以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、図面においては、実施形態を説明するため、一部または全部を模式的に記載するとともに、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現した部分を含んでいる。また、本実施形態において方向を示す場合は、図1のプレス機械10の正面図を基準として左側及び右側と規定し、図1の紙面の手前側を前側、紙面後方を後側と規定する。従って、図1の紙面の左右方向がプレス機械10の左右方向であり、紙面に垂直の方向がプレス機械10の前後方向である。
<第1実施形態>
第1実施形態に係る上型ホルダー50について、図面を参照しながら説明する。先ず、この上型ホルダー50が適用されるプレス機械10について説明する。図1は、上型ホルダー50を適用するプレス機械10の一例を示す正面図である。図2は、プレス機械10の一部破断右側面図である。図1及び図2に示すように、プレス機械10は、プレスブレーキであって、本体フレーム11と、下型12を支持するテーブル13と、一対の側板14と、を備える。
本体フレーム11は、プレス機械10の外郭を形成する。下型12は、固定側(下側)の金型であり、左右方向に長く形成されている。下型12は、図2に示すように、成形用の凹部12aを有する。テーブル13は、本体フレーム11の前面側に取り付けられており、下型12を固定している。側板14は、本体フレーム11の左右の側部にそれぞれ取り付けられている。また、側板14のそれぞれには、上下の二箇所に、内側に突出するガイド板18が形成されている。一対の側板14の間には、上部カバー板15が取り付けられている。
プレス機械10は、複数の駆動機構17を備える。複数の駆動機構17は、本体フレーム11の上部カバー板15の後方に並べて配置されている。駆動機構17のそれぞれは、不図示の取付機構によって本体フレーム11に取り付けられている。駆動機構17は、ネジ軸19及びナット20を有するボールネジ部21と、第1駆動源22と、第1動力伝達部23と、第2駆動源24と、第2動力伝達部25と、を備える。
ネジ軸19は、本体フレーム11の垂直方向に配置されて本体フレーム11に回転可能かつ上下方向に進退可能に支持されている。ネジ軸19の長さは、上型29の移動範囲に合わせて設定される。ネジ軸19の下方には、ネジ軸19の供回り防止機能を有する連結部26を介してラム27が取り付けられている。ラム27は、金属等により形成された板状の部材であり、例えば、数十kg〜数百kgの重量を有している。なお、ラム27は、図示のものに限定されず、任意の構成が適用される。ラム27には、ガイド板18を挟み込むローラ27aが形成されている。このローラ27aがガイド板18にガイドされることにより、ラム27を上下方向にガイドしている。
ナット20は、ネジ軸19にネジ結合されている。ナット20は、本体フレーム11に形成された軸受け16の複数のボールベアリングによって回転可能な状態で保持されている。また、ナット20は、軸受け16によって上下方向への移動が規制された状態となっている。これにより、ナット20の回転を規制した状態でネジ軸19を回転させることにより、ネジ軸19は上下方向に移動し、また、ネジ軸19の回転を規制した状態でナット20を回転させることにより、ネジ軸19を上下方向に移動させることが可能となっている。
第1駆動源22は、例えばサーボモータが用いられる。第1駆動源22としては、低トルクかつ高速回転タイプのサーボモータが適用される。第1駆動源22の出力軸22aは、第1動力伝達部23の入力側に連結されている。第1駆動源22は、不図示のガイド機構により、ネジ軸19の移動に合わせて、上下方向に移動可能に本体フレーム11に支持されている。第1駆動源22は、不図示の制御装置からの指令により出力軸22aを回転駆動する。
第1動力伝達部23は、駆動プーリ33と、従動プーリ34と、ベルト35と、を備える。駆動プーリ33は、第1駆動源22の出力軸22aに同軸に取り付けられている。従動プーリ34は、ネジ軸19の上端部に同軸に取り付けられている。ベルト35は、駆動プーリ33と従動プーリ34とに架け渡されている。従って、第1駆動源22を駆動することにより、第1動力伝達部23を介してネジ軸19を高速かつ低トルクで回転させる。これにより、ネジ軸19は、上下方向に高速で移動する。なお、第1駆動源22の駆動時は、上型29のアプローチ時やリターン時である。
第2駆動源24は、第1駆動源22と同様に、例えばサーボモータが用いられる。第2駆動源としては、高トルクかつ低速回転タイプのサーボモータが適用される。第2駆動源24の出力軸24aは、第2動力伝達部25の入力側に連結されている。第2駆動源24は、不図示の固定機構により、本体フレーム11に固定されている。第2駆動源24は、第1駆動源22と同様に、不図示の制御装置からの指令により出力軸24aを回転駆動する。
第2動力伝達部25は、駆動プーリ36と、従動プーリ37と、ベルト38と、を備える。駆動プーリ36は、第2駆動源24の出力軸24aに同軸に取り付けられている。従動プーリ37は、ナット20の上端部に同軸に取り付けられている。ベルト38は、駆動プーリ36と従動プーリ37とに架け渡されている。従って、第2駆動源24を駆動することにより、第2動力伝達部25を介してナット20を低速かつ高トルクで回転させる。このナット20の回転により、ネジ軸19は、低速でネジ送りされる。
なお、駆動機構17は一例であって、上記した構成に限定するものではない。上型29を上下に移動させるものであれば任意の機構を用いることができる。例えば、第1駆動源22によってネジ軸19のみを回転させるものや、第2駆動源24によってナット20のみを回転させるものでもよい。また、ネジ軸19を第1駆動源22によって回転させるとともに、さらにネジ軸19を油圧等によって上下方向に移動させるものが用いられてもよい。
ラム27の下方には、図1及び図2に示すように、複数の上型ホルダー50が左右方向に一定間隔で取り付けられている。上型ホルダー50のそれぞれは、上型29を挟み込んで保持する。上型29は、上型ホルダー50で保持された際、下型12の凹部12aに対向して配置される。また、上型29は、下型12の凹部12aに進入する先端部29aを有している。
図3〜図5は、上型ホルダー50の一例を示している。図3(a)は上型ホルダー50の正面図(前方から見た図)、図3(b)は(a)のA−A線に沿った断面図である。図4(a)は上型ホルダー50の背面図(後方から見た図)、図4(b)は(a)のC−C線に沿った断面図である。図5は、図3のB−B線に沿った断面図である。この上型ホルダー50は、バネ力により上型29をクランプするとともに、作動流体Pの圧力(油圧)により上型29のクランプを解放するように構成されている。なお、図3(a)では、一対のクランプ部材のうち、正面側(前方側)の第1クランプ部材52を示している。図4(a)では、一対のクランプ部材のうち、背面側(後方側)の第2クランプ部材53を示している。
図3(a)に示すように、上型ホルダー50は、カバープレート59によってラム27の下端に固定される。カバープレート59は、例えば複数のボルト等によってラム27の前方側に面に固定され、ラム27の下端から下方に延びた状態となっている。カバープレート59の下方には第1クランプ52が配置される。また、カバープレート59には、例えばボルト等によって支持部51が固定される。支持部51は、カバープレート59の後方側に取り付けられており、ラム27の下方に配置されている。
図3(b)に示すように、支持部51は、下端部に、上型29を第1クランプ部材52または第2クランプ部材53とで挟み込むための挟持部51aを有する。また、支持部51は、前方を開口させた一対のバネ収納部51bを有する。バネ収納部51bには、弾性部材としてのバネ58が収納されている。バネ58は、第1クランプ部材52を動作させるものとして用いられる。バネ58は、例えば金属製のコイルバネが用いられ、第1クランプ部材52を支持部51から離すように弾性力を付与している。従って、第1クランプ部材52は、支持部51側に引かれる力が解放されると、バネ58の弾性力によって支持部51から離れる方向へ移動する。
なお、バネ58は、コイルバネに限定されず、第1クランプ部材52を支持部51から離すことができるものであれば、例えば樹脂やゴム、磁石や電磁石等の磁気などが用いられてもよい。また、1つの第1クランプ部材52に対して2つのバネ58が配置されることに限定されず、1つまたは3つ以上配置されてもよい。また、バネ58を配置するか否かは任意である。
また、図3(b)及び図4(a)に示すように、支持部51の後方側には、第2クランプ部材53が配置される。すなわち、この上型ホルダー50は、支持部51を挟んだ両側に一対の第1及び第2クランプ部材52、53が配置される。第2クランプ部材53の後方側には、複数のボルト61によってOリング63を挟んでシリンダヘッド62が取り付けられる。このシリンダヘッド62は、後述する2つのシリンダ部53aの双方のシリンダヘッドとして機能している。シリンダヘッド62には、後述する供給装置57(図5参照)からの作動流体Pを流通させるための流路62aが形成されている。流路62aは、図4(a)に示すように、シリンダヘッド62の上部中央から内部を通り、途中で分岐してシリンダ部53aのそれぞれに連通するように形成される。
また、支持部51は、図4(b)に示すように、前後方向に貫通する貫通孔51dが形成される。この貫通孔51dには、ピストン部材54が前後方向に摺動可能な状態で配置される。なお、貫通孔51dの後方側(第2クランプ部材53側)の開口部分は、後述するピストン部材54の段部54aを係止する係止部51cとして用いられる。
第1クランプ部材52は、図4(b)及び図5に示すように、ボルト60によって、それぞれピストン部材54と一体的に結合される。ピストン部材54は、鍔部54bと、ロッド54cと、を有する。鍔部54bは、ロッド54cの後方側に取り付けられ、外周側にピストンリング54dを備えている。ロッド54cは、後方側から前方側に向けて中央部分に外径を縮小した部分を形成させ、段部54aが形成されている。段部54aは、ピストン部材54が前方に進行した際、係止部51cに当接してピストン部材54の進行を規制するのに用いられる。なお、第1クランプ部材52と段部52aとの間隔は、支持部51の幅より所定長さ(図5の距離L1参照)だけ広くなるように設定される。
従って、第1クランプ部材52及びピストン部材54は、上記した所定長さの範囲において、支持部51に対して前後方向に移動可能となっている。すなわち、第1クランプ部材52は、支持部51に対して近接または離間する方向に移動する。第1クランプ部材52が支持部51に近接した状態では、第1クランプ部材52と支持部51の挟持部51aとの間に上型29をクランプ可能となっている。
第2クランプ部材53は、図4(b)及び図5に示すように、2つのピストン部材54の後方側をそれぞれ収容する2つのシリンダ部53aが形成される。シリンダ部53aは、上記したシリンダヘッド62(Oリング63)によって後方側が封止されており、前方側の底面53cとシリンダヘッド62との中間部分に段部53bが形成される。ピストン部材54の鍔部54bは、シリンダヘッド62と段部53bとの間に配置され、段部53bに対して当接または離間するようにシリンダ部53a内を前後方向に摺動する。鍔部54bがシリンダ部53aに対して最も後方位置にある場合(鍔部54bがシリンダヘッド62に最も近接または当接する場合)、鍔部54bと段部53bとの間には所定長さ(図5の距離L2参照)となるように設定されている。
従って、第2クランプ部材53は、上記した所定長さの範囲において、支持部51に対して前後方向に移動可能となっている。すなわち、第2クランプ部材53は、支持部51に対して近接または離間する方向に移動する。第2クランプ部材53が支持部51に近接した状態では、第2クランプ部材53と支持部51の挟持部51aとの間に上型29をクランプ可能となっている。
鍔部54bと底面53cとの間には、図4(b)及び図5に示すように、バネ(弾性体)56が配置される。このバネ56は、ピストン部材54を進退させる駆動機構55の一部を構成するものであり、ピストン部材54を後退させるものとしてコイルバネが用いられる。バネ56は、シリンダ部53aに対してピストン部材54を後方に移動させる方向に弾性力を付与している。このバネ56によって、ピストン部材54はシリンダ部53aに対して後方側に押し付けられる。その結果、第1クランプ部材52及び第2クランプ部材53は、双方とも支持部51に当接した状態となる。
バネ56は、第1クランプ部材52及び第2クランプ部材53によって支持部51との間に上型29を挟み込み、上型29を保持可能なバネ力を持つものが採用される。また、バネ56は、バネ58(図3(b)参照)よりも大きなバネ力を持つものが用いられる。なお、バネ56としては、コイルバネが用いられることに限定されず、鍔部54bを段部53bから離すように作用させるものであれば、例えば、樹脂やゴム、磁石や電磁石等の磁気などが用いられてもよい。
上型ホルダー50は、図5に示すように、作動流体Pの供給装置57を有する。作動流体Pとしては油が用いられるが、他の液体または気体が用いられてもよい。この供給装置57は、ピストン部材54を進退させる駆動機構55の一部を構成するものであり、ピストン部材54を前進させるものとして用いられる。供給装置57は、流路62を介してシリンダヘッド62と鍔部54bとの間に作動流体Pを供給する。供給装置57により作動流体Pが供給されると、その圧力(油圧)によって鍔部54bが押されることによりピストン部材54は前方に移動する。なお、供給装置57により提供される圧力(油圧)は、バネ56の弾性力に抗してピストン部材54を前方に移動させることが可能な圧力に設定される。
供給装置57からの作動流体Pの供給を停止すると、バネ56の弾性力によってピストン部材54は後方へ移動し、鍔部54bがシリンダヘッド62に近接または当接した元の状態に戻る。なお、供給装置57による作動流体Pの供給または停止は、不図示の制御装置からの指示に基づいて行われる。
なお、図4及び図5に示すように、1つの供給装置57から供給される作動流体Pは、流路62aによって2つに分岐され、2つのシリンダ部53aに供給されている。このように供給装置を兼用することにより、供給装置57の設置個数を削減でき、装置の製造コストを低減できる。また、供給装置57は他の複数の上型ホルダー50(図1参照)に対して作動流体Pを供給することも可能である。ただし、上記のように供給装置57を兼用させることに限定されず、シリンダ部53aごとに供給装置57が配置されるものでもよい。
続いて、上型ホルダー50において、上型29をクランプまたは解放する動作を図5〜図7を用いて説明する。図5は、上型29をクランプした状態を示す断面図である。図6は、一方のクランプ部材(第1クランプ部材52)を開いた状態を示す断面図である。図7は、双方のクランプ部材(第1及び第2クランプ部材52、53)を開いた状態を示す断面図である。
図5に示すように、供給装置57から作動流体Pを供給しない状態では、バネ58によってピストン部材54はシリンダ部53aに対して後方に押圧される。これにより、第1クランプ部材52は支持部51に近接または当接し、支持部51の挟持部51aとの間に上型29の上部部分をクランプした状態となる。一方、第2クランプ部材53は、バネ56によって底面53cが押圧される。これにより、第2クランプ部材53は支持部51に当接した状態となる。図5では上型29を第1クランプ部材52と挟持部51aとの間でクランプしているが、供給装置57から作動流体Pを供給しない場合、第2クランプ部材53と挟持部51aとの間に上型29をクランプすることも可能である。なお、図3(b)に示すバネ58は、第1クランプ部材52の移動に伴って縮小した状態となっている。
また、図5に示すように、支持部51の貫通孔51dの係止部51cと、ピストン部材53のロッド54cの段部54aとの間は、距離L1が形成されている。また、ピストン部材54の鍔部54bと、シリンダ部53aの段部53bとの間は、距離L2が形成されている。このとき、距離L2は距離L1より大きくなるように設定される。例えば、距離L2は、距離L1の2倍となるように設定される。
この上型ホルダー50においては、バネ56の弾性力によって上型29をクランプしているため、例えば、作動流体Pの供給装置57の故障や動作不良が生じたときでも上型29のクランプを維持したままとなる。従って、停電等によって装置への電力供給等が停止された状態等であっても上型29のクランプを維持し、上型29の落下を防止することができる。なお、第1及び第2クランプ部材52、53に、上型29の落下を防止するための機構(例えば第2実施形態参照)が設けられてもよい。
次に、図6に示すように、供給装置57を駆動して作動流体Pをシリンダ部53a内に供給する。シリンダ部53a内に供給された作動流体Pの圧力によって、ピストン部材54は、段部54aが係止部51cに当接するまで前進する。このとき、鍔部54bと段部53bとの間は距離L4から減少して距離L3となる。また、第1クランプ部材52は、ピストン部材54の前進、及び縮小されていたバネ58の弾性力によって支持部51から距離L4だけ離れることになる。その結果、第1クランプ部材52は、挟持部51aに対して間隔L5となり、上型29の上部の厚みL6よりも大きくなる。これにより、上型29は、クランプから解放されて、上型ホルダー50から取り外し可能となる。なお、バネ58が用いられることにより、第1クランプ部材52を確実に支持部51から離すことができる。
図6に示す状態では、第2クランプ部材53は、支持部51に当接したままとなっている。また、図6に示す距離L4は、図5に示す距離L1と等しい。すなわち、第1クランプ部材52は、距離L1(距離L4)の範囲において前後方向に移動可能となっている。また、図5に示す距離L2が距離L1の2倍に設定される場合、距離L3は距離L4(距離L1)と等しくなっている。
次に、図7に示すように、さらに供給装置57から作動流体Pを供給する。シリンダ部53a内の作動流体Pの圧力は上昇するが、ピストン部材54の前方への移動が係止部51cによって規制されているので、第2クランプ部材53が後方に向けて移動する。第2クランプ部材53は、鍔部54bが段部53bに当接するまで後方に移動し、支持部51から距離L7だけ離れた状態となる。この距離L7は、図6に示す距離L3に等しい。なお、図5に示す距離L2が距離L1の2倍に設定される場合、第1及び第2クランプ部材52、53のそれぞれは、支持部51から離れる距離L4、L7が等しくなっている。
第2クランプ部材53は、支持部51から距離L7だけ離れることにより、挟持部51aに対して間隔L8を形成する。この間隔L8は、図6に示す間隔L5とほぼ等しく、上型29の上部の厚みL6よりも大きい。従って、上型29を第2クランプ部材53と挟持部51aとの間でクランプしていた場合もこのクランプを解放し、上型29を取り外すことができる。
次に、この上型ホルダー50に上型29を保持させる場合は、上記と逆の手順により行う。先ず、供給装置57を駆動して、図7に示すように、第1及び第2クランプ部材52、53の双方を支持部51から離した状態、または図6に示すように、第1クランプ部材52を支持部51から離した状態とする。次いで、第1クランプ部材52と挟持部51aとの間、または第2クランプ部材53と挟持部51aとの間に上型29の上部を差し込む。次いで、供給装置57の駆動を停止させることにより、第1及び第2クランプ部材52、53は、バネ56によって双方とも支持部51に近接し、上型29をクランプして図5に示す状態となる。
以上のように、第1実施形態に係る上型ホルダー50は、支持部51に対する第1及び第2クランプ部材52、53の動作を、1つのピストン部材54によって行う。そのため、従来の上型ホルダーと比べて、可動部品の点数を少なくすることができ、製造コストを低減することができるとともに、故障の発生を抑制することができる。また、駆動機構55として、ピストン部材54の後退を行うバネ56と、ピストン部材54の前進を行う供給装置57と、を有するので、第1及び第2クランプ部材52、53の進退を容易かつ確実に行うことができ、上型29のクランプまたは解放を確実に行うことができる。また、第1クランプ部材52と支持部51との間にバネ58が配置されるため、ピストン部材54の前進時に第1クランプ部材52を確実に支持部51から離すことができる。
また、ピストン部材54及びシリンダ部53aが第1及び第2クランプ部材52、53に対して複数組配置されるので、第1及び第2クランプ部材52、53の動作をバランスよく行うことができ、また、第1または第2クランプ部材52、53による上型29のクランプを強固にすることができる。ただし、上記したように、第1または第2クランプ部材52、53に対して二組のピストン部材54及びシリンダ部53aが配置されることに限定されない。例えば、一組または三組以上のピストン部材54及びシリンダ部53aが配置されてもよい。
次に、上記した上型ホルダー50を備えるプレス機械10の動作について説明する。図1及び図2に示すように、上型ホルダー50に上型29を保持させる点は上記のとおりである。続いて、上型29が上方に退避した状態で、下型12上にワークWを配置する。なお、プレス機械10は、不図示のワーク位置決め機構を有しており、作業者は、ワークWの先端を位置決め機構に突き当てることによりワークWを下型12上で位置決めする。
続いて、第1駆動源22を駆動することにより、第1動力伝達部23を介してネジ軸19を高速で回転させ、上型29(ラム27)を所定位置まで降下させる。続いて、連結部26によりネジ軸19の供回りを規制するとともに、第2駆動源24を駆動する。これによりナット20を回転させ、ネジ軸19を降下させて上型29を下死点まで移動させる。このとき、上型29と下型12との間にワークWを挟み込むことにより、ワークWに対して曲げ加工を行う(図5〜図7参照)。曲げ加工の終了後は、上記と逆の手順によって上型29を元の位置(図1参照)に退避させ、曲げ加工が施されたワークWを取り出す。
このように、プレス機械10によれば、上記した上型ホルダー50を備えるので、製造コストの低減や、故障発生が抑制されたプレス機械10を提供することができる。
<第2実施形態>
第2実施形態について図8〜図10を参照しながら説明する。図8は、第2実施形態に係る上型ホルダー50aを示す断面図であって、上型29をクランプした状態を示す図である。上型ホルダー50aは、作動流体Pの圧力(油圧)により上型29をクランプするとともに、バネ力により上型29のクランプを解放するように構成されている。なお、本実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付してその説明を省略または簡略化する。
図8に示すように、上型ホルダー50aは、ピストン部材54のロッド54cにOリング81が取り付けられる。また、第2クランプ部材53のシリンダ部53aの後方側は、シリンダヘッド86が取り付けられる。このシリンダヘッド86は、シリンダ部53aと外部とを連通する連通孔86aを備える。なお、連通孔86aは形成されなくてもよい。また、第2クランプ部材53は、供給装置57からの作動流体Pを、Oリング81と鍔部54bに取り付けられたピストンリング54dとの間のシリンダ部53a内に供給するための流路87が形成される。
シリンダヘッド86とピストン部材54の鍔部54bとの間にはバネ(弾性体)88が配置される。このバネ88は、ピストン部材54を進退させる駆動機構55の一部を構成するものであり、ピストン部材54を前進させるものとしてコイルバネが用いられる。バネ88は、シリンダ部53aに対してピストン部材54を前方に移動させる方向に弾性力を付与している。なお、バネ88としては、コイルバネが用いられることに限定されず、シリンダヘッド86から鍔部54bを離すように作用させるものであれば、例えば、樹脂やゴム、磁石や電磁石等の磁気などが用いられてもよい。ピストン部材54は、作動流体Pが供給されると、バネ88の弾性力に抗して後方に移動し、作動流体Pの供給を停止すると、バネ88の弾性力によって前方に移動する。なお、図示していないが、第1クランプ部材52は、第1実施形態と同様に図3に示すバネ58が配置されており、バネ58の弾性力によって支持部51から離れる方向の力を受けている。
第1及び第2クランプ部材52、53は、図8に示すように、上型29に対するクランプ側の面に収容凹部82が形成されるとともに、収容凹部82内にバネ84が配置される。バネ84の先端にはコマ85が取り付けられる。コマ85は、第1及び第2クランプ部材52、53から支持部51側に突出した状態で配置される。コマ85は、バネ84の弾性力に抗して収容凹部82内に没入可能となっている。また、コマ85の上面はほぼ水平面に形成されるとともに、下面は傾斜面に形成される。
コマ85は、上型29に形成された溝状凹部29bに進入し、上面において上型29を吊り下げることが可能となっている。溝状凹部29bは、上型29の左右方向(図8紙面に垂直方向)にわたって形成される。また、上型29を上型ホルダー50aの下方から差し込むことにより、コマ85の傾斜面が上型29によって押されることでコマ85を収容凹部82に没入させ、上型29を差し込み可能となる。上型29が差し込まれて、コマ85が溝状凹部29bに達すると、コマ85は、バネ84の弾性力により突出して溝状凹部29bに入り込む。
また、図8に示すように、第1及び第2クランプ部材52、53は、上型29に対するクランプ側の面にダンパー83が形成される。ダンパー83は、上記した収容凹部82の上方に配置される。ダンパー83は、左右方向(図8紙面に垂直方向)に形成された溝部にウレタンやゴム製の紐状の弾性部材が配置されて形成される。この紐状の弾性部材は溝部から突出した状態で配置される。
例えば、1つの上型ホルダー50aに複数(例えば3枚)の上型29を並べてクランプする場合、ピストン部材54に近い部分でクランプされた2枚の上型29は、強くクランプされるが、この2枚に挟まれて配置された上型29は、ピストン部材54から離れるため、クランプが不十分となる場合が生じる。ダンパー83は、クランプ時に上型29とともに挟み込まれるため、ダンパー83の弾性力によって上型29を押圧するように働き、上型29のクランプが不十分な場合であっても、ぐらつき等を防止して上型29の安定化を図っている。ただし、ダンパー83を配置するか否かは任意である。
続いて、上型ホルダー50aにおいて、上型29をクランプまたは解放する動作を図8〜図10を用いて説明する。図8は、上記のとおり上型29をクランプした状態を示す断面図である。図9は、一方のクランプ部材(第1クランプ部材52)を開いた状態を示す断面図である。図10は、双方のクランプ部材(第1及び第2クランプ部材52、53)を開いた状態を示す断面図である。
図8に示すように、供給装置57から作動流体Pを供給している状態では、作動流体Pの圧力により、バネ88の弾性力に抗してピストン部材54はシリンダ部53aに対して後方に押圧される。これにより、第1クランプ部材52は支持部51に近接または当接し、支持部51の挟持部51aとの間に上型29の上部部分をクランプした状態となる。一方、第2クランプ部材53は、作動流体Pの圧力によって底面53bが押圧される。これにより、第2クランプ部材53は支持部51に当接した状態となる。図8では上型29を第1クランプ部材52と挟持部51aとの間でクランプしているが、第2クランプ部材53と挟持部51aとの間に上型29をクランプしてもよい。
また、図8に示すように、支持部51の係止部51cと、ピストン部材54の段部54aとの間は、距離L9が形成されている。また、ピストン部材54の鍔部54bと、シリンダ部53aの段部53bとの間は、距離L10が形成されている。このとき、距離L10は距離L9より大きくなるように設定される。第1実施形態と同様に、例えば、距離L10は、距離L9の2倍となるように設定される。
次に、図9に示すように、供給装置57を駆動して作動流体Pの供給量を減少させ、シリンダ部53a内の圧力を低下させる。この圧力の低下に伴い、バネ88の弾性力によって、ピストン部材54は、段部54aが係止部51cに当接するまで前進する。このとき、鍔部54bと段部53bとの間は距離L10から減少して距離L11となる。また、第1クランプ部材52は、第1実施形態と同様に、ピストン部材54の前進、及び縮小されていたバネ58の弾性力によって支持部51から距離L12だけ離れることになる。その結果、第1実施形態と同様に、第1クランプ部材52と挟持部51aとの間隔L13(図10参照)が上型29の厚みよりも大きくなり、上型29のクランプを解放する。
上型29のクランプを解放した場合、上型29の凹部29bにコマ85が入り込んでいるため、上型29はコマ85に吊り下げられた状態となる。この上型ホルダー50aにおいては、作動流体Pの圧力によって上型29をクランプするので、供給装置57の故障や動作不良が生じた場合は作動流体Pの圧力が維持されず、上型29のクランプを解放してしまう。ただし、上記したように、上型29の凹部29bがコマ85に吊り下げられるため、クランプが解放されても上型29が不用意に落下するのを防止している。
図9に示す状態では、第2クランプ部材53は、支持部51に当接したままとなっている。また、図9に示す距離L12は、図8に示す距離L9と等しい。すなわち、第1クランプ部材52は、距離L9(距離L12)の範囲において前後方向に移動可能となっている。また、図8に示す距離L10が距離L9の2倍に設定される場合、距離L11は距離L12(距離L9)と等しくなっている。
次に、図10に示すように、供給装置57による作動流体Pの供給を停止する。これにより作動流体Pの圧力は作用しなくなる。その結果、ピストン部材54はバネ88の弾性力を受けるが、ピストン部材54の前方への移動が係止部51cによって規制されているので、第2クランプ部材53が後方に向けて移動する。第2クランプ部材53は、鍔部54bが段部53bに当接するまで後方に移動し、支持部51から距離L14だけ離れた状態となる。この距離L14は、図9に示す距離L11に等しい。なお、第1実施形態と同様に、図8に示す距離L10が距離L9の2倍に設定される場合、第1及び第2クランプ部材52、53のそれぞれは、支持部51から離れる距離L12、L14が等しくなっている。
第2クランプ部材53は、支持部51から距離L14だけ離れることにより、挟持部51aに対して間隔L15を形成する。この間隔L15は、上型29の厚みよりも大きいため、上型29のクランプを解放し、上型29を取り外すことができる。なお、クランプの解放時に、コマ85が凹部29bに入りこんで上型29を吊り下げた状態とする点は、上記と同様である。上型29は、上型ホルダー50aに対して左右方向(図10紙面に垂直方向)にスライドさせることにより、取り外すことができる。なお、コマ85を没入させる機構を形成させ、上型29の取り外しの際にコマ85を没入させて上型29を下方に取り外し可能としてもよい。
次に、この上型ホルダー50aに上型29を保持させる場合は、次の手順により行う。先ず、供給装置57を停止させて、図10に示すように、第1及び第2クランプ部材52、53の双方を支持部51から離した状態、または図9に示すように、作動流体Pの圧力が弱い状態として第1クランプ部材52を支持部51から離した状態とする。次いで、第1クランプ部材52と挟持部51aとの間、または第2クランプ部材53と挟持部51aとの間に、下方から上型29を差し込む。このとき、コマ85は収容凹部82に一旦没入し、溝状凹部29bに達した段階で突出する。次いで、供給装置57を駆動して作動流体Pの圧力を付与することにより、第1及び第2クランプ部材52、53は、バネ88の弾性力に抗して双方とも支持部51に近接し、上型29をクランプして図8に示す状態となる。
以上のように、第2実施形態に係る上型ホルダー50aは、第1実施形態と同様に、支持部51に対する第1及び第2クランプ部材52、53の動作を、1つのピストン部材54によって行うため、可動部品の点数を少なくして製造コストを低減できるとともに、故障発生を抑制できる。その他の効果に関しても第1実施形態と同様である。また、クランプを解放した場合でも、上型29は、コマ85によって吊り下げられるため、上型29の落下を確実に防止できる。なお、この上型ホルダー50aを備えるプレス機械10の動作については、第1実施形態と同様である。
以上、実施形態について説明したが、本発明は、上述した説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。例えば、上記した各実施形態では、第1クランプ部材52にピストン部材54が取り付けられ、第2クランプ部材53にシリンダ部53aが形成されるが、これとは逆に、第1クランプ部材52にシリンダ部53aが形成され、第2クランプ部材53にピストン部材54が取り付けられてもよい。また、第1及び第2クランプ部材52、53の形状は、図示のものに限定されず、上型29をクランプ可能な任意の形状を適用することができる。