとえば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(たとえば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(たとえば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(たとえば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(たとえば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(たとえば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(たとえば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(たとえば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(たとえば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(たとえば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(たとえば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(たとえば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(たとえば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(たとえば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基、ヘテロアリールスルホニル基(たとえば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(たとえば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(たとえば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(たとえば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。
一般式(a)において、好ましい「X」はNR′またはOであり、R′としては芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基が特に好ましい。
一般式(a)において、「Ar」で表される芳香族環としては、芳香族炭化水素環または芳香族複素環が挙げられる。また、芳香族環は、単環、縮合環のいずれでもよく、さらに未置換でも、後述するような置換基を有していてもよい。
一般式(a)において、「Ar」で表される芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は、さらに置換基を有していてもよい。
一般式(a)において、「Ar」で表される芳香族複素環としては、たとえば、フラン環、ジベンゾフラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノリン環、イソキノリン環、フタラジン環、ナフチリジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つがさらに窒素原子で置換されている環を示す。)等が挙げられる。これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
上記の中でも、一般式(a)において、「Ar」で表される芳香族環として好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環、ジベンゾフラン環またはベンゼン環であり、特に好ましく用いられるのは、カルバゾール環、カルボリン環またはベンゼン環である。上記の中でも、置換基を有するベンゼン環が好ましく、特に好ましくは、カルバゾリル基を有するベンゼン環が好ましい。
また、一般式(a)において、「Ar」で表される芳香族環としては、下記に示すような、各々3環以上の縮合環が好ましい一態様であり、3環以上が縮合した芳香族炭化水素縮合環としては、具体的には、ナフタセン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、フェナントレン環、ピレン環、ベンゾピレン環、ベンゾアズレン環、クリセン環、ベンゾクリセン環、アセナフテン環、アセナフチレン環、トリフェニレン環、コロネン環、ベンゾコロネン環、ヘキサベンゾコロネン環、フルオレン環、ベンゾフルオレン環、フルオランテン環、ペリレン環、ナフトペリレン環、ペンタベンゾペリレン環、ベンゾペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピラントレン環、コロネン環、ナフトコロネン環、オバレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。なお、これらの環はさらに、置換基を有していてもよい。
また、3環以上が縮合した芳香族複素環としては、具体的には、アクリジン環、ベンゾキノリン環、カルバゾール環、カルボリン環、フェナジン環、フェナントリジン環、フェナントロリン環、カルボリン環、サイクラジン環、キンドリン環、テペニジン環、キニンドリン環、トリフェノジチアジン環、トリフェノジオキサジン環、フェナントラジン環、アントラジン環、ペリミジン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭素原子の任意の一つが窒素原子で置き換わったものを表す)、フェナントロリン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ナフトフラン環、ナフトチオフェン環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、ナフトジフラン環、ナフトジチオフェン環、アントラフラン環、アントラジフラン環、アントラチオフェン環、アントラジチオフェン環、チアントレン環、フェノキサチイン環、チオファントレン環(ナフトチオフェン環)等が挙げられる。なお、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
ここで、一般式(a)において、「Ar」で表される芳香族環が有してもよい置換基は、R′およびR″で、各々表される置換基と同義である。
また、一般式(a)において、nは、0〜8の整数を表すが、0〜2の整数であることが好ましく、特に「X」がOまたはSである場合には、1または2であることが好ましい。
以下、一般式(a)で表されるリン光ホスト化合物の具体例を示すが、これらに限定されるものではない。
Figure 0006225915
Figure 0006225915
Figure 0006225915
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Figure 0006225915
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Figure 0006225915
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また、本発明に用いるリン光ホスト化合物は、低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
リン光ホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ、発光の長波長化を防ぎ、高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。本発明においては、ガラス転移点が90℃以上の化合物が好ましく、さらには130℃以上の化合物が優れた特性を得られることから好ましい。
ここで、ガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Calorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS K 7121に準拠した方法により求められる値である。
従来公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が好適である。たとえば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
また、リン光ホスト化合物は、その最低励起3重項エネルギー(T)が、2.7eVより大きいことがより高い発光効率を得られることから好ましい。
本発明でいう最低励起3重項エネルギーとは、ホスト化合物を溶媒に溶解し、液体窒素温度において観測したリン光発光スペクトルの最低振動バンド間遷移に対応する発光バンドのピークエネルギーをいう。
(2)リン光発光ドーパント
本発明に用いることができるリン光発光ドーパントは公知のものの中から選ぶことができる。たとえば、元素の周期表で8族〜10族の金属を含有する錯体系化合物、好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物もしくは白金化合物(白金錯体系化合物)、または希土類錯体から選ぶことができる。中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明の有機EL素子を作製する場合には、少なくとも緑、黄、赤領域の発光を担う発光体としては、発光効率が高く長寿命な素子が得られることからリン光発光材料が好ましい。
(一般式(A)〜(C)で表される部分構造)
また、本発明に青色リン光発光ドーパントを用いる場合には、有機EL素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、下記一般式(A)〜(C)から選ばれる少なくとも一つの部分構造を有していることが好ましい。
Figure 0006225915
一般式(A)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」および「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。
Figure 0006225915
一般式(B)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」、「Rc」、「Rb」および「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。
Figure 0006225915
一般式(C)中、「Ra」は水素原子、脂肪族基、芳香族基または複素環基を表し、「Rb」および「Rc」は各々水素原子または置換基を表し、「A1」は芳香族環または芳香族複素環を形成するのに必要な残基を表し、「M」はIrまたはPtを表す。
一般式(A)〜(C)において、「Ra」で表される脂肪族基としては、アルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、2−エチル−ヘキシル基、オクチル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基)、シクロアルキル基(たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)が挙げられ、芳香族基としては、たとえば、フェニル基、トリル基、アズレニル基、アントラニル基、フェナントリル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、o−テルフェニル基、m−テルフェニル基、p−テルフェニル基、アセナフテニル基、コロネニル基、フルオレニル基、ペリレニル基等が挙げられ、複素環基としては、たとえば、ピロリル基、インドリル基、フリル基、チエニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、インドリジニル基、キノリニル基、カルバゾリル基、インドリニル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリダジニル基、チアジアジニル基、オキサジアゾリル基、ベンゾキノリニル基、チアジアゾリル基、ピロロチアゾリル基、ピロロピリダジニル基、テトラゾリル基、オキサゾリル基、クロマニル基等を挙げることができ、これらの基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
一般式(A)〜(C)において、「Rb」、「Rc」、「Rb」および「Rc」で表される置換基としては、アルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(たとえば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(たとえば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(たとえば、エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(たとえば、フェニル基、ナフチル基等)、芳香族複素環基(たとえば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、フタラジニル基等)、複素環基(たとえば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシル基(たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシル基(たとえば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(たとえば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(たとえば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(たとえば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(たとえば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(たとえば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(たとえば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(たとえば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(たとえば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(たとえば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(たとえば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(たとえば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(たとえば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(たとえば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(たとえば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基(フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(たとえば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基等)、ハロゲン原子(たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(たとえば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(たとえば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)等が挙げられる。これらの置換基は上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。
一般式(A)〜(C)において、「A1」で表される芳香族環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられ、芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(カルボリン環を構成する炭化水素環の炭素原子の一つがさらに窒素原子で置換されている環を示す)等が挙げられる。
一般式(A)〜(C)において、「M」はIr、Ptを表し、特にIrが好ましい。
一般式(A)〜(C)の構造は部分構造であり、それ自身が完成構造の発光ドーパントとなるには、中心金属の価数に対応した配位子が必要である。具体的には、ハロゲン(たとえば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アリール基(たとえば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等)、アルキル基(たとえば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基、メトキシメチル基、トリフルオロメチル基、t−ブチル基等)、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、芳香族複素環基(たとえば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、フタラジニル基等)、一般式(A)〜(C)の金属を除いた部分構造等が挙げられる。
また、一般式(A)〜(C)の部分構造3個で完成構造となるトリス体が好ましい。
以下、本発明にかかる青色リン光発光ドーパントの上記一般式(A)〜(C)の部分構造を持つ化合物を例示するが、これらに限定されるものではない。
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(3)蛍光発光ドーパント(蛍光性ドーパント、蛍光発光体等ともいう。)
蛍光発光ドーパントとしては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
《注入層:正孔注入層、電子注入層》
注入層は、必要に応じて設けることができ、陽極となる電極と発光層または正孔輸送層との間、および陰極となる電極と発光層または電子輸送層との間に存在させてもよい。
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために設ける層のことで、たとえば、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)にその詳細が記載されており、正孔注入層(陽極バッファー層)と電子注入層(陰極バッファー層)とがある。
正孔注入層(陽極バッファー層)としては、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニンバッファー層、酸化バナジウムに代表される酸化物バッファー層、アモルファスカーボンバッファー層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子バッファー層等が挙げられる。また、特表2003−519432号公報に記載されている材料を使用することも好ましい。
正孔注入層は、複数の材料を混合して用いてもよいが、本発明において、正孔注入層は単一の有機化合物を成膜することによって形成されることが好ましい。これは、複数の材料を混合して使用する場合には、混合比の生産時における変動、たとえば、成膜基板面内における濃度変動等による性能変動のリスクが高くなり好ましくない。
正孔注入層の層厚については特に制限はないが、通常は0.1〜100nm程度の範囲内、好ましくは1〜30nmの範囲内である。
電子注入層に好適な材料としては、電子輸送層と陰極となる上部電極または下部電極間に設ける電子注入層においては、仕事関数3eV以下のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の化合物が挙げられる。アルカリ金属化合物としては、具体的には、フッ化カリウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、酸化リチウム、リチウムキノリン錯体、炭酸セシウム等が挙げられ、フッ化リチウム、フッ化セシウムが好ましい。
電子注入層の層厚については特に制限はないが、通常は0.1〜10nm程度の範囲内、好ましくは0.1〜2nmの範囲内である。
《阻止層:正孔阻止層、電子阻止層》
阻止層は、必要に応じて設けられるものである。たとえば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、および「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では電子輸送層の機能を有し、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、正孔阻止層として用いることができる。
本発明の有機EL素子に設ける正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では正孔輸送層の機能を有し、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。
正孔阻止層、電子輸送層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲内であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲内である。
《正孔輸送層》
正孔輸送層とは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は、単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。たとえば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体およびピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、または導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては上記のものを使用することができるが、さらには、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物またはスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物およびスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD)、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼンまたはN−フェニルカルバゾール、さらには、米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、たとえば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、特開2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.著文献(Applied Physics Letters 80(2002),p.139)、特表2003−519432号公報に記載されているような、いわゆるp型半導体的性質を有するとされる正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層の層厚については、特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度の範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
この正孔輸送層は、上記材料の1種または2種以上からなる1層構造であってもよい。
《電子輸送層》
電子輸送層とは、電子を輸送する機能を有する材料からなる。電子輸送層は、単層または複数層設けることができる。
電子輸送層に用いられる電子輸送材料としては、陰極となる電極を介して注入された電子を発光層に伝達する機能を有していればよく、従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができ、たとえば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ビピリジル誘導体、フレオレニリデンメタン誘導体、カルボジイミド、アントラキノジメタンおよびアントロン誘導体、オキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送材料として用いることができる。さらに、これらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
本発明においては、中間電極に隣接して電子輸送層を設ける場合には、窒素含有有機化合物であることが好ましく、ピリジン環をその構造の中に包含する化合物であることがさらに好ましい。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、たとえば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、およびこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送材料として用いることができる。その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホ基等で置換されているものも、電子輸送材料として好ましく用いることができる。また、発光層の材料としても用いられるジスチリルピラジン誘導体も、電子輸送材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様に、n型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送材料として用いることができる。
電子輸送層には、複数の材料を混合して用いてもよい。アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物のドーピングを行うこともできる。しかしながら、本発明においては、電子輸送層は単一の有機化合物を成膜することによって形成されることが好ましい。これは、複数の材料を混合して使用する場合には、混合比の生産時における変動、たとえば、成膜基板面内における濃度変動等による性能変動のリスクが高くなり好ましくない。
電子輸送層に含まれる有機化合物のガラス転移温度は、110℃以上であることがより優れた高温保存性、高温プロセス安定性が得られることから好ましい。
電子輸送層の層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度の範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内である。
《支持基板》
本発明の有機EL素子に適用する支持基板(以下、基体、基板、基材、支持体等ともいう。)としては、ガラス、プラスチック等の種類には特に限定はなく、また、透明であっても不透明であってもよい。支持基板側から光を取り出す場合には、支持基板は透明であることが好ましい。好ましく用いられる透明な支持基板としては、ガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができる。特に好ましい支持基板は、有機EL素子にフレキシブル性を与えることが可能な樹脂フィルムである。
樹脂フィルムとしては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名、JSR社製)あるいはアペル(商品名、三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等を挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物、有機物の被膜またはその両者のハイブリッド被膜が形成されていてもよく、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された水蒸気透過度が0.01g/(m・24h)以下のバリア性フィルムであることが好ましく、さらには、JIS K 7126−1992に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度が1×10−3g/(m・24h)以下の高バリア性フィルムであることが好ましく、水蒸気透過度が1×10−5g/(m・24h)以下、酸素透過度が1×10−5ml/(m・24h・atm)以下であることがより好ましい。
バリア膜を形成する材料としては、水分や酸素など素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、たとえば、酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素等を用いることができる。さらに、バリア膜の脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機材料からなる層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア膜の形成方法については、特に限定はなく、たとえば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法などを用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載されているような大気圧プラズマ重合法によるものも好ましい。
不透明な支持基板としては、たとえば、アルミ、ステンレス等の金属板・フィルムや不透明樹脂基板、セラミック製の基板等が挙げられる。
《封止》
本発明の有機EL素子の封止に用いられる封止手段としては、たとえば、封止部材と、電極、支持基板とを接着剤で接着する方法を挙げることができる。
封止部材としては、有機EL素子の表示領域を覆うように配置されていればよく、凹板状でも、平板状でもよい。また、透明性、電気絶縁性は特に限定されない。
具体的には、ガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等が挙げられる。ガラス板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。金属板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブテン、シリコン、ゲルマニウムおよびタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
本発明においては、有機EL素子を薄膜化できるということからポリマーフィルム、金属フィルムを好ましく使用することができる。さらには、ポリマーフィルムは、酸素透過度1×10−3ml/(m・24h・atm)以下、水蒸気透過度1×10−3g/(m・24h)以下のものであることが好ましい。また、水蒸気透過度1×10−5g/(m・24h)以下、酸素透過度1×10−5ml/(m・24h・atm)以下であることがより好ましい。
封止部材を凹状に加工するのは、サンドブラスト加工、化学エッチング加工等が使われる。接着剤として、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化および熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステルなどの湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。また、エポキシ系などの熱および化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
なお、有機EL素子が熱処理により劣化する場合があるので、室温(25℃)から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。封止部分への接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
封止部材と有機EL素子の表示領域との間隙には、気相および液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体や、フッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また、真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、たとえば、金属酸化物(たとえば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(たとえば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(たとえば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、ヨウ化バリウム、ヨウ化マグネシウム等)、過塩素酸類(たとえば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物および過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
《保護膜、保護板》
素子の機械的強度を高めるために、上記封止用フィルムの外側に保護膜あるいは保護板を設けてもよい。特に、封止が上記封止膜により行われている場合には、その機械的強度は必ずしも高くないため、このような保護膜、保護板を設けることが好ましい。これに使用することができる材料としては、上記封止に用いたのと同様のガラス板、ポリマー板・フィルム、金属板・フィルム等を用いることができるが、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
《陽極》
有機EL素子における陽極(上部電極または下部電極)としては、仕事関数の大きい(4eV以上)金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが好ましく用いられる。このような電極物質の具体例としては、Au、Ag、Al等の金属、CuI、インジウムチンオキシド(ITO)、SnO、ZnO等の導電性透明材料が挙げられる。また、IDIXO(In−ZnO)等非晶質で透明導電膜を作製可能な材料を用いてもよい。
陽極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により、薄膜を形成させ、フォトリソグラフィー法で所望の形状のパターンを形成してもよく、あるいはパターン精度をあまり必要としない場合は(100μm以上程度)、上記電極物質の蒸着やスパッタリング時に所望の形状のマスクを介してパターンを形成してもよい。あるいは、有機導電性化合物のように塗布可能な物質を用いる場合には、印刷方式、コーティング方式など湿式成膜法を用いることもできる。
この陽極より発光を取り出す場合には、透過率を10%より大きくすることが望ましく、また陽極としてのシート抵抗値は数百Ω/□以下が好ましい。
陽極の厚さは、材料にもよるが、通常5〜1000nmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
《陰極》
一方、陰極(上部電極または下部電極)としては、金属、合金、電気伝導性化合物およびこれらの混合物を電極物質とするものが用いられる。このような電極物質の具体例としては、ナトリウム、ナトリウム−カリウム合金、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、銀、アルミニウム等が挙げられる。これらの中で、電子注入性および酸化等に対する耐久性の点から、電子注入性金属とこれより仕事関数の値が大きく安定な金属である第二金属との混合物、たとえば、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、アルミニウム/酸化アルミニウム(Al)混合物、リチウム/アルミニウム混合物や、アルミニウム、銀等が好適である。
陰極は、これらの電極物質を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより、作製することができる。
また、陰極としてのシート抵抗値は数百Ω/□以下が好ましく、厚さは通常5nm〜5μmの範囲内、好ましくは5〜200nmの範囲内で選ばれる。
なお、発光した光を透過させるため、有機EL素子の陽極または陰極のいずれか一方が、透明または半透明であれば発光輝度が向上し好都合である。
また、陰極に上記材料を1〜20nmの範囲内の厚さで作製した後に、陽極の説明で挙げた導電性透明材料をその上に作製することで、透明または半透明の陰極を作製することができ、これを応用することで陽極と陰極の両方が透過性を有する素子を作製することができる。
《有機EL素子の作製方法》
本発明の有機EL素子の作製方法の一例として、下部電極(陽極)/第1発光ユニット/第1中間電極/第2発光ユニット/第2中間電極/第3発光ユニット/上部電極(陰極)からなり、第1発光ユニットが陽極側から正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層、第2発光ユニットが第1中間電極側から正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層、第3発光ユニットが第2中間電極側から正孔注入層/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層からなる有機EL素子の作製法について説明する。
まず、適当な支持基板上に、所望の電極物質、たとえば、陽極用物質からなる薄膜を1μm以下、好ましくは10〜200nmの範囲内の厚さになるように、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陽極として機能する下部電極を作製する。
次に、この上に、第1発光ユニットである正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層を形成させる。
第1発光ユニットを構成する各層の成膜に際し、層毎に異なる成膜法を適用してもよい。成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般に、それぞれボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1nm〜5μm、好ましくは5〜200nmの範囲内で適宜選ぶことが望ましい。
これらの層を形成後、その上に仕事関数3eV以下の金属からなる金属層と該層に隣接して仕事関数4eV以上の金属からなる金属層とを、その総層厚が15nm以下となるように蒸着法により形成させ、第1中間電極を設ける。
次いで、発光層に隣接して正孔阻止層を設けることを加える以外は、第1発光ユニットの成膜と同様にして、第2発光ユニットの各層を形成し、その後、第1中間電極の成膜と同様にして第2中間電極を設ける。
次いで、第2発光ユニットの成膜と同様にして第3発光ユニットの正孔注入層〜電子輸送層までを設け、さらに電子注入層を設ける。
その後、陰極用物質を1μm以下、好ましくは5〜200nmの範囲内の厚さになるように、たとえば、蒸着やスパッタリング等の方法により形成させ、陰極として機能する上部電極を設けることにより所望の有機EL素子が得られる。
この有機EL素子の作製は、1回の真空引きで一貫して第1発光ユニットの正孔注入層から上部電極まで作製するのが好ましいが、途中で取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行うことが、水分、酸素等による有機EL素子へのダメージが抑えられ好ましい。
また作製順序を逆にして、下部電極(陰極)/第1発光ユニット/第1中間電極/第2発光ユニット/第2中間電極/第3発光ユニット/上部電極(陽極)の順に作製することもできる。この場合、たとえば、第1発光ユニットは、下部電極(陰極)側より、電子注入層/電子輸送層/正孔阻止層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の順となり、第2発光ユニットは、第1中間電極側より、電子輸送層/正孔阻止層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の順となり、第3発光ユニットは、第2中間電極側より、電子輸送層/発光層/正孔輸送層/正孔注入層の順となる。
このようにして得られた有機EL素子に、直流電圧を印加する場合には、陽極とする電極を+、陰極とする電極を−の極性として電圧2〜40V程度を印加すると、発光が観測できる。また、交流電圧を印加してもよい。なお、印加する交流の波形は任意でよい。
《光取出し向上技術》
有機EL素子は、空気よりも屈折率の高い(屈折率1.6〜2.1程度の範囲内)層の内部で発光し、発光層で発生した光のうち15〜20%程度の光しか取り出せないことが一般的に言われている。これは、臨界角以上の角度θで界面(透明基板と空気との界面)に入射する光は、全反射を起こし素子外部に取り出すことができないことや、透明電極または発光層と透明基板との間で光が全反射を起こし、光が透明電極または発光層を導波し、結果として、光が素子側面方向に逃げるためである。
この光の取り出しの効率を向上させる手法としては、たとえば、透明基板表面に凹凸を形成し、透明基板と空気界面での全反射を防ぐ方法(たとえば、米国特許第4774435号明細書)、基板に集光性を持たせることにより効率を向上させる方法(たとえば、特開昭63−314795号公報)、素子の側面等に反射面を形成する方法(たとえば、特開平1−220394号公報)、基板と発光体の間に中間の屈折率を持つ平坦層を導入し、反射防止膜を形成する方法(たとえば、特開昭62−172691号公報)、基板と発光体との間に、基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法(たとえば、特開2001−202827号公報)、基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(基板と外界間を含む。)に回折格子を形成する方法(特開平11−283751号公報)などが挙げられる。
本発明においては、これらの方法を本発明の有機EL素子と組み合わせて用いることができるが、基板と発光体との間に、基板よりも低屈折率を持つ平坦層を導入する方法、あるいは基板、透明電極層や発光層のいずれかの層間(基板と外界間を含む。)に回折格子を形成する方法を好適に用いることができる。
本発明は、これらの手段を組み合わせることにより、さらに高輝度あるいは耐久性に優れた素子を得ることができる。
透明電極と透明基板との間に低屈折率の媒質を光の波長よりも長い厚さで形成すると、透明電極から出てきた光は、媒質の屈折率が低いほど、外部への取り出し効率が高くなる。
低屈折率層としては、たとえば、エアロゲル、多孔質シリカ、フッ化マグネシウム、フッ素系ポリマーなどが挙げられる。透明基板の屈折率は一般に1.5〜1.7程度の範囲内であるので、低屈折率層は、屈折率がおよそ1.5以下であることが好ましく、1.35以下であることがより好ましい。
また、低屈折率媒質の厚さは、媒質中の波長の2倍以上となるのが望ましい。これは、低屈折率媒質の厚さが光の波長程度になって、エバネッセントで染み出した電磁波が基板内に入り込むと、低屈折率層の効果が薄れるからである。
全反射を起こす界面、または、いずれかの媒質中に回折格子を導入する方法は、光取り出し効率の向上効果が高いという特徴がある。この方法は、回折格子が1次の回折や、2次の回折といった、いわゆるブラッグ回折により、光の向きを屈折とは異なる特定の向きに変えることができる性質を利用して、発光層から発生した光のうち、層間での全反射等により外に出ることができない光を、いずれかの層間もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)に回折格子を導入することで光を回折させ、光を外に取り出そうとするものである。
導入する回折格子は、2次元的な周期屈折率を持っていることが望ましい。これは、発光層で発光する光はあらゆる方向にランダムに発生するので、ある方向にのみ周期的な屈折率分布を持っている一般的な1次元回折格子では、特定の方向に進む光しか回折されず、光の取り出し効率がさほど上がらない。
しかしながら、屈折率分布を2次元的な分布にすることにより、あらゆる方向に進む光が回折され、光の取り出し効率が上がる。
回折格子を導入する位置としては、いずれかの層間もしくは媒質中(透明基板内や透明電極内)でもよいが、光が発生する場所である発光層の近傍が望ましい。このとき、回折格子の周期は、媒質中の光の波長の約1/2〜3倍程度の範囲内が好ましい。回折格子の配列は、正方形のラチス状、三角形のラチス状、ハニカムラチス状など、2次元的に配列が繰り返されることが好ましい。
本発明の有機EL素子は、支持基板の光取り出し側に、たとえば、マイクロレンズアレイ状の構造を設けるように加工したり、あるいは、いわゆる集光シートと組み合わせることにより、特定方向、たとえば、素子発光面に対し正面方向に集光することにより、特定方向上の輝度を高めることができる。
マイクロレンズアレイの例としては、支持基板の光取り出し側に一辺が30μmでその頂角が90度となるような四角錐を2次元に配列する。一辺は10〜100μmの範囲内が好ましい。これより小さくなると回折の効果が発生して色付き、大きすぎると厚さが厚くなり好ましくない。
集光シートとしては、たとえば、液晶表示装置のLEDバックライトで実用化されているものを用いることが可能である。このようなシートとして、たとえば、住友スリーエム社製輝度上昇フィルム(BEF)などを用いることができる。
プリズムシートの形状としては、たとえば、基材に頂角90度、ピッチ50μmの△状のストライプが形成されたものであってもよいし、頂角が丸みを帯びた形状、ピッチをランダムに変化させた形状、その他の形状であってもよい。
また、有機EL素子からの光放射角を制御するために光拡散板・フィルムを、集光シートと併用してもよい。たとえば、(株)きもと製拡散フィルム(ライトアップ)などを用いることができる。
《表示装置》
本発明の有機EL素子を適用した表示装置について説明する。
本発明の有機EL素子は、表示装置に用いられることが好ましい。表示装置の場合は、発光層形成時のみシャドーマスクを設け、一面に蒸着法、キャスト法、スピンコート法、インクジェット法、印刷法、スロット型コータ法等で膜を形成できる。発光層のみパターニングを行う場合、その方法に限定はないが、好ましくは蒸着法、インクジェット法、印刷法である。蒸着法を用いる場合においては、シャドーマスクを用いたパターニングが好ましい。
このようにして得られた表示装置に直流電圧を印加する場合には、陽極とする電極を+、陰極とする電極を−の極性として、2〜40V程度の範囲内の電圧を印加すると発光が観測できる。
《照明装置》
本発明の有機EL素子を適用した照明装置について説明する。
本発明の有機EL素子は、照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよいし、画像を投影するタイプのプロジェクション装置や、静止画像や動画像を直接視認するタイプの表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。
照明装置に用いられる有機EL素子においては、必要に応じ成膜時にメタルマスクやインクジェットプリンティング法等でパターニングを施してもよい。パターニングする場合は、電極のみをパターニングしてもよいし、電極と発光層とをパターニングしてもよいし、素子全層をパターニングしてもよい。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において、「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。
また、各実施例において使用される化合物は、下記のとおりの構造を有するものである。
Figure 0006225915
Figure 0006225915
Figure 0006225915
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子101の作製
30mm×30mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、下部電極としてITO(インジウムチンオキシド)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物M−1の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、層厚15nmの層を形成した。
次いで、化合物M−2を同様にして蒸着し、層厚70nmの層を形成した。
次いで、化合物GD−1および化合物H−2を、化合物GD−1が8%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの緑色を呈するリン光発光層を形成した。
次いで、化合物H−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの層を形成し、さらに、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚25nmの層を形成し、緑色リン光発光ユニットを成膜した。
続いて、リチウムを層厚1nmで蒸着し、その後、銀を層厚8nmで蒸着し、第1中間電極を形成した。
次いで、蒸着速度0.1nm/秒で、化合物M−1を層厚15nm、化合物M−2を層厚40nmとなるように成膜した。
次いで、化合物GD−1、化合物RD−1および化合物H−2を、化合物GD−1が15%、化合物RD−1が4%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚30nmの赤色を呈するリン光発光層を形成した。
次いで、化合物H−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの層を形成し、さらに、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚25nmの層を形成し、赤色リン光発光ユニットを成膜した。
次いで、第1中間電極の形成と同様にして、第2中間電極を形成した。
その後、蒸着速度0.1nm/秒で、化合物M−1を層厚15nm、化合物M−2を層厚50nmとなるように成膜した。
次いで、化合物BD−1および化合物H−1を、化合物BD−1が5%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの青色発光を呈する蛍光発光層を形成した。
次いで、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚35nmの層を形成し、青色蛍光発光ユニットを成膜した。
続いて、リチウムを1nm、アルミニウムを120nmの厚さに蒸着し、上部電極を形成した。
次いで、上記素子の非発光面をガラスケースで覆い、図2および図3に示す構成からなる「有機EL素子101」を作製した。
図2は、有機EL素子の概略図を示している。図2に示すとおり、有機EL素子101は、ガラスカバー102で覆われている。ガラスカバー102での封止作業は、有機EL素子101を大気に接触させることなく窒素雰囲気下のグローブボックス(純度99.999%以上の高純度窒素ガスの雰囲気下)で行った。
図3は、有機EL素子の断面図を示している。図3に示すとおり、透明下部電極付きガラス基板107上に複数の発光ユニットおよび中間電極106と上部電極105とが積層されている。ガラスカバー102内には窒素ガス108が充填され、捕水剤109が設けられている。
(2)有機EL素子102の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極の銀からなる層の層厚を13nmに変更した以外は同様にして、「有機EL素子102」を作製した。
(3)有機EL素子103の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極の銀からなる層の層厚を3nmに変更した以外は同様にして、「有機EL素子103」を作製した。
(4)有機EL素子104の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極の銀からなる層の層厚を17nmに変更した以外は同様にして、「有機EL素子104」を作製した。
(5)有機EL素子105の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極のリチウムからなる層の層厚を2.5nmに変更した以外は同様にして、「有機EL素子105」を作製した。
(6)有機EL素子106の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極のリチウムからなる層の層厚を3.5nmに変更した以外は同様にして、「有機EL素子106」を作製した。
(7)有機EL素子107の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極の銀からなる層に代えて、アルミニウムからなる層を8nmの層厚で設けた以外は同様にして、「有機EL素子107」を作製した。
(8)有機EL素子108の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極のリチウムからなる層に代えて、カルシウムからなる層を1nmの層厚で設けた以外は同様にして、「有機EL素子108」を作製した。
(9)有機EL素子109の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極のリチウムからなる層を設けなかった以外は同様にして、「有機EL素子109」を作製した。
(10)有機EL素子110の作製
有機EL素子109の作製において、第1および第2中間電極の銀からなる層の層厚を17nmに変更した以外は同様にして、「有機EL素子110」を作製した。
(11)有機EL素子111の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極を層厚8nmのアルミニウムからなる層のみに変更した以外は同様にして、「有機EL素子111」を作製した。
(12)有機EL素子112の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極を層厚8nmのリチウムからなる層のみに変更した以外は同様にして、「有機EL素子112」を作製した。
(13)有機EL素子113の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極を層厚8nmのカルシウムからなる層のみに変更した以外は同様にして、「有機EL素子113」を作製した。
(14)有機EL素子114の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極を、下部電極側から層厚8nmの銀からなる層、層厚1nmのリチウムからなる層に変更した以外は同様にして、「有機EL素子114」を作製した。
(15)有機EL素子115の作製
有機EL素子101の作製において、第1および第2中間電極を、下部電極側から層厚4nmの銀からなる層、層厚4nmのアルミニウムからなる層に変更した以外は同様にして、「有機EL素子115」を作製した。
なお、上記の各有機EL素子は、上部電極が陰極、第2中間電極が陽極となるよう電圧を印加することで青色発光ユニットが発光し、第2中間電極が陰極、第1中間電極が陽極となるよう電圧を印加することで赤色発光ユニットが発光し、第1中間電極が陰極、下部電極が陽極となるよう電圧を印加することで緑色発光ユニットが発光する。すなわち、青、緑、赤の各発光ユニットに印加する電圧を独立に、かつ任意に制御することが可能な素子である。したがって、たとえば、CIE1931色座標系の青、緑、赤各発光ユニット色の発光色度を結ぶ領域内の白色を含む任意の発光色を得ることができる。
《有機EL素子の評価》
(1)発光効率および駆動電圧の測定
作製した各有機EL素子について、分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタ社製)を用い、室温(25℃)にて正面輝度および輝度角度依存性を測定することにより、有機EL素子の基板前面から外部に放射される光量を計測し、青、赤、緑各発光ユニットの通電量5mA/cmにおける発光効率を求め、その平均値を素子全体の平均発光効率とした。
また、同様に各発光ユニットへの通電量5mA/cmにおける駆動電圧を求め、その平均値を素子全体の平均駆動電圧とした。
なお、青色発光ユニットの発光効率および駆動電圧を測定する場合は、上部電極が陰極、第2中間電極が陽極となるよう外部電源と接続し、電圧を印加する。この際、下部電極および第1中間電極には電圧は印加しない。赤色発光ユニットの測定の場合は、第2中間電極が陰極、第1中間電極が陽極となるよう電圧を印加し、下部電極および上部電極には電圧は印加しない。緑色発光ユニットの場合は、第1中間電極が陰極、下部電極が陽極となるよう電圧を印加し、第2中間電極および上部電極には電圧は印加しない。
評価結果を表1に示す。
なお、各有機EL素子の平均発光効率および平均駆動電圧は、有機EL素子109の平均発光効率および平均駆動電圧を100とした場合の相対値で示している。
(2)保存安定性
有機EL素子101〜103、105〜108、112および113を、75℃環境下で300時間保存(放置)し、上記と同様にして、各発光ユニットの通電量5mA/cmにおける発光効率および駆動電圧を求め、各発光ユニットの保存後における平均発光効率および平均駆動電圧を求めた。保存前後における平均発光効率および平均駆動電圧から、下記式にて定義される、保存安定性の指標となる発光効率変動幅(%)および駆動電圧変動幅(%)を算出した。
評価結果を表1に示す。
発光効率変動(%)
=|(保存後の平均発光効率/保存前の平均発光効率)−1|×100
駆動電圧変動(%)
=|(保存後の平均駆動電圧/保存前の平均駆動電圧)−1|×100
なお、表1中、中間電極材料における「/」は、「/」左側が下部電極側であることを示している。
Figure 0006225915
(3)まとめ
表1に示すとおり、本発明の有機EL素子101、102および105〜108は、比較例の有機EL素子104、109〜111、114および115に対し、発光効率および/または駆動電圧の点で優れていることがわかる。また、比較例の有機EL素子103、112および113は、本発明の有機EL素子と同程度の発光効率、駆動電圧を有しているが、高温環境下での保存後における発光効率変動および駆動電圧変動が本発明の有機EL素子より著しく大きく、保存安定性能に劣っている。
また、有機EL素子101および102の比較から、仕事関数4eV以上の金属からなる金属層の層厚が10nm以下の方が高発光効率で好ましく、また、有機EL素子101、105および106の比較から、仕事関数3eV以下の金属層の層厚が3nm以下の方が保存安定性が良好で好ましいことがわかる。
さらに、有機EL素子101および107の比較から、仕事関数4eV以上の金属が銀であることが高い発光効率を得る上で好ましいことがわかる。
《有機EL素子の作製》
(1)有機EL素子201の作製
30mm×30mm、厚さ0.7mmのガラス基板上に、下部電極としてITO(インジウムチンオキシド)を150nmの厚さで成膜し、パターニングを行った後、このITO透明電極を付けた透明支持基板をイソプロピルアルコールで超音波洗浄し、乾燥窒素ガスで乾燥し、UVオゾン洗浄を5分間行った後、この透明支持基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。
真空蒸着装置内の蒸着用るつぼの各々に、各層の構成材料を、各々素子作製に最適の量充填した。蒸着用るつぼは、モリブデン製またはタングステン製の抵抗加熱用材料で作製されたものを用いた。
真空度1×10−4Paまで減圧した後、化合物M−1の入った蒸着用るつぼに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で透明支持基板に蒸着し、層厚15nmの層を形成した。
次いで、化合物M−2を同様にして蒸着し、層厚50nmの層を形成した。
次いで、化合物GD−1、化合物RD−1および化合物H−2を、化合物GD−1が14%、化合物RD−1が0.02%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚35nmの黄色を呈するリン光発光層を形成した。
次いで、化合物H−2を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚5nmの層を形成し、さらに、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚25nmの層を形成し、黄色リン光発光ユニットを成膜した。
続いて、リチウムを層厚1nmで蒸着し、その後、銀を層厚8nmで蒸着し、中間電極を形成した。
次いで、蒸着速度0.1nm/秒で、化合物M−1を層厚15nm、化合物M−2を層厚70nmとなるように成膜した。
次いで、化合物BD−2および化合物H−2を、化合物BD−2が11%の濃度になるように蒸着速度0.1nm/秒で共蒸着し、層厚30nmの青色発光を呈するリン光発光層を形成した。
次いで、化合物E−1を蒸着速度0.1nm/秒で蒸着し、層厚30nmの層を形成し、青色リン光発光ユニットを成膜した。
続いて、リチウムを1nm、アルミニウムを120nmの層厚に蒸着し、上部電極を形成した。
次いで、実施例1と同様にして、上記素子の非発光面をガラスケースで覆い、図2および図3に示す構成からなる「有機EL素子201」を作製した。
(2)有機EL素子202の作製
有機EL素子201の作製において、各発光ユニットの作製に使用した化合物E−1に代えて化合物E−2を用いた以外は同様にして、「有機EL素子202」を作製した。
(3)有機EL素子203の作製
有機EL素子201の作製において、中間電極のリチウムからなる層を設けなかった以外は同様にして、「有機EL素子203」を作製した。
なお、上記の各有機EL素子は、上部電極が陰極、中間電極が陽極となるよう電圧を印加することで青色発光ユニットが発光し、中間電極が陰極、下部電極が陽極となるよう電圧を印加することで黄色発光ユニットが発光する。すなわち、青、黄の各発光ユニットに印加する電圧を独立に、かつ任意に制御することが可能な素子である。したがって、たとえば、CIE1931色座標系の青、黄各発光ユニット色の発光色度を結ぶ線上の任意の発光色を得ることができる。
《有機EL素子の評価》
(1)発光効率および駆動電圧の測定
実施例1と同様にして、平均発光効率および平均駆動電圧を評価した。
評価結果を表2に示す。
なお、各有機EL素子の平均発光効率および平均駆動電圧は、有機EL素子203の平均発光効率および平均駆動電圧を100とした場合の相対値で示している。
(2)保存安定性の評価
本発明の有機EL素子201および202について、実施例1と同様にして、保存安定性を評価した。
評価結果を表2に示す。
なお、表2中、中間電極材料における「/」は、「/」左側が下部電極側であることを示している。
Figure 0006225915
(3)まとめ
表2に示すとおり、中間電極が一つである有機EL素子においても、発光効率が高く、駆動電圧が低いことが確認された。
さらには、中間電極の下部電極側に隣接する層の構成材料として、ピリジン環を有する化合物E−1を使用した有機EL素子201は、ピリジン環を有していない化合物E−2を使用した有機EL素子202と比較して、平均発光効率および平均駆動電圧がほぼ同程度であるものの、保存安定性に優れていることがわかる。
本発明は、光透過性、導電性に優れた中間電極を有することで、発光効率、駆動電圧および保存安定性に優れた調色可能な有機EL素子を提供することに、特に好適に利用することができる。
1 有機EL素子
2 支持基板
4 下部電極
6,10 発光ユニット
8 中間電極
8a,8b 金属層
12 上部電極
101 有機EL素子
102 ガラスカバー
105 上部電極
106 発光ユニットおよび中間電極
107 透明下部電極付きガラス基板
108 窒素ガス
109 捕水剤
L 光

Claims (8)

  1. 下部電極と上部電極との間に、少なくとも二つの発光ユニットと、外部電源と電気的に接続される少なくとも一つの中間電極と、を有し、前記発光ユニット間に前記中間電極が配置され、少なくとも二つの前記発光ユニットがそれぞれ独立して発光可能である有機エレクトロルミネッセンス素子であって、
    前記中間電極が、平面方向に導電性を有し、
    前記中間電極のうち少なくとも一つが、仕事関数3eV以下の金属からなる第1金属層と、前記第1金属層に隣接した仕事関数4eV以上の金属からなる第2金属層と、から構成され、かつ、前記第1金属層の層厚と前記第2金属層の層厚とを足し合わせた総層厚が15nm以下であり、
    前記第1金属層が、前記中間電極と前記中間電極に対向する電極との間に電圧を印加した際、前記第2金属層に対し、陽極となる前記電極側に設けられていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記第1金属層の層厚が、3nm以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記第2金属層の層厚が、10nm以下であることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記第2金属層には、銀が含有されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記第1金属層には、リチウムまたはカルシウムが含有されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記中間電極を挟んで位置する前記発光ユニットの発光色が互いに異なることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    前記下部電極と前記上部電極との間に、少なくとも三つの前記発光ユニットと、外部電源に接続される少なくとも二つの前記中間電極と、を有し、前記発光ユニット間に前記中間電極が配置されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子において、
    複数の前記発光ユニットからの発光の混色により白色発光することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
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